(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】仕訳装置、仕訳方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/12 20230101AFI20230410BHJP
【FI】
G06Q40/12
(21)【出願番号】P 2022576321
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2021002191
(87)【国際公開番号】W WO2022157913
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2022-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519444100
【氏名又は名称】株式会社KPMG Ignition Tokyo
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】河本 雪野
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信明
【審査官】関 博文
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-170490(JP,A)
【文献】特開2004-310186(JP,A)
【文献】特開2018-173935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の複合ルールであって、各複合ルールが仕訳処理ルールと当該仕訳処理ルールの適用対象が満たすべきマッチング条件とを含む複数の複合ルールを保持する複合ルール保持部と、
マッチング条件の類型と優先度とを対応付けて保持する優先度保持部と、
前記複合ルール保持部に保持される複数の複合ルールの中から、入力された文書が合致するマッチング条件を含む複合ルールを、前記優先度保持部に保持される優先度に従って選択する複合ルール選択部と、
選択された複合ルールに含まれる仕訳処理ルールに基づいて仕訳処理を実行する仕訳処理部と
を備える仕訳装置。
【請求項2】
前記複合ルール選択部は、入力された文書が合致するマッチング条件が複数ある場合、優先度が高い類型に属するマッチング条件を含む複合ルールを選択する
請求項1に記載の仕訳装置。
【請求項3】
前記複合ルール選択部は、優先度が高い類型に属するマッチング条件から順に入力された文書が合致するか否かを判定し、合致したマッチング条件を含む複合ルールを選択する
請求項1または2に記載の仕訳装置。
【請求項4】
マッチング条件は、文書に係るメタデータについてのメタデータ指定条件を含み、
優先度は、マッチング条件に含まれるメタデータ指定条件の類型に応じて設定される
請求項1から3のいずれかに記載の仕訳装置。
【請求項5】
優先度は、マッチング条件に含まれるメタデータ指定条件の合致の範囲が狭いほど高くなるよう設定される
請求項4に記載の仕訳装置。
【請求項6】
マッチング条件は、仕訳処理対象の主文書を指定する主文書指定情報に加え、当該主文書と併せて仕訳処理されるべき関連文書を指定する関連文書指定情報を含み、
優先度は、マッチング条件に含まれる関連文書指定情報の類型に応じて設定される
請求項1から5のいずれかに記載の仕訳装置。
【請求項7】
複合ルールに含まれるマッチング条件の類型と、当該複合ルールの仕訳処理における優先度の関係を機械学習可能な機械学習部を備え、
前記優先度保持部が保持する優先度は、前記機械学習部によって更新可能である
請求項1から6のいずれかに記載の仕訳装置。
【請求項8】
複数の複合ルールであって、各複合ルールが仕訳処理ルールと当該仕訳処理ルールの適用対象が満たすべきマッチング条件とを含む複数の複合ルールを保持する複合ルール保持部と、
マッチング条件の類型と優先度とを対応付けて保持する優先度保持部と
を備える仕訳装置において行われる仕訳方法であって、
前記複合ルール保持部に保持される複数の複合ルールの中から、入力された文書が合致するマッチング条件を含む複合ルールを、前記優先度保持部に保持される優先度に従って選択するステップと、
選択された複合ルールに含まれる仕訳処理ルールに基づいて仕訳処理を実行するステップと
を含む仕訳方法。
【請求項9】
仕訳処理ルールと当該仕訳処理ルールの適用対象が満たすべきマッチング条件とを対応付けて保持する第1保持部と、
マッチング条件の類型と優先度とを対応付けて保持する第2保持部と、
前記第1保持部に保持されるマッチング条件の中から、入力された文書が合致するマッチング条件を、前記第2保持部に保持される優先度に従って選択する選択部と、
前記選択部によって選択されたマッチング条件に対応する仕訳処理ルールに基づいて仕訳処理を実行する仕訳処理部と
を備える仕訳装置。
【請求項10】
前記選択部は、
前記第2保持部を参照して所定の優先度に対応する類型を特定し、
特定された類型に属するマッチング条件を前記第1保持部から抽出し、
入力された文書と抽出されたマッチング条件とが合致しない場合、前記第2保持部を参照して前記所定の優先度よりも低い優先度に対応する類型を特定する
請求項9に記載の仕訳装置。
【請求項11】
前記選択部は、
同じ優先度に対応する複数の類型が特定された場合、それらの類型の中から入力された文書の種別に対応する類型をさらに特定し、
さらに特定された類型に属するマッチング条件を前記第1保持部から抽出する
請求項10に記載の仕訳装置。
【請求項12】
仕訳処理ルールと当該仕訳処理ルールの適用対象が満たすべきマッチング条件とを対応付けて保持する第1保持部と、
マッチング条件の類型と優先度とを対応付けて保持する第2保持部と
を備える仕訳装置において行われる仕訳方法であって、
前記第1保持部に保持されるマッチング条件の中から、入力された文書が合致するマッチング条件を、前記第2保持部に保持される優先度に従って選択するステップと、
選択されたマッチング条件に対応する仕訳処理ルールに基づいて仕訳処理を実行するステップと
を含む仕訳方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取引を仕訳する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
商取引は金銭の移動を伴う。たとえば商品の売買の場合、商品の仕様書から始まり、見積書、納品書、請求書等、まずは商品提供側が作成する書類が存在する。一方、商品受取側は、商品の注文書、受領書、代金の振込証明書などの書類を作成する。これらの書類のやりとりを経て金銭の授受がなされ、一連の取引がいわゆる仕訳処理によって帳簿に記録される。
【0003】
年間の売上が1億円の病院の場合、年間の仕訳数は5000にもなると言われる。メーカーの場合、一般にその数はもっと大きくなる。多数の企業の会計を引き受ける税理士は、ときに数百万という数の仕訳処理を毎年の確定申告までに終えなければならず、その労力は計り知れない。
【0004】
特許文献1は、取引を帳簿に記録する仕訳処理において、取引の証憑となる文書を併せて記録する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
仕訳処理対象の文書に対して実行すべき仕訳処理は状況に応じて異なる。たとえば請求書の支払処理では、その請求額の銀行口座からの出金を記録した銀行取引明細書の有無に応じて仕訳処理が異なる。銀行取引明細書がある場合、「借方に請求額の費用を計上し、貸方に請求額の出金に伴う銀行口座の資産減を計上する」という仕訳処理が行われる。一方、銀行取引明細書がない場合、「借方に請求額の費用を計上し、貸方に請求額の支払義務である買掛金を計上する」という仕訳処理が行われる。このように、仕訳処理は処理対象の文書から一意的に決まるものではなく、状況に適した仕訳処理を選択できる技術があれば会計処理を効率化できることを本発明者は認識した。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、状況に適した仕訳処理を効率的に選択できる仕訳装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の仕訳装置は、複数の複合ルールであって、各複合ルールが仕訳処理ルールと当該仕訳処理ルールの適用対象が満たすべきマッチング条件とを含む複数の複合ルールを保持する複合ルール保持部と、マッチング条件の類型と優先度とを対応付けて保持する優先度保持部と、複合ルール保持部に保持される複数の複合ルールの中から、入力された文書が合致するマッチング条件を含む複合ルールを、優先度保持部に保持される優先度に従って選択する複合ルール選択部と、選択された複合ルールに含まれる仕訳処理ルールに基づいて仕訳処理を実行する仕訳処理部とを備える。
【0009】
本発明の別の態様は、仕訳方法である。この方法は、複数の複合ルールであって、各複合ルールが仕訳処理ルールと当該仕訳処理ルールの適用対象が満たすべきマッチング条件とを含む複数の複合ルールを保持する複合ルール保持部と、マッチング条件の類型と優先度とを対応付けて保持する優先度保持部とを備える仕訳装置において行われる仕訳方法であって、複合ルール保持部に保持される複数の複合ルールの中から、入力された文書が合致するマッチング条件を含む複合ルールを、優先度保持部に保持される優先度に従って選択するステップと、選択された複合ルールに含まれる仕訳処理ルールに基づいて仕訳処理を実行するステップとを含む。
【0010】
本発明のさらに別の態様は、仕訳装置である。この装置は、仕訳処理ルールと当該仕訳処理ルールの適用対象が満たすべきマッチング条件とを対応付けて保持する第1保持部と、マッチング条件の類型と優先度とを対応付けて保持する第2保持部と、第1保持部に保持されるマッチング条件の中から、入力された文書が合致するマッチング条件を、第2保持部に保持される優先度に従って選択する選択部と、選択部によって選択されたマッチング条件に対応する仕訳処理ルールに基づいて仕訳処理を実行する仕訳処理部とを備える。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、仕訳方法である。この方法は、仕訳処理ルールと当該仕訳処理ルールの適用対象が満たすべきマッチング条件とを対応付けて保持する第1保持部と、マッチング条件の類型と優先度とを対応付けて保持する第2保持部とを備える仕訳装置において行われる仕訳方法であって、第1保持部に保持されるマッチング条件の中から、入力された文書が合致するマッチング条件を、第2保持部に保持される優先度に従って選択するステップと、選択部によって選択されたマッチング条件に対応する仕訳処理ルールに基づいて仕訳処理を実行するステップとを含む。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、状況に適した仕訳処理を効率的に選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係る仕訳装置の機能ブロック図である。
【
図2】仕訳装置により提供される自動仕訳サービスを利用する企業における請求書の支払処理を説明する模式図である。
【
図4】主文書の指定情報および関連文書のマッチングルールの詳細登録画面である。
【
図5】複合ルール保持部に保持される複合ルールのデータ構造を示す図である。
【
図6】優先度設定部による優先度保持部への優先度の設定例を示す表である。
【
図7】優先度設定部を介した優先度保持部における優先度の設定画面例を示す図である。
【
図8】仕訳装置の処理を示すフローチャートである。
【
図9】仕訳装置の仕訳処理の状況を示す画面例を示す図である。
【
図10】複合ルール保持部に保持される複合ルールの例を示す図である。
【
図11】第2の実施形態に係る仕訳装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態は、様々な文書に基づく仕訳処理方法を定める複合ルールが多数ある場合に、状況に適した複合ルールを効率的に選択することを主な目的とする。このため、各複合ルールに含まれるマッチング条件の類型(特定の種別の文書を指定する、金額一致条件で文書を指定する、キーワードマッチ条件で文書を指定する、等)に応じた優先度が設定される。
【0016】
優先度に応じて効率的に選択された複合ルールに基づいて実行された仕訳処理の結果、取引ごとに、借方の情報(勘定科目、金額、税等)と貸方の情報(勘定科目、金額、税等)とが対応付けられているデータが生成され、仕訳装置の不図示の保持部に格納される。このように生成されたデータは、後述のとおり表示の用に供されてもよいし、後続の税務処理、会計処理に用いられてもよい。
【0017】
図1は、第1の実施形態に係る仕訳装置100の機能ブロック図である。仕訳装置100は、文書入力部101と、文書保持部102と、メタデータ抽出部103と、主文書取得部104と、記録部105と、設定部106と、複合ルール選択部107と、マッチングルール取得部108と、関連文書検索部109と、仕訳処理部110と、表示制御部111を備える。これらの機能ブロックは、コンピュータの中央演算処理装置、メモリ、入力装置、出力装置、コンピュータに接続される周辺機器等のハードウェア資源と、それらを用いて実行されるソフトウェアの協働により実現される。コンピュータの種類や設置場所は問わず、上記の各機能ブロックは、単一のコンピュータのハードウェア資源で実現してもよいし、複数のコンピュータに分散したハードウェア資源を組み合わせて実現してもよい。
【0018】
本実施形態では、仕訳装置100のほとんどの機能は、PCやスマートフォン等のユーザ端末がインターネット等の情報通信ネットワークを介してアクセス可能なサーバにより実現される。ユーザは、ユーザ端末の入力手段(マウス、キーボード、タッチパネル、カメラ等)を介して仕訳装置100に操作信号を入力する。特に、ユーザ端末の入力によって後述する複合ルールや優先度を設定する場合、設定部106の機能はユーザ端末により実現されるか、または仕訳装置100に設けられた設定部106がユーザ端末を入出力インタフェースとして用いることにより実現される。また、仕訳装置100の処理の内容を表示する表示画面は、任意のディスプレイなどの表示部20に表示されてもよいが、以下ではユーザ端末のディスプレイに表示される場合を説明する。
【0019】
文書入力部101は、仕訳処理対象の文書を入力し、文書保持部102に格納する。本実施形態では、文書は主文書と関連文書に分類される。主文書は、実行しようとする仕訳処理において必要不可欠な文書であり、取引の内容の証拠となる証憑書類が該当する。主文書がなければ仕訳処理は実行されない。関連文書は、主文書に基づく仕訳処理を補足する情報を提供する文書である。関連文書は、主文書と併せて取引の内容を証明する証憑書類でもよいし、仕訳処理の完了には必要とされない任意の補足書類(例えば、取引に関する関係者の通信記録や備忘録)でもよい。したがって、後述するように、関連文書がなければ仕訳処理が実行されない場合もあるし、関連文書がなくても仕訳処理が実行される場合もある。また、証憑書類は実行しようとする仕訳処理に応じて主文書にも関連文書にもなりうる。したがって、主文書と関連文書の分類は固定的なものではなく、実行しようとする仕訳処理に応じて変わる流動性をもつ場合もある。
【0020】
主文書と関連文書の簡単な具体例をいくつか示す。
図2は、仕訳装置100により提供される自動仕訳サービスを利用する企業40における請求書の支払処理を説明する模式図である。この例では、仕訳装置100と自動仕訳サービス利用企業40の企業担当者端末41とはインターネットなどのネットワーク42を介して通信可能に接続されている。自動仕訳サービス利用企業40は外注先などの取引先43に商品やサービスを発注し、取引先43は発注された商品やサービスを自動仕訳サービス利用企業40に提供する。取引先43は商品やサービスの対価を請求するために請求書を作成して自動仕訳サービス利用企業40に送付する。自動仕訳サービス利用企業40は自身が銀行口座を有する銀行44に、請求書に記載の額の金銭を自身の銀行口座から取引先43の銀行口座に振り込むよう指示する。銀行44は当該振り込み処理を行う。銀行44は月一回などの頻度で定期的に自動仕訳サービス利用企業40の銀行取引明細書(例えば、上記の振り込みの記録を含む)を作成し、当該企業40に提供する。この請求書の支払処理では、取引先からの請求書が主文書となり、その請求書に記載された請求額が取引先の銀行口座に出金されたことを示す銀行取引明細書が関連文書となる。この例では、主文書および関連文書が共に仕訳処理の完了に必要な証憑書類であり、両文書が揃った段階で、借方で請求額の費用を計上する、買掛金の減少に伴う負債減を計上する等の仕訳処理が実行され、貸方で銀行口座からの請求額の出金に伴う資産減を計上する仕訳処理が実行される。
【0021】
税金の還付処理では、税務当局からの還付通知書が主文書となり、その還付通知書に記載された還付額が銀行口座に入金されたことを示す銀行取引明細書が関連文書となる。この例でも、主文書および関連文書が共に仕訳処理の完了に必要な証憑書類であり、両文書が揃った段階で、借方で銀行口座への還付額の入金に伴う資産増を計上する仕訳処理が実行され、貸方で入金に伴う収益を計上する、繰延税金資産の取り崩しに伴う資産減を計上する等の仕訳処理が実行される。
【0022】
証憑書類の例を以下に示す。
・見積書、注文書、納品書、請求書、領収書、借入契約書、納税通知書、還付通知書、金利通知書、配当金支払通知書等の取引や資金移動の内容を示す書類
・銀行取引明細書等の銀行口座の入出金を示す書類
・減価償却の対象となる資本的経費(CAPEX)のリスト
・不動産の新規取得、工事完了報告書、稼働状況、賃料、収入、支出、敷金、未収金等の不動産管理に関する書類
・信託決算書等の信託に関する報告書
以上のような証憑書類やその他の任意の補足書類の種類は、後述するメタデータ抽出部103がメタデータを抽出したときに判定して文書保持部102に格納する。あるいはまた、文書の種類は、文書が入力されたとき、ユーザのマニュアル入力またはコンピュータの自動認識によって、文書入力部101が文書保持部102に格納してもよい。
【0023】
なお、本実施形態において、「文書」および「書類」は、任意の種類、形式、拡張子のファイル、電子文書を意味する。したがって、文書および書類には、狭義の文書ファイルだけでなく、表計算ファイル、画像ファイル、動画ファイル、音声ファイル、電子メールやメッセージ等の通信ファイル等の非文書形式のファイルも含まれる。紙の証憑書類等をイメージスキャナで取り込んだ文書は、画像ファイルとして文書入力部101に入力される。
【0024】
メタデータ抽出部103は、文書入力部101が文書保持部102に格納した文書からメタデータを抽出する。文書が文書ファイル、表計算ファイル、通信ファイル等のテキストデータを含むファイルの場合、仕訳処理に用いられる可能性のある各テキストデータを個別に抽出し、適当な種別情報を付してメタデータを生成する。
【0025】
たとえば、文書の種類が請求書の場合、発行元の名前が「AAA」とのテキストデータだったとして、「発行元名前」との種別情報が付加されたメタデータ「発行元名前:AAA」が生成される。同様に、請求書の宛先の名前が「BBB」とのテキストデータだった場合は「宛先名前」との種別情報が付加されたメタデータ「宛先名前:BBB」が生成され、請求書の請求額が「CCC」とのテキストデータだった場合は「請求額」との種別情報が付加されたメタデータ「請求額:CCC」が生成され、請求書の発行日が「DDD」とのテキストデータだった場合は「発行日」との種別情報が付加されたメタデータ「発行日:DDD」が生成される。
【0026】
なお、文書にテキストデータ以外の非テキストデータ、例えば、団体や商品等のロゴタイプの画像データが含まれている場合は、その非テキストデータをそのままメタデータとして抽出してもよい。この際、その非テキストデータが表すもの(ロゴタイプの画像データの例では団体や商品等)を種別情報としてメタデータに含めるのが好ましい。
【0027】
文書が画像ファイル、動画ファイル、音声ファイル等の通常はテキストデータを含まないファイルの場合、メタデータ抽出部103は、画像認識や音声認識等の非テキストデータ認識によって仕訳処理に用いられる可能性のあるデータをファイルから抽出し、適当な種別情報を付してメタデータを生成する。典型的な例として、紙の証憑書類等をイメージスキャナで画像ファイルとして取り込んだ文書に対し、画像認識の一種である光学文字認識(OCR:Optical Character Recognition)を適用することで、画像ファイルからテキストデータを抽出できる。抽出されたテキストデータに基づくメタデータの生成は、上記のテキストデータを含むファイルと同様に行うことができる。
【0028】
後述するように、文書のマッチング条件がテキストベースで設定される場合は、メタデータをこのようにテキストベースで抽出するのが好ましい。一方、画像や音声等の非テキストデータの認識技術の近年の進歩によって、非テキストデータのままでも文書のマッチングを行うことができる。したがって、メタデータは非テキストデータ、例えば画像データ、動画データ、音声データでもよい。上記の画像ファイルの例では、OCRを適用する代わりに、画像ファイル中で仕訳処理に用いられる可能性のある画像領域を特定し、その各画像領域の画像データに適当な種別情報を付してメタデータとしてもよい。
【0029】
なお、人工知能(AI: Artificial Intelligence)技術の発展により、上記のような文書から直接抽出されたメタデータを人工知能が解釈し、仕訳処理に有用な補足データを自律的に生成することもできる。このように人工知能が生成した補足データもメタデータに含めるのが好ましい。
【0030】
以上のようにメタデータ抽出部103によって文書から抽出されたメタデータは、当該文書と関係付けられ、当該文書と共に文書保持部102に格納される。以上が仕訳処理のための準備工程であり、以下が実際の仕訳処理である。
【0031】
主文書取得部104は、文書保持部102から、仕訳処理対象の主文書を取得する。文書保持部102に保持されている多数の文書の中から、主文書取得部104が主文書を取得する順序やタイミングは任意であるが、以下、文書保持部102に新規文書が格納される都度、主文書取得部104がその新規文書を主文書として取得するものとする。なお、後述するように、主文書取得部104が取得した文書が結果的に主文書に該当しないこともあるが、その場合、仕訳装置100はその文書に基づく仕訳処理を中止して次の新規文書の格納まで待機する。
【0032】
記録部105は、複合ルール保持部1051と、優先度保持部1052を備える。後述するように、複合ルール保持部1051に保持される複合ルールと、優先度保持部1052に保持される優先度は互いに関連するデータである。したがって、効率的なデータ処理のために両保持部1051、1052は同一のメモリで実現するのが好ましいが、異なるメモリで実現してもよい。
【0033】
複合ルール保持部1051は複数の複合ルールを保持する。各複合ルールは、少なくとも主文書に基づく仕訳処理ルールと、当該仕訳処理ルールの適用対象となる主文書および/または関連文書が満たすべきマッチング条件とを含む。マッチング条件は、主文書を指定する主文書指定情報を含み、関連文書のマッチングルールを含むことがある。また、関連文書のマッチングルールは、主文書と併せて仕訳処理されるべき関連文書を指定する関連文書指定情報に該当する。優先度保持部1052は、マッチング条件の類型(またはタイプ)と優先度とを対応付けて保持する。
【0034】
本実施形態では、複合ルールの各々に優先度を設定するのではなく、複合ルールに含まれるマッチング条件の類型に優先度を設定する。例えば、本実施形態に係る処理では、入力文書と複合ルール1のマッチング条件1とのマッチング1が試行され、合致しなければ、入力文書と複合ルール2のマッチング条件2とのマッチング2が試行される、というフローが実行されうる。ここで、マッチング1がマッチング2よりも先に試行される理由は、マッチング条件1の類型の優先度がマッチング条件2の類型の優先度よりも高いからであって、複合ルール1の優先度が複合ルール2の優先度よりも高いからではない。本実施形態ではそもそも、複合ルール1にも複合ルール2にも優先度は設定されていないし、マッチング条件1にもマッチング条件2にも優先度は設定されていない。マッチング条件の類型に優先度が設定されているのである。
【0035】
これにより、自動仕訳においてルールの構築の自由度を高めることで様々な種類の取引をより正確に仕分けることができるようになると共に、類型の優先度を管理することで管理の煩雑化を抑えることができる。ルール構築の自由度は、個別具体的なルールの各々に優先度を付すこととすればより高まるかもしれない。しかしながら、その場合、ルールの数が増えればその分設定作業・更新作業の手間も増え、優先度のレベルの数も増えるので、ルールの設定・管理がより困難で手のかかるものとなり、人為的なミスが発生する蓋然性も高まる。本実施形態では、マッチング条件の類型に優先度を設定することで、ルールの設定や管理の負担の増大を抑えつつルールの構築の自由度を高めることができる。
【0036】
設定部106は、複合ルール登録部1061と、優先度設定部1062とを含む。複合ルール登録部1061は、複合ルール保持部1051に複合ルールを登録する。複合ルール登録部1061は、ユーザのマニュアル操作またはコンピュータの自動入力に応じて、新規の複合ルールの作成、既存の複合ルールの変更や削除等の登録処理を行う。優先度設定部1062は、優先度保持部1052にマッチング条件の類型に応じた優先度を設定する。優先度設定部1062は、ユーザのマニュアル操作またはコンピュータの自動入力に応じて、マッチング条件の新規の類型の登録、既存の類型の変更や削除、各類型への優先度の新規付与、変更等の設定処理を行う。
【0037】
図3および
図4は、複合ルール登録部1061による複合ルールの登録画面例を示す。この登録画面は、後述する表示制御部111によってユーザ端末の表示部20に表示される。取引名表示領域21は、ユーザやコンピュータが任意に設定可能な取引の名称を表示する。取引概要表示領域22は、予め用意されたプルダウンリストから選択された取引の概要を表示する。エンティティ表示領域23は、本複合ルールが適用されるエンティティ(個人や法人)を表示する。例えば、多数の顧客を抱える税理士法人が本実施形態の仕訳装置100を利用する場合、エンティティ表示領域23で適用対象のエンティティを指定することで、税理士法人の顧客(エンティティ)毎に異なる複合ルールを設定できる。一方、全ての顧客に共通の複合ルールを設定する際は、図示のように「All」を指定する。税理士法人に所属する税理士は、自身が担当するエンティティの税務を行うために自身の端末からネットワークを介して仕訳装置100にアクセスし、当該エンティティのためのインスタンスにログインする。当該インスタンスでは、当該インスタンスに対応するエンティティが適用対象となっている複合ルールのみが使用される。例えば、「甲社」のインスタンスにログインしている場合、エンティティ表示領域23で「甲社」が指定されているか「ALL」が指定されている複合ルールのみが使用される。
【0038】
仕訳表示領域24は、主文書表示領域25に表示される主文書と関連文書表示領域26に表示される関連文書を関連づけながら実行される仕訳処理の内容を表示する領域であり、複合ルールの主要部としての仕訳処理ルールを表示し、その設定を受け付ける。借方表示領域241は借方(Debit/Dr)の処理を設定するための領域であり、貸方表示領域242は貸方(Credit/Cr)の処理を設定するための領域である。借方表示領域241および貸方表示領域242は、それぞれ、貸借表示部243、取引アカウント表示部244、取引サブアカウント表示部245、取引金額表示部246、税金アカウント表示部247、税金額表示部248を含み、それぞれの表示部が編集可能である。特にここでの日付や金額などの数値を指定する場合、主文書の項目および関連文書の項目の両方を演算に利用可能である。例えば、「金額=(主文書の項目1)-(関連文書の項目3)」のように、異なる文書の異なる項目に基づく設定が可能となっている。このように、仕訳表示領域24で指定される仕訳処理において主文書のみならず関連文書の情報も利用可能としたことにより、仕訳処理の設定の自由度を高めることができる。これにより、例えばより複雑な仕訳処理の自動化が可能となり、ユーザ利便性が向上する。
【0039】
貸借表示部243は、借方(Dr)および貸方(Cr)の別を表示する。図示の取引例では、借方を表す借方表示領域241と貸方を表す貸方表示領域242がそれぞれ一つであるが、借方および/または貸方の項目が複数となる取引もある。その場合は、借方表示領域241および/または貸方表示領域242を複数設定できる。取引アカウント表示部244は、取引を記録する勘定科目(アカウント)を指定する。取引サブアカウント表示部245は、取引アカウント表示部244で指定された勘定科目の下位勘定科目(サブアカウント)を指定する。勘定科目に下位勘定科目がない場合、取引サブアカウント表示部245は空欄とされる。
【0040】
取引金額表示部246は、取引アカウント表示部244および取引サブアカウント表示部245で指定された勘定科目および下位勘定科目に計上されるべき取引金額を指定する。図示の取引例は、取引概要表示領域22にあるように匿名組合出資金の入金処理に関し、主文書表示領域25に表示される主文書としての「Notice Letter」(匿名組合出資金の通知書)に基づいて実行される。借方表示領域241および貸方表示領域242の取引金額表示部246に表示される「NoticeAmount」は、「Notice Letter」に記載された匿名組合出資金の金額を取引金額とすることを意味する。このとき、借方表示領域241では匿名組合出資金の入金に伴う普通預金の増加が記録され、貸方表示領域242では匿名組合出資金の増加が記録される。
【0041】
この例のように、借方表示領域241および貸方表示領域242がそれぞれ一つの場合、借方および貸方の取引金額表示部246は一致しなければならない。借方および/または貸方の項目が複数となる取引では、借方および貸方の取引金額表示部246の総額が一致しなければならない。
【0042】
税金アカウント表示部247は、取引に関する税金を記録する勘定科目(アカウント)を指定する。税金額表示部248は、税金アカウント表示部247で指定された勘定科目に計上されるべき税金額を指定する。図示の取引例は、取引に関する税金が発生しないため、税金アカウント表示部247は「0 - 対象外」を表示し、税金額表示部248は「0」を表示する。
【0043】
主文書表示領域25は、仕訳処理対象の主文書の種類を表示する。前述の通り、図示の例では、主文書の種類として「Notice Letter」(匿名組合出資金の通知書)が登録されている。主文書の詳細登録画面については
図4に関して後述する。
【0044】
関連文書表示領域26は、主文書について予め設定された関連文書のマッチングルールに基づき検索される関連文書の種類を表示する。図示の例では、関連文書の種類として「Bank Statement」(匿名組合出資金が入金される銀行の取引明細書)が登録されている。なお、主文書とは異なり、関連文書は一つの複合ルールに複数登録できるため、そのための関連文書追加ボタン261が設けられる。また、関連文書がなくても仕訳処理が実行できる場合、関連文書表示領域26はなくてもよい。関連文書の詳細登録画面については
図4にて後述する。
【0045】
マッチング条件表示領域27は、
図4に示される主文書の指定情報および関連文書のマッチングルールの登録画面で登録されたマッチング条件の名称271と登録日272を表示する。画面上でマッチング条件の名称271を選択することで、
図4の詳細登録画面に遷移できる。
【0046】
図4は、主文書の指定情報および関連文書のマッチングルールの詳細登録画面である。マッチング条件の名称271は、ユーザやコンピュータが任意に設定可能である。
【0047】
主文書表示領域25は、主文書を指定する主文書指定情報の設定項目として、文書種別251、メタデータ種別(Data Key)252、比較条件253、比較値254を含む。文書種別251は、文書の種類を設定する。例えば、先に例示した各種の証憑書類をプルダウンリストから選択できる。図示の例では、前述の通り、匿名組合出資金の通知書に対応する「Notice Letter」が設定されている。
【0048】
メタデータ種別252は、文書種別251で設定された種類の文書について、主文書の指定に用いるメタデータの種類を設定する。メタデータ抽出部103の説明において、文書の種類が請求書の場合の「発行元名前:AAA」「宛先名前:BBB」「請求額:CCC」「発行日:DDD」等のメタデータを例示したが、これらの各メタデータの前段にある「発行元名前」「宛先名前」「請求額」「発行日」等の種別情報をメタデータ種別252で設定できる。文書種別251に応じて、主文書の指定に主に用いるメタデータの種類は限られるため、これらをプルダウンリストとしてユーザがその中から適当なものを選択できるようにしてもよい。図示の例では、匿名組合出資金の通知書の「Notice Sender」(発行元名前)が設定されている。
【0049】
比較条件253は、メタデータ種別252で設定された種類のメタデータについて、比較値254で設定される比較値に対する比較条件を設定する。比較値254が図示のようにテキストデータである場合、比較条件253はテキストデータに対する各種の論理演算方法を設定する。例えば、比較値254のテキストに関し「それと同一である」「それと同一でない」「それを含む」「それを含まない」「それから始まる」「それから始まらない」「それで終わる」「それで終わらない」等の各種の比較条件を設定できる。また、比較値254が数値データである場合、比較条件253は数値データに対する各種の算術演算方法を設定する。例えば、比較値254の数値に関し「それと等しい」「それと等しくない」「それより大きい」「それより小さい」「それ以上」「それ以下」等の簡単な大小比較条件を設定できる。以上のような論理演算または算術演算において複数の比較値254を設定してもよい。その場合の比較条件253は、複数の比較値254に基づく任意の比較演算を行う多変数関数として設定できる。
【0050】
図示の例では、「株式会社XX銀行」との比較値254に対し、「contains」(含む)との比較条件253が設定されている。したがって、この主文書指定情報は、「Notice Sender」(メタデータ種別252)として「株式会社XX銀行」(比較値254)を「含む」(比較条件253)「Notice Letter」(文書種別251)を主文書として指定するものである。換言すれば、この主文書指定情報によって株式会社XX銀行が発行した匿名組合出資金の通知書が主文書として指定される。
【0051】
以上のように、主文書表示領域25に表示される主文書指定情報のうち、メタデータ種別252、比較条件253、比較値254は合わせて、主文書に含まれるメタデータについての指定条件(以下、メタデータ指定条件という)を一つ定める。
図4の例ではメタデータ種別252、比較条件253、比較値254からなる1行が一つのメタデータ指定条件となる。メタデータ指定条件には、キーワードマッチや数値マッチなどの異なる複数の類型が存在する。後述するように、これらのメタデータ指定条件の類型は、マッチング条件の類型の優先度の設定に利用される。
【0052】
なお、図示の例では、設定項目252~254の組合せで定義されるメタデータ指定条件が一つしかないが、指定条件追加ボタン255によってメタデータ指定条件を追加できる。この際、一つの複合ルールに登録される主文書は一つであるため、必然的に文書種別251は複数のメタデータ指定条件に亘って共通となる。したがって、新たに追加するメタデータ指定条件では、メタデータ種別252、比較条件253、比較値254の三つの項目を設定すればよい。また、メタデータ指定条件削除ボタン256によって既存のメタデータ指定条件を削除できる。
【0053】
関連文書表示領域26は、主文書表示領域25と同様に、関連文書のマッチングルールの設定項目として、文書種別262、メタデータ種別263、比較条件264、比較値265を含む。これらの設定項目は、主文書表示領域25の文書種別251、メタデータ種別252、比較条件253、比較値254と同等であり、重複した説明は省略する。文書種別262は、主文書の文書種別251と同様に、文書の種類を設定する。主文書は証憑書類に限られるが、関連文書は証憑書類以外の任意の補足書類でもよいため、それらに対応する種類も追加的に設定可能である。図示の例では、前述の通り、匿名組合出資金の入金に関する「Bank Statement」が設定されている。そして、この「Bank Statement」について、二つのメタデータ指定条件が設定されている。
【0054】
第1のメタデータ指定条件では、メタデータ種別263に「Item Description」(摘要)が設定され、比較条件264に「contains」(含む)が設定され、比較値265に「ガイコクカンケイ」(外国関係)が設定されている。したがって、このマッチングルールは、「Item Description」(メタデータ種別263)に「ガイコクカンケイ」(比較値265)のテキストを「含む」(比較条件264)「Bank Statement」(文書種別262)を関連文書として見つけるものである。換言すれば、このマッチングルールによって外国関係の摘要を含む銀行取引明細書を関連文書として検索できる。
【0055】
第2のメタデータ指定条件では、メタデータ種別263に「Transaction Amount」(取引金額)が設定され、比較条件264に「=」(等しい)が設定され、比較値265に「NoticeAmount」(前述の通り、主文書としての「Notice Letter」に記載された匿名組合出資金の金額)が設定されている。したがって、このマッチングルールは、「Transaction Amount」(メタデータ種別263)が「NoticeAmount」(比較値265)に「等しい」(比較条件264)「Bank Statement」(文書種別262)を関連文書として見つけるものである。換言すれば、このマッチングルールによって通知書に記載された匿名組合出資金の金額と等しい取引金額(入金額)を含む銀行取引明細書を関連文書として検索できる。
【0056】
したがって、上記の第1および第2のメタデータ指定条件の組合せによって、外国関係の摘要を含み、かつ、通知書に記載された匿名組合出資金の金額と等しい取引金額を含む銀行取引明細書を関連文書として検索できる。このように検索された関連文書としての銀行取引明細書は、主文書である株式会社XX銀行発行の匿名組合出資金の通知書と共に、
図3の仕訳表示領域24に表示される取引の証憑となる。図示の例では、これらの両文書が揃った段階で、仕訳表示領域24に表示される取引(株式会社XX銀行からの匿名組合出資金の入金処理)の仕訳処理が後述する仕訳処理部110により実行される。
【0057】
以上のように、関連文書表示領域26に表示される関連文書指定情報のうち、メタデータ種別263、比較条件264、比較値265は合わせて、関連文書に含まれるメタデータについてのメタデータ指定条件を定める。後述するように、これらのメタデータ指定条件の類型は、マッチング条件の類型の優先度の設定に利用される。
【0058】
なお、指定条件追加ボタン266によって、既存の関連文書「Bank Statement」(文書種別262)についてメタデータ指定条件を追加できる。また、指定条件削除ボタン267によって既存のメタデータ指定条件を削除できる。さらに、
図3と同様の関連文書追加ボタン261によって、別の関連文書を追加することもできる。
【0059】
図4に示されるマッチング条件は、文書から抽出されたテキストデータを比較値254、265とするものである。これに対し、画像データ、動画データ、音声データ、AIによる補足データ等の非テキストデータに基づいてマッチング条件を構成することもできる。この場合、比較値254、265の代わりに非テキストデータそのものを比較対象データとし、比較条件253、264の代わりに比較対象データの形式に合わせた類否判断アルゴリズムを用いればよい。例えば、団体や商品等のロゴタイプの画像データを比較対象データとする場合、任意の画像類否判断アルゴリズムを用いて、そのロゴタイプと類似の画像を含む文書を検索できる。
【0060】
図5は、複合ルール保持部1051に保持される複合ルールのデータ構造を示す。本図に示される各データについては、
図3および
図4で詳述した。複合ルールは、基本情報、仕訳処理ルール24、マッチング条件としての主文書指定情報25および関連文書マッチングルール26を含む。基本情報は、複合ルールを特定するID(例えば、取引名表示領域21に入力された名称や一意の記号番号)と、複合ルールが対応する取引の概要(例えば、取引概要表示領域22に入力された情報)と、複合ルールの適用対象のエンティティ(例えば、エンティティ表示領域23で指定されたエンティティ)の各情報を含む。
【0061】
仕訳処理ルール24は、借方情報241と貸方情報242を含む。借方情報241および貸方情報242は、それぞれ、貸借情報243、取引アカウント情報244、取引サブアカウント情報245、取引金額情報246、税金アカウント情報247、税金額情報248を含む。
【0062】
取引に応じて実行すべき仕訳処理の内容に応じて、借方情報241および/または貸方情報242が複数あってもよい。主文書指定情報25は、文書種別251、メタデータ種別252、比較条件253、比較値254を含む。これらのデータの組251~254は複数あってもよい。その場合、前述したように、文書種別251は全てのデータの組で同一である。関連文書マッチングルール26は、文書種別262、メタデータ種別263、比較条件264、比較値265を含む。これらのデータの組262~265は複数あってもよい。
【0063】
図6は、優先度設定部1062による優先度保持部1052への優先度の設定例を示す表である。この表の各データは、優先度ルールID51、優先度52、適用ルールタイプ53の組で構成されるルールである。優先度ルールID51は、各ルールを特定する固有の識別情報である。図示の例では、コンピュータによって自動入力されるシリアルナンバーが優先度ルールID51として使用される。
【0064】
優先度52は、適用ルールタイプ53で指定されるマッチング条件の類型に付される優先度である。図示の例では、「1」を最高の優先度とする自然数によって優先度52が設定される。複数の類型について同一の優先度52を設定してもよい。図示の例では、最高の優先度「1」が優先度ルールID「001」「002」「007」の各ルールで規定される各類型に付与され、次いで高い優先度「2」が優先度ルールID「003」「004」「008」の各ルールで規定される各類型に付与され、次いで高い優先度「3」が優先度ルールID「005」のルールで規定される類型に付与され、次いで高い優先度「4」が優先度ルールID「006」のルールで規定される類型に付与される。後述するように、仕訳装置100は、主文書取得部104で取得された主文書に対して、優先度が高い類型に属するマッチング条件から順にマッチングを試行する。なお、同一の優先度の複数の類型(例えば優先度「1」のルール「001」「002」「007」で規定される各類型)の適用順序は任意である。
【0065】
適用ルールタイプ53は、優先度52の付与対象としてのマッチング条件の類型を指定する。マッチング条件の類型とは、仕訳処理ルールの適用対象が満たすべきマッチング条件の型ないしタイプである。マッチング条件の類型は以下の要素(以下、ルール細目ということもある)のうちの少なくとも一つにより定義可能である。類型の定義に以下の要素以外の要素が用いられてもよい。
(1)主文書の文書種別指定の有無
(2)主文書の具体的な文書種別
(3)主文書のメタデータ指定条件の有無と類型
(4)関連文書が要求されるか否か
(5)関連文書の文書種別指定の有無
(6)関連文書の具体的な文書種別
(7)関連文書のメタデータ指定条件の有無と類型
図6に示されるいくつかのルールについて具体的に説明する。
【0066】
ルール「001」の適用ルールタイプは「PDドキュメントタイプ=インボイス、SDドキュメントタイプ=銀行明細書、他にSDを要求しない」である。ここで、PDはPrimary Documentの略で主文書を意味し、SDはSupporting Documentの略で関連文書を意味する。第1のルール細目「PDドキュメントタイプ=インボイス」は、主文書の文書種別251が「請求書」(インボイス)であるマッチング条件を指定する。第2のルール細目「SDドキュメントタイプ=銀行明細書」は、関連文書の文書種別262が「銀行取引明細書」(銀行明細書)であるマッチング条件を指定する。第3のルール細目「他にSDを要求しない」は、第2のルール細目で指定される「銀行取引明細書」以外の関連文書を指定する関連文書マッチングルール26が存在しないマッチング条件を指定する。以上の三つのルール細目の論理積(AND)による組合せにより、このルール「001」は「主文書が請求書であること、かつ、関連文書として銀行取引明細書を一つ探すこと、かつ、それ以外の関連文書は探さないこと」というマッチング条件の類型を指定する。そして、このルール「001」が適用される場合、「主文書が請求書であること、かつ、関連文書として銀行取引明細書を一つ探すこと、かつ、それ以外の関連文書は探さないこと」という類型に合致するマッチング条件を含む複合ルールが複合ルール保持部1051から選択される。
【0067】
ルール「003」の適用ルールタイプは「PDドキュメントタイプ=インボイス、SD1ドキュメントタイプ=銀行明細書、SD2ドキュメントタイプ=インボイス、SD2キーワードマッチ条件有り」である。第1および第2のルール細目は、上記のルール「001」と同様である。第3のルール細目「SD2ドキュメントタイプ=インボイス」は、第2のルール細目で指定される第1の関連文書(SD1)としての「銀行取引明細書」に加え、第2の関連文書(SD2)として文書種別262で「請求書」を指定するマッチング条件を指定する。第4のルール細目「SD2キーワードマッチ条件有り」は、第2の関連文書としての「請求書」についてキーワードのマッチ条件が設定されたマッチング条件を指定する。具体的には、「請求書」についての関連文書マッチングルール26において、比較値265がテキストによるキーワードで構成され、比較条件264として「それと同一である」「それを含む」「それから始まる」「それで終わる」等のキーワードのマッチ条件が設定されたマッチング条件が指定される。なお、実際の比較値265には、
図3の「ガイコクカンケイ」の例にあるように個別具体的なテキストが設定されているが、本適用ルールタイプにおいては、テキストの内容は問わず、何らかのテキストが比較値265として設定されているかという点のみが問われる。キーワードのマッチ条件の有無はメタデータ指定条件の類型を定義する一要素であり、そのような要素には他に、数値のマッチ条件の有無や数値の大小関係条件の有無やデータ項目存否条件(例えば、特定のデータ項目を有する関連文書を検索するための条件)の有無やチェックボックスへのチェック存否条件(例えば、チェックボックスにチェックがある関連文書を検索するための条件)の有無などがある。ルール「003」の適用ルールタイプで指定されるマッチング条件の類型は、キーワードのマッチ条件有りというメタデータ指定条件の類型を含む。
【0068】
以上のように、関連文書のメタデータ指定条件の類型に基づいてマッチング条件の類型を指定できる。主文書のメタデータ指定条件の類型に基づいてマッチング条件の類型を指定することもできる。以上の四つのルール細目の組合せにより、このルール「003」は「主文書が請求書であること、かつ、第1の関連文書として銀行取引明細書を一つ探すこと、かつ、第2の関連文書として請求書を一つ探すこと、かつ、キーワードのマッチ条件により第2の関連文書を探すこと」というマッチング条件の類型を指定する。そして、このルール「003」が適用される場合、「主文書が請求書であること、かつ、第1の関連文書として銀行取引明細書を一つ探すこと、かつ、第2の関連文書として請求書を一つ探すこと、かつ、キーワードのマッチ条件により第2の関連文書を探すこと」という類型に合致するマッチング条件を含む複合ルールが複合ルール保持部1051から選択される。
【0069】
ルール「004」の適用ルールタイプは「PDドキュメントタイプ=銀行明細書、SDを要求しない」である。第1のルール細目「PDドキュメントタイプ=銀行明細書」は、主文書の文書種別251が「銀行取引明細書」(銀行明細書)であるマッチング条件を指定する。第2のルール細目「SDを要求しない」は、関連文書マッチングルール26が設定されていないマッチング条件を指定する。このように、関連文書指定情報26の有無はマッチング条件の類型を定義する一要素である。一方、基本的に主文書指定情報25はマッチング条件に含まれるため、主文書指定情報25の有無はマッチング条件の類型を定義する要素とはならない。しかし、例えば主文書を複数指定できる場合は主文書の数の条件の有無がマッチング条件の類型を定義する一要素となりうる。また、主文書の文書種別251やその指定の有無や主文書のメタデータ指定条件の有無や類型はマッチング条件の類型を定義する要素となりうる。以上の二つのルール細目の組合せにより、このルール「004」は「主文書が銀行取引明細書であること、かつ、関連文書は探さないこと」というマッチング条件の類型を指定する。そして、このルール「004」が適用される場合、「主文書が銀行取引明細書であること、かつ、関連文書は探さないこと」という類型に合致するマッチング条件を含む複合ルールが複合ルール保持部1051から選択される。
【0070】
ルール「005」の適用ルールタイプは「PDドキュメントタイプ=インボイス、SD1ドキュメントタイプ=銀行明細書、SD2ドキュメントタイプ=インボイス、SD3ドキュメントタイプ=インボイス」である。このルール「005」は「主文書が請求書であること、かつ、第1の関連文書として銀行取引明細書を一つ探すこと、かつ、第2の関連文書として請求書を一つ探すこと、かつ、第3の関連文書として請求書を一つ探すこと」というマッチング条件の類型を指定する。主文書、第2の関連文書、第3の関連文書はいずれも請求書であるが、このように異なる文書についてルール細目の内容が同一(ドキュメントタイプ=インボイス)となっても問題ない。このルール「005」に対応する具体的な仕訳処理については後述するが、詳細なマッチング条件251~254、262~265に基づいて、最終的には異なる請求書が主文書、第2の関連文書、第3の関連文書として指定されるためである。このように、
図6に示される適用ルールタイプで規定されるマッチング条件の類型は、マッチング条件251~254、262~265の少なくとも一部(ルール「005」では文書種別251、262)についてのものであり、この少なくとも一部のマッチング条件は仕訳処理すべき文書を予備的にフィルタする役割を果たす。その後、マッチング条件251~254、262~265の残りの部分に基づいて、個々の具体的な文書が最終的に特定される。
【0071】
ルール「007」の適用ルールタイプは「PDドキュメントタイプ=インボイス、SDドキュメントタイプ=銀行明細書、SD金額一致条件有り」である。第3のルール細目「SD金額一致条件有り」は、第2のルール細目で指定された関連文書としての「銀行取引明細書」について金額の一致条件が設定されたマッチング条件を指定する。具体的には、文書種別262として「銀行取引明細書」が指定された関連文書マッチングルール26において、「出金額」等の金額に関するメタデータ種別263が設定され、比較値265として具体的な金額を表す情報が設定され、比較条件264として「それと等しい」等の一致条件が設定されたマッチング条件が指定される。なお、実際の比較値265には、
図3の「NoticeAmount」の例にあるように個別具体的な金額を表す情報が設定されているが、本適用ルールタイプにおいては、その金額の大小は問わず、何らかの具体的な金額を表す情報が比較値265として設定されているかという点のみが問われる。金額の一致条件の有無はメタデータ指定条件の類型を定義する一要素である。以上の三つのルール細目の組合せにより、このルール「007」は「主文書が請求書であること、かつ、関連文書として銀行取引明細書を一つ探すこと、かつ、金額の一致条件により関連文書を探すこと」というマッチング条件の類型を指定する。そして、このルール「007」が適用される場合、「主文書が請求書であること、かつ、関連文書として銀行取引明細書を一つ探すこと、かつ、金額の一致条件により関連文書を探すこと」という類型に合致するマッチング条件を含む複合ルールが複合ルール保持部1051から選択される。
【0072】
以上で例示した適用ルールタイプ53は、いずれもマッチング条件の類型を指定するに過ぎず、個々の具体的なマッチング条件まで特定するものではない。しかしながら、上記の(1)~(7)の類型の要素のうち、適用ルールタイプにおいて(2)および/または(6)が指定される場合、これはマッチング条件の一部(文書種別)を具体的に指定することと同義である。したがって、ルール「005」に関して前述したように、仕訳処理すべき文書を予備的にフィルタすることと同じ効果が得られる。その予備的フィルタ処理の後続ステップにおいて、マッチング条件の残りの部分に基づいて、個々の具体的な文書が最終的に特定される。このように段階的な処理ステップを設けることで、文書の指定における自由度が飛躍的に向上し、仕訳処理を効率化できる。しかも、この予備的フィルタ処理のステップにおいて優先度52を設定可能とすることで、より一層の自由度が得られる。
【0073】
なお、個々の適用ルールタイプ53で規定される類型に属するマッチング条件を含む複合ルールは複数存在することが想定される。したがって、適用ルールタイプ53毎に優先度52を設定することで、複数の複合ルールにまとめて同じ優先度52を設定するのと同じ効果が得られる。多数の顧客を抱える税理士法人の場合、多様な態様の取引について顧客毎に複合ルールを作成する必要があり、複合ルールの数は膨大である。このような場合に個々の複合ルールに優先度を一つずつ設定するのは煩雑で非現実的である。本実施形態によれば、共通する類型(適用ルールタイプ53)のマッチング条件を含む複数の複合ルールにまとめて優先度52を効率的に設定するのと同じ効果が得られる。
【0074】
図7は、優先度設定部1062を介した優先度保持部1052における優先度の設定画面例を示す。本画面における各項目は優先度設定部1062への操作や入力によって任意に設定できる。優先度設定領域520は、
図6における優先度52を表示し、かつ、ユーザによる優先度の入力を受け付ける。優先度ルール名設定領域54は、
図6における優先度ルールの名称を表示し、かつ、ユーザによる任意の名称の入力を受け付ける。詳細表示部55は、三角形のアイコンのクリック操作に応じて、優先度ルールの詳細設定領域530を表示する。下向きの三角形のアイコンをクリックすることで優先度ルールの詳細設定領域530が展開表示され、上向きの三角形のアイコンをクリックすると優先度ルールの詳細設定領域530が畳まれて表示されなくなる。図示の例では、「法人特定ルール」の詳細設定領域530のみが表示されている。詳細設定領域530は、
図6における適用ルールタイプ53を表示し、かつ、ユーザによる類型の入力を受け付ける。
【0075】
詳細設定領域530は、ルール種類設定部531と、ルール適用形式設定部532と、対象項目設定部533と、比較条件設定部534と、データ型設定部535と、ルール細目追加部536を含む。ルール種類設定部531、ルール適用形式設定部532、対象項目設定部533、比較条件設定部534、データ型設定部535の組が、適用ルールタイプ53で規定される類型の構成単位であるルール細目を構成する。
図6で説明したように、一つの適用ルールタイプ53は複数のルール細目を含むことができ、ルール細目追加部536によってルール細目を追加できる。例えば、
図6におけるルール「001」の適用ルールタイプ53は、「PDドキュメントタイプ=インボイス」「SDドキュメントタイプ=銀行明細書」「他にSDを要求しない」という三つのルール細目から構成される。
【0076】
ルール種類設定部531では、ルール細目の種類をプルダウンリストから選択できる。以下にルール細目の種類の例を示す(括弧内に
図6における該当例も示す)
・主文書指定情報内の一つの項目(主に文書種別251)に基づくもの(ルール「001」の「PDドキュメントタイプ=インボイス」)、上記の類型の要素(1)、(2)に対応
・主文書指定情報内の複数の項目(主にメタデータ指定条件252~254)に基づくもの(
図6に該当例なし)、上記の類型の要素(3)に対応
・関連文書指定情報の有無に関するもの(ルール「001」の「他にSDを要求しない」、ルール「004」の「SDを要求しない」)、上記の類型の要素(4)に対応
・関連文書指定情報内の一つの項目(主に文書種別262)に基づくもの(ルール「001」の「SDドキュメントタイプ=インボイス」)、上記の類型の要素(5)、(6)に対応
・関連文書指定情報内の複数の項目(主にメタデータ指定条件263~265)に基づくもの(ルール「003」の「SD2キーワードマッチ条件有り」、ルール「007」の「SD金額一致条件有り」)、上記の類型の要素(7)に対応
なお、関連文書が複数ある場合は、各関連文書について上記の各種類を選択できる。
【0077】
ルール適用形式設定部532は、対象項目設定部533、比較条件設定部534、データ型設定部535で設定される条件の適用形式を設定する。例えば「含む」「含まない」という二つの適用形式から選択できる。「含む」が選択された場合、対象項目設定部533、比較条件設定部534、データ型設定部535で設定される条件が、そのままルール細目となる。「含まない」が選択された場合、対象項目設定部533、比較条件設定部534、データ型設定部535で設定される条件の否定がルール細目となる。なお、適用形式は上記の「含む」「含まない」に限らず、論理学に基づいて任意に設定すればよい。
【0078】
対象項目設定部533は、本ルール細目の対象となる項目を、マッチング条件251~254、262~265に基づいて設定する。図示の「Invoice: entity name」は、「請求書」(文書種別251)における「発行元名前」(メタデータ種別252)を対象項目とする。
【0079】
比較条件設定部534は、対象項目設定部533で設定された対象項目に対する比較条件を設定する。比較条件は任意の論理演算子または算術演算子を用いて設定できる。図示の例では「=」(それと等しい)が設定されている。
【0080】
データ型設定部535は、比較条件設定部534で設定された比較条件の適用対象としてのデータ型を設定する。データ型は、比較条件に適合する任意のものでよいが、例えば「文字列型」「数値型」「ブーリアン型」「日付型」「バイナリ型」「void型」が挙げられる。図示の例では「String」(文字列型)が設定されている。なお、
図6に関して、適用ルールタイプ53はマッチング条件の類型を指定するに過ぎず、個々の具体的なマッチング条件まで特定するものではない、と説明したが、その典型がデータ型設定部535に現われている。すなわち、データ型設定部535は、データの具体的な内容ではなく、データの型(類型)を設定する。
【0081】
以上、ルール種類設定部531、ルール適用形式設定部532、対象項目設定部533、比較条件設定部534、データ型設定部535の組で設定されるルール細目について説明した。図示の例は、「主文書」(531)である「請求書の発行元名前」(533)に「何らかの文字列」(535)が「含まれている」(534)という条件を「そのまま適用する」(532)ルール細目である。このような一または複数のルール細目によって一の優先度ルール(適用ルールタイプ53)が構成される。新たな優先度ルールを作成する際は、優先度ルール追加部56によって優先度ルールを追加する。
【0082】
図6および
図7に示した優先度ルールのリストは、仕訳装置100のユーザがログインするインスタンス毎に異なるものを優先度保持部1052に保持するのが好ましい。このために、優先度保持部1052は、マッチング条件の類型と、該類型に付された優先度と、該優先度が適用される顧客を特定するIDとを対応付けて保持してもよい。この優先度保持部1052では、同じ類型でも顧客IDが異なると優先度も異なりうる。仕訳装置100は、ユーザがログインしたインスタンスに対応する顧客の顧客IDをキーとして優先度保持部1052をフィルタリングしてもよい。例えば、仕訳装置100のユーザとして税理士法人に所属する税理士を想定した場合、自身が担当する顧客毎のインスタンスに対応した優先度ルールのリストを個別に用意する。これによって、税理士がログインしたインスタンスに最適にカスタマイズされた優先度ルールが自動的に適用されるので、各顧客の仕訳処理における文書の探索を効率的に行える。
【0083】
図1に戻り、仕訳装置100の残りの構成について説明する。
【0084】
複合ルール選択部107は、主文書取得部104が取得した文書に対して、それが合致する主文書指定情報を含む複合ルールを複合ルール保持部1051から選択する。ここでいう主文書指定情報は、
図4の主文書表示領域25における文書種別251、メタデータ種別252、比較条件253、比較値254で構成されるものである。したがって、
図4の例では、主文書取得部104が取得した文書が「株式会社XX銀行が発行した匿名組合出資金の通知書」との主文書指定情報251~254に合致する場合、
図3および
図4に示される複合ルールが複合ルール選択部107によって選択される。
【0085】
一方、主文書取得部104が取得した文書に合致する主文書指定情報251~254を含む複合ルールがない場合、この文書は関連文書である可能性が高い。その場合、仕訳装置100はその文書についての以降の処理を中止して、主文書取得部104が新たな文書を取得するまで待機する。
【0086】
前述の通り、多数の顧客を抱える税理士法人等では膨大な数の複合ルールがあり、複合ルール選択部107における複合ルールの選択処理が仕訳装置100の処理スピード向上や精度向上のボトルネックになりうる。本実施形態では、複合ルール選択部107の選択処理を効率的に行うため、優先度保持部1052に格納された優先度ルールが利用される。すなわち、複合ルール選択部107は、主文書取得部104が取得した文書が合致する主文書指定情報25を含む複合ルールが複合ルール保持部1051に複数保持されている場合、優先度保持部1052に保持されている優先度が高い類型に属するマッチング条件を含む複合ルールを選択する。より具体的には、複合ルール選択部107は、優先度保持部1052に保持されている優先度が高い類型に属するマッチング条件の主文書指定情報25から順に入力された文書が合致するか否かを判定し、合致した主文書指定情報25を含む複合ルールを複合ルール保持部1051から選択する。他の例では、複合ルール選択部107は、主文書取得部104が取得した文書が合致する主文書指定情報25を含むマッチング条件を複合ルール保持部1051から複数特定し、特定された複数のマッチング条件の中から優先度が高い類型に属するマッチング条件を選択してもよい。
【0087】
図6を参照して具体的に説明する。複合ルール選択部107は、最初に、最高の優先度「1」の優先度ルール「001」「002」「007」の適用ルールタイプ53に合致するマッチング条件を含む複合ルールを複合ルール保持部1051から抽出する。各優先度ルールに合致するマッチング条件の数をそれぞれ自然数でN1、N2、N7とすれば、合計でN1+N2+N7個のマッチング条件が、主文書取得部104が取得した文書に合致するマッチング条件の候補として抽出される。複合ルール選択部107は、これらのN1+N2+N7個の各マッチング条件について、その主文書指定情報25(文書種別251、メタデータ種別252、比較条件253、比較値254)が、主文書取得部104が取得した文書に完全に合致するか否かを判定する。完全に合致する主文書指定情報25があれば、複合ルール選択部107はその主文書指定情報25を含むマッチング条件を選択する。
【0088】
この例において、優先度ルール「001」「007」は主文書として「請求書」を指定し、優先度ルール「002」は主文書として「銀行取引明細書」を指定する。したがって、優先度ルール「002」は、優先度ルール「001」「007」と相互に排他的である。このように同一の優先度が設定された優先度ルールを相互に排他的なものとすることで、効率的に複合ルールを探索できる。一方、優先度ルール「001」と「007」は、主文書だけでなく関連文書も同一のものを指定するため相互に排他的ではない。例えば、PDドキュメントタイプ=インボイス、かつ、SDドキュメントタイプ=銀行明細書、かつ、SD金額一致条件有り、かつ、他にSDを要求しない、という類型に属するマッチング条件は、優先度ルール「001」で規定される類型にも「007」で規定される類型にも属する。このような場合、優先度の設計の段階で、優先度ルール「001」、「007」のいずれを優先したとしても処理の結果は同じとなり、会計処理上の大きな問題は生じないように設計する。したがって、本実施形態では、優先度ルール「001」と「007」の間で優先度を特に決める必要はなく、任意の順序で適用すればよい。
【0089】
最高の優先度「1」の探索処理において主文書取得部104が取得した文書に完全に合致するマッチング条件がなかった場合、複合ルール選択部107は、次いで高い優先度「2」の優先度ルール「003」「004」「008」の適用ルールタイプ53に合致するマッチング条件を複合ルール保持部1051から抽出する。各優先度ルールに合致するマッチング条件の数をそれぞれ自然数でN3、N4、N8とすれば、合計でN3+N4+N8個のマッチング条件が、主文書取得部104が取得した文書に合致するマッチング条件の候補として抽出される。以降は同様に、主文書取得部104が取得した文書に完全に合致する主文書指定情報25を含むマッチング条件が特定されるまで、類型の優先度順にマッチング条件の探索処理が継続される。
【0090】
各優先度に設定される優先度ルール(適用ルールタイプ53)は任意に設定できるが、優先度が高いほど厳しい優先度ルールを設定し、優先度が低いほど緩い優先度ルールを設定するのが好ましい。厳しい優先度ルールの優先度を高くすることで、十分な文書や情報に裏付けられた厳密な仕訳処理を優先的に実行できる。一方、緩い優先度ルールの優先度を低くすることで、十分な文書や情報が揃っていない場合でも暫定的な仕訳処理を実行できる。
【0091】
マッチングルール取得部108は、主文書取得部104が取得した主文書について予め設定された関連文書のマッチングルールを取得する。具体的には、マッチングルール取得部108は、複合ルール選択部107で選択されたマッチング条件に含まれる関連文書のマッチングルールを取得する。ここでいうマッチングルールは、
図4の関連文書表示領域26における文書種別262、メタデータ種別263、比較条件264、比較値265で構成されるものである。
【0092】
関連文書検索部109は、マッチングルール取得部108が取得したマッチングルールに基づき、文書保持部102に保持された関連文書を検索する。
図3および
図4に示されるマッチング条件が複合ルール選択部107によって選択され、マッチングルール取得部108によってそのマッチングルール262~265が取得された場合、関連文書検索部109は「外国関係の摘要を含み、かつ、通知書に記載された匿名組合出資金の金額と等しい取引金額を含む銀行取引明細書」を関連文書として検索する。文書保持部102内で関連文書が見つかった場合は、次の仕訳処理部110の処理に進む。文書保持部102内で関連文書が見つからなかった場合の処理については後述する。
【0093】
仕訳処理部110は、主文書取得部104が取得した主文書および関連文書検索部109が検索した関連文書を関連づけながら仕訳処理を実行する。具体的には、仕訳処理部110は、複合ルール選択部107によって選択されたマッチング条件を含む複合ルールに含まれる仕訳処理ルール(マッチング条件に対応する仕訳処理ルール)に基づいて仕訳処理を実行する。ここでいう仕訳処理ルールは、
図3の仕訳表示領域24に表示されるものである。
図3および
図4の複合ルールが選択された場合は、主文書表示領域25の主文書と関連文書表示領域26の関連文書が揃った段階で、仕訳処理部110が仕訳表示領域24の仕訳処理を実行する。
【0094】
表示制御部111は、仕訳処理部110が実行する仕訳処理の状況または結果を表示部20に表示させる。
【0095】
図8は、仕訳装置100の処理を示すフローチャートである。フローチャートの説明において「S」は「ステップ」を意味する。
【0096】
S1では、文書入力部101が仕訳処理対象の文書を入力する。S2では、S1で入力された文書が文書保持部102に格納される。S3では、メタデータ抽出部103がS2で格納された文書からメタデータを抽出する。S4では、S3で抽出されたメタデータに基づきメタデータ抽出部103が文書の種別(請求書、還付通知書、銀行取引明細書など)を判定する。この文書の種別の判定は、ルールベースで行われてもよいし、機械学習により得られるモデルを用いて行われてもよい。S3で抽出されたメタデータが文書の種別を含む場合はその種別が採用され、含まない場合は、文書の画像認識および/または他のメタデータの内容に基づいてルールベースまたは機械学習ベースで種別が判定されてもよい。なお、S3で抽出されたメタデータおよびS4で判定された文書種別は、S2で格納された文書と関係づけられ、当該文書と共に文書保持部102に格納される。本実施形態では、S1~S4の文書準備工程と、S5以降の文書処理工程が引き続いて行われるが、文書準備工程と文書処理工程を別工程として、それぞれを任意のタイミングで行ってもよい。
【0097】
S5では、主文書取得部104が文書保持部102から仕訳処理対象の文書を取得する。S6では、主文書取得部104がS5で取得した文書について未処理取引の有無を判定する。銀行取引明細書のように、一つの文書に複数の取引が含まれる場合は、各取引が順次処理される。
【0098】
S7は、複合ルール選択部107が、優先度保持部1052に保持されている優先度ルールに基づいて、複合ルール保持部1051に保持されている複合ルールの中から適用候補の複合ルールを探索する処理であり、S71~S75の各ステップで構成される。S71では、複合ルール選択部107は、最初の探索対象として最高の優先度「1」を指定する。S72では、複合ルール選択部107は、優先度保持部1052に保持されている優先度ルールの中から、S71で指定された優先度「1」が付与された優先度ルールを特定する。
図6の例では、優先度「1」が付与された優先度ルール「001」「002」「007」が特定される。
【0099】
S73では、複合ルール選択部107は、複合ルール保持部1051に保持されている複合ルールの中から、S72で特定された優先度ルール「001」「002」「007」の適用ルールタイプ53(すなわち、マッチング条件の類型)に属するマッチング条件を含む複合ルールを特定または抽出する。前述の通り、優先度ルール「001」「002」「007」の適用ルールタイプ53に合致するマッチング条件は全部でN1+N2+N7個ある。S73では、そのうちまだ抽出されていない任意の一つのマッチング条件を含む複合ルールが抽出される。このとき、S4で判定された文書種別を利用することで、効率的に複合ルールを抽出できる。例えば、S4で判定された文書種別が「銀行取引明細書」であった場合、主文書を「請求書」とする優先度ルール「001」「007」は無関係である。そこで、S4で判定された文書種別「銀行取引明細書」を主文書とする優先度ルール「002」のみを探索候補とすればよい。この場合、優先度「1」について探索すべきマッチング条件の数は、N1+N2+N7個からN2個に低減される。
【0100】
S8では、複合ルール選択部107が、S73で抽出された複合ルールのマッチング条件に含まれる主文書指定情報25が、S5で取得された文書に合致するか否かを判定する。合致すると判定された場合S9に進み、複合ルール選択部107は合致すると判定された複合ルールを以降の処理のために選択する。合致しないと判定された場合、S74に進み、優先度「1」について判定すべき複合ルールが残っている場合(N)はS73に戻って未抽出の別の複合ルールが抽出される。S74で優先度「1」について判定すべき複合ルールが残っていない場合(Y)はS75に進んで現在の優先度よりも低い優先度が指定される。例えば、S75において優先度が現在の優先度「1」よりも低い「2」に引き下げられる。以降、優先度「2」についてS72~S74の処理が実行される。優先度「2」でもS8でYes(Y)と判定される複合ルールがなかった場合、S75で優先度が「3」に引き下げられる。このように、S5で取得された文書に合致する主文書指定情報25を含む複合ルールがS8で特定されるまで、S7における類型の優先度に従う複合ルールの探索処理が継続される。なお、S8でYes(Y)と判定された時点で、S5で取得された文書が、特定の複合ルールに対応する主文書と認定されたことになる。
【0101】
S10ではマッチングルール取得部108がS9で選択された複合ルールに含まれる関連文書のマッチングルール262~265を取得する。S11では関連文書検索部109がS10で取得された関連文書のマッチングルール262~265に基づき関連文書を検索する。S12では関連文書検索部109が関連文書が見つかった否かを判定する。関連文書が見つかった場合はS13に進み、仕訳処理部110がS9で選択された複合ルールの仕訳表示領域24に表示される仕訳処理ルールに基づき仕訳処理を実行する。関連文書が見つからなかった場合は複合ルール選択部107は現在選択されている複合ルールを破棄し、S74に処理を戻す。これにより現在の優先度と同じ優先度の類型に属するマッチング条件の再選択、または優先度の変更が行われる。なお、S9で選択された複合ルールが関連文書のマッチングルールを含まない場合、S10、S11、S12はスキップされる。このように、S7からS12までの一連の処理により、複合ルール保持部1051に保持される複数の複合ルールの中から、入力された文書が合致するマッチング条件を含む複合ルールを、優先度保持部1052に保持される優先度に従って選択する処理が実現されている。本実施形態では、入力された文書がマッチング条件に合致する、とは、(1)マッチング条件が関連文書のマッチングルールを含まない場合は、入力された文書がマッチング条件すなわち主文書指定条件に合致することを意味し、(2)マッチング条件が関連文書のマッチングルールを含む場合は、入力された文書がマッチング条件に含まれる主文書指定条件に合致し、かつ、関連文書のマッチングルールで指定される関連文書が発見されることを意味する。
【0102】
その後、S6に戻り、S5で取得された文書について未処理取引がなくなるまでS7~S14の処理が繰り返される。
【0103】
なお、S12で関連文書が見つからなかった場合に現在選択中の複合ルールが破棄されることに関連して、関連文書のマッチングルール262~265が厳しいマッチング条件が先に抽出され、関連文書のマッチングルール262~265が緩い、または、ないマッチング条件が後に抽出されるように、マッチング条件の類型の優先度が設定されてもよい。この場合、S7からS12のNを経由してS7に戻る処理ループにおいて、複合ルール選択部107は、S73において関連文書のマッチングルール262~265が厳しいマッチング条件を先に抽出し、関連文書のマッチングルール262~265が緩い、または、ないマッチング条件を後に抽出することとなる。このようにすれば、所期の関連文書の有無を先に確認し、関連文書が不足している場合に限ってマッチングルールが緩い、または、ないマッチング条件とのマッチングを実行するというプロセスを実現できる。このような関連文書の指定に関する優先度の設定も、
図6で説明した優先度ルールによって効率的に行うことができる。
【0104】
図9は、仕訳装置100の仕訳処理の状況を示す画面例である。この画面は、表示制御部111によって表示部20に表示される。取引タイプ表示領域31は、
図3の複合ルールの登録画面例における取引概要表示領域22に対応し、取引のタイプを表示する。日付表示領域32は、仕訳装置100の処理の日付を表示する。決済ステータス表示領域33は、決済のステータス情報を表示する。コメント表示領域34には、ユーザが任意のコメントを記入できる。進捗状況表示領域35は、仕訳装置100の処理の進捗状況を表示する。
【0105】
仕訳表示領域36は、
図3の仕訳表示領域24に対応し、仕訳処理部110が実行した仕訳処理の内容を表示する。仕訳表示領域36は、借方の合計金額と貸方の合計金額の差額を表示する差額表示部361を含む。正しい仕訳処理では借方と貸方の金額が一致するため、差額表示部361には「0」が表示される。一方、仕訳処理が誤っている場合は、差額表示部361に「0」ではない差額が表示される。
【0106】
差額理由示唆部362は、差額表示部361に表示された差額が、想定されるエラーシナリオに合致する場合、そのエラーシナリオの基礎となったエラーを差額理由として示唆する。エラーシナリオは例えば税率の変更に関する。借方の金額が変更前の税率(例えば8%)に基づき、貸方の金額が変更後の税率(例えば10%)に基づく場合、差額表示部361には変更前後の税率の差異に相当する差額が生じる。差額理由示唆部362は、税率の変更に関するエラーシナリオに合致する差額(例えば2%の税率差に相当する金額)が差額表示部361に生じたことを検知し、税率の変更が差額の理由と推測されることを画面上で示唆する。図示の例では、エラーシナリオに合致する差額が生じた場合、差額理由示唆部362のアイコンが画面上に現われ、そのアイコンをユーザが選択することで詳細な差額理由を確認できる。なお、税率の変更以外のエラーシナリオとしては、税抜表記と税込表記の違いによるもの、海外取引の場合の税金有無によるもの等が考えられる。
【0107】
主文書表示領域37は、
図3の主文書表示領域25に対応し、仕訳処理部110で実行された仕訳処理に関する主文書を表示する。主文書添付部371には、実際の主文書が添付される。
【0108】
関連文書表示領域38は、
図3の関連文書表示領域26に対応し、仕訳処理部110で実行された仕訳処理に関する関連文書を表示する。関連文書添付部381には、実際の関連文書が添付される。また、関連文書要約部382には、仕訳処理に関する関連文書の要約情報が表示される。
【0109】
以上、仕訳装置100の構成および作用について説明した。つづいて、仕訳装置100の具体的な処理例をいくつか示す。以下の説明では、特に断らない限り、
図10に示される複合ルールが複合ルール保持部1051に保持され、
図6に示される優先度ルールが優先度保持部1052に保持されているものとする。なお、
図10に付与されている符号は、複合ルールのデータ構造を示す
図5の符号に対応する。また、処理の説明では
図8のフローチャートも参照する。
【0110】
S5で「請求書」が取得された例を考える。S7では、複合ルール選択部107が、
図6の優先度ルールに基づいて、
図10の複合ルールを探索する。最初に優先度「1」の優先度ルール「001」「002」「007」が特定されるが(S71、S72)、このうち主文書として「銀行取引明細書」を指定するルール「002」は探索対象から直ちに除外される。
図10において、探索対象である優先度ルール「001」「007」が規定する類型に属するマッチング条件は「TR1」のマッチング条件のみであり、S73ではこれが抽出される。具体的には、複合ルール「TR1」のマッチング条件は関連文書として「銀行取引明細書」のみを指定するため、優先度ルール「001」の「他にSDを要求しない」との条件に合致し、複合ルール「TR1」のマッチング条件は関連文書としての「銀行取引明細書」について「金額 = PDの請求額」という金額一致条件を含むため、優先度ルール「007」の「SD金額一致条件有り」との条件に合致する。このように、一つのマッチング条件が複数の優先度ルールに合致する場合もある。
【0111】
S73で複合ルール「TR1」が抽出された後のS8では、S5で取得された「請求書」が、複合ルール「TR1」の主文書指定情報252~254「請求先 contains 「甲」」に完全に合致するか否かが判定される。すなわち、S5で取得された請求書の請求先に「甲」の文字が含まれていれば、S9に進んで複合ルール「TR1」が複合ルール選択部107によって選択される。一方、S8での判定結果がNo(N)であった場合、優先度「1」の類型に属するマッチング条件には所期のマッチング条件が存在しないため、S75で優先度が「2」に引き下げられる。
【0112】
優先度「2」では、優先度ルール「003」「004」「008」が特定されるが(S71、S72)、このうち主文書として「銀行取引明細書」を指定するルール「004」は探索対象から直ちに除外される。また、優先度「1」の探索処理で既に考慮された複合ルール「TR1」も探索対象から除外される。
図10において、探索対象である優先度ルール「003」「008」が規定する類型に属するマッチング条件は「TR2」「TR6」のマッチング条件であり、S73ではこれらが任意の順序で抽出される。具体的には、複合ルール「TR2」のマッチング条件は第2の関連文書としての「請求書」について「請求先 contains 「甲」」「請求者 contains PDの請求者」というキーワードマッチ条件を含むため、優先度ルール「003」の「SD2キーワードマッチ条件有り」との条件に合致し、複合ルール「TR2」のマッチング条件は第1の関連文書としての「銀行取引明細書」について「摘要 contains PDの請求者」というキーワードマッチ条件を含むため、優先度ルール「008」の「SDキーワードマッチ条件有り」との条件に合致し、複合ルール「TR6」のマッチング条件は関連文書としての「銀行取引明細書」について「摘要 contains PDの請求者」というキーワードマッチ条件を含むため、優先度ルール「008」の「SDキーワードマッチ条件有り」との条件に合致する。以降の処理については、
図8のフローチャートに関して前述したので、説明を省略する。
【0113】
図10の複合ルール「TR2」「TR3」は、主文書として一の請求書を指定し、関連文書として別の請求書を指定することで、複数の請求書をまとめて仕訳処理することができる。複合ルール「TR2」について、
図3および
図4の複合ルールの登録画面例を参照しながら具体的に説明する。複合ルール「TR2」では、二つの請求書のうち任意の一つが主文書として主文書表示領域25に登録され、残りの一つが第2の関連文書として関連文書表示領域26に登録される。また、二つの請求書の合計請求額の銀行口座からの出金を記録した銀行取引明細書も第1の関連文書として関連文書表示領域26に登録される。
【0114】
第2の関連文書のメタデータ指定条件263~265における「金額(SD2の請求額) = SD1の出金額-PDの請求額」との条件が、第1の請求書(PD)と第2の請求書(SD2)の合計請求額が、銀行取引明細書(SD1)の出金額に等しいことを担保する。また、第1の請求書(PD)と第2の請求書(SD2)がそれぞれ「請求先 contains 「甲」」とのメタデータ指定条件を含むことで、同一請求先「甲」に対する請求書であることが担保され、第2の請求書(SD2)が「請求者 contains PDの請求者」とのメタデータ指定条件を含むことで同一請求元からの請求書であることが担保される。さらに、銀行取引明細書(SD1)が「摘要 contains PDの請求者」とのメタデータ指定条件を含むことで、同一請求元(PDの請求者 = SD2の請求者)への請求額の支払が完了していることを担保する。
【0115】
以上の複合ルール「TR2」を満たす主文書(第1の請求書)、第1の関連文書(銀行取引明細書)、第2の関連文書(第2の請求書)が揃った段階で、仕訳処理部110は、借方に二つの請求書の合計請求額の費用を計上し、貸方に二つの請求書の合計請求額の出金に伴う銀行口座の資産減を計上する仕訳処理を実行する。このとき、
図3の仕訳表示領域24の借方および貸方の取引金額表示部246では、いずれも二つの請求書の合計金額が指定される。
【0116】
本実施形態の仕訳装置100によれば、「TR2」「TR3」のように複数の同種の文書(請求書)をまとめて仕訳処理する複合ルールのマッチング条件の類型と、「TR1」のように単数の同種の文書を仕訳処理する複合ルールのマッチング条件の類型の間で優先度を設定できる。一般に、指定される文書数が少ないマッチング条件ほど、S5で取得される主文書およびS11で検索される関連文書と合致しやすいため、迅速に仕訳処理を完了できる。
図6の例では、この観点から、指定文書数が少ない優先度ルール「001」「007」に最高の優先度「1」を付与し、指定文書数が多い優先度ルール「003」の優先度「2」より高く設定している。一方、仕訳処理に要する時間が長くなっても可能な限り多数の文書をまとめて仕訳処理した方が効率的であることも想定され、そのような場合は指定文書数が多い優先度ルール「003」の優先度を、指定文書数が少ない優先度ルール「001」「007」の優先度より高くしてもよい。また、請求書とそれに対応する銀行取引明細書とに係る税務実務上、通常は一つの請求書が銀行取引明細書に記載される一つの振り込みに対応するので、このような通常の、言い換えるとマッチングの確率の高いマッチング条件が優先的に選択されるよう、「TR1」が属する類型の優先度を「TR2」や「TR3」が属する類型の優先度よりも高く設定している。例えば、請求額300円の請求書Aと、これに対応する振り込み額300円の振り込みが記載された銀行取引明細書Bと、請求額150円の請求書Cと、振り込み額450円の振り込みが記載された銀行取引明細書Dと、があり、請求書Aが仕訳対象になったとする。TR2のマッチング条件が先に試行されると、主文書=請求書A、関連文書1=銀行取引明細書D、関連文書2=請求書Cとなりうるがこれは誤った仕訳である。TR1のマッチング条件が先に試行されれば主文書=請求書A、関連文書=銀行取引明細書Bとなり、正しい仕訳が実行される。このように、本実施形態によれば、仕訳処理において重視すべき観点に応じて柔軟に優先度を設定できる。
【0117】
図6の優先度ルール「007」「008」は、関連文書としての「銀行取引明細書」についてのルール細目のみが異なる。すなわち、優先度ルール「007」は「SD金額一致条件有り」をルール細目とし、優先度ルール「008」は「SDキーワードマッチ条件有り」をルール細目とする。したがって、これらの優先度ルール「007」「008」に所望の優先順位を付けることで、金額一致条件を重視するか、キーワードマッチ条件を重視するか、を任意に設定できる。通常は金額一致条件が満たされていれば会計的に厳密な仕訳処理を実行できる可能性が高いため、金額一致条件を重視するのが好ましい。この観点から、
図6では、金額一致条件を指定する優先度ルール「007」に最高の優先度「1」を付与し、キーワードマッチ条件を指定する優先度ルール「008」の優先度「2」より高く設定している。
【0118】
図10の複合ルール「TR6」は、関連文書の手動選択を可能とする。すなわち、関連文書検索部109は、予め設定された関連文書のマッチングルールに従って関連文書を検索するだけでなく、ユーザの操作信号に応じて関連文書を検索してもよい。また、関連文書検索部109を介さずに、ユーザ自身が関連文書を登録してもよい。複数の請求書をまとめて1つの仕訳で処理する機能が、TR2やTR3のようにまとめる請求書を自動的に探すのではなく、ユーザが自分で探して追加することで実現される場合、TR2、TR3は無効化され、代わりにTR6がそのような請求書のまとめ機能に対応する。このような場合でも、「TR1」が属する優先度ルール「007」の優先度を「TR6」が属する優先度ルール「008」の優先度よりも高く設定することで、マッチングの確率の高いマッチング条件(1請求書=1振り込み)が優先的に選択されるようにすることができる。
【0119】
図10の複合ルール「TR4」「TR5」のマッチング条件はそれぞれ、主文書としてあるエンティティの口座(XXX)の銀行取引明細書を指定する。複合ルール「TR4」のマッチング条件はさらに、関連文書として、同じエンティティの別口座(YYY)に主文書の出金額と等しい入金額を記録した銀行取引明細書を指定する。すなわち、複合ルール「TR4」はあるエンティティにおける口座「XXX」から口座「YYY」への振替の仕訳に対応する。
図6では振替処理の複合ルール「TR4」が属する優先度ルール「002」に最高の優先度「1」を付与しており、この優先度は、「TR5」が属する優先度ルール「004」の優先度「2」よりも高い。これにより、上記エンティティの銀行取引明細書に関する総合的な複合ルール「TR5」が選択される前に、同エンティティにおける振替処理の複合ルール「TR4」が選択される。したがって、同エンティティにおける振替処理の銀行取引明細書は「TR4」、「TR5」のいずれのマッチング条件とも合致するところ、該銀行取引明細書が複合ルール「TR5」の仕訳で処理されることが防止されるので、振替処理が振替処理として仕訳されることを担保できる。
【0120】
以上、
図6および
図10を参照して、仕訳装置100の具体的な処理例を説明した。本実施形態の仕訳装置100によれば、仕訳処理の実行される環境や状況、仕訳処理において重視すべき観点に応じて、任意の優先度ルールを設定できる。これによって、入力された文書とマッチング条件とが合致するかの検証方法のきめ細かで柔軟な制御が可能となるので、自動仕訳処理を効率化、高精度化できる。
【0121】
また、本実施形態に係る仕訳装置100では、複合ルールを保持する保持部(第1保持部)と、類型の優先度を保持する保持部(第2保持部)と、を別々に設けている。これにより、複合ルール一つ一つに個別に優先度を付す態様と比較して、優先度を設定する手間を削減することができる。また、新たな複合ルールを設定する際にその複合ルールに優先度を付与する必要はないので、複合ルールの新規作成時の手間も削減できる。
【0122】
また、1請求書=1振り込みを基本とすることや、条件の厳しい仕訳から先に処理することなどの自動仕訳のハイレベルの設計思想はマッチング条件の類型で表現できることから、本実施形態に係る仕訳装置100によると、自動仕訳のハイレベルの設計思想をより容易に実現することができる。
【0123】
つづいて、仕訳装置100の応用例をいくつか示す。
【0124】
仕訳装置100の第1の応用例では、一つの請求書の請求額が複数回に分割して支払われる。この場合、各回の支払処理の都度、その仕訳処理を実行する複合ルールが適用される。各回の複合ルールは実質的に取引金額のみが異なる。第1回の支払処理の複合ルールは、請求書(以下、オリジナル請求書という)を主文書とし、銀行取引明細書を関連文書とする。第1回の支払処理の自動仕訳の実行時に、オリジナル請求書に対応するバーチャルな(仮想的な)請求書が新たに生成され、文書保持部102に格納される。バーチャルな請求書は、そのメタデータにおいて請求金額のみ(オリジナル請求書の請求金額-第1回の支払金額)が異なり、その他の項目はオリジナル請求書のそれと同じ請求書である。バーチャルな請求書は、それがバーチャルであること、すなわち仕訳装置100内においてのみ存在する請求書であることを示す情報(フラグなど)を伴ってもよい。
【0125】
図6に示される優先度ルールでは、適用ルールタイプ53において文書がバーチャルであることを指定できる。そのような優先度ルールに優先度52を付与することで、バーチャルな文書を仕訳処理する複合ルールに含まれるマッチング条件の類型に優先順位を付けることができる。バーチャルな文書を仕訳処理する複合ルールに含まれるマッチング条件の類型には、オリジナル文書を仕訳処理する複合ルールに含まれるマッチング条件の類型と少なくとも同じ優先度を設定することが好ましい。このようにすれば、上記の例では、オリジナル請求書とバーチャルな請求書を同じ優先度で仕訳処理できる。また、バーチャルな文書は実在しない文書であることから、なるべく早期に仕訳処理すべきであるとすれば、バーチャルな文書を仕訳処理する複合ルールに含まれるマッチング条件の類型に、オリジナル文書を仕訳処理する複合ルールに含まれるマッチング条件の類型より高い優先度を設定することが好ましい。
【0126】
本例では、オリジナル請求書の請求額を「100」とし、第1回の支払処理では「30」を支払い、その出金履歴が銀行取引明細書に記録されているものとする。したがって、第1回の支払処理の複合ルールでは、取引額「30」の仕訳処理が実行される。仕訳装置100は、第1回の仕訳処理後、第1のバーチャルな請求書を発行し、その請求額を未払の「70」に設定する(オリジナル請求書を未払の「70」に減額したことと等価)。つづく第2回の支払処理の複合ルールは、「70」の請求額の第1のバーチャルな請求書を主文書とし、銀行取引明細書を関連文書とする。ここで、第2回の支払処理では「40」を支払い、その出金履歴が銀行取引明細書に記録されているものとする。したがって、第2回の支払処理の複合ルールでは、取引額「40」の仕訳処理が実行される。
【0127】
仕訳装置100は、第2回の仕訳処理後、第2のバーチャルな請求書を発行し、その請求額を未払の「30」に設定する(オリジナル請求書を未払の「30」に減額したことと等価)。つづく第3回の支払処理の複合ルールは、「30」の請求額の第2のバーチャルな請求書を主文書とし、銀行取引明細書を関連文書とする。ここで、第3回の支払処理では残額の「30」を支払い、その出金履歴が銀行取引明細書に記録されているものとする。したがって、第3回の支払処理の複合ルールでは、取引額「30」の仕訳処理が実行される。以上の3回の支払処理によって、請求額「100」のオリジナル請求書が完済される。
【0128】
このように、オリジナル請求書に対応する一または複数のバーチャルな請求書を発行するまたは生成することにより、分割払いの自動仕訳が可能となる。この他にも、例えば売掛、買掛の場合などあるべき証憑がまだ存在しない場合に、あるべき証憑のプレースホルダーとしてバーチャルな証憑を発行するなど、自動仕訳における様々な用途にバーチャルな証憑を用いることができる。バーチャルな証憑の種類としては、上記のバーチャルな請求書のように意味のある情報が記載された証憑の他に、何も記載されていないブランクの証憑や、意味のない情報が記載された証憑などがあってもよい。
【0129】
図11は、第2の実施形態に係る仕訳装置100の機能ブロック図である。
図1に示される第1の実施形態に係る仕訳装置100の構成に加えて、機械学習部112、訓練データ提供部113、評価部114が設けられる。
【0130】
機械学習部112は、複合ルール保持部1051に保持される複合ルールに含まれるマッチング条件の類型(
図6の適用ルールタイプ53に相当)と、当該複合ルールの仕訳処理における優先度(
図6の優先度52に相当)の関係を機械学習可能である。機械学習部112は、機械学習の結果に基づいて、優先度保持部1052に保持される優先度ルールを更新する。具体的には、
図6において、各優先度ルールの優先度52の変更、適用ルールタイプ53の変更、新規優先度ルールの生成、既存優先度ルールの削除等の更新処理が機械学習部112によって実行される。
【0131】
訓練データ提供部113は、機械学習のための訓練データを機械学習部112に提供する。訓練データは、複合ルールにおけるマッチング条件の想定される各類型と、当該各類型の仕訳処理における優先度ないし重要度の関係を網羅し、参考データとしてグラフ化されたドメイン知識を含む。機械学習部112は、仕訳装置100の初期セットアップやメンテナンスの際、これらの包括的な訓練データを機械学習することで、仕訳処理の効率または正確性を最大化するための最適な優先度ルールのリストを優先度保持部1052に格納できる。
【0132】
評価部114は、優先度保持部1052に保持されている優先度ルールを利用して複合ルール選択部107が選択した複合ルール、当該複合ルールに含まれる関連文書のマッチングルールに基づいて関連文書検索部109が検索した関連文書、これらに基づいて仕訳処理部110が実行した仕訳処理の一部または全部の内容を評価し、その正誤や適否を判定する。評価は、ユーザが主導してもよいし、コンピュータが自律的に行ってもよい。たとえば、仕訳処理部110が実行した仕訳処理の結果が、既に実行された他の仕訳処理の結果と矛盾する場合、それらの仕訳処理は誤りと判定される。また、仕訳処理部110が実行した仕訳処理の結果は誤りではないが、より効率的な仕訳処理方法が評価時に確認された場合、実行された仕訳処理は不適と判定される。また、評価部114は、実行頻度の高い複合ルールや、累計処理金額の大きい複合ルールを重要度が高いものと評価し、このような複合ルールに対応する優先度ルールに高い優先度が与えられるべきとの推奨情報を評価結果に含めてもよい。
【0133】
評価によって誤りや不適と判定された複合ルール、関連文書、仕訳処理があった場合、評価部114は、複合ルール選択部107、関連文書検索部109、仕訳処理部110に対して訂正指示を発信し、それぞれの処理を訂正させる。また、評価部114は評価結果を訓練データ提供部113にフィードバックする。訓練データ提供部113は、これらを訓練データとして機械学習部112に提供する。このように、機械学習部112は、仕訳装置100の実際の処理で使われたデータを用いて継続的に機械学習でき、その処理精度を高く維持できる。
【0134】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0135】
図6に優先度ルール群の設定例を示したが、他の例として以下のような優先度ルール群を設定してもよい(
図6の表記に倣う)。
【0136】
(1)特定のエンティティを適用対象とする複合ルールの類型を高優先度とする優先度ルール群
・優先度ルール1:優先度「1」/適用ルールタイプ「主文書または関連文書の摘要にエンティティ名のテキストが含まれるという条件有り」
・優先度ルール2:優先度「2」/適用ルールタイプ「主文書または関連文書の摘要以外の箇所にエンティティ名のテキストが含まれるという条件有り」
・優先度ルール3:優先度「3」/適用ルールタイプ「エンティティ名のテキストに関する条件がない」
【0137】
(2)請求書の支払処理において、銀行取引明細書により支払いが裏付けられているかをまず確認する優先度ルール群
・優先度ルール1:優先度「1」/適用ルールタイプ「関連文書を必須とし、金額一致条件有り」
・優先度ルール2:優先度「2」/適用ルールタイプ「関連文書を必須とし、キーワード一致条件有り」
・優先度ルール3:優先度「3」/適用ルールタイプ「関連文書を必須とせず、金額一致条件有り」
【0138】
(3)金額一致条件やキーワード合致条件が厳しい類型ほど高い優先度を設定する優先度ルール群
・優先度ルール1:優先度「1」/適用ルールタイプ「主文書と関連文書の金額が完全に一致する条件有り」または「N1個以上のキーワード一致条件有り」
・優先度ルール2:優先度「2」/適用ルールタイプ「主文書と関連文書の金額の差が1%以内という条件有り」または「N1より小さいN2個以上のキーワード一致条件有り」
・優先度ルール3:優先度「3」/適用ルールタイプ「主文書と関連文書の金額の差が3%以内という条件有り」または「N2より小さいN3個以上のキーワード一致条件有り」
【0139】
この例では、優先度ルール3の適用ルールタイプ(メタデータ指定条件の類型)は優先度ルール2の適用ルールタイプを包含し、優先度ルール2の適用ルールタイプは優先度ルール1の適用ルールタイプを包含する。そして、適用ルールタイプの適用範囲が狭い優先度ルールほど高い優先度が設定される。これによって、高優先度の類型の処理では厳密な仕訳処理が可能となり、低優先度の類型の処理では利用可能な情報に基づいて暫定的な仕訳処理が可能となる。金額一致条件に応じて優先度ルールを設定する例では、
図9の差額理由示唆部362に関して前述したエラーシナリオに基づく処理を併せて実行するのが好ましい。
【0140】
第1および第2の実施形態では自動仕訳処理において関連文書を指定可能な場合について説明したが、これに限られず、例えば関連文書の指定を想定していない自動仕訳処理にも第1または第2の実施形態の技術的思想を適用することができる。
【0141】
なお、実施の形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、取引を仕訳する技術に関する。
【符号の説明】
【0143】
20 表示部、24 仕訳処理ルール、25 主文書指定情報、26 関連文書マッチングルール、36 仕訳表示領域、37 主文書表示領域、38 関連文書表示領域、51 優先度ルールID、52 優先度、53 適用ルールタイプ、100 仕訳装置、101 文書入力部、102 文書保持部、103 メタデータ抽出部、104 主文書取得部、105 記録部、106 設定部、107 複合ルール選択部、108 マッチングルール取得部、109 関連文書検索部、110 仕訳処理部、111 表示制御部、112 機械学習部、113 訓練データ提供部、114 評価部、251 文書種別、252 メタデータ種別、253 比較条件、254 比較値、262 文書種別、263 メタデータ種別、264 比較条件、265 比較値、531 ルール種類設定部、532 ルール適用形式設定部、533 対象項目設定部、534 比較条件設定部、535 データ型設定部、1051 複合ルール保持部、1052 優先度保持部、1061 複合ルール登録部、1062 優先度設定部。