IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許7258027対サンプル相関を使用したセンサ故障検出
<>
  • 特許-対サンプル相関を使用したセンサ故障検出 図1
  • 特許-対サンプル相関を使用したセンサ故障検出 図2
  • 特許-対サンプル相関を使用したセンサ故障検出 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】対サンプル相関を使用したセンサ故障検出
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/36 20200101AFI20230407BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20230407BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230407BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230407BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
G01R31/36
G01R31/00
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 P
H02J7/00 Y
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020534297
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2018084401
(87)【国際公開番号】W WO2019121176
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-08-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】15/850,521
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,カールトン
(72)【発明者】
【氏名】ライリー,ブレーク
【合議体】
【審判長】波多江 進
【審判官】中塚 直樹
【審判官】濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-067077(JP,A)
【文献】特開平10-253682(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0117788(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1681288(KR,B1)
【文献】特開2007-225562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
G01R 22/00-22/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流センサ故障検出の方法であって、
バッテリのバッテリ電圧を測定するように構成された電圧センサからの一連のバッテリ電圧サンプルとともに、前記バッテリのバッテリ電流を測定するように構成された電流センサからの一連のバッテリ電流サンプルを取得するステップと、
所定数のサンプルに亘る前記バッテリ電圧サンプルの変化量と前記所定数のサンプルに亘る前記バッテリ電流サンプルの変化量とを決定するステップであって、前記所定数のサンプルに亘る前記バッテリ電圧サンプルと前記所定数のサンプルに亘る前記バッテリ電流サンプルとが、前記バッテリ電流と前記バッテリ電圧との間の位相差を補償するように取得される、ステップと、
前記バッテリ電圧サンプルの前記変化量と前記バッテリ電流サンプルの前記変化量との比率が、(i)前記バッテリの抵抗及び(ii)前記バッテリのコンダクタンスのうちの一方の予想範囲内であるかどうかの検査を行うステップと、
前記比率が前記予想範囲内であるかどうかに基づいて前記電流センサの故障の検出を行うステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記バッテリ電圧サンプルの前記変化量と前記バッテリ電流サンプルの前記変化量とを決定する当該ステップは、
第1の時間ステップでの前記バッテリ電圧サンプルの値と、前記第1の時間ステップの後における第1の所定数の時間ステップである第2の時間ステップでの前記バッテリ電圧サンプルの値との間の差として前記バッテリ電圧サンプルの前記変化量を決定するステップと、
前記第1の時間ステップの前または後における第2の所定数の時間ステップである第3の時間ステップでの前記バッテリ電流サンプルの値と、前記第3の時間ステップの後における当該第1の所定数の時間ステップである第4の時間ステップでの前記バッテリ電流サンプルの値との間の差として前記バッテリ電流サンプルの前記変化量を決定するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バッテリの温度を測定するように構成された温度センサからバッテリ温度測定値を取得するステップと、
前記バッテリ温度測定値に基づいて前記予想範囲を決定するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
当該検出するステップは、前記比率が前記予想範囲外であることに基づいて前記故障を検出するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記バッテリ電圧サンプル及び前記バッテリ電流サンプルの連続した時間ステップに亘って、当該決定するステップと前記検査を行うステップとを繰り返すステップと、
前記検査の繰り返しごとに、前記比率が前記予想範囲外であるかどうかを記憶するステップと、
前記検査の所定数の繰り返しの後に、前記所定数の繰り返しのうち、前記比率が前記予想範囲外であった回数を決定するステップと、
前記回数が所定の閾値を超えたことに応じて前記故障を検出するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
(i)前記バッテリのセルの経年劣化、(ii)前記バッテリの充電状態、(iii)前記バッテリ電流の極性、及び(iv)前記バッテリ電流と前記バッテリ電圧との間の位相差のうちの少なくとも1つに基づいて、前記予想範囲及び前記所定の閾値のうちの少なくとも1つを調整するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(i)前記バッテリのバッテリ温度が最小温度閾値を超えたか、(ii)前記バッテリ電圧サンプルの前記変化量が最小電圧変化量閾値を超えたか、及び(iii)前記バッテリ電流サンプルの電流値が最小電流閾値を超えたか、のうちの少なくとも1つの条件を満たすかどうかを判定するステップをさらに含み、
前記条件が満たされたときに前記検査を行うステップが実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(i)前記バッテリのセルの経年劣化、(ii)前記バッテリの充電状態、(iii)前記バッテリ電流の極性、及び(iv)前記バッテリ電流と前記バッテリ電圧との間の位相差のうちの少なくとも1つに基づいて、前記最小温度閾値、前記最小電圧変化量閾値、及び前記最小電流閾値のうちの少なくとも1つを調整するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記故障を検出したことに応じて、出力デバイスを動作させて(i)音響的な警告及び(ii)視覚的な警告のうちの一方を生成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記故障を検出したことに応じて、少なくとも1つのスイッチを動作させて前記バッテリを少なくとも1つの負荷から遮断するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの負荷に電力を供給するように動作可能に接続されたバッテリと、
前記バッテリのバッテリ電圧を測定するように構成された電圧センサと、
前記バッテリのバッテリ電流を測定するように構成された電流センサと、
前記電圧センサ及び前記電流センサに動作可能に接続されたコントローラと
を備え、
前記コントローラは、
前記電圧センサからの一連のバッテリ電圧サンプルとともに、前記電流センサからの一連のバッテリ電流サンプルを取得するステップと
所定数のサンプルに亘る前記バッテリ電圧サンプルの変化量と前記所定数のサンプルに亘る前記バッテリ電流サンプルの変化量とを決定するステップであって、前記所定数のサンプルに亘る前記バッテリ電圧サンプルと前記所定数のサンプルに亘る前記バッテリ電流サンプルとが、前記バッテリ電流と前記バッテリ電圧との間の位相差を補償するように取得される、ステップと
前記バッテリ電圧サンプルの前記変化量と前記バッテリ電流サンプルの前記変化量との比率が、(i)前記バッテリの抵抗及び(ii)前記バッテリのコンダクタンスのうちの一方の予想範囲内であるかどうかの検査を行うステップと
前記比率が前記予想範囲内であるかどうかに基づいて前記電流センサの故障を検出するステップとを行うように構成されている、バッテリシステム。
【請求項12】
前記コントローラは、
第1の時間ステップでの前記バッテリ電圧サンプルの値と、前記第1の時間ステップの後における第1の所定数の時間ステップである第2の時間ステップでの前記バッテリ電圧サンプルの値との間の差として前記バッテリ電圧サンプルの前記変化量を決定し、
前記第1の時間ステップの後における第2の所定数の時間ステップである第3の時間ステップでの前記バッテリ電流サンプルの値と、前記第3の時間ステップの後における当該第1の所定数の時間ステップである第4の時間ステップでの前記バッテリ電流サンプルの値との間の差として前記バッテリ電流サンプルの前記変化量を決定する、
ようにさらに構成されている、請求項11に記載のバッテリシステム。
【請求項13】
前記バッテリの温度を測定するように構成された温度センサをさらに備え、
前記コントローラは、
前記温度センサからバッテリ温度測定値を取得し、
前記バッテリ温度測定値に基づいて前記予想範囲を決定する、
ようにさらに構成されている、請求項11に記載のバッテリシステム。
【請求項14】
前記コントローラは、前記比率が前記予想範囲外であることに応じて前記故障を検出するようにさらに構成されている、請求項11に記載のバッテリシステム。
【請求項15】
前記コントローラは、
前記バッテリ電圧サンプル及び前記バッテリ電流サンプルの連続した時間ステップに亘って、前記決定及び前記検査を繰り返し、
前記検査の繰り返しごとに、前記比率が前記予想範囲外であるかどうかを記憶し、
前記検査の所定数の繰り返しの後に、前記所定数の繰り返しのうち、前記比率が前記予想範囲外であった回数を決定し、
前記回数が所定の閾値を超えたことに応じて前記故障を検出する
ようにさらに構成されている、請求項11に記載のバッテリシステム。
【請求項16】
前記コントローラは、(i)前記バッテリのセルの経年劣化、(ii)前記バッテリの充電状態、(iii)前記バッテリ電流の極性、及び(iv)前記バッテリ電流と前記バッテリ電圧との間の位相差のうちの少なくとも1つに基づいて、前記予想範囲及び前記所定の閾値のうちの少なくとも1つを調整するようにさらに構成されている、請求項15に記載のバッテリシステム。
【請求項17】
前記コントローラは、(i)前記バッテリのバッテリ温度が最小温度閾値を超えたか、(ii)前記バッテリ電圧サンプルの前記変化量が最小電圧変化量閾値を超えたか、及び(iii)前記バッテリ電流サンプルの電流値が最小電流閾値を超えたか、のうちの少なくとも1つの条件を満たすかどうかを判定し、前記条件が満たされたときに前記検査を行うようにさらに構成されている、請求項11に記載のバッテリシステム。
【請求項18】
前記コントローラは、(i)前記バッテリのセルの経年劣化、(ii)前記バッテリの充電状態、(iii)前記バッテリ電流の極性、及び(iv)前記バッテリ電流と前記バッテリ電圧との間の位相差のうちの少なくとも1つに基づいて、前記最小温度閾値、前記最小電圧変化量閾値、及び前記最小電流閾値のうちの少なくとも1つを調整するようにさらに構成されている、請求項17に記載のバッテリシステム。
【請求項19】
前記コントローラは、前記故障を検出したことに応じて、出力デバイスを動作させて(i)音響的な警告及び(ii)視覚的な警告のうちの一方を生成するようにさらに構成されている、請求項11に記載のバッテリシステム。
【請求項20】
前記コントローラは、前記故障を検出したことに応じて、少なくとも1つのスイッチを動作させて前記バッテリを前記少なくとも1つの負荷から遮断するようにさらに構成されている、請求項11に記載のバッテリシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本文書で開示されるデバイス及び方法は、バッテリシステムに関し、より詳細には、バッテリシステムにおけるセンサ故障検出に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]バッテリシステムは、しばしば、動作中に電流及び電圧といったバッテリのパラメータを監視するように構成された単数または複数のセンサを含む。多くの用途において、バッテリパラメータの信頼性の高い監視は、バッテリシステムの安全で効率的な動作に不可欠である。特定の自動車用途では、オンボード診断(OBD:On-Board-Diagnostics)規制により、電流センサの故障を検出するため2つの側面の合理性チェックが要求される。バッテリシステムにおける電流センサの故障を検出する現在の技術では、一般に、2つ目の冗長な電流センサを組み込むことが要求される。そのシステムは、2つの異なる電流センサの値を比較する。当該センサの値の差が大きすぎる場合、システムによって故障が疑われることとなる。したがって、ただ1つの電流センサを有するバッテリシステムで電流センサの故障を検出するためのシステム及び方法を提供することは有利であろう。
【発明の概要】
【0003】
[0003]電流センサ故障検出の方法が開示される。その方法は、バッテリのバッテリ電圧を測定するように構成された電圧センサからの一連のバッテリ電圧サンプルとともに、バッテリのバッテリ電流を測定するように構成された電流センサからの一連のバッテリ電流サンプルを取得するステップと、所定数のサンプルに亘るバッテリ電圧サンプルの変化量と所定数のサンプルに亘るバッテリ電流サンプルの変化量とを決定するステップと、バッテリ電圧サンプルの変化量とバッテリ電流サンプルの変化量との比率が、(i)バッテリの抵抗及び(ii)バッテリのコンダクタンスのうちの一方の予想範囲内であるかどうかの検査を行うステップと、当該比率が予想範囲内であるかどうかに基づいて電流センサの故障を検出するステップとを含む。
【0004】
[0004]バッテリシステムが開示される。バッテリシステムは、少なくとも1つの負荷に電力を供給するように動作可能に接続されたバッテリと、バッテリのバッテリ電圧を測定するように構成された電圧センサと、バッテリのバッテリ電流を測定するように構成された電流センサと、電圧センサ及び電流センサに動作可能に接続されたコントローラとを含む。コントローラは、電圧センサからの一連のバッテリ電圧サンプルとともに、電流センサからの一連のバッテリ電流サンプルを取得し、所定数のサンプルに亘るバッテリ電圧サンプルの変化量と所定数のサンプルに亘るバッテリ電流サンプルの変化量とを決定し、バッテリ電圧サンプルの変化量とバッテリ電流サンプルの変化量との比率が、(i)バッテリの抵抗及び(ii)バッテリのコンダクタンスのうちの一方の予想範囲内であるかどうかの検査を行い、当該比率が予想範囲内であるかどうかに基づいて電流センサの故障を検出するように構成されている。
【0005】
[0005]バッテリシステムにおけるセンサ故障を検出するためのシステム及び方法の前述の態様及び他の特徴について、添付の図面に関連して以下の記載で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】[0006]本開示によるバッテリシステムの図である。
図2】[0007]バッテリシステムにおける電流センサ故障を検出する方法の図である。
図3】[0008]例示的な一連のバッテリ電圧サンプル及びバッテリ電流サンプルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0009]次に、本開示の原理の理解を促すために、図面に示され、下記の明細書に記載された実施形態を参照する。これにより、本開示の範囲の限定は意図されないことが理解されよう。さらに、本開示は、例示された実施形態に対する任意の変更及び修正を含み、本開示が関係する当業者が通常想到するであろう、本開示の原理のさらなる適用を含むことが理解されよう。
【0008】
[0010]図1は、本開示によるバッテリシステム100を示す。少なくとも一実施形態において、バッテリシステム100は、電気自動車、またはフルハイブリッド/マイルドハイブリッド/マイクロハイブリッド電気自動車などの車両に組み込まれる。バッテリシステム100は、負荷104に電力を供給するように動作可能に接続され構成されたバッテリ102を含む。少なくとも一実施形態において、バッテリ102は、互いに直列及び/または並列に接続されて正のバッテリ端子108と負のバッテリ端子110との間のバッテリ102の出力電圧(たとえば、12ボルト、48ボルト、200+ボルト)を供給する複数個の個別のバッテリセル106を備える。バッテリセル106は、ニッケル金属水素化物またはリチウムイオンなどの様々なタイプのバッテリセルのいずれかを備え得る。
【0009】
[0011]負荷104は、バッテリ102に接続され、動作中にバッテリ102から電力の供給を受けるように構成される。いくつかの実施形態において、負荷104は、高圧側スイッチ112を介して正のバッテリ端子108に接続され、低圧側スイッチ114を介して負のバッテリ端子110に接続される。スイッチ112,114は、継電器もしくは接触器などの電気機械式スイッチ、またはパワー金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(パワーMOSFET:metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)または絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:insulated-gate bipolar transistor)などの電子式スイッチを備え得る。いくつかの実施形態において、負荷104は、車両の牽引モータまたは車両電気システムを含み得る。いくつかの実施形態において、バッテリシステム100は、バッテリ102と負荷104の一部または全部との間に接続された様々なパワーエレクトロニクス(図示せず)を含み得、そのようなDC/DCコンバータは、バッテリ電圧を車両電気システムの電圧に降圧するように構成される。
【0010】
[0012]バッテリシステム100は、電流センサ116、電圧センサ118、及び温度センサ120をさらに含む。電流センサ116は、バッテリ102を流れるバッテリ電流Iを測定するように構成される。一実施形態において、電流センサ116は、バッテリ電流Iに比例する電圧を供給する、バッテリ102と直列に配置された分流抵抗器を含む。一実施形態において、電流センサ116は、バッテリ102と直列に配置され、バッテリ電流Iを測定するように構成されたホール効果センサを備える。電圧センサ118は、バッテリ102と並列に接続され、バッテリ102の正のバッテリ端子108と負のバッテリ端子110との間のバッテリ電圧Uを測定するように構成される。いくつかの実施形態において、電圧センサ118は、バッテリ102の個々のセル106の電圧を測定するようにさらに構成される。温度センサ120は、バッテリ102のバッテリ温度Tを測定するように構成される。一実施形態において、温度センサ120は、いくつかの個別の温度センサを備え、測定されるバッテリ温度Tは、異なるセンサからのいくつかの測定値の最小値、最大値、または平均値であり得る。
【0011】
[0013]バッテリシステム100は、電流センサ116、電圧センサ118、及び温度センサ120に動作可能に接続されたコントローラ122をさらに含む。コントローラ122は、電流センサ116からバッテリ電流Iの測定値を取得し、電圧センサ118からバッテリ電圧Uを取得するように構成される。コントローラ122は、少なくとも、電流センサ116のセンサ故障を検出するように構成される。コントローラ122は、一般に、少なくとも1つのプロセッサと、上述の機能を実現するために少なくとも1つのプロセッサによって実行されるプログラム命令が記憶された少なくとも1つの関連するメモリとを備える。「コントローラ」または「プロセッサ」が、データ、信号または他の情報を処理する任意のハードウェアシステム、ハードウェアメカニズム、またはハードウェアコンポーネントを含むことは、当業者によって認識されよう。コントローラ122は、中央処理装置、複数の処理装置、または特定機能を実現するための専用回路を備えたシステムを含み得る。いくつかの実施形態において、コントローラ122は、センサ故障検出に加えて他の機能に役立つように構成された、バッテリ管理システムまたはそのコンポーネントである。いくつかの実施形態において、コントローラ122は、スイッチ112,114に動作可能に接続され、スイッチ112,114に開閉するよう命令するように構成される。いくつかの実施形態において、コントローラ122は、出力デバイス124に動作可能に接続され、出力デバイス124を動作させて音響的な警告または視覚的な警告を生成するように構成される。出力デバイス124は、スピーカー、ライト、ディスプレイ画面などを備え得る。
【0012】
[0014]バッテリシステムにおけるセンサ故障を検出するための様々な方法を以下に説明する。当該方法の説明において、当該方法が何らかのタスクまたは機能を実行しているという記述は、コントローラまたは汎用のプロセッサが、コントローラまたはプロセッサに動作可能に接続された非一時型コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶されたプログラムによる命令を実行し、データを操作するかまたはシステム100内の単数または複数のコンポーネントを動作させて、タスクまたは機能を実行していることを意味する。具体的には、上記のコントローラ122は、そのようなコントローラまたはプロセッサであり得、実行されるプログラム命令は、メモリに記憶され得る。さらに、当該方法のステップは、図面に示される順序またはステップが説明される順序に関わらず、実現可能な任意の時系列順で実行され得る。
【0013】
[0015]図2は、上記バッテリシステム100などのバッテリシステムにおけるセンサ故障を検出するための方法200を示すものである。方法200は、本明細書では「対サンプル相関」法と呼ばれ、小領域内で略線形の関係を有する2つのセンサ信号間の相関のレベルを、その2つのセンサ信号の相対的な挙動(すなわち、相対振幅とは対照的に、信号の経時的な相対変化)を比較することによって評価する。このように、この方法は、センサのうちの1つにおけるゲイン故障を検出するのに最も有用である。さらに、方法200は、単一の電流センサ及び電圧センサを有するバッテリシステムに適用され、電流センサのゲイン故障を検出する目的で本明細書では説明されている。しかしながら、この方法は、相関信号を測定するセンサを有する他のアプリケーションに同様に適用することができる。
【0014】
[0016]方法200は、一連のバッテリ電圧サンプル及び一連のバッテリ電流サンプルを取得するステップで開始される(ブロック210)。具体的には、本明細書で詳述する実施形態に関して、電流センサ116は、バッテリ102を流れるバッテリ電流Iに関する一連の測定サンプルを生成するように構成される。同様に、電圧センサ118は、バッテリ102のバッテリ端子108,110間のバッテリ電圧Uに関する一連の測定サンプルを生成するように構成される。コントローラ122は、電流センサ116からの一連のバッテリ電流サンプルとともに、電圧センサ118からの一連のバッテリ電圧サンプルを取得するように構成される。あるいは、いくつかの実施形態において、電流センサ116及び電圧センサ118は、コントローラ122によってサンプリングされるアナログ測定信号を生成して、一連のバッテリ電流サンプル及び一連のバッテリ電圧サンプルを提供するように構成され得る。
【0015】
[0017]図3は、例示的な一連のバッテリ電圧サンプル及びバッテリ電流サンプルを示すものである。具体的には、グラフ302は、電圧センサ118によって生成され、コントローラ122により取得された一連のバッテリ電圧サンプル304を示している。同様に、グラフ306は、電流センサ116によって生成され、コントローラ122により取得された一連のバッテリ電流サンプル308を示している。図示されるように、バッテリ電圧サンプル304及びバッテリ電流サンプル308は、t=0からt=18までの複数の時間ステップに及んでいる。少なくとも一実施形態において、各時間ステップ間の特定の期間は、電流センサ116及び電圧センサ118のサンプリングレートの関数である。いくつかの実施形態において、電流センサ116及び電圧センサ118は、共通のサンプリングレートで構成され、時間ステップは、電流センサ116及び電圧センサ118の共通のサンプル周期と一致する。他の実施形態において、センサ116,118の一方は、センサ116,118の他方の倍数のサンプリングレートを有し、時間ステップは、センサ116,118のサンプリング周期のうちの長い方と一致し得るか、あるいは当該サンプリング周期の最小公倍数などの公倍数と一致し得る。
【0016】
[0018]再び図2を参照すると、方法200は、バッテリ電圧サンプルの変化量とバッテリ電流サンプルの変化量とを決定するステップ(ブロック220)に移行する。具体的には、本明細書で詳述する実施形態に関して、コントローラ122は、所定数のサンプルに亘るバッテリ電圧の変化量ΔUと所定数のサンプルに亘るバッテリ電流の変化量ΔIとを決定するように構成される。具体的には、少なくとも一実施形態において、コントローラ122は、バッテリ電圧の変化量ΔUを、ΔU=U-Us-wとの式に基づいて計算するように構成される。ここで、sは、現在の時間ステップの指数であり、wは、サンプリングウインドウの所定の幅であり、1以上の正整数である。同様に、少なくとも一実施形態において、コントローラ122は、バッテリ電流ΔIの変化量を、ΔI=Is-d-Is-w-dとの式に基づいて計算するように構成される。ここで、dは、バッテリ電流Iとバッテリ電圧Uとの間のあらゆる位相差を補償するための、電圧に対する電流の遅延量であり、正もしくは負の整数またはゼロである。たとえば、d=1は、電圧サンプルUを先の電流サンプルIs-1と関連付けることになり、d=-2は、電圧サンプルUを後の電流サンプルIs+2と関連付けることになる。バッテリ電流Iとバッテリ電圧Uとの間の位相差は、電流センサ116と電圧センサ118との間のレイテンシの小さい差、ならびにバッテリ回路内の任意のリアクタンスの結果であり得る。図3は、例示的なバッテリ電圧ウィンドウ310及びバッテリ電流ウィンドウ312を示している。ここで、現在の時間ステップはs=t=10、及び、ウィンドウ幅はw=2である。さらに、示されるように、バッテリ電圧Uに対して3時間ステップでバッテリ電流Iの遅延量を補償するために、d=-3である。
【0017】
[0019]方法200は、バッテリ電圧サンプルの変化量とバッテリ電流サンプルの変化量との比率が、(i)バッテリの抵抗及び(ii)バッテリのコンダクタンスのうちの一方の予想範囲内であるかどうかの検査を行うステップ(ブロック230)に移行する。具体的には、本明細書で詳述する実施形態に関して、コントローラ122は、バッテリ電圧ΔUの変化量とバッテリ電流ΔIの変化量との比率を計算するように構成される。少なくとも一実施形態において、コントローラ122は、次式に従って比率を算出するように構成される。
【0018】
【数1】
【0019】
ただし、コントローラ122は、次式に従って比率の逆数を算出するように構成されてもよい。
【0020】
【数2】
【0021】
[0020]コントローラ122は、比率ΔU/ΔIが形成される場合には当該比率をバッテリ102の推定抵抗Rと比較し、あるいは、比率ΔI/ΔUが形成される場合には当該比率をバッテリ102の推定コンダクタンス1/Rと比較するように構成される。いくつかの実施形態において、コントローラ122は、温度センサ120から温度測定値Tを取得し、関連するメモリに格納されたバッテリ102の数学的モデルまたは抵抗対温度のルックアップテーブルを使用して、測定温度Tを基にバッテリ102の推定抵抗Rを決定するように構成される。
【0022】
[0021]比率がバッテリ102の推定抵抗または推定コンダクタンスと十分に類似していない場合、センサ116,118のうちの一方の故障が疑われる可能性がある。特に、バッテリ電流及びバッテリ電圧の相対的な挙動は、オームの法則に大きく左右される。したがって、センサ116,118が適切に機能しているとき、比率は、バッテリ102の内部抵抗または内部コンダクタンスに相当すると予想される。いくつかの実施形態において、コントローラ122は、比率ΔU/ΔIが推定抵抗Rの所定範囲内であるかどうか、またはその代わりに、比率ΔI/ΔUが推定コンダクタンス1/Rの所定範囲内であるかどうかを判定するように構成される。特には、一実施形態において、コントローラ122は、比率が抵抗Rの推定範囲内であるかどうかを、次式に従って判定するように構成される。ここで、δは負方向の推定抵抗Rの誤差(たとえば、-50%)であり、δは正方向の推定抵抗Rの誤差(たとえば、59%)である。
【0023】
【数3】
【0024】
あるいは、比率ΔI/ΔUが形成される場合、コントローラ122は、当該比率がコンダクタンス1/Rの推定範囲内であるかどうかを、次式に従って判定するように構成される。
【0025】
【数4】
【0026】
一実施形態において、コントローラ122は、測定温度T、温度センサ120の性能、バッテリ102のセルの経年劣化、パルス特性、バッテリ102の充電状態、バッテリ電流Iの極性、及び/またはバッテリ電圧Uとバッテリ電流Iとの間の未補償の位相差に応じて、誤差δ及び/または誤差δを時間とともに定期的に調整するように構成される。さらに、いくつかの実施形態において、コントローラ122は、常時または1回限りの調整として、誤差δn及び/または誤差δpをバッテリ102の機能の製造ばらつきとして調整を行うように構成される。
【0027】
[0022]いくつかの実施形態において、コントローラ122は、比率が抵抗Rまたはコンダクタンス1/Rの推定範囲外であることに応じて、電流センサ116及び電圧センサ118のうちの一方の故障を検出するように構成される。少なくとも一実施形態において、電圧センサ118の故障は、他の検出プロセスを使用して検出され、コントローラ122は、比率が抵抗Rまたはコンダクタンス1/Rの推定範囲外であることに応じて電流センサ116の故障を検出するように構成される。そのような実施形態において、コントローラ122は、センサ故障を検出したことに応じて、ある種の改善動作を実行するようにさらに構成され得る。一実施形態において、コントローラ122は、故障を検出したことに応じてスイッチ112,114を開動作させ、これによりバッテリ102の端子108,110を負荷104から遮断するように構成される。一実施形態において、コントローラ122は、故障を検出したことに応じて、出力デバイス124を動作させて音響的な警告または視覚的な警告を生成し、これにより、検出されたセンサ故障をユーザに警告するように構成される。一実施形態において、コントローラ122は、使用時監視パフォーマンス比(IUMPR:in use monitoring performance ratio)または他のリアルタイム監視技法を使用するオンボード診断(OBD:On-Board-Diagnostics)評価などのさらなる処理のために、検出されたセンサ故障を示す信号をより高いレベルのコントローラに送信するように構成される。一実施形態において、コントローラ122は、センサ故障の検出に基づいて、オンボード診断(OBD)評価自体を実行するように構成される。
【0028】
[0023]しかしながら、多くの実施形態において、方法200は、代わりに、比率が、(i)バッテリの抵抗及び(ii)バッテリのコンダクタンスのうちの一方の予想範囲外であるかどうかを記憶するステップに移行する(ブロック240)。具体的には、本明細書で詳述する実施形態に関して、コントローラ122は、比率が抵抗Rまたはコンダクタンス1/Rの推定範囲外であるかどうかを記憶するように構成される。一実施形態において、コントローラ122は、比率が抵抗Rまたはコンダクタンス1/Rの推定範囲外であることに応じて、カウンタをインクリメントする(または、カウンタをインクリメントするステップを省略する)ように構成される。このようにして、コントローラ122は、上記検査が不合格及び/または合格になる回数をカウントするように構成される。一実施形態において、コントローラ122は、各時間ステップに関して、比較の結果(たとえば、合格または不合格、範囲内または範囲外)を記憶するように構成される。
【0029】
[0024]方法200は、バッテリ電圧サンプル及びバッテリ電流サンプルの連続した時間ステップに亘って、バッテリ電圧サンプルの変化量及びバッテリ電流サンプルの変化量を決定するステップ(ブロック220)と、バッテリ電圧サンプルの変化量とバッテリ電流サンプルの変化量との比率が(i)バッテリの抵抗及び(ii)バッテリのコンダクタンスのうちの一方の予想範囲内であるかどうかの検査を行うステップ(ブロック230)と、比率が(i)バッテリの抵抗及び(ii)バッテリのコンダクタンスのうちの一方の予想範囲外であるかどうかを記憶するステップ(ブロック240)とを繰り返すことを継続して行う。特に、コントローラ122は、複数の連続した繰り返しに亘って、時間ステップsを少なくとも1時間ステップだけインクリメントし、バッテリ電圧の変化量とバッテリ電流の変化量との比率を既知の抵抗またはコンダクタンスと比較するように構成される。特には、少なくとも一実施形態において、コントローラ122は、複数の連続した繰り返しに亘って、時間ステップsを1だけインクリメントし、次式または上記したその逆数を再評価するように構成される。
【0030】
【数5】
【0031】
各繰り返しの後、コントローラ122は、その結果に基づいてカウンタをインクリメントするか、あるいはその結果を各時間ステップと関連付けて記憶するように構成される。
【0032】
[0025]所定数の繰り返しの後、方法200は、所定数の繰り返し中に比率が予想範囲外であった回数を決定するステップ(ブロック250)に移行する。具体的には、所定数の連続した繰り返しの後、コントローラ122は、所定数の連続した繰り返し中に、比率が抵抗Rまたはコンダクタンス1/Rの推定範囲外であった回数を決定するように構成される。比率が抵抗Rまたはコンダクタンス1/Rの推定範囲外であるたびにこれに応じてカウンタをインクリメントする実施形態においては、コントローラ122は、カウンタから値を読み取って回数を決定するように構成される。他の実施形態において、コントローラ122は、所定数の連続した繰り返しの先の時間ステップに関連する結果をメモリから読み取り、比率が抵抗Rまたはコンダクタンス1/Rの推定範囲外であった回数をカウントするように構成される。
【0033】
[0026]決定された回数が所定の閾値を超えたとき、これに応じて、方法200は、電流センサの故障を検出するステップ(ブロック260)に移行する。具体的には、コントローラ122は、比率が抵抗Rまたはコンダクタンス1/Rの推定範囲外であったと決定された回数が、所定の閾値(たとえば、20%)を超えたことに応じて、電流センサ116及び電圧センサ118のうちの一方の故障を検出するように構成される。少なくとも一実施形態において、電圧センサ118の故障は他の検出プロセスを使用して検出され、コントローラ122は、決定された回数が所定の閾値(たとえば、20%)を超えたことに応じて、電流センサ116の故障を検出するように構成される。一実施形態において、コントローラ122は、測定温度T、温度センサ120の性能、バッテリ102のセルの経年劣化、パルス特性、バッテリ102の充電状態、バッテリ電流Iの極性、及び/またはバッテリ電圧Uとバッテリ電流Iとの間の未補償の位相差に応じて、所定の閾値を時間とともに定期的に調整するように構成される。さらに、いくつかの実施形態において、コントローラ122は、常時または1回限りの調整として、所定の閾値をバッテリ102の機能の製造ばらつきとして調整を行うように構成される。
【0034】
[0027]いくつかの実施形態において、センサ故障を検出したことに応じて、コントローラ122は、ある種の改善動作を実行するようにさらに構成され得る。一実施形態において、コントローラ122は、故障を検出したことに応じてスイッチ112及びスイッチ114を開動作させ、これによりバッテリ102の端子108,110を負荷104から遮断するように構成される。一実施形態において、コントローラ122は、故障を検出したことに応じて、出力デバイス124を動作させて音響的な警告または視覚的な警告を生成し、これにより、検出されたセンサ故障をユーザに警告するように構成される。一実施形態において、コントローラ122は、使用時監視パフォーマンス比(IUMPR:in use monitoring performance ratio)または他のリアルタイム監視技法を使用するオンボード診断(OBD)評価などのさらなる処理のために、検出されたセンサ故障を示す信号をより高いレベルのコントローラに送信するように構成される。一実施形態において、コントローラ122は、センサ故障の検出に基づいて、オンボード診断(OBD)評価自体を実行するように構成される。
【0035】
[0028]電流センサの故障を検出した後または検出しなかった後は、方法200は、別の所定数の繰り返しが実行されるまで、バッテリ電圧サンプル及びバッテリ電流サンプルの連続した時間ステップに亘って、バッテリ電圧サンプルの変化量及びバッテリ電流サンプルの変化量を決定するステップ(ブロック220)と、バッテリ電圧サンプルの変化量とバッテリ電流サンプルの変化量との比率が(i)バッテリの抵抗及び(ii)バッテリのコンダクタンスのうちの一方の予想範囲内であるかどうかの検査を行うステップ(ブロック230)と、比率が(i)バッテリの抵抗及び(ii)バッテリのコンダクタンスのうちの一方の予想範囲外であるかどうかを記憶するステップ(ブロック240)とを繰り返すプロセスに戻る。
【0036】
[0029]いくつかの実施形態において、方法200は、(1)バッテリ温度が最小温度閾値を超えた、(2)バッテリ電圧サンプルの変化量が最小電圧変化量閾値を超えた、及び/または(3)バッテリ電流サンプルの電流値が最小電流閾値を超えた、という境界条件が満たされるかどうかを判定するステップ(ブロック270)をさらに含む。特には、比率が抵抗Rまたはコンダクタンス1/Rの推定範囲外であるかどうかの検査を行うる前に、コントローラ122は、特定の境界条件が満たされるかどうかを判定するように構成される。境界条件が満たされない場合、コントローラ122は、比率が抵抗Rまたはコンダクタンス1/Rの推定範囲外であるかどうかの検査を行うステップを省略して、単にプロセスの次の時間ステップに進むように構成される。一実施形態において、境界条件は、現在のバッテリ温度Tが最小温度閾値Tminよりも大きいということ、言い換えれば、低温でのセルの内部抵抗の大きな変化に起因する誤差を回避するために、T>Tminとの式が満たされなければならないことである。一実施形態において、境界条件は、バッテリ電圧の変化量ΔUがバッテリ電圧の最小変化量閾値ΔUminよりも大きいということ、言い換えれば、バッテリ電圧の最小変化量による検査を回避するために、ΔU>ΔUminとの式が満たされなければならないことである。一実施形態において、境界条件は、必要に応じて低電流での検査を回避するために、現在のバッテリ電流Iが最小バッテリ電流閾値Iminよりも大きいということ、言い換えれば、I>Iminとの式が満たされなければならないことである。一実施形態において、コントローラ122は、境界条件T>Tmin、ΔU>ΔUmin、及びI>Iminのそれぞれが満たされているかどうかを判定し、当該境界条件のすべてが満たされたことに応じて、比率が抵抗Rまたはコンダクタンス1/Rの推定範囲外であるかどうかのみを検査するように構成される。一実施形態において、コントローラ122は、最小温度閾値Tmin、バッテリ電圧の最小変化量閾値ΔUmin、及び/または最小バッテリ電流閾値Iminを、測定温度T、温度センサ120の性能、バッテリ102のセルの経年劣化、パルス特性、バッテリ102の充電状態、バッテリ電流Iの極性、及び/またはバッテリ電圧Uとバッテリ電流Iとの間の未補償の位相差に応じて、時間とともに定期的に調整するように構成される。さらに、いくつかの実施形態において、コントローラ122は、常時または1回限りの調整として、最小温度閾値Tmin、バッテリ電圧の最小変化量閾値ΔUmin、及び/または最小バッテリ電流閾値Iminを、バッテリ102の機能の製造ばらつきとして調整を行うように構成される。
【0037】
[0030]本明細書に記載の対サンプル相関法は、コントローラ122が2つ目の電流センサを必要とせずに電流センサ116の故障検出を可能とするこにより、バッテリシステム100の機能を向上させるものである。さらに、2つ目の電流センサを含むバッテリシステムでは、対サンプル相関法は、コントローラ122が、電流センサ116の故障、特にゲイン故障を検出することによりさらなる冗長性を提供することができる。他のいくつかの方法とは異なり、本明細書に開示される対サンプル相関法は、結果の生成を開始するために少量のデータ(たとえば、2つのサンプル)のみを必要とし、これは、バッテリシステムにおける故障検出などのリアルタイムの用途に有利である。さらに、各相関性検査の計算コストが低いので、低パフォーマンスかつ低コストのハードウェア上でこの方法を継続的に実行することが可能となる。対サンプル相関法は、較正変数(たとえば、所定の合格/不合格閾値、または上記のようなパラメータδ、δ、Tmin、ΔUmin、及び/もしくはIminの値)の直観的性質、及び較正変数間の相互依存性が低いことに起因して容易に較正される。対サンプル相関法は、有利には、各タイプの計算が(境界条件が満たされた)新しいサンプルごとに、または高レベルの評価が実行されるたびに実行されるので、より容易に実装されるロジックを有する。これは、他の計算の結果に応じて一部の計算が実行される、または実行されないアルゴリズムとは対照的である。
【0038】
[0031]本開示について、図面及び上記説明で詳細に図示及び説明がなされたが、これらは例示的なものであり、特性を限定するものではないとみなされるべきである。好ましい実施形態のみが提示されており、本開示の趣旨に含まれるすべての変更、修正、及びさらなる適用が保護されるよう望まれることは理解される。
図1
図2
図3