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特許7258354生体組織内の異常を検出するための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】生体組織内の異常を検出するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20230410BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20230410BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20230410BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20230410BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20230410BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230410BHJP
【FI】
G01N21/17 A
A61B3/10
A61B10/00 E
A61B10/00 H
G01N33/483 C
G06T1/00 290Z
G06T7/00 630
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2019521395
(86)(22)【出願日】2017-10-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 IB2017056509
(87)【国際公開番号】W WO2018073784
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-07
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】62/410,552
(32)【優先日】2016-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519141852
【氏名又は名称】オプティナ ダイアグノスティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シルヴェストル,ジャン フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ラポイント,デイビット
(72)【発明者】
【氏名】シェブレフィルズ,クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】ジャアファリー,レーザ
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】樋口 宗彦
【審判官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-154810(JP,A)
【文献】特開2003-144412(JP,A)
【文献】特開2012-143349(JP,A)
【文献】特開2014-29287(JP,A)
【文献】特表2008-541048(JP,A)
【文献】特開平1-242941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00-21/61
G01N33/48-33/98
A61B3/10
A61B10/00
G06T1/00
G06T7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織を撮像するための方法であって、
受信器が、第1の波長の光を含む前記生体組織の第1の画像を取得することと、
受信器が、第2の波長の光を含む前記生体組織の第2の画像を取得することと、
プロセッサが、前記第1及び第2の画像の空間情報を用いて前記生体組織のテクスチャ解析を実行することであって、ここで前記テクスチャ解析は前記第1及び第2の波長で解像され、前記生体組織の特徴に基づいて、テクスチャ画像を生成する、前記第1及び第2の画像の空間情報を用いて前記生体組織のテクスチャ解析を実行することと、
を含み、
前記テクスチャ画像を生成することは、
j・k・lの寸法を有する移動ウィンドウを定義することであって、jは前記生体組織の画像の数であり、kは前記生体組織の前記画像の第1次元で定義される前記移動ウィンドウの画素数であり、lは前記生体組織の前記画像の第2次元で定義される前記移動ウィンドウの画素数である、前記j・k・lの寸法を有する前記移動ウィンドウを定義することと、
前記移動ウィンドウに含まれる前記生体組織の前記画像からの情報を使用して、前記テクスチャ画像の画素値を計算することと、
続けて、前記生体組織の前記第1次元において、前記移動ウィンドウを第1の所定画素数分、移動させることと、
前記生体組織の前記画像の前記第1次元において前記移動ウィンドウを移動させるごとに、前記テクスチャ画像の画素値の前記計算を繰り返すことと、
続けて、前記生体組織の前記画像の前記第2次元において、前記移動ウィンドウを第2の所定画素数分、移動させることと、
前記生体組織の前記画像の前記第2次元において前記移動ウィンドウを移動させるごとに、前記テクスチャ画像の画素値の前記計算と、前記生体組織の前記画像の前記第1次元にわたる前記移動ウィンドウの前記移動とを繰り返すことと、
を含む、
生体組織を撮像するための方法。
【請求項2】
前記第1及び第2の画像のそれぞれは、複数の画素行及び複数の画素列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記第1及び第2の画像の位置合わせを実行することをさらに含み、これにより前記第1及び第2の画像の対応画素は、前記生体組織の同じ要素に対応する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2の画像の強度を較正することをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記テクスチャ解析は、グレイレベル共起行列(GLCM)、グレイレベルランレングス行列(GLRLM)、マルコフ確率場行列(MRFM)、及びこれらの組み合わせから選択された技術を用いて実行される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記生体組織の前記特徴は、前記GLCMまたはGLRLMまたはMRFM行列のコントラストレベル、前記GLCMまたはGLRLMまたはMRFM行列の相関レベル、前記GLCMまたはGLRLMまたはMRFM行列の均一性レベル、前記GLCMまたはGLRLMまたはMRFM行列のエネルギーレベル、及びこれらの組み合わせから選択された要素に基づいて特定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記数lは、1画素に等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記テクスチャ画像と前記被験者の前記生体組織から得られた前のテクスチャ画像との変差を特定することをさらに含む、請求項1、6および7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記テクスチャ画像と前記前のテクスチャ画像との前記変差を特定する前に、前記テクスチャ画像の強度と前記前のテクスチャ画像の強度とを正規化することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
一次統計値を使用して、前記テクスチャ画像及び前記前のテクスチャ画像の前記変差を特徴付けることをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記テクスチャ画像及び前記前のテクスチャ画像の前記変差を特徴付けることを考慮して、前記一次統計値の次元縮小を実行することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記テクスチャ画像の強度を正規化すること、
基準テクスチャ画像の強度を正規化すること
前記テクスチャ画像と前記基準テクスチャ画像とを比較すること
をさらに含む、請求項1、6および7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
一次統計値を使用して、前記テクスチャ画像と前記基準テクスチャ画像とを比較することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記テクスチャ画像と前記基準テクスチャ画像とを比較することを考慮して、前記一次統計値の次元縮小を実行することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記一次統計値は、強度平均、強度歪度、強度分散、強度尖度、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項10、11、13及び14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
各自の波長を有する前記第1及び第2の画像のスペクトル情報を用いて、前記生体組織のスペクトルシグネチャを定義することをさらに含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記生体組織の前記スペクトルシグネチャと、前記被験者の前記生体組織から得られた前のスペクトルシグネチャとの変差を特定することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第3の波長の光を含む前記生体組織の第3の画像を取得することと、
前記第1、第2、及び第3の画像の空間情報を用いて前記テクスチャ解析を実行することであって、前記テクスチャ解析は前記第1、第2、及び第3の波長で解像される、前記第1、第2、及び第3の画像の前記空間情報を用いて前記テクスチャ解析を実行することと、
をさらに含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、前記生体組織の複数の追加画像を取得することであって、前記複数の追加画像のそれぞれは、複数の追加波長のうちの対応する1つの波長の光を含む、前記生体組織の前記複数の追加画像を取得することをさらに含み、
前記テクスチャ解析は、前記第1、第2、及び複数の追加画像の空間情報を用いて実行され、前記テクスチャ解析は、前記第1、第2、及び複数の追加波長で解像される、
請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記テクスチャ解析に少なくとも部分的に基づいて、前記生体組織内にバイオマーカーの存在を検出することをさらに含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
生体組織を撮像するためのシステムであって、
前記生体組織の第1の画像及び第2の画像の受信器と、
前記受信器に動作可能に接続されたプロセッサと
を備え、前記プロセッサは、
前記第1及び第2の画像の空間情報を用いて前記生体組織のテクスチャ解析を実行することであって、ここで前記テクスチャ解析は、前記第1の画像の第1の波長及び前記第2の画像の第2の波長で解像され、前記生体組織の特徴に基づいて、テクスチャ画像を生成する、前記第1及び第2の画像の空間情報を用いて前記生体組織のテクスチャ解析を実行することと、
j・k・lの寸法を有する移動ウィンドウを定義することであって、jは前記生体組織の画像の数であり、kは前記生体組織の前記画像の第1次元で定義される前記移動ウィンドウの画素数であり、lは前記生体組織の前記画像の第2次元で定義される前記移動ウィンドウの画素数である、前記j・k・lの寸法を有する前記移動ウィンドウを定義することと、
前記移動ウィンドウに含まれる前記生体組織の前記画像からの情報を使用して、前記テクスチャ画像の画素値を計算することと、
続けて、前記生体組織の前記第1次元において、前記移動ウィンドウを第1の所定画素数分、移動させることと、
前記生体組織の前記画像の前記第1次元において前記移動ウィンドウを移動させるごとに、前記テクスチャ画像の画素値の前記計算を繰り返すことと、
続けて、前記生体組織の前記画像の前記第2次元において、前記移動ウィンドウを第2の所定画素数分、移動させることと、
前記生体組織の前記画像の前記第2次元において前記移動ウィンドウを移動させるごとに、前記テクスチャ画像の画素値の前記計算と、前記生体組織の前記画像の前記第1次元にわたる前記移動ウィンドウの前記移動とを繰り返すことと、
を実行するように構成されている、
生体組織を撮像するためのシステム。
【請求項22】
前記プロセッサはさらに、
前記テクスチャ解析の一環として、前記第1及び第2の画像のコントラストレベル、前記第1及び第2の画像の相関レベル、前記第1及び第2の画像の均一性レベル、前記第1及び第2の画像のエネルギーレベル、及びこれらの組み合わせから選択される前記生体組織の特徴を特定し、
前記テクスチャ画像の一次統計値と所定値との比較に少なくとも部分的に基づいて、前記被験者の前記生体組織を正常または異常に分類する、
ように構成される、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記プロセッサはさらに、前記被験者の前記生体組織を正常または異常に分類することを考慮して、前記一次統計値の次元縮小を実行するように構成される、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記プロセッサはさらに、前記生体組織内の前記異常の位置を特定するように構成される、請求項21~23のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項25】
前記プロセッサはさらに、前記異常を定量化するように構成される、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記システムはさらにディスプレイドライバを備え、前記プロセッサはさらに、前記ディスプレイドライバに接続されたディスプレイに、前記テクスチャ画像を表示させるように構成される、請求項21~25のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項27】
前記システムはさらに、前記プロセッサに動作可能に接続されたメモリを備え、前記メモリは、前記生体組織内で発見された異常に関する統計情報、前記生体組織の基準テクスチャ画像、前記生体組織から得られた前のテクスチャ画像、及びこれらの組み合わせから選択される情報要素を記憶する、請求項21~26のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項28】
前記受信器は、クライアント端末から前記第1及び第2の画像を受信し、前記クライアント端末へ前記テクスチャ画像を送信するように適合されたネットワークインターフェースの一部である、請求項21~27のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項29】
前記システムは、前記ネットワークインターフェースに動作可能に接続された画像取得デバイスをさらに備え、前記画像取得デバイスは、前記第1及び第2の画像それぞれの複数の画素行及び複数の画素列を取得するように適合される、請求項21~28のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項30】
前記プロセッサはさらに、前記第1及び第2の画像の位置合わせを実行するように構成され、これにより前記第1及び第2の画像の対応画素は、前記生体組織の同じ要素に対応する、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記プロセッサはさらに、前記第1及び第2の画像の強度を較正するように構成される、請求項21~30のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医用撮像の分野に関する。より具体的には、本開示は、生体組織内の異常を検出するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像技術は一般に、様々な病気の検出及び診断を支援するために使用される。異常を検出するために、被験者の特定の関心領域(ROI)の画像が分析される。アミロイド及び他の異常を検出するのに一般的に使用される技術に、陽電子放出断層撮影(PET)スキャンが含まれる。PETスキャンは、高額で時間がかかり、被験者に不快感をもたらし得る。
【0003】
検出され診断の確定につながり得る異常の一例には、アミロイド、すなわち異常なタンパク質凝集体が含まれる。特に、アルツハイマー病は本質的には神経変性疾患であるが、被験者の網膜におけるアミロイド斑の存在はアルツハイマー病の発症を示し得ることが指摘されている。さらに、例えば糖尿病及び高血圧などの他の病気の診断も、被験者の網膜内の異常の検出に基づき得ることが提示されている。
【0004】
近年、数値画像処理を伴う技術が提案されている。具体的には、被験者のROI内の異常パターンを発見することを目的として、画像分析を使用して画像テクスチャの特徴付けが行われ得る。現在、被験者の眼の中に、被験者の他の器官に起因する疾患の兆候を効率的に検出することができる商用技術は少ない。このような技術の一例は、2016年3月23日公開されたSylvestre et al.の国際特許出願公開番号WO2016/041062 A1に見出すことができ、この開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとし、アルツハイマー病の発症を患っている被験者の眼底に存在するアミロイド斑を同定するために使用され得るスペクトル解像画像を生成する技術を開示する。
【0005】
ROIのテクスチャを表現するツールとして、グレイレベル共起行列(GLCM)分析が提案されている。例えば、図1(従来技術)は、2人の被験者の関心領域の空間GLCMに基づいたテクスチャ相関の表示であり、これらの被験者のうち1人はアミロイド陽性である。図1では、ROIは、2人の被験者の網膜内である。写真10は、アミロイド陽性被験者(以下患者「A」)のROIを示し、一方10は、アミロイド陰性被験者(以下患者「B」)の同様のROIを示す。写真10及び10は、これらのROIのいくつかの違いを示すが、これらの違いは微小であり、正常な状態と異常な状態を容易に区別するのに十分とは言えない。写真10及び10に基づく診断は、高度な技術を有する医療専門家の診察を必要とする。異常な組織と正常な組織をそれぞれ示す写真10と10の差異が曖昧であることが原因で、医療専門家の技術でも誤診が起こり得る。
【0006】
現在の撮像技術は、高度な技術を有する専門家のみが診断可能な視覚情報を提供する傾向がある。さらに、現在の撮像技術は一般に、被験者のROIなどの様々な生体組織における様々な種類の異常の検出に、容易に適応できない。
【0007】
従って、現在の撮像技術の限られた適応性及びこのような技術を使用して得られる画像の固有の曖昧さに関連する問題を補う、医用撮像分野における向上が求められている。
【発明の概要】
【0008】
本開示によれば、生体組織内の異常を検出する方法が提供される。生体組織の第1の画像が得られ、第1の画像は第1の波長の光を含む。生体組織の第2の画像が得られ、第2の画像は第2の波長の光を含む。生体組織のテクスチャ解析は、第1及び第2の画像の空間情報を用いて行われる。テクスチャ解析は、第1及び第2の波長で解像される。
【0009】
本開示によれば、生体組織内の異常を検出するシステムも提供される。システムは、生体組織の第1の画像及び第2の画像の受信器と、受信器に動作可能に接続されたプロセッサとを備える。プロセッサは、第1及び第2の画像の空間情報を用いて生体組織のテクスチャ解析を実行するように構成され、テクスチャ解析は、第1の画像の第1の波長及び第2の画像の第2の波長で解像される。
【0010】
本開示によれば、生体組織内の異常を検出する方法も提供される。生体組織のモノクロ画像が得られる。生体組織のモノクロ画像の空間情報を用いて生体組織のテクスチャ解析を行うことで、生体組織の特徴が特定される。生体組織の特徴に基づいて、テクスチャ画像が生成される。テクスチャ画像の一次統計値と所定値との比較に少なくとも部分的に基づいて、被験者の生体組織は、正常または異常に分類される。
【0011】
本開示はさらに、生体組織内の異常を検出するシステムに関する。システムは、生体組織のモノクロ画像の受信器と、受信器に動作可能に接続されたプロセッサとを備える。プロセッサは、生体組織のモノクロ画像の空間情報を用いて生体組織のテクスチャ解析を行って、生体組織の特徴を特定し、生体組織の特徴に基づいて、テクスチャ画像を生成し、テクスチャ画像の一次統計値と所定値との比較に少なくとも部分的に基づいて、被験者の生体組織を正常または異常に分類するように構成される。
【0012】
前述の特徴及び他の特徴は、添付の図面を参照する単なる例として与えられたそれらの例示的な実施形態の下記の非限定的な説明を読むことで、明らかになるであろう。
【0013】
本開示の実施形態は、添付の図面を参照する単なる例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来技術による、うち1人がアミロイド陽性である2人の被験者の関心領域の空間GLCMに基づいたテクスチャ相関の表示である。
図2】移動ウィンドウを使用して、空間及びスペクトル情報に基づき生体組織のテクスチャ画像を構築するプロセスの概略図である。
図3】一実施形態による、GLCM及び/またはGLRLM及び/またはMRFMを空間及びスペクトル方向に使用し、テクスチャ情報を使用して、生体組織の画像を分類するプロセスのシーケンス図である。
図4】別の一実施形態による、GLCM及び/またはGLRLM及び/またはMRFMを空間方向に使用し、テクスチャ情報を使用して、生体組織の画像を分類するプロセスのシーケンス図である。
図5】生体組織の画像を分類するシステムの要素を示す高次ネットワーク図である。
図6】生体組織の画像を分類するデバイスのブロック図である。
図7】うち2人がアミロイド陽性である4人の被験者の関心領域の空間及びスペクトルGLCMに基づいたテクスチャ相関の表示である。
図8図7の4人の被験者の関心領域の空間及びスペクトルGLCMに基づいた相関テクスチャ画像のヒストグラムである。
図9図7の4人の被験者の空間及びスペクトルGLCMに基づいた統計分類の三次元表示である。
図10】さらに多くの被験者の空間及びスペクトルGLCMに基づいた統計分類の別の三次元表示であり、データは統計分類の次元縮小後に得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
様々な図面において、類似番号は類似する特徴を表す。
【0016】
本開示の様々な態様は一般に、現在の撮像技術の限られた適応性及びこのような技術を使用して得られる画像の固有の曖昧さに関連する問題のうちの1つ以上に対処する。
【0017】
一般的に言うと、本技術は、二次元画像に本質的に存在する空間情報に、スペクトル情報の使用により定義される第三次元を追加する。生体組織の画像は、2つ以上の波長で取得される。ここで図面を参照すると、図2は、移動ウィンドウを使用して、空間及びスペクトル情報に基づき生体組織のテクスチャ画像、すなわちテクスチャマップを構築するプロセスの概略図である。図2では、被験者の関心領域(ROI)内に生体組織がみられる。被験者の器官または組織50は、ROI52を含み、ここからj個の異なる波長で複数の画像54、54、・・・、54が取得され、ROI52のハイパースペクトル画像56が生成される。複数の画像54、54、・・・、54のそれぞれは、ROI52から放射される反射または蛍光を捕捉することにより取得され得る。画像54、54、・・・、54、並びにハイパースペクトル画像56はそれぞれ、複数の画素行58と、複数の画素列60とを含む。ハイパースペクトル画像56の一部は、ウィンドウ62内に、幅k画素及び高さl画素にわたる空間情報を含み、k及びlのそれぞれは1画素以上であり、このウィンドウ62は、j個の異なる波長で定義されたスペクトル情報64も含む。ハイパースペクトル画像56のテクスチャ解析は、ウィンドウ62のk・l画素に含まれる空間情報に基づいて実行され、テクスチャ解析は、j個の異なる波長で解像される。ROI52の領域にわたりウィンドウ62を移動させることで、テクスチャ解析は、ROI52のテクスチャ画像20を提供する。テクスチャ画像20には、ROI52を説明する情報、例えばROI52の正規化コントラスト画像、正規化均一性画像、正規化相関画像、及び/または正規化エネルギー画像が含まれる。
【0018】
本開示の文脈では、生体組織は、関心領域(ROI)を含むことができ、完全な器官以上の大きさであり得る、あるいは異常の最終的検出及び/または診断の確定に十分な任意の組織もしくはその一部ほどの小ささであり得る。非限定的な一例では、生体組織は、被験者の網膜またはその一部を含み、探索される異常は、網膜の血管近くにアミロイド斑の存在を含み得る。別の非限定的な一例では、生体組織は、被験者に行われる生体組織検査から得られ得る。生体組織の撮像は、生体内、生体外、及び/または試験管内で行われ得る。
【0019】
図3は、一実施形態による、GLCM及び/またはGLRLM及び/またはMRFMを空間及びスペクトル方向に使用し、テクスチャ情報を使用して、生体組織の画像を分類するプロセスのシーケンス図である。図3において、シーケンス100は複数の動作を含み、これらの動作は変更可能な順序で実行することができ、動作のうちのいくつかは同時に実行することが可能であり、動作のうちのいくつかは任意である。
【0020】
動作102で、生体組織のハイパースペクトル画像が得られる。ハイパースペクトルは、複数の対応する波長で取得された生体組織の複数の画像から構成される。2つの異なる波長で、最低でも生体組織の2つの画像が取得される。一変形形態では、ハイパースペクトル画像は、第3の波長の光を含む生体組織の第3の画像を含み得る。別の変形形態では、ハイパースペクトル画像は、多数の画像を含み得、これらの画像はそれぞれ、対応する波長の光を含む。ハイパースペクトル画像を生成するために、例えばカメラといった画像取得デバイス(図示せず)が、第1及び第2の画像、並びにさらなる任意の画像を取得する。一実施形態では、画像取得デバイスにより、第1、第2、及びさらなる任意の画像が同時に取得される。非限定的な例で、様々な波長での画像の連続取得、及び走査レーザ眼科(SLO)撮像など、他の画像取得方法も企図されている。
【0021】
動作104にて第1及び第2の画像、並びに利用可能であればさらなる任意の画像の光強度、すなわち輝度を較正することで、これらの画像を提供する撮像機器が生じる異なる波長での最終的な出力変動が補正され得る。同様に、撮像機器が各波長の画像の一貫した位置合わせを提供しない場合、動作106にて第1、第2、及びさらなる任意の画像の位置合わせが行われ得、これによりこれらの画像の対応画素は、生体組織の同じ要素に対応する。動作104及び106は任意であり、撮像機器が較正及び位置合わせを行った画像を提供する実施形態においては、存在しなくてもよい。
【0022】
生体組織のテクスチャ解析は、少なくとも第1及び第2の画像の空間情報を用いて、また利用可能であれば生体組織のさらなる任意の画像の空間情報も用いて実行され、テクスチャ解析は、少なくとも第1及び第2の波長で、また利用可能であれば生体組織のこれらのさらなる画像の波長で解像される。このテクスチャ解析は、動作108及び110で行われる。生体組織の特徴を特定するために、動作108にて、行列を計算すること、例えば、生体組織の第1、第2、及びさらなる任意の画像の空間及びスペクトル情報に適用されたグレイレベル共起行列(GLCM)、グレイレベルランレングス行列(GLRLM)、マルコフ確率場行列(MRFM)、またはGLCM、GLRLM、及びMRFMの任意の組み合わせを使用することにより、生体組織の第1、第2、及びさらなる任意の画像の各画素に対しテクスチャ解析が行われる。動作110にて、テクスチャ値が計算される。動作108及び110は、第1及び第2の画像並びにさらなる任意の画像の画素行及び画素列にわたり繰り返される。
【0023】
非限定的な実施形態において、動作112にて、第1、第2、及びさらなる任意の画像のテクスチャ解析で特定された生体組織の特徴に基づいて、テクスチャ画像が生成される。生体組織の第1、第2、及びさらなる任意の画像を含む生体組織画像の集合が、画像取得デバイスを用いて取得される。画像プロセッサは、j・k・lの寸法を有する移動ウィンドウを実施する。移動ウィンドウにおいて、jは、波長の数であり、また集合内の画像の数に等しく、kは、生体組織の画像の第1次元におけるウィンドウの画素数(例えば画素行を形成する生体組織の水平方向の幅に沿ったウィンドウの画素数)であり、lは、生体組織の画像の第2次元におけるウィンドウの画素数(例えば画素列を形成する生体組織の垂直方向の高さに沿ったウィンドウの画素数)である。特定の実施形態では、lは1画素に等しくてもよく、この場合、移動ウィンドウは、波長の数と移動ウィンドウの画素幅で定義された2次元行列を形成する。GLCM及び/またはGLRLM及び/またはMRFMを用いたテクスチャ解析は、初期位置におけるこのウィンドウに含まれる情報を用いて行われる。特定のテクスチャ特徴の値は、GLCMまたはGLRLMまたはMRFM行列におけるエネルギーレベル、相関レベル、コントラストレベル、または均一性レベルに基づいて計算される。この値は、テクスチャ画像の第1の画素の値となり、よってテクスチャを特徴付ける。ウィンドウは次に、生体組織の画像集合上で、第1次元に沿って(例えば水平に)、所定の画素数分、例えば1つ以上の画素分、空間内を移動させられる。このウィンドウの情報は再び抽出され分析され、テクスチャ画像の第2の画素が定義される。プロセスは、移動ウィンドウが第1次元の終わり(第1の行の終わり)に達するまで続けられ、次に移動ウィンドウを第2次元に沿って(例えば垂直に、別の画素行上で)、別の所定の画素数分、例えば1つ以上の画素分、移動させることが続けられる。プロセスは、移動ウィンドウが画像集合または生体組織を完全に覆うまで続けられる。
【0024】
動作114にて、テクスチャ画像のヒストグラムに基づく一次統計値(FOS)が計算され得る。FOSは、テクスチャ画像の強度平均、強度歪度、強度分散、及び強度尖度のうちのいずれか1つ以上を含み得る。動作114のFOSは、生体組織の特徴に追加できる相似値の特定につながり得る。任意で、動作114で取得された統計情報は、動作115にて、例えば主成分分析(PCA)または判別分析(DA)のうちの1つを使用して、教師ありまたは教師なし次元縮小にかけられ得る。次元縮小の有無にかかわらず統計情報は、生体組織の特徴及び任意で相似値に基づいて生体組織を分類する後続の動作116において使用される。分類は、例えばコントラスト、相関、均一性、及び/またはエネルギーを反映したテクスチャといったテクスチャ画像で見つかる様々なFOSのうちのいずれか1つ以上を使用して行われ得る。分類は、陰性結果118をもたらし得、この場合、生体組織は正常として分類され、または陽性結果120をもたらし得、この場合、生体組織は異常として分類される。より詳細には、動作116にて行われる分類は、一方では所定値との比較を、他方ではテクスチャ画像の統計値との比較を含み得る。代替的または付加的に、動作116にて行われる分類は、テクスチャ画像またはその統計値と、同じ被験者の生体組織、例えば被験者の同じROIから得られた前のテクスチャ画像またはその統計値との変差を特定することを含み得る。動作116にて行われる分類はまた、FOSを使用して、テクスチャ画像と前のテクスチャ画像との変差を特徴付け得る。テクスチャ画像と前のテクスチャ画像との変差は、テクスチャ画像の強度の正規化及び前のテクスチャ画像の強度の正規化の後に、特定され得る。非限定的に、画像の様々な画素の強度は、0と1の間の強度範囲内に正規化され得、これらの値は無次元である。異常の進行は、テクスチャ画像と前のテクスチャ画像との変差に少なくとも部分的に基づいて判定され得る。
【0025】
任意で、動作122はさらに、ハイパースペクトル画像に含まれる第1、第2、及びさらなる任意の画像におけるそれぞれの波長のスペクトル情報を使用して、生体組織のスペクトルシグネチャを定義し得る。スペクトルシグネチャは、利用可能な波長での特定画素の強度(すなわち輝度)の情報を含むベクトルである。このベクトルはまた、利用可能な波長での特定領域の平均強度値も表し得る。スペクトルシグネチャを対照生体組織の基準スペクトルシグネチャと比較することが可能となり、その結果、動作116はさらに、この比較に少なくとも部分的に基づいて、被験者の生体組織を正常(陰性結果118)または異常(陽性結果120)に分類し得る。従って、生体組織の分類は、教師ありで基準情報に基づいて行われてもよく、または教師なしで行われてもよい。
【0026】
スペクトルシグネチャは、生体組織に関連するピクセルごとの情報を含み得る。あるいは、スペクトルシグネチャは、生体組織の領域にわたり、または生体組織の一部にわたり定義された平均スペクトルシグネチャであり得る。別の言い方をすると、生体組織のスペクトルシグネチャは、異常の検出及び/または生体組織に見られる状態の診断に有用な任意のレベルの粒度で、特定され得る。生体組織のスペクトルシグネチャを、対照生体組織のスペクトルシグネチャと、または被験者の同一もしくは同等の生体組織から以前に取得したスペクトルシグネチャと比較することにより、生体組織の全ての画素に関してテクスチャ画像の分化率を特定することが可能となる。生体組織のスペクトルシグネチャと、被験者の同一または同等の生体組織から取得された前のスペクトルシグネチャとの変差を特定すること、及び生体組織のスペクトルシグネチャと前のスペクトルシグネチャとの変差に少なくとも部分的に基づいて異常の進行を判定することが、可能になる。異常の進行の判定は、被験者の治療の有効性を評価するのに特に有用であり得る。
【0027】
分類が陽性結果120をもたらす場合、シーケンス100は、生体組織において発見された異常に関する情報を技師または医療提供者に提供するのに有用な1つ以上の動作を続け得る。例えば、動作124は、生体組織内の異常の位置を特定し得、動作126は、生体組織の異常を定量化し得、動作128は、生体組織の映像マッピングを提供して、コンピュータモニタ上に類似表示を映し出し得る。技師または医療提供者に提供される情報を使用して、テクスチャ画像と基準テクスチャ画像との比較及び/または生体組織のスペクトルシグネチャと基準スペクトルシグネチャとの比較に少なくとも部分的に基づいて、被験者の診断が確定され得る。非限定的に、本技術を使用して、被験者のROIにおいてバイオマーカー、例えば脳アミロイドに相関するバイオマーカーの存在が検出され得る。例えば、少なくとも部分的に動作108及び110のテクスチャ解析に基づいて、またシーケンス100内の他の動作の結果に基づいて、被験者の網膜においてアルツハイマー病の兆候を検出することが可能になる。シーケンス100の動作を使用して検出可能となり得る他の病気には、動脈硬化症、糖尿病性網膜症、緑内障、加齢黄斑変性症、皮膚癌、及び前立腺癌が非限定的に含まれる。
【0028】
図4は、別の一実施形態による、GLCM及び/またはGLRLM及び/またはMRFMを空間方向に使用し、テクスチャ情報を使用して、生体組織の画像を分類するプロセスのシーケンス図である。図4において、シーケンス200は複数の動作を含み、これらの動作は変更可能な順序で実行することができ、動作のうちのいくつかは同時に実行することが可能であり、動作のうちのいくつかは任意である。シーケンス200内の動作のうちのいくつかは、シーケンス100のうちのいくつかの動作と同一または同等であり、一貫性を保つために同じ番号で識別する。図3に関連して記述された動作と同一または同等の動作は、説明を簡潔にするために詳細に記述しない。
【0029】
シーケンス200において、生体組織のテクスチャ解析は、生体組織のモノクロ画像の空間情報を用いて行われる。一変形形態では、動作202にて、モノクロ画像が直接取得され得る。別の変形形態では、動作102にてハイパースペクトル画像が取得され得、その後、動作204にてハイパースペクトル画像のスペクトル次元が縮小され、生体組織のモノクロ画像が提供される。スペクトル次元のこの縮小は、例えば、ハイパースペクトル画像の複数の波長で対応画素の平均を計算することにより、またはハイパースペクトル画像の主成分分析(PCA)もしくは判別分析(DA)を用いることにより、取得され得る。
【0030】
モノクロ画像が取得される方法に関係なく、生体組織のテクスチャ解析は、生体組織のモノクロ画像の空間情報を用いて行われる。このテクスチャ解析は、動作206及び110で行われる。動作108にて、生体組織のモノクロ画像の空間情報に適用されたグレイレベル共起行列(GLCM)、グレイレベルランレングス行列(GLRLM)、マルコフ確率場行列(MRFM)、またはGLCM、GLRLM、及びMRFMの任意の組み合わせを使用して、生体組織の第1、第2、及びさらなる任意の画像の各画素に対しテクスチャ解析が行われる。動作110にて、テクスチャ値が計算される。モノクロ画像の画素行及び画素列にわたり、動作206及び110が繰り返される。
【0031】
動作112におけるテクスチャ画像の生成、動作114におけるFOSの計算、動作115における次元縮小、動作116における生体組織の分類、結果118または結果120の判定、並びに動作124、126及び/または128における結果の提示は、モノクロ画像に基づくとはいえ本質的には図3の前述の説明と同じであり、シーケンス200から得られる結果及び情報は、シーケンス100と同じ診断目的で使用され得る。
【0032】
非限定的な一実施形態において、生体組織の第1、第2、及びさらなる任意の画像を含む生体組織画像の集合が、画像取得デバイスを用いて取得される。画像プロセッサは、k・lの寸法を有する移動ウィンドウを実施する。移動ウィンドウにおいて、kは、生体組織の画像の第1次元におけるウィンドウの画素数(例えば画素行を形成する生体組織の水平方向の幅に沿ったウィンドウの画素数)であり、一方lは、生体組織の画像の第2次元におけるウィンドウの画素数(例えば生体組織の垂直方向の高さに沿ったウィンドウの画素数)である。GLCM及び/またはGLRLM及び/またはMRFMを用いたテクスチャ解析は、初期位置におけるこのウィンドウに含まれる情報を用いて行われる。特定のテクスチャ特徴(コントラスト、エネルギー、相関、または均一性)の値が計算される。この値は、テクスチャ画像の第1の画素の値となり、よってテクスチャを特徴付ける。ウィンドウは次に、生体組織の画像集合上で、第1次元に沿って(例えば水平に)、所定の画素数分、例えば1つ以上の画素分、空間内を移動させられる。このウィンドウの情報は再び抽出され分析され、テクスチャ画像の第2の画素が定義される。プロセスは、移動ウィンドウが第1次元の終わり(第1の行の終わり)に達するまで続けられ、次に移動ウィンドウを第2次元に沿って(例えば垂直に、別の画素行上で)、別の所定の画素数分、例えば1つ以上の画素分、移動させることが続けられる。プロセスは、移動ウィンドウが画像集合または生体組織を完全に覆うまで続けられる。
【0033】
任意で、シーケンス200の状況において、ハイパースペクトル画像を供給する撮像デバイスが引き起こす不完全な位置合わせを直すために必要であれば、動作102で得られたハイパースペクトル画像に含まれる様々な波長の画像は、動作106にて、位置合わせにかけられ得る。その後、動作122は、次に生体組織のスペクトルシグネチャを基準スペクトルシグネチャと比較するために、ハイパースペクトル画像に含まれるスペクトル情報を使用して、生体組織のスペクトルシグネチャを定義し得る。次いで、動作116はさらに、スペクトルシグネチャと基準スペクトルシグネチャとの比較に少なくとも部分的に基づいて、被験者の生体組織を正常または異常に分類し得る。
【0034】
シーケンス100及び200において、動作102~128及び/または202~206のそれぞれの動作は、メモリに接続された1つ以上のプロセッサにより処理されるように構成され得る。
【0035】
図5は、生体組織の画像を分類するシステムの要素を示す高次ネットワーク図である。図6は、生体組織の画像を分類するデバイスのブロック図である。図5及び図6を同時に考察すると、ネットワーク300は、生体組織の画像を分類するデバイス400を含む。ネットワーク300は、1つのクライアントデバイス302、または302、302、・・・、302などの複数のクライアントデバイスを含み得る。各クライアントデバイス302は、例えばカメラといった画像取得デバイス(具体的に図示せず)、被験者のROIの複数のモノクロ画像及び/またはハイパースペクトル画像を含む。クライアントデバイス302、302、・・・、302は、データ転送接続304を使用して、各自の画像取得デバイスからデバイス400へ、生体組織の画像を転送する。次に、デバイス400は、ネットワークインターフェース402、プロセッサ404を備え、さらにメモリ406、及びディスプレイドライバ408を備え得る。プロセッサ404は、画像分析モジュール410及び機械学習モジュール412を実装する。デバイス400は、所与の生体組織に関して、陰性結果118または陽性結果120のうちの1つを出力し、これはデータ転送接続304を介して、所与の生体組織の画像を提出したクライアントデバイス302へ送信され得る。データ転送接続304には、インターネット、クラウドネットワークインターフェース、プライベートネットワークインターフェース、ローカルエリアネットワーク、及び仮想プライベートネットワークなどが非限定的に含まれ得る。データ転送接続304は、非限定的に、光ケーブルもしくは銅ケーブルなどの1つ以上の有線接続、1つ以上の無線接続、またはこれらの任意の組み合わせにより実現され得る。
【0036】
より詳細には、デバイス400のネットワークインターフェース402は、生体組織の第1の画像及び第2の画像を少なくとも含むハイパースペクトル画像の受信器として、または生体組織のモノクロ画像の受信器として、機能する。
【0037】
デバイス400がハイパースペクトル画像を受信した場合、プロセッサ404は、ハイパースペクトル画像に含まれる第1及び第2の画像並びにさらなる任意の画像の位置合わせを実行して、生体組織の同じ要素に対応する第1、第2、及びさらなる任意の画像の対応画素の位置を合わせる。必要であれば、プロセッサ404は、第1、第2、及びさらなる任意の画像の強度を較正し得る。
【0038】
一変形形態では、プロセッサ404は、第1及び第2の画像の空間情報を用いて生体組織のテクスチャ解析を実行し、第1の画像の第1の波長及び第2の画像の第2の波長でテクスチャ解析を解像するように構成される。同じまたは別の変形形態では、プロセッサ404は、生体組織のモノクロ画像の空間情報を使用して、生体組織のテクスチャ解析を実行するように構成される。どちらの場合も、プロセッサ404は、GLCM及び/またはGLRLM及び/またはMRFM技術を使用して、テクスチャ解析を実行し得る。プロセッサ404は、第1及び第2の画像またはモノクロ画像のいずれかのテクスチャ解析に基づいて、テクスチャ画像を生成し得る。プロセッサ404は次に、テクスチャ画像の一次統計値と所定値との比較に少なくとも部分的に基づいて、被験者の生体組織を正常または異常に分類し得る。プロセッサ404はまた、生体組織内の異常の位置特定及び/または異常の定量化を行い得る。プロセッサ404は、ディスプレイドライバ408に接続されたディスプレイ(図示せず)により、テクスチャ画像を表示させ得る。プロセッサ404はまた、ネットワークインターフェース402により、テクスチャ画像、生体組織の分類、基準画像からの変差の定量のうちの1つ以上を、生体組織の画像(複数可)を供給したクライアントデバイスへ送信させ得る。
【0039】
メモリ406は、生体組織内で発見された異常に関する統計情報、生体組織の基準テクスチャ画像、同じ被験者の生体組織から得られた前のテクスチャ画像、及びこれらの任意の組み合わせなどの情報要素を記憶し得る。プロセッサ404は、メモリ406からこの情報を使用して、生体組織の分類を行い得る。
【0040】
図5及び図6の説明で述べられた特徴に加えて、デバイス400はさらに、図4及び図5の前述の説明で記載された機能及び動作のうちのいずれか1つを実行するように適合され得、これには、これらの動作の任意の組み合わせも含まれる。
【0041】
図7は、うち2人がアミロイド陽性である4人の被験者の関心領域の空間及びスペクトルGLCMに基づいたテクスチャ相関の表示である。上記に説明された技術を用いて4枚の写真が取得され、これらの写真のうちの2枚は、図1の前述の説明で紹介された同じ患者「A」及び「B」に関して取得された。
【0042】
写真20は、アミロイド陽性患者「A」の生体組織を示し、一方写真20は、アミロイド陰性患者「B」の生体組織を示し、写真20は実際には、図2の前述の説明で紹介されている。写真10と20を比較し、写真10と20を比較すると、これらの画像のコントラスト及び可読性は著しく向上している。写真20及び20は、他の2人の被験者、患者「C」及び「D」に関して取得され、具体的には、写真20は、別のアミロイド陽性被験者の同様の生体組織を表し、一方写真20は、別のアミロイド引用被験者の同様の生体組織を表す。再び、写真20及び20を考察すると、本明細書で開示される技術により、従来技術を用いて得られた医療画像と比べると、可読性がはるかに向上した医療画像が提供される。
【0043】
図8は、図7の4人の被験者の関心領域の空間及びスペクトルGLCMに基づいた相関テクスチャ画像のヒストグラムである。曲線30、30、30、及び30は、2人のアミロイド陽性患者「A」及び「C」の場合、画素強度は多数の画素の高ピークに達し、2人のアミロイド陰性患者「B」及び「D」の場合、このようなピークは存在しないことを示す。
【0044】
図9は、図7の4人の被験者の空間及びスペクトルGLCMに基づいた統計分類の三次元表示である。図9のグラフには、空間GLCMに基づいた均一性画像、相関画像、及びエネルギー画像の平均値に基づく一次統計(FOS)計算の結果が示されており、3つの軸は、これらの患者の生体組織からの反射放出で形成された画像の平均相関、平均均一性、及び平均エネルギーを提供する。アミロイド陽性患者「A」及び「C」は、図9の3D空間において対応点40及び40で表され、一方アミロイド陰性患者「B」及び「D」は、対応点40及び40で表される。3D空間内におけるアミロイド陰性患者またはアミロイド陽性患者の位置には、非常に明確な差異が現れ、これらの患者の生体組織内の異常を検出するのに図4の手順が有効であることを実証している。図9は、生体組織画像の相関、均一性、及びエネルギーの平均値を示す。例示されていないが、生体組織画像のコントラスト、相関、均一性、及びエネルギーの尖度、歪度、または分散を示す同様のグラフを作成することが可能である。
【0045】
再び図3及び図4を参照すると、任意で、動作116で生体組織の分類を行う前に、動作114にて取得された統計情報に、次元縮小動作115が適用され得る。図10は、さらに多くの被験者の空間及びスペクトルGLCMに基づいた統計分類の別の三次元表示であり、データは統計分類の次元縮小後に得られる。図10のグラフを図9のグラフと比較すると、多数の被験者を使用して、陽性結果の第1の集団70と陰性結果の第2の集団72が作り出される。動作115にて判別分析(DA)の3つの最も重要な構成要素が選択された後に、結果が得られる。
【0046】
生体組織内の異常を検出する方法及びシステムの説明は、例示にすぎず、決して限定する意図はないことを、当業者は理解するであろう。本開示の利益を享受する当業者には、他の実施形態が容易にわかるであろう。さらに、開示される方法及びシステムは、現在の撮像技術の限られた適応性及びこのような技術を使用して得られる画像の固有の曖昧さに関連する既存のニーズ及び問題に対し、価値ある解決策を提供するようにカスタマイズされ得る。説明を明確にするために、方法及びシステムの実施態様の平凡な特徴の全てを示し説明してはいない。具体的には、特徴の組み合わせは、前述の説明において提示されたものに限定されず、添付の特許請求の範囲に列挙される要素の組み合わせは、本開示の不可欠な部分を成す。当然のことながら、方法及びシステムの任意のこのような実際の実施態様の開発において、アプリケーション関連制約、システム関連制約、及びビジネス関連制約の順守など、開発者の特定の目的を達成するために多数の実施態様固有の決定が行われる必要があり得ること、並びに、これらの特定の目的は、実施態様によって及び開発者によって、変わることが、理解されよう。さらに、開発努力は複雑で時間がかかり得るが、それでもなお本開示の利益を享受する医療撮像分野の当業者にとってエンジニアリングの日常的仕事であることが、理解されよう。
【0047】
本開示によれば、本明細書で説明される構成要素、プロセス動作、及び/またはデータ構造は、様々な種類のオペレーティングシステム、コンピューティングプラットフォーム、ネットワークデバイス、コンピュータプログラム、及び/または汎用マシンを使用して実施され得る。さらに、ハードワイヤードデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または特定用途向け集積回路(ASIC)などの汎用性の低いデバイスも使用され得ることが、当業者には認識されよう。一連の動作を含む方法がコンピュータまたはマシンにより実施され、これらの動作がマシンにより読み取り可能な一連の命令として記憶され得る場合、これらは有形媒体に記憶され得る。
【0048】
本明細書で説明されるシステム及びモジュールは、本明細書で説明される目的に適したソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェアの任意の組み合わせ(複数可)を含み得る。ソフトウェア及び他のモジュールは、サーバ、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、コンピュータタブレット、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、及び本明細書で説明される目的に適した他のデバイス上に存在し得る。ソフトウェア及び他のモジュールは、ローカルメモリを介して、ネットワークを介して、ブラウザもしくは他のアプリケーションを介して、または本明細書で説明される目的に適した他の手段を介して、アクセス可能であり得る。本明細書で説明されるデータ構造は、本明細書で説明される目的に適したコンピュータファイル、変数、プログラミングアレイ、プログラミング構造、または任意の電子情報記憶スキームもしくは方法、あるいはこれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0049】
本開示は、実施例として提供された非限定的な例示的実施形態を用いて、前述の明細書において説明された。これらの例示的実施形態は、自由に修正してもよい。特許請求の範囲は、実施例で述べられた実施形態に限定されるべきではなく、説明全体と一貫する最も広い解釈が与えられるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10