(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-06
(45)【発行日】2023-04-14
(54)【発明の名称】樹脂組成物、ポリウレタン系接着剤、及び積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 175/06 20060101AFI20230407BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20230407BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20230407BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230407BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20230407BHJP
C08L 75/06 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
C09J175/06
C08K5/29
C08G18/10
B32B27/00 M
B32B27/40
C08L75/06
(21)【出願番号】P 2022144714
(22)【出願日】2022-09-12
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2022043932
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】深井 正喜
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 悠正
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101463242(CN,A)
【文献】特開2008-045101(JP,A)
【文献】特開2019-099667(JP,A)
【文献】特表2020-531655(JP,A)
【文献】特開2013-249438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 175/06
C08K 5/29
C08G 18/10
B32B 27/00
B32B 27/40
C08L 75/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤の主剤として硬化剤とともに用いられるポリウレタン系接着剤用の樹脂組成物であって、
ポリエステルポリオール(a)を含むポリオールに由来する構成単位及びポリイソシアネート(b)に由来する構成単位を有する、その分子末端に水酸基を持ったポリウレタン樹脂(c)を80質量%以上含むポリオール(A)を含有し、
前記ポリエステルポリオール(a)が、ジカルボン酸成分に由来する構成単位と、ジオール成分に由来する構成単位と、を有し、
前記ジカルボン酸成分中、ベンゼン-o-ジカルボン酸及びベンゼン-m-ジカルボン酸の合計含有量が、50モル%以上であり、
前記ジカルボン酸成分中、前記ベンゼン-o-ジカルボン酸の含有量が、40モル%以上であり、
前記ポリエステルポリオール(a)の分子末端に存在する水酸基の含有量が、0.1~2モル/kgであり、
前記ポリオール中、前記ポリエステルポリオール(a)の含有量が、80質量%以上であり、
前記ポリウレタン樹脂(c)の分子末端に存在する水酸基の含有量が、0.04~0.4モル/kgである樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂(c)の分子末端に存在する水酸基の含有量が、0.05~0.4モル/kgである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ジカルボン酸成分中、前記ベンゼン-o-ジカルボン酸以外のベンゼンジカルボン酸の含有量が、20モル%以上である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ジオール成分が、その分子中にエーテル結合を介して結合した炭素数8以下のアルキレン基を2又は3個有するジアルコールを含み、
前記ジオール成分中、前記ジアルコールの含有量が、50モル%以上である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
酢酸エチル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、及び炭酸ジメチルからなる群より選択される少なくとも一種の有機溶剤を2質量%以上さらに含有する請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
主剤及び硬化剤を含有し、
前記主剤が、請求項1~
5のいずれか一項に記載の樹脂組成物であり、
前記硬化剤が、ポリイソシアネート(B)であり、
前記ポリオール(A)の末端水酸基(OH基)に対する、前記ポリイソシアネート(B)の末端イソシアネート基(NCO基)の化学量論比(NCO基/OH基)が、2.0~50.0であるポリウレタン系接着剤。
【請求項7】
2以上の被接着層と、前記被接着層どうしの間に設けられる、請求項
6に記載のポリウレタン系接着剤で形成された接着層と、を備える積層体。
【請求項8】
前記被接着層が、金属層を含む請求項
7に記載の積層体。
【請求項9】
凹状に成形された成形加工部を有する請求項
7に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン系接着剤の主剤として硬化剤とともに用いられる樹脂組成物、ポリウレタン系接着剤、及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
軟包装材料等の積層体の用途としては、例えば、深絞り成形して包材等の成形体とした後、その内部に内容物を充填してから熱融着封函加工する用途(例えば、ハムやベーコン等の食品包装用途)等がある。熱融着封函加工時には高温の熱板が積層体に接触するが、その際、熱や応力が集中した部位において層間に気泡が混入する、いわゆる「浮き」が生ずることがある。そして、このような「浮き」が目立って生ずるような場合には、成形深さ(内容物の充填容積)等に制限が生じていた。
【0003】
ポリウレタン系接着剤の主剤として用いられるポリウレタンの原料の一つとして、ポリエステルポリオールがある。一般的に、フタル酸含有量がより多いポリエステルポリオールを原料とするポリウレタンを用いることで、耐熱性や金属等への密着性が向上した接着剤とすることができる。但し、ポリエステルポリオールのフタル酸含有量が多いほど、ポリウレタンの粘度が上昇して流動性が低下する傾向にある。このため、このようなポリウレタンを主剤とする接着剤を用いて積層体を製造する際には、濡れ不良による気泡の巻き込みが生じやすくなり、得られる積層体に浮きが生じやすくなる。
【0004】
例えば、金属や樹脂製フィルム等の基材に対する接着性が、活性エネルギー線の照射によって瞬時に発生する接着剤が提案されている(特許文献1)。また、NY/AL/PP層を有する成形包材及びそれに用いる接着剤が提案されている(特許文献2)。なお、フタル酸含有量の多いポリエステルポリオールや、それを用いたポリウレタンを低粘度化する技術も提案されている(特許文献3及び4)が、積層体の成形性に影響が及ぶものではなかった。さらに、3官能以上のヒドロキシル基を特定量有するポリエステルウレタン化合物を含有する接着剤組成物が提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-13935号公報
【文献】特開2015-24862号公報
【文献】特開2007-8999号公報
【文献】特開2008-45101号公報
【文献】特開2017-25287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
濡れ不良による気泡巻き込み等に起因する浮きは、それ自体が積層体の美観的価値を損なう欠陥である。また、目立たない小さな気泡であっても、深絞り成形した場合には気泡が引き延ばされて大きくなるといった問題が生ずる。さらに、熱融着封函加工(いわゆるヒートシール加工)時の熱によって小さな気泡が膨張し、より顕著な浮きや剥離が生じやすくなる。このため、気泡が小さい場合であっても、軽視することはできない。
【0007】
特許文献1で提案された接着剤は、流動性及び基材に対する濡れ性がさほど良好であるとはいえなかった。なかでも、生産性を考慮したロールtoロールの加工条件では、熱圧着は瞬間的となるため、濡れ性の不足による気泡巻き込み不良が生じやすくなることがあった。また、特許文献2で提案された接着剤は、エージングの際の温度が比較的高く、軟包装材で一般的な40℃前後のエージング条件では濡れ不良が生じやすい。このため、気泡巻き込み不良が生じやすくなるとともに、高温でエージングする場合にはエネルギーコストの面で不利であった。さらに、特許文献5で提案された接着剤組成物を用いて得た積層体を深絞り成形すると、浮きや剥離等の不具合が生ずることがあり、製品の仕上がり外観について改善の余地があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、接着性及び耐熱性に優れた接着層を形成しうるとともに、深絞り成形等の成形加工によっても浮きや剥離等の不具合が生じにくく、外観の良好な積層体を製造することが可能な、樹脂や金属等の基材に対する濡れ性に優れたポリウレタン系接着剤の主剤として有用な樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
また、本発明の課題とするところは、接着性及び耐熱性に優れた接着層を形成しうるとともに、深絞り成形等の成形加工によっても浮きや剥離等の不具合が生じにくく、外観の良好な積層体を製造することが可能な、樹脂や金属等の基材に対する濡れ性に優れたポリウレタン系接着剤を提供することにある。
【0010】
さらに、本発明の課題とするところは、接着性及び耐熱性に優れた接着層を備える、深絞り成形等の成形加工によっても浮きや剥離等の不具合が生じにくく、外観の良好な積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明によれば、以下に示す樹脂組成物が提供される。
[1]接着剤の主剤として硬化剤とともに用いられるポリウレタン系接着剤用の樹脂組成物であって、ポリエステルポリオール(a)を含むポリオールに由来する構成単位及びポリイソシアネート(b)に由来する構成単位を有する、その分子末端に水酸基を持ったポリウレタン樹脂(c)を80質量%以上含むポリオール(A)を含有し、前記ポリエステルポリオール(a)が、ジカルボン酸成分に由来する構成単位と、ジオール成分に由来する構成単位と、を有し、前記ジカルボン酸成分中、ベンゼン-o-ジカルボン酸及びベンゼン-m-ジカルボン酸の合計含有量が、50モル%以上であり、前記ジカルボン酸成分中、前記ベンゼン-o-ジカルボン酸の含有量が、40モル%以上であり、前記ポリエステルポリオール(a)の分子末端に存在する水酸基の含有量が、0.1~2モル/kgであり、前記ポリオール中、前記ポリエステルポリオール(a)の含有量が、80質量%以上であり、前記ポリウレタン樹脂(c)の分子末端に存在する水酸基の含有量が、0.04~0.4モル/kgである樹脂組成物。
[2]前記ジカルボン酸成分中、前記ベンゼン-o-ジカルボン酸以外のベンゼンジカルボン酸の含有量が、20モル%以上である前記[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記ジオール成分が、その分子中にエーテル結合を介して結合した炭素数8以下のアルキレン基を2又は3個有するジアルコールを含み、前記ジオール成分中、前記ジアルコールの含有量が、50モル%以上である前記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]酢酸エチル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、及び炭酸ジメチルからなる群より選択される少なくとも一種の有機溶剤を2質量%以上さらに含有する前記[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0012】
また、本発明によれば、以下に示すポリウレタン系接着剤が提供される。
[5]主剤及び硬化剤を含有し、前記主剤が、前記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物であり、前記硬化剤が、ポリイソシアネート(B)であり、前記ポリオール(A)の末端水酸基(OH基)に対する、前記ポリイソシアネート(B)の末端イソシアネート基(NCO基)の化学量論比(NCO基/OH基)が、2.0~50.0であるポリウレタン系接着剤。
【0013】
さらに、本発明によれば、以下に示す積層体が提供される。
[6]2以上の被接着層と、前記被接着層どうしの間に設けられる、前記[5]に記載のポリウレタン系接着剤で形成された接着層と、を備える積層体。
[7]前記被接着層が、金属層を含む前記[6]に記載の積層体。
[8]凹状に成形された成形加工部を有する前記[6]又は[7]に記載の積層体。
[9]熱融着封函された封函部を有する前記[6]~[8]のいずれかに記載の積層体。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接着性及び耐熱性に優れた接着層を形成しうるとともに、深絞り成形等の成形加工によっても浮きや剥離等の不具合が生じにくく、外観の良好な積層体を製造することが可能な、樹脂や金属等の基材に対する濡れ性に優れたポリウレタン系接着剤の主剤として有用な樹脂組成物を提供することができる。
【0015】
また、本発明によれば、接着性及び耐熱性に優れた接着層を形成しうるとともに、深絞り成形等の成形加工によっても浮きや剥離等の不具合が生じにくく、外観の良好な積層体を製造することが可能な、樹脂や金属等の基材に対する濡れ性に優れたポリウレタン系接着剤を提供することができる。
【0016】
さらに、本発明によれば、接着性及び耐熱性に優れた接着層を備える、深絞り成形等の成形加工によっても浮きや剥離等の不具合が生じにくく、外観の良好な積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<樹脂組成物>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の樹脂組成物の一実施形態は、接着剤の主剤として硬化剤とともに用いられるポリウレタン系接着剤用の樹脂組成物である。本実施形態の樹脂組成物は、ポリエステルポリオール(a)を含むポリオールに由来する構成単位及びポリイソシアネート(b)に由来する構成単位を有する、その分子末端に水酸基を持ったポリウレタン樹脂(c)を80質量%以上含むポリオール(A)を含有する。以下、本実施形態の樹脂組成物の詳細について説明する。
【0018】
(ポリオール(A))
ポリオール(A)は、その分子末端に水酸基を持ったポリウレタン樹脂(c)を80質量%以上、好ましくは90質量%以上含む。なお、ポリオール(A)は、ポリウレタン樹脂(c)のみで実質的に構成されることが特に好ましい。ポリオール(A)中のポリウレタン樹脂(c)の含有量が80質量%未満であると、得られる接着剤の金属等の基材に対する密着性が低下する。
【0019】
[ポリウレタン樹脂(c)]
ポリウレタン樹脂(c)は、ポリエステルポリオール(a)を含むポリオールに由来する構成単位と、ポリイソシアネート(b)に由来する構成単位と、を有する。このポリエステルポリオール(a)は、ジカルボン酸成分に由来する構成単位と、ジオール成分に由来する構成単位と、を有する。そして、ジカルボン酸成分中、ベンゼン-o-ジカルボン酸及びベンゼン-m-ジカルボン酸の合計含有量は50モル%以上であり、好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。ジカルボン酸成分中、ベンゼン-o-ジカルボン酸及びベンゼン-m-ジカルボン酸の合計含有量が50モル%未満であると、得られる接着剤の金属等の基材に対する密着性が低下する。
【0020】
ジカルボン酸成分中、ベンゼン-o-ジカルボン酸の含有量は40モル%以上であり、好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上である。ジカルボン酸成分中、ベンゼン-o-ジカルボン酸の含有量が40モル%未満であると、得られる接着剤の基材に対する濡れ性が低下する。
【0021】
ベンゼン-o-ジカルボン酸としては、フタル酸及び無水フタル酸等を挙げることができる。なお、フタル酸のアルキルエステル類をベンゼン-o-ジカルボン酸として用いることもできる。ベンゼン-m-ジカルボン酸としては、イソフタル酸等を挙げることができる。なお、イソフタル酸のアルキルエステル類をベンゼン-m-ジカルボン酸として用いることもできる。
【0022】
ジカルボン酸成分は、ベンゼン-o-ジカルボン酸及びベンゼン-m-ジカルボン酸以外の酸成分(その他の酸成分)をさらに含んでいてもよい。その他の酸成分としては、従来公知の二塩基酸等を用いることができる。なお、ジカルボン酸成分中、ベンゼン-o-ジカルボン酸以外のベンゼンジカルボン酸の含有量を20モル%以上とする場合は、濡れ性の低下を補う観点から、ポリエステルポリオール(a)のジオール成分が、その分子中にエーテル結合を介して結合した炭素数8以下のアルキレン基を2又は3個有するジアルコールを含むことが好ましい。さらに、ジオール成分中のジアルコールの含有量は、50モル%以上であることが好ましい。
【0023】
ポリエステルポリオール(a)の分子末端に存在する水酸基の含有量(以下、「末端水酸基濃度」又は「末端OH基濃度」とも記す)は、0.1~2モル/kgであり、好ましくは0.2~1.5モル/kg、さらに好ましくは0.27~1.2モル/kgである。ポリエステルポリオール(a)の末端OH基濃度が0.1モル/kg未満であると、得られる接着剤の基材に対する濡れ性が低下する。一方、ポリエステルポリオール(a)の末端OH基濃度が2モル/kg超であると、得られる接着剤を用いて製造される積層体の成形性が低下する。
【0024】
ポリウレタン樹脂(c)は、ポリオールに由来する構成単位及びポリイソシアネート(b)に由来する構成単位を有する。このポリオール中のポリエステルポリオール(a)の含有量は80質量%以上であり、好ましくは90質量%、特に好ましくは100質量%である。すなわち、ポリウレタン樹脂(c)を構成するポリオールは、実質的にポリエステルポリオール(a)のみからなることが特に好ましい。
【0025】
ポリウレタン樹脂(c)の分子末端には、水酸基(OH基)が存在する。ポリウレタン樹脂(c)の分子末端に存在する水酸基の含有量(末端水酸基(OH基)濃度)は、0.04~0.4モル/kgであり、好ましくは0.05~0.3モル/kg、さらに好ましくは0.06~0.25モル/kgである。ポリウレタン樹脂(c)の末端OH基濃度が0.04モル/kg未満であると、得られる接着剤の基材に対する濡れ性が低下する。一方、ポリウレタン樹脂(c)の末端OH基濃度が0.4モル/kg超であると、得られる接着剤を用いて製造される積層体の成形性が低下する。
【0026】
ポリウレタン樹脂(c)は、ポリイソシアネート(b)に由来する構成単位を有する。ポリイソシアネート(b)としては、一般的なポリウレタンを構成する従来公知のポリイソシアネートを用いることができる。ポリイソシアネートとしては、分子中に2つのイソシアネート基を有する、分子量500以下のジイソシアネートが好ましい。そのようなジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネート;等を挙げることができる。
【0027】
ポリエステルポリオール(a)は、ジオール成分に由来する構成単位を有する。ジオール成分は、その分子中にエーテル結合を介して結合した炭素数8以下のアルキレン基を2又は3個有するジアルコールを含むことが好ましい。このような特定構造を有するジアルコールを用いることで、得られる接着剤の樹脂や金属等の基材に対する濡れ性をより向上させることができる。
【0028】
ジアルコールのアルキレン基の炭素数が大きすぎると、ポリエステルポリオール(a)中のジカルボン酸成分に由来する構成単位の割合が相対的に低下することになる。このため、ジアルコールのアルキレン基の炭素数は8以下であり、好ましくは3以下、さらに好ましくは2である。
【0029】
上記のジアルコールは、分子中のエーテル結合の数が2以下であることが好ましく、1であることが特に好ましい。エーテル結合の数が3以上であると、ポリエステルポリオール(a)中のジカルボン酸成分に由来する構成単位の割合が相対的に低下し、得られる接着剤の耐熱性や、金属やポリエステル樹脂等の基材に対する密着性が低下しやすくなる。
【0030】
上記のジアルコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールの他、炭素数8以下のアルキレングリコールにエチレン、プロピレン、テトラヒドロフラン等を開環付加したもの等を挙げることができる。なかでも、ジエチレングリコールが好ましい。
【0031】
ジオール成分中、特定構造を有する上記のジアルコールの含有量は、50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがさらに好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。ジオール成分中、特定構造を有する上記のジアルコールの含有量を50モル%以上とすることで、得られる接着剤の樹脂や金属等の基材に対する濡れ性をより向上させることができる。
【0032】
ジオール成分は、特定構造を有する上記のジアルコール以外のアルコール成分をさらに含んでいてもよい。さらに含んでもよいアルコール成分としては、従来既知のモノアルコール成分やポリアルコール成分を用いることができる。なかでも、水酸基を2個有するジアルコール(その他のジアルコール、グリコール類)が好ましい。
【0033】
ポリエステルポリオール(a)は、ポリエステル樹脂を製造する従来公知の方法にしたがって製造することができる。例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分を、必要に応じて用いられるエステル化触媒や酸化防止剤の存在下、140~250℃で重縮合反応させることで、ポリエステルポリオール(a)を得ることができる。エステル化触媒としては、アルコキシチタン系の触媒を用いることが好ましい。酸化防止剤としては、亜燐酸エステル系の化合物を用いることが好ましい。
【0034】
ポリウレタン樹脂(c)は、ポリウレタンやポリウレタンウレアを製造する従来公知の方法にしたがって製造することができる。例えば、ポリエステルポリオール(a)とポリイソシアネート(b)を、必要に応じて用いられるその他のポリオールや多価アミン化合物等の活性水素化合物とともに、常温~250℃で重付加反応させることで、ポリウレタン樹脂(c)を得ることができる。上記の重付加反応は、必要に応じて、ウレタン化触媒や有機溶剤の存在下で行うことができる。ウレタン化触媒としては、錫、亜鉛、鉄、ビスマス等の金属塩系の触媒を用いることが好ましい。
【0035】
(有機溶剤)
本実施形態の樹脂組成物は、有機溶剤をさらに含有することが好ましい。有機溶剤をさらに含有することで、樹脂組成物としての取り扱い性(ポリウレタン樹脂合成時の撹拌性、容器からの取出し易さなど)を良好なものとすることができる。有機溶剤としては、その沸点が50~100℃の有機溶剤を用いることが好ましく、酢酸エチル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、及び炭酸ジメチル等の有機溶剤が、作業性、加工性、及び低残留性等の観点から好ましい。樹脂組成物中の有機溶剤の含有量は、2質量%以上であることが好ましく、10~70質量%であることがさらに好ましい。
【0036】
(添加剤)
本実施形態の樹脂組成物には、各種の添加剤をさらに含有させることができる。添加剤としては、顔料、着色剤、充填剤、抗菌剤、分散剤、安定剤、紫外線吸収剤、カップリング剤、粘性調整剤、ブロッキング防止剤、消泡剤、レベリング剤、架橋剤、硬化剤、及び香料等を挙げることができる。
【0037】
<ポリウレタン系接着剤>
本発明の接着剤の一実施形態は、主剤及び硬化剤を含有するポリウレタン系接着剤であり、主剤が前述の樹脂組成物であり、硬化剤がポリイソシアネート(B)である。以下、本実施形態のポリウレタン系接着剤(以下、単に「接着剤」とも記す)の詳細について説明する。
【0038】
(ポリイソシアネート(B))
ポリイソシアネート(B)は、ポリウレタン系接着剤の硬化剤として機能する成分であり、主剤である前述の樹脂組成物とともに用いられる。水酸基を有するポリオール(A)と、この水酸基と化学的に反応するイソシアネート基を有するポリイソシアネート(B)とを混合すると、経時的な粘度上昇やゲル化等の現象が生じやすくなり、被接着層への塗工がやや困難になる場合がある。このため、本実施形態の接着剤は、樹脂組成物とポリイソシアネート(B)を混合する前の状態、すなわち、2成分(2液)の形態で貯蔵及び輸送等することが好ましい。そして、樹脂組成物にポリイソシアネート(B)を配合するタイミングは、接着剤を被接着層(基材)に塗工する直前が好ましい。
【0039】
本実施形態の接着剤は、樹脂組成物中のポリオール(A)の末端水酸基(OH基)に対する、ポリイソシアネート(B)の末端イソシアネート基(NCO基)の化学量論比(NCO基/OH基)が、2.0~50.0であり、好ましくは5.0~25.0、さらに好ましくは7.0~20.0である。
【0040】
ポリイソシアネート(B)としては、従来公知のポリイソシアネート化合物を用いることができる。具体的には、ポリウレタン原料や硬化剤として従来公知のポリイソシアネート、ポリイソシアネートのアダクト体、ポリイソシアネートのシアヌレート体、ポリイソシアネートのビウレット体、ポリメリック体、末端イソシアネート型のプレポリマー等を挙げることができる。
【0041】
(有機溶剤)
本実施形態の接着剤は、有機溶剤をさらに含有することが好ましい。有機溶剤をさらに含有させることで、フィルム状又はシート状の基材等の被接着層への塗工性を向上させることができる。有機溶剤としては、樹脂組成物に含有させることが可能な前述の有機溶剤と同様のものを挙げることができる。
【0042】
(添加剤)
本実施形態の接着剤には、各種の添加剤をさらに含有させることができる。添加剤としては、樹脂組成物に含有させることが可能な前述の添加剤と同様のものを挙げることができる。
【0043】
(接着剤の用途)
本実施形態の接着剤は、各種プラスチックフィルム、金属箔、金属蒸着フィルム、及び透明蒸着フィルム等の各種基材(被接着層)を接着するための材料として好適である。本実施形態の接着剤は、これらの各種基材を積層して相互に接着した積層体を製造するための材料として好適である。
【0044】
<積層体>
本発明の積層体の一実施形態は、2以上の被接着層と、これらの被接着層どうしの間に設けられる、前述のポリウレタン系接着剤で形成された接着層と、を備える。以下、本実施形態の積層体の詳細について説明する。
【0045】
(被接着層)
被接着層となる基材としては、樹脂製のフィルム、シート、及び発泡体;樹脂製のフィルム等の表面にポリ塩化ビニリデン等の各種ポリマーコート剤が塗布されたフィルム等;金属蒸着、シリカ蒸着、及びアルミナ蒸着等の無機質層が形成されたフィルム及びシート;アルミニウム箔及び銅箔等の金属層の他;織布、不織布、及び紙等を挙げることができる。樹脂製のフィルム等を構成する樹脂としては、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィンの他、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、これらのエチレン共重合体、ナイロン6等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル等を挙げることができる。これらの基材には、表面処理が施されていてもよい。
【0046】
(積層体の製造)
本実施形態の積層体は、前述の接着剤を用いること以外、従来公知の方法にしたがって製造することができる。まず、樹脂組成物にポリイソシアネート(B)や有機溶剤等を添加して塗工用に調製した接着剤を、被接着層(第1の基材)の表面に塗工した後、温風加熱式等の乾燥装置を使用して有機溶剤を除去して乾燥させる。次いで、他の被接着層(第2の基材)を貼り合わせた後、所定の条件下でエージングすることで、目的とする積層体を得ることができる。
【0047】
一般的には、ドライラミネーター装置を使用し、ロール状の第1の基材及び第2の基材を巻き出しながら、接着剤の塗工、乾燥、貼り合わせ、及び巻取りを連続的に実施することができる。接着剤を塗工する方式としては、例えば、グラビアロール塗工方式、リバースグラビアロール塗工方式、オフセットグラビアロール塗工方式、及びリバースロール塗工方式等を挙げることができる。
【0048】
エージングは、接着及び耐熱性等の必要な性能を発揮させるべく、適切な温度条件下で所定時間保持することで塗工した接着剤を硬化させる工程である。エージングの温度が高いほど、基材に対する接着剤の濡れ性が向上するとともに、接着剤の硬化反応速度が向上するので、時間を短縮することができる。但し、エージングの温度が高すぎると、消費エネルギーが増大するとともに、基材の種類によっては品質が劣化しやすくなることがある。このため、エージングの温度は60℃未満とすることが好ましく、35~45℃とすることがさらに好ましい。
【0049】
3層以上の基材を積層する場合には、上述の各工程を繰り返せばよい。なお、エージングについては、複数層分をまとめて実施してもよい。また、各層間ごとに異なる組成の接着剤を使用してもよいし、同一組成の接着剤を使用してもよい。複数の接着層を形成する場合、少なくとも1つの接着層を本実施形態のポリウレタン系接着剤で形成すればよい。
【0050】
本実施形態の積層体は、例えば、一般的な軟包装材料として使用することができる。また、本実施形態の積層体は、成形加工適性に優れているとともに、成形加工して得られる成形品(加工品)は耐熱性に優れている。このため、本実施形態の積層体は、深絞り成形加工や熱融着封函加工が施される、凹状に成形された成形加工部を有する包材(例えば、食品包装用途等の包材)を構成する材料として好適である。
【0051】
積層体を成形加工して得た成形加工体の耐熱性は、残留応力の集中する部分(例えば、ナイロン(NY)層が引き延ばされて凹状に成形された部分)が高温に暴露された際の「浮き」の発生しやすさによって評価することができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0053】
<ポリエステルポリオール(a)の合成>
(合成例1)
無水フタル酸252.2部(8モル)、アジピン酸62.2部(2モル)、1、6-ヘキサンジオール112.7部(4モル)、ネオペンチルグルコール74.5部(3モル)、及びエチレングリコール44.4部(3モル)をフラスコに仕込んだ。窒素気流下、撹拌しながら230℃で5時間加熱し、水を流出させながらエステル化反応させた。水の流出が止まった時点でテトラ-n-ブトキシチタン0.1部及びトフェニルホスファイト0.5部を仕込んだ。250℃に昇温するとともに、10Torrに減圧して縮合反応させて、末端水酸基(OH基)濃度1.0モル/kgであるポリエステルポリオール(a1)を得た。なお、末端OH基濃度は、無水酢酸ピリジン溶液によるアセチル基化反応で水酸基と反応した酢酸を定量することによって測定した。
【0054】
(合成例2~6、9~18)
表1-1及び1-2に示す配合としたこと以外は、前述のポリエステルポリオール(a1)の場合と同様にして、ポリエステルポリオール(a2)~(a6)、(a11)~(a20)を得た。得られたポリエステルポリオールの物性を表1-1及び1-2に示す。なお、表1-1及び1-2中の略号の意味を以下に示す。
・tPA:テレフタル酸
・iPA:イソフタル酸
・nPA:無水フタル酸
・AA:アジピン酸
・SA:セバシン酸
・16HD:1,6-ヘキサンジオール
・EG:エチレングリコール
・NPG:ネオペンチルグリコール
・DEG:ジエチレングリコール
・BoDC:ベンゼン-o-ジカルボン酸
・BmDC:ベンゼン-m-ジカルボン酸
・BDC:ベンゼンジカルボン酸
・EDA:その分子中にエーテル結合を介して結合した炭素数8以下のアルキレン基を2又は3個有するジアルコール
【0055】
(合成例7)
ポリエステルポリオール(a4)とポリエステルポリオール(a13)を、a4/a13=9/1(質量比)で混合した混合物を得た。得られた混合物中のポリエステルポリオールの物性(平均値)を表1-1に示す。
【0056】
(合成例8)
後述するポリウレタン樹脂(c4)とポリウレタン樹脂(c13)を、c4/c13=9/1(質量比)で混合した混合物を得た。得られた混合物中のポリエステルポリオールの物性(平均値)を表1-1に示す。
【0057】
【0058】
【0059】
<樹脂組成物の製造>
(実施例1)
ポリエステルポリオール(a1)150部、トリレンジイソシアネート(TDI)10.45部、メチルエチルケトン(MEK)40.11部、及びオクチル酸亜鉛0.075部をフラスコに仕込んだ。窒素気流下、80℃で7時間反応させた後、MEK 120.34部を添加して、ポリウレタン樹脂(c1)の溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂(c1)の溶液に、シランカップリング剤(商品名「KBM-403」、信越シリコーン社製)1.6部及びMEK 1.6部を添加して均一に混合し、樹脂組成物(R-1)を得た。
【0060】
(実施例2)
ポリエステルポリオール(a2)150部、TDI 3.48部、MEK 38.37部、及びオクチル酸亜鉛0.075部をフラスコに仕込んだ。窒素気流下、80℃で7時間反応させた後、MEK 115.11部を添加して、ポリウレタン樹脂(c2)の溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂(c2)の溶液に、シランカップリング剤(KBM-403)1.53部及びMEK 1.53部を添加して均一に混合し、樹脂組成物(R-2)を得た。
【0061】
(実施例3)
ポリエステルポリオール(a3)150部、TDI 6.97部、MEK 39.24部、及びオクチル酸亜鉛0.075部をフラスコに仕込んだ。窒素気流下、80℃で7時間反応させた後、MEK 117.71部を添加して、ポリウレタン樹脂(c3)の溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂(c3)の溶液に、シランカップリング剤(KBM-403)1.57部及びMEK 1.57部を添加して均一に混合し、樹脂組成物(R-3)を得た。
【0062】
(実施例4)
ポリエステルポリオール(a4)150部、TDI 6.97部、MEK 39.24部、オクチル酸亜鉛0.075部をフラスコに仕込んだ。窒素気流下、80℃で7時間反応させた後、MEK 117.7部を添加して、ポリウレタン樹脂(c4)の溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂(c4)の溶液に、シランカップリング剤(KBM-403)1.57部及びMEK 1.57部を添加して均一に混合し、樹脂組成物(R-4)を得た。
【0063】
(実施例5)
ポリエステルポリオール(a5)150部、イソホロンジイソシアネート(IPDI)6.67部、酢酸エチル(EA)39.16部、及びオクチル酸亜鉛0.075部をフラスコに仕込んだ。窒素気流下、80℃で7時間反応させた後、酢酸エチル(EA)117.50部を添加して、ポリウレタン樹脂(c5)の溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂(c5)の溶液に、シランカップリング剤(KBM-403)1.57部及びEA 1.57部を添加して均一に混合し、樹脂組成物(R-5)を得た。
【0064】
(実施例6)
ポリエステルポリオール(a6)150部、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)3.75部、酢酸メチル(MA)38.44部、及びオクチル酸亜鉛0.075部をフラスコに仕込んだ。窒素気流下、80℃で7時間反応させた後、酢酸メチル(MA)116.85部を添加して、ポリウレタン樹脂(c6)の溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂(c6)の溶液に、シランカップリング剤(KBM-403)1.54部及び炭酸ジメチル(DMC)1.54部を添加して均一に混合し、樹脂組成物(R-6)を得た。
【0065】
(実施例7)
ポリエステルポリオール(a4)135部、ポリエステルポリオール(a13)15部、1,3-ブタンジオール(13BD)0.23部、トリメチロールプロパン(TMP)0.22部、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)5.11部、トリレンジイソシアネート(TDI)2.85部、EA 39.58部、及びオクチル酸亜鉛0.075部をフラスコに仕込んだ。窒素気流下、80℃で7時間反応させた後、トルエン(TOL)120.32部を添加して、ポリウレタン樹脂(c7)の溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂(c7)の溶液に、シランカップリング剤(KBM-403)1.57部及びTOL 1.57部を添加して均一に混合し、樹脂組成物(R-7)を得た。
【0066】
(実施例8)
ポリウレタン樹脂(c4)の溶液135部と、ポリウレタン樹脂(c13)の溶液15部と、シランカップリング剤(KBM-403)0.75部及びMEK 0.75部を、均一に混合して、樹脂組成物(R-8)を得た。
【0067】
(実施例9)
ポリウレタン樹脂(c4)の溶液88部に、エポキシ樹脂(商品名「jER1004」、三菱ケミカル社製)5.28部、シランカップリング剤(KBM-403)0.49部及びMEK 5.77部を添加して均一に混合し、樹脂組成物(R-9)を得た。
【0068】
(比較例1)
ポリエステルポリオール(a11)150部、TDI 6.97部、MEK 39.24部、及びオクチル酸亜鉛0.075部をフラスコに仕込んだ。窒素気流下、80℃で7時間反応させた後、MEK 117.73部を添加して、ポリウレタン樹脂(c11)の溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂(c11)の溶液に、シランカップリング剤(KBM-403)1.57部及びMEK 1.57部を添加して均一に混合し、樹脂組成物(R-11)を得た。
【0069】
(比較例2)
ポリエステルポリオール(a12)150部、TDI 4.18部、MEK 38.55部、及びオクチル酸亜鉛0.075部をフラスコに仕込んだ。窒素気流下、80℃で7時間反応させた後、MEK 115.64部を添加して、ポリウレタン樹脂(c12)の溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂(c12)の溶液に、シランカップリング剤(KBM-403)1.54部及びMEK 1.54部を添加して均一に混合し、樹脂組成物(R-12)を得た。
【0070】
(比較例3)
ポリエステルポリオール(a13)150部、TDI 6.97部、MEK 39.24部、及びオクチル酸亜鉛0.075部をフラスコに仕込んだ。窒素気流下、80℃で7時間反応させた後、MEK 117.73部を添加して、ポリウレタン樹脂(c13)の溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂(c13)の溶液に、シランカップリング剤(KBM-403)1.57部及びMEK 1.57部を添加して均一に混合し、樹脂組成物(R-13)を得た。
【0071】
(比較例4)
ポリエステルポリオール(a14)150部、TDI 6.97部、MEK 39.24部、及びオクチル酸亜鉛0.075部をフラスコに仕込んだ。窒素気流下、80℃で7時間反応させた後、MEK 117.73部を添加して、ポリウレタン樹脂(c14)の溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂(c14)の溶液に、シランカップリング剤(KBM-403)1.57部及びMEK 1.57部を添加して均一に混合し、樹脂組成物(R-14)を得た。
【0072】
(比較例5)
ポリエステルポリオール(a15)150部、TDI 23.23部、MEK 43.31部、及びオクチル酸亜鉛0.075部をフラスコに仕込んだ。窒素気流下、80℃で7時間反応させた後、MEK 129.92部を添加して、ポリウレタン樹脂(c15)の溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂(c15)の溶液に、シランカップリング剤(KBM-403)1.73部及びMEK 1.73部を添加して均一に混合し、樹脂組成物(R-15)を得た。
【0073】
(比較例6)
ポリエステルポリオール(a16)150部、TDI 1.74部、MEK 37.94部、及びオクチル酸亜鉛0.075部をフラスコに仕込んだ。窒素気流下、80℃で7時間反応させた後、MEK 113.81部を添加して、ポリウレタン樹脂(c16)の溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂(c16)の溶液に、シランカップリング剤(KBM-403)1.52部及びMEK 1.52部を添加して均一に混合し、樹脂組成物(R-16)を得た。
【0074】
(比較例7)
ポリエステルポリオール(a17)150部、TDI 6.97部、MEK 39.24部、及びオクチル酸亜鉛0.075部をフラスコに入れて反応させたが、均一な溶液とらず、ポリウレタン樹脂(c17)の溶液を得ることができなかった。
【0075】
(比較例8)
ポリエステルポリオール(a18)50部に、シランカップリング剤(KBM-403)0.5部及びMEK50.5部を添加して均一に混合し、樹脂組成物(R-18)を得た。
【0076】
(比較例9)
ポリエステルポリオール(a18)1053部、HDI73.4部をフラスコに仕込んだ。窒素気流下、75℃で8時間反応させた後、MEK1126.4部を添加して、ポリウレタン樹脂(c18)の溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂(c18)の溶液に、シランカップリング剤(KBM-403)1.13部及びMEK1.13部を添加して均一に混合し、樹脂組成物(R-19)を得た。
【0077】
(比較例10)
合成例18で得たポリエステルポリオール(a20)500部、TDI56部、及び酢酸エチル(EA)257部をフラスコに仕込んだ。窒素気流下、80℃で5時間反応させて、ポリエステルポリオールの両末端にTDIが付加した末端ジイソシアネートプレポリマーを得た。別のフラスコにトリメチロールプロパン(TMP)43.1部及びEA713部を入れ、均一に溶解後、上記の末端ジイソシアネートプレポリマー741.3部を撹拌しながら仕込み、窒素気流下、80℃で5時間撹拌反応させて、末端ジイソシアネートプレポリマーの両末端のイソシアネート基1モル当たりに、TMP 1モルを完全に付加反応させた。この結果、3官能以上のヒドロキシ基を有するポリウレタン樹脂(c19)の溶液を得た。
【0078】
ポリエステルポリオール(a19)40部に酢酸エチル(EA) 60部を加えて均一に混合した後、さらにポリウレタン樹脂(c19)の溶液25部、及びシランカップリング剤(KBM-403)0.525部を均一に混合して、樹脂組成物(R-20)を得た。
【0079】
製造したポリウレタン樹脂(c)の詳細を表2-1及び2-2に示す。また、製造した樹脂組成物の詳細を表3-1及び3-2に示す。
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
<接着剤の製造>
(実施例10~19、比較例11~21)
表4-1及び4-2に示す各成分を混合して、接着剤U1~U21を得た。表4-1及び4-2中の略号の意味を以下に示す。
・D-103:イソシアネート系硬化剤(商品名「タケネートD-103」、三井化学社製、ポリイソシアネート)
・HL:イソシアネート系硬化剤(商品名「コロネートHL」、東ソー社製、ポリイソシアネート)
・TPA-100:イソシアネート系硬化剤(商品名「デュラネートTPA-100」、旭化成ケミカルズ社製、ポリイソシアネート)
・D-165N:イソシアネート系硬化剤(商品名「タケネートD-165N」、三井化学社製、ポリイソシアネート)
・HX:イソシアネート系硬化剤(商品名「コロネートHX」、東ソー社製、ポリイソシアネート)
・D-165N/HX:上記D-165NとHXの質量比1/1混合物
【0085】
【0086】
【0087】
<積層体の製造>
(実施例20~29、比較例22~32)
バーコーター#12を用いて接着剤を一方の基材に塗工した後、80℃の温風乾燥炉で乾燥させた。乾燥させた接着剤上に他方の基材を載置してロール圧着した。その後、40℃で5日間エージングして、積層体(L1)~(L21)を得た。用いた基材を以下に示す。
・NY♯15:ナイロンフィルム、商品名「エンブレムON」、ユニチカ社製、厚さ15μm
・NY♯25:ナイロンフィルム、商品名「エンブレムON」、ユニチカ社製、厚さ25μm
・RCPP♯60:無延伸ポリプロピレンフィルム、商品名「パイレンフィルム-CT P1146」、東洋紡社製、厚さ60μm
・AL♯100:アルミニウム箔、商品名「素箔 A1N30」、UACJ社製、厚さ100μm
【0088】
<評価>
(熱封函)
積層体(NY♯15/RCPP♯60)のRCPP層どうしを密着させ、NY層から200℃の熱板で1秒間圧着して熱封函し、包材を製造した。
【0089】
(レトルト試験)
製造した包材にマヨネーズを入れて密封し、120℃で30分間加熱するレトルト試験を行った。
【0090】
(積層体の外観)
製造した積層体を目視にて観察し、以下に示す評価基準にしたがって積層体の外観を評価した。結果を表5-1及び5-2に示す。
◎:非常に良好
○:良好(若干の透明度や輝度の低下あり)
△:小さな浮きあり
×:大きな浮きや剥離あり
【0091】
(剥離強度・封函強度の測定)
製造した積層体から、幅15mmの短冊状の試験片を切り出した。切り出した試験片を使用し、チャック間速度300mm/minの条件でT字剥離して剥離強度(N/15mm)を測定した。同様に、熱封函部より幅15mmの短冊状の試験片を切り出し、封函強度(N/15mm)を測定した。結果を表5-1及び5-2に示す。なお、表5-1及び5-2中、「fa」はNY層と接着層の界面で剥離したことを意味し、「aa」は接着層が(凝集)剥離したことを意味する。
【0092】
(成形性)
製造した積層体(NY♯25/AL♯100)から、直径6cmの試験片を切り出した。ポンチ(直径:30mm、肩部のr:1mm)を装着した深絞り試験機を使用し、試験片のNY層側を内側とする深絞り成形を行って深さ5mmの凹部が形成された成形体を得た。得られた成形体を目視にて観察し、以下に示す評価基準にしたがって成形性を評価した。結果を表5-1及び5-2に示す。
○:良好
×:浮きや剥離あり
【0093】
(成形後耐熱性)
上記の「成形性」の評価で作製した成形体を120℃、160℃、及び200℃に設定した恒温槽内にそれぞれ1時間静置した。恒温槽から取り出した成形体の凹部内面側における底面と側面との接続部を目視にて観察し、以下に示す評価基準にしたがって成形後耐熱性を評価した。結果を表5-1及び5-2に示す。
○:浮きの発生なし
△:長径0.5mm未満の浮きが発生
×:長径0.5mm以上の浮きや剥離が発生
【0094】
【0095】
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の樹脂組成物は、例えば、深絞り成形加工や熱融着封函加工が施される食品包装用途等の包材を構成する積層体を製造するための材料として有用である。
【要約】
【課題】接着性及び耐熱性に優れた接着層を形成しうるとともに、深絞り成形等の成形加工によっても浮きや剥離等の不具合が生じにくく、外観の良好な積層体を製造することが可能な、樹脂や金属等の基材に対する濡れ性に優れたポリウレタン系接着剤の主剤として有用な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】接着剤の主剤として硬化剤とともに用いられるポリウレタン系接着剤用の樹脂組成物である。ポリエステルポリオール(a)を含むポリオールに由来する構成単位を有するポリウレタン樹脂(c)を80質量%以上含むポリオール(A)を含有し、ポリエステルポリオール(a)が、ベンゼン-o-ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分に由来する構成単位を有し、ポリエステルポリオール(a)の末端水酸基含有量が、0.1~2モル/kgであり、ポリウレタン樹脂(c)の末端水酸基の含有量が、0.04~0.4モル/kgである。
【選択図】なし