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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】ストラドルドビークル
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/00 20160101AFI20230407BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20230407BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20230407BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
B60W20/00 900
B60K6/485 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021534061
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(86)【国際出願番号】 JP2020028395
(87)【国際公開番号】W WO2021015225
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/028944
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】日野 陽至
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-100124(JP,A)
【文献】特開2010-057243(JP,A)
【文献】国際公開第2014/064728(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3159814(JP,U)
【文献】特開2013-102616(JP,A)
【文献】特開2012-034551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-20/50
B60K 6/20- 6/547
B60L 1/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両であって、
クランクシャフトを有し、前記クランクシャフトを介して動力を出力するエンジンと、
前記クランクシャフトを介して前記エンジンから出力される回転力を受け前記鞍乗型車両を駆動する駆動輪と、
ライダの操作に応じて前記鞍乗型車両の加速を指示する加速指示部と、
前記クランクシャフトの回転に応じて回転するように前記クランクシャフトと直接的又は間接的に接続されたロータと前記ロータに設けられた永久磁石とを有する永久磁石式モータと、
バッテリと、
スイッチング動作することによって前記バッテリと前記永久磁石式モータとの間を流れる電流を制御する複数のスイッチング部を備えたインバータとを備え、
前記鞍乗型車両は、
前記加速指示部によって加速が指示されている間に、前記エンジンの回転速度が大きくなるように前記エンジンを制御し、かつ、インバータの動作周波数が4kHzを超え16kHz未満の範囲内に含まれるように、インバータの動作周波数を当該範囲外から変化させて前記永久磁石式モータを前記エンジンによる加速をアシストするように力行制御し、前記エンジンと前記永久磁石式モータの両方に前記鞍乗型車両を加速させる制御装置
を備える。
【請求項2】
請求項1記載の鞍乗型車両であって、
前記制御装置は、前記鞍乗型車両の走行が停止した状態で前記加速指示部によって加速が指示され場合、前記インバータの動作周波数を、0kHzから、4kHzを超え16kHz未満の範囲内に含まれるように増加する。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鞍乗型車両であって、
前記制御装置は、前記鞍乗型車両の走行状態で前記加速指示部によって加速が指示され場合、インバータの動作周波数を、16kHzを超えた範囲から、4kHzを超え16kHz未満の範囲の内に含まれるように減少する。
【請求項4】
請求項1から3いずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
視覚的な表示を行う表示装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記加速指示部によって加速が指示されている間に、前記表示装置の表示状態を変化させる。
【請求項5】
請求項1から4いずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
前記インバータの動作周波数が4kHzを超え16kHz未満の範囲の内に含まれている場合に、前記加速指示部による加速の指示が停止したとき、前記インバータの動作周波数が16kHz以上になるように増加する。
【請求項6】
請求項1から5いずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
前記加速指示部は、前記鞍乗型車両の加速の指示及び加速の指示の停止に加えて、ライダの操作に応じて前記鞍乗型車両の減速の指示が可能であり、
前記制御装置は、前記鞍乗型車両の加速の指示を停止した前記加速指示部によって減速が指示されている間に、インバータの動作周波数が4kHzを超え16kHz未満の範囲内に含まれるように、インバータの動作周波数を当該範囲外から変化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストラドルドビークルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鞍乗型車両のエンジンにモータのトルクを付与することによって、走行のアシストを行うことが知られている。
例えば、特許文献1には、自動2輪車のエンジン等に設けられる始動発電機が示されている。特許文献1の始動発電機は、直流交流変換回路と接続されている。直流交流変換回路は、直流電圧源の正極および負極のそれぞれと前記始動発電機の各固定子巻線との間を開閉するスイッチング部を備える。スイッチング部は制御装置によって制御される。制御装置が、スイッチング部を操作することで、始動発電機をモータとして利用してクランクシャフトにトルクを付与する。これによってエンジンが始動する。また、ライダの操作に基づく加速アシスト処理も実施される。
スイッチング部はオン・オフ動作する。スイッチング部は、例えばPWM制御又は正弦波制御によって操作される。これによって、電流が制御される。また、始動発電機のトルクが制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5874315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成によれば、ライダの操作に基づいて、スイッチング部がPWM制御又は正弦波制御でオン・オフ動作することにより、発電電流の制御や、加速アシスト処理に必要なトルクの制御を行うことができる。
鞍乗型車両は、自動車に比べて軽量そしてコンパクトである。そのため、鞍乗型車両に搭載できるモータやバッテリのサイズは制限される。そこで、モータやバッテリのサイズが同じでも、鞍乗型車両の加速性能を向上しつつライダが体感できる加速感を向上することが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、鞍乗型車両の加速性能を向上しつつライダが体感できる加速感を向上することができる鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鞍乗型車両の加速性能とライダが体感できる加速感の関係ついて検討を行った。加速感は、ライダが体感できる鞍乗型車両の加速の感覚である。加速は、単位時間当たりの鞍乗型車両の速度の増大量である。鞍乗型車両は、加速によって、加速前の速度よりも大きな速度で走行する。
【0007】
本発明者らは、鞍乗型車両の加速性能とライダが体感できる加速感の関係を検討する中で、エンジンによる鞍乗型車両の走行をアシストする永久磁石式モータに電流を供給するインバータの動作に着目した。
インバータは、エンジンと接続された永久磁石式モータに流れる電流を制御する。例えば、加速が指示されている間に、駆動部はエンジンによって駆動される。この時に、インバータが永久磁石式モータに駆動の電流を流すことによって、永久磁石式モータは、駆動部が受ける回転力を増大することができる。つまり、永久磁石式モータは、エンジンによる加速をアシストできる。
【0008】
インバータは、スイッチング動作することによってバッテリと永久磁石式モータとの間を流れる電流を制御する。インバータは、スイッチング部を有している。スイッチング部は、例えばトランジスタで構成されている。インバータのスイッチング部は、モータの回転に応じて永久磁石の磁束が巻線を鎖交する周期よりも短い周期、即ち各巻線で生じる誘導起電力の周期よりも短い周期でオン・オフすることによって、モータの電流及びトルクを制御する。インバータのスイッチング部は、例えばPWM制御又は正弦波制御の変調で用いられるキャリア周波数でオン・オフ動作する。スイッチング部がオン・オフ動作する周波数を、インバータの動作周波数と称する。
インバータの動作周波数は、通常、モータの回転速度から独立して設定することができる。インバータの動作周波数は、通常、モータの回転速度に関わらず一定の周波数に設定される。一定の周波数、即ち一定の周期でオン・オフ動作する場合に、オン期間とオフ期間のデューティ比が制御されることによって、モータの電流及びトルクが制御される。
【0009】
一般的なインバータの動作周波数は、例えば20kHzを超える範囲に設定されている。本発明者らは、インバータの動作周波数を、4kHzを超え16kHz未満の範囲にすることを検討した。例えば20kHzを超える範囲に設定されている動作周波数が4kHzを超え16kHz未満の範囲になることで、インバータの動作周波数が低下する。
インバータの動作周波数が低下すると、スイッチング部におけるスイッチングロスが低減する。このため、永久磁石式モータを駆動するインバータの効率が向上する。この結果、加速時に永久磁石式モータ及びエンジンからから供給できる出力を増大することができる。つまり、永久磁石式モータ及びエンジンから駆動部に出力される回転力を増大することができる。
鞍乗型車両のエンジンはイナーシャが小さく加速しやすい。また、鞍乗型車両は軽量であるため、スイッチングロス低減による効率の向上は、鞍乗型車両の加速性能の向上に寄与しやすい。動作周波数が4kHzを超え16kHz未満の範囲になることで、鞍乗型車両における加速性能が向上しやすい。
【0010】
インバータの動作周波数が4kHzを超え16kHz未満の範囲になると、スイッチングに起因する動作音が人間に聞こえるようになる。
スイッチングの動作音は、永久磁石式モータを音源として発生する。より詳細には、スイッチングの動作音は、電流が流れるモータの巻線、及び巻線が巻回したステータコアを音源として発生する。また、スイッチングの動作音は、オン・オフ動作するスイッチング部自体を音源として発生する。
インバータの動作周波数が20kHzを超える場合、スイッチングに起因する動作音は人間にほとんど聞こえない。インバータの動作周波数が、4kHzを超え16kHz未満の範囲になることによって、スイッチングに起因する動作音が人間に聞こえるようになる。
【0011】
鞍乗型車両のライダは、外部に晒されているため、ライダの体が感知する加速度(重力加速度)そのものに加えて、音、振動、及び風圧の変化から加速感を感じる。
【0012】
鞍乗型車両では、エンジン及びモータがライダの近くに配置され、少なくともその一部が外部から見える位置に配置されている。
また、エンジンの燃焼動作に起因するエンジン音の周波数と、モータ及びインバータから発生するスイッチングに起因した動作音の周波数とは、異なる。このため、ライダは、燃焼動作に起因するエンジン音と、スイッチングに起因した動作音とを異なる音程の音として聞き取ることができる。従って、ライダは、エンジン音に重合され、モータ及びインバータから発生するスイッチングに起因した動作音を聞き取ることができる。ライダは、スイッチングに起因した動作音がエンジン音に重合された音を、燃焼動作に起因するエンジン音のみの場合とは異なる音として、聞き取ることができる。
また更に、燃焼動作に起因するエンジン音は、燃焼による混合気の膨張・排出、ピストン・バルブの往復動、クランク軸の回転への動きの方向の変換、及び、クランク軸の回転変動にともなう振動といった、部材の運動を源とする音である。スイッチングに起因した動作音は、巻線やトランジスタを流れる電流の変動に伴い電磁気的に発生する振動を源とする音である。従って、燃焼動作に起因するエンジン音と、スイッチングに起因した動作音とは、発生メカニズムの違いから、倍音構成も異なる。このため、ライダは、燃焼動作に起因するエンジン音と、スイッチングに起因した動作音とを異なる音色として聞き取ることができる。従って、ライダは、エンジン音に重合され、モータ及びインバータから発生するスイッチングに起因した動作音を聞き取ることができる。ライダは、スイッチングに起因した動作音がエンジン音に重合された音を、燃焼動作に起因するエンジン音のみの場合とは異なる音として、聞き取ることができる。
鞍乗型車両が加速する時に聞こえるエンジン音と、スイッチングに起因した動作音との両方によって、ライダが体感できる加速感を向上できる。即ち、ライダは、エンジン音にモータ及びインバータから発生する音が重合されることでエンジンによる加速がモータによってアシストされていることを認知できる。
このようにして、鞍乗型車両における加速性能を向上しつつライダが体感できる加速感を向上することができる。
本発明は、以上の知見に基づいて完成したものである。
【0013】
本発明の鞍乗型車両は、以下の構成を備える。
【0014】
(1)
鞍乗型車両であって、
クランクシャフトを有し、前記クランクシャフトを介して動力を出力するエンジンと、
前記クランクシャフトを介して前記エンジンから出力される回転力を受け前記鞍乗型車両を駆動する駆動輪と、
ライダの操作に応じて前記鞍乗型車両の加速を指示する加速指示部と、
前記クランクシャフトの回転に応じて回転するように前記クランクシャフトと直接的又は間接的に接続されたロータと前記ロータに設けられた永久磁石とを有する永久磁石式モータと、
バッテリと、
スイッチング動作することによって前記バッテリと前記永久磁石式モータとの間を流れる電流を制御する複数のスイッチング部を備えたインバータとを備え、
前記鞍乗型車両は、
前記加速指示部によって加速が指示されている間に、前記エンジンの回転速度が大きくなるように前記エンジンを制御し、かつ、インバータの動作周波数が4kHzを超え16kHz未満の範囲内に含まれるように、インバータの動作周波数を当該範囲外から変化させて前記永久磁石式モータを力行制御し、前記エンジンと前記永久磁石式モータの両方に前記鞍乗型車両を加速させる制御装置
を備える。
【0015】
上記構成によれば、鞍乗型車両は、エンジンと、駆動輪と、加速指示部と、永久磁石式モータと、バッテリと、インバータと、制御装置とを備える。
エンジンは、クランクシャフトを介して動力を出力する。駆動輪は、クランクシャフトを介してエンジンから出力される回転力を受け、鞍乗型車両を駆動する。加速指示部は、ライダの操作に応じて加速を指示する。
永久磁石式モータは、ロータと永久磁石とを有する。ロータは、クランクシャフトの回転に応じて回転するようにクランクシャフトと直接的又は間接的に接続されている。永久磁石は、ロータに設けられている。インバータは、複数のスイッチング部を備えている。複数のスイッチング部は、スイッチング動作することによってバッテリと永久磁石式モータとの間を流れる電流を制御する。
制御装置は、インバータの動作を制御する。制御装置は、加速指示部によって加速が指示されている間に、前記エンジンの回転速度が大きくなるように前記エンジンを制御し、かつ、インバータの動作周波数が4kHzを超え16kHz未満の範囲の内に含まれるように、インバータの動作周波数を当該範囲外から変化させて永久磁石式モータを力行制御する。
これによって、加速が指示されている間に、インバータの動作周波数が、4kHzを超え16kHz未満の範囲外から、4kHzを超え16kHz未満の範囲内に変化する。
【0016】
このため、永久磁石式モータを駆動するインバータの効率が向上する。この結果、加速時に永久磁石式モータ及びエンジンからから供給できる出力を増大することができる。つまり、永久磁石式モータ及びエンジンから駆動部に出力される回転力を増大することができる。鞍乗型車両における加速性能が向上しやすい。
また、加速が指示されている間に、インバータの動作周波数が4kHzを超え16kHz未満の範囲になると、スイッチングの動作音が人間に聞こえる。しかも、スイッチングの動作音は、スピーカやブザーではなく、スイッチング部及びモータの巻線といった動力の出力に関連する部品を音源として発生する。例えばISO226のラウドネス曲線に示されるように、音は、周波数が4kHzを超えると人間に最もよく聞こえる。4kHzを超え16kHz未満の音は、大多数の人間に聞こえやすい。インバータの動作周波数が4kHzを超え16kHz未満の範囲内になることによって、ライダを含む人間に動作音が聞こえやすくなる。鞍乗型車両では、エンジン及びモータがライダの近くに配置され、少なくともその一部が外部から見える位置に配置されている。また、エンジンの燃焼動作に起因するエンジン音の周波数帯と、モータ及びインバータから発生するスイッチングに起因した動作音の周波数帯とは、異なる。このため、ライダは、エンジン音に重合されたモータ及びインバータから発生するスイッチングに起因した動作音を聞き取ることができる。また、ライダは、燃焼動作に起因するエンジン音と、スイッチングに起因した動作音とは、発生メカニズムの差に起因して異なる音色有する。このことからも、ライダは、エンジン音に重合されたモータ及びインバータから発生するスイッチングに起因した動作音を聞き取ることができる。
上記構成の鞍乗型車両によれば、鞍乗型車両がエンジンと永久磁石式モータの両方によって加速する時に聞こえるエンジン音と、スイッチングに起因した動作音との両方によって、ライダが体感できる加速感を向上できる。即ち、ライダは、エンジン音にモータ及びインバータから発生する音が重合されることでエンジンによる加速がモータによってアシストされていることが認知できる。
鞍乗型車両における加速性能を向上しつつライダが体感できる加速感を向上することができる。
【0017】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
【0018】
(2) (1)の鞍乗型車両であって、
前記制御装置は、前記鞍乗型車両の走行が停止した状態で前記加速指示部によって加速が指示され場合、前記インバータの動作周波数を、0kHzから、4kHzを超え16kHz未満の範囲内に含まれるように増加することによって、前記エンジンと前記永久磁石式モータの両方に前記鞍乗型車両を加速させる。
【0019】
上記構成によれば、エンジンと永久磁石式モータの両方によって鞍乗型車両が加速する。このとき、鞍乗型車両の走行が停止した状態で0kHzであったインバータの動作周波数が、加速の指示により4kHzを超え16kHz未満の範囲内に含まれるように増加する。これによって、停止した鞍乗型車両の発進及び加速が認知できるとともに、エンジン音にモータ及びインバータから発生する音が重合されることで、エンジンによる加速がモータによってアシストされていることが認知できる。
【0020】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
【0021】
(3) (1)又は(2)の鞍乗型車両であって、
前記制御装置は、前記鞍乗型車両の走行状態で前記加速指示部によって加速が指示され場合、前記インバータの動作周波数を、16kHzを超えた範囲から、4kHzを超え16kHz未満の範囲の内に含まれるように減少する。
【0022】
上記構成によれば、16kHzを超えた範囲であったインバータの動作周波数が、加速の指示により4kHzを超え16kHz未満の範囲内に含まれるように減少する。これによって、走行状態でライダに体感される加速感をより向上することができる。
【0023】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
【0024】
(4) (1)から(3)いずれか1の鞍乗型車両であって、
視覚的な表示を行う表示装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記加速指示部によって加速が指示されている間に、前記表示装置の表示状態を変化させる。
【0025】
上記構成によれば、加速が指示されている間に、表示装置の視覚的な表示状態が変化する。視覚的な表示によれば、色や形状の表示状態によって、表示の内容が他の表示と区別されやすい。従って、視覚的な表示の変化によって、ライダに体感される加速感をより向上することができる。
【0026】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
【0027】
(5) (1)から(4)いずれか1の鞍乗型車両であって、
前記インバータの動作周波数が4kHzを超え16kHz未満の範囲内に含まれている場合に、前記加速指示部による加速の指示が停止したとき、前記インバータの動作周波数が16kHz以上になるように増加する。
【0028】
上記構成によれば、加速の指示の停止に応じて、動作音が人間に聞こえないか、又は人間に聞こえる動作音の大きさが減少する。これによって、ライダに体感される加速感に加え、加速が停止した感覚の体感もより向上することができる。
【0029】
本発明の一つの観点によれば、鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。
【0030】
(6) (1)から(5)いずれか1の鞍乗型車両であって、
前記制御装置は、加速の指示を停止した前記加速指示部によって更に減速が指示されている間に、インバータの動作周波数が4kHzを超え16kHz未満の範囲内に含まれるように、インバータの動作周波数を当該範囲外から変化させる。
【0031】
上記構成によれば、加速に加え、操作に応じて減速が指示されている間に動作音が聞こえることによって、鞍乗型車両が減速走行中しつつ回生動作していることをライダに分りやすく伝えることができる。
【0032】
(7) (4)から(6)いずれか1の鞍乗型車両であって、
前記表示装置とは異なる態様で視覚的な表示を行う回生表示装置をさらに備え、
前記制御装置は、加速の指示を停止した前記加速指示部によって更に減速が指示されている間に、前記回生表示装置の表示状態を変化させる。
【0033】
上記構成によれば、操作に応じて減速が指示されている間に、回生表示装置の視覚的な表示状態が変化する。視覚的な表示の変化によって、加速に加え、鞍乗型車両が減速しつつ回生エネルギーを充電している減速感もより向上することができる
【0034】
鞍乗型車両は、運転者がサドルに跨って着座する形式の車両である。鞍乗型車両は、サドル型のシートを備える車両である。鞍乗型車両は、駆動輪を有する。本発明の鞍乗型車両は、例えば、自動二輪車、自動三輪車、及びATV(All-Terrain Vehicle)を含む。鞍乗型車両は、例えばリーン車両である。リーン車両は、左旋回中に車両左方向に傾斜し右旋回中に車両右方向に傾斜する。鞍乗型車両は、例えば、ライダを収容する車室を備えていない。
【0035】
鞍乗型車両は、例えば、エンジンと、永久磁石式モータとを備える。鞍乗型車両は、例えば露出型エンジンユニットを備えている。露出型エンジンユニットは、エンジンと、永久磁石式モータとを備える。露出型エンジンユニットは、少なくとも一部が鞍乗型車両の外部に露出している。例えば、鞍乗型車両がエンジンユニットを収容するエンジンルーム無しにエンジンユニットを備える場合、露出型エンジンユニットは、少なくとも一部が鞍乗型車両の外部に露出している。露出型エンジンユニットは、エンジン本体と、永久磁石式モータとを備える。露出型エンジンユニットは、例えば、更にクラッチ及び変速装置を備えてもよい。露出型エンジンユニットは、例えば、エンジン本体の骨格を構成するシリンダヘッド、シリンダ、クランクケース、及び、永久磁石式モータのロータを直接に覆うカバー、並びにこれらの部材に対し荷重が支持されるように一体に取付けられる部品が含まれる。例えばフレームに取付けられる排気マフラーは、シリンダヘッドから外されても配置を維持できる。この場合、排気マフラーはエンジンユニットに含まれない。
例えば、露出型エンジンユニットは、永久磁石式モータ以外の部分が鞍乗型車両の外部に露出していてもよい。電流に起因する永久磁石式モータの振動は永久磁石式モータ以外の露出型エンジンユニットの部分に伝達され得るからである。ただし、例えば、少なくとも永久磁石式モータの部分が露出する場合、当該部分が露出しない場合と比べてライダに対し大きな音が出力される。
エンジンは、ピストンと、クランクシャフトとを有する。クランクシャフトは、例えば、コネクティングロッドによってピストンと連結されたクランクシャフト、及び、コネクティングロッド及び更に異なる部材を介してピストンと連結されたクランクシャフトを含む。クランクシャフトは、例えば、ピストンの往復動が回転運動に変換されてクランクシャフトに伝達されるように構成されている。
本発明のエンジンは、例えば、4ストローク式のエンジン、及び2ストローク式のエンジンを含む。
エンジンは、例えば、4ストロークの間に、クランクシャフトを回転させる負荷が大きい高負荷領域と、クランクシャフトを回転させる負荷が高負荷領域THの負荷より小さい低負荷領域とを有する。
高負荷領域と低負荷領域とを有するエンジンでは、4ストロークにおける回転速度の変動が大きい。このため、加速の指示に起因する回転速度の増加がわかりにくい場合がある。この場合でも、永久磁石式モータに流れる電流に起因する音によってライダに体感されるう加速感を向上することができる。
単気筒エンジンは、2以上の気筒を有するエンジンよりも狭い高負荷領域を有する。即ち単気筒エンジンは、より広い低負荷領域を有する。
ただし、エンジンは、3以上の気筒を有してもよい。
【0036】
永久磁石式モータは、永久磁石を有するモータである。永久磁石式モータは、ステータ及びロータを有する。永久磁石式モータのロータは永久磁石を有する。永久磁石式モータのロータは巻線を備えていない。永久磁石式モータのステータは巻線を備える。永久磁石式モータは、複数相に対応する巻線を備える。永久磁石式モータは、例えば、2相又は4相以上に対応する巻線を備えてもよい。ただし、永久磁石式モータは、例えば、3相に対応する巻線を備えることによって、ベクトル制御、及び位相制御が容易に実施可能である。ステータの巻線は、ステータコアを巻いている。ロータは永久磁石がエアギャップを介してステータコアと向き合うように回転する。永久磁石式モータは、ラジアルギャップ型のモータ、及びアキシャルギャップ型のモータを含む。永久磁石式モータは、ラジアルギャップ型のモータとして、ステータよりも外方で回転するロータを備えたアウターロータ型のモータ、及び、ステータよりも内方で回転するロータを備えたアウターロータ型のモータを含む。
永久磁石式モータは、例えば、発電を行ってもよい。永久磁石式モータは、例えば、発電機としての機能を有する永久磁石式モータである。また、永久磁石式モータは、発電機としての機能を有さない永久磁石式モータを含む。
【0037】
クランクシャフトに直接的又は間接的に接続される永久磁石式モータのロータは、例えば、クランクシャフトの動力が常時伝達されるように機械的に接続されたロータである。永久磁石式モータのロータは、例えば、クランクシャフトと直接的に接続されたロータ、及び、伝達機構を介してクランクシャフトと間接的に接続されたロータを含む。伝達機構は、例えば、ベルト、チェーン、ギア、減速機、増速機等である。本発明のロータは、クランクシャフトに対し固定された速度比で回転するようクランクシャフトと接続されることが好ましい。
【0038】
インバータは、バッテリから永久磁石式モータに出力される電流を制御する複数のスイッチング部を備えている。
スイッチング部は、例えば、トランジスタである。スイッチング部は、例えば、FET(Field Effect Transistor)、サイリスタ、及びIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を含む。インバータは、例えば、複数のスイッチング部で構成されたブリッジインバータを有する。
【0039】
制御装置は、例えば、エンジンの動作を制御する制御装置を含む。但し、制御装置は、例えば、エンジンの動作を制御する装置とは別個の制御装置も含む。
【0040】
鞍乗型車両の加速は、鞍乗型車両の単位時間当たりの走行速度が増大することである。従って、少なくとも鞍乗型車両の加速が開始した直後は、鞍乗型車両は走行している。鞍乗型車両の加速は、例えば鞍乗型車両の加速走行と称することができる。例えば、単に駆動輪の駆動トルクが増大しても、鞍乗型車両が走行しない場合は、鞍乗型車両の加速ではない。
【0041】
加速指示部は、鞍乗型車両の加速を指示する手段である。言い換えると、加速指示部は、エンジントルクの増加量を指示する手段である。本発明の加速指示部は、例えば運転者によって操作される。加速指示部は、例えばアクセルグリップである。この場合、アクセルグリップの回転における位置が、加速指示部の操作量を示す。また、加速指示部は、例えば、ペダル、レバー、及びスイッチを含む。
なお、加速指示部には、例えば、操作によって変位しない装置も含まれる。このような加速指示部としては、例えば、加速指示部に加えられた力の大きさが加速指示部の操作量を示すように構成された加速指示部等が挙げられる。また、加速指示部は、鞍乗型車両の加速だけではなく、鞍乗型車両の減速を指示するように構成されていてもよい。この場合、鞍乗型車両の加速に係る加速指示部の操作量が、「加速指示部の操作量」に相当する。
加速指示部は、加速指示部の操作量が大きいほど、加速指示部によって指示されるエンジンのトルクの増加量が大きくなるように構成されている。言い換えると、加速指示部は、加速指示部の操作量が大きいほど、加速指示部によって指示されるエンジンのトルクが大きくなるように構成されている。また、言い換えると、加速指示部は、加速指示部の操作量が大きいほど、加速指示部によって指示されるスロットル弁の開度の増加量が大きくなるように構成されている。また、加速指示部は、加速指示部の操作量の増加の速度が大きいほど、加速指示部によって指示される鞍乗型車両の加速度が大きくなるように構成されている。
【0042】
加速指示部によって加速が指示されている場合は、例えば、加速指示部の操作量が、ある固定された限度操作量を越えたことであってよい。また、加速指示部によって加速が指示されている場合は、例えば、加速指示部の操作量が、特定時間前の操作量に対して定められた操作量を越えたことであってよい。つまり、加速指示部によって加速が指示されている場合は、加速指示部の操作量の増加の速度が固定された限度速度以上であるか否かであってよい。
【0043】
加速指示部によって加速が指示されている場合インバータの動作周波数を所定範囲外から所定範囲内に変化させることは、加速指示部によって加速が指示されている期間、常に、インバータの動作周波数を所定範囲外から所定範囲内に変化させることを含む。また、加速指示部によって加速が指示されている場合インバータの動作周波数を所定範囲外から所定範囲内に変化させることは、加速指示部によって加速が指示されている期間の一部で、インバータの動作周波数を所定範囲外から所定範囲内に変化させることを含む。
また、インバータの動作周波数を所定範囲外から所定範囲内に変化させることは、周波数を所定範囲外から所定範囲内に変化させた後、所定範囲内の一定の周波数に維持することを含む。また、インバータの動作周波数を所定範囲外から所定範囲内に変化させることは、周波数を所定範囲外から所定範囲内に変化させた後、周波数を所定範囲内で変動することを含む。
【0044】
制御装置が、4kHzを超え16kHz未満の範囲内の動作周波数でインバータを動作させる場合、制御装置は、例えば、永久磁石式モータにクランクシャフトを駆動させる。制御装置は、永久磁石式モータを力行状態とする。ただし、制御装置は、これに限られず、例えば、4kHzを超え16kHz未満の範囲内の動作周波数でインバータを動作させる場合、クランクシャフトに永久磁石式モータを駆動させる。これによって、永久磁石式モータを発電状態とする。なお、永久磁石式モータが力行状態となるか又は発電状態となるかは、永久磁石式モータの回転速度と、回転に伴う誘導起電圧の変化に対しスイッチング部から流れる電流の位相とに依る。制御装置は、位相を変化させることによって、永久磁石式モータの力行状態と発電状態を切替えることができる。但し、制御装置は、例えば、永久磁石式モータを発電状態にせず、永久磁石式モータを力行状態のみで動作させてもよい。
【0045】
永久磁石式モータに流れる電流による音は、永久磁石式モータの少なくとも一部がスイッチング電流によって鳴動することによって生じる。動作音は、ライダに限られず、鞍乗型車両の周囲にいる人間に聞こえてもよい。
【0046】
表示装置の表示状態は、加速指示部によって加速が指示されている間に変化する。例えば、表示装置の表示状態が変化している期間と、前記インバータの動作周波数が4kHzを超え16kHz未満の範囲の内に含まれる期間とは重なりを有する。
ただし、表示装置の表示状態が変化するタイミングは、インバータの動作周波数が変化するタイミングと異なっていてもよい。例えば、表示装置の表示状態が変化するタイミングは、インバータの動作周波数が変化するタイミングと実質的に同じでもよい。
また、鞍乗型車両は、加速指示部によって減速が指示されている間に上記表示装置とは異なる態様で表示状態が変化する、表示装置(例えば回生表示装置と称する)を備えてもよい。表示状態における異なる態様とは、例えば、表示の位置が違いに異なることである。但し、異なる態様として、例えば、加速が指示されている間の色と、減速が指示されている間の色が異なってもよい。この場合、表示の位置が互いに同じでも、また異なっていてもよい。また、異なる態様として、例えば、加速が指示されている間に表示される図記号の形状と、減速が指示されている間に表示される図記号の形状が異なってもよい。例えば、表示される矢印の向きが異なったり、点滅部分の移動の方向が異なったりしてもよい。
なお、鞍乗型車両は、加速が指示されている間に表示を変化させる表示装置のみを備え、減速が指示されている間に表示を変化させる表示装置を備えていなくてもよい。また、この逆の関係も許容される。また更に、鞍乗型車両は、いずれに対応する表示装置を備えていなくともよい。
【0047】
インバータが4kHzを超え16kHz未満の範囲内と前記範囲外の双方の動作周波数で動作することは、例えば、(a)4kHzを超え16kHz未満の範囲内の周波数で動作する期間と(b)4kHz以下の周波数で動作する期間と、を有することである。ただし、範囲外の周波数範囲は、特に限られず、例えば、(a)4kHzを超え16kHz未満の範囲内の周波数で動作する期間と(c)16kH以上の周波数で動作する期間とを有してもよい。また、周波数範囲としては、例えば、(a)4kHzを超え16kHz未満の範囲内の周波数で動作する期間と、(b)4kHz以下の周波数で動作する期間と、(c)16kH以上の周波数で動作する期間とを有してもよい。なお、インバータにおけるスイッチングの動作が停止する場合、動作周波数が0Hzである。この場合は、4kHz以下の周波数での動作に含まれる。
【0048】
加速走行時にエンジンの燃焼動作に起因するエンジン音は、主に40Hz以上4kHz未満の成分を含む。インバータが4kHzを超え16kHz未満の範囲の動作周波数で動作することによって、ライダは、燃焼動作に起因するエンジン音とインバータの動作周波数に起因する音とを、異なる音程を有する音として区別して認知できる。即ち、ライダは、エンジン音にモータ及びインバータから発生する音が重合されることでエンジンによる加速がモータによってアシストされていることを認知できる。
【0049】
例えば、インバータが5kHzを超え16kHz未満の範囲の動作周波数で動作することによって、モータ及びインバータから発生する音の周波数は、エンジン音の主な成分を含む周波数帯とは音程に対し、離れている。このため、例えば、音程の差に対する感受性が低いいライダでも、燃焼動作に起因するエンジン音とインバータの動作周波数に起因する音とを、異なる音程を有する音として区別して認知できる。つまり、より幅広い層のライダが、エンジン音にモータ及びインバータから発生する音が重合されることでエンジンによる加速がモータによってアシストされていることを認知できる。
【0050】
本明細書にて使用される専門用語は特定の実施例のみを定義する目的であって発明を制限する意図を有しない。
本明細書にて使用される用語「および/または」はひとつの、または複数の関連した列挙された構成物のあらゆるまたはすべての組み合わせを含む。
本明細書中で使用される場合、用語「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」または「有する(having)」およびその変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分および/またはそれらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、および/またはそれらのグループのうちの1つまたは複数を含むことができる。
本明細書中で使用される場合、用語「取り付けられた」、「結合された」および/またはそれらの等価物は広く使用され、特に指定しない限り直接的および間接的な取り付け、および結合の両方を包含する。
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術および本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されることはない。
本発明の説明においては、技術および工程の数が開示されていると理解される。
これらの各々は個別の利益を有し、それぞれは、他の開示された技術の1つ以上、または、場合によっては全てと共に使用することもできる。
したがって、明確にするために、この説明は、不要に個々のステップの可能な組み合わせをすべて繰り返すことを控える。
それにもかかわらず、明細書および特許請求の範囲は、そのような組み合わせがすべて本発明および請求項の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。
本明細書では、新しい鞍乗型車両について説明する。
以下の説明では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を述べる。
しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細なしに本発明を実施できることが明らかである。
本開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、鞍乗型車両の加速性能を向上しつつライダが体感できる加速感を向上することができる鞍乗型車両を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両の概略を示す図である。
図2図1に示す実施形態の適用例に係る鞍乗型車両を示す外観図である。
図3図2に示すエンジンユニットの概略構成を模式的に示す部分断面図である。
図4】エンジンのクランク角度位置と必要トルクとの関係を模式的に示す説明図である。
図5図3に示す永久磁石式モータの回転軸線に垂直な断面を示す断面図である。
図6図2に示す鞍乗型車両の電気的な概略構成を示すブロック図である。
図7】制御における電流及び電圧の波形の例を示す図である。
図8図2に示す鞍乗型車両の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明を、好ましい実施形態に基づいて図面を参照しつつ説明する。
【0054】
図1は、本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両の概略を示す図である。図1のパート(a)は、鞍乗型車両の概略構成を示すブロック図である。図1のパート(b)は、インバータの動作周波数の変化の例を示すタイムチャートである。
【0055】
鞍乗型車両1は、例えばリーン車両である。リーン車両は、左旋回中に車両左方向に傾斜し右旋回中に車両右方向に傾斜する。鞍乗型車両1は、例えば、自動二輪車、又は自動三輪車である。鞍乗型車両1として、例えばATVも採用可能である。
鞍乗型車両1は、エンジン10と、駆動輪3bと、加速指示部8と、永久磁石式モータ20と、バッテリ4と、インバータ61と、制御装置60とを備える。鞍乗型車両1は、露出型エンジンユニットEUを備える。露出型エンジンユニットEUは、エンジン10と、永久磁石式モータ20とを備える。
鞍乗型車両1は、車室を有しない。また、鞍乗型車両1は、エンジン10、永久磁石式モータ20、及びインバータ61を格納するエンジンルームを有さない。従って、エンジン10、永久磁石式モータ20、及びインバータ61は、エンジンルームに格納されていない。つまり、露出型エンジンユニットEUは、エンジンルームに格納されていない。
【0056】
エンジン10は、内燃機関である。エンジン10は、クランクシャフト15を有する。クランクシャフト15は、エンジン10内のガスの燃焼によって回転する。エンジン10は、クランクシャフト15を介して動力を出力する。クランクシャフト15は動力として回転力を出力する。
【0057】
駆動輪3bは、クランクシャフト15を介してエンジン10及び永久磁石式モータ20から出力される回転力を受け、鞍乗型車両1を駆動する。駆動輪3bは、例えば、変速装置及びクラッチといった動力伝達装置を介してエンジン10及び永久磁石式モータ20から出力される回転力を受ける。駆動輪3bは、例えば、クラッチを介して永久磁石式モータ20から出力される回転力を受ける。
【0058】
加速指示部8は、操作に応じて加速を指示する。加速指示部8は、例えば、ステアリングに設けられるアクセルグリップである。加速指示部8として、例えば、アクセルペダルも採用され得る。加速指示部8が操作されると、エンジン10に供給されるガスの量が増加する。この結果、クランクシャフト15を介してエンジン10から出力される動力が増大する。例えば、クランクシャフト15の回転速度が増加する。
【0059】
永久磁石式モータ20は、ロータ30とステータ40を有する。ロータ30は、永久磁石37を有する。ロータ30は、クランクシャフト15の回転に応じて回転するようにクランクシャフト15と接続されている。ロータ30は、例えば、クランクシャフト15と間接的に接続されている。ただし、ロータ30は、クランクシャフト15と間接的に接続されていてもよい。ロータ30には永久磁石37が設けられている。
【0060】
インバータ61は、複数のスイッチング部611~616を備えている。複数のスイッチング部611~616は、オン・オフを切り換えるスイッチング動作によってバッテリ4と永久磁石式モータ20との間を流れる電流を制御する。
【0061】
制御装置60は、インバータ61の動作を制御する。制御装置60は、スイッチング部611~616のオン・オフを制御する。
制御装置60は、スイッチング動作により目標値に応じた電流を永久磁石式モータ20に供給する。制御装置60は、PWM制御(正弦波制御を含む)によって、スイッチング部611~616のオン・オフを制御する。
制御装置60は、PWM制御で、誘導起電圧の周波数よりも高い周波数のパルスでスイッチング部611~616がオン及びオフする。制御装置60は、オン期間とオフ期間のデューティ比を制御することによって、永久磁石式モータ20の電流及びトルクを制御する。制御装置60は、目標値に応じた値をキャリア信号で変調する。キャリア信号は誘導起電圧の周波数よりも高い周波数の信号である。
正弦波制御は、PWM制御の一種である。正弦波制御では、永久磁石式モータ20の巻線に正弦波電流が流れるように、誘導起電圧の周波数でデューティ比が変化する。
制御装置60がPWM制御において、スイッチング部611~616のオン・オフを制御する周波数をインバータ61の動作周波数又はキャリア周波数と称する。動作周波数は、PWM制御以外の制御にも用いられる。
制御装置60はエンジン10の制御も行なう。但し、制御装置60におけるエンジン10の制御を担う部分と、永久磁石式モータ20の制御を担う部分とは、互いに異なる制御基板に配置されてもよい。また、エンジン10の制御を担う部分と、永久磁石式モータ20の制御を担う部分とは、鞍乗型車両1において互いに離れた場所に配置されてもよい。
【0062】
制御装置60は、加速指示部8によって加速が指示されている間に、インバータ61の動作周波数が4kHzを超え16kHz未満の範囲の内に含まれるように、インバータ61の動作周波数を当該範囲外から変化させる。
当該範囲外は、インバータ61の動作周波数が0kHz以上4kHz以下の範囲内又は、16kHz以上の範囲内である。例えば、インバータ61が動作を停止している場合は、オン・オフの変化がないので、動作周波数が実質的に0kHzである。
制御装置60は、例えば、インバータ61の動作周波数が0kHz以上4kHz以下の範囲にある場合、加速指示部8によって加速が指示されている間に、インバータ61の動作周波数を、4kHzを超え16kHz未満の範囲内に増加させる。
制御装置60は、例えば、インバータ61の動作周波数が15kHz以上の範囲にある場合、加速指示部8によって加速が指示されている間に、インバータ61の動作周波数を、4kHzを超え16kHz未満の範囲内に減少させる。
【0063】
なお、制御装置60は、PWM制御で、誘導起電圧の周波数よりも高い周波数のパルスでスイッチング部611~616をオン及びオフするモードと、誘導起電圧の周波数でスイッチング部611~616をオン及びオフするモードとを切替えてもよい。誘導起電圧の周波数でスイッチング部611~616をオン及びオフするモードを位相制御モードと称する。位相制御モードでは、キャリア信号による変調を行わない。この場合、スイッチング部611~616の周波数は、キャリア周波数ではなく、単なる動作周波数である。位相制御モードによれば、例えば、誘導起電圧が、スイッチング部611~616を制御する電圧を超えた場合に、効率的にスイッチング部611~616を動作させることができる。位相制御モードは、エンジン回転速度が大きい走行中の発電に利用することができる。
インバータ61がPWM制御によって0kHz以上4kHz以下の範囲内で動作している状態から位相制御モードに移行することで、動作周波数が4kHz以下に減少する。即ち、インバータ61の動作周波数が、4kHzを超え16kHz未満の範囲内から、当該範囲外に変化する。
例えば、制御装置60が位相制御モードにおいて4kHz以下の動作周波数でスイッチング部611~616をオン及びオフしている状態で、加速指示部8によって加速が指示された場合、制御装置60は、インバータ61の動作周波数を、4kHzを超え16kHz未満の範囲内に増加させる。
ただし、制御装置60として、位相制御モードを実施しない構成も採用し得る。
【0064】
また、制御装置60として、加速指示部8によって減速が指示されている間に、インバータ61の動作周波数が4kHzを超え16kHz未満の範囲の内に含まれるように、インバータ61の動作周波数を当該範囲外から変化させる構成も採用可能である。加速指示部8による減速の指示は、例えば、鞍乗型車両1の走行中に加速指示部8の操作量がゼロである場合である。
【0065】
図1のパート(b)には、加速指示部8の操作量P1、エンジン10の回転速度R1、及び、インバータ61の動作周波数(キャリア周波数)F1の変化の例が示されている。
図1のパート(b)の例におけるタイミングt1よりも前では、インバータ61の動作が停止している。従って、インバータ61の動作周波数F1は、0kHzである。また、図1のパート(b)の例におけるタイミングt1よりも前では、エンジン10の燃焼動作も停止している。つまり、タイミングt1よりも前は、例えば、エンジン10のアイドリングストップ状態を示している。
図1のパート(b)の例では、タイミングt1で加速指示部8がライダにより操作され、鞍乗型車両1の加速が指示される。タイミングtで加速指示部8がライダの操作が停止し、鞍乗型車両1の加速の指示が停止する。図1のパート(b)の例では、加速指示部8の操作量が加速基準を超えた場合に、鞍乗型車両1の加速が指示されたと判断される。
【0066】
タイミングt1で鞍乗型車両1の加速が指示されると、制御装置60は、永久磁石式モータ20に流れる電流に起因する音が永久磁石式モータ20から出力されるようにインバータ61を動作させる。制御装置60は、4kHzを超え16kHz未満の範囲FR内の動作周波数F1でインバータ61を動作させる。これによって、加速指示部8によって加速が指示されている間に、インバータ61の動作周波数F1が4kHzを超え16kHz未満の範囲の内に含まれるように、インバータ61の動作周波数が当該範囲FR外から変化する。
また、タイミングt1で鞍乗型車両1の加速が指示されると、インバータ61の動作によって、永久磁石式モータ20がエンジン10のクランクシャフト15を駆動する。エンジン10が燃焼動作を開始し、回転速度R1が増加する。
タイミングt1の後も鞍乗型車両1の加速が指示される。エンジン10の回転速度R1が増加を継続する。鞍乗型車両1が加速する。より詳細には、鞍乗型車両1が停止状態から加速状態に変化し、加速しながらの走行を継続する。エンジン10に供給される空気及び燃料も増加する。エンジン10と永久磁石式モータ20の両方が鞍乗型車両1を加速させる。
制御装置60は、4kHzを超え16kHz未満の範囲FR内の動作周波数F1でインバータ61を動作させる。エンジン10が燃焼動作を開始した後も、永久磁石式モータ20にクランクシャフト15を駆動させる。これによって、エンジン10の動作が永久磁石式モータ20によってアシストされる。鞍乗型車両1が加速する。
スイッチングの動作音は、永久磁石式モータ20のステータ巻線Wといった動力の出力に関連する部品を音源として発生する。これによって、永久磁石式モータ20を有する露出型エンジンユニットEUから音が出力される。
スイッチングの動作音は、スイッチング部611~616、及びスイッチング部611~616と永久磁石式モータ20とを接続する配線からも生じ得る。
【0067】
タイミングtで鞍乗型車両1の加速の指示が停止すると、制御装置60は、インバータの動作周波数F1を、4kHzを超え16kHz未満の範囲FR内から、16kHz以上の範囲に増加する。これによって、鞍乗型車両1の加速の指示が停止すると、インバータの動作周波数F1が、4kHzを超え16kHz未満の範囲FR内から、当該範囲FR外に変化する。
この結果、動作音が人間に聞こえないか、又は人間に聞こえる動作音の大きさが減少する。
図1のパート(a)の例では、タイミングtで鞍乗型車両1の加速の指示が停止した後も、エンジン10が燃焼動作を維持する。この結果、永久磁石式モータ20はクランクシャフト15に駆動される。これによって、永久磁石式モータ20が発電状態となる。
【0068】
上述したように、タイミングt1からt間での加速が指示されている間に、インバータ61の動作周波数が、4kHzを超え16kHz未満の範囲外から、4kHzを超え16kHz未満の範囲内に変化する。インバータ61の動作周波数が、4kHzを超え16kHz未満の範囲内にあると、永久磁石式モータ20の回転速度とは直接に関係しないスイッチングの動作音が人間に聞こえるようになる。

【0069】
従って、鞍乗型車両1が走行し、且つ、加速が指示されている間に、スイッチングの動作音が人間に聞こえる。
スイッチングの動作音は、スピーカやブザーではなく、スイッチング部611~616及び永久磁石式モータ20の巻線といった動力の出力に関連する部品を音源として発生する。例えばISO226のラウドネス曲線に示されるように、音は、周波数が4kHzを超えると人間に最もよく聞こえる。4kHzを超え16kHz未満の音は、大多数の人間に聞こえやすい。インバータの動作周波数が4kHzを超え16kHz未満の範囲内になることによって、ライダを含む人間に動作音が聞こえやすくなる。鞍乗型車両1は、自動車と異なり車室を有さない。また、動作音は、鞍乗型車両の周囲にいる人にも聞こえやすくなる。
エンジンの動作に起因する音のうち主なものは、燃焼に起因する音である。例えば、12000rpmで回転するエンジンの燃焼の周波数は、毎秒100回である。クランク軸及びバルブといった部品は、エンジンの燃焼の2倍、あるいは4倍の周波数で動作する。また、エンジンユニットの共振等によって共振周波数の整数倍の周波数の音が発生する。エンジンの動作に起因する音の主な成分は、4kHz未満の成分を有する。このように、エンジンの燃焼に起因する音の周波数は、4kHzを超え16kHz未満の範囲と異なる。また、エンジンの燃焼に起因する音の倍音構成と、永久磁石式モータ20及びインバータ61から発生するスイッチングに起因した動作音の倍音構成とは、互いに異なる。このため、ライダは、エンジン音に重合された永久磁石式モータ20及びインバータ61から発生するスイッチングに起因した動作音を聞き取ることができる。
鞍乗型車両1が走行し、且つ、操作に応じて加速が指示されている間に動作音を聞かせることによって、ライダの運転中でも、鞍乗型車両1が加速ながら走行している加速感をライダに分りやすく伝えることができる。
また、鞍乗型車両1が加速しながら走行していることを鞍乗型車両1の周囲にいる人、例えば歩行者及び周囲で走行中の車両のライダ又は運転者に分りやすく伝えることができる。
【0070】
また、加速の指示が停止すると、動作音が人間に聞こえないか、又は人間に聞こえる動作音の大きさが減少する。従って、運転中に、加速が終了していることもライダに分りやすく伝えることができる。
【0071】
図1のパート(b)には、上述した動作とは異なるスイッチング動作の例も破線で示されている。
例えば、F2に示されるように、加速が指示されている期間、動作周波数(スイッチング周波数)(F2)は、徐々に増加してもよい。
【0072】
また、例えば、F3に示されるように、加速の指示が継続している途中で、インバータの動作周波数(F3)が、4kHzを超え16kHz未満の範囲FR内から、当該範囲FR外に変化してもよい。
この場合でも、加速をライダに伝えることができる。
また、動作周波数(F3)が、当該範囲FR外に変化することで、スイッチング損失が抑えられ効率の高いスイッチング周波数を選択することができる。
例えば、加速の指示が開始した後所定時間で、動作周波数(F3)が、当該範囲FR外に変化してもよい。
【0073】
また、例えば、F4に示されるように、加速の指示が停止した後も、インバータの動作周波数(F4)が、4kHzを超え16kHz未満の範囲FR内に維持されてもよい。
この場合でも、加速していることをライダに分りやすく伝えることができる。例えば、加速の指示の期間が短い場合でも、時間をかけて、加速していることをライダに分りやすく伝えることができる。
例えば、加速の指示が開始した後所定時間で、動作周波数(F4)が、当該範囲FR外に変化してもよい。
【0074】
図2は、図1に示す実施形態の適用例に係る鞍乗型車両を示す外観図である。
図2に示す鞍乗型車両1は、車体2及び車輪3a,3bを備えている。詳細には、鞍乗型車両1は、自動二輪車である。
鞍乗型車両1は、露出型エンジンユニットEUを備えている。露出型エンジンユニットEUは、エンジン10及び永久磁石式モータ20を備えている。エンジン10及び永久磁石式モータ20のそれぞれの少なくとも一部が鞍乗型車両1の外部に露出している。図2で示されるのは、より詳細には永久磁石式モータ20の一部であるモータカバーと、エンジン10の一部であるクランクケースである。
後ろの車輪3bは駆動輪である。車輪3bは、エンジン10から出力される回転力を受け鞍乗型車両1を駆動する。
【0075】
鞍乗型車両1は、メインスイッチ5を備えている。メインスイッチ5は、鞍乗型車両1の各部に電力を供給するためのスイッチである。鞍乗型車両1は、スタータスイッチ6を備えている。スタータスイッチ6は、エンジン10を始動するためのスイッチである。鞍乗型車両1は、加速指示部8を備えている。加速指示部8は、操作に応じて鞍乗型車両1の加速を指示するための操作子である。加速指示部8は、操作に応じて変位する。加速指示部8は、より詳細には、アクセルグリップである。加速指示部8は、操作に応じて回転する。加速指示部8は、エンジン10が停止している場合に、エンジン10を始動させるためにも操作される。
【0076】
鞍乗型車両1は、バッテリ4を備えている。鞍乗型車両1は、鞍乗型車両1の各部を制御する制御装置60を備えている。
【0077】
鞍乗型車両1は、アシスト表示装置7a、回生表示装置7bを備えている。アシスト表示装置7a及び回生表示装置7bは、視覚的な表示を行う。アシスト表示装置7aは、加速指示部8によって加速が指示されている間に表示状態が変化するように構成されている。例えば、アシスト表示装置7aは、加速指示部8によって加速が指示されている間に点灯するライトである。回生表示装置7aは、加速指示部8によって減速が指示されている間に表示状態が変化するように構成されている。回生表示装置7bは、アシスト表示装置7aと異なる態様で表示を行なう。例えば、回生表示装置7bとアシスト表示装置7aとは異なる位置に配置される。これにより、加速が指示されている間に表示が変化する位置と、減速が指示されている間に表示状態が変化する位置とが異なる。
【0078】
図3は、図2に示す露出型エンジンユニットEUの概略構成を模式的に示す部分断面図である。
【0079】
露出型エンジンユニットEUは、エンジン10と、永久磁石式モータ20とを備えている。
エンジン10は、クランクケース11と、シリンダ12と、ピストン13と、コネクティングロッド14と、クランクシャフト15とを備えている。ピストン13は、シリンダ12内に往復動可能に設けられている。
クランクシャフト15は、クランクケース11内に回転可能に設けられている。クランクシャフト15は、コネクティングロッド14を介して、ピストン13と連結されている。シリンダ12の上部には、シリンダヘッド16が取り付けられている。シリンダ12とシリンダヘッド16とピストン13とによって、燃焼室が形成される。クランクシャフト15は、クランクケース11に、一対のベアリング17を介して、回転自在な態様で支持されている。クランクシャフト15の一端部15aには、永久磁石式モータ20が取り付けられている。クランクシャフト15の他端部15bには、変速機CVTが取り付けられている。変速機CVTは、入力の回転速度に対する出力の回転速度の比である変速比を変更することができる。変速機CVTは、クランクシャフト15の回転速度に対する、車輪の回転速度に対応する変速比を変更することができる。
【0080】
鞍乗型車両1は、クラッチCL(図2参照)を備えている。永久磁石式モータ20及びエンジン10から出力される回転力は、クランクシャフト15及びクラッチCLを介して駆動輪である車輪3bへ供給される。クラッチCLは、変速機CVTに接続されている。クラッチCLは遠心クラッチである。クラッチCLは、クランクシャフト15の回転力を駆動輪である車輪3bへ伝達する状態と遮断する状態とを切り換える。クラッチCLは、クランクシャフト15の回転速度に応じて伝達する状態と遮断する状態とを切り換える。クラッチCLは、クランクシャフト15の回転速度が所定の閾値より小さい場合に遮断状態となる。クラッチCLは、クランクシャフト15の回転速度が所定の閾値より大きい場合に伝達状態となる。ここでいう所定の閾値は、必ずしも、厳密に1つの一定の値であることを意味しない。所定の閾値は、周囲の温度などの環境条件や走行条件などによって変化し得る値であってもよい。なお、遮断状態とは、クランクシャフトから駆動輪への回転力の伝達が全く行われない状態をいう。伝達状態とは、クランクシャフトから駆動輪への回転力の伝達が行われる状態をいい、部分的な回転力の伝達が行われる状態を含む。
【0081】
露出型エンジンユニットEUには、スロットル弁SVと、燃料噴射装置18が備えられている。スロットル弁SVは、エンジン10に繋がる吸気通路Ipに設けられている。スロットル弁SVは、加速指示部8(図2参照)の操作量に基づく開度で開く。スロットル弁SVは、メカニカルスロットル弁である。スロットル弁SVは、加速指示部8と図示しないケーブルを介して機械的に連結されている。スロットル弁SVは、加速指示部8が受ける操作に連動して開く。スロットル弁SVは、加速指示部8の操作量に応じた開度で開く。スロットル弁SVは、加速指示部8の位置に応じた開度で開く。
スロットル弁SVは、開度に応じた量の空気をエンジン10に供給する。スロットル弁SVは、開度に応じて流れる空気の量を調整することによってエンジン10に供給される空気の量を調整する。
スロットル弁SVには、スロットル弁SVの開度を検出するスロットルポジションセンサ80が設けられている。スロットルポジションセンサ80は、スロットル弁SVの開度を表す信号を制御装置60に出力する。燃料噴射装置18は、燃料を噴射することによって、燃焼室に燃料を供給する。スロットル弁SVから、吸気通路を通って流れる空気に対し、燃料噴射装置18が燃料を噴射する。空気と燃料の混合気が、エンジン10の燃焼室に供給される。
また、エンジン10には、点火プラグ19が設けられている。
【0082】
エンジン10は、内燃機関である。エンジン10は、燃料の供給を受ける。エンジン10は、混合気(ガス)を燃焼する燃焼動作によって回転力を出力する。即ち、ピストン13が、燃焼室に供給された燃料を含む混合気の燃焼によって往復動する。ピストン13の往復動に連動してクランクシャフト15が回転する。回転力は、クランクシャフト15を介してエンジン10の外部に出力される。車輪3b(図2参照)は、クランクシャフト15を介してエンジン10から出力される回転力を受け鞍乗型車両1を駆動する。
スロットル弁SVは、燃焼室に供給される空気の量を調整することによって、エンジン10の回転力を調整する。燃焼室に供給される空気の量は、スロットル弁SVの開度に応じて調整される。スロットル弁SVの開度は、加速指示部8(図2参照)の操作に応じて調整される。
燃料噴射装置18は、供給燃料の量を調整することによって、エンジン10から出力される回転力を調節する。燃料噴射装置18は、制御装置60によって制御される。燃料噴射装置18は、エンジン10に供給される空気の量に基づいた量の燃料を供給するよう制御される。
エンジン10は、クランクシャフト15を介して回転力を出力する。クランクシャフト15の回転力は、変速機CVT及びクラッチCL(図2参照)を介して、車輪3bに伝達される。鞍乗型車両1は、エンジン10からクランクシャフト15を介して回転力を受ける車輪3bによって駆動される。
【0083】
図4は、エンジン10のクランク角度位置と必要トルクとの関係を模式的に示す説明図である。図4は、エンジン10が燃焼動作を行っていない状態で、クランクシャフト15を回転させるための必要トルクを示している。
【0084】
エンジン10は、単気筒エンジンである。エンジン10は、4ストロークエンジンである。エンジン10は、4ストロークの間に、クランクシャフト15を回転させる負荷が大きい高負荷領域THと、クランクシャフト15を回転させる負荷が高負荷領域THの負荷より小さい低負荷領域TLとを有する。高負荷領域とは、エンジン10の1燃焼サイクルのうち、負荷トルクが1燃焼サイクルにおける負荷トルクの平均値Avよりも高い領域をいう。クランクシャフト15の回転角度を基準として見ると、低負荷領域TLは高負荷領域TH以上に広い。より詳細には、低負荷領域TLは高負荷領域THよりも広い。言い換えると、低負荷領域TLに相当する回転角度領域は、高負荷領域THに相当する回転角度領域よりも広い。エンジン10は、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程(膨張行程)、及び排気行程を繰り返しながら回転する。圧縮行程は、高負荷領域THと重なりを有する。
【0085】
エンジン10の1燃焼サイクルには、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、及び排気行程が1回ずつ含まれる。
吸気行程において、スロットル弁SVの開度に応じた量の混合気が、燃焼室に供給される。圧縮行程において、ピストン13が、燃焼室内の混合気を圧縮する。膨張行程において、点火プラグ19で点火された混合気が燃焼するとともに、ピストン13を押す。排気行程において、燃焼後の気体が、排ガスとして燃焼室から排出される。
【0086】
図5は、図3に示す永久磁石式モータ20の回転軸線に垂直な断面を示す断面図である。
図3及び図5を参照して永久磁石式モータ20を説明する。
【0087】
永久磁石式モータ20は、永久磁石式三相ブラシレス型モータである。永久磁石式モータ20は、永久磁石式三相ブラシレス型発電機としても機能する。
【0088】
永久磁石式モータ20は、ロータ30と、ステータ40とを有する。本実施形態の永久磁石式モータ20は、ラジアルギャップ型である。永久磁石式モータ20は、アウターロータ型である。即ち、ロータ30はアウターロータである。ステータ40はインナーステータである。
ロータ30は、ロータ本体部31を有する。ロータ本体部31は、例えば強磁性材料からなる。ロータ本体部31は、有底筒状を有する。ロータ本体部31は、筒状ボス部32と、円板状の底壁部33と、筒状のバックヨーク部34とを有する。底壁部33及びバックヨーク部34は一体的に形成されている。なお、底壁部33とバックヨーク部34とは別体に構成されていてもよい。底壁部33及びバックヨーク部34は筒状ボス部32を介してクランクシャフト15に固定されている。ロータ30には、電流が供給される巻線が設けられていない。
【0089】
ロータ30は、永久磁石37を有する。ロータ30は、複数の磁極部37aを有する。複数の磁極部37aは永久磁石37により形成されている。複数の磁極部37aは、バックヨーク部34の内周面に、設けられている。本実施形態において、永久磁石37は、複数の永久磁石を有する。即ち、ロータ30は、複数の永久磁石を有する。複数の磁極部37aは、複数の永久磁石のそれぞれに設けられている。
なお、永久磁石37は、1つの環状の永久磁石によって形成されることも可能である。この場合、1つの永久磁石は、複数の磁極部37aが内周面に並ぶように着磁される。
【0090】
複数の磁極部37aは、永久磁石式モータ20の周方向にN極とS極とが交互に配置されるように設けられている。本実施形態では、ステータ40と対向するロータ30の磁極数が24個である。ロータ30の磁極数とは、ステータ40と対向する磁極数をいう。磁極部37aとステータ40との間には磁性体が設けられていない。
磁極部37aは、永久磁石式モータ20の径方向におけるステータ40よりも外方に設けられている。バックヨーク部34は、径方向における磁極部37aよりも外方に設けられている。永久磁石式モータ20は、歯部43の数よりも多い磁極部37aを有している。
なお、ロータ30は、磁極部37aが磁性材料に埋め込まれた埋込磁石型(IPM型)であってもよいが、本実施形態のように、磁極部37aが磁性材料から露出した表面磁石型(SPM型)であることが好ましい。
【0091】
ロータ30を構成する底壁部33には、冷却ファンFが設けられている。
【0092】
ステータ40は、ステータコアSTと複数のステータ巻線Wとを有する。ステータコアSTは、周方向に間隔を空けて設けられた複数の歯部(ティース)43を有する。複数の歯部43は、ステータコアSTから径方向で外方に向かって一体的に延びている。本実施形態においては、合計18個の歯部43が周方向に間隔を空けて設けられている。換言すると、ステータコアSTは、周方向に間隔を空けて形成された合計18個のスロットSLを有する。歯部43は周方向に等間隔で配置されている。
【0093】
ロータ30は、歯部43の数より多い数の磁極部37aを有する。より詳細には、ロータ30は、歯部43の数の4/3以上の数の磁極部37aを有する。より詳細には、磁極部の数は、スロット数の4/3である。
【0094】
各歯部43の周囲には、ステータ巻線Wが巻回している。つまり、複数相のステータ巻線Wは、スロットSLを通るように設けられている。図5には、ステータ巻線Wが、スロットSLの中にある状態が示されている。複数相のステータ巻線Wのそれぞれは、U相、V相、W相の何れかに属する。ステータ巻線Wは、例えば、U相、V相、W相の順に並ぶように配置される。
【0095】
ロータ30の外面には、ロータ30の回転位置を検出させるための複数の被検出部38が備えられている。複数の被検出部38は、磁気作用によって検出される。複数の被検出部38は、周方向に間隔を空けてロータ30の外面に設けられている。被検出部38は、強磁性体で形成されている。
【0096】
ロータ位置検出装置50は、ロータ30の位置を検出する装置である。ロータ位置検出装置50は、複数の被検出部38と対向する位置に設けられている。
【0097】
永久磁石式モータ20のロータ30は、クランクシャフト15の回転に応じて回転するようにクランクシャフト15と接続されている。詳細には、ロータ30が、クランクシャフト15に対し固定された速度比で回転するようクランクシャフト15と接続されている。ロータ30は、エンジン10のクランクシャフト15と直接的に接続されている。
本実施形態では、ロータ30が、クランクシャフト15に、動力伝達機構(例えば、ベルト、チェーン、ギア、減速機、増速機等)を介さずに取り付けられている。ロータ30は、クランクシャフト15に対し1:1の速度比で回転する。永久磁石式モータ20が、エンジン10の燃焼動作時にロータ30が正回転するように構成されている。
永久磁石式モータ20の回転軸線と、クランクシャフト15の回転軸線とが略一致している。
【0098】
永久磁石式モータ20は、エンジン始動時には、クランクシャフト15を正回転させてエンジン10を始動させる。また、永久磁石式モータ20は、エンジン10が燃焼動作する場合に、エンジン10に駆動されて発電する。即ち、永久磁石式モータ20は、クランクシャフト15を正回転させてエンジン10を始動させる機能と、エンジン10が燃焼動作する場合に、エンジン10に駆動されて発電する機能の双方を兼ね備えている。永久磁石式モータ20は、エンジン10の始動後の期間の少なくとも一部には、クランクシャフト15により正回転されてジェネレータとして機能する。
【0099】
図6は、図2に示す鞍乗型車両1の電気的な概略構成を示すブロック図である。
鞍乗型車両1には、インバータ61が備えられている。制御装置60は、インバータ61を含む鞍乗型車両1の各部を制御する。
【0100】
インバータ61には、永久磁石式モータ20及びバッテリ4が接続されている。バッテリ4は、永久磁石式モータ20がモータとして動作する場合、永久磁石式モータ20に電力を供給する。また、バッテリ4は、永久磁石式モータ20で発電された電力によって充電される。
【0101】
バッテリ4は、メインスイッチ5を介して、インバータ61及び電力消費機器70と接続されている。電力消費機器70は、電力を消費しながら動作する装置である。
【0102】
インバータ61は、複数のスイッチング部611~616を備えている。本実施形態のインバータ61は、6個のスイッチング部611~616を有する。
スイッチング部611~616は、三相ブリッジインバータを構成している。複数のスイッチング部611~616は、複数相のステータ巻線Wの各相と接続されている。より詳細には、複数のスイッチング部611~616のうち、直列に接続された2つのスイッチング部がハーフブリッジを構成している。各相のハーフブリッジは、バッテリ4に対し並列に接続されている。各相のハーフブリッジを構成するスイッチング部611~616は、複数相のステータ巻線Wの各相とそれぞれ接続されている。
【0103】
スイッチング部611~616は、バッテリ4と永久磁石式モータ20との間を流れる電流を制御する。詳細には、スイッチング部611~616は、バッテリ4と複数相のステータ巻線Wとの間の電流の通過/遮断を切換える。
詳細には、永久磁石式モータ20がモータとして機能する場合、スイッチング部611~616のオン・オフ動作によって複数相のステータ巻線Wのそれぞれに対する通電及び通電停止が切換えられる。
また、永久磁石式モータ20がジェネレータとして機能する場合、スイッチング部611~616のオン・オフ動作によって、ステータ巻線Wのそれぞれとバッテリ4との間の電流の通過/遮断が切換えられる。スイッチング部611~616のオン・オフが順次切換えられることによって、永久磁石式モータ20から出力される三相交流の整流及び電圧の制御が行われる。スイッチング部611~616は、永久磁石式モータ20からバッテリ4に出力される電流を制御する。
【0104】
スイッチング部611~616のそれぞれは、スイッチング部を有する。スイッチング部は、例えばトランジスタであり、より詳細にはFET(Field Effect Transistor)である。
【0105】
制御装置60には、燃料噴射装置18、点火プラグ19、及びバッテリ4が接続されている。また、制御装置60には、スロットルポジションセンサ80が接続されている。制御装置60は、スロットルポジションセンサ80の検出結果に基づいて、スロットル弁SVの開度を取得する。スロットル弁SVの開度は、加速指示部8の操作量を表している。制御装置60は、スロットルポジションセンサ80の検出結果に基づいて、加速指示部8の操作量、及び操作量の増加の速度を取得する。
また、制御装置60には、ロータ位置検出装置50が接続されている。制御装置60は、ロータ位置検出装置50の検出結果によって、クランクシャフト15の回転速度を取得する。
制御装置60は、始動発電制御部62と、燃焼制御部63とを備えている。
【0106】
始動発電制御部62は、スイッチング部611~616のそれぞれのオン・オフ動作を制御することによって、永久磁石式モータ20の動作を制御する。
燃焼制御部63は、点火プラグ19及び燃料噴射装置18を制御することによって、エンジン10の燃焼動作を制御する。燃焼制御部63は、点火プラグ19及び燃料噴射装置18を制御することによって、エンジン10の回転力を制御する。燃焼制御部63は、スロットルポジションセンサ80の出力信号に表されるスロットル弁SVの開度に応じて、点火プラグ19及び燃料噴射装置18を制御する。
【0107】
制御装置60は、図示しない中央処理装置と、図示しない記憶装置とを有するコンピュータで構成されている。中央処理装置は、制御プログラムに基づいて演算処理を行う。記憶装置は、プログラム及び演算に関するデータを記憶する。
始動発電制御部62と、燃焼制御部63とは、図示しないコンピュータとコンピュータで実行される制御プログラムとによって実現される。従って、以降説明する、始動発電制御部62と、燃焼制御部63とのそれぞれによる動作は、制御装置60の動作と言うことができる。なお、始動発電制御部62及び燃焼制御部63は、例えば互いに独立した装置として互いに離れた位置に構成されてもよく、また、一体に構成されるものであってもよい。
【0108】
制御装置60には、スタータスイッチ6が接続されている。スタータスイッチ6は、エンジン10の始動の際、運転者によって操作される。制御装置60の始動発電制御部62は、バッテリ4の充電レベルを検出する。始動発電制御部62は、バッテリ4の電圧及び電流を検出することによってバッテリ4の充電レベルを検出する。
メインスイッチ5は、操作に応じて制御装置60に電力を供給する。
【0109】
制御装置60の始動発電制御部62及び燃焼制御部63は、エンジン10及び永久磁石式モータ20を制御する。始動発電制御部62は、インバータ61を制御する。
制御装置60には、アシスト表示装置7a、及び、回生表示装置7bも接続されている。
【0110】
図7は、制御における電流及び電圧の波形の例を示す図である。図7は、正弦波制御における電流及び電圧の波形の例が示されている。
図7において、Iuは、永久磁石式モータ20の複数相のステータ巻線Wのうち、U相のステータ巻線Wに流す電流を表している。力行では、インバータ61が誘導起電圧の変化に同期した電流をステータ巻線Wに流す。つまり、インバータ61が、誘導起電圧と等しい周波数の電流をステータ巻線Wに流す。図7において、Iuにおける正の値は、ステータ巻線Wの端で、スイッチング部611,612からステータ巻線Wに電流が流れることを表している。Iuにおける負の値は、ステータ巻線Wからスイッチング部611,612に電流が流れることを表している。
Vsup及びVsunは、複数のスイッチング部611~616のうち、U相のステータ巻線Wに接続される2つのスイッチング部611,612の制御信号を表している。Vsupは、U相のステータ巻線Wとバッテリ4の正極との間に配置された正のスイッチング部611の制御信号である。Vsupは、U相のステータ巻線Wとバッテリ4の負極との間に配置された負のスイッチング部612の制御信号である。Vsup及びVsunにおけるHレベルは、スイッチング部611,612のオン状態を表している。Lレベルは、オフ状態を表している。
【0111】
複数のスイッチング部611~616は、誘導起電圧の周波数よりも高いキャリア周波数でオン・オフ動作している。
【0112】
スイッチング部611,612の制御信号Vsup,Vsunに示されるように、正のスイッチング部611と負のスイッチング部612とは、オン状態とオフ状態において、互いに逆の状態になる。
制御装置60は、ステータ巻線Wの各相に正弦波の電流が流れるように、スイッチング部611,612のオン・オフのデューティ比を制御する。制御装置60は、スイッチング部611,612のオン・オフのデューティ比の変化の周期が、ステータ巻線Wの誘導起電圧の周期になるように、スイッチング部611,612を制御する。ステータ巻線Wの誘導起電圧は、正弦波であり、中央値「0」(タイミングta1、ta5)、正の最大値(タイミングta2)、中央値「0」(タイミングta3)、及び負の最大値(タイミングta4)を繰り返す。
【0113】
複数のスイッチング部611~616がオン・オフ動作するキャリア周波数が、4kHzを超え16kHz未満の範囲内に含まれると、動作音が人間に聞こえやすくなる。キャリア周波数が、4kHzを超え16kHz未満の範囲外に含まれると、動作音が人間に聞こえないか、又は人間に聞こえる動作音の大きさが減少する。
【0114】
図7には、力行の場合の動作を示したが、発電の場合には、電流Iuが反対向きに流れるようにデューティ比が決定される。
【0115】
また、図7には、正弦波制御(ベクトル制御)の場合の動作を示したが、単純なPWMでは、電流Iuが正弦波ではなく、矩形波となるように、デューティ比が決定される。この場合、デューティ比は1つの目標値に設定される。目標値は、要求されるトルクに応じて設定される。
【0116】
図8は、鞍乗型車両1の動作を説明するフローチャートである。
【0117】
図6及び図8を参照して、鞍乗型車両1の動作を説明する。鞍乗型車両1の動作は、制御装置60によって制御される。
制御装置60は、加速指示部8による加速指示の有無を判別する(S11)。
加速指示部8による加速指示がある場合、制御装置60は、永久磁石式モータ20に力行動作を行わせる(S12)。制御装置60は、永久磁石式モータ20がエンジン10を駆動するようにインバータ61を制御する。また、加速指示部8による加速指示がある場合、制御装置60は、エンジン10への空気及び燃料の供給量を増大させる。これによって、エンジン10と永久磁石式モータ20の両方が鞍乗型車両1を加速させる。
【0118】
エンジン10が停止中の場合(S13でYes)、制御装置60は、エンジン10を始動する。制御装置60は、エンジン10の燃焼動作を行う(S14)。詳細には、燃焼制御部63が、エンジン10に燃焼動作を行わせる。燃焼制御部63は、燃料噴射装置18に燃料の供給を開始させる。また、燃焼制御部63は、点火プラグ19に点火を開始させる。この後、燃焼制御部63は、スロットル弁SVから供給される空気の量に応じて、燃料噴射装置18による燃料の供給量を制御する。
【0119】
制御装置60は、キャリア周波数を、4kHzを超え16kHz未満の範囲内へ変更する(S15)。これによって、スイッチング部611~616が4kHzを超え16kHz未満の範囲内の周波数でオン・オフ動作する。また、この時、制御装置60は、アシスト表示装置7aを点灯する。
インバータ61のスイッチング部611~616の動作周波数が4kHzを超え16kHz未満の範囲内になることによって、ライダに動作音が聞こえやすくなる。従って、ライダの運転中でも、加速していることをライダに分りやすく伝えることができる。
また、アシスト表示装置7aによる視覚的な表示の変化によって、鞍乗型車両1が加速していることをライダに分りやすく伝えることができる。また、回生表示装置7bを備えた構成の場合、回生表示装置7bによる視覚的な表示の変化によって、鞍乗型車両1が回生していることをライダに分りやすく伝えることができる。
【0120】
制御装置60は、加速指示部8による加速指示が終了したか否かを判別する(S16)。
加速指示部8による加速指示が終了した場合(S16でYes)、制御装置60は、キャリア周波数を、4kHzを超え16kHz未満の範囲外へ変更する(S17)。より詳細には、制御装置60は、キャリア周波数を、16kHz超えに変更する。なお、制御装置60は、ステップS17で、位相制御モードに移行してもよい。この場合、動作周波数が4kHz以下に変更される。例えば、制御装置60は、加速指示が終了した場合(S16でYes)の永久磁石式モータ20の回転速度に応じて、キャリア周波数を、16kHz超えに変更するか、4kHz未満にするか決定してもよい。
また、制御装置60は、アシスト表示装置7aを消灯する。
制御装置60は、永久磁石式モータ20による力行動作を停止させる(S18)。制御装置60は、例えば、永久磁石式モータ20が発電するように、インバータ61を制御する。永久磁石式モータ20が発電することによって、バッテリ4が充電される。充電には、PWM制御または位相制御がある。制御装置60は、例えば、永久磁石式モータ20の回転速度及び加速指示部8の状態に基づいて、制御を選択する。なお、位相制御の場合、動作周波数は、4kHz未満である。
なお、その後、鞍乗型車両1の走行状態で、加速指示部8によって加速が指示された場合(S11、S13でNo)、制御装置60は、キャリア周波数を、再び、4kHzを超え16kHz未満の範囲内へ変更する(S15)。
【0121】
制御装置60は、エンジン停止条件が成立したか否か判別する(S19)。
エンジン停止条件が成立している場合、制御装置60は、エンジン10を停止する(S20)。
【0122】
また、制御装置60は、加速指示部8による減速指示の有無を判別する(S21)。
加速の指示を停止した加速指示部8によって更なる減速指示がある場合、制御装置60は、永久磁石式モータ20に回生動作を行わせる(S22)。制御装置60は、永久磁石式モータ20がエンジン10を駆動するようにインバータ61を制御する。発電によって、バッテリ4が充電される。回生動作は、鞍乗型車両1を積極的に減速する発電動作である。より詳細には、回生動作は、エンジン10が動作していても、鞍乗型車両1が減速する程度の発電を行う動作である。回生動作は、主にPWM制御モードで実施される。回生動作は、鞍乗型車両1が減速しないようエンジン10の駆動により発電を行う位相制御モードでの発電とは異なる。
【0123】
制御装置60は、キャリア周波数を、4kHzを超え16kHz未満の範囲内へ変更する(S15)。これによって、スイッチング部611~616が4kHzを超え16kHz未満の範囲内の周波数でオン・オフ動作する。また、この時、制御装置60は、回生表示装置7bを点灯する。
インバータ61のスイッチング部611~616の動作周波数が4kHzを超え16kHz未満の範囲内になることによって、ライダに動作音が聞こえやすくなる。従って、ライダの運転中でも、回生していることをライダに分りやすく伝えることができる。
また、回生表示装置7bによる視覚的な表示の変化によって、鞍乗型車両1が回生していることをライダに分りやすく伝えることができる。
【0124】
制御装置60は、加速指示部8による減速指示が終了したか否かを判別する(S26)。
加速指示部8による減速指示が終了した場合(S26でYes)、制御装置60は、キャリア周波数を、4kHzを超え16kHz未満の範囲外へ変更する(S27)。より詳細には、制御装置60は、動作周波数を4kHzに変更する。この時、制御装置60は、回生表示装置7bを消灯する。
制御装置60は、永久磁石式モータ20による回生動作を停止させる(S28)。制御装置60は、例えば、永久磁石式モータ20が位相制御モードで発電するように、インバータ61を制御する。永久磁石式モータ20が位相制御モード発電することによって、バッテリ4が引き続き充電される。
【0125】
図8を参照して説明した動作は、図1のパート(b)に示すキャリア周波数F1の変化が実現する。
ただし、上記ステップS16の判別対象を、例えば、4kHzを超え16kHz未満の範囲内へキャリア周波数を変更してからの所定時間の経過に変更することによって、図1のパート(b)に示すキャリア周波数F3又はF4の変化が実現する。
また、上記ステップS15の処理において、キャリア周波数を、4kHzを超え16kHz未満の範囲内で時間の経過とともに徐々に増加するよう構成することによって、図1のパート(b)のt1からt3及びt5からt6に示すキャリア周波数F2の変化が実現する。また更に、上記ステップS25の処理において、キャリア周波数を、4kHzを超え16kHz未満の範囲内で時間の経過とともに徐々に減少するよう構成することによって、図1のパート(b)のt7からt8に示すキャリア周波数F2の変化が実現する。この場合、キャリア周波数を、例えば、エンジン10の回転速度又は車速に応じて変化させる構成も採用可能である。
【符号の説明】
【0126】
1 鞍乗型車両
3b 車輪(駆動輪)
4 バッテリ
8 加速指示部
10 エンジン
15 クランクシャフト
20 永久磁石式モータ
30 ロータ
37 永久磁石
40 ステータ
60 制御装置
61 インバータ
611~616 スイッチング部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8