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特許7257971抗CD40抗体、その抗原結合フラグメント、およびその医学的使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】抗CD40抗体、その抗原結合フラグメント、およびその医学的使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20230407BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230407BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230407BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230407BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230407BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230407BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230407BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230407BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230407BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230407BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230407BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230407BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
C07K16/28
C07K16/46
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 U
A61K47/68
A61P35/00
A61P35/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019566666
(86)(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 CN2018089252
(87)【国際公開番号】W WO2018219327
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】201710402559.0
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519352757
【氏名又は名称】江▲蘇▼恒瑞医▲薬▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI PHARMA CEUTICALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.7 KUNLUNSHAN ROAD, ECONOMIC AND TECHNOLOGICAL DEVELOPMENT ZONE, LIANYUNGANG, JIANGSU 222047, CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】516174208
【氏名又は名称】上海恒瑞医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】NO. 279 WENJING ROAD, MINHANG DISTRICT, SHANGHAI 200245, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,シュウド
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジャフア
(72)【発明者】
【氏名】フー,チーユエ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,リャンシャン
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,グオチン
(72)【発明者】
【氏名】チィエン,シュエミン
(72)【発明者】
【氏名】テン,フェイ
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/168149(WO,A1)
【文献】Journal for Immunotherapy Of Cancer 2015, 3(Suppl 2):P198
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体軽鎖可変領域と抗体重鎖可変領域とを含む抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
前記抗体軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号14、配列番号15および配列番号16の配列を有するLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、前記抗体重鎖可変領域は、それぞれ配列番号11、配列番号12および配列番号13の配列を有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号9で示され、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号10で示される、抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
抗体軽鎖可変領域と抗体重鎖可変領域とを含む抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
前記抗体軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号14、配列番号15および配列番号16の配列を有するLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、前記抗体重鎖可変領域は、それぞれ配列番号11、配列番号12および配列番号13の配列を有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号30で示され、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号34で示される、抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
ヒト化抗体の鎖配列は、配列番号19に示す配列であり、鎖配列は、配列番号20に示す配列である、請求項に記載の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントを含む多重特異性抗体。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む単鎖抗体。
【請求項6】
その抗体が、請求項1~のいずれか一項に記載の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域および重鎖可変領域、請求項に記載の多重特異性抗体、若しくは、請求項に記載の単鎖抗体を含む、抗体-薬物結合体。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項に記載の多重特異性抗体、または請求項に記載の単鎖抗体をコードする単離核酸分子
【請求項8】
請求項に記載の単離核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項9】
請求項に記載の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項に記載の多重特異性抗体、請求項に記載の単鎖抗体、または請求項に記載の抗体-薬物結合体、および薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体を含む医薬組成物。
【請求項11】
CD40またはCD40Lが媒介する疾患または状態を治療または予防するための薬剤の製造における、請求項1~のいずれか一項に記載の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項に記載の多重特異性抗体、請求項に記載の単鎖抗体、請求項に記載の抗体-薬物結合体、または、請求項10に記載の医薬組成物の使用。
【請求項12】
前記疾患は、癌である、請求項11に記載の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントの使用。
【請求項13】
前記癌は、リンパ腫、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、胃癌、大腸癌、膀胱癌、横紋筋肉腫、食道癌、子宮頸癌、多発性骨髄腫、白血病、胆嚢癌、膠芽腫および黒色腫である、請求項12に記載の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントの使用。
【請求項14】
自己免疫疾患を有する患者の症状を改善するための薬剤の製造における、請求項1~のいずれか一項に記載の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項に記載の多重特異性抗体、請求項に記載の単鎖抗体、請求項に記載の抗体-薬物結合体、または請求項10に記載の医薬組成物、の使用。
【請求項15】
炎症性疾患を有する患者の症状を改善するための薬剤の製造における、請求項1~のいずれか一項に記載の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項に記載の多重特異性抗体、請求項に記載の単鎖抗体、請求項に記載の抗体-薬物結合体、または請求項10に記載の医薬組成物、の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年6月1日に出願された中国特許出願第CN201710402559.0号の優先権を主張する。前述の出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、抗CD40抗体、その抗原結合フラグメント、抗CD40抗体のCDR領域を含むキメラ抗体またはヒト化抗体、ならびにヒト抗CD40抗体およびその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物、ならびに抗癌剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
健康の最重要課題の一つとして、癌は、長期的に人類社会が直面する重要な課題である。伝統的な手術、化学療法および放射線療法のような治療は、播種性固形腫瘍の治療においてしばしば限定された効果を有する。腫瘍免疫療法、特にT細胞腫瘍免疫療法は、腫瘍療法の分野におけるホットスポットである。腫瘍免疫療法は腫瘍を有する患者においてキラーT細胞を完全に活性化することによって腫瘍を死滅させ、これは腫瘍を処置するための最も有効かつ最も安全な方法でありうる。腫瘍免疫療法は、現在、播種性転移性腫瘍を含むいくつかの異なるタイプの癌の治療において有望な見通しを示している。
【0004】
ヒト身体におけるT細胞の活性化は、2つのシグナル伝達経路を含む系を使用する。抗原発現細胞(APC)を介してMHC抗原ペプチドを発現することによってT細胞に第1のシグナルを提供することに加えて、一連の共刺激分子が、第2のシグナルを提供するために必要とされ、したがって、T細胞の正常な免疫応答を可能にする。この二重シグナル伝達経路系はin vivoでの免疫系のバランスにおいて重要な役割を果たし、これは、自己および非自己抗原に対する異なる免疫応答を活性化するために身体を厳密に調節する。共刺激分子によって提供される第2のシグナルの欠如はT細胞応答の失敗または持続性特異的免疫応答の喪失をもたらし、したがって免疫寛容をもたらす。したがって、第2のシグナル伝達経路は、免疫応答の全過程を調節する際に非常に重要な役割を果たす。
【0005】
CD40は、細胞表面に発現される糖タンパク質の1つである。これは、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーに属し、免疫系において重要な役割を果たす48kDaのI型膜固有糖タンパク質である。それは、B細胞、樹状細胞、単球およびマクロファージのような種々の免疫細胞において発現される。シグナル伝達がCD40によって媒介される場合、特殊化された抗原発現細胞が活性化される。CD40の天然リガンドは、CD154またはCD40Lと呼ばれ、成熟Tリンパ球において主に発現されることが知られている。CD40L媒介シグナル伝達は、免疫細胞の活性化および増殖、ならびにサイトカインおよびケモカインの産生を含む、多くの細胞生物学的事象を誘発しうる。CD40シグナル伝達は、特に腫瘍環境の状況において、T細胞依存性免疫応答にとって極めて重要である。CD40刺激樹状細胞は、腫瘍細胞を根絶する能力を有する腫瘍特異的エフェクターT細胞を活性化できる。
【0006】
CD40の発現は、種々の正常細胞およびBリンパ球を含む腫瘍細胞において見出されている。たとえば、黒色腫はCD40を発現する腫瘍であり、一方、固形腫瘍の30%~70%もCD40を発現する。CD40の活性化は、腫瘍特異的T細胞応答の免疫活性化、CD40陽性腫瘍の直接アポトーシス、および刺激によって引き起こされるADCCの体液性反応を含む、抗腫瘍応答を効果的に誘発しうることが現在知られている(非特許文献1)。さらに、観察された腫瘍根絶は、腫瘍特異性を有する細胞傷害性Tリンパ球の発生と強く関連する。一方、CD40抗体の全身投与は一般に、ショック症候群およびサイトカイン放出症候群などの様々な副作用に関連することも無視すべきではない(非特許文献2)。
【0007】
現在、多くの国際的な製薬会社が、免疫活性化を特異的に刺激し、腫瘍に対する患者自身の免疫系応答を最大化し、それによって腫瘍細胞を死滅させる目的を達成する、CD40に対するモノクローナル抗体を開発している。関連特許には、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、および特許文献18などが含まれる。今日まで、Pfizer(関連製品はRocheにライセンスされている。)、Alligator、および前臨床動物モデルにおいて良好な腫瘍殺傷効果を有することが見出された他の会社、の抗CD40抗体は、フェーズ1の臨床試験に入った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】中国特許出願公開第1198647号
【文献】中国特許出願公開第1369015号
【文献】中国特許出願公開第1582165号
【文献】中国特許出願公開第100430419号
【文献】中国特許出願公開第101014386号
【文献】中国特許出願公開第101237882号
【文献】中国特許出願公開第101289510号
【文献】中国特許出願公開第101490086号
【文献】中国特許出願公開第103842382号
【文献】中国特許出願公開第104918957号
【文献】国際公開第2002/028904号
【文献】国際公開第2011/123489号
【文献】国際公開第2012/149356号
【文献】国際公開第2013/034904号
【文献】国際公開第2015/091853号
【文献】国際公開第2016/196314号
【文献】国際公開第2017/040932号
【文献】国際公開第2017/004006号
【0009】
【文献】Tong et al, Cancer Gene Therapy, 2003, 10: 1-13
【文献】van Mierlo et al, Proc. Nat1. Acad. Sci. USA, 2002, 99: 5561-5566
【文献】J. Biol. Chem, 243, p3558 (1968)
【文献】Holliger and Hudson (2005) Nat. Biotechnol. 23: 1126-1136
【文献】Using Antibodies: A Laboratory Manual, Chapters 5-8 and 15, Cold Spring Harbor
【文献】The Immunoglobulin FactsBook, 2001 ISBN 014441351
【文献】Watson et al. (1987) Molecular Biology of the Gene, The Benjamin/Cummings Pub. Co., Page 224, (4th edition)
【文献】Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory
【文献】Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高い親和性、高い選択性および高い生物学的活性を有する抗CD40抗体、ならびにCD40およびその経路を刺激することによって免疫応答を活性化するための癌治療薬/組成物およびその方法、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号58、配列番号59または配列番号60からなる群から選択される少なくとも1つのLCDRを含む抗体軽鎖可変領域、および/または、
配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号55、配列番号56または配列番号57からなる群から選択される少なくとも1つのHCDRを含む抗体重鎖可変領域、を含む抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0012】
好ましい実施形態において、上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントであって、抗体軽鎖可変領域は、配列番号6、配列番号14、配列番号42、配列番号50または配列番号58の配列を有するLCDR1を含む抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0013】
好ましい実施形態において、上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントであって、抗体軽鎖可変領域は、配列番号7、配列番号15、配列番号43、配列番号51または配列番号59の配列を有するLCDR2を含む抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0014】
好ましい実施形態において、上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントであって、抗体軽鎖可変領域は、配列番号8、配列番号16、配列番号44、配列番号52または配列番号60の配列を有するLCDR3を含む抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0015】
好ましい実施形態において、上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントであって、抗体重鎖可変領域は、配列番号3、配列番号11、配列番号39、配列番号47または配列番号55の配列を有するHCDR1を含む抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0016】
好ましい実施形態において、上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントであって、抗体重鎖可変領域は、配列番号4、配列番号12、配列番号40、配列番号48または配列番号56の配列を有するHCDR2を含む抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0017】
好ましい実施形態において、上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントであって、抗体重鎖可変領域は、配列番号5、配列番号13、配列番号41、配列番号49または配列番号57の配列を有するHCDR3を含む抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0018】
好ましい実施形態において、上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントであって、抗体軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号6、配列番号7および配列番号8の配列を有するLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0019】
好ましい実施形態において、上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントであって、抗体軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号14、配列番号15および配列番号16の配列を有するLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0020】
好ましい実施形態において、上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントであって、抗体軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号42、配列番号43および配列番号44の配列を有するLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0021】
好ましい実施形態において、上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントであって、抗体軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号50、配列番号51および配列番号52の配列を有するLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む。
【0022】
好ましい実施形態において、上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントであって、抗体軽鎖可変領域は、それぞれ、配列番号58、配列番号59および配列番号60の配列を有するLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む。
【0023】
好ましい実施形態において、上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントであって、抗体重鎖可変領域は、それぞれ配列番号3、配列番号4および配列番号5の配列を有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0024】
好ましい実施形態において、上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントであって、抗体重鎖可変領域は、それぞれ配列番号11、配列番号12および配列番号13の配列を有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0025】
好ましい実施形態において、上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントであって、抗体重鎖可変領域は、それぞれ配列番号39、配列番号40および配列番号41の配列を有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0026】
好ましい実施形態において、上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントであって、抗体重鎖可変領域は、それぞれ、配列番号47、配列番号48の配列を有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号49を含む抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0027】
好ましい実施形態において、上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントであって、抗体重鎖可変領域は、それぞれ、配列番号55、配列番号56の配列を有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号57を含む抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、
抗体軽鎖可変領域は、
配列番号6、配列番号7および配列番号8の配列をそれぞれ有するLCDR1、LCDR2およびLCDR3、または、
配列番号14、配列番号15および配列番号16の配列をそれぞれ有するLCDR1、LCDR2およびLCDR3、または、
配列番号42、配列番号43および配列番号44の配列をそれぞれ有するLCDR1、LCDR2およびLCDR3、または、
配列番号50、配列番号51および配列番号52の配列をそれぞれ有するLCDR1、LCDR2およびLCDR3、または、
配列番号58、配列番号59および配列番号60の配列をそれぞれ有するLCDR1、LCDR2およびLCDR3、を含み、かつ、
抗体重鎖可変領域は、
配列番号3、配列番号4および配列番号5の配列をそれぞれ有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3、または、
配列番号11、配列番号12および配列番号13の配列をそれぞれ有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3、または、
配列番号39、配列番号40および配列番号41の配列をそれぞれ有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3、または、
配列番号47、配列番号48および配列番号49の配列をそれぞれ有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3、または、
配列番号55、配列番号56および配列番号57の配列をそれぞれ有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3、を含む抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0029】
特に好ましい抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下からなる群から選択されうる。
(1)抗体軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号6、配列番号7および配列番号8の配列を有するLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、抗体重鎖可変領域は、それぞれ配列番号3、配列番号4および配列番号5の配列を有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む。
(2)抗体軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号14、配列番号15および配列番号16の配列を有するLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、抗体重鎖可変領域は、それぞれ配列番号11、配列番号12および配列番号13の配列を有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む。
(3)抗体軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号42、配列番号43および配列番号44の配列を有するLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、抗体重鎖可変領域は、それぞれ配列番号39、配列番号40および配列番号41の配列を有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む。
(4)抗体軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号50、配列番号51および配列番号52の配列を有するLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、抗体重鎖可変領域は、それぞれ配列番号47、配列番号48および配列番号49の配列を有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む。
(5)抗体軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号58、配列番号59および配列番号60の配列を有するLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、抗体重鎖可変領域は、それぞれ配列番号55、配列番号56および配列番号57の配列を有するHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む。
【0030】
好ましい実施形態において、抗体軽鎖可変領域は、配列番号2または配列番号10の配列を有し、抗体重鎖可変領域は、配列番号1または配列番号9の配列を有する。
【0031】
上記抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントは、マウス抗体またはキメラ抗体でありうる。
【0032】
好ましくは、マウス抗体またはキメラ抗体の、
重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号1で示され、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号2で示され、または、
重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号9で示され、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号10で示され、または、
軽鎖可変領域(LCVR)のアミノ酸配列は、配列番号38で示され、重鎖可変領域(HCVR)のアミノ酸配列は、配列番号37で示され、または、
軽鎖可変領域(LCVR)のアミノ酸配列は、配列番号46で示され、重鎖可変領域(HCVR)のアミノ酸配列は、配列番号45で示され、または、
軽鎖可変領域(LCVR)のアミノ酸配列は、配列番号54で示され、重鎖可変領域(HCVR)のアミノ酸配列は、配列番号53で示される。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントであって、抗体またはその抗原結合フラグメントがマウス抗体またはそのフラグメントである抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0034】
本発明の好ましい実施形態において、上記のようなマウス抗体またはそのフラグメントが提供され、ここで、抗体軽鎖可変領域は、マウスのκ鎖、λ鎖、またはその変異体の軽鎖FR領域をさらに含む。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、マウスのκ鎖、λ鎖、またはその変異体の軽鎖定常領域をさらに含む上記のマウス抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、上記のようなマウス抗体またはそのフラグメントが提供され、ここで、抗体重鎖可変領域は、マウスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはその変異体の重鎖FR領域をさらに含む。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、マウスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはその変異体の重鎖定常領域をさらに含む上記のマウス抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0038】
本発明の好ましい実施形態では、キメラ抗体またはそのフラグメントでありうる上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0039】
好ましい実施形態において、軽鎖可変領域の配列が配列番号2または配列番号10で示される上記の抗CD40キメラ抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0040】
好ましい実施形態において、重鎖可変領域の配列が配列番号1または配列番号9で示される上記の抗CD40キメラ抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0041】
本発明の好ましい実施形態において、ヒトκ鎖、λ鎖、またはその変異体の軽鎖定常領域をさらに含む上記の抗CD40キメラ抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0042】
本発明の好ましい実施形態において、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはその変異体の重鎖定常領域をさらに含む上記の抗CD40キメラ抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0043】
本発明の好ましい実施形態において、ヒト抗体またはそのフラグメントである上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、ヒト化抗体またはそのフラグメントである上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0045】
本発明の好ましい実施形態において、上記のような抗CD40ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントが提供され、ここで、ヒト抗体は、配列番号18または配列番号20またはその変異体の配列を有し、好ましくは、変異体が軽鎖中にアミノ酸の0~10個の変異を有し、より好ましくは、変異が2位および3位で生じ、かつ変異したアミノ酸の両方は、好ましくはI、VまたはLである。
【0046】
本発明の好ましい実施形態において、上記の抗CD40ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントが提供され、ここで、ヒト抗体は、配列番号17または配列番号19またはその変異体の配列を有し、好ましくは、変異体が軽鎖中にアミノ酸の0~10個の変異体を有し、より好ましくは、変異体が6位および8位で生じ、かつ変異したアミノ酸の両方は、好ましくはI、AまたはLである。
【0047】
本発明の好ましい実施形態において、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはその変異体の定常領域をさらに含む上記の抗CD40ヒト抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0048】
本発明の好ましい実施形態において、ヒトκ鎖、λ鎖またはその変異体の軽鎖FR領域をさらに含む上記の抗CD40ヒト化抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0049】
好ましい実施形態において、ヒト化抗体の軽鎖可変領域上の軽鎖FR領域の配列は、配列番号22に示されるヒト生殖系列の軽鎖IGkV1-33配列に由来するか、または配列番号24に示されるヒト生殖系列の軽鎖IGkV2-28配列に由来する上記の抗CD40ヒト化抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0050】
好ましい実施形態において、ヒト化抗体軽鎖の配列は、配列番号33もしくは配列番号34に示される配列、またはその変異体である上記の抗CD40ヒト化抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0051】
好ましい実施形態において、ヒト化抗体軽鎖の配列は、配列番号18もしくは配列番号20に示される配列、またはその変異体である上記の抗CD40ヒト化抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0052】
本発明の好ましい実施形態ではヒト化抗体の軽鎖可変領域の変異体は、好ましくは、軽鎖中にアミノ酸の0~10個の突然変異を有し、より好ましくは、突然変異が2位および3位に起こり、突然変異したアミノ酸の両方が、好ましくは、I、VまたはLである上記のような抗CD40ヒト化抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0053】
本発明の好ましい実施形態において、ヒトκ鎖、λ鎖またはその変異体の軽鎖定常領域をさらに含む上記の抗CD40ヒト化抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0054】
本発明の好ましい実施形態において、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはその変異体の重鎖FR領域をさらに含む上記の抗CD40ヒト化抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0055】
好ましい実施形態において、重鎖可変領域の重鎖FR領域は、配列番号21に示されるヒト生殖系列の重鎖IGHV1-69配列に由来するか、または配列番号23に示されるヒト生殖系列の重鎖IGHV1-2配列に由来する上記のような抗CD40ヒト化抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0056】
好ましい実施形態では、ヒト化抗体の重鎖配列は、配列番号26もしくは配列番号30、またはその変異体で示される上記の抗CD40ヒト化抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0057】
本発明の好ましい実施形態において、上記の抗CD40ヒト化抗体またはそのフラグメントが提供され、ここで、ヒト化抗体の重鎖配列は、配列番号17または配列番号19、またはその変異体として示され、好ましくは、変異体が重鎖可変領域においてアミノ酸の0~10個の変異を有し、より好ましくは、変異が6位および8位に生じ、そして変異したアミノ酸は、好ましくはI、A、またはLである。
【0058】
本発明の好ましい実施形態において、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはその変異体の重鎖定常領域、好ましくは、IgG1、IgG2またはIgG4の重鎖FR領域、より好ましくは、IgG1またはIgG2の重鎖FR領域をさらに含む上記の抗CD40ヒト化抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0059】
本発明の好ましい実施態様において、提供されるのは上記のような抗CD40抗体または抗原結合フラグメントであり、ここで、抗原結合フラグメントは、Fab、Fv、sFv、F(ab’)、直鎖抗体、単鎖抗体、ナノボディ、ドメイン抗体または多重特異抗体である。
【0060】
本発明はさらに、抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメント、多重特異性抗体、または上記の単鎖抗体をコードするDNA配列を提供する。
【0061】
本発明はさらに、上記DNA配列を含む発現ベクターを提供する。
【0062】
本発明はさらに、上記の発現ベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。
【0063】
本発明の好ましい実施形態では、宿主細胞が細菌、好ましくは大腸菌(Escherichia coli)である上記の宿主細胞が提供される。
【0064】
本発明の好ましい実施形態において、上記の宿主細胞は、酵母、好ましくはピキア酵母(Pichia pastoris)である。
【0065】
本発明の好ましい実施形態において、上記の宿主細胞は、哺乳類細胞、好ましくはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはヒト胚性腎臓(HEK)293細胞である。
【0066】
本発明はさらに、上記のような抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントを含む単鎖抗体を提供する。
【0067】
本発明はさらに、上記のような抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントを含む多重特異性抗体を提供する。
【0068】
本発明はさらに、上記の抗CD40抗体の軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む抗体-薬物結合体を提供する。抗体-薬物結合体は当技術分野で周知であり、抗体-リンカー-薬物(毒素)の相互接続によって形成され、公知のリンカーには切断可能なリンカー、下位切断可能なリンカー(たとえば、リンカー(SMCC、SPDPなどを含むが、これらに限定されない))が含まれる。DM1、DM4、MMAE、MMAFなどの毒素も当技術分野で周知である。
【0069】
本発明はさらに、抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメント、多重特異性抗体、または単鎖抗体、および上記のような薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体を含む医薬組成物を提供する。
【0070】
本発明はさらに、CD40またはCD40L媒介疾患または状態の治療または予防のための医薬の製造における、上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメント、多重特異性抗体、一本鎖抗体、抗体-薬物結合体、または医薬組成物の使用を提供し、ここで、当該疾患は、好ましくは癌であり、当該癌は、最も好ましくはリンパ腫、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、腎臓癌、肺癌、肝臓癌、胃癌、結腸直腸癌、膀胱癌、横紋筋肉腫、食道癌、子宮頸癌、多発性骨髄腫、白血病、胆嚢癌、神経膠芽腫および黒色腫である。
【0071】
本発明はさらに、CD40またはCD40L媒介疾患または状態を治療および予防するための方法を提供し、該方法は治療有効量の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメント、多重特異性抗体、一本鎖抗体、抗体-薬物結合体、または上記の医薬組成物を対象に投与することを含み、当該疾患は好ましくは癌であり、当該癌は、最も好ましくはリンパ腫、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、腎臓癌、肺癌、肝癌、胃癌、結腸直腸癌、膀胱癌、横紋筋肉腫、食道癌、子宮頸癌、多発性骨髄腫、白血病、胆嚢癌、神経膠芽腫および黒色腫である。
【0072】
本発明はさらに、自己免疫疾患を有する患者の症状を改善するための医薬の製造における、上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメント、多重特異性抗体、単鎖抗体、抗体-薬物結合体、または医薬組成物の使用を提供する。
【0073】
本発明はさらに、炎症性疾患を有する患者の症状を改善するための医薬の製造における、上記の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメント、多重特異性抗体、一本鎖抗体、抗体-薬物結合体、または医薬組成物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】CD80活性化分子に基づくDC細胞に対するマウス抗ヒトCD40抗体の活性化を示す図
図2】CD86活性化分子に基づくDC細胞に対するマウス抗ヒトCD40抗体の活性化を示す図
図3】ヒトPBMCおよびDC細胞を同時にグラフトしたRajiグラフトリンパ腫の腫瘍増殖曲線を示すグラフ
図4】ヒトPBMCおよびDC細胞を同時にグラフトしたRajiグラフトリンパ腫をグラフトしたNOGマウスの体重変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0075】
1.定義
当業者が本発明を理解しやすくするために、特定の技術用語および科学用語を以下に具体的に定義する。本明細書の他の箇所で明らかに明確に定義されない限り、本明細書で使用される他のすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。
【0076】
本実施形態で用いられるアミノ酸3文字コードおよび一文字コードは、非特許文献3に記載されている。
【0077】
本発明において使用される「抗体」という用語は、2つの同一の重鎖および2つの同一の軽鎖を鎖間ジスルフィド結合によって連結することによって形成されるテトラペプチド鎖構造である免疫グロブリンを指す。免疫グロブリンの重鎖定常領域は、アミノ酸の組成および順序が異なるので、異なる免疫グロブリンの抗原性は異なる。したがって、免疫グロブリンは5つのクラスに分類されうるか、または免疫グロブリンのアイソタイプ(すなわち、IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgE)と呼ばれうる。そして、その対応する重鎖は、それぞれ、μ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖およびε鎖である。同じタイプのIgは、ヒンジ領域のアミノ酸組成、ならびに重鎖ジスルフィド結合の数および位置の差異に従って、異なるサブクラスに分けることができる。たとえば、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4に分類できる。軽鎖は、定常領域の違いによってκ鎖またはλ鎖に分類できる。Igの5つのクラスの各々は、κ鎖またはλ鎖を有しうる。
【0078】
本発明において、本発明の抗体軽鎖は、ヒトまたはマウスκ鎖、λ鎖またはそれらの変異体を含む軽鎖定常領域をさらに含むことができる。
【0079】
本発明において、本発明の抗体重鎖は、ヒトまたはマウスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはそれらの変異体を含む重鎖定常領域をさらに含むことができる。
【0080】
可変領域(V領域)は、抗体の重鎖および軽鎖のN末端に近い約110アミノ酸から構成され、そのアミノ酸配列がかなり異なる。抗体のC末端に近い残りのアミノ酸配列から構成される定常領域(C領域)は、比較的安定である。可変領域は、3つの超可変領域(HVR)および4つの比較的保存されたフレームワーク領域(FR)を含む。抗体の特異性を決定する3つの超可変領域は、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる。軽鎖可変領域(VL)および重鎖可変領域(VH)の各々は、3つのCDR領域および4つのFR領域からなり、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配列される。軽鎖の3つのCDR領域は、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を指し、重鎖の3つのCDR領域は、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を指す。本発明の抗体または抗原結合フラグメントのVLおよびVH領域のCDRアミノ酸残基の数および位置は、公知のIMGT採番基準に従う。
【0081】
用語「抗原発現細胞」または「APC」は、その表面上にMHCと複合体化した外来抗原を発現する細胞である。T細胞は、T細胞受容体(TCR)を介してこの複合体を認識する。APCの例としては、樹状細胞(DC)、末梢血単核細胞(PBMC)、単球、Bリンパ芽球、および単球由来樹状細胞(DC)が挙げられるが、これらに限定されない。用語「抗原発現」はAPCが抗原を捕捉し、それらがT細胞によって、たとえばMHC-I/MHC-II結合体の成分として認識されることを可能にするプロセスをいう。
【0082】
用語「CD40」は、TNFRSF5としても知られるTNF受容体スーパーファミリーのメンバーである細胞表面受容体を指す。CD40は、樹状細胞、B細胞およびマクロファージの表面に遍在的に発現され、T細胞免疫の産生および維持に必要な分子である。用語「CD40」は、細胞によって天然に発現されるCD40の任意の変異体またはアイソフォームを含む。本発明の抗体は、非ヒト種由来のCD40と交差反応性でありうる。あるいは、抗体はヒトCD40特異的であってもよく、他の種との交差反応性を示さなくてもよい。CD40、またはその任意の変異体もしくはアイソフォームはそれらが天然に発現される細胞または組織から単離されうるか、または当技術分野において一般的であり、そして本明細書中に記載される技術を使用する組換え技術によって産生されうる。好ましくは、抗CD40抗体が正常なグリコシル化パターンを有するヒトCD40を標的とする。
【0083】
用語「組換えヒト抗体」は組換え方法によって調製され、発現され、構築され、または単離されるヒト抗体を含み、関連する技術および方法は、(1)免疫グロブリン遺伝子を含有するトランスジェニックトランスクロモソーム動物(たとえば、マウス)から単離された抗体、またはそれらから調製されたハイブリドーマ、(2)トランスフェクトマなどの抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から単離された抗体、(3)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および(4)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングすることによって調製され、発現され、構築され、または単離された抗体、などが当技術分野で周知である。このような組換えヒト抗体は、生殖系列遺伝子によってコードされる特異的ヒト生殖系列免疫グロブリン配列のみならず、抗体成熟の間に生じるようなその後の再編成および変異も利用する可変領域および定常領域を含む。
【0084】
本発明における「マウス抗体」という用語は、当技術分野の知識および技能に従って調製されたヒトCD40に対するモノクローナル抗体である。調製時に被験体にCD40抗原を注射し、所望の配列または機能特性を有する抗体を発現するハイブリドーマを単離する。本発明の好ましい実施形態において、マウスCD40抗体またはその抗原結合フラグメントは、マウスκ鎖、λ鎖またはその変異体の軽鎖定常領域をさらに含みうるか、またはマウスIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4の重鎖定常領域またはその変異体をさらに含みうる。
【0085】
用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列の可変領域および定常領域を有する抗体を含む。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列(たとえば、in vitroでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発によって、またはin vivoでの体細胞突然変異によって導入される突然変異)によってコードされないアミノ酸残基を含みうる。しかし、「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳類種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上にグラフトされている抗体(すなわち、「ヒト化抗体」)を含まない。
【0086】
「ヒト化抗体」という用語は、CDRグラフト抗体としても知られており、マウスのCDR配列をヒト抗体可変領域のフレームワークにグラフトすることによって産生される抗体を指す。これは、大量のマウスタンパク質成分を保有するキメラ抗体によって誘導される強力な免疫応答を克服できる。免疫原性を低下させることによって引き起こされる活性の低下を回避するために、ヒト抗体可変領域は、活性を維持するために最小限の復帰突然変異に供されうる。
【0087】
「キメラ抗体」という用語は、マウス抗体の可変領域をヒト抗体の定常領域と融合させることによって形成される抗体であり、マウス抗体によって誘導される免疫応答を軽減できる。キメラ抗体を構築するために、マウス特異的モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを最初に構築し、選択し、次いで、可変領域遺伝子をマウスハイブリドーマ細胞からクローニングする。続いて、必要に応じてヒト抗体の定常領域遺伝子をクローニングする。マウス可変領域遺伝子およびヒト定常領域遺伝子は、キメラ遺伝子に連結され、次いでヒトベクターに挿入され、そして最後に、キメラ抗体分子は、真核生物または原核生物工業システムにおいて発現される。ヒト抗体の定常領域はヒトIgGl、IgG2、IgG3またはその変形の重鎖定常領域から選択することができ、望ましくはヒトIgGlまたはIgG2の重鎖定常領域からなる。
【0088】
用語「抗原結合フラグメント」は、抗体および抗体類似体の抗原結合フラグメントを指し、典型的には、親抗体の抗原結合領域または可変領域(たとえば、1つ以上のCDR)の少なくとも一部を含む。抗体フラグメントは、親抗体の結合特異性の少なくとも一部を保持する。一般に、抗体フラグメントは、モルベースで示される場合、親結合活性の少なくとも10%を保持する。好ましくは、抗体フラグメントが標的に対する親抗体の結合親和性の少なくとも20%、50%、70%、80%、90%、95%または100%以上を保持する。抗原結合フラグメントの例としては限定されるものではないが、Fab、Fab’、F(ab’)、Fvフラグメント、直鎖抗体、単鎖抗体、ナノボディ、ドメイン抗体、および多特異的抗体が挙げられる。操作された抗体変異体は非特許文献4で概説されている。
【0089】
「Fabフラグメント」は、軽鎖、ならびにCH1および重鎖の可変領域からなる。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。
【0090】
「Fc」領域は、抗体のCH1およびCH2ドメインを含む2つの重鎖フラグメントを含む。2つの重鎖フラグメントは、2つ以上のジスルフィド結合およびCH3ドメインの疎水性相互作用によって一緒に保持される。
【0091】
「Fab’フラグメント」は、軽鎖と、VHドメイン、CH1ドメイン、およびCH1ドメインとCH2ドメインとの間の領域を含む重鎖の一部と、を含む。したがって、鎖間ジスルフィド結合は2本の重鎖の間で形成され、F(ab’)分子を形成できる。
【0092】
「F(ab’)フラグメント」は、CH1ドメインと、CH2ドメインの間の定常領域の一部を含む2つの軽鎖と2つの重鎖と、を含み、それによって2つの重鎖の間にジスルフィド結合を形成する。したがって、F(ab’)フラグメントは2本の重鎖間のジスルフィド結合によって結合した2本のFab’フラグメントからなる。
【0093】
「Fv領域」は、重鎖および軽鎖の両方からの可変領域を含むが、定常領域を欠く。
【0094】
用語「多重特異性抗体」は、その最も広い意味で使用され、多重エピトープ特異性を有する抗体を包含する。これらの多重特異性抗体には重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)(ここで、VH-VLユニットは多重エピトープ特異性を有する。)を含む抗体、2つ以上のVLおよびVH領域を有し、各VH-VLユニットは同じ標的の異なる標的または異なるエピトープに結合する抗体、2つ以上の単一可変領域を有し、各単一可変領域は同じ標的の異なる標的または異なるエピトープに結合する抗体、全長抗体、抗体フラグメント、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディおよびトリアボディ、共有結合または非共有結合された抗体フラグメント、などが含まれるが、これらに限定されない。
【0095】
用語「抗体-薬物結合体」(ADC)は、1つ以上の異種化学合成分子に結合された抗体または抗体フラグメントをいい、細胞傷害性物質に結合された抗体または抗体フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
用語「単鎖抗体」は、完全な抗原結合部位を有する最小の抗体フラグメントであるリンカーペプチドを介して抗体の重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を連結することによって形成される単鎖組換えタンパク質である。
【0097】
用語「ドメイン抗体フラグメント」は、重鎖可変領域または軽鎖可変領域鎖のみを含む免疫学的に機能的な免疫グロブリンフラグメントである。いくつかの場合において、2つ以上のVH領域は、ペプチドリンカーに共有結合して、二価ドメイン抗体フラグメントを形成する。二価ドメイン抗体フラグメントの2つのVH領域は、同じまたは異なる抗原を標的とすることができる。
【0098】
本明細書で使用される「CD40への結合」という用語は、ヒトCD40と相互作用する能力を指す。本発明で使用される「抗原結合部位」という用語は、抗原上で別個であり、本発明の抗体または抗原結合フラグメントによって認識される三次元空間部位を指す。
【0099】
「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンまたは抗体に特異的に結合する抗原上の部位を指す。エピトープは隣接するアミノ酸によって形成されうるものであり、隣接しないアミノ酸はタンパク質の三次フォールディングによって並置される。隣接するアミノ酸によって形成されるエピトープは典型的には変性溶媒への暴露後に維持され、一方、三次フォールディングによって形成されるエピトープは典型的には変性溶媒での処理後に失われる。エピトープは、典型的には固有の空間的コンホメーションにおいて少なくとも3~15アミノ酸を含む。どのエピトープが所与の抗体によって結合されるかを決定するための方法は、免疫ブロッティングおよび免疫沈降アッセイなどを含む、当技術分野で周知である。エピトープの空間的コンホメーションを決定するための方法は、当技術分野の技術および本明細書に記載される技術(たとえば、X線結晶構造解析および二次元核磁気共鳴)を含む。
【0100】
本明細書中で使用される場合、用語「特異的に結合する」または「選択的に結合する」は、所定の抗原上のエピトープへの抗体の結合をいう。典型的には組換えヒトCD40を被検体として用い、抗体をリガンドとして用いると、機器内で表面プラズモン共鳴(SPR)技術により測定した場合、約10-7M未満またはさらに少ない平衡解離定数(K)を有する所定の抗原に抗体が結合し、所定の抗原への結合に対するその親和性は所定の抗原または密接に関連した抗原以外の非特異的抗原(BSA等)への結合に対するその親和性の少なくとも2倍である。「抗原を認識する抗体」という用語は、ここでは「抗体に特異的に結合する」という用語と同じ意味で使用できる。
【0101】
用語「交差反応」は、異なる種からのCD40に結合する本発明の抗体の能力をいう。たとえば、ヒトCD40に結合する本発明の抗体はまた、別の種のCD40に結合しうる。交差反応性は結合アッセイ(たとえば、SPRおよびELISA)における精製抗原との抗体の特異的反応性、またはCD40を生理学的に発現する細胞との抗体の結合または機能的相互作用を検出することによって測定される。交差反応性を決定するための方法は本明細書中に記載されるような標準的な結合アッセイ(たとえば、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ、またはフローサイトメトリー)を含む。
【0102】
用語「阻害する(inhibit)」、「阻害(inhibition)」、「遮断(blockade)」または「遮断する(block)」は、互換的に使用され、部分的および完全な阻害/遮断の両方を包含する。リガンドの阻害/遮断は、好ましくはリガンド結合が阻害または遮断なしに生じる場合に生じる活性の正常なレベルまたはタイプを減少または変化させる。阻害および遮断はまた、抗CD40抗体と接触しないリガンドと比較して、抗CD40抗体と接触した場合のリガンド結合親和性の任意の測定可能な減少を含むことが意図される。
【0103】
用語「増殖の阻害」(たとえば、細胞を含む)は、細胞増殖における任意の測定可能な減少を含むことが意図される。
【0104】
用語「免疫応答を誘導する」および「免疫応答を増強する」は互換的に使用され、特定の抗原に対する免疫応答の刺激(すなわち、受動的または適応的)をいう。CDCまたはADCCを誘導するのに特異的な「誘導する」という用語は、特異的な直接細胞殺傷メカニズムを刺激することを指す。
【0105】
本発明において記載される「ADCC」、すなわち抗体依存性細胞傷害性とは、Fc受容体を発現する細胞が抗体のFc部分を認識することによって、抗体でコーティングされた標的細胞を直接的に死滅させることを意味する。抗体のADCCエフェクター機能は、IgG上のFcセグメントの修飾によって低減または排除できる。修飾は抗体の重鎖定常領域における突然変異、たとえば、IgG1のN297A、L234A、L235A;IgG2/4キメラ、IgG4のF235E、およびL234A/E235A突然変異からなる群より選択される突然変異を指す。
【0106】
抗体および抗原結合フラグメントを産生および精製するための方法は周知であり、そして先行技術(たとえば、非特許文献5)において見出されうる。たとえば、マウスをヒトCD40またはそのフラグメントで免疫化することができ、得られた抗体を再生し、精製し、従来の方法によりアミノ酸配列決定に供することができる。抗原結合フラグメントはまた、従来の方法によって調製されうる。本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、1つ以上のヒトFR領域を非ヒトCDR領域に導入するように遺伝子操作される。ヒト生殖系列FR配列は、ImMunoGeneTics(IMGT)のウェブサイト(http://IMGT.cines.fr)または非特許文献6から入手可能である。
【0107】
本発明の操作された抗体または抗原結合フラグメントは、従来の方法によって調製および精製されうる。対応する抗体のcDNA配列をクローニングし、GS発現ベクターに組換えることができる。CHO細胞は、組換え免疫グロブリン発現ベクターによって安定にトランスフェクトされうる。当該分野で周知のより推奨される方法として、哺乳類発現系は、特にFC領域の高度に保存されたN末端において、抗体のグリコシル化を生じる。安定なクローンは、ヒト抗原に特異的に結合する抗体を発現させることによって得られる。陽性クローンを、バイオリアクター中の無血清培地中で増殖させて、抗体を産生した。抗体が分泌される培養培地は、従来の技術によって精製および収集されうる。抗体は、従来の方法で濾過によって濃縮できる。可溶性混合物および多量体は、モレキュラーシーブ、イオン交換などの従来の方法によっても除去できる。得られた生成物は、(たとえば-70℃で)直ちに凍結するか、または凍結乾燥する必要がある。
【0108】
本発明の抗体は、モノクローナル抗体を指す。本発明のモノクローナル抗体(mAb)は、単一クローン細胞系から得られる抗体を指し、細胞系は、真核細胞系、原核細胞系、またはファージクローン細胞系に限定されない。モノクローナル抗体または抗原結合フラグメントは、たとえば、ハイブリドーマ技術、組換え技術、ファージディスプレイ技術、合成技術(たとえば、CDRグラフト)、または他の先行技術を使用して、組換え的に得られ得る。
【0109】
動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、器官または生物学的流体に適用する場合、「投与」および「治療」は、外因性薬物、治療薬、診断薬または組成物を動物、ヒト、対象物、細胞、組織、器官または生物学的流体と接触させることを指す。「投与」および「治療」はたとえば、治療、薬物動態、診断、研究、および実験方法を指すことができる。細胞の処理は試薬を細胞と接触させること、ならびに試薬を流体と接触させることを含み、流体は細胞と接触している。「投与」および「処置」はまた、たとえば、試薬、診断薬、結合組成物によって、または別の細胞によって、in vitroおよびex vivoで細胞を処置することを意味する。「治療」は、ヒト、動物または研究対象に適用される場合、研究および診断用途に対する治療的処置、予防または予防手段を指す。
【0110】
「治療」は、治療剤が治療効果を有することが知られている疾病の1つ以上の症状を有する患者に対して、本発明の結合化合物のいずれかを含む組成物のような、内用または外用の治療剤を投与することを意味する。一般に、治療剤は、治療される対象または集団における1つ以上の疾患の症状を、そのような症状の変性を誘導するか、またはそのような症状の進行を任意の臨床的に測定不可能な程度まで阻害するかにかかわらず、効果的に軽減する量で投与される。任意の特定の疾患の症状を軽減するのに有効な治療剤の量(「治療有効量」とも呼ばれる。)は、疾患状態、患者の年齢および体重、ならびに患者において所望の効果を引き出す薬物の能力などの様々な要因に応じて変動しうる。疾患の症状が軽減されたかどうかは、病状の重症度または進行を評価するために医師または他の医療専門家によって一般的に使用される任意の臨床試験方法によって評価できる。本発明の実施形態(たとえば、治療方法または調製物)は各患者に共通する標的疾患の症状を改善するのに有効ではないかもしれないが、スチューデントt検定、カイ二乗検定、MannおよびWhitneyに基づくU検定、Kruskal-Wallis検定(H検定)、Jonckheere-Terpstra検定、およびWilcoxon検定などの当技術分野で公知の任意の統計学的試験方法に従って、標的疾患の症状を統計学的に有意な数の患者において軽減すべきであることが決定される。
【0111】
「保存的修飾」または「保存的置換または置換」はタンパク質中のアミノ酸を、タンパク質の生物学的活性を変化させることなく頻繁に変化させることができるように、類似の特徴(たとえば、電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、骨格コンホメーションおよび剛性など)を有する他のアミノ酸で置換することを指す。通常、ポリぺプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換は生物学的活性を実質的に変化させないことが、当業者によって公知である(たとえば、非特許文献7を参照のこと)。さらに、構造的または機能的に類似したアミノ酸の置換は、生物学的活性を破壊しそうにない。アミノ酸の一般的な保存的置換は以下の通りである。
【0112】
【表1】
【0113】
用語「から本質的になる」またはその変形は、明細書および特許請求の範囲を通して使用されるように、すべてのそのような要素または要素の群を含み、任意選択で、前記要素に性質が類似または異なる他の要素を含み、他の要素は、所与の投薬計画、方法または組成物の本質的または新規な特性を有意に変更しない。非限定的な例として、列挙されたアミノ酸配列から本質的になる結合化合物はまた、結合化合物の特性に有意に影響しない1つ以上のアミノ酸を含みうる。
【0114】
本発明による物体に適用される「天然に存在する」という用語は、物体が天然に見出されうるという事実を指す。たとえば、天然の供給源から単離されうる。そして、実験室において意図的に人工的に改変されていない生物(ウイルスを含む)中に存在するポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列は天然に存在する。
【0115】
「有効量」は、医学的状態の症状または徴候を改善または予防するのに十分な量を含む。有効量はまた、診断を可能にするかまたは容易にするのに充分な量を意味する。特定の患者または獣医学的被験体についての有効量は、処置されるべき状態、患者の全体的な健康、投与方法の経路および投薬量、ならびに副作用の重篤度のような因子に依存して変化しうる。有効量は、有意な副作用または毒性効果を回避する最大用量または投薬レジメンでありうる。
【0116】
「外因性」とは、バックグラウンドに従って、生体、細胞、または人体の外部で産生される物質をいう。「内因性」とは、バックグラウンドに従って、細胞、生物またはヒトの体内で産生される物質をいう。
【0117】
「相同性」は、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列間の配列類似性を指す。両方の比較配列中の位置が同じ塩基またはアミノ酸モノマーサブユニットによって占有される場合、たとえば、2つのDNA分子の各位置がアデニンによって占有される場合、その分子はその位置で相同である。2つの配列間の相同性のパーセンテージは、2つの配列によって共有される一致するまたは相同な位置の数を比較された位置の数で割って100%を乗じた関数である。たとえば、配列が最適にアラインメントされる場合、2つの配列中の10個の位置のうちの6個が一致するか、または相同である場合、2つの配列は60%相同である。一般に、比較は、相同性の最大パーセンテージが2つの配列をアラインメントさせることによって得られる場合に行われる。
【0118】
本明細書で使用される「細胞」、「細胞系」および「細胞培養物」という表現は互換的に使用することができ、そのような名称はすべて、それらの子孫を含む。したがって、「形質転換体」および「形質転換細胞」という語は、移入の数にかかわらず、初代試験細胞およびそれに由来する培養物を含む。また、すべての子孫は意図的または意図的でない突然変異のために、DNA含量に関して正確に同一ではないことがあることも理解されるべきである。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングされたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫が含まれる。異なる名前が意味される場合、それらは文脈から明確に区別可能である。
【0119】
「任意の(optional)」または「任意に(optionally)」は、イベントまたは環境がどこで発生するか、または発生しないかを含めて、後述するイベントまたは環境が発生してもよいが、必ずしも発生しなくてもよいことを意味する。たとえば、「任意に1~3個の抗体重鎖可変領域を含む」は特定の配列の抗体重鎖可変領域が存在しうることを意味するが、必ずしも存在する必要はない。
【0120】
「医薬組成物」は、本明細書に記載の化合物の1つ以上、またはその生理学的/薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグ、および他の化学成分、ならびに生理学的/薬学的に許容される担体および賦形剤などの他の成分を含む混合物を意味する。医薬組成物の目的は活性成分の吸収を促進し、それによって生物学的活性を発揮する生物の投与を促進することである。
【実施例
【0121】
以下の実施例は本発明をさらに説明するものであり、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。本発明の実施形態において特定の条件を示さない実験方法は通常、従来の条件(たとえば、非特許文献8および非特許文献9)に従って、または原料もしくは商品の製造業者によって推奨される条件に従って実施される。特定の供給源のない試薬は、市場から購入される常用試薬である。
【0122】
〔実施例1 免疫抗原、スクリーニングされた抗原の配列およびその調製〕
His標識ヒトCD40(h-CD40-his)組換えタンパク質、Fc標識ヒトCD40(h-CD40-Fc)組換えタンパク質、His標識マウスCD40(m-CD40-his)組換えタンパク質およびHis標識アカゲザルCD40(アカゲザル-CD40-his)組換えタンパク質(#CD0-C52H7)は、Acrobiosystemsから購入した精製市販タンパク質であった。それぞれの配列を下表に示す。これらのタンパク質は、以下の実施例の実験において使用されうる。
【0123】
【表2】
【0124】
〔実施例2 抗体ハイブリドーマの調製〕
抗ヒトCD40モノクローナル抗体は、実験的C57BL/6マウス、雌、6~8週齢(Zhao Yan (Suzhou) New Drug Research Center Co., Ltd.、動物生産ライセンス番号 201503259)であるマウスを免疫することによって産生した。給餌環境はSPFレベルとした。マウスを購入し、20~25℃の温度および40~60%の湿度で12/12時間の明/暗サイクル調整を伴う実験室環境で1週間飼料を与えた。環境に適応したマウスを2つのケージに分け、各ケージに5匹のマウスを入れた。
【0125】
免疫抗原は、Fcタグ化ヒト修飾CD40組換えタンパク質(h-CD40-Fc、濃度1μg/μlまでリン酸緩衝液中に製剤化)であった。フロイントアジュバント(Sigma、ロット番号:F5881/F5506)を乳化に使用し、フロイント完全アジュバント(CFA)を一次免疫に使用し、核酸アジュバント(CpG、Sangon Biotech)および注射用アルミニウム(Imject Alum、Thermo、ロット番号:PH203866)を残りの追加免疫に使用した。免疫化は、0日目、14日目、28日目、42日目、56日目、および70日目に行った。血液検査は21、35、49、63、77日目に採血し、ELISAによりマウス血清を検出し、マウス血清中の抗体価を測定した。
【0126】
4回目の免疫時に、脾臓細胞融合を、抗体力価が高く、血清中で安定する傾向があるマウスにおいて行った。融合の3日前に追加免疫を行い、リン酸緩衝液を配合した抗原溶液10μgを各マウスに腹腔内(IP)注射した。脾臓リンパ球を、最適化されたPEG媒介融合工程を使用して骨髄腫細胞Sp2/0細胞(ATCC(登録商標)CRL-8287TM)と融合させて、ハイブリドーマ細胞を得、そして良好なin vitro活性を有する5つのモノクローナルハイブリドーマ細胞株を選択した。
【0127】
〔実施例3 ELISA結合アッセイ〕
抗CD40抗体の結合特性をELISAアッセイによって検出した。hisタグを有するCD40組換えタンパク質をコーティングに直接使用し、抗体を添加した後、二次抗体(HRP結合抗抗体Fc抗体)およびHRP基質TMBを添加することによって、抗原に対する抗体の結合活性を検出した。
【0128】
96ウェルマイクロタイタープレートを、100μl/ウェルのヒトまたはアカゲザルCD40-hisタンパク質で0.5μg/mlの濃度でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液、ウェルあたり250μlで3回洗浄した。各すすぎにおいてプレートを10秒間振とうして、十分な洗浄を確実にした。200μlのブロッキング溶液を各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。次に、プレートをウェル当たり250μlで3回洗浄した。各すすぎにおいてプレートを10秒間振とうして、十分な洗浄を確実にした。試験対象の抗CD40抗体100μlを希釈した希釈液を各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートし、次いで、ウェル当たり250μlのすすぎ緩衝液でプレートを3回すすいだ。希釈剤で1:20000に希釈したHRP標識ヤギ抗ヒトIgG二次抗体100μlを各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。次に、プレートをウェル当たり250μlで3回洗浄した。TMB100μlを各ウェルに添加し、暗所で15分間反応させた。ウェルあたり50μlの0.16M硫酸を添加した。450nmにおけるOD値をThermo MμltiSkanFcプレートリーダーにより測定し、CD4に対するCD40抗体の結合EC50値を計算した。
【0129】
異なる生殖系列CD40に対するマウスハイブリドーマ抗体のELISA結合
【表3】
【0130】
〔実施例4 抗CD40抗体は、CD40およびCD40Lの結合を遮断する〕
この実験では、スクリーニングされた抗ヒトCD40抗体を検出し、in vitroブロッキングアッセイによりヒトCD40およびヒトCD40Lの結合を遮断する。具体的には、Fcタグ付きCD40組換えタンパク質(h-CD40-Fc)を96ウェルマイクロタイタープレート上にコーティングした。抗CD40抗体を添加してエピトープに完全に結合し、エピトープを占めた後、hisタグ付きCD40Lを添加した。hisタグを検出することにより、CD40のCD40Lへの結合量を計算し、次いでCD40活性部位を遮断するCD40抗体のIC50値を計算した。
【0131】
96ウェルマイクロタイタープレートを、100μl/ウェルのヒトまたはアカゲザルCD40-Fcタンパク質で1μg/mlの濃度でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液、250μl/ウェルで3回洗浄した。各すすぎにおいてプレートを10秒間振とうして、十分な洗浄を確実にした。200μlのブロッキング溶液を各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。次に、プレートをウェル当たり250μlで3回洗浄した。各すすぎにおいてプレートを10秒間振とうして、十分な洗浄を確実にした。試験対象の抗CD40抗体100μlを希釈した希釈液を各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートし、次いで、1ウェルあたり250μlのすすぎ緩衝液でプレートを3回すすいだ。希釈剤で1:2000に希釈したHRP標識ヤギ抗ヒトIgG二次抗体100μlを各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。次に、プレートをウェル当たり250μlで3回洗浄した。TMB100μlを各ウェルに添加し、暗所で15分間反応させた。ウェル当たり50μlの0.16M硫酸を添加した。450nmにおけるOD値をThermo MμltiSkanFcプレートリーダーによって測定し、CD40LへのCD40結合を遮断するCD40抗体のIC50値を計算した。
【0132】
ヒトhCD40/hCD40LのELISAブロッキング結果
【表4】
【0133】
〔実施例5 Biacore親和性測定〕
ヒト抗体捕捉抗体を、Biacore機器(Biacore X100、GE)のCM5バイオセンサーチップに、ヒト抗体捕捉キット(Cat.BR-1008-39、GE)の記載に記載の方法に従って共有結合させ、それによって、親和性に基づいて試験される特定量のキメラまたはヒト化抗体を捕捉した。次いで、一連の濃度勾配CD40抗原(Acrobiosystemsから購入)をチップの表面に流し、Biacore X100(GE)を用いてリアルタイムで反応シグナルを検出し、結合および解離曲線を得た。解離の各サイクルの完了後、バイオチップをすすぎ、ヒト抗体捕捉キットによって提供される再生溶液で再生した。Amine Coupping Kits(Cat.BR-1000-50、GE)をGEから購入し、HBS-EP+10X緩衝液(Cat.BR-1006-69、GE)を脱イオン水により希釈してHBS-EP+1X緩衝液(pH7.4)を得た。実験データを、BiacoreX100 Evaluation Software 2.0(GEソフトウェア)によって(1:1)結合モデルに適合させ、表11および12に示す親和性値を得た。
【0134】
〔実施例6 レポーター遺伝子に基づく抗CD40抗体の細胞活性試験〕
ヒトcd40遺伝子およびNF-κB媒介SEAPゲノムで安定にトランスフェクトされたHEK-Blue CD40L細胞(Cat#hkb-CD40)を、Invitrogenから購入した。したがって、CD40シグナル伝達経路の活性化レベルは、QUANTI-Blue(SEAPの基質)によって上清中の分泌SEAPを検出することによって特徴付けることができる。この実験では、CD40抗体のin vitro細胞生存率を、細胞HEK-Blue CD40Lの活性化を検出することによってEC50値に従って評価した。HEK-Blue CD40L細胞を、10%FBS、100μg/mlゼオシンおよび30μg/mlブラスチシジンを含有するDMEM培地中で培養し、週2~3回継代し、継代比は1:5または1:10であった。細胞を継代培養するとき、培地をピペッティングによって除去し、細胞層を5mlの0.25%トリプシンですすいだ。次いで、トリプシンをピペッティングによって除去し、細胞をインキュベーター中で3~5分間消化し、続いて新鮮な培地で細胞を懸濁した。100μLの細胞懸濁液を5×10セル/mlの密度で96ウェル細胞培養プレートに加え、培地は10%FBS、100μg/mlのゼオシンおよび30μg/mlのブラストサイジンを含んだDMEMであった。一方、96ウェルプレートの周囲には、滅菌水100μlのみを添加した。プレートをインキュベーター(37℃、5%CO)中で24時間インキュベートした。細胞が壁に付着した後、試験される勾配希釈抗体100μlを各ウェルに添加した。プレートをインキュベーター中で20~24時間インキュベートした(37℃、5% CO )。次に、40μlの細胞上清を各ウェルから新しい96ウェル平底プレートに取り、160μlのQUANTI-Blue基質溶液を添加し、プレートをインキュベーター中で暗所で1~3時間インキュベートした。620nmでの吸光度をマイクロプレートリーダー(Thermo MμltiSkanFc)で測定し、EC50値を計算してCD40抗体のin vitro細胞生存率を評価した。
【0135】
レポーター遺伝子に基づく抗CD40抗体の細胞活性
【表5】
【0136】
〔実施例7 抗cd40抗体のアッセイを活性化するDC細胞〕
PBMCを正常ヒト末梢血から単離し、次いで単球をCD14 MACSビーズで選別した。10ng/mlのIL4および100ng/mlのGM-CSFを含有するRPMI 1640培地を細胞に添加し、6日間培養し、それによってMoDC細胞(単球由来の樹状細胞)の誘導培養を行った。6日後、細胞を採取し、1×10細胞を採取し、CD209-PE、CD1a-PerCP/Cy5.5およびCD14-PE/Cy7で染色し、FACSを用いて、MoDCが成功裏に誘導されたかどうかを分析した(上記の操作は、当技術分野では全て従来の操作である)。成功裏に誘導されたDCを収集し、そして試験されるべき種々の抗体および対応する勾配濃度を有する参照抗体をそれぞれ添加した(抗体の勾配濃度については図1を参照のこと)。培養の48時間後、細胞を回収し、その後CD80、CD86およびHLA-DRで染色し、データをFACSアッセイによって収集した。一次DC細胞活性化アッセイからのデータによれば、5つのマウス抗体はすべて、有意な活性を示し、DC表面上の活性化分子CD80およびCD86を用量依存的効果で活性化した。5つの抗体の全体的な効果は、2つの参照抗体(PfizerのCP-870、893およびAlligator BioscienceのADC-1013)の効果に匹敵するか、またはそれよりわずかに良好である。図1および図2を参照されたい。
【0137】
〔実施例8 抗CD40抗体のクローニングおよび配列決定〕
上記でスクリーニングおよび同定された5つの抗体のハイブリドーマサブクローンを選択し、対数増殖期のハイブリドーマ細胞を収集した。RNAを、キットの指示に従ってトリゾール(Invitrogen、15596-018)を用いて抽出し、逆転写した(PrimeScriptTM Reverse Transcriptase、Takara、cat #2680A)。次いで、得られたcDNAを、マウスIg-プライマーセット(Novagen、TB326 Rev.B 0503)を使用するPCRによって増幅し、配列決定のために配列決定会社に送った。5つのマウス抗体の配列を最終的に得た。
【0138】
マウスmAb 2H6の重鎖および軽鎖可変領域配列は以下の通りである。
【0139】
2H6 HCVR
QVQLQQSGAELVRPGTSVKVSCKASGYAFSDYLIEWAKQRPGQGLEWIGVINPGSGGSNYNEKIKDRATLTADKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYFCARGGGGFTYWGQGTLVTVSA
(配列番号1)
【0140】
2H6 LCVR
EIQLTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISNYLNWYQQKPDGTIKLLLNFASRLHSGVPSRFSGSGSGTDFFLTISNLEQDDIATYFCQQGSTLPWTFGGGTKLEIK
(配列番号2)
【0141】
mAb 2H6のCDR配列を下表に示す。
【表6】
【0142】
マウス9E5の重鎖および軽鎖可変領域配列は以下の通りである。
【0143】
9E5 HCVR
QVQLQQPGADLVKPGASVKMSCKASGYILTTYWITWVKQRPGQGLEWIGDIHPGSGSTKYNEKFKSKATLTVDTSSSTAYMQLTRLSSEDSAVYYCARRDYWGQGTTLTVSS
(配列番号9)
【0144】
9E5 LCVR
DVLMTQSPLSLPVSLGDQASISCRSSQNIVNSQGNTYLEWYLQKPGESPKLLIYKVTNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVYYCFQASLVPWTFGGGTKLEIK
(配列番号10)
【0145】
9E5のCDR配列を下表に示す。
【表7】
【0146】
1D9の重鎖および軽鎖可変領域配列は以下の通りである。
【0147】
1D9 HCVR
QVRLQQSGAELVRPGTSMRVSCKASGYAFTNYLINWVKQRPGQGLEWIGILNPGSGGTNYNENFKDKATLTADKSSNTAYMQLSSLTSEDSAVYFCIRGSPGFAYWGQGTLVTVSA
(配列番号37)
【0148】
1D9 LCVR
DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDINIYLNWYQQKPDGTVKLLIYSTSGLHSGVPSRFNGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGYTLPYTFGGGTKLEIK
(配列番号38)
【0149】
1D9のCDR配列を下表に示す。
【表8】
【0150】
14C10の重鎖および軽鎖可変領域配列は以下の通りである。
【0151】
14C10 HCVR
QVQVQQSGAELVRPGTSVKVSCKASGYAFTNYLIEWVKQRPGQGLEWIGVINPEFGGTNYNEKFKGKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYFCARGGGGFTYWGQGTLVTVSA
(配列番号45)
【0152】
14C10 LCVR
HIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISSHLNWYQQKPDGTVKLLISYTSRLHSGVPSRFSGSGSGADYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPWTFGGGTKLEIK
(配列番号46)
【0153】
14C10のCDR配列を下表に示す。
【表9】
【0154】
38B4の重鎖および軽鎖可変領域配列は以下の通りである。
【0155】
38B4 HCVR
QVRLKQSGAELVRPGASVKVSCKASGYTFTDYYINWVKQRPGQGLEWIAGIYPGTGNTYYNEKFKGKATLTAERSSSTAYMQLTSLTSEDSAVYFCTRRGLPSLCFDYWGQGTTLTVSS
(配列番号53)
【0156】
38B4 LCVR
DFQMTQTTSSLSASLGDRVTISCSASQGISNYLNWYQQKPDGTVKLLIYYTSSLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEPEDIATYYCQQYSKLPPTFGGGTKLEIK
(配列番号54)
【0157】
38B4のCDR配列を下表に示す。
【表10】
【0158】
これらの中で、2つの最適抗体2H6および9E5をその後の開発に供した。得られた可変領域配列をヒト抗体IgG1の定常領域配列にそれぞれライゲーションし、ヒト-マウスキメラ抗体配列を得、分子クローニング技術によりキメラ抗体の配列をpCP発現ベクター(MabSpace biology Co、Ltd.より購入)に挿入した。これらの配列は、PCRによる増幅後に配列決定および同定され(分子クローニングなどの分子生物学的操作方法が従来の操作条件に従って実施される。非特許文献9参照。)、HEK293細胞発現系を使用して、ヒト-マウスキメラ抗体2H6-Cおよび9E5-Cを得ることができる。MabSelect SuRe(GE Lifesciences)アフィニティークロマトグラフィーによって精製されたキメラ抗体を特徴付けるために、種々のin vitro活性アッセイを行った。データを下表に示す。
【0159】
キメラ抗体のin vitro活性
【表11】
【0160】
〔実施例9 マウス抗体ヒト化実験〕
得られたマウス抗体2H6および9E5の典型的なVH/VLCDR構造に基づいて、重鎖および軽鎖可変領域配列を抗体生殖系列データベースと比較して、高い相同性を有するヒト生殖系列テンプレートを得た。ここで、ヒト生殖系列軽鎖フレームワーク領域はヒトκ軽鎖遺伝子に由来し、本発明の抗体の軽鎖フレームワーク領域は、好ましくはヒト生殖系列軽鎖テンプレートVk1-33/JK4(2H6)またはVk2-28/JK4(9E5)である。ヒト生殖細胞系重鎖フレームワーク領域はヒト重鎖に由来し、本発明の抗体の重鎖フレームワーク領域は以下に示すように、好ましくはヒト生殖細胞系重鎖テンプレートVH1-69/JH6(2H6)またはVH1-2/JH6(9E5)である。
【0161】
2H6の重鎖骨格部位は、好ましくはヒト生殖系列重鎖テンプレートIGHV1-69(配列番号21)である。
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSSYAISWVRQAPGQGLEWMGGIIPIFGTANYAQKFQGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCAR
【0162】
2H6の軽鎖骨格部位は、好ましくはヒト生殖系列軽鎖テンプレートIGkV1-33(配列番号22)である。
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCQASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYDASNLETGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQQYDNLP
【0163】
9E5の重鎖骨格部位は、好ましくはヒト生殖系列重鎖テンプレートIGHV1-2(配列番号23)である。
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTGYYMHWVRQAPGQGLEWMGWINPNSGGTNYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCAR
【0164】
9E5の軽鎖骨格部位は、好ましくはヒト生殖系列軽鎖テンプレートIGkV2-28(配列番号24)である:
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSLLHSNGYNYLDWYLQKPGQSPQLLIYLGSNRASGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCMQALQTP
【0165】
マウス抗体のCDR領域を、選択されたヒト化テンプレート上にグラフトして、ヒト化可変領域を置換し、次いで、対応するヒトIgG定常領域(好ましくは、重鎖はIgG1であり、軽鎖はκである)と組換えた。次いで、マウス抗体の三次元構造に基づいて、埋め込まれた残基、CDRと直接相互作用する残基、およびVLおよびVHのコンホメーションに重要な影響を有する残基を復帰突然変異させ、CDR領域の化学的に不安定なアミノ酸残基を最適化して、最終的なヒト化分子を得る。その重鎖可変領域配列を配列番号25~30に示し、軽鎖可変領域配列を配列番号31~36に示す。
【0166】
hu2H6-H1a(配列番号25)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSDYLIEWVRQAPGQGLEWMGVINPGSGGSNYNEKIKDRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGGGGFTYWGQGTLVTVSS
【0167】
hu2H6-H1b(配列番号26)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYAFSDYLIEWVRQAPGQGLEWMGVINPGSGGSNYNEKIKDRVTLTADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGGGGFTYWGQGTLVTVSS
【0168】
hu2H6-H1c(配列番号27)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYAFSDYLIEWVRQAPGQGLEWIGVINPGSGGSNYNEKIKDRATLTADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGGGGFTYWGQGTLVTVSSFGQGTKLEIK
【0169】
hu9E5-H1a(配列番号28)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTTYWITWVRQAPGQGLEWMGDIHPGSGSTKYNEKFKSRVTMTVDTSISTAYMELSRLRSEDTAVYYCARRDYWGQGTTVTVSS
【0170】
hu9E5-H1b(配列番号29)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTTYWITWVRQAPGQGLEWMGDIHPGSGSTKYNEKFKSRVTLTVDTSISTAYMELSRLRSEDTAVYYCARRDYWGQGTTVTVSS
【0171】
hu9E5-H1c(配列番号30)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYILTTYWITWVRQAPGQGLEWMGDIHPGSGSTKYNEKFKSRVTLTVDTSISTAYMELSRLRSEDTAVYYCARRDYWGQGTTVTVSS
【0172】
hu2H6-L1a(配列番号31)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLLNFASRLHSGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQQGSTLPWTFGGGTKVEIK
【0173】
hu2H6-L1b(配列番号32)
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLLNFASRLHSGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQQGSTLPWTFGGGTKVEIK
【0174】
hu2H6-L1c(配列番号33)
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISNYLNWYQQKPGKTIKLLLNFASRLHSGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQQGSTLPWTFGGGTKVEIK
【0175】
hu9E5-L1a(配列番号34)
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQNIVNSQGNTYLEWYLQKPGQSPQLLIYKVTNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQASLVPWTFGGGTKVEIK
【0176】
hu9E5-L1b(配列番号35)
DVVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQNIVNSQGNTYLEWYLQKPGQSPQLLIYKVTNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQASLVPWTFGGGTKVEIK
【0177】
hu9E5-L1c(配列番号36):
DVLMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQNIVNSQGNTYLEWYLQKPGQSPQLLIYKVTNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQASLVPWTFGGGTKVEIK
【0178】
最終的なヒト化hu2H6(H1b重鎖およびL1c軽鎖を含む)およびhu9E5抗体分子(H1c重鎖およびL1a軽鎖を含む)を、上記の発現試験および軽鎖および重鎖の組み合わせの復帰突然変異の数の比較、ならびにその完全な軽鎖および重鎖配列をそれぞれ配列番号17~20に示すことによって選択した。
【0179】
hu2H6 HC
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYAFSDYLIEWVRQAPGQGLEWMGVINPGSGGSNYNEKIKDRVTLTADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGGGGFTYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
(配列番号17)
【0180】
hu2H6 LC
DIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISNYLNWYQQKPGKTIKLLLNFASRLHSGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQQGSTLPWTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
(配列番号18)
【0181】
hu9E5 HC
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYILTTYWITWVRQAPGQGLEWMGDIHPGSGSTKYNEKFKSRVTLTVDTSISTAYMELSRLRSEDTAVYYCARRDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
(配列番号19)
【0182】
hu9E5 LC
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQNIVNSQGNTYLEWYLQKPGQSPQLLIYKVTNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQASLVPWTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
(配列番号20)
【0183】
〔実施例10 ヒト化抗体試験データ〕
ヒト、アカゲザルCD40に対する本発明のヒト化抗体hu2H6、hu9E5の結合活性、ブロッキング活性等を下表に示す。結果は、本発明のヒト化抗ヒトCD40抗体のELISA結合およびブロッキング活性が陽性抗体PfizerおよびAlligatorのそれに匹敵することを示した。特に、ヒトCD40に対するhu9E5のBiacore測定親和性は陽性抗体対照品(Alligator)の9倍であり、対照品(Pfizer)の3倍であった。
【0184】
ヒト化hu2H6およびhu9E5抗体のIn vitro活性
【表12】
【0185】
〔実施例11 マウスにおける腫瘍増殖に対する抗CD40抗体の阻害〕
正常なヒト末梢血を採取し、健康なヒトPBMCを密度勾配遠心分離によって単離した。CD14マイクロビーズキットを用いて単球を選別し、キットに付属するプロトコールに従ってCD14単球を単離した。すなわち、10細胞ごとに20μlの抗CD14マイクロビーズを加え、4℃で15分間インキュベートした。次いで、細胞を磁気カラムに添加し、3回すすいだ。磁気柱内の細胞、すなわちCD14単球を採取した。10ng/mlのIL4および100ng/mlのGM-CSFを含むRPMI 1640培地をCD14単球に添加し、それによって単球を6日間培養し(培養法は当技術分野で一般的な方法である)、MoDC細胞の誘発培養を実施した。残りの細胞にIL-2を含むRPMI 1640を添加し、培養後に懸濁細胞を回収した(培養方法および細胞回収方法はいずれも当該技術分野における従来の方法である)。CD3マイクロビーズキットを用いてT細胞を選別した。6日後、MoDC細胞およびCD3 T細胞を回収し、それぞれ1:5:20の比率でRaji細胞(上海バイオテクノロジーセルバンク研究所、10%ウシ胎仔血清を含むRPMI1640培地中で培養)と混合し、それぞれのNOGマウス(Nanjing Galaxy Biopharma、5日間の適応給餌)に皮下接種した。実験動物を、一定の温度および湿度を有する独立した換気ボックス中に保持した。繁殖室の温度は18.0~26.0℃、湿度は40~70%、換気は10~20回/時、昼夜は12時間/12時間で切り替えた。
【0186】
実験群には、ヒトIgG1抗体対照群、hu2H6、hu9E5および参照抗体G12が含まれ、各群の用量は3mg/kgであった。各群の5匹のマウスに、週1回、6週間、3回の連続投与を行った。全実験中、ベニヤーノギスを用いて週2回腫瘍の長軸径と広軸径を測定し、腫瘍体積(mm)=0.5×(腫瘍長軸径×腫瘍広軸径)を算出した。相対腫瘍阻害率TGI(%)は、TGI%=(1-T/C)×100%により算出した。T/C(%)は相対腫瘍増殖速度、すなわち、ある時点での処置群および対照群の相対腫瘍体積または腫瘍重量のパーセンテージである。TおよびCは、それぞれ、特定の時点における処置群およびIgG1対照群の腫瘍体積(TV)または腫瘍重量(TW)である。
【0187】
結果は、ヒト化抗CD40抗体hu2H6およびhu9E5がIgG1対照と比較して非常に有意な抗腫瘍効果を有し、腫瘍が21日間の投与後にほぼ完全に排除されたことを示した;hu2H6およびhu9E5の抗腫瘍効果は図3および図4に示されるように、参照抗体G12と概して同等またはわずかに良好であった。
【0188】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、当業者であれば、これらは単なる例示であり、本発明の原理および精神から逸脱することなく、本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの均等な形態も、本出願の添付の特許請求の範囲によって定義される範囲内にあることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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