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特許7257969トリフルリジン由来の類縁物質の検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】トリフルリジン由来の類縁物質の検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/88 20060101AFI20230407BHJP
   C07D 239/557 20060101ALI20230407BHJP
   C07H 19/073 20060101ALI20230407BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20230407BHJP
   G01N 30/34 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
G01N30/88 X
C07D239/557
C07H19/073
G01N30/26 A
G01N30/26 E
G01N30/34 E
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019563983
(86)(22)【出願日】2019-01-04
(86)【国際出願番号】 JP2019000010
(87)【国際公開番号】W WO2019135405
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】16/040,734
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】201810821041.5
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】P 2018000881
(32)【優先日】2018-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207827
【氏名又は名称】大鵬薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 大典
(72)【発明者】
【氏名】小島 章代
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-010565(JP,A)
【文献】国際公開第13/122134(WO,A1)
【文献】HORSCH, Ph. et al.,International Journal of Pharmaceutics,2001年,Vol.222, No.2,pp.205-215,https://tu-dresden.de/ing/maschinenwesen/if/fue/ressourcen/dateien/studium/lehrunterlagen/ft_e/zat_1_2014?lang=en
【文献】JONES, M. F.,Journal of Pharmacy and Pharmacology,1981年,Vol.33, No.5,pp.274-278
【文献】BALANSARD, G.,Journal of Chromatography,1985年,Vol.348, No.1,pp.299-303
【文献】LEE, M. G.,International Journal of Pharmaceutics,1980年,Vol.5, no.1,pp.19-24
【文献】COULIER L. et al.,Analytical Chemistry,2006年,Vol.78, No.18,pp.6573-6582
【文献】HAGINOYA, N. et al.,Bioconjugate Chemistry,Vol.8, No.3,1997年,pp.271-280
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 - 30/96
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリフルリジン又はその塩を含む試料を有機相及び水相からなる移動相を用いる高速液体クロマトグラフィーに供する工程を含む、トリフルリジン由来の類縁物質を検出するための方法であって、
前記高速液体クロマトグラフィーに供する工程が、以下の要件を満たすステップ1及び2
ステップ1:移動相全体に対する有機相の割合が1~14容量%である。
ステップ2:ステップ1の後、移動相全体に対する有機相の割合を増加させるようグラジェントをかける。
を含み、前記類縁物質が下記類縁物質1~6の少なくとも1つ
類縁物質1:5-カルボキシウラシル、
類縁物質2:5-カルボキシ-2’-デオキシ-ウリジン、
類縁物質3:2’-デオキシ-5-メトキシカルボニルウリジン、
類縁物質4:トリフルオロチミン、
類縁物質5:5-メトキシカルボニルウラシル、
類縁物質6:5’-(4-クロロフェニルカルボキシ)-2’-デオキシ-5-トリフルオロメチルウリジン。
を含み、ステップ1で類縁物質1~5の少なくとも1つを検出し、ステップ2で類縁物質6を検出する、方法。
【請求項2】
ステップ1がアイソクラティック状態で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機相がアセトニトリルである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ1における移動相全体に対する有機相の割合が2~10容量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ2の終了時における移動相全体に対する有機相の割合が25~70容量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ2において移動相全体に対する有機相の割合を1分間に0.9容量%以上増加させるグラジェントをかける、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ2の測定時間が10~50分間である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ2の終了時における流量がステップ1の流量の1.0~1.5倍である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
水相がさらにリン酸塩を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
水相がさらにメタノールを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の不純物検出の際に標準品として用いるための5’-(4-クロロフェニルカルボキシ)-2’-デオキシ-5-トリフルオロメチルウリジン(類縁物質6)。
【請求項12】
5’-(4-クロロフェニルカルボキシ)-2’-デオキシ-5-トリフルオロメチルウリジン(類縁物質6)の、トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の不純物検出の際の標準品としての使用。
【請求項13】
5’-(4-クロロフェニルカルボキシ)-2’-デオキシ-5-トリフルオロメチルウリジン(類縁物質6)からなる、トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の不純物検出の際の標準品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速液体クロマトグラフィーによるトリフルリジン含有製剤の類縁物質の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に医薬品の類縁物質の測定は、液体クロマトグラフィーにより行われており、水及び有機溶媒の混液を移動相とした順相又は逆相カラムの系がよく用いられる。古くより、Viropic(登録商標)の名前でトリフルリジンは感染治療用の点眼剤として用いられている。出願人の製品であるロンサーフ(登録商標)は、トリフルリジン及びチピラシルを含有する製剤である。当該トリフルリジン及びチピラシルを含む医薬品は、抗腫瘍剤として販売されており、その製剤について複数の報告がある(特許文献1、2、3、4)。
【0003】
そして、トリフルリジンの類縁物質として、5-トリフルオロメチルウラシル、及び5-カルボキシウラシルが知られており、高速液体クロマトグラフィーでこれらを測定している報告がある(非特許文献1)。
【0004】
トリフルリジンの類縁物質である5-トリフルオロメチルウラシルが、様々な逆相液体クロマトグラフィーの条件で測定できることが報告されている(非特許文献2)。
【0005】
トリフルリジンの腫瘍細胞への取込みを測定するために、液体クロマトグラフィーを用いることが報告されている(非特許文献3)。
【0006】
トリフルリジンのTK1の基質特異性の判断に、液体クロマトグラフィーが用いられていることが報告されている(非特許文献4)。
【0007】
酵素合成におけるトリフルリジンの測定において、液体クロマトグラフィーが用いられていることが報告されている(非特許文献5)。
【0008】
また、トリフルリジン及びチピラシルを含む医薬品について、定量的な液体クロマトグラフィーの分析が報告されている(非特許文献6、7、8)。
【0009】
トリフルリジンの類縁物質である5-トリフルオロメチルウラシルの測定のために、アセトニトリルを用いた様々な高速液体クロマトグラフィーの条件が報告されている(非特許文献2)。
【0010】
トリフルリジンの腫瘍細胞への取込みを測定するために、アセトニトリルを用いた高速液体クロマトグラフィーの条件が報告されている(非特許文献3)。
【0011】
トリフルリジンのTK1の基質特異性の判断のために、アセトニトリルを用いた高速液体クロマトグラフィーの条件が報告されている(非特許文献4)。
【0012】
酵素合成におけるトリフルリジンを確認するために、酢酸トリメチルアンモニウムを添加し、グラジエントをかけた高速液体クロマトグラフィーの条件が報告されている(非特許文献5)。
【0013】
ロンサーフに含まれるトリフルリジンとチピラシルの定量的な測定のために、アセトニトリルを用いた高速液体クロマトグラフィーの条件が報告されている(非特許文献6、7、8)。
【0014】
点眼剤としてのトリフルリジンについて、メタノールを用いた高速液体クロマトグラフィーの条件が報告されている(非特許文献9、10)。
【0015】
トリフルリジンについて、酢酸バッファー、トリフルオロ酢酸、もしくは酢酸を添加した移動相を用いた高速液体クロマトグラフィーの条件が報告されている(非特許文献11、12、特許文献6、13)。
【0016】
また、トリフルリジンの純度を確認するために、高速液体クロマトグラフィーを用いているが、その条件は記載されていない(特許文献7)。
【0017】
しかし、これらの報告には、トリフルリジンの類縁物質を2つのグラジェント条件を用いたステップによって高速液体クロマトグラフィーで検出する方法についての示唆はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】WO2013/122134
【文献】WO2013/122135
【文献】WO2006/080327
【文献】WO96/30346
【文献】CN106749194A
【文献】CN105198947A
【文献】CN105461772A
【文献】日本特許4603274
【文献】日本特許4441313
【文献】日本特許4437786
【非特許文献】
【0019】
【文献】P.Horschら、International Journal of Pharmaceutics 222(2001)、p.205-215
【文献】D.V.Moiseevら、Pharmaceutical Chemistry Journal 41,1(2007)、p.25-33
【文献】N.TANAKAら、Oncology Reports 32(2014)、p.2319-2326
【文献】K.SAKAMOTOら、International Journal of Oncology 46(2015)、p.2327-2334
【文献】A.Fresco-Taboadaら、Catalysis Today 259(2015)、p.197-204
【文献】M.S.H.Rizwanら、International Journal of Innovative Pharmaceutical Sciences and Research 5(2017)、p.32-42
【文献】S.GODAYら、International Journal of Research in Applied,Natural and Social Sciences 5(2017)、p.93-104
【文献】K.Jogiら、International Journal of Research in Pharmacy and Chemistry 7(2017)、p.63-70
【文献】B.Pawら、Pharmazie 7(1997)、p.551-552
【文献】T.Briggleら、Journal of Chromatography 381(1986)、p.343-355
【文献】M.Riegelら、Journal of Chromatography 568(1991)、p.467-474
【文献】G.Balansardら、Journal of Chromatography 348(1985)、p.299-303
【文献】T.Kawauchiら、Journal of Chromatography 751(2001)、p.325-330
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明が解決すべき課題は、トリフルリジン又はその塩を含む試料から、トリフルリジン由来の類縁物質を2つのグラジェント条件を用いたステップにより高速液体クロマトグラフィーで検出し得る新規方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の条件下で高速液体クロマトグラフィーを用いることより、トリフルリジン又はその塩の類縁物質を効率よく検出できると共に、その品質を保証するのに適した検出方法を見出した。
【0022】
したがって、本発明は、次の[1]~[31]を提供するものである。
【0023】
[1]トリフルリジン又はその塩を含む試料を有機相及び水相からなる移動相を用いる高速液体クロマトグラフィーに供する工程を含む、トリフルリジン由来の類縁物質を検出するための方法であって、前記高速液体クロマトグラフィーに供する工程が、以下の要件を満たすステップ1及び2を含む、方法:
ステップ1:移動相全体に対する有機相の割合が1~14容量%である。
ステップ2:ステップ1の後、移動相全体に対する有機相の割合を増加させるようグラジェントをかける。
【0024】
[2]前記類縁物質が下記類縁物質1~6からなる群より選ばれる少なくとも1つである、[1]に記載の方法:
類縁物質1:5-カルボキシウラシル、
類縁物質2:5-カルボキシ-2’-デオキシ-ウリジン、
類縁物質3:2’-デオキシ-5-メトキシカルボニルウリジン、
類縁物質4:トリフルオロチミン、
類縁物質5:5-メトキシカルボニルウラシル、
類縁物質6:5’-(4-クロロフェニルカルボキシ)-2’-デオキシ-5-トリフルオロメチルウリジン。
【0025】
[3]ステップ1で類縁物質1~5を検出し、ステップ2で類縁物質6を検出する、[1]又は[2]に記載の方法。
【0026】
[4]ステップ1がアイソクラティック状態で行われる、[1]~[3]のいずれか一項に記載の方法。
【0027】
[5]有機相がアセトニトリルである、[1]~[4]のいずれか一項に記載の方法。
【0028】
[6]ステップ1における移動相全体に対する有機相の割合が2~10容量%である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の方法。
【0029】
[7]ステップ2の終了時における移動相全体に対する有機相の割合が25~70容量%である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の方法。
【0030】
[8]ステップ2において移動相全体に対する有機相の割合を1分間に0.9容量%以上増加させるグラジェントをかける、[1]~[7]のいずれか一項に記載の方法。
【0031】
[9]ステップ2の測定時間が10~50分間である、[1]~[8]のいずれか一項に記載の方法。
【0032】
[10]ステップ2の終了時における流量がステップ1の流量の1.0~1.5倍である、[1]~[9]のいずれか一項に記載の方法。
【0033】
[11]水相がさらにリン酸塩を含む、[1]~[10]のいずれか一項に記載の方法。
【0034】
[12]水相がさらにメタノールを含む、[1]~[11]のいずれか一項に記載の方法。
【0035】
[13]トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の品質管理に用いられる5-カルボキシ-2’-デオキシ-ウリジン(類縁物質2)。
【0036】
[14]トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の不純物検出の際に標準品として用いるための5-カルボキシ-2’-デオキシ-ウリジン(類縁物質2)。
【0037】
[15]5-カルボキシ-2’-デオキシ-ウリジン(類縁物質2)の、トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の不純物検出の際の標準品としての使用。
【0038】
[16]5-カルボキシ-2’-デオキシ-ウリジン(類縁物質2)からなる、トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の不純物検出の際の標準品。
【0039】
[17]トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の品質管理に用いられる2’-デオキシ-5-メトキシカルボニルウリジン(類縁物質3)。
【0040】
[18]トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の不純物検出の際に標準品として用いるための2’-デオキシ-5-メトキシカルボニルウリジン(類縁物質3)。
【0041】
[19]2’-デオキシ-5-メトキシカルボニルウリジン(類縁物質3)の、トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の不純物検出の際の標準品としての使用。
【0042】
[20]2’-デオキシ-5-メトキシカルボニルウリジン(類縁物質3)からなる、トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の不純物検出の際の標準品。
【0043】
[21]トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の品質管理に用いられる5-メトキシカルボニルウラシル(類縁物質5)。
【0044】
[22]トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の不純物検出の際に標準品として用いるための5-メトキシカルボニルウラシル(類縁物質5)。
【0045】
[23]5-メトキシカルボニルウラシル(類縁物質5)の、トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の不純物検出の際の標準品としての使用。
【0046】
[24]5-メトキシカルボニルウラシル(類縁物質5)からなる、トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の不純物検出の際の標準品。
【0047】
[25]5’-(4-クロロフェニルカルボキシ)-2’-デオキシ-5-トリフルオロメチルウリジン(類縁物質6)。
【0048】
[26]トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の品質管理に用いられる5’-(4-クロロフェニルカルボキシ)-2’-デオキシ-5-トリフルオロメチルウリジン(類縁物質6)。
【0049】
[27]トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の不純物検出の際に標準品として用いるための5’-(4-クロロフェニルカルボキシ)-2’-デオキシ-5-トリフルオロメチルウリジン(類縁物質6)。
【0050】
[28]5’-(4-クロロフェニルカルボキシ)-2’-デオキシ-5-トリフルオロメチルウリジン(類縁物質6)の、トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の不純物検出の際の標準品としての使用。
【0051】
[29]5’-(4-クロロフェニルカルボキシ)-2’-デオキシ-5-トリフルオロメチルウリジン(類縁物質6)からなる、トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の不純物検出の際の標準品。
【0052】
[30][1]~[12]のいずれか1項に記載の方法を実施する工程を含む、トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の製造方法。
【0053】
[31][1]~[12]のいずれか1項に記載の方法を実施する工程を含む、トリフルリジン又はその塩、及びチピラシル又はその塩を含む配合剤の品質管理方法。
【発明の効果】
【0054】
本発明は、有機相及び水相からなる移動相を用いる高速液体クロマトグラフィーにより、トリフルリジン又はその塩の類縁物質を効率よく検出可能であり、かつ、その品質を保証するのに適したものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】実施例1-1におけるクロマトグラムを示す。
図2】実施例1-3におけるクロマトグラムを示す。
図3】実施例2-1におけるクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明におけるトリフルリジン(FTD)とは、α,α,α-トリフルオロチミジンであり、下記の構造を持つ化合物である。
【0057】
【化1】
【0058】
本発明におけるトリフルリジンには、光学異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体等の異性体を有する場合には、特に明記しない限り、いずれの異性体も混合物も本発明化合物に包含される。
【0059】
本発明において、特にそうでないことを明記しない限り、塩とは、薬学的に許容される塩を意味し、塩基付加塩又は酸付加塩を挙げることができる。
【0060】
該塩基付加塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;例えばアンモニウム塩;例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、プロカイン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩等の有機アミン塩等が挙げられる。
【0061】
該酸付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩等の無機酸塩;例えば酢酸塩、ギ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、トリフルオロ酢酸塩等の有機酸塩;例えばメタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩等が挙げられる。
【0062】
本発明に用いられるトリフルリジン又はその塩として、好ましくは塩を形成していないトリフルリジンのフリー体である。
【0063】
本発明の方法において、トリフルリジン又はその塩と溶媒を調整して試料とし、これを高速液体クロマトグラフィーへ注入することにより、トリフルリジンの類縁物質を検出することができる。
【0064】
本発明における試料は、トリフルリジンの類縁物質を含みうる。類縁物質としては類縁物質1~6の化合物が挙げられる。
【0065】
【表1】
【0066】
類縁物質1は、5-カルボキシウラシルである。2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸と称されることもある。
【0067】
類縁物質2は、5-カルボキシ-2’-デオキシ-ウリジンである。1-((2R,4R,5R)-4-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸と称されることもある。
【0068】
類縁物質3は、2’-デオキシ-5-メトキシカルボニルウリジンである。1-((2R,4R,5R)-4-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸メチルと称されることもある。
【0069】
類縁物質4は、トリフルオロチミンである。5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンと称されることもある。
【0070】
類縁物質5は、5-メトキシカルボニルウラシルである。2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボン酸メチルと称されることもある。
【0071】
類縁物質6は、5’-(4-クロロフェニルカルボキシ)-2’-デオキシ-5-トリフルオロメチルウリジンである。4-クロロ安息香酸((2R,3R,5R)-5-(2,4-ジオキソ-5-(トリフルオロメチル)-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-3-ヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)メチルと称することもある。
【0072】
本発明に用いられる試料としては、製剤や原薬そのものから調製した試料だけでなく、安定性などを確認するための試験において調製された試料、各類縁物質の保持時間等を確認するために各類縁物質を添加した試料、製剤や原薬の製造工程を確認するために調製された試料などにも用いることができる。試料は、ロンサーフ(登録商標)に配合されるチピラシル又はその塩を含むものであっても、これを実質的に含まないものであっても、含まないものであってもよい。
【0073】
本発明で用いることができる製剤には、トリフルリジン又はその塩を含む。そして、必要に応じて薬学的に許容される担体を配合し、予防又は治療目的に応じて各種の投与形態を採用可能であり、該形態としては、例えば、経口剤、点眼剤、注射剤、坐剤、軟膏剤、貼付剤等のいずれでもよく、好ましくは、経口剤が採用される。これらの投与形態は、各々当業者に公知慣用の製剤方法により製造できる。
【0074】
薬学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機或いは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等として配合される。また、必要に応じて防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、安定化剤等の製剤添加物を用いることもできる。
【0075】
経口用固形製剤を調製する場合は、トリフルリジン又はその塩に賦形剤、必要に応じて、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等を加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。
【0076】
点眼剤を調整する場合は、トリフルリジン又はその塩に溶解補助剤、等張化剤、緩衝剤、防腐剤などを使用することにより製造することができる。
【0077】
また、上記投与形態を有する薬剤の1日あたりの投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって適宜決定することができる。
【0078】
本発明において用いられる高速液体クロマトグラフィーは、通常市販されているものを用いることができる。
【0079】
クロマトグラフィーで用いられるカラムには、有機相を移動相にして脂溶性のある化合物を分離する順相カラムと、水相を移動相にして化合物を分離する逆相カラムが知られているが、高速液体クロマトグラフィーでは、逆相カラムが使用されることが多く、本発明においても逆相クロマトグラフィーが好ましい。
【0080】
本発明において使用できる高速液体クロマトグラフィーのカラムは、シリカゲルカラム、表面をオクタデシルシリル基で修飾されたシリカゲルカラム(ODSカラム又はC18カラム)、表面をオクチル基で修飾されたシリカゲルカラム(C8カラム)、表面をシアノプロピル基で修飾されたシリカゲルカラム(CNカラム)、表面をフェネチル基で修飾されたシリカゲルカラム(Phカラム)、表面をアミノプロピル基で修飾されたシリカゲルカラム(NHカラム)、表面をジヒドロキシプロピル基で修飾されたシリカゲルカラム(Diolカラム)、各種ポリマーで充填されたカラム(ポリマーカラム)、イオン交換樹脂で充填されたカラム(イオン交換カラム)、などから選択されるが、本発明においてはODSカラムが好ましい。
【0081】
ODSカラムとしては、シリカゲルの粒径、細孔径、オクタデシルシリル基の結合方法、オクタデシルシリル基の置換度等が異なる種々のものを使用することができる。本発明においては、高純度シリカゲルが使用され、オクタデシル化後に残存したシラノールを低分子のシリル化剤で処理したODSカラム(エンドキャッピングされたODSカラム)が好ましい。
【0082】
ODSカラムとしては、シリカゲルの粒径、細孔径、オクタデシルシリル基の結合方法、オクタデシルシリル基の置換度等が異なる種々のものを使用することができる。本発明においては、シリカゲルの平均粒径は、例えば、2~10μmが好ましく、3~5μmがより好ましい。シリカゲルの平均粒径は、レーザー回折法等により測定することができる。シリカゲルの平均細孔径は、例えば、6~20nmが好ましく、8~13nmがより好ましい。シリカゲルの平均細孔径は、ガス吸着法等により測定することができる。シリカゲルにおけるオクタデシルシリル基の結合様式としては、例えば、モノメリック様式、ポリメリック様式等が好ましい。オクタデシルシリル基の置換度は、種々の方法により測定することができる。シリカゲルの炭素量は、例えば、3%以上が好ましく、10%以上がより好ましい。シリカゲルの炭素量は、例えば、25%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。シリカゲルの炭素量は、種々の方法により測定することができる。
【0083】
高速液体クロマトグラフィーの移動相において用いられる有機相としては、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、塩化メチレンなどの非極性溶媒、アセトン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどの非プロトン性極性溶媒、酢酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリルなどを用いることができる。これらの溶媒は、1種単独で、又は2種以上を混合溶媒として用いることができる。本発明における有機相としては、メタノール、又はアセトニトリルが好ましく、アセトニトリルがより好ましい。また、有機相には10%以下の水が含まれていてもよい。
【0084】
高速液体クロマトグラフィーの移動相に用いられる水相は水のみだけでなく、10%以下の有機溶媒が含まれていてもよいが、水相全体に対して10%以下のメタノールが含まれている水相が好ましく、5%以下のメタノールが含まれていることがより好ましく、2%以下のメタノールが含まれていることがさらに好ましく、0.1~1%のメタノールが含まれていることが特に好ましい。
【0085】
高速液体クロマトグラフィーの移動相には、再現性を確保する観点から様々な緩衝剤を添加することができる。例えば、酢酸又はその塩、クエン酸又はその塩、酒石酸又はその塩、リン酸又はその塩を添加することができる。酢酸又はその塩としては、酢酸、酢酸ナトリウムが挙げられる。クエン酸又はその塩としては、クエン酸、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウムが挙げられる。酒石酸又はその塩には、酒石酸、酒石酸ナトリウム、リン酸又はその塩としては、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが挙げられる。本発明における水相の添加剤としては、測定物質の持つ性質、測定の際に得られるピークの形状、及び測定の再現性のから、リン酸塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウムがより好ましい。これらの添加剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
本発明に用いることができる緩衝剤の濃度は、高速液体クロマトグラフィーの測定中に緩衝剤が析出しない濃度であれば適宜調整することができる。好ましくは、1~50mMであり、より好ましくは5~40mMであり、さらに好ましくは10~30mMであり、特に好ましく18~20mMである。
【0087】
高速液体クロマトグラフィーの移動相では、有機相と水相の混液が用いられる。本発明においては、類縁物質1、2、3、4、5、及びトリフルリジンの保持時間における移動相全体に対する有機相の割合が、1~14容量%が好ましく、2~10容量%がより好ましく、3~7容量%が特に好ましい。
【0088】
高速液体クロマトグラフィーの移動相では、有機相と水相の混液が用いられるが、それらの割合は測定中に変化させることが多く、グラジェントをかけると呼ばれる。通常、目的とされる化合物の保持時間及び目的とする化合物と類縁物質との分離を考慮して、グラジェントをかけることが多い。
【0089】
本発明においては、ステップ1とステップ2のグラジェント条件を含むことを特徴とする。
ステップ1:移動相全体に対する有機相の割合が、1~14容量%である。
ステップ2:ステップ1の後、移動相全体に対する有機相の割合をさらに増加させるようグラジェントをかける。
【0090】
ステップ1においては、移動相にグラジェントをかけてもアイソクラティック状態でもよいが、アイソクラティック状態が好ましい。また、ステップ1における移動相全体に対する有機相の割合は1~14容量%が挙げられるが、2~10容量%がより好ましく、3~7容量%が特に好ましい。本発明において、「ステップ1における移動相全体に対する有機相の割合がX~Y容量%である」とは、ステップ1の間、上記割合がX~Y容量%の範囲にあることを意味する。
【0091】
ステップ1の開始は、試料を高速液体クロマトグラフィーに注入してから5分以内であり、3分以内が好ましく、1分以内がより好ましく、注入と同時が特に好ましい。
【0092】
ステップ1の終了は、試料を高速液体クロマトグラフィーに注入してから13~30分後である。トリフルリジンが、ベースラインの凹み及びゴーストピークと重複しないように考慮し、ステップ1の終了は、当該注入から15~28分後が好ましく、17~25分後が特に好ましい。
【0093】
ステップ1における測定時間は、上記の開始と終了の範囲にあれば特に制限はないが、15~28分間が好ましく、17~25分間がより好ましい。
【0094】
ステップ1における移動相の流量の上限は、高速液体クロマトグラフィーで通常用いられるものであればよいが、各類縁物質の保持時間の分離を考慮し、流量は、2.5mL/min以下が好ましく、2.0mL/min以下がより好ましく、1.5mL/min以下がさら好ましく、1.3mL/min以下がなおさらに好ましく、1.1mL/min以下が特に好ましい。また、ステップ1における移動相の流量の範囲は特に限定されないが、例えば、0.5~2.5mL/minが好ましく、0.5~2.0mL/minがより好ましく、0.7~1.5mL/minがさらに好ましく、0.8~1.3mL/minがなおさらに好ましく、0.9~1.1mL/minが特に好ましい。
【0095】
このようにして、ステップ1では類縁物質1、2、3、4、及び5からなる群より選ばれる1つ以上のトリフルリジンの類縁物質を検出することができる。好ましくは、ステップ1では類縁物質1、2、3、4、及び5を検出することができる。
【0096】
また、ステップ1をよりアイソクラティック状態な状態で行う観点から、ステップ1において類縁物質1、2、3、4及び5のうち少なくとも1種が検出された場合、類縁物質1、2、3、4及び5のうちステップ1において検出されたもののそれぞれの保持時間における移動相全体に対する有機相の割合のうち、最大値と最小値との差が、移動相全体の5容量%以下であることが好ましく、1容量%以下であることが特に好ましい。
【0097】
ステップ2においては、移動相にグラジェントをかけて有機相の割合を増加させる。ステップ1でグラジェントをかけていた場合、ステップ2では、より有機相の割合を増加させるようグラジェントをかける。ステップ1でアイソクラティック状態の場合、ステップ2では有機相の割合を増加させるようグラジェントをかける。
【0098】
ステップ2の終了時における移動相全体に対する有機相の割合は、25~70容量%であり、30~65容量%がより好ましく、35~60容量%が特に好ましい。本発明において、ステップ2の終了時とは、ステップ2のグラジェントをかけるのを止めて移動相全体に対する有機相の割合を下げ始めた時点を意味する。
【0099】
ステップ2の開始は、ステップ1の終了後3分以内に開始すれば特に制限はないが、1分以内が好ましく、ステップ1の終了と当時がより好ましい。
【0100】
ステップ2の終了は、類縁物質6の保持時間より後であれば特に制限はないが、試料を高速液体クロマトグラフィーに注入してから35~65分後であり、40~60分後がより好ましい。
【0101】
ステップ2における測定時間は、類縁物質6の保持時間が測定できれば特に制限はないが、10~50分間が好ましく、15~45分間がより好ましい。
【0102】
ステップ2におけるグラジェントは、移動相全体に対する有機相の割合を増加させるものであれば特に制限はないが、1分間に移動相全体に対する有機相の割合を0.9容量%以上増加させることが好ましく、1分間に1.0容量%以上増加させることがより好ましく、1分間に2.0容量%以上増加させることが特に好ましい。移動相全体に対する有機相の割合の増加の上限は特に限定されないが、例えば、1分間に10容量%以下等が好ましく、1分間に5.0容量%以下等がより好ましい。本明細書において、時間当たり(例えば、1分間に)移動相全体に対する有機相の割合をX容量%増加するとは、単位時間当たり、移動相全体に対する有機相の割合を、移動相全体100容量%に対し、X容量%増加することを意味する。また、本発明においては、ステップ2の測定時間中における、移動相全体に対する有機相の割合の変化(測定時間中における移動相全体に対する有機相の割合のうち、最大値と最小値との差)を移動相全体の30容量%以上にすることが好ましく、50容量%以上にすることが特に好ましい。ステップ2の測定時間中における、移動相全体に対する有機相の割合の変化の上限は特に限定されないが、例えば、移動相全体の80容量%以下にすることが好ましく、70容量%以下にすることが特に好ましい。
【0103】
ステップ2における移動相の流量は、高速液体クロマトグラフィーで通常用いられるものであればよいが、各類縁物質の保持時間の分離を考慮し、流量は、2.5mL/min以下が好ましく、2.0mL/min以下がより好ましく、1.5mL/min以下がさら好ましい。また、ステップ2における移動相の流量の範囲は特に限定されないが、例えば、0.5~2.5mL/minが好ましく、0.5~2.0mL/minがより好ましく、1.0~1.5mL/minがさらに好ましい。全体の測定時間を短縮させる観点から、ステップ2の開始後から徐々に流量を上げることも可能であり、ステップ2の終了時における流量がステップ1の終了時の流量の1.0~1.5倍が好ましい。
【0104】
このようにして、ステップ2では類縁物質6を検出することができる。
【0105】
本発明においては、上記の添加剤の他に、イオン対試薬を添加することができる。イオン対試薬には、ペンタンスルホン酸ナトリウム、ヘキサンスルホン酸ナトリウム、ヘプタンスルホン酸ナトリウム、オクタンスルホン酸ナトリウム、ドデカンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸又はその塩(好ましくはアルキルスルホン酸ナトリウム)、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸又はその塩(好ましくはアルキル硫酸ナトリウム)、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。
【0106】
本発明における移動相(典型的には水相)のpHは、上記の添加剤などにより適宜調整することができるが、好ましくは2.0~5.0である。
【0107】
本発明における方法で用いることができる検出波長は、各類縁物質の性質を考慮して208~280nmとすることができ、好ましくは208~240nmであり、より好ましくは208~212nmである。
【0108】
本発明における方法で用いることができるカラム内の移動相の温度は適宜設定することができる。外部環境の影響、再現性などを考慮し、好ましくは当該温度を一定に保つことであり、より好ましくは25~50℃であり、さらに好ましくは35~45℃であり、特に好ましくは、40~44℃である。なお、当該温度を一定に保つにあたり、カラム全体の温度を制御するだけでなく、プレヒートミキサーなどを用いることができる。
【0109】
本発明における高速液体クロマトグラフィーでは、適宜、注入量、カラム内温度、などを変更することができる。
【0110】
これらの類縁物質のうち、類縁物質1~5は、公知の方法により合成できるか、又は市販品により入手することができる。また、類縁物質6はトリフルリジンや市販の化合物から公知の方法により合成することができるか、後述の方法により合成することができる。このようにして得られた類縁物質の高速液体クロマトグラフィーの保持時間、マススペクトル、フォトダイオードアレイ(PDA)と、本発明により検出された類縁物質のそれらとを比較することで、類縁物質を特定することができる。
【0111】
さらに、これらの類縁物質は、外部標準を用いる方法、内部標準を用いる方法のいずれの方法によっても定量的に測定することができる。
【0112】
これらの類縁物質が不純物として医薬品や製剤に含まれうる場合、これらの類縁物質は医薬品規制調和国際会議におけるガイドライン(ICH-Q3)に従って制御されるものである。本発明の方法は、当該ガイドラインの基準を満たすかどうか確認できるため、非常に有用である。
【0113】
また、これらの類縁物質は、本発明の方法によりトリフルリジン又はその塩から検出することができる。さらに、本発明は、類縁物質1~6のうち1つ又は2以上を標準品として品質管理に用いることができ、好ましくは類縁物質1~6のうち3つ以上であり、より好ましくは類縁物質1~6のうち4つ以上であり、特に好ましくは類縁物質2、3、5及び6である。
【0114】
このような標準品に用いられるトリフルリジン及びこれら由来の類縁物質は、高純度のものになる。従って、当該高速液体クロマトグラフィーの条件により分離された各類縁物質は、標準品として用いることができる。よって、本発明は、トリフルリジン又はその塩を含む配合剤から単離することを特徴とする当該類縁物質の製造方法と言い換えることもできる。当該類縁物質は上記の類縁物質1~6が挙げられ、好ましくは類縁物質2、3、5、6である。
【0115】
本発明が提供する品質管理方法は、トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の品質管理方法であって、上記の本発明の方法を実施する工程を含む。本発明の品質管理方法は、例えば、上記類縁物質(例えば、類縁物質1~6のいずれか1つ以上)の含有量(質量)が、所定の量以下である場合に、配合剤は品質管理に係る基準を満たすと評価することができる。
【0116】
本発明は、上記の本発明の方法を実施する工程を含む、トリフルリジン又はその塩を含む配合剤の製造方法をも提供する。本発明の製造方法は、例えば、トリフルリジン又はその塩を製造する工程、得られたトリフルリジン又はその塩、上記方法を実施する(好ましくはトリフルリジン又はその塩を含む配合剤の品質管理を行う)工程を含むことができる。
【0117】
本発明において、トリフルリジンに類縁物質2、3、5又は6が含まれていることは知られておらず、特に類縁物質6は新規の物質である。そのため、本発明には、トリフルリジン又はその塩を含む医薬組成物の品質管理に用いられる類縁物質2、3、5又は6を含み、さらには、トリフルリジン又はその塩を含む医薬組成物の不純物検出の際に標準品として用いるための類縁物質2、3、5又は6を含む。併せて、トリフルリジン又はその塩を含む医薬組成物から単離することを特徴とする類縁物質2、3、5又は6の製造方法も本発明に含まれる。
【0118】
本発明におけるトリフルリジン由来の類縁物質の検出において、高速液体クロマトグラフィーによる方法が用いられる。
【0119】
好ましくは、類縁物質1~6からなる群より選ばれる少なくとも1つのトリフルリジン由来の類縁物質を検出する、以下のステップ1とステップ2の条件を含む方法である。
ステップ1:移動相全体に対する有機相の割合が、1~14容量%である。
ステップ2:ステップ1の後、有機相の割合をさらに増加させるようグラジェントをかける。
【0120】
より好ましくは、以下のステップ1とステップ2の条件を含む方法である。
ステップ1:類縁物質1~5からなる群より選ばれる少なくとも1つのトリフルリジン由来の類縁物質を検出し、移動相全体に対する有機相の割合が、1~14容量%であり、アイソクラティック状態である。
ステップ2:ステップ1の後、有機相の割合をさらに増加させるようグラジェントをかけて、類縁物質6を検出する。
【0121】
より好ましくは、以下のステップ1とステップ2の条件を含む方法である。
ステップ1:移動相全体に対する有機相の割合が、2~10容量%であり、アイソクラティック状態であり、類縁物質1~5を検出する。
ステップ2:ステップ1の後、移動相全体に対する有機相の割合をさらに増加させるようグラジェントをかけて、類縁物質6を検出する。
【0122】
より好ましくは、移動相における有機相にアセトニトリルを含む、以下のステップ1とステップ2の条件を含む方法である。
ステップ1:移動相全体に対する有機相の割合が、2~10容量%であり、アイソクラティック状態であり、類縁物質1~5を検出する。
ステップ2:ステップ1の後、移動相全体に対する有機相の割合をさらに増加させるようグラジェントをかけ、ステップ2の終了時における移動相全体に対する有機相の割合は、25~70容量%であり、類縁物質6を検出する。
【0123】
より好ましくは、移動相における有機相にアセトニトリルを含み、水相に水を含み、移動相にリン酸塩を含む、以下のステップ1とステップ2の条件を含む方法である。
ステップ1:移動相全体に対する有機相の割合が、2~10容量%であり、アイソクラティック状態であり、類縁物質1~5を検出する。
ステップ2:ステップ1の後、移動相全体に対する有機相の割合を1分間に0.9容量%以上増加させるグラジェントをかけ、ステップ2の終了時における移動相全体に対する有機相の割合は、30~65容量%であり、類縁物質6を検出する。
【0124】
より好ましくは、移動相における有機相にアセトニトリルを含み、水相に水を含み、移動相にリン酸塩を含む、以下のステップ1とステップ2の条件を含む方法である。
ステップ1:移動相全体に対する有機相の割合が、の2~10容量%であり、アイソクラティック状態であり、類縁物質1~5を検出する。
ステップ2:ステップ1の後、移動相全体に対する有機相の割合を1分間に0.9容量%以上増加させるグラジェントをかけ、ステップ2の終了時における移動相全体に対する有機相の割合は、30~65容量%であり、類縁物質6を検出する。
【0125】
より好ましくは、移動相における有機相にアセトニトリルを含み、水相に水を含み、移動相にリン酸塩を含む、以下のステップ1とステップ2の条件を含む方法である。
ステップ1:移動相全体に対する有機相の割合が、3~7容量%であり、アイソクラティック状態であり、類縁物質1~5を検出する。
ステップ2:ステップ1の後、移動相全体に対する有機相の割合を1分間に0.9容量%以上増加させるグラジェントをかけ、ステップ2の終了時における移動相全体に対する有機相の割合は、35~60容量%であり、類縁物質6を検出する。
【0126】
より好ましくは、移動相における有機相にアセトニトリルを含み、水相に水を含み、移動相にリン二水素ナトリウムを含む、以下のステップ1とステップ2の条件を含む方法である。
ステップ1:移動相全体に対する有機相の割合が、3~7容量%であり、アイソクラティック状態であり、測定時間が15~28分間であり、類縁物質1~5を検出する。
ステップ2:ステップ1の後、移動相全体に対する有機相の割合を1分間に有機相の割合を0.9容量%以上増加させるグラジェントをかけ、ステップ2の終了時における移動相全体に対する有機相の割合は、35~60容量%であり、測定時間が10~50分間であり、類縁物質6を検出する。
【0127】
より好ましくは、移動相における有機相にアセトニトリルを含み、水相に水を含み、移動相にリン二水素ナトリウムを含む、以下のステップ1とステップ2の条件を含む方法である。
ステップ1:移動相全体に対する有機相の割合が、3~7容量%であり、アイソクラティック状態であり、測定時間が15~28分間であり、類縁物質1~5を検出する。
ステップ2:ステップ1の後、移動相全体に対する有機相の割合を1分間に0.9容量%以上増加させるグラジェントをかけ、ステップ2の終了時における移動相全体に対する有機相の割合は、35~60容量%であり、測定時間が10~50分間であり、ステップ2の終了時における流量がステップ1の流量の1.0~1.5倍であり、類縁物質6を検出する。
【0128】
より好ましくは、移動相における有機相にアセトニトリルを含み、水相に水を含み、移動相にメタノール及びリン二水素ナトリウムを含む、以下のステップ1とステップ2の条件を含む方法である。
ステップ1:移動相全体に対する有機相の割合が、3~7容量%であり、アイソクラティック状態であり、測定時間が15~28分間であり、類縁物質1~5を検出する。
ステップ2:ステップ1の後、移動相全体に対する有機相の割合を1分間に0.9容量%以上増加させるグラジェントをかけ、ステップ2の終了時における移動相全体に対する有機相の割合は、35~60容量%であり、測定時間が10~50分間であり、ステップ2の終了時における流量がステップ1の流量の1.0~1.5倍であり、類縁物質6を検出する。
【実施例
【0129】
以下の試験条件により高速液体クロマトグラフィーの測定を行った。
・検出器:紫外吸光光度計(波長は210nm)
・カラム:内径4.6mm,長さ15cmのステンレス管に3μm又は5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルカラム
・カラム温度:40℃
・流量:各実施例に記載
・移動相:各実施例に記載
・グラジェント:各実施例に記載
【0130】
高速液体クロマトグラフィーで測定する試料は以下の通り調製した。
【0131】
トリフルリジンの濃度が約0.8mg/mLとなるよう各測定条件で用いられる移動相と同じ組成の溶液に溶解させ、適宜希釈した溶液を試料とした。
【0132】
本実施例において、各移動相における「%」表示は、容量%を意味する
【0133】
実施例1-1
カラム:Hydrosphere C18、YMC社製(3μm)
流量:1.0mL/min
移動相A:0.05mol/Lのリン酸二水素ナトリウム水溶液
移動相B:アセトニトリル
グラジェント:移動相Aと移動相Bを次の様に変えて濃度勾配制御した。0~18分:A 95% B 5%、18~55分:A 95→60% B 5%→40%、55~55.1分 A60%→95% B40%→5%、55.1以降 A 95% B 5%。
【0134】
測定結果を図1に示す。これより、トリフルリジンの保持時間が17.2分に確認された。本測定方法において、トリフルリジンが、ベースラインの凹み及びゴーストピークと重複しないことを確認した。
【0135】
実施例1-2
グラジェント:移動相Aと移動相Bを次の様に変えて濃度勾配制御した。0~18分:A 95% B 5%、18~48分:A 95→60% B 5%→40%、48~48.1分 A60%→95% B40%→5%、48.1以降 A 95% B 5%。
【0136】
カラム、流量、移動相A及び移動相Bは実施例1と同じ条件である。
【0137】
本測定により、トリフルリジンが、ゴーストピークと重複しないことを確認した。
【0138】
実施例1-3
グラジェント:移動相Aと移動相Bを次の様に変えて濃度勾配制御した。0~20分:A 95% B 5%、20~50分:A 95→60% B 5%→40%、50~50.1分 A60%→95% B40%→5%、50.1以降 A 95% B 5%。カラム、流量、移動相A及び移動相Bは実施例1と同じ条件である。
【0139】
測定結果を図2に示す。これより、トリフルリジンの保持時間が17.1分に確認された。本測定方法において、トリフルリジンが、ベースラインの凹み及びゴーストピークと重複しないことを確認した。
【0140】
実施例1-3-1 グラジェント:移動相Aと移動相Bを次の様に変えて濃度勾配制御した。0~15分:A 95% B 5%、15~45分:A 95→60% B 5%→40%、45~45.1分 A60%→95% B40%→5%、45.1以降 A 95% B 5%。カラム、流量、移動相A及び移動相Bは実施例1と同じ条件である。
カラム:Inertsil ODS-3 GLサイエンス社製(3μm)
流量、移動相A及び移動相Bは実施例1-3と同じ条件である。
【0141】
本測定により、トリフルリジンが、ゴーストピークと重複しないことを確認した。
【0142】
実施例1-3-2
カラム:Inertsil ODS-4 GLサイエンス社製(3μm)
流量、移動相A及び移動相B、グラジェントは実施例1-3-1と同じ条件である。
【0143】
本測定により、トリフルリジンが、ゴーストピークと重複しないことを確認した。
【0144】
実施例1-3-3
カラム:YMC-Pack Pro C18 RS(3μm)
流量、移動相A及び移動相B、グラジェントは実施例1-3-1と同じ条件である。
【0145】
本測定により、トリフルリジンが、ゴーストピークと重複しないことを確認した。
【0146】
実施例1-3-4
カラム:YMC-Pack Pro C18(3μm)
流量、移動相A及び移動相B、グラジェントは実施例1-3-1と同じ条件である。
【0147】
本測定により、トリフルリジンが、ゴーストピークと重複しないことを確認した。
【0148】
実施例2-1
カラム:Hydrosphere C18、YMC社製(5μm)
流量:0~21分 1.0mL/min、21~46分 1.0→1.3mL/min、46~46.1分 1.3→1.0mL/min、46.1分以降 1.0mL/min
移動相A:リン酸二水素ナトリウム二水和物3.0gを水1000mLに溶かし、リン酸を加えてpH2.2に調整した後にメタノール10mLを加えた。
移動相B:アセトニトリル
グラジェント:移動相Aと移動相Bを次の様に変えて濃度勾配制御した。0~21分:A 96% B 4%、21~46分:A 96→45% B 4→55%、46~46.1分 A45→96% B55→4%、46.1以降 A 96% B 4%。
【0149】
測定結果を図3に示す。これにより、トリフルリジンの保持時間が17.4分であることがわかった。また、類縁物質1の保持時間が3.1分、類縁物質2の保持時間が5.6分、類縁物質3の保持時間が4.1分、類縁物質4の保持時間が7.9分、類縁物質5の保持時間が8.8分、類縁物質6の保持時間が42.9分であった。
【0150】
検出された各類縁物質は、別途購入又は合成した各類縁物質と保持時間が一致したことから、類縁物質1~6の構造を示した化合物であることを確認した。
【0151】
結論としては、本測定方法において、トリフルリジンが、ベースラインの凹み及びゴーストピークと重複しないことを確認した。併せて、トリフルリジンの各類縁物質及びトリフルリジンが分離できることがわかった。さらに、類縁物質6のピークが、後述の合成した類縁物質6と保持時間が一致したため、本測定における保持時間42.9分のピークは類縁物質6と判断した。
【0152】
実施例2-2
カラム:Unison UK-C18、インタクト社製(5μm)
その他の条件は実施例2-1と同一である。
【0153】
本測定による結論は、実施例2-1と同様であった。
【0154】
実施例2-3
移動相A:リン酸二水素ナトリウム二水和物3.0gを水1000mLに溶かし、リン酸を加えてpH2.2に調整した後にメタノール9mLを加えた。
その他の条件は実施例2-1と同一である。
【0155】
本測定による結論は、実施例2-1と同様であった。
【0156】
実施例2-4
流量:0~21分 0.95mL/min、21~46分 0.95→1.25mL/min、46~46.1分 1.25→0.95mL/min、46.1分以降 0.95mL/min
その他の条件は実施例2-1と同一である。
【0157】
本測定による結論は、実施例2-1と同様であった。
【0158】
実施例2-5
グラジェント:移動相Aと移動相Bを次の様に変えて濃度勾配制御した。0~21分:A 95.8% B 4.2%、21~46分:A 95.8→43% B 4.2→57%、46~46.1分 A43→95.8% B57→4.2%、46.1以降 A 95.8% B 4.2%。
その他の条件は実施例2-1と同一である。
【0159】
本測定による結論は、実施例2-1と同様であった。
【0160】
実施例3
カラム:Inertsil ODS-2、GLサイエンス社製(5μm)
流量:1.0mL/min
移動相A:0.05mol/L リン酸二水素ナトリウム水溶液
移動相B:アセトニトリル
グラジェント:移動相Aと移動相Bを次の様に変えて濃度勾配制御した。0~2分:A 85% B 15%、2~7分:A 85→60% B 15→40%、7分以降 A60% B40%。
【0161】
測定結果より、トリフルリジンの保持時間が3.6分であることがわかった。また、類縁物質1~5の保持時間が1.0~2.5分に集中し、それらのピーク面積を算出できなかった。
【0162】
結論としては、本測定方法では、トリフルリジンの類縁物質1~5の検出はかならずしも正確ではないものの、類縁物質6の検出ができたことがわかった。
【0163】
実施例2
カラム:Inertsil ODS-2、GLサイエンス社製(5μm)
流量:1.0mL/min
移動相A:水
移動相B:アセトニトリル
グラジェント: A60% B40%のアイソクラティック状態。
【0164】
測定結果より、トリフルリジンの保持時間が1.8分、類縁物質6の保持時間が7.6分であることがわかった。類縁物質1~5の保持時間が1.6~2.5分に集中し、それらのピーク面積を算出できなかったものの、上記のように類縁物質6を検出することはできた。
【0165】
参考例 5’-(4-クロロフェニルカルボキシ)-2’-デオキシ-5-トリフルオロメチルウリジン(類縁物質6)の合成
【0166】
【化2】
【0167】
市販のトリフルリジン(2.00g)をピリジン(8mL)に溶解させ、氷浴下p-クロロベンゾイルクロリド(1.18g)をゆっくり加え、室温にて1時間撹拌した。その後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール=100/0~91/9)にて精製し、5’-(4-クロロフェニルカルボキシ)-2’-デオキシ-5-トリフルオロメチルウリジン(1.49g、類縁物質6)及び3’-(4-クロロフェニルカルボキシ)-2’-デオキシ-5-トリフルオロメチルウリジン(238mg、参考化合物1)を得た。
【0168】
類縁物質6:1H-NMR(DMSO-d6、270MHz) δ(ppm)11.91(1H、s)、8.03(1H、s)、7.95(2H、d、J=6.75Hz)、7.60(2H、d、J=6.75Hz)、6.07(1H、t、J=6.55Hz)、5.48(1H、d、J=4.29Hz)、4.56-4.38(3H、m)、4.18-4.16(1H、m)
参考化合物1:1H-NMR(DMSO-d6、270MHz) δ(ppm)11.92(1H、s)、8.72(1H、s)、8.03(2H、d、J=8.07Hz)、7.63(2H、d、J=8.07Hz)、6.27(1H、t、J=6.75Hz)、5.48-5.42(2H、m)、4.28(1H、s)、3.72(2H、s)
図1
図2
図3