(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】ポリアミド系多層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/08 20060101AFI20230407BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230407BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
B32B27/08
B32B27/00 H
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2021096912
(22)【出願日】2021-06-09
(62)【分割の表示】P 2019039166の分割
【原出願日】2015-07-03
【審査請求日】2021-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】西本 豊
(72)【発明者】
【氏名】上原 徳男
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-276600(JP,A)
【文献】特開2014-061634(JP,A)
【文献】特開2002-155135(JP,A)
【文献】特開2007-136914(JP,A)
【文献】特開平11-227125(JP,A)
【文献】特開平04-059353(JP,A)
【文献】特開2002-178470(JP,A)
【文献】特開2004-216704(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0095960(US,A1)
【文献】国際公開第2016/053956(WO,A1)
【文献】特開平06-000924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00 - 43/00
B65D 65/00 - 65/46
B29C 55/00 - 55/30
B29C 61/00 - 61/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン-ビニルアルコール共重合体から主として構成されるEVOH樹脂層(A層)と、
前記A層の片面に隣接するとともに、ポリアミド系樹脂から主として構成されるポリアミド系樹脂層(B層)と、
前記A層を挟んで前記B層と反対側に配置されるとともに、
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、及びポリエチレンナフタレートの少なくとも1つから主として構成されるポリエステル系樹脂層(C層)と、
変性ポリエステル系エラストマーから主として構成され、前記A層と前記C層との間に配置される接着性樹脂層(D層)と
を備え、
前記A層の厚みは、前記C層の厚みよりも小さい、
ポリアミド系多層延伸フィルム。
【請求項2】
前記A層と前記D層との間に配置されるポリアミド系樹脂層
をさらに備える、
請求項1に記載のポリアミド系多層延伸フィルム。
【請求項3】
ドライラミネート加工用ポリアミド系多層延伸フィルムの製造方法であって、
工程(1)
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、及びポリエチレンナフタレートの少なくとも1つから主として構成されるポリエステル系樹脂層(C層)、変性ポリエステル系エラストマーから主として構成される接着性樹脂層(D層)、エチレン-ビニルアルコール共重合体から主として構成されるEVOH樹脂層(A層)、及びポリアミド系樹脂から主として構成されるポリアミド系樹脂層(B層)とをこの順に含んだフィルムを共押出する工程と、
工程(2)前記フィルムを二軸延伸する工程と、
をこの順で含み、
前記B層は、工程(2)の後に隣接してドライラミネート層が設けられるための層であり、
工程(1)は、工程(2)で延伸された後のフィルムにおいて、前記A層の厚みが前記C層の厚みよりも小さくなるように前記フィルムを共押出する工程である、
ドライラミネート加工用ポリアミド系多層延伸フィルムの製造方法。
【請求項4】
工程(1)は、前記A層と前記D層との間に、ポリアミド系樹脂層をさらに含むように前記フィルムを共押出する工程である、
請求項3に記載のドライラミネート加工用ポリアミド系多層延伸フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド系多層フィルムの技術分野に属する。本発明は、ガスバリア性を有するエチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」という。)樹脂層とポリアミド系樹脂層とを含むポリアミド系多層フィルムに関するものである。また、かかるポリアミド系多層フィルムから製造される、食品などの包装用袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス(酸素)バリア性に優れた材料としては、例えば、アルミ箔、塩化ビニリデン、EVOHが挙げられる。アルミ箔は全くガスを通さないが透明ではないため、内容物を見せたい包装材としては使用できない。塩化ビニリデンは、若干黄色みを帯びていることや、塩素を含んでいることもあって、コーティング材料としてフィルムに塗布され、部分的に食品用として使用されている。
【0003】
一方、EVOHは、無色透明で、ガスバリア性、耐油性などに優れた溶融成形可能な熱可塑性樹脂である。かかるEVOHをガスバリア層とするポリアミド系多層フィルムは、機械的強度、耐ピンホール性、ガスバリア性に優れており、食品や薬品等の包装用フィルムとして広く使用されている。
しかしながら、EVOHは、低湿度下では良好なガスバリア性を示すが、高湿度下ではガスバリア性が低下し、また熱水に晒されると白化してしまう可能性ある。そのため、高温でのボイル処理やレトルト処理を行う食品の包装材として、EVOH層を有するポリアミド系多層フィルムを用いる場合には、白化による外観不良を起こさないよう工夫が必要となる。
【0004】
ボイル処理やレトルト処理が行えるポリアミド系多層フィルムは、多数報告されている(例えば、特許文献1~4)。
特許文献1は、EVOHとポリアミド系樹脂あるいはポリエステル系樹脂からなる組成物を中間層とし、高透湿性樹脂(例えばポリアミド)を外層に、低透湿性樹脂(例えばポリプロピレン)を内層とする多層包装体(多層フィルム)について記載し、これによりレトルト処理によるEVOHの白化を改善することを示している。特許文献2は、特許文献1に記載の中間層をジルコニウム化合物で処理する多層包装体(多層フィルム)について記載し、これにより内容物が水・油からなる場合でもレトルト処理によるEVOHの白化を改善することを示している。
【0005】
また、特許文献3は、特定のEVOH(特定のエチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物)層と特定のポリアミド層とからなるポリアミド系多層フィルムについて記載し、これにより当該フィルムの耐ボイル性、耐レトルト性を向上させている。特許文献4は、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物層の両面をそれぞれ複数のポリアミド層で積層するポリアミド系多層フィルムについて記載し、これにより印刷やラミネート時におけるテンションや熱によるフィルムの伸長を少なくし、屈曲による耐ピンホール性および繰り返し接触による耐ピンホール性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平1-253442号公報
【文献】特開平7-329254号公報
【文献】国際公開第2004/113071号
【文献】特開2008-188774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、EVOH層を有するポリアミド系多層フィルムは多数報告されているが、高温でのボイル処理やレトルト処理を行うとEVOHが白化してしまうという課題は、十分には解決されていない。特許文献2に記載されたポリアミド系多層フィルムでは、ポリアミドとEVOHとの反応によりゲルが発生しうるため、外観上好ましくないものとなるおそれがある。
【0008】
本発明の課題は、主として、外観やガスバリア性を損なうことなく、高温でのボイル処理やレトルト処理などによるEVOHの白化を防ぐことができる包装用フィルムの製造に適した新規なポリアミド系多層フィルムを提供することにある。また、かかるポリアミド系多層フィルムから製造される包装用袋を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、EVOH樹脂層とポリアミド系樹脂層に加えて、一定の追加樹脂層を更に加えた多層フィルムとすることにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明としては、例えば、下記のものを挙げることができる。
【0011】
[1]EVOH樹脂層(A層)とポリアミド系樹脂層(B層)とを有し、加えて、シーラント層が積層されるものである場合には、少なくとも前記A層を挟んで当該シーラント層と対向する側の面に、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、および変性ポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂から主としてなる追加樹脂層(C層)を有し、シーラント層が積層されないものである場合には、前記A層を挟んで両側の面に前記C層を有することを特徴とする、ポリアミド系多層フィルム。
[2]さらに接着性樹脂層(D層)を有する、上記[1]に記載のポリアミド系多層フィルム。
[3]前記A層の厚みが、0.5~12μmの範囲内である、上記[1]または[2]に記載のポリアミド系多層フィルム。
[4]前記A層を挟んで前記C層と対向する側の面に、更にシーラント層を有する、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のポリアミド系多層フィルム。
【0012】
[5]上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のポリアミド系多層フィルムから製造されることを特徴とする、包装用袋。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高温高湿度の下でもEVOHの白化防止に優れる包装用フィルムを得ることができるから、特に高温でのボイル処理やレトルト処理などを行う食品に適した包装用袋を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳述する。
1 本発明フィルムについて
本発明のポリアミド系多層フィルム(以下、「本発明フィルム」という)は、EVOH樹脂層(A層)とポリアミド系樹脂層(B層)とを有し、加えて、シーラント層が積層されるものである場合には、少なくとも前記A層を挟んで当該シーラント層と対向する側の面に、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、および変性ポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂から主としてなる追加樹脂層(C層)を有し、シーラント層が積層されないものである場合には、前記A層を挟んで両側の面に前記C層を有することを特徴とする。
【0015】
ここで「主としてなる」とは、実質的に当該樹脂のみで構成されていることを意味するが、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の樹脂、添加剤などを含むことを排除するものではない。なお、本発明フィルムは、シーラント層を含んでいても、含んでいなくてもよい。
【0016】
1.1 EVOH樹脂層(A層)
EVOH樹脂層(A層)は、EVOHから主としてなる樹脂層である。EVOH樹脂層は、本発明フィルムの中間層ということができ、通常は一層のみであるが、複数層有することを妨げるものではない。
【0017】
EVOHは、通常、エチレン-ビニルエステル共重合体けん化物である。EVOHのエチレン含量としては、60モル%以下が適当であり、20~55モル%の範囲内が好ましく、25~45モル%の範囲内がより好ましい。エチレン含量が少なすぎると、耐水性、耐熱水性、耐湿性が低下するとともに、高湿度下のガスバリア性が損なわれ、耐ストレスクラッキング性が低下し、また良好な溶融加工特性の保持も困難になる。一方、60モル%より多いと、耐水性、耐熱水性、耐湿性は改善されるものの、本来の優れたガスバリア性が悪くなるおそれがある。ビニルエステル成分のけん化度は、通常、90モル%以上であり、95モル%以上が好ましく、98モル%がより好ましい。けん化度が90モル%未満では熱安定性が悪くなり、溶融加工時にゲルが発生しやすくなる。また、ガスバリア性、耐油性も低下し、EVOH本来の特性を保持し得なくなるおそれがある。
【0018】
EVOHに係る「ビニルエステル」としては特に制限されないが、例えば、低級または高級脂肪酸ビニルエステル(酢酸ビニルエステル、プロピオン酸ビニルエステル、ピパリン酸ビニルエステルなど)や芳香族カルボン酸ビニルを挙げることができる。この中、酢酸ビニルエステルが特に好ましい。よって、好ましいEVOHは、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物である。前記ビニルエステルは1種であっても、2種以上の併用であってもよい。
【0019】
また、EVOHには、本発明の効果を阻害しない範囲で、更に少量のプロピレン、イソブテン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のα-オレフィン、不飽和カルボン酸またはその塩・部分アルキルエステル・完全アルキルエステル・ニトリル・アミド・無水物、不飽和スルホン酸またはその塩等のコモノマーを含んでいてもよい。
【0020】
また、日本工業規格(JIS)K-7210に準拠して測定した場合(条件:210℃、21.18N荷重)のメルトフローレート(MFR)値が0.5~20g/10分の範囲内であるEVOHが好ましく、1~12g/10分の範囲内であるEVOHがより好ましい。かかるMFRが0.5g/10分より小さいと溶融押出しに支障が生じるおそれがあり、逆に20g/10分より大きいと製膜性の低下を生ずるおそれがある。
【0021】
EVOHは市販されており、それを本発明に用いることができる。そのような市販品としては、例えば、ソアノール(登録商標)(DC3203、DT2904、日本合成化学社製)、エバール(登録商標)(F171B、クラレ社製)を挙げることができる。
【0022】
1.2 ポリアミド系樹脂層(B層)
ポリアミド系樹脂層(B層)は、ポリアミド系樹脂から主としてなる樹脂層である。かかるポリアミド系樹脂としては、例えば、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、非晶質ポリアミド、ポリアミドエラストマーを挙げることができるが、本発明に係るポリアミド系樹脂層(B層)は、通常、脂肪族ポリアミドを必須成分とし、必要に応じて芳香族ポリアミド、非晶質ポリアミド、ポリアミドエラストマー等を含有してもよいものである。
【0023】
ポリアミド系樹脂層は、中間層であるEVOH樹脂層のいずれか一方の面側、または両方の面側に一または複数存在することができる。また、ポリアミド樹脂層とEVOH樹脂層とが隣接していてもよく、またポリアミド樹脂層とEVOH樹脂層との間に、後述する追加樹脂層(C層)や接着性樹脂層(D層)を有していてもよい。
【0024】
脂肪族ポリアミドとしては、脂肪族ナイロンおよびその共重合体を挙げることができる。具体的には、例えば、ポリカプラミド(ナイロン-6)、ポリ-ω-アミノヘプタン酸(ナイロン-7)、ポリ-ω-アミノノナン酸(ナイロン-9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン-11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン-12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン-2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン-4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン-6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン-6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン-6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン-8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン-10,8)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン-6/12)、カプロラクタム/ω-アミノノナン酸共重合体(ナイロン-6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-6/6,6)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-12/6,6)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-2,6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン-6,6/6,10)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン-6/6,6/6,10)、6T-6Iナイロン、MXD-6ナイロンを挙げることができる。これらは1種であっても、2種以上の併用であってもよい。
【0025】
芳香族ポリアミドとしては、例えば、キシリレンジアミン系ポリアミド、具体的にはメタおよび/またはパラキシリレンジアミンとアジピン酸等のジカルボン酸から合成された重合体を挙げることができる。
【0026】
非晶質ポリアミドとしては、例えば、イソフタル酸-テレフタル酸-ヘキサメチレンジアミン重縮合物を挙げることができる。
ポリアミドエラストマーとしては、例えば、ポリエーテルエステルアミドを挙げることができる。
【0027】
また、当該ポリアミド系樹脂の中、日本工業規格(JIS)K-6920(2009)に準拠して測定した場合(条件:96質量%の硫酸中、25℃)の相対粘度が、2.0~4.2の範囲内であるポリアミド系樹脂が好ましく、2.6~4.0の範囲内であるポリアミド系樹脂がより好ましい。かかる相対粘度が2.0より小さいと製膜性の低下のおそれがあり、4.2より大きいと溶融押出に支障が生じるおそれがある。
【0028】
ポリアミド系樹脂層中の脂肪族ポリアミドの含有量としては、通常、30~99質量%程度の範囲内、好ましくは50~99質量%程度の範囲内、より好ましくは80~96質量%程度の範囲内である。
【0029】
ポリアミド系樹脂層中の芳香族ポリアミド、非晶質ポリアミド、ポリアミドエラストマー等の含有量としては、これらを合わせて、通常、0~40質量%程度の範囲内、好ましくは2~30質量%程度の範囲内である。
【0030】
1.3 追加樹脂層(C層)
追加樹脂層(C層)は、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、および変性ポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂から主としてなる樹脂層である。これらの単独樹脂層であっても混合樹脂層であってもよい。
【0031】
追加樹脂層は、中間層であるEVOH樹脂層のいずれか一方の面側、または両方の面側に一または複数存在することができる。また、追加樹脂層とEVOH樹脂層とが隣接していてもよく、また追加樹脂層とEVOH樹脂層との間に、前記ポリアミド樹脂層(B層)や後述する接着性樹脂層(D層)を有していてもよい。
【0032】
1.3.1 ポリエステル系樹脂
本発明に係るポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレートを挙げることができる。これらは1種であっても、2種以上の併用であってもよい。また、必要に応じポリエステル系樹脂と相溶性のある他の樹脂を含有していてもよいが、C層の質量に対しポリエステル系樹脂が50質量%以上であることが好ましい。
【0033】
好ましいポリエステル系樹脂としては、融点が200℃以上のポリエステルを挙げることができるが、耐熱性の観点からポリエチレンテレフタレート(PET)がより好ましい。
【0034】
また、当該ポリエステル系樹脂の中、日本工業規格(JIS)K-7367-5に準拠して測定した場合(条件:25℃)の固有粘度(IV値)が、0.5~1.4dl/gの範囲内であるポリエステル系樹脂が好ましく、0.6~1.0の範囲内であるポリエステル系樹脂がより好ましい。かかる固有粘度が0.5dl/gより小さいと製膜性の低下のおそれがあり、1.4dl/gより大きいと溶融押出に支障が生じるおそれがある。
【0035】
1.3.2 ポリプロピレン系樹脂
本発明に係るポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体またはプロピレンとそれ以外のα-オレフィンとの共重合体である。かかるプロピレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、炭素数2~20のプロピレン以外のα-オレフィンを挙げることができ、具体的には、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-エチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンが挙げられる。この中、炭素数2~4の、例えば、エチレン、ブテンが好ましく、エチレンがより好ましい。これらプロピレン以外のα-オレフィンは、1種であっても、2種以上の併用であってもよい。
【0036】
当該プロピレン系共重合体中のプロピレン以外のα-オレフィンの含有割合は、0.5~15モル%の範囲内が適当であり、1~12モル%の範囲内が好ましく、3~10モル%の範囲内がより好ましい。
【0037】
当該プロピレン系共重合体としては、プロピレンとそれ以外のα-オレフィンとの共重合体であれば特に限定されないが、具体的には、例えば、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体等を挙げることができる。この中、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体が好ましく、プロピレン-エチレンランダム共重合体がより好ましい。また、これらの混合物であってもよい。
【0038】
当該ポリプロピレン系樹脂の中、日本工業規格(JIS)K-7210(1990)に準拠して測定した場合(条件:230℃、21.18N荷重)のメルトフローレート(MFR)値が0.5~50g/10分の範囲内であるポリプロピレン系樹脂が好ましく、1~20g/10分の範囲内であるポリプロピレン系樹脂がより好ましい。かかるMFRが0.5g/10分より小さいと溶融押出しに支障が生じるおそれがあり、逆に50g/10分より大きいと製膜性の低下を生ずるおそれがある。
【0039】
また、当該ポリプロピレン系樹脂の中、日本工業規格(JIS)K-7112(1999)に準拠して測定した場合の密度が、850~950kg/m3の範囲内であるポリプロピレン系樹脂が好ましく、860~920kg/m3の範囲内であるポリプロピレン系樹脂がより好ましい。
【0040】
1.3.3 ポリエチレン系樹脂
本発明に係るポリエチレン系樹脂は、エチレン単独重合体またはエチレンを主成分とする共重合体である。具体的には、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンを挙げることができる。
【0041】
直鎖状低密度ポリエチレンとしては、エチレンを主成分とし、例えば、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等のα-オレフィンとの共重合体を挙げることができる。
【0042】
その他のポリエチレン系樹脂として、エチレンと(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等との共重合体または多元重合体を挙げることもでき、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
【0043】
当該ポリエチレン系樹脂の中、日本工業規格(JIS)K-7210に準拠して測定した場合(条件:190℃、21.18N荷重)のメルトフローレート(MFR)値が、0.5~20g/10分の範囲内であるポリエチレン系樹脂が好ましく、1~10g/10分の範囲内であるポリプロピレン系樹脂がより好ましい。かかるMFRが0.5g/10分より小さいと溶融押出に支障が生じるおそれがあり、逆に20g/10分より大きいと製膜性の低下を生ずるおそれがある。
【0044】
また、当該ポリエチレン系樹脂の中、日本工業規格(JIS)K-7112に準拠して測定した場合の密度が、900~940kg/m3の範囲内であるポリプロピレン系樹脂が好ましく、905~935kg/m3の範囲内であるポリエチレン系樹脂がより好ましい。
【0045】
1.3.4 環状オレフィン系樹脂
本発明に係る環状オレフィン系樹脂としては、具体的には、(a)エチレンまたはプロピレンと環状オレフィン(例えばノルボルネン及びその誘導体やテトラシクロドデセン及びその誘導体など)とのランダム共重合体、(b)該環状オレフィンの開環重合体またはその共重合体、(c)前記(b)の重合体の水素添加物重合体、(d)不飽和カルボン酸及びその誘導体等による前記(a)~(c)のグラフト変性物などを挙げることができる。
【0046】
当該環状オレフィン系樹脂の中、米国材料試験協会規格(ASTM)D1238に準拠して測定した場合(条件:260℃、21.18N荷重)のメルトフローレート(MFR)値が、4~50g/10分の範囲内である環状オレフィン系樹脂が好ましく、6~38g/10分の範囲内である環状オレフィン系樹脂がより好ましい。かかるMFRが4g/10分より小さいと溶融押出に支障が生じるおそれがあり、逆に50g/10分より大きいと製膜性の低下を生ずるおそれがある。
【0047】
また、当該環状オレフィン系樹脂の中、米国材料試験協会規格(ASTM)D792に準拠して測定した場合の密度が、970~1100kg/m3の範囲内である環状オレフィン系樹脂が好ましく、980~1050kg/m3の範囲内である環状オレフィン系樹脂がより好ましい。
【0048】
1.3.5 変性ポリオレフィン系樹脂
本発明に係る変性オレフィン系樹脂は、不飽和カルボン酸、その無水物または誘導体がグラフト共重合したポリオレフィン系樹脂である。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレンまたはポリエチレンを挙げることができる。
【0049】
不飽和カルボン酸、その無水物またはそれらの誘導体は、1分子内にエチレン性不飽和結合とカルボキシル基、酸無水物基または誘導体基とを有する化合物である。不飽和カルボン酸類の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,3-ジカルボン酸、メチル-エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸;これらの不飽和カルボン酸の無水物;不飽和カルボン酸ハライド、不飽和カルボン酸アミド、および不飽和カルボン酸イミドの誘導体などがあげられる。より具体的には、塩化マレニル、マレイミド、N-フェニルマレイミド、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエートなどを挙げることができる。これらの中では、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ナジック酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。このような不飽和カルボン酸やその誘導体は1種であっても、2種以上の併用であってもよい。
【0050】
当該変性ポリオレフィン系樹脂の中、米国材料試験協会規格(ASTM)D792に準拠して測定した場合(条件:190℃、21.18N荷重)のメルトフローレート(MFR)値が、0.5~20g/10分の範囲内である変性ポリオレフィン系樹脂が好ましく、1~10g/10分の範囲内である変性ポリオレフィン系樹脂がより好ましい。かかるMFRが0.5g/10分より小さいと溶融押出に支障が生じるおそれがあり、逆に20g/10分より大きいと製膜性の低下を生ずるおそれがある。
【0051】
また、当該変性ポリオレフィン系樹脂の中、ASTM D1505に準拠して測定した場合の密度が、870~940kg/m3の範囲内である変性ポリオレフィン系樹脂が好ましく、880~935kg/m3の範囲内である変性ポリオレフィン系樹脂がより好ましい。
【0052】
1.4 その他の樹脂層
本発明フィルムは、A層~C層以外に必要に応じて他の重合体樹脂層、例えば、接着性樹脂層(D層)を有することができる。
【0053】
接着性樹脂層(D層)は、各層同士の接着を向上させるために設けることができる。このような接着性樹脂層(D層)に用いうる樹脂としては、例えば、変性ポリオレフィン系樹脂、変性ポリエステル系エラストマー、変性スチレン系エラストマーを挙げることができる。
【0054】
1.4.1 変性ポリオレフィン系樹脂
前記「1.3.5」の項で述べたものと同じものを挙げることができる。
【0055】
1.4.2 変性ポリエステル系エラストマー
本発明に係る変性ポリエステル系エラストマーは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性されたものである。具体的には、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有率が58~73質量%である飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーを、ラジカル発生剤の存在下、不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性処理して得られる変性ポリエステル系エラストマーである。不飽和カルボン酸またはその誘導体のグラフト反応および末端付加反応により反応性基が導入されるため、多種の樹脂との化学結合性、水素結合性が向上する。
【0056】
上記飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有するソフトセグメントと、ポリエステルを含有するハードセグメントとからなるブロック共重合体であり、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が、該ポリエステル系エラストマー中、58~73質量%程度の範囲内である。
【0057】
ソフトセグメントを構成するポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2及び1,3-プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコールを挙げることができる。ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量は、通常、400~6000の範囲内である。
【0058】
上記不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸、その酸無水物、そのエステルまたはその金属塩を挙げることができる。
【0059】
1.4.3 変性スチレン系エラストマー
本発明に係る変性スチレン系エラストマーは、カルボキシル基含有スチレン系エラストマーであり、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレンプロピレンブロック共重合体、スチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも1つのスチレン系エラストマーを、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物で変性したものである。具体的には、例えば、旭化成社製タフテックMシリーズ、クレイトンポリマー社製クレイトンFGシリーズを挙げることができる。
【0060】
1.5 その他
1.5.1 本発明フィルムの厚み
本発明フィルムの総厚みは、各層の構成や各層の成分などにより異なるが、通常、9~50μm程度の範囲内であり、12~40μm程度の範囲内が好ましい。
【0061】
各層の厚みに関しては、EVOH樹脂層(A層)の厚みは、通常、0.5~12μm程度の範囲内であり、1~10μm程度の範囲内が好ましく、1.5~6μm程度の範囲内がより好ましい。ポリアミド系樹脂層(B層)の厚みは、通常、3~35μm程度の範囲内であり、5~25μm程度の範囲内が好ましい。C層の厚みは、少なくとも1μmであり、1~10μm程度の範囲内が好ましく、1~6μm程度の範囲内がより好ましい。接着性樹脂層(D層)の厚みは、通常、0.5~5μm程度の範囲内であり、1~3μm程度の範囲内が好ましい。
【0062】
1.5.2 本発明フィルムの積層構造
本発明フィルムは、例えば、次のような積層構造を形成することができる。
・C層/(D層/)A層/B層
・C層/(D層/)B層/A層/B層/(D層/)C層
・C層/(D層/)B層/A層/B層
・B層/C層/(D層/)A層/B層
・B層/C層/(D層/)A層/C層/(D層/)B層
・B層/C層/(D層/)B層/A層/B層
・C層/(D層/)B層/A層/B層
【0063】
C層と他の層との間に、必要に応じて、接着性樹脂層(D層)を設けることが好ましい。C層が変性ポリオレフィン系樹脂から主としてなる場合は、接着性樹脂層(D層)を設けることは必ずしも必要でない。
【0064】
1.5.3 添加剤
本発明フィルム中には、本発明の効果を阻害しない範囲で、種々の添加剤を適当量配合することができる。かかる添加剤としては、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、充填剤、抗菌剤等を添加することも可能である。いくつかの添加剤の具体例は次の通りである。
【0065】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等を挙げることができる。フェノール系酸化防止剤としては、例えば、3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、6-[3-(3-t-ブチル4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルベンズ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサフォスフェピン、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、4,4-チオビス(6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、オクタデシル-3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4'-チオビス-(6-t-ブチルフェノール)を挙げることができる。リン系酸化防止剤としては、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ジ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-ペンタエリスリトール-ジホスファイト、9,10-ジハイドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレンを挙げることができる。チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル-3,3'-チオ-ジ-プロピネートを挙げることができる。
【0066】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、酸化チタン、ベンガラを挙げることができる。
【0067】
帯電防止剤としては、例えば、ペンタエリスリットモノステアレート、ソルビンモノパルミテート、硫酸化オレイン酸、ポリエチレンオキシド、カーボンワックスを挙げることができる。
【0068】
充填剤としては、例えば、グラスファイバー、アスベスト、マイカ、セリサイト、タルク、ガラスフレーク、バラストナイト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、モンモリロナイト、ヘクトライト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイトを挙げることができる。
【0069】
また、金属(アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等)塩が含まれていてもよく、更にはホウ素やシリカ等を含有していてもよい。
【0070】
1.6 本発明フィルムの製造方法
本発明フィルムは、特に制限なく公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、各層を構成する樹脂を所望の順序になるように、Tダイスより冷却水が循環するチルロール上に共押出せしめることによりフラット状の多層フィルムを得る。得られたフィルムは、例えば50~100℃のロール延伸機により2~4倍に縦延伸し、更に90~150℃の雰囲気のテンター延伸機により2~5倍に横延伸せしめ、引き続いて同テンターにより100~240℃雰囲気中で熱処理して本発明フィルムを得ることができる。本発明フィルムは一軸延伸または二軸延伸(同時二軸延伸、逐次二軸延伸)してもよく、得られた多層フィルムは、必要ならばその両表面又は片表面にコロナ放電処理を施すこともできる。
【0071】
2 本発明の包装用袋について
次に、本発明フィルムから製造される包装用袋(以下、「本発明包装用袋」という)について詳述する。本発明フィルムは包装用フィルムの製造に好適に用いることができる。
【0072】
食品用の本発明包装用袋を製造するに際しては、本発明フィルムのA層(中間層)を挟んでC層と対向する側の面にシーラント層を、常法により積層することが好ましい。このシーラント層が積層されたフィルム(包装用フィルム)を用い、シーラント層が最内層となるように処理し、次いでシーラント層面同士をヒートシールして袋状に加工することにより食品用の本発明包装用袋を製造することができる。具体的には、本発明フィルムから製造された包装用フィルムを用い、自動包装機等により成形し本発明包装用袋を製造することができる。かかる自動包装機としては、例えば、縦ピロー包装機、横ピロー包装機、その他の包装機・製袋機を挙げることができる。
【0073】
上記シーラント層としては、ヒートシール性を有する樹脂から製造することができ、そのような樹脂としては、例えば、低密度、中密度、高密度、直鎖状低密度などのポリエチレン;プロピレンホモポリマー、プロピレン-エチレンコポリマーなどのプロピレンコポリマー等のポリプロピレン;ポリ酢酸ビニル系樹脂を挙げることができる。
【0074】
ポリアミド系多層フィルムにシーラント層を付与する方法については、公知の方法を用いることができる。また、ヒートシールする方法も公知の方法を採用することができる。シーラント層の厚みとしては、通常、20μm以上であり、25~100μm程度の範囲内が好ましく、30~80μm程度の範囲内がより好ましい。
【0075】
本発明包装用袋で包装しうる内容物としては特に制限されないが、例えば、スープ、蒟蒻、漬物等の水物系の食品や、餅、ウィンナー、調味料等の食品、シャンプー、リンス、ボディソープ、洗剤等の日用品、医薬品、農薬、有機薬品を挙げることができる。その中でも本発明包装用袋は、ボイル食品やレトルト食品など高温高湿度で殺菌などを行う食品に有用である。
【0076】
本発明包装用袋の形態としては、例えば、3方シール形、封筒形、カゼット形、平底形等の袋状形態、スパウトパウチ、詰替えパウチを挙げることができる。
【実施例】
【0077】
以下に実施例等を掲げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0078】
主な原料は、次の通りである。
・ポリエステル:ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.71dl/g)
・EVOH:エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物(DC3203、日本合成化学社製)
・ナイロン:ナイロン6(96質量%硫酸中の相対粘度が3.5)
・接着1:変性ポリエステル系エラストマー(プリマロイIF203、三菱化学社製)
・接着2:無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(アドマーQF580、三井化学社製)
・変性PO:無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(アドマーNF556、三井化学社製)
・PP:プロピレン単独重合体(比重900kg/m3、MFR=3g/10分)
・PE:直鎖状低密度ポリエチレン(比重925kg/m3、MFR=2g/10分)
・環状PO:環状オレフィンコポリマー(比重1010kg/m3、MFR=32g/10分)
・CPP40:無延伸ポリプロピレンフィルム(パイレンフィルムCT-P1128、厚さ40μm、東洋紡績社製)
【0079】
[実施例1]
各層を構成する、ポリエステル樹脂(C層)、EVOH樹脂(A層)、ナイロン樹脂(B層)、および接着樹脂(D層)をそれぞれ溶融押出し、C層/D層/A層/B層の順序になるように、Tダイスより冷却水が循環するチルロール上に共押出しせしめて、フラット状の4層フィルムを得た。次いでこの4層フィルムを、65℃のロール延伸機により2.7倍に縦延伸し、次いで110℃の雰囲気のテンター延伸機により4倍に横延伸し、さらに同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理して厚さ15μmの4層延伸フィルム(本発明フィルム)を得た。
【0080】
得られた4層延伸フィルムにCPP40(シーラント層)を、B層面側にドライラミネート加工(ドライ塗布量4.0g/m2)によりラミネートすることによりラミネート包材(包装用フィルム)を得た。なお、ドライラミネート用の接着剤としては、A-626(三井化学社製)/A-50(三井化学社製)(重量配合比8/1)を用いた。
【0081】
[実施例2~11、比較例1、比較例2]
実施例1と同様にして、表1に示す実施例2~11、比較例1および比較例2に係る各積層構造のラミネート包材(包装用フィルム)を得た。
【0082】
【0083】
[試験例1]ボイル白化の評価(ヘイズ値の測定)
各ラミネート包材を40℃で48時間エージングした後、各ラミネート包材を用いて8cm×10cmの袋を作り、水50mL入れたものを評価用サンプルとした。このサンプルについて、沸騰水60分間ボイル処理を行った前後のヘイズ値の変化から白化評価を行った。ボイル処理後のヘイズ測定については、一晩常温にて乾燥した後に測定を行った。
【0084】
ヘイズ値は、日本電色工業株式会社製のヘイズメータNDH-5000を用いて、日本工業規格(JIS)K-7136(2000)に準拠して測定した。その結果を表2に示す。
【0085】
【0086】
表2の結果から、実施例1~11に係る本発明フィルムから製造されたラミネート包材のヘイズ値は0.5%以下と極めて低く、ボイル処理の白化が抑えられていることが明らかである。一方、比較例1と2に係るラミネート包材のヘイズ値は15%以上と高く、ボイル処理による白化を起こしていた。
【産業上の利用可能性】
【0087】
高温高湿度下でもEVOHの白化防止に優れる包装用フィルムを本発明フィルムから得ることができるので、本発明フィルムは、特に高温でのボイル処理やレトルト処理などを行う食品に適した包装用袋の製造に有用である。