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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】浮縄巻取装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 91/18 20060101AFI20230410BHJP
   B65H 54/54 20060101ALI20230410BHJP
   B65H 54/553 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
A01K91/18 B
B65H54/54 Z
B65H54/553 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019190788
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2021065107
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】391043790
【氏名又は名称】株式会社小野寺鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100110722
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100213540
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵庭
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 卯征
(72)【発明者】
【氏名】濱田 雄司
【審査官】竹中 靖典
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 91/18
B65H 54/54
B65H 54/553
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
延縄漁に用いる延縄の幹縄に浮玉を取り付けるための浮縄を当該浮玉の胴部に巻取る浮縄巻取装置であって、
前記浮玉を前記胴部の両側から保持する一対の保持手段と、
巻取り軸を中心として前記浮玉が回転するように前記一対の一保持手段の両方又はいずれか一方を回転させる駆動手段と、
を備えていることを特徴とする浮縄巻取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の浮縄巻取装置であって、前記駆動手段は、前記一対の保持手段のいずれか一方の保持手段の支軸を駆動源に連結した構成において、当該一方の保持手段、前記浮玉、及び他方の保持手段が追随して回転するように前記他方の保持手段を軸支することを特徴とする浮縄巻取装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の浮縄巻取装置において、
前記一対の保持手段は伸縮自在の支持手段により近接離反可能に連結され、互いに近接した状態で前記浮玉を挟持することを特徴とする浮縄巻取装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の浮縄巻取装置において、
前記駆動手段による前記浮玉の回転速度は変速可能とされていることを特徴とする浮縄巻取装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の浮縄巻取装置において、
前記一対の保持手段の各々は、
前記浮玉の直径よりも小さい直径を有するリング部と、
前記リング部を支持する支持フレームと、
を備え、
前記リング部には滑り止めが設けられていることを特徴とする浮縄巻取装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の浮縄巻取装置において、
前記浮玉が2つの浮玉を連結した連結浮玉である場合に、前記浮縄を前記連結浮玉の一方側の浮玉と他方側の浮玉の連結部に巻取るようにしたことを特徴とする浮縄巻取装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延縄漁用の浮縄巻取装置に関し、特に延縄漁に用いる延縄の幹縄に浮玉を取り付けるための浮縄を当該浮玉の胴部に巻取る浮縄巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、延縄漁の延縄(仕掛け)は、図6に示されるとおり、一本の幹縄90へ縄暖簾状に連結された多数の枝縄91,91,91,…の先端へ餌92,92,92,…を取り付けると共に、浮玉93が取り付けられた浮縄94によって当該幹縄90を海面から海中へ吊下するものである。特に、超深縄操業に用いられる仕掛けにおいては浮縄94の長さだけで150mにも及ぶので、船舶の甲板へ引き揚げた際の巻取り作業を少しでも効率化するために、例えば、一対の浮玉を連結した連結浮玉93を用い、その連結部95に浮縄94を巻取ることができるようにしていた。
【0003】
従来、連結浮玉93への浮縄94の巻取りは、図7に示されるとおり2人の作業者101,102が連携して行う必要があった。一方の作業者101(巻取作業者)は、連結浮玉100を収容したネットを片方の手111で保持して吊下すると共に、もう片方の手112で連結浮玉93を回転させることで浮縄94を連結部95へ巻取り、他方の作業者(補助作業者)は、その巻取り中に浮縄94が撓まないよう軽く引張りながら、浮縄94を作業者101の側へ少しずつ繰り出していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-231736号公報
【文献】実公平3-33263号公報
【文献】実公平3-37412号公報
【文献】実開平2-979号公報
【文献】実公昭51-31757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように長さ150mにも及ぶ浮縄94を手動で巻取る場合には、作業人員が少なくとも2名必要であり、かつ時間も掛かるため非効率的であった。また、延縄の巻取装置はいくつか提案されているものの、浮玉93への巻取りを想定した装置は提案されていなかった。例えば、特許文献1には、潮流、海流等による振動を抑えるために外周面に溝を設けた浮玉や瓢箪型の浮玉が開示されているが、浮玉に浮縄を巻付けることは想定されていない。また、特許文献2,3には、案内ローラーを介して浮縄を甲板等へ捲揚げる装置が開示されており、特許文献4には、浮縄を幹縄と共に捲揚げる浮縄捲揚機が開示されており、特許文献5には、延縄と浮縄、枝縄に振り分けて延縄のみを捲揚げる技術が開示されているが、いずれの文献でも浮縄94の捲取り先として想定しているのはあくまでも捲取用のローラーであって、浮縄94を浮玉93へ捲取ることを想定していない。
【0006】
そこで、本発明は、浮縄を浮玉へ巻取る際の人員を2名から1名に削減し、作業者の負担を減らすことが可能であり、巻取り時間を短縮可能な浮縄巻取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、延縄漁に用いる延縄の幹縄に浮玉を取り付けるための浮縄を当該浮玉の胴部に巻取る浮縄巻取装置であって、前記浮玉を前記胴部の両側から保持する一対の保持手段と、巻取り軸を中心として前記浮玉が回転するように前記一対の一保持手段の両方又はいずれか一方を回転させる駆動手段と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決するため請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の浮縄巻取装置であって、前記駆動手段は、前記一対の保持手段のいずれか一方の保持手段の支軸を駆動源に連結した構成において、当該一方の保持手段、前記浮玉、及び他方の保持手段が追随して回転するように前記他方の保持手段を軸支することを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するため請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の浮縄巻取装置において、前記一対の保持手段は伸縮自在の支持手段により近接離反可能に連結され、互いに近接した状態で前記浮玉を挟持することを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するため請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の浮縄巻取装置において、前記駆動手段による前記浮玉の回転速度は変速可能とされていることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するため請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の浮縄巻取装置において、前記一対の保持手段の各々は、前記浮玉の直径よりも小さい直径を有するリング部と、前記リング部を支持する支持フレームと、を備え、前記リング部には滑り止めが設けられていることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するため請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載の浮縄巻取装置において、前記浮玉が2つの浮玉を連結した連結浮玉である場合に、前記浮縄を前記連結浮玉の一方側の浮玉と他方側の浮玉の連結部に巻取るようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る浮縄巻取装置によれば、浮玉を胴部の両側から保持する一対の保持手段と、巻取り軸を中心として浮玉が回転するように一対の一保持手段の両方又はいずれか一方を回転させる駆動手段とを備えているので、浮縄が浮玉の胴部へ適当に巻取られるように作業者一名が浮縄を手で繰り出しさえすれば、図7に符号101で示したような2名の共同作業者は不要であり、しかも回転が手動でなく自動で行われるので巻取り速度を高めることが容易である。よって、浮縄を浮玉へ巻取る際の人員を2名から1名に削減し、作業者の負担を減らしながらも従来よりも短時間で巻取ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(A)は、下ドラムに連結浮玉が保持された状態の本発明に係る浮縄巻取装置の好ましい一実施形態の側面図であり、図1(B)は、上ドラム及び下ドラムに連結浮玉が挟持された状態の本発明に係る浮縄巻取装置の好ましい一実施形態の側面図である。
図2図2は、連結浮玉の一例を説明する図である。
図3図3は、本実施形態の浮縄巻取装置を用いた浮縄巻取作業を説明する図である。
図4図4は、瓢箪型の浮玉に本実施形態の浮縄巻取装置を適用した様子を説明する図である。
図5図5は、球状の浮玉に本実施形態の浮縄巻取装置を適用した様子を説明する図である。
図6図6は、延縄漁の延縄(仕掛け)を説明する図である。
図7図7は、従来の巻取作業を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.実施形態
以下、本発明に係る延縄漁用浮縄巻取装置について好ましい一実施形態に基づいて詳細に説明する。図1(A)は、下ドラムに連結浮玉が保持された状態の本発明に係る浮縄巻取装置の好ましい一実施形態の側面図であり、図1(B)は、上ドラム及び下ドラムに連結浮玉が挟持された状態の本発明に係る浮縄巻取装置の好ましい一実施形態の側面図、図2は、連結浮玉の説明図である。
【0016】
1-1.構成
先ず、浮縄巻取装置1にセットされる浮玉93は、2つの球状の浮玉93B,93Cを連結した瓢箪型の連結浮玉93である。連結浮玉93は、例えば図2に示されるように2つの浮玉93B,93Cをネット93Aへ収めてから、2つの浮玉93B,93Cの間隙(隣接する部分)をロープ93Dで縛ることによって連結部95を形成すると共に、2つの浮玉93B,93Cを互いに拘束している。よって、連結浮玉93において2つの浮玉93B,93Cの姿勢は互いに固定されており、連結浮玉93の全体形状は概略瓢箪型となっている。
そして、図1に示されるとおり、浮縄巻取装置1は、このような連結浮玉93の一方側の浮玉93Bと他方側の浮玉93Cの連結部95に浮縄94を巻取ることを想定している。なお、図2では、2つの浮玉93B,93Cのサイズが互いに異なる例を示したが、2つの浮玉93B,93Cのサイズは互いに同じであってもよい。また、浮玉93B,93Cの各々の直径φは、180mm~365mmであり、好ましくは300mmほどである。また、浮玉93B,93Cの各々の材質は、樹脂、ガラス、発泡材等であり、好ましくは樹脂である。
【0017】
図1に示される浮縄巻取装置1は、延縄漁に用いる延縄の幹縄90に連結浮玉93を取り付けるための浮縄94を当該連結浮玉93の胴部(ここでは連結部95)に巻取るために、連結浮玉93を連結部95の両側から保持する一対の保持手段としての上ドラム4及び下ドラム5を備える。
【0018】
このうち上ドラム4は上ケース2によって回転可能に軸支され、下ドラム5は下ケース3によって回転可能に軸支されている。これら上ドラム4の回転軸と下ドラム5の回転軸は、共通の回転軸AXである。また、上ケース2及び下ケース3は、当該回転軸AXと平行な伸縮可能延長管である上支柱9及び下支柱10によってそれぞれ支持されている。つまり、上ドラム4及び下ドラム5は、伸縮自在の支持手段である上支柱9及び下支柱10により、回転軸AXに沿った方向にかけて近接離反可能に連結されている。なお、上支柱9及び下支柱10の伸縮を阻止するための固定手段を設けてもよい。
【0019】
そして、図1(A)に示されるとおり上ドラム4及び下ドラム5を互いに離反させた状態では、連結浮玉93の一方の浮玉93Cを下ドラム5で下方から保持することができる。また、他方の浮玉93Bを上方に向けた状態で、図1(B)に示されるとおり上支柱9及び下支柱10からなる延長管を短縮させると、上ドラム4及び下ドラム5が互いに近接し、上ドラム4及び下ドラム5によって上下方向から連結浮玉93の全体を挟持することができる。挟持された状態では、一対の浮玉93B,93Cの共通の中心線(本実施形態の巻取り軸である)が前述した回転軸AXに重なる。
【0020】
そして、浮縄巻取装置1は、上ドラム4及び下ドラム5の回転軸AX(すなわち本実施形態の巻取り軸)を中心として連結浮玉93が回転するように上ドラム4及び下ドラム5の両方又はいずれか一方を回転させる駆動手段を備える。本実施形態の駆動手段は、上ドラム4を回転軸AXに沿って支持する上シャフト11と、下ドラム5を回転軸AXに沿って支持する下シャフト12と、回転軸AXを中心として上シャフト11を回転可能に支持するピローブロックベアリング6と、回転軸AXを中心として下シャフト12を回転可能に支持するピローブロックベアリング6と、上シャフト11に連結されたスプロケット歯車7と、歯車7に連結された電動モータ8とを備える。なお、スプロケット歯車7を介さずに上シャフト11へ直接電動モータ8を連結してもよい。
【0021】
よって、不図示の電源から電動モータ8へと電力が供給されると、スプロケット歯車7及び上シャフト11を介して上ドラム4が回転軸AXを中心として回転し、上ドラム4及び下ドラム5によって保持された連結浮玉93が巻取り軸を中心として回転する。つまり、駆動手段は、上ドラム4及び下ドラム5のいずれか一方(上ドラム4)の支軸である上シャフト11を駆動源(電動モータ8)に連結した構成において、当該上ドラム4、連結浮玉93、及び下ドラム5が追随して回転するように下ドラム5をシャフト12で軸支している。
【0022】
ここで、上ドラム4は、開口部を下方に向けた姿勢の釣鐘型又は円錐型のフレームであり、開口部の輪郭に位置するリング部4Aと、リング部を支持する支持フレーム4B,4B,4Bとを備え、複数の支持フレーム4B,4B,4B,…は、回転軸AXを基準として回転対称に等ピッチで配置されている。リング部4Aの直径は、連結浮玉93を構成する浮玉93Bの直径よりもやや小さいので、リング部4Aが浮玉93Bの外周にフィットし易くなっている。なお、このリング部4Aには例えばゴムホースなどで構成された滑り止めが設けられてもよい。また、上ドラム4の形状を釣鐘型又は円錐型としたので、浮玉93Bの径サイズが予め決められたサイズから多少前後していた場合であってもリング部4Aは浮玉93Bを安定して保持できる。
【0023】
一方、下ドラム5は、開口部を上方に向けた姿勢の釣鐘型又は円錐型のフレームであり、開口部の輪郭に位置するリング部5Aと、リング部を支持する支持フレーム5B,5B,5Bとを備え、複数の支持フレーム5B,5B,5B,…は、回転軸AXを基準として回転対称に等ピッチで配置されている。リング部5Aの直径は、連結浮玉93を構成する浮玉93Cの直径よりもやや小さいので、リング部5Aが浮玉93Cの外周にフィットし易くなっている。なお、リング部5Aには例えばゴムホースなどで構成された滑り止めが設けられていてもよい。また、下ドラム5の形状を釣鐘型又は円錐型としたので、浮玉93Cの径サイズが予め決められたサイズから多少前後していた場合であってもリング部5Aは浮玉93Cを安定して保持できる。なお、図1に符号400で示すのは、一方の浮玉93Cの端部へ突出するようにして取り付けられた筒状の樹脂パーツである。この樹脂パーツはいわゆる目印電灯又は反射板の装着先として浮玉93Cへ取り付けられたものである。これらの目印電灯又は反射板は、無灯下又は探照灯下で光を発光又は反射する部品であって、夜間操業時に連結浮玉93の位置を発見し易くするために使用されるものである。そして、本実施形態の下ドラム5は、十分な高さを有した釣鐘型又は円錐型とされているので、樹脂パーツ400が突設された連結浮玉93であっても、その樹脂パーツ400を下方へ向けた姿勢にすることにより、連結浮玉93を安定して保持することができる。
【0024】
また、本実施形態において電動モータ8による連結浮玉93の回転速度は変速可能とされている。そのために、不図示の電源と電動モータ8との間にモータ駆動用インバータが介設されるか、或いは電動モータ8とシャフト11との間に不図示の機械的変速装置(変速ギアボックスなど)が介設される。また、浮縄巻取装置1は、モータ駆動用インバータ又は機械的変速装置へ制御信号を入力するためのコントローラ30を備えており、作業者がコントローラ30を操作することにより、シャフト11の回転が開始/停止するタイミングを自在に調節したり、シャフト11の回転速度を「高速」及び「低速」の間で自在に切り替えたりすることができる。例えば、「高速」で回転するシャフト11の単位時間当たりの回転数は180rpmであり、「低速」で回転するシャフト11の単位時間当たりの回転数は60rpmである(つまり「低速」は「高速」の1/3程度の回転数である。)。
【0025】
1-2.浮縄巻取作業
図3は、本実施形態の浮縄巻取装置を用いた浮縄巻取作業を説明する図である。
(1)先ず、作業者101は、必要に応じてコントローラ30を操作してシャフト11が回転していない状態とすると、上支柱9を上昇させて連結浮玉93を下ドラム5の上へ配置する(図1(A))。
(2)次に、作業者101は、上支柱9を下降させることにより連結浮玉93を上ドラム4及び下ドラム5で挟持する(図1(B))。
(3)次に、作業者101は、図3に示すとおり連結部95から延在している浮縄94を一方の手で軽く引張りながら、他方の手でコントローラ30を操作してシャフト11を低速で回転させ始める。これによって連結浮玉93が回転し始める。
(4)次に、作業者101は、浮縄94が連結部95に安定して巻取られ始めたのを確認すると、コントローラ30を操作してシャフト11の回転速度を上昇させる。
(5)次に、作業者101は、浮縄94の残りが所定長さ(例えば10m程度)になったことを確認すると、コントローラ30を操作してシャフト11の回転速度を低速に切り替える。これによって連結浮玉93の回転速度が低速となる。
(6)次に、作業者101は、浮縄94が全て巻取られたのを確認すると、コントローラ30を操作してシャフト11の回転を停止させる。これによって連結浮玉93の回転が停止する。
なお、以上の手順(1)~(6)では、浮玉93が高速に回転するモード(高速回転モード)と浮玉93が低速で回転するモード(低速回転モード)との双方を利用して巻取りを行ったが、低速回転モードのみを使用して巻取りを行ってもよいことは言うまでもない。
【0026】
1-3.実施形態の効果
本実施形態に係る浮縄巻取装置1によれば、連結浮玉93を胴部(連結部95)の両側から保持する上ドラム4及び下ドラム5と、巻取り軸(回転軸AX)を中心として連結浮玉93が回転するように上ドラム4及び下ドラム5の両方又はいずれか一方を回転させる電動モータ8などを備えているので、図3に示されるとおり連結浮玉93が浮玉の胴部(連結部95)へ適当に巻取られるように一名の作業者101が浮縄94を手で繰り出しさえすれば(図3)、他の作業者は不要であり、しかも回転が手動でなく自動で行われるので巻取り速度を高めることが容易である。よって、浮縄94を連結浮玉93へ巻取る際の人員を2名から1名に削減し、作業者101の負担を減らすことが可能である。
また、手巻き作業経験の浅い作業者でも浮縄巻取装置1の低速回転モードで巻取る事により、短時間で作業を終える事が出来る。言うまでもないが、熟練の作業者が浮縄巻取装置1の高速回転モードを併用すれば、更なる時間短縮を図ることができる。
因みに、150mの浮縄を170本巻取る場合を想定すると、従来は2名の作業者が12時間かけて作業を行っていたので、総作業時間(作業コスト)は2人×12時間=24時間(1440分)であった。これに対して本実施形態の浮縄巻取装置1を用いた場合は、1名の作業者が8.5時間で作業を完了させることができるので、総作業時間(作業コスト)は1人×8.5時間(510分)である。この場合、総作業時間(作業コスト)を15.5時間相当(930分相当)ほど削減できる。
ここで、このような具体的効果が得られる前提及び根拠は、次のとおりである。すなわち、巻取部(連結部95)の直径φを150mm(1周巻取長さ0.471m)と仮定し、連結浮玉93の回転数を120rpm(回転数は一定)と仮定すると、浮縄150mを巻取り終わるのは150m÷0.471m≒318回転した時であるから、318回転÷120rpm=2.65分(取付け、取外しを含めて1本あたり約3分)で巻取りが完了する。従って、総作業時間は1人×170本×3分=8.5時間(510分)であり、総作業時間(作業コスト)の削減量は、15.5時間相当(930分相当)である。
【0027】
2.他の適用例等
2-1.瓢箪型の浮玉
上述した実施形態では、一対の球状の浮玉93B,93Cを連結した瓢箪型の連結浮玉93を用いたが(図3)、浮縄94を胴部に巻取ることが可能であれば、連結していない単独の浮玉や他の形状の浮玉を用いてもよい。例えば図4に示すような瓢箪型の浮玉200の胴部205へ浮縄94を巻取る場合にも本実施形態の浮縄巻取装置1を使用することが可能である。図4に示す瓢箪型の浮玉200は、そのくびれ部分(胴部205)へ浮縄94を巻取ることが可能である。また、図5に示すような概略球状の浮玉300の胴部305へ浮縄94を巻取る場合にも本実施形態の浮縄巻取装置1を使用することができる。図5に示す概略球状の浮玉300は、その胴部305に形成された凹部へ浮縄94を巻取ることが可能である。
なお、本実施形態の浮縄巻取装置1の上ドラム4及び下ドラム5は、前述したとおり釣鐘型又は円錐型をしているので、浮玉の形状やサイズの多少のばらつきに対応することが可能であるが、浮玉の形状やサイズが大幅に変化した場合に備えて、上ドラム4及び下ドラム5の少なくとも一部を交換又は調節できるようにしてもよい。
【0028】
2-3.上下ドラムの形状
上述した実施形態では、上ドラム4の形状と下ドラム5の形状との差に言及しなかったが、もしも浮縄94の巻取り先となる部分(胴部)に関して非対称な浮玉を想定している場合には、上ドラム4の形状と下ドラム5の形状を意図的に異ならせてもよい。例えば、上ドラム4の形状を浮玉の一端側(連結浮玉93の一方の浮玉93B)にフィットする釣鐘型とし、かつ下ドラム5の形状を浮玉の他端側(連結浮玉93の他方の浮玉93C)にフィットする円錐型としてもよい。
【0029】
2-2.装置の姿勢
上述した実施形態では、図3図5に示すとおり回転軸AXが垂直になるように浮縄巻取装置1の姿勢を設定したが、回転軸AXが水平になるように浮縄巻取装置1の姿勢を設定することも可能である。その場合は、巻取り軸が水平となる姿勢で浮玉をセットすれば、同様の効果を得ることができる。
【0030】
2-3.モータの数
上述した実施形態では、連結浮玉93の一方の浮玉93Bと他方の浮玉93Cとが互いに姿勢変化しない場合(図1図3)や、単一の浮玉200,300へ浮縄を巻取る場合(図4図5)を想定し、上シャフト11及び下シャフト12の一方のみへ電動モータ8を連結する構成を採用したが、一方の浮玉93Bと他方の浮玉93Cとが互いに姿勢変化し得る連結浮玉93を想定し、上シャフト11及び下シャフト12のそれぞれに電動モータ8を連結してもよい。或いは、上シャフト11及び下シャフト12に第一の電動モータ及び第二の電動モータをそれぞれ連結し、第一の電動モータ及び第二の電動モータを同期駆動してもよい。因みに、電動モータを二重化すれば、浮縄94を巻取るパワーを増すことができる。
【0031】
以上のように、本発明について好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱或いは変更しない範囲内で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 浮縄巻取装置
2 上ケース
3 下ケース
4 上ドラム
5 下ドラム
6 ピローブロックベアリング
7 スプロケット歯車
8 電動モータ
9 上支柱
10 下支柱
11 上シャフト
12 下シャフト
20 連結浮玉
30 コントローラ
90 幹縄
91 枝縄
92 餌
93 連結浮玉
93A ネット
93B 浮玉
93C 浮玉
93D ロープ
94 浮縄
95 連結部
101 作業者(巻取作業者)
102 作業者(補助作業者)
111 手
112 手
200 浮玉
300 浮玉

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7