(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】透析システムの作動方法及び透析システム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20230407BHJP
【FI】
A61M1/16 190
A61M1/16 185
(21)【出願番号】P 2019557237
(86)(22)【出願日】2018-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2018043600
(87)【国際公開番号】W WO2019107357
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】P 2017228862
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 真人
(72)【発明者】
【氏名】二村 寛
(72)【発明者】
【氏名】横山 喬剛
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特公昭52-034154(JP,B2)
【文献】特開昭63-192450(JP,A)
【文献】特開平07-024064(JP,A)
【文献】特開2003-251338(JP,A)
【文献】特開平05-245318(JP,A)
【文献】特開平10-174976(JP,A)
【文献】特開昭48-076800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質体を有し、酵素を有さない吸着器
であって、透析液循環部に接続された前記吸着器を含み、透析液中の尿毒症物質を前記吸着器に吸着する透析工程を行う透析システム
の作動方法であって、
前記透析工程が実施された後
に、再生用水流水部に流れる再生用水によって前記吸着器に吸着された尿毒症物質を脱離する再生工
程を含
み、
前記再生工程は、前記吸着器から脱離され、前記再生用水流水部に流れる再生用水に含まれる前記尿毒症物質を電気分解する工程と、前記電気分解する工程を経た前記再生用水を再び前記吸着器に循環させる工程とを含む
ことを特徴とする
透析システムの作動方法。
【請求項2】
前記
再生工程において、前記吸着器
は、前記透析液循環部から切り離
され、前記再生用水流水部に接続
されている
ことを特徴とする請求項
1に記載の
透析システムの作動方法。
【請求項3】
多孔質体を有し、酵素を有さない吸着器であって、透析液循環部に接続された前記吸着器を含み、透析液中の尿毒症物質を前記吸着器に吸着する透析工程を行う透析システムの作動方法であって、
前記透析工程が実施された後に、血液循環部における血液回路をシャントに接続するための第1接続部に接続された再生用水流水部に流れる再生用水によって、当該第1接続部を含む前記血液循環部及び前記透析液循環部を通じて前記吸着器に吸着された尿毒症物質を脱離する再生工程
を含む
ことを特徴とする透析システムの作動方法。
【請求項4】
前記再生工程は、前記再生用水流水部に流れる再生用水に含まれる尿素を電気分解する
ことを特徴とする請求項
3に記載の
透析システムの作動方法。
【請求項5】
前記再生工程において、前記再生用水流水部内を循環する前記再生用水の一部を貯留し、貯留した当該再生用水の一部に対して直流電流を流すことで、前記吸着器から脱離されて前記再生用水に溶解した尿毒素となる尿素を電気分解する
ことを特徴とする請求項1、2または4に透析システムの作動方法。
【請求項6】
前記再生工程は、前記再生用水流水部に、塩化物イオンを含む水を、前記再生用水として流すことを含み、前記尿素の電気分解の際に、次亜塩素酸を発生させる
ことを特徴とする請求項
1、2、4または5に記載の
透析システムの作動方法。
【請求項7】
前記再生工程の後に、前記再生用水流水部を洗浄及び/又は消毒する洗浄消毒工程を含む
ことを特徴とする請求項
1から請求項6のいずれか1項に記載の
透析システムの作動方法。
【請求項8】
前記洗浄消毒工程は、前記透析液循環部における透析液回路及びダイアライザを洗浄及び/又は消毒する
ことを特徴とする請求項
7に記載の
透析システムの作動方法。
【請求項9】
前記洗浄消毒工程は、血液循環部における血液回路を洗浄及び/又は消毒する
ことを特徴とする請求項
7に記載の
透析システムの作動方法。
【請求項10】
透析液循環部と、
前記透析液循環部に接続され、多孔質体を有し、酵素を有さない吸着器と、を備える透析システムであって、
前記透析システムは、
再生用水流水部と、
前記吸着器と、前記再生用水流水部および前記透析液循環部のいずれかとの接続を切り替える切替接続部と、
を備え、
前記再生用水流水部は、
当該再生用水流水部に流れる再生用水に含まれる尿毒症物質素を電気分解する電解槽と、
前記電解槽を経た前記再生用水を前記吸着器に戻して前記再生用水流水部内を循環させる再生用水制御装置と、
前記切替接続部に接続自在な接続部
と、を含み、
前記再生用水流水部は、前記吸着器に対して接続自在である
ことを特徴とする透析システム。
【請求項11】
透析液循環部と、
前記透析液循環部に接続され、多孔質体を有し、酵素を有さない吸着器と、を備える透析システムであって、
前記透析システムは、再生用水流水部を備え、
前記再生用水流水部は、前記吸着器に対して接続自在であって、
前記再生用水流水部は、血液循環部における血液回路をシャントに接続するための第1接続部に対して接続自在である
ことを特徴とする透析システム。
【請求項12】
前記再生用水流水部は、前記再生用水流水部に流れる再生用水に含まれる尿素を電気分解するための電解槽を備える
ことを特徴とする請求
項11に記載の透析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸着器の再生方法及び透析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、限外濾過方式による血液浄化装置における血液の濾過液中の有害物質を除去する方法がある。
【0003】
この有害物質の除去方法は、含窒素繊維状活性炭吸着剤を充填した2個以上の吸着器を交互又は輪番的に用い、1個以上の吸着器で有害物質の吸着を行い、その間に、吸着に利用されていない吸着済みの吸着器では有害物質の脱着を行い、患者の血液を限外濾過膜を介して循環させている治療時に、吸着器における有害物質の吸着と、吸着器からの有害物質の脱着(吸着器の再生)とを交互に行うものである(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の血液浄化装置における吸着器からの有害物質の除去方法は、装置が大型で複雑であり、血液浄化装置を移設し易くすることができない。
【0006】
そこで、本開示は、血液浄化装置を移設し易くできる吸着器の再生方法及び透析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面によれば、多孔質体を有し、酵素を有さない吸着器の再生方法において、
前記吸着器を透析液循環部に接続して透析液中の尿毒症物質を前記吸着器に吸着する透析工程と、
前記透析工程の後、再生用水流水部に流れる再生用水によって前記吸着器に吸着された尿毒症物質を脱離する再生工程と、を含む
ことを特徴とする吸着器の再生方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、血液浄化装置を移設し易くできる吸着器の再生方法及び透析システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】第1実施形態の治療時における透析システムの説明図である。
【
図1B】第1実施形態の再生時における透析システムの説明図である。
【
図2A】第2実施形態の治療時における透析システムの説明図である。
【
図2B】第2実施形態の再生時における透析システムの説明図である。
【
図3】尿素の電気分解の試験の結果を示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら各実施形態について詳細に説明する。
【0011】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して第1の形態(以下、第1実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号が付される。なお、以下の説明において特段の説明がない限り、治療時とは、患者200の血液をダイアライザ30を通過させて血液循環部10内で循環させている状態を意味し、再生時とは、患者200の血液を血液循環部10内で循環させていない状態を意味することとする。なお、本実施形態は血液透析に適用する例を示すが、これに限らず、血液濾過、血液濾過透析等、血液浄化全般に適用できる。なお、以下で「透析」とは、透析治療のことである。
【0012】
図1Aは、第1実施形態の治療時における透析システム100の説明図であり、
図1Bは、第1実施形態の再生時における透析システム100の説明図である。
【0013】
(透析システム)
第1実施形態に係る透析システム100は、血液透析治療を行うための血液浄化装置であり、患者200の血液を体の外部にあるダイアライザ30へ導き、浄化された血液を患者200の体に戻す血液透析をするものである。
【0014】
詳細には、透析システム100は、
図1A及び
図1Bに示すように、血液循環部10に対してダイアライザ30を介して接続される透析液循環部20と、透析液循環部20に接続され、多孔質体を有する吸着器40(吸着カラム)と、再生用水流水部50を備える。
【0015】
血液循環部10は、患者200の体に施されたシャント210と、患者200の体の外に設けられるダイアライザ30との間で血液を循環させるための部分である。血液循環部10には、ダイアライザ30を第1接続部11を介してシャント210に接続する動脈側血液回路12及び静脈側血液回路13が含まれる。また、血液循環部10には、適宜、不図示の、血液ポンプ、補液供給ライン、抗凝固薬注入部、エアートラップチャンバ、測定器、監視装置等の機能部が設けられる。
【0016】
ダイアライザ30は、患者200の血液と透析液とを、半透膜を通じて拡散及び濾過の作用によって物質交換することにより、患者200の血液を浄化する人工腎臓である。ダイアライザ30は、例えば、患者200の血液が通過する半透膜で形成された細管が複数束ねられたものを、透析液循環部20の一部となる透析液が通過する筒体で覆ったものである。
【0017】
透析液循環部20は、ダイアライザ30と吸着器40との間で透析液を循環させるための部分である。透析液循環部20には、吸着器40を第3接続部(不図示)を介してダイアライザ30に接続する透析液回路21、22が含まれる。また、透析液循環部20には、適宜、不図示の、透析液ポンプ、透析液供給ライン、バランスチャンバ、ヒータ、排液ライン、測定器、監視装置及び透析液制御装置等の機能部が設けられる。
【0018】
吸着器40は、尿毒症物質を直接的に吸着可能な多孔質体を含む。すなわち、吸着器40は、尿毒症物質を直接的に吸着可能な吸着器である。従って、本実施形態では、吸着器40は、ウレアーゼ等の尿素を分解するための酵素を有する必要性が実質的にない。従って、本明細書において、「酵素を有さない吸着器40」とは、尿素を分解するための酵素を実質的に有していないことを意味する。「尿素を分解するための酵素を実質的に有していない」とは、尿素を分解するための酵素を、実質的に機能しない量だけ含むような態様(例えば、多孔質体によって吸着される尿素の量をX[g]とし、酵素により分解される尿素の量をY[g]としたとき、Y/(X+Y)≦0.1となるような態様)を除外しないことを意味する。なお、以下では、吸着器40は、尿素を分解するための酵素や他の用途の酵素を含むいかなる酵素も含んでいないものとするが、他の用途の酵素を若干量含んでもよい。
また、吸着器40は、尿毒症物質を直接的に吸着可能な多孔質体の層と、他の要素の層とを含んでもよい。この場合、他の要素の層は、酵素を含んでもよい。この場合、「酵素を有さない吸着器」とは、吸着器40における、尿毒症物質を直接的に吸着可能な多孔質体の層の部分を意味する。
【0019】
尿毒症物質を直接的に吸着可能な多孔質体としては、例えば、炭素系吸着体が採用される。炭素系吸着体は、例えば、活性炭粒等の多孔質な構造を有する自然品の集合体であってよく、ポア径が平均8nm程度の細孔を有するビーズ等の多孔質な構造を有する成形品の集合体であってもよい。このように、吸着器40は、炭素系吸着体を有するので、吸着された尿毒症物質を再生用水によって簡単に脱離する(取り除く)ことができる。よって、吸着器40を再生できる。なお、ここでいう尿毒症物質とは、尿素、クレアチニン又はカリウム等を含む。
【0020】
ここでいう再生用水とは、尿素を実質的に含まない水であり、例えば、使用済みの再生用水に含まれる尿素を電気分解した液、RO水、生理食塩液、未使用の透析液、又は、水道水である。水道水は、適宜、消毒して使用される。なお、吸着器40から脱離した尿素を含む再生用水は、後述する電気分解によって尿素が除去されるが、この際、尿素を完全に除去することが難しい場合がある。従って、使用済みの再生用水に含まれる尿素を電気分解した液は、ある程度の濃度で尿素を含む場合がある。なお、基本的には、再生用水に含まれる尿素の濃度が低いほど、再生能力(吸着器40から尿素を脱離させる能力)が高くなる。
また、吸着器40は、尿素を分解するための酵素を有さないので、尿素の分解に応じて低下する酵素の活性を再生するために、酵素を追加したり、交換したりする必要がない。よって、吸着器40を透析液循環部20内に固定した状態で維持でき、透析システム100、すなわち、血液浄化装置をコンパクトにできる。
【0021】
再生用水流水部50は、再生用水制御装置51から吸着器40に再生用水を流すための流路である。なお、第1実施形態において、再生用水流水部50は、再生用水制御装置51から吸着器40に再生用水を流し、再び再生用水を再生用水制御装置51に戻して循環させるための流路とする例を説明するが、これに換えて、再生用水流水部50は、吸着器40に水道等から供給される新鮮な再生用水を流し、循環させることなく排出して、垂れ流すための流路としてもよい。すなわち、再生用水流水部50は、再生用水制御装置51を介することなく、また、再生用水を循環させることなく、吸着器40に再生用水を流す流路であってよい。
【0022】
再生用水制御装置51は、再生用水回路54、55を介して、吸着器40の上流側(尿毒症物質を含む透析液が吸着器40に流入する側)及び下流側(尿毒症物質が脱離された透析液が吸着器40から流出する側)のそれぞれの切替接続部41に接続されている。なお、再生用水回路54、55は、吸着器40の上流側及び下流側のそれぞれの切替接続部41に接続自在な第2接続部52(
図1においては不図示、
図2B参照)を備えてもよい。また、再生用水流水部50には、適宜、再生用水供給ライン、再生用水ポンプ、排水ライン等の機能部が設けられる。
【0023】
また、再生用水流水部50は、脱離された尿素、すなわち、使用済みの再生用水に含まれる尿素を電気分解するための電解槽53、つまり、再生用水流水部50に流れる再生用水に含まれる尿素を電気分解するための電解槽53を備える。具体的には、電解槽53は、再生用水流水部50内を循環する再生用水の一部を貯留し、貯留した再生用水の一部に対して直流電流を流すことで、吸着器40から脱離されて再生用水に溶解した尿毒素となる尿素を電気分解する。なお、電解槽53は、電気分解によって生じるガスを排出するためのガス排出部を備える。
【0024】
これにより、吸着された尿毒素となる尿素を効果的に分解できるので、通常略18リットルである再生用水の使用量を、例えば、略1リットル程度に抑えることができる。なお、通常の再生用水の使用量は、流量50mL/minで6時間流すときに必要な使用量を算出した結果として、略18リットルとしている。また、電解槽53を含む実施形態であれば、吸着器40やその他の部品のプライミングボリューム(充填量)を満たせば良いため、略1リットル程度に抑えることができる。
【0025】
ここで、
図1Aの状態から
図1Bの状態への変化が示すように、再生用水流水部50は、吸着器40に対して接続自在である。具体的には、例えば、吸着器40は、透析液循環部20における上流側及び下流側に、それぞれ、再生用水流水部50と透析液循環部20との接続とを切り替えて切替弁の機能を有する切替接続部41を備える。
【0026】
切替接続部41は、透析液循環部20と接続されると再生用水流水部50との接続を遮断し、再生用水流水部50と接続されると透析液循環部20との接続を遮断する。
なお、再生用水流水部50は、再生用水回路54、55に設けられた第2接続部52によって、吸着器40の切替接続部41に接続自在としてよい。これにより、透析工程と再生工程との間に、吸着器40を、透析液循環部20の透析液回路21、22から切り離し、再生用水流水部50の再生用水回路54、55に接続できるようになっている。
【0027】
このように、再生用水流水部50は、吸着器40に対して接続自在であるので、再生用水制御装置51を含む再生用水流水部50を透析液循環部20から切り離しておくこともできる。よって、
図1Aに示すように、治療時には、再生用水制御装置51を含む再生用水流水部50を透析液循環部20に対して隣接して設置するためのスペースは不要であり、血液循環部10及び透析液循環部20に設けられる各機能部を設置するためのスペースを確保すればよい。したがって、透析システム100、すなわち、血液浄化装置をコンパクトにでき、移設し易くできる。
【0028】
(吸着器の再生方法)
続いて、第1実施形態の透析システム100を用いた吸着器40の再生方法を説明する。
本実施形態に係る吸着器40の再生方法は、多孔質体を有する吸着器40の再生に適用できる。
(1)まず、
図1Aに示すように、血液循環部10の第1接続部11を患者200のシャント210に接続し、多孔質体を有する吸着器40を透析液循環部20に接続して透析液中の尿毒症物質を吸着器40に吸着する(透析工程)。なお、第1接続部11は、血液循環部10の動脈側血液回路12及び静脈側血液回路13を患者200のシャント210に接続するための部分であり、患者200のシャント210に対して直接穿刺される穿刺針(不図示)と、穿刺針と動脈側血液回路12及び静脈側血液回路13との間を着脱自在に接続するシャントコネクタ(不図示)と、を備える。
具体的には、吸着器40と再生用水流水部50との接続を、切替接続部41によって、透析液循環部20に切り替えて接続し、透析液制御装置(不図示)を稼働する。この透析工程により、患者200の血液中の尿毒症物質が吸着器40に吸着され、患者200の血液が浄化される。
(2)次に、
図1Bに示すように、吸着器40が接続される循環部を、切替接続部41により、透析液循環部20から再生用水流水部50に切り替える。なお、吸着器40を透析液循環部20から切り離し、その後、吸着器40の切替接続部41を再生用水流水部50との接続に切り替えてもよい。
(3)そして、透析工程の後、再生用水制御装置51を稼働し、再生用水流水部50に流れる再生用水によって吸着器40に吸着された尿毒症物質を脱離する(再生工程)。
この再生工程により、吸着器40に吸着した尿毒症物質が脱離される。
(4)再生工程の際、再生用水流水部50に流れる再生用水を電気分解する。
(5)続いて、再生工程の後に、加熱等することにより、吸着器40及び再生用水回路54、55を含む再生用水流水部50を洗浄及び/又は消毒する(洗浄消毒工程)。なお、加熱による消毒の他、薬液(次亜塩素酸ナトリウム、過酢酸等)による消毒であってもよい。
洗浄消毒工程において、吸着器40及び再生用水回路54、55を含む再生用水流水部50を単独で洗浄及び/又は消毒してよい。これにより、再生用水流水部50を再利用できる。
また、洗浄消毒工程において、再生用水流水部50に加えて、透析液回路21、22を含む透析液循環部20を洗浄及び/又は消毒してよい。これにより、再生用水流水部50及び透析液循環部20を再利用できる。
さらに、再生用水流水部50に加えて、透析液循環部20と、ダイアライザ30及び動脈側血液回路12及び静脈側血液回路13を含む血液循環部10とを洗浄及び/又は消毒してもよい。これにより、再生用水流水部50、透析液循環部20及び血液循環部10を再利用できる。
(6)再び、透析工程を実施するため、吸着器40を透析液循環部20に接続する。
(7)透析工程と再生工程とを交互に繰り返す。
【0029】
このように、透析工程を実施した後に、再生工程を実施することで、吸着器40に吸着された尿毒症物質を脱離でき、吸着器40を再生できるので、吸着器40を透析液循環部20から切り離す必要がなく、透析システム100を簡素にでき、吸着器40を再生するための操作が単純になる。また、透析工程と再生工程とを繰り返すことで吸着器40を何度も再生できるので、吸着器40を透析液循環部20から切り離す必要がなく、透析システム100を簡素にでき、吸着器40を再生するのための操作が単純になる。
なお、再生工程と次の透析工程との間に洗浄消毒工程があるので、再生用水として、RO水に限らず、消毒していない水道水等の通常水をも使用できる。水道から供給される水道水が使用できるので、生理食塩液バッグに収容された水を使用することに比べて、輸送が不要となるという利点や、RO水を使用することに比べて、RO水製造装置が不要となり、透析システム100を水道に接続するだけで済み、簡便となるという利点がある。
【0030】
[第2実施形態]
次に、図面を参照して第2の形態(以下、第2実施形態)について詳細に説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態と比べて、主に、再生用水流水部50を第1接続部11に対して接続自在とする透析システム100である点で異なる。また、第2実施形態と第1実施形態とは、再生時における吸着器40の再生方法が異なる。第1実施形態と共通する点については、説明を省略する場合がある。
【0031】
図2Aは、第2実施形態の治療時における透析システム100の説明図であり、
図2Bは、第2実施形態の再生時における透析システム100の説明図である。
【0032】
(透析システム)
第2実施形態に係る透析システム100は、第1実施形態に係る透析システム100とほとんど同様に、
図2A及び
図2Bに示すように、血液循環部10に対してダイアライザ30を介して接続される透析液循環部20と、透析液循環部20に接続され、多孔質体を有する吸着器40(吸着カラム)と、再生用水流水部50を備える。
【0033】
ただし、具体的には、再生用水流水部50は、
図2Aの状態から
図2Bの状態への変化が示すように、血液循環部10における血液回路12、13をシャント210に接続するための第1接続部11に対して接続自在である。これにより、再生用水流水部50は、第1接続部11を含む血液循環部10及び透析液循環部20を通じて、吸着器40に対して間接的に接続自在である。このように、再生用水流水部50は、第1接続部11に対して接続自在であり、シャント210に接続するための第1接続部11を利用して吸着器40と間接的に接続自在であるので、吸着器40は、再生用水流水部50と透析液循環部20との接続とを切り替えるための切替接続部41を設ける等の特別な構造を必要としない。よって、吸着器40の構造を簡素にできる。
【0034】
(吸着器の再生方法)
続いて、第2実施形態の透析システム100を用いた吸着器40の再生方法を説明する。
本実施形態に係る吸着器40の再生方法は、多孔質体を有する吸着器40の再生に適用できる。
(1)まず、第1実施形態の透析システム100を用いた吸着器40の再生方法と同様に、
図2Aに示すように、血液循環部10の第1接続部11を患者200のシャント210に接続し、多孔質体を有する吸着器40を透析液循環部20に接続して透析液中の尿毒症物質を吸着器40に吸着する(透析工程)。
具体的には、吸着器40が接続された透析液循環部20に設けられた透析液制御装置(不図示)を稼働する。この透析工程により、患者200の血液中の尿毒症物質が吸着器40に吸着され、患者200の血液が浄化される。
(2)次に、透析工程の後、
図2Bに示すように、透析液循環部20における吸着器40を血液循環部10を介して再生用水流水部50に間接的に接続する。すなわち、シャント210に接続するための第1接続部11を、シャント210から再生用水流水部50に切り替えて接続する。
具体的には、血液循環部10の第1接続部11を患者200のシャント210から外し、第1接続部11を再生用水流水部50の第2接続部52に接続することにより、吸着器40を、透析液循環部20及び血液循環部10を介して、間接的に、再生用水流水部50に接続する。
ここで、詳細には、治療時の血液は、シャント210、動脈側穿刺針、動脈側血液回路12、ダイアライザ30、静脈側血液回路13、静脈側穿刺針、シャント210の順に流れ、シャント210と動脈側穿刺針との間、動脈側穿刺針と動脈側血液回路12との間のシャントコネクタ、動脈側血液回路12とダイアライザ30との間、ダイアライザ30と静脈側血液回路13との間、静脈側血液回路13と静脈側穿刺針との間のシャントコネクタ、静脈側穿刺針とシャント210との間、のそれぞれが着脱自在となっている。そのため、例えば、動脈側穿刺針から動脈側血液回路12を外し、静脈側穿刺針から静脈側血液回路13を外して、動脈側血液回路12及び静脈側血液回路13を、穿刺針と血液循環部10との間にあるシャントコネクタを介して再生用水流水部50の第2接続部52に接続してよい。また、例えば、シャント210から動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針を抜針して、動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針を直接的に再生用水流水部50の第2接続部52に接続してもよい。
(3)そして、透析工程の後、再生用水制御装置51を稼働し、再生用水流水部50に流れる再生用水によって吸着器40に吸着された尿毒症物質を脱離する(再生工程)。
この再生工程により、吸着器40に吸着した尿毒症物質が脱離される。
(4)再生工程の際、再生用水流水部50に流れる再生用水を電気分解する。
(5)続いて、再生工程の後に、加熱等することにより、吸着器40を含む透析液循環部20、血液循環部10及び再生用水流水部50を洗浄及び/又は消毒する(洗浄消毒工程)。なお、加熱による消毒の他、薬液(次亜塩素酸ナトリウム、過酢酸等)による消毒であってもよい。これにより、再生用水流水部50、透析液循環部20及び血液循環部10を再利用できる。
(6)再び、透析工程を実施するため、吸着器40を、透析液循環部20及び血液循環部10の第1接続部11を介して、患者200のシャント210に接続する。
(7)透析工程と再生工程とを交互に繰り返す。
【0035】
このように、第2実施形態に係る吸着器40の再生方法は、血液循環部10の第1接続部11を利用するので、第1実施形態に係る吸着器40の再生方法に比べて、吸着器40の切替接続部41を再生用水流水部50との接続と透析液循環部20との接続との間で切り替える切替工程がなく、吸着器40は切替接続部41を必要としないので、吸着器40の再生に伴う操作をより単純にできるとともに、透析システム100を簡素にできる。
【0036】
また、透析工程を実施した後に、再生工程を実施することで、吸着器40に吸着された尿毒症物質を脱離でき、吸着器40を再生できるので、吸着器40を透析液循環部20から切り離す必要がなく、透析システム100を簡素にでき、吸着器40を再生するための操作が単純になる。また、透析工程と再生工程とを繰り返すことで吸着器40を何度も再生できるので、吸着器40を透析液循環部20から切り離す必要がなく、透析システム100を簡素にでき、吸着器40を再生するのための操作が単純になる。
【0037】
吸着器40の再生方法によれば、多孔質体を有し、酵素を有さない吸着器40の再生方法であり、吸着器40を透析液循環部20に接続して透析液中の尿毒症物質を吸着器40に吸着する透析工程と、透析工程の後、再生用水流水部50に流れる再生用水によって吸着器40に吸着された尿毒症物質を脱離する再生工程と、を繰り返すので、治療時において再生用水流水部50を空間的に切り離しておくことができ、特に、吸着器40からの尿毒症物質の脱離(吸着器40の再生)を治療時に同時に行うことが前提の透析システムに比べて、治療時における透析システム100をコンパクトにできる。また、再生用水流水部50を除く透析液循環部20及び血液循環部10から構成される血液浄化装置をコンパクトにでき、血液浄化装置を移設し易くできる。
【0038】
透析システム100によれば、透析液循環部20と、透析液循環部20に接続され、多孔質体を有し、酵素を有さない吸着器40と、を備える透析システム100であり、透析システム100は、再生用水流水部50を備え、再生用水流水部50は、吸着器40に対して接続自在であるので、治療時において再生用水流水部50を空間的に切り離しておくことができ、特に、吸着器40からの尿毒症物質の脱離(吸着器40の再生)を治療時に同時に行うことが前提の透析システムに比べて、治療時における透析システム100をコンパクトにできる。再生用水流水部50を除く透析液循環部20及び血液循環部10から構成される血液浄化装置をコンパクトにでき、血液浄化装置を移設し易くできる。
【0039】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態として、上述した第1実施形態の透析システム100は変更せず、上述した第1実施形態における吸着器の再生方法を変更した実施形態について説明する。
本実施形態に係る吸着器40の再生方法は、多孔質体を有する吸着器40の再生に適用できる。本実施形態に係る吸着器40の再生方法は、上述した第1実施形態で説明した再生方法に対して、再生工程後の洗浄消毒工程を省略又は簡素化できる点が異なる。以下、
図1A及び
図1Bを再度参照して、本実施形態に係る吸着器40の再生方法について具体的に説明する。
(1)まず、上述した第1実施形態の透析システム100を用いた吸着器40の再生方法と同様に、
図1Aに示すように、血液循環部10の第1接続部11を患者200のシャント210に接続し、多孔質体を有する吸着器40を透析液循環部20に接続して透析液中の尿毒症物質を吸着器40に吸着する(透析工程)。
(2)次に、上述した第1実施形態の透析システム100を用いた吸着器40の再生方法と同様に、
図1Bに示すように、吸着器40が接続される循環部を、切替接続部41により、透析液循環部20から再生用水流水部50に切り替える。なお、吸着器40を透析液循環部20から切り離し、その後、吸着器40の切替接続部41を再生用水流水部50との接続に切り替えてもよい。
(3)そして、透析工程の後、再生用水制御装置51を稼働し、再生用水流水部50に流れる再生用水によって吸着器40に吸着された尿毒症物質を脱離する(再生工程)。この際、本実施形態では、再生用水として、塩化物イオンを含む水が利用される。塩化物イオンの濃度は、後述の次亜塩素酸の発生量について必要な量が確保されるように適合されるが、例えば生理食塩液の塩化物イオンの濃度と同等であってよい。従って、再生用水としては、生理食塩液が利用されてもよい。
この再生工程により、吸着器40に吸着した尿毒症物質が脱離される。
(4)再生工程の際、再生用水流水部50に流れる再生用水を電解槽53で電気分解する。この際、再生用水に含まれる塩化物イオンが電極で酸化されて次亜塩素酸が発生する。すなわち、再生用水を電気分解すると、尿素が電気分解されるとともに次亜塩素酸が発生する。
このようにして、本実施形態では、再生工程の際に、次亜塩素酸が発生する。次亜塩素酸は、広く知られているように、水溶液で分解され、消毒剤として利用できる。従って、本実施形態では、再生用水内の次亜塩素酸は、消毒剤として機能できる。具体的には、再生工程中も、再生用水流水部50には、次亜塩素酸を含む再生用水が流れるので、再生用水流水部50を消毒できる。
(5)続いて、再生工程の後に、加熱等することにより、吸着器40及び再生用水回路54、55を含む再生用水流水部50を洗浄及び/又は消毒する(洗浄消毒工程)。なお、加熱による消毒の他、薬液(次亜塩素酸ナトリウム、過酢酸等)による消毒であってもよい。
洗浄消毒工程において、吸着器40及び再生用水回路54、55を含む再生用水流水部50を単独で洗浄及び/又は消毒してよい。これにより、再生用水流水部50を再利用できる。
ただし、本実施形態では、上述のように、再生工程中に、尿素を電気分解する際に副次的に発生する次亜塩素酸を利用して、再生用水流水部50を消毒できるので、(5)で説明した再生工程後の洗浄消毒工程を省略又は簡略化することも可能である。
なお、本実施形態においても、洗浄消毒工程において、再生用水流水部50に加えて又は代えて、透析液回路21、22を含む透析液循環部20を洗浄及び/又は消毒してよい。これにより、透析液循環部20を再利用できる。
さらに、洗浄消毒工程において、再生用水流水部50に加えて又は代えて、透析液循環部20と、ダイアライザ30及び動脈側血液回路12及び静脈側血液回路13を含む血液循環部10とを洗浄及び/又は消毒してもよい。これにより、再生用水流水部50、透析液循環部20及び血液循環部10を再利用できる。
(6)再び、透析工程を実施するため、吸着器40を透析液循環部20に接続する。
(7)透析工程と再生工程とを交互に繰り返す。
【0040】
このように、第3実施形態によっても上述した第1実施形態と同様の効果が得られる。また、第3実施形態によれば、再生用水として塩化物イオンを含む水を利用することで、再生工程中に、尿素を電気分解する際に次亜塩素酸を副次的に発生させることができる。そして、次亜塩素酸を利用して、再生用水流水部50を消毒できるので、再生工程後の洗浄消毒工程(特に再生用水流水部50に関する洗浄消毒工程)を省略又は簡略化することが可能となる。
【0041】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態として、上述した第2実施形態の透析システム100は変更せず、上述した第2実施形態における吸着器の再生方法を変更した実施形態について説明する。
【0042】
本実施形態に係る吸着器40の再生方法は、多孔質体を有する吸着器40の再生に適用できる。本実施形態に係る吸着器40の再生方法は、上述した第2実施形態で説明した再生方法に対して、再生工程後の洗浄消毒工程を省略又は簡素化できる点が異なる。以下、
図2A及び
図2Bを再度参照して、本実施形態に係る吸着器40の再生方法について具体的に説明する。
【0043】
(1)まず、上述した第2実施形態の透析システム100を用いた吸着器40の再生方法と同様に、
図2Aに示すように、血液循環部10の第1接続部11を患者200のシャント210に接続し、多孔質体を有する吸着器40を透析液循環部20に接続して透析液中の尿毒症物質を吸着器40に吸着する(透析工程)。
(2)次に、透析工程の後、上述した第2実施形態の透析システム100を用いた吸着器40の再生方法と同様に、
図2Bに示すように、透析液循環部20における吸着器40を血液循環部10を介して再生用水流水部50に間接的に接続する。すなわち、シャント210に接続するための第1接続部11を、シャント210から再生用水流水部50に切り替えて接続する。
(3)そして、透析工程の後、再生用水制御装置51を稼働し、再生用水流水部50に流れる再生用水によって吸着器40に吸着された尿毒症物質を脱離する(再生工程)。この際、本実施形態では、再生用水として、塩化物イオンを含む水が利用される。上述した第3実施形態の場合と同様、塩化物イオンの濃度は、後述の次亜塩素酸の発生量について必要な量が確保されるように適合されるが、例えば生理食塩液の塩化物イオンの濃度と同等であってよい。従って、再生用水としては、生理食塩液が利用されてもよい。
この再生工程により、吸着器40に吸着した尿毒症物質が脱離される。
(4)再生工程の際、再生用水流水部50に流れる再生用水を電解槽53で電気分解する。この際、上述のように次亜塩素酸が発生する。これについては、上述した第3実施形態の場合と同様である。
このようにして、本実施形態では、再生工程の際に、次亜塩素酸が発生する。次亜塩素酸は、広く知られているように、水溶液で分解され、消毒剤として利用できる。従って、本実施形態では、再生用水内の次亜塩素酸は、消毒剤として機能できる。具体的には、再生工程中も、再生用水流水部50には、次亜塩素酸を含む再生用水が流れるので、再生用水流水部50等を消毒できる。
ここで、本実施形態では、再生用水流水部50には、
図2Bに示すように、血液循環部10が接続されるので、再生用水流水部50内の再生用水回路54、55のみならず、血液循環部10内の動脈側血液回路12、及び静脈側血液回路13をも、再生用水に含まれる次亜塩素酸に起因して消毒できる。また、血液循環部10に接続されるダイアライザ30も消毒できる。また、血液循環部10を介してダイアライザ30に至る再生用水は、更に、ダイアライザ30を介して透析液循環部20へと流れることができる。従って、本実施形態では、透析液循環部20内の透析液回路21等を、再生用水に含まれる次亜塩素酸に起因して消毒できる。
(5)続いて、再生工程の後に、加熱等することにより、吸着器40を含む透析液循環部20、血液循環部10及び再生用水流水部50を洗浄及び/又は消毒する(洗浄消毒工程)。なお、加熱による消毒の他、薬液(次亜塩素酸ナトリウム、過酢酸等)による消毒であってもよい。これにより、再生用水流水部50、透析液循環部20及び血液循環部10を再利用できる。
ただし、本実施形態では、上述のように、再生工程中に、尿素を電気分解する際に副次的に発生する次亜塩素酸を利用して、透析液循環部20、血液循環部10及び再生用水流水部50等を消毒できるので、(5)で説明した再生工程後の洗浄消毒工程を省略又は簡略化することも可能である。
(6)再び、透析工程を実施するため、吸着器40を、透析液循環部20及び血液循環部10の第1接続部11を介して、患者200のシャント210に接続する。
(7)透析工程と再生工程とを交互に繰り返す。
【0044】
このように、第4実施形態によっても上述した第2実施形態と同様の効果が得られる。また、第4実施形態によれば、再生用水として塩化物イオンを含む水を利用することで、再生工程中に、尿素を電気分解する際に次亜塩素酸を副次的に発生させることができる。そして、次亜塩素酸を利用して、透析液循環部20、血液循環部10及び再生用水流水部50等を消毒できるので、再生工程後の洗浄消毒工程を省略又は大幅に簡略化することが可能となる。
【0045】
[尿素の電気分解の試験]
次に、
図3を参照して、尿素の電気分解の試験の結果について概説する。
【0046】
図3は、尿素の電気分解の試験の結果を示す表図である。
図3では、横軸に処理時間を取り、縦軸に尿素濃度を取り、カラム入口濃度の時間変化特性と、カラム出口濃度の時間変化特性とが示されている。
【0047】
試験条件は、以下の通りとした。
(1)上述した再生用水としての原液は、生理食塩液(0.9%の濃度の塩化ナトリウム水溶液)であり、量は1リットルとした。
(2)吸着器40の多孔質体としてのカラムは、直径120mmかつ高さ210mmの円柱状の形態とし、吸着剤は2300ml充填した。また、あらかじめ模擬治療(尿素濃度75mg/dL)で尿素等を吸着済みのものを用いた。なお、カラムに対する原液の流れ方向は、下から上に向かう方向である。
(3)電解槽53に関して、電極材質は、陽極及び陰極ともに白金被覆チタン電極とした。電極面積は、陽極が662cm2であり、陰極が607cm2であり、印加電圧は直流電圧で5Vとした。
(4)再生用水ポンプとしてはチューブポンプが使用され、流量は50mL/minとした。
(5)再生用水としての原液は、カラムを通り、電解槽53にて電気分解処理を受けて、再度カラムを通る循環式で使用した。
【0048】
図3において、カラム入口濃度とは、上記のカラムを通過する直前の再生用水における尿素の濃度であり、カラム出口濃度とは、上記のカラムを通過した直後の再生用水における尿素の濃度である。
【0049】
図3に示すように、カラム入口濃度は、処理開始後から急峻に低下している。このことから、尿素の電気分解が効率的に実現されていることが分かる。なお、カラム入口濃度の初期値(処理開始時の値)は、カラム出口濃度の初期値(処理開始時の値)と同じであり、模擬治療で用いた尿素濃度(75mg/dL)に略対応した濃度を示している。このことから、再生用水によりカラムからの尿素の脱離がすぐに開始されることがわかる。
【0050】
図3から、カラム出口濃度は、処理が進行するにつれて(処理時間の増加に伴って)、低下していることが分かる。このことから、再生用水がカラムを通過すると、カラムからの尿素の脱離に伴ってカラムに吸着している尿素が減少していくことが分かる。そして、カラムに吸着している尿素が略無くなると、カラム出口濃度が略ゼロになるとともに、カラム入口濃度が略ゼロになる。この場合、処理時間が約7時間となると、カラム出口濃度及びカラム入口濃度が略ゼロになり、これ以上処理を続けてもカラムの再生に実質的に寄与しない状態となる。
【0051】
ここで、カラム入口濃度の時間変化特性と、カラム出口濃度の時間変化特性との差分は、カラムから除去された尿素の濃度に対応し、従って、これら2つの曲線の差分の時間積分値は、カラムから除去された尿素の総量に相関する。
図3に示す結果から、カラムから除去された尿素の総量を計算すると、カラムに吸着した尿素の総量と略一致することから、カラムに吸着した尿素が略すべて脱離しており、カラムが再生されたことを確認できた。すなわち、上述した実施形態の有効性を確認できた。
【0052】
以上、各実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施形態の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 血液循環部
11 第1接続部
12 動脈側血液回路
13 静脈側血液回路
20 透析液循環部
21 透析液回路
22 透析液回路
30 ダイアライザ
40 吸着器
41 切替接続部
50 再生用水流水部
51 再生用水制御装置
52 第2接続部
53 電解槽
54 再生用水回路
55 再生用水回路
100 透析システム
200 患者
210 シャント