(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】経肛門手術具導入装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/94 20060101AFI20230410BHJP
【FI】
A61B17/94
(21)【出願番号】P 2019048880
(22)【出願日】2019-03-15
【審査請求日】2022-02-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業」「先端医療機器の開発/高い安全性と更なる低侵襲化及び高難度治療を可能にする軟性内視鏡手術システムの研究開発」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(73)【特許権者】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 則仁
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 卓也
(72)【発明者】
【氏名】日村 義彦
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-325301(JP,A)
【文献】特表2013-541359(JP,A)
【文献】国際公開第2017/119108(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/094608(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0020884(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術具を直腸内に導入するためのインナーチューブが内側に取り付けられるアウターチューブと、
可撓性の筒状開口部材、並びに該筒状開口部材の両側の開口部に固定されて肛門部の内側及び外側にそれぞれ配置される内側環状部材及び外側環状部材を有し、該肛門部に装着されて該肛門部を開口状態に保持する開口器と、
可撓性の筒状延長部材、並びに該筒状延長部材の両側の開口部にそれぞれ固定された近位側環状部材及び遠位側環状部材を有する開口延長部と、
前記外側環状部材と前記近位側環状部材とを連結して前記開口器と前記開口延長部とを気密に接合する接合部と、
前記遠位側環状部材に取り付けられて前記アウターチューブを該開口延長部に気密に接続するリデューサと
、
前記内側環状部材及び前記筒状開口部材と、前記肛門部の内壁との間の気密を保持する環状パッキンとを備え、
前記環状パッキンは、前記内側環状部材の内径より大きくて外径より小さい外径を有し、前記肛門部の内側に配置された該内側環状部材と直接に又は該筒状開口部材を挟んで接した状態で、該筒状開口部材の外側に配置されることを特徴とする経肛門手術具導入装置。
【請求項2】
前記筒状延長部材は、前記近位側環状部材又は前記遠位側環状部材により巻取り可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載の経肛門手術具導入装置。
【請求項3】
手術具を直腸内に導入するためのインナーチューブが内側に取り付けられるアウターチューブと、
可撓性の筒状開口部材、並びに該筒状開口部材の両側の開口部に固定されて肛門部の内側及び外側にそれぞれ配置される内側環状部材及び外側環状部材を有し、該肛門部に装着されて該肛門部を開口状態に保持する開口器と、
可撓性の筒状延長部材、並びに該筒状延長部材の両側の開口部にそれぞれ固定された近位側環状部材及び遠位側環状部材を有する開口延長部と、
前記外側環状部材と前記近位側環状部材とを連結して前記開口器と前記開口延長部とを気密に接合する接合部と、
前記遠位側環状部材に取り付けられて前記アウターチューブを該開口延長部に気密に接続するリデューサとを備え、
前記筒状延長部材は、前記近位側環状部材又は前記遠位側環状部材により巻取り可能に構成され、
前記接合部は、前記筒状開口部材を適宜巻き取った状態の前記外側環状部材を内側から嵌合させて固定するための内側に開放した環状溝を近位側に備え、かつ、前記筒状延長部材に固定され又は前記筒状延長部材を適宜巻き取った状態の前記近位側環状部材を内側から嵌合させて固定するための内側に開放した環状溝を遠位側に備え、該外側環状部材が該近位側の環状溝に固定され、かつ該近位側環状部材が該遠位側の環状溝に固定されることにより、該開口器と該開口延長部とを気密に接合するものであることを特徴とする経肛門手術具導入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡や鉗子等の手術具を肛門を経て直腸内に導入するための経肛門手術具導入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インナーチューブを取り付けたアウターチューブを、開創部に設けた開創器を経て腹腔内に臨ませ、内視鏡や鉗子をインナーチューブに挿入して腹腔内に導入し、手術(腹腔鏡手術)を行うための内視鏡治療装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の内視鏡治療装置では、アウターチューブは、開創器に取り付けられたバルブキャップの開口部に挿入することによって、先端側が体腔内に導入される。したがって、体腔内を気密に維持するために、アウターチューブと開創器との間の気密性がバルブキャップによって維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の内視鏡治療装置によって直腸手術を行う場合には、鉗子等の処置具による処置領域を確保するために、アウターチューブを肛門よりも体外側に配置する必要がある。このため、アウターチューブと開創器との間の気密性を確保することができない。このため、直腸内の手術領域を確保するための気腹を十分に行うことができない。
【0005】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、アウターチューブを肛門部よりも体外側に配置した場合でも十分に気腹を行ってその気密性を確保できる経肛門手術具導入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の経肛門手術具導入装置は、
手術具を直腸内に導入するためのインナーチューブが内側に取り付けられるアウターチューブと、
可撓性の筒状開口部材、並びに該筒状開口部材の両側の開口部に固定されて肛門部の内側及び外側にそれぞれ配置される内側環状部材及び外側環状部材を有し、該肛門部に装着されて該肛門部を開口状態に保持する開口器と、
可撓性の筒状延長部材、並びに該筒状延長部材の両側の開口部にそれぞれ固定された近位側環状部材及び遠位側環状部材を有する開口延長部と、
前記外側環状部材と前記近位側環状部材とを連結して前記開口器と前記開口延長部とを気密に接合する接合部と、
前記遠位側環状部材に取り付けられて前記アウターチューブを該開口延長部に気密に接続するリデューサと、
前記内側環状部材及び前記筒状開口部材と、前記肛門部の内壁との間の気密を保持する環状パッキンをと備え、
前記環状パッキンは、前記内側環状部材の内径より大きくて外径より小さい外径を有し、前記肛門部の内側に配置された該内側環状部材と直接に又は該筒状開口部材を挟んで接した状態で、該筒状開口部材の外側に配置されることを特徴とする。
【0007】
この構成において、直腸手術に際しては、肛門部に装着された開口器に接合された開口延長部にリデューサを介してアウターチューブが接続された状態で、アウターチューブに取り付けられたインナーチューブを経て手術具の先端部が直腸内に導入される。
【0008】
このとき、アウターチューブは、開口延長部に接続しているので、肛門部よりも体外側(遠位側)に位置する。また、開口延長部の遠位側環状部材とアウターチューブとの間は、リデューサにより気密に保持される。また、開口延長部と開口器との間は、接合部によって気密接合される。したがって、アウターチューブを肛門よりも体外側に配置した場合でも十分に気腹を行ってその気密性を確保することができる。
【0009】
したがって、インナーチューブの先端部から突出する手術具の先端部を、直腸手術に適した位置に配置しつつ、直腸内の気腹を十分に行って直腸内の手術領域を確保することができる。また、開口延長部の筒状延長部材は可撓性を有するので、肛門部からのアウターチューブの距離を、気腹の気密性を維持しながら任意に調整し、手術具の先端部の位置を自在に選択することができる。
また、気腹の気密性を維持した状態で開口器の周方向の位置を変更し、適切な手術を行うことができる。
【0010】
本発明において、前記筒状延長部材は、前記近位側環状部材又は前記遠位側環状部材により巻取り可能に構成されるのが好ましい。
【0011】
これによれば、手術部位に応じて筒状延長部材を適量だけ巻き取ることにより、筒状延長部材の弛みを解消し、より適切な手術を行うことができる。
【0012】
本発明の別の経肛門手術具導入装置は、手術具を直腸内に導入するためのインナーチューブが内側に取り付けられるアウターチューブと、
可撓性の筒状開口部材、並びに該筒状開口部材の両側の開口部に固定されて肛門部の内側及び外側にそれぞれ配置される内側環状部材及び外側環状部材を有し、該肛門部に装着されて該肛門部を開口状態に保持する開口器と、
可撓性の筒状延長部材、並びに該筒状延長部材の両側の開口部にそれぞれ固定された近位側環状部材及び遠位側環状部材を有する開口延長部と、
前記外側環状部材と前記近位側環状部材とを連結して前記開口器と前記開口延長部とを気密に接合する接合部と、
前記遠位側環状部材に取り付けられて前記アウターチューブを該開口延長部に気密に接続するリデューサとを備え、
前記筒状延長部材は、前記近位側環状部材又は前記遠位側環状部材により巻取り可能に構成され、
前記接合部は、前記筒状開口部材を適宜巻き取った状態の前記外側環状部材を内側から嵌合させて固定するための内側に開放した環状溝を近位側に備え、かつ、前記筒状延長部材に固定され又は前記筒状延長部材を適宜巻き取った状態の前記近位側環状部材を内側から嵌合させて固定するための内側に開放した環状溝を遠位側に備え、該外側環状部材が該近位側の環状溝に固定され、かつ該近位側環状部材が該遠位側の環状溝に固定されることにより、該開口器と該開口延長部とを気密に接合するものであることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る経肛門手術具導入装置を備える内視鏡治療装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1及び
図2は、本発明の一実施形態に係る経肛門手術具導入装置1を適用した内視鏡治療装置2を示す。
図1及び
図2に示すように、経肛門手術具導入装置1は、肛門部3に取り付けられる開口器4と、開口器4に対して接合部5を介して気密に接合される開口延長部6と、開口延長部6に接続されるアウターチューブ7と、開口延長部6に設けられるリデューサ8とを備える。
【0016】
アウターチューブ7には、手術具を直腸9内に導入するためのインナーチューブ10が内側に取り付けられる。この取付けは、インナーチューブ10の先端部が、アウターチューブ7の先端から突出するように行われる。
【0017】
また、この取付けに当たって、アウターチューブ7に対するインナーチューブ10の中心軸線に沿った方向の位置や、中心軸線周りの回転角度は調整し得るようになっている。また、インナーチューブ10の径や数は、手技に必要な手術具に応じて任意に選択することができる。手術具としては、内視鏡や鉗子が該当する。
【0018】
アウターチューブ7に対するインナーチューブ10の取付けは、例えば、アウターチューブ7の内側にその長さ方向に沿って設けられた複数の断面がT字状の案内溝にインナーチューブ10の側面に設けられた断面がT字状の被案内部を嵌合させることにより行うことができる。
【0019】
この場合、インナーチューブ10を取り付ける案内溝を選択することにより、該インナーチューブ10の中心軸線周りの回転角度やアウターチューブ7に対するその周方向の取付け位置をある程度調整することができる。このような、取付けを実現する手段は、例えば、国際公開WO2017/119108号公報に開示されている。
【0020】
インナーチューブ10は、可撓性を有する筒状体であり、鉗子11、メス等の処置具や内視鏡12を内部に挿入して通すことが可能となっている。
【0021】
アウターチューブ7の遠位端には、インナーチューブ10をアウターチューブ7に取り付ける際に、外部に対する気密性を保持するためのリデューサ13が設けられる。リデューサ13には、インナーチューブ10をアウターチューブ7内に、外部との気密性を維持しつつ挿入するための複数の開口が設けられたバルブシートが張られている。
【0022】
開口器4は、可撓性の筒状開口部材14、並びに筒状開口部材14の両側の開口部に固定されて肛門部3の内側及び外側にそれぞれ配置される内側環状部材15及び外側環状部材16を有し、肛門部3に装着されて肛門部3を開口状態に保持する。筒状開口部材14の遠位端側は、肛門部3に対して開口器4が確実に装着されるように、外側環状部材16によってある程度巻取りが可能となっている。
【0023】
開口延長部6は、可撓性の筒状延長部材17、並びに筒状延長部材17の両側の開口部にそれぞれ固定された近位側環状部材18及び遠位側環状部材19を有する。筒状延長部材17は、近位側環状部材18又は遠位側環状部材19により、あるいはその双方により巻取り可能となっている。
【0024】
接合部5は、外側環状部材16と近位側環状部材18とを連結して開口器4と開口延長部6とを接合する。
【0025】
開口延長部6のリデューサ8は、遠位側環状部材19に設けられ、アウターチューブ7を、その近位側の開口部が開口器4内に位置するようにして開口器4に気密に接続する。この接続を実現するために、リデューサ8は、環状枠20と、環状枠20の遠位側に張られたバルブシート21とを備える。
【0026】
環状枠20の近位側の内側には、筒状延長部材17が固定され又は筒状延長部材17を適宜巻き取った状態の遠位側環状部材19を内側から嵌合させて固定するための内側に開放した環状溝22を備える。バルブシート21の中央部には、アウターチューブ7を挿入して開口器4に気密に接続するための挿入開口23が設けられる。
【0027】
接合部5は、筒状開口部材14を適宜巻き取った状態の外側環状部材16を内側から嵌合させて固定するための内側に開放した環状溝24を近位側に備える。また、接合部5は、筒状延長部材17が固定され又は筒状延長部材17を適宜巻き取った状態の近位側環状部材18を内側から嵌合させて固定するための内側に開放した環状溝25を遠位側に備える。すなわち、外側環状部材16を環状溝24に固定し、近位側環状部材18を環状溝25に固定することにより、開口器4と開口延長部6とが気密に接合されるようになっている。
【0028】
また、経肛門手術具導入装置1は、内側環状部材15及び筒状開口部材14と、肛門部3の内壁との間の気密を保持する環状パッキン26を備える。環状パッキン26は、内側環状部材15の内径より大きくて外径より小さい外径を有し、肛門部3の内側に配置された内側環状部材15と直接に又は筒状開口部材14を挟んで接した状態で、筒状開口部材14の外側に配置される。
【0029】
インナーチューブ10は、チューブ本体27と、その先端側に接続された屈曲可能な首振りパイプ28とを備える。首振りパイプ28の先端には、ノーズカバー29が取り付けられる。首振りパイプ28は、薄肉のリング状部材を多関節状に連結し、任意の一方向にのみ屈曲可能な可撓性を備えたパイプであり、例えばステンレス管の加工品として構成され、伸直状態から一方向にのみ曲がる屈曲機構として構成することができる。
【0030】
また、首振りパイプ28は、可撓性を有する軟質材からなるパイプや、ABSやポリカーボネート等の硬質プラスチック材からなるリングを連結することで、構成することもできる。
【0031】
ノーズカバー29は、首振りパイプ28と同様、或いはこれより軟質のプラスチック、例えば塩化ビニル等の軟性プラスチック、ゴム等からなる。ノーズカバー29は軟質材からなるので、直腸の内壁と接触しても該内壁に損傷を与えることがない。
【0032】
インナーチューブ10の基端部には、スライドパイプ30、スライドノブ31、32、及び脱気防止弁33が取り付けられる。
【0033】
インナーチューブ10には、ワイヤ部材34、35が先端側から基端側にかけて取り付けられている。具体的には、ワイヤ部材34、35は、先端部がノーズカバー29に固定され、首振りパイプ28の外側を通過し、チューブ本体27に軸方向に沿って埋設され、インナーチューブ10の基端部よりも後方に延びて、基端部がスライドノブ31、32にそれぞれ固定される。
【0034】
スライドノブ31、32は、スライドパイプ30に対して摺動自在に構成される。このため、インナーチューブ10の先端部がアウターチューブ7の先端から突出しているときに、スライドノブ31を基端側に牽引することによって首振りパイプ28を、アウターチューブ7の径方向外側に屈曲させることができる。逆に、スライドノブ32を基端側に牽引することによって首振りパイプ28を、屈曲していない直線状に戻すことができる。
【0035】
脱気防止弁33は、バルブコネクタ36を介してスライドパイプ30に接続され、内視鏡12や鉗子11等の手術具が挿入されていないインナーチューブ10から空気漏れが生じることを防ぐ機能を有する。
【0036】
スライドノブ31には、ストッパリング37が回動し得るように設けられる。ストッパリング37は、スライドパイプ30の径方向外方に立てられた回動位置と、倒された回動位置との間で回動し得るようになっている。スライドノブ31を基端側に牽引した状態で、ストッパリング37を倒してバルブコネクタ36に掛けることにより、該牽引状態が固定される。
【0037】
内視鏡12及び鉗子11は、先端部に屈曲可能な屈曲部38、39と、基端部に屈曲部38、39を屈曲させる操作をする駆動部40をそれぞれ有する。駆動部40は、モータ41と、駆動側プーリ42と、ワイヤ43と、従動側プーリ44とを備える。
【0038】
モータ41のモータ軸は、駆動側プーリ42に接続され、駆動側プーリ42にはワイヤ43の一端部が架け渡される。ワイヤ43は、内視鏡12及び鉗子11の内部をそれぞれ軸方向に沿って移動可能に収容され、他端部が従動側プーリ44に架け渡される。すなわち、モータ41を回転させると、駆動側プーリ42が回転し、ワイヤ43が移動し、従動側プーリ44が回転し、屈曲部38、39が屈曲するようになっている。
【0039】
これにより、内視鏡12の先端に備えられたカメラ45と鉗子11の先端部を径方向内側に屈曲させて、被処置部46に対向させることができる。なお、モータ41のオン・オフ操作は、手動式又は機械制御式のいずれであってもよい。また、ワイヤ43の移動を、手動で行うようにしてもよい。
【0040】
また、屈曲部38、39を屈曲した形状に形成し、弾性変形させて直線状に屈曲可能に構成することもできる。つまり、内視鏡12又は鉗子11を、屈曲部38、39を曲がっている状態から直線状に伸ばした状態でインナーチューブ10に挿入し、内視鏡12又は鉗子11を前進させて、屈曲部38、39をインナーチューブ10のノーズカバー29から突出させたとき、屈曲部38、39がもとの屈曲した状態に戻るように構成する。これにより、駆動部40を設けることなく、屈曲部38、39を径方向内側に屈曲させることができる。
【0041】
この構成において、内視鏡治療装置2を使用する際には、まず、開口器4を環状パッキン26とともに肛門部3に装着する。このとき、筒状開口部材14の遠位端側は、肛門部3に対して開口器4が確実に装着されるように、外側環状部材16によって適切に巻き取られる。
【0042】
次に、接合部5を開口器4の外側環状部材16に装着し、接合部5に開口延長部6の近位側環状部材18を装着することにより、開口器4に開口延長部6を接続する。そして、開口延長部6の遠位側環状部材19にリデューサ8を取り付ける。
【0043】
次に、アウターチューブ7にインナーチューブ10を挿入して取り付ける。本実施形態では、
図1に示すように、周方向に60度ずつ離れて、内視鏡12が上方、2つの鉗子11のそれぞれが左右方向に配置されるように取り付けられる。なお、この時点では、インナーチューブ10は、アウターチューブ7の先端から突出せず埋没した状態となっている。
【0044】
次に、内視鏡12及び鉗子11をインナーチューブ10にそれぞれ挿入する。このとき、内視鏡12及び鉗子11は、インナーチューブ10の先端から突出せず埋没した状態となっている。
【0045】
次に、インナーチューブ10を前進させ、アウターチューブ7の先端から突出させ、スライドノブ31を牽引することによって、首振りパイプ28をアウターチューブ7の径方向外側に屈曲させる。次に、アウターチューブ7を、リデューサ8を介して、体腔内に挿入する。
【0046】
次に、内視鏡12を前進させ、インナーチューブ10の先端から突出させる。そして、内視鏡用操作部を操作することによって、内視鏡12を屈曲部38で径方向内側に屈曲させて、被処置部46に向ける。
【0047】
さらに、鉗子11を前進させ、インナーチューブ10の先端から突出させ、内視鏡12により観察しながら、処置具用操作部を操作することによって、鉗子11を屈曲部39で径方向内側に屈曲させて、被処置部46に近づける。これにより、準備が完了し、手技を行うことができる。
【0048】
本実施形態によれば、直腸9の手術に際しては、最初に開口器4を肛門部3に装着して筒状開口部材14を巻き取ることにより、肛門部3に対して開口器4を確実に装着するようにしているので、種々のサイズの肛門部3に適切に対応することができる。
【0049】
したがって、肛門部3の開口部に固定される従来の固定具(開口器4に対応)の場合、肛門部3との気密性は、肛門部3自体の展開反力に依存しており、種々のサイズの固定具を用意する必要があるのに対し、本実施形態によれば、開口器4のサイズのバリエーションは少なくて済む。
【0050】
また、従来の固定具は、肛門部3の内径における固定具自体の占有空間が、弾性シート状の筒状開口部材14を有する本実施形態の開口器4に比べて大きい。その分、本実施形態によれば、肛門付近の処置器具の可動範囲を、従来の固定具の場合よりも広くとることができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、直腸9の手術に際しては、肛門部3に装着された開口器4に接合された開口延長部6にアウターチューブ7が取り付けられた状態で、インナーチューブ10を経て内視鏡12及び鉗子11の先端部が直腸9内に導入される。このとき、アウターチューブ7は、開口延長部6内で開口しているので、開口器4に直接接続する場合に比べて、肛門部3よりも体外側(遠位側)に位置する。
【0052】
したがって、インナーチューブ10の先端部から突出する内視鏡12及び鉗子11の先端部を被処置部46の処置に適した位置に配置しつつ、直腸9内の気腹を十分に行って直腸9内の手術領域を確保することができる。また、開口延長部6の筒状延長部材17は可撓性を有するので、肛門部3からのアウターチューブ7の距離を、気腹の気密性を維持しながら任意に調整し、内視鏡12及び鉗子11の先端部の位置を自在に選択することができる。
【0053】
また、筒状延長部材17は、近位側環状部材18又は遠位側環状部材19により巻取り可能に構成されるので、被処置部46の位置に応じて筒状延長部材17を適量だけ巻き取ることにより、筒状延長部材17の弛みを解消し、より適切な手術を行うことができる。
【0054】
また、内側環状部材15及び筒状開口部材14と、肛門部3の内壁との間の気密を保持する環状パッキン26を備えるので、気腹による気密を維持した状態で開口器4の周方向の位置を変更し、適切な手術を行うことができる。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、直腸9の手術に際して、最初に開口器4のみを肛門部3に装着してから、これに接合部5を介して開口延長部6を接続することに代えて、予め開口延長部6が接合された開口器4を、環状パッキン26とともに肛門部3に装着するようにしてもよい。この手順は、開口器4に代えて上述の従来の固定具を用いる場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…経肛門手術具導入装置、2…内視鏡治療装置、3…肛門部、4…開口器、5…接合部、6…開口延長部、7…アウターチューブ、8…リデューサ、9…直腸、10…インナーチューブ、11…鉗子、12…内視鏡、13…リデューサ、14…筒状開口部材、15…内側環状部材、16…外側環状部材、17…筒状延長部材、18…近位側環状部材、19…遠位側環状部材、20…環状枠、21…バルブシート、22…環状溝、23…挿入開口、24、25…環状溝、26…環状パッキン、27…チューブ本体、28…首振りパイプ、29…ノーズカバー、30…スライドパイプ、31、32…スライドノブ、33…脱気防止弁、34、35…ワイヤ部材、36…バルブコネクタ、37…ストッパリング、38、39…屈曲部、40…駆動部、41…モータ、42…駆動側プーリ、43…ワイヤ、44…従動側プーリ、45…カメラ、46…被処置部。