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特許7258149ヘッドランプ用光学素子、ヘッドランプモジュール、車ライト、及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】ヘッドランプ用光学素子、ヘッドランプモジュール、車ライト、及び車両
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/20 20180101AFI20230407BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20230407BHJP
   F21S 41/151 20180101ALI20230407BHJP
   F21S 41/275 20180101ALI20230407BHJP
   F21S 41/47 20180101ALI20230407BHJP
   F21S 41/39 20180101ALI20230407BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20230407BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230407BHJP
   F21Y 103/10 20160101ALN20230407BHJP
【FI】
F21S41/20
F21S41/143
F21S41/151
F21S41/275
F21S41/47
F21S41/39
F21W102:13
F21Y115:10
F21Y103:10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021535826
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-06
(86)【国際出願番号】 CN2021071515
(87)【国際公開番号】W WO2021147732
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】202020137908.8
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520372939
【氏名又は名称】▲華▼域▲視▼▲覺▼科技(上▲海▼)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】祝 ▲賀▼
(72)【発明者】
【氏名】仇 智平
(72)【発明者】
【氏名】桑 文慧
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0086050(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0321143(US,A1)
【文献】特開2008-077890(JP,A)
【文献】国際公開第2014/033834(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00
F21W 102/13
F21Y 115/10
F21Y 103/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドランプ用光学素子であって、光線の出射方向に順次接続された集光部(11)、 出光部(12)、及び反射部(13)を含み、前記集光部(11)と前記出光部(12)と前記反射部(13)とが一体成形されていて、
前記反射部(13)は、一端が前記出光部(12)の下部に接続され、ロービーム明暗カットオフライン(51)を形成するロービームカットオフライン構造(15)が他端に設けられ、又は、
前記反射部(13)は、一端が前記出光部(12)の上部に接続され、ハイビーム明暗カットオフライン(52)を形成するハイビームカットオフライン構造(17)が他端に設けられ、
前記ロービームカットオフライン構造(15)は前記反射部(13)の反射面の前縁部に設けられ、前記集光部(11)は集光カップ構造であり、前記反射部(13)から離れた一端にキャビティが開けられ、前記キャビティはフロント入光面(111)とサイド入光面(112)を含み、前記フロント入光面(111)は、前記反射部(13)から離れた側へ突出している曲面であり、前記サイド入光面(112)は、前記反射部(13)から離れた一端から前記反射部(13)に接近する一端に向かうにしたがって周長が徐々に小さくなる曲面であり、前記集光部(11)の外部輪郭面(113)は前記反射部(13)から離れた一端から前記反射部(13)に接近する一端に向かうにしたがって周長が徐々に大きくなる曲面であり、且つ、前記集光部(11)の下部にIIIゾーンパターン形成構造(14)が設けられ、前記集光部(11)により集光される光線の一部は、前記IIIゾーンパターン形成構造(14)から出射されて前記反射部(13)の下方を経て出射されて、ロービームのIIIゾーン(53)パターンを形成することを特徴とするヘッドランプ用光学素子。
【請求項2】
前記ロービームカットオフライン構造(15)を有する前記反射部(13)の反射面に50L暗領域形成構造(16)が形成され、前記出光部(12)から前記50L暗領域形成構造(16)へ放射される光線は、前記50L暗領域形成構造(16)によって反射・屈折され、ロービームの50L領域(54)の輝度を低下させることを特徴とする請求項1に記載のヘッドランプ用光学素子。
【請求項3】
前記反射部(13)の前記集光部(11)から離れた一端の端面は、曲率が連続的で且つスムーズな凹面弧状曲面であることを特徴とする請求項1又は2に記載のヘッドランプ用光学素子。
【請求項4】
前記集光部(11)の数は2つ以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のヘッドランプ用光学素子。
【請求項5】
前記反射部(13)の反射面には増反射層が設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のヘッドランプ用光学素子。
【請求項6】
ヘッドランプモジュールであって、
請求項1~5のいずれか一項に記載のヘッドランプ用光学素子(1)と、レンズ(2)とを含み、前記ヘッドランプ用光学素子(1)と前記レンズ(2)は分離式構造であり、前記レンズ(2)は前記ヘッドランプ用光学素子(1)の光線出射方向に設けられ、又は、前記ヘッドランプ用光学素子(1)と前記レンズ(2)は一体式構造であり、前記レンズ(2)と前記ヘッドランプ用光学素子(1)は接続板(3)によって接続されることを特徴とするヘッドランプモジュール。
【請求項7】
前記ロービームカットオフライン構造(15)又は前記ハイビームカットオフライン構造(17)は前記レンズ(2)の光軸(21)の10mm上側~10mm下側の領域内にあることを特徴とする請求項6に記載のヘッドランプモジュール。
【請求項8】
前記レンズ(2)は凸レンズ又はフレネルレンズ構造であることを特徴とする請求項6又は7に記載のヘッドランプモジュール。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか一項に記載のヘッドランプモジュールを含むことを特徴とする車ライト。
【請求項10】
請求項9に記載の車ライトを含むことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は2020年1月20に提出された中国特許出願202020137908.8の権益を主張し、該出願の内容は引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は車両照明装置に関し、具体的には、ヘッドランプ用光学素子に関する。また、本発明は、さらにヘッドランプモジュール、車ライト、及び車両に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、車ライト及び車ライトに組み込まれるヘッドランプモジュールは急速な発展を遂げており、車ライトは、初期のハロゲンランプから、次のヘルニアランプ、現在のLED、レーザ光源へよりスマート化しており、そして、造型もさらに多様化している。各種の車ライト光源のうち、LED光源は、優れた性能及び低コストの利点のため、自動車メーカにより注目されてきて、LED光源の発展に伴い、その配光構造は徐々に発展している。
【0004】
従来技術では、自動車の車ライトに一般的に使用されているLED光源の投射式照明システムは、一般には、光源、反射素子、遮光板以及び光学レンズを含む。光源から発光する光線は反射素子によって反射された後、遮光板へ放射され、遮光板で遮断された後、光学レンズによって投射されて明暗カットオフラインを有する略平行光の照明パターンを形成する。しかしながら、LED光源の発光角度が大きいため、反射素子の寸法には、システムの所定の光効果を確保できるように、光源の出光角度に対して大きなカバー範囲が求められ、これは、将来の自動車造型のコンパクト化の傾向とは明らかな矛盾がある。
【0005】
近年、さらに集光器は自動車のヘッドランプモジュールに適用され、ヘッドライトの形態をより多様化させている。従来の集光器は、前後方向に延在している導光チャネルを有し、該導光チャネルは中実導光体構造であり、光線は集光器によって屈折・反射された後、光学レンズへ放射され、光学レンズにより投射されて照明パターンを形成するが、集光器の導光チャネルの体積が大きいため、モジュールは重くなり、コストも高くなる。したがって、市場のニーズに応えるために、コンパクト化、小型化、効率化の光学システムが必要とされる。
【0006】
従来技術の上記欠陥に鑑み、新型照明光学素子を設計することは期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1の態様が解決しようとする技術的課題は、構造がシンプルでコンパクトであり、より軽量であるヘッドランプ用光学素子を提供することである。
【0008】
本発明の第2の態様が解決しようとする技術的課題は、より小型、より軽量であるヘッドランプモジュールを提供することである。
【0009】
本発明の第3の態様が解決しようとする技術的課題は、より小型、より軽量であり、且つ構造がシンプルでコンパクトである車ライトを提供することである。
【0010】
本発明の第4の態様が解決しようとする技術的課題は、車ライトがより小型、より軽量であり、且つ構造がシンプルでコンパクトである車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、光線の出射方向に順次接続された集光部、出光部、及び反射部を含み、前記反射部は、一端が前記出光部の下部に接続され、ロービーム明暗カットオフラインを形成するロービームカットオフライン構造が他端に設けられ、又は、前記反射部は、一端が前記出光部の上部に接続され、ハイビーム明暗カットオフラインを形成するハイビームカットオフライン構造が他端に設けられ、前記ロービームカットオフライン構造は前記反射部の反射面の前縁部に設けられ、前記集光部は集光カップ構造であり、前記反射部から離れた一端にキャビティが開けられ、前記キャビティはフロント入光面とサイド入光面を含み、前記フロント入光面は、前記反射部から離れた側へ突出している曲面であり、前記サイド入光面は、前記反射部から離れた一端から前記反射部に接近する端に向かうにしたがって周長が徐々に小さくなる曲面であり、前記集光部の外部輪郭面は前記反射部から離れた一端から前記反射部に接近する一端に向かうにしたがって周長が徐々に大きくなる曲面であり、且つ、前記集光部の下部にIIIゾーンパターン形成構造が設けられ、前記集光部により集光される光線の一部は、前記IIIゾーンパターン形成構造から出射されて前記反射部の下方を経て出射され、ロービームのIIIゾーンパターンを形成する、ヘッドランプ用光学素子を提供する。
【0012】
好ましくは、前記ロービームカットオフライン構造を有する前記反射部の反射面に50L暗領域形成構造が形成され、前記出光部から前記50L暗領域形成構造へ放射される光線は、前記50L暗領域形成構造によって反射・屈折され、ロービームの50L領域の輝度を低下させる。
【0013】
好ましくは、前記反射部の前記集光部から離れた一端の端面は、曲率が連続的で且つスムーズな凹面弧状曲面である。
【0014】
好ましくは、前記集光部の数は2つ以上である。
【0015】
好ましくは、前記反射部の反射面には増反射層が設けられている。
【0016】
本発明の第2の態様は、第1の態様のいずれか1項に記載のヘッドランプ用光学素子と、レンズとを含み、前記ヘッドランプ用光学素子と前記レンズは分離式構造であり、前記レンズは前記ヘッドランプ用光学素子の光線出射方向に設けられ、又は、前記ヘッドランプ用光学素子と前記レンズは一体式構造であり、前記レンズと前記ヘッドランプ用光学素子は接続板によって接続されるヘッドランプモジュールを提供する。
【0017】
好ましくは、前記ロービームカットオフライン構造又は前記ハイビームカットオフライン構造は前記レンズの光軸の10mm上側~10mm下側の領域内にある。
【0018】
さらに好ましくは、前記レンズは凸レンズ又はフレネルレンズ構造である。
【0019】
本発明の第3の態様は、上記技術案のいずれか1項に記載のヘッドランプモジュールを含む車ライトを提供する。
【0020】
本発明の第4の態様は、上記技術案に記載の車ライトを含む車両を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の基礎となる技術案では、該ヘッドランプ用光学素子は、順次接続された集光部、出光部及び反射部を含む。集光部と反射部との相対位置を調整することによって、該ヘッドランプ用光学素子をそれぞれロービーム照明又はハイビーム照明に適用することができる。ヘッドランプ用光学素子がロービーム構造である場合、反射部は、一端が出光部の下部に接続され、ロービーム明暗カットオフラインを形成するロービームカットオフライン構造が他端に設けられ、ヘッドランプ用光学素子がハイビーム構造である場合、反射部は一端が出光部の上部に接続され、ハイビーム明暗カットオフラインを形成するハイビームカットオフライン構造が他端に設けられる。集光部には光源が設けられ、光源から発光する発散光は集光部により集光され、出光部によって出射され、このうち、光線の一部は前方へ出射され、もう一部の光線は反射部によって反射されて前方へ出射される。このような構造を用いたヘッドランプ用光学素子は、その体積の占有するスペースが小さく、スペースの利用効率が大幅に向上し、一体成形によるプロセスの要件を満たし、それにより、光路伝搬経路上の光学面同士の位置の精度を向上させ、構造を比較的簡素化させ、そして、より軽量化する。
【0022】
本発明の他の利点及び好適な実施形態の技術的効果については、以下の特定実施形態にてさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のヘッドランプ用光学素子の第1の実施例の一例の構造模式図である。
図2】本発明のヘッドランプ用光学素子の第1の実施例の別の構造模式図である。
図3】本発明のヘッドランプ用光学素子の第1の実施例のさらに別の構造模式図である。
図4】本発明のヘッドランプ用光学素子の第2の実施例の構造模式図である。
図5】本発明のヘッドランプ用光学素子の第3の実施例の構造模式図である。
図6】本発明のヘッドランプ用光学素子の第4の実施例の一例の構造模式図である。
図7図6のA部の部分拡大図である。
図8】本発明のヘッドランプ用光学素子の第4の実施例の別の構造模式図である。
図9】本発明のヘッドランプ用光学素子の第4の実施例のさらに別の構造模式図である。
図10】本発明のヘッドランプモジュールの第1の実施例の一例の構造模式図である。
図11】本発明のヘッドランプモジュールの第1の実施例の別の構造模式図である。
図12】本発明のヘッドランプモジュールの第1の実施例のさらに別の構造模式図である。
図13】本発明のヘッドランプモジュールの第2の実施例の一例の構造模式図である。
図14】本発明のヘッドランプモジュールの第2の実施例の別の構造模式図である。
図15】本発明のヘッドランプモジュールの第2の実施例のさらに別の構造模式図である。
図16】本発明のヘッドランプモジュールの第2の実施例のさらなる構造模式図である。
図17】本発明のヘッドランプモジュールの第3の実施例の構造模式図である。
図18】本発明のヘッドランプモジュールによるロービームパターンのシミュレーション模式図である。
図19】本発明のヘッドランプモジュールによるハイビームパターンのシミュレーション模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の特定実施形態を詳細に説明する。なお、ここで説明される特定実施形態は本発明を説明して解釈するために過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0025】
なお、本発明の説明において、別途明確な規定や限定がない限り、用語「取り付ける」、「接続」、「設ける」は広義で理解すべきであり、たとえば、固定して接続してもよく、取り外し可能に接続してもよく、又は一体に接続してもよい。直接接続してもよく、中間媒体を介して間接的に接続してもよく、2つの素子内部が連通してもよく、又は2つの素子が相互作用関係を持ってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて、上記用語の本発明での具体的な定義を理解できる。
【0026】
なお、図3に示すように、該ヘッドランプ用光学素子1に基づいて、光線の出射方向において、「前」とは、ロービーム明暗カットオフライン構造15又はハイビーム明暗カットオフライン構造17が形成された反射部13の一端を指し、「後」とは、集光部11が位置する一端を指し、該ヘッドランプ用光学素子1が車ライトに正常に取り付けられたときに、「上」とは、光線出射方向における上方であり、「下」とは、光線出射方向における上方であり、上記「上」、「下」、「前」、「後」に基づいて「左」、「右」の方位を決定することができる。なお、光軸21は、レンズ2の焦点を通って前後方向へ延びている仮想の軸であり、『GB4599-2007-自動車用フィラメント電球型ヘッドランプ』の定義によれば、明暗カットオフラインは、ビームが配光スクリーンに投射されると、目視により明暗が顕著に変化する境界線であり、ロービーム明暗カットオフライン51は、車ライトのロービームパターンの上境界、ハイビーム明暗カットオフライン52は、車ライトのハイビームパターンの下境界であり、法規においてロービームの50L領域54の輝度について特に限定があり、即ち50L≦15lxであり、ロービームパターンでは、「IIIゾーン53」と呼ばれる重要な構成部分があり、この構成部分は、ロービーム明暗カットオフライン51の上方に位置し、主に、運転者が看板などの情報を把握できるように看板など路面の上方にある物体を照明する役割を果たす。実際に取り付ける際には、実際の取り付け状態に応じて、ここでのヘッドランプ用光学素子1自体を基準に、方位用語を解釈すべきであり、用語は図面に示す方位又は位置関係に基づくものであり、本発明の説明を容易しかつ簡素化させるために過ぎず、かかる装置又は構成要素が特定の方位を有したり、特定の方位で構造・操作されたりすることを示唆するものではなく、したがって、本発明を限定するものとして理解できない。
【0027】
図1図5を参照して、本発明のヘッドランプ用光学素子1は、順次接続された集光部11、出光部12及び反射部13を含む。ヘッドランプ用光学素子1がロービーム構造を用いる場合、図1図4を参照して、反射部13は、一端が出光部12の下部に接続され、ロービーム明暗カットオフライン51を形成するロービームカットオフライン構造15が他端に設けられ、ヘッドランプ用光学素子1がハイビーム構造である場合、図5を参照して、反射部13は、一端が出光部12の上部に接続され、ハイビーム明暗カットオフライン52を形成するハイビームカットオフライン構造17が他端に設けられ、ここで、反射部13は反射面を有し、該反射面は射光部12から出射される光線の一部を反射するための光学面であり、ロービーム明暗カットオフライン構造15及びハイビーム明暗カットオフライン構造17は反射部13の反射面の前縁部に形成され、該ロービーム明暗カットオフライン構造15及びハイビーム明暗カットオフライン構造17は光線を遮断して、車ライトのロービームパターンとハイビームパターンが特定形状のロービーム明暗カットオフライン51とハイビーム明暗カットオフライン52を有するようにし、ロービーム明暗カットオフライン51の形状は、法規又は国家、領域や自動車メーカによる要件に応じて設定され、図面に示す形状に限定されず、ハイビーム明暗カットオフライン52は、ロービーム明暗カットオフライン51の上下部とスムーズに接合すべきである。集光部11には光源4が設けられ、光源4から発光する発散光は集光部11によって集光され、出光部12によって出射され、このうち、光線の一部は直接レンズ2へ放射され、もう一部の光線は反射部13によって反射されてレンズ2へ放射され、2つの部分の光線はレンズ2によって投射されて、ロービームパターン又はハイビームパターンを形成する。ここで、好ましくは、前記光源4はLED光源であり、前記集光部11は集光カップ構造である。光源4から発光する光線は集光部11によって集光されると、比較的小角度のビームとなり、該光源4から発光する光線が全部又はほとんどレンズ2に入射できるようにし、それによって、高い光効果を達成するとともに、レンズ2のサイズを減少し、該ヘッドランプモジュールの小型化を実現する。このような構造を用いたヘッドランプ用光学素子1は、より軽量化し、その体積の占有するスペースが小さく、スペースの利用効率が大幅に向上し、一体成形によるプロセスの要件を満たすことができ、それにより、光路伝搬経路上の光学面同士の位置の精度を向上させ、構造を比較的簡素化させる。
【0028】
好ましくは、ヘッドランプ用光学素子がロービーム構造を用いる場合、反射部13の反射面には50L暗領域形成構造16が形成され、図6及び図7を参照して、該50L暗領域形成構造16は、反射部13の反射面から突出した凸起構造である。ロービームパターンでは、50L領域54の輝度について特に限定があり、即ち50L≦15lxであり、反射面に50L暗領域形成構造16が設けられることによって、出光部12から前記50L暗領域形成構造16へ放射された光線は、前記50L暗領域形成構造16によって反射・屈折されると、伝播方向が変わり、50L領域54以外の領域に放射するようになり、それにより、ロービームの50L領域54の輝度を低下させ、法規の要件を満たすようにする。
【0029】
さらに好ましくは、図8及び図9を参照して、集光部11の下部には、IIIゾーンパターン形成構造14が設けられ、それにより、集光部11により集光された光線の一部は該IIIゾーンパターン形成構造14によって出射され、反射部13の下方を経て出射されてロービームのIIIゾーン53パターンを形成する。従来技術では、IIIゾーン形成構造はレンズ、レンズホルダー又は集光器の下面などの位置に設けられてもよく、場合によっては、レンズの外観に影響を与えたり、光効果に影響を与えたりすることはある。一方、本発明のヘッドランプ用光学素子1は、集光部11の下部にIIIゾーンパターン形成構造14を設けることにより、光源4を通った光線の一部が該IIIゾーンパターン形成構造14から出射され、反射部13の下方によってレンズ2に放射され、レンズ2によってロービームIIIゾーン領域に投射されるようにし、このように、レンズの外観に影響を与えることも、光効果に影響を与えることもない。
【0030】
具体的には、図4を参照して、反射部13の前端、即ち、前記集光部11から離れた一端の端面は、曲率が連続的で且つスムーズな凹面弧状曲面であってもよい。ロービーム明暗カットオフライン構造15又はハイビーム明暗カットオフライン構造17は反射部13の反射面の前縁部、即ち該凹面弧状曲面の上縁部又は下縁部に設けられ、それにより、車ライトパターンのロービーム明暗カットオフライン51又はハイビーム明暗カットオフライン52はより明瞭かつシャープになる。もしくは、図1図3を参照して、該反射部13の前端は平面としてもよい。
【0031】
該ヘッドランプ用光学素子1は、少なくとも1つの集光部11を含み、好ましくは、該ヘッドランプ用光学素子1は2つ以上の集光部11を含み、図1図6に示すヘッドランプ用光学素子1では、反射部13の左右方向に5つの集光部11が設けられ、各集光部11は1つの光源4に対応し、複数の光源4は分散して設けられ、放熱に有利となり、複数の集光部11が使用されることにより、該ヘッドランプ用光学素子1の光効果を向上させることができる。
【0032】
好ましい構造形態として、該集光部11は、反射部13から離れた一端にキャビティが開けられ、キャビティの開口が光源4を向いて、光源4から発光する光線を受光し、集光部11の外部輪郭面113は、反射部13から離れた一端から前記反射部13に接近する一端に向かうにしたがって周長が徐々に大きくなる曲面であり、集光部11は、キャビティのフロント入光面111を通じて、光源4から発光する光線の一部を前方に屈折することができ、該キャビティのサイド入光面112は、光源4から発光する残りの光線を屈折し、屈折された光線を外部輪郭面113により前方に反射することができ、それにより、光源4から発光するすべてのビームに対する集光とコリメーションをほぼ実現し、光源4のビームの利用率を向上させる目的を達成できる。
【0033】
さらに好ましくは、中央位置にある集光部11は、両側位置にある集光部11よりも大寸法であってもよく、これは、該ヘッドランプ用光学素子1が投射してなるパターンの中央領域の照度に対する要件が高く、中央位置の集光部11の寸法を大きくすると、より多くの光線を集光し、光効果を向上できるためである。より具体的には、図11に示すように、中央位置にある集光部11の寸法がより大きく、このようにすると、該集光部11のキャビティは、より多くのLEDに対応することができ、該LED光源は該集光部11に対応して中心領域の輝度がより高いパターンを形成する。
【0034】
好ましくは、反射部13は反射面を有し、前記反射部13の反射面は、出光部12から出射される光線の一部を受光するための光学面であり、反射部13の反射面には、光線の反射率を向上させるために、増反射層が増設されてもよく、ここで、増反射層は反射面上に設けられた増反射膜又は増反射コーティングであってもよく、通常、たとえば反射部13の反射面にアルミめっき処理が施される。
【0035】
本発明の好ましい実施形態としてのヘッドランプ用光学素子1は、図6を参照して、順次接続された集光部11、出光部12及び反射部13を含み、具体的には、該ヘッドランプ用光学素子1はロービーム構造を用い、反射部13は、一端が出光部12の下部に接続され、ロービーム明暗カットオフライン51を形成するロービームカットオフライン構造15が他端に設けられ、反射部13のロービーム明暗カットオフライン構造15を有する一端の端面は、曲率が連続的で且つスムーズな凹面弧状曲面である。ここで、集光部11は、ロービームによる輝度要件を満たすように5個設けられ、反射部13の反射面にはアルミめっき処理が施されて光効果を向上させ、さらに、反射面には、ロービーム50L領域54による輝度要件を満たすように、50L暗領域形成構造16が設けられ、少なくとも1つの集光部11の下部には、IIIゾーンパターン形成構造14が設けられてロービームIIIゾーン53パターンを形成する。本発明の好ましい実施形態としてのヘッドランプ用光学素子1では、IIIゾーンパターン形成構造14や50L暗領域形成構造16などの構造は簡単であり、レンズ2などのほかの素子の外面又は内面に特殊な構造を製造することを回避し、車ライトの外観性を向上させ、光効果を確保し、クライアントのニーズを満たし、さらに、該ヘッドランプ用光学素子1は、構造が簡単であり、より軽量化し、一体成形によるプロセスの要件を満たし、それにより、部品点数及び組み立て工程を減らし、組み立てられた車ライトの構造をよりコンパクトにし、また、組み立てる過程における光学素子同士の組み立て誤差を回避し、組み立て精度を高め、さらに光学精度を向上させる。
【0036】
本発明に開示されたヘッドランプモジュールは、上記技術案のいずれか1項に記載のヘッドランプ用光学素子1を含み、レンズ2をさらに含み、ヘッドランプ用光学素子1とレンズ2は分離式構造を用いることができ、図10図12に示すように、レンズ2は、ヘッドランプ用光学素子1の光線出射方向に設けられ、両方は分離して設けられるため、配光パラメータが多く、配光に有利であり、また、該ヘッドランプ用光学素子1及びレンズ2は車ライトの造型のニーズに応じて柔軟に配置されてもよく、このように、車ライトの造型がより新規で、多様化しており、個性的で科学技術に富んだ車ライトの造型に対するユーザのニーズを満たすことができ、もしくは、ヘッドランプ用光学素子1とレンズ2は一体式構造を用いることもでき、図13図16に示すように、レンズ2とヘッドランプ用光学素子1は接続板3によって接続されており、このような一体式構造では、該ヘッドランプモジュールは、ガラス、PC、PMMA又はシリカゲルなどの材質を用いて一体成形することができ、それにより、部品点数を減らし、組み立てられた車ライトの構造をよりコンパクトにし、また、組み立てる過程における光学素子同士の組み立て誤差を回避し、組み立て精度を高め、さらに光学精度を向上させる。
【0037】
明瞭なパターンを形成するために、反射部13とレンズ2との相対位置を調整する必要があり、このように、ロービーム明暗カットオフライン構造15又はハイビーム明暗カットオフライン構造17がレンズ2の光軸21の10mm上側~10mm下側の領域内にあり、好ましくは、ロービーム明暗カットオフライン構造15又はハイビーム明暗カットオフライン構造17がレンズ2の光軸21の上側から2mm~下側から2mmの領域内にあり、さらに好ましくは、図12を参照して、ロービーム明暗カットオフライン構造15又はハイビーム明暗カットオフライン構造17がレンズ2の光軸21にあり、即ち、レンズ2の焦点がロービーム明暗カットオフライン構造15又はハイビーム明暗カットオフライン構造17上にあり、形成したパターンをより明瞭にすることができる。
【0038】
図10図16に示すように、レンズ2は凸レンズであり、さらに好ましくは、レンズ2はまた、図17に示すフレネルレンズ構造を用いることもでき、それにより、本発明のヘッドランプモジュールは、より軽量、より低コストである。なお、このような構造のレンズ2は、本発明のいずれの実施形態のヘッドランプモジュールにも適用できる。
【0039】
図10図12に示す実施例では、ヘッドランプ用光学素子1とレンズ2は分離式構造を用い、該ヘッドランプ用光学素子1とレンズ2はそれぞれ、ヘッドランプモジュールの取り付けホルダーに組み立てられてもよい。分離式構造を用いたヘッドランプモジュールは、ヘッドランプ用光学素子1、レンズ2や他の部材の相対位置を簡便に調整することができ、配光に有利であり、車ライト造型の多様化に適用できる。
【0040】
図13図16に示す実施例では、ヘッドランプ用光学素子1とレンズ2は一体成形される。該ヘッドランプ用光学素子1がロービーム構造を用いる場合、光源4は集光部11のキャビティの開口に設けられ、集光部11により集光されると、光線の一部はレンズ2に直接射入し、もう一部の光線は反射部13の反射面によって反射された後、レンズ2に射入され、さらに一部の光線は反射部13の下方を経てレンズ2に出射され、以上の3つの部分の光線はレンズ2によって投射されると、図18に示すように、該ヘッドランプモジュールは、ロービーム明暗カットオフライン51とIIIゾーン53パターンを有するロービームパターンを形成でき、ここで、50L暗領域形成構造16に放射された光線は伝播方向が変わり、ロービームの50L領域54の輝度が法規による要件を満たす。該ヘッドランプ用光学素子1がハイビーム構造を用いる場合、光源4から発光する光線は、集光部11によって集光されると、一部はレンズ2に直接射入され、もう一部の光線は反射部13によって反射された後、レンズ2に射入され、以上の2つの部分の光線はレンズ2によって投射されると、図19に示すハイビーム明暗カットオフライン52を有するハイビームパターンを形成する。該ヘッドランプモジュールが一体式構造を用いる場合、部品点数を減らし、組み立てられた車ライトの構造をよりコンパクトにし、また、組み立てる過程における光学素子同士の組み立て誤差を回避し、組み立て精度を高め、さらに光学精度を向上させ、該ヘッドランプモジュールの寸法を減少させ、生産効率を高め、生産コストを下げる。なお、該ヘッドランプモジュールが一体式構造を用いる場合、ヘッドランプ用光学素子1とレンズ2とを一体成形した1つの光学素子だけで照明パターンを実現し、他の光学素子が設置される必要がなく、このため、構造が簡素化される。もちろん、車ライト造型などのニーズに応えるために、この一体成形された光学素子と外配光ミラーとの間に少なくとも1つの内配光ミラーが設けられてもよく、この内配光ミラーは、一般的な等肉厚のプラスチック部品であってもよく、所望の造型を表現できれば、裏面に配光機能を備える配光プラスチック部品であってもよい。
【0041】
図13図17に示す実施例では、レンズ2とヘッドランプ用光学素子1は接続板3によって接続されてもよく、接続板3は一端がヘッドランプ用光学素子1に接続され、他端がレンズ2に接続される。このような構造では、該ヘッドランプモジュールは、一体成形することで、光学精度を向上させることができる。もちろん、接続板3によって接続レンズ2とヘッドランプ用光学素子1を組み立ててもよく、たとえば、ヘッドランプ用光学素子1、レンズ2及び接続板はシリカゲルで接続される。反射部3を設けることにより、従来技術の集光器に比べて、材料を節約し、コストを低下させ、ヘッドランプモジュールをより軽量化することができる。
【0042】
本発明の車ライトは、上記の技術案のいずれか1項に記載のヘッドランプモジュールを含み、上記のすべての実施例の全部の技術案を用いるため、上記実施例の技術案によるすべての有益な効果を少なくとも有する。
【0043】
本発明の車両は、上記車ライトを含み、上記のすべての実施例の全部の技術案を用いるため、上記実施例の技術案によるすべての有益な効果を少なくとも有する。
【0044】
以上、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態を詳細に説明したが、本発明はそれに限定されない。本発明の技術的構想の範囲内では、本発明の技術案に対して、具体的な各技術的特徴を任意の適切な方式で組み合わせることを含む各種の簡単な変形を行うことができる。不要な重複をしないように、本発明は、可能な各種の組み合わせ形態についてさらに説明しない。ただし、これらの簡単な変形や組み合わせも本発明に開示された内容とみなすべきであり、すべて本発明の特許範囲に属するものとする。
【符号の説明】
【0045】
1 ヘッドランプ用光学素子
2 レンズ
3 接続板
4 光源
11 集光部
12 出光部
13 反射部
14 IIIゾーンパターン形成構造
15 ロービームカットオフライン構造
16 50L暗領域形成構造
17 ハイビームカットオフライン構造
21 光軸
51 ロービーム明暗カットオフライン
52 ハイビーム明暗カットオフライン
53 IIIゾーン
54 50L領域。
111 フロント入光面
112 サイド入光面
113 外部輪郭面
図1
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