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特許7257957セキュリティ要素、貴重な文書及びその生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】セキュリティ要素、貴重な文書及びその生成方法
(51)【国際特許分類】
   G03H 1/02 20060101AFI20230407BHJP
   G02B 1/118 20150101ALI20230407BHJP
   B42D 25/328 20140101ALI20230407BHJP
【FI】
G03H1/02
G02B1/118
B42D25/328 100
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019533157
(86)(22)【出願日】2017-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2017001384
(87)【国際公開番号】W WO2018114034
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】102016015335.0
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518041917
【氏名又は名称】ギーゼッケ・ウント・デブリエント・カレンシー・テクノロジー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Giesecke+Devrient Currency Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Prinzregentenstrasse 161, 81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100195006
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勇蔵
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】ロッホビーラー、ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ラーム、ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シェラー、マイク・ルドルフ・ヨハン
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/084960(WO,A1)
【文献】特表2016-505161(JP,A)
【文献】特開2010-204348(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102010049831(DE,A1)
【文献】国際公開第2012/055538(WO,A2)
【文献】欧州特許出願公開第2447744(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0247874(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0085725(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03H 1/02
G02B 1/118
B42D 25/328
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴重な文書を生成するためのセキュリティ要素であって、複数のピクセル(5)を有するエンボスホログラムを有し、前記複数のピクセル(5)の表面は、それぞれの場合、少なくとも一次元において肉眼で判別され得ない、セキュリティ要素において、
- 前記ピクセル(5)の各々の前記表面は、第1の部分領域(6)及び第2の部分領域(7)を有し、
- 前記第1の部分領域(6)は、500nm~2.0μmの周期を有するホログラム格子構造(8)からなり、且つ1次回折次数(R-1)での観測時に前記ピクセル(5)のホログラム効果を発生させ、さらに前記第1の部分領域(6)は、複数のホログラムサブピクセル(6R、6B、6G)からなり、前記複数のホログラムサブピクセル(6R、6B、6G)の相対的な表面割合は、前記1次回折次数(R-1)での前記ピクセル(5)の前記ホログラム効果の着色を決定し、前記ピクセル(5)の前記第1の部分領域(6)は、前記1次回折次数(R-1)でのトゥルーカラー画像(3)を発生させ、
- 前記第2の部分領域(7)は、150nm~450nmの周期を有するサブ波長格子構造(9)からなり、且つグレージング角(R0)での観測時に前記ピクセル(5)の色効果を発生させるように構成され、
- 前記ピクセル(5)の少なくともいくつかについて、前記第2の部分領域(7)の前記サブ波長格子構造(9)は、グレージング角(R0)での観測時に前記ピクセル(5)の色効果を発生させるように構成された色付加サブ波長格子構造として構成され、前記各ピクセル(5)の少なくともいくつかについて、前記第2の部分領域(7)はグレージング角(R0)での観測時に前記ピクセル(5)の原色を呈する複数のサブ波長格子サブピクセル(7R、7B、7G)からなり、前記サブ波長格子サブピクセル(7R、7B、7G)の相対的な表面割合は、前記グレージング角(R0)での観測時の前記ピクセル(5)の着色または輝度を決定し、
さらに前記各ピクセル(5)の少なくともいくつかは、純粋に光を吸収する構造であるか、平滑であり且つ金属被覆されている第3の部分領域(7E)を有し、前記第3の部分領域(7E)は、前記各ピクセル(5)の輝度の設定又は色の強度適応をもたらすことを特徴とする、セキュリティ要素。
【請求項2】
前記ピクセル(5)は、前記1次回折次数(R-1)及び前記グレージング角(R0)での観測時にトゥルーカラー画像(3)を提示することを特徴とする、請求項1に記載のセキュリティ要素。
【請求項3】
前記サブ波長格子構造は、透過(TI、TII)での観測時に色効果を発生させるように形成されることを特徴とする、請求項1に記載のセキュリティ要素。
【請求項4】
前記ピクセル(5)は、前記1次回折次数(R-1)及び前記グレージング角(R0)での観測時にトゥルーカラー画像(3)を提示し、
前記サブ波長格子構造は、透過(TI、TII)での観測時に色効果を発生させるように形成され、
前記ピクセル(5)は、透過(TI、TII)での観測時に前記トゥルーカラー画像(3)に対して異なる色の画像を提示することを特徴とする、請求項1に記載のセキュリティ要素。
【請求項5】
前記ピクセル(5)は、ストライプの形状を有し、前記ホログラムサブピクセル(6R、6B、6G)は、同様にストライプの形状を有し、及び前記ストライプの幅は、前記着色を設定することを特徴とする、請求項1に記載のセキュリティ要素。
【請求項6】
前記エンボスホログラムは、透明誘電体に埋め込まれることを特徴とする、請求項1に記載のセキュリティ要素。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のセキュリティ要素を有する、貴重な文書。
【請求項8】
貴重な文書を生成するためのセキュリティ要素を生成する方法において、エンボス構造は、基板にエンボス加工され且つ金属化され、及び請求項1~6のいずれか一項に記載の複数のピクセル(5)から構築されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィックセキュリティ要素(holographic security element)及びその生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンボスホログラム(embossed hologram)(例えば、E.G.Loewen,E.Popov,Diffraction Gratings and Applications, Marcel Dekker,New York,1997(非特許文献1)及び米国特許第7129028B2号(特許文献1)から知られている)は、紙幣及びペイメントカードのセキュリティ特徴として並びにブランド保護において広く使用されている。一般に、それらのエンボスホログラムは、異なる周期及び方位角(azimuth angle)の配向を有する回折格子の形態のホログラム格子(hologram grating)構造を含むエンボス構造からなる。観測者は、ホログラムの再構成角度での1次回折次数(first order of diffraction)の反射においてホログラム効果を知覚する。1次回折次数への回折は、観測者によって色として知覚される。例えば、アルミニウム蒸着正弦格子(aluminum vapor-deposited sine grating)の形態のホログラム格子構造によって実現され、従って特定の観測角度でのみ知覚可能であるカラーモチーフ(color motifs)である。グレージング角(grazing angle)での反射は、比較的低いコントラストである。グレージング角での反射におけるエンボスホログラムは、無彩色のように見え、且つ透過光では暗い。トゥルーカラー(true color)画像は、ピクセルの配列によって再現することができ、それぞれの場合に3つの異なる格子がサブピクセルとして位置する。前記3つの格子は、原色(典型的には赤、緑及び青)に対応する。ピクセルの所望の色の設定は、サブピクセルの対応する表面割合による原色の色混合を介して行われる。色の強度は、ホログラフィック構造によって占有されるピクセルの表面成分のサイズによって調整される。ピクセルの表面が格子で完全に満たされている場合、その色は、最大の明るさ(brilliance)で見える。部分領域が空のままである場合、その色は、相応に色あせる(more pale)。グレージング角でのモチーフ(motif)は、強度がわずかに変調された明るい反射性の表面のように、わずかにうっすらとのみ見ることができる。特に、トゥルーカラーホログラムにおける欠点は、1次回折次数でのモチーフが狭い角度の許容範囲内でのみトゥルーカラーに見えることである。この欠点は、特に、好ましくない光条件下での観測に影響を及ぼす。加えて、再構成角度外に傾けられると、トゥルーカラー画像は、直ちに「間違った色」に見えるようになる。グレージング角での観測時に画像がネガティブに移行し得ることは、その場合、構造で満たされていない表面割合により、入射光が観測者の目の方に誘導され、従って眩しく照らされる可能性があるため、特に深刻であると考えられる。
【0003】
さらに、反射において及び透過においても色を与えるのに適したサブ波長格子が知られている。グレージング角で着色されているように見え、加えてコスト効率良く箔にエンボス加工することができる金属構造については、国際公開第2013/053435A1号(特許文献2)、独国特許出願公開第102011101635A1号(特許文献3)及び独国特許出願公開第102015008655A1号(特許文献4)の文献で説明されている。これらのサブ波長格子は、一次元及び二次元周期構造であり得る。そのようなサブ波長格子は、同様にトゥルーカラー画像の生成に適している。ホログラム格子構造とは対照的に、トゥルーカラー画像は、ここで、0次回折次数(すなわちグレージング角)で見ることができる。サブ波長格子は、透過においてトゥルーカラー画像が形成されるように構成することもできる。そのようなトゥルーカラー画像を生成するための公知の方法は、同様に、異なるプロファイルパラメータのサブ波長格子に対応するサブピクセルにおける原色の色混合による、所望の色のピクセル単位の適応を利用する(H.Lochbihler,"Colored images generated by metallic sub-wavelength gratings,"Opt.Express 17(14),12189-12196(2009)(非特許文献2)、国際公開第2012/019226A1号(特許文献5)、欧州特許出願公開第2960690A1号(特許文献6)及び国際公開第2014/179892A1号(特許文献7)を参照されたい)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第7129028B2号
【文献】国際公開第2013/053435A1号
【文献】独国特許出願公開第102011101635A1号
【文献】独国特許出願公開第102015008655A1号
【文献】国際公開第2012/019226A1号
【文献】欧州特許出願公開第2960690A1号
【文献】国際公開第2014/179892A1号
【非特許文献】
【0005】
【文献】E. G. Loewen, E. Popov, Diffraction Gratings and Applications, Marcel Dekker, New York,1997
【文献】H. Lochbihler, ”Colored images generated by metallic sub-wavelength gratings, "Opt. Express 17(14),12189-12196(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、セキュリティ要素(security element)であって、公知のエンボスホログラムの光学特性を有し、加えてグレージング角でモチーフを変造せず、好ましくは、ここで、同様に高コントラスト構成でモチーフを示すセキュリティ要素を提供するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1、13及び14において定義されるような本発明である。従属請求項は、有利な発展形態に関する。
【0008】
本発明は、従来のエンボスホログラムを改善し、モチーフの認識度を高める。モチーフは、それぞれの場合、典型的な方式でホログラム格子構造(すなわち構造)を有する複数のピクセルによって形成され、ホログラム格子構造は、光学領域において、異なる格子周期及び格子アラインメントを有する回折格子として作用する。ホログラフィック構造による1次回折次数でのモチーフのそのような生成は、先行技術において知られている。例として、刊行物H.Caulfield,"The Art and Science of Holography, "SPIE, 2004, ISBN 0-8194-5019-7及びここで例えば201~209ページが参照される。ピクセルに対して望ましい色は、例えば、関連サブピクセルの3つの原色からの色混合によって形成される。ピクセルの全体のサイズは、もはや肉眼で判別できるようなものではない(例えば、サイズは、100μm以下である)。しかし、例えば、ピクセルが細長く狭いストライプ(stripes)の形状を有する場合、このサイズを単なる一次元のピクセルと関連付けることも可能である。ピクセルを肉眼で全く判別できない場合、最終的にスムーズな強度分布を有する画像が得られる。サブピクセルは、ピクセルの一部のみを占有し、各サブピクセルは、原色に割り当てられる。混合色は、互いに関連するサブピクセルの表面割合によって得られる。ホログラフィック画像は、ピクセル全体のうちの部分領域のみを構成する前記サブピクセルによって生成される。ピクセルの別の部分領域は、色付与サブ波長格子(color-imparting sub-wavelength grating)或いはモスアイ(moth-eye)構造(周期、準周期(quasi-periodic)若しくは非周期(aperiodic)サブ波長構造(sub-wavelength structure)の形態)又は光吸収若しくは光着色微細構造として知られているものを含む。
【0009】
ピクセルは、画像情報をコード化するために使用される表面の任意の所望の形態(L字形、円形又は不規則なジオメトリ(geometries)を含む)も意味するものと理解されている。一般に、これは必須ではないが、この配列は、規則的なもの(例えば、長方形又は正方形のピクセルの形態)である。
【0010】
セキュリティ要素では、複数のピクセル及び好ましくは各ピクセルは、少なくとも2つの部分領域を有する。第1の部分領域は、ホログラム構造によって形成され、且つ最終的に1次回折次数で見ることができるホログラフィック画像を提供する。第2の部分領域(好ましくはピクセルの残りの部分)は、サブ波長格子或いはモスアイ構造又は光吸収若しくは光着色微細構造で満たされる。従って、サブ波長格子又は光着色微細構造の反射色は、グレージング角での観測時に見られる。微細構造が光吸収であるか又はモスアイ構造が使用される場合、ピクセルは、グレージング角で暗く見える。このように、セキュリティ特徴の外観は、グレージング角での観測時に制御され得る。サブ波長格子又は微細構造が半透明となるように具体化される場合、透過観測(transmission observation)において色を設定することも可能である。
【0011】
反射(及び加えて任意選択的に透過光)において第2の部分領域に提供される構造の色は、格子プロファイルの選択及び使用されるコーティングに依存する。これは、サブ波長格子に対する先行技術から知られており、同じことが微細構造にも当てはまる。第1の部分領域に対する第2の部分領域の表面比を適応させることにより、各ピクセルについて、グレージング角での観測時に段階的に強度が変化するモチーフを生成することが可能である。各ピクセルの第2の部分領域が追加的に構造化されない場合、この領域は、一色に見える。
【0012】
一実施形態の変形形態では、第2の部分領域は、異なる色のサブピクセルに分割され、これは、反射のグレージング角でトゥルーカラー画像も実現されることを意味する。好みにより、3つの異なるサブピクセルが提供され、サブピクセルには、事前に定義された観測角度に対して原色(例えば、赤、緑及び青)が割り当てられる。グレージング角で(及び任意選択的に透過光でも)観測時に第2の部分領域が生成する所望の色は、各ピクセルについて、3つのサブピクセルの相対的な表面割合によって設定される。その場合、観測者は、各ピクセルについてサブピクセルの混合色を知覚する。
【0013】
さらなる好ましい実施形態の変形形態では、最初に、1次回折次数で見えるトゥルーカラーホログラムが計算される(特にピクセル及びサブピクセルに分割される)。その後、依然として必要とされておらず、第2の部分領域の機能を有する表面領域が微細構造又はサブ波長構造で満たされる。第2の部分領域をピクセル及び場合によりサブピクセルに分割することは、この変形形態では、第1の部分領域のピクセル分割及びサブピクセル分割から独立して行うことができる。特に好ましい構成では、第2の部分領域のエンボス構造は、光吸収に役立ち、それらのエンボス構造は、第2の部分領域を完全に又は部分的に満たし得る。
【0014】
本発明は、例示的な実施形態における図面を参照して以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ホログラムとしての1次回折次数での画像及びグレージング角での観測時の同じ画像を示すセキュリティ要素を有する紙幣の図を示す。
図2】画像が構成されるピクセル構造を示すための、図1のセキュリティ特徴において見ることができる画像の図を示す。
図3】サブピクセルからピクセルを構築するための異なる変形形態を示し、各ピクセルは、ホログラム格子構造が位置する第1の部分領域と、サブ波長格子構造が形成される第2の部分領域とを有する。
図4】サブピクセルからピクセルを構築するための異なる変形形態を示し、各ピクセルは、ホログラム格子構造が位置する第1の部分領域と、サブ波長格子構造が形成される第2の部分領域とを有する。
図5】サブピクセルからピクセルを構築するための異なる変形形態を示し、各ピクセルは、ホログラム格子構造が位置する第1の部分領域と、サブ波長格子構造が形成される第2の部分領域とを有する。
図6】異なる領域を示すためのピクセルの例示的な断面図を示す。
図7】異なる領域を示すためのピクセルの例示的な断面図を示す。
図8】2つの部分領域における格子構造の機能のモードを示すための概略断面図を示す。
図9】2つの部分領域における格子構造の機能のモードを示すための概略断面図を示す。
図10】ストライプ形状のピクセルを有するさらなるセキュリティ要素の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、紙幣1の平面図を概略的に示し、紙幣1は、偽造に対する保護を強化するためのセキュリティ要素2を有する。セキュリティ要素2は、この場合、Duererの画像である(図2を参照されたい)モチーフ3を生成するエンボスホログラムを含む。図2は、モチーフ3の詳細4を示し、画像3が複数のピクセル5から構成されていることを示す。各ピクセル5は、部分領域からなる。図3~5は、この分割に対する異なる実施形態を示す。図3では、各ピクセル5は、第1の部分領域6及び第2の部分領域7を有する。第1の部分領域では、1次回折次数でホログラムとしてモチーフ3を目に見えるようにするために必要なホログラム格子構造が形成される。ピクセル5の第2の部分領域7は、グレージング角で(及び任意選択的に透過でも)認識可能な同じモチーフ又は別のモチーフをレンダリングするサブ波長格子構造又は微細構造を有する。第1の部分領域6のホログラム格子構造は、そのエリアを介して、1次回折次数での対応するピクセル5に対する輝度(brightness)値を設定する。第2の部分領域7の構造は、グレージング角での観測時に同じ効果を有する。図3では、第3の任意選択的な部分領域7Sも提供されており、その構造は、純粋に光吸収性であるように(すなわちモスアイ構造として)形成される。このように、第1及び第2の部分領域の分割に加えて、輝度比又は強度比を設定することができる。代替として、第3の部分領域は、金属被覆されている不透明の平滑領域(smooth region)を含むこともできる。前記第3の部分領域はまた、個々のピクセル5における強度適応(intensity adaptation)をもたらす。当然ながら、第2の部分領域における光吸収微細構造又はモスアイ構造のみの使用も可能である。これにより、セキュリティ要素が1次回折次数の角度からグレージング角に傾けられた際の画像のネガティブ化を防ぐ。
【0017】
図4は、部分領域6をサブピクセル6R、6G、6B(赤、緑及び青の原色が割り当てられる)に分割することにより、1次回折次数でトゥルーカラー画像を生成するピクセル5の構成を示す。サブピクセルの表面比は、混合色を設定する。ピクセル7の残りの表面では、次にサブ波長格子構造が提供される。原理上、この選択肢が可能であることを示すため、ここでは、上記で言及されるように平滑層(smooth layer)として形成される第3の部分領域7Eも提供される。当然ながら、第3の部分領域は、原理上省略することもでき、ピクセル5は、排他的に第1及び第2の部分領域からなり得る。
【0018】
図5は、さらなる発展形態を示し、第2の部分領域は、この場合もやはりサブ波長格子構造によってサブピクセル7R、7G、7Bに形成され、グレージング角での観測時にトゥルーカラー画像をもたらす。
【0019】
図6及び7は、例示的なピクセル5の領域の断面図を示す。それらの図は、第1の部分領域のサブピクセル6B、6G、6Rのホログラム格子構造8が、使用される正弦格子の周期において異なることを示す。これは、例示を目的とした単なる例である。当業者は、トゥルーカラーホログラムのためにホログラム格子構造からサブピクセルをどのように構築しなければならないかを知っている。図6の第2の部分領域7は、例として、サブ波長格子構造9がモスアイ構造であるように構成される。結果的に、ここでの構造は、赤、緑及び青に加えて、第4のカラーチャネルとして使用される黒の値のみを設定し、加えて傾けた際のモチーフの反転を防ぐ。
【0020】
図7は、ピクセル5の断面図を示す。ホログラム格子構造8は、この場合もやはりサブピクセル6B、6G、6Rによって構築される。加えて、サブ波長格子構造9を有する第2の部分領域7は、同様に、幾何学的に異なるように構造化されたサブピクセル7B、7G、7R及びモスアイ構造7Sによって形成される。
【0021】
図8は、ピクセル5の異なる部分領域における効果を示す。第1の部分領域6ではホログラム格子構造が形成され、図8の例では赤のサブピクセル6Rの形態である。入射放射線は、1次回折次数R-1での観測時に赤色として知覚される。他方では、サブ波長格子構造に関して、グレージング角Rでの観測により、サブ波長構造の色の印象(この場合、緑のサブピクセル7G及び赤のサブピクセル7R)が表される。
【0022】
図9は、変形形態における同じ条件を示し、サブ波長構造は、透過性としても作用する。ホログラム格子構造の領域で顕著な透過は起こらないが、サブ波長格子構造の領域では、サブピクセル7G、7Rに対して異なる色T、TIIを有する着色透過が得られる。
【0023】
図10は、トゥルーカラーホログラムのさらなる例を示す。ここで、ピクセル7は、ストライプの形状であり、それぞれの場合にカラートラック6R、6G、6Bの形態の個々のサブピクセルを含む。図10の左のピクセル5は、ここで、サブピクセルがピクセル5を格子で完全に満たすように構成される。この場合、色は、結果的に最大の明るさを有する色混合として見られる。色強度は、幅により且つ結果的にサブピクセルの表面被覆率により調整される。ここで、ストライプ幅は、長手方向の長さに沿って減少させることができ、ストライプは、中断することもできる。非被覆領域(すなわちホログラム構造がサブピクセル6R、6G、6Bに位置しないピクセル5の領域)は、ここで、モスアイ構造の形態のサブ波長構造で満たされる。このモスアイ構造7Sは、図10の左から2番目のピクセル5の例として示されている。それらの構造は、光吸収構造として作用し、典型的には、規則的に又は不規則的に配列された凸部又は凹部(可視光の波長より小さい周期又は準周期を有する)からなる。光吸収微細構造(例えば、入射光を実質的に吸収するようなアスペクト比を有するマイクロキャビティ(microcavities))も適している。この点において、独国特許出願公開第102013009972A1号、独国特許出願公開第102014004941A1号及び国際公開第2014/161673A1号が参照され、その微細構造は、7R、7B、7G又は7Sにおいて使用することができる。従って、色を生成する必要のないピクセル5の表面領域は、光吸収構造で満たされる。結果的に、先行技術におけるホログラフィック構造によって占有されていないピクセル5の部分による入射光の鏡面反射を防ぐため、1次回折次数の角度外にホログラムを傾けた際に画像がポジティブからネガティブに変わることを防ぐ。
【0024】
この手法は、4つのカラーチャネル(赤、緑、青の原色(又はサブピクセルによって提供される原色)及びコントラストを与えるための第4のチャネルとしての黒)における画像の構築にも使用することができる。
【0025】
一般に、他の色(異なる数でも)を色混合に使用することができ、この場合でも、黒は、コントラストを与えるための追加のチャネルとして使用される。
【0026】
ピクセル5の異なる分割及び形状について説明してきたが、これらの構成は、当然ながら、モチーフ3の全てのピクセルにおいて使用しなければならないわけではない。モチーフを生成するために異なる選択肢を混合することも可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 紙幣
2 セキュリティ要素
3 モチーフ
4 詳細
5 ピクセル
6 第1の部分領域
6R、6G、6B サブピクセル
7 第2の部分領域
7R、7G、7B サブピクセル
7E 平滑領域
7S モスアイ構造
8 ホログラム格子構造
9 サブ波長構造
E 入射放射線
-1 1次回折次数
グレージング角
第1の色の場合の透過
II 第2の色の場合の透過
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10