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特許7257955低い液相線温度を有する改変された溶融亜鉛めっき被膜、その製造方法及び使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】低い液相線温度を有する改変された溶融亜鉛めっき被膜、その製造方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/06 20060101AFI20230407BHJP
   C23C 2/26 20060101ALI20230407BHJP
   C22C 18/00 20060101ALI20230407BHJP
   C22C 18/02 20060101ALI20230407BHJP
   C22C 18/04 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
C23C2/06
C23C2/26
C22C18/00
C22C18/02
C22C18/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019529139
(86)(22)【出願日】2017-08-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 US2017045858
(87)【国際公開番号】W WO2018031523
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-07-17
(31)【優先権主張番号】62/372,193
(32)【優先日】2016-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502032275
【氏名又は名称】コロラド・スクール・オブ・マインズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スピアー,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,リジア
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-350689(JP,A)
【文献】特開2016-130357(JP,A)
【文献】特表2008-504440(JP,A)
【文献】国際公開第2012/141659(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00594520(EP,A1)
【文献】特公昭46-003644(JP,B1)
【文献】特開平10-226865(JP,A)
【文献】特開2001-207249(JP,A)
【文献】特表2015-531817(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0074975(KR,A)
【文献】独国実用新案第202015104790(DE,U1)
【文献】特開平02-175852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00-2/40
C22C 18/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低下した浴温度でフェライト、マルテンサイト、又はベイナイトを第1のミクロ組織として含有する鋼又は合金鋼材料を被覆する方法であって、
鋼又は合金鋼材料を準備する工程と、
亜鉛基合金浴において、鋼又は合金鋼材料を、焼き入れと、亜鉛基合金材料及び少なくとも1種のドーパントを含む亜鉛基合金被膜での被覆とを同時に行うことで、被覆された鋼又は合金鋼材料を形成する工程であって、亜鉛基合金浴における亜鉛基合金被膜の液相線温度が275℃~365℃の間であり、かつ亜鉛基合金浴が液相線温度より0℃~50℃だけ高い作動温度を有する工程と、
鋼又は合金鋼材料を亜鉛基被膜で被覆するとき、鋼又は合金鋼材料内のフェライト、マルテンサイト、又はベイナイトの上記第1のミクロ組織を変更することで、マルテンサイト焼き戻し、ベイナイト焼き戻し、又は炭素時効を欠くの少なくとも1つの変化により代わりのミクロ組織を形成する工程と
を備える、方法。
【請求項2】
亜鉛基合金被膜が亜鉛-マグネシウム-アルミニウム被膜である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ドーパントが、スズ、リチウム、ガリウム、マグネシウム、インジウム、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
亜鉛基合金被膜の液相線温度が300℃~365℃の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
亜鉛基合金被膜の組成式が、Zn-aAl-bMg-ドーパント、Zn-bMg-(x)ドーパント、Zn-aAl-(x)ドーパント、Zn-aAl-bMg-(x)ドーパント-(y)ドーパント、Zn-bMg-(x)ドーパント-(y)ドーパント、Zn-aAl-(x)ドーパント-(y)ドーパント、Zn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント、又はZn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント-(y)ドーパントからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-4Al-3Mg-ドーパントであり、ドーパントがスズ、ガリウム、ビスマス、又はインジウムからなる群から選択され、亜鉛基合金被膜におけるドーパントの質量分率が1~15の間である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
亜鉛基合金被膜におけるドーパントの質量分率が1~9の間である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-4Al-bMg-8Snであり、bが1~6の間である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-aAl-3Mg-8Snであり、aが1~15の間である、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-7Al-3Mg-xSnであり、xが1~12の間である、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-15Al-1Mg-xSnであり、xが1~20の間である、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-aAl-3Mg-10Gaであり、aが1~10の間である、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-3.5Al-bMg-6Inであり、bが1~4の間である、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-aAl-2.5Mg-6Inであり、aが1~6の間である、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、2016年8月8日に出願された米国仮特許出願第62/372,193号の優先権を主張し、その利益を得るものであり、その出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、様々な用途において基材応答性(substrate response)を高めるための低めの液相線温度の被膜、並びにその作製方法及び使用方法に関わる。
【背景技術】
【0003】
亜鉛被膜は、防食を提供するために、バッチ処理及び連続処理の両方で鋼及び合金鋼に施される。電気めっきが使用されることもあるが、鋼基材を溶融金属浴中に浸漬することで、金属被膜の溶融温度により制御される熱履歴に鋼基材を曝露することによって被膜を適用することの方が多い。これらの熱履歴は、基材の製錬法に影響を与え、時には製品特性に有害な影響を及ぼし、例えば基材材料の炭素時効(carbon aging)を起こすことがある。更に、高温浴を必要とする亜鉛被膜は、マルテンサイト又はベイナイトの実質的な形成を阻害するため、これらのミクロ組織をその形成が可能である鋼に形成させるための追加の処理が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
場合によって、より低い浴温度が、特性を高めるための処理を可能にすることがある。本発明は、溶融めっき処理のための焼き入れ(quench)及びパーティショニング(partitioning)を高める。亜鉛浴内の焼き入れ(quenching)は、亜鉛の融点より低いクエンチ温度が必要とされるので困難である。より低い浴温度は、焼き入れ温度を制御するための資本の修正の必要性を排除することができ、またパーティショニングの異なる制御も可能になる可能性がある。
【0005】
より低い浴温度はまた、より低い温度でのオーステンパー処理も可能にし得る。したがって、本発明の1つの態様は、鋼に対して以前に想定され、現在利用可能なものより低い融点を有する合金コーティングである。
【0006】
より低い浴温度は、炭素時効に起因する望ましくない効果を弱めることができ、薄鋼板(sheet steel)、高強度亜鉛めっき線、及びその他の鋼を含む数多くの用途において特性を高められる可能性がある。もう1つ別の方法、バッチアニーリングした低炭素鋼を亜鉛めっきで被覆するための加熱は、耐時効性IF(interstitial free)鋼のインラインアニーリングされた連続コーティングにより置き換えられた。より低融点の合金は、コストを低減するためにそのような用途のための代わりのグレード及び処理を可能にすることができる。
【0007】
複合組織薄鋼板は、通常亜鉛浴後マルテンサイトへの変態を起こす。また、浴温度は、関連する軟化のために効果的なマルテンサイト焼き戻しには高過ぎる。溶融温度の低下は、強度を過度に損なうことなく延性を高めるためのマルテンサイト焼き戻しの制御を可能にすることができる。
【0008】
通例、被膜の液相線温度は、亜鉛の溶融温度(即ち419.5℃)より高い。(マルテンサイト又はベイナイトのような)ミクロ組織を形成するための焼き入れ温度は、個々の鋼に依存するが、マルテンサイトミクロ組織、又は従来の溶融亜鉛めっきで達成されるものより微細なベイナイトミクロ組織を形成するためには、鋼を典型的には、約419℃より低い低温で焼き入れしなければならない。したがって、被膜及びミクロ組織の変化を必要とする鋼は、適切な被覆鋼を達成するのに複数の工程を必要とするであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、焼き入れに付される鋼が、同一の工程で基材を被覆しながらミクロ組織を形成するか、又は被覆しながら(より低い温度に起因して)より微細なミクロ組織を形成することを可能にする。本発明は、焼き入れ及び被覆工程が同時に起こることが可能であるように、約419℃より低い液相線温度を有する被膜を使用する。焼き入れ温度は、合金鋼のミクロ組織に影響を及ぼす。焼き入れ(オーステンパー処理)温度は、マルテンサイト(ベイナイト)のような特定のミクロ組織、又はマルテンサイトとベイナイトの組合せを形成するように選択することができる。被覆プロセスがミクロ組織を形成すると共に液体状態の被膜材料で基材を被覆するべく熱処理として機能するためには、本発明にとって重大な焼き入れ温度が被膜の液相線温度より高くなければならない。
【0010】
本発明の1つの態様は、合金材料である。この合金材料は、被膜又は温度降下剤を含む。被膜又は温度降下剤は、金属材料及び温度降下剤を含む。温度降下剤は、Sn、Li、Ga及び/又はInを含むことができる。合金材料は、広い適用性を有し、二、三の例を挙げると、被膜として、溶接において、耐食性のために、又は表面品質を維持するために使用することができる。
【0011】
本発明の1つの態様は、新しい被膜組成物である。被膜は、亜鉛基合金及び、ドーパントであることができる第2の材料を含むことができる。
【0012】
本発明の1つの態様は、亜鉛めっきプロセスで通例使用されるよりも低い温度でのコーティングの使用である。言い換えると、より低い液相線温度を有する被膜の使用である。
【0013】
本発明の1つの態様は、金属材料の液相線温度を低下させる方法である。この方法は、金属材料を準備し、次いで金属材料を亜鉛基合金材料及びドーパントで被覆することを含む。
【0014】
本発明の1つの態様は、金属材料を低温で被覆する方法である。この方法は、金属材料を準備し、次いで金属材料を亜鉛基合金被膜で被覆することを含む。亜鉛基合金材料は、ドーピング材料を含み、ドーピング材料を含む亜鉛基合金材料の液相線温度はドーピング材料を含まない亜鉛基合金材料の液相線温度より低い。
【0015】
本発明の1つの態様は、被覆された基材合金である。被覆された基材合金は、亜鉛基合金被膜で被覆された金属材料を含む。亜鉛基合金被膜は、金属合金材料、及び少なくとも1つのドーパントを含む。亜鉛基合金被膜の液相線温度は、約419℃より低い。
【0016】
本発明の1つの態様は、二元亜鉛合金である。二元亜鉛合金は、亜鉛及び第2の材料を含む。第2の材料の質量分率は多くても約70%であり、亜鉛の質量分率は少なくとも約30%である。
【0017】
本発明の1つの態様は、亜鉛めっきするための亜鉛基合金被膜の液相線温度を低下させる方法である。この方法は、亜鉛基合金をドーパントと組み合わせることを含む。ドーパントは、アルミニウム、マグネシウム、銅、チタン、アンチモン、ケイ素、ビスマス、ガリウム、インジウム、スズ、鉛、リチウム、カリウム又はこれらの組合せからなる群から選択される。
【0018】
本発明の1つの態様は、被覆鋼部品を製造する方法である。この方法は液体被膜であって、被膜の液相線温度が鋼内に代わりのミクロ組織を形成するのに必要とされる焼き入れ温度より低い液体被膜を準備することを含む。この代わりのミクロ組織は鋼のマルテンサイト焼き戻し、ベイナイト焼き戻し、又は炭素時効の少なくとも1つの変化である。鋼は被膜で被覆され、被覆中に代わりのミクロ組織が鋼内に形成される。
【0019】
本発明の1つの態様は、被覆鋼である。被覆鋼は、鋼基材を含む。鋼基材は、鋼基材内の第1のミクロ組織を変更することにより形成された代わりのミクロ組織を含む。代わりのミクロ組織は被覆プロセス中に形成される。被覆鋼はまた、鋼基材の少なくとも一部分上に被膜を含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】Thermo-Calc Softwareを使用して作成された異なるモル分率における亜鉛-アルミニウム-マグネシウム系の三元グラフを示す図である。
図2図1との比較のために文献からのZn-Al-Mg系の三元グラフを提供する。
図3A】モル分率でのZn-Al-Mg系の液相線投影を示す図である。
図3B】質量分率でのZn-Al-Mg系の液相線投影を示す図である。
図4A】Zn-Al-Mg系の液相面を示す図である。
図4B】約630KにおけるZn-Al-Mg系に対する液体点を示す図である。
図4C】約620KにおけるZn-Al-Mg系に対する液体点を示す図である。
図4D】約618KにおけるZn-Al-Mg系に対する液体点を示す図である。
図5】Al及びMgの質量分率を一定に保ったZn-3.9Al-2.45Mg-xSnに対する相図を示す図である。
図6】Al及びMgの質量分率を一定に保ったZn-3.9Al-2.45Mg-xBiに対する相図を示す図である。
図7】Al及びMgの質量分率を一定に保ったZn-3.9Al-2.45Mg-xGaに対する相図を示す図である。
図8】Al及びMgの質量分率を一定に保ったZn-3.9Al-2.45Mg-xInに対する相図を示す図である。
図9】4つのドーピング材料のパーセントでの様々な質量分率に対する液相線温度を示す図である。
図10】Zn-4Al-xMg-8Snにおけるマグネシウムの様々な質量分率に対する液相線温度を示す図である。
図11】Zn-xAl-3Mg-8Sn系におけるアルミニウムの様々な質量分率に対する液相線温度を示す図である。
図12】Zn-7Al-3Mg-xSnにおけるスズの様々な質量分率に対する液相線温度を示す図である。
図13】Zn-15Al-1Mg-xSn系におけるスズの様々な質量分率に対する液相線温度を示す図である。
図14】Zn-xAl-3Mg-10Ga系に対するアルミニウムの質量分率が約0.5%~約10%の間であるときの液相線温度を示す図である。
図15】Zn-4Al-xMg-10Gaにおける質量分率が約1%~約4%の間であるときの液相線温度を示す図である。
図16】Zn-3.5Al-xMg-6Inにおける約1%~約5%の間のマグネシウムの質量分率に対する液相線温度を示す図である。
図17】Zn-xAl-2.5Mg-6Inにおける約1%~約6%の間のアルミニウムの質量分率に対する液相線温度を示す図である。
図18】Zn-3.9Al-2.45Mg-ドーパント系における幾つかのドーパントの様々な質量分率に対する液相線温度を示す図である。
図19】四元Zn-Al-Mg-ドーパント系の液相線温度を決定するために使用される三元状態図を示す図である。
図20】スズの様々な質量分率に対する液相線温度を示す図である。
図21】Zn-Al-Mg-Sn系におけるアルミニウム及びマグネシウムの様々な重量パーセントでのスズの様々な質量分率に対する液相線温度を示す図である。
図22】Zn-Al-Mg-Sn系におけるアルミニウム及びマグネシウムの様々な重量百分率でのスズの様々な質量分率に対する液相線温度を示す図である。
図23】Zn-Al-Sn系におけるアルミニウムの様々な重量百分率でのスズの様々な質量分率に対する液相線温度を示す図である。
図24図20~23の様々な条件に対する低い液相線温度の分布を示す図である。
図25】Zn-Al-Mg-Sn系におけるスズの様々な質量分率、並びにアルミニウム及びマグネシウムの様々な組成に対する液体温度を示す図である。
図26】文献からの、450~480℃の範囲にわたるZn浴温度の関数としての、幾つかの溶融亜鉛めっき被膜の耐食性を示す図である。
図27】文献からの、4つの異なる天然環境、即ち田舎、海洋、工業及び厳しい海洋における亜鉛めっき被膜の平均の腐食損失をまとめて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、従来の亜鉛基被膜より低い温度で基材に適用することができる亜鉛基合金被膜に関する。本発明はまた、亜鉛基合金被膜を作製する方法、及びその被膜を使用する方法にも関する。
【0022】
本発明は、一定の合金化量の四元系Zn-3.9Al-2.45Mg-x(ここで、xは液相線温度を低下させるために添加される物質である)を使用して例証された。しかし、本発明から逸脱することなく各物質の量を変えることが可能である。
【0023】
本発明の各態様及び実施形態において、亜鉛基合金被膜及び亜鉛基合金は本発明から逸脱することなく付随する物質又は不純物を含むことができる。
【0024】
定義
「液相線温度」は、合金が完全に液体である最低温度である。合金は、この温度より低いと固体になり始める。本発明は、液相線温度より高い温度を使用することができるが、ミクロ組織の形成のような利点は、所与の被膜に対して可能な最低の液相線温度を利用することによって達成することができる。
【0025】
「共晶温度」は、二元共晶混合物が融解/固化する個々の低融点の温度である。共晶温度は、関与する成分の全ての混合比で可能な最低の溶融温度である。
【0026】
「溶融温度」は、融解が始まる温度を表す。
【0027】
被膜は、ある「作動温度」で付けることができ、この温度は、基材をコーティング浴中に浸漬した後でさえも被膜が液体のままであるように液相線温度より高い温度であることができる。作動温度は、液相線温度より約50度まで高い温度であることができる(例えば、液相線温度が約123℃であれば、作動温度は、約123℃~約173℃の間であることができる)。幾つかの実施形態において、作動温度は、被膜に対する液相線温度より約5度~約45度の間熱い温度であることができる。幾つかの実施形態において、作動温度は、液相線温度より約0°、約5°、約10°、約15°、約20°、約25°、約30°、約35°、約40°、約45°、又は約50°だけ高い(即ち熱い)温度であることができる。作動温度は、基材を被覆しながら代わりのミクロ組織を形成するという点で本発明の成功にとって重大である。作動温度が低過ぎると、被膜は、液体形態のままで残らない(即ち基材を被覆することができない)。作動温度が熱過ぎると、代わりのミクロ組織を形成するための適正な焼き入れ温度にならない。したがって、作動温度を決定するときには、幾つかの要因を考慮しなければならない。また、作動温度は、特定の被膜及び特定の基材材料の両方を考慮して選択されることが明らかとなる。
【0028】
「焼き入れ温度」は、個々の合金に対する、ミクロ組織が形成されるか又は変更される温度である。ミクロ組織は、例えば、マルテンサイト、ベイナイト、フェライト又はこれらの組合せであることができる。マルテンサイトは冷却するとすぐに形成するが、ベイナイトは時間と共に生じる。焼き入れ温度及びその後の被覆プロセスはまた、ベイナイトが形成することができる「オーステンパー処理」温度にも関連する。焼き入れ温度は、個々の被膜の液相線温度より高く、基材の焼き入れ温度への曝露の結果少なくとも1つの焼き入れされたミクロ組織の形成、及び鋼の被覆の両方が起こる。基材において代りの焼き入れされたミクロ組織が所望であれば、作動温度が焼き入れ温度であることができる。焼き入れ温度は、ミクロ組織を形成するのに必要とされる温度の+/-約20度であることができる。幾つかの実施形態において、焼き入れ温度は、ミクロ組織を形成するのに必要とされる温度から約1°、約5°、約8°、約10°、約12°、約15°、又は約20°以内の温度であることができる。幾つかの実施形態において、焼き入れ温度は、ミクロ組織を形成するのに必要とされる温度の約5°~約10°以内であることができる。幾つかの実施形態において、基材は、ミクロ組織又は代わりのミクロ組織を形成するのに充分な時間焼き入れ温度に曝露することができる。幾つかの実施形態において、時間は、永続反応を始めるのに充分である。幾つかの実施形態において、基材は、部分が平衡温度に到達するのに充分な時間温度に曝露される。当業者には理解されるように、曝露時間は、反応により所望のミクロ組織又は代わりのミクロ組織が生じるのに必要とされる温度及び時間に依存する。幾つかの実施形態において、焼き入れ温度は、ミクロ組織が従来の亜鉛めっき法により必要とされる高い温度に付されることがないので、ミクロ組織に対する損傷を防ぐのに十分なほど充分に低い温度であることができる。
【0029】
「代わりのミクロ組織」又は「代わりの焼き入れされたミクロ組織」は、フェライトを含有する鋼のミクロ組織を炭素時効する際の変化、例えば、マルテンサイトの焼き戻し若しくは形成、オーステンパー処理したベイナイトの改変、又はこれらの組合せに関連している。炭素時効及びマルテンサイト又はベイナイトミクロ組織への改変は各々、それぞれフェライト、マルテンサイト、又はベイナイトを含有する基材の焼き入れ温度に依存する。したがって、これらのミクロ組織の1つ以上を有する基材を所望のミクロ組織(即ち代わりのミクロ組織)に対応する1つ以上の焼き入れ温度に曝すことによってフェライト、マルテンサイト又はベイナイト内のミクロ組織を変更することができる。
【0030】
本発明の1つの態様はある作動温度で金属材料を被覆する方法である。この方法は、金属材料を準備し、次いで金属材料を亜鉛基合金被膜で被覆することを含む。亜鉛基合金被膜は、亜鉛基合金材料及びドーピング材料を含む。この亜鉛基合金被膜(即ち、ドーピング材料を含む亜鉛基合金材料)の液相線温度は、ドーピング材料を含まない亜鉛基合金材料の液相線温度より低い。
【0031】
ドーパントを含まない亜鉛基合金材料の溶融温度又は液相線温度は、不要な実験又は文献調査のいずれかによって決定することができる。例えば、純粋な亜鉛の溶融温度は、約419.5℃である。Zn-Al-Mg合金の液相線温度は、約344.5℃であり、これは下記実施例3で説明するように、実験で、若しくはソフトウェアプログラムを使用して、又は文献を調査して作成した三元相図を用いて決定することができる。先に述べた物質は、Zn-3.9Al-2.45Mgである。この物質の液相線温度は、344.5℃である。個々の亜鉛基合金被膜の溶融温度及び液相線温度は、被膜の組成に依存する。
【0032】
亜鉛基合金材料は、純粋な亜鉛、二元組成物、三元組成物、四元組成物、又は「n元」組成物であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金材料は、限定されることはないが、亜鉛-アルミニウム、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム、亜鉛-マグネシウム、亜鉛-元素(複数可)、又は他の亜鉛基合金材料を含むことができる。本発明に有用な亜鉛基材料は、亜鉛の溶融温度より低い液相線温度を有する。亜鉛基合金材料は、被膜として使用することができる。幾つかの実施形態においては、ドーピング材料を亜鉛基材料と組み合わせて亜鉛基合金被膜を形成するが、これは三元、四元、又は「p」元(ここで、「p」は2~「n」+2の間であることができる)材料であることができる。ドーピング材料(温度降下剤とも呼ばれる)は、マグネシウム、スズ、リチウム、ガリウム、インジウム、銅、チタン、アンチモン、ケイ素、ビスマス、鉛、又はカリウムであることができる。ドーパントの質量分率は、液相線温度を低下させるように選択することができる。図19は、四元Zn-Al-Mg-ドーパント系の液相線温度を決定するために使用される三元状態図を示す。実施例3は、ドーパントの適当な質量分率を決定する方法を提供する。非限定例として、適切な亜鉛基合金被膜(即ちドーピング材料を含む亜鉛基合金材料)は、Zn-aAl-bMg-ドーパント、Zn-bMg-(x)ドーパント、Zn-aAl-(x)ドーパント、Zn-aAl-bMg-(x)ドーパント-(y)ドーパント、Zn-bMg-(x)ドーパント-(y)ドーパント、Zn-aAl-(x)ドーパント-(y)ドーパント、Zn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント、Zn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント-(y)ドーパントを含むことができる。各々の係数(即ち、「a」、「b」、「x」、又は「y」)は、液相線温度が亜鉛の溶融温度より低くなるように選択することができる。幾つかの実施形態において、アルミニウムを含む亜鉛基合金被膜の一般式で、「a」は0~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は3.35~30の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は3.9~16.75の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は6.7~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は0、1、2、3、3.35、3.9、4、6、6.7、7、8、10、10.05、12、13.4、15、16.75、又は20であることができる。マグネシウムの場合、幾つかの実施形態において、「b」は0~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「b」は約0~6.7の間であることができる。幾つかの実施形態において、「b」は0、1、2、2.5、3、3.35、4、又は6.7であることができる。ドーパントについては、幾つかの実施形態において、「x」は0~40の間であることができる。幾つかの実施形態において、「x」は1~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「x」は1~10の間であることができる。同様に、第2又は追加のドーパントを使用するとき、幾つかの実施形態において、特定のドーパントに先行する係数の各々は、0~40の間、1~20の間、又は1~10の間であることができる。
【0033】
亜鉛基合金被膜内のアルミニウムの質量分率は約20%未満であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金被膜内のアルミニウムの質量分率は、約3.35%~約13.4%の間であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金被膜内のアルミニウムの質量分率は、約6.7%より大きく、約20%未満であることができる。亜鉛基合金被膜内のマグネシウムの質量分率は、約10.05%未満であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金被膜内のマグネシウムの質量分率は、約0%~約20%の間であることができる。亜鉛基合金被膜内のドーパントの質量分率は、約60%未満であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金被膜内のドーパントの質量分率は、約7.5%~約12%の間であることができる。本発明の幾つかの実施形態において、ドーパントの質量分率は、約1%~約30%の間であることができる。1種より多くのドーパントを亜鉛基合金被膜内に使用するとき、低下した温度の被膜内の第2~追加のn番目のドーパントの合計質量分率は、約0%~約60%の間であることができる。幾つかの実施形態において、追加のドーパントの合計質量分率は、約1%~約30%の間であることができる。
【0034】
得られた亜鉛基合金被膜は、亜鉛の溶融温度(即ち約419℃)より低い温度であることができる液相線温度を有することができる。亜鉛基合金被膜の液相線温度は、約275℃~約419℃の間であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金被膜の液相線温度は、約279℃~約365℃の間であることができる。
【0035】
金属材料は、鋼又は合金鋼であることができる。適切な合金鋼材料は、限定されることはないが、薄鋼板(steel sheet)、帯鋼、棒鋼、鋼棒、鋼管、鋼線、強化棒鋼、鋼板(plate)、金物類(例えばファスナー)、及びこれらの組合せを含む。特に、本発明は、広範な種類の薄鋼板合金と共に使用することができる。
【0036】
亜鉛基合金被膜は、浸漬又は噴霧することによって金属材料に付けることができる。亜鉛基合金被膜は、付けるのに先立って溶融温度又は液相線温度より高い作動温度に加熱して亜鉛基合金被膜を液化することができる。亜鉛基合金被膜は、例えばASTM A123/A123MのようなASTMに記載の個々の用途に適した任意の厚さで付けることができる。幾つかの実施形態において、被膜の厚さは、約5ミクロン~約200ミクロンの間で適用することができる。
【0037】
金属材料の表面は、被膜の基材への接着力を増大するために処理することができる。表面処理は、例えば、クリーニング、エッチング、機械的磨耗、又は化学エッチングを含むことができる。表面処理は、基材の表面積を増大することができる。
【0038】
本発明の1つの態様は、被覆された基材合金である。被覆された基材合金は、亜鉛基合金被膜で被覆された金属材料を含む。亜鉛基合金被膜は、亜鉛基合金材料、及び少なくとも1種のドーパントを含む。亜鉛基合金被膜の液相線温度は、419℃より低い。
【0039】
基材は金属材料である。金属材料は、鋼又は合金鋼であることができる。適切な合金鋼材料は、限定されることはないが、薄鋼板、帯鋼、棒鋼、鋼棒、鋼管、鋼線、強化棒鋼、鋼板、金物類(例えばファスナー)を含む。特に、本発明は、広範な種類の薄鋼板合金と共に使用することができる。
【0040】
ドーパントを含まない亜鉛基合金材料の溶融温度又は液相線温度は、不要な実験又は文献調査のいずれかにより決定することができる。例えば、純粋な亜鉛の溶融温度は、約419.5℃である。Zn-Al-Mg合金の液相線温度は、約344.5℃であり、これは下記実施例3で説明するように、実験で、若しくはソフトウェアプログラムを使用して、又は文献を調査して作成された三元相図を用いて決定することができる。先に述べた材料は、Zn-3.9Al-2.45Mgである。この材料の液相線温度は、344.5℃である。個々の亜鉛基合金被膜の溶融温度及び液相線温度は、被膜の組成に依存する。
【0041】
亜鉛基合金材料は、純粋な亜鉛、二元組成物、三元組成物、四元組成物、又は「n元」組成物であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金材料は、限定されることはないが、亜鉛-アルミニウム、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム、亜鉛-マグネシウム、亜鉛-元素(複数可)、又は他の亜鉛基合金材料を含むことができる。本発明に有用な亜鉛基材料は、亜鉛の溶融温度より低い液相線温度を有する。亜鉛基合金材料は、被膜として使用することができる。幾つかの実施形態においては、ドーピング材料を亜鉛基材料と組み合わせて亜鉛基合金被膜を形成し、これは三元、四元、又は「p」元(ここで、「p」は2~「n」+2の間であることができる)材料であることができる。ドーピング材料(温度降下剤とも呼ばれる)は、マグネシウム、スズ、リチウム、ガリウム、インジウム、銅、チタン、アンチモン、ケイ素、ビスマス、鉛、又はカリウムであることができる。ドーパントの質量分率は、液相線温度を低下させるように選択することができる。図19は、四元Zn-Al-Mg-ドーパント系の液相線温度を決定するために使用される三元状態図を示す。実施例3はドーパントの適当な質量分率を決定する方法を提供する。非限定例として、適切な亜鉛基合金被膜(即ち、ドーピング材料を含む亜鉛基合金材料)はZn-aAl-bMg-ドーパント、Zn-bMg-(x)ドーパント、Zn-aAl-(x)ドーパント、Zn-aAl-bMg-(x)ドーパント-(y)ドーパント、Zn-bMg-(x)ドーパント-(y)ドーパント、Zn-aAl-(x)ドーパント-(y)ドーパント、Zn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント、Zn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント-(y)ドーパントを含むことができる。各々の係数(即ち、「a」、「b」、「x」、又は「y」)は、液相線温度が亜鉛の溶融温度より低くなるように選択することができる。幾つかの実施形態において、アルミニウムを含む亜鉛基合金被膜の一般式で、「a」は0~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は3.35~30の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は3.9~16.75の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は6.7~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は0、1、2、3、3.35、3.9、4、6、6.7、7、8、10、10.05、12、13.4、15、16.75、又は20であることができる。マグネシウムの場合、幾つかの実施形態において、「b」は0~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「b」は約0~6.7の間であることができる。幾つかの実施形態において、「b」は0、1、2、2.5、3、3.35、4、又は6.7であることができる。ドーパントについては、幾つかの実施形態において、「x」は0~40の間であることができる。幾つかの実施形態において、「x」は1~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「x」は1~10の間であることができる。同様に、第2又は追加のドーパントが使用されるとき、幾つかの実施形態において、具体的なドーパントに先行する各々の係数は、0~40の間、1~20の間、又は1~10の間であることができる。
【0042】
亜鉛基合金被膜内のアルミニウムの質量分率は、約20%未満であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金被膜内のアルミニウムの質量分率は、約3.35%~約13.4%の間であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金被膜内のアルミニウムの質量分率は、約6.7%より大きく、約20%未満であることができる。亜鉛基合金被膜内のマグネシウムの質量分率は、約10.05%未満であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金被膜内のマグネシウムの質量分率は、約0%~約20%の間であることができる。亜鉛基合金被膜内のドーパントの質量分率は、約60%未満であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金被膜内のドーパントの質量分率は、約7.5%~約12%の間であることができる。本発明の幾つかの実施形態において、ドーパントの質量分率は、約1%~約30%の間であることができる。1種より多くのドーパントを亜鉛基合金被膜内に使用するとき、低下した温度の被膜内の第2~追加のn番目のドーパントの合計質量分率は、約0%~約60%の間であることができる。幾つかの実施形態において、追加のドーパントの合計質量分率は、約1%~約30%の間であることができる。
【0043】
得られた亜鉛基合金被膜は、亜鉛の溶融温度(即ち約419℃)未満であることができる液相線温度を有することができる。亜鉛基合金被膜の液相線温度は、約275℃~約419℃の間であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金被膜の液相線温度は、約279℃~約365℃の間であることができる。
【0044】
亜鉛基合金被膜は、例えばASTM A123/A123MのようなASTMに記載の個々の用途に適した任意の厚さで付けることができる。幾つかの実施形態において、被膜の厚さは、約5ミクロン~約200ミクロンの間で適用することができる。
【0045】
被覆された基材合金は、有利には、従来通り高温(即ち420℃超)で被覆された基材と比較して(例えば引張試験により)炭素時効されない。被覆された基材合金はまた、従来通り被覆された基材と比較して改良された耐食性を有することもできる。本発明の被覆された基材の耐食性は、基材に対して充分な保護を提供することができる。
【0046】
本発明の1つの態様は、二元亜鉛合金である。二元亜鉛合金は、亜鉛及び第2の材料を含む。第2の材料の質量分率は、最大で約70%であり、亜鉛の質量分率は、少なくとも約30%である。二元亜鉛合金は、亜鉛の溶融温度より低い液相線温度を有する。
【0047】
第2の材料は、アルミニウム、マグネシウム又はスズであることができる。二元亜鉛合金の液相線温度は、約390℃未満であることができる。幾つかの実施形態において、二元亜鉛合金の液相線温度は、約375℃~約390℃の間であることができる。
【0048】
本発明の1つの態様は、亜鉛めっきのための亜鉛基合金被膜の液相線温度を低下させる方法である。この方法は、亜鉛基合金をドーパントと組み合わせることを含む。ドーパントは、アルミニウム、マグネシウム、銅、チタン、アンチモン、ケイ素、ビスマス、ガリウム、インジウム、スズ、鉛、リチウム、カリウム又はこれらの組合せからなる群から選択される。亜鉛基合金被膜の液相線温度は、亜鉛の溶融温度より低い。
【0049】
亜鉛基合金材料は、純粋な亜鉛、二元組成物、三元組成物、四元組成物、又は「n元」組成物であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金材料は、限定されることはないが、亜鉛-アルミニウム、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム、亜鉛-マグネシウム、亜鉛-元素(複数可)、又はその他の亜鉛基合金材料を含むことができる。本発明に有用な亜鉛基材料は、亜鉛の溶融温度より低い液相線温度を有する。亜鉛基合金材料は、被膜として使用することができる。幾つかの実施形態においては、ドーピング材料を亜鉛基材料と組み合わせて亜鉛基合金被膜を形成し、これは三元、四元、又は「p」元(ここで、「p」は2~「n」+2の間であることができる)材料であることができる。ドーピング材料(温度降下剤とも呼ばれる)は、マグネシウム、スズ、リチウム、ガリウム、インジウム、銅、チタン、アンチモン、ケイ素、ビスマス、鉛、又はカリウムであることができる。ドーパントの質量分率は、液相線温度を低下させるように選択することができる。図19は、四元のZn-Al-Mg-ドーパント系の液相線温度を決定するために使用される三元状態図を示す。実施例3は、ドーパントの適当な質量分率を決定する方法を提供する。非限定例として、適切な亜鉛基合金被膜(即ち、ドーピング材料を含む亜鉛基合金材料)はZn-aAl-bMg-ドーパント、Zn-bMg-(x)ドーパント、Zn-aAl-(x)ドーパント、Zn-aAl-bMg-(x)ドーパント-(y)ドーパント、Zn-bMg-(x)ドーパント-(y)ドーパント、Zn-aAl-(x)ドーパント-(y)ドーパント、Zn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント、Zn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント-(y)ドーパントを含むことができる。各々の係数(即ち、「a」、「b」、「x」、又は「y」)は、液相線温度が亜鉛の溶融温度より低くなるように選択することができる。幾つかの実施形態において、アルミニウムを含む亜鉛基合金被膜の一般式で、「a」は0~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は3.35~30の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は3.9~16.75の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は6.7~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は0、1、2、3、3.35、3.9、4、6、6.7、7、8、10、10.05、12、13.4、15、16.75、又は20であることができる。マグネシウムの場合、幾つかの実施形態において、「b」は0~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「b」は約0~6.7の間であることができる。幾つかの実施形態において、「b」は0、1、2、2.5、3、3.35、4、又は6.7である。ドーパントについては、幾つかの実施形態において、「x」は0~40の間であることができる。幾つかの実施形態において、「x」は1~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「x」は1~10の間であることができる。同様に、第2又は追加のドーパントが使用されるとき、幾つかの実施形態において、具体的なドーパントに先行する各々の係数は、0~40の間、1~20の間、又は1~10の間であることができる。
【0050】
亜鉛基合金被膜内のアルミニウムの質量分率は、約20%未満であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金被膜内のアルミニウムの質量分率は、約3.35%~約13.4%の間であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金被膜内のアルミニウムの質量分率は、約6.7%より大きく、約20%未満であることができる。亜鉛基合金被膜内のマグネシウムの質量分率は、約10.05%未満であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金被膜内のマグネシウムの質量分率は、約0%~約20%の間であることができる。亜鉛基合金被膜内のドーパントの質量分率は、約60%未満であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金被膜内のドーパントの質量分率は、約7.5%~約12%の間であることができる。本発明の幾つかの実施形態において、ドーパントの質量分率は、約1%~約30%の間であることができる。1種より多くのドーパントを亜鉛基合金被膜内に使用するとき、低下した温度の被膜内の第2~追加のn番目のドーパントの合計質量分率は約0%~約60%の間であることができる。幾つかの実施形態において、追加のドーパントの合計質量分率は、約1%~約30%の間であることができる。
【0051】
ドーパントを含まない亜鉛基合金材料の溶融温度又は液相線温度は、不要な実験又は文献の調査のいずれかにより決定することができる。例えば、純粋な亜鉛の溶融温度は、約419.5℃である。Zn-Al-Mg合金の液相線温度は、約344.5℃であり、これは下記実施例3で説明するように、実験で、若しくはソフトウェアプログラムを使用して、又は文献を調査して作成された三元相図を用いて決定することができる。先に述べた材料はZn-3.9Al-2.45Mgである。この材料の液相線温度は、344.5℃である。個々の亜鉛基合金被膜の溶融温度及び液相線温度は、被膜の組成に依存する。亜鉛基合金被膜の液相線温度は、約420℃未満であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛合金の液相線温度は、約279℃~約419℃の間であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金被膜の液相線温度は、約279℃~約365℃の間であることができる。
【0052】
本発明の亜鉛めっき被膜の1つの利点は、合金鋼基材における炭素時効を防止又は低減することができることである。本発明の亜鉛基合金被膜の別の利点は、この新しい被膜材料の耐食性が、ドーパントを含まない従来の亜鉛合金材料より良好ではないとしても、同程度に良好であることができるということである。したがって、本発明の実施形態は、耐食性が従来の亜鉛被膜(即ち、例えば本発明のドーパントを含まない亜鉛被膜を含む、従来の亜鉛被膜)の耐食性より良好である、本発明の亜鉛基合金被膜を含む被覆された合金鋼基材に関する。もう1つ別の利点は、被覆された材料の(焼き入れ及びパーティショニングにおいて重大であるような)マルテンサイト形成及びオーステンパー処理がより低い温度で起こることができるということである。この温度は、約279℃~約419℃の間であることができる。本発明のもう1つ別の利点は、マルテンサイト焼き戻しが制限又は制御されることである。マルテンサイトは冷却の際に形成する硬い相である。焼き戻しは、マルテンサイトを軟化して、その靭性又は成形性を増大する熱的処理である。(冷却工程をプロセスに組み入れるように設計し、次いで被覆する前に再加熱することにより、又はより低いコーティング浴温度を使用することにより)被覆前にマルテンサイトが形成される場合、焼き入れ温度はより低い焼き戻し温度を提供する。
【0053】
本発明のもう1つ別の態様は、鋼基材内に代わりのミクロ組織を形成するための低温被覆プロセスである。従来技術の方法と比較して、コーティング浴への浸漬中のマルテンサイトへの変態がより低い浴温度で促進され、より低い(ベイナイトを形成する)オーステンパー処理温度が可能であり、高強度の形成可能なミクロ組織及び/又は代わりのミクロ組織の形成が可能になる。
【0054】
被膜は、亜鉛の溶融温度(即ち約419℃)未満であることができる液相線温度を有することができる。被膜の液相線温度は、約275℃~約419℃の間であることができる。幾つかの実施形態において、被膜の液相線温度は、約279℃~約365℃の間であることができる。
【0055】
幾つかの実施形態において、被膜は、亜鉛基材料であることができ、かつドーピング材料を含むことができ、これは三元、四元、又は「p」元材料であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金材料は、限定されることはないが、亜鉛-アルミニウム、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム、亜鉛-マグネシウム、亜鉛-元素(複数可)、又はその他の亜鉛基合金材料を含むことができる。本発明に有用な亜鉛基材料は、亜鉛の溶融温度より低い液相線温度を有する。亜鉛基合金材料は、被膜として使用することができる。亜鉛基材料をドーパントと組み合わせて被膜を形成することができる。ドーピング材料(温度降下剤とも呼ばれる)は、マグネシウム、スズ、リチウム、ガリウム、インジウム、銅、チタン、アンチモン、ケイ素、ビスマス、鉛、又はカリウムであることができる。ドーパントの質量分率は、液相線温度を低下させるように選択することができる。図19は、四元のZn-Al-Mg-ドーパント系の液相線温度を決定するのに使用される三元状態図を示す。実施例3は、ドーパントの適当な質量分率を決定する方法を提供する。非限定例として、適切な亜鉛基合金被膜(即ち、ドーピング材料を含む亜鉛基合金材料)は、Zn-aAl-bMg-ドーパント、Zn-bMg-(x)ドーパント、Zn-aAl-(x)ドーパント、Zn-aAl-bMg-(x)ドーパント-(y)ドーパント、Zn-bMg-(x)ドーパント-(y)ドーパント、Zn-aAl-(x)ドーパント-(y)ドーパント、Zn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント、Zn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント-(y)ドーパントを含むことができる。各々の係数(即ち、「a」、「b」、「x」、又は「y」)は、液相線温度が亜鉛の溶融温度未満であるように選択することができる。幾つかの実施形態において、アルミニウムを含む亜鉛基合金被膜の一般式で、「a」は0~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は3.35~30の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は3.9~16.75の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は6.7~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は0、1、2、3、3.35、3.9、4、6、6.7、7、8、10、10.05、12、13.4、15、16.75、又は20であることができる。マグネシウムの場合、幾つかの実施形態において、「b」は0~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「b」は約0~6.7の間であることができる。幾つかの実施形態において、「b」は0、1、2、2.5、3、3.35、4、又は6.7であることができる。ドーパントについては、幾つかの実施形態において、「x」は0~40の間であることができる。幾つかの実施形態において、「x」は1~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「x」は1~10の間であることができる。同様に、第2又は追加のドーパントを使用するとき、幾つかの実施形態において、具体的なドーパントに先行する各々の係数は、0~40の間、1~20の間、又は1~10の間であることができる。
【0056】
被膜内のアルミニウムの質量分率は、約20%未満であることができる。幾つかの実施形態において、被膜内のアルミニウムの質量分率は、約3.35%~約13.4%の間であることができる。幾つかの実施形態において、被膜内のアルミニウムの質量分率は、約6.7%より大きく、約20%未満であることができる。被膜内のマグネシウムの質量分率は、約10.05%未満であることができる。幾つかの実施形態において、被膜内のマグネシウムの質量分率は、約0%~約20%の間であることができる。被膜内のドーパントの質量分率は、約12%未満であることができる。幾つかの実施形態において、被膜内のドーパントの質量分率は、約7.5%~約12%の間であることができる。1種より多くのドーパントを被膜内に使用するとき、被膜内の第2~追加のn番目のドーパントの合計質量分率は、約0%~約30%の間であることができる。
【0057】
本発明のもう1つ別の態様は、従来のプロセスを使用して可能なミクロ組織ではなく代わりのミクロ組織を形成しながら鋼基材を被覆する方法である。例えば、従来のプロセス中に形成されるミクロ組織は、ベイナイトの形成、プロセスのその工程における未変態オーステナイトの保持、又は鋼内においてフェライト、パーライト若しくはマルテンサイトのような別のミクロ組織のいずれかをもたらすことができる。この方法は、合金鋼材料を準備し、その合金鋼材料を亜鉛基合金被膜で被覆することを含む。亜鉛基合金被膜を付ける作動温度は、少なくとも1種の代わりのミクロ組織を形成する合金鋼材料の焼き入れ温度である。代わりのミクロ組織は、鋼基材において従来のプロセス中に形成するミクロ組織とは異なる。
【0058】
適切な合金鋼材料は、限定されることはないが、薄鋼板、帯鋼、棒鋼、鋼棒、鋼管、鋼線、強化棒鋼、鋼板、金物類(例えばファスナー)を含む。特に、本発明は、広範な種類の薄鋼板合金と共に使用することができる。
【0059】
亜鉛基合金材料は、被膜として使用することができる。亜鉛基合金材料は、純粋な亜鉛、二元組成物、三元組成物、四元組成物、又は「n元」組成物であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金材料は、限定されることはないが、亜鉛-アルミニウム、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム、亜鉛-マグネシウム、亜鉛-元素(複数可)、又は他の亜鉛基合金材料を含むことができる。本発明に有用な亜鉛基材料は、亜鉛の溶融温度より低い液相線温度を有する。
【0060】
幾つかの実施形態においては、ドーピング材料を亜鉛基材料と組み合わせて被膜を形成し、これは三元、四元、又は「p」元(ここで、「p」は2~「n」+2の間であることができる)材料であることができる。ドーピング材料(温度降下剤とも呼ばれる)は、マグネシウム、スズ、リチウム、ガリウム、インジウム、銅、チタン、アンチモン、ケイ素、ビスマス、鉛、又はカリウムであることができる。ドーパントの質量分率は、液相線温度を低下させるように選択することができる。図19は、四元のZn-Al-Mg-ドーパント系の液相線温度を決定するために使用される三元状態図を示す。実施例3は、ドーパントの適当な質量分率を決定する方法を提供する。非限定例として、亜鉛基合金被膜(即ち、ドーピング材料を含む亜鉛基合金材料)である適切な被膜は、Zn-aAl-bMg-ドーパント、Zn-bMg-(x)ドーパント、Zn-aAl-(x)ドーパント、Zn-aAl-bMg-(x)ドーパント-(y)ドーパント、Zn-bMg-(x)ドーパント-(y)ドーパント、Zn-aAl-(x)ドーパント-(y)ドーパント、Zn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント、Zn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント-(y)ドーパントを含むことができる。各々の係数(即ち、「a」、「b」、「x」、又は「y」)は、液相線温度が亜鉛の溶融温度より低くなるように選択することができる。幾つかの実施形態において、アルミニウムを含む亜鉛基合金被膜の一般式で、「a」は0~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は3.35~30の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は3.9~16.75の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は6.7~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は0、1、2、3、3.35、3.9、4、6、6.7、7、8、10、10.05、12、13.4、15、16.75、又は20であることができる。マグネシウムの場合、幾つかの実施形態において、「b」は0~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「b」は約0~6.7の間であることができる。幾つかの実施形態において、「b」は0、1、2、2.5、3、3.35、4、又は6.7であることができる。ドーパントについては、幾つかの実施形態において、「x」は0~40の間であることができる。同様に、第2又は追加のドーパントが使用されるとき、幾つかの実施形態において、具体的なドーパントに先行する各々の係数は、0~40の間であることができる。
【0061】
被膜内のアルミニウムの質量分率は、約20%未満であることができる。幾つかの実施形態において、被膜内のアルミニウムの質量分率は、約3.35%~約13.4%の間であることができる。幾つかの実施形態において、被膜内のアルミニウムの質量分率は、約6.7%より大きく、約20%未満であることができる。被膜内のマグネシウムの質量分率は、約10.05%未満であることができる。幾つかの実施形態において、被膜内のマグネシウムの質量分率は、約0%~約20%の間であることができる。被膜内のドーパントの質量分率は、約12%未満であることができる。幾つかの実施形態において、被膜内のドーパントの質量分率は、約7.5%~約12%の間であることができる。1種より多くのドーパントが被膜内に使用されるとき、被膜内の第2~追加のn番目のドーパントの合計質量分率は、約0%~約30%の間であることができる。
【0062】
ドーパントを含まない亜鉛基合金材料の溶融温度又は液相線温度は、不要な実験又は文献調査のいずれかにより決定することができる。例えば、純粋な亜鉛の溶融温度は、約419.5℃である。Zn-Al-Mg合金の液相線温度は、約344.5℃であり、これは下記実施例3で説明するように、実験で、若しくはソフトウェアプログラムを使用して、又は文献を調査して作成した三元相図を用いて決定することができる。先に述べた材料はZn-3.9Al-2.45Mgである。この材料の液相線温度は、344.5℃である。個々の被膜の溶融温度及び液相線温度は、被膜の組成に依存する。液相線温度は、室温(即ち25℃)より高いが、419℃より低い温度である。したがって、基材を液相線温度に曝露すると、基材の被覆が可能になるばかりでなく、少なくとも1種の代わりのミクロ組織を形成する基材材料の熱処理も提供される。この代わりのミクロ組織は、鋼基材の従来の処理の間に形成されるミクロ組織とは異なる。
【0063】
代わりのミクロ組織は、例えば、マルテンサイト、ベイナイト、個々の鋼基材に対する炭素時効に関連するミクロ組織、及びこれらの組合せからなる群から選択されることができる。他の状況において、代わりのミクロ組織の特徴は、より微細な規模で、炭素時効又はマルテンサイト焼き戻しにおける差に関連する。幾つかの実施形態において、被覆された基材を第2の焼き入れ温度に曝露して、合金鋼内に第2のミクロ組織を形成することができる。例えば、従来の処理中に形成されるミクロ組織は、ベイナイトの形成、プロセス内のその工程における未変態オーステナイトの保持、又は鋼内におけるフェライト、パーライト若しくはマルテンサイトのような別のミクロ組織のいずれかをもたらすことができる。
【0064】
被膜は、浸漬又は噴霧することによって金属材料に付けることができる。被膜は、付ける前に、溶融温度又は液相線温度より高い作動温度に加熱して被膜を液化することができる。被膜は、例えばASTM A123/A123MのようなASTMに記載の個々の用途に適した任意の厚さで付けることができる。幾つかの実施形態において、被膜の厚さは、約5ミクロン~約200ミクロンの間で適用することができる。
【0065】
金属材料の表面は、被膜の基材への接着力を増大するように処理することができる。表面処理は、例えば、クリーニング、エッチング、機械的磨耗、又は化学エッチングを含むことができる。表面処理は、基材の表面積を増大することができる。
【0066】
本発明のもう1つ別の態様は、代わりのミクロ組織を有する被覆された合金鋼である。被覆された合金鋼は、亜鉛基合金被膜及び合金鋼基材を含む。鋼基材を鋼の焼き入れ温度で(液体としての)被膜に曝露して、被覆鋼内に代わりのミクロ組織を形成させる。
【0067】
適切な合金鋼材料は、限定されることはないが、薄鋼板、帯鋼、棒鋼、鋼棒、鋼管、鋼線、強化棒鋼、鋼板、金物類(例えばファスナー)を含む。特に、本発明は広範な種類の薄鋼板合金と共に使用することができる。
【0068】
亜鉛基合金材料は、被膜として使用することができる。亜鉛基合金材料は、純粋な亜鉛、二元組成物、三元組成物、四元組成物、又は「n元」組成物であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金材料は、限定されることはないが、亜鉛-アルミニウム、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム、亜鉛-マグネシウム、亜鉛-元素(複数可)、又は他の亜鉛基合金材料を含むことができる。本発明に有用な亜鉛基材料は、亜鉛の溶融温度より低い液相線温度を有する。幾つかの実施形態においては、ドーピング材料を亜鉛基材料と組み合わせて亜鉛基合金被膜を形成し、これは三元、四元、又は「p」元(ここで、「p」は2~「n」+2の間であることができる)材料であることができる。ドーピング材料(温度降下剤とも呼ばれる)は、マグネシウム、スズ、リチウム、ガリウム、インジウム、銅、チタン、アンチモン、ケイ素、ビスマス、鉛、又はカリウムであることができる。ドーパントの質量分率は、液相線温度を低下させるように選択することができる。図19は、四元のZn-Al-Mg-ドーパント系の液相線温度を決定するために使用される三元状態図を示す。実施例3は、ドーパントの適当な質量分率を決定する方法を提供する。非限定例として、適切な亜鉛基合金被膜(即ち、ドーピング材料を含む亜鉛基合金材料)はZn-aAl-bMg-ドーパント、Zn-bMg-(x)ドーパント、Zn-aAl-(x)ドーパント、Zn-aAl-bMg-(x)ドーパント-(y)ドーパント、Zn-bMg-(x)ドーパント-(y)ドーパント、Zn-aAl-(x)ドーパント-(y)ドーパント、Zn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント、Zn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント-(y)ドーパントを含むことができる。各々の係数(即ち、「a」、「b」、「x」、又は「y」)は、液相線温度が亜鉛の溶融温度より低くなるように選択することができる。幾つかの実施形態において、アルミニウムを含む亜鉛基合金被膜の一般式で、「a」は0~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は3.35~30の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は3.9~16.75の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は6.7~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「a」は0、1、2、3、3.35、3.9、4、6、6.7、7、8、10、10.05、12、13.4、15、16.75、又は20であることができる。マグネシウムの場合、幾つかの実施形態において、「b」は0~20の間であることができる。幾つかの実施形態において、「b」は約0~6.7の間であることができる。幾つかの実施形態において、「b」は0、1、2、2.5、3、3.35、4、又は6.7であることができる。ドーパントについては、幾つかの実施形態において、「x」は0~40の間であることができる。同様に、第2又は追加のドーパントが使用されるとき、幾つかの実施形態において、具体的なドーパントに先行する各々の係数は、0~40の間であることができる。
【0069】
亜鉛基合金被膜内のアルミニウムの質量分率は、約20%未満であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金被膜内のアルミニウムの質量分率は、約3.35%~約13.4%の間であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金被膜内のアルミニウムの質量分率は、約6.7%より大きく、約20%未満であることができる。亜鉛基合金被膜内のマグネシウムの質量分率は、約10.05%未満であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金被膜内のマグネシウムの質量分率は、約0%~約20%の間であることができる。亜鉛基合金被膜内のドーパントの質量分率は、約60%未満であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金被膜内のドーパントの質量分率は、約7.5%~約12%の間であることができる。本発明の幾つかの実施形態において、ドーパントの質量分率は、約1%~約30%の間であることができる。1種より多くのドーパントが亜鉛基合金被膜内に使用されるとき、低下した温度の被膜内の第2~追加のn番目のドーパントの合計質量分率は、約0%~約60%の間であることができる。幾つかの実施形態において、追加のドーパントの合計質量分率は、約1%~約30%の間であることができる。
【0070】
得られる亜鉛基合金被膜は、亜鉛の溶融温度(即ち約419℃)未満であることができる液相線温度を有することができる。亜鉛基合金被膜の液相線温度は、約275℃~約419℃の間であることができる。幾つかの実施形態において、亜鉛基合金被膜の液相線温度は、約279℃~約365℃の間であることができる。ドーパントを含まない亜鉛基合金材料の溶融温度又は液相線温度は、不要な実験又は文献調査のいずれかにより決定することができる。例えば、純粋な亜鉛の溶融温度は、約419.5℃である。Zn-Al-Mg合金の液相線温度は、約344.5℃であり、これは下記実施例3で説明するように、実験で、若しくはソフトウェアプログラムを使用して、又は文献を調査して作成された三元相図を用いて決定することができる。先に述べた材料はZn-3.9Al-2.45Mgである。この材料の液相線温度は、344.5℃である。個々の亜鉛基合金被膜の溶融温度及び液相線温度は、被膜の組成に依存する。
【0071】
亜鉛基合金被膜は、浸漬又は噴霧することによって金属材料に付けることができる。亜鉛基合金被膜は、付けるのに先立って、溶融温度又は液相線温度より高い作動温度に加熱して亜鉛基合金被膜を液化することができる。亜鉛基合金被膜は、例えばASTM A123/A123MのようなASTMに記載の個々の用途に適した任意の厚さで付けることができる。幾つかの実施形態において、被膜の厚さは、約5ミクロン~約200ミクロンで適用することができる。
【0072】
代わりのミクロ組織は、例えば、マルテンサイト、ベイナイト、個々の鋼基材に対する炭素時効に関連するミクロ組織、及びこれらの組合せからなる群から選択されることができる。他の状況において、代わりのミクロ組織の特徴は、より微細な規模で、炭素時効又はマルテンサイト焼き戻しにおける差に関連する。幾つかの実施形態において、被覆された基材を第2の焼き入れ温度に曝露して、合金鋼内に第2のミクロ組織を形成することができる。例えば、従来の処理中に形成されるミクロ組織は、ベイナイトの形成、プロセスのその工程における未変態オーステナイトの保持、又は鋼内におけるフェライト、パーライト若しくはマルテンサイトのような別のミクロ組織をもたらすことができる。
【0073】
[実施例]
[実施例1]
図1は、Thermo-Calc Softwareを使用して作成した異なるモル分率における亜鉛-アルミニウム-マグネシウム系の三元グラフを示す。グラフ中の温度は、Kelvinである。共晶温度は、630Kより低い。図2は、図1と比較するための文献(P.LiangらThermochimica Acta,314 (1998) 87~110)からのZn-Al-Mg系の三元グラフを提供する。図2の温度は、セ氏である。図3Aは、モル分率におけるZn-Al-Mg系の液相線投影を示し、一方、図3Bは、質量分率におけるZn-Al-Mg系の液相線投影を示す。図4A~4Dは、異なる温度における等温断面図(質量分率)を示す。図4Aは、Zn-Al-Mg系の液相面を示す。Zn-Al-Mg系の共晶点は、Zn-3.9Al-2.45Mgに対して約344.5℃(約617.5K)である。約357℃(約630K)におけるZn-Al-Mgに対する液体点は、図4Bのグラフに示されている。図4Cは、約347℃(約620K)におけるZn-Al-Mgに対する液体点を示す。図4Dは、約345℃(約618K)におけるZn-Al-Mgに対する液体点を示す。図4B~4Dに示されているように、液体状態の面積は、この材料に対する温度が低下するにつれて低下する。
【0074】
Scheil式を使用してZn-Al-Mg系の液相線温度を決定することができる。この式で計算されたZn-3.9Al-2.45Mgの液相線温度は、約344.5℃である。Zn-4Al-3Mg-8Snに対する液相線温度は、Scheil式を使用して約330℃と計算された。
【0075】
[実施例2]
潜在的な四元系に対する液相線温度は、出発点として三元の結果を使用して評価することができる。幾つかのドーパントがZn-Al-Mgとの組合せのために考察された。ドーパントは銅、チタン、アンチモン、スズ、ビスマス、ガリウム、及びインジウムを含む。Zn-Al-Mg-Tiに対する液相線温度は、約350℃より高い可能性があり、したがって、被膜の液相線温度を低下させる利益を提供しない。
【0076】
図5~8は各々、個々の元素(即ちSn、Bi、Ga、Cu又はIn)について様々な質量百分率に対する液体相及び個々の組成物に対する溶融温度を示す。図5は、Al及びMgの分率を一定に保ったZn-3.9Al-2.45Mg-xSnに対する相図を示す。図6は、Al及びMgの分率を一定に保ったZn-3.9Al-2.45Mg-xBiに対する相図を示す。図7は、Al及びMgの分率を一定に保ったZn-3.9Al-2.45Mg-xGaに対する相図を示す。図8は、Al及びMgの分率を一定に保ったZn-3.9Al-2.45Mg-xInに対する相図を示す。
【0077】
図9は、4種のドーピング材料についてパーセントで表した様々な質量分率に対する液相線温度を示す。スズは様々な質量分率に対して最も低い液相線温度を示した。図10~17は、本発明と共に使用することができる他のZn-Al-Mg-ドーパント系を示す。図10は、Zn-4Al-xMg-8Snにおけるマグネシウムの様々な質量分率に対する液相線温度を示す。液相線温度はマグネシウムの質量分率がおよそ10となったとき約500℃に近付く。図11は、Zn-xAl-3Mg-8Sn系におけるアルミニウムの様々な質量分率に対する液相線温度を示す。Zn-xAl-3Mg-8Sn系の液相線温度は、アルミニウムの質量分率が約0.5%~約15.5%の間であるとき、約350℃より低い。図12は、Zn-7Al-3Mg-xSnにおけるスズの様々な質量分率に対する液相線温度を示す。液相線温度は、スズの質量分率が約0.5%~約12%の間であったとき、約360℃より低かった。図13は、Zn-15Al-1Mg-xSn系におけるSnの様々な質量分率に対する液相線温度を示す。液相線温度は、質量分率が約0.5%~約19%の間であるとき、約350℃より低い。図14は、Zn-xAl-3Mg-10Ga系について、アルミニウムの質量分率が約0.5%~約10%の間であるとき、約415℃より低い液相線温度を示す。図15は、Zn-4Al-xMg-10Gaにおいて質量分率が約1%~約4%の間であるとき、液相線温度が約420℃より低いことを示す。図16は、Zn-3.5Al-xMg-6Inにおいて約1%~約5%の間のマグネシウムの質量分率に対して、液相線温度が約475℃より低いことを示す。図17は、Zn-xAl-2.5Mg-6Inにおいて約1%~約6%の間のアルミニウムの質量分率に対して、液相線温度が約375℃より低いことを示す。
【0078】
表1は、異なる組成(wt.%)のZn-Al-Mg-ドーパント系に対する様々な液相線温度が約300℃程度に低い液相線温度を有することができることを示しており、これは亜鉛めっきに使用することができる。表1の温度は近似値である。
【0079】
【表1】
【0080】
図18は、Zn-3.9Al-2.45Mg-ドーパント系における幾つかのドーパントについて様々な質量分率に対する液相線温度を示す。また、図18には、純粋な亜鉛に対する溶融温度及びZn-3.9Al-2.45Mgに対する液相線温度も含まれている。Zn-3.9Al-2.45Mg-ドーパント系について、鉛、銀、アンチモン、カリウム及びビスマスを添加したら、Zn-3.9Al-2.45Mg-ドーパント系の液体温度が上昇した。ガリウム、インジウム、スズ又はリチウムを添加すると、Zn-3.9Al-2.45Mg-ドーパント系で特定の組成において液相線温度が低下した。スズ又はリチウムの添加は、ガリウム又はインジウムと比較して、Zn-3.9Al-2.45Mg-ドーパント系の液相線温度を低下させる上でより効果的であった。
【0081】
[実施例3]
以下の方法を利用して、様々なZn-Al-Mg-ドーパント系に対する液相線温度を決定した。図19は、四元Zn-Al-Mg-ドーパント系の液相線温度を決定するのに使用した三元状態図を示す。最初に、Zn-Al-Mg三元状態図をより小さい正三角形により分割した後、ドーパント(例えばドーパントとしてのスズ)を添加した四元合金の液相線温度を計算するための点を選択した。次に、各四元合金の液体の計算された体積分率が100%であった温度をその四元合金の液相線温度として決定した。計算は、Zn-Al-Mg系の共晶温度付近の点から始めた。四元合金の温度が約344.5℃より低いとき、この温度付近の追加の点を計算する。例えば、Thermo Calcのようなソフトウェアをこれらの計算に使用することができる。
【0082】
高次の合金系(例えば四元系)に対して、計算の良好な出発点は、多成分系における相平衡を見出すのに効果的であることができる。例えば、四元のZn-Al-Mg-Snの計算のために良好な出発点はより低次の系(即ちZn-Al-Snの三元共晶)に属する不動点に近い平衡である。四元合金の最低の液相線温度がより低次の系の共晶点付近で起こらなければならないということは保証されない。
【0083】
[実施例4]
本発明の発明を例証するために様々なZn-Al-Mg-Sn系について実験を実施し、計算した。当業者には理解されるように、スズに加えて他のドーパントを使用することができ、不要な実験をすることなく液相線温度を計算することができる。
【0084】
図20~23は、Zn-Al-Mg-Sn系でアルミニウム及びマグネシウムの様々な重量百分率についてスズの様々な質量分率に対する液相線温度を示す。例えば、[0、20]という表現は、Zn-0Al-20Mg-xSn系に対応する。図21は、Zn-Al-Mg-Sn系でアルミニウム及びマグネシウムの様々な重量パーセントについてスズの様々な質量分率に対する液相線温度を示し、ここでマグネシウムの量は、6.7wt.%である。図22は、Zn-Al-Mg-Sn系でアルミニウム及びマグネシウムの様々な重量百分率についてスズの様々な質量分率に対する液相線温度を示し、ここでマグネシウムの量は、3.35wt.%である。図23は、Zn-Al-Sn系(即ちマグネシウムは0wt.%である)でアルミニウム及びマグネシウムのスズの様々な質量分率に対する液相線温度を示す。
【0085】
マグネシウムのより高い分率は、図20に示されているように約1%~約30%の範囲のスズ質量分率でZn-Al-Mg-Sn合金のより高い液体温度となる。一定のMg(図21に示されている6.67wt.%)を含むZn-Al-Mg-Sn合金の場合、合金がZn-20Al-6.7Mgでない限り、アルミニウムの分率を増大させると、合金の液相線温度を低下させることができる。図20及び21は、特にSnの質量分率が約12%未満であるとき、スズがZn-Al-Mg-Sn合金の液相線温度を低下させることに有利であることを示している。
【0086】
一定のMg分率(3.35wt.%)を有するZn-Al-Mg-Sn合金の場合、図22に示されているように、アルミニウムの分率を低減すると、合金の液相線温度を大きく低下させることができる。マグネシウムを含まないZn-Al-Mg-Sn合金の場合、図23に示されているように、アルミニウムの分率を増大させると、合金の液体温度を低下させることができる。
【0087】
図20~23から、マグネシウムのより低い分率は、Zn-Al-Mg-Sn合金の液相線温度を低下させることに有利であることを理解することができる。図24は、図20~23からの様々な条件に対する低い液体温度の分布を示す。図24のボックス(a)は図20に対応し、ボックス(b)は図21に対応し、ボックス(c)は図22に対応し、ボックス(d)は図23に対応する。スズを添加することにより、Zn-Al-Mg-Snの液相線温度を低下させることができる。四元合金のより低い液相線温度は、特に残りの組成を考えたとき、より少ないMg又はより多いAlである点で起こることができる。
【0088】
図25は、Zn-Al-Mg-Sn系における、スズの様々な質量分率、並びにアルミニウム及びマグネシウムの様々な組成に対する液体温度を示す。低い液相線温度は、合金内にマグネシウムが存在せず、かつ約16.75wt.%~約20wt.%の間のアルミニウムが系内に含まれるときに達成することができる。
【0089】
[実施例5]
本発明の合金により耐食性を増大することができる。耐食性は、設計されるいずれの亜鉛めっき被膜でも依然として重大な必須要件である。図26~27は、被膜の作動温度(即ち亜鉛浴温度)と腐食電位と5%錆までの時間との関係を示す。本研究により、特定の合金元素の添加はZn浴温度を有意に低下させることができるということが確認された。合金元素の添加が亜鉛めっき被膜の耐食性に及ぼす影響は二重である、(1)Zn浴温度の影響、及び(2)合金の影響。図26(文献-Bakhtiari, A.ら, The effect of zinc bath temperature on the morphology, texture and corrosion behavior of industrially produced hot-dip galvanized coatings. Metall. Mater. Eng. 20,41~52 (2014))は、幾つかの溶融亜鉛めっき被膜の報告された耐食性を、450~480℃の範囲に及ぶZn浴温度の関数として示す(被膜は全て同一の組成を有することに注意)。腐食電位(より高い負の値は増大した電気防食に関連する)及び5%錆までの時間(より高い値は改良された耐食性に関連する)に関して。試験した範囲において、Zn浴温度が低下すると、高い腐食性能がもたらされた。図27(文献-Aoki, T.ら, Results of 10-year atmospheric corrosion testing of hot dip Zn-5 mass% Al alloy coated sheet steel. Galvatech'95,Chicago,1995; Shimizu, T.ら,Corrosion products of hot-dip Zn-6%Al-3%Mg coated steel subjected to atmospheric exposure. ISIJ 89,166~173 (2003); Shimoda, N.ら,Atmospheric corrosion resistance of Zn-11%Al-3%Mg-0.2%Si coated steel. Galvatech'11,Genova,Italy,2011;及びArcelorMitall Steel Specification, Magnelis(登録商標) ,2014)は、4種の異なる天然環境、即ち、田舎、海洋、工業及び厳しい海洋における亜鉛めっき被膜の平均腐食損失をまとめて示す。純粋な亜鉛被膜の性能と比較して、亜鉛合金被膜(この場合はAl及び/又はMgを添加)は、全ての天然環境で曝露年数にわたってずっと低い腐食(厚さ)損失、即ち、より良好な耐食性を有する。文献からの結果は、特定の合金の添加が適切な耐電食性を提供することができることを示唆し、本発明の合金の利点を支持している。
【0090】
上記の説明では範囲を議論し、使用した。当業者には理解されるように、述べた範囲内のいかなる部分範囲も、本発明から逸脱することなく、広い範囲内の任意の数と同様に適切であろう。
【0091】
本発明に関する上記の記載は、例示及び説明の目的で挙げたものである。また、記載は本発明を本明細書に開示された形態に制限することを意図していない。したがって、上記の教示、及び関連分野の技能又は知識と釣り合う変更及び修正は本発明の範囲内である。更に、上記に記載した実施形態は、本発明を実施する上での知る限りの最良の形態を説明し、当業者がそのような、又は他の実施形態の、そして本発明の特定の適用又は使用で必要とされる様々な修正を加えて本発明を利用できるようにすることを意図したものである。添付の特許請求の範囲は、従来技術により許容される範囲で代わりの実施形態を包含すると解釈されるべきである。
本発明は、以下の態様を含む。
[項1]
低下した液相線温度で金属材料を被覆する方法であって、
金属材料を準備する工程と、
金属材料を亜鉛基合金被膜で被覆して被覆された金属材料を形成する工程であって、亜鉛基合金被膜の液相線温度がドーピング材料を含まない亜鉛基合金材料の液相線温度より低い工程と、
金属材料を亜鉛基被膜で被覆するとき金属材料内の第1のミクロ組織を変更する工程と を備える、方法。
[項2]
亜鉛基合金被膜が亜鉛-マグネシウム-アルミニウム被膜である、請求項1に記載の方法。
[項3]
ドーピング材料が、スズ、リチウム、ガリウム、マグネシウム、インジウム、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
[項4]
亜鉛基合金被膜の液相線温度が419℃より低い、請求項1に記載の方法。
[項5]
亜鉛基合金被膜の液相線温度が約300℃~約365℃の間である、請求項1に記載の方法。
[項6]
亜鉛基合金被膜の組成式が、Zn-aAl-bMg-ドーパント、Zn-bMg-(x)ドーパント、Zn-aAl-(x)ドーパント、Zn-aAl-bMg-(x)ドーパント -(y)ドーパント 、Zn-bMg-(x)ドーパント -(y)ドーパント 、Zn-aAl-(x)ドーパント -(y)ドーパント 、Zn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント、又はZn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント -(y)ドーパント からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
[項7]
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-4Al-3Mg-ドーパントであり、ドーパントがスズ、ガリウム、ビスマス、又はインジウムからなる群から選択され、ドーパントの質量分率が1~15の間である、請求項6に記載の方法。
[項8]
ドーパントの質量分率が1~9の間である、請求項7に記載の方法。
[項9]
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-4Al-bMg-8Snであり、bが1~6の間である、請求項6に記載の方法。
[項10]
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-aAl-3Mg-8Snであり、aが1~15の間である、請求項6に記載の方法。
[項11]
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-7Al-3Mg-xSnであり、xが1~12の間である、請求項6に記載の方法。
[項12]
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-15Al-1Mg-xSnであり、xが1~20の間である、請求項6に記載の方法。
[項13]
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-aAl-3Mg-10Gaであり、aが1~10の間である、請求項6に記載の方法。
[項14]
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-3.5-bMg-6Inであり、bが1~4の間である、請求項6に記載の方法。
[項15]
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-aAl-2.5Mg-6Inであり、aが1~6の間である、請求項6に記載の方法。
[項16]
第1のミクロ組織が、マルテンサイト、フェライト、ベイナイト及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
[項17]
代わりのミクロ組織が、焼き戻しマルテンサイト、オーステンパー処理したベイナイト、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
[項18]
代わりのミクロ組織が炭素時効を欠く、請求項16に記載の方法。
[項19]
亜鉛基合金被膜で被覆された金属材料を含む、被覆された基材合金であって、亜鉛基合金被膜が、
亜鉛基合金、及び
少なくとも1種のドーパント
を含み、亜鉛基合金被膜の液相線温度が419℃より低い、被覆された基材合金。
[項20]
少なくとも1種のドーパントが、スズ、リチウム、ガリウム、及びインジウムからなる群から選択される、請求項19に記載の合金材料。
[項21]
少なくとも1種のドーパントが、銅、チタン、アンチモン、ケイ素、ビスマス、ガリウム、インジウム、スズ、鉛、リチウム、及びカリウムからなる群から選択される、請求項19に記載の合金材料。
[項22]
亜鉛基被膜がZn-Al-Mg-ドーパントの組成式を有する、請求項19に記載の合金材料。
[項23]
亜鉛基被膜がZn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパントの組成式を有する、請求項19に記載の合金材料。
[項24]
マグネシウムの質量分率が約10.05%未満である、請求項19に記載の合金材料。
[項25]
アルミニウムの質量分率が約0%より大きく、約20%未満である、請求項19に記載の合金材料。
[項26]
アルミニウムの質量分率が約3.35%~約13.4%の間である、請求項19に記載の合金材料。
[項27]
少なくとも1種のドーパントの質量分率が約0%より大きく、約12%未満である、請求項19に記載の合金材料。
[項28]
亜鉛基合金がZn-Al及びZn-Al-Mgからなる群から選択される、請求項19に記載の合金材料。
[項29]
亜鉛基合金がZn-Alであり、ドーパントがマグネシウムである、請求項28に記載の合金材料。
[項30]
金属材料が、薄鋼板、帯鋼、棒鋼、鋼棒、鋼管、鋼線、強化棒鋼、鋼板、金物類、及びこれらの組合せからなる群から選択される合金鋼である、請求項19に記載の合金材料。
[項31]
合金が炭素時効されない、請求項19に記載の合金材料。
[項32]
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-4Al-3Mg-ドーパントであり、ドーパントがスズ、ガリウム、ビスマス、又はインジウムからなる群から選択され、ドーパントの質量分率が1~15の間である、請求項19に記載の合金材料。
[項33]
ドーパントの質量分率が1~9の間である、請求項32に記載の合金材料。
[項34]
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-4Al-bMg-8Snであり、bが1~6の間である、請求項19に記載の合金材料。
[項35]
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-aAl-3Mg-8Snであり、aが1~15の間である、請求項19に記載の合金材料。
[項36]
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-7Al-3Mg-xSnであり、xが1~12の間である、請求項19に記載の合金材料。
[項37]
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-15Al-1Mg-xSnであり、xが1~20の間である、請求項19に記載の合金材料。
[項38]
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-aAl-3Mg-10Gaであり、aが1~10の間である、請求項19に記載の合金材料。
[項39]
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-3.5-bMg-6Inであり、bが1~4の間である、請求項19に記載の合金材料。
[項40]
亜鉛基合金被膜の組成式がZn-aAl-2.5Mg-6Inであり、aが1~6の間である、請求項19に記載の合金材料。
[項41]
金属材料がマルテンサイトを含む、請求項19に記載の合金材料。
[項42]
被覆鋼が焼き戻しマルテンサイトを更に含む、請求項41に記載の合金材料。
[項43]
金属材料がフェライトを含む、請求項19に記載の合金材料。
[項44]
被覆鋼が炭素時効されない、請求項43に記載の合金材料。
[項45]
被覆鋼がベイナイトを含む、請求項19に記載の合金材料。
[項46]
亜鉛めっきのための亜鉛基合金被膜の液相線温度を低下させる方法であって、
亜鉛基合金をドーパントと組み合わせる工程を含み、
ドーパントがアルミニウム、マグネシウム、銅、チタン、アンチモン、ケイ素、ビスマス、ガリウム、インジウム、スズ、鉛、リチウム、カリウム又はこれらの組合せからなる群から選択される、方法。
[項47]
ドーパントを含む亜鉛基合金の液相線温度が、ドーパントを含まない亜鉛基合金の液相線温度より低い、請求項46に記載の方法。
[項48]
ドーパントを含む亜鉛基合金の液相線温度が約420℃より低い、請求項47に記載の方法。
[項49]
ドーパントを含む亜鉛基合金の組成式が、Zn-aAl-bMg-ドーパント、Zn-bMg-(x)ドーパント、Zn-aAl-(x)ドーパント、Zn-aAl-bMg-(x)ドーパント -(y)ドーパント 、Zn-bMg-(x)ドーパント -(y)ドーパント 、Zn-aAl-(x)ドーパント -(y)ドーパント 、Zn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント、Zn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント -(y)ドーパント からなる群から選択される、請求項46に記載の方法。
[項50]
組成式がアルミニウムを含み、「a」が0~20の間である、請求項50に記載の方法。
[項51]
組成式がマグネシウムを含み、「b」が0~20の間である、請求項50に記載の方法。
[項52]
組成式が第1のドーパントを含み、「x」が0~40の間である、請求項50に記載の方法。
[項53]
組成式が第2のドーパントを含み、「y」が0~40の間である、請求項50に記載の方法。
[項54]
ドーパントを含む亜鉛基合金の液相線温度が275℃~約419℃の間である、請求項47に記載の方法。
[項55]
ドーパントを含む亜鉛基合金の液相線温度が279℃~約365℃の間である、請求項47に記載の方法。
[項56]
組成式がZn-4Al-3Mg-ドーパントであり、ドーパントがスズ、ガリウム、ビスマス、又はインジウムからなる群から選択され、ドーパントの質量分率が1~15の間である、請求項50に記載の方法。
[項57]
ドーパントの質量分率が1~9の間である、請求項56に記載の方法。
[項58]
組成式がZn-4Al-bMg-8Snであり、bが1~6の間である、請求項50に記載の方法。
[項59]
組成式がZn-aAl-3Mg-8Snであり、aが1~15の間である、請求項50に記載の方法。
[項60]
組成式がZn-7Al-3Mg-xSnであり、xが1~12の間である、請求項50に記載の方法。
[項61]
組成式がZn-15Al-1Mg-xSnであり、xが1~20の間である、請求項50に記載の方法。
[項62]
組成式がZn-aAl-3Mg-10Gaであり、aが1~10の間である、請求項50に記載の方法。
[項63]
組成式がZn-3.5-bMg-6Inであり、bが1~4の間である、請求項50に記載の方法。
[項64]
組成式がZn-aAl-2.5Mg-6Inであり、aが1~6の間である、請求項50に記載の方法。
[項65]
被覆鋼を製造する方法であって、
液体被膜を準備する工程であって、
被膜の液相線温度が鋼内に代わりのミクロ組織を形成する焼き入れ温度より低く、代わりのミクロ組織が鋼のマルテンサイト焼き戻し、ベイナイトオーステンパー処理、又は炭素時効の少なくとも1つにおける変化である、工程と、
鋼を被膜で被覆する工程と、
被覆中鋼内に代わりのミクロ組織を形成する工程と
を備える、方法。
[項66]
鋼が、薄鋼板、帯鋼、棒鋼、鋼棒、鋼管、鋼線、強化棒鋼、鋼板、及び金物類からなる群から選択される、請求項65に記載の方法。
[項67]
液相線温度が約420℃より低い、請求項65に記載の方法。
[項68]
焼き入れ温度が液相線温度より高く420℃より低い、請求項65に記載の方法。
[項69]
液体被膜の組成式が、Zn-aAl-bMg-ドーパント、Zn-bMg-(x)ドーパント、Zn-aAl-(x)ドーパント、Zn-aAl-bMg-(x)ドーパント -(y)ドーパント 、Zn-bMg-(x)ドーパント -(y)ドーパント 、Zn-aAl-(x)ドーパント -(y)ドーパント 、Zn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント、Zn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント -(y)ドーパント からなる群から選択される、請求項65に記載の方法。
[項70]
組成式がアルミニウムを含み、「a」が0~20の間である、請求項69に記載の方法。
[項71]
組成式がマグネシウムを含み、「b」が0~20の間である、請求項69に記載の方法。
[項72]
組成式が第1のドーパントを含み、「x」が0~40の間である、請求項69に記載の方法。
[項73]
組成式が第2のドーパントを含み、「y」が0~40の間である、請求項69に記載の方法。
[項74]
被膜が、浸漬又は噴霧の少なくとも1つによって付けられる、請求項65に記載の方法。
[項75]
鋼がマルテンサイトを含む、請求項65に記載の方法。
[項76]
被覆鋼が焼き戻しマルテンサイトを更に含む、請求項69に記載の方法。
[項77]
鋼がフェライトを含む、請求項65に記載の方法。
[項78]
被覆鋼が炭素時効されない、請求項77に記載の方法。
[項79]
被覆鋼がオーステンパー処理したベイナイトを更に含む、請求項65に記載の方法。
[項80]
組成式がZn-4Al-3Mg-ドーパントであり、ドーパントがスズ、ガリウム、ビスマス、又はインジウムからなる群から選択され、ドーパントの質量分率が1~15の間である、請求項69に記載の方法。
[項81]
ドーパントの質量分率が1~9の間である、請求項80に記載の方法。
[項82]
組成式がZn-4Al-bMg-8Snであり、bが1~6の間である、請求項69に記載の方法。
[項83]
組成式がZn-aAl-3Mg-8Snであり、aが1~15の間である、請求項69に記載の方法。
[項84]
組成式がZn-7Al-3Mg-xSnであり、xが1~12の間である、請求項69に記載の方法。
[項85]
組成式がZn-15Al-1Mg-xSnであり、xが1~20の間である、請求項69に記載の方法。
[項86]
組成式がZn-aAl-3Mg-10Gaであり、aが1~10の間である、請求項69に記載の方法。
[項87]
組成式がZn-3.5-bMg-6Inであり、bが1~4の間である、請求項69に記載の方法。
[項88]
組成式がZn-aAl-2.5Mg-6Inであり、aが1~6の間である、請求項69に記載の方法。
[項89]
鋼基材と、
鋼基材内の第1のミクロ組織を変更することにより形成した鋼基材内の代わりのミクロ組織と、
鋼基材の少なくとも一部分上の被膜とを
備え、
代わりのミクロ組織が被覆プロセス中に形成される、被覆鋼。
[項90]
代わりのミクロ組織が被覆プロセス中のコーティング浴の作動温度範囲に依存し、鋼基材が作動温度範囲で焼き入れされて鋼基材内に代わりのミクロ組織を形成する、請求項89に記載の被覆鋼。
[項91]
鋼基材が、薄鋼板、帯鋼、棒鋼、鋼棒、鋼管、鋼線、強化棒鋼、鋼板、及び金物類からなる群から選択される、請求項89に記載の被覆鋼。
[項92]
第1のミクロ組織がマルテンサイトである、請求項89に記載の被覆鋼。
[項93]
代わりのミクロ組織が焼き戻しマルテンサイトである、請求項89に記載の被覆鋼。
[項94]
第1のミクロ組織がフェライトである、請求項89に記載の被覆鋼。
[項95]
代わりのミクロ組織が炭素時効されない、請求項89に記載の被覆鋼。
[項96]
代わりのミクロ組織がオーステンパー処理したベイナイトである、請求項89に記載の被覆鋼。
[項97]
被膜の組成式が、Zn-aAl-bMg-ドーパント、Zn-bMg-(x)ドーパント、Zn-aAl-(x)ドーパント、Zn-aAl-bMg-(x)ドーパント -(y)ドーパント 、Zn-bMg-(x)ドーパント -(y)ドーパント 、Zn-aAl-(x)ドーパント -(y)ドーパント 、Zn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント、Zn-3.9Al-2.45Mg-(x)ドーパント -(y)ドーパント からなる群から選択される、請求項89に記載の被覆鋼。
[項98]
組成式がアルミニウムを含み、「a」が0~20の間である、請求項97に記載の被覆鋼。
[項99]
組成式がマグネシウムを含み、「b」が0~20の間である、請求項97に記載の被覆鋼。
[項100]
組成式が第1のドーパントを含み、「x」が0~40の間である、請求項97に記載の被覆鋼。
[項101]
組成式が第2のドーパントを含み、「y」が0~40の間である、請求項97に記載の被覆鋼。
[項102]
組成式がZn-4Al-3Mg-ドーパントであり、ドーパントがスズ、ガリウム、ビスマス、又はインジウムからなる群から選択され、ドーパントの質量分率が1~15の間である、請求項97に記載の被覆鋼。
[項103]
ドーパントの質量分率が1~9の間である、請求項102に記載の被覆鋼。
[項104]
組成式がZn-4Al-bMg-8Snであり、bが1~6の間である、請求項97に記載の被覆鋼。
[項105]
組成式がZn-aAl-3Mg-8Snであり、aが1~15の間である、請求項97に記載の被覆鋼。
[項106]
組成式がZn-7Al-3Mg-xSnであり、xが1~12の間である、請求項97に記載の被覆鋼。
[項107]
組成式がZn-15Al-1Mg-xSnであり、xが1~20の間である、請求項97に記載の被覆鋼。
[項108]
組成式がZn-aAl-3Mg-10Gaであり、aが1~10の間である、請求項97に記載の被覆鋼。
[項109]
組成式がZn-3.5-bMg-6Inであり、bが1~4の間である、請求項97に記載の被覆鋼。
[項110]
組成式がZn-aAl-2.5Mg-6Inであり、aが1~6の間である、請求項97に記載の被覆鋼。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27