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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置及び寝台装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20230407BHJP
【FI】
A61B5/055 366
A61B5/055 355
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019234032
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021101852
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 荘十郎
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和也
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 洋平
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/192451(WO,A1)
【文献】特開2011-87783(JP,A)
【文献】特開2012-115455(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0148778(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/ 20-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場を生成する静磁場磁石と、傾斜磁場を生成する傾斜磁場コイルと、被検体に高周波を印加する送信コイルと、を少なくとも具備する磁石架台と、
複数の要素コイルを具備し、前記複数の要素コイルで夫々受信される複数チャネルの磁気共鳴信号を出力するRFコイルが接続されるコイルポートが複数設けられている寝台天板と、
前記寝台天板に設けられ、前記複数のコイルポートと接続される変換器と、
前記変換器から出力される前記磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴画像を生成する装置本体と、
を備え、
前記変換器は、前記複数のコイルポートから出力される信号の数を選択的に減少させるセレクタ、
を備える、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記セレクタは、前記RFコイルの出力のチャネル数と、前記寝台天板に設けられている前記コイルポートの数の積で規定される総チャネル数を減少させるように、前記磁気共鳴信号を選択する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記コイルポートには、前記要素コイルの夫々から出力される前記磁気共鳴信号をデジタル信号に変換するAD変換器が設けられている、
請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記変換器には、前記セレクタで選択された前記磁気共鳴信号をデジタル信号に変換するAD変換器が設けられている、
請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記セレクタは、前記複数のコイルポートのうち、前記RFコイルが接続されているコイルポートからの前記磁気共鳴信号を選択する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記RFコイルが前記複数のコイルポートのうちのどのコイルポートに接続されたかを検出する検出回路を備え、
前記セレクタは、前記検出回路の出力信号に基づいて前記磁気共鳴信号を選択する、
請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記検出回路は、前記変換器に設けられる、
請求項6に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記検出回路は、前記装置本体に設けられる、
請求項6に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記変換器は、前記寝台天板の長手方向の端部であって、前記磁石架台から遠い方の端部に配設される、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記変換器は、前記複数のコイルポートの少なくとも1つと一体化されている、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記変換器は、デジタル信号に変換された前記磁気共鳴信号を、光信号として前記装置本体に送信する、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記変換器は、デジタル信号に変換された前記磁気共鳴信号を、無線で前記装置本体に送信する、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
前記寝台天板は、導電性レールを備え、
前記変換器は、前記導電性レールを介して電源の供給を受ける、
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
複数の要素コイルを具備し、前記複数の要素コイルで夫々受信される複数チャネルの磁気共鳴信号を出力するRFコイルが接続されるコイルポートが複数設けられている寝台天板と、
前記寝台天板の特定の位置に設けられる変換器であって、前記複数のコイルポートから出力される前記磁気共鳴信号のチャネル数を減少させるように前記磁気共鳴信号を選択するセレクタを備える変換器と、
を備える寝台装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置及び寝台装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置は、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF:Radio Frequency)信号で励起し、励起に伴って被検体から発生する磁気共鳴信号(MR(Magnetic Resonance)信号)を再構成して画像を生成する撮像装置である。
【0003】
磁気共鳴イメージング装置は、RF信号による励起に伴って生じるMR信号をRFコイルで受信する。受信するMR信号はアナログ信号である。このMR信号は、RFコイルから、被検体が載置される寝台の天板の内部、及び、天板を水平方向/垂直方向に移動させる寝台本体の内部を経由して、シールドルーム内の所定の場所、或いは、シールドルーム外の機械室等に設置されているAD変換回路まで、同軸ケーブル等の信号線を用いて伝送される。
RFコイルからAD変換回路まではアナログ信号が伝送されることになるが、伝送経路が長いためMR信号が減衰して、信号品質が低下する。
【0004】
また、通常、天板には複数の箇所にコイルポートが設けられており、複数のRFコイルが天板に装着可能になっている。さらに、今日のRFコイルは、その内部に複数の要素コイルを有しているものが多く、各RFコイルからの複数のMR信号が1つのコイルポートに入力されることになる。このため、天板内部や寝台本体内部を通る信号ケーブルの数は非常に多くなり、ケーブルの敷設作業やメンテナンス作業が煩雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2009/139287号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の1つは、RFコイルから出力されるMR信号の伝送品質を高めると共に、MR信号を伝送する信号ケーブル数を低減し、信号ケーブル敷設に関わる作業性、及び、信号ケーブルの保守作業性を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限らない。後述する各実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態の磁気共鳴イメージング装置は、磁石架台と、寝台天板と、変換器と、装置本体とを有する。磁石架台は、静磁場を生成する静磁場磁石と、傾斜磁場を生成する傾斜磁場コイルと、被検体に高周波を印加する送信コイルと、を少なくとも具備する。寝台天板には、複数の要素コイルを具備し、前記複数の要素コイルで夫々受信される複数チャネルの磁気共鳴信号を出力するRFコイルが接続されるコイルポートが複数設けられている。変換器は、寝台天板に設けられ、前記複数のコイルポートに接続される。また変換器は、前記複数のコイルポートから出力される信号の数を選択的に減少させるセレクタを備える。装置本体は、変換器から出力される前記磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の全体構成例を示す構成図。
図2】従来のMR信号の伝送系統を模式的に示す図。
図3】第1の実施形態の磁気共鳴イメージング装置の寝台を例示する図。
図4】第1の実施形態におけるMR信号の伝送系統を示すブロック図。
図5】第1の実施形態の変形例の磁気共鳴イメージング装置の寝台を例示する図。
図6】第2の実施形態におけるMR信号の伝送系統を示すブロック図。
図7】第2の実施形態の磁気共鳴イメージング装置の寝台を例示する図。
図8】第2の実施形態の第1変形例の磁気共鳴イメージング装置の寝台を例示する図。
図9】第2の実施形態の第2変形例におけるMR信号の伝送系統を示すブロック図。
図10】第3の実施形態の磁気共鳴イメージング装置の寝台を例示する図。
図11】第3の実施形態におけるMR信号の伝送系統を示すブロック図。
図12】第3の実施形態の変形例の磁気共鳴イメージング装置の寝台を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1の全体構成を示すブロック図である。実施形態の磁気共鳴イメージング装置1は、磁石架台100、制御キャビネット300、コンソール400、寝台500等を備えて構成される。
【0011】
磁石架台100と寝台500は、通常、シールドルームに配置される。一方、制御キャビネット300は、例えば、機械室と呼ばれる部屋に配置され、コンソール400は操作室に配置される。なお、制御キャビネット300とコンソール400とを併せて、装置本体600と呼ぶものとする。
【0012】
磁石架台100は、静磁場磁石10、傾斜磁場コイル11、WB(Whole Body)コイル12等を有しており、これらの構成品は円筒状の筐体に収納されている。寝台500は、寝台本体50と寝台天板51を有している。また、磁気共鳴イメージング装置1は、被検体に近接して配設されるRFコイル20を有している。以下の説明では、RFコイル20は磁気共鳴イメージング装置1の構成品の1つであるものとして説明するが、RFコイル20が磁気共鳴イメージング装置1の構成に含まれない場合もあり得る。この場合、RFコイル20は磁気共鳴イメージング装置1の構成には含まれないものの、RFコイル20と磁気共鳴イメージング装置1とは互いに接続可能に構成されている。より具体的には、後述するように、RFコイル20と、磁気共鳴イメージング装置1の寝台天板51とが互いに接続可能に構成されている。
【0013】
制御キャビネット300は、傾斜磁場電源31(X軸用31x、Y軸用31y、Z軸用31z)、RF受信器32、RF送信器33、及びシーケンスコントローラ34を備えている。
【0014】
磁石架台100の静磁場磁石10は、概略円筒形状をなしており、被検体(例えば患者)の撮像領域であるボア(静磁場磁石10の円筒内部の空間)内に静磁場を発生させる。静磁場磁石10は超電導コイルを内蔵し、液体ヘリウムによって超電導コイルが極低温に冷却されている。静磁場磁石10は、励磁モードにおいて静磁場用電源(図示せず)から供給される電流を超電導コイルに印加することで静磁場を発生し、その後、永久電流モードに移行すると、静磁場用電源は切り離される。一旦永久電流モードに移行すると、静磁場磁石10は長時間、例えば1年以上に亘って、大きな静磁場を発生し続ける。なお、静磁場磁石10を永久磁石として構成しても良い。
【0015】
傾斜磁場コイル11も概略円筒形状をなし、静磁場磁石10の内側に固定されている。この傾斜磁場コイル11は、傾斜磁場電源(31x、31y、31z)から供給される電流によりX軸,Y軸,Z軸の方向に傾斜磁場を被検体に印加する。
【0016】
寝台500の寝台本体50は寝台天板51を上下方向及び水平方向に移動可能であり、撮像前に寝台天板51に載った被検体を所定の高さまで移動させる。その後、撮影時には寝台天板51を水平方向に移動させて被検体をボア内に移動させる。後述するように、寝台天板51には、RFコイル20を接続するための複数のコイルポート220が設けられている。
【0017】
WBコイル12は、傾斜磁場コイル11の内側に被検体を取り囲むように概略円筒形状に固定されている。WBコイル12は、RF送信器33から伝送されるRFパルスを被検体に向けて送信する一方、水素原子核の励起によって被検体から放出される磁気共鳴信号(即ち、MR信号)を受信する。
【0018】
RF送信器33は、シーケンスコントローラ34からの指示に基づいて、WBコイル12にRFパルスを送信する。一方、RF受信器32は、WBコイル12によって受信されたMR信号を検出し、検出したMR信号をデジタル化して得られる生データをシーケンスコントローラ34に送る。
【0019】
RFコイル20は、被検体から放出されるMR信号を被検体に近い位置で受信する。RFコイル20は、例えば、複数の要素コイルを備えている。RFコイル20は、被検体の撮像部位に応じて、頭部用、胸部用、脊椎用、下肢用、或いは全身用など種々のタイプがある。そして、複数のRFコイル20を同時に被検体に載置することが可能である。図1では胸部用と下肢用のRFコイル20が載置されている状態を例示している。各RFコイル20にはケーブルを介してコイルコネクタ210が設けられている。RFコイル20を使用する際には、コイルコネクタ210が寝台天板51のコイルポート220に接続される。
【0020】
シーケンスコントローラ34は、コンソール400による制御のもと、傾斜磁場電源31、RF送信器33およびRF受信器32をそれぞれ駆動することによって被検体のスキャンを行う。そして、シーケンスコントローラ34は、スキャンを行ってRF受信器32から生データを受信すると、その生データをコンソール400に送る。
【0021】
シーケンスコントローラ34は、処理回路(図示を省略)を具備している。この処理回路は、例えば所定のプログラムを実行するプロセッサや、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアで構成される。
コンソール400は、処理回路40、記憶回路41、ディスプレイ42、及び入力デバイス43を有するコンピュータとして構成されている。
【0022】
記憶回路41は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)の他、HDD(Hard Disk Drive)や光ディスク装置等の外部記憶装置を含む記憶媒体である。記憶回路41は、各種の情報やデータを記憶する他、処理回路40が具備するプロセッサが実行する各種のプログラムを記憶する。
【0023】
ディスプレイ42は、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、有機ELパネル等の表示デバイスである。入力デバイス43は、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、タッチパネル等であり、各種の情報やデータを操作者が入力するための種々のデバイスを含む。
【0024】
処理回路40は、例えば、CPUや、専用又は汎用のプロセッサを備える回路である。プロセッサは、記憶回路41に記憶した各種のプログラムを実行することによって、後述する各種の機能を実現する。処理回路40は、FPGA(field programmable gate array)やASIC(application specific integrated circuit)等のハードウェアで構成してもよい。これらのハードウェアによっても後述する各種の機能を実現することができる。また、処理回路40は、プロセッサとプログラムによるソフトウェア処理と、ハードウェア処理とを組み合わせて、各種の機能を実現することもできる。
【0025】
これらの各構成品によって、コンソール400は、磁気共鳴イメージング装置1全体を制御する。処理回路40は、入力された撮像条件に基づいてシーケンスコントローラ34にスキャンを実行させる一方、シーケンスコントローラ34から入力される生データ、即ち、デジタル化されたMR信号に基づいて画像を再構成する。再構成された画像はディスプレイ42に表示され、或いは記憶回路41に保存される。
【0026】
図2は、従来のMR信号の伝送系統を模式的に示す図である。図2(a)は、磁気共鳴イメージング装置の磁石架台100を正面から見た図であり、図2(a)の手前側に寝台500が配設されている。図2(b)は、磁石架台100と寝台500を側方から見た図である。RFコイル20のコイルコネクタ210は寝台天板51のコイルポート220に接続される。従来の伝送系統では、RFコイル20で受信されたアナログ信号であるMR信号は、通常、同軸ケーブルによって、寝台500のコイルポート220から、例えば、図2に例示したように磁石架台100の筐体内の一部に配置された中継器まで伝送される。中継器は、磁石架台100から離れた機械室に設置されることもある。中継器にはAD変換器が内蔵されている。
【0027】
このように、従来の伝送系統では、RFコイル20から中継器まで、長い伝送路を経由してアナログ信号が伝送されることになるため、MR信号が減衰し、信号品質が低下するといった問題が起こる可能性があった。
【0028】
また、通常、寝台天板51には複数の箇所にコイルポート220が設けられており、複数のRFコイル20が寝台天板51に装着可能になっている。さらに、今日のRFコイル20は、その内部に複数の要素コイルを有しているものが多く、各要素コイルからの複数のMR信号が1つのコイルポートに入力されることになる。このため、寝台天板の内部や寝台本体の内部を通る信号ケーブルの数は非常に多くなり、ケーブルの敷設作業やメンテナンス作業が煩雑となる。
【0029】
いま、1つの要素コイルから出力されるMR信号の経路を「チャネル」と呼ぶものとすると、1つのRFコイルからは、最大で、内蔵する要素コイルの数と同じチャネル数のMR信号が出力される。この結果、寝台天板51のコイルポート220の数をNとし、各コイルポート220に接続されるRFコイル20のチャネル数をM、とすると、寝台天板51から寝台本体50の内部を経由して中継器まで伝送される全チャネル数は、N×Mとなる。
【0030】
例えば、コイルポート数を8とし、RFコイルのチャネル数を16とすると、トータルのチャネル数は128(8×16)となり、全てのMR信号を伝送するための同軸ケーブルの数は128となる。つまり、128本もの同軸ケーブルを、天板内部及び寝台本体内部に敷設しなければならないことになる。さらに、寝台天板51及び寝台本体50は水平方向及び垂直方向に動くため、これらの動きに耐えるように多数の同軸ケーブルを敷設する必要がある。例えば、複数の同軸ケーブルを束ねて、キャタピラ構造のような可撓性のある支持部材に沿わせてケーブル束を敷設するような手法が用いられる。この結果、ケーブル敷設に関わる作業は非常に煩雑なものになっていた。
【0031】
以下に説明する各実施形態は、このような不都合を改善することを狙ったものである。図3及び図4は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1の寝台500、及び、MR信号の伝送系等を例示する図である。図3(a)は、寝台天板51と寝台本体50を上方から見た図であり、図3(b)は側方から見た図である。
【0032】
図3(a)に示すように、寝台天板51には、RFコイル20を接続するためのコイルポート220が複数設けられている。図3(a)に示す例では、8つのコイルポート220が設けられており、8つのRFコイル20を同時に接続することが可能である。
【0033】
一方、それぞれのコイルポート220には、図3(b)に示すように、AD変換器群230が設けられている。AD変換器群230では、各RFコイル20から出力されるMR信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。デジタル信号に変換されたMR信号は、寝台天板51の一端に設けられている変換器200まで伝送される。
【0034】
図4は、第1の実施形態におけるMR信号の伝送系統を示すブロック図である。図4に示すように、夫々のRFコイル20は複数の要素コイル21を内蔵している。内蔵する要素コイル21の数は特に限定するものではないが、例えば、図4に例示するように、16個の要素コイル21が、各RFコイル20内に面アレイ状に配列されている。各RFコイル20からは、要素コイル21の数に対応したチャネルのMR信号が出力されるため、この例では、16チャネルのMR信号がRFコイル20から出力される。したがって、各コイルポート220に設けられるAD変換器群230には、各チャネルに対応して16個のAD変換器が設けられる。
【0035】
各コイルポート220からの信号は、寝台天板51端部に設けられている変換器200に集められる。変換器200は、図4に例示するように、セレクタ240、パラレルシリアル変換器(P/S変換器)250,及び、電気光変換器(EO変換器)270を有している。
【0036】
セレクタ240は、各コイルポートから出力される信号の数を選択的に減少させる。例えば、セレクタ240に入力される全チャネルの中から、装置本体600から送られてくる選択信号によって指定されるチャネルの信号を選択する。必ずしも全てのコイルポート220にRFコイル20が接続されるわけではない。各コイルポート220では、RFコイル20が接続された場合、そのことを示す接続検出信号を装置本体600へ伝送する。また、各RFコイル20からは、そのコイルの種類等を示す識別信号が出力される。この識別信号も装置本体600に伝送される。上記の接続検出信号と識別情報は、図4に示すチャネルの一部を利用して装置本体600に伝送することができる。或いは、接続検出信号と識別情報とを、図4に示すチャネルとは独立した別のルートを利用して装置本体600に伝送するようにしてもよい。
【0037】
装置本体600は、これらの接続検出信号とコイルの識別情報に基づいて、セレクタ240で選択するチャネルを決定する。変換器200には、全チャネル、即ち、RFコイル20の数と要素コイル21の数の積の数のチャネルの信号、例えば、128チャネルの信号が入力される。
【0038】
装置本体600は、接続検出信号に基づいて、RFコイル20が実際に接続されているコイルポート220からのチャネルの信号のみを選択するように、セレクタ240に選択信号を送る。これにより、セレクタ240は、RFコイル20が接続されていないチャネル、即ち、不要なチャネルの信号の伝送を排除してチャネル数を削減することができる。
【0039】
また、装置本体600は、RFコイル20の識別情報と、これから撮像しようとする被検体の撮像条件とに基づいて、コイルポート220に接続されている複数のRFコイル20の中から撮像に必要なRFコイル20を選択することもできるし、さらには、選択したRFコイル20に内蔵される複数の要素コイル21の中から撮像に必要な要素コイル21を選択することもできる。このような選択により、セレクタ240は、チャネル数をさらに削減することができる。
【0040】
セレクタ240によって削減されたチャネル数のMR信号を、P/S変換器250によってパラレル信号からシリアル信号に変換してもよい。これにより、論理的なチャネル数の削減だけでなく、物理的なチャネル数、即ち、伝送ケーブルの数も、例えば、1本にまで削減することができる。また、シリアル信号に変換された電気信号を、さらに、EO変換器270によって光信号に変換してもよい。
【0041】
図3(b)に示すように、変換器200から出力された信号は、寝台天板51から寝台本体50の内部に導かれ、装置本体600まで伝送される。上述したように、変換器200の出力は、チャネル数が削減され、更には、物理的な伝送ケーブルも、例えば、1本までに削減される。
【0042】
このように、第1の実施形態の磁気共鳴イメージング装置1によれば、寝台天板51内部や寝台本体50の内部を通る信号ケーブルが、従来に比べて大幅に簡素化される。この結果、従来に比べて、信号ケーブルの敷設作業や、信号ケーブル交換時のメンテナンス作業が大幅に軽減される。
【0043】
また、第1の実施形態では、RFコイル20から出力されたアナログ信号の伝送経路が、要素コイル21の出力端から寝台天板51のコイルポート220の位置までの短い経路長となるため、従来にくらべて、伝搬によるMR信号の減衰も大幅に抑制される。
【0044】
(第1の実施形態の変形例)
図5(a)は、第1の実施形態の変形例に係る寝台天板51と寝台本体50を上方から見た図であり、図5(b)は側方から見た図である。上述した第1の実施形態では、変換器200は、図3に示したように、寝台天板51の一端に配置されている。これに対して、第1の実施形態の変形例では、図5に例示したように、変換器200は、複数のコイルポート220のうちの1つのコイルポート220と一体化された形態で設けられている。
【0045】
第1の実施形態の変形例における変換器200の構成は、図4に示した第1の実施形態と同じであり、第1の実施形態の変形例は、前述した第1の実施形態とほぼ同じ効果を得ることができる。
【0046】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係るMR信号の伝送系統を示すブロック図である。第2の実施形態と第1の実施形態との相違点は、AD変換器の位置にある。第1の実施形態では、図4に示したように、AD変換器群230は、各コイルポート220に設けられている。1つのAD変換器群230には、RFコイル20の要素コイル21の数に対応するAD変換器が設けられている。したがって、全コイルポート220に設けられるAD変換器の数は、RFコイル20全チャネル数と全コイルポート220の数の積となり、例えば、上述した例では、全チャネル数120に対応して120個のAD変換器を設ける必要がある。
【0047】
これに対して、第2の実施形態では、図6に示すように、AD変換器260は、変換器200の中のセレクタ240の後段に設けられている。この構成により、AD変換器260の数を第1の実施形態よりも少なくすることができる。
【0048】
第2の実施形態におけるAD変換器260の数は、セレクタ240の最大出力チャネル数に合致していれば十分である。最大出力チャネル数が32チャネルの場合、AD変換器260の数は32となる。
【0049】
図7(a)は、第2の実施形態の寝台天板51と寝台本体50を上方から見た図であり、図7(b)は側方から見た図である。寝台天板51におけるコイルポート220の数と位置自体は、第1の実施形態と同じであり、変換器200の位置も第1の実施形態と同じである。また、変換器200から装置本体600までの信号ケーブルの種類や、信号ケーブルの敷設形態も、第1の実施形態と実質的に同じである。ただし、上述したように、第1の実施形態ではAD変換器がコイルポート220に設けられているのに対して、第2の実施形態では、変換器200の内部にAD変換器が設けられている点が両者で異なっている。
【0050】
ここで、変換器200が、寝台天板51の長手方向の端部であって、磁石架台100から遠い方の端部(即ち、図7において、寝台天板51の右側の端部)に設置されていることに留意されたい。変換器200が設置される端部は、被検体の撮像時においても、磁石架台100の撮像空間(即ち、ボア)の外側に位置することになる。同様に、変換器200は、被検体に載置されるRFコイル20からも離れた場所に位置することにもなる。このため、変換器200に内蔵されるAD変換器260、及びその周辺から発生する恐れのあるデジタルノイズが撮像空間内に漏れ込む可能性、或いは、RFコイル20に誘導される可能性を極力排除することができる。
【0051】
(第2の実施形態の第1変形例)
図8(a)は、第2の実施形態の変形例に係る寝台天板51と寝台本体50を上方から見た図であり、図8(b)は側方から見た図である。第2の実施形態の変形例は、第1の実施形態の変形例(図5参照)と同様に、変換器200が、複数のコイルポート220のうちの1つのコイルポート220と一体化された形態で設けられている。ただし、第2の実施形態の変形例では、AD変換器260が変換器200に内蔵されている。
【0052】
第2の実施形態の変形例における変換器200の構成は、図6に示した第2の実施形態と同じであり、第2の実施形態の変形例は、前述した第2の実施形態とほぼ同じ効果を得ることができる。
【0053】
(第2の実施形態の第2変形例)
図9は、第2の実施形態の第2変形例に係るMR信号の伝送系統を示すブロック図である。第2の実施形態と第2の実施形態の変形例との相違点は、第2の実施形態の変形例が、コイル検出回路242を内蔵している点である。
【0054】
前述したように、各コイルポート220では、RFコイル20が接続された場合、そのことを示す接続検出信号を装置本体600へ伝送している。この接続検出信号が各コイルポート220から変換器200へ伝送される信号に含まれているとすると、コイル検出回路242は、セレクタ240の入力信号の中から接続検出信号を抽出することができる。そして、コイル検出回路242は、RFコイル20が実際に接続されているコイルポート220からのチャネル信号のみを、セレクタ240に選択させることができる。なお、装置本体600から、セレクタ240の選択信号の供給を受ける実施形態では、このようなコイル検出回路242を、或いは、この回路と同等な機能を、装置本体600の中に設ければよい。
【0055】
(第3の実施形態)
図10(a)は、第3の実施形態に係る寝台天板51と寝台本体50を上方から見た図であり、図10(b)は側方から見た図である。また、図11は、第3の実施形態に係るMR信号の伝送系統を示すブロック図である。
【0056】
第3の実施形態では、変換器200から装置本体600までの信号伝送を無線で行う。このため、図10(a)、(b)に示すように、変換器200に送受信用のアンテナ290が設けられている。また、装置本体600にも、変換器200と無線で信号を授受するためのアンテナ610が設けられている。
【0057】
第3の実施形態の伝送系統は、第2の実施形態の伝送系統と類似しているが、図11に示すように、変換器200のP/S変換器250の後段のEO変換器270に換えて、送受信回路280を有している。
【0058】
第3の実施形態では、変換器200と装置本体600との間の信号授受は無線で行われるため、変換器200から装置本体600までの信号ケーブルが不要となる。
【0059】
(第3の実施形態の変形例)
図12(a)は、第3の実施形態の変形例に係る寝台天板51と寝台本体50を上方から見た図であり、図12(b)は側方から見た図である。第3の実施形態の変形例は、寝台天板51が導電性レール202を有する構成となっている。導電性レール202は、例えば、寝台天板51の長手方向に沿った側部に配設される。寝台本体50には、電源206と、導電性レール202にスライド可能に接触する導電性のコンタクト204とを有している。
【0060】
このような構成により、寝台天板51が水平方向のどの位置にあっても、また、寝台天板51が水平方向に移動中であっても、寝台本体50に設けられている電源206から、寝台天板51に設置されている変換器200まで、常時、電源を供給することが可能となる。
【0061】
第3の実施形態では、変換器200と装置本体600との間の信号授受は無線で行われるため、変換器200から装置本体600までの信号ケーブルが不要となるものの、変換器200はAD変換器260等のアクティブな素子を有しているため、外部からの電源供給が必要である。そこで、第3の実施形態の変形例では、上記のような導電性レール202と導電性コンタクト204とを介した電源供給系統により、変換器200に安定に、かつ、シンプルな構成で電源を供給することが可能となる。
【0062】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、RFコイル20から出力されるMR信号の伝送品質を高めると共に、MR信号を伝送する信号ケーブル数を低減し、信号ケーブル敷設に関わる作業性、及び、信号ケーブルの保守作業性を向上させることができる。
【0063】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
1 磁気共鳴イメージング装置
12 WBコイル
20 RFコイル
21 要素コイル
50 寝台本体
51 寝台天板
200 変換器
210 コイルコネクタ
220 コイルポート
230 AD変換器群
240 セレクタ
242 コイル検出回路
250 P/S変換器
260 AD変換器
270 EO変換器
280 送受信回路
290 変換器アンテナ
600 装置本体
602 装置本体アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12