(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】人の着衣に付着している粉体を吸引除去するための吸引除去方法
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20230407BHJP
F24F 8/90 20210101ALI20230407BHJP
A47L 9/00 20060101ALN20230407BHJP
【FI】
F24F7/06 Z
F24F8/90 140
F24F7/06 C
A47L9/00 Z
(21)【出願番号】P 2021118547
(22)【出願日】2021-07-19
(62)【分割の表示】P 2017041381の分割
【原出願日】2017-03-06
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】392022374
【氏名又は名称】テックプロジェクトサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】七五三 英樹
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特許第3987091(JP,B1)
【文献】特開2010-142390(JP,A)
【文献】特開2010-071483(JP,A)
【文献】実開昭59-032999(JP,U)
【文献】特開2003-136029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/167
F24F 7/06
F24F 8/90
A47L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖された室内において人の着衣に付着している粉体を吸引除去するための吸引除去装置を使用した、閉鎖された室内において人の着衣に付着している粉体を吸引除去するための吸引除去方法であって、
前記吸引除去方法において使用される吸引除去装置が吸引除去する粉体が、医薬原料および農薬原料を含む高薬理活性物質であり、
前記吸引除去方法において使用される吸引除去装置が、吸引力を低下させることができる吸引装置と、フィルタとしてHEPAが内蔵された、吸引部を有する吸引ヘッドを備え、前記吸引装置と前記吸引ヘッドが可撓性チューブで接続されているものであり、
前記吸引ヘッドの吸引部が、前記吸引部を閉塞するためのキャップを有しており、
前記吸引ヘッドと前記可撓性チューブの接続部分が着脱自在になっており、
前記吸引装置が室外または室内に設置され、前記吸引ヘッドと前記可撓性チューブの一部が室内に配置されているものであり、
前記吸引除去方法が、
使用者が前記吸引装置を作動させる操作をする手順1、
使用者が前記吸引ヘッドの吸引部を近づけることで、着衣に付着した粉体を吸引除去する手順2、
粉体の吸引除去が終了したとき、前記吸引装置の吸引力を低下させる操作をする手順3、
前記吸引装置の吸引力が低下した後で前記吸引ヘッドの吸引部にキャップを被せて閉塞した後、前記吸引装置を停止させる手順4、
を有している、人の着衣に付着している粉体を吸引除去するための吸引除去方法。
【請求項2】
前記吸引除去装置の吸引ヘッドが、筐体と前記筐体内に収容されたHEPAを有しており、前記可撓性チューブとの接続部分から脱離されて廃棄できるようになっているものであり、
前記筐体が、筒状周壁部と、前記筒状周壁部の第1開口部を閉塞する、吸引部を有する第1底面部と、前記筒状周壁部の第2開口部を閉塞する、前記可撓性チューブと接続された第2底面部を有するものであり、
前記HEPAが、前記筐体の筒状周壁部の内側面に密着されることで、前記第1底面部と前記第2底面部の間の空気の移動を確保し、かつ粉体の移動を遮断しているものである、請求項1記載の人の着衣に付着している粉体を吸引除去するための吸引除去方法。
【請求項3】
前記吸引除去装置の筐体が、塩素を含有しない樹脂、紙、およびこれらの組み合わせから選ばれるものからなるものである、請求項2記載の人の着衣に付着している粉体を吸引除去するための吸引除去方法。
【請求項4】
前記吸引除去装置の吸引ヘッドの吸引部のキャップが、着脱自在なものであるかまたは固着可能なものである、請求項1~3のいずれか1項記載の人の着衣に付着している粉体を吸引除去するための吸引除去方法。
【請求項5】
手順3における前記吸引装置の吸引力の低下レベルが、手順2における粉体の吸引除去時の吸引力の50%以下である、請求項1~4のいずれか1項記載の人の着衣に付着している粉体を吸引除去するための吸引除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高薬理活性物質などの粉体を吸引除去するための吸引除去装置、前記吸引除去装置を使用した粉体の吸引除去方法、前記吸引除去装置を使用した吸引除去システム、前記吸引除去システムを使用した吸引除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬や農薬などの製造現場(クリーンルーム)では、高薬理活性物質である医薬原料や農薬原料を使用するため、作業者がハザード物質となる高薬理活性物質のばく露を受けたときの健康障害の問題や、高薬理活性物質が外部に漏れ出たときの環境汚染の問題がある。
製造現場におけるハザード物質の許容量OEL(Occupational Exposure Limit:許容ばく露限界)は、カテゴリー1~カテゴリー6などに区分されており(国際製薬技術協会[ISPE]日本支部の発表による)、最も厳しいカテゴリー6に対応するよう求められることが増加している。
【0003】
このように製造現場をOELにより管理した場合でも、作業員の高薬理活性物質のばく露を完全に防ぐことはできないため、製造現場から外部への出口までの退出経路においてばく露を受けた衣服に付着した高薬理活性物質を取り除いて、更衣の際に再飛散して作業員が経口経路から吸引するリスクを低減することと、高薬理活性物質が外部に漏れ出ないようにすることが必要になる。
特許文献1の発明は、クリーンルームの出入口用のエアカーテンを使用した防塵装置の発明である。
特許文献2の発明は、半導体製造工場に適したクリーンルームの出入口に設置されたエアシャワー装置の発明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-74931号公報
【文献】特開2007-139420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高薬理活性物質などの粉体の吸引除去性能が優れている、高薬理活性物質などの粉体を吸引除去するための吸引除去装置、前記吸引除去装置を使用した粉体の吸引除去方法、前記吸引除去装置を使用した吸引除去システム、前記吸引除去システムを使用した吸引除去方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、閉鎖された室内において人の着衣に付着している粉体を吸引除去するための吸引除去装置であって、
前記吸引除去装置が、吸引装置と、フィルタとしてHEPAが内蔵された、吸引部を有する吸引ヘッドを備え、前記吸引装置と前記吸引ヘッドが可撓性チューブで接続されているものであり、
前記吸引ヘッドの吸引部が、前記吸引部を閉塞するためのキャップを有しており、
前記吸引ヘッドと前記可撓性チューブの接続部分が着脱自在になっており、
前記吸引装置が室外または室内に設置され、前記吸引ヘッドと前記可撓性チューブの一部が室内に配置されている、吸引除去装置と、それを使用した粉体の吸引除去方法を提供する。
【0007】
また本発明は、上記の吸引除去装置を使用した、閉鎖された室内において人の着衣に付着している粉体を吸引除去するための吸引除去システムであって、
前記粉体が存在している作業室と外部雰囲気とを連絡する出口通路が、それぞれが閉鎖された少なくとも第1室、第2室および第3室に分離されており、
前記作業室と前記第1室、前記第1室と前記第2室、前記第2室と前記第3室、および前記第3室と前記外部雰囲気のそれぞれが開閉扉で閉鎖および連絡が可能にされているものであり、
前記第1室が、空調設備を備えた、シャワー室または前記第2室に入る前の準備室であり、
前記第2室が、上記の吸引除去装置を備えた粉体の吸引除去室であり、
前記第3室が、前記外部雰囲気に出るための準備室である、閉鎖された室内において人の着衣に付着している粉体を吸引除去するための吸引除去システムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸引除去装置とそれを使用した吸引除去方法によれば、着衣に付着した高薬理活性物質などの粉体が更衣の際に再飛散して経口経路から吸引するリスクを低減することと、外部雰囲気に漏出させることを防止することができる。
本発明の吸引除去システムとそれを使用した粉体の吸引除去方法によれば、医薬や農薬などの製造現場において着衣に付着した高薬理活性物質などの粉体が更衣の際に再飛散して経口経路から吸引するリスクを低減することと、外部雰囲気に漏出させることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】(a)は吸引ヘッドの断面図、(b)は(a)の別実施形態の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)粉体の吸引除去装置
本発明における除去対象となる粉体は、人体(作業員)の健康や周囲環境に悪影響を与えるものであり、医薬原料、農薬原料、その他の化学物質を含む高薬理活性物質の粉体である。
なお、前記粉体と共に浮遊している塵埃自体は高薬理活性物質ではないが、塵埃のみを分離することは不可能であるから、高薬理活性物質と塵埃が互いに付着している場合も含めて、単独で浮遊している塵埃も必然的に除去対象となる。
【0011】
図1に示す吸引除去装置1は、吸引装置10と、吸引ヘッド20と、吸引装置10と吸引ヘッド20を接続する可撓性チューブ30を有している。
図1では、吸引装置10は室外に設置されているが、室内に設置されていてもよい。
室外に吸引装置10を設置するときは、可動式または据え置き式のいずれでもよいが、車輪などを備えた可動式のものが好ましい。
室内に吸引装置10を設置するときは、持ち運びできる小型のものを使用することができる。
図1の吸引装置10を室外置きにした実施形態では、吸引除去室50内に吸引ヘッド20と可撓性チューブ30の一部が存在した状態が示されている。可撓性チューブ30は、吸引除去室50の壁54の貫通孔を通して屋外の吸引装置10に接続されている。可撓性チューブ30と前記貫通孔の隙間は、非通気状態になるように閉塞されている。
吸引装置10を室内置きにしたときは、吸引装置の排気はそのまま室内に排出されることになるが、粉体は吸引ヘッド20で捕捉されるため、排気は清浄なものである。
【0012】
吸引装置1は、吸引力が多段階もしくは無段階で調整できるものが好ましく、市販の吸引装置を使用することができる。市販の吸引装置の機能としては、回転数制御のためのインバータや段階制御を備えた吸引装置などを使用することができる。
【0013】
吸引ヘッド20は、
図1では台55の上に置かれた状態で示されているが、壁52に掛けられた状態であってもよいし、伸縮自在なマジックハンドまたはワイヤなどで天井51から吊り下げられた状態であってもよい。
吸引ヘッド20は、
図2に示すとおり、筐体21内部にHEPA35が収容されたものである。
筐体21の幅方向の断面形状は、円形、楕円形、四角形などにすることができる。
筐体21は、塩素を含有しない樹脂(熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂)、紙、およびこれらの組み合わせから選ばれるものからなるものが、使用後に焼却処理する観点から好ましい。
筐体21は、筒状周壁部22と、筒状周壁部22の第1開口部を閉塞する第1底面部23と、筒状周壁部22の第2開口部を閉塞する第2底面部24を有している。
筐体21の筒状周壁部22の外側面には、使用者が片手または両手で持ちやすくなるように、一つまたは二つの持ち手が取り付けられていてもよい。
【0014】
第1底面部23には、吸引口26aを有する吸引部26が接続されており、吸引部26は筐体21の内部と連通されている。
吸引部26には、テザー28で繋がれたキャップ27が接続されている。キャップ27は、吸引部26の吸引口26aを閉塞できる大きさおよび形状のものである。
キャップ27と吸引口26aは、着脱自在にできる嵌め込み方式が好ましい。例えばキャップ27の内側面に凹部を形成し、吸引部26(吸引口26a)の外側面に凸部を形成して、吸引口26aにキャップ27を被せたとき、キャップ27の内側面の凹部と吸引口26aの外側面の凸部が互いに嵌まり込むようにすることもできる。
また、吸引口26aとキャップ27は、キャップ27を吸引口26aに被せたとき、それぞれの接触部分のいずれか一方または両方に粘着剤層を形成することもできる。前記のように粘着剤層が形成されている実施形態であると、キャップ27で吸引口26aを一度閉塞すると固着されて外すことができなくなる。
【0015】
第2底面部24には、可撓性チューブ30が接続されている。
図2(a)では、第2底面部24の中心部から外側に突き出された環状部25内に可撓性チューブ30が接続されている。可撓性チューブ30は、ゴムまたは樹脂からなるものである。
環状部25と可撓性チューブ30の接続部分は着脱自在になっており、ねじ込み方式または嵌め込み方式、へルール継手などにすることができる。
【0016】
HEPA(High Efficiency Particulate AirFilter)は、JIS規格(JIS Z8122)にて「定格流量で粒径が0.3μ
mの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率を持ち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つフィルタ」と規定されているものである。本発明では、HEPAと同程度の性能を有する他のフィルタを使用することもできる。
HEPA35の外部形状は、筐体21の内部形状と大きさおよび形状が一致しているものであり、HEPA35の外周面35aは筒状周壁部21の内周面21aとショートパスなどリークの原因を防ぐ目的で密着されている。
HEPA35の外周面35aは筒状周壁部21の内周面21aとの接触部分の密着度を高めるため、境界面にシール材(接着剤を含む)を介在させることもできる。
また
図2(b)に示すとおり、筒状周壁部21の内周面21aの一部にHEPA35の外部形状に対応した環状凹部21bを形成して、環状凹部21bにHEPA35を嵌め込むこともできる。
図2(b)の実施形態においても、環状凹部21bとHEPA35の外周面35aの境界面にはシール材(接着剤を含む)を介在させることができる。
【0017】
(2)粉体の吸引除去方法
次に人の着衣に付着している粉体の吸引除去装置1を使用した粉体の吸引除去方法を
図1、
図2により説明する。
以下においては、前記粉体が医薬原料および農薬原料を含む高薬理活性物質である場合により説明するが、既に説明したとおり、塵埃も除去対象となる。
【0018】
閉鎖可能な吸引除去室50は、通常の建物と同様に天井51、壁52、床53を有して、壁52には開閉扉54が形成されている。
図1には開閉扉54は一つだけであるが、入口と出口となる二つの開閉扉を備えている。吸引除去室50内は、粉体の流入および流出を防止するため、入口側に連絡された別室よりも低い圧力に維持され、出口側に連絡された別室または屋外よりも低い圧力に維持される。
図1に示すように吸引装置10が室外置きの形態では、吸引装置10は吸引除去室50の外に設置され、吸引ヘッド20と可撓性チューブ30の一部が吸引除去室50内に配置されている。
吸引装置10が室内置きの形態では、吸引装置10は吸引除去室50の床に置かれているが、使用者が操作をし易くするため、別途設けた台上に置かれていてもよい。
【0019】
手順1において、使用者が吸引装置10を作動させる操作をする。
例えば、使用者は吸引除去室50の開閉扉54を開けて内部に入り、開閉扉54を閉めた後、室内に設けられている操作盤の作動スイッチを押して、吸引装置10を起動させる。
このとき、壁52などに吸引装置10を作動させるためのセンサーを取り付けておき、使用者がセンサーに近づくと自動的に吸引装置10が作動されるようにしてもよい。
吸引装置10が室内置きの形態では、吸引装置10の操作盤を直接操作することになる。
【0020】
手順2において、使用者が吸引ヘッド20の吸引部26を近づけることで、着衣に付着した粉体を吸引除去する。
このとき、例えば吸引ヘッド20が伸縮自在なマジックハンドまたはワイヤなどで天井51から吊り下げられた状態であると、軽い力で容易に取り扱うことができるので好ましい。
なお、医薬製造などのクリーンルームでは、衣服の上に白衣や無塵衣を着ているため、ここでいう「着衣」は「白衣」や「無塵衣」などを意味することになる。
【0021】
着衣に付着している粉体を吸引ヘッド20により吸引したとき、粉体は筐体21内の第1空間29aからHEPA35に入って吸着保持されるため、第2空間29bに入ることはなく、可撓性チューブ30内にも入ることはない。
【0022】
手順3において、粉体の吸引除去が終了したとき、吸引装置10の吸引力を低下させる操作をする。
吸引力の低下は、室内に設けられている操作盤の作動スイッチにより操作する。吸引装置10が室内置きの形態では、吸引装置10の操作盤を直接操作することになる。
手順3における吸引装置10の吸引力の低下レベルは、手順2における粉体の吸引除去時の吸引力の50%以下であることが好ましい。
【0023】
手順4において、吸引装置10の吸引力が低下した後で吸引ヘッド20の吸引口26aにキャップ27を被せて閉塞した後、吸引装置10を停止させる。吸引力を下げることで締切運転による筐体22の破損を回避することができる。
手順4において、手順3を省略して、吸引装置10を停止した後で吸引口26aにキャップ27を被せようとしたときは、吸引装置10を停止してから吸引口26aにキャップ27を被せるまでの間に、筐体21内の粉体を含む空気が吸引口26aから吸引除去室50内に逆流して、使用者に粉体を浴びせるおそれがあるため、手順3と手順4の組み合わせは必要である。
また、吸引部26にセンサーを取り付けておき、吸引部26にキャップ27を近づけると自動的に吸引装置10の吸引力が低下され、キャップ27を完全に被せたとき、吸引装置10が停止されるようにしてもよい。
【0024】
本発明の吸引除去方法で使用した吸引ヘッド20は、OELのカテゴリーなどを目安として、使用の制限回数を決定することができる。
使用の制限回数に到達したときは、吸引ヘッド20と可撓性チューブ30を外し、吸引ヘッド20は廃棄・焼却処分する運用とし、使い回さないことで、フィルタエレメント交換作業によるばく露リスクの回避と周囲環境への悪影響を防止することができる。
【0025】
(3)吸引除去システム
本発明の吸着除去システムは、上記の吸引除去装置を使用した、閉鎖された室内において人の着衣に付着している粉体を吸引除去するためのものである。
【0026】
図3に示す吸着除去システム100は、粉体が存在している作業室110と外部雰囲気150とを連絡する退出通路が、それぞれが閉鎖された少なくとも第1室120、第2室130および第3室140に分離されたものであり、第1室120から第3室140までが含まれる。
なお、作業室110を含む状況に応じて4室以上にすることもできる。例えば、作業室110で特に活性の高い物質を使用するときは、第2室130と第3室140の間にエアロックを追加して4室にすることができる。
作業室110は、例えば医薬製造現場のクリーンルームなどである。作業員80は無塵衣81、帽子82、手袋83のほか、マスクを着用している状態が示されている。以下、無塵衣81、帽子82、手袋83、マスクを含めて「無塵衣81など」とする。
外部雰囲気150は、大気圧下の廊下や屋外または他の建物を意味する。
【0027】
第1室120は、作業室110と開閉扉121で閉鎖および連絡可能にされている。
第1室120は、空調設備を備えた、エアシャワー室、ミストシャワー室、緊急シャワー室または第2室130に入る前の準備室である。
緊急シャワー室は、作業員の粉体や液体含めた化学物質へのばく露状態が重篤である場合に使用するものであり、通常は除去システム100とは別室に設けることができるが、緊急事態も想定して除去システム100にも設けることができる。
エアシャワー室、ミストシャワー室または緊急シャワー室にするときは、壁面や天井(
図3では壁面)にエアシャワーまたはミストシャワー122が設置されている。
準備室にするときは、何も設置されていなくてもよい。
第1室120と作業室110は、作業室110内に浮遊する粉体が第1室120内に流入しないようにするため、作業室110内の圧力が第1室120の圧力よりも低くなるように調整されている。
【0028】
第2室130は、
図1に示した吸引除去装置1を備えた閉鎖可能な吸引除去室50をそのまま使用できるほか、必要に応じて第1室110および第3室130と関連づけて改修などした後、使用することができる。
第2室130と第1室120は、開閉扉131で閉鎖および連絡可能にされている。
第1室120と第2室130の圧力は、第2室130の圧力を低くし、第1室120に異物などが流入しないように設計してもよいし、第1室120の圧力が低くして、高活性物質が常に製造室側に流れるように設計してもよい。
【0029】
第3室140は、外部雰囲気150に出るための準備室である。
第3室140と第2室130は開閉扉141で閉鎖および連絡可能にされ、外部雰囲気150と第3室140は開閉扉151で閉鎖および連絡可能にされている。
第3室140と外部雰囲気150は、第3室140の圧力が外部雰囲気150の大気圧よりも高くなるように調整されている。
【0030】
(4)吸引除去システムを使用した粉体の吸引除去方法
本発明の吸引除去システムを使用した粉体の吸引除去方法を
図3、
図1、
図2により説明する。
以下においては、高薬理活性物質を扱うクリーンルーム110から外部雰囲気150まで退出する実施形態について説明する。各手順は、複数の手順をまとめて一つの手順として実施することもできる。
なお、第2室130は、
図1に示した吸引除去装置1を備えた閉鎖可能な吸引除去室50をそのまま使用したものとして説明する。
【0031】
手順Aでは、クリーンルーム110内にて無塵衣81などを着用していた作業員80は、クリーンルーム110と第1室120の間の開閉扉121を開けて第1室120に入ったあと、開閉扉121を閉めて第1室120を閉鎖する。
【0032】
次の手順Bでは、第1室120がエアシャワー室であるときは、エアシャワー122を浴びた後、エアシャワー122を停止して、飛散した粉体を空調設備で捕捉する。
また次の手順Bでは、第1室120がミストシャワー室であるときは、ミストシャワー122を浴びた後、ミストシャワー122を停止して、飛散した粉体と無塵衣81などに付着した粉体を湿潤させて再飛散させないようにする。
第1室120がエアシャワー、ミストシャワーなどがない準備室であるときは何もしない。
各室の空調設備のフィルタとしてHEPAを使用することができる。
【0033】
次の手順Cでは、第1室120と第2室130(吸引除去室50)の間の開閉扉131を開けて第2室130に入ったあと、開閉扉131を閉めて第2室130を閉鎖する。
【0034】
次の手順Dでは、第2室130にて、吸引除去装置1の吸引ヘッド20を使用して、無塵衣81などに付着した粉体を吸引除去した後、無塵衣81などを脱衣する。
無塵衣81などに付着していた粉体は吸引除去装置1により吸引除去されており、さらに無塵衣81などを第2室130にて脱衣するため、粉体が次の第3室140内に入るリスクを充分に低減できる。
第1室120と第2室130の間に脱衣室を追加したときは、第1室120でエアシャワーやミストシャワーを浴びた後、脱衣室にて無塵衣81などを脱衣した後、第2室130内に入って吸引除去装置1により粉体を除去する。
なお、第2室130(または脱衣室)で脱ぎ捨てた無塵衣81などは、単一品目を製造する場合は、再利用することもできるし、次工程で別品目を製造する場合や白衣または無塵衣81などへの粉体の付着が著しく、吸引装置では十分に取り除けていないと判断される場合は廃棄する。
【0035】
次の手順Eでは、第2室130と第3室140の間の開閉扉141を開けて第3室140に入ったあと、開閉扉141を閉めて第3室140を閉鎖する。
【0036】
最後の手順Fでは、第3室140から外部雰囲気150に出る準備をした後、第3室140と外部雰囲気150の間の開閉扉151を開けて外部雰囲気150に出た後、開閉扉151を閉める。
第3室140では、例えばヘルメット87を被ったり、別の作業着86を着たりした後、外部雰囲気150に出る。
【0037】
本発明の吸着除去システムを使用した吸着除去方法は、第1室120、第2室130および第3室140を有しているが、必要に応じてさらに別室を追加することができる。
本発明の吸着除去システムを使用した吸着除去方法は、作業員80がクリーンルーム110で高薬理活性物質のばく露を少量受けた場合でも、外部雰囲気150に至るまでの間に再飛散による経口経路からの吸引リスクを低減したり、再飛散による室内汚染のリスクを低減したりできるため、作業員80の健康被害を受ける可能性を大きく引き下げ、外部雰囲気150に対する環境汚染も生じることがない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の吸引除去装置は、高薬理活性物質を扱う医薬製造現場または農薬製造現場からの退出経路において利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 吸引除去装置
10 吸引装置
20 吸引ヘッド
30 可撓性チューブ