(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】長尺状医療器具の駆動装置及び医療デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 25/08 20060101AFI20230407BHJP
A61M 25/09 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
A61M25/08 500
A61M25/09 530
(21)【出願番号】P 2020566477
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 JP2020001315
(87)【国際公開番号】W WO2020149369
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-06-16
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 宗也
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/044377(WO,A1)
【文献】特表平08-512225(JP,A)
【文献】特開2014-200287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00 - 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状医療器具の駆動装置であって、
前端と後端とを有する長尺状医療器具を
把持する支持部材と、
前記長尺状医療器具が
前記支持部材と共に前端側へ移動するように前記支持部材に駆動力を付与する駆動機構と、を備え、
前記駆動機構は、前記支持部材に駆動力を付与することにより前記長尺状医療器具に
衝撃力又はインパルス状の力を与えることが可能で
あり、
前記駆動機構による前記支持部材への駆動力の付与が停止された
後、前記長尺状医療器具が前記支持部材
と共に前端側への慣性
で移動する長尺状医療器具の駆動装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記駆動機構から分離又は離脱可能となるように構成されている請求項1に記載の長尺状医療器具の駆動装置。
【請求項3】
長尺状医療器具の駆動装置であって、
前端と後端とを有する長尺状医療器具を
把持する支持部材と、
前記長尺状医療器具が
前記支持部材と共に前端側へ移動するように前記支持部材に
衝撃力又はインパルス状の力を付与する駆動機構と、を備え
、
前記支持部材は、前記駆動機構から分離又は離脱可能となるように構成されている長尺状医療器具の駆動装置。
【請求項4】
前記駆動機構は、前記長尺状医療器具が前端側へ移動するように前記支持部材に駆動力を付与する弾性体を有する請求項1~3のいずれか1項に記載の長尺状医療器具の駆動装置。
【請求項5】
前記弾性体が、ゴム紐、コイルバネ又は板バネである請求項4に記載の長尺状医療器具の駆動装置。
【請求項6】
前記駆動機構は、前記支持部材の速度が1~30m/秒の範囲内となる駆動力を前記支持部材へ付与可能なように構成されている請求項1~
5のいずれか1項に記載の長尺状医療器具の駆動装置。
【請求項7】
前記長尺状医療器具が、医療用のガイドワイヤ又はカテーテルである請求項1~
6のいずれか1項に記載の長尺状医療器具の駆動装置。
【請求項8】
前端と後端とを有する長尺状医療器具と、
請求項1~
7のいずれか1項に記載の長尺状医療器具の駆動装置と、を備える医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、医療用のガイドワイヤやカテーテルに代表される長尺状医療器具の駆動装置、この装置を備える医療デバイス、又は前記長尺状医療器具の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管などの生体管腔内に狭窄部(病変部)が生じた際に、例えば、バルーンカテーテルに代表される各種の治療用の医療器具が用いられる。このような治療用の医療器具を狭窄部へ案内するため、医師は医療用のガイドワイヤ(長尺状医療器具)を狭窄部へデリバリーする。
【0003】
ところで、石灰化等により病変部が完全に閉塞した場合(適宜「CTO病変」と呼ぶ)には、CTO病変へガイドワイヤを挿入することが難しい場合がある。そのような場合、医師は、医療用のガイドワイヤやカテーテル(貫通用カテーテルと呼ばれることもある)に代表される長尺状医療器具の後端側(長尺状医療器具の基端側で、手元側と言うこともある)の部分を手で把持して比較的に大きな力を加え、その先端部をCTO病変へ押し込む操作を行う必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、例えば、血管内の狭窄部を避けるように、ガイドワイヤを偽腔(血管の内膜と外膜との間)に侵入させ、そして狭窄部を超えたのちに、ガイドワイヤの先端を血管の内膜を貫通させて真腔(血管の内腔)へ再突入(リエントリ)させることがある。ガイドワイヤの先端を血管の内膜を貫通させて真腔に再突入させる際に、医師はガイドワイヤの後端側の部分を手で把持して比較的に大きな力を加え、その先端を真腔へ押し込む操作をすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
長尺状医療器具に大きな力を容易に付与することが可能で且つ構成が簡易な装置は提案されておらず、そのような装置が求められていた。
【0007】
本発明は、長尺状医療器具に大きな力を容易に付与することが可能で且つ構成が簡易な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示する技術は、長尺状医療器具に所定の力又は所定の速度を与えることができる長尺状医療器具の駆動装置、この装置を備える医療デバイス、又はこのデバイスを用いた長尺状医療器具の駆動方法である。
【0009】
以下に記載する説明において、「前端側(前方)」とは、長尺状医療器具の軸方向(長さ方向)に沿って後端から前端へ向かう方向であることを意味している。そして「後端側(後方)」とは、前端側とは逆の方向、すなわち長尺状医療器具の軸方向(長さ方向)に沿って前端から後端へ向かう方向であることを意味している。
【0010】
言い換えると、「前端側(前方)」とは、後に説明する長尺状医療器具の駆動装置が備える支持部材の軸方向(長さ方向)に沿って、長尺状医療器具の駆動装置が備える駆動機構の側から支持部材の側へ向かう方向であることを意味している。そして「後端側(後方)」とは、前端側とは逆の方向、すなわち長尺状医療器具の駆動装置が備える支持部材の軸方向(長さ方向)に沿って、支持部材の側から駆動機構の側へ向かう方向であることを意味している。
【0011】
ここに開示する技術の概要は、以下の通りである。
<実施形態A-1>長尺状医療器具の駆動装置
前端と後端とを有する長尺状医療器具を支持する支持部材と、前記長尺状医療器具が前端側へ移動するように前記支持部材に駆動力を付与する駆動機構とを備え、前記駆動機構が弾性体を有する長尺状医療器具の駆動装置。
【0012】
<実施形態A-2>長尺状医療器具を備える医療デバイス
前端と後端とを有する長尺状医療器具と、前記長尺状医療器具を支持する支持部材と、前記長尺状医療器具が前端側へ移動するように前記支持部材に駆動力を付与する駆動機構とを備え、前記駆動機構が弾性体を有する長尺状医療器具を備える医療デバイス。
【0013】
<実施形態A-3>長尺状医療器具の駆動方法
前端と後端とを有する長尺状医療器具と、前記長尺状医療器具を支持する支持部材と、前記長尺状医療器具が前端側へ移動するように前記支持部材に駆動力を付与する駆動機構とを備え、前記駆動機構が弾性体を有する長尺状医療器具を備える医療デバイスを用意するステップ、前記支持部材に前記長尺状医療器具を支持させるステップ、及び前記駆動機構の前記弾性体を圧縮又は伸長させ、圧縮又は伸長した前記弾性体の復元力を前記支持部材に付与することにより前記長尺状医療器具を前端側に移動させるステップを含む長尺状医療器具の駆動方法。
【0014】
実施形態A-1、実施形態A-2、及び実施形態A-3の各々は更に、以下の(a1)、(a2)及び(a3)の構成のうちの1つ又は2つ以上の構成を有していてもよい。
(a1)前記駆動機構が、前記支持部材へ衝撃力又はインパルス状の力を付与する駆動機構である。
(a2)前記駆動機構が、前記支持部材の速度が1m/秒~30m/秒の範囲内となる駆動力を前記支持部材へ付与する駆動機構である。
(a3)前記駆動機構が、前記支持部材への前記駆動力の付与が停止された際に、前記支持部材が更に前端側へ移動することを可能とする大きさの駆動力を前記支持部材へ付与する駆動機構である。
【0015】
<実施形態B-1>長尺状医療器具の駆動装置
前端と後端とを有する長尺状医療器具を支持する支持部材と、前記長尺状医療器具が前端側へ移動するように前記支持部材に駆動力を付与する駆動機構とを備え、前記駆動機構が、前記支持部材へ衝撃力又はインパルス状の力を付与する駆動機構である長尺状医療器具の駆動装置。
【0016】
<実施形態B-2>長尺状医療器具を備える医療デバイス
前端と後端とを有する長尺状医療器具と、前記長尺状医療器具を支持する支持部材と、前記長尺状医療器具が前端側へ移動するように前記支持部材に駆動力を付与する駆動機構とを備え、前記駆動機構が、前記支持部材へ衝撃力又はインパルス状の力を付与する駆動機構である長尺状医療器具を備える医療デバイス。
【0017】
<実施形態B-3>長尺状医療器具の駆動方法
前端と後端とを有する長尺状医療器具と、長尺状医療器具を支持する支持部材と、前記長尺状医療器具が前端側へ移動するように前記支持部材に駆動力を付与する駆動機構とを備え、前記駆動機構が、前記支持部材へ衝撃力又はインパルス状の力を付与する駆動機構である長尺状医療器具を備える医療デバイスを用意するステップ、前記支持部材に前記長尺状医療器具を支持させるステップ、及び前記駆動機構により衝撃力又はインパルス状の力を前記支持部材へ付与することにより、前記長尺状医療器具を前端側へ移動させるステップを含む長尺状医療器具の駆動方法。
【0018】
実施形態B-1、実施形態B-2、及び実施形態B-3の各々は更に、以下の(b1)、(b2)及び(b3)の構成のうちの1つ又は2つ以上の構成を有していてもよい。
(b1)前記駆動機構が弾性体を有する。
(b2)前記駆動機構が、前記支持部材の速度が1m/秒~30m/秒の範囲内となる駆動力を前記支持部材へ付与する駆動機構である。
(b3)前記駆動機構が、前記支持部材への前記駆動力の付与が停止された際に、前記支持部材が更に前端側へ移動することを可能とする大きさの駆動力を前記支持部材へ付与する駆動機構である。
【0019】
<実施形態C-1>長尺状医療器具の駆動装置
前端と後端とを有する長尺状医療器具を支持する支持部材と、前記長尺状医療器具が前端側へ移動するように前記支持部材に駆動力を付与する駆動機構とを備え、前記駆動機構が、前記支持部材の速度が1m/秒~30m/秒の範囲内となる駆動力を前記支持部材へ付与する駆動機構である長尺状医療器具の駆動装置。
【0020】
<実施形態C-2>長尺状医療器具を備える医療デバイス
前端と後端とを有する長尺状医療器具と、前記長尺状医療器具を支持する支持部材と、前記長尺状医療器具が前端側へ移動するように前記支持部材に駆動力を付与する駆動機構とを備え、前記駆動機構が、前記支持部材の速度が1m/秒~30m/秒の範囲内となる駆動力を前記支持部材へ付与する駆動機構である長尺状医療器具を備える医療デバイス。
【0021】
<実施形態C-3>長尺状医療器具の駆動方法
前端と後端とを有する長尺状医療器具と、前記長尺状医療器具を支持する支持部材と、前記長尺状医療器具が前端側へ移動するように前記支持部材に駆動力を付与する駆動機構とを備え、前記駆動機構が、前記支持部材の速度が1m/秒~30m/秒の範囲内となる駆動力を前記支持部材へ付与する駆動機構である長尺状医療器具を備える医療デバイスを用意するステップ、前記支持部材に前記長尺状医療器具を支持させるステップ、及び前記駆動機構の駆動力を前記支持部材へ付与することにより、前記長尺状医療器具を前端側へ移動させるステップを含む長尺状医療器具の駆動方法。
【0022】
実施形態C-1、実施形態C-2、及び実施形態C-3の各々は更に、以下の(c1)、(c2)及び(c3)の構成のうちの1つ又は2つ以上の構成を有していてもよい。
(c1)前記駆動機構が弾性体を有する。
(c2)前記駆動機構が、前記支持部材へ衝撃力又はインパルス状の力を付与する駆動機構である。
(c3)前記駆動機構が、前記支持部材への前記駆動力の付与が停止された際に、前記支持部材が更に前端側へ移動することを可能とする大きさの駆動力を前記支持部材へ付与する駆動機構である。
【0023】
<実施形態D-1>長尺状医療器具の駆動装置
前端と後端とを有する長尺状医療器具を支持する支持部材と、前記長尺状医療器具が前端側へ移動するように前記支持部材に駆動力を付与する駆動機構とを備え、前記駆動機構が、前記支持部材への前記駆動力の付与が停止された際に、前記支持部材が更に前端側へ移動することを可能とする大きさの駆動力を前記支持部材へ付与する駆動機構である長尺状医療器具の駆動装置。
【0024】
<実施形態D-2>長尺状医療器具を備える医療デバイス
前端と後端とを有する長尺状医療器具と、前記長尺状医療器具を支持する支持部材と、前記長尺状医療器具が前端側へ移動するように前記支持部材に駆動力を付与する駆動機構とを備え、前記駆動機構が、前記支持部材への前記駆動力の付与が停止された際に、前記支持部材が更に前端側へ移動することを可能とする大きさの駆動力を前記支持部材へ付与する駆動機構である長尺状医療器具を備える医療デバイス。
【0025】
<実施形態D-3>長尺状医療器具の駆動方法
前端と後端とを有する長尺状医療器具と、前記長尺状医療器具を支持する支持部材と、前記長尺状医療器具が前端側へ移動するように前記支持部材に駆動力を付与する駆動機構とを備え、前記駆動機構が、前記支持部材への前記駆動力の付与が停止された際に、前記支持部材が更に前端側へ移動することを可能とする大きさの駆動力を前記支持部材へ付与する駆動機構である長尺状医療器具を備える医療デバイスを用意するステップ、前記支持部材に前記長尺状医療器具を支持させるステップ、及び前記駆動機構の駆動力を前記支持部材へ付与することにより、前記長尺状医療器具を前端側へ移動させるステップを含む長尺状医療器具の駆動方法。
【0026】
実施形態D-1、実施形態D-2、及び実施形態D-3の各々は更に、以下の(d1)、(d2)及び(d3)の構成のうちの1つ又は2つ以上の構成を有していてもよい。
(d1)前記駆動機構が弾性体を有する。
(d2)前記駆動機構が、前記支持部材へ衝撃力又はインパルス状の力を付与する駆動機構である。
(d3)前記駆動機構が、前記支持部材の速度が1m/秒~30m/秒の範囲内となる駆動力を前記支持部材へ付与する駆動機構である。
【0027】
実施形態A-1、実施形態A-2、実施形態A-3、実施形態B-1、実施形態B-2、実施形態B-3、実施形態C-1、実施形態C-2、実施形態C-3、実施形態D-1、実施形態D-2、及び実施形態D-3の各々は更に、以下の(x1)、(x2)、(x3)及び(x4)の構成のうちの1つ又は2つ以上の構成を有していてもよい。
(x1)前記支持部材の移動距離dは、0mm<d<15mmの関係を満足する値に設定されている。
(x2)前記支持部材は、駆動機構から分離又は離脱可能となるように構成されている。
(x3)前記長尺状医療器具が、医療用のガイドワイヤ又はカテーテルである。
(x4)前記弾性体が、ゴム紐、コイルバネ又は板バネである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】長尺状医療器具の駆動装置(実施形態A-1)を示す平面図
【
図3】
図1に示す駆動装置における駆動機構の弾性体を伸長させた状態を示す平面図
【
図4】
図3で示した伸長した弾性体の復元力を支持部材に付与することにより長尺状医療器具を前端側に移動させた状態を示す平面図
【
図5】
図1に示す駆動装置及び長尺状医療器具を備える医療デバイスの別の使用方法について説明するための平面図
【
図6】
図1に示す駆動装置及び長尺状医療器具を備える医療デバイスの変形例(変形例A1)を示す平面図
【
図7】
図1に示す駆動装置及び長尺状医療器具を備える医療デバイスの別の変形例(変形例A2)を示す平面図
【
図8】
図1に示す駆動装置及び長尺状医療器具を備える医療デバイスの更に別の変形例(変形例A3)を示す平面図
【
図9】
図8に示す長尺状医療器具の駆動装置の側面図
【
図10】長尺状医療器具の駆動装置(実施形態B-1)の構成を示す平面図
【
図11】長尺状医療器具の駆動装置(実施形態C-1)の構成を示す平面図
【
図12】長尺状医療器具の駆動装置(実施形態D-1)の構成を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
<実施形態A-1>長尺状医療器具の駆動装置
図1は、長尺状医療器具の駆動装置を示す平面図であり、
図2は、その側面図である。長尺状医療器具の駆動装置10は、長尺状医療器具1を支持(又は把持)する支持部材11と、長尺状医療器具1が前端側へ移動するように支持部材11に駆動力を付与する駆動機構12とを備えている。長尺状医療器具1は、前端1aと後端1bとを有する。
【0030】
駆動機構12は弾性体13を有する。
【0031】
本実施形態では、長尺状医療器具1として医療用のガイドワイヤを用いてある。医療用ガイドワイヤの構成は周知なので、その詳細な説明を省略する。本発明において、長尺状医療器具として、医療用のガイドワイヤやカテーテルなどの公知の長尺状医療器具を用いることができる。
【0032】
長尺状医療器具の駆動装置10は、例えば、支持板14の表面に設置される。支持板14の表面には、一対の支柱15a、15bが設けられている。支持板14や一対の支柱15a、15bの材料としては、特に制限はないが、樹脂材料や金属材料を用いることができる。
【0033】
弾性体13は、一対の支柱の間に備えられている。弾性体13としては、ゴム紐が用いてある。弾性体13の一方の端部は、支柱15aに固定され、他方の端部は、支柱15bに固定されている。
【0034】
弾性体としては、ゴム紐、板バネ、コイルバネなど公知の弾性体を用いることができる。弾性体の材料としては、特に制限はないが、樹脂材料や金属材料を用いることができる。
【0035】
支持部材11は、長尺状医療器具1を支持(又は把持)できる限り、その構成に特に制限はない。支持部材11としては、医師は、長尺状医療器具1を操作するために長尺状医療器具に取り付ける支持具(一般に、トルカと呼ばれている)を用いることができる。支持部材には、前記トルカと呼ばれる支持具に代えて、ドリルなどの工具を把持するチャックと同様の構成を有する支持具を用いることもできる。
【0036】
支持部材は、長尺状医療器具に恒久的に固定してよいし、必要に応じて取り外しできるように一時的に仮固定してもよい。
【0037】
支持部材は、長尺状医療器具の周囲に配置できる、リング状又はフランジ状の形状を有していてもよい。リング状(又はフランジ状)の形状には、その周方向の一部にスリットが形成された形状、例えば、C字形状を含む。
【0038】
支持部材11は、その後端側にロッド16を備えている。ロッド16は、その後端側にフランジ16aを有している。
【0039】
支持部材11やロッド16の材料としては、特に制限はないが、樹脂材料や金属材料を用いることができる。
【0040】
長尺状医療器具の駆動装置10は、支持部材11に長尺状医療器具1を支持した状態で用いられる。
図1に示すように、長尺状医療器具の駆動装置10は、長尺状医療器具1が容易に移動することができるように、医療用のカテーテル2の内部に収容した状態で用いることができる。
【0041】
医療用のカテーテル2は、先端2a及び後端2bを有している。医療用のカテーテルの構成は周知であるので、詳細な説明は省略する。医療用のカテーテルとしては、公知のカテーテル、例えば、ガイディングカテーテルやマイクロカテーテルを用いることができる。
【0042】
<実施形態A-2>長尺状医療器具を備える医療デバイス
図1に示す長尺状医療器具1と、長尺状医療器具の駆動装置10とにより、長尺状医療器具を備える医療デバイス100が構成される。
【0043】
長尺状医療器具を備える医療デバイス100は、前端1aと後端1bとを有する長尺状医療器具1と、長尺状医療器具1を支持(又は把持)する支持部材11と、長尺状医療器具1が前端側へ移動するように前記支持部材11に駆動力を付与する駆動機構12とを備える。駆動機構12は弾性体13を有する。
【0044】
長尺状医療器具1と駆動装置10との構成は、先に説明した通りである。
【0045】
<実施形態A-3>長尺状医療器具の駆動方法
長尺状医療器具の駆動方法は、前端1aと後端1bとを有する長尺状医療器具1と、長尺状医療器具1を支持(又は把持)する支持部材11と、長尺状医療器具1が前端側へ移動するように支持部材11に駆動力を付与する駆動機構12と、を備え、駆動機構12は弾性体13を有する長尺状医療器具を備える医療デバイス100を用意するステップ、支持部材11に長尺状医療器具1を支持させるステップ(
図1参照)、及び駆動機構12の弾性体13を伸長させ(
図3参照)、伸長した弾性体13の復元力を支持部材11に付与することにより長尺状医療器具1を前端側に移動させるステップ(
図4参照)を含む。
【0046】
図4に示すように、長尺状医療器具1が前端側に移動した際、支持部材11に備えられたロッド16のフランジ16aが、カテーテル2の後端2bに衝突する。このため、長尺状医療器具1が(
図4に示す位置から)更に前端側に移動することはない。
【0047】
図1に示す長尺状医療器具を備える医療デバイスは、支持部材11に備えられたロッド16のフランジ16aが弾性体13に固定されている。このため、
図3に示すように、前端側へ移動した長尺状医療器具1は、その後に弾性体が縮んで元の状態又は形状(
図1に示すような弾性体に力が加えられていない無負荷の状態又は形状)に戻るため、
図1に示す配置に戻る。
【0048】
図1に示す長尺状医療器具の駆動装置10、長尺状医療器具を備える医療デバイス100、及び医療デバイス100を用いた長尺状医療器具の駆動方法を用いることにより、長尺状医療器具に、支持部材11を介して安定して所定の力(ある一定の値以上の大きな力)を与えること、又は安定して所定の速度(ある一定の値以上の高い速度)を与えることができる。長尺状医療器具の駆動装置10が備える駆動機構12は、弾性体13を用いた簡易な構成を有している。このため、長尺状医療器具の駆動装置10、長尺状医療器具を備える医療デバイス100、及び医療デバイス100を用いた長尺状医療器具の駆動方法は、例えば、長尺状医療器具を駆動するための電源などの設備が十分に整っていない病院において有利に用いることができる。
【0049】
医師は、長尺状医療器具1の後端側の部分を手で把持して操作し、その先端部を閉塞部に到達させるか、又は閉塞部の近傍の位置に配置する。次いで、必要に応じて、長尺状医療器具1に沿って、医療用のカテーテルをデリバリーする。長尺状医療器具1の後端を、支持部材11の中央に備えられた通孔に挿入し、支持部材11を前端側へ移動させたのち、長尺状医療器具1を支持部材11に支持させて固定する。支持部材11に備えられたロッド16のフランジ16aを手で把持して後方側へ引くことにより、駆動機構12の弾性体13を伸長させる(
図3参照)。次いでフランジ16aから手を離すことにより、伸長した弾性体13の復元力が支持部材11に付与され、支持部材11と共に長尺状医療器具1が前端側に移動する(
図4参照)。前端側に移動した長尺状医療器具の先端部は、閉塞部に侵入する。このような操作を繰り返すことにより、長尺状医療器具1が閉塞部を貫通する。長尺状医療器具1に沿って各種の治療用のデバイス(例、バルーンカテーテル)をデリバリーして、閉塞部の治療が行われる。
【0050】
図5は、
図1に示す長尺状医療器具の駆動装置10及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100の別の使用方法について説明するための平面図である。
【0051】
長尺状医療器具の駆動装置10及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100は、医療用のカテーテル52の内部に収容した状態で用いることができる。
【0052】
医療用のカテーテル52は、先端52a及び後端52bを有している。カテーテル52には、長尺状医療器具1(例、医療用のガイドワイヤ)を収容するための通孔52cを備えている。通孔52cの前端は、カテーテル52の外周面に設けられた開口52dに接続している。このため、長尺状医療器具1の前端側の部分は、開口52dから突出し、カテーテルの軸方向(長さ方向)に対して傾斜した状態にて配置される。
図5に、カテーテルの軸方向(長さ方向)を記載して符号cを付した。カテーテル52を用いることにより、長尺状医療器具1の先端を、血管の偽腔から内膜を貫通させて真腔へ再突入させることができる。このような再突入のために用いられる医療用カテーテル(外周面にて開口する通孔を備えるもの)の構成は公知であるので、詳細な説明は省略する。
【0053】
医師は、長尺状医療器具1として、例えば、医療用のガイドワイヤを閉塞部までデリバリーし、その先端1aを血管の偽腔に侵入させ、閉塞部を超えるまで前進(長尺状医療器具1の前端側へ移動)させる。次いで、長尺状医療器具1に沿って、医療用のカテーテル52をデリバリーする。医師は、長尺状医療器具1の後端側の部分を手で把持して操作し、その先端側の部分が血管の内膜へ向かうよう、必要であれば長尺状医療器具1又はカテーテル52を、その軸方向(長さ方向)を中心にして回転させる。長尺状医療器具1の後端を、支持部材11の中央に備えられた通孔に挿入し、支持部材11を前端側へ移動させたのち、長尺状医療器具1を支持部材11に支持させて固定する。支持部材11に備えられたロッド16のフランジ16aを手で把持して後方側へ引くことにより、駆動機構12の弾性体13を伸長させる。次いでフランジから手を離すことにより、伸長した弾性体13の復元力が支持部材11に付与され、支持部材11と共に長尺状医療器具1が前端側に移動する。前端側に移動した長尺状医療器具の先端部は、内膜に向かって、詳細には長尺状医療器具1の軸方向c(長さ方向c)に対して傾斜した方向に向かって移動するため、血管の偽腔から内膜を貫通して真腔へ再突入する。この長尺状医療器具1に沿って各種の治療用のデバイス(例、バルーンカテーテル)をデリバリーして、閉塞部の治療が行われる。
【0054】
図6は、
図1に示す長尺状医療器具の駆動装置10及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100の変形例(変形例A1)を説明するための平面図である。
【0055】
長尺状医療器具の駆動装置60の構成及び長尺状医療器具を備える医療デバイス600の構成は、駆動機構62の支持部材11に備えられたロッド16のフランジ16aが弾性体13に固定されていないこと以外は、
図1~4のそれぞれで示す長尺状医療器具の駆動装置10及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100と同様である。
【0056】
図6の長尺状医療器具の駆動装置60において、
図1の長尺状医療器具の駆動装置10と同一の構成要素については、既に説明済みであるので、同一の符号を付して、重複した説明は行わない。
【0057】
図1の長尺状医療器具の駆動装置10は、支持部材11に備えられたロッド16のフランジ16aが弾性体13に固定されている。このため、
図4に示すように、前端側へ移動した長尺状医療器具1は、その後に弾性体が縮んで元の状態又は形状(
図1に示すような弾性体に力が加えられていない無負荷の状態又は形状)に戻るため、
図1に示す配置に戻る。
【0058】
これに対して、
図6の長尺状医療器具の駆動装置60は、支持部材11に備えられたロッド16のフランジ16aが弾性体13に固定されていない。このため、
図6に示すように、前端側へ移動した長尺状医療器具1は、その後に弾性体のみが縮んで元の状態又は形状(
図6に示すような弾性体に力が加えられていない無負荷の状態又は形状)に戻るため、
図6に示す配置を維持する。すなわち、長尺状医療器具の駆動装置60に駆動されて前端側へ移動した長尺状医療器具1は、そのまま停止した状態を保つ。
【0059】
図6の長尺状医療器具の駆動装置60及び長尺状医療器具を備える医療デバイス600は、それぞれ
図1の長尺状医療器具の駆動装置10及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100と同様の効果を発揮する。
【0060】
図6の長尺状医療器具の駆動装置60は、支持部材11が駆動機構62から離脱(分離)可能な構成とされている。このため、長尺状医療器具1が前端側へ移動した際に、支持部材11は駆動機構62から離脱(分離)することができる。
【0061】
長尺状医療器具の駆動装置60を用いると、例えば、血管の閉塞部の硬度が非常に大きくガイドワイヤの先端が閉塞部へ侵入することが難しい(前方へ移動することが難しい)状況が生じた場合に、長尺状医療器具に不要な(極端に大きな)駆動力が付与されることがない。すなわち、前端側へ移動し難くなった長尺状医療器具に対して、更に前端側への移動を生じさせる駆動力(極端に大きな駆動力)が付与されることがない。
【0062】
図7は、
図1に示す長尺状医療器具の駆動装置10及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100の別の変形例(変形例A2)を説明するための平面図である。
【0063】
長尺状医療器具の駆動装置70の構成及び長尺状医療器具を備える医療デバイス700の構成は、駆動機構72が備える弾性体73としてコイルバネが用いられていること、駆動装置70が支持(設置)される一対の支柱と支持板が備えられていないこと以外は、それぞれ
図1~4に示す長尺状医療器具の駆動装置10及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100と同様である。
【0064】
図7の長尺状医療器具の駆動装置70において、
図1の長尺状医療器具の駆動装置10と同一の構成要素については、既に説明済みであるので、同一の符号を付して、重複した説明は行わない。
【0065】
医療デバイス700を用いた長尺状医療器具1の駆動方法は、前端1aと後端1bとを有する長尺状医療器具1と、長尺状医療器具1を支持する支持部材11と、長尺状医療器具1が前端側へ移動するように支持部材11に駆動力を付与する駆動機構72とを備え、前記駆動機構72が、コイルバネである弾性体73を有する長尺状医療器具を備えた医療デバイス700を用意するステップ、支持部材11に長尺状医療器具1を支持させるステップ、及び駆動機構72の弾性体73を伸長させ、この伸長した弾性体73の復元力を支持部材11に付与することにより長尺状医療器具1を前端側に移動させるステップを含む。
【0066】
駆動機構72の弾性体73を伸長させるため、例えば、左手でカテーテル2を把持し、右手でロッド16のフランジ16aを把持して後方に引くことができる。右手をフランジ16aから離すことにより、伸長した弾性体73の復元力が支持部材11に付与され、長尺状医療器具1が支持部材11と共に前方(長尺状医療器具1の前端側)に移動する。
【0067】
図7の長尺状医療器具の駆動装置70及び長尺状医療器具を備える医療デバイス700は、それぞれ
図1の長尺状医療器具の駆動装置10の構成及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100と同様の効果を発揮する。
【0068】
弾性体73としてコイルばねを用いると、ゴム紐を用いる場合と比較して、長尺状医療器具を前端側へ正確に移動することができ、また弾性体73が熱により劣化し難いことから、駆動機構72の耐熱性が向上する。駆動機構72を加熱して殺菌しても、特段の問題を生じることはない。
【0069】
図8は、
図1に示す長尺状医療器具の駆動装置10及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100の更に別の変形例(変形例A3)を説明するための平面図である。
図9は、
図8に示す長尺状医療器具の駆動装置80の側面図である。
【0070】
長尺状医療器具の駆動装置80及び長尺状医療器具を備える医療デバイス800は、駆動機構82が備える弾性体83としてコイルバネが用いられていること、弾性体83がロッド16のフランジ16aと支持板14の表面に設けられた支柱85との間に備えられていること以外は、それぞれ
図1~4に示す長尺状医療器具の駆動装置10及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100と同様である。
【0071】
図8の長尺状医療器具の駆動装置80において、
図1の長尺状医療器具の駆動装置10と同一の構成要素については、既に説明済みであるので、同一の符号を付して、重複した説明は行わない。
【0072】
医療デバイス800を用いた長尺状医療器具1の駆動方法は、前端1aと後端1bとを有する長尺状医療器具1と、長尺状医療器具1を支持する支持部材11と、長尺状医療器具1が前端側へ移動するように支持部材11に駆動力を付与する駆動機構82とを備え、前記駆動機構82が、コイルバネを含む弾性体83を有する長尺状医療器具を備える医療デバイス800を用意するステップ、支持部材11に前記長尺状医療器具を支持させるステップ、及び駆動機構82の弾性体83を圧縮させ、この圧縮した弾性体83の復元力を支持部材11に付与することにより長尺状医療器具1を前端側に移動させるステップを含む。
【0073】
このように、圧縮した弾性体83の復元力を支持部材11に付与することもできる。
【0074】
なお、前記のように、駆動機構82の弾性体83を圧縮させるため、例えば、左手で支持板14を把持し、右手でロッド16のフランジ16aを把持して後方に引くことができる。右手をフランジ16aから離すことにより、圧縮した弾性体83の復元力が支持部材11に付与され、長尺状医療器具1が(支持部材11と共に)前方(長尺状医療器具1の前端側)に移動する。
【0075】
駆動装置80の構成及び長尺状医療器具を備える医療デバイス800は、
図7の駆動装置70の構成及び長尺状医療器具を備える医療デバイス700と同様の効果を発揮する。
【0076】
図8の駆動装置80は、医師がロッド16のフランジ16cを把持して後方へ引いた際(後方へ移動させた際)に、弾性体83が伸張することはない。このため伸張による弾性体83の塑性変形の発生を抑制することができる。
【0077】
<実施形態B-1>長尺状医療器具の駆動装置
図10は、長尺状医療器具の駆動装置(実施形態B-1)の構成を示す平面図である。
【0078】
図10の長尺状医療器具の駆動装置10Bは、前端1aと後端1bとを有する長尺状医療器具1を支持(又は把持)する支持部材11と、長尺状医療器具1が前端側へ移動するように支持部材11に駆動力を付与する駆動機構12Bとを備えている。
【0079】
駆動機構12Bは、支持部材11へ衝撃力又はインパルス状の力を付与する駆動機構である。
【0080】
駆動機構12Bの弾性体13Bとしては、ゴム紐が用いられており、このゴム紐は、支持部材11に衝撃力又はインパルス状の力を付与することができるように調整されている。ゴム紐の調整では、支持部材に衝撃力又はインパルス状の力が付与されるか確認しながら、例えば、ゴム紐の材料を適宜選択したり、あるいは、長さ、厚み又は幅などのゴム紐の形状及び寸法を適宜に調整する。このような調整は、特段に困難を伴う訳ではなく、過度の実験を行う必要はない。
【0081】
長尺状医療器具の駆動装置10Bの構成及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100Bの構成は、駆動機構12Bが備える弾性体13Bとして、支持部材11に衝撃力又はインパルス状の力を付与することができるように調整されたゴム紐が用いられていること以外は、それぞれ
図1に示す長尺状医療器具の駆動装置10及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100と同様である。
【0082】
図10の長尺状医療器具の駆動装置10Bにおいて、
図1の長尺状医療器具の駆動装置10と同一の構成要素については、既に説明済みであるので、同一の符号を付して、重複した説明は行わない。
【0083】
駆動機構12Bとしては、上記のような弾性体を備える駆動機構に代えて、支持部材11へ衝撃力又はインパルス状の力が付与される限り、公知の駆動機構を用いることができる。駆動機構の例としては、直動駆動装置(代表例、リニアモータ)、又は回転駆動装置(代表例、モータ)とこの回転駆動装置の回転運動を直線運動に変換する変換器(代表例、送りねじ)とを組み合わせた駆動装置を用いることができる。支持部材11へ衝撃力又はインパルス状の力を付与することができるように、直動駆動装置又は回転駆動装置の出力が調整される。直動駆動装置又は回転駆動装置の出力の調整では、支持部材に衝撃力又はインパルス状の力が付与されるか確認しながら、例えば、直動駆動装置又は回転駆動装置に供給される電力を調整する。電力の調整には、直動駆動装置又は回転駆動装置に供給される電流、電圧又は周波数を調整することを含む。このような調整は、特段に困難を伴う訳ではなく、過度の実験を行う必要はない。
【0084】
<実施形態B-2>長尺状医療器具を備える医療デバイス
図10に示す長尺状医療器具1と、長尺状医療器具の駆動装置10Bとにより、長尺状医療器具を備える医療デバイス100Bが構成される。
【0085】
長尺状医療器具を備える医療デバイス100Bは、前端1aと後端1bとを有する長尺状医療器具1と、長尺状医療器具1を支持(又は把持)する支持部材11と、長尺状医療器具1が前端側へ移動するように支持部材11に駆動力を付与する駆動機構12Bとを備え、駆動機構12Bが、前記支持部材11へ衝撃力又はインパルス状の力を付与する駆動機構である。
【0086】
長尺状医療器具1と長尺状医療器具の駆動装置10Bの構成は、先に説明した通りである。
【0087】
<実施形態B-3>長尺状医療器具の駆動方法
長尺状医療器具の駆動方法は、前端1aと後端1bとを有する長尺状医療器具1と、長尺状医療器具1を支持(又は把持)する支持部材11と、長尺状医療器具1が前端側へ移動するように支持部材11に駆動力を付与する駆動機構12Bとを備え、駆動機構12Bが、支持部材11へ衝撃力又はインパルス状の力を付与する駆動機構である長尺状医療器具を備える医療デバイス100Bを用意するステップ、支持部材11に長尺状医療器具1を支持させるステップ(
図10参照)、及び駆動機構12Bにより衝撃力又はインパルス状の力を支持部材11へ付与することにより、長尺状医療器具1を前端側へ移動させるステップを含む。
【0088】
図10に示す長尺状医療器具の駆動装置10B、長尺状医療器具を備える医療デバイス100B、及び医療デバイス100Bを用いた長尺状医療器具の駆動方法を用いることにより、支持部材11を介して長尺状医療器具1に安定して衝撃力又はインパルス状の力を付与することができる。
【0089】
医師は、長尺状医療器具1の後端側の部分を手で把持して操作し、その先端部を閉塞部に到達させるか、又は閉塞部の近傍の位置に配置する。次いで、必要に応じて、長尺状医療器具1に沿って、医療用のカテーテルをデリバリーする。長尺状医療器具1の後端を、支持部材11の中央に備えられた通孔に挿入し、支持部材11を前端側へ移動させたのち、長尺状医療器具1を支持部材11に支持させて固定する。支持部材11に備えられたロッド16のフランジ16aを手で把持して後方側へ引くことにより、駆動機構12Bの弾性体13Bを伸長させる。次いでフランジから手を離すことにより、伸長した弾性体13Bが縮んで元の状態又は形状(
図10に示すような弾性体に力が加えられていない無負荷の状態又は形状)に戻る際に、支持部材11に衝撃力又はインパルス状の力が付与される。長尺状医療器具1が、支持部材11と共に前端側に移動して閉塞部へ到達すると、閉塞部に衝撃力又はインパルス状の力が付与される。このため、長尺状医療器具1の先端が閉塞部へ侵入し易くなる。このような操作を繰り返すことにより、長尺状医療器具1が閉塞部を貫通する。長尺状医療器具1に沿って各種の治療用のデバイス(例、バルーンカテーテル)をデリバリーして、閉塞部の治療が行われる。
【0090】
支持部材11に衝撃力又はインパルス状の力を付与することにより、短時間で(支持部材11が短距離を進む間に)支持部材11又は支持部材11を介して長尺状医療器具1に、これらを必要以上の長距離にて移動させることなく、大きな力(エネルギー)を付与することができる。すなわち長尺状医療器具1を加速させるために大きく移動させる必要がない。加速のための移動距離を小さくすることで、長尺状医療器具1の先端部が血管壁の治療対象外の部位に接触するリスクが低減する。
【0091】
支持部材11と共に前端側へ移動した長尺状医療器具1の先端部が閉塞部に到達すると(又は先端が既に閉塞部に到達して接触した状態であると)、支持部材に付与された大きなエネルギーが、長尺状医療器具の先端を介して閉塞部に衝撃力又はインパルス状の力として付与される。
【0092】
図10に示す長尺状医療器具の駆動装置10B及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100Bはまた、長尺状医療器具1の先端を、血管の偽腔から内膜を貫通させて真腔へ再突入させる際に使用することができる。このような使用方法は、
図10に示す長尺状医療器具の駆動装置10B及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100Bを用いること以外は、
図5を用いて説明した使用方法と同様である。
【0093】
図10に示す長尺状医療器具の駆動装置10B及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100Bはまた、
図6に示す長尺状医療器具の駆動装置60及び長尺状医療器具を備える医療デバイス600と同様に、駆動機構12Bの支持部材11に備えられたロッド16のフランジ16aが弾性体13Cに固定されていない構成を採用して、同様の効果を発揮させることができる。
【0094】
図10に示す長尺状医療器具の駆動装置10B及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100Bはまた、
図7に示す長尺状医療器具の駆動装置70及び長尺状医療器具を備える医療デバイス700、又は
図8に示す長尺状医療器具の駆動装置80及び長尺状医療器具を備える医療デバイス800と同様に、駆動機構12Bが備える弾性体13Bとして、コイルバネを採用して、同様の効果を発揮させることができる。
【0095】
<実施形態C-1>長尺状医療器具の駆動装置
図11は、長尺状医療器具の駆動装置(実施形態C-1)の構成を示す平面図である。
【0096】
図11の長尺状医療器具の駆動装置10Cは、前端1aと後端1bとを有する長尺状医療器具1を支持(又は把持)する支持部材11と、長尺状医療器具1が前端側へ移動するように支持部材11に駆動力を付与する駆動機構12Cとを備えている。
【0097】
駆動装置10Cは、支持部材11の速度が1m/秒~30m/秒の範囲内となる駆動力を前記支持部材へ付与する駆動機構12Cを有する。
【0098】
駆動機構12Cの弾性体13Cとしては、ゴム紐が用いられており、このゴム紐は、支持部材11に、この支持部材11の速度が1~30m/秒の範囲内となる駆動力を付与することができるように調整されている。ゴム紐の調整では、支持部材の速度を確認しながら、その速度が1~30m/秒の範囲内となるように、例えば、ゴム紐の材料を適宜選択したり、あるいは、長さ、厚み又は幅などのゴム紐の形状及び寸法を適宜に調整する。このような調整は、特段に困難を伴う訳ではなく、過度の実験を行う必要はない。
【0099】
支持部材の速度は、1~30m/秒の範囲内に、好ましくは2~25m/秒の範囲内に、更に好ましくは3~23m/秒の範囲内に、特に好ましくは4~20m/秒の範囲内に設定される。
【0100】
長尺状医療器具の駆動装置10Cの構成及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100Cの構成は、駆動機構12Cが備える弾性体13Cとして、支持部材11に、この支持部材11の速度が1~30m/秒の範囲内となる駆動力が付与されるように調整されたゴム紐が用いられていること以外は、それぞれ
図1に示す長尺状医療器具の駆動装置10及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100と同様である。
【0101】
図11の長尺状医療器具の駆動装置10Cにおいて、
図1の長尺状医療器具の駆動装置10と同一の構成要素については、既に説明済みであるので、同一の符号を付して、重複した説明は行わない。
【0102】
駆動機構12Cとしては、上記のような弾性体13Cを備える駆動機構に代えて、支持部材11にその速度が1~30m/秒の範囲内となる駆動力(以下「所定範囲内の速度を達成する駆動力」とも言う)が付与される限り、公知の駆動機構を用いることができる。駆動機構の例としては、直動駆動装置(代表例、リニアモータ)、又は回転駆動装置(代表例、モータ)とこの回転駆動装置の回転運動を直線運動に変換する変換器(代表例、送りねじ)とを組み合わせた駆動装置を用いることができる。支持部材11へ所定範囲内の速度を達成する駆動力が付与されるように、直動駆動装置又は回転駆動装置の出力が調整される。直動駆動装置又は回転駆動装置の出力の調整では、支持部材に所定範囲内の速度を達成する駆動力が付与されるか確認しながら、例えば、直動駆動装置又は回転駆動装置に供給される電力を調整する。電力の調整には、直動駆動装置又は回転駆動装置に供給される電流、電圧又は周波数を調整することを含む。このような調整は、特段に困難を伴う訳ではなく、過度の実験を行う必要はない。
【0103】
支持部材の移動距離dは、0mm<d<15mmの関係を満足する値に設定することができる。支持部材の移動距離dは、0mm<d<10mmの関係を満足する値に設定してもよく、0mm<d<5mmの関係を満足する値に設定してもよく、0mm<d<3mmの関係を満足する値に設定してもよく、0mm<d<1mmの関係を満足する値に設定してもよい。
【0104】
長尺状医療器具の微細な距離での移動を実現するため、支持部材の移動距離dは、0.01mm<d<15mmの関係を満足する値に設定することができる。支持部材の移動距離dは、0.01mm<d<10mmの関係を満足する値に設定してもよく、0.01mm<d<5mmの関係を満足する値に設定してもよく、0.01mm<d<3mmの関係を満足する値に設定してもよく、0.01mm<d<1mmの関係を満足する値に設定してもよい。
【0105】
支持部材の移動距離が短すぎると、例えば、長尺状医療器具として用いるガイドワイヤが閉塞部に侵入し難くなり、移動距離が長すぎると閉塞部を介して血管に負荷(駆動機構から、支持部材、ガイドワイヤ、そして閉塞部を介して血管に伝わる力)が加わる時間が長くなるからある。
【0106】
例えば、
図11の長尺状医療器具の駆動装置10Cでは、支持部材11が備えるロッド16のフランジ16aが、カテーテル2の端部へ接触すると、支持部材が更に前方へは移動できない構成(以下「支持部材のブレーキ」とも言う)が採用されている。支持部材のブレーキの構成に特に制限はなく、駆動機構を制御して支持部材の移動を制限したり、支持部材よりも前端側に支持部材が接触、衝突、又は係合するストッパを設けて支持部材の移動を制限したりすることができる。
【0107】
<実施形態C-2>長尺状医療器具を備える医療デバイス
図11に示す長尺状医療器具1と、長尺状医療器具の駆動装置10Cとにより、長尺状医療器具を備える医療デバイス100Cが構成される。
【0108】
長尺状医療器具を備える医療デバイス100Cは、前端1aと後端1bとを有する長尺状医療器具1と、長尺状医療器具1を支持(又は把持)する支持部材11と、長尺状医療器具1が前端側へ移動するように前記支持部材11に駆動力を付与する駆動機構12Cとを備え、前記駆動機構12Cが、前記支持部材の速度が1m/秒~30m/秒の範囲内となる駆動力を前記支持部材へ付与する駆動機構である。
【0109】
長尺状医療器具1と長尺状医療器具の駆動装置10Cの構成は、先に説明した通りである。
【0110】
<実施形態C-3>長尺状医療器具の駆動方法
長尺状医療器具の駆動方法は、前端1aと後端1bとを有する長尺状医療器具1と、長尺状医療器具1を支持(又は把持)する支持部材11と、長尺状医療器具1が前端側へ移動するように支持部材11に駆動力を付与する駆動機構12Cとを備え、前記駆動機構12Cが、前記支持部材の速度が1m/秒~30m/秒の範囲内となる駆動力を支持部材11へ付与する駆動機構である長尺状医療器具を備える医療デバイス100Cを用意するステップ、支持部材11に長尺状医療器具1を支持させるステップ(
図11参照)、及び駆動機構12Cの駆動力を支持部材11へ付与することにより、長尺状医療器具1を前端側へ移動させるステップを含む。
【0111】
図11に示す長尺状医療器具の駆動装置10C、長尺状医療器具を備える医療デバイス100C、及び医療デバイス100Cを用いた長尺状医療器具の駆動方法を用いることにより、支持部材11を介して長尺状医療器具1に、安定して所定範囲内の大きな力を長尺状医療器具に与えること、又は安定して所定範囲内の高い速度を与えることができる。
【0112】
医師は、長尺状医療器具1の後端側の部分を手で把持して操作し、その先端部を閉塞部に到達させるか、又は閉塞部の近傍の位置に配置する。次いで、必要に応じて、長尺状医療器具1に沿って、医療用のカテーテルをデリバリーする。長尺状医療器具1の後端を、支持部材11の中央に備えられた通孔に挿入し、支持部材11を前端側へ移動させたのち、長尺状医療器具1を支持部材11に支持させて固定する。支持部材11に備えられたロッド16のフランジ16aを手で把持して後方側へ引くことにより、駆動機構12Cの弾性体13Cを伸長させる。次いでフランジ16aから手を離すことにより、伸長した弾性体13Cが縮んで元の状態又は形状(
図11に示すような弾性体に力が加えられていない無負荷の状態又は形状)に戻る際に、支持部材11にその速度が1~30m/秒の範囲内となる駆動力が付与される。長尺状医療器具1は、支持部材11と共に前端側に比較的に高速で(1~30m/秒の範囲内の速度で)移動して閉塞部へ到達し、その先端部が閉塞部に衝突する。このような衝突により長尺状医療器具から閉塞部に比較的に大きな力(エネルギー)が付与される。このため、長尺状医療器具1の先端が閉塞部へ侵入し易くなる。このような操作を繰り返すことにより、長尺状医療器具1が閉塞部を貫通する。長尺状医療器具1に沿って各種の治療用のデバイス(例、バルーンカテーテル)をデリバリーして、閉塞部の治療が行われる。
【0113】
図11に示す長尺状医療器具の駆動装置10C及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100Cはまた、長尺状医療器具1の先端を、血管の偽腔から内膜を貫通させて真腔へ再突入させる際に使用することができる。このような使用方法は、
図11に示す長尺状医療器具の駆動装置10C及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100Cを用いること以外は、
図5を用いて説明した使用方法と同様である。
【0114】
図11に示す長尺状医療器具の駆動装置10C及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100Cはまた、
図6に示す長尺状医療器具の駆動装置60及び長尺状医療器具を備える医療デバイス600と同様に、駆動機構12Cの支持部材11に備えられたロッド16のフランジ16aが弾性体13Cに固定されていない構成を採用して、同様の効果を発揮させることができる。
【0115】
図11に示す長尺状医療器具の駆動装置10C及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100Cはまた、
図7に示す長尺状医療器具の駆動装置70及び長尺状医療器具を備える医療デバイス700、又は
図8に示す長尺状医療器具の駆動装置80及び長尺状医療器具を備える医療デバイス800と同様に、駆動機構12Cが備える弾性体13Cとして、コイルバネを採用して、同様の効果を発揮させることができる。
【0116】
<実施形態D-1>長尺状医療器具の駆動装置
図12は、長尺状医療器具の駆動装置(実施形態D-1)の構成を示す平面図である。
【0117】
図12の長尺状医療器具の駆動装置10Dは、前端1aと後端1bとを有する長尺状医療器具1を支持(又は把持)する支持部材11と、長尺状医療器具1が前端側へ移動するように支持部材11に駆動力を付与する駆動機構12Dとを備えている。
【0118】
駆動機構12Dは、支持部材11への前記駆動力の付与が停止された際に、支持部材11が更に前端側へ移動(慣性で移動)することを可能とする大きさの駆動力(以下「支持部材の慣性移動を可能とする駆動力」とも言う)を支持部材11へ付与する駆動機構である。
【0119】
駆動機構12Dの弾性体13Dとしては、ゴム紐が用いられている。このゴム紐は、支持部材11の慣性移動を可能とする駆動力が支持部材11へ付与されるように調整されている。
【0120】
ゴム紐の調整では、支持部材11への前記駆動力の付与が停止された際に、支持部材11が更に前端側へ移動(慣性で移動)するかどうかを確認しながら、例えば、ゴム紐の材料を適宜選択したり、あるいは、長さ、厚み又は幅などのゴム紐の形状及び寸法を適宜に調整する。このような調整は、特段に困難を伴う訳ではなく、過度の実験を行う必要はない。
【0121】
なお、駆動装置10Dの場合、
図3に示す駆動装置10と同様に弾性体13Dを伸張させたのち、この弾性体13Dが縮んで元の状態又は形状(
図1に示す弾性体13のように弾性体に力が加えられていない無負荷の状態又は形状と同じ配置)に戻ったときに、支持部材11への前記駆動力の付与が停止されることになる。その後、駆動装置10Dでは、
図4に示す駆動装置10と同様に、支持部材11が更に前端側へ移動(慣性で移動)する。
【0122】
長尺状医療器具の駆動装置10Dの構成及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100Dの構成は、駆動機構12Dが備える弾性体13Dとして、前記のような支持部材11の慣性移動を可能とする駆動力が支持部材11へ付与されるように調整されたゴム紐が用いられていること以外は、それぞれ
図1に示す長尺状医療器具の駆動装置10及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100と同様である。
【0123】
図12の長尺状医療器具の駆動装置10Dにおいて、
図1の長尺状医療器具の駆動装置10と同一の構成要素については、既に説明済みであるので、同一の符号を付して、重複した説明は行わない。
【0124】
駆動機構12Dとしては、上記のような弾性体13Dを備える駆動機構に代えて、前記のような支持部材11の慣性移動を可能とする限り、公知の駆動機構を用いることができる。駆動機構の例としては、直動駆動装置(代表例、リニアモータ)、又は回転駆動装置(代表例、モータ)とこの回転駆動装置の回転運動を直線運動に変換する変換器(代表例、送りねじ)とを組み合わせた駆動装置を用いることができる。支持部材11の慣性移動が可能となるように、直動駆動装置又は回転駆動装置の出力が調整される。直動駆動装置又は回転駆動装置の出力の調整では、支持部材が前記のような慣性移動をするかどうかを確認しながら、例えば、直動駆動装置又は回転駆動装置に供給される電力を調整する。電力の調整には、直動駆動装置又は回転駆動装置に供給される電流、電圧又は周波数を調整することを含む。このような調整は、特段に困難を伴う訳ではなく、過度の実験を行う必要はない。
【0125】
<実施形態D-2>長尺状医療器具を備える医療デバイス
図12に示す長尺状医療器具1と、長尺状医療器具の駆動装置10Dとにより、長尺状医療器具を備える医療デバイス100Dが構成される。
【0126】
長尺状医療器具を備える医療デバイス100Dは、前端1aと後端1bとを有する長尺状医療器具1と、長尺状医療器具1を支持(又は把持)する支持部材11と、長尺状医療器具1が前端側へ移動するように前記支持部材11に駆動力を付与する駆動機構12Dとを備える。前記駆動機構12Dが、支持部材11への前記駆動力の付与が停止された際に、支持部材11が更に前端側へ移動することを可能とする大きさの駆動力を前記支持部材11へ付与する駆動機構である。
【0127】
長尺状医療器具1と長尺状医療器具の駆動装置10Dの構成は、先に説明した通りである。
【0128】
<実施形態D-3>長尺状医療器具の駆動方法
長尺状医療器具の駆動方法は、前端1aと後端1bとを有する長尺状医療器具1と、長尺状医療器具1を支持(又は把持)する支持部材11と、長尺状医療器具1が前端側へ移動するように前記支持部材11に駆動力を付与する駆動機構12Dとを備え、駆動機構12Dが、支持部材11への前記駆動力の付与が停止された際に、支持部材11が更に前端側へ移動することを可能とする大きさの駆動力を支持部材11へ付与する駆動機構である長尺状医療器具を備える医療デバイス100Dを用意するステップ、前記支持部材に前記長尺状医療器具1を支持させるステップ(
図12参照)、及び駆動機構12Dの駆動力を支持部材11へ付与することにより、長尺状医療器具1を前端側へ移動させるステップを含む。
【0129】
図12に示す長尺状医療器具の駆動装置10D、長尺状医療器具を備える医療デバイス100D、及び医療デバイス100Dを用いた長尺状医療器具の駆動方法においては、支持部材11への前記駆動力の付与が停止された際に、支持部材11が更に前端側へ移動(慣性で移動)することができ、この際に駆動機構12Dから支持部材11へ駆動力が与えられることがない。
【0130】
長尺状医療器具の駆動装置10Dを用いると、例えば、血管の閉塞部の硬度が非常に大きくガイドワイヤの先端が閉塞部へ侵入することが難しい(前方へ移動することが難しい)状況が生じた場合に、駆動機構12Dから支持部材11への駆動力の付与が停止された際に、前端側へと移動する長尺状医療器具に不要な(長尺状医療器具を前端側に移動させるのに必要な駆動力を超えた)駆動力が付与されることがない。すなわち、前端側へ移動し難くなった長尺状医療器具に対して、更に前端側への移動を生じさせる駆動力(極端に大きな駆動力)が付与されることがない。
【0131】
医師は、長尺状医療器具1の後端側の部分を手で把持して操作し、その先端部を閉塞部に到達させるか、又は閉塞部の近傍の位置に配置する。次いで、必要に応じて、長尺状医療器具1に沿って、医療用のカテーテル2をデリバリーする。長尺状医療器具1の後端を、支持部材11の中央に備えられた通孔に挿入し、支持部材11を前端側へ移動させたのち、長尺状医療器具1を支持部材11に支持させて固定する。支持部材11に備えられたロッド16のフランジ16aを手で把持して後方側へ引くことにより、駆動機構12Dの弾性体13Dを伸長させる。次いでフランジ16aから手を離すことにより、伸長した弾性体13Dが縮んで元の状態(
図12に示すような弾性体に力が加えられていない無負荷の状態)に戻ると、支持部材11への前記駆動力の付与が停止し、支持部材11が更に前端側へ移動(慣性で移動)する。長尺状医療器具1は、支持部材11と共に慣性により前端側に比較的に高速で移動して閉塞部へ到達し、その先端部が閉塞部に衝突する。このような衝突により長尺状医療器具から閉塞部に比較的に大きな力(エネルギー)、例えば、長尺状医療器具1と支持部材11との慣性移動が可能となるような大きな力(エネルギー)が付与される。このため、長尺状医療器具1の先端が閉塞部へ侵入し易くなる。このような操作を繰り返すことにより、長尺状医療器具1が閉塞部を貫通する。長尺状医療器具1に沿って各種の治療用のデバイス(例、バルーンカテーテル)をデリバリーして、閉塞部の治療が行われる。
【0132】
図12に示す長尺状医療器具の駆動装置10D及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100Dはまた、長尺状医療器具1の先端を、血管の偽腔から内膜を貫通させて真腔へ再突入させる際に使用することができる。このような使用方法は、
図12に示す長尺状医療器具の駆動装置10D及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100Dを用いること以外は、
図5を用いて説明した使用方法と同様である。
【0133】
図12に示す長尺状医療器具の駆動装置10D及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100Dはまた、
図6に示す長尺状医療器具の駆動装置60及び長尺状医療器具を備える医療デバイス600と同様に、駆動機構12Dの支持部材11に備えられたロッド16のフランジ16aが弾性体13Dに固定されていない構成を採用して、同様の効果を発揮させることができる。
【0134】
図12に示す長尺状医療器具の駆動装置10D及び長尺状医療器具を備える医療デバイス100Dはまた、
図7に示す長尺状医療器具の駆動装置70及び長尺状医療器具を備える医療デバイス700、又は
図8に示す長尺状医療器具の駆動装置80及び長尺状医療器具を備える医療デバイス800と同様に、駆動機構12Dが備える弾性体13Dとして、コイルバネを採用して、同様の効果を発揮させることができる。
【符号の説明】
【0135】
1 長尺状医療器具
1a 前端(長尺状医療器具の)
1b 後端(長尺状医療器具の)
2 カテーテル
2a 先端(カテーテルの)
2b 後端(カテーテルの)
10 駆動装置
11 支持部材
12 駆動機構
13 弾性体
14 支持板
15a 支柱
15b 支柱
16 ロッド
16a フランジ
52 カテーテル
52a 先端
52b 後端
52c 通孔
52d 開口
100 医療デバイス