(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】金属窒化物膜製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/38 20060101AFI20230410BHJP
C30B 7/02 20060101ALI20230410BHJP
C30B 25/02 20060101ALI20230410BHJP
H01L 21/208 20060101ALI20230410BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20230410BHJP
C23C 16/40 20060101ALI20230410BHJP
C23C 18/12 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
C30B29/38 D
C30B7/02
C30B25/02 Z
H01L21/208 Z
H01L21/205
C23C16/40
C23C18/12
(21)【出願番号】P 2019046446
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2022-02-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2018年 第79回応用物理学会秋季学術講演会 講演予稿集、16-007頁、公益社団法人応用物理学会、平成30年9月5日 〔刊行物等〕 2018年 第79回応用物理学会秋季学術講演会、名古屋国際会議場、平成30年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】392022570
【氏名又は名称】サムコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】小林 貴之
(72)【発明者】
【氏名】立田 利明
(72)【発明者】
【氏名】本山 慎一
(72)【発明者】
【氏名】辻 理
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-017027(JP,A)
【文献】特開2017-160106(JP,A)
【文献】特開平11-217673(JP,A)
【文献】特開2007-165547(JP,A)
【文献】特開平05-206062(JP,A)
【文献】Jean-Sebastien M. LEHN et. al.,A new precursor for the chemical vapor deposition of tantalum nitride films,Journal of Materials Chemistry,Royal Society of Chemistry,2004年09月27日,volume 14, issue 21,pp 3239-3245,DOI:10.1039/b408180c
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00 - 35/00
C23C 16/00 - 16/56
C23C 18/12
H01L 21/208
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体原料となる金属を含む第1原料と、窒素を含む第2原料とを溶媒に溶解又は分散させた溶液を用意し、
前記溶液をミスト化することにより溶液ミストを生成し、
所定温度以上に加熱した基板上に前記溶液ミストをキャリアガスで運ぶことにより、前記基板上で前記
溶液ミストを気化させ、且つ、前記
溶液ミスト内の前記金属と窒素を反応させることにより前記基板上に金属窒化物膜を作製する金属窒化物膜製造方法。
【請求項2】
前記金属がアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、シリコン(Si)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ボロン(B)、リチウム(Li)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)のいずれか1つ又はそれらのうちの複数の組み合わせである請求項1に記載の金属窒化物膜製造方法。
【請求項3】
前記第2原料がメラミン、塩化アンモニウム、硫化アンモニウム、アンモニア、ヒドラジンのいずれか1つ又はそれらのうちの複数の組み合わせである請求項1又2に記載の金属窒化物膜製造方法。
【請求項4】
前記溶液のミスト化を、該溶液中に超音波を投入することにより行う請求項1~3のいずれかに記載の金属窒化物膜製造方法。
【請求項5】
前記キャリアガスが、窒素ガス、アンモニアガス、ヒドラジンガス、水蒸気、酸素ガス、オゾンガスのいずれか1つ又はそれらのうちの複数の組み合わせである請求項1~4のいずれかに記載の金属窒化物膜製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GaN等の窒化物半導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、窒化アルミニウム (AlN)等のIII族元素窒化物半導体は、従来のシリコン半導体と比較してバンドギャップが大きく、また、III族元素であるガリウム、インジウム等の濃度を変化させることによりバンドギャップを大きく変化させることができる。そして、化学的に安定していることや高い絶縁耐圧を持つことから、損失の低い電子デバイス或いはパワー電子デバイスの実現が可能であるという特長を持つ。
【0003】
窒化物半導体の電子デバイスを作製するには、多くの場合、基板上に窒化物半導体の薄膜を作製し、該薄膜に電子回路を形成する。基板上に窒化物半導体の薄膜を作製する方法の一つにMOCVD法(有機金属気相成長法:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)がある。MOCVD法はCVD法(化学気相成長法:Chemical Vapor Deposition)の一種で、基板表面近傍にGa等の金属元素を含む有機金属ガスと窒素(N)を含むガスをそれぞれ導入し、化学反応を利用することによってその基板上にGaNやInNなどの窒化物半導体を結晶成長させる(特許文献1、特許文献2等参照)。
【0004】
しかし、MOCVD法で用いる有機金属原料は、蒸気圧は高いが、高価で発火性がある。MOCVD法ではそれを加熱して使用することから、ランニングコストや安全性の点で課題がある。また、窒素源として使用されるアンモニアも人体に有害であり、環境負荷が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平08-162417号公報
【文献】特開2018-168001号公報
【文献】特開2012-062527号公報
【文献】特開2017-112345号公報
【文献】特開2017-128492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CVD法による安価で安全な成膜手法として、ミストCVD法が知られている。ミストCVD法は原料を溶解させた溶液を超音波振動子等を用いて細かいミストとし、加熱した基板上に送給して、そこで薄膜を作製する手法であり、蒸気圧の低い原料であっても大気圧で成膜することができる。蒸気圧の低い物質を使用することができるため、安価で安全な原料を使用することができ、ランニングコストや環境負荷を小さくすることができる。
【0007】
しかしながら、これまでミストCVD法は主に酸化物薄膜の成膜に使用され(特許文献3、特許文献4、特許文献5等)、窒化物薄膜を作製することは難しかった。
本発明は、窒化物膜を作製することのできるミストCVD法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係る金属窒化物膜製造方法は、
金属を含む第1原料と、窒素を含む第2原料とを溶媒に溶解又は分散させた溶液を用意し、
前記溶液をミスト化することにより溶液ミストを生成し、
所定温度以上に加熱した基板上に前記溶液ミストをキャリアガスで運ぶことにより、前記基板上で前記溶液ミストを気化させ、且つ、前記溶液ミスト内の前記金属と窒素を反応させることにより前記基板上に金属窒化物膜を作製する
ことを特徴とする。
【0009】
第1原料の金属としては、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、シリコン(Si)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ボロン(B)、リチウム(Li)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)のいずれか1つ又はそれらのうちの複数の組み合わせとすることができる。
【0010】
金属がガリウム(Ga)である場合、第1原料としては、水に溶解するガリウム化合物であれば特に限定されないが、例えば、臭化ガリウム、ヨウ化ガリウム、塩化ガリウム、硝酸ガリウム、ガリウムアセチルアセトナート等のアンモニウム塩を用いることができる。
【0011】
窒素を含む第2原料としては、メラミン、塩化アンモニウム、硫化アンモニウム等を用いることができる。また、アンモニアやヒドラジンを用いてもよい。
【0012】
これら第1原料又は第2原料は気体、液体、固体のいずれであっても良い。また、液体または固体の場合、溶媒への溶解度が小さいものであっても良い。第1原料又は第2原料が固体であり、溶媒への溶解度が小さい場合は、粒径が10μm以下好ましくは1μm以下の粉体としておくことが望ましい。
なお、第2原料が固体であり溶媒への溶解度が小さい場合やほとんど溶解しない場合は、飽和溶解度を超えた分が溶媒中に残留することになり、この場合の溶液は、第2原料を溶媒に分散させた状態となる。
【0013】
それらを溶解又は分散させる溶媒としては、水またはアルコールを用いることが望ましいが、第1原料及び第2原料の種類によってはその他の溶媒を用いることができる。
【0014】
前記溶液のミスト化は、超音波法、噴霧法等を用いることができる。もちろん、それらを併用してもよい。いずれにせよ、ミスト粒の大きさは50μm以下、できれば10μm以下としておくことが望ましい。
【0015】
生成した溶液ミストを基板の上に運ぶキャリアガスとしては、窒素ガス、アンモニアガス、ヒドラジンガス、水蒸気、酸素ガス、オゾンガスのいずれか1つ又はそれらのうちの複数の組み合わせとすることができる。
【0016】
第1原料と第2原料は、それらを一緒にして1つの溶媒で1つの溶液としてもよいし、それぞれ別々に溶液として(この場合の溶媒は、同じであってもよいし異なるものであってもよい)、別々にミスト化して、基板上で一緒になるように運んでもよい。
【0017】
基板としては、シリコン(Si)、石英(SiO2)、サファイア(Al2O3)、窒化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)など、様々なものを用いることができる。
【0018】
反応時の基板の温度は、300℃以上、望ましくは500℃以上、より望ましくは1000℃以上とする。
【0019】
なお、本発明に係る方法で製造された金属窒化物膜には、酸素が付随的に含まれる酸窒化金属膜も含まれる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る方法により、ミストCVD法により基板上に金属窒化物膜を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施例で用いたミストCVD装置の概略構成図。
【
図2】実施例1で生成された膜の断面走査電子顕微鏡写真(a)、実施例2で生成された膜の断面走査電子顕微鏡写真(b)、実施例3で生成された膜の断面走査電子顕微鏡写真(c)、及び実施例4で生成された膜の断面走査電子顕微鏡写真(d)。
【
図3】実施例1の結果得られた膜のEDX測定結果の表。
【
図4】実施例1(500℃)及び実施例2(1200℃)のXRD測定結果の2θ/ωグラフ。
【
図5】実施例3(500℃)、実施例4(800℃)及び実施例5(1000℃)のXRD測定結果の2θ/ωグラフ。
【
図7】実施例5(1000℃)、実施例6(1100℃)及び実施例7(1200℃)のXRD測定結果の2θ/ωグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を紹介する。以下に述べる実施例はいずれも、
図1に示すミストCVD装置10を用いて、サファイア基板上に成膜を行った。
【0023】
[装置]
まず、用いたミストCVD装置10について説明する。ミストCVD装置10は、処理室11、ミスト生成室12、ミスト送給室13等で構成されている。処理室11内には、ミストが流れるミスト通路15が設けられ、処理室11のほぼ中央のミスト通路15には、一段低くなった箇所に、基板30を載置する基板載置部16が設けられている。処理室11の周囲は断熱材17で囲まれ、基板載置部16の下方には基板載置部16に載置された基板30を加熱するためのヒーター18が設けられている。
【0024】
ミスト生成室12の底部には超音波発振器19が設けられ、側壁には、ミスト生成室12内にキャリアガスを導入するためのキャリアガス導入路20が設けられている。
ミスト送給室13はミスト生成室12の上部に設けられ、両者の間には両室12、13の内部空間を連結するミスト昇路21が設けられている。ミスト送給室13からは前記ミスト通路15が処理室11に延びており、その反対側の壁面には、希釈ガスをミスト送給室13内に導入するための希釈ガス導入路22が設けられている。
【0025】
このミストCVD装置10を用いて基板30に成膜を行う手順は次のとおりである。まず、成膜を行う基板30を基板載置部16に置き、原料溶液31をミスト生成室12に入れる。超音波発振器19で超音波を発振し、原料溶液31内に投入することにより原料溶液31をミスト化し、ミスト生成室12の原料溶液31上の空間内にミストを充満させる。このミストは、キャリアガス導入路20から導入されるキャリアガスにより、ミスト昇路21を通じてミスト送給室13に運ばれる。ミストはそこで希釈ガス導入路22から導入される希釈ガスにより微細化され、ミスト通路15に送給される。ミストは希釈ガスにより運ばれて処理室11内に入り、基板載置部16の箇所でヒーター18により加熱される。この加熱により原料溶液31の溶媒が揮発するとともに、原料溶液31に含まれていた金属成分と窒素成分が化合し、基板30上に堆積する。こうして基板30上に成膜が行われる。
以下、各実施例について説明する。
【0026】
[実施例1]
本実施例では、成膜を行う基板30として、サファイア基板を用いた。サファイア基板は、c面が上面となるように基板載置部16に置き、c面上に成膜を行うようにした。
原料溶液31は、純水を溶媒とし、金属成分としてGaCl3を、窒素成分としてメラミンを用いた。溶液は、GaCl3及びメラミンがそれぞれ0.1mol/L、0.2mol/Lとなるように調整した。なお、純水100mlに対するメラミンの室温での溶解度は0.32g程度であるので、メラミンは完全には溶解せず、原料溶液31中に分散した状態であった。この原料溶液31をミスト生成室12に入れ、超音波発振器19でミストにしてキャリアガスおよび希釈ガスでミスト通路15に送給した。キャリアガスにはN2を用い、5L/分の流量でミスト生成室12に供給した。希釈ガスにもN2を用い、10L/分の流量でミスト送給室13に供給した。処理室11に導入されたミスト中にはメラミンの微粒子が含まれていた。
【0027】
処理中のヒーター18の温度は500℃とし、処理時間は30分間とした。この処理により基板30(サファイア基板)上に膜が生成した。
【0028】
得られた膜の断面を走査電子顕微鏡で撮影した結果を
図2(a)に示す。膜の厚さは約700nmであった。
この膜に紫外線を照射したところ、膜から青緑色の発光が確認された。Ga
2O
3のバンドギャップが4.8~5.3eVであり、それに相当する波長は紫外領域であることから、生成された膜はGa
2O
3とは異なる膜であることが示唆された。
【0029】
次に、生成された膜の組成をエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX、日本電子株式会社製)を用いて測定した。EDX測定の結果、膜からは炭素、窒素、酸素、アルミニウム及びガリウムが検出された(
図3)。このうち、酸素及びアルミニウムはサファイア基板由来のものを含んでいると考えられる。窒素が存在していることから、窒素(N)を含む膜が生成されたことが示唆される。膜中に同程度検出される炭素はメラミンに由来すると考えられる。
【0030】
この膜をX線回折装置(XRD、リガク社製)により解析した。XRD解析の結果、
図4に示すように、GaN(101)に由来するピークが観測されたが、β-Ga
2O
3とGaONのピークは観測されなかった。これらの結果より、サファイア基板上においてメラミン微粒子はヒータで加熱されて分解され、その窒素の一部がGaと反応してGaNとなり、Ga窒化物膜が成膜されたと考えられる。炭素の一部はGaNに取り込まれていると考えられる。
【0031】
[実施例2]
成膜中のヒーター温度を1200℃とした以外は実施例1と同様の条件で成膜を行った。生成した膜に対し、実施例1と同様にして各測定を行った。
【0032】
得られた膜の断面走査電子顕微鏡写真を
図2(b)に示す。膜の厚さは300nmであった。
この膜に紫外線を照射したところ、膜からの発光は確認できなかった。また、
図4に示すとおり、GaN(101)に由来する位置とβ-Ga
2O
3(-402)に由来する位置にピークが観測されたが、GaONに由来する位置にはピークは観測されなかった。また、実施例1で得られた膜に比べて実施例2で得られた膜はGaN(101)に由来するピークが強く検出された。このことから、成膜されたものはGaNであり、その結晶性が優れていることが確認できた。
【0033】
[実施例3]
原料溶液31の窒素成分として実施例1、実施例2のメラミンに代えて塩化アンモニウムを用い、塩化アンモニウムの濃度を1.0mol/Lとして成膜を行った。溶液以外の条件は実施例1と同様にして(すなわち、成膜中のヒーター温度は500℃、成膜時間は30分間。)成膜を行った。
【0034】
膜の断面を走査電子顕微鏡で撮影した結果を
図2(c)に示す。膜の厚さは約400nmであった。
得られた膜に対して実施例1と同様の各測定を行った。この膜に紫外線を照射したところ、膜からの発光は確認できなかった。XRDを用いて測定したところ、
図5、
図6に示すとおり、α-Ga
2O
3(006)に由来する位置とε-Ga
2O
3(004)に由来する位置にピークが確認された。しかし、GaNの位置にピークは確認されなかった。
これらの結果より、実施例3で得られた膜は結晶状態ではないものの非晶状のGa窒化物薄膜である可能性が考えられる。
【0035】
[実施例4]
成膜中のヒーター温度を800℃とした以外は実施例3と同様にして成膜を行った。膜の厚さは約600nmであった。
得られた膜に対して実施例3と同様にして各測定を行った。XRD測定の結果、
図5及び
図6に示すように、α-Ga
2O
3に由来する位置にピークは見られず、β-Ga
2O
3やε-Ga
2O
3に由来する位置にピークが確認できた。しかし、GaNの位置にピークは確認されなかった。これらのことより、得られた膜は、結晶状態ではなく、非晶状のGaN窒化物薄膜である可能性が考えられる。
【0036】
[実施例5]
成膜中のヒーター温度を1000℃とした以外は実施例3と同様にして成膜を行った。膜の断面を走査電子顕微鏡で撮影した結果を
図2(d)に示す。膜の厚さは約800nmであった。
【0037】
実施例3と同様にして各測定を行った。膜に紫外線を照射したところ、膜からの発光は確認できなかった。次に、膜にXRD測定を実施したところ、
図5及び
図6に示すとおり、Ga
2O
3のβ相(-402)に由来する位置とGaN(101)に由来する位置にピークが確認された。このことから、1000℃以上でGaNの結晶化が始まると考えられる。
【0038】
[実施例6]
成膜中のヒーター温度を1100℃とした以外は実施例3と同様にして成膜を行った。膜の厚さは約300nmであった。
成膜された膜のXRD測定を行った結果を
図7及び
図8に示す。
【0039】
[実施例7]
成膜中のヒーター温度を1200℃とした以外は実施例3と同様にして成膜を行った。膜の厚さは約300nmであった。
実施例3と同様にして膜のXRD測定を実施したところ、
図7及び
図8に示すように、成膜温度が1000℃(実施例5)では様々な面方位のβ-Ga
2O
3に由来する小さいピークが観測されたが、成膜温度が上がるにつれてピークは小さくなり、成膜温度が1200℃(本実施例)では見えなくなった。また、成膜温度が1000℃以上ではいずれもGaN(101)に由来する位置とβ-Ga
2O
3(-402)に由来する位置にピークが確認されたが、成膜温度が高い程GaN(101)由来のピーク強度は強くなり、β-Ga
2O
3(-402)由来のピーク強度は弱くなった。このことから、成膜温度が高い程GaN結晶の割合が増え、GaNの単相膜に近づくと考えられる。また、GaONの相は確認されなかったが、ミストCVD法を用いたGaNの成膜を確認することができた。
【符号の説明】
【0040】
10…ミストCVD装置
11…処理室
12…ミスト生成室
13…ミスト送給室
15…ミスト通路
16…基板載置部
17…断熱材
18…ヒーター
19…超音波発振器
20…キャリアガス導入路
21…ミスト昇路
22…希釈ガス導入路
30…基板
31…原料溶液