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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】精密播種方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   A01C 1/06 20060101AFI20230407BHJP
【FI】
A01C1/06 Z
A01C1/06 M
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020543275
(86)(22)【出願日】2019-02-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2019054119
(87)【国際公開番号】W WO2019162283
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】00212/18
(32)【優先日】2018-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】520222106
【氏名又は名称】シンジェンタ クロップ プロテクション アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】オブリスト ルーカス
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/209217(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0231575(US,A1)
【文献】特開2016-202176(JP,A)
【文献】特開昭61-067407(JP,A)
【文献】特開2000-262112(JP,A)
【文献】特開平06-153643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子のための下の表面上に粒状種子を放出するための播種方法であって、リザーバ容器(10)内に存在する種子(K)は、前記リザーバ容器から取り出され且つ分離され、種子粉衣剤は、前記分離された種子(K)に適用され、及び前記種子粉衣剤が適用された前記分離された種子(K)は、前記種子のための下の表面(B)上に連続的に供給され、前記分離された種子(K)への種子粉衣剤の前記適用は、前記分離された種子(K)が前記種子のための下の表面(B)上に自由落下する間に行われ、前記種子(K)が分離された後、前記種子(K)は、それぞれの分離された種子(K)を検知する少なくとも1つのセンサ(32、33)を過ぎて落下することを可能にされ、前記少なくとも1つのセンサ(32、33)からの出力は、前記分離された種子が前記下の表面(B)上に自由落下している間、前記分離された種子への種子粉衣剤の適用を起動するために使用される、播種方法。
【請求項2】
種子粉衣剤の適用は、起動可能な適用ノズル(34)による、請求項1に記載の播種方法。
【請求項3】
前記種子(K)が分離された後、前記種子(K)は、センサシャフト(31)を通して落下することを可能にされ、前記センサシャフト(31)を通したそれぞれの分離された種子(K)の通過は、前記センサ(32、33)によって検知され、遅延時間(ti)は、計算され、前記遅延時間(ti)は、前記センサシャフト(31)の外部に前記種子(K)の落下線(f)に沿って位置する衝突位置(I)に前記種子(K)が到達するのにかかる時間であり、前記種子(K)への種子粉衣剤の前記適用は、前記計算された遅延時間(ti)に従って前記衝突位置(I)において行われる、請求項1に記載の播種方法。
【請求項4】
起動可能な適用ノズル(34)は、前記種子(K)に種子粉衣剤を適用するために使用され、前記適用ノズル(34)は、それが起動されるたびに、規定量の種子粉衣剤を噴霧軌道(j)に沿って射出し、前記衝突位置(I)は、種子(K)の前記落下線(f)と、前記適用ノズル(34)の前記噴霧軌道(j)との間の交点として定義される、請求項に記載の播種方法。
【請求項5】
前記センサシャフト(31)内の各種子の横位置は、前記センサ(32、33)によって検知され、及び前記衝突位置(I)は、前記横位置に基づいて個々に定義され、且つしたがって、前記種子(K)が前記衝突位置(I)に到達するまでの前記遅延時間(ti)は、個々に計算される、請求項に記載の播種方法。
【請求項6】
前記適用ノズル(34)は、前記適用ノズル(34)の噴霧軌道(j)が前記種子(K)の前記落下線(f)に30°~60°の鋭角(α)で交差するように方向付けられる、請求項又はに記載の播種方法。
【請求項7】
2つ以上の種子粉衣剤は、2つ以上の適用ノズル(34、36)により、前記分離された種子(K)に適用されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の播種方法。
【請求項8】
種子のための下の表面上に粒状種子を放出するための播種デバイスであって、前記粒状種子のためのリザーバ容器(10)を有し、前記リザーバ容器(10)から供給された種子(K)を分離し、且つ前記種子(K)を個別に排出するように構成される分離デバイス(20)を有し、及び前記分離された種子(K)に種子粉衣剤を適用するための適用デバイス(30)を有し、前記適用デバイス(30)は、前記種子(K)が前記分離デバイス(20)を出た後、前記分離された種子(K)が前記種子のための下の表面(B)上に自由落下する間、前記分離された種子(K)に種子粉衣剤を適用するように構成されており、さらに、前記リザーバ容器から排出されたそれぞれの分離された種子(K)を検知するためのセンサ(32、33)と、前記センサ(32、33)によって出力された信号に基づいて、種子粉衣剤を適用するために前記適用デバイス(30)を起動するためのコントローラ(35)とを更に含む、播種デバイス。
【請求項9】
前記適用デバイス(30)は、構造的に独立したユニットとして構成されており、且つ前記分離デバイス(20)の下において、前記分離された種子(K)の落下経路内に配置されている、請求項に記載の播種デバイス。
【請求項10】
前記適用デバイス(30)は、起動可能な適用ノズル(34)を含む、請求項又はに記載の播種デバイス。
【請求項11】
前記適用デバイス(30)は、前記コントローラ(35)によって動作的に制御される弁を含む、請求項に記載の播種デバイス。
【請求項12】
前記適用デバイス(30)は、両方の端部で開放しているセンサシャフト(31)を有し、前記適用デバイス(30)は、前記分離された種子(K)が前記センサシャフト(31)を通して前記種子(K)の経路上において前記分離デバイス(20)から前記種子のための下の表面(B)まで落下するように配置されている、請求項又はに記載の播種デバイス。
【請求項13】
前記センサシャフト(31)を通した種子(K)の通過を検知するための前記センサ(32、33)は、前記センサシャフト(31)内に配置されており、前記適用デバイス(30)は、前記種子粉衣剤のための適用ノズル(34)を有し、前記適用ノズル(34)は、種子(K)が前記センサシャフトの外部に出ると、前記センサシャフト(31)を通して落下した前記種子(K)に規定量の種子粉衣剤を適用するように構成されており、前記適用デバイス(30)は、前記センサ(32、33)と協働するコントローラ(35)を有し、前記コントローラ(35)は、前記種子(K)に種子粉衣剤を適用するために、前記センサ(32、33)によって生成されたセンサ信号に従って前記適用ノズル(34)の起動を生じさせる、請求項12に記載の播種デバイス。
【請求項14】
前記センサシャフト(31)を通した種子(K)の通過を検知するための複数のセンサ(32、33)、前記センサシャフト(31)に沿って前記種子の落下方向に連続して配置されており、前記コントローラ(35)は、前記センサ(32、33)の前記センサ信号に基づいて時間遅延(ti)を計算するように構成されており、前記時間遅延(ti)後、前記コントローラ(35)は、前記適用ノズル(34)の前記起動を生じさせる、請求項13に記載の播種デバイス。
【請求項15】
前記適用ノズル(34)は、それが起動されるたびに、規定量の種子粉衣剤を噴霧軌道(j)に沿って射出するように構成されており、前記コントローラ(35)は、前記噴霧軌道(j)と、種子粉衣剤が適用される前記種子(K)の落下線(f)とが交差する衝突位置(I)の場所を計算するように構成されており、前記コントローラ(35)は、前記衝突位置(I)の前記場所と、前記種子(K)の落下速度とに基づいて前記時間遅延(ti)を計算するように構成されている、請求項14に記載の播種デバイス。
【請求項16】
前記適用ノズル(34)は、前記適用ノズル(34)の噴霧軌道(j)が前記種子(K)の前記落下線(f)に30°~60°の鋭角(α)で交差するように方向付けられる、請求項15に記載の播種デバイス。
【請求項17】
前記センサシャフト(31)内の前記種子(K)の横位置を検知する複数のセンサ(32、33)は、前記センサシャフト(31)内に配置されており、前記コントローラ(35)は、前記種子(K)の前記横位置を考慮に入れて各種子(K)の前記時間遅延(ti)を個々に計算するように構成されている、請求項15又は16に記載の播種デバイス。
【請求項18】
前記適用デバイス(30)は、複数の適用ノズル(34、36)を有し、前記2つ以上の適用ノズル(34、36)により、複数の以上の種子粉衣剤は、前記分離された種子(K)に適用され得る、請求項17のいずれか一項に記載の播種デバイス。
【請求項19】
コンピュータによって実行されると、請求項1~のいずれか一項に記載の方法の工程を前記コンピュータに実行させる命令を含むコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1のプリアンブルによる播種方法及び独立請求項9のプリアンブルによる対応する播種デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
農業において、精密播種機は、土壌に種子を導入するために使用されている。精密播種機は、耕作土壌に数センチメートルの深さの溝を形成する小型の播種コールター又は鋤刃を有する。リザーバ容器に保持され、分離要素に供給された種子は、これらの溝又は播き溝内に個々に置かれる。その後、播き溝は、後ろを走行する補充手段、例えばハローと呼ばれるものによって再び閉じられる。植物種子の播種のためのこれら農業機械の利点は、耕地全体に広く又は無作為に種子が分配される広範な散布に比べて鳥による消費の減少及びより均一な圃場発芽につながる種子の精密且つ均一な深さ位置決めである。
【0003】
作物の成長を補助するために化学物質又は生物学的物質の形態の作物保護製品を使用することは、農業での従来の慣例である。これらの物質としては、とりわけ、虫から保護するための殺虫剤、ダニから保護するための殺ダニ剤、真菌性病原体から保護するための殺菌剤及び線虫から保護するための殺線虫剤が挙げられる。これらの作物保護製品は、農地に噴霧によって適用されることが多い。しかしながら、これは、既に成長した苗にのみ到達することができ、その結果、成長の初期段階で既に発生している特定の植物病害又は発芽苗を攻撃する害虫を効率的に処理することができない。可能な別の適用は、種子播き溝内に微小粒状物を堆積させることである。種子間の中間スペースを含む種子播き溝全体が常に処理されるため、この場合、作物保護製品の精密位置決めが不可能である。これは、保護製品の不必要に多い消費につながる。
【0004】
このため、種子及び苗木を菌類、線虫、ダニ及び昆虫から保護するために、主に種子処理剤又は種子粉衣剤と一般に区別なく呼ばれるもので種子を処理することは、既に現在慣例となっている。これに関連して、各有効物質又は有効物質の組み合わせは、コーティングの形態でそれぞれ個々の種子に直接適用される。種子粉衣剤は、殺虫効果を有する実際の有効物質に加えて、一般に、種子に対する有効物質の付着力を向上させるための接着剤並びに分散剤及び着色剤も含有する。種子粉衣剤により、必要な作物保護製品が各種子又は各植物に正確な供給量で且つその場で供給されるため、苗木又は植物を効果的に保護するのに、噴霧適用に比べて比較的少量の有効物質で十分である。したがって、この方法は、環境の点に関しても本質的に有利である。
【0005】
しかしながら、このような手法で被覆された種子を農業者が扱うとき、播種プロセス中に機械的負荷のため、適用された作物保護製品の部分摩耗が播種機内で起こる場合があり、その結果、有効物質で汚染された微細な種子粉衣剤粉塵を生成し得る。特に、制御された手法で土壌に種子を導入するために分離要素に部分真空又は過剰圧力が適用され得る、現在慣例となっている空気作動式精密播種機では、この微細な種子粉衣剤粉塵は、送風機の空気流によって取り込まれ、散らばるおそれがある。これに関連して、微細な種子粉衣剤粉塵は、播種機内に溜まる場合があり、これは、システムの機能的性能を制限し得ると共に、システムのオペレータにとって危険となる可能性がある。更に、播種機から周囲への種子粉衣剤粉塵の漏れは、特に問題であり、これは、人及び動物、特に益虫にとって危険となり得る。
【0006】
種子粉衣剤粉塵の排出に関連する欠点については、独国実用新案第20 2012 101 029号明細書に既に対象として示されている。この明細書は、集塵器を有する播種機を提案している。この集塵器により、粉塵粒子を含む、播種プロセス中に吸引された空気を空気成分と粉塵成分とに分けることができ、続いて空気成分から分離された粉塵成分を、特別な導入手段を用いて土壌に導入することができる。
【0007】
国際公開第2017/182261号は、精密播種機について記載している。この精密播種機を用いて粒子粉塵の発生を予め防ぐことができるが、少なくとも大幅に減らすことができる。
【0008】
土壌に種子を導入するためのこの周知の精密播種機は、リザーバ容器から供給された種子を分離し、それらを個々に排出するのに適した分離要素と、分離された種子に種子粉衣剤を適用するための適用ユニットとを含む。適用ユニットは、種子への種子粉衣剤の適用が、この種子が分離された後、この種子が分離要素から排出される前に行われるように分離要素に対して配置されている。分離要素は、部分真空又は過剰圧力が印加され得る回転多孔円板として具現化される。適用ユニットは、空気駆動弁として具現化された、種子粉衣剤を供給する目的を有するノズルを含む。適用ユニットは、分離された種子及び/又は分離された種子の位置を検知するためのセンサを含み、種子への種子粉衣剤の適用は、センサの信号によって起動され得る。種子粉衣剤の適用は、非接触式で行われ、ノズルは、処理される種子の表面から2~10mmの距離にある。処理される種子1つにつき0.3~5μlの量の種子粉衣剤がノズルによって供給され得る。
【0009】
国際公開第2017/182261号に記載されているこの精密播種機は、粒子粉塵の発生を防ぐか又は減らすものの、分離要素による種子粉衣剤の適用中に前記分離要素、具体的にはその回転多孔円板が汚染されるか又は汚れるという欠点を有する。これは、印加される部分真空の影響によっても悪化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、種子粉衣剤による、デバイスの構成要素、特にまたその分離要素の汚染又は汚れを回避するという点において、粒状種子を放出するための方法及び対応するデバイスを改良することを目的とする。具体的には、個々の種子への適用が汚染なく行われる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の基礎をなすこの目的を達成する手段は、独立請求項1の特徴による播種方法及び独立請求項9の特徴によるデバイスである。
【0012】
本発明による播種方法及び本発明による播種デバイスの更に適切且つ特に有利な改良形態は、各従属請求項の対象である。
【0013】
本発明は、コンピュータによって実行されると、開示される方法の工程をコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータ可読記憶媒体にも関する。
【0014】
播種方法に関して、本発明の本質は、以下:種子のための下の表面上に粒状種子を放出するための播種方法において、リザーバ容器内に存在する種子がリザーバ容器から取り出され且つ分離されることを含む。種子粉衣剤は、分離された種子に適用され、及び種子粉衣剤が適用された個々の種子は、種子のための下の表面上に連続的に供給される。ここで、分離された種子への種子粉衣剤の適用は、種子のための下の表面上への種子の落下運動中に行われる。種子は、直線又は曲線の落下線に沿って下の表面上に落下し得る。例えば、播種デバイスが下の表面を移動する際の播種デバイスの水平移動に例えば起因する、下の表面に実質的に平行な速度成分と、重力に起因する下向きの加速成分とを種子が有する場合、落下線は、下の表面が静止した基準座標系では実質的に放物線であり得る一方、落下線は、播種デバイスが静止した基準座標系では実質的に直線であり得る。
【0015】
種子に種子粉衣剤を言わば自由落下中に適用すると、対応する播種デバイスの構成要素の汚染が防止される。特に、種子が表面上に載っている間或いは種子が容器若しくはリザーバ又は他のデバイス内に保持されている間、種子粉衣剤は、種子に適用されない。このようにして、従来技術のように播種デバイスの部品を種子粉衣剤で同時に汚染することなく種子に種子粉衣剤を適用することが可能である。
【0016】
種子が分離された後、種子は、センサシャフトを通して落下することを可能にされ得、センサシャフトを通したそれぞれの各分離された種子の通過は、センサによって検知され、センサシャフトの外部に前記種子の落下線に沿って位置する衝突位置に種子が到達するまでの時間遅延は、計算され、種子への種子粉衣剤の適用は、計算された時間遅延に従って衝突位置において行われる。このようにして、種子への種子粉衣剤の精密な適用を達成することができる。
【0017】
これに関連して、起動可能な適用ノズルは、有利には、種子に種子粉衣剤を適用するために使用され、適用ノズルは、それが起動されるたびに、規定量の種子粉衣剤を噴霧軌道に沿って射出し、衝突位置は、種子の落下線と、適用ノズルの噴霧軌道との間の交点として定義される。噴霧軌道は、本質的に直線であり得る。適用ノズルは、種子粉衣剤源に接続されている。種子粉衣剤は、有利には、流体形態、例えば液体、ゲル又は小滴形態である。接着剤粉末の形態の種子粉衣剤が使用され得ることも考えられる。規定量の種子粉衣剤は、0.1~5μl、任意選択的に0.3~5μl、任意選択的に1~4μl、任意選択的に2~3μl、任意選択的に約2.5μlであり得る。しかしながら、異なる大きさの種子には異なる量の種子粉衣剤が適切であり得ることが理解されるであろう。種子粉衣剤は、制御可能な弁、例えば電磁弁、又は空気駆動弁、又は油圧駆動弁を介して適用ノズルに供給され得る。弁の適切な制御により、適用ノズルが起動されるたびに、供給される種子粉衣剤の量を制御することが可能である。供給される量は、例えば、異なる種子位置、又は異なる種子粉衣剤、又は異なる種子種類に合わせて必要に応じて変化され得る。更に、いくつかの実施形態では、適用ノズルに供給される種子粉衣剤の圧力は、噴霧される種子粉衣剤の速度を制御又は調整するために例えばポンプによって制御され得る。
【0018】
センサシャフト内の各種子の横位置は、有利には、少なくとも1つのセンサによって検知される。衝突位置は、横位置に基づいて個々に定義され得、且つしたがって、種子が衝突位置に到達するまでの時間遅延は、個々に計算され得る。このようにして、比較的広い断面を有するセンサシャフトを使用することができ、その結果、種子の落下運動を妨げない。
【0019】
適用ノズルは、有利には、適用ノズルの噴霧軌道が種子の落下線に好ましくは30°~60°の鋭角で交差するように方向付けられる。その結果、様々な落下線上を移動する種子に種子粉衣剤を確実に適用することができる。いくつかの実施形態では、噴霧軌道と落下線との間の交点は、適用ノズルから最大5cm又は最大10cmであり得る。適用ノズルと交点との間の距離は、短いことが一般に好ましい。なぜなら、これにより種子粉衣剤の適用精度の向上を促進するからである。
【0020】
2つ以上の異なる組成物は、2つ以上の適用ノズルにより、分離された種子に適用され得る。その結果、様々な又は異なる組成物の組み合わせで構成された種子粉衣剤で種子を処理することが可能である。
【0021】
種子粉衣剤で適用される組成物は、適用、播種及び発芽の時間枠にわたって種子に安全な液剤、例えば水溶液又は有機溶液として或いは相の混合物、水性液、又は有機液体、又はペースト中の粒子の分散物若しくは懸濁物として典型的には作製され、唯一の制約は、組成物が、必要な供給速度、及び量、及び圧力、及びレオロジー特性、及び動的表面張力、及び付着力で適用され得ることである。典型的には、有効物質は、液相中に懸濁、若しくは乳化、若しくは溶解、若しくは吸収、若しくは被覆されるか、又は水分散性粉末若しくは水分散性顆粒として担体とブレンドされる。流動懸濁液(FS)、及び懸濁液濃縮物(SC)、及び乳濁液(EW;ES)、及び溶液(SL;LS)、及び被覆懸濁液(CS)、及び水分散性粉末(WS;WP)又は水分散性若しくは水溶性顆粒(WG;SG)などの古典的な農薬製剤も、これらが同じ条件を満たすことを条件として適用され得る。いくつかの実施形態では、適用される組成物は、栄養素、肥料及び/又は接種剤を含み得る。
【0022】
ある実施形態において、本発明によるデバイス及び方法で用いることができる組成物は、追加的な補助剤、殺生物剤又は他の成分を含む追加的な成分も含み得る。
【0023】
所与の組成物中の有効物質は、種子粉衣剤で適用される組成物の所望の殺虫効果に従って選択される。典型的には、有効物質は、例えば、“The Pesticide Manual”,18th Ed.,British Crop Protection Council,October 2018から周知のものなどの殺虫剤、殺ダニ剤、殺菌剤又は殺線虫剤である。
【0024】
粉衣される種子は、従来の栽培技術で栽培されるあらゆる農作物の種子であり得る。いくつかの実施形態では、栽培技術は、1粒種植技術である。1粒種植技術で栽培することができる種子の非限定的な例としては、とりわけ、コーン、トウモロコシ、大豆、綿、ヒマワリ、サトウダイコン及びモロコシの種子が挙げられる。
【0025】
播種デバイスに関して、本発明の本質は、以下の通りである:種子のための下の表面上に粒状種子を放出するための播種デバイスは、粒状種子のためのリザーバ容器と、リザーバ容器から供給された種子を分離し、且つ種子を個別に排出するように設計される分離デバイスと、分離された種子に種子粉衣剤を適用するための適用デバイスとを有する。適用デバイスは、分離された種子が分離デバイスを出た後、種子のための下の表面上への分離された種子の落下運動中、分離された種子に種子粉衣剤を適用するように構成されている。
【0026】
種子に種子粉衣剤を言わば自由落下中に適用すると、播種デバイスの構成要素の汚染が防止される。
【0027】
適用デバイスは、有利には、構造的に独立したユニットとして具現化されており、且つ分離デバイスの下において、分離された種子の落下経路内に配置されている。その結果、適用デバイスは、様々な播種デバイスで使用することができる。
【0028】
適用デバイスは、有利には、両方の端部で開放しているセンサシャフトを有し、適用デバイスは、分離された種子がセンサシャフトを通して種子の経路上において分離デバイスから種子のための下の表面まで落下するように配置されている。これにより、落下する種子を外部の影響から切り離すことが可能である。例えば、センサシャフト内を落下する種子は、横風又は雨から保護され得る。
【0029】
センサシャフトを通した種子の通過を検知するための少なくとも1つのセンサは、有利には、センサシャフトの内部表面上に配置されている。適用デバイスは、種子粉衣剤のための適用ノズルを有し得、適用ノズルは、種子がセンサシャフトの外部に出ると、センサシャフトを通して落下した種子に規定量の種子粉衣剤を適用するように構成され得、適用デバイスは、少なくとも1つのセンサと協働するコントローラを有し、コントローラは、種子に種子粉衣剤を適用するために、少なくとも1つのセンサによって生成されたセンサ信号に従って適用ノズルの起動を生じさせる。このようにして、種子への種子粉衣剤の精密な適用が可能である。
【0030】
センサは、光センサ、例えばCMOS又はCCD型のセンサであり得る。いくつかの実施形態では、センサは、センサシャフトの一方の側において、センサシャフトのもう一方の側の光源と併せて設けられた光センサであり得、このようにして種子が光源と光センサとの間を通過するときに検知するための光ゲートを形成する。いくつかの実施形態では、センサは、例えば、色の変化又は光強度の変化を検知することにより、落下する種子からセンサ上に反射した光を検知する。これらの実施形態では、光源及びセンサは、落下する種子に対して同じ側にあり得る。例えば、光源及びセンサは、センサシャフトの同じ側にあり得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、センサシャフトを通した種子の通過を検知するための少なくとも2つのセンサは、センサシャフトの内部表面上において、種子の落下方向に連続して配置され得る。種子が落下する際、種子は、第1のセンサと、次いで第2のセンサとを起動し得、このようにしてコントローラにより種子の落下速度を計算することを可能にする。コントローラは、その後、少なくとも2つのセンサのセンサ信号に基づいて時間遅延を計算することができ、その時間遅延後、コントローラは、種子粉衣剤で種子を正確に狙うために適用ノズルの起動を生じさせる。このようにして、種子への種子粉衣剤の適用の制御中に種子の落下速度を考慮に入れることができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのセンサアレイがセンサシャフトの内部表面上に設けられ得る。少なくとも1つのアレイは、一次元アレイ、例えばリニアアレイであり得る。少なくとも1つのアレイは、二次元アレイであり得る。センサアレイを設けることにより、アレイの横寸法を基準として、センサシャフト内の種子の横方向位置を決定することが可能である。
【0033】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのセンサ又は少なくとも1つのセンサアレイは、各種子の大きさを検出するように構成され得る。適用デバイスは、噴霧パラメータ(例えば、量、速度、軌道、圧力等)を、検出された種子の大きさ、及び/又は種子の速度、及び/又は種子の軌道に応じて変化させるように制御され得る。
【0034】
適用ノズルは、有利には、それが起動されるたびに、規定量の種子粉衣剤を射出するように設計されている。種子粉衣剤は、噴霧軌道に沿って射出され得る。噴霧軌道は、本質的に直線であり得る。コントローラは、噴霧軌道と、種子粉衣剤が適用される種子の落下線とが交差する衝突位置の場所を計算し得る。コントローラは、衝突位置の場所と、種子の落下速度とに基づいて時間遅延を計算し得る。
【0035】
適用ノズルは、種子粉衣剤のスプレー又は小滴を種子に向かって噴霧軌道に沿って射出するように構成され得る。スプレー又は小滴は、種子の全面を覆い得るか、又は種子の表面の一部のみを覆い得る。特に、ここで、小滴形状での適用は、種子を完全には包囲せず、むしろ種子の表面の比較的狭い(「点状」)部分又は比較的広い部分のみを覆う種子粉衣剤の適用を意味するものと理解される。種子粉衣剤は、小滴として種子に付着するように構成され得る。いくつかの実施形態では、種子粉衣剤は、比較的迅速に且つ種子の表面に対する付着力を失うことなく乾燥するように選択され得る。いくつかの実施形態では、種子粉衣剤は、種子が下の表面に到達する前に乾燥しないように選択され得る。
【0036】
適用ノズルは、サファイア若しくはルビーなどのコランダム材料を含み得るか、又はこうした材料で作製され得る。いくつかの実施形態では、適用ノズルは、セラミック材料若しくは硬質合金材料を含み得るか、又はこうした材料で作製され得る。適用ノズルは、損耗、摩耗及び/又は侵食に耐える硬質材料で作製されることが好ましい。種子粉衣剤中の研磨粒子は、従来のより軟質の金属材料で作製されたノズルの許容できない侵食の原因となり得る。
【0037】
適用ノズルは、有利には、適用ノズルの噴霧軌道が種子の落下線に好ましくは30°~60°の鋭角で交差するように方向付けられる。その結果、様々な落下線上を移動する種子に種子粉衣剤を確実に適用することができる。適用ノズルに近い位置でセンサシャフトから落下する種子は、適用ノズルから離れた位置でセンサシャフトから落下する種子より先に噴霧軌道に交差することが理解されるであろう。これは、噴霧軌道が、センサシャフトを横断する水平方向に対して下向きに角度をなすからである。したがって、種子が適用ノズルから離れた落下線上を落下していることを少なくとも1つのセンサが検知する場合、適用ノズルを作動させるとき、種子が落下線と噴霧軌道との間の交点に到達するのに必要な追加の時間を補償するために時間遅延を適用する必要がある。適用ノズルから離れた落下線上を落下する種子にスプレーが到達するために必要な追加の時間も考慮する必要がある。
【0038】
いくつかの実施形態では、有利には、センサシャフト内の種子の横位置を検知する複数のセンサは、センサシャフト上に配置され、コントローラは、種子の横位置を考慮に入れて各種子の時間遅延を個々に計算する。このようにして、比較的広い断面を有するセンサシャフトを使用することができ、その結果、種子の落下運動を妨げない。
【0039】
適用デバイスは、有利には、2つ以上の適用ノズルを有し、2つ以上の適用ノズルにより、2つ以上の種子粉衣剤は、分離された種子に適用され得る。このようにして、同じ適用デバイスによって種子に1つ以上の種子粉衣剤を必要に応じて適用することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、特定の種子が適用ノズルからのスプレーに実際に当たったか否かを検知するために少なくとも1つの追加的なセンサが設けられ得る。追加的なセンサは、光センサ、例えばCMOS型又はCCD型センサであり得る。少なくとも1つの追加的なセンサは、スプレーの適用が原因で種子から反射された光の変化を検知し得る。これは、反射率の変化であり得るか、又は種子粉衣剤が特定の色(例えば、染料添加剤により与えられる)を有する場合、追加的なセンサは、反射光の色変化を検知し得る。適用器ノズルによって種子粉衣剤が正確に与えられた種子の割合に関する情報を提供するデータが収集され得る。いくつかの実施形態では、適用器ノズルによって種子粉衣剤が正確に与えられた種子が不十分な割合であると検知したことに応答して、1つ以上の噴霧パラメータ、例えば噴霧圧力、噴霧軌道、噴霧量、種子粉衣剤温度及び/又は種子粉衣剤粘度の1つ以上を変化させるようにフィードバック制御が提供され得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、センサシャフトは、省略され得る。種子は、上述のようにセンサシャフトを落下する代わりに、リザーバ容器から下の表面上に直接分与され得る。代わりに、種子は、下の表面に自由落下させる前に機械的手段又は他の手段、例えばコンベヤ又はブラシベルトによってリザーバ容器から取り出され得る。これらの実施形態では、種子が、リザーバ容器から、少なくとも1つのセンサを横断するか又は通過する落下線に沿って落下するように少なくとも1つのセンサが配置され、且つリザーバ容器が構成されており、落下する種子が上述のように検知されることを可能にする。少なくとも1つの適用ノズルは、個々の種子がリザーバ容器から自由落下する際に個々の種子に種子粉衣剤を適用し、少なくとも1つの適用ノズルは、少なくとも1つのセンサからの信号に基づいて作動及び制御される。前述のように、重要な利点は、種子粉衣剤が自由落下中の種子に向けられ、それにより種子粉衣剤による固定表面又は他の機械表面の汚染を低減することである。
【0042】
いくつかの実施形態では、種子の播種中にジオロケーションデータが収集され得、したがって噴霧パラメータ及び/又は種子粉衣剤の組成物に関するデータを含む、下の表面(例えば、農地)の地図の生成を可能にする。ジオロケーションデータは、GPS、GLONASS、Galileo等のような全球測位衛星システムを介して収集され得る。
【0043】
コントローラは、コンピュータによって実行されると、上述の各種の工程をコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータ可読記憶媒体を含み得る。特に、コントローラは、以下:少なくとも1つのセンサからの信号の処理、適用デバイスの起動、遅延時間の計算、種子の落下速度の計算、種子の位置の決定、種子に種子粉衣剤が正確に適用されたか否かの決定、ジオロケーションデータの決定及び適用デバイスからの種子粉衣剤の適用パラメータの調整の1つ以上を実施するようにプログラムされ得るが、これらに限定されない。
【0044】
本発明による播種デバイスの適用デバイスは、様々なタイプの播種デバイスで使用することができる。この理由から、種子の落下運動中、分離された種子に種子粉衣剤を適用するように設計された適用デバイスの独立保護も請求される。
【0045】
以下の本文では、本発明を、図面に示す例示的実施形態を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明による播種デバイスの概略全体図を示す。
図2】本発明による播種デバイスの第1の例示的実施形態の適用デバイスの概略図を示す。
図3】パルス/時間図を示す。
図4】本発明による播種デバイスの第2の例示的実施形態の適用デバイスを高度に簡略化した概略図を示す。
図5】本発明による播種デバイスの第3の例示的実施形態の適用デバイスを同様に高度に簡略化した概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下の記載では、以下の規則、すなわち図中の全ての部品に参照符号が付与されていない場合、対応する他の図を本明細書の対応する関連部品と併せて参照することを適用する。
【0048】
本発明に関連して、種子のための下の表面とは、粒状種子が適用される農業土壌であると理解される。種子は、個々の種子から構成される。種子粉衣剤は、液体又はゲルであり、殺菌効果、及び/又は殺虫効果、及び/又は成長促進効果を有する有効物質を含有し、追加的に接着剤、分散剤及び着色剤も含有し得る物質製剤であると理解される。いくつかの実施形態では、種子粉衣剤は、接着剤粉末であり得る。以下の説明では、例えば、上部、下部、上、下、上方、下方、垂直、水平等のような位置情報及び方向情報の全ては、図示されるような且つそれらの実際の使用に対応する、本発明による播種デバイスの直立姿勢に関連する。
【0049】
図1の全体的な図によれば、播種デバイスは、粒状種子のためのリザーバ容器10と、リザーバ容器から供給される種子Kを分離し、且つそれらを個別に排出するように設計された分離デバイス20と、分離デバイス20によって個別に排出された種子Kに種子粉衣剤を適用するための適用デバイス30とを含む。ここで、適用デバイスは、分離された種子Kが分離デバイス20を離れた後、種子のための下の表面B上への分離された種子Kの落下運動中、分離された種子Kに種子粉衣剤を適用することができるように設計及び配置されている。
【0050】
播種デバイス全体は、実際の使用中、通常、例えばトラクターなどの農業車両に取り付けられている。これに関連して、複数の播種デバイスを車両上に配置することもでき、結果的に複数の種子播き溝に種子を同時に放出することができる。当然ながら、この場合、種子デバイスは、一般的なリザーバ容器を用いることもできる。
【0051】
特に、明示した国際公開第2017/182261号から周知の先行技術に対する本発明による播種デバイスの本質的な違いは、種子粉衣剤が、分離デバイス20上で種子に適用されず、むしろ種子が分離デバイス20を離れた後、種子のための下の表面B上への種子の落下運動中に適用されることである。また、以下で詳細に説明するように、適用デバイス30は、この目的のために特定の手法で具現化され、配置される。リザーバ容器10及び分離デバイス20は、例えば、国際公開第2017/182261号に記載されるような先行技術と同じ手法で具現化され得る。したがって、本発明による播種デバイスのこれらの構成要素に関するこれ以上の説明は必要ない。
【0052】
図2は、適用デバイスの一実施形態の基本設計を概略的に示す。適用デバイスは、実際の使用中に垂直に方向付けられ、上部及び底部が開放しているセンサシャフト31と、センサシャフト31上に垂直に離隔して配置された2つのセンサ32及び33と、種子粉衣剤のための適用ノズル34であって、種子粉衣剤リザーバ容器34aから供給される適用ノズル34と、電子コントローラ35とを含む。
【0053】
適用デバイス30及び/又はそのセンサシャフト31は、分離デバイス20によって排出された個々の種子Kがセンサシャフト31を通して落下するように分離デバイス20の下に配置されている。種子Kがセンサシャフト31から出た後、種子粉衣剤が適用ノズル34によって種子Kに適用され、その後、種子Kは、種子のための下の表面上に落下する。
【0054】
2つのセンサ32及び33は、センサシャフト31を通した種子Kの通過を検知する。2つのセンサ32及び33は、その対応する検知範囲を通して種子Kが落下した場合にパルス形状のセンサ信号S32又はS33を生成する。適切なセンサは、従来技術で周知のため、これ以上の詳細な説明は必要ない。
【0055】
センサ信号S32及びセンサ信号S33は、図3に示される。2つのセンサ32及び33間の既定の(垂直)距離dsと、センサシャフト31内の種子Kの落下速度とに従い、センサ信号S32及びセンサ信号S33は、時間間隔tsで発生する。これは、センサシャフト31内における種子Kの落下速度の測定値である。2つのセンサ信号S32及びS33は、コントローラ35に供給され、コントローラ35において、適用ノズル34を作動させるために以下に記載する手法で処理される。
【0056】
適用ノズル34は、それが作動又は起動されるたびに、典型的には0.3~5μlの既定量の種子粉衣剤を本質的に直線の噴霧軌道jに沿って射出するように、したがって言わば「種子粉衣剤のショット」を排出するように設計されている。適切な適用ノズルとしては、コランダムノズル、セラミックノズル又は硬質合金ノズルが挙げられる。適用ノズル34は、各適用プロセスにおいて各種子に種子粉衣剤の本質的に小滴形状での適用を可能にするように具現化され得る。本質的に小滴形状での適用は、ここで、種子を完全には包囲せず、むしろ種子の表面の比較的狭い(「点状」)部分又は比較的広い部分のみを覆う種子粉衣剤の適用を意味するものと理解される。好都合には、この場合、種子粉衣剤は、噴霧の損失なく小滴として種子に付着し、このプロセスにおいてその付着力を失うことなく乾燥するように構成されている。適用ノズル34は、例えば、空気駆動弁と共に使用することができる。したがって、静止位置で閉鎖され、電気空気式ドライブにより1ms未満の開放時間で切り換えることができる、非接触微小供給のための弁を使用することが可能である。このような弁は、概して、高い供給頻度と非常に高い供給精度とを有し、その結果、極めて精密且つ再現可能な供給プロセスが保証される。可能な他の弁としては、電磁弁が挙げられる。
【0057】
図2は、種子Kの落下線fと、適用ノズル34の噴霧軌道jとの交点によって定義される衝突位置Iを示す。適用ノズル34は、適用ノズル34の噴霧軌道jが種子Kの落下線fと約30°~60°の鋭角αで交差するように方向付けられる。この場合、衝突位置Iは、センサシャフト31の外又はセンサシャフト31の下である。「種子粉衣剤のショット」は、種子Kが衝突位置Iに到達したときに排出される。これは、センサ33と衝突位置Iとの間の空間的距離di及び下部センサ33の起動後、時間遅延ti後の種子Kの落下速度による場合である。コントローラ35は、2つのセンサS32及びS33を参照して時間遅延tiを計算し、その後、トリガーパルスT34(図3)を出力する。トリガーパルスT34は、適用ノズル34を起動し、「種子粉衣剤のショット」の排出を生じさせ、その後、衝突位置Iに位置する種子に種子粉衣剤を適用する。時間遅延tiは、適用ノズル34のシステム固有の応答時間及び適用ノズル34から衝突位置Iまでの種子粉衣剤の事実上ごくわずかな飛行時間も考慮に入れる。
【0058】
図4は、適用デバイスのセンサシャフト31が比較的細い状態で具現化され、且つ漏斗形状のアタッチメント31aを有する播種デバイスの例示的実施形態を部分的に示す。これは、センサシャフト31内の全ての種子Kが同じ落下線f上又は互いに非常に接近して位置する落下線f上を移動し、結果的に全ての種子の衝突位置Iが事実上同じになるという効果を有する。
【0059】
しかしながら、種子は、それ以外の手法でほぼ同じ落下線上又は少なくとも互いに接近して位置する落下線上にも配置され得る。例えば、空気圧若しくは静電気力又は漏斗状以外の形状のセンサシャフトを用いる。静電気力が使用される場合、これに関連して上昇する種子の静電荷は、種子粉衣剤(粉末被覆技術に類似)の付着力に良好な効果を及ぼし得る。
【0060】
図5の例示的実施形態では、センサシャフト31は、同様に、利用可能な比較的広い断面を有するように具現化される。この場合、種子Kは、センサシャフト31を通して、比較的離れて位置する落下線に沿って落下することができる。これにより、例えばセンサシャフト31又は他の種子との衝突による種子の移動の妨害を防ぐことを促進するが、種子の落下線に応じて、場合により位置の観点において大幅に異なり得る衝突位置に至る可能性がある。例えば、図5に、明らかに大幅に離れて位置する対応する衝突位置I1及びI2を有し、したがって適用ノズル34の起動を衝突位置の場所に応じた異なる時間遅延に従って実施することが必要である2つの落下線f1及びf2を示す。センサシャフト31を通して落下する種子Kの位置に応じた個々の時間遅延tiをコントローラ35が計算できるようにするために、センサシャフト31内の各種子の横位置は、センサシャフト31のそれぞれ幅又は直径にわたって分布する複数のセンサによって決定される。例えば、10個のこのようなセンサ32a、32b、32c、32d及び32e並びに33a、33b、33c、33d及び33eが図5に概略的に示され、各場合において、図2のセンサ32及びセンサ33の場合のように2つのセンサが1つの落下線内に互いに重なって配置されている。これらの10個のセンサのセンサ信号は、コントローラ35(ここでは不図示)に供給され、コントローラ35は、動作中のセンサにより、適用ノズル34を起動するためのそれぞれ関連衝突位置又は対応時間遅延を計算する。
【0061】
更なる例示的実施形態によれば、適用デバイスは、必要に応じて1つ以上の種子粉衣剤を種子に適用するために2つ以上の適用ノズル(及び関連の種子粉衣剤リザーバ容器)も備えることができる。図5に、第2の噴霧軌道j2に沿って種子粉衣剤を射出する第2の適用ノズル36を示す。第2の適用ノズル36は、種子の落下線と共に一連の第2の衝突位置を定義し、このうちの衝突位置I12及び衝突位置I22のみを図5に例示的に示す。当然ながら、コントローラ35は、この一連の衝突位置の第2の適用ノズル36を起動するための個々の時間遅延も計算する。
【0062】
本明細書の記載及び特許請求の範囲の全体を通して、「含む」及び「含有する」という語並びにこれらの変化形は、「含むが、限定されない」を意味し、これらは、他の部分、添加物、構成要素、整数又は工程を排除することを意図しない(及び排除しない)。本明細書の記載及び特許請求の範囲の全体を通して、別段の指示がない限り、単数形は、複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、本明細書では、別段の指示がない限り、複数のみならず単数を意図するものと理解すべきである。
【0063】
本発明の特定の態様、実施形態又は実施例と併せて記載される特徴、整数、特性、化合物、化学部分又は化学基は、本明細書中に記載される任意の他の態様、実施形態又は実施例に、それらと不適合でない限り適用可能であると理解すべきである。本明細書(あらゆる添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示される全ての特徴及び/又はそのように開示されるあらゆる方法若しくはプロセスの全ての工程は、そのような特徴及び/又は工程の少なくともいくつかが相互排他的である組み合わせを除いて、あらゆる組み合わせで組み合わされ得る。本発明は、前述のいかなる実施形態の詳細にも限定されない。本発明は、本明細書(あらゆる添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示される特徴のあらゆる新規なもの若しくはあらゆる新規な組み合わせ又はそのように開示されるあらゆる方法若しくはプロセスの工程のあらゆる新規なもの若しくはあらゆる新規な組み合わせに適用される。
【0064】
読者は、本出願と関連し、且つ本明細書と共に公開されている、本明細書と同時出願された又は本明細書に先行する全ての文献に注意を向けられたい。このような文献の全ての内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5