(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】避雷器、保護システム及び電力システム
(51)【国際特許分類】
H02H 9/04 20060101AFI20230407BHJP
H02H 7/12 20060101ALI20230407BHJP
H01T 4/00 20060101ALI20230407BHJP
H01T 4/08 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
H02H9/04 C
H02H7/12
H01T4/00 F
H01T4/08 D
(21)【出願番号】P 2022005130
(22)【出願日】2022-01-17
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】520039179
【氏名又は名称】NTTアノードエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】福井 昭圭
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-294218(JP,A)
【文献】特開2010-207057(JP,A)
【文献】特開2020-119883(JP,A)
【文献】特開2010-165595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 9/04
H02H 7/12
H01T 4/00
H01T 4/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に接続される第1端子と第2端子との間に生じ得る過電圧を制限する避雷器であって、
前記第1端子と前記第2端子間の電圧を制限する電圧制限半導体装置と、
平時に前記第1端子と前記第2端子の各電位の間の電位になる分圧極を介して互いに直列に接続される第1フィルムコンデンサと第2フィルムコンデンサとを含む分圧部と、
前記分圧極を介して互いに直列接続される第1放電管型避雷器と第2放電管型避雷器とを含む制限部と、
を備え、
前記第1放電管型避雷器と、前記第1フィルムコンデンサとが、互いに並列に接続されていて、
前記第2放電管型避雷器と、前記第2フィルムコンデンサとが、互いに並列に接続されている、
避雷器。
【請求項2】
前記分圧極は、避雷器外の電極から絶縁されている、
請求項1に記載の避雷器。
【請求項3】
前記電圧制限半導体装置は、互いに並列に接続される複数の酸化亜鉛バリスタを含み、
前記複数の酸化亜鉛バリスタの並列数は、前記制限部がサージ電圧に応答したときに前記第1端子と前記第2端子間に発生する電圧の尖頭値が、保護対象の装置に含まれる半導体スイッチング素子の許容耐圧を超えないように決定されている、
請求項1又は請求項2に記載の避雷器。
【請求項4】
前記第1放電管型避雷器と前記第2放電管型避雷器の何れもが、
3つの電極と、
焼結形成されていて所望の絶縁性を有している支持部材であって、前記3つの電極間の位置を保持する支持部材と
をそれぞれ有した放電管型避雷器を夫々含む、
請求項2に記載の避雷器。
【請求項5】
前記支持部材は、
前記3つの電極間に通じる1つの内部空間を封止するように形成され、
前記放電管型避雷器は、
前記3つの電極のうちの第1電極を挟んで第2電極と第3電極とが対向して配置され、
前記第2電極と前記第3電極とが導体によって短絡されている、
請求項4に記載の避雷器。
【請求項6】
前記第1電極と、前記第2電極と前記第3電極の組との何れか一方が、前記分圧極に接続され、
何れか他方が前記制限部の両極のうちの一方に接続されている、
請求項5に記載の避雷器。
【請求項7】
等電位ボンディングが適用されない電力システムの保護システムであって、
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の避雷器を含み、
前記避雷器の第1端子が第1装置の第1接地極に接続され、前記避雷器の第2端子が第2装置の第2接地極に接続されている、
保護システム。
【請求項8】
半導体スイッチング素子を含む電力変換装置が前記第1装置と前記第2装置との間に配置されている、
請求項7に記載の保護システム。
【請求項9】
等電位ボンディングが適用されない電力システムであって、
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の避雷器と、
第1接地極を備え、前記避雷器の第1端子が前記第1接地極に接続されている第1装置と、
第2接地極を備え、前記避雷器の第2端子が前記第2接地極に接続されている第2装置と、
半導体スイッチング素子を含む電力変換装置であって、前記第1装置と前記第2装置との間に配置されている電力変換装置と、
を備える電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、避雷器、保護システム及び電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
落雷による雷サージや、高圧受電設備の遮断器のON/OFF操作時に発生する開閉サージに起因して、装置の誤動作や故障が生じる場合がある。
このような事象に対する耐量を高めるように、建物内の各接地極を短絡させる接地システム(等電位ボンディング)が採用されることがある。ただし、システムの構成によっては、等電位ボンディングを適用できない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように等電位ボンディングを適用できない場合などを含めて、装置の誤動作や故障などのサージによる影響を低減させることが要求されることがあった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、保護対象の装置におけるサージによる影響を低減できる避雷器、保護システム及び電力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、外部に接続される第1端子と第2端子との間に生じ得る過電圧を制限する避雷器であって、前記第1端子と前記第2端子間の電圧を制限する電圧制限半導体装置と、平時に前記第1端子と前記第2端子の各電位の間の電位になる分圧極を介して互いに直列に接続される第1フィルムコンデンサと第2フィルムコンデンサとを含む分圧部と、前記分圧極を介して互いに直列接続される第1放電管型避雷器と第2放電管型避雷器とを含む制限部と、を備え、前記第1放電管型避雷器と、前記第1フィルムコンデンサとが、互いに並列に接続されていて、前記第2放電管型避雷器と、前記第2フィルムコンデンサとが、互いに並列に接続されている避雷器である。
【0007】
また、本発明の一態様の避雷器は、前記分圧極は、避雷器外の電極から絶縁されている。
【0008】
また、本発明の一態様の避雷器は、前記MOVは、互いに並列に接続される複数の酸化亜鉛バリスタを含み、前記複数の酸化亜鉛バリスタの並列数は、前記制限部がサージ電圧に応答したときに前記第1端子と前記第2端子間に発生する電圧の尖頭値が、保護対象の装置に含まれる半導体スイッチング素子の許容耐圧を超えないように決定されている。
【0009】
また、本発明の一態様の避雷器は、前記第1放電管型避雷器と前記第2放電管型避雷器の何れもが、3つの電極と、焼結形成されていて所望の絶縁性を有している支持部材であって、前記3つの電極間の位置を保持する支持部材とをそれぞれ有した放電管型避雷器を夫々含む。
【0010】
また、本発明の一態様の避雷器は、前記支持部材は、前記3つの電極間に通じる1つの内部空間を封止するように形成され、前記放電管型避雷器は、前記3つの電極のうちの第1電極を挟んで第2電極と第3電極とが対向して配置され、前記第2電極と前記第3電極とが導体によって短絡されている。
【0011】
また、本発明の一態様の避雷器は、前記第1電極と、前記第2電極と前記第3電極の組との何れか一方が、前記分圧極に接続され、前記何れか他方が前記制限部の両極のうちの一方に接続されている。
【0012】
本発明の一態様は、等電位ボンディングが適用されない電力システムの保護システムであって、上記の避雷器を含み、前記避雷器の第1端子が第1装置の第1接地極に接続され、前記避雷器の第2端子が前記第2装置の第2接地極に接続されている保護システムである。
【0013】
また、本発明の一態様の保護システムは、半導体スイッチング素子を含む電力変換装置が前記第1装置と前記第2装置との間に配置されている。
【0014】
本発明の一態様は、等電位ボンディングが適用されない電力システムであって、上記の避雷器と、第1接地極を備え、前記避雷器の第1端子が前記第1接地極に接続されている第1装置と、第2接地極を備え、前記避雷器の第2端子が前記第2接地極に接続されている第2装置と、半導体スイッチング素子を含む電力変換装置であって、前記第1装置と前記第2装置との間に配置されている電力変換装置と、を備える電力システムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の各態様によれば、保護対象の装置におけるサージによる影響を低減できる避雷器、保護システム及び電力システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1B】実施形態の変形例の電力システムの構成図である。
【
図2】実施形態の電力システムをモデル化した構成図である。
【
図3B】実施形態の放電管型避雷器の断面図である。
【
図4】実施形態の避雷器の電気的特性を説明するための図である。
【
図5A】実施形態の比較例のGDTタイプのSPDの構成図である。
【
図5B】実施形態の比較例のGDTタイプのSPDの特性例を説明するための図である。
【
図6A】実施形態の比較例のMOVタイプのSPDの構成図である。
【
図6B】実施形態の比較例のMOVタイプのSPDの特性例を説明するための図である。
【
図7】実施形態の変形例に係る避雷器の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0018】
図1Aから
図2を参照して、実施形態の電力システムの構成例を示し、避雷器及び保護システムの適用について説明する。
図1Aは、実施形態の電力システム200の構成図である。
図2は、実施形態の電力システム200をモデル化した構成図である。なお、
図1Bは、実施形態の変形例の電力システム200Zの構成図である。
【0019】
図1Aに示す電力システム200は、変圧器Tの2次巻線に接続される。電力システム200は、例えば、計器用変圧器210と、電力変換装置220と、発電機230と、避雷器240とを備える。この電力システム200は、等電位ボンディングの適用が困難な一例である。
【0020】
変圧器Tは、交流電力の電圧を所定の比率で変換する。変圧器Tは、高圧を、所定の交流電圧に変換する。例えば変圧器Tの1次巻線は真空遮断機(VCB、不図示)に接続されている。変圧器Tの1次側に、VCBの投入によって交流電力が供給される。変圧器Tの2次側が、発電機230の巻線に接続されている。
【0021】
計器用変圧器210は、上記の変圧器Tの1次側に接続されていて、高圧を低圧(例えば単層100V)に変換する。計器用変圧器210は、例えば漏電検知用の電力線接地(B種接地)されている。このような計器用変圧器210は、電力線接地の接地極(第1接地極)を備えている。後述するように、避雷器240の第1端子がこの接地極(第1接地極)に接続される。計器用変圧器210は、第1装置の一例である。
【0022】
電力変換装置220は、自動電圧制御装置(AVR)の一例である。電力変換装置220は、例えば、混合ブリッジ221と、点弧位相制御部222と、絶縁回路223、224とを備える。
【0023】
混合ブリッジ221は、直列に接続される主サイリスタとダイードの組を2組備え、ブリッジ型に接続されている。混合ブリッジ221の交流入力は、計器用変圧器210の2次側に接続されている。
【0024】
点弧位相制御部222は、変圧器Tの出力電圧に基づく電圧信号に基づいて、混合ブリッジ221の主サイリスタをON制御する位相を調整するゲート制御信号を生成する。絶縁回路223、224は、例えば、フォトサイリスタであり、点弧位相制御部222が生成するゲート制御信号を絶縁して、混合ブリッジ221の主サイリスタのゲートにそれぞれ供給する。
このような電力変換装置220は、主サイリスタ221aなどの半導体スイッチング素子を含む電力変換装置の一例である。この電力変換装置220は、計器用変圧器210(第1装置)と、後述する発電機230(第2装置)との間に配置されている。
【0025】
発電機230は、例えば、励磁型3相交流発電機である。発電機230は、励磁巻線に直流電圧が印加されることによって、回転子磁束が生成される。発電機230は、原動機(不図示)に連結されていて、原動機からの動力が供給されて回転する。発電機230は、例えば、原動機からの動力に基づいて、交流電力を生成する。このような発電機230は、停電時又は電力供給量の不足時などの非常時に利用されることがある。
【0026】
発電機230の筐体は、保安用接地(A,C,D種接地)されている。このような発電機230は、保安用接地の接地極(第2接地極)を備えている。後述するように、避雷器240の第2端子がこの接地極(第2接地極)に接続される。発電機230は、第2装置の一例である。
【0027】
実施形態の避雷器240は、計器用変圧器210の接地極と、発電機230の筐体の接地極の間に設けられている。避雷器240によって上記の両極が、それぞれ接続されている。避雷器240の詳細については後述する。
【0028】
実施形態の保護システム1は、等電位ボンディングが適用されない電力システム200に適用される。保護システム1は、避雷器240を含む。避雷器240の第1端子が計器用変圧器210(第1装置)の第1接地極に接続され、避雷器240の第2端子が発電機230(第2装置)の第2接地極に接続されている。上記の場合、電力変換装置220が計器用変圧器210と発電機230との間に配置されている。電力変換装置220は、半導体スイッチング素子を含む電力変換装置の一例である。保護システム1は、避雷器240が配置されることにより、サージによって生じる過電圧から電力システム200を保護する。
【0029】
(比較例の電力システム200Zについて)
ここで実施形態の説明に先立ち、実施形態との対比のために比較例として、避雷器240が設けられていない電力システム200Zを
図1Bに例示して、これに生じた障害の概要について説明する。
図1Bに示す範囲は、電力システム200Zの正極側の構成に関わる。
【0030】
このような電力システム200Zは、装置の電力線接地と保安用接地を、等電位ボンディングの手法で直接接続すると、地絡発生時に短絡が発生して過大な電流が流れる恐れがある。電力システム200Zに等電位ボンディングが適用できないことにより、計器用変圧器210の電位と、発電機230の筐体の電位との電位差が過大になって、この電位差が、絶縁回路223又は絶縁回路224内のフォトサイリスタに短絡故障を誘発させる要因になっていた。
【0031】
(電力システム200について)
これに対して、
図1Aに示す実施形態の電力システム200では、このようなサージ電圧による短絡故障を避けるために、接地極間用SPD(Surge Protective Device)として用いる避雷器240を介して両接地間を短絡させる。接地極間用SPDは、平時の電源電圧では高抵抗であるが、サージ電圧が加わった場合に低抵抗になるように構成されている。避雷器240は、接地極間用SPDとしての上記の要件を満たす。
【0032】
ところで、このような接地極間用SPDは、主たる素子の種類により大きく2つのタイプに大別される。第1のタイプは、酸化亜鉛バリスタ(MOV)を用いるもの(MOVタイプという。)である。第2のタイプは、ガス入り放電管(GDT)を用いるもの(GDTタイプという。)である。
【0033】
ところで、比較例の一例であるGDTタイプのSPD240Xを単独で利用する事例を
図5Aに示し、その特性例を
図5Bに示す。
図5Aは、実施形態の比較例のGDTタイプのSPD240Xの構成図である。
図5Bは、実施形態の比較例のGDTタイプのSPD240Xの特性例を説明するための図である。
【0034】
GDTタイプのSPD240Xには、
図5Bに示すように、放電中に端子間に生じる電圧が比較的低く、さらにサージ耐量が比較的大きいという特徴を有するものがある。このようなGDTタイプのSPD240Xには、過電圧を制限するための放電が始まるときに、放電開始の直前に比較的高い電圧(約1kV以上のトリガー電圧)を必要とするものがある。このため、GDTタイプのSPD240Xが過電圧に対して応答した際に、比較的短時間(例えば、数10nsオーダ)の時間幅を有する尖頭電圧(電圧跳ね上がり現象)が発生することがあった。
【0035】
これに対し、比較例の一例であるMOVタイプのSPD240Yを単独で利用する事例を
図6Aに示し、その特性例を
図6Bに示す。
図6Aは、実施形態の比較例のMOVタイプのSPD240Yの構成図である。
図6Bは、実施形態の比較例のMOVタイプのSPD240Yの特性例を説明するための図である。
【0036】
MOVタイプのSPD240Yには、
図6Bに示すように、サージ電圧を抑制する際の時間応答性が比較的早いことにより、放電開始時の尖頭電圧が生じにくいものがある。MOVタイプのSPD240Yの場合には、その内部抵抗によって、サージ電流による比較的大きな電圧降下が発生し、これが比較的長く継続する。これによりSPD240Yに加わる電力損失が比較的大きくなることがあった。このため、MOVタイプのSPD240Yを用いて構成する場合には、より大きなサージ耐量を有するSPD素子が選択されていた。
【0037】
接地極間用SPDに適用可能な一般的な素子を単に適用しても、所望の特性を得ることが難しい場合があった。
【0038】
そこで、電力システム200は、接地極間用SPDとして、複合型の避雷器240を用いることで、所望の特性を得る。以下、これについて説明する。
【0039】
(電力システム200について)
電力システム200は、保護システム1と、保護システム1によって保護する対象としての電力変換装置220を含む。例えば電力変換装置220は、電力用半導体スイッチング素子を含めて構成されたAC/DC変換回路(整流器)を含む。上記の通り、電力変換装置220は、計器用変圧器210(第1装置)が出力する交流電力を直流電力に変換して、これを用いて発電機230(第2装置)を励磁させる。
【0040】
ここに例示する保護システム1は、避雷器240と、接地線GLとを含む。接地線GLによって、避雷器240の第1端子が計器用変圧器210の第1接地極に接続され、避雷器240の第2端子が発電機230の第2接地極に接続されている。
【0041】
(避雷器240について)
図3Aを参照して、実施形態の避雷器240について説明する。
図3Aは、実施形態の避雷器240の構成図である。
【0042】
避雷器240は、その外部に接続される第1端子と第2端子とを有している。避雷器240は、第1端子と第2端子との間に生じ得る過電圧を制限する。例えば、避雷器240は、MOVタイプの電圧制限半導体装置241と、分圧部242と、GDTタイプの制限部243とを備える。
【0043】
電圧制限半導体装置241(単にMOVという。)は、第1端子と第2端子間の電圧を制限するように構成された酸化亜鉛バリスタを含む。電圧制限半導体装置241は、例えば互いに並列に接続される複数の酸化亜鉛バリスタを含むものであってよい。
【0044】
分圧部242は、第1フィルムコンデンサ2421と第2フィルムコンデンサ2422とを備える。第1フィルムコンデンサ2421と第2フィルムコンデンサ2422は、平時に第1端子と第2端子の各電位の間の電位になる分圧極DVPを介して互いに直列に接続される。第1フィルムコンデンサ2421と第2フィルムコンデンサ2422を区別しない場合にフィルムコンデンサ2420という。
【0045】
制限部243は、上記の分圧極DVPを介して互いに直列接続される第1放電管型避雷器2431と第2放電管型避雷器2432とを備える。第1放電管型避雷器2431と第2放電管型避雷器2432とを区別しない場合には、単に放電管型避雷器2430と呼ぶ。上記の分圧極DVPは、避雷器240外の電極から絶縁されている。
【0046】
避雷器240において、第1放電管型避雷器2431と、第1フィルムコンデンサ2421とが、互いに並列に接続されている。第2放電管型避雷器2432と、第2フィルムコンデンサ2422とが、互いに並列に接続されている。
【0047】
電圧制限半導体装置241に含まれる複数の酸化亜鉛バリスタの並列数は、制限部243がサージ電圧に応答したときに第1端子と第2端子間に発生する電圧の尖頭値が、保護対象の電力変換装置220に含まれるサイリスタ(半導体スイッチング素子)の許容耐圧を超えないように決定されているとよい。
【0048】
例えば、電力変換装置220は、発電機230の出力電圧制御のための、界磁電流制御用に使用される。電力変換装置220は、上記の通り非絶縁のAC/DC変換回路として利用される混合ブリッジ221を含む。避雷器240は、この混合ブリッジ221を保護する。このような混合ブリッジ221に適用されるサイリスタの耐圧は、一般的に600V程度である。そのため、避雷器240は、サージ電圧が生じたときに、制限部243(単にGDTということがある。)の応答によって発生する尖塔電圧(ひげ状に変化する電圧振幅のピーク値)を600V以下に抑制する。基本的には、制限部243の電圧制限特性を用いてこれを抑制する。この抑制が不足する場合には、MOVの並列数を調整して、避雷器240としての制限電圧を上記の600V以下に抑制するとよい。より具体的には、制限電圧をより低減させる場合には、MOVの並列数を増すとよい。
【0049】
上記の用途の接地極間用SPDには、計器用変圧器210の2次側のAC200Vの電路に地絡事故が生じて、これによりAC200Vの電位差が避雷器240の端子間に発生しても、その接地極間用SPDが導通しないこと、が要求される。これゆえ、避雷器240のMOVには、AC200Vのピーク電圧(約AC350V)が加わっても応答しない定格電圧のMOVを選定する。
【0050】
接地極用SPDには、上記のように事故時にAC200Vの電路が地絡した場合に、AC200Vの電位差が発生しても導通しないように、GDTの放電開始電圧を決定する。フィルムコンデンサ2420の静電容量は、GDTの静電容量よりも大きく、その容量のバラツキもGDTに比べて少ない。このような静電容量をフィルムコンデンサ2420が有していれば、GDTの静電容量の影響は少なくなる。例えば、第1フィルムコンデンサ2421と第2フィルムコンデンサ2422は、その容量比により決定される任意の比に、避雷器240の第1端子と第2端子間に発生する電圧を分圧する。フィルムコンデンサ2420の両端に発生する分圧電圧以上に、GDTの放電開始電圧を決定することで、上記の事故に起因する過電流が生じることを抑制できる。
【0051】
次に、
図3Bを参照して、放電管型避雷器2430に適用される3極型避雷器について説明する。
図3Bは、実施形態の放電管型避雷器2430の断面図である。
【0052】
放電管型避雷器2430は、第1電極2430aから第3電極2430cの3つの電極と、支持部材2430dとを備える。支持部材2430dは、筒状に焼結形成されたセラミックとして形成されていて、所望の絶縁性を有している。支持部材2430dは、上記の3つの電極を支持することで、上記の3つの電極間の位置を保持する。放電管型避雷器2430の各電極は、第1電極2430aを挟んで第2電極2430bと第3電極2430cとが対向して配置されている。なお、各電極の形状と互いの間隔は一例を示すものであり、これに制限されず適宜変更してよい。
【0053】
支持部材2430dは、上記の3つの電極間に通じる1つの内部空間を、各電極との組み合わせによって封止するように形成されている。
【0054】
なお、実施形態の放電管型避雷器2430は、第2電極2430bと第3電極2430cとが、プリント基板(不図示)の配線などの導体によって、前述の
図3Aに示すように短絡されて利用される。
【0055】
上記の第1電極2430aと、第2電極2430bと第3電極2430cの組との何れか一方が、プリント基板の配線などの導体によって、分圧極DVPに接続される。例えば、
図3Aに示すように、第1電極2430aと、第2電極2430bと第3電極2430cの組とのうちの第1電極2430aが、分圧極DVPに接続されていてもよい。
【0056】
図4を参照して、実施形態の避雷器240の電気的特性について説明する。
図4は、実施形態の避雷器240の電気的特性を説明するための図である。
【0057】
図4に示す波形は、避雷器240の第1端子と第2端子との間に発生する電圧とサージ電流の観測結果を示す。避雷器240がサージに応答したときに、588Vの制限電圧が発生することが観測された。この制限電圧(588V)は、前述の比較例のGDTタイプのSPD240X(
図5B)の電圧(約1kV)に対して低くなっていて、さらに一般的なスイッチング素子であるサイリスタの耐圧(例えば600V)よりも低くなっている。また、避雷器240がサージに応答したときに生じた高電位になっている期間(波形の幅、約0.2μ秒)が、MOVタイプのSPD240Y(
図6B)の幅(約28μ秒)に比べて短くなっている。避雷器240は、サージ電流が継続して流れている状況のもとで、過電圧を抑制することができる。また、電圧制限半導体装置241における損失がMOVタイプのSPD240Y(
図6B)に比べて少なくなっている。これによれば、電圧制限半導体装置241の各MOVの容量を軽減でき、これに伴って回路の実装に要する空間を削減できる。
【0058】
上記の実施形態によれば、避雷器240は、外部に接続される第1端子と第2端子とを有し、第1端子と第2端子との間に生じ得る過電圧を制限する。避雷器240は、第1端子と第2端子間の電圧を制限する電圧制限半導体装置と、平時に第1端子と第2端子の各電位の間の電位になる分圧極DVPを介して互いに直列に接続される第1フィルムコンデンサと第2フィルムコンデンサとを含む分圧部と、前記分圧極DVPを介して互いに直列接続される第1放電管型避雷器と第2放電管型避雷器とを含む制限部と、を備える。第1放電管型避雷器と、第1フィルムコンデンサとが、互いに並列に接続されていて、第2放電管型避雷器と、第2フィルムコンデンサとが、互いに並列に接続されている。これにより避雷器は、保護対象の装置におけるサージによる影響を低減できる。
【0059】
(実施形態の第1変形例)
図7を参照して、実施形態の第1変形例に係る避雷器240Aについて説明する。
図7は、実施形態の変形例に係る避雷器240Aの構成図である。
【0060】
避雷器240Aは、避雷器240の制限部243に代わり、制限部243Aを備える。
制限部243Aは、制限部243の第1放電管型避雷器2431と第2放電管型避雷器2432とに代えて、第1放電管型避雷器2431Aと第2放電管型避雷器2432Aとを備える。第1放電管型避雷器2431Aと第2放電管型避雷器2432Aは、第1放電管型避雷器2431と第2放電管型避雷器2432とにそれぞれ対応する。
【0061】
第1放電管型避雷器2431Aと第2放電管型避雷器2432Aは、それぞれ少なくとも1つの放電管型避雷器を備える。第1放電管型避雷器2431Aと第2放電管型避雷器2432Aとをまとめて放電管型避雷器2430Aという。放電管型避雷器2430Aは、放電管型避雷器2430とは種類が異なり、2つの電極をそれぞれ備える放電管型避雷器である。
【0062】
上記の変形例によれば、実施形態と同様の効果を奏することのほか、構成を簡素化できる。
【0063】
(実施形態の第2変形例)
図7を参照して、実施形態の第2変形例に係る避雷器240Aについて説明する。上記の第1変形例の放電管型避雷器2430Aは、2つの電極をそれぞれ備える放電管型避雷器の場合を例示した。本変形例の放電管型避雷器2430Aは、2つの電極をそれぞれ備える複数の放電管型避雷器を互いに並列に接続して構成される。
【0064】
本変形例の場合も、実施形態と同様の効果を奏する。
【0065】
なお、避雷器240は、主に接地極間の電位差を制限する用途に適用可能である。
【0066】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0067】
200、200Z 電力システム
220 電力変換装置
240 避雷器
241 電圧制限半導体装置(MOV)
242 分圧部
243 制限部(GDT)
2421 第1フィルムコンデンサ
2422 第2フィルムコンデンサ
2431 第1放電管型避雷器
2432 第2放電管型避雷器
【要約】 (修正有)
【課題】保護対象の装置におけるサージによる影響を低減できる避雷器、保護システム及び電力システムを提供する。
【解決手段】外部に接続される第1端子と第2端子との間に生じ得る過電圧を制限する避雷器240は、第1端子と第2端子間の電圧を制限する電圧制限半導体装置241と、平時に第1端子と第2端子の各電位の間の電位になる分圧極を介して互いに直列に接続される第1フィルムコンデンサ2421と第2フィルムコンデンサ2422とを含む分圧部242と、分圧極を介して互いに直列接続される第1放電管型避雷器2431と、第2放電管型避雷器2432とを含む制限部243と、を備える。第1放電管型避雷器と、第1フィルムコンデンサとが、互いに並列に接続されていてる。第2放電管型避雷器と、第2フィルムコンデンサとが、互いに並列に接続されている。
【選択図】
図3A