(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】機能性核酸分子及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20230407BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20230407BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230407BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/11 Z
C12N15/63 Z
C12N15/09 Z
(21)【出願番号】P 2020537887
(86)(22)【出願日】2018-09-20
(86)【国際出願番号】 IB2018057262
(87)【国際公開番号】W WO2019058304
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】102017000105372
(32)【優先日】2017-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】520097342
【氏名又は名称】フォンダジオネ イスティツト イタリアノ ディ テクノロジア
(73)【特許権者】
【識別番号】520097353
【氏名又は名称】スクオラ インターナジオナレ スペリオレ ディ ステュディ アバンザティ
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ グスティンシチ
(72)【発明者】
【氏名】シルビア ズッチェルリ
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-535430(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133947(WO,A1)
【文献】特表2006-506984(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0136890(US,A1)
【文献】トランスサインテクノロジーズ株式会社製品のSINEUPの販売を開始しました, 2013年,ニュース・イベント,(株)ダナフォーム,p.1-3,https://www.dnaform.jp/ja/information/20130320_1/, 検索日:2022年6月14日
【文献】RNA Biology, 2015年,Vol.12, No.8,p.771-779,http://dx.doi.org/10.1080/15476286.2015.1060395
【文献】Biochem. Soc. Trans., 2010年,Vol.38,p.1581-1586,doi:10.1042/BST0381581
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-タンパク質翻訳が増強されるべき真核生物標的mRNA配列に逆相補的な配列を含む標的結合配列;及び
-内部リボソーム進入部位(IRES)配列
からなる該標的mRNA配列の翻訳を増強する調節配列
:を含み、
ここで、該調節配列が該標的結合配列の3'に位置する、
トランス作用型機能性核酸分子。
【請求項2】
前記標的結合配列が、3'から5'へと、1~50ヌクレオチドの5'非翻訳領域(5'UTR)及び1~40ヌクレオチドの前記標的mRNA配列のコード配列(CDS)に逆相補的な配列からなる、請求項1記載のトランス作用型機能性核酸分子。
【請求項3】
前記標的結合配列が、3'から5'へと、10~45ヌクレオチドの5'非翻訳領域(5'UTR)及び2~6ヌクレオチドの前記標的mRNA配列のコード配列(CDS)に逆相補的な配列からなる、請求項2記載のトランス作用型機能性核酸分子。
【請求項4】
前記IRES配
列が、前記トランス作用型機能性核酸分子において、該機能性核酸分子の5'から3'への向きに対して順向きに配向されている、請求項1~3のいずれか一項記載のトランス作用型機能性核酸分子。
【請求項5】
前記IRES配
列が配列番号36~配列番号65からなる群から選択される配列と90%
以上の同一性を有する配列である、請求項
1~4のいずれか一項記載のトランス作用型機能性核酸分子。
【請求項6】
前記IRES配
列が配列番号36~配列番号65からなる群から選択される配列である、請求項
5記載のトランス作用型機能性核酸分子。
【請求項7】
前記トランス作用型機能性核酸分子がRNA分子又は修飾RNA分子である、請求項1~
6のいずれか一項記載のトランス作用型機能性核酸分子。
【請求項8】
前記標的結合配列と前記調節配列の間にスペーサー配列をさらに含む、請求項1~
7のいずれか一項記載のトランス作用型機能性核酸分子。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項記載のトランス作用型機能性核酸分子をコードするDNA分子。
【請求項10】
請求項
9記載のDNA分子を含む発現ベクター。
【請求項11】
タンパク質翻訳を増強する
インビトロ方法であって、細胞に、請求項1~
8のいずれか一項記載のトランス作用型機能性核酸分子又は請求項
9記載のDNA分子又は請求項
10記載の発現ベクターをトランスフェクトすることを含む、前記方法。
【請求項12】
請求項1~
8のいずれか一項記載のトランス作用型機能性核酸分子又は請求項
9記載のDNA分子又は請求項
10記載の発現ベクターを含む組成物。
【請求項13】
標的mRNA配列の翻訳を増強するための
組成物であって、請求項1~
8のいずれか一項記載のトランス作用型機能性核酸分子又は請求項
9記載のDNA分子又は請求項
10記載の発現ベクター
を含む、前記組成物。
【請求項14】
タンパク質コードmRNAの下方調節によって引き起こされる遺伝性疾患を治療する際に又は遺伝子量の低下が害を及ぼす遺伝性もしくは散発性疾患を治療する際に使用するための、
請求項12記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その開示が引用により組み込まれる、2017年9月20日に出願されたイタリア特許出願第10201700015372号の優先権を主張する。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、真核生物における特異的な標的mRNAのタンパク質翻訳を増強する機能を有するトランス作用型機能性核酸分子、そのような分子をコードするDNA分子、そのような分子の使用、及びタンパク質翻訳を増強する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(従来技術)
真核生物において、mRNAは、主として、開始因子が40SリボソームサブユニットをmRNAの5'末端のキャップ構造にリクルートするキャップ依存的機構を通じて翻訳される。しかしながら、一部のウイルス及び細胞メッセージは、キャップなしでタンパク質合成を開始する(Thompson SRの文献、Trends Microbiol 2012; Jackson RJの文献、Cold Spring Harb Perspect Biol. 2013)。これらの場合、内部リボソーム進入部位(IRES)と呼ばれる構造化されたRNAエレメントが40Sリボソームサブユニットをリクルートする。IRESは、20年以上前にピコルナウイルスで発見された。細胞において、IRES配列は、タンパク質コードmRNAのサブセットのキャップ非依存的翻訳を促進して、ストレス条件下で生じるキャップ依存的翻訳の全般的な阻害を克服する。IRES配列は、通常、ストレス応答遺伝子をコードする細胞mRNAの5'非翻訳領域に見出され、したがって、その翻訳をシスに刺激する。
【0004】
最近のハイスループットスクリーニングシステムにより、細胞mRNA内の有効なIRES配列のリストが拡大されている(Weingarten-Gabbay Sらの文献、Science, 2016)。
【0005】
遺伝子特異的な翻訳上方調節は、内部リボソーム進入(IRES)配列又は翻訳エンハンサー配列を含有する修飾5'配列を含むようなタンパク質コードmRNAの修飾によって達成することができる。そのようなシステムにおいて、IRES又は翻訳エンハンサー配列は、対象の特異的遺伝子をコードするcDNAの5'にシスに配置される。この方法は、2つのシストロンを発現させるためのベクターの構築及び過剰発現される遺伝子の翻訳の増強に適用されている。しかしながら、シスでの翻訳増強の調節は、その目的が内在性に発現されるmRNAの翻訳上方調節を誘導することである場合には使用することができない。それゆえ、遺伝子特異的な翻訳上方調節を促進し、内在性mRNAに作用するトランス調節性エレメントを同定する必要がある。独立したRNAドメインとして作用する翻訳上方調節のトランス調節性エレメントも必要である。
【0006】
核酸分子を用いるインビボでの遺伝子発現の操作は、病院での潜在的応用のために、近年、強い関心を引いている。これまで、大半の努力は、siRNA、miRNA、及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて毒性タンパク質を下方調節する能力に焦点を当ててきた。しかしながら、多くの疾患は、遺伝子量の低下によって引き起こされ、したがって、タンパク質産物の増加を必要とする。多くの研究は、この問題に転写レベルでアプローチしてきたが、機能性アンチセンスRNA分子(SINEUP)を用いて、翻訳を増大させる例は1つしか存在しない(Carrieri C.らの文献、Nature, 2012)。SINEUPは、mRNAレベルに影響を与えることなく、部分的にオーバーラップするタンパク質コードmRNAの翻訳を促進することができるアンチセンス長鎖非コードRNAである。SINEUP活性は、2つの機能ドメインに依存しており:オーバーラップする領域、すなわち、「結合ドメイン」がSINEUPの特異性を決定する一方、埋め込まれた逆向きのSINEB2エレメントは、「エフェクタードメイン」として作用し、mRNA翻訳の増強を制御する(Zucchelli S.らの文献、Front Cell Neurosci 2015; Zucchelli S.らの文献、RNA Biol, 2015)。そのモジュール構造を利用することにより、合成SINEUPを、ほとんど全ての対象標的遺伝子の翻訳を特異的に増強するように設計することができる(Zucchelli S.らの文献、Front Cell Neurosci 2015; Zucchelli S.らの文献、RNA Biol, 2015; Indrieri A.らの文献、Scientific Reports, 2016; Gustincich S.らの文献、Prog Neurobiol, 2016; Zucchelli S.らの文献、Comput Struct Biotechnol J, 2016)。
【0007】
EP2691522号は、SINEUPを含む機能性核酸分子を開示している。
【0008】
その潜在能力にもかかわらず、SINEUPは、マウスゲノムに由来し、かつレシピエント細胞でレトロトランスポーズする(あるゲノム位置から別のゲノム位置に移動する)潜在能力を有する配列である、埋め込まれたSINEエレメントの翻訳エンハンサー活性に依存している。これは、不十分な遺伝子量の補正のための翻訳上方調節を伴う治療的使用にとって有害であろう。それゆえ、遺伝子特異的な翻訳上方調節を促進し、かつマウス配列に由来しない内在性mRNAに作用するトランス調節性エレメントが必要である。遺伝子特異的な翻訳上方調節を促進し、かつ転移エレメントに由来しないトランス調節性エレメントも必要である。
【0009】
EP2691522号のほとんどの機能性核酸分子は、長さがかなり長い。レシピエント細胞へのRNA分子の送達をより効率的にするために、遺伝子特異的な翻訳上方調節を促進し、かつ内在性mRNAに作用するより短いトランス調節性エレメントの同定が必要である。
【0010】
EP2691522号の機能性核酸分子の翻訳増強効果は、通常、細胞型に応じて、1.5~2.0倍である。このタンパク質増加レベルは、その目的が、不十分な遺伝子量の補正のためにヒトでの翻訳上方調節を誘導することである場合、不十分であり得る。それゆえ、より高レベルの遺伝子特異的な翻訳上方調節を促進し、かつ内在性mRNAに作用するトランス調節性エレメントを同定する必要がある。
【発明の概要】
【0011】
(発明の概要)
それゆえ、上記の問題を克服し、場合によっては、増強された機能も有する機能性核酸分子を提供することが本発明の目的である。
【0012】
この目的は、請求項1に定義されているトランス作用型機能性核酸分子によって達成される。
【0013】
本発明の他の目的は、請求項10に定義されているDNA分子、請求項11に定義されている発現ベクター、請求項12に定義されているタンパク質翻訳を増強する方法、請求項13に定義されている組成物、並びに請求項14及び15に定義されているトランス作用型機能性核酸分子の使用を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
(図面の簡単な説明)
【
図1】
図1は、本発明によるトランス作用型機能性核酸分子の模式図を示している。
【
図2】
図2Aは、従来技術による機能性核酸分子(SINEUP)の模式図を示している。
図2Bは、空の対照プラスミド(-)、全長SINEUP-DJ-1(FL)及びその欠失突然変異体(ΔED=欠失したエフェクタードメインを有する突然変異体、ΔBD=欠失した結合ドメインを有する突然変異体)でそれぞれトランスフェクトされたヒト胎児腎臓293T/17細胞(以後、HEK 293T/17細胞とも呼ばれる)のライセートに対して実施されたウェスタンブロットの結果を示している。
図2Cは、
図2Bと同様の試料に対して実施された内在性DJ-1 mRNA(上のパネル)及びSINEUP RNA(下のパネル)の発現を定量するためのqRT-PCRの結果を示している。
図2Dは、HEK 293T/17細胞の内在性DJ-1 mRNAに対する全長SINEUP-DJ-1、ΔED、及びΔBD翻訳増強活性のグラフ表示を示している(N=5)。p<0.05
【
図3】
図3は、DJ-1 mRNAを標的とする、本発明による一般的なトランス作用型機能性核酸分子(IRUP)の模式図を示している。
【
図4】
図4は、IRES含有機能性アンチセンス核酸分子の翻訳上方調節活性を試験するための実験手順の模式図を示している。
【
図5】
図5Aは、DJ-1遺伝子を標的とし、かつHCV IRESを含む、本発明による機能性核酸分子(IRUP)の模式図を示している。
図5Bは、空の対照プラスミド、SINEUP-DJ-1、並びに順向きのHCV IRES(HCV(d))を含むIRUP及び逆向きのHCV IRES(HCV(i))を含むIRUPでそれぞれトランスフェクトされたHEK 293T/17細胞のライセートに対して実施されたウェスタンブロットの結果を示している。
図5Cは、
図5Bと同様の試料に対して実施された内在性DJ-1 mRNA(上のパネル)及びIRUP RNA(下のパネル)の発現を定量するためのqRT-PCRの結果を示している。
【
図6】
図6Aは、DJ-1遺伝子を標的とし、かつポリオウイルスIRESを含む、本発明による機能性核酸分子(IRUP)の模式図を示している。
図6Bは、空の対照プラスミド、SINEUP-DJ-1、並びに順向きのポリオウイルスIRES(ポリオ(d))を含むIRUP及び逆向きのポリオウイルスIRES(ポリオ(i))を含むIRUPでそれぞれトランスフェクトされたHEK 293T/17細胞のライセートに対して実施されたウェスタンブロットの結果を示している。
図6Cは、
図6Bと同様の試料に対して実施された内在性DJ-1 mRNA(上のパネル)及びIRUP RNA(下のパネル)の発現を定量するためのqRT-PCRの結果を示している。
【
図7】
図7Aは、DJ-1遺伝子を標的とし、かつ脳心筋炎ウイルス(EMCV) IRES及びクリケット麻痺ウイルス(CrPV) IRESを含む、本発明による機能性核酸分子(IRUP)の模式図を示している。
図7Bは、空の対照プラスミド、SINEUP-DJ-1、並びに順向きのEMCV IRES(EMCV(d))を含むIRUP及び逆向きのEMCV IRES(EMCV(i))を含むIRUP、並びに順向きのCrPV IRES(CrPV(d))を含むIRUP及び逆向きのCrPV IRES(CrPV(i))を含むIRUPでそれぞれトランスフェクトされたHEK 293T/17細胞のライセートに対して実施されたウェスタンブロットの結果を示している。
図7Cは、
図7Bと同様の試料に対して実施された内在性DJ-1 mRNA(上のパネル)及びIRUP RNA(下のパネル)の発現を定量するためのqRT-PCRの結果を示している。
【
図8】
図8A及び8Bは、空ベクターでトランスフェクトされた293T/17細胞と比べた、本発明のHCV(d)及びHCV(i) IRUP、ポリオ(d)及びポリオ(i) IRUP、並びにEMCV(d)、EMCV(i)、CrPV(d)、及びCrPV(i) IRUPでトランスフェクトされたHEK 293T/17細胞におけるDJ-1タンパク質の量の増加をまとめたグラフを示している。
【
図9】
図9Aは、DJ-1遺伝子を標的とし、かつヒトアポトーシスペプチダーゼ活性化因子1(Apaf-1) mRNA IRESを含む、本発明による機能性核酸分子(IRUP)の模式図を示している。
図9Bは、空の対照プラスミド、SINEUP-DJ-1、並びに順向きのApaf-1 IRES(Apaf-1(d))を含むIRUP及び逆向きのApaf-1 IRES(Apaf-1(i))を含むIRUPでそれぞれトランスフェクトされたHEK 293T/17細胞のライセートに対して実施されたウェスタンブロットの結果を示している。
図9Cは、
図9Bと同様の試料に対して実施された内在性DJ-1 mRNA(上のパネル)及びIRUP RNA(下のパネル)の発現を定量するためのqRT-PCRの結果を示している。
【
図10】
図10Aは、DJ-1遺伝子を標的とし、かつヒトのゲノム不安定性レベル増強(Enhanced Level of Genomic instability)1(ELG-1) mRNA IRESを含む、本発明による機能性核酸分子(IRUP)の模式図を示している。
図10Bは、空の対照プラスミド、SINEUP-DJ-1、並びに順向きのELG-1 IRES(ELG-1(d))を含むIRUP及び逆向きのELG-1 IRES(ELG-1(i))を含むIRUPでそれぞれトランスフェクトされたHEK 293T/17細胞のライセートに対して実施されたウェスタンブロットの結果を示している。
図10Cは、
図10Bと同様の試料に対して実施された内在性DJ-1 mRNA(上のパネル)及びIRUP RNA(下のパネル)の発現を定量するためのqRT-PCRの結果を示している。
【
図11】
図11Aは、DJ-1遺伝子を標的とし、かつヒトV-Mycトリ骨髄球腫症ウイルス癌遺伝子ホモログ(cMYC) mRNA IRESを含む、本発明による機能性核酸分子(IRUP)の模式図を示している。
図11Bは、空の対照プラスミド、SINEUP-DJ-1、並びに順向きのcMYC IRES(cMYC(d))を含むIRUP及び逆向きのcMYC IRES(cMYC(i))を含むIRUPでそれぞれトランスフェクトされたHEK 293T/17細胞のライセートに対して実施されたウェスタンブロットの結果を示している。
図11Cは、
図11Bと同様の試料に対して実施された内在性DJ-1 mRNA(上のパネル)及びIRUP RNA(下のパネル)の発現を定量するためのqRT-PCRの結果を示している。
【
図12】
図12Aは、DJ-1遺伝子を標的とし、かつ
図11A~11CのヒトV-Mycトリ骨髄球腫症ウイルス癌遺伝子ホモログ(cMYC) mRNA IRESのより短いバージョンを含む、本発明による機能性核酸分子(IRUP)の模式図を示している。
図12Bは、空の対照プラスミド、SINEUP-DJ-1、並びに順向きのcMYC IRES(ショートバリアント)(cMYC(d))を含むIRUP及び逆向きのcMYC IRES(ショートバリアント)(cMYC(i))を含むIRUPでそれぞれトランスフェクトされたHEK 293T/17細胞のライセートに対して実施されたウェスタンブロットの結果を示している。
図12Cは、
図12Bと同様の試料に対して実施された内在性DJ-1 mRNA(上のパネル)及びIRUP RNA(下のパネル)の発現を定量するためのqRT-PCRの結果を示している。
【
図13】
図13Aは、DJ-1遺伝子を標的とし、かつヒトジストロフィン(DMD) mRNA IRESを含む、本発明による機能性核酸分子(IRUP)の模式図を示している。
図13Bは、空の対照プラスミド、SINEUP-DJ-1、並びに順向きのDMD IRES(DMD(d))を含むIRUP及び逆向きのDMD IRES(DMD(i))を含むIRUPでそれぞれトランスフェクトされたHEK 293T/17細胞のライセートに対して実施されたウェスタンブロットの結果を示している。
図13Cは、
図13Bと同様の試料に対して実施された内在性DJ-1 mRNA(上のパネル)及びIRUP RNA(下のパネル)の発現を定量するためのqRT-PCRの結果を示している。
【
図14】
図14A及び14Bは、空ベクターでトランスフェクトされた293T/17細胞と比べた、本発明のApaf-1(d)及びApaf-1(i) IRUP、ELG-1(d)及びELG-1(i) IRUP、cMYC(d)ショートバージョン及びcMYC(i)ショートバージョンIRUP、DMD(d)及びDMD(i) IRUP、並びにcMYC(d)ロングバージョン及びcMYC(i)ロングバージョンIRUPでトランスフェクトされたHEK 293T/17細胞におけるDJ-1タンパク質の量の増加をまとめたグラフを示している。
【
図15】
図15A~15Dは、空の対照プラスミド、SINEUP-DJ-1、順向き(d)又は逆向き(i)のHCV IRES配列を含むIRUP、順向き(d)又は逆向き(i)のポリオ及びcMYC IRES配列を含むIRUP、順向き(d)又は逆向き(i)のApaf-1及びELG-1 IRES配列を含むIRUP、並びに順向き(d)又は逆向き(i)のDMD IRES配列を含むIRUPでそれぞれトランスフェクトされたヒト肝細胞癌(HepG2)細胞のライセートに対して実施されたウェスタンブロットの結果を示している。
【
図16】
図16A及び16Bは、空ベクターでトランスフェクトされたHepG2細胞と比べた、本発明のHCV(d)及びHCV(i) IRUP、ポリオ(d)及びポリオ(i) IRUP、cMYC(d)ショートバージョン及びcMYC(i)ショートバージョンIRUP、Apaf-1(d)及びApaf-1(i) IRUP、ELG-1(d)及びELG-1(i) IRUP、並びにDMD(d)及びDMD(i) IRUPでトランスフェクトされたHepG2細胞におけるDJ-1タンパク質の量の増加をまとめたグラフを示している。
【
図17】
図17Aは、DJ-1遺伝子を標的とする、本発明による機能性核酸分子の小型化バージョン(ミニIRUP)の模式図を示している。
図17Bは、空の対照プラスミド、SINEUP-DJ-1、並びに順向きのHCV IRES(HCV(d))、順向きのポリオウイルスIRES(ポリオ(d))及び逆向きのポリオウイルスIRES(ポリオ(i))、並びに順向きのcMYCショートバージョンIRES(cMYCショート(d))を含むミニIRUPでそれぞれトランスフェクトされたHEK 293T/17細胞のライセートに対して実施されたウェスタンブロットの結果を示している。
図17Cは、
図17Bと同様の試料に対して実施された内在性DJ-1 mRNA(上のパネル)及びIRUP RNA(下のパネル)の発現を定量するためのqRT-PCRの結果を示している。
図17Dは、HEK 293T/17細胞の内在性DJ-1 mRNAに対するSINEUP-DJ-1及びミニ-IRUP翻訳増強活性のグラフ表示を示している(N=6)。
【
図18】
図18Aは、DJ-1遺伝子を標的とする、本発明による機能性核酸分子の小型化バージョン(ミニIRUP)の模式図を示している。
図17A~17DのミニIRUPに関して、IRES含有機能性核酸配列は、異なるプロモーターの制御下にクローニングされる。
図18Bは、空の対照プラスミド、SINEUP-DJ-1、並びに順向きのHCV IRES(HCV(d))、順向きのポリオウイルスIRES(ポリオ(d))及び逆向きのポリオウイルスIRES(ポリオ(i))、並びに順向きのcMYCショートバージョンIRESを含むミニIRUPでそれぞれトランスフェクトされたHEK 293T/17細胞のライセートに対して実施されたウェスタンブロットの結果を示している。
図18Cは、
図18Bと同様の試料に対して実施された内在性DJ-1 mRNA(上のパネル)及びIRUP RNA(下のパネル)の発現を定量するためのqRT-PCRの結果を示している。
図18Dは、HEK 293T/17細胞の内在性DJ-1 mRNAに対するSINEUP-DJ-1及びミニ-IRUP翻訳増強活性のグラフ表示を示している(N=6)。
【
図19】
図19Aは、哺乳動物細胞における機能性核酸分子と対象遺伝子の同時発現のためのpDUAL-GFPプラスミドの模式図を示している。
図19Bは、空の対照プラスミド、
図19Aに示されているSINE含有(SINE)又はIRES含有(IRES)ミニ機能性核酸分子でそれぞれトランスフェクトされたHEK 293T/17細胞のライセートに対して実施されたウェスタンブロットの結果を示している。
図19Cは、
図19AのコンストラクトでトランスフェクトされたHEK 293T/17細胞における過剰発現されたGFP mRNAの発現を定量するためのqRT-PCRの結果を示している。
図19Dは、機能性核酸SINE又はIRES RNAの発現を定量するためのqRT-PCRの結果を示している。
【
図20】
図20Aは、エフェクタードメインがSINE又はHCV IRES配列によって表されているGFP標的化機能性核酸分子を有するpDUAL-GFPプラスミドの模式図を示している。
図20Bは、空の対照プラスミド、
図20Aに示されているSINE含有(SINE)又はIRES含有(IRES)ミニ機能性核酸分子でそれぞれトランスフェクトされたヒト神経芽細胞腫Neuro2aのライセートに対して実施されたウェスタンブロットの結果を示している。
【
図21】
図21は、HCV IRES RNA二次構造の模式的表示を示している。
【
図22】
図22Aは、空の対照プラスミド、SINEUP-DJ-1、並びにWT HCV IRES並びにM2及びM5突然変異型HCV IRESを含むIRUPでそれぞれトランスフェクトされたHEK 293T/17細胞のライセートに対して実施されたウェスタンブロットの結果を示している。
図22Bは、
図22Aと同様の試料に対して実施された内在性DJ-1 mRNA(上のパネル)及びIRUP RNA(下のパネル)の発現を定量するためのqRT-PCRの結果を示している。
図22Cは、HEK 293T/17細胞の内在性DJ-1 mRNAに対するSINEUP-DJ-1及びIRUP翻訳増強活性のグラフ表示を示している(N=7)。
【
図23】
図23Aは、IRES配列の5'にあり、かつIRES含有細胞mRNAの内部にある配列を結合ドメインとみなすことができる方法の模式的表示を示している。
図23Bは、cMYC mRNA参照配列(NM_002467)内の機能性核酸配列エレメントを示している。結合ドメイン(黒)、IRES配列(濃灰色)、コード配列又はCDS(薄灰色)、及び3'非翻訳領域(白)が示されている。
図23Cは、アンチセンスの向きで部分的にオーバーラップする標的mRNAタンパク質コード配列を同定するために、c-MYC mRNAをクエリー配列として用いるバイオインフォマティクス解析(BLAST)の結果を示している。
【
図24】
図24Aは、MYCの全長mRNA(cMYC-FL)をコードする哺乳動物発現プラスミドの模式的表示を示している。
図24Bは、抗JAG2、抗DYRK2、抗LYS、抗UBE3A、抗NRF1抗体を用いて、哺乳動物SAOS細胞のライセートに対して実施されたウェスタンブロットを示している。
図24C及び24Dは、内在性JAG2、DYRK2、LIS1、UBE3A、NRF1、及びcMYC mRNAの発現を定量するためのqRT-PCRの結果を示している。
図24Eは、平均cMyc全長mRNAレベルを示している。
【
図25】
図25Aは、MYCの全長mRNA(cMYC-FL)又はcMYC DNA結合ドメインを欠くバリアント(ΔC)及び5'UTRのみのドメインから構成されるバリアント(5'UTR)もしくはIRESのみのドメインから構成されるバリアント(IRES)をコードする哺乳動物発現プラスミドの模式的表示を示している。
図25Bは、抗JAG2、抗DYRK2、抗LYS、抗UBE3A、抗NRF1抗体を用いて哺乳動物SAOS細胞のライセートに対して実施されたウェスタンブロットを示している。
図25Cは、内在性JAG2、DYRK2、LIS1、UBE3A、NRF1、及びcMYC mRNAの発現を定量するためのqRT-PCRの結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(定義)
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が関連する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法及び材料と同様又は同等の多くの方法及び材料が本発明の実施又は試験において使用され得るが、好ましい方法及び材料が以下に記載されている。別途言及されない限り、本発明とともに使用するための本明細書に記載される技法は、当業者に周知の標準的な方法である。
【0016】
「内部リボソーム進入部位(IRES)由来配列」という用語により、例えば、その機能的活性、すなわち、翻訳増強活性を保持するための内部リボソーム進入部位(IRES)配列との相同性を有する核酸の配列が意図される。特に、内部リボソーム進入部位(IRES)由来配列は、遺伝子改変又は化学修飾によって、例えば、機能が維持されているIRES配列の特定の配列を単離するか、又はIRES配列中の1以上のヌクレオチドを突然変異させる/欠失させる/導入するか、又はIRES配列中の1以上のヌクレオチドを構造的に修飾されたヌクレオチドもしくは類似体と置換することにより、天然に存在するIRES配列から得ることができる。より特に、当業者であれば、内部リボソーム進入部位(IRES)由来配列がバイシストロン性コンストラクト中の第二のシストロンの翻訳を促進することができるヌクレオチド配列であることを知っているであろう。通常、デュアルルシフェラーゼ(ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ)をコードするプラスミドが実験的試験に使用される。最近、ヒトゲノム由来の配列をIRESとして作用するその能力について調べるために、デュアルレポーター又はバイシストロン性プラスミドに基づく大規模スクリーニングが利用されている(Weingarten-Gabbay Sらの文献、Science. 2016, 351:6270)。デュアルレポーター又はバイシストロン性アッセイを用いて実験的にIRESと確認されたヌクレオチド配列のアノテーションについては、主要なデータベース、すなわち、IRESiteが存在する(http://iresite.org/IRESite_web.php)。IRESiteでは、対象クエリー配列とデータベース内のアノテーションされ、かつ実験的に確認されたIRES配列の全体との間の配列に基づく及び構造に基づく類似性を検索するために、ウェブベースのツールが利用可能である(http://iresite.org/IRESite_web.php?page=search)。このプログラムのアウトプットは、バイシストロン性コンストラクトを用いる確認実験でIRESとして作用することができる任意のヌクレオチド配列の確率スコアである。数的予測値を用いて、任意の所与のヌクレオチド配列のIRES活性の能力を示唆するために、配列に基づく及び構造に基づくウェブベースのさらなるブラウジングツールが利用可能である(http://rna.informatik.uni-freiburg.de/; http://regrna.mbc.nctu.edu.tw/index1.php)。
【0017】
(発明の詳細な説明)
図1に関して、本発明のトランス作用型機能性核酸分子(以下で、「IRUP」とも呼ばれる)は、標的結合配列(「結合ドメイン」とも呼ばれる)及び調節配列(「エフェクタードメイン」とも呼ばれる)を含む。
【0018】
標的結合配列は、タンパク質翻訳が増強されるべき真核生物標的mRNA配列に逆相補的な配列を含む。
【0019】
真核生物標的mRNA配列は、好ましくは、動物又はヒトの標的mRNA配列、より好ましくは、ヒトの標的mRNA配列である。
【0020】
調節配列は、内部リボソーム進入部位(IRES)配列又は内部リボソーム進入部位(IRES)由来配列を含み、標的mRNA配列の翻訳を増強する。
【0021】
調節配列は、標的結合配列の3'に位置する。
【0022】
トランス作用型機能性核酸分子は、標的結合配列を介して標的mRNA配列にハイブリダイズし、IRES又はIRES由来配列は、標的mRNA配列の翻訳を増強する。
【0023】
本発明の機能性核酸分子は、IRES配列を、ほとんど全ての内在性の又は過剰発現された細胞性タンパク質コードmRNAの翻訳を遺伝子特異的に増大させるためのトランス調節性エレメントとして利用することを可能にする。
【0024】
好ましくは、標的結合配列は、3'から5'へと、標的mRNA配列の1~50ヌクレオチドの5'非翻訳領域(5'UTR)及び1~40ヌクレオチドのコード配列(CDS)に逆相補的な配列からなる。非限定的な具体例としては:
-標的mRNA配列の40ヌクレオチドの5'非翻訳領域(5'UTR)及び4ヌクレオチドのコード配列(CDS)(開始メチオニンコドン又は内部インフレームメチオニンコドンと呼ばれる)に逆相補的な配列;
-標的mRNA配列の40ヌクレオチドの5'非翻訳領域(5'UTR)及び32ヌクレオチドのコード配列(CDS)に逆相補的な配列;
-標的mRNA配列の14ヌクレオチドの5'非翻訳領域(5'UTR)及び4ヌクレオチドのコード配列(CDS)(開始メチオニンコドンと呼ばれる)に逆相補的な配列
からなる標的結合配列が挙げられる。
【0025】
調節配列は、好ましくはヒトウイルス又はヒトタンパク質コード遺伝子に由来する、内部リボソーム進入部位(IRES)配列を含む。48~576ヌクレオチドの範囲の配列を有するいくつかのIRES、例えば、ヒトC型肝炎ウイルス(HCV) IRES(配列番号36及び配列番号37)、ヒトポリオウイルスIRES(配列番号38及び配列番号39)、ヒト脳心筋炎(EMCV)ウイルス(配列番号40及び配列番号41)、ヒトクリケット麻痺(CrPV)ウイルス(配列番号42及び配列番号43)、ヒトApaf-1(配列番号44及び配列番号45)、ヒトELG-1(配列番号46及び配列番号47)、ヒトc-MYC(配列番号48、配列番号49、配列番号50、及び配列番号51)、ヒトジストロフィン(DMD)(配列番号52及び配列番号53)が試験され、成功を収めている。さらなる詳細は、実施例の節で見ることができる。翻訳増強活性の基礎となる、IRESの構造エレメントをコードする配列が、トランス作用型機能性核酸分子の調節配列として同定され、単離され、かつ使用されている。
【0026】
定義において既に言及されている通り、内部リボソーム進入部位(IRES)由来配列は、遺伝子改変された又は化学修飾されたIRESを含むことができる。
【0027】
化学修飾としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:
塩基修飾:シュードウリジン; 5'-ブロモ-ウリジン; 5'-メチルシチジン。
糖修飾(2'修飾): 2'-O-メチル-(2'-O-Me); 2'-O-メトキシエチル(2'-MOE);ロックされた核酸(LNA)。
骨格修飾(リン酸骨格修飾):ホスホロチオエート(PS);ホスホトリエステル。
その他(細胞型特異的標的化ドメイン): GalNAc結合(肝細胞)。
【0028】
IRES配列又はIRES由来配列は-トランス作用型機能性核酸分子中で-該機能性核酸分子の5'から3'への向きに対して順向きに挿入されていようと逆向きに挿入されていようと機能的であるが、それは、順向きに向けられていることが好ましい。言い換えると、「順」により、IRES配列が機能性核酸分子と同じ5'から3'への向きで埋め込まれている(挿入されている)状況が意図される。代わりに、「逆」により、IRES配列の逆相補体が核酸分子に挿入されている(IRES配列が機能性核酸分子に対して3'から5'に向けられている)状況が意図される。
【0029】
好ましくは、IRES配列又はIRES由来配列は、配列番号36~配列番号65からなる群から選択される配列と75%の相同性を有する配列、より好ましくは、配列番号36~配列番号65からなる群から選択される配列と90%の相同性を有する配列、さらにより好ましくは、配列番号36~配列番号65からなる群から選択される配列である。
【0030】
トランス作用型機能性核酸分子は、好ましくは、RNA分子又は修飾RNA分子である。修飾の例は、以下のものである:
塩基修飾:シュードウリジン; 5'-ブロモ-ウリジン; 5'-メチルシチジン。
糖修飾(2'修飾): 2'-O-メチル-(2'-O-Me); 2'-O-メトキシエチル(2'-MOE);ロックされた核酸(LNA)。
骨格修飾(リン酸骨格修飾):ホスホロチオエート(PS);ホスホトリエステル。
その他(細胞型特異的標的化ドメイン): GalNAc結合(肝細胞)。
【0031】
トランス作用型機能性核酸分子は、好ましくは、標的結合配列と調節配列の間にスペーサー配列をさらに含む。
【0032】
さらに、トランス作用型機能性核酸分子は、例えば、該分子を適切なプラスミドにクローニングするのに有用な制限部位を含む、非コード化3'テール配列を任意に含む。
【0033】
いくつかのトランス作用型機能性核酸分子は、本発明に従って作製されている。
【0034】
これらの分子のうちのいくつかの特徴は、以下にまとめられている。(BD=結合ドメイン;括弧内の付番は、AUGトリプレットのA=+1を基準としたものである)
【0035】
(配列番号1)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトC型肝炎ウイルス、HCV、383ヌクレオチド、順向き
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRES HCV(383ntds)(配列番号36)
骨格=Δ5'ASUchl1
IRESの向き:順
【0036】
(配列番号2)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトC型肝炎ウイルス、HCV、383ヌクレオチド、逆向き
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRES HCV(383ntds)(配列番号37)
骨格=Δ5'ASUchl1
IRESの向き:逆(逆相補体)
【0037】
(配列番号3)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトポリオウイルス、312ヌクレオチド、順向き
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRESポリオウイルス(312ntds)(配列番号38)
骨格=Δ5'ASUchl1
IRESの向き:順
【0038】
(配列番号4)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトポリオウイルス、312ヌクレオチド、逆向き
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRESポリオウイルス(312ntds)(配列番号39)
骨格=Δ5'ASUchl1
IRESの向き:逆(逆相補体)
【0039】
(配列番号5)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒト脳心筋炎ウイルス、EMCV-R、576ヌクレオチド、順向き
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRES EMCV-R(576ntds)(配列番号40)
骨格=Δ5'ASUchl1
IRESの向き:順
【0040】
(配列番号6)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒト脳心筋炎ウイルス、EMCV-R、576ヌクレオチド、逆向き
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRES EMCV-R(576ntds)(配列番号41)
骨格=Δ5'ASUchl1
IRESの向き:逆(逆相補体)
【0041】
(配列番号7)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトクリケット麻痺ウイルス、CrPV、192ヌクレオチド、順向き
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRES CrPV(192ntds)(配列番号42)
骨格=Δ5'ASUchl1
IRESの向き:順
【0042】
(配列番号8)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトクリケット麻痺ウイルス、CrPV、192ヌクレオチド、逆向き
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRES CrPV(192ntds)(配列番号43)
骨格=Δ5'ASUchl1
IRESの向き:逆(逆相補体)
【0043】
(配列番号9)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:細胞IRES、ヒトApaf-1、231ヌクレオチド、順向き
(Ensembl: ENSG00000120868; MIM:602233)
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRES Apaf-1(231ntds)(配列番号44)
骨格=Δ5'ASUchl1
IRESの向き:順
【0044】
(配列番号10)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:細胞IRES、ヒトApaf-1、231ヌクレオチド、逆向き
(Ensembl: ENSG00000120868; MIM:602233)
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRES Apaf-1(231ntds)(配列番号45)
骨格=Δ5'ASUchl1
IRESの向き:逆(逆相補体)
【0045】
(配列番号11)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:細胞IRES、ヒトELG-1、460ヌクレオチド、順向き
(Ensembl: ENSG00000176208; MIM:609534)
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRES ELG-1(460ntds)(配列番号46)
骨格=Δ5'ASUchl1
IRESの向き:順
【0046】
(配列番号12)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:細胞IRES、ヒトELG-1、460ヌクレオチド、逆向き
(Ensembl: ENSG00000176208; MIM:609534)
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRES ELG-1(460ntds)(配列番号47)
骨格=Δ5'ASUchl1
IRESの向き:逆(逆相補体)
【0047】
(配列番号13)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:細胞IRES、ヒトc-MYC、395ヌクレオチド、順向き
(Ensembl: ENSG00000136997; MIM:190080)
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRES c-MYC全長(395ntds)(配列番号48)
骨格=Δ5'ASUchl1
IRESの向き:順
その他:配列番号15に含まれる48ntの最小配列(配列番号50)を含む。
【0048】
(配列番号14)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:細胞IRES、ヒトc-MYC、395ヌクレオチド、逆向き
(Ensembl: ENSG00000136997; MIM:190080)
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRES c-MYC全長(395ntds)(配列番号49)
骨格=Δ5'ASUchl1
IRESの向き:逆(逆相補体)
その他:配列番号16に含まれる48ntの最小配列(配列番号51)を含む。
【0049】
(配列番号15)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:細胞IRES、ヒトc-MYC、48ヌクレオチド、順向き
(Ensembl: ENSG00000136997; MIM:190080)
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRES c-MYC(48ntds)(配列番号50)
骨格=Δ5'ASUchl1
IRESの向き:順
【0050】
(配列番号16)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:細胞IRES、ヒトc-MYC、48ヌクレオチド、逆向き
(Ensembl: ENSG00000136997; MIM:190080)
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRES c-MYC(48ntds)(配列番号51)
骨格=Δ5'ASUchl1
IRESの向き:逆(逆相補体)
【0051】
(配列番号17)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:細胞IRES、ヒトジストロフィン(DMD)、71ヌクレオチド、順向き
(Ensembl: ENSG00000198947; MIM:300377)
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRES DMD(71ntds)(配列番号52)
骨格=Δ5'ASUchl1
IRESの向き:順
【0052】
(配列番号18)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:細胞IRES、ヒトジストロフィン(DMD)、71ヌクレオチド、逆向き
(Ensembl: ENSG00000198947; MIM:300377)
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRES DMD(71ntds)(配列番号53)
骨格=Δ5'ASUchl1
IRESの向き:逆(逆相補体)
【0053】
(配列番号19)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトC型肝炎ウイルス、HCV突然変異体#1、303ヌクレオチド、ΔII(40~119)、リボソームタンパク質との相互作用
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=HCV IRES順、ΔII(配列番号54)
骨格=Δ5'ASUchl1
突然変異体#1:ΔII(40~119)、リボソームタンパク質との相互作用
【0054】
(配列番号20)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトC型肝炎ウイルス、HCV突然変異体#2、367ヌクレオチド、ΔIIIa(156~171)、eIF3結合部位
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=HCV IRES順、ΔIIIa(配列番号55)
骨格=Δ5'ASUchl1
突然変異体#2:ΔIIIa(156~171)、eIF3結合部位
【0055】
(配列番号21)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトC型肝炎ウイルス、HCV突然変異体#3、356ヌクレオチド、ΔIIId(253~279)、18S rRNA結合領域
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=HCV IRES順、ΔIIId(配列番号56)
骨格=Δ5'ASUchl1
突然変異体#3:ΔIIId(253~279)、18S rRNA結合領域
【0056】
(配列番号22)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトC型肝炎ウイルス、HCV突然変異体#4、330ヌクレオチド、ΔIV(331-383)、AUG含有末端配列
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=HCV IRES順、ΔIV(配列番号57)
骨格=Δ5'ASUchl1
突然変異体#4:ΔIV(331-383)、AUG含有末端配列
【0057】
(配列番号23)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトC型肝炎ウイルス、HCV突然変異体#5、383ヌクレオチド、G266→C;単一点突然変異、18S rRNAとの接触
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=HCV IRES順、G266→C(配列番号58)
骨格=Δ5'ASUchl1
突然変異体#5: G266→C;単一点突然変異、18S rRNAとの接触
【0058】
(配列番号24)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトC型肝炎ウイルス、HCV突然変異体#6、383ヌクレオチド、U228→C; HCV IRESの別の部位での対照単一点突然変異は、開始前複合体の形成を破壊することなく、IRES活性を減少させる。
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=HCV IRES順、U228→C(配列番号59)
骨格=Δ5'ASUchl1
突然変異体#6: U228→C; HCV IRESの別の部位での対照単一点突然変異は、開始前複合体の形成を破壊することなく、IRES活性を減少させる。突然変異バージョンは、eIF3に対する親和性が低下している。
【0059】
(配列番号25)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトC型肝炎ウイルス、HCV突然変異体#7、383ヌクレオチド、G267→C; IIIdループ、単一点突然変異、18S rRNAとの接触
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=HCV IRES順、G267→C(配列番号60)
骨格=Δ5'ASUchl1
突然変異体#7: G267→C; IIIdループ、単一点突然変異、18S rRNAとの接触
【0060】
(配列番号26)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトC型肝炎ウイルス、HCV突然変異体#8、383ヌクレオチド、G268→C; IIIdループ、単一点突然変異、18S rRNAとの接触
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=HCV IRES順、G268→C(配列番号61)
骨格=Δ5'ASUchl1
突然変異体#8: G268→C; IIIdループ、単一点突然変異、18S rRNAとの接触
【0061】
(配列番号27)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトC型肝炎ウイルス、HCV突然変異体#9、383ヌクレオチド、G266G267G268→C266C267C268; IIIdループ、三重点突然変異、18S rRNAとの接触
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=HCV IRES順、G266G267G268→C266C267C268(配列番号62)
骨格=Δ5'ASUchl1
突然変異体#9: G266G267G268→C266C267C268; IIIdループ、三重点突然変異、18S rRNAとの接触
【0062】
(配列番号28)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトC型肝炎ウイルス、HCV突然変異体#10、383ヌクレオチド、G266→A/G268→T;二重点突然変異;感染力の低いHCV 5a分離株
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=HCV IRES順、G266→A/G268→T(配列番号63)
骨格=Δ5'ASUchl1
突然変異体#10: G266→A/G268→T;二重点突然変異;感染力の低いHCV 5a分離株
【0063】
(配列番号29)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトC型肝炎ウイルス、HCV突然変異体#11、383ヌクレオチド、IIIa→IIIa-comp; AGTA→TCAT
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=HCV IRES順、IIIa→IIIa-comp; AGTA→TCAT(配列番号64)
骨格=Δ5'ASUchl1
突然変異体#11: HCV IRES順、IIIa→IIIa-comp; AGTA→TCAT)
【0064】
(配列番号30)
定義: IRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトC型肝炎ウイルス、HCV突然変異体#12、383ヌクレオチド、IIe→IIIe-comp; TGATAG→ACTATC
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=HCV IRES順、IIIe→IIIe-comp; TGATAG→ACTATC(配列番号65)
骨格=Δ5'ASUchl1
突然変異体#12: HCV IRES順、IIIe→IIIe-comp; TGATAG→ACTATC
【0065】
(配列番号31)
定義: ミニIRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトC型肝炎ウイルス、HCV、383ヌクレオチド、順向き
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRES HCV(383ntds)(配列番号36)
IRESの向き:順
【0066】
(配列番号32)
定義: ミニIRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトポリオウイルス、312ヌクレオチド、順向き
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRESポリオウイルス(312ntds)(配列番号38)
IRESの向き:順
【0067】
(配列番号33)
定義: ミニIRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトポリオウイルス、312ヌクレオチド、逆向き
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRESポリオウイルス(312ntds)(配列番号39)
IRESの向き:逆(逆相補体)
【0068】
(配列番号34)
定義: ミニIRUP機能性核酸分子
IRES:細胞IRES、ヒトc-MYC、48ヌクレオチド、順向き)(Ensembl: ENSG00000136997; MIM:190080)
特徴: BD=DJ-1s(-40/+4)
ED=IRES c-MYC(48ntds)(配列番号50)
IRESの向き:順
【0069】
(配列番号35)
定義: ミニIRUP機能性核酸分子
IRES:ウイルスIRES、ヒトC型肝炎ウイルス、HCV、383ヌクレオチド、順向き
特徴: BD=GFP(-40/+32)
ED=IRES HCV(383ntds)(配列番号36)
IRESの向き:順
【0070】
本発明によるDNA分子は、上に開示されているトランス作用型機能性核酸分子のいずれかをコードする。
【0071】
本発明による発現ベクターは、上記の該DNA分子を含む。特に、以下のプラスミドが、機能性核酸分子の効率的な発現に使用されている。
【0072】
(哺乳動物発現プラスミド:)
プラスミド名: pCS2+
発現: CMVie92プロモーター
SV40ポリAターミネーター
プラスミド名: pCDN3.1(-)
発現: CMVプロモーター
BGHターミネーター
プラスミド名: pDUAL-eGFPΔ(peGFP-C1から修飾)
発現: H1プロモーター; CMVプロモーター
BGHターミネーター; SV40ターミネーター
【0073】
(ウイルスベクター:)
ベクター名: pAAV
ウイルス:アデノ随伴ウイルス
発現: CAGプロモーター/CMVエンハンサー
SV40ポリAターミネーター
ベクター名: pLVX-TetOne-Puro
ウイルス:レンチウイルス
発現: TRE3Gプロモーター(誘導性発現)
SV40ポリAターミネーター
【0074】
実施された実験により、トランス作用型機能性核酸分子の機能が使用されるプラスミドによる影響を受けないことが強調されたということに留意すべきである。
【0075】
本発明によるタンパク質翻訳の増強方法は、細胞に、上に開示されているトランス作用型機能性核酸分子又はDNA分子又は発現ベクターをトランスフェクトすることを含む。
【0076】
本発明による組成物は、上に開示されているトランス作用型機能性核酸分子又はDNA分子又は発現ベクターを含む。トランス作用型機能性核酸分子は、裸のRNA、RNA安定性を増大させるように適合された修飾を任意に含むRNAとして送達することができる。それに代わるものとして、トランス作用型機能性核酸分子は、一連の脂質ベースのナノ粒子中にカプセル化されたインビトロ転写RNA又はエキソソームベースの粒子中にカプセル化されたインビトロ転写RNAであることができる。
【0077】
上に開示されているトランス作用型機能性核酸分子又はDNA分子又は発現ベクターは、標的mRNA配列の翻訳を増強するために使用することができる。これらの例は、PARK7/DJ-1(DJ-1とも呼ばれる)及びGFPという2つの異なる標的mRNA配列の翻訳の増強を示しているが、任意の他のmRNA配列を、mRNAレベルに影響を与えることなく、うまく標的とすることができる。
【0078】
IRUPが、それ自体のmRNA量に影響を与えることなく、対象遺伝子の翻訳を増強することができることに留意すべきである。
【0079】
したがって、上に開示されているトランス作用型機能性核酸分子又はDNA分子又は発現ベクターは、細胞における遺伝子機能を検証するための及び組換えタンパク質生産のパイプラインを実装するための分子ツールとしてうまく使用することができる。
【0080】
上に開示されているトランス作用型機能性核酸分子又はDNA分子又は発現ベクターは、タンパク質コードmRNAの下方調節によって引き起こされる遺伝性疾患又はあるタンパク質コードmRNAのレベルの低下が害を及ぼす散発性疾患を治療するために使用することができる。以下は、そのような疾患の例である。ハプロ不全は、正常な表現型が両方のアレルのタンパク質産物を必要とし、かつ遺伝子機能の50%又はそれ未満への低下が異常な表現型をもたらすときに生じる状態である。これは、特定のタイプの癌、運動失調症、及び発生プログラムの不具合による疾患を含む広範囲の疾患の原因である。多くの希少疾患は、遺伝子量の低下をもたらす突然変異又は微小欠失によって引き起こされる。転写因子、シナプスタンパク質、及びクロマチン再構築酵素は、遺伝子量に対して特に感受性が高いように思われる。遺伝子発現の低下は、加齢時に観測することもできる。
【実施例】
【0081】
(実施例)
(実施例1)
図2は、埋め込まれたエフェクタードメイン(ED)が内在性ヒトDJ-1 mRNAを標的とするアンチセンス長鎖非コードRNA(lncRNA)の翻訳上方調節機能に必要とされることを示している。
【0082】
図2Aは、標的特異的mRNAの翻訳を上方調節する機能性アンチセンスlncRNA分子の模式図を示している。SINE B2ファミリーの埋め込まれたマウス転移エレメントを使用しているもとの分子が示されている(SINEUP)。SINEUPの機能ドメインがハイライトされている: SINEUP結合ドメイン(BD):センスタンパク質コードmRNAに対してアンチセンスの向きでオーバーラップするSINEUP配列; SINEUPエフェクタードメイン(ED):タンパク質合成の活性化を付与するSINEUPの非オーバーラップ部分の逆向きSINEB2エレメント(SINE)。センス及びアンチセンスRNA分子の5'から3'への向きが示されている。標的特異的mRNAは、5'非翻訳領域(5'UTR)、コード配列(CDS)、及び3'非翻訳領域(3'UTR)を含む。翻訳開始AUGコドンも示されている。
【0083】
内在性ヒトDJ-1 mRNA(SINEUP-DJ-1)を標的とするように、合成SINEUPを設計した。結合ドメインを欠くSINEUP-DJ-1突然変異体(ΔBD)又はエフェクタードメインを欠くSINEUP-DJ-1突然変異体(ΔED)を作製した。ヒト胎児腎臓(HEK)293T/17細胞をSINEUP-DJ-1全長(FL)又はその欠失突然変異体(ΔED=エフェクタードメインを欠失した突然変異体、ΔBD=結合ドメインを欠失した突然変異体)をコードするプラスミドでトランスフェクトした。対照細胞を空の対照プラスミド(-)でトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、細胞を溶解させ、タンパク質量を確保するために処理した。抗DJ-1抗体を用いて、ウェスタンブロット(
図2B)を実施した。β-アクチンをローディング対照として使用した。誘導倍率をβ-アクチンに対して及び空の対照試料に対して正規化したウェスタンブロット画像上で計算した。
【0084】
トランスフェクトした細胞からRNAを精製した。内在性DJ-1 mRNA及びSINEUP RNAの発現を、特異的プライマーを用いるqRT-PCRによりモニタリングした(
図2C)。データは、平均±標準偏差を示している。データは、N=5の独立した反復実験を代表するものである。
【0085】
図2Dは、HEK 293T/17細胞の内在性DJ-1 mRNAに対するSINEUP-DJ-1 FL、ΔBD、及びΔED翻訳増強活性のグラフ表示を示している(N=5)。p<0.05
【0086】
(実施例2)
合成IRUPを、次のように、内在性ヒトDJ-1 mRNAを標的とするように設計した。
図3に示されているように、もとのSINE B2配列をIRES活性を有するヒトウイルス又はヒトmRNAに由来するIRES配列と交換することにより、IRES含有機能性核酸分子を作製した。
【0087】
表1は、本発明によるトランス作用型機能性核酸分子において使用されるIRES配列の一部のリストを含む。
【0088】
IRES名、IRESの起源、クローニングの向き、及びIRESの長さが表示されている。
表1
【表1】
【0089】
図4は、IRES含有機能性アンチセンス核酸分子の翻訳上方調節活性を試験するための実験手順の模式図を示している。翻訳活性化用のアンチセンス機能性核酸分子を、ヒトDJ-1オーバーラップ配列(結合ドメイン)及びIRES配列(エフェクタードメイン)を用いて作製した。IRES含有機能性核酸分子をインビトロ培養下の哺乳動物細胞における発現用の哺乳動物発現ベクターにクローニングした。内在性量のヒトDJ-1 mRNAを発現する細胞を使用した。細胞播種、細胞トランスフェクション、及び採取のタイミングが示されている。細胞を採取して、RNA(定量的リアルタイムPCR、qRT-PCR用)及びタンパク質(ウェスタンブロット、WB用)を精製した。
【0090】
図5Aは、エフェクタードメインがヒトC型肝炎ウイルス(HCV)由来のIRES配列であるトランス作用型機能性核酸分子の模式図を示している。機能性核酸分子の5'から3'への向きに対して順向きにクローニングされたHCV IRES配列(HCV(d)-配列番号1)又は逆向きにクローニングされたHCV IRES配列(HCV(i)-配列番号2)を有するIRES含有機能性核酸分子を作製した。
【0091】
HEK 293T/17細胞を、表示されているような、順向き(d)又は逆向き(i)のHCV IRES配列を有するIRES含有機能性核酸分子をコードするプラスミドでトランスフェクトした。対照細胞を空の対照プラスミド(-)でトランスフェクトした。SINEUP-DJ-1でトランスフェクトした細胞を、IRES含有分子の効力を試験するための参照として使用した。トランスフェクションから48時間後、細胞を溶解させ、タンパク質量を確保するために処理した。抗DJ-1抗体を用いて、ウェスタンブロット(
図5B)を実施した。β-アクチンをローディング対照として使用した。誘導倍率をβ-アクチンに対して及び空の対照試料に対して正規化したウェスタンブロット画像上で計算した。IRES含有機能性核酸分子の効力は、SINE含有機能性核酸分子に対して、より高いか又は同様であった。
【0092】
トランスフェクトした細胞からRNAを精製した。内在性DJ-1 mRNA及びIRUP RNAの発現を、特異的プライマーを用いるqRT-PCRによりモニタリングした(
図5C)。SINE含有及びIRES含有機能性核酸分子にわたるRNA量を比較するために、プライマーをエフェクタードメインの3'末端に位置付けた。データは、平均±標準偏差を示している。データは、N>5の独立した反復実験を代表するものである。
【0093】
(実施例3)
図6Aは、エフェクタードメインがヒトポリオウイルス由来のIRES配列であるトランス作用型機能性核酸分子の模式図を示している。機能性核酸分子の5'から3'への向きに対して順向きにクローニングされたポリオIRES配列(ポリオ(d)-配列番号3)又は逆向きにクローニングされたポリオIRES配列(ポリオ(i)-配列番号4)を有するIRES含有機能性核酸分子を作製した。
【0094】
HEK 293T/17細胞を、表示されているような、順向き(d)又は逆向き(i)のポリオIRES配列を有するIRES含有機能性核酸分子をコードするプラスミドでトランスフェクトした。対照細胞を空の対照プラスミド(-)でトランスフェクトした。SINEUP-DJ-1でトランスフェクトした細胞を、IRES含有分子の効力を試験するための参照として使用した。トランスフェクションから48時間後、細胞を溶解させ、タンパク質量を確保するために処理した。抗DJ-1抗体を用いて、ウェスタンブロット(
図6B)を実施した。β-アクチンをローディング対照として使用した。誘導倍率をβ-アクチンに対して及び空の対照試料に対して正規化したウェスタンブロット画像上で計算した。IRES含有機能性核酸分子の効力は、SINE含有機能性核酸分子よりも高かった。
【0095】
トランスフェクトした細胞からRNAを精製した。内在性DJ-1 mRNA及びIRUP RNAの発現を、特異的プライマーを用いるqRT-PCRによりモニタリングした(
図6C)。SINE含有及びIRES含有機能性核酸分子にわたるRNA量を比較するために、プライマーをエフェクタードメインの3'末端に位置付けた。データは、平均±標準偏差を示している。データは、N>5の独立した反復実験を代表するものである。
【0096】
(実施例4)
図7Aは、エフェクタードメインが、それぞれ、ヒト脳心筋炎ウイルス(EMCV)由来のIRES配列及びクリケット麻痺ウイルス(CrPV)由来のIRES配列であるトランス作用型機能性核酸分子の模式図を示している。機能性核酸分子の5'から3'への向きに対して順向きにクローニングされたEMCV IRES配列(EMCV(d)-配列番号5)又は逆向きにクローニングされたEMCV IRES配列(EMCV(i)-配列番号6)を有するIRES含有機能性核酸分子及び機能性核酸分子の5'から3'への向きに対して順向きにクローニングされたCrPV IRES配列(CrPV(d)-配列番号7)又は逆向きにクローニングされたCrPV IRES配列(CrPV(i)-配列番号8)を有するIRES含有機能性核酸分子を作製した。
【0097】
HEK 293T/17細胞を、表示されているような、順向き(d)又は逆向き(i)のEMCV及びCrPV IRES配列を有するIRES含有機能性核酸分子をコードするプラスミドでトランスフェクトした。対照細胞を空の対照プラスミド(-)でトランスフェクトした。SINEUP-DJ-1でトランスフェクトした細胞を、IRES含有分子の効力を試験するための参照として使用した。トランスフェクションから48時間後、細胞を溶解させ、タンパク質量を確保するために処理した。抗DJ-1抗体を用いて、ウェスタンブロット(
図7B)を実施した。β-アクチンをローディング対照として使用した。誘導倍率をβ-アクチンに対して及び空の対照試料に対して正規化したウェスタンブロット画像上で計算した。IRES含有機能性核酸分子の効力は、SINE含有機能性核酸分子よりも高かった。
【0098】
トランスフェクトした細胞からRNAを精製した。内在性DJ-1 mRNA及びIRUP RNAの発現を、特異的プライマーを用いるqRT-PCRによりモニタリングした(
図7C)。SINE含有及びIRES含有機能性核酸分子にわたるRNA量を比較するために、プライマーをエフェクタードメインの3'末端に位置付けた。データは、平均±標準偏差を示している。データは、N>5の独立した反復実験を代表するものである。
【0099】
(実施例5)
空ベクターをトランスフェクトしたHEK 293T/17細胞と比べた、実施例2のHCV(d)及びHCV(i) IRUP、実施例3のポリオ(d)及びポリオ(i) IRUP、並びに実施例4のEMCV(d)、EMCV(i)、CrPV(d)、及びCrPV(i) IRUPでトランスフェクトしたHEK 293T/17細胞における内在性DJ-1タンパク質の量の増加をウェスタンブロットにより測定した。
【0100】
結果は、
図8A及び8Bにまとめられている。明らかなように、IRES含有機能性核酸分子は、翻訳をトランスに活性化し、SINE含有分子よりも活性が高い。データは、N>5の生物学的反復実験の平均及び標準偏差を表している。単一のアステリスク(*)は、空の対照細胞と比べて統計的に有意なトランスの翻訳増強活性を有するIRES配列を示し;二重のアステリスク(**)は、SINE含有機能性核酸分子と比べて統計的に有意な効力の増大を示すIRES配列を示す。
【0101】
(実施例6)
図9Aは、エフェクタードメインがヒトアポトーシスペプチダーゼ活性化因子1(Apaf-1) mRNA由来のIRES配列であるトランス作用型機能性核酸分子の模式図を示している。機能性核酸分子の5'から3'への向きに対して順向きにクローニングされたApaf-1 IRES配列(Apaf-1(d)-配列番号9)又は逆向きにクローニングされたApaf-1 IRES配列(Apaf-1(i)-配列番号10)を有するIRES含有機能性核酸分子を作製した。
【0102】
HEK 293T/17細胞を、表示されているような、順向き(d)又は逆向き(i)のApaf-1 IRES配列を有するIRES含有機能性核酸分子をコードするプラスミドでトランスフェクトした。対照細胞を空の対照プラスミド(-)でトランスフェクトした。SINEUP-DJ-1でトランスフェクトした細胞を、IRES含有分子の効力を試験するための参照として使用した。トランスフェクションから48時間後、細胞を溶解させ、タンパク質量を確保するために処理した。抗DJ-1抗体を用いて、ウェスタンブロット(
図9B)を実施した。β-アクチンをローディング対照として使用した。誘導倍率をβ-アクチンに対して及び空の対照試料に対して正規化したウェスタンブロット画像上で計算した。IRES含有機能性核酸分子の効力は、SINE含有機能性核酸分子に対して、より高いか又は同様であった。
【0103】
トランスフェクトした細胞からRNAを精製した。内在性DJ-1 mRNA及びIRUP RNAの発現を、特異的プライマーを用いるqRT-PCRによりモニタリングした(
図9C)。SINE含有及びIRES含有機能性核酸分子にわたるRNA量を比較するために、プライマーをエフェクタードメインの3'末端に位置付けた。データは、平均±標準偏差を示している。データは、N>5の独立した反復実験を代表するものである。
【0104】
(実施例7)
図10Aは、エフェクタードメインがヒトのゲノム不安定性レベル増強1(ELG-1) mRNA由来のIRES配列であるトランス作用型機能性核酸分子の模式図を示している。機能性核酸分子の5'から3'への向きに対して順向きにクローニングされたELG-1 IRES配列(ELG-1(d)-配列番号11)又は逆向きにクローニングされたELG-1 IRES配列(ELG-1(i)-配列番号12)を有するIRES含有機能性核酸分子を作製した。
【0105】
HEK 293T/17細胞を、表示されているような、順向き(d)又は逆向き(i)のELG-1 IRES配列を有するIRES含有機能性核酸分子をコードするプラスミドでトランスフェクトした。対照細胞を空の対照プラスミド(-)でトランスフェクトした。SINEUP-DJ-1でトランスフェクトした細胞を、IRES含有分子の効力を試験するための参照として使用した。トランスフェクションから48時間後、細胞を溶解させ、タンパク質量を確保するために処理した。抗DJ-1抗体を用いて、ウェスタンブロット(
図10B)を実施した。β-アクチンをローディング対照として使用した。誘導倍率をβ-アクチンに対して及び空の対照試料に対して正規化したウェスタンブロット画像上で計算した。IRES含有機能性核酸分子の効力は、SINE含有機能性核酸分子に対してより高かった。
【0106】
トランスフェクトした細胞からRNAを精製した。内在性DJ-1 mRNA及びIRUP RNAの発現を、特異的プライマーを用いるqRT-PCRによりモニタリングした(
図10C)。SINE含有及びIRES含有機能性核酸分子にわたるRNA量を比較するために、プライマーをエフェクタードメインの3'末端に位置付けた。データは、平均±標準偏差を示している。データは、N>5の独立した反復実験を代表するものである。
【0107】
(実施例8)
図11Aは、エフェクタードメインがヒトV-Mycトリ骨髄球腫症ウイルス癌遺伝子ホモログ(cMYC) mRNA由来のIRES配列であるトランス作用型機能性核酸分子の模式図を示している。機能性核酸分子の5'から3'への向きに対して順向きにクローニングされたcMYC IRES配列(ロングバリアント)(cMYC全長(d)-配列番号13)又は逆向きにクローニングされたcMYC IRES配列(ロングバリアント)(cMYC全長(i)-配列番号14)を有するIRES含有機能性核酸分子を作製した。
【0108】
HEK 293T/17細胞を、表示されているような、順向き(d)又は逆向き(i)のcMYC IRES配列を有するIRES含有機能性核酸分子をコードするプラスミドでトランスフェクトした。対照細胞を空の対照プラスミド(-)でトランスフェクトした。SINEUP-DJ-1でトランスフェクトした細胞を、IRES含有分子の効力を試験するための参照として使用した。トランスフェクションから48時間後、細胞を溶解させ、タンパク質量を確保するために処理した。抗DJ-1抗体を用いて、ウェスタンブロット(
図11B)を実施した。β-アクチンをローディング対照として使用した。誘導倍率をβ-アクチンに対して及び空の対照試料に対して正規化したウェスタンブロット画像上で計算した。IRES含有機能性核酸分子の効力は、SINE含有機能性核酸分子に対して、より高いか又は同様であった。
【0109】
トランスフェクトした細胞からRNAを精製した。内在性DJ-1 mRNA及びIRUP RNAの発現を、特異的プライマーを用いるqRT-PCRによりモニタリングした(
図11C)。SINE含有及びIRES含有機能性核酸分子にわたるRNA量を比較するために、プライマーをエフェクタードメインの3'末端に位置付けた。データは、平均±標準偏差を示している。データは、N>5の独立した反復実験を代表するものである。
【0110】
(実施例9)
図12Aは、エフェクタードメインが実施例8のヒトV-Mycトリ骨髄球腫症ウイルス癌遺伝子ホモログ(cMYC) mRNA由来のIRES配列のより短いバージョンであるトランス作用型機能性核酸分子の模式図を示している。機能性核酸分子の5'から3'への向きに対して順向きにクローニングされたcMYC IRES配列(ショートバリアント)(cMYCショートバリアント(d)-配列番号15)又は逆向きにクローニングされたcMYC IRES配列(ショートバリアント)(cMYCショートバリアント(i)-配列番号16)を有するIRES含有機能性核酸分子を作製した。
【0111】
HEK 293T/17細胞を、表示されているような、順向き(d)又は逆向き(i)のcMYC IRES配列を有するIRES含有機能性核酸分子をコードするプラスミドでトランスフェクトした。対照細胞を空の対照プラスミド(-)でトランスフェクトした。SINEUP-DJ-1でトランスフェクトした細胞を、IRES含有分子の効力を試験するための参照として使用した。トランスフェクションから48時間後、細胞を溶解させ、タンパク質量を確保するために処理した。抗DJ-1抗体を用いて、ウェスタンブロット(
図11B)を実施した。β-アクチンをローディング対照として使用した。誘導倍率をβ-アクチンに対して及び空の対照試料に対して正規化したウェスタンブロット画像上で計算した。IRES含有機能性核酸分子の効力は、SINE含有機能性核酸分子に対して、より高いか又は同様であった。
【0112】
トランスフェクトした細胞からRNAを精製した。内在性DJ-1 mRNA及びIRUP RNAの発現を、特異的プライマーを用いるqRT-PCRによりモニタリングした(
図12C)。SINE含有及びIRES含有機能性核酸分子にわたるRNA量を比較するために、プライマーをエフェクタードメインの3'末端に位置付けた。データは、平均±標準偏差を示している。データは、N>5の独立した反復実験を代表するものである。
【0113】
(実施例10)
図13Aは、エフェクタードメインがヒトジストロフィン(DMD) mRNA由来のIRES配列であるトランス作用型機能性核酸分子の模式図を示している。機能性核酸分子の5'から3'への向きに対して順向き(DMD(d)-配列番号17)又は逆向き(DMD(i)-配列番号18)にクローニングされたDMD IRES配列を有するIRES含有機能性核酸分子を作製した。
【0114】
HEK 293T/17細胞を、表示されているような、順向き(d)又は逆向き(i)のDMD IRES配列を有するIRES含有機能性核酸分子をコードするプラスミドでトランスフェクトした。対照細胞を空の対照プラスミド(-)でトランスフェクトした。SINEUP-DJ-1でトランスフェクトした細胞を、IRES含有分子の効力を試験するための参照として使用した。トランスフェクションから48時間後、細胞を溶解させ、タンパク質量を確保するために処理した。抗DJ-1抗体を用いて、ウェスタンブロット(
図13B)を実施した。β-アクチンをローディング対照として使用した。誘導倍率をβ-アクチンに対して及び空の対照試料に対して正規化したウェスタンブロット画像上で計算した。IRES含有機能性核酸分子の効力は、SINE含有機能性核酸分子に対してより高かった。
【0115】
トランスフェクトした細胞からRNAを精製した。内在性DJ-1 mRNA及びIRUP RNAの発現を、特異的プライマーを用いるqRT-PCRによりモニタリングした(
図13C)。SINE含有及びIRES含有機能性核酸分子にわたるRNA量を比較するために、プライマーをエフェクタードメインの3'末端に位置付けた。データは、平均±標準偏差を示している。データは、N>5の独立した反復実験を代表するものである。
【0116】
(実施例11)
空ベクターをトランスフェクトしたHEK 293T/17細胞と比べた、実施例6のApaf-1(d)及びApaf-1(i) IRUP、実施例7のELG-1(d)及びELG-1(i) IRUP、実施例8のcMYC全長(d)及びcMYC全長(i) IRUP、実施例9のcMYCショートバリアント(d)及びcMYCショートバリアント(i) IRUP、並びに実施例10のDMD(d)及びDMD(i) IRUPでトランスフェクトしたHEK 293T/17細胞における内在性DJ-1タンパク質の量の増加をウェスタンブロットにより測定した。
【0117】
結果は、
図14A及び14Bにまとめられている。明らかなように、IRES含有機能性核酸分子は、翻訳をトランスに活性化し、SINE含有分子よりも活性が高い。データは、N>5の生物学的反復実験の平均及び標準偏差を表している。単一のアステリスク(*)は、空の対照細胞と比べて統計的に有意なトランスの翻訳増強活性を有するIRES配列を示し;二重のアステリスク(**)は、SINE含有機能性核酸分子と比べて統計的に有意な有効性の増大を示すIRES配列を示している。
【0118】
(実施例12)
ヒト肝細胞癌(HepG2)細胞を、表示されているような、順向き(d)又は逆向き(i)のHCV(
図15A) IRES配列(配列番号1又は配列番号2)を有するIRES含有機能性核酸分子、順向き(d)又は逆向き(i)のポリオ及びcMYC(
図15B) IRES配列(配列番号3、配列番号4、配列番号13、又は配列番号14)を有するIRES含有機能性核酸分子、順向き(d)又は逆向き(i)のApaf-1及びELG-1(
図15C) IRES配列(配列番号9、配列番号10、配列番号11、又は配列番号12)を有するIRES含有機能性核酸分子、並びに順向き(d)又は逆向き(i)のDMD(
図15D) IRES配列(配列番号17又は配列番号18)を有するIRES含有機能性核酸分子をコードするプラスミドでトランスフェクトした。対照細胞を空の対照プラスミド(-)でトランスフェクトした。SINEUP-DJ-1でトランスフェクトした細胞を、IRES含有分子の効力を試験するための参照として使用した。トランスフェクションから48時間後、細胞を溶解させ、タンパク質量を確保するために処理した。抗DJ-1抗体を用いて、ウェスタンブロットを実施した。β-アクチンをローディング対照として使用した。誘導倍率をβ-アクチンに対して及び空の対照試料に対して正規化したウェスタンブロット画像上で計算した。IRES含有機能性核酸分子の効力は、ほとんどの場合、SINE含有機能性核酸分子よりも高かった。
【0119】
(実施例13)
空ベクターでトランスフェクトしたHepG2細胞と比べた、HCV(d)及びHCV(i) IRUP、ポリオ(d)及びポリオ(i) IRUP、並びにcMYCショートバリアント(d)及びcMYCショートバリアント(i) IRUP、Apaf-1(d)及びApaf-1(i) IRUP、ELG-1(d)及びELG-1(i) IRUP、DMD(d)及びDMD(i) IRUPでトランスフェクトしたHepG2細胞における内在性DJ-1タンパク質の量の増加をウェスタンブロットにより測定した。
【0120】
結果は、
図16A~16Bにまとめられている。IRES含有機能性核酸分子は、翻訳をトランスに活性化し、SINE含有分子よりも活性が高い。データは、N>2の生物学的反復実験の平均及び標準偏差を表している。
【0121】
(実施例14)
図17Aは、エフェクタードメインが、HCV、ポリオウイルス、又はcMYCショートバージョン由来のIRES配列である、小型バージョンのトランス作用型機能性核酸分子(ミニIRUP)の模式図を示している。哺乳動物細胞におけるRNAポリメラーゼIIによる発現のためのSV40系プロモーターの制御下に、順向きにクローニングされたHCV IRES配列(HCV(d)-配列番号31)を有するIRES含有機能性核酸分子、順向きにクローニングされたポリオIRES配列(ポリオ(d)-配列番号32)及び逆向きにクローニングされたポリオIRES配列(ポリオ(i)-配列番号33)を有するIRES含有機能性核酸分子、並びに順向きにクローニングされたcMYCショートIRES配列(cMYCショートバリアント(d)-配列番号34)を有するIRES含有機能性核酸分子を作製した。
【0122】
HEK 293T/17細胞を、表示されているような、上記の該ミニIRES含有機能性核酸分子をコードするプラスミドでトランスフェクトした。対照細胞を空の対照プラスミド(-)でトランスフェクトした。SINEUP-DJ-1でトランスフェクトした細胞を、IRES含有分子の効力を試験するための参照として使用した。トランスフェクションから48時間後、細胞を溶解させ、タンパク質量を確保するために処理した。抗DJ-1抗体を用いて、ウェスタンブロット(
図17B)を実施した。β-アクチンをローディング対照として使用した。誘導倍率をβ-アクチンに対して及び空の対照試料に対して正規化したウェスタンブロット画像上で計算した。ミニIRES含有機能性核酸分子の効力は、SINE含有機能性核酸分子よりも高かった。
【0123】
トランスフェクトした細胞からRNAを精製した。内在性DJ-1 mRNA及びミニ-IRUP RNAの発現を、特異的プライマーを用いるqRT-PCRによりモニタリングした(
図17C)。
【0124】
図17Dは、HEK 293T/17細胞の内在性DJ-1 mRNAに対するSINEUP-DJ-1及びミニ-IRUP翻訳増強活性のグラフ表示を示している(N=6)。
【0125】
(実施例15)
図18Aは、エフェクタードメインが、HCV、ポリオウイルス、又はcMYCショートバージョン由来のIRES配列である、小型バージョンのトランス作用型機能性核酸分子(ミニIRUP)の模式図を示している。哺乳動物細胞におけるRNAポリメラーゼIIIによる発現のためのH1系プロモーターの制御下に、順向きにクローニングされたHCV IRES配列(HCV(d)-配列番号31)を有するIRES含有機能性核酸分子、順向きにクローニングされたポリオIRES配列(ポリオ(d)-配列番号32)及び逆向きにクローニングされたポリオIRES配列(ポリオ(i)-配列番号32)を有するIRES含有機能性核酸分子、並びに順向きにクローニングされたcMYCショートIRES配列(cMYCショートバージョン(d)-配列番号34)を有するIRES含有機能性核酸分子を作製した。
【0126】
HEK 293T/17細胞を、表示されているような、上記の該ミニIRES含有機能性核酸分子をコードするプラスミドでトランスフェクトした。対照細胞を空の対照プラスミド(-)でトランスフェクトした。SINEUP-DJ-1でトランスフェクトした細胞を、IRES含有分子の効力を試験するための参照として使用した。トランスフェクションから48時間後、細胞を溶解させ、タンパク質量を確保するために処理した。抗DJ-1抗体を用いて、ウェスタンブロット(
図18B)を実施した。β-アクチンをローディング対照として使用した。誘導倍率をβ-アクチンに対して及び空の対照試料に対して正規化したウェスタンブロット画像上で計算した。ミニIRES含有機能性核酸分子の効力は、SINE含有機能性核酸分子に対して、より高かった(1つの例では同様であった)。
【0127】
トランスフェクトした細胞からRNAを精製した。内在性DJ-1 mRNA及びミニ-IRUP RNAの発現を、特異的プライマーを用いるqRT-PCRによりモニタリングした(
図18C)。
【0128】
図18Dは、HEK 293T/17細胞の内在性DJ-1 mRNAに対するSINEUP-DJ-1及びミニ-IRUP 翻訳増強活性のグラフ表示を示している(N=6)。
【0129】
(実施例16)
図19Aは、哺乳動物細胞における2つの対象遺伝子の同時発現のためのpDUAL-GFPプラスミドの模式図を示している。pDUAL-GFPプラスミドは、RNAポリメラーゼIIによるGFP mRNAの発現のためのCMVプロモーターエレメント及びGFP翻訳増強用の小型バージョンのGFP標的化機能性核酸分子の発現のためのH1プロモーター(反対の向き)を含有する。翻訳エンハンサー機能性核酸分子及び基本発現レベルのGFPタンパク質を欠く対照プラスミドを産生する。エフェクタードメインが、表示されているように、SINE B2配列によって又はHCV IRESによって表される、pDUAL-GFP/ミニGFPプラスミドを作製した。
【0130】
HEK 293T/17細胞を、GFPのみ又はSINE含有ミニ機能性核酸分子(SINE)もしくはIRES含有ミニ機能性核酸分子(IRES)と組み合わせたGFPをコードするpDUALプラスミドでトランスフェクトした。pDUAL-GFPのみでトランスフェクトした細胞をIRES含有分子の効力を試験するための参照として使用した。トランスフェクションから48時間後、細胞を溶解させ、タンパク質量を確保するために処理した。抗GFP抗体を用いて、ウェスタンブロット(
図19B)を実施した。β-アクチンをローディング対照として使用した。
【0131】
トランスフェクトした細胞からRNAを精製した。過剰発現されたGFP mRNA(
図19C)及び機能性核酸SINE又はIRES RNA(
図19D)の発現を、特異的プライマーを用いるqRT-PCRによりモニタリングした。
【0132】
結果は、GFPをHEK 293T/17細胞で過剰発現させたとき、GFP mRNAに対してアンチセンスの結合ドメインを担持するIRES含有機能性核酸分子がGFP mRNAの翻訳を増強することを示している。
【0133】
(実施例17)
図20Aは、エフェクタードメインがSINE又はHCV IRES配列によって表される、GFP標的化機能性核酸分子を有するpDUAL-GFPプラスミドの模式図を示している。
【0134】
ヒト神経芽細胞腫Neuro2a細胞を、
図20Aに示されているpDUAL-GFPプラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、細胞を溶解させ、タンパク質量を確保するために処理した。抗GFP抗体を用いて、ウェスタンブロット(
図20B)を実施した。β-アクチンをローディング対照として使用した。誘導倍率をβ-アクチンに対して及び空の対照試料に対して正規化したウェスタンブロット画像上で計算した。ミニIRES含有機能性核酸分子の効力は、SINE含有機能性核酸分子よりも高かった。
【0135】
(実施例18)
DJ-1標的化結合ドメイン及びHCV IRES活性にとって重要な構造領域中に特異的な突然変異をシスに保有するHCV IRESエフェクタードメインを含有する機能性核酸分子を設計した。
【0136】
図21は、HCV IRES RNA二次構造の模式的表示を示している。HCV IRES構造ドメイン(IIa、IIb、IIIa、IIIb、IIIc、IIId、IIIe、及びIIIf)は、様々な四角で表示されている。配列の内部リボソーム進入活性のための各々の構造ドメインの機能性も、リボソームRNA及び/又はリボソームタンパク質との接触と合わせて示されている。エフェクタードメインがHCVに由来し、かつDJ-1標的化結合ドメインを含有するIRES配列によって表される機能性核酸分子を突然変異生成の鋳型として使用した。M2突然変異体は、真核生物翻訳開始因子eIF3及びリボソームタンパク質eS27との接触に関与するIIIaステムループ(HCV IRES配列のアミノ酸156~171-IRES=配列番号55; IRUP=配列番号20)の欠失によって作製した。M5突然変異体は、18S rRNAとの塩基対形成及びシスでのHCV IRES活性の基礎となるヌクレオチドG266の部位特異的ヌクレオチド置換(G266→C-IRES=配列番号58; IRUP=配列番号23)によって作製した。
【0137】
(実施例19)
HEK 293T/17細胞を、表示されているような、順向きのHCV IRES配列(WT)を有するか又はHCV IRES DIIIa(M2)もしくはG266→C(M5)突然変異体を有するIRES含有機能性核酸分子をコードする哺乳動物発現プラスミドでトランスフェクトした。対照細胞を空の対照プラスミド(-)でトランスフェクトした。SINEUP-DJ-1でトランスフェクトした細胞を、IRES含有分子の効力を試験するための参照として使用した。トランスフェクションから48時間後、細胞を溶解させ、タンパク質量を確保するために処理した。抗DJ-1抗体を用いて、ウェスタンブロット(
図22A)を実施した。β-アクチンをローディング対照として使用した。誘導倍率をβ-アクチンに対して及び空の対照試料に対して正規化したウェスタンブロット画像上で計算した。WT及び突然変異型IRES含有機能性核酸分子の効力は、SINE含有機能性核酸分子に対して、より高いか又は同様であった。
【0138】
トランスフェクトした細胞からRNAを精製した。内在性DJ-1 mRNA及び機能性核酸RNAの発現を、特異的プライマーを用いるqRT-PCRによりモニタリングした(
図22B)。SINE含有及びIRES含有機能性核酸分子にわたるRNA量を比較するために、プライマーをエフェクタードメインの3'末端に位置付けた。データは、平均±標準偏差を示している。
【0139】
図22Cは、HEK 293T/17細胞の内在性DJ-1 mRNAに対するSINE又はHCV IRES埋め込み配列を有する機能性核酸分子の翻訳増強活性のグラフ表示を示している(N=7)。二重のアステリスク(**)は、WT HCV IRES含有機能性核酸分子と比べて統計的に有意な翻訳増強の低下を示す突然変異体IRES配列を示している。
【0140】
本実施例は、シスでのHCV IRES活性に必要とされる構造エレメントが、DJ-1標的化結合ドメインを含有する機能性核酸分子中の埋め込まれたエフェクタードメイン(ED)として、トランスでのHCV IRESの翻訳増強活性の増大に寄与することを示している。
【0141】
(実施例20)
本実施例は、標的mRNA中の任意の核酸配列がIRES由来配列を含有する機能性核酸分子の結合ドメインによって認識されることができることを示している。
【0142】
図23Aは、IRES配列の5'にあり、かつIRES含有細胞mRNAの内部にある配列を結合ドメインとみなすことができる方法の模式的表示を示しており、
図23Bは、cMYC mRNA参照配列(NM_002467)内の機能性核酸配列エレメントを示している。
【0143】
図23Cは、アンチセンスの向きで部分的にオーバーラップする標的mRNAタンパク質コード配列を同定するために、c-MYC mRNAをクエリー配列として用いるバイオインフォマティクス解析(BLAST)の結果を示している。表中、アノテーションされた遺伝子のENSEMBL命名法、遺伝子名、及び遺伝子対形成領域が表示されている。IRES由来結合ドメインは、5'UTR、第一エキソン、内部エキソンにあり、かつ18~198の範囲の様々な対形成の長さを有する標的mRNAとアンチセンスの向きでオーバーラップすることができる
【0144】
哺乳動物SAOS細胞を、MYCの全長mRNA(cMYC-FL)をコードする哺乳動物発現プラスミドでトランスフェクトした(
図24A)。対照細胞を空ベクタープラスミド(対照)でトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、細胞を溶解させ、タンパク質量を確保するために処理した。表示されているような抗JAG2、抗DYRK2、抗LYS、抗UBE3A、抗NRF1抗体を用いて、ウェスタンブロット(
図24B)を実施した。β-アクチンをローディング対照として使用した。抗cMYC抗体を、トランスフェクション後のcMYCタンパク質の発現を確認するためのさらなる対照として使用した。誘導倍率をβ-アクチンに対して及び空の対照試料(C)に対して正規化したウェスタンブロット画像上で計算した。cMYC IRES含有機能性核酸分子の効力は、144ヌクレオチド長(JAG2)から20ヌクレオチド長(UBE3A、NRF1)の範囲の結合ドメインを有する、試験した全ての標的mRNAについて明らかであった。
【0145】
トランスフェクトした細胞からRNAを精製した。内在性JAG2、DYRK2、LIS1、UBE3A、NRF1、及びcMYC mRNAの発現を、特異的プライマーを用いるqRT-PCRによりモニタリングした(
図24C及び
図24D)。
【0146】
本実施例は、IRES含有機能性核酸分子の結合ドメインと標的タンパク質コードmRNAの間の対形成領域が、その完全な翻訳増強活性を保持しながら、位置及び長さに関して様々に異なり得ることを示している。
【0147】
(実施例21)
本実施例は、部分的にオーバーラップするタンパク質コードmRNAの翻訳を増大させるために、cMYCのタンパク質コードCDS部分及びDNA結合ドメインがIRES含有機能性核酸分子に必要とされないことを示している。
【0148】
哺乳動物SAOS細胞を、MYCの全長mRNA(cMYC-FL)又はcMYC DNA結合ドメインを欠くバリアント(ΔC)及び5'UTRのみのドメインから構成されるバリアント(5'UTR)もしくはIRESのみのドメインから構成されるバリアント(IRES)をコードする哺乳動物発現プラスミドでトランスフェクトした(
図25A)。対照細胞を空ベクタープラスミド(対照)でトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、細胞を溶解させ、タンパク質量を確保するために処理した。表示されているような抗JAG2、抗DYRK2、抗LYS、抗UBE3A、抗NRF1抗体を用いて、ウェスタンブロット(
図25B)を実施した。β-アクチンをローディング対照として使用した。抗cMYC抗体を、トランスフェクション後のcMYCタンパク質の発現を確認するためのさらなる対照として使用した。誘導倍率をβ-アクチンに対して及び空の対照試料に対して正規化したウェスタンブロット画像上で計算した。対照細胞と比べたタンパク質量の変化倍率は、ウェスタンブロット画像の下に表示されている。
【0149】
トランスフェクトした細胞からRNAを精製した。内在性JAG2、DYRK2、LIS1、UBE3A、NRF1、及びcMYC mRNAの発現を、特異的プライマーを用いるqRT-PCRによりモニタリングし(
図25C)、IRES含有機能性核酸分子の転写後機構を提供した。
【0150】
(利点)
本発明のトランス作用型機能性核酸分子は、標的mRNAレベルに影響を与えることなく、ほとんど全ての標的mRNA配列の翻訳を増強することを可能にする。
【0151】
EP 2691522号に開示されている機能性核酸分子に関して、本発明の機能性核酸分子は、マウスSINE配列に起因するレトロトランスポジションのリスクを回避し、実施例2~11においてはHEK 293T/17で、実施例12においてはHepG2細胞で示されているように、より高いレベルのタンパク質翻訳の増強を促進する。特に、より効力のあるIRES配列の例は、
図5(HCV IRES、順)、
図6(ポリオIRES、順及び逆)、
図7(ECMV IRES、順及び逆; CrPV IRES、順及び逆)、
図9(Apaf1 IRES、順)、
図10(ELG-1 IRES、順及び逆)、
図11(cMYC IRES、順)、
図12(ショートcMYC IRES、順)、
図12(DMD IRES、順及び逆)において、HEK細胞で与えられている。さらに、より効力のあるIRES配列の例は、HepG2細胞でも与えられている(
図15)。
【0152】
いくつかのIRES配列は、40~50ヌクレオチド程度の短さである。このことにより、非常に短いトランス作用型機能性核酸分子の人為的作製が可能になる。
【0153】
さらに、本発明のトランス作用型機能性核酸分子は、特にEP2691522号に開示されている機能性核酸分子と比較して、特に短い標的結合配列を含むことができる。
【0154】
限られた長さの調節配列と標的結合配列はどちらも、分子の長さを短く維持するのに寄与する一方で、最適な標的化及びタンパク質合成の増強を可能にする。短い分子を有することの主な利点の1つは、100ヌクレオチドよりも長いRNAの合成における困難を克服することである。
【0155】
本発明のトランス作用型機能性核酸分子のもう1つの利点は、該分子がモジュール構造を有する、すなわち、独立した標的結合ドメインと独立したエフェクタードメインを有することである。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
-タンパク質翻訳が増強されるべき真核生物標的mRNA配列に逆相補的な配列を含む標的結合配列;及び
-内部リボソーム進入部位(IRES)配列又は内部リボソーム進入部位(IRES)由来配列を含み、かつ該標的mRNA配列の翻訳を増強する調節配列
:を含み、
ここで、該調節配列が該標的結合配列の3'に位置する、
トランス作用型機能性核酸分子。
(態様2)
前記標的結合配列が、3'から5'へと、1~50ヌクレオチドの5'非翻訳領域(5'UTR)及び1~40ヌクレオチドの前記標的mRNA配列のコード配列(CDS)に逆相補的な配列からなる、態様1記載のトランス作用型機能性核酸分子。
(態様3)
前記標的結合配列が、3'から5'へと、10~45ヌクレオチドの5'非翻訳領域(5'UTR)及び2~6ヌクレオチドの前記標的mRNA配列のコード配列(CDS)に逆相補的な配列からなる、態様2記載のトランス作用型機能性核酸分子。
(態様4)
前記IRES配列又はIRES由来配列が、前記トランス作用型機能性核酸分子において、該機能性核酸分子の5'から3'への向きに対して順向きに配向されている、態様1~3のいずれか一項記載のトランス作用型機能性核酸分子。
(態様5)
前記IRES配列又はIRES由来配列が配列番号36~配列番号65からなる群から選択される配列と75%の相同性を有する配列である、態様1~4のいずれか一項記載のトランス作用型機能性核酸分子。
(態様6)
前記IRES配列又はIRES由来配列が配列番号36~配列番号65からなる群から選択される配列と90%の相同性を有する配列である、態様5記載のトランス作用型機能性核酸分子。
(態様7)
前記IRES配列又はIRES由来配列が配列番号36~配列番号65からなる群から選択される配列である、態様6記載のトランス作用型機能性核酸分子。
(態様8)
前記トランス作用型機能性核酸分子がRNA分子又は修飾RNA分子である、態様1~7のいずれか一項記載のトランス作用型機能性核酸分子。
(態様9)
前記標的結合配列と前記調節配列の間にスペーサー配列をさらに含む、態様1~8のいずれか一項記載のトランス作用型機能性核酸分子。
(態様10)
態様1~9のいずれか一項記載のトランス作用型機能性核酸分子をコードするDNA分子。
(態様11)
態様10記載のDNA分子を含む発現ベクター。
(態様12)
タンパク質翻訳を増強する方法であって、細胞に、態様1~9のいずれか一項記載のトランス作用型機能性核酸分子又は態様10記載のDNA分子又は態様11記載の発現ベクターをトランスフェクトすることを含む、前記方法。
(態様13)
態様1~9のいずれか一項記載のトランス作用型機能性核酸分子又は態様10記載のDNA分子又は態様11記載の発現ベクターを含む組成物。
(態様14)
標的mRNA配列の翻訳を増強するための、態様1~9のいずれか一項記載のトランス作用型機能性核酸分子又は態様10記載のDNA分子又は態様11記載の発現ベクターの使用。
(態様15)
タンパク質コードmRNAの下方調節によって引き起こされる遺伝性疾患を治療する際に又は遺伝子量の低下が害を及ぼす遺伝性もしくは散発性疾患を治療する際に使用するための、態様1~9のいずれか一項記載のトランス作用型機能性核酸分子又は態様10記載のDNA分子又は態様11記載の発現ベクター。
【配列表】