(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】高分解能3Dスペクトル領域光学撮像装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20230407BHJP
G01N 21/23 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
G01N21/17 630
G01N21/23
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021110670
(22)【出願日】2021-07-02
(62)【分割の表示】P 2018513697の分割
【原出願日】2016-05-27
【審査請求日】2021-07-07
(32)【優先日】2015-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】517415285
【氏名又は名称】シライト プロプライエタリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】フリスケン スティーヴン ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン トレヴァー ブルース
(72)【発明者】
【氏名】セグレフ アーミン ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】フリスケン グラント アンドリュー
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-508068(JP,A)
【文献】米国特許第08237835(US,B1)
【文献】特開2012-235834(JP,A)
【文献】特開2007-181632(JP,A)
【文献】特開2012-016525(JP,A)
【文献】特開2010-151684(JP,A)
【文献】国際公開第2010/143601(WO,A1)
【文献】特表2013-525035(JP,A)
【文献】特開2013-144048(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0320816(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/61
A61B 3/00 - A61B 3/18
G01B 9/02
G01B 11/00 - G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)多波長光ビームを用いて、3つの空間次元で撮像されることになるサンプルの
連続した容積を照明するための照明系と、
(ii)前記サンプルの前記照明された容積から反射又は散乱した光をフーリエ平面内でサンプリングするためのサンプリングシステムと、
(iii)前記サンプリングされた反射又は散乱した光の波長の範囲にわたる位相及び振幅情報の同時捕捉のための計測システムと、
(iv)前記位相及び振幅情報を処理して前記照明された容積にわたる前記サンプルの光学特性の3次元画像を構成するためのプロセッサと、
を含むことを特徴とする高分解能光学撮像装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記サンプルの収差のデジタル再集束又はデジタル補正を使用して前記3次元画像を構成するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記計測システムは、前記サンプリングシステムから取得された前記サンプリングされた信号を2次元センサアレイの上に分散させるための波長分散要素を含み、
前記サンプリングシステムは、使用時に前記サンプリングされた信号の各々が前記センサアレイの1組のピクセルの上に分散されるように前記波長分散要素に対して位置決めされる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記サンプリングシステムは、2次元グリッドのサンプリング点を提供するために前記反射又は散乱光をサンプリングするための2次元レンズレットアレイを含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記光学特性は、位相、反射率、屈折率、屈折率変化、及び減衰を含む群から選択されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記計測システムは、前記反射又は散乱光の少なくとも第1及び第2の偏光状態に関する位相及び振幅情報を捕捉するようになっていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記光学特性は、複屈折性又は偏光度を含むことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記照明される容積に対応する照明される面が、面積で500μmx500μm未満又はそれに等しいことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記照明される容積に対応する前記照明される面は、面積で200μmx200μm未満又はそれに等しいことを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記3次元画像は、3μm又はそれよりも良好な空間分解能を有することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の装置を作動させるように構成されたコンピュータ可読プログラムコードを有するコンピュータ使用可能記録媒体。
【請求項12】
サンプルの高分解能光学撮像を行う方法であって、
(i)多波長光ビームを用いて、3つの空間次元で撮像されることになるサンプルの
連続した容積を照明する段階と、
(ii)前記サンプルの前記照明された容積から反射又は散乱した光をフーリエ平面内でサンプリングする段階と、
(iii)前記サンプリングされた反射又は散乱光の波長の範囲にわたって位相及び振幅情報を同時に捕捉する段階と、
(iv)前記位相及び振幅情報を処理して前記照明された容積にわたる前記サンプルの光学特性の3次元画像を構成する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法を実施するように構成されたコンピュータ可読プログラムコードを有するコンピュータ使用可能記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学撮像装置及び方法に関し、特に、複素視野をサンプリングする全帯域及び拡張焦点深度を有する3Dスペクトル領域断層映像法(OCT)装置に関する。しかし、本発明は、この特定の使用分野に限定されないは認められるであろう。
【0002】
関連出願
本出願は、引用により本明細書にその内容が組み込まれている2015年5月28日に出願の「高分解能3Dスペクトル領域光学撮像装置及び方法」という名称のオーストラリア仮特許出願第2015901970号からの優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
本明細書を通した従来技術のいずれの議論も、そのような従来技術が広く公知であること又は当分野における共通の一般的知識の一部を形成することの承認として決して考えるべきではない。
【0004】
断層映像法(OCT)は、反射又は散乱光の振幅及び位相内に含有された情報を使用して横方向及び深度分解能を用いてヒトの眼のような生体内組織を含む生体サンプルを研究するために広く使用されている干渉計測技術である。OCTシステムは、一般的に、Michelson干渉計構成を利用し、時間領域OCT及びスペクトル領域OCTという2つの主な手法が使用されている。
【0005】
時間領域OCTでは、サンプルから反射された光を同じ光源によって提供されるが時変経路長を有する基準ビームと干渉させることにより、数ミクロンのコヒーレンス長を有する超発光発光ダイオード(SLED)のような部分的にコヒーレントな光源のコヒーレンス特性が利用される。基準アーム内の経路長遅延に対応するサンプル内の特定深度では、結合された後方反射信号内に干渉縞包絡線が検出されることになり、深度次元の反射プロファイルが再構成されることを可能にする。一般的に、これは、一度に単一サンプル点のみに対して行われ、対応する深度の走査は、「A走査」として公知である。
【0006】
遅延線を走査する代わりに、スペクトル領域OCT技術は、波長の時変関数(掃引光源OCT)として反射光を基準ビームと干渉させることにより、又はグリッド又は他のスペクトル逆多重化器を使用して異なる波長を分散させ、検出器アレイに沿ってそれらを同時に検出することにより、反射光を解析する。スペクトル領域情報は、空間(深度)反射プロファイルのフーリエ変換であり、従って、空間プロファイルは、高速フーリエ変換(FFT)によって復元することができる。一般的は、スペクトル領域OCTシステムは、それらが約20から30dBの感度優位性を有するので時間領域OCTシステムよりも好ましい。
【0007】
OCT技術は、サンプルビームをサンプルに対して1つの軸に走査することによる横方向解像「B走査」、又は2つの軸に走査することによる「C走査」を提供するように適応させることができる。より高速な取得は、特に生体内サンプルによる運動誘発性アーチファクトを低減するために、走査のタイプにかかわらず一般的に望ましく、かつより高速な掃引光源走査速度及び光検出器アレイ読み出し速度を含むいくつかの分野での進歩により、過去20から25年にわたって大きく改善されてきた。しかし、特に生体内用途に対する走査スポット方式に関する根本的な制約は、レーザ安全規制によって提示されており、すなわち、印加電力を増大する可能性なしに走査速度を上げるために滞留時間を低減することは、必然的にSN比を低下させることになる。
【0008】
その結果、拡張サンプル区域が横方向分解能を用いて探査されるか又はサンプルスポットのアレイが同時に探査される「並列化」OCTシステムに向けた研究も行われてきた。時間領域OCTを並列化することは、例えば、「CCD検出器アレイを使用して横断方向スキャナを使用せずに画像を取得する方法及び装置」という名称の米国特許第5,465,147号明細書に説明されているように、CCDカメラ及び結像光学系を利用することによって比較的簡単である。これは、2次元(2D)正面像を提供し、深度分解能は、時間領域OCTで通常通りに基準ミラーを走査することによって与えられる。
【0009】
掃引光源スペクトル領域OCTは、Bonin他著「150万のA線/秒を有するヒト網膜の生体内フーリエ領域全視野OCT」、Optics Letters、2010年、第35巻(20号)、p.3432-3434に説明されるものと同様な様式で並列化することができる。しかし、各フレームは単一波長に対応するので、各A走査に対する取得時間は、フレーム周期と取得されたk点(波長サンプル)の数との積に等しい。フレームレートが数100kHzの超高速度カメラであっても、これは、何ミリ秒ものA走査取得時間をもたらす可能性があり、これは、特に生体内サンプルによる運動アーチファクトに至る可能性がある。「多チャネル光受信機」という名称のPCT特許出願番号PCT/AU2015/050788は、より高速な取得を可能にする代替並列化掃引光源OCT方式を開示している。1つの特定の実施では、サンプル上の複数のスポットが、同時に照明され、反射又は散乱信号光が、基準ビームと混合されて固有の搬送波周波数を有する複数のインタ-フェログラムを形成する。
【0010】
並列化分光計ベースのスペクトル領域OCTは、単一ショットのB走査取得を可能にするが、既存の方式は、2次元光検出器アレイの1つの軸が波長分散によって占められるという事実によって制限される。「線視野ホロスコピー」という名称の公開米国特許出願第2014/0028974 A1号明細書に説明された構成では、サンプル上にかつ基準ミラー上に線照明を生成するのに円柱レンズが使用される。
図1に模式的に示すように、線照明2からの組み合わされた戻りサンプルビーム及び基準ビームは、格子4のような分散要素によって分散され、2Dセンサアレイ6を用いて検出される。スペクトル軸8に沿うフーリエ変換は、照明線2に沿う各位置9に対するA走査を提供する。完全3次元(3D)撮像に対して、照明線は、直交方向に機械的に走査され、2次元センサアレイは繰返し読み出される。
【0011】
サンプルの直線B走査で十分であり、すなわち、3次元撮像が必要とされない場合であっても、例えば、レンズ収差などを補正するための又は被写界深度を深くするためのデジタル波面補正に対して直交方向の走査が依然として必要な場合がある。更に、これらの目的に対して、繰り返し直線走査は、位相コヒーレントでなければならず、これは一般的に困難である。
【0012】
スペクトル領域OCT装置は、単に検出された実数値の干渉信号ではなく、干渉信号の明確な複素視野をサンプリングして、正及び負の経路長遅延を区別し、その結果として全被写界深度範囲にわたる撮像を可能にするように構成されることが一般的に好ましい。複素視野を捕捉するための様々な手法が説明されている。例えば、Jungwirth他著「全帯域複素スペクトル領域断層映像法を使用する拡張型生体内前眼セグメント撮像」、Journal of Biomedical Optics、2009年、第14巻、第5号、p.050501は、走査スポット方式に対して、サンプルが走査される時にサンプル位相がディザリングされるというソリューションを説明している。この手法の基本的な欠点は、サンプルの移動により、走査中に位相干渉の損失が生じる場合があることである。改善された位相安定性を有する線視野システムは、サンプル位相のディザリングを必要としないものとして説明されている。例えば、US 2014/0028974 A1では、複素視野は、直線照明の遠視野の信号をサンプリングすることによって取得されるが、Huang他著「空間搬送波周波数を使用する全帯域並列フーリエ領域断層映像法」、Applied Optics、2013年、第52巻、第5号、p.958-965では、線視野は像平面に捕捉され、軸外基準が複素視野へのアクセスを提供する。
【0013】
OCT装置の横断方向分解能は、与えられた波長に対して対物レンズの開口数によって決定される。しかし、対物レンズの開口数を増大すると、被写界深度が必ず減少し、横断方向分解能と被写界深度の間のトレードオフをもたらす。このトレードオフを克服して被写界深度を増大するために、様々なソフトウエアベースの技術又はデジタル集束技術が提案されている。これらの手法は、一般的に、散乱点間の位相干渉が走査中及びサンプル収集中に維持され、視野が像平面又はフーリエ平面内で捕捉可能であると仮定する。
【0014】
一例では、合成開口技術は、Mo他著「拡張焦点深度を有する生体組織の深度符号化合成開口断層映像法」、Optics Express、2015年、第23巻、第4号、p.4935-4945に議論されている。別の例では、Kumar他著「全視野OCTのための数値的集束方法:共通信号モデルに基づく比較」、Optics Express、2014年、第22巻、第13号、p.16061-16078のフォワードモデル(FM)手法は、2DCMOSカメラを有する全視野掃引光源OCT装置を使用して、像平面で3D捕捉された干渉信号I(x,y,k)をサンプリングする段階を伴う。明確な位相は、サンプルがゼロ遅延の一方の側のみにあることを要求することによって取得され、デフォーカス補正は、フレネル波面伝播モデルに基づく数値的位相補正を適用することによって達成される。この数値的な位相補正は、最初にスペクトル軸に沿った実数値信号の1D FFTを実行して複素視野を与えることによって達成され、すなわち、I(x,y,k)→E(x,y,Δz)である。この後に、全ての正の遅延に対する横方向座標の2D FFTが続き、すなわち、E(x,y,Δz)→E(k
x,k
y,Δz)である。次に、デフォーカス補正のためのフレネル補正が適用され、すなわち、E(k
x,k
y,Δz)→E(k
x,k
y,Δz)γであり、ここで、
である。ここで、波長は、中心波長λ
0によって置換され、nは、サンプルの屈折率であり、Mは、OCT装置の倍率である。位相補正された視野の空間周波数に関する2D逆FFT(IFFT)は、全容積にわたって集束された画像を与える。
【0015】
全帯域線視野OCTシステムを使用するデジタル集束は、Fechtig他著「デジタル再集束を利用した全帯域線視野並列掃引光源撮像」、Journal of Modern Optics、2014年、DOI:10.1080/09500340.2014.990938で明らかにされている。この場合に、サンプル視野は像平面内で計測され、基準アームの軸外構成を使用して全帯域の計測が達成される。この軸外構成は、周波数空間における干渉項をシフトさせる横方向搬送波周波数を導入して、正及び負の周波数成分を分離することを可能にし、それによって複素信号の計測を可能にする。走査方向の位相ノイズはデジタル集束を1つの次元に制限し、これは、連続する各B走査に適用される。複素信号は、最初に、軸外基準に対応する空間軸に沿って1D FFTを行うことによって取得され、その後に、その複素共役アーチファクト及び非干渉性背景から正の周波数信号成分を選択するためにフィルタを適用することができる。その場合に、1D FFTは、明確な位相を有する信号計測値を提供する。デジタル集束は、スペクトル軸に沿って1D FFTを実行し、その後に横方向座標の1D FFTを続けてE(kx,Δz)を与えることによって達成され、ここで、Δzは、この時点で全帯域にわたって延びる。1D位相補正係数による乗算、及びその後の1D FFTは、全帯域にわたって集束されたB走査を与える。
【0016】
遠視野でのサンプリングを有する全視野掃引光源OCTシステムは、Hillmann他著「ホロスコピー-ホログラフィック断層映像法」、Optics Letters、2011年、第36巻、第13号、p.2390-2392に説明されている。このシステムでは、各波長に対する2Dインタ-フェログラムが特定の遅延Δzまで伝播される。次に、スペクトル軸に沿った1D FFTを使用して、この深度Δzに対して集束された物体を再構成する。この処理は、ある範囲の遅延に対して繰り返され、再集束された領域は、その後に互いに縫い合わされる。フーリエ平面でのサンプリングを使用する全帯域撮像は、Hillmann他著「効率的なホロスコピー画像再構成」、Optics Express、2012年、第20巻、第19号、p.21247-21263に説明されているように、明確な位相を取得するために軸外基準ビームを使用して明らかにされている。3D信号が非等間隔グリッドの上に補間されるこの数値的な後処理手法は、容積の拡張部分全体を通して焦点面分解能と同等の分解能を有する容積画像を提供する。最終的な3D FFTは、次に、集束された容積画像を与える。類似の方法は、例えば、Ralston他著「干渉計測合成開口顕微鏡法」、Nature Physics、2007年、第3巻、第2号、p.129-134に説明される逆合成開口顕微鏡法(ISAM)に使用されている。
【0017】
上述の手法は、深度依存デフォーカスに関して単純なモデルを仮定していることに注意されたい。部分開口相関を使用して未知の光学収差を補償する代替手法は、Kumar他著「全視野断層映像法のための部分開口相関ベースのデジタル適応光学系」、Optics Express、2013年、第21巻、第9号、p.10850-10866に説明されている。
【0018】
点走査システムと比較して、全視野OCTシステムの重要な制限は、それらが多経路散乱からのクロストークの影響を受けやすく、従って感度が低下するということである。これに加えて、共焦点フィルリングの欠如は、システムのコヒーレンス長の外側からの疑似反射に対する感度を増大させる。US 2014/0028974 A1の線視野手法は、1つの軸における共焦点ゲイティングによる全視野システムと比較したこれらの制限の部分的緩和を行う。クロストークを軽減する代替手法は、空間的にインコヒーレントな光源を使用することである。
【0019】
文脈上明らかに他を意味しない限り、この説明及び特許請求の範囲を通して「含んでいる」及び「含む」などの語は、排他的又は包括的な意味とは対照的に包含的な意味に解釈されるものとする。すなわち、それらは、「含むが、それに限定されない」という意味に解釈されるものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】米国特許第5,465,147号明細書
【文献】US 2014/0028974 A1
【文献】PCT/AU2015/050788
【非特許文献】
【0021】
【文献】Bonin他著「150万のA線/秒を有するヒト網膜の生体内フーリエ領域全視野OCT」、Optics Letters、2010年、第35巻(20号)、p.3432-3434
【文献】Jungwirth他著「全帯域複素スペクトル領域断層映像法を使用する拡張型生体内前眼セグメント撮像」、Journal of Biomedical Optics、2009年、第14巻、第5号、p.050501
【文献】Huang他著「空間搬送波周波数を使用する全帯域並列フーリエ領域断層映像法」、Applied Optics、2013年、第52巻、第5号、p.958-965
【文献】Mo他著「拡張焦点深度を有する生体組織の深度符号化合成開口断層映像法」、Optics Express、2015年、第23巻、第4号、p.4935-4945
【文献】Kumar他著「全視野OCTのための数値的集束方法:共通信号モデルに基づく比較」、Optics Express、2014年、第22巻、第13号、p.16061-16078
【文献】Fechtig他著「デジタル再集束を利用した全帯域線視野並列掃引光源撮像」、Journal of Modern Optics、2014年、DOI:10.1080/09500340.2014.990938
【文献】Hillmann他著「ホロスコピー-ホログラフィック断層映像法」、Optics Letters、2011年、第36巻、第13号、p.2390-2392
【文献】Hillmann他著「効率的なホロスコピー画像再構成」、Optics Express、2012年、第20巻、第19号、p.21247-21263
【文献】Ralston他著「干渉計測合成開口顕微鏡法」、Nature Physics、2007年、第3巻、第2号、p.129-134
【文献】Kumar他著「全視野断層映像法のための部分開口相関ベースのデジタル適応光学系」、Optics Express、2013年、第21巻、第9号、p.10850-10866
【文献】Dong他著「3D再集束及び超分解能マクロスコピック結像のための開口走査フーリエタイコグラフィ」、Optics Express 2014年、第22巻、第11号、p.13586-13599
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、従来技術の制限の少なくとも1つを克服又は改善し、又は有用な代替物を提供することである。好ましい形態での本発明の目的は、単一ショット取得技術を使用してサンプルの3D画像を取得するためのスペクトル領域OCT装置及び方法を提供することである。好ましい形態での本発明の別の目的は、サンプル眼に存在する収差の補正を用いた小容積の網膜から反射又は散乱した光のスペクトル特性の数値的再構成に基づいて、網膜の改善された高分解能光学画像を取得するための装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第1の態様により、網膜撮像(retinal imaging)のための装置を提供し、装置は、(i)多波長光源(multi-wavelength optical source)と、(ii)光源から放出された光の少なくとも2つの部分をサンプル眼(sample eye)の網膜の2又は3以上の容積(volume)の各々の上に向けるための角度可変照明系と、(iii)各信号が反射又は散乱光の電界ベクトルの位相及び振幅の関数である2又は3以上の容積の各々から反射又は散乱した光の信号を受信するためのかつ信号の各々に対して波長の範囲にわたって同時計測を行うための計測システムと、(iv)計測値を処理して2又は3以上の容積にわたって網膜の光学特性の1又は2以上の数値表現を発生させるためのかつ1又は2以上の数値表現から2又は3以上の容積の少なくとも一部分を含む網膜の領域にわたる3次元合成画像を生成するためのプロセッサとを含む。
【0024】
本発明の第2の態様により、サンプルを撮像するための装置を提供し、装置は、(i)多波長光源と、(ii)光源から放出された光の少なくとも2つの部分を装置の屈折力要素(optical power element)の焦点面に又はその近くに位置付けられたサンプルの2又は3以上の容積の各々の上に順次向けるための照明系と、(iii)各信号が反射又は散乱光の電界ベクトルの位相及び振幅の関数である2又は3以上の容積の各々から反射又は散乱した光の信号を受信するためのかつ信号の各々に対して波長の範囲にわたって同時計測を行うための計測システムと、(iv)計測値を処理して2又は3以上の容積にわたってサンプルの光学特性の1又は2以上の数値表現を発生させるためのかつ1又は2以上の数値表現から2又は3以上の容積の少なくとも一部分を含む領域にわたるサンプルの3次元合成画像を生成するためのプロセッサとを含む。
【0025】
第1及び第2の態様は、いくつかの優先事項を共有する。好ましくは、プロセッサは、サンプル眼の又はサンプルの収差のデジタル再集束(digital refocusing)又はデジタル補正を使用して3次元合成画像を生成するようになっている。ある一定の実施形態では、プロセッサは、2又は3以上の容積の各々にわたって光学特性の数値表現を発生させ、かつ数値表現から3次元合成画像を生成するようになっている。他の実施形態では、プロセッサは、2又は3以上の容積にわたって光学特性の数値表現を発生させ、かつ数値表現から3次元合成画像を生成するようになっている。
【0026】
ある一定の実施形態では、照明系は、光の少なくとも2つの部分を網膜の2又は3以上の容積の上に順次向けるようになっている。他の実施形態では、照明系は、光の少なくとも2つの部分を網膜の2又は3以上の容積の上に同時に向けるようになっている。
【0027】
計測システムは、好ましくは、信号をサンプリングするための2次元レンズレットアレイと、サンプリングされた信号を2次元センサアレイの上に分散させるための波長分散要素(wavelength dispersive element)とを含み、レンズレットアレイのレンズレットは、使用時にサンプリングされた信号の各々がセンサアレイの1組のピクセルの上に分散されるように、波長分散要素に対して位置決めされる。ある一定の実施形態では、2次元レンズレットアレイは、信号をフーリエ平面内でサンプリングするように位置決めされる。好ましくは、2次元レンズレットアレイは、波長分散要素の分散軸に対して角度を付けたレンズレットの直線アレイを含む。
【0028】
好ましくは、2又は3以上の容積の隣接する対は、部分的に重なる。ある一定の実施形態では、プロセッサは、3次元合成画像を網膜又はサンプルの高分解能B走査に変えるようになっている。
【0029】
ある一定の実施形態では、光学特性は、位相、反射率、屈折率、屈折率の変化、及び減衰を含む群から選択される。ある一定の実施形態では、計測システムは、信号の少なくとも第1及び第2の偏光状態に関する位相及び振幅情報を捕捉するようになっている。これらの実施形態では、光学特性は、複屈折性又は偏光度を含む場合がある。
【0030】
2又は3以上の容積の各々に対して、網膜又はサンプルの照明される面は、好ましくは、面積で500μmx500μm未満又はそれに等しく、より好ましくは、面積で200μmx200μm未満又はそれに等しい。
【0031】
本発明の第3の態様により、(i)各画像が、波長の範囲にわたる位相及び振幅情報を含み、各々が、単一露光で取得され、第2の画像が、第1の画像後の予め決められた期間に取得されるサンプルの領域の光学特性の第1及び第2の画像を3つの空間次元で取得するための撮像システムと、(ii)(a)第1の画像を第2の画像に位置合わせして、いずれかの空間次元でサンプルの運動又は変形によって生じる空間分解位相シフトを決定し、かつ(b)運動又は変形に関連付けられたサンプルの変位の少なくとも1つの成分を位相シフトから決定するためのプロセッサとを含む相対位相感応断層映像装置(relative phase-sensitive optical coherence tomography apparatus)を提供する。
【0032】
プロセッサは、好ましくは、位相シフト及び予め決められた期間から運動又は変形に関連付けられたサンプルの変位率を決定するようになっている。ある一定の実施形態では、プロセッサは、サンプルの変形に関連付けられた歪みを計測し、又はサンプルに関するエラストグラフィ(elastography)計測を行うようになっている。
【0033】
本発明の第4の態様により、(i)サンプルの容積を少なくとも第1の偏光状態の光で照明するための多波長光源を含む照明系と、(ii)サンプルから反射又は散乱した光の一部分を光源から離れるように向けるための光スプリッタと、(iii)サンプルから反射又は散乱した光の反射又は散乱光の電界ベクトルの位相及び振幅の関数である信号の波長の範囲にわたって少なくとも第1及び第2の偏光状態に対して第1の組の同時計測を行うための計測システムと、(iv)第1の組の同時計測値を処理してサンプルの照明された容積の1又は2以上の偏光特性の3次元表現を発生させるためのプロセッサとを含む偏光感応断層映像装置(polarisation-sensitive optical coherence tomography apparatus)を提供する。
【0034】
好ましくは、1又は2以上の偏光特性は、複屈折性又は偏光度を含む。
【0035】
ある一定の実施形態では、照明系は、第1の偏光状態とは異なる第2の偏光状態の光でサンプルの容積を続けて照明するようになっており、計測システムは、波長の範囲にわたって第2の組の同時計測を行うようになっている。これらの実施形態では、プロセッサは、好ましくは、第1及び第2の組の同時計測値を処理してサンプルの照明された容積の1又は2以上の偏光特性の3次元表現を発生させるようになっている。
【0036】
好ましい実施形態では、光スプリッタは、偏光非依存ビームスプリッタを含む。好ましくは、光スプリッタは、内部全反射面と、サンプルを照明するための光の透過を可能にするためにその面での内部全反射を局所的に中断させる1又は2以上の開口とを有する開口付き反射器を含む。より好ましくは、開口付き反射器は、1又は2以上の開口を形成する1又は2以上の局所的屈折率整合領域によって離間した2つの内部全反射面を含む。
【0037】
本発明の第5の態様により、拡張された被写界深度にわたってサンプルを撮像するための断層映像装置(optical coherence tomography apparatus)を提供し、装置は、(i)2又は3以上の入射角で入射し、各々が少なくとも第1及び第2の波長を有するビームを用いて、3つの空間次元で撮像されることになるサンプルの容積を照明するようになった照明系と、(ii)少なくとも第1及び第2の波長にわたって、かつ少なくとも各入射角に対して単一ショットで、2又は3以上の入射角で照明されたサンプルの容積から反射又は散乱した光の位相及び振幅の2次元グリッドのサンプリング点を計測するようになった干渉計と、(iii)2又は3以上の入射角からの計測値をフーリエ領域で互いに位置合わせして縫い合わせて計測値の拡張フーリエ場を生成し、かつ拡張フーリエ場計測値のフーリエ変換又はデジタル処理によってサンプルの光学特性の3次元画像を発生させるためのプロセッサとを含む。
【0038】
ある一定の実施形態では、照明系は、2又は3以上の入射角で入射するビームによってサンプル容積を順次照明するようになっている。代替実施形態では、照明系は、2又は3以上の入射角で入射するビームによってサンプル容積を同時に照明するようになっている。
【0039】
好ましい実施形態では、干渉計は、2次元グリッドのサンプリング点を提供するための2次元レンズレットアレイと、2次元センサアレイと、サンプリング点の各々からの光をセンサアレイの上に分散させるための波長分散要素とを含み、レンズレットアレイのレンズレットは、使用時にサンプリング点の各々からの光がセンサアレイの1組のピクセルの上に分散されるように波長分散要素に対して位置決めされる。ある一定の実施形態では、2次元レンズレットアレイは、信号をフーリエ平面内でサンプリングするように位置決めされる。2次元レンズレットアレイは、好ましくは、波長分散要素の分散軸に対して角度を付けたレンズレットの直線アレイを含む。好ましい実施形態では、3次元画像の横方向分解能は、拡張フーリエ場計測値(extended Fourier Field measurements)によって強化される。
【0040】
本発明の第6の態様により、(i)多波長光ビームを用いて、3つの空間次元で撮像されることになるサンプルの容積を照明するための照明系と、(ii)サンプルの照明された容積から反射又は散乱した光をフーリエ平面内でサンプリングするためのサンプリングシステムと、(iii)サンプリングされた反射又は散乱した光の波長の範囲にわたる位相及び振幅情報の同時捕捉のための計測システムと、(iv)位相及び振幅情報を処理して、照明された容積にわたるサンプルの光学特性の3次元画像を構成するためのプロセッサとを含む高分解能光学撮像装置(high resolution optical imaging apparatus)を提供する。
【0041】
好ましい形態では、プロセッサは、サンプルの収差のデジタル再集束又はデジタル補正を使用して3次元画像を構成するようになっている。
【0042】
好ましい実施形態では、計測システムは、サンプリングシステムから取得されたサンプリングされた信号を2次元センサアレイの上に分散させるための波長分散要素を含み、サンプリングシステムは、使用時にサンプリングされた信号の各々がセンサアレイの1組のピクセルの上に分散されるように波長分散要素に対して位置決めされる。サンプリングシステムは、好ましくは、2次元グリッドのサンプリング点を提供するために反射又は散乱光をサンプリングするための2次元レンズレットアレイを含む。
【0043】
ある一定の実施形態では、光学特性は、位相、反射率、屈折率、屈折率変化、及び減衰を含む群から選択される。ある一定の実施形態では、計測システムは、反射又は散乱した光の少なくとも第1及び第2の偏光状態に関する位相及び振幅情報を捕捉するようになっている。これらの実施形態では、光学特性は、複屈折性又は偏光度を含む場合がある。
【0044】
照明される容積に対応する照明される面は、好ましくは、面積で500μmx500μm未満又はそれに等しく、より好ましくは、面積で200μmx200μm未満又はそれに等しい。好ましい実施形態では、3次元画像は、3μm又はそれよりも良好な空間分解能を有する。
【0045】
本発明の第7の態様により、サンプル眼の網膜を撮像する方法を提供し、本方法は、(i)多波長光ビームを与える段階と、(ii)角度可変照明系を使用して、多波長光ビームの少なくとも2つの部分をサンプル眼の網膜の2又は3以上の容積の各々の上に向ける段階と、(iii)各信号が反射又は散乱光の電界ベクトルの位相及び振幅の関数である2又は3以上の容積の各々から反射又は散乱した光の信号を受信する段階と、(iv)信号の各々に対して波長の範囲にわたって同時計測を行う段階と、(v)計測値を処理して、2又は3以上の容積にわたって網膜の光学特性の1又は2以上の数値表現を発生させ、かつ1又は2以上の数値表現から2又は3以上の容積の少なくとも一部分を含む網膜の領域にわたる3次元合成画像を生成する段階とを含む。
【0046】
本発明の第8の態様により、サンプルを撮像する方法を提供し、本方法は、(i)多波長光ビームを与える段階と、(ii)多波長光ビームの少なくとも2つの部分をサンプルの2又は3以上の容積の各々の上に順次向ける段階と、(iii)各信号が反射又は散乱光の電界ベクトルの位相及び振幅の関数である2又は3以上の容積の各々から反射又は散乱した光の信号を受信する段階と、(iv)信号の各々に対して波長の範囲にわたって同時計測を行う段階と、(v)計測値を処理して、2又は3以上の容積にわたってサンプルの光学特性の1又は2以上の数値表現を発生させ、かつ1又は2以上の数値表現から2又は3以上の容積の少なくとも一部分を含む領域にわたってサンプルの3次元合成画像を生成する段階とを含む。
【0047】
本発明の第9の態様により、サンプルの相対位相感応断層映像計測を行う方法を提供し、本方法は、(i)各画像が波長の範囲にわたる位相及び振幅情報を含み、各々が単一露光で取得され、第2の画像が第1の画像後の予め決められた期間に取得されるサンプルの領域の光学特性の第1及び第2の画像を3つの空間次元で取得する段階と、(ii)第1の画像を第2の画像に位置合わせして、いずれかの空間次元内でサンプルの運動又は変形によって生じる空間分解位相シフトを決定する段階と、(iii)運動又は変形に関連付けられたサンプルの変位の少なくとも1つの成分を位相シフトから決定する段階とを含む。
【0048】
本発明の第10の態様により、サンプルの偏光感応断層映像計測を行う方法を提供し、本方法は、(i)少なくとも第1の偏光状態の多波長光でサンプルの容積を照明する段階と、(ii)サンプルから反射又は散乱した光の一部分を多波長光の光源から離れるように向ける段階と、(iii)少なくとも第1及び第2の偏光状態に対して、信号が反射又は散乱光の電界ベクトルの位相及び振幅の関数であるサンプルから反射又は散乱した光の信号の波長の範囲にわたって第1の組の同時計測を行う段階と、(iv)第1の組の同時計測値を処理して、サンプルの照明された容積の1又は2以上の偏光特性の3次元表現を発生させる段階とを含む。
【0049】
本発明の第11の態様により、拡張被写界深度にわたってサンプルの断層映像撮像を行う方法を提供し、本方法は、(i)2又は3以上の入射角で入射し、かつ各々が少なくとも第1及び第2の波長を有するビームを用いて、3つの空間次元で撮像されることになるサンプルの容積を照明する段階と、(ii)少なくとも第1及び第2の波長にわたって、かつ少なくとも各入射角に対して単一ショットで、2又は3以上の入射角で照明されたサンプルの容積から反射又は散乱した光の位相及び振幅の2次元グリッドのサンプリング点を干渉法によって計測する段階と、(iii)2又は3以上の入射角からの計測値をフーリエ領域で互いに位置合わせして縫い合わせて計測値の拡張フーリエ場を生成する段階と、(iv)拡張フーリエ場計測値のフーリエ変換又はデジタル処理によってサンプルの光学特性の3次元画像を発生させる段階とを含む。
【0050】
本発明の第12の態様により、サンプルの高分解能光学撮像を行う方法を提供し、本方法は、(i)多波長光ビームを用いて、3つの空間次元で撮像されることになるサンプルの容積を照明する段階と、(ii)サンプルの照明された容積から反射又は散乱した光をフーリエ平面内でサンプリングする段階と、(iii)サンプリングされた反射又は散乱光の波長の範囲にわたって位相及び振幅情報を同時に捕捉する段階と、(iv)位相及び振幅情報を処理して、照明された容積にわたるサンプルの光学特性の3次元画像を構成する段階とを含む。
【0051】
本発明の第13の態様により、第1から第6の態様のいずれか1つに記載の装置を作動させるか又は第7から第12の態様のいずれか1つに記載の方法を実施するように構成されたコンピュータ可読プログラムコードを有するコンピュータ使用可能媒体を含む製造物品を提供する。
【0052】
本発明の第14の態様により、光を反射するための内部全反射面と、反射せずに光を透過させるためにその面での内部全反射を局所的に中断させる1又は2以上の開口とを含む開口付き反射器を提供する。
【0053】
好ましくは、開口付き反射器は、1又は2以上の開口を形成する1又は2以上の局所的屈折率整合領域によって離間した2つの内部全反射面を含む。より好ましくは、開口付き反射器は、1又は2以上の開口を形成する屈折率整合接着剤の局所的領域を有する固定的に取り付けられて互いに離間した2つの内部全反射面を形成する研磨された光学面を備えた2つのプリズムを含む。2つの内部全反射面は、好ましくは、約10μmだけ離間している。
【0054】
ここで添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を一例として以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】従来技術の線視野OCTシステムにおける2Dセンサアレイを使用するB走査データの取得を模式的な形態に示す図である。
【
図2】2つの横方向次元及び1つのスペクトル次元と同等な3つの空間次元からのデータを2Dセンサアレイの上にマップするための一般的な方式を示す図である。
【
図3】フーリエ平面でのサンプリングを有する
図2の方式の実施形態を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態によるサンプルから散乱又は反射された光のフーリエ平面サンプリングに対して構成されたスペクトル領域OCT装置を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態によるサンプルから散乱又は反射された光のフーリエ平面サンプリングに対して構成された別のスペクトル領域OCT装置を示す図である。
【
図6】基準ビーム及び戻りサンプルビームの偏光を解析する時に生じるサンプルパワーの損失を低減するための方式を示す図である。
【
図7】2Dセンサアレイの上に分散されたビームレットの2Dグリッドのマッピングを示す図である。
【
図8】フーリエ平面内でサンプリングして取得されたインタ-フェログラムの例示的2Dフーリエ空間変換のマグニチュードを示す図である。
【
図9】像平面でのサンプリングを有する
図2の方式の実施形態を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態によるサンプルから散乱又は反射された光の像平面サンプリングに対して構成されたスペクトル領域OCT装置を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態によるサンプルから散乱又は反射された光の像平面サンプリングに対して構成された別のスペクトル領域OCT装置を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態によるサンプルから散乱又は反射された光の像平面サンプリングに対して構成された更に別のスペクトル領域OCT装置を示す図である。
【
図13】本発明の実施形態によるサンプルから散乱又は反射された光の像平面サンプリングに対して構成された線形OCT装置を示す図である。
【
図13A】与えられた波長に対して
図13の装置で取得されたインタ-フェログラムの2D FFTを示す図である。
【
図13B】
図13の装置で取得されたインタ-フェログラムの分散波長に対する2D FFTを示す図である。
【
図14】本発明の実施形態に従って横方向分解能の強化及び/又は拡張焦点深度のために眼球サンプルに対して角度的に構造化された照明を提供するのに適するスペクトル領域OCT装置を示す図である。
【
図14A】角度的に構造化された照明を非眼球サンプルに提供するための
図14の装置の変形を挿入図形式に示す図である。
【
図15】
図14の装置に使用するのに適する開口付き反射器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
OCTデータの単一ショット取得が、速度の改善、特に生体内サンプルによる運動アーチファクトを低減するためだけでなく、デジタル再集束又はデジタル波面補正のために位相干渉を保持するためにも有利であることは、従来技術の先の説明から明らかであろう。単一ショットではない、すなわち、センサアレイの複数回の読み出しを必要とする複素視野のデジタル再構成のための取得方式は、複数フレームの各々におけるデータの間で位相整合を保証することの困難さに直面する。この困難さは克服できないものではないが、例えば、隣接するサンプル容積から取得された単一ショット画像を互いに縫い合わせるために追加の計算を必要とする。
【0057】
US 2014/0028974 A1に説明されているような既存の分光計ベースのスペクトル領域OCTシステムは、単一ショットでB走査(1つの横方向次元)を取得することができるが、単一ショットでのC走査(2つの横方向次元)は取得することができない。これは、
図1に示すように、2Dセンサアレイの1つの軸が波長分散によって占められるためである。この制限は、例えば、2Dレンズレットアレイ、MEMSミラーアレイ、又は回折光学素子(DOE)を有することができるサンプリングシステムを使用して、結合された戻りサンプル波面及び基準波面が2つの横方向次元でサンプリングされる場合に克服することができ、取得されるサンプリング点は2Dセンサアレイのピクセルの別々の組の上に分散される。この一般的な方式の効果は、2つの横方向次元及び1つのスペクトル次元と同等な3つの空間次元からのデータを2Dセンサアレイの上に詰め込むことである。ピクセルの別々の組の上に分散されたサンプリング点のマッピングは、例えば、波長分散要素に関して2Dレンズレットアレイのレンズレットのようなサンプリング点の適切な方向付け又は位置決めによって保証することができる。
図2に模式的に示すように、この一般的な方式を実施する1つの特定の方法は、ビームレット14-1、14-2などを2Dセンサアレイ6の上に分散させる分散要素4の分散軸11に対して角度θで傾斜したレンズレットの直線(X,Y)アレイを有する2Dレンズレットアレイ10で結合された波面をサンプリングすることである。傾斜角が適正に選択され、部分破断図に示すようにセンサアレイが十分に微細なピクセル12を有する場合に、レンズレットアレイからの各ビームレット14-1、14-2などは、例えば、格子4により、センサアレイのピクセル16-1、16-2のような固有の組の上に分散させることができ、それによって単一ショットでのC走査取得が可能になる。
【0058】
好ましい固有なマッピングを取得するための一般的な要件を表現する別の方法は、サンプリングされたビームレットのセンサアレイ6上への投影13が、センサアレイ上への分散要素4の分散軸11の投影に対して適切な角度を形成することである。他のソリューション、例えば、レンズレットの非直線的配置を有する2Dレンズレットアレイを使用することが当業者に想起されるであろう。
【0059】
理想的は、波長分散要素及びセンサアレイ6は、センサアレイ上への分散軸11の投影がセンサアレイ内のピクセル12の行と平行に、すなわち、図示のようにセンサアレイの軸と平行であるように配置される。しかし、実際は、各ビームレットからセンサアレイ上に形成された分散像は、一般的にある程度の曲率を有するので、公知であることだが、マッピングが拡張された長さにわたって単一行のピクセルに対応する可能性は低い。
【0060】
以下に説明するシステムは、一般的に、サンプルでの直径が100μm程度の多波長平行化又はほぼ平行化の光ビームでサンプルの小さい連続領域を照明し、照明領域のサイズよりも遥かに良好な空間分解能を用いて、例えば、約3μm又はそれよりも良好な空間分解能を用いて単一スナップショットで相互作用容積の像を捕捉するように設計される。好ましい実施形態では、連続した照明領域は比較的小さく、面積で500μmx500μm未満又はそれに等しく、より好ましくは、面積で200μmx200μm未満又はそれに等しく保たれる。これは、一般的に、サンプリング点の利用可能数、すなわち、市販されているレンズレットアレイのレンズレット数から必要とされるが、全視野の波長連続式装置の分解能を著しく低下させることのある多重散乱の影響も低減する。サンプル内の散乱体間の位相干渉は、収差のデジタル補正及び拡張焦点深度を使用する正確な容積再構成を可能にする。照明領域を走査することにより、例えば、ビーム又はサンプルを横方向に走査し、好ましくは、正確な位相整合を容易にするために隣接する容積が部分的に重なり合った状態で、順番に捕捉された容積を縫い合わせることにより、より広い横方向範囲を達成することができる。重要なことは、連続領域の同時照明は、多経路散乱からのクロストークに対する及びコヒーレンス長の外側からの偽反射に対する感度を低下させる。
【0061】
好ましい実施形態では、3Dスナップショットは、グリッドベースのスペクトルOCTシステムを使用して捕捉され、そこでは、2Dレンズレットアレイが、小さい連続した照明領域から反射又は散乱した光をサンプリングし、取得されたビームレットは、2Dセンサの上に分散されて結像される。重要なことに、センサの分解能(ピクセル数)は、レンズレットアレイの分解能(レンズレット数)よりも遥かに高く、それによって横方向情報とスペクトル情報の両方を単一スナップショットで2Dセンサ上に捕捉することが可能になる。
図2に関して上述したように、好ましい実施形態では、2D直線レンズレットアレイは、各ビームレットが固有ピクセル群の上に確実に分散されるように、分散要素の分散軸に対して傾けられる。グリッドベースのサンプリングの重要な利点は、サンプル照明領域を2Dセンサに適応させるための高倍率の「顕微鏡」を一切必要としない簡単な撮像システムの使用を可能にする。このような顕微鏡は、典型的には100倍程度の倍率を必要とし、これには複雑な結像光学系を必要とする。反射視野又は散乱視野は、フーリエ平面、すなわち、ホロスコピー形態の遠視野、又は像平面、すなわち、近視野のいずれかでレンズレットアレイによってサンプリングすることができる。いずれの場合も、横方向分解能は対物レンズの開口数によって決定され、単一スナップショットで捕捉される横方向面積は、横方向分解能とレンズレット数との積に依存する。有利なことに、フーリエ平面内でのサンプリングにより、サンプルの異なる部分に対するそのレンズの可変性を使用して、その後の処理が結像レンズを数学的に再現することを可能にする。
【0062】
全帯域撮像は、信号を軸外基準ビームと混合して空間搬送波を導入し、明確な位相計測を可能にすることによって達成することができる。横方向軸と波長の両方にわたってサンプリングされた位相コヒーレント信号が与えられると、多くの公知のデジタル再集束技術を適用することができる。例えば、掃引光源ホロスコピーのために開発された技術は、被写界深度を拡張するために又は収差を補償するために適用することができる。
【0063】
ここで、例えば、面積が500μmx500μmまでの領域にわたって3μm又はそれよりも良好な横方向分解能で単一ショットのC走査を取得するために、
図2に示す傾斜式レンズレットアレイ技術を利用する様々な3Dスペクトル領域OCTシステムの説明に入る。これらのシステムは、全帯域の撮像、すなわち、正及び負の経路長の遅延を区別する機能、デジタル再集束及び収差補正のような波面補正、及び分解能の強化が可能である。決定的なのは、単一スナップショットで複素視野を捕捉する機能により、正確な波面補正の要件であるサンプル容積にわたる位相干渉の維持が保証されることである。
【0064】
ある一定の実施形態では、結合ビームは、遠視野、すなわち、フーリエ平面内でサンプリングされる。
図3に模式的に示すように、サンプル20の連続した照明容積19内の点(x’,y’)から反射又は散乱した光18は、対物レンズ22で集められ、軸外基準ビーム24と混合され、2Dレンズレットアレイ10を使用してフーリエ平面内でサンプリングされる。この構成では、3Dサンプルがその深度全体を通して正確には焦点面に存在できないという認識の下で、サンプル20、及び好ましくはレンズレットアレイ10も、対物レンズ22の焦点面にほぼ位置する。開口アレイ25を通過した後、集束されたビームレット14は平行化され、分散され、かつ2Dセンサアレイ6の上に結像される。開口アレイ25は任意であるが、そうでなければ装置の感度を低下させることになるコヒーレンス長の外側からの散乱信号を阻止するのに役立つ。上述のように、好ましい実施形態では、直線の2Dレンズレットアレイ10は、波長分散要素の分散軸に対して傾斜して、分散されたビームレットのセンサアレイ6のピクセルの固有の組16-1、16-2のような上へのマッピングを提供する。反射信号又は散乱信号18はフーリエ平面内でサンプリングされるので、その横方向成分は、サンプリングされた信号の空間(横方向)周波数成分から取得される。相互作用容積19の軸線方向反射率プロファイルは、スペクトル領域OCTでは通常のことであるが、スペクトル周波数成分で符号化される。重要なことに、空間フーリエ変換は、信号の正及び負の成分を分離する。スペクトル軸8に沿ったその後のフーリエ変換は、全帯域反射率プロファイルを提供する。例えば、位相、反射率、屈折率、屈折率変化、及び減衰を含むサンプルの多くの光学特性をこの反射率プロファイルから空間分解能を用いて抽出することができる。計測システムが偏光感応の場合に、すなわち、ビームレットの少なくとも第1及び第2の偏光状態に関する位相及び振幅情報を捕捉するように適合されている場合に、複屈折性又は偏光度のような1又は2以上の偏光関連の光学特性を抽出することができる。これらの光学特性の全部ではないにしても、その多くは一般的に波長依存になる。
【0065】
図4は、サンプル20から反射又は散乱した光のフーリエ平面サンプリングに対して高い横方向分解能を有して構成されたスペクトル領域OCT装置を示している。この装置の照明系では、超発光発光ダイオード(SLED)のような光ファイバ結合式多波長又は広帯域光源26からの光が、2x2光ファイバカプラ28を使用してサンプルアーム30及び基準アーム32に分割される。2x2カプラの分割比は、多くの実際の用途でサンプル20の反射率が低くなるために、例えば、90/10のサンプル/基準比、又は99/1の場合さえある。サンプルビーム34はレンズ36で平行化され、次に収束レンズ38及び対物レンズ22を通してサンプル20の上に向けられる。好ましい実施形態では、対物レンズは、高い横方向空間分解能を保証するために比較的高い開口数を有する。例えば、0.16NAの対物レンズは、典型的には3.0μmの横方向空間分解能を提供する。収束レンズ38の目的は、サンプルの拡張された連続容積19、例えば、直径100μmの照明を可能にすることである。サンプル20は対物レンズ22の焦点面にあるので、この収束レンズを省略すると、照明領域は拡張された領域ではなく、回折限界スポットになる。平行化レンズ36及び収束レンズ38に代えて、単一レンズを使用することができることは認められるであろう。
【0066】
装置の計測システムでは、照明された容積19内から反射又は散乱したサンプル光18は、対物レンズ22で集められ、ビーム分割立方体40のようなビームスプリッタに向けられて、そこで軸外の平行化された基準ビーム24と混合される。結合ビームは、適切に位置決めされた直線2Dレンズレットアレイ10を使用してフーリエ平面内でサンプリングされ、任意的に、その後に開口アレイ(図示せず)が続き、取得されたビームレット14は、レンズ42で平行化され、反射型格子43の形態の波長分散要素形態で分散され、かつレンズ44を通して2Dセンサアレイ6の上に集束され、そこから、その後の解析のために適切な機械可読プログラムコードを有するプロセッサ45により、結合インタ-フェログラムを単一フレームで読み出すことができる。これに代えて、分散要素は、透過型グリッド又はプリズムとすることができる。
図2に関連して上述したように、レンズレットアレイ10は、各ビームレットがセンサアレイ6のピクセルの固有の組の上にマップされるように、好ましくは、格子43の分散軸に対して傾斜している。1つの特定の実施形態では、レンズレットアレイは、300μmピッチを有する直線40x25のグリッド内に1000個のレンズレットを有し、2Dセンサアレイは、5.5μmのピクセルサイズを有する20メガピクセルのCMOSカメラである。
【0067】
センサアレイ6から読み出された結合インタ-フェログラムは、相互作用容積19から反射又は散乱した光の信号の波長依存計測値を表し、その信号は、反射又は散乱光18の電界ベクトルの位相及び振幅の関数である。後述する数学的技術を使用して、これらの波長依存計測値を処理して、相互作用容積19の少なくとも一部分にわたる空間分解能を用いてサンプルの光学特性の数値表現を発生させるか又はその3次元画像を構成することができる。例えば、位相、反射率、屈折率、屈折率変化、及び減衰を含めて、サンプルの多くの光学特性を抽出することができる。これらの光学特性の全部ではないにしても、その多くは一般的に波長依存になる。例えば、
図14に関連して以下に説明される2Dセンサアレイ6の前面に偏光ウォークオフ要素を含むことにより、計測システムを偏光感応にすることができることに注意されたい。この場合に、複屈折性又は偏光度のようなサンプルの偏光特性に関連付けられた1又は2以上の光学特性も抽出することができる。
【0068】
図5は、サンプル20から反射又は散乱した光のフーリエ平面サンプリングに対して高い横方向分解能を有して構成された別のスペクトル領域OCT装置を示している。この装置では、サンプルビーム34及び基準ビーム24が発生され、偏光ビームスプリッタ41、1/4波長板46、及び偏光アナライザ48を使用して結合される。
図4の装置に示されているパワービームスプリッタ40の代わりに偏光ビームスプリッタ及び関連する偏光光学系を使用する利点は、広帯域光源26からの光の50%を無駄にすることの回避である。上述のように、基準ビーム24は、一般的に、戻りサンプルビーム18よりも遥かに強力である。
図6に示すように、これを補償する1つの方法は、偏光アナライザの透過軸49が低強度の戻りサンプルビームの偏光方向50に対して平行に近く、従って、遥かに高強度の基準ビームの偏光方向52に対して直交に近いように偏光アナライザを向けることである。両ビームの偏光方向に対して偏光アナライザを45°に向ける通常の方法と比較すると、これはサンプルパワーの損失を3dBから1dB未満に低減する。
図5に戻ると、偏光ビームスプリッタ41が光源の光60を優先的にサンプルアームに向けるように光源アーム内の任意的な1/4波長板54を方向付けて、基準及び戻りサンプルビームパワーのより良好な均等化も達成することができる。
【0069】
収束レンズ38と高NA対物レンズ22の組合せを使用して、
図4に示す装置の場合と同様に、サンプル20の拡張された連続容積19、例えば、横方向の直径で100μmを照明する。照明された容積19内からの反射又は散乱サンプル光18は、対物レンズ22で集められ、基準ビーム24と混合され、かつ適切に位置決めされた直線2Dレンズレットアレイ10を使用してフーリエ平面内でサンプリングされ、その後に任意的な開口アレイ(図示せず)が続く。ビームレット14はレンズ42で平行化され、透過型格子56の形態の波長分散要素で分散され、かつレンズ44を通して2Dセンサアレイ6の上に集束される。これに代えて、分散要素は、反射型格子又はプリズムとすることができる。
図2に関連して上述したように、レンズレットアレイ10は、各ビームレットがセンサアレイ6のピクセルの固有の組の上にマップされるように、好ましくは、格子56の分散軸に対して傾斜している。結合インタ-フェログラムは、その後の解析のために適切な機械可読プログラムコードを有するプロセッサ45により、単一フレームで2Dセンサアレイから読み出すことができる。ここでもまた、インタ-フェログラムは、相互作用容積19から反射又は散乱した光の信号の波長依存計測値を表し、その信号は、反射又は散乱光18の電界ベクトルの位相及び振幅の関数である。先の通り、これらの波長依存計測値を処理して、相互作用容積19の少なくとも一部分にわたる空間分解能を用いてサンプルの光学特性の数値表現を発生させるか又はその3次元画像を構成することができる。
【0070】
戻りサンプルビームを十分に平行化されてアレイ10内の全てのレンズレットを覆う基準ビームと干渉させることが一般的に好ましい。これは、基準アーム平行化レンズ58の適切な選択を使用して
図4の装置では簡単であるが、
図5の装置では困難であり、それはビームスプリッタ41に入射する光源ビーム60が、サンプル20の拡張された(回折限界ではない)領域を照明するために意図的に平行化されないからである。このために、
図5の装置の基準アームは、小さい直径の発散ビーム66をより大きい直径の平行化ビーム24に変換するために、1/4波長板46と基準ミラー64の間にNA変換器62を含む。NA変換器62は、大径レンズ70と、大径レンズの焦点距離f
1に等しい距離だけ離された小径レンズ72(レンズレットなど)とを有する。これら2つのレンズは、基準ミラー64と組み合わされて、発散ビーム66をレンズレット72内部の中心73にもたらす。その結果、レンズレットは戻り経路上に屈折力を持たないので、増大したNAを有する射出ビーム74は、大径レンズ70によって平行化される。
【0071】
ここで、フーリエ平面内でサンプリングする時に取得された干渉計測データの解析について説明する。フーリエ平面サンプリングの場合に、どのビームレット14も、相互作用容積19内の全ての点からの位相及び振幅情報を異なる個別の角度においてではあるが含む。従って、空間情報は角度情報として符号化される。
【0072】
簡単のために、
図3に示すように位置(x’,y’)にあり、深度がΔzの単一点からの散乱又は反射を考える。散乱点又は反射点が対物レンズ22の焦点面の近くにあると仮定すると、レンズレットアレイ10に入射する平行化場は、入射角x’/fを有する平面波になる。従って、位置X,Yでレンズレットアレイに入射する干渉信号は、
として表すことができ、ここで、R(x’,y’)は、サンプルの反射率、S(k)は、スペクトルパワー分布、fは、対物レンズ22の焦点距離であり、x
0及びy
0は、対物レンズの軸(又はレンズレットアレイ10の軸)に対する基準ビーム24の角度に関連付けられる。
【0073】
1次のオーダーでは、レンズレットのための開口アレイ25(円形開口)における干渉信号成分は、
で近似することができ、ここで、X
i,Y
iは、レンズレットの軸線を説明し、Dは、レンズレットアレイのピッチであり、circ(X,Y,D)は、X
2-Y
2<(D/2)
2に対して1であり、それ以外では0である。
【0074】
2Dセンサアレイ6によって計測された結合インタ-フェログラムと各レンズレットに対する2Dセンサ上への波長マッピングの知識とで、1組のインタ-フェログラムI
i,j(k
l)を抽出することができ、ここで、i,jは、レンズレットアレイ10内のレンズレット位置を示し、k
lは、
図7に示すように、分光計(すなわち、グリッド)によって分解された波数を示している。インタ-フェログラムI
i,j(k
l)をM個の異なる波数毎に1つの一続きの2Dインタ-フェログラムと見なすのが便利である。各2Dインタ-フェログラムの次元は、レンズレットアレイの次元と等しく、例えば、25行x40列である。そのために、解析は全視野掃引光源ホロスコピー(Hillmann他、Optics Express、2012年、第20巻、第19号、p.21247-21263)と類似しており、基本的な違いは、光検出器アレイと比べてレンズレットアレイの低サンプリング分解能(により例えば、5μmピクセルと比較して300μmのレンズレットピッチ)、単一スナップショットで達成可能な視野が制限されることである。サンプルがフーリエ平面で計測されるので、各インタ-フェログラムに2Dの空間フーリエ変換を適用することによって像平面が取得される。有利なことに、軸外基準の場合に、フーリエ変換を使用してインタ-フェログラムの正及び負の空間周波数成分を分離することができるので、正の空間周波数成分のスペクトル軸に沿ったその次の1D FFTが全軸線方向深度範囲を達成する。これは、式(1)の余弦項の横方向フーリエ成分から容易に見ることができる:
それぞれの項の位相は、この時点でΔzの符号に依存する。
【0075】
サンプルがゼロ遅延の一方の側だけにある場合に、軸外基準を必要としないことに注意されたい。明確な位相を有する複素信号は、スペクトル軸に沿った第1の1D FFT、次に正の遅延に対して引き続く空間2D FFTによって取得される。従って、与えられた横方向帯域幅に対して、全帯域システムと比べて横方向範囲が倍増する。
【0076】
図4又は5に示すフーリエ平面サンプリングで達成可能な視野の例示として、以下のパラメータの組を考察する。レンズレットアレイ10は、ピッチP=300μm、NA=0.08、及び波長λ=0.8μmにおけるスポットサイズ=0.61λ/NA=6.1μmを有する。対物レンズ22については、f=40mm、及び直径D=11mm(NA=0.14)と仮定して、3.6μmの予想分解能を与える。全帯域システムに関する最大横方向範囲(Δx=x-x
0)は、ナイキスト限界(λ・f)/Δx)>2Pから見積もることができ、Δx<55μmを与える。遅延がゼロ遅延の一方の側のみにある場合に対する横方向範囲は、この値の2倍であり、Δx<110μmである。ここでは対物レンズ22とレンズレットアレイ10の間に単位倍率を仮定し、55μmの横方向視野は、各レンズレットの焦点サイズの0.5倍未満のレンズレットアレイの焦点位置変化を与えることに注意されたい。
【0077】
図8は、上述のパラメータに対するI
i,j(k
l)の2D空間フーリエ変換のマグニチュードを示し、正及び負の周波数成分76、78が確実に分離されるように基準ビームはオフセットしている。この特定の例では、基準ビームは水平軸と垂直軸の両方でオフセットしており、非干渉項を取り除いた。正の周波数成分76又は負の周波数成分78のいずれかをフィルリングによって抽出し、周波数オフセットを除去することができる。式(3)から、与えられたサンプル位置について、空間周波数は波長に依存することを見ることができる。この波長依存性は、スペクトル成分にわたってフーリエ変換を行う前に、波長依存の位相係数を掛けることによって除去され、全帯域深度プロファイルが取得される。
【0078】
他の実施形態では、結合ビームは、像平面内でサンプリングされる。
図9に模式的に示すように、サンプル20の照明された容積19内の点(x’,y’)から反射又は散乱した光18は拡大され、レンズレットアレイ10の上に再結像される。複素視野は、戻りサンプル光18を入射角αを有する軸外基準ビーム24と混合することによって取得される。フーリエ平面サンプリングでのように、レンズレットアレイからの集束ビームレット14は、任意的な開口アレイ25を通されて、次に平行化され、分散され、かつ2Dセンサアレイ6の上に集束される。この場合に、基準ビーム24は、信号の正及び負の周波数成分を分離するために軸外であることが必要である。上述のように、好ましい実施形態では、レンズレットアレイ10は、構成が直線であって波長分散要素の分散軸に対して傾斜し、分散されたビームレットのセンサアレイ6のピクセルの固有の組16-1、16-2のようなものの上へのマッピングを提供する。複素視野は、サンプリングされた視野にわたる最初の空間フーリエ変換と、負の周波数成分をゼロに設定する段階と、次に逆フーリエ変換を適用する段階とから取得される。フーリエ平面でのように、スペクトル軸8に沿ったその後のフーリエ変換は、サンプル20の照明された容積19の全帯域反射率プロファイルを提供する。例えば、位相、反射率、屈折率、屈折率変化、及び減衰、及び計測システムが偏光感応の場合は複屈折性又は偏光度を含めて、この反射率プロファイルから空間分解能を用いてサンプルの多くの光学特性を抽出することができる。
【0079】
図10は、サンプル20から反射又は散乱した光の像平面サンプリングに対して高い横方向分解能を有して構成されたスペクトル領域OCT装置を示している。この装置の照明系では、光ファイバ結合式多波長又は広帯域光源26からの光は、2x2光ファイバカプラ28を使用してサンプルアーム30及び基準アーム32に分けられる。
図4の装置と同様に、2x2カプラの分割比は、例えば、90/10又は99/1のサンプル/基準比とすることができる。サンプルビーム34はレンズ36で平行化され、次に収束レンズ38及び対物レンズ22を通してサンプル20の拡張された連続容積上に向けられる。好ましい実施形態では、対物レンズは、高い横方向空間分解能を保証するために比較的高い開口数を有する。例えば、0.16NAの対物レンズは、典型的には3.0μmの横方向空間分解能を提供する。
【0080】
この装置の計測システムでは、照明された容積19内から反射又は散乱したサンプル光18は、対物レンズ22で集められ、ビーム分割立方体40のようなビームスプリッタに向けられて、そこで軸外の平行化された基準ビーム24と混合される。結合ビームは、適切に位置決めされた2Dの直線レンズレットアレイ10を使用して像平面でサンプリングされ、任意的に、その後に開口アレイ(図示せず)が続き、各ビームレット14は、レンズ42で平行化され、反射型格子43の形態の波長分散要素で分散され、かつレンズ44を通して2Dセンサアレイ6の上に集束され、そこから、その後の解析のために適切な機械可読プログラムコードを有するプロセッサ45により、結合インタ-フェログラムを単一フレームで読み出すことができる。これに代えて、分散要素は、透過型グリッド又はプリズムとすることができる。
図2に関連して上述したように、レンズレットアレイ10は、各ビームレットがセンサアレイ6のピクセルの固有の組にマップされるように、好ましくは、格子43の分散軸に対して傾斜している。1つの特定の実施形態では、レンズレットアレイは、300μmピッチを有する直線40x25のグリッド内に1000個のレンズレットを有し、2Dセンサアレイは、5.5μmのピクセルサイズを有する20メガピクセルのCMOSカメラである。この像平面サンプリング方式では、各ビームレット14は、相互作用容積19の異なる部分からの位相及び振幅情報を含む。
【0081】
先の通り、センサアレイ6から読み出された結合インタ-フェログラムは、相互作用容積19から反射又は散乱した光の信号の波長依存計測値を表し、その信号は、反射又は散乱光18の電界ベクトルの位相及び振幅の関数である。後述する数学的技術を使用して、これらの波長依存計測値を処理して、相互作用容積19の少なくとも一部分にわたる空間分解能を用いてサンプルの光学特性の数値表現を発生させるか又はその3次元画像を構成することができる。計測システムは、例えば、
図14に関連して以下に説明される2Dセンサアレイ6の前面に偏光ウォークオフ要素を含むことによって偏光感応にすることができることに注意されたい。この場合に、その光学特性は、複屈折性又は偏光度のようなサンプルの偏光特性に関連付けることができる。
【0082】
図11は、サンプル20から反射又は散乱した光の像平面サンプリングに対して高い横方向分解能を有して構成された別のスペクトル領域OCT装置を示している。この装置では、サンプルビーム34及び基準ビーム24が発生され、偏光ビームスプリッタ41、1/4波長板46、及び偏光アナライザ48と組み合わされる。
図6に関して上述したように、偏光アナライザ48は、その透過軸が低強度の戻りサンプルビームの偏光方向に対して平行に近いように向けることができ、サンプルパワーの損失を低減する。偏光ビームスプリッタ41が広帯域光源26からの光を優先的にサンプルアームに向けるように光源アーム内の任意的な1/4波長板54を方向付けて、基準及び戻りサンプルビームパワーのより良好な均等化も達成することができる。
【0083】
収束レンズ38と高NA対物レンズ22との組合せは、
図10に示す装置の場合と同様に、サンプル20の拡張された連続容積19、例えば、横方向直径で100μmを照明するのに使用される。照明された容積19内からの反射又は散乱サンプル光は、対物レンズ22で集められ、基準ビーム24と混合されるが、基準ミラー64が非分散軸内で傾斜しているので基準ビームが戻りサンプルビームに対して軸外になることに注意されたい。結合ビームは、適切に位置決めされた2D直線レンズレットアレイ10を使用して像平面でサンプリングされ、任意的に、その後に開口アレイ(図示せず)が続き、取得されたビームレット14は、レンズ42で平行化され、透過型格子56の形態の波長分散要素で分散され、かつレンズ44を通して2Dセンサアレイ6の上に集束される。これに代えて、分散要素は、反射型格子又はプリズムとすることができる。
図2に関連して上述したように、レンズレットアレイ10は、各ビームレットがセンサアレイ6のピクセルの固有の組の上へマップされるように、好ましくは、格子56の分散軸に対して傾斜している。結合インタ-フェログラムは、その後の解析のために適切な機械可読プログラムコードを有するプロセッサ45により、単一フレームで2Dセンサアレイから読み出すことができる。
図10と同様に、各ビームレットは、照明された容積19の異なる部分からの位相及び振幅情報を含む。
【0084】
図12は、拡張された連続領域からではなく、この事例ではサンプル20上の離散スポット79の2Dグリッドから反射又は散乱した光の像平面サンプリングに対して構成された更に別のスペクトル領域OCT装置を示している。この装置の照明系では、サンプルアーム内の2Dレンズレットアレイ81が、サンプルビームをレンズ82及び84とミラー86とを通してサンプル上に集束されるビームレットのグリッド80に分離する。任意的に、このミラーを1軸又は2軸で走査して、例えば、異なる領域を解析し、又はビームレット間の間隙を埋めるために、集束されるビームレットをサンプルにわたって平行移動することができる。これに代えて、サンプル20を平行移動ステージ上に取り付けることができる。レンズ82及び84は、一般的に、例えば、100xのような高倍率系を形成し、2又は3以上のステージで拡大を行うために追加のレンズを含むことが好ましい場合がある。
【0085】
この装置の計測システムでは、離散スポット79から反射又は散乱したサンプル光は、サンプルアームのレンズレットアレイ81によって平行化され、4Fレンズ系88を使用して結合アームのレンズアレイ10に伝えられ、かつ基準ミラー64を非分散軸内で傾斜させることによって軸外にされた基準ビーム24と混合される。
図11の装置でのように、結合ビームは、偏光アナライザ48を通過し、次に適切に位置決めされたレンズレットアレイ10を使用して像平面でサンプリングされ、その後に任意的な開口アレイ(図示せず)が続く。ビームレット14はレンズ42で平行化され、透過型格子56の形態の波長分散要素で分散され、レンズ44を通して2Dセンサアレイ6の上に集束されて結合インタ-フェログラムを形成する。これに代えて、分散要素は、反射型格子又はプリズムとすることができる。結合インタ-フェログラムは、次に、その後の解析のために適切な機械可読プログラムコードを有するプロセッサ45により、単一フレームで2Dセンサアレイから読み出すことができる。結合インタ-フェログラムは、離散スポット79から反射又は散乱した光の信号の波長依存計測値を表し、その信号は、反射又は散乱光の電界ベクトルの位相及び振幅の関数である。
【0086】
ミラー86の走査又はサンプル20の平行移動が可能であれば、それは、適切な機械可読プログラムコードを有する場合にプロセッサ45を使用するセンサアレイの読み出しと同期させて都合良く制御することができる。
【0087】
図10及び
図11に示すように、連続した拡張容積19から散乱又は反射された光を像平面内でサンプリングする時に取得される干渉計測データの解析についてこれから説明に入る。サンプル20が
図9に示すように対物レンズ22の焦点面内にあると仮定すると、レンズレットアレイ10上の位置X,Yに入射する干渉信号成分は、
と表すことができ、ここでMは、サンプルアーム内のレンズ系22、38の倍率であり、αは、
図9に示すようにレンズレットアレイ10における基準ビーム24の入射角である。この場合に、基準ビームは、レンズレットアレイのY軸に位置合わせされると仮定される。重要なことは、全帯域撮像のためには、干渉信号の正及び負の周波数成分を分離するのに足りるだけαが大きくなければならないことである。
【0088】
この解析は、例えば、Huang他、Applied Optics、2013年、第52巻、第5号、p.958-965、及びFechtig他、Journal of Modern Optics、2014年、(DOI:10.1080/09500340.2014.990938)に説明されている軸外掃引波長型OCTに使用されるものと類似の手法に従うものである。複素視野は、Y軸に沿ってフーリエ変換を行い、負の周波数成分及び周波数オフセットを除去し、次に逆フーリエ変換を適用して複素インタ-フェログラムIi,j(k)を取得することによって取得され、ここでi,jは、位置(Xi,Yj)にあるレンズレットを表している。
【0089】
先の遠視野の場合と類似の実験パラメータ、すなわち、3.6μmの分解能(対物レンズのNA=0.14)、55μmの横断方向範囲、及びレンズレットピッチP=300μmを仮定する。サンプルとレンズレットアレイ間の大きい倍率は、高分解能サンプル情報のための高開口数をレンズレットアレイによって共に集束された後で基準ビームと最適に干渉することができるレンズレットと同等寸法の低開口数スポットに変換する。この入射角の範囲は、Δθ<λ/(2P)、すなわち、Airy半径の1/2で近似される。従って、NA/Δθ≒100という倍率により、サンプルから放出された光線が確実に捕捉されることになる。これは、レンズレットアレイのピッチが拡大された分解可能なスポットサイズよりも小さいことを要求することと同等であることに注意されたい。
【0090】
以上の説明では、サンプルが対物レンズの焦点面内にあると仮定された。しかし、一般的に3次元サンプルでは、相互作用容積の大部分は、焦点面から幾分変位することになる。焦点面から離れた点からの散乱は、レンズレットアレイにおいて湾曲した波面を生じさせる。部分的に重なる連続した3Dスナップショットサンプルの捕捉は、データセットの正確な位相整合を可能にし、そのデータセットに対して、スナップショットサンプルを縫い合わせて3次元合成画像を形成する前又は後のいずれかに、適切な機械可読プログラムコードを有するプロセッサを使用してデジタル再集束技術を適用することができる。これに代えて、縫い合わされるデータセットの再集束を避けるために、スナップショットデータセットの中央にある横方向点にデジタル再集束を直接適用することができる。デジタル再集束は、明確な位相を有する信号を最初に計測する必要があり、従って、軸外横方向基準を有する全帯域システムと同じ符号の全遅延及び軸上横方向基準を有するシステムとの両方に適用することができる。この信号は、例えば、Kumar他、Optics Express、2014年、第22巻、第13号、p.16061-16078で全視野及び線視野システムに対して説明されている多くの公知の技術のうちの1つ、又はFechtig他、Journal of Modern Optics、2014年(DOI:10.1080/09500340.2014.990938)に使用されているようなモデルを適応させることによってデジタル的に再集束させることができる。これらの手法は、像平面をサンプリングするOCTシステムに適用されるが、フーリエ平面のサンプリングに適応させることもできる。Hillmann他、Optics Express、2012年、第20巻、第19号、p.21247-21263に説明されているデジタル集束技術は、フーリエ平面内でサンプリングする場合に直接適用することができる。
【0091】
上述の様々なスペクトル領域OCT装置の代替実施形態として、
図13は、サンプルから散乱又は反射された光の像平面サンプリングに対して構成された線形OCT装置を示している。この装置の照明系では、多波長又は広帯域光源26からの光は、ビームスプリッタ40-1で分割されてサンプルビーム34及び基準ビーム24を形成する。
図10に示す装置でのように、サンプル20の拡張された連続容積領域19は、平行化されたサンプルビーム34によって照明される。この装置の計測システムでは、反射又は散乱光18は、レンズ22及び38を有する望遠鏡システムを使用して集められ拡大され、適切に位置決めされた直線2Dレンズレットアレイ10によって像平面内でサンプリングされ、その後に任意的な開口アレイ(図示せず)が続く。取得されたビームレット14は、レンズ42で平行化され、別のビームスプリッタ40-2を通して2Dセンサアレイ6の上に向けられる。上述のスペクトル領域手法とは対照的に、平行化された基準ビーム24は、例えば、反射型格子43で分散され、次に直接センサアレイ6に向けてサンプル視野と混合される。直線レンズレットアレイ10は、好ましくは、格子43の分散軸に対して傾斜しているので、各ビームレット14に対して2D FFTから取得される波長依存の空間周波数成分は、2Dセンサアレイ6のピクセルの固有の組の上にマップされる。これら波長依存の空間周波数成分は、その後の解析のために適切な機械可読プログラムコードを有するプロセッサ45により、2Dセンサアレイから読み出すことができる。各成分は、相互作用容積19の異なる部分から反射又は散乱した光の信号の波長依存計測値を表し、その信号は、反射又は散乱光18の電界ベクトルの位相及び振幅の関数である。
【0092】
与えられた波長に対して、センサアレイ6から読み出された対応するインタ-フェログラムの2D FFT134が
図13Aに示されている。レンズレットアレイ10内のレンズレットに対応する各ビームレットは、振幅と位相の両方を有する異なる空間周波数成分136によって表される。基準アーム内の分散格子43は、各ビームレットの各波長成分の振幅及び位相を計測することを可能にする。レンズレットアレイ10は分散格子43の分散軸に対して角度が付けられているので、ビームレットのスペクトル成分は周波数領域では別々のままであり、
図13Bに示すように各ビームレットに対して別々の2D FFT138を取得することができる。正の空間周波数成分のスペクトル成分にわたる1Dフーリエ変換は、全帯域の3D深度プロファイルを提供する。簡単のために、分散されたビームレット140は、
図13Bでは平行であるとして描かれているが、実際にはそれらの勾配は、一般的に、ビームレット14のセンサアレイ6上への入射角によって異なるので、全くの平行ではないことになる。依然として、適切なシステム設計の場合に、分散されたビームレット140間の勾配の変動は、それらがスペクトル成分において重複しないように十分に小さいことになる。
【0093】
この手法のスペクトル領域OCT手法と比べた利点は、高価で位置合わせが困難である分光計を回避することができる可能性があることである。スペクトル領域手法と同様に、分散軸に垂直な軸内で傾斜した基準ビームは、
図13Aに見られるように、正及び負の周波数項142及び144を分離することを可能にする。その結果、スペクトル軸に沿った1D FFTは、全帯域の軸線方向計測を可能にする。同様に、スペクトル領域手法から類推して、デジタル波面補正及び計測を実施することができる。しかし、線形OCTは、スペクトル領域OCTと比較して公知の時間領域感度ペナルティを被る。コーム状の離散波長、すなわち、希薄な軸線方向反射率プロファイルを使用することができる用途では、この感度ペナルティを低減することができる。
【0094】
上述のように、横断方向分解能と被写界深度の間にはOCT撮像におけるトレードオフがある。根本的に、このトレードオフは、より高NAのレンズがより小さいスポットサイズを可能にし、及び従って横断方向分解能を強化するが、被写界深度の減少という代償を払うために生じる。
【0095】
図14は、眼90の網膜89が、制限された開口数を有するレンズ系を通して多くの異なる角度で照明される網膜撮像のための装置を示している。眼球サンプルの場合に、開口数は瞳孔92のサイズにより制限されるが、他の顕微鏡光学系において又は他のサンプルの場合に、結像系の開口数は光学要素のサイズにより制限される場合がある。重要なことは、この装置によって提供される角度的に構造化された照明、すなわち、2又は3以上の入射角での網膜容積114の照明は、制限された開口数の結像系を使用して別な方法で可能とされるよりも高い横方向分解能を可能にすると同時に、低開口数の大きい被写界深度を維持する。この角度的に構造化された照明は、ミラー112によって制御される角膜94上に入射する様々な角度とは異なり、後述する網膜89の異なる容積を照明するのに必要とされることに注意されたい。
【0096】
超発光発光ダイオード(SLED)26、又は他の広帯域又は多波長光源からの光は、網膜89を探査するためと反射又は散乱光を通して網膜の特性を干渉法によって計測するためとの両方に使用される。最も一般的な形態では、光源26は、少なくとも第1及び第2の波長を有する光を放出しなければならない。後述するように偏光感応検出を使用する時に、光源は偏光する必要があり、すなわち、与えられた偏光状態の光を放出しなければならない。この装置の照明系では、SLED出力は、平行化要素36によってビームに形成され、例えば、
図4の装置に使用される従来型の偏光非依存ビーム分割立方体のような偏光非感応ビーム分割要素40によってサンプル経路30及び基準経路32に分割される。サンプル経路ビームは、逆にしたガウスビーム拡大器のようなビーム縮小器96によってサイズが縮小され、2軸MEMSミラーのようなビームステアリング要素98に向けられる。このビームステアリング要素は、平行化要素100を通過した後で平行になり空間的に分離される多くの経路にサンプル経路ビームを向けるようになっている。図示の実施形態では、この平行化要素は、MEMSミラー98から1焦点距離だけ離れて位置決めされたレンズであるが、他の実施形態ではプリズム又はミラーとすることができる。ある一定の実施形態では、平行化要素はまた、サンプルビームのサイズを修正する。取得される各ビームレット101は、網膜89の小領域を好ましくはこの事例では50~500μmの範囲の直径で照明するように、サンプル眼の瞳孔92よりも直径がかなり小さくなければならない。正常な弛緩状態の眼では、ビームレット101の平行な組が網膜の同じ点を照明するようになるが、高度の近視眼では、平行化要素100の位置を調整して、網膜で大きく重なるビームレットの非平行な組を提供することが必要な場合がある。他の実施形態では、ビームレット101は、MEMSミラー98を使用して順番にではなく、回折光学素子(DOE)を使用して同時に発生され、その場合に、網膜上への照明は、角度的に構造化された同時照明の形態になる。一般的は、順次的実施形態は、解析がフレーム間のサンプル移動によって過度に影響されない限り、解析的にはより簡単である。
【0097】
ビームレット101の連続又は同時アレイは、好ましい実施形態では開口付き反射器102を有するビーム分割要素を通過し、その場合に、有意な損失なしにMEMSミラー98の異なる角度(順次的なビームレットの場合)又はDOEの構造(同時のビームレットの場合)によってアドレス可能な位置で多くの離散的開口104を通過することができる。一般的に、開口付き反射器は、光を反射するための面、好ましくは、内部全反射面110と、反射せずに光を透過させるためにその面での内部全反射を局所的に中断させる1又は2以上の開口104とを有する。一実施形態では、開口付き反射器は、内部全反射のために研磨された光学面を含むプリズムと、内部全反射を中断させる穿孔の形態の1又は2以上の開口とを含む。
図15に示す好ましい実施形態では、開口付き反射器102は、反射面を固定的に接着して離間させる屈折率整合接着剤の液滴108によって与えられた開口104を除いて、研磨された光学面110の一方又は他方に内部全反射107を提供する1対のプリズム106を有する。接着剤の液滴によって付与されたプリズム106間の分離は重要なパラメータではないが、例えば、5~500μmの範囲にあるものとすることができ、例えば、約10μmである。好ましくは、プリズム106は図示のように直角プリズムである。開口付きビーム分割要素102の選択は、サンプルの照明と、偏光とは関係なく低い固有損失での後方反射光の捕捉とを可能にするので、従来のパワービームスプリッタよりも特に有利であるものとすることができる。明らかに、戻り経路において開口104によって一部の信号光が失われることになるが、各反射面110の全面積が開口104よりもかなり大きいので、照明ビームレット101が小さい場合は最小になる。どのような形態であっても、ビーム分割要素102は、好ましくは、偏光非依存であり、必要であれば、いずれの残留偏光感度も較正することができる。
【0098】
図14に戻ると、開口付き反射器102を通過するビームレットは、次に、任意的に、光中継システム(図示せず)と組み合わされて、ステアリング可能なミラー112の形態の角度可変要素の上に入射し、網膜89の共通の相互作用容積114に向けられる。ビームレット101は、ビームステアリング要素98及び眼90の光学的機能によって決定される異なる入射角で共通の相互作用容積114に向けられることは認められるであろう。網膜上の共通相互作用容積114の位置は、縫い合わせて合成像を生成することの可能な多くの像の収集によって網膜のより広い領域を撮像することができるように、ミラー112の角度調整により、例えば、位置114’に変えることができる。ミラー112の与えられた位置に対して相互作用容積114から散乱又は反射された光18は、次に瞳孔92全体を通して捕捉され、眼の光学的機能によって粗く平行化され、次に、無限遠に集束させた理想的な弛緩状態の眼の場合に対する網膜の照明点とは関係のない同等の伝播方向を有するようにミラー112によって向けられる。開口付き反射器102によって光源26から離れるように向けられた後で、粗く平行化された戻りビーム116は、レンズ118によって集束されて網膜の像を形成する。好ましくは、レンズ118は、大まかな収差補正を提供して臨床環境で典型的に見出される近視及び乱視の大きい変動に適応するように可変フォーカスである。可変フォーカスレンズは、例えば、Variopticから提供されている。
【0099】
図14に示す装置は、例えば、
図4の装置と異なり、共通の相互作用容積114を照明して散乱又は反射された光18を集めるために対物レンズ22を必要としないことに注意されたい。なぜならば、これらの機能は、サンプル眼90の角膜及びレンズによって実行されるからである。
図14Aに示すように、
図14の装置のサンプル関連部分は、対物レンズ22又は他の光学的機能要素を組み込み、このレンズの焦点面に又はその近くにサンプルを位置付けることにより、角度的に構造化された照明を別タイプのサンプル20に与えるように構成することができる。対物レンズは、ビームレット101をサンプル20の共通相互作用容積114の上に向けて散乱又は反射された光18を集める。角度可変式ミラー112の代わりに、X,Y平行移動ステージ119を使用して、別の容積114’を撮像するためにサンプルを移動することができる。例えば、背面照明、ビームスプリッタ又はビーム結合器、及びサンプルの回転を含めて、非眼球サンプルの1又は2以上の容積に角度的に構造化された照明を提供して散乱又は反射された信号光を収集するための方式が他に多く存在することは認められるであろう。
【0100】
網膜の像は、ビーム結合器120を通過して、干渉計を含む装置の計測システムに入る。図示の実施形態では、ビーム結合器120は、要素102に類似するが、網膜の像を通過させるための単一開口104を有する開口付き反射器である。それによって戻りサンプルビームを基準ビーム24と結合させ、適切に位置決めされた2Dレンズレットアレイ10を使用してフーリエ平面内でサンプリングすることが可能になる。
【0101】
ここで基準ビーム24の経路の説明に入るが、基準ビーム24は、ビームスプリッタ40で反射され、かつサンプル眼90との間を進行するサンプルアーム光の群遅延を近似的にマップする1対の直角プリズム106A、106Bを含む遅延線を通される。この遅延線は、基準アーム32での分散がサンプルアーム30での分散と同様であることを保証するために分散等化要素124を組み込むことができる。任意的に、基準アームは、基準ビームに対して与えられた偏光状態を生成するために、半波長板又は偏光子のような偏光修正要素126を含むことができる。遅延線に続けて、基準ビーム24は、開口付き反射器120の内部全反射面110に集束され、網膜の像の位置の近くに(すなわち、開口104の近くに)焦点を形成する。反射した基準ビーム及び透過したサンプルビームは、次に、遠視野の角度分布を空間分布に変換するレンズ122によってほぼ平行化され、レンズレットアレイ10を使用して平坦2D面にわたってサンプリングすることができる。好ましくは、相互に位置合わせされた開口アレイ25を組み込んで、以下に説明する2D分散光学系128の分解能を損なう迷光を除去する。
【0102】
ビーム結合器120に開口付き反射器を使用することは、ビーム結合器120に集束されているサンプルビームと基準ビームとの両方を有意な損失なしに装置の干渉計部分に通すことができるので、この構成において特に有利である。サンプル焦点と基準焦点の間の横方向変位が小さい場合に、干渉計における縞コントラストに対するオフセットの影響を最小にすることができる。その結果、この装置は、明らかに眼球サンプルに対して制限しなければならないサンプル上に与えられる照明パワーに対して非常に高いSN比を提供することができる。
【0103】
2D分散光学系128は、開口アレイ25から約1焦点距離だけ離れて位置決めされた第1の平行化レンズ42と、1つの軸に沿って分散を提供する透過型格子56の形態の波長分散要素と、グリッド点の分散アレイをCMOSカメラ又は他の焦点面アレイのような2Dセンサアレイ6の上に集束させるための第2のレンズ44とを有する。代替実施形態では、分散要素は、反射型格子又はプリズムとすることができる。説明を簡単にするために、分散エンジン128を通る代表的な光線経路は、
図14には示されていないことに注意されたい。上述の場合のように、レンズレットアレイ10及び格子56の分散軸の向きは、開口から現れるビームレットの各々から生成されるスペクトル分散線が、
図2に示すように横方向に僅かにオフセットするように選択される。信号ビームレットと基準ビームレットの両方の偏光状態を分けるために、YVO
4板のような偏光ウォークオフ要素130が設けられ、図示のように、各サンプリング点(開口又はレンズレット)に対して2つの波長分散線132を与える。偏光感応検出を伴わない代替実施形態では、ウォークオフ要素130は省略される。
【0104】
図14に示す撮像装置の作動は、最初に、通常の横方向分解能モード、すなわち、角度的に構造化されていない照明に対して説明され、それはサンプル眼90のNAによって制限される。好ましくは、グローバルシャッターモードで作動するCMOSカメラ6の単一フレーム取得期間中に、SLED26は、眼の有意な運動アーチファクトを回避するのに十分な短い時間だけパルス駆動される。サンプルビームは、開口付き反射器102の単一開口104を通って向けられ、瞳孔92の特定の領域を通って網膜89の容積114を照明する。ウォークオフ要素130によって付与される偏光分離の有無を問わず、照明された容積から後方に反射又は散乱した光の分散干渉像は、次にCMOSカメラ6からデジタル的に読み取られ、適切な機械可読プログラムコードを有するプロセッサで処理されて、適切なレンズレットアレイ10によって与えられたサンプリング点の各々に対してピクセル-波長マップを提供する。スペクトル領域OCTの分野で良く理解されているように、波長は、補間によって線形化されたkベクトルに変換され、規則的間隔のkベクトルの組に対して照明容積114の面にわたって位相及び振幅のマップを構成することができる。サンプル点の組は、フーリエ平面での電界ベクトルのサンプリングに対応するので、フーリエ変換を使用して、照明されたサンプル容積114の3次元画像又は表現を構成するか又は発生させることができる。デジタル収差補正及び/又はデジタル再集束の使用を適用して、同等の開口数制限を有する単一走査ビームの場合に達成可能なものと比べて改善した被写界深度にわたって画像の横方向分解能を維持することができる。
【0105】
構成又は発生された3次元画像又は表現は、位相、反射率、屈折率、屈折率変化、又は減衰のようなサンプルの光学特性の抽出に適する反射又は散乱した光の単一偏光の振幅又は位相の計測値とすることができる。これに代えて、偏光ウォークオフ要素130によって検出システムが偏光感応になる場合に、画像又は表現は、サンプリングされている材料のタイプを表すことができる複屈折性又は偏光度のようなサンプルの偏光特性とすることができる。これらの計測技術は、OCTシステム(例えば、走査型、時間領域、又は全視野OCTシステム)に関して良く理解されており、今では簡単に適用することができる。
【0106】
好ましい実施形態では、偏光感応検出システムは、第2の異なる偏光状態の光でサンプル容積114の照明を可能にするようにサンプルアーム内において電圧制御された液晶素子のような偏光制御要素134で補完される。この場合に、計測システムは、反射又は散乱光18の第2の追加の同時計測の組を行い、プロセッサ45は、両組の計測値を処理して、サンプルの1又は2以上の偏光特性の3次元画像又は表現を構成するか又は発生させる。装置に対するこの修正は、例えば、サンプルの複屈折が入力偏光状態と平行である場合にその複屈折性を計測することができないという状況を回避する。一般的に、単一偏光を使用する照明及びその後の偏光感応検出は、多くの場合に臨床的に有用なコントラスト機構を提供することができるが、異なる偏光状態を使用して2又は3以上の別々のサンプル計測を行う機能により、サンプルの偏光特性のより完全な記述又は表現を取得することが可能になる。
【0107】
網膜89の追加部分を撮像するために、ミラー112の角度位置を調整して第2の容積114’を照明するが、この容積114’は、好ましくは、第1の容積114に隣接し、合成縫い合わせ画像の位置合わせを容易にするために小さい重なりを有する。この処理をミラー112の多くの角度に対して繰返し、網膜の益々大きい領域の3次元合成画像を構成することができる。個々の画像の各々は、それぞれの容積にわたる網膜の光学特性の数値表現と考えることができる。特に注目されるのは、個々の容積画像の各々に対してデジタル再集束及び/又は収差補正を行うことができるので、軸外収差又は網膜位置の関数としての眼球長さの変化を取得後に後処理して視野全体を通してより鮮明な画像を提供することができるということである。これに代えて、個々の容積画像を互いに縫い合わせて結合された容積にわたる網膜の光学特性の単一数値表現を形成した後で、デジタル集束及び/又は収差補正を適用することができる。見かけの眼球長さの変化は近視患者の共通の特徴であり、例えば、それは、取得を追跡することができる適応光学系がなければ、通常は画像の分解能を制限することになる。軸外収差のデジタル再集束のレベルに関するこの情報も、被検眼の軸上収差の一部の定量的な尺度を提供するので、近視進行の評価において臨床的に有意義であるものとすることができる。網膜又は角膜、又は非眼球サンプルの層を視覚化する時に、サンプルのスライスを撮像するB走査として行うことが多くの場合に役に立つ。B走査でこの高分解能詳細の視覚化を可能にするために、当該のスライスを包含して複数の隣接する容積を共に処理することができ、取得される3次元合成画像は、そのスライスの周りの領域のサンプリング又は加重平均のいずれかによって高分解能B走査に変形される。
【0108】
図14の装置の様々な要素は、連携様式で作動させなければならないことは認められるであろう。これらは、例えば、SLED26、サンプルアーム偏光制御要素134、ビームステアリング要素98、角度可変式ミラー112(又は平行移動ステージ119)、及びCMOSカメラ6を含む。この制御の全体的なレベルは、例えば、適切な機械可読プログラムコードを有する場合にプロセッサ45によって提供することができる。
【0109】
予め決められた開口数の結像系で達成可能な横方向分解能及び被写界深度を改善するために、ここで、ミラー112の各設定角度に対して網膜89の同じ容積114の2又は3以上の計測を各回に瞳孔92及び開口付き反射器102内の開口104を通る異なる経路による異なる入射角で照明して行う事例を考察する。1つの特定の例では、開口付き反射器は4つの開口を有し、開口のうちの2つは、瞳孔の両端で垂直軸内で分離され、他の2つの開口は、水平軸線内で分離される。ある一定の実施形態では、異なる照明経路が2軸MEMSミラー98の角度調整によって確立されるので、サンプルビームは、指定された開口を順次通って伝播する。他の実施形態では、異なる照明経路が、例えば、上述のように回折光学素子(DOE)を使用して同時に確立される。前者の場合に、容積114の複数の計測値が順次取得され、すなわち、各照明経路(入射角)に対して単一ショットの取得が行われる。後者の場合に、複数の計測値が同時に取得される。すなわち、全ての照明経路に対して単一ショットの取得が行われる。いずれにしても、異なる照明経路の各々について捕捉された遠視野は、結果として遠視野における角度オフセットに対応する。このようにして、そうでなければ系のNAから外れることになる像の高周波空間コンテンツの異なる領域は、ベースバンドに下方シフト又は「混合」された周波数コンテンツを有する。各照明経路は異なる高周波数領域を捕捉するので、結合された空間コンテンツは、単一照明捕捉と比較して潜在的に2倍になり、それによってRayleigh判断基準の半分の超分解能が達成される。この手法は、場が、ここでは、強度画像と矛盾しないように反復的に再構成する必要があるということではなく、単一スナップショットで干渉法を使用して捕捉されるという点で、例えば、Dong他著「3D再集束及び超分解能マクロスコピック結像のための開口走査フーリエタイコグラフィ」、Optics Express 2014年、第22巻、第11号、p.13586-13599に説明されているフーリエタイコグラフィを超える進歩である。本出願人の手法では、フーリエ場の通過帯域は、異なる部分遠視野を位置合わせして縫い合わせることによって拡張され、縫い合わされたフーリエ平面を生成することができ、各部分遠視野は単一ショットで取得される。拡張フーリエ場計測値のフーリエ変換又は他のデジタル処理は、横方向分解能の強化をもたらす。強度だけの計測値に基づいて場がどのようなものであったのかを推測するための反復法に頼る必要がない。
【0110】
例えば、毛細血管血流を計測する場合に、又は機械的、音響的、熱音響的、又は超音波的な摂動の存在下での変形計測又はエラストグラフィ計測を行う場合のような相対位相のドップラー様計測が価値のある状況が数多く存在する。このために、例えば、
図4又は
図10に示す装置は、サンプルの3D容積にわたる運動又は変形、及び歪みのような関連する量のドップラー様計測に利用することができる相対位相感応OCT装置を提供するように適応させることができる。上述の他の装置も類似の方法で適応させることができることは認められるであろう。
【0111】
この「ドップラー」実施形態では、多波長光源26をトリガして少なくとも第1及び第2の光パルスを生成し、その各々は、相互作用容積19内で計測される予定の運動又は変形の存在下で位相計測を可能にするのに十分短い持続時間である。第1のパルスから反射又は散乱した光18は、上述のように、2Dセンサアレイ6の単一露光又はフレームで捕捉されて解析される。予め決められた期間の後に、第2のパルスが発生され、その反射又は散乱光18は、続けて2Dセンサアレイの第2の露光で解析される。各露光は、読み出し及び解析の後に、波長の範囲にわたって相互作用容積からの位相及び振幅情報を含む複素画像を提供する。ある一定の実施形態では、パルス間のタイミングは、センサアレイのフレームレートよりも小さく、センサアレイの露光に対してパルス照明を適切に時間調整することによって達成することができる。すなわち、第1のパルスは、1つのフレームの終了の近くで発生し、第2のパルスは、次のフレームの開始の近くで発生するものとすることができる。明らかに、光源26のパルスは、センサアレイ6の作動と連携しなければならない。ある一定の実施形態では、光源26は、センサアレイからデータを読み出して解析する同じプロセッサ45によってトリガされる。
【0112】
図4に示す遠視野又はフーリエ平面サンプリングを使用する時に、サンプル反射スペクトルは、2Dレンズレットアレイ10のサンプリングに対応する位置のアレイにわたってフーリエ平面で解析される。レンズ22の焦点面にほぼ位置付けられた相互作用容積19内の与えられた深度(スペクトルインタ-フェログラムの周波数成分に対応する)に対して、各横方向サンプル位置に関して、2D遠視野空間周波数成分が存在することは注目に値する。更に、与えられた鏡面反射又はスペックル周波数成分は、それに関連付けられた位相を有することになる。特定の反射の横断方向位相は、2Dセンサアレイ6上を用いて検出され、プロセッサ45による数値処理中に、相互作用容積19にわたって空間分解能を有する反射の位相と振幅の両方、すなわち、複素像を戻す複素FFTによって取り出すことができる。有意な位相計測を提供するのに足りるだけ振幅が大きい領域では、位相をその上にマップすることができる1組の点を確立することができる。ある一定の実施形態では、マッピングは、スペクトル成分のFFTによって取得される位相の軸線方向成分だけを形成する。他の実施形態では、マッピングはまた、空間的遠視野成分の位相に対応する横断方向位相成分を含む。横断方向位相は、レンズ22の焦点距離に従ってスケーリングする必要があり、一般的は、より低感度の変位尺度になる。すなわち、与えられた位相シフトは、捕捉された光18の開口数に応じて、軸線方向の位相シフトよりも約3~10倍だけ大きい変位を示すことになる。感度の低下を考慮に入れても、サブミクロンの変位の場合に、これは、依然として、従来のラスター走査型OCTシステムを使用して正確には達成することが困難である価値ある計測である。従って、それは、特に、計測すべき毛管流れ又は他の運動が主として横断平面にあるために軸線方向成分がない場合に関して、真の速度ベクトル、すなわち、変位率のより正確な計測を可能にすることができる。
【0113】
照明パルス間にサンプル20のバルク運動又は変形がなく、すなわち、ドップラー計測において当該のサンプル内運動又は変形よりも遥かに大きい粗い移動がない場合に、単に点のデータセットの相対位相を差し引くことは簡単である。しかし、いつもそうであるとは限らない。多くの計測では、2つの計測セットに対応する2つの情報フレームを適切に位置合わせすることができることが特に重要である。フレーム間のこのバルク位置合わせは、1つのフレームと次のフレームの間でサンプルグリッドの与えられた変位及び変形(例えば、線形圧縮)マッピングを与えるグリッド変換の存在下で相互相関関数を最適化することによって達成することができる。2つのフレームの正確な位置合わせは、マッピングに関連付けられた位相シフトを考慮して、決定されているサンプル内運動(例えば、毛管流れ)又は変形(例えば、機械的摂動)に関連付けられた変位によって生じる相対位相シフトを決定するための基底を決定する段階を伴う。フレーム間の予め決められた期間を知ることにより、変位率を決定することができる。
【0114】
エラストグラフィは、生体組織のようなサンプルの局所的な弾性又は剛性を変位計測から決定する。例えば、サンプルの圧縮により誘起される局所的な変位は、圧縮前後の相対位相計測値から正確に決定することができる。局所的な弾性は、計測された変位から深度の関数として推測される。これに代えて、弾性は、パルス摂動を使用して低振幅剪断波を発生させることによって決定することができ、これらの波の速度及び分散は、サンプルの機械的特性に敏感である。波動伝播に起因する低振幅のサンプル変位を計測するには、位相感応計測によって提供される分解能が必要である。
【0115】
波長分散要素の分散軸に対して角度が付けられた直線2Dレンズレットアレイで戻りサンプルビーム及び基準ビームをサンプリングする図示のスペクトル領域OCT及び線形OCT実施形態は、サンプルの3次元画像の単一ショットでの取得を可能にすることは認められるであろう。特に、例示の実施形態は、サンプル眼に存在する収差の補正を使用する小容積の網膜から反射又は散乱した光のスペクトル特性の数値的再構成に基づいて網膜の改善された高分解能光学画像を取得するための装置及び方法を提供する。
【0116】
図示の実施形態の各々では、光ビームの集束は、レンズ形態の屈折力要素を使用して行われる。しかし、軸外放物又は楕円ミラーのような他の形態の屈折力要素を使用することができるは認められるであろう。
【0117】
本発明を特定の例を参照して説明したが、本発明を多くの他の形態に具現化することができることは当業者によって認められるであろう。
【符号の説明】
【0118】
6 2Dセンサアレイ
10 2Dレンズレットアレイ
18 反射又は散乱光
20 サンプル
32 基準アーム