(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】排水装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/308 20060101AFI20230410BHJP
F04B 49/24 20060101ALI20230410BHJP
E03C 1/122 20060101ALN20230410BHJP
【FI】
E03C1/308
F04B49/24
E03C1/122 Z
(21)【出願番号】P 2018223707
(22)【出願日】2018-11-29
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
(73)【特許権者】
【識別番号】511155534
【氏名又は名称】芝工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591133701
【氏名又は名称】株式会社ジエス
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】古賀 誉章
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼津 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 慈朗
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-293036(JP,A)
【文献】特開平05-302353(JP,A)
【文献】特開2001-123516(JP,A)
【文献】特開平11-148456(JP,A)
【文献】特開2002-227281(JP,A)
【文献】中国実用新案第203728567(CN,U)
【文献】中国実用新案第2928982(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/33
E03F 3/00-3/06
F04B 49/00-51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水貯留部に貯留された液体を
、負圧を利用して排水する排水装置であって、
下部タンクと、
前記下部タンクよりも上方に設けられ、開閉弁を介して前記下部タンクの内部空間との連通を開閉可能に連結された上部タンクと、
前記上部タンクに接続される真空ポンプと、を備え、
前記上部タンクは、
前記真空ポンプの駆動を制御する圧力スイッチと、
前記排水貯留部から延長する配管が接続される排水管接続部とを備え、
前記下部タンクは、
内部空間に貯留された排水の水位を検出する水位センサと、
内部空間に貯留された排水を排出する排水弁と、
内部空間を外部空間に連通可能とする大気開放弁とを備え
、
前記開閉弁及び前記排水弁が、電気的な信号に基づいて弁を開閉可能に構成され、
前記開閉弁及び前記排水弁と電気的に接続され、前記開閉弁及び前記排水弁の開閉を制御する制御盤をさらに備え、
前記制御盤は、
前記下部タンクに貯留された排水を排出するときに、前記開閉弁を閉じた後に前記排水弁及び前記大気開放弁を開き、
前記下部タンクに貯留された排水を排出した後に、前記排水弁及び前記大気開放弁を閉じた後に前記開閉弁を開くことを特徴とする排水装置。
【請求項2】
前記上部タンクの容積を、前記下部タンクの容積よりも大きくした請求項1記載の排水装置。
【請求項3】
前記上部タンク及び前記下部タンクにおける空気のみが流通するように前記上部タンク及び前記下部タンクを接続するバイパス管と、
前記制御盤と電気的に接続され、制御盤から入力される信号に基づいて弁を開閉することにより前記バイパス管における空気の流通を制御するバイパス弁とをさらに備え、
前記制御盤は、
前記下部タンクに貯留された排水を排出するときに、前記開閉弁と前記バイパス弁とを閉じ、
前記下部タンクに貯留された排水を排出した後に、前記排水弁を閉じた後に前記開閉弁と前記バイパス弁とを開くことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水装置に関し、特に、真空ポンプを利用した排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空ポンプを用いて配管内を負圧状態に保つことで大気圧との圧力差により汚水等を吸引し、排水する真空式の排水装置が知られている。例えば、真空ポンプによって排水管内を略真空の負圧状態に保持し、この状態で弁を開放することで汚水に負圧を作用させ、圧力差を利用して汚水を真空タンクに吸引し、貯留した後に排水を行なうものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の排水装置では、真空タンクに貯留した汚水を外部排水した際に、真空タンクや配管内の圧力が大気圧となり、再び真空状態にするまで時間を要するとともに、この間汚水を吸引することができないため、断続的な排水運転となってしまう。そこで、このような排水装置を用いて連続運転をする場合には、例えば、2つ以上の真空タンクを設置することで可能とされる。しかし、連続運転の制御を簡潔に行うためには、各真空タンク毎に真空ポンプを設ける必要があり、設置スペースやコスト上昇につながるという問題があった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、設置スペースを省スペース化するとともに連続運転可能な排水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための排水装置の構成として、排水貯留部に貯留された液体を負圧を利用して排水する排水装置であって、下部タンクと、下部タンクよりも上方に設けられ、開閉弁を介して下部タンクの内部空間との連通を開閉可能に連結された上部タンクと、上部タンクに接続される真空ポンプとを備え、上部タンクは、真空ポンプの駆動を制御する圧力スイッチと、排水貯留部から延長する配管が接続される排水管接続部とを備え、下部タンクは、内部空間に貯留された排水の水位を検出する水位センサと、内部空間に貯留された排水を排出する排水弁と、内部空間を外部空間に連通可能とする大気開放弁とを備え、開閉弁及び排水弁が、電気的な信号に基づいて弁を開閉可能に構成され、該開閉弁及び排水弁と電気的に接続され、開閉弁及び排水弁の開閉を制御する制御盤をさらに備え、制御盤は、下部タンクに貯留された排水を排出するときに、開閉弁を閉じた後に排水弁及び大気開放弁を開き、下部タンクに貯留された排水を排出した後に、排水弁及び大気開放弁を閉じた後に開閉弁を開く構成とした。
本構成によれば、設置スペースを省スペース化できるとともに排水装置として連続運転が可能となる。
また、排水装置の他の構成として、上部タンクの容積を下部タンクの容積よりも大きくすると良い。
また、上部タンク及び下部タンクにおける空気のみが流通するように上部タンク及び下部タンクを接続するバイパス管と、制御盤と電気的に接続され、制御盤から入力される信号に基づいて弁を開閉することによりバイパス管における空気の流通を制御するバイパス弁とをさらに備え、制御盤は、下部タンクに貯留された排水を排出するときに、開閉弁とバイパス弁とを閉じ、下部タンクに貯留された排水を排出した後に、排水弁を閉じた後に開閉弁とバイパス弁とを開くようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】排水装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【
図2】圧力センサ、水位センサ及びバイパス管の上部・下部タンクへの接続部分を示す断面図である。
【0007】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、排水装置の一実施形態を示す概略構成図である。本実施形態に係る排水装置は、例えば、トイレ、洗面台や飲食店の厨房等の水回り設備等から発生する汚水等の液体を、水回り設備に設けられた排水貯留部に貯留し、この排水貯留部から真空を利用して排出するための装置であって、概略、下部タンク2と、下部タンク2の上方に設けられ、連結管6を介して下部タンク2と接続される上部タンク4と、連結管6により接続された下部タンク2及び上部タンク4の内部空間の圧力を減圧する真空ポンプ8とを備える。
【0009】
下部タンク2及び上部タンク4は、所定の強度を有する所謂圧力容器からなる。下部タンク2及び上部タンク4は、上部タンク4が所定の負圧状態、下部タンク2が大気圧状態において連通開閉弁16及びバイパス弁30を開放して上部タンク4と下部タンク2とを連通させて上部タンク4と下部タンク2とが一体となったときの圧力が、所定の負圧状態の例えば、60%以上となるようにそれぞれの容積が設定される。つまり、下部タンク2の容積に比べて上部タンク4の容積が大きく設定される。なお、上部タンク4及び下部タンク2の容積の関係は、下部タンク2の容積に比べて上部タンク4の容積が大きくあれば、60%以上に限定されず適宜変更することも可能である。本実施形態における所定の負圧状態とは、真空ポンプ8の駆動を停止させるときの圧力、即ち、後述の圧力センサ20により検出される圧力をいう。なお、
図1や後述の
図3では、下部タンク2及び上部タンク4の大きさを同じ大きさで図示してあるが、これは下部タンク2及び上部タンク4のシステム上における存在を示したものであり同図に基づいてその大きさや形状を特定するものではない。
【0010】
下部タンク2は、内部に貯留した汚水を排出するための排水弁10と、内部に貯留された汚水の貯留量を検出する水位センサ12と、大気開放弁14とが設けられる。
排水弁10は、下部タンク2を所定の位置に配置したときに、下部タンク2の最下部となる位置に設けられる。排水弁10には、下部タンク2から汚水を外部に排出するための図外の外部排水管が接続される。排水弁10には、電気的な信号に基づいて弁を開閉する電動弁が適用される。なお、以下の説明において、電動弁とは、シール性に優れたモーターの回転動作によりボールバルブを開閉するものとして説明する。
【0011】
水位センサ12は、下部タンク2の内底部から所定の高さに取り付けられ、内部に貯留された汚水が到達した際に信号を出力する。水位センサ12は、内部に貯留された汚水が、例えば、下部タンク2の容積の70%程度となったときに信号を出力するように水位の検出位置が設定される。水位センサ12の取り付けられる位置としては、該水位センサ12が水位を検出する位置よりも上方、例えば、下部タンク2の連結管6が接続される位置の近傍が好ましい。また、水位センサ12の下部タンク2への取り付け形態としては、例えば、
図2(a)に示すように、下部タンク2の外周から突出し、内部空間と連通する筒状の水位センサ取付部13を設け、該水位センサ取付部13を介して取り付けると良い。
【0012】
大気開放弁14は、水位センサ12よりも上方に取り付けられ、弁の開放により下部タンク2の内部空間と外部空間と連通させ、弁を閉鎖することで下部タンク2の内部空間と外部空間との連通状態を遮断する。大気開放弁14には、電気的な信号に基づいて弁を開閉する電動弁が適用される。
なお、上述の排水弁10及び大気開放弁14は、下部タンク2に直接的に、或は連結管等を介在させて取り付けられていても良い。
【0013】
連結管6は、下部タンク2と上部タンク4との接続状態を開閉する連通開閉弁16を備える。連通開閉弁16には、電気的な信号に基づいて弁が開閉する電動弁が適用される。なお、下部タンク2及び上部タンク4は、連結管6を介在させずに、連通開閉弁16により直接連結しても良い。
【0014】
上部タンク4は、下部タンク2の上方に設けられる。上方とは、下部タンク2の直上に配置されることのみを意味するものではなく、上下方向において下部タンク2に対して上部タンク4がずれた状態を含む。つまり、上部タンク4と下部タンク2とは、上下の位置関係が設定される。本実施形態では、上部タンク4は、該上部タンク4の底部が下部タンク2の天井部よりも高い位置にあるものとして説明する。上部タンク4には、減圧開閉弁18と、内部の圧力を検出する圧力センサ20と、排水管接続部4Aとが設けられる。
【0015】
減圧開閉弁18は、上部タンク4を所定の位置に配置したときに、上部タンク4の最上部となる位置に設けられる。減圧開閉弁18には、真空ポンプ8から延長する配管22が接続され、真空ポンプ8を駆動させた状態で弁を開放することにより、上部タンク4や下部タンク2が減圧される。また、減圧開閉弁18は、真空ポンプ8が停止したときには弁を閉じ、真空ポンプ8から上部タンク4への経路を遮断する。これにより、真空ポンプ8の停止時に、外気が真空ポンプ8を逆流し、上部タンク4へ流入することを防止している。
【0016】
圧力センサ20は、上部タンク4の内部の圧力を検出し、所定の圧力に到達した際に信号を出力する。つまり、圧力センサ20は、圧力スイッチとして機能する。圧力センサ20の取り付けられる位置としては、上部タンク4の減圧開閉弁18が接続される位置の近傍が好ましい。また、圧力センサ20の上部タンク4への取り付け形態としては、例えば、
図2(b)に示すように、上部タンク4の外周から突出し、内部空間に連通する筒状の圧力センサ取付部21を設け、該圧力センサ取付部21を介して取り付けると良い。
【0017】
排水管接続部4Aは、例えば、上部タンク4を所定の位置に配置したときに、上部タンク4の上側に位置するように設けられ、例えば、汚水の発生源における図外の排水貯留部から延長する排水管26が接続される。排水貯留部と上部タンク4との間には、排水貯留部から上部タンク4への汚水の流通を開閉する弁24が設けられる。弁24は、例えば、汚水の発生源の排水貯留部に設けられ、利用者に操作可能に設けられたスイッチ、レバー等の操作体と接続される。そして利用者が、操作体を操作することで弁24が開き、排水貯留部から排水管26を経て上部タンク4への汚水の流出が可能とされ、操作を止めることで弁24が閉じ、排水貯留部から排水管26を経て上部タンク4への汚水の流出が停止される。
【0018】
また、下部タンク2及び上部タンク4は、連結管6が接続される位置と異なる位置において、互いの内部空間が連通可能にバイパス管28により接続される。本実施形態では、バイパス管28は、一端側が、上部タンク4に設けられた圧力センサ取付部21に接続され、他端側が、下部タンク2に設けられた水位センサ取付部13に接続される。上部タンク4とバイパス管28とが接続される好ましい位置としては、下部タンク2から汚水を排出し、排水弁10を閉じるまでに要する間に、上部タンク4に貯留されると想定される汚水の量よりも上方であれば良いが、想定を外れたときを考慮し、例えば、減圧開閉弁18の近傍で接続されると良く、本実施形態のように、上部タンク4に設けられた圧力センサ取付部21のタンク側に割り込むように接続すると良い。また、下部タンク2とバイパス管28とが接続される好ましい位置としては、上部タンク4に貯留された汚水のすべてが下部タンク2に連結管6を経て流入した時の液面よりも上方に設けると良い。より好ましくは、上部タンク4から下部タンク2へと流入中の汚水が取り込まれ難い位置に接続すると良い。例えば、本実施形態のように、下部タンク2に水位センサ12を取り付けるために設けられた水位センサ取付部13のタンク側において割り込むように接続すると良い。
【0019】
バイパス管28には、当該バイパス管28を介した下部タンク2と上部タンク4との連通を開閉するバイパス弁30が設けられる。バイパス弁30には、電気的な信号に基づいて弁を開閉する電磁弁が適用される。ここでいう電磁弁とは、例えば、上述の電動弁に比べて弁の開閉の応答性に優れたソレノイド等の電磁アクチュエーターを利用したものとして説明する。
【0020】
上記真空ポンプ8,排水弁10,水位センサ12,連通開閉弁16,減圧開閉弁18,圧力センサ20,バイパス弁30は、制御盤32に接続され、これらのうち真空ポンプ8,排水弁10,連通開閉弁16,減圧開閉弁18,バイパス弁30は、制御盤32から出力される信号に基づいて動作する。即ち、制御盤32は、排水弁10,連通開閉弁16,減圧開閉弁18,バイパス弁30の弁を開閉する信号を個別に出力するとともに、真空ポンプ8の駆動を開始又は停止する信号を出力する。
【0021】
以下、本実施形態に係る排水装置1の動作とともに制御盤32の制御について説明する。
[運転前準備]
まず、制御盤32は、下部タンク2に設けられた排水弁10及び大気開放弁14に弁を閉じる信号を出力する。また、下部タンク2と上部タンク4とを接続する連結管6に設けられた連通開閉弁16には弁を開放する信号を出力し、バイパス管28に設けられたバイパス弁30には弁を閉じる信号を出力する。また、上部タンク4に設けられた減圧開閉弁18には、弁を開く信号を出力する。これにより、下部タンク2の内部空間及び上部タンク4の内部空間とが一体となるとともに、真空ポンプ8に接続された状態となる。この状態を維持したまま、制御盤32から真空ポンプ8にポンプを駆動する信号を出力して真空ポンプ8を動作させる。真空ポンプ8の駆動により、下部タンク2及び上部タンク4の空気が排出され、内部の圧力が減圧される。下部タンク2及び上部タンク4の圧力が所定の圧力となると圧力センサ20がそれを検知して制御盤32に出力する。制御盤32は、圧力センサ20からの信号(下部タンク2及び上部タンク4の圧力が所定の負圧状態となったことを報知する信号)の入力により、減圧開閉弁18に弁を閉じる信号と、真空ポンプ8の駆動を停止するための信号とを出力し、減圧開閉弁18を閉じるとともに、真空ポンプ8の駆動を停止する。これにより、排水装置1の運転前準備が完了する。
【0022】
[運転時]
そして、利用者が操作体を操作し、弁24を開放することにより、汚水の発生源の排水貯留部から汚水が吸引されて、排水管26を経て上部タンク4に流入し、連結管6から下部タンク2へと流下し、下部タンク2に汚水が貯留される。
【0023】
排水貯留部からの排水操作が繰り返され、
図3(a)に示すように、下部タンク2に所定量の汚水が図中Fで示すように貯留され、水位センサ12がそれを検出すると、水位センサ12は制御盤32に信号を出力する。制御盤32は、水位センサ12からの信号の入力により、下部タンク2に貯留された汚水を排出すべく、連通開閉弁16に弁を閉じる信号を出力して連通開閉弁16を閉じるとともに、排水弁10及び大気開放弁14に弁を開く信号を出力し、排水弁10及び大気開放弁14とを開く。本実施形態では、連通開閉弁16及び排水弁10に電動弁を適用したため、信号の各弁16;10に信号が入力されてから弁が完全に閉鎖されるまで所定時間を要する。このため制御盤32は、連通開閉弁16に弁を閉じる信号を出力し、連通開閉弁16が完全に閉鎖されるまでの所定時間経過後に、排水弁10及び大気開放弁14に弁を開く信号を出力する。
【0024】
これにより、下部タンク2を上部タンク4から切り離した状態で下部タンク2内に貯留された汚水が、下部タンク2から外部へと排出される。即ち、上部タンク4は、所定の減圧状態を維持したまま下部タンク2の汚水を排出することができる。
【0025】
連通開閉弁16の閉鎖により、上部タンク4は、下部タンク2が切り離された状態において、負圧が維持されるため、排水貯留部からの排水操作を継続することができる。そして、下部タンク2に貯留された汚水が排出される間、
図3(b)に示すように、排水操作の繰り返しにより排水貯留部から排出される汚水が図中Fで示すように上部タンク4に貯留される。
【0026】
そして、下部タンク2からの汚水の排出が完了した後、制御盤32は、排水弁10及び大気開放弁14に弁を閉じる信号を出力して排水弁10及び大気開放弁14を閉じるとともに、連通開閉弁16及びバイパス弁30に弁を開放する信号を出力して連通開閉弁16及びバイパス弁30を開放し、下部タンク2を上部タンク4と連通させる。排水弁10、大気開放弁14及び連通開閉弁16は、上述のように電動弁であるため、開閉に所定時間を要する。そこで、制御盤32は、排水弁10及び大気開放弁14に弁を閉じる信号を出力し、排水弁10及び大気開放弁14が完全に閉鎖されるまでの所定時間経過後に、連通開閉弁16及びバイパス弁30を開く信号を出力する。これにより上部タンク4に貯留された汚水が連通開閉弁16を経て下部タンク2に放出され、大気圧状態にあった下部タンク2の空気がバイパス弁30を経て負圧状態にある上部タンク4へと流入する。
【0027】
制御盤32は、連通開閉弁16及びバイパス弁30を開く信号を出力し、所定時間経過後に、バイパス弁30に弁を閉じる信号を出力する。バイパス弁30に開く信号を出力してから閉じる信号を出力するまでの時間は、例えば、連通開閉弁16が完全に開放される時間よりも短い時間が設定される。
【0028】
連通開閉弁16が電動弁、バイパス弁30が電磁弁であるため、例えば、制御盤32が連通開閉弁16及びバイパス弁30に同時に弁を開く信号を出力した場合、連通開閉弁16が完全に開放に至る前に、バイパス弁30が先に完全に開放される。このように各弁16;30の開弁状態に時間差があることにより、上部タンク4に貯留された汚水が連通開閉弁16を経て下部タンク2に流下が開始されると同時に、下部タンク2の空気がバイパス弁30を経て上部タンク4に流入することになり、連通開閉弁16が完全に開放される前に下部タンク2と上部タンク4との圧力を一定とすることができる。この結果、大気圧状態にある下部タンク2の空気が、連通開閉弁16を経て上部タンク4へと流入することを抑制し、上部タンク4から下部タンク2への汚水の放出を円滑に実施することができる。即ち、連通開閉弁16が設けられた連結管6は、汚水を下部タンク2に放出するための汚水放出路として機能し、バイパス弁30が設けられたバイパス管28は、下部タンク2の空気を上部タンク4へ流入させるための空気流入路として機能する。したがって、バイパス弁30は、下部タンク2と上部タンク4との圧力を一定になるまでの間、開いていれば良いことから、上述のように、短い時間だけ開放されれば良い。
【0029】
これにより、大気圧状態にあった下部タンク2が、上部タンク4の負圧により減圧されて再び汚水を吸引が可能な状態となる。また、下部タンク2の汚水を排出している間においても、上部タンク4により汚水を吸引し、上部タンク4に貯留することができるため、排水装置1の連続運転が可能となる。
なお、上記動作中において真空ポンプ8は、圧力センサ20により検出された上部タンク4の内圧の状態、或いは、上部タンク4及び下部タンク2が一体化されたときの内圧の状態に応じて、駆動の開始又は停止が繰り返される。また、真空ポンプ8の駆動の開始、停止に応じて、減圧開閉弁18も弁の開閉動作が制御され、真空ポンプ8が駆動するときには減圧開閉弁18が開かれ、真空ポンプ8が駆動を停止するときには減圧開閉弁18が閉じられる。
【0030】
また、制御盤32が連通開閉弁16に弁を閉じる信号を出力してから排水弁10及び大気開放弁14に弁を開く信号を出力するまでの時間差や、排水弁10及び大気開放弁14に弁を閉じる信号を出力してから連通開閉弁16及びバイパス弁30に弁を開放する信号を出力するまでの時間差等は、例えば、タイマー制御により実行される。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係る排水装置1によれば、上部タンク4と下部タンク2とを連通開閉弁16を介して接続し、該連通開閉弁16を開放することにより、上部タンク4と下部タンク2とを一体化できるので、安定した負圧が維持される。つまり、安定した吸引力を確保することができる。
【0032】
また、連通開閉弁16を閉じることにより、上部タンク4と下部タンク2とが分離され、下部タンク2の汚水を排出している間でも、上部タンク4の負圧により汚水の吸引を継続できるので、連続運転(排水)が可能となる。
【0033】
下部タンク2の汚水の排出が終了したときに、上部タンク4及び下部タンク2を連結し、設定圧の負圧に達するまでの間、上部タンク4の負圧状態が一時的に下部タンク2の圧力により加圧され(低下し)、吸引力が低下するが、上部タンク4の負圧が維持されていること、下部タンク2の気積(容積)が上部タンク4の気積よりも小さいことにより、短時間で設定圧力に復帰できるため、例えば、排水貯留部からの排水動作を停止する必要が生じた場合であっても排水動作の停止時間を短縮することができる。
【0034】
また、下部タンク2の汚水を排出するときに、大気開放弁14が開いて外気(空気)が流入し、大きな空気の流入音を発生させていたが、下部タンク2がほぼ満水状態から汚水の排出を行うため、下部タンク2における負圧空気が少なく、下部タンク2への空気の流入速度が遅くなるため、空気の流入音を低下させて、騒音の発生を抑制することができる。
【0035】
下部タンク2の汚水の排出後、連通開閉弁16を開くことで上部タンク4及び下部タンク2が一体となり、下部タンク2の大気圧となった空気が上部タンク4へと流れ込むが、連通開閉弁16とともにバイパス弁30を開くことにより、下部タンク2の空気を主としてバイパス弁30を介して下部タンク2から上部タンク4へと流入させることができる。これにより、上部タンク4と下部タンク2とが瞬時に同圧となるため、上部タンク4に溜まった汚水の上部タンク4から下部タンク2への流出が円滑となり、上部タンク4から下部タンク2に汚水が移動するときの振動を低減することができる。
したがって、上述の効果をより確実に得るためには、下部タンク2と上部タンク4とを接続するバイパス管28に空気のみが流通するように、下部タンク2及び上部タンク4に対するバイパス管28の接続位置が設定されることが好ましい。なお、バイパス管28は、連結管6の管径等に応じて省略することもできる。
【0036】
上述のように本実施形態に係る排水装置1によれば、少なくとも1台の真空ポンプ8があれば、連続運転が可能となり、廉価で制御が簡潔となり、経済的かつ保守管理が容易なものとなる。
【0037】
なお、上記実施形態では、下部タンク2及び上部タンク4をそれぞれ一つずつとしたが、これに限定されず、数量は適宜変更すれば良い。コスト的には、下部タンク2及び上部タンク4がそれぞれ一つとすることでコストの上昇を抑えられるものの、例えば、設置場所の空間の形状等によっては、下部タンク2を2つとしたり、或は、上部タンク4を2つにしたりすることで設置が容易となったり、設置後のメンテナンス性が向上する等が想定される。このような場合、適宜下部タンク2や上部タンク4の数量を変更すれば良い。
【0038】
また、図示しないが、下部タンク2及び上部タンク4に加え、第3のタンクを弁24と上部タンク4との間に設けても良い。即ち、第3のタンクは、
図1に示す排水管26に配管を介して接続される。このように第3のタンクを設けることにより、排水貯留部から排水を排出するときに、下部タンク2や上部タンク4の圧力変動を軽減させることができる。つまり、第3のタンクは、下部タンク2や上部タンク4の圧力変動を軽減する緩衝器(バッファ)として機能する。第3のタンクは、排水管26に接続されていれば良いだけなので、配置する場所の自由度が大きく、実際に排水装置1を設置するときのスペースを有効に活用しつつ、排水装置1の運転をより安定させることができる。なお、第3のタンクを用いる場合、排水管26を流れる排水を吸い込まないように、排水管26に接続すれば良いことは言うまでもない。
【0039】
また、上記実施形態では、上部タンク4の最下部が、下部タンク2の最上部よりも高い位置に配置するものとして説明したが、上部タンク4は、最下部が、下部タンク2に設けられる水位センサ12よりも上方に位置するように設けられていれば良い。
【0040】
また、排水弁10、大気開放弁14、連通開閉弁16、減圧開閉弁18及びバイパス弁30等に適用する弁の種類、例えば、電動弁や電磁弁等の選択は、適宜変更すれば良い。
【符号の説明】
【0041】
1 排水装置、2 下部タンク、4 上部タンク、4A 排水管接続部、
6 連結管、8 真空ポンプ、10 排水弁、12 水位センサ、14 大気開放弁、
16 連通開閉弁、18 減圧開閉弁、20 圧力センサ、22 配管、
26 排水管、28 バイパス管、30 バイパス弁、32 制御盤。