(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】CO2高含有氷を含有するウルトラファインバブル発生剤
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20230407BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20230407BHJP
B01F 23/2375 20220101ALI20230407BHJP
【FI】
C09K3/00 111A
C01B32/50
B01F23/2375
(21)【出願番号】P 2020504993
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2019008188
(87)【国際公開番号】W WO2019172140
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2018038769
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591107034
【氏名又は名称】日本液炭株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】杉原 圭彦
(72)【発明者】
【氏名】江口 敬宏
(72)【発明者】
【氏名】村上 裕之
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/110092(WO,A1)
【文献】特開2007-289256(JP,A)
【文献】特開2011-050398(JP,A)
【文献】The Journal of Physical Chemistry B,2017年,Vol. 121, No. 1,pp. 153-163
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
B01F 21/00- 25/90
C01B 32/50- 32/55
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO
2含有率が3重量%以上の氷を融解させる工程を含む、ウルトラファインバブル含有液体の製造方法
であって、
前記氷が、以下の測定法P1で測定した場合のウルトラファインバブルの濃度が5千万個/mL以上となるように、ウルトラファインバブルを水の中に発生させることができる氷である、前記方法。
(測定法P1)
25℃の水に、-80~0℃であり、かつ、CO
2
含有率が3重量%以上である氷を200mg/mL添加し、25℃条件下で1時間静置した後、水中のウルトラファインバブルの濃度(個/mL)を粒子径測定装置で測定する。
【請求項2】
CO
2含有率が3重量%以上の氷を融解させる工程が、CO
2含有率が3重量%以上の氷を他の液体に接触させることによって融解させる工程、又は、CO
2含有率が3重量%以上の氷を他の液体に接触させずに融解させる工程である、請求項
1に記載のウルトラファインバブル含有液体の製造方法。
【請求項3】
CO
2
含有率が3重量%以上の氷が、最大長が3mm以上の大きさで、CO
2
含有率が3重量%以上の氷である、請求項1又は2に記載のウルトラファインバブル含有液体の製造方法。
【請求項4】
CO
2
含有率が3重量%以上の氷が、CO
2
ハイドレートである、請求項1~3のいずれかに記載のウルトラファインバブル含有液体の製造方法。
【請求項5】
CO
2含有率が3重量%以上の氷が、圧密化CO
2ハイドレートであることを特徴とする請求項
1~
4のいずれかに記載のウルトラファインバブル含有液体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中にウルトラファインバブルを発生させるためのウルトラファインバブル発生剤や、ウルトラファインバブル含有液体の製造方法や、かかる製造方法により製造されるウルトラファインバブル含有液体等に関する。
【背景技術】
【0002】
常圧下の水などの溶媒中での直径が1000nm以下の微細気泡は、「ウルトラファインバブル」とも称される。かかるウルトラファインバブルは、直径が1mm以上である通常の気泡と比較して、(1)気泡界面表面積が著しく大きいこと、(2)気泡泡内圧力が大きいこと、(3)気体溶解効率が高いこと、(4)気泡上昇速度が遅いこと、などの優れた特質を有することから、例えば半導体の洗浄処理、水浄化処理や殺菌処理、牡蠣や貝の養殖等で有用であると考えられている。このようなウルトラファインバブルの生成方法としては、これまでに種々の方法が提案されていると共に実施もされている(特許文献1、2、3)。しかし、これらの生成方法は、ウルトラファインバブル発生装置が必須であるため、ウルトラファインバブルの使用環境が制限され、消費者が手軽に取り扱えない等の問題を有していた。
【0003】
ところで、CO2含有率の高い氷の一種として、CO2ハイドレート(二酸化炭素ハイドレート)という物質が知られている。CO2ハイドレートとは、水分子の結晶体の空寸に二酸化炭素分子を閉じ込めた包接化合物をいう。結晶体を形成する水分子は「ホスト分子」、水分子の結晶体の空寸に閉じ込められている分子は「ゲスト分子」または「ゲスト物質」と呼ばれる。CO2ハイドレートは、融解するとCO2(二酸化炭素)と水に分解するため、融解時にCO2を発生させる。CO2ハイドレートは、CO2と水を、低温、かつ、高圧のCO2分圧という条件にすることにより製造することができ、例えば、ある温度であること、及び、その温度におけるCO2ハイドレートの平衡圧力よりもCO2分圧が高いことを含む条件(以下、「CO2ハイドレート生成条件」とも表示する。)において製造することができる。上記の「ある温度であること、及び、その温度におけるCO2ハイドレートの平衡圧力よりもCO2分圧が高い」条件は、非特許文献1のFigure 2.や、非特許文献2のFigure 7.やFigure 15.に開示されているCO2ハイドレートの平衡圧力曲線(例えば縦軸がCO2圧力、横軸が温度を表す)において、かかる曲線の高圧側(CO2ハイドレートの平衡圧力曲線において、例えば縦軸がCO2圧力、横軸が温度を表す場合は、該曲線の上方)の領域内の温度とCO2圧力の組合せの条件として表される。また、CO2ハイドレートは、水の代わりに微細な氷をCO2と、低温、かつ、低圧のCO2分圧という条件下で反応させて製造することもできる。CO2ハイドレートを製造する際のCO2の圧力が高くなるほど、また、CO2と水の温度が低くなるほど、CO2ハイドレートのCO2含有率が高くなる傾向がある。CO2ハイドレートのCO2含有率は、CO2ハイドレートの製法にもよるが、約3~28重量%程度とすることができ、炭酸水のCO2含有率(約0.5重量%程度)と比較して顕著に高い。
【0004】
また、特許文献4には、生成した炭酸ガスクラスレート(CO2ハイドレート)粒子を、ピストン等の圧縮手段を用いて圧縮することにより、圧密化された炭酸ガスクラスレート塊を形成する方法が開示されている。かかる炭酸ガスクラスレート塊は、深海海水に流されずに、深海底の所定場所に沈降することが記載されている。かかる技術は、大気中の炭酸ガスを低減するための技術に利用することができる旨が記載されている。
【0005】
CO2ハイドレートの他の用途として、CO2ハイドレートを飲料に添加、混合することが知られている。例えば特許文献5には、CO2ハイドレートを飲料に混合することにより、その飲料に炭酸を付与して、炭酸飲料を製造することが、特許文献6には、CO2ハイドレートを氷で覆って形成した炭酸補充媒体を飲料に添加することによって、ぬるくなった飲料を冷却すると共に、気が抜けた飲料に炭酸ガスを補充することが開示されている。
【0006】
このように、CO2含有率が3重量%以上の氷(好ましくはCO2ハイドレート)を液体中に入れると、前述の氷(好ましくはCO2ハイドレート)から気泡が発生することは知られていたが、前述の氷(好ましくはCO2ハイドレート)からウルトラファインバブルが発生することは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-149209号公報
【文献】特開2004-330050号公報
【文献】特開2007-275893号公報
【文献】特開平06-039243号公報
【文献】特開2005-224146号公報
【文献】特許第4969683公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】”Hydrates of Carbon Dioxide and Methane Mixtures”, J. Chem. Eng. Data (1991) 36, 68-71
【文献】”Phase Equilibrium for Clathrate Hydrates Formed with Methane, Ethane, Propane, or Carbon Dioxide at Temperatures below the Freezing Point of Water”, J. Chem. Eng. Data (2008), 53, 2182-2188
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、ウルトラファインバブル発生装置を必要とせずに、手軽にウルトラファインバブルを液体中に発生させることができるウルトラファインバブル発生剤や、ウルトラファインバブル含有液体の製造方法や、かかる製造方法により製造されるウルトラファインバブル含有液体等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討する中で、CO2含有率が3重量%以上の氷(好ましくはCO2ハイドレート)を液体に接触させる(好ましくは液体中に含有させる)と、ウルトラファインバブル発生装置を必要とせずに、液体中にウルトラファインバブルを発生させることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。さらに、本発明者らは、CO2含有率が3重量%以上の氷として、圧密化CO2ハイドレートを用いると、液体中に発生させることができるウルトラファインバブルの濃度(個/mL)を顕著に高めることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。さらに、本発明者らは、CO2ハイドレートを調製する際に、CO2ハイドレートスラリーを低圧であっても圧密化して十分に脱水処理を行うことが、そのCO2ハイドレートによってより高濃度のウルトラファインバブルを得るために重要であることを見いだし、本発明を完成するに至った。また、本発明者らは、CO2含有率が3重量%以上の氷(好ましくはCO2ハイドレート)をそのまま融解させると、かかる氷を水等の液体に含有させた場合よりも非常に高い濃度でウルトラファインバブルを含有する液体を得ることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)液体中にウルトラファインバブルを発生させるためのウルトラファインバブル発生剤であって、CO2含有率が3重量%以上の氷を含有することを特徴とする、前記ウルトラファインバブル発生剤;や、
(2)CO2含有率が3重量%以上の氷が、CO2ハイドレートである上記(1)に記載のウルトラファインバブル発生剤;や、
(3)CO2含有率が3重量%以上の氷が、最大長が3mm以上の大きさで、CO2含有率が3重量%以上の氷である上記(1)又は(2)に記載のウルトラファインバブル発生剤や、
(4)CO2含有率が3重量%以上の氷が、以下の測定法P1で測定した場合のウルトラファインバブルの濃度が5百万個/mL以上となるように、ウルトラファインバブルを水の中に発生させることができる氷であることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載のウルトラファインバブル発生剤;や、
(測定法P1)
25℃の水に、-80~0℃であり、かつ、CO2含有率が3重量%以上である氷を200mg/mL添加し、25℃条件下で1時間静置した後、水中のウルトラファインバブルの濃度(個/mL)をMalvern社製 ナノサイト NS300又は島津製作所社製 SALD-7500nanoで測定する;
(5)CO2含有率が3重量%以上の氷が、圧密化CO2ハイドレートであることを特徴とする上記(1)~(4)のいずれかに記載のウルトラファインバブル発生剤;や、
(6)CO2含有率が3重量%以上の氷を融解させる工程を含む、ウルトラファインバブル含有液体の製造方法;や、
(7)CO2含有率が3重量%以上の氷を融解させる工程が、CO2含有率が3重量%以上の氷を他の液体に接触させることによって融解させる工程、又は、CO2含有率が3重量%以上の氷を他の液体に接触させずに融解させる工程である、上記(6)に記載のウルトラファインバブル含有液体の製造方法;や、
(8)CO2含有率が3重量%以上の氷が、以下の測定法P1で測定した場合のウルトラファインバブルの濃度が5百万個/mL以上となるように、ウルトラファインバブルを水の中に発生させることができる氷であることを特徴とする上記(6)又は(7)に記載のウルトラファインバブル含有液体の製造方法;や、
(測定法P1)
25℃の水に、-80~0℃であり、かつ、CO2含有率が3重量%以上である氷を200mg/mL添加し、25℃条件下で1時間静置した後、水中のウルトラファインバブルの濃度(個/mL)をMalvern社製 ナノサイト NS300又は島津製作所社製 SALD-7500nanoで測定する;
(9)CO2含有率が3重量%以上の氷が、圧密化CO2ハイドレートであることを特徴とする上記(6)~(8)のいずれかに記載のウルトラファインバブル含有液体の製造方法;
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ウルトラファインバブル発生装置を必要とせずに、手軽にウルトラファインバブルを液体中に発生させることができるウルトラファインバブル発生剤や、ウルトラファインバブル含有液体の製造方法や、かかる製造方法により製造されるウルトラファインバブル含有液体等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、後述の実施例における試験2において作製した気泡含有水における気泡の粒径分布と発生頻度(濃度)を表す図である。横軸は気泡の粒子径(μm)を表し、縦軸は、気泡の発生頻度(濃度)(億個/mL)を表す。
図1において、濃度が1.0億個を超える部分があるグラフは、CO
2含有率20%の圧密化CO
2ハイドレート(「圧密20% CO2GH」)の結果を表し、粒子径が0.1~0.2μmのあたりにおいて濃度が0.1億個以下である2本のグラフのうち、濃度がより高いグラフは、CO
2含有率20%のCO
2ハイドレート(「20% CO2GH」)の結果を表し、濃度がより低いグラフは、CO
2含有率13%のCO
2ハイドレート(「13% CO2GH」)の結果を表す。
【
図2】
図2は、CO
2含有率13%のCO
2ハイドレートを水に、0mg/mL、20mg/mL、200mg/mL、1000mg/mL、1500mg/mLずつ添加した場合の、ウルトラファインバブルの濃度(百万個/mL)を表す図である。
【
図3】
図3は、CO
2含有率20%の圧密化CO
2ハイドレートを水に、0mg/mL、20mg/mL、200mg/mLずつ添加した場合の、ウルトラファインバブルの濃度(百万個/mL)を表す図である。
【
図4】
図4は、3種類のCO
2ハイドレートを水に、0mg/mL、20mg/mL、200mg/mLずつ添加した場合の、ウルトラファインバブルの濃度(百万個/mL)を表す図である。「13% CO2GH」のグラフは、CO
2含有率13%のCO
2ハイドレートを用いた場合の結果を表し、「20% CO2GH」のグラフは、CO
2含有率20%のCO
2ハイドレートを用いた場合の結果を表し、「圧密20% CO2GH」のグラフは、CO
2含有率20%の圧密化CO
2ハイドレートを用いた場合の結果を表す。
【
図5】
図5は、1mLの液体(水又は生理食塩水)に対して、CO
2含有率13%のCO
2ハイドレートを0mg、20mg、200mg、1000mgずつ添加した場合の、ウルトラファインバブルの濃度(百万個/mL)を表す図である。
【
図6】
図6は、1mLの液体(水又は生理食塩水)に対して、CO
2含有率20%の圧密化CO
2ハイドレートを0mg、20mgずつ添加した場合の、ウルトラファインバブルの濃度(百万個/mL)を表す図である。
【
図7】
図7は、CO
2ハイドレートを水に添加して作製した気泡含有水における気泡の粒径分布と発生頻度(濃度)を表す図である。横軸は気泡の粒子径(μm)を表し、縦軸は、気泡の発生頻度(濃度)(個/mL)を表す。また、
図7の上段は、低圧圧密化CO
2ハイドレートを水に添加して得られた気泡含有水についての結果を表し、
図7の下段は、高圧圧密化CO
2ハイドレートを水に添加して得られた気泡含有水についての結果を表す。
【
図8】
図8は、水にCO
2ハイドレートを300mg/mL溶解して得られた気泡含有水におけるウルトラファインバブル濃度(億個/mL)を表す図である。
図8の「低圧圧密化」は、低圧圧密化CO
2ハイドレートを用いた場合の結果を表し、「高圧圧密化」は、高圧圧密化CO
2ハイドレートを用いた場合の結果を表し、「通常」は、通常CO
2ハイドレートを用いた場合の結果を表す。
【
図9】
図9は、高圧圧密化CO
2ハイドレートをそのまま融解して得られたCO
2ハイドレート融解水における気泡の粒径分布と発生頻度(濃度)を表す図である。横軸は気泡の粒子径(μm)を表し、縦軸は、気泡の発生頻度(濃度)(個/mL)を表す。
【
図10】
図10は、「高圧圧密化CO
2ハイドレートを水に300mg/mL添加した気泡含有水」、「高圧圧密化CO
2ハイドレートを水に1000mg/mL添加した気泡含有水」、「高圧圧密化CO
2ハイドレート融解水」における各ウルトラファインバブル濃度(億個/mL)を表す図である。
【
図11】
図11は、「通常CO
2ハイドレートを水に300mg/mL添加した気泡含有水」、「通常CO
2ハイドレートを水に1000mg/mL添加した気泡含有水」、「通常CO
2ハイドレート融解水」における各ウルトラファインバブル濃度(億個/mL)を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、
[1]液体中にウルトラファインバブルを発生させるためのウルトラファインバブル発生剤であって、CO2含有率が3重量%以上の氷を含有することを特徴とする、前記ウルトラファインバブル発生剤(以下、「本発明のウルトラファインバブル発生剤」とも表示する。):や、
[2]CO2含有率が3重量%以上の氷を融解させる工程を含む、ウルトラファインバブル含有液体の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも表示する。):などの実施態様を含んでいる。
なお、本明細書において、本発明のウルトラファインバブル発生剤は、本発明のウルトラファインバブル発生用の物質又は組成物と言い換えることもできる。
【0015】
1.<本発明のウルトラファインバブル発生剤>
本発明のウルトラファインバブル発生剤は、液体中にウルトラファインバブルを発生させるためのウルトラファインバブル発生剤であって、CO2含有率が3重量%以上の氷を含有することを特徴とする、前記ウルトラファインバブル発生剤である。
【0016】
(CO2含有率が3重量%以上の氷)
本発明のウルトラファインバブル発生剤としては、液体中にウルトラファインバブルを発生させるためのウルトラファインバブル発生剤であって、CO2含有率が3重量%以上の氷(以下、「CO2高含有氷」とも表示する。)を含有する限り特に制限されない。かかるCO2高含有氷は、CO2ハイドレートではないCO2高含有氷であってもよいが、ウルトラファインバブルをより高濃度で得る観点から、CO2ハイドレートであることが好ましく、圧密化CO2ハイドレートであることがより好ましい。CO2ハイドレートは、水分子の結晶体の空寸に二酸化炭素分子を閉じ込めた固体の包接化合物である。CO2ハイドレートは、通常、氷状の結晶体であり、例えば標準気圧条件下で、かつ、氷が融解するような温度条件下に置くと、融解しながらCO2を放出する。また、本発明におけるCO2高含有氷として、CO2ハイドレートを用いずに、CO2ハイドレートではないCO2高含有氷を用いてもよいし、CO2ハイドレートではないCO2高含有氷を用いずに、CO2ハイドレートを用いてもよいし、CO2ハイドレートではないCO2高含有氷と、CO2ハイドレートを併用してもよい。また、CO2ハイドレートとして、圧密化CO2ハイドレートを用いずに、圧密化していないCO2ハイドレートを用いてもよいし、圧密化していないCO2ハイドレートを用いずに、圧密化CO2ハイドレートを用いてもよいし、圧密化していないCO2ハイドレートと圧密化CO2ハイドレートを併用してもよい。
【0017】
本発明におけるCO2高含有氷としては、以下の測定法P1で測定した場合のウルトラファインバブルの濃度(個/mL)で、好ましくは5百万個/mL以上、より好ましくは1千万個/mL以上、さらに好ましくは2千万個/mL以上、より好ましくは2千5百万個/mL以上、さらに好ましくは3千万個/mL以上、より好ましくは3千5百万個/mL以上、さらに好ましくは5千万個/mL以上、より好ましくは7千5百万個/mL以上、さらに好ましくは1億個/mL以上、より好ましくは1億5千万個/mL以上、さらに好ましくは2億個/mL以上、より好ましくは2億5千万個/mL以上のウルトラファインバブルを水の中に発生させることができるCO2高含有氷を好適に挙げることができる。なお、本明細書において、測定法P1で測定した場合のウルトラファインバブルの濃度が所定濃度以上又は所定濃度以下であるとは、Malvern社製 ナノサイト NS300による測定値、島津製作所社製 SALD-7500nanoによる測定値のいずれか一方(好ましくは両方)が所定濃度以上又は所定濃度以下であることを意味する。
(測定法P1)
25℃の水に、-80~0℃であり、かつ、CO2含有率が3重量%以上である氷を200mg/mL添加し、25℃条件下で1時間静置した後、水中のウルトラファインバブルの濃度(個/mL)をMalvern社製 ナノサイト NS300又は島津製作所社製 SALD-7500nanoで測定する。
【0018】
本発明におけるCO2高含有氷が、水の中に発生させることができるウルトラファインバブルの濃度の上限としては、特に制限されないが、前述の測定法P1で測定した場合のウルトラファインバブルの濃度が、例えば100億個/mL以下、10億個/mL以下であることが挙げられる。
【0019】
本発明におけるCO2高含有氷が、水の中に発生させることができるウルトラファインバブル(好ましくは、CO2のウルトラファインバブル)のより具体的な濃度としては、測定法P1で測定した場合の濃度で、5百万~100億個/mL、5百万~10億個/mL、1千万~100億個/mL、1千万~10億個/mL、2千万~100億個/mL、2千万~10億個/mL、2千5百万~100億個/mL、2千5百万~10億個/mL、3千万~100億個/mL、3千万~10億個/mL、3千5百万~100億個/mL、3千5百万~10億個/mL、5千万~100億個/mL、5千万~10億個/mL、7千5百万~100億個/mL、7千5百万~10億個/mL、1億~100億個/mL、1億~10億個/mL、1億5千万~100億個/mL、1億5千万~10億個/mL、2億~100億個/mL、2億~10億個/mL、2億5千万~100億個/mL、2億5千万~10億個/mL等が挙げられる。
【0020】
本発明におけるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)のCO2含有率としては、3重量%以上である限り特に制限されないが、ウルトラファインバブルをより高濃度で得る観点から、好ましくは5重量%以上、より好ましくは7重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、より好ましくは13重量%以上、さらに好ましくは16重量%以上、より好ましくは18重量%以上であることが挙げられる。また、上限値としては特に制限されないが、30重量%や、28重量%や、26重量%が挙げられる。CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)のより具体的なCO2含有率としては、5~30重量%、7~30重量%、10~30重量%、13~30重量%、16~30重量%、18~30重量%、5~28重量%、7~28重量%、10~28重量%、13~28重量%、16~28重量%、18~28重量%、5~26重量%、7~26重量%、10~26重量%、13~26重量%、16~26重量%、18~26重量%等が挙げられる。
【0021】
本発明におけるCO2高含有氷のCO2含有率は、本発明におけるCO2高含有氷を製造する際の「CO2分圧の高低」などにより調整することができ、例えばCO2分圧を高くすると、CO2高含有氷のCO2含有率を高くすることができる。また、CO2高含有氷がCO2ハイドレートである場合は、CO2ハイドレートを製造する際の「CO2分圧の高低」、「脱水処理の程度」、「圧縮処理を行うか否か」、「圧縮処理する場合の圧縮の圧力の高低」などにより、CO2ハイドレートのCO2含有率を調整することができる。例えば、CO2ハイドレートを製造する際の「CO2分圧を高くし」、「脱水処理の程度を上げ」、「圧縮処理を行い」、「圧縮処理する場合の圧密の圧力を高くする」と、CO2ハイドレートのCO2含有率を高くすることができる。なお、CO2ハイドレート等のCO2高含有氷が融解すると、該CO2ハイドレート等のCO2高含有氷に含まれていたCO2が放出され、その分の重量が減少するので、CO2ハイドレート等のCO2高含有氷のCO2含有率は、例えば、CO2ハイドレート等のCO2高含有氷を常温で融解させた際の重量変化から、下記式(1)を用いて算出する事ができる。
(CO2含有率)=(融解前のサンプル重量-融解後のサンプル重量)/融解前のサンプル重量) 式(1)
【0022】
また、本発明のウルトラファインバブル発生剤が含有するCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)は、そのすべてが、3重量%以上のCO2含有率であることが好ましいが、本発明の効果が得られる範囲において、CO2含有率が3重量%未満の氷やCO2ハイドレートも含有していてもよい。本発明のウルトラファインバブル発生剤が含有するCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)に対する、CO2含有率が3重量%未満の氷やCO2ハイドレートの割合(重量%)としては、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下が挙げられる。
【0023】
本発明におけるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)の形状としては、適宜設定することができ、例えば、略球状;略楕円体状;略直方体形状等の略多面体形状;あるいは、これらの形状にさらに凹凸を備えた形状;などが挙げられる。また、本発明におけるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)は、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)の塊を適宜破砕して得られる様々な形状の破砕片(塊)であってもよい。
【0024】
本発明におけるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)の大きさとしては、特に制限されず、適宜設定することができる。本発明におけるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)の最大長の下限として、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上、さらに好ましくは7mm以上、より好ましくは10mm以上が挙げられ、最大長の上限として150mm以下、100mm以下、80mm以下、60mm以下が挙げられ、より具体的には3mm以上150mm以下、3mm以上100mm以下、3mm以上80mm以下、3mm以上60mm以下や、5mm以上150mm以下、5mm以上100mm以下、5mm以上80mm以下、5mm以上60mm以下、10mm以上150mm以下、10mm以上100mm以下、10mm以上80mm以下、10mm以上60mm以下などが挙げられる。
【0025】
本明細書において「CO2高含有氷の最大長」とは、CO2高含有氷のその塊の表面の2点を結び、かつ、その塊の重心を通る線分のうち、最も長い線分の長さを意味する。なお、CO2高含有氷が例えば略楕円体状である場合は、前記最大長は長径(最も長い直径)を表し、略球状である場合は、前記最大長は直径を表し、略直方体形状である場合は、対角線の中で最も長い対角線の長さを表す。また、本明細書において「CO2高含有氷の最小長」とは、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)のその塊の表面の2点を結び、かつ、その塊の重心を通る線分のうち、最も短い線分の長さを意味する。かかる最大長や最小長は、市販の画像解析式粒度分布測定装置などを用いて測定することもできるし、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)の塊に定規をあてて測定することもできる。
【0026】
本発明におけるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)の好適な態様として、アスペクト比(最大長/最小長)が好ましくは1~5の範囲内、より好ましくは1~4の範囲内、さらに好ましくは1~3の範囲内であるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)が挙げられる。
【0027】
CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)の大きさは以下の方法で調整することができる。例えば、CO2ハイドレートではないCO2高含有氷の最大長は、かかるCO2高含有氷を製造する際の型の最大長を調整したり、製造後のCO2高含有氷を破砕する際の破砕の程度を調整したりすることによって調整することができる。また、CO2ハイドレートの最大長は、CO2ハイドレートを圧縮成形する際に用いる型の最大長を調整したり、圧縮成形した後のCO2ハイドレートを破砕する際の破砕の程度を調整したりすることによって、調整することができる。また、最小長については、型の最小長を調整したり、製造後のCO2高含有氷を破砕する際の程度を調整したりすることによって調整することができる。
【0028】
本発明におけるCO2高含有氷の製造方法としては、CO2高含有氷を製造できる限り特に制限されない。CO2ハイドレートではないCO2高含有氷の製造方法としては、CO2ハイドレート生成条件を充たさない条件下で原料水中にCO2を吹き込みながら原料水を冷凍する方法が挙げられる。また、CO2ハイドレートの製造方法としては、CO2ハイドレート生成条件を充たす条件下で原料水中にCO2を吹き込みながら原料水を攪拌する気液攪拌方式や、CO2ハイドレート生成条件を充たす条件下でCO2中に原料水をスプレーする水スプレー方式等の常法を用いることができる。これらの方式で生成されるCO2ハイドレートは、通常、CO2ハイドレートの微粒子が、未反応の水と混合しているスラリー状であるため、CO2ハイドレートの濃度を高めるために、脱水処理を行うことが好ましい。脱水処理によって含水率が比較的低くなったCO2ハイドレート(すなわち、比較的高濃度のCO2ハイドレート)は、ペレット成形機で一定の形状(例えば球状や直方体状)に圧縮成形することが好ましい。圧縮成形したCO2ハイドレートは、本発明における圧密化CO2ハイドレートの1種として好適に用いることができる。圧縮成形したCO2ハイドレートは、そのまま本発明に用いてもよいし、必要に応じてさらに破砕等したものを用いてもよい。なお、CO2ハイドレートの製造方法としては、前述のように、原料水を用いる方法が比較的広く用いられているが、水(原料水)の代わりに微細な氷(原料氷)をCO2と、低温、かつ、低圧のCO2分圧という条件下で反応させてCO2ハイドレートを製造する方法を用いることもできる。
【0029】
上記の「CO2ハイドレート生成条件」は、前述したように、その温度におけるCO2ハイドレートの平衡圧力よりCO2分圧(CO2圧力)が高い条件である。上記の「CO2ハイドレートの平衡圧力よりもCO2分圧が高い条件」は、非特許文献1(J. Chem. Eng. Data (1991) 36, 68-71)のFigure 2.や、非特許文献2(J. Chem. Eng. Data (2008), 53, 2182-2188)のFigure 7.やFigure 15.に開示されているCO2ハイドレートの平衡圧力曲線(例えば縦軸がCO2圧力、横軸が温度を表す)において、かかる曲線の高圧側(CO2ハイドレートの平衡圧力曲線において、例えば縦軸がCO2圧力、横軸が温度を表す場合は、該曲線の上方)の領域内のCO2圧力と温度の組合せの条件として表される。CO2ハイドレート生成条件の具体例として、「-20~4℃の範囲内」と「二酸化炭素圧力1.8~4MPaの範囲内」の組合せの条件や、「-20~-4℃の範囲内」と「二酸化炭素圧力1.3~1.8MPaの範囲内」の組合せの条件が挙げられる。
【0030】
本発明のウルトラファインバブル発生剤におけるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)の含有量としては、特に制限されないが、例えば5~100重量%の範囲内、好ましくは30~100重量%の範囲内、より好ましくは50~100重量%の範囲内、さらに好ましくは70~100重量%の範囲内を挙げることができる。
【0031】
本発明において「圧密化CO2ハイドレート」とは、CO2ハイドレート率が40~90%(好ましくは50~90%、より好ましくは60~90%)であるCO2ハイドレートを意味する。CO2ハイドレート率とは、CO2ハイドレートの塊の重量に対するCO2ハイドレートの重量の割合(%)を意味する。かかるCO2ハイドレート率は、以下の式(2)により算出することができる。
CO2ハイドレート率(%)={(融解前のサンプル重量-融解後のサンプル重量)+(融解前のサンプル重量-融解後のサンプル重量)÷44×5.75×18}×100÷融解前のサンプル重量 式(2)
式(2)を以下に説明する。(融解前のサンプル重量-融解後のサンプル重量)は、包蔵されるCO2ガス重量となる。CO2ガスをハイドレートとして包接するために必要な水量は、理論水和数5.75、CO2の分子量44、水の分子量18を用いて算出し、それ以外の水は、ハイドレートを構成しない付着水とみなしている。
【0032】
本発明における好適な圧密化CO2ハイドレートとしては、前述の測定法P1で測定した場合のウルトラファインバブルの濃度(個/mL)で5千万~100億個/mL、5千万~10億個/mL、好ましくは7千5百万~100億個/mL、7千5百万~10億個/mL、さらに好ましくは1~100億個/mL、1~10億個/mL、より好ましくは1億5千万~100億個/mL、1億5千万~10億個/mL、さらに好ましくは2~100億個/mL、2~10億個/mL、より好ましくは2億5千万~100億個/mL、2億5千万~10億個/mLのウルトラファインバブルを水の中に発生させることができるCO2ハイドレートが挙げられる。また、本発明における好適な圧密化CO2ハイドレートのCO2含有率としては、ウルトラファインバブルをより高濃度で得る観点から、好ましくは7重量%以上、より好ましくは好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは13重量%以上、より好ましくは16重量%以上、さらに好ましくは18重量%以上であることが挙げられる。また、上限値としては特に制限されないが、30重量%や、28重量%や、26重量%が挙げられる。本発明における好適な圧密化CO2ハイドレートのより具体的なCO2含有率としては、7~30重量%、10~30重量%、13~30重量%、16~30重量%、18~30重量%、7~28重量%、10~28重量%、13~28重量%、16~28重量%、18~28重量%、7~26重量%、10~26重量%、13~26重量%、16~26重量%、18~26重量%等が挙げられる。
【0033】
本発明における圧密化CO2ハイドレートの製造方法は特に制限されないが、例えば以下の製造方法を好ましく挙げることができる。
CO2ハイドレート生成条件を充たす条件下で原料水中にCO2を吹き込みながら原料水を攪拌する気液攪拌方式や、CO2ハイドレート生成条件を充たす条件下でCO2中に原料水をスプレーする水スプレー方式等の常法を用いることができる。これらの方式で生成されるCO2ハイドレートは、通常、CO2ハイドレートの微粒子が、未反応の水と混合しているスラリー状である。かかるスラリーについて脱水処理及び圧縮処理を行うことにより、圧密化CO2ハイドレートを製造することができる。CO2ハイドレート粒子と水を含むスラリーの脱水処理及び圧縮処理は、例えば、スラリーの脱水処理を行った後、CO2ハイドレート粒子の圧縮処理を行うなど、脱水処理と圧縮処理を別々に順次行ってもよいし、あるいは、スラリー中の水が排出され得る状況下でスラリーを圧縮処理するなどして、脱水処理と圧縮処理を同時に行ってもよいが、ウルトラファインバブルをより高濃度で得る観点から、脱水処理と圧縮処理を同時に行うことが好ましく、中でも、CO2ハイドレート生成条件下で脱水処理と圧縮処理を同時に行うことがより好ましい。CO2ハイドレート粒子の圧縮処理や、スラリーの圧縮処理は、市販の圧密成形機等を用いて行うことができる。圧縮処理の際の圧力としては、例えば0.1~100Mpa、0.8~100Mpa、1~100Mpa、1~50Mpa、1~30Mpa、1~15Mpa、1~10Mpa、2.5~10Mpa、2.5~9Mpaなどを挙げることができる。本明細書において「低圧圧密化CO2ハイドレート」とは、圧縮処理の際の圧力が0.8Mpa以上2Mpa未満の圧密化CO2ハイドレートを意味し、「高圧圧密化CO2ハイドレート」とは、圧縮処理の際の圧力が2Mpa以上(好ましくは2~100Mpa)の圧密化CO2ハイドレートを意味する。なお、前述のスラリーについて、十分な脱水処理を行うと、CO2ハイドレート率は通常約40%となり、十分な脱水処理後に2.5MpaでCO2ハイドレート粒子の圧縮処理を行うとCO2ハイドレート率は通常約60%となり、脱水処理後に9MpaでCO2ハイドレート粒子の圧縮処理を行うとCO2ハイドレート率は通常約90%となるとされている。
【0034】
本発明のウルトラファインバブル発生剤におけるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)は、CO2と氷のみからなるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)(以下、「任意成分を含有しないCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)」とも表示する。)であってもよいが、ウルトラファインバブル発生剤の用途に応じた任意成分をさらに含有するCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)であってもよい。また、本発明のウルトラファインバブル発生剤は、「任意成分を含有しないCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)」、又は、「任意成分を含有するCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)」のみからなるウルトラファインバブル発生剤であってもよいし、これらCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)以外に、任意成分をさらに含有していてもよい。
【0035】
本発明のウルトラファインバブル発生剤がCO2ハイドレート以外のCO2高含有氷を含有する場合、かかる本発明のウルトラファインバブル発生剤は、流通や保管の際に、氷が融解しない温度及び圧力で保持することが好ましい。かかる温度及び圧力として、例えば常圧(例えば1気圧)で0℃以下の条件が挙げられる。一方、CO2ハイドレートの製法等によっては、その保存性や安定性に優れているものもある。したがって、本発明のウルトラファインバブル発生剤がCO2高含有氷としてCO2ハイドレートを含有する場合、かかる本発明のウルトラファインバブル発生剤は、流通や保管の際に、常温(5~35℃)、常圧(例えば1気圧)で保持してもよいが、本発明のウルトラファインバブル発生剤をより長期間、より安定的に保つ観点から、本発明のウルトラファインバブル発生剤は、流通や保管等の際に、「低温条件下」、又は「高圧条件下」、又は「低温条件下かつ高圧条件下」で保持することが好ましい。保持の簡便性の観点から、これらの中でも、「低温条件下」で保持することが好ましく、常圧(例えば1気圧)で「低温条件下」で保持することがより好ましい。
【0036】
上記の「低温条件下」における上限温度としては、10℃以下、好ましくは5℃以下、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは-5℃以下、より好ましくは-10℃以下、さらに好ましくは-15℃以下、より好ましくは-20℃、さらに好ましくは-25℃が挙げられ、上記の「低温条件下」における下限温度としては、-273℃以上、-80℃以上、-50℃以上、-40℃以上、-30℃以上などが挙げられる。
【0037】
上記の「高圧条件下」における下限圧力としては、1.036気圧以上、好ましくは1.135気圧以上、より好ましくは1.283気圧以上、さらに好ましくは1.480気圧以上が挙げられ、上記の「高圧条件下」における上限圧力としては、14.80気圧以下、11.84気圧以下、9.869気圧以下、7.895気圧以下、4.935気圧以下などが挙げられる。
【0038】
(液体)
前述したように、本発明のウルトラファインバブル発生剤は、液体中にウルトラファインバブルを発生させるためのものである。本発明における「液体」とは、以下の(A)~(C)の液体を総称したものである。
(A)本発明におけるCO2高含有氷を含有するウルトラファインバブル発生剤自体が融解した液体(以下、単に「融解液」とも表示する。);
(B)該融解液以外の他の液体(以下、単に「他の液体」とも表示する。);
(C)融解液と他の液体の混合液;
【0039】
本発明における「液体」としては、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)をその液体中に含有させたときに、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)がウルトラファインバブルを発生させることができる液体、又は、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)を他の液体に接触させずに融解させたときに、ウルトラファインバブルが発生することができる液体である限り特に制限されず、例えば、(i)「親水性溶媒」、(ii)「疎水性溶媒」、(iii)「親水性溶媒と疎水性溶媒の混合溶媒」、「(i)~(iii)のいずれかの溶媒に任意の溶質を含んだ液体」等が挙げられる。本発明における「液体」が液体状である温度条件及び圧力条件は、溶媒の種類、液体の用途、液体の使用条件等によっても左右されるため一概に特定することはできないが、20℃、1気圧の条件下で液体状である液体が好ましく挙げられる。
【0040】
本発明に用いられる「親水性溶媒」としては、溶解度パラメーター(SP値)が20以上のものが好ましく、29.9以上がさらに好ましい。具体的には、水(47.9)、多価アルコール、低級アルコールからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。多価アルコールとして、エチレングリコール(29.9)、ジエチレングリコール(24.8)、トリエチレングリコール(21.9)、テトラエチレングリコール(20.3)、プロピレングリコール(25.8)等の2価アルコール、グリセリン(33.8)、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の4価以上のアルコール、ソルビトール等のヘキシトール、グルコース等のアルドース、ショ糖等の糖骨格を有する化合物、その他ペンタエリスリトール等が挙げられる。低級アルコールとしてはイソプロパノール(23.5)、ブチルアルコール(23.3)、エチルアルコール(26.9)が挙げられる。これらの親水性溶媒は2種以上を併用してもよい。なお括弧内は、溶解度パラメーターのδ値を示す。本発明における好ましい親水性溶媒としては、少なくとも水を含むことが好ましく、水であることがより好ましい。
【0041】
本発明に用いられる「疎水性溶媒」としては、好ましくは溶解度パラメーター(SP値)が、20.0未満の有機溶媒であり、具体的には、好ましくは炭化水素系溶剤もしくはシリコーン系溶剤またはそれらの混合物である。炭化水素系溶剤として、例えば、ヘキサン(14.9)、ヘプタン(14.3)、ドデカン(16.2)、シクロヘキサン(16.8)、メチルシクロヘキサン(16.1)、オクタン(16.0)、水添トリイソブチレン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン(18.8)、トルエン(18.2)、エチルベンゼン(18.0)、キシレン(18.0)等の芳香族炭化水素、クロロホルム(19.3)、1,2ジクロロエタン(19.9)、トリクロロエチレン(19.1)等のハロゲン系炭化水素等を例示することができ、シリコーン系溶剤として、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等が例示される。これらの中でヘキサン(14.9)、シクロヘキサン(16.8)が特に好ましい。これらの疎水性溶媒は、2種以上を併用してもよい。
【0042】
上記の「(i)~(iii)のいずれかの溶媒に任意の溶質を含んだ液体」における「溶質」としては、かかる液体中にCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)を含有させたときに、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)がウルトラファインバブルを発生させることができるもの、又は、CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)を他の液体に接触させずに融解させたときに、該融解液中でウルトラファインバブルが発生することができるものである限り特に制限されない。「(i)~(iii)のいずれかの溶媒に任意の溶質を含んだ液体」として、具体的には、生理食塩水が挙げられる。
【0043】
本発明のウルトラファインバブル発生剤は、容器に収容されていてもよい。容器の形状や材質は特に制限されず、例えばプラスチック製のボトル容器を挙げることができる。
【0044】
本発明のウルトラファインバブル発生剤としては、以下の測定法P2で測定した場合のウルトラファインバブルの濃度(個/mL)で、好ましくは5百万個/mL以上、より好ましくは1千万個/mL以上、さらに好ましくは2千万個/mL以上、より好ましくは2千5百万個/mL以上、さらに好ましくは3千万個/mL以上、より好ましくは3千5百万個/mL以上、さらに好ましくは5千万個/mL以上、より好ましくは7千5百万個/mL以上、さらに好ましくは1億個/mL以上、より好ましくは1億5千万個/mL以上、さらに好ましくは2億個/mL以上、より好ましくは2億5千万個/mL以上のウルトラファインバブルを水の中に発生させることができるウルトラファインバブル発生剤を好適に挙げることができる。なお、本明細書において、測定法P2で測定した場合のウルトラファインバブルの濃度が所定濃度以上又は所定濃度以下であるとは、Malvern社製 ナノサイト NS300による測定値、島津製作所社製 SALD-7500nanoによる測定値のいずれか一方(好ましくは両方)が所定濃度以上又は所定濃度以下であることを意味する。
(測定法P2)
25℃の水に、-80~0℃のウルトラファインバブル発生剤を、CO2含有率が3重量%以上の氷に換算して200mg/mL添加し、25℃条件下で1時間静置した後、水中のウルトラファインバブルの濃度(個/mL)をMalvern社製 ナノサイト NS300又は島津製作所社製 SALD-7500nanoで測定する。
【0045】
本発明のウルトラファインバブル発生剤が、水の中に発生させることができるウルトラファインバブル(好ましくは、CO2のウルトラファインバブル)のより具体的な濃度としては、測定法P2で測定した場合の濃度で、5百万~100億個/mL、5百万~10億個/mL、1千万~100億個/mL、1千万~10億個/mL、2千万~100億個/mL、2千万~10億個/mL、2千5百万~100億個/mL、2千5百万~10億個/mL、3千万~100億個/mL、3千万~10億個/mL、3千5百万~100億個/mL、3千5百万~10億個/mL、5千万~100億個/mL、5千万~10億個/mL、7千5百万~100億個/mL、7千5百万~10億個/mL、1億~100億個/mL、1億~10億個/mL、1億5千万~100億個/mL、1億5千万~10億個/mL、2億~100億個/mL、2億~10億個/mL、2億5千万~100億個/mL、2億5千万~10億個/mL等が挙げられる。
【0046】
本発明のウルトラファインバブル発生剤の使用方法は、後述の「本発明のウルトラファインバブル含有液体の製造方法」の項目において詳細に説明するが、本発明のウルトラファインバブル発生剤を融解させる工程を含んでいる限り特に制限されない。当業者であれば、本願明細書を参照することにより、本発明のウルトラファインバブル発生剤におけるCO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)の含有量や、該CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)のCO2含有率や、どの程度の濃度のウルトラファインバブルを必要とするか等に応じて、本発明のウルトラファインバブル発生剤の使用量を調整することができる。
【0047】
2.<本発明のウルトラファインバブル含有液体の製造方法>
本発明のウルトラファインバブル含有液体の製造方法(本発明の製造方法)としては、CO2含有率が3重量%以上の氷(好ましくはCO2ハイドレート)を融解させる工程を含んでいる限り特に制限されない。CO2高含有氷(好ましくはCO2ハイドレート)を融解させることにより、ウルトラファインバブル含有液体を製造することができる。
【0048】
本明細書において「CO2含有率が3重量%以上の氷を融解させる工程」としては、「CO2含有率が3重量%以上の氷を他の液体に接触させることによって融解させる工程」、及び、「CO2含有率が3重量%以上の氷を他の液体に接触させずに融解させる工程」が好ましく挙げられ、より高濃度でウルトラファインバブルを得る観点から、「CO2含有率が3重量%以上の氷を他の液体に接触させずに融解させる工程」がより好ましく挙げられる。
【0049】
本明細書において「CO2含有率が3重量%以上の氷を他の液体に接触させることによって融解させる」方法としては、CO2高含有氷が融解するような条件となるように、CO2高含有氷を他の液体に接触させる方法である限り特に制限されず、CO2高含有氷を他の液体に含有させる方法が好ましく挙げられ、中でも、CO2高含有氷を他の液体に添加又は投入する方法や、CO2高含有氷に他の液体を添加又は投入する方法がより好ましく挙げられ、中でも、CO2高含有氷を他の液体に添加又は投入する方法がさらに好ましく挙げられる。
【0050】
本明細書において「CO2含有率が3重量%以上の氷を他の液体に接触させずに融解させる」方法としては、CO2高含有氷を他の液体に接触させることなく、CO2高含有氷が融解するような条件にCO2高含有氷をさらす方法である限り特に制限されず、CO2高含有氷が融解するような条件下にCO2高含有氷を置く方法が好ましく挙げられ、中でも、容器に入れたCO2高含有氷を、CO2高含有氷が融解するような条件下で静置する方法がより好ましく挙げられる。
【0051】
上記の「CO2高含有氷が融解するような条件」としては、CO2高含有氷が融解するような条件である限り特に制限されないが、0℃以上、好ましくは0~70℃、より好ましくは5~60℃、さらに好ましくは10~50℃という温度条件が挙げられる。
【0052】
本発明の製造方法におけるCO2高含有氷として、本発明のウルトラファインバブル発生剤を用いてもよい。
【0053】
本発明の製造方法におけるCO2高含有氷の使用量は、CO2高含有氷を他の液体に接触させることによって融解させるか、CO2高含有氷を他の液体に接触させずに融解させるか、CO2高含有氷がCO2ハイドレートであるか否か、圧密化CO2ハイドレートであるか否か、CO2高含有氷のCO2含有率、あるいは、どの程度の濃度のウルトラファインバブルを必要とするか等に応じて、当業者は適宜設定することができる。CO2高含有氷を他の液体に接触させることによって融解させる場合のCO2高含有氷の使用量(好ましくは添加量)(mg/mL)の下限として、例えば、10mg/mL以上が挙げられ、ウルトラファインバブルをより高濃度で得る観点から、好ましくは20mg/mL以上、より好ましくは50mg/mL以上、さらに好ましくは100mg/mL以上、より好ましくは150mg/mL以上、さらに好ましくは200mg/mL以上が挙げられる。また、CO2高含有氷の使用量(好ましくは添加量)(mg/mL)の上限としては特に制限されないが、例えば、5000mg/mL以下、3000mg/mL以下、2000mg/mL以下が挙げられる。なお、CO2高含有氷の使用量(mg/mL)とは、液体1mLあたりに使用する(好ましくは添加する)、CO2高含有氷の重量(mg)を意味する。
【0054】
CO2高含有氷を液体に接触させる際の液体の温度としては、ウルトラファインバブルが発生する限り特に制限されず、例えば1~37℃の範囲内を挙げることができる。
【0055】
以下に、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
試験1.[CO2ハイドレートの調製]
(1)CO2ハイドレートの調製
4Lの水にCO2ガスを3MPaとなるように吹き込み、撹拌をしながら1℃でCO2ハイドレート生成反応を進行させた。その後、-20℃まで冷却して、最大長が3mm以上60mm以下の多面体形状のCO2ハイドレートを選択して回収し、以降の実験で用いた。なお、かかる調製法によって、CO2含有率13%のCO2ハイドレートと、CO2含有率20%のCO2ハイドレートを得た。これらのCO2ハイドレートのCO2ハイドレート率は、約25%であった。
【0057】
(2)圧密化CO2ハイドレートの調製
4Lの水にCO2ガスを3MPaとなるように吹き込み、撹拌をしながら1℃でCO2ハイドレート生成反応を進行させた。CO2ハイドレート粒子が水中に懸濁している「CO2ハイドレートスラリー」をシリンダー式の圧密成形機へ流し込み、2MPaの圧搾圧で3分間、CO2ハイドレートスラリーの圧縮を行った。その後、-20℃まで冷却して、圧密成形機から圧密化CO2ハイドレートの円筒状の塊を回収した後、かかる円筒状の塊を破砕した。最大長が3mm以上60mm以下の多面体形状の圧密化CO2ハイドレートを選択して回収し、以降の実験で用いた。なお、この圧密化CO2ハイドレートのCO2含有率は20%であり、CO2ハイドレート率は約60%であった。
【0058】
試験2.[CO2ハイドレートを用いたウルトラファインバブル含有水の製造]
CO2ハイドレートを水に添加して得られる気泡含有水における気泡がウルトラファインバブルであるか等を調べるために、以下の実験を行った。
【0059】
(1)CO2ハイドレートを用いた気泡含有水の製造
1mLの水(約25℃)に対して、以下の(a)~(c)の3種類のいずれかの種類のCO2ハイドレート1000mg(約-80℃)をそれぞれ添加した後、約25℃で1時間静置して、気泡含有水を作製した。
(a)前述の試験1の(1)で作製したCO2含有率13%のCO2ハイドレート:
(b)前述の試験1の(1)で作製したCO2含有率20%のCO2ハイドレート:
(c)前述の試験1の(2)で作製したCO2含有率20%の圧密化CO2ハイドレート:
【0060】
(2)気泡含有水における気泡の濃度(個/mL)及び粒径(μm)の測定
上記(1)で作製した3種類の気泡含有水における気泡の濃度及び粒径を、島津製作所社製「SALD-7500nano」を使用して測定した。3種類の気泡含有水における気泡の粒径分布と発生頻度(濃度)の結果を
図1に示す。また、3種類の気泡含有水におけるウルトラファインバブルの粒子数(個/mL)及びメディアン粒子径(μm)を表1に示す。
【0061】
【0062】
(3)結果
図1に示すように、3種類のいずれのCO
2ハイドレートを用いた場合であっても、ウルトラファインバブル(直径1.0μm以下)の生成が確認された。また、表1の13%CO
2ハイドレート及び20%CO
2ハイドレートの結果から分かるように、圧密化していないCO
2ハイドレートを用いて得られたウルトラファインバブル含有水では、ウルトラファインバブル濃度やメディアン粒子径に顕著な違いは認められなかった。一方、圧密化していない20%CO
2ハイドレートを用いて得られたウルトラファインバブル含有水では、ウルトラファインバブル濃度は約4700万個/mLであったのに対し、圧密化20%CO
2ハイドレートを用いて得られたウルトラファインバブル含有水では、ウルトラファインバブル濃度は約6億8400万個/mLであった。すなわち、CO
2ハイドレートを圧密化することにより、得られるウルトラファインバブル濃度が約15倍にも上昇した。このことから、CO
2ハイドレートを圧密化することにより、得られるウルトラファインバブル濃度が顕著に増加することが示された。
【0063】
試験3.[ウルトラファインバブルの生成濃度に対する、CO2ハイドレートの添加量等の影響]
ウルトラファインバブルの生成濃度に対する、CO2ハイドレートの添加量、CO2濃度、及び、圧密化の有無の影響を調べるために、以下の実験を行った。なお、試験3では、マルバーン社製「ナノサイト NS300」を使用して、ウルトラファインバブルの濃度を測定した。
【0064】
(1)CO
2ハイドレートを用いたウルトラファインバブル含有水の製造、及び、ウルトラファインバブルの濃度の測定
1mLの水(約25℃)に対して、CO
2含有率13%のCO
2ハイドレート(約-80℃)を0mg、20mg、200mg、1000mg、1500mgずつ添加した後、約25℃で1時間静置して、各ウルトラファインバブル含有水を製造した。各ウルトラファインバブル含有水のウルトラファインバブルの濃度(百万個/mL)を「ナノサイト NS300」で測定した。その結果を
図2に示す。
【0065】
1mLの水(約25℃)に対して、CO
2含有率20%の圧密化CO
2ハイドレート(約-80℃)を0mg、20mg、200mgずつ添加した後、約25℃で1時間静置して、各ウルトラファインバブル含有水を製造した。各ウルトラファインバブル含有水のウルトラファインバブルの濃度(百万個/mL)を「ナノサイト NS300」で測定した。その結果を
図3に示す。
【0066】
1mLの水(約25℃)に対して、CO
2含有率13%のCO
2ハイドレート(約-80℃)、CO
2含有率20%のCO
2ハイドレート(約-80℃)、CO
2含有率20%の圧密化CO
2ハイドレート(約-80℃)を0mg、20mg、200mgずつ添加した後、約25℃で1時間静置して、各ウルトラファインバブル含有水を製造した。各ウルトラファインバブル含有水のウルトラファインバブルの濃度(百万個/mL)を「ナノサイト NS300」で測定した。その結果を
図4に示す。
【0067】
(2)結果
図2~4の結果から、ウルトラファインバブルの生成濃度は、CO
2ハイドレートの添加量に基本的に依存する傾向があることが分かった。また、CO
2含有率13%のCO
2ハイドレートは、1000mg/mL添加した場合のウルトラファインバブル濃度が約6700万個/mLである一方、1500mg/mL添加した場合でも、ウルトラファインバブル濃度は約7600万個/mLまでしか増加せず、ウルトラファインバブル濃度はおよそ8000万個/mL程度で飽和する傾向が認められた(
図2)。
【0068】
また、CO
2含有率20%のCO
2ハイドレートを200mg/mL添加した場合のウルトラファインバブル濃度は約3900万個/mLであったのに対し(
図4)、CO
2含有率20%の圧密化CO
2ハイドレートを200mg/mL添加した場合のウルトラファインバブル濃度は約3億個/mLにも達することが示された(
図3、
図4)。これらの結果から、圧密化したCO
2ハイドレートは、少ない添加量であっても高濃度のウルトラファインバブルを生成することができることが示された。
図1及び
図4の結果から、より高濃度なウルトラファインバブルを得るため、より具体的には例えば1億個/mLのウルトラファインバブルを得るためには、CO
2ハイドレートのCO
2含有率よりも、CO
2ハイドレートが圧密化されているか否かが大きな影響を与えることがわかった。すなわち、より高濃度なウルトラファインバブルを得る観点から、圧密化CO
2ハイドレートが好ましいことが示された。
【0069】
試験4.[ウルトラファインバブルの生成濃度に対する、液体の種類の影響]
CO2ハイドレートを水以外の液体に添加した場合であっても、ウルトラファインバブルが生成するかを調べるために、以下の実験を行った。なお、生理食塩水としては、塩化ナトリウムを0.9w/v%含有する食塩水を用いた。また、試験4では、マルバーン社製「ナノサイト NS300」を使用して、ウルトラファインバブルの濃度を測定した。
【0070】
(1)CO
2ハイドレートを用いたウルトラファインバブル含有液体の製造、及び、ウルトラファインバブルの濃度の測定
1mLの液体(水又は生理食塩水)(約25℃)に対して、CO
2含有率13%のCO
2ハイドレート(約-80℃)を0mg、20mg、200mg、1000mgずつ添加した後、約25℃で1時間静置して、各ウルトラファインバブル含有液体を製造した。各ウルトラファインバブル含有液体のウルトラファインバブルの濃度(百万個/mL)を「ナノサイト NS300」で測定した。その結果を
図5に示す。
【0071】
また、1mLの液体(水又は生理食塩水)(約25℃)に対して、CO
2含有率20%の圧密化CO
2ハイドレート(約-80℃)を0mg、20mgずつ添加した後、約25℃で1時間静置して、各ウルトラファインバブル含有液体を製造した。各ウルトラファインバブル含有液体のウルトラファインバブルの濃度(百万個/mL)を「ナノサイト NS300」で測定した。その結果を
図6に示す。
【0072】
(2)結果
図5及び
図6の結果から、CO
2ハイドレートを生理食塩水に添加した場合であっても、ウルトラファインバブルが生成することが示された。これらの結果から、CO
2ハイドレートを、水以外の液体に添加した場合であっても、ウルトラファインバブルを生成することができることが示された。
【0073】
試験4.[圧密化CO2ハイドレート等の調製]
(1)低圧圧密化CO2ハイドレートの調製
4Lの水にCO2ガスを3MPaとなるように吹き込み、撹拌をしながら1℃でCO2ハイドレート生成反応を進行させて、CO2ハイドレート粒子が水中に懸濁しているCO2ハイドレートスラリーを得た。かかるCO2ハイドレートスラリーをシリンダー式の圧密成形機へ流し込み、圧密成形機内と脱水ドレンとの差圧(1MPa以内)により脱水してCO2ハイドレート粒子の結晶を濃縮した。その後、-20℃まで冷却して、圧密成形機から最大長が3mm以上60mm以下の多面体形状のCO2ハイドレートを選択して回収し、以降の実験で「低圧圧密化CO2ハイドレート」として用いた。かかる低圧圧密化CO2ハイドレートのCO2含有率は24重量%であり、CO2ハイドレート率は約40%であった。
【0074】
(2)高圧圧密化CO2ハイドレートの調製
4Lの水にCO2ガスを3MPaとなるように吹き込み、撹拌をしながら1℃でCO2ハイドレート生成反応を進行させて、CO2ハイドレート粒子が水中に懸濁しているCO2ハイドレートスラリーを得た。かかるCO2ハイドレートスラリーをシリンダー式の圧密成形機へ流し込み、圧密成形機内と脱水ドレンとの差圧(約1MPa)により脱水してCO2ハイドレート粒子の結晶を濃縮した。これらのCO2ハイドレート粒子の結晶を10MPaの圧搾圧で圧縮した後、-20℃まで冷却して、圧密成形機からCO2ハイドレートの円筒状の塊を回収した後、かかる円筒状の塊を破砕した。最大長が3mm以上60mm以下の多面体形状のCO2ハイドレートを選択して回収し、以降の実験で「高圧圧密化CO2ハイドレート」として用いた。かかる高圧圧密化CO2ハイドレートのCO2含有率は24重量%であり、CO2ハイドレート率は約60%であった。
【0075】
(3)通常CO2ハイドレートの調製
4Lの水にCO2ガスを3MPaとなるように吹き込み、撹拌をしながら1℃でCO2ハイドレート生成反応を進行させて、CO2ハイドレート粒子が水中に懸濁しているCO2ハイドレートスラリーを得た。その後、かかるCO2ハイドレートスラリーを-20℃まで冷却して、最大長が3mm以上60mm以下の多面体形状のCO2ハイドレートを選択して回収し、以降の実験で「通常CO2ハイドレート」として用いた。かかる「通常CO2ハイドレート」のCO2含有率は13重量%であり、CO2ハイドレート率は約25%であった。
【0076】
試験5.[圧密化CO2ハイドレート等を用いたウルトラファインバブル含有水の製造]
圧密化CO2ハイドレート等を水に添加して得られる気泡含有水におけるウルトラファインバブルの濃度及び粒径等を調べるために、以下の実験を行った。
【0077】
(1)CO2ハイドレートを用いた気泡含有水の製造
1mLの水(約25℃)に対して、以下の(d)~(f)の3種類のいずれかの種類のCO2ハイドレート300mg(約-80℃)をそれぞれ添加した後、約25℃で1時間静置して、気泡含有水を作製した。
(d)前述の試験4の(1)で作製したCO2含有率24重量%の低圧圧密化CO2ハイドレート:
(e)前述の試験4の(2)で作製したCO2含有率24重量%の高圧圧密化CO2ハイドレート:
(f)前述の試験4の(3)で作製したCO2含有率13重量%の通常CO2ハイドレート:
【0078】
(2)気泡含有水における気泡の濃度及び粒径の測定
上記(1)で作製した3種類の気泡含有水における気泡の濃度(個/mL)及び粒径(μm)を、島津製作所社製「SALD-7500nano」を使用して測定した。低圧圧密化CO
2ハイドレートを水に添加して得られた気泡含有水における気泡の粒径分布と発生頻度(濃度)の結果を
図7の上段に示し、高圧圧密化CO
2ハイドレートを水に添加して得られた気泡含有水における気泡の粒径分布と発生頻度(濃度)の結果を
図7の下段に示す。また、上記(1)で作製した3種類の気泡含有水のウルトラファインバブルの濃度(百万個/mL)を
図8に示す。
【0079】
(3)結果
かかる実験の結果、低圧圧密化CO
2ハイドレートを水に溶解して得られた気泡(
図7上段)も、高圧圧密化CO
2ハイドレートを水に溶解して得られた気泡(
図7下段)も、粒径約60~250nmのウルトラファインバブルであることが示された。また、低圧圧密化CO
2ハイドレートを用いた場合の約5億個/mLという濃度は、通常のCO
2ハイドレートを用いた場合の約0.25億個/mLと比較して顕著に高く、また、高圧圧密化CO
2ハイドレートを用いた場合の約4.6億個/mLよりも多少高かった(
図8)。これらのことから、CO
2ハイドレートを調製する際に、CO
2ハイドレートスラリーを低圧であっても圧密化して十分に脱水処理すれば、高圧圧密化CO
2ハイドレートとほぼ同等以上のウルトラファインバブル生成能が得られることが分かった。このことから、CO
2ハイドレートによって高濃度のウルトラファインバブルを得るためには、脱水処理することによって、CO
2ハイドレートのCO
2ハイドレート率を高めることが重要であることが示された。
【0080】
試験6.[CO2ハイドレート融解水におけるウルトラファインバブル生成の確認]
上記試験2~試験5では、CO2ハイドレートを水等の液体に含有させることによって、ウルトラファインバブル含有液体を製造した。そこで、CO2ハイドレートを水等の液体に含有させるのではなく、CO2ハイドレートを単にそのまま融解させることによっても、ウルトラファインバブル含有液体が得られるかを調べるために、以下の実験を行った。
【0081】
(1)CO2ハイドレート融解水の調製
上記試験4で調製した2種類のCO2ハイドレート(高圧圧密化CO2ハイドレート、通常CO2ハイドレート)を用意した。これら2種類のCO2ハイドレートをそれぞれ容器に入れ、CO2ハイドレートがすべて融解するまで常温で静置した。
【0082】
(2)CO
2ハイドレート融解水における気泡の濃度及び粒径の測定
上記(1)で作製した、2種類のCO
2ハイドレートの融解水における気泡の濃度(個/mL)及び粒径(μm)を、島津製作所社製「SALD-7500nano」を使用してそれぞれ測定した。高圧圧密化CO
2ハイドレートの融解水における気泡の粒径分布と発生頻度(濃度)の結果を
図9に示す。
【0083】
図9の結果から分かるように、高圧圧密化CO
2ハイドレートを融解して得られた気泡は、粒径約60~250nmのウルトラファインバブルであることが示された。
【0084】
(3)CO
2ハイドレート融解水におけるウルトラファインバブル濃度と、CO
2ハイドレートを水に添加した気泡含有水におけるウルトラファインバブル濃度の比較
「高圧圧密化CO
2ハイドレートを水に300mg/mL添加した気泡含有水」、「高圧圧密化CO
2ハイドレートを水に1000mg/mL添加した気泡含有水」、「高圧圧密化CO
2ハイドレート融解水」におけるウルトラファインバブル濃度(億個/mL)を「SALD-7500nano」でそれぞれ測定した。それらのウルトラファインバブル濃度(億個/mL)を、
図10に左から順に示す。
【0085】
また、高圧圧密化CO
2ハイドレートに代えて通常CO
2ハイドレートを用いて同様の実験を行った結果を
図11に示す。
【0086】
図10の結果から、高圧圧密化CO
2ハイドレートをそのまま融解させると、約15億個/mLもの高濃度でウルトラファインバブルが得られることが示された。このウルトラファインバブル濃度は、高圧圧密化CO
2ハイドレートを水に溶解した場合の濃度と比較して、約4倍以上であり、顕著に高い濃度であった。また、CO
2ハイドレートをそのまま融解させると、CO
2ハイドレートを水に溶解した場合よりも顕著に高い濃度でウルトラファインバブルが得られることは、通常のCO
2ハイドレートを用いた場合でも同様であった(
図11)。これらのことから、CO
2ハイドレートの製造方法にかかわらず、CO
2ハイドレートを水に溶解させるよりも、そのまま融解させることで、非常に高濃度でウルトラファインバブルを発生させることができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、ウルトラファインバブル発生装置を必要とせずに、手軽にウルトラファインバブルを液体中に発生させることができるウルトラファインバブル発生剤や、ウルトラファインバブル含有液体の製造方法や、かかる製造方法により製造されるウルトラファインバブル含有液体等を提供することができる。