(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び塗料
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20230407BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20230407BHJP
C09D 4/06 20060101ALI20230407BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20230407BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20230407BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230407BHJP
E01C 23/14 20060101ALN20230407BHJP
【FI】
C08F290/06
C08F2/44 C
C09D4/06
C09D133/00
C09D7/40
C09D7/63
E01C23/14
(21)【出願番号】P 2021201828
(22)【出願日】2021-12-13
(62)【分割の表示】P 2018024273の分割
【原出願日】2018-02-14
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2017027105
(32)【優先日】2017-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】松村 一成
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-234921(JP,A)
【文献】特開平03-247610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F290
C08F2
C09D
E01C
E01F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単官能の(メタ)アクリレート(A)、3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート(B)、(メタ)アクリル系重合体(C)、還元剤(D)、硬化剤(E)を含有する硬化性樹脂組成物であって、
下記条件で測定した該硬化性樹脂組成物の硬化時間が、1~8分である、硬化性樹脂組成物。
(硬化時間の測定条件)
23℃の空気中において、成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有し、成分(E)を含まない樹脂組成物に、成分(E)を配合、混合して硬化性樹脂組成物とし、直ぐにこの硬化性樹脂組成物を直径10mm、高さ120mmの試験管に底部より70mmまで投入し、該試験管を23℃の水中に静置した後の硬化性樹脂組成物の温度変化を熱電対により測定し、成分(E)を配合した時点から該硬化性樹脂組成物の温度が最大となるまでの時間を硬化時間とする。
【請求項2】
成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量%に対して、成分(A)を30~90質量%、成分(B)を1~40質量%、成分(C)を0.1~30質量%を含有し、
成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対して、成分(D)を0.1~10質量部、成分(E)を0.1~10質量部含有する請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量%に対して、成分(A)を
50~90質量%、成分(B)を5~35質量%、成分(C)を1~20質量%を含有する、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量%に対して、成分(A)を
50~90質量%、成分(B)を5~30質量%、成分(C)を1~
20質量%を含有する、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有し、成分(E)を含まない樹脂組成物の23℃におけるB型粘度計を用いた回転速度60rpmの粘度の測定値が1~1,000mPa・sである、請求項1から4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有し、成分(E)を含まない樹脂組成物の23℃におけるB型粘度計を用いた回転速度60rpmの粘度の測定値が1~500mPa・sである、請求項1から4のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
成分(A)が、環状構造を有する(メタ)アクリレートを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
成分(A)が、単環の環状構造を有する(メタ)アクリレートを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
成分(B)が、分子構造内に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートである、請求項1から8のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
成分(B)が、分子構造内に3つ以上10以下の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートであり、
成分(C)が、単官能の(メタ)アクリル系モノマーの単位を含む重合体である、請求項1から
9のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
成分(C)が、単官能の(メタ)アクリル系モノマーの単位を含む重合体であり、該重合体の質量平均分子量が5,000~500,000である、請求項1から
10のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
成分(D)は、芳香族3級アミン類と金属石鹸類を含み、
前記芳香族3級アミン類として、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジンから選ばれる少なくとも一種を含み、
前記金属石鹸類として、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸マンガン、オクチル酸コバルト、バナジルアセチルアセトネートから選ばれる少なくとも一種を含み、
成分(E)は、ジベンゾイルパーオキサイドを含む、請求項1から
11のいずれか
一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1から
12のいずれか
一項に記載の硬化性樹脂組成物を含有する塗料。
【請求項14】
前記塗料が道路用塗料
である、請求項13に記載の塗料。
【請求項15】
前記塗料が道路用遮熱塗料
である、請求項13に記載の塗料。
【請求項16】
請求項1から
12のいずれか
一項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゾイルパーオキサイドを硬化剤、第三級アミンを硬化促進剤として用いた常温硬化性の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、塗り床や道路舗装向けなどの各種塗料や接着剤、人工大理石等の成形品向けのバインダー材として、広く使用されている。
【0003】
このような常温硬化性の(メタ)アクリル系樹脂組成物の作業性や、その硬化物の特性を向上するために様々な検討が行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ラジカル重合性樹脂、ラジカル重合性単量体、及び、アクリル重合体を含有するラジカル重合性樹脂組成物が、表面乾燥性に優れ、引っ張り物性に優れる塗膜を与えるため、床材や舗装材等に好適に使用できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の実施例で、ラジカル重合性樹脂として使用されている2官能のウレタンメタアクリレートを用いた場合、硬化物の硬度が低下するため、塗膜の耐汚染性や、塗膜の耐久性が不良となる問題がある。また、硬化時間が長いため、道路舗装向けの塗料として使用した場合、アスファルトを溶解しやすく、密着性が不良となる。
【0007】
本発明は、硬化時間が短く、アスファルトへの密着性、硬度、引張強さに優れる硬化物が得られる硬化性樹脂組成物及びその硬化物、並びにその硬化性樹脂組成物を含有する塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、単官能の(メタ)アクリレート(A)、3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート(B)、(メタ)アクリル系重合体(C)、還元剤(D)、硬化剤(E)を含有する硬化性樹脂組成物が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、上記の硬化性樹脂組成物を含有する塗料が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、上記の硬化性樹脂組成物の硬化物が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、硬化時間が短く、アスファルトへの密着性、硬度、引張強さに優れる硬化物が得られる硬化性樹脂組成物及びその硬化物、並びにその硬化性樹脂組成物を含有する塗料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルの総称であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの総称であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基の総称であり、CH2=C(R)-C(=O)-[Rは水素原子またはメチル基である。]で表される。
【0013】
<硬化性樹脂組成物>
本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物は、単官能の(メタ)アクリレート(A)、3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート(B)、(メタ)アクリル系重合体(C)、還元剤(D)、硬化剤(E)を含有する。
【0014】
この明細書においては、単官能の(メタ)アクリレート成分を「成分(A)」、3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート成分を「成分(B)」、(メタ)アクリル系重合体成分を「成分(C)」、還元剤成分を「成分(D)」、硬化剤成分を「成分(E)」という。
【0015】
この硬化性樹脂組成物は、成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量%に対して、成分(A)を30~90質量%、成分(B)を1~40質量%、成分(C)を0.1~30質量%、を含有し、成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対して、成分(D)を0.1~10質量部、成分(E)を0.1~10質量部含有することが好ましい。
【0016】
この硬化性樹脂組成物は塗料の成分として有用であり、例えば、この硬化性樹脂組成物を含む道路用塗料や、この硬化性樹脂組成物を含む道路用遮熱塗料を提供できる。
【0017】
〔成分(A)〕
成分(A)である単官能の(メタ)アクリレートは、分子構造内に1つの(メタ)アクリロイル基有する(メタ)アクリレート化合物である。成分(A)は、硬化性樹脂組成物の粘度を作業しやすい値に調整するための成分である。
【0018】
成分(A)の具体例としては、(メタ)アクリル酸、コハク酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、マレイン酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、フタル酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2-ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、(1-ナフチル)メチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン等の環状構造を有する(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ(メタ)アクリレート;3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート及びヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これら成分(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
臭気が小さく、硬化物の引張強さが良好な点から、環状構造を有する(メタ)アクリレートが好ましく、その中でも硬化物の引張強さの点から、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2-ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0020】
硬化性樹脂組成物中における成分(A)の含有量は、成分(A)、(B)及び(C)の合計量を100質量%とした場合、30~90質量%が好ましく、40~85質量%がより好ましく、50~80質量%がさらに好ましい。30質量%以上とすることで、硬化性樹脂組成物の粘度が低位となるため、作業性が向上する。90質量%以下とすることで、成分(B)、成分(C)の含有量を増加できるため、硬化時間を短くできる。
【0021】
〔成分(B)〕
成分(B)である3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートは、分子構造内に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物である。成分(B)は、硬化性樹脂組成物の硬化時間を短くすることで硬化物のアスファルトへの密着性を向上し、更に硬化物の硬度と強度を向上するための成分である。
【0022】
成分(B)の製造方法は特に限定されないが、例えば、分子構造内に3つ以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子構造内に1つの水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応させる方法や、分子構造内に3つ以上の水酸基を有する化合物と、分子構造内に1つのイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応させる方法などが挙げられる。
【0023】
成分(B)の具体例としては、例えば市販されている亜細亜工業社製「EXCERATEシリーズ」の製品名:「RUA-003VE」(15官能)、「RUA-003LD」(15官能)、「RUA-065」(10官能)、「RUA-066SP」(10官能)、RUA-077(10官能)」、「RUA-004MG」(9官能)、「RUA-071」(6官能)、「RUA-076MG」(6官能)、「RUA-064S-8」(5官能)、「RX12-89」(5官能)、「RUA-075」(5官能)、「SUA-0009」(4官能)、「RUA-049X」(3官能)、「RUA-051」(3官能)、「RUA-048」(3官能)等や、新中村化学工業社製「NKオリゴ」シリーズの製品名:「UA-31F」(3官能)、「UA-7100」(3官能)、「U-6LPA」(6官能)、「U-10PA」(10官能)、「U-10HA」(10官能)、「UA-33H」(9官能)、「UA-53H」(15官能)、「UA-32P」(3官能)、「UA-1100H」(6官能)等が挙げられる。これら成分(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
硬化物の引張強度が良好となることから、成分(B)の官能基数は3~10が好ましい。
【0025】
硬化性樹脂組成物中における成分(B)の含有量は、成分(A)~(C)の合計量を100質量%とした場合、1~40質量%が好ましく、5~35質量%がより好ましく、10~30質量%がさらに好ましい。1質量%以上とすることで、硬化性樹脂組成物の硬化時間を短くできる。40質量%以下とすることで、硬化物の硬度及び引張強さを良好なものとできる。
【0026】
〔成分C〕
成分(C)である(メタ)アクリル系重合体は、組成中に(メタ)アクリル系モノマー単位を20質量%以上含む重合体であり、硬化性樹脂組成物の硬化時間を短縮し、また、硬化性樹脂組成物の表面(空気接触面)の硬化性を向上する成分である。(メタ)アクリル系モノマーとは、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを意味する。「単位」は重合体を構成する繰り返し単位を意味する。
【0027】
(メタ)アクリル系モノマーは、単官能モノマーであっても多官能モノマーであっても良いが、成分(A)及び成分(B)への溶解性の点から、単官能モノマーが好ましい。
【0028】
単官能モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、コハク酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、マレイン酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、フタル酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル等のカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2-ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェニルフェニル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、(1-ナフチル)メチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン等の環状構造を有する(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ(メタ)アクリレート;3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート及びヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0029】
多官能モノマーの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリカーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)フルオレン、ウレタンジ(メタ)アクリレート等の2官能の(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス((メタ)アクロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能の(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能の(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能の(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能の(メタ)アクリレート等の多官能モノマーが挙げられる。
【0030】
成分(C)に含まれる(メタ)アクリル系モノマー単位は、1種でも2種以上でも良い。また、成分(C)は、(メタ)アクリル系モノマー単位以外の他のモノマー単位を含んでいても良い。他のモノマーとしては、(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能なものであればよく、例えば、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル系モノマー;アクリロニトリル等のシアン化ビニル系モノマー;酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマーが挙げられる。成分(C)中、(メタ)アクリル系モノマー単位の割合は、20質量%以上であり、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。割合の上限は特に限定されず、100質量%であっても良い。
【0031】
成分(C)の好ましい具体例としては、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、メチルメタクリレート単位とn-ブチルメタクリレート単位とからなる共重合体、メチルメタクリレート単位とn-ブチルアクリレート単位とからなる共重合体等が挙げられる。これらの中でも、硬化物の透明性の点から、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート単位とn-ブチルメタクリレート単位からなる共重合体、メチルメタクリレート単位とn-ブチルアクリレート単位とからなる共重合体が好ましい。
【0032】
成分(C)の質量平均分子量は、5,000~500,000であることが好ましく、10,000~200,000であることがより好ましい。質量平均分子量が5,000以上であると、硬化物の強度が良好になる。500,000以下であると、硬化性樹脂組成物の粘度が低下するため、作業性が良好になる。
【0033】
成分(C)を得るための重合方法は特に限定されず、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、部分重合法等の公知の方法で重合することができる。本発明においては、重合反応の制御や生成した重合体の分離が比較的容易であることから、懸濁重合法が好ましい。
【0034】
これら成分(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
硬化性樹脂組成物中における成分(C)の含有量は、成分(A)、(B)及び(C)の合計量を100質量%とした場合、0.1~30質量%が好ましく、0.5~25質量%がより好ましく、1~20質量%がさらに好ましい。0.1質量%以上とすることで、硬化性樹脂組成物の硬化時間を短くできる。30質量%以下とすることで、硬化性樹脂組成物の粘度が低位となるため、作業性が向上する。
【0036】
〔成分(D)と成分(E)〕
本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物は、レドックス系重合開始剤から発生するラジカルによって、重合反応が進行し、硬化する。レドックス系重合開始剤は、成分(D)である還元剤と、成分(E)である硬化剤とを併用した重合開始剤である。レドックス系重合開始剤に用いられる成分(D)と成分(E)の組み合わせの例として、以下の(1)~(5)が挙げられる。
【0037】
(1)成分(D)である芳香族3級アミン類と成分(E)であるジベンゾイルパーオキサイドの組み合わせ。
芳香族3級アミン類としては、例えば、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジエチルアニリン;N,N-ジエチル-p-トルイジン;N-(2-ヒドロキシエチル)N-メチル-p-トルイジン;N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン;N,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン;N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジンまたはN,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジンのエチレンオキサイド付加物;N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジンまたはN,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジンのプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらの芳香族3級アミン類は、p(パラ)体に限定されず、o(オルト)体、m(メタ)体でもよい。
【0038】
(2)成分(D)である金属石鹸類と成分(E)であるジベンゾイルパーオキサイドの組み合わせ。
金属石鹸類の具体例としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸マンガン、2-エチルヘキサン酸コバルト、2-エチルヘキサン酸ニッケル、コバルトアセチルアセトネート、亜鉛アセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセトネート、鉄アセチルアセトネート、バナジルアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0039】
(3)成分(D)である金属石鹸類と成分(E)であるハイドロパーオキサイドとの組み合わせ。
金属石鹸類の具体例としては、上記のものが挙げられる。
ハイドロパーオキサイドの具体例としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、t-アミルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0040】
(4)成分(D)であるチオ尿素化合物と成分(E)であるハイドロパーオキサイドとの組み合わせ。
ハイドロパーオキサイドの具体例としては、上記のものが挙げられる。
チオ尿素化合物の具体例としては、例えば、チオ尿素、エチレンチオ尿素、N,N’-ジメチルチオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素、N,N’-ジプロピルチオ尿素、N,N’-ジ-n-ブチルチオ尿素、N,N’-ジラウリルチオ尿素、N,N’-ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、1-アセチル-2-チオ尿素、1-ベンゾイル-2-チオ尿素等が挙げられる。
【0041】
(5)成分(D)であるチオ尿素化合物と成分(E)であるモノカーボネート型過酸化物との組み合わせ。
チオ尿素化合物の具体例としては、上記のものが挙げられる。
モノカーボネート型過酸化物の具体例としては、例えば、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサン等が挙げられる。
【0042】
これら成分(D)及び成分(E)は、それぞれ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
硬化性樹脂組成物の硬化時間を短くしてアスファルトへの密着性を向上する観点から、成分(D)として、芳香族3級アミン類と金属石鹸類を併用し、成分(E)としてジベンゾイルパーオキサイドを用いることが特に好ましい。硬化物を高強度とする観点から、芳香族3級アミン類としては、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ジ(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジンが特に好ましく、金属石鹸類としては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸マンガン、オクチル酸コバルト、バナジルアセチルアセトネートが好ましい。
【0044】
硬化性樹脂組成物中における(D)成分及び(E)成分の含有量は、(A)、(B)及び(C)成分の総量100質量部に対して、それぞれ0.1~10質量部が好ましく、0.3~8質量部がより好ましく、0.5~6質量部がさらに好ましい。0.1質量部以上とすることで、硬化性樹脂組成物の硬化性を良好なものとできる。10質量部以下とすることで、硬化物の引張強さを良好なものとできる。
【0045】
〔その他のラジカル重合性モノマー〕
本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物は、前記の成分(A)及び成分(B)以外の重合性モノマーとして、その他のラジカル重合性モノマー(F)を含有することができる。その他のラジカル重合性モノマー(F)を含有することで粘度、硬度または引張強さをさらに良好にできる場合がある。
【0046】
その他のラジカル重合性モノマー(F)の具体例としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル系モノマー;アクリロニトリル等のシアン化ビニル系モノマー;酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;成分(B)以外の多官能モノマーなどが挙げられる。
【0047】
成分(B)以外の多官能モノマーの具体例としては、2官能の(メタ)アクリレートとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート;ポリカーボネートジオールジ(メタ)アクリレート;ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート;EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート;プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート;9,9-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)フルオレン;ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、
3官能の(メタ)アクリレートとして、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス((メタ)アクロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられ、
4官能の(メタ)アクリレートとして、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられ、
5官能の(メタ)アクリレートとして、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられ、
6官能の(メタ)アクリレートとして、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
これらのその他のラジカル重合性モノマー(F)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
その他のラジカル重合性モノマー(F)は、硬化物の硬度や引張強さの点から、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0049】
その他のラジカル重合性モノマー(F)は、硬化性樹脂組成物の総量100質量%中、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。上述したように、硬化性樹脂組成物がその他のラジカル重合性モノマー(F)を含むことで粘度や硬度、引張強さをさらに調整できる場合がある。その他のラジカル重合性モノマー(F)の含有量が、硬化性樹脂組成物の総量100質量%中、30質量%以下であれば、硬化性樹脂組成物の粘度や硬化物の硬度、引張強さをさらに良好にできる。
【0050】
〔その他の成分〕
本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上述した成分(A)~(E)及びその他のラジカル重合性モノマー(F)以外の他の成分(G)を含んでもよい。
【0051】
その他の成分(G)としては、例えばパラフィンワックス、ゴム、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、揺変剤、消泡剤、重合禁止剤、シランカップリング剤等の各種添加剤;熱重合開始剤、光重合開始剤などのラジカル重合開始剤等が挙げられる。
【0052】
本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物には、酸素による樹脂表面の硬化阻害を抑制するために、パラフィンワックスを加えてもよい。パラフィンワックスは、融点の異なる2種以上を併用することが好ましい。パラフィンワックスの融点は、40~80℃が好ましい。パラフィンワックスの具体例としては、例えば以下ものが挙げられる。パラフィン115(カタログ記載の融点:47℃、日本精蝋社製)、パラフィン130(カタログ記載の融点:55℃、日本精蝋社製)、パラフィン150(カタログ記載の融点:66℃、日本精蝋社製)など。融点が40℃以上であれば、樹脂組成物を硬化させる際に十分な空気遮断作用が得られ、表面硬化性が良好となる。一方、融点が80℃以下であれば、樹脂組成物を調製する際、パラフィンワックスの樹脂組成物への溶解性が良好となる。また、融点の異なるパラフィンワックスを併用することによって、温度が変わったときであっても、十分な空気遮断作用が得られ、表面硬化性が良好となる。併用する際には、融点の差が5℃~20℃程度のものを併用することが好ましい。
パラフィンワックスとしては、表面硬化性を向上させる点で、有機溶剤に分散したワックスを使用しても良い。ワックスが有機溶剤に分散状態にあり、分散状態のワックスの粒子径が0.1μm~50μmに微粒子化されていることにより、空気遮断作用を効果的に発現する。分散状態のパラフィンワックスは、市販されている例えば、ビックケミー・ジャパン社製の「BYK-S780(商品名)」等をそのまま添加することができる。
【0053】
本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物には、硬化物の強度を向上するために、ゴムを加えてもよい。ゴムの具体例としては、例えば以下ものが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル-ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸エステル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムなど。
【0054】
本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物には、硬化物の酸化劣化を防止するために、酸化防止剤を加えてもよい。酸化防止剤の具体例としては、例えば以下ものが挙げられる。n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコールビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のフェノール系酸化防止剤;トリフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、トリストリデシルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤;ジヘキシルスルフィド、ジラウリルー3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステリアルー3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(β-ラウリルチオプロピオネート)等の硫黄系酸化防止剤など。
【0055】
本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物には、硬化物の硬度を調整するために可塑剤を加えてもよい。可塑剤の具体例としては、例えば以下ものが挙げられる。フタル酸ジブチル、フタル酸ジ2-エチルヘキシル、フタル酸ジイソデシル等のフタル酸エステル類、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、オクチルアジペート等のアジピン酸エステル類、ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート等のセバシン酸エステル類、ジ-2-エチルヘキシルアゼレート、オクチルアゼレート等のアゼラインエステル類等の2塩基性脂肪酸エステル類;塩素化パラフィン等のパラフィン類など。
【0056】
本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物には、硬化物の光劣化を抑制するために、紫外線吸収剤を加えてもよい。紫外線吸収剤の具体例としては、例えば以下ものが挙げられる。2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-オクチルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-デシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4,4’-ジブトキシベンゾフェノンなどの2―ヒドロキシベンゾフェノンの誘導体;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジターシャリイブチルフェニル)ベンゾトリアゾール或いはこれらのハロゲン化物;フェニルサリシレート、p-ターシャリイブチルフェニルサリシレート、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤等。
【0057】
本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物には、塗料化する場合に配合する骨材や顔料の沈降を抑制するために、揺変剤を加えてもよい。揺変剤の具体例としては、ウレタンウレア系、脂肪酸アマイド、有機ベントナイト、酸化ポリエチレンワックス、有機変性セピオライトなど有機系揺変剤や微粒子シリカなど無機系揺変剤等が挙げられる。
【0058】
本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物には、気泡を取り除くために、消泡剤を加えてもよい。消泡剤の具体例としては、特殊アクリル系重合物を溶剤に溶解させたアクリル系消泡剤、特殊ビニル系重合物を溶剤に溶解させたビニル系消泡剤等が挙げられる。消泡剤の具体的な製品名としては、例えば以下ものが挙げられる。楠本化成社製ディスパロンシリーズの製品名:OX-880EF、OX-881、OX-883、OX-77EF、OX-710、OX-8040、1922、1927、1950、P-410EF、P-420、P-425、PD-7、1970、230、230HF、230EF、LF-1980、LF-1982、LF-1983、LF-1984、LF-1985等やビックケミー・ジャパン社製の製品名:BYK-052、BYK-1752等。
【0059】
本発明の実施形態による樹脂組成物には、貯蔵安定性を向上させるために、重合禁止剤を加えてもよい。重合禁止剤の具体例としては、ヒドロキノン、2-メチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2-6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール等が挙げられる。
【0060】
本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物には、塗料化する場合に配合する骨材や顔料との密着性を向上させるために、シランカップリング剤を加えてもよい。シランカップリング剤の具体例としては、例えば以下ものが挙げられる。3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等。
【0061】
本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物には、硬化性を向上させるために、熱重合開始剤を加えてもよい。熱重合開始剤の具体例としては、例えば以下ものが挙げられる。メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール;ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;ジラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等のパーオキシエステル等の過酸化物;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス-1-シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリック酸、2,2’-アゾビス-(2-アミジノプロパン)ジハイドロクロライド等のアゾ化合物など。
【0062】
本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物には、硬化性を向上させるために、光重合開始剤を加えてもよい。光重合開始剤の具体例としては、例えば以下ものが挙げられる。ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4-フェニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン型化合物;t-ブチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン等のアントラキノン型化合物;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン等のアルキルフェノン型化合物;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン型化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド型化合物;フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等のフェニルグリオキシレート型化合物など。
【0063】
これらのその他の成分(G)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
その他の成分(G)の含有量は、硬化性樹脂組成物の所望の特性を損なわない観点から、硬化性樹脂組成物の総量100質量%中、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0065】
<硬化性樹脂組成物の製造方法>
本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、作業性の点から、予め成分(A)~(D)、必要に応じて、その他のラジカル重合性モノマー(F)及びその他の成分(G)の混合を行い、樹脂組成物としておくことが好ましい。成分(A)~(D)の混合方法としては、常温または40~80℃程度の加熱下で、1~120分かけて撹拌混合を行うことが好ましい。成分(E)は、硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性の点から、硬化性樹脂組成物を硬化する直前に常温で撹拌混合することが好ましい。
【0066】
<樹脂組成物の粘度>
硬化剤である(E)成分を含まない樹脂組成物の粘度は、23℃においてB型粘度計を用いた回転速度60rpmの測定値が1~1,000mPa・sの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは1~500mPa・sであり、さらに好ましくは1~300mPa・sである。硬化性樹脂組成物の粘度が上記範囲内であれば、塗工等の作業性が良好となる。
【0067】
<硬化性樹脂組成物の硬化時間>
下記条件で測定した硬化性樹脂組成物の硬化時間は、1~8分であることが好ましく、1~7分であることがより好ましく、1~6分であることがさらに好ましい。硬化性樹脂組成物の硬化時間が上記範囲内であれば、硬化物のアスファルトへの密着性が良好となる。
【0068】
23℃空気中において、成分(E)以外の成分を配合した樹脂組成物に、成分(E)を配合、混合して硬化性樹脂組成物とし、直ぐにこの硬化性樹脂組成物を直径10mm、高さ120mmの試験管に底部より70mmまで投入する。試験管中の硬化性樹脂組成物内に熱電対を配し、試験管を23℃の水中に静置する。その後の硬化性樹脂組成物の温度変化を熱電対により測定する。成分(E)を配合した時点を起点とし、該硬化性樹脂組成物の温度が最大となるまでの時間を硬化時間とする。
【0069】
<硬化物の硬度>
本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物の硬化物の硬度は、以下の方法で作製した厚さ3mmの評価用シート状硬化物を2枚重ねて6mm厚とし、JISK6253に記載のタイプDデュロメータで23℃における硬度を測定した場合、D30~D95になるものが好ましく、D40~D95になるものがより好ましく、D50~D95になるものがさらに好ましい。上記範囲とすることで、硬化物の耐汚染性が良好なものとなる。
【0070】
上記の評価用シート状硬化物は次の方法で作製する。硬化性樹脂組成物と接する面を離型用のPETフィルムで被覆した板ガラス2枚と、塩化ビニル製のガスケットで作製したガラスセルに真空脱泡した硬化性樹脂組成物を流し込み、12時間23℃で養生する。養生後、板ガラス及びPETフィルムを取り除き、縦250mm、横250mm、厚さ3mmの評価用シート状硬化物を得る。
【0071】
<硬化物の引張強さ>
本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物は、前記の厚さ3mmの評価用シート状硬化物から、JISK6251に記載のダンベル状1号形を打ち抜き、「チャック間距離:50mm、引張速度:20mm/min.」で引張試験を実施した場合の引張強さが、2N/mm2以上であることが好ましく、3N/mm2以上であることがより好ましく、4N/mm2以上であることがさらに好ましい。この評価方法の引張強さが、2N/mm2以上であれば、硬化物の耐久性が良好となり、実使用時における亀裂などの不具合を抑制できる。
【0072】
<塗料>
本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物は、硬度、引張強さに優れる硬化物が得られるため、塗料用の樹脂として好適に使用できる。
【0073】
塗料の具体例としては、例えば、滑り止め用塗料や排水性塗料、遮熱塗料、道路マーキング用塗料、床版防水工法用塗料などの道路用塗料、壁面用塗料や床用塗料、屋根用塗料、橋梁用塗料、プラント用塗料、鉄構造物用塗料、コンクリート用塗料などの土木建築用塗料、家具用塗料、装飾品用塗料、電子機器・モバイル用塗料、家電用塗料、防水用塗料、自動車用塗料、バイク用塗料、重機用塗料、鉄道車両用塗料、船舶用塗料などが挙げられる。
【0074】
本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物を塗料として使用する場合、骨材を配合して使用してもよい。骨材の具体例としては、砂、硅砂、川砂、寒水石、エメリー、大理石、炭酸カルシウム、カオリン、ベントナイト、マイカ、タルク、炭化珪素粉、窒化珪素粉、窒化ほう素粉、アルミナ、スラグ、ガラス粉末、セラミック骨材、陶器屑、着色骨材、中空粒子等が挙げられる。また、着色や遮熱、放熱の効果を発現するために顔料を配合してもよい。顔料の具体例としては、アゾ顔料やフタロシアニン顔料等の有機顔料;セラミック顔料、酸化鉄、酸化チタン等の無機顔料等が挙げられる。
【0075】
<道路用塗料>
道路用塗料とは、道路舗装表面に機能付与するための塗料である。道路への塗工時は、道路を閉鎖する必要があるが、本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物は、硬化時間が短いため、この硬化性樹脂組成物を含む道路用塗料を用いると道路閉鎖時間を短縮できる。舗装の種類としては、アスファルト舗装、コンクリート舗装等があり、本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物は、アスファルトへの密着性に優れる硬化物が得られることから、特にアスファルト舗装用塗料として好適に使用できる。
【0076】
本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物を適用できる道路用塗料の種類としては、滑り止め用塗料や排水性塗料、遮熱塗料、道路マーキング用塗料、床版防水工法用塗料等が挙げられる。
【0077】
<道路用遮熱塗料>
道路用遮熱塗料は、日射中の近赤外光を高反射して道路表面の温度上昇を抑制する機能性塗料である。道路用遮熱塗料としては、一般的に常温硬化性樹脂に、光反射顔料や、中空粒子を配合したものが用いられる。本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物は、このような道路用遮熱塗料に適用できる。
【0078】
光反射顔料は、可視領域で吸収を示し近赤外領域で反射を示すので、熱エネルギーの吸収が少なく塗膜の温度上昇を防ぐことができる。光反射顔料としては、例えば、JISA5759(日射遮へい・ガラス飛散防止用フィルム)で定義される350~2100nmの領域における日射反射率が12%以上である顔料等が挙げられる。ここで、日射反射率データは、充分に隠蔽された状態、具体的には隠蔽率が約1.0の塗膜において測定される。光反射顔料として使用できる日射反射率が12%以上である顔料としては、例えば、黒色またはそれに近い濃彩色の顔料;黄色系顔料、赤色系顔料、青色系顔料及び緑色系顔料等の着色顔料;並びに白色顔料が挙げられる。
【0079】
黒色またはそれに近い濃彩色の顔料の具体例としては、商品名:クロモファインブラックA-1103(大日精化工業社製)のアゾメチアゾ系黒色顔料、商品名:ダイピロキサイドブラウン9270(大日精化工業社製)、商品名:ダイピロキサイドブラウン9290(大日精化工業社製)等が挙げられる。
黄色系顔料の具体例としては、モノアゾ系エロー(商品名:ホスターパームエローH3G、ヘキスト社製)等が挙げられる。
赤色系顔料の具体例としては、酸化鉄(商品名:トダカラー120ED、戸田工業社製)、キナクリドンレッド(商品名:HostapermRed E2B70、ヘキスト社製)等が挙げられる。
青色系顔料の具体例としては、フタロシアニンブルー(商品名:シアニンブルーSPG-8、大日本インキ化学工業社製)等が挙げられる。
緑色系顔料の具体例としてはフタロシアニングリーン(商品名:シアニングリーン5310、大日精化工業社製)等が挙げられる。
【0080】
白色顔料は、特に限定されるものではなく、具体例としては、酸化チタン、亜鉛華等が挙げられる。酸化チタンは、ルチル型、アナターゼ型共に適用可能であり、ルチル型の酸化チタンが好適に用いられる。
【0081】
中空粒子は断熱性に優れるので光反射性粒子として使用できる。中空粒子としては、強度、断熱性の点で、中空無機粒子が好ましく、特に、その表層及び殻内で太陽光等を反射することができ、しかも高い長波放射率を有することから、透明又は半透明の中空セラミック粒子が好適である。ここで、長波放射率とは、吸収した熱を赤外線として再び放射するときの変換効率である。したがって、塗膜中に該中空セラミック粒子が含有されていると、該塗膜が熱を吸収した場合でも、塗膜の温度上昇を効果的に抑えることができる。このように、透明又は半透明の中空セラミック粒子は、反射性、断熱性及び放射性を有することにより、塗膜に高い遮熱効果を付与するものである。該中空セラミック粒子における中空セラミック粒子の強度は3.9N/mm2以上が好ましく、平均粒径は5~150μm程度が好ましい。中空セラミック粒子としては、ジルコニア・チタニア複合物からなる中空粒子、ホウ化ケイ素セラミックからなる中空粒子、シラスバルーン、ガラスバルーン等が挙げられる。
【0082】
<硬化物>
本発明の実施形態による硬化物は、本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物を硬化して得られるものである。本発明による硬化性樹脂組成物、あるいは硬化性樹脂組成物を含有する塗料を基材に塗工した後に硬化物とすることで、本発明による硬化物を含有するコーティング材として使用することができる。
【0083】
硬化方法としては、特に限定されないが、成分(E)を除く他の成分を含む樹脂組成物に成分(E)を加える方法(方法(i))、成分(D)を溶解した樹脂液(成分(E)を
除く他の成分を含む)と成分(E)を溶解した樹脂液(成分(D)を除く他の成分を含む)とを混合する方法(方法(ii))等が挙げられる。手作業による塗工を行う場合は方法(i)、(ii)のいずれでもよく、2液混合スプレーによる塗工を行う場合は2剤の配合比が安定しやすくなるため、方法(ii)が好ましい。
【0084】
本発明の実施形態による硬化物は、成分(D)及び成分(E)を含む本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物を静置することで、硬化させて製造することができる。静置する雰囲気温度としては、特に限定はされないが、0~50℃が好ましく、5~45℃がより好ましく、10~40℃がさらに好ましい。雰囲気温度を0℃以上、50℃以下とすることで、硬化性樹脂組成物の硬化性が良好になる。静置時間は、硬化反応の進行速度が、雰囲気温度、成分(D)の量、成分(E)の量によって大きく異なるため一概にはいえないが、静置温度が0~50℃であると、静置時間を0.5~30時間とすると硬化反応をほぼ終了させることができる。
【0085】
<その他の用途>
本発明の実施形態による硬化性樹脂組成物は、注型材料、バインダー材、接着剤、補修材、目地材等のその他の用途としても好適に使用できる。
【0086】
注型材料の具体例としては、例えば、発光ダイオードモジュール、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、カメラ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)デバイス、フラットパネルディスプレイ、タッチパネル、電子ペーパー、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、プロジェクター等に用いられるフィルム、シート、レンズ、光導波路、封止材などの光学部品などが挙げられる。
【0087】
バインダー材の具体例としては、例えば、人工大理石やFRP(Fiber-Reinforced Plastics)、点字タイルなどのバインダーが挙げられる。
【0088】
接着剤の具体例としては、例えば、ガラス用接着剤、樹脂用接着剤、金属用接着剤などが挙げられ、第二世代のアクリル系接着剤(SGA:Second generation of acrylic adhesives)としても使用することができる。
【0089】
補修材の具体例としては、例えば、ひび割れ注入材及び剥落防止材等のコンクリート用補修材、道路用補修材などが挙げられる。
【0090】
目地材の具体例としては、例えば、タイル用目地材、石材用目地材、コンクリート用目地材、アスファルト用目地材などが挙げられる。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本実施例中、「部」は「質量部」を意味する。本実施例における測定及び評価は、以下の方法にしたがって実施した。
【0092】
<質量平均分子量>
質量平均分子量は、ポリマーを溶剤であるテトラヒドロフランに溶解し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィを用いて測定した分子量をポリスチレン換算して求めた。
【0093】
<樹脂組成物の粘度>
硬化剤である成分(E)を含まない樹脂組成物の粘度を測定した。B型粘度計を用い、23℃において回転速度60rpmで実施した。
【0094】
<硬化時間>
23℃空気中において、成分(E)以外の成分を配合した樹脂組成物に、成分(E)を配合、混合して硬化性樹脂組成物とし、直ぐにこの硬化性樹脂組成物を直径10mm、高さ120mmの試験管に底部より70mmまで投入した。試験管中の硬化性樹脂組成物内に熱電対を配し、試験管を23℃の水中に静置した。その後の硬化性樹脂組成物の温度変化を熱電対により測定した。成分(E)を配合した時点を起点とし、該硬化性樹脂組成物の温度が最大となるまでの時間を硬化時間とした。
【0095】
<アスファルト密着性>
コンクリート上に道路用アスファルト(昭和シェル石油社製、製品名「ストレートアスファルト60/80」)を塗工した基材に、23℃において硬化性樹脂組成物を300μm厚で塗工し、24時間養生した。養生後、JISK5600-5-6に記載のクロスカット試験を行い、以下の基準でアスファルトへの密着性を評価した。
【0096】
○:塗膜が全く剥離せずに残存した。
×:塗膜が全て剥離した。
【0097】
<硬度>
厚さ3mmのシート状硬化物を2枚重ねて6mm厚とし、JISK6253に記載のタイプDデュロメータを用いて23℃における硬度を測定した。
【0098】
<引張強さ>
厚さ3mmのシート状硬化物から、JISK6251に記載のダンベル状1号形を打ち抜き、チャック間距離:50mm、引張速度:20mm/分で引張試験を実施し、引張強さ(引張強度)を測定した。
【0099】
〔製造例1〕ポリマー1の製造
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置内に、脱イオン水145部、分散安定剤として、ポリビニルアルコール(ケン化度:80%、重合度:1,700)0.5部を加えて撹拌した。
【0100】
ポリビニルアルコールを完全に溶解した後、撹拌を停止し、メチルメタクリレート60部、n-ブチルメタクリレート40部、2,2′-アゾビスイソブチロニトリル1.3部、オクチルチオグリコレート1.9部を加えて再度撹拌した。撹拌下で重合装置内の雰囲気を窒素置換し、70℃に昇温して重合を行った。重合発熱のピークを検出後、98℃に昇温して、さらに0.5時間反応を行い、40℃に冷却した。
【0101】
得られた水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄した。
【0102】
脱水後、40℃で20時間乾燥して、粒状の(メタ)アクリル系重合体(以下、「ポリマー1」という。)を得た。ポリマー1の質量平均分子量(Mw)は20,000であった。
【0103】
〔製造例2〕ポリマー2の製造
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置内に、脱イオン水145部、分散安定剤として、ポリビニルアルコール(ケン化度:80%、重合度:1,700)0.5部を加えて撹拌した。
【0104】
ポリビニルアルコールを完全に溶解した後、撹拌を停止し、メチルメタクリレート100部、2,2′-アゾビスイソブチロニトリル0.2部、n-ドデシルメルカプタン0.9部を加えて再度撹拌した。撹拌下で重合装置内の雰囲気を窒素置換し、70℃に昇温して重合を行った。重合発熱のピークを検出後、98℃に昇温して、さらに0.5時間反応を行い、40℃に冷却した。
【0105】
得られた水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄した。
【0106】
脱水後、40℃で20時間乾燥して、粒状の(メタ)アクリル系重合体(以下、「ポリマー2」という。)を得た。ポリマー2の質量平均分子量(Mw)は40,000であった。
【0107】
〔実施例1〕
1.硬化性樹脂組成物の製造
冷却器を備えた反応容器内に、成分(A)としてテトラヒドロフルフリルメタクリレート(THFMA)を70部、成分(B)として「EXCELATE RUA-049X(3官能のウレタンアクリレート)」20部、成分(D)としてN,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン(PTEO)を3部、パラフィンワックスとして、「パラフィン130」を0.6部、「パラフィン150」を0.4部、「HNP-9」を0.3部、消泡剤として「ディスパロン230EF」を0.5部、禁止剤として「BHT」を0.05部加えた。
【0108】
反応容器内のこれらの成分を撹拌しながら、成分(C)として製造例1で製造した「ポリマー1」を10部加えた。
【0109】
次いで、反応容器内の溶液を75℃に昇温し、温度を維持したまま2時間撹拌した。ポリマー1及びパラフィンワックスが完全に溶解したことを確認した後、40℃まで冷却し、更にパラフィンワックス分散液である「BYK-S780」を加え30分間撹拌した。
【0110】
その後、反応容器内の溶液を23℃とし、成分(D)として「ニッカオクチックスコバルト(8%)」(製品名)を1部加えた。更に30分間撹拌し、樹脂組成物を得た。
【0111】
得られた樹脂組成物に、成分(E)として「ナイパーNS」(製品名)3部を加えた後、撹拌することで硬化性樹脂組成物を得た。
【0112】
2.評価用シート状硬化物の製造
硬化性樹脂組成物と接する面を離型用のPETフィルムで被覆した板ガラス2枚と、塩化ビニル製のガスケットで作製したガラスセルに真空脱泡した硬化性樹脂組成物を流し込み、12時間23℃で養生した。養生後、板ガラス及びPETフィルムを取り除き、縦250mm、横250mm、厚さ3mmの評価用シート状硬化物を得た。
【0113】
樹脂組成物の粘度、及び硬化性樹脂組成物の硬化時間、並びに硬化物のアスファルト密着性、硬度、引張強度を評価した。結果を表1に示す。
【0114】
〔実施例2~47〕
組成を表1、表2及び表3のように変更した以外は、実施例1と同様に、樹脂組成物、硬化性樹脂組成物及び3mm厚の評価用シート状硬化物を作製し、各評価を行った。結果を表1、表2及び表3に示す。
【0115】
〔比較例1、2〕
比較例1、2では、表1に示すように、成分(B)の代わりに2官能のウレタンアクリレートを使用した以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物、硬化性樹脂組成物及び3mm厚の評価用シート状硬化物を作製し、評価を行った。結果を表1、表2及び表3に示す。
【0116】
表1、表2及び表3に示すとおり、実施例1~47はいずれも硬化性樹脂組成物の硬化時間、硬化物のアスファルト密着性、硬度、引張強さが良好だった。一方、比較例1、2は、硬化時間が長いため、硬化物のアスファルト密着性が悪かった。また、硬化物の硬度や引張強さも低位であった。
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
表中の略語は下記の通りである。
THFMA:テトラヒドロフルフリルメタクリレート、三菱ケミカル社製、アクリエステルTHF(商品名)。
FA-512M:2-ジシクロペンテノキシエチルメタクリレート、日立化成社製、ファンクリルFA-512M(商品名)。
ライトエステルPO(商品名):フェノキシエチルメタクリレート、共栄社化学社製。
BZMA:ベンジルメタクリレート、三菱ケミカル社製、アクリエステルBZ(商品名)。
ETMA:2-エトキシエチルメタクリレート、三菱ケミカル社製、アクリエステルET(商品名)。
2-HPMA:2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、三菱ケミカル社製、アクリエステルHP(商品名)。
EXCERATE RUA-049X(製品名):3官能のウレタンアクリレート、亜細亜工業社製。
EXCERATE RUA-048(製品名):3官能のウレタンアクリレート、亜細亜工業社製。
EXCERATE RX12-89(製品名):5官能のウレタンアクリレート、亜細亜工業社製。
EXCERATE RUA-075(製品名):5官能のウレタンアクリレート、亜細亜工業社製。
EXCERATE RUA-071(製品名):6官能のウレタンアクリレート、亜細亜工業社製。
EXCERATE RUA-076MG(製品名):6官能のウレタンアクリレート、亜細亜工業社製。
EXCERATE RUA-077(製品名):10官能のウレタンアクリレート、亜細亜工業社製。
ポリマー1:製造例1で製造したポリマー、メチルメタクリレート/n-ブチルメタクリレート=60/40(モノマー質量比)の共重合体、Mw=20,000。
ポリマー2:製造例2で製造したポリマー、ポリメチルメタクリレート、Mw=40,000。
PTEO:N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、日本乳化剤社製。
ニッカオクチックスコバルト(製品名)(8%):2-エチルヘキサン酸コバルトの8%溶液、日本化学産業社製。
ナイパーNS(製品名):ジベンゾイルパーオキサイドのサスペンジョン(純度40%)、日油社製。
NKオリゴUA-4200(製品名):2官能のウレタンアクリレート、新中村化学工業社製。
NKオリゴU-200PA(製品名):2官能のウレタンアクリレート、新中村化学工業社製。
ニューフロンティアBPE-4(製品名):EO変性ビスフェノールAジアクリレート(分子内のEO(エチレンオキサイド)部の繰り返し数の合計n≒4)、第一工業製薬社製。
NKエステルAPG-700(製品名):ポリプロピレングリコールジアクリレート(プロピレングリコール部の繰り返し数n≒12)、新中村化学工業社製。
NKエステルNPG(製品名):ネオペンチルグリコールジメタクリレート、新中村化学工業社製。
NKエステルDCP(製品名):トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、新中村化学工業社製。
ライトエステル1,9ND(製品名):1,9-ノナンジオールジメタクリレート、共栄社化学社製。
アクリエステルTMP(製品名):トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、三菱ケミカル社製。
パラフィンワックス130(製品名):パラフィンワックス(カタログ記載の融点:55℃)、日本精蝋社製。
パラフィンワックス150(製品名):パラフィンワックス(カタログ記載の融点:66℃)、日本精蝋社製。
HNP-9(製品名):パラフィンワックス(カタログ記載の融点:75℃)、日本精蝋社製。
BYK-S780(製品名):パラフィンワックス10%の石油ナフサ分散液、ビックケミー・ジャパン社製。
ディスパロン230EF(製品名):消泡剤、楠本化成社製。
BHT:2-6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、重合禁止剤、本州化学社製、H-BHT(商品名)。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の実施形態によれば、硬化時間が短く、アスファルトへの密着性と、硬度、引張強さに優れる硬化物が得られる硬化性樹脂組成物及びその硬化物、並びにその硬化性樹脂組成物を含有する塗料を提供することができるため、産業上極めて有用である。