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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20230410BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230410BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 150
H02J7/35 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021201520
(22)【出願日】2021-12-13
(62)【分割の表示】P 2021017132の分割
【原出願日】2021-02-05
(65)【公開番号】P2022095563
(43)【公開日】2022-06-28
【審査請求日】2021-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2020208362
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517150009
【氏名又は名称】株式会社MR Japan
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】平林 真人
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-085769(JP,A)
【文献】特開2017-158264(JP,A)
【文献】特開2015-122906(JP,A)
【文献】特開2018-174679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光パネルおよび蓄電池が出力する直流電力を変換するDC/DCコンバータと、前記DC/DCコンバータが出力する直流電力を交流電力に変換するDC/ACインバータとを備えた電力供給系統を複数備え、複数の前記電力供給系統が出力する交流電力を集電して出力する電力供給システムであって、
複数の前記電力供給系統の前記DC/DCコンバータは、前記DC/DCコンバータに内蔵され、前記DC/ACインバータに出力する直流電力を制御するコントローラを備え、
複数の前記電力供給系統のうちマスタ電力供給系統の前記コントローラは、
前記電力供給システムが出力する交流電力をモニタする機能を備え、前記電力供給システムが出力する交流電力が、電力需要を満たすように、前記マスタ電力供給系統の前記DC/DCコンバータが出力する直流電力、及び前記マスタ電力供給系統以外のスレーブ電力供給系統の前記DC/DCコンバータが出力する直流電力を制御するように構成され、
前記コントローラは、
前記DC/DCコンバータが出力する前記直流電力、前記DC/DCコンバータに接続されている前記太陽光パネルの発電量、前記蓄電池の蓄電量に基づいて、前記太陽光パネルから前記蓄電池への充電電力および前記蓄電池からの放電電力を制御する
電力供給システム。
【請求項2】
前記DC/DCコンバータの前記コントローラは、
前記DC/DCコンバータに接続されている前記太陽光パネルの発電量、前記蓄電池の蓄電量をモニタする機能を備え、
前記マスタ電力供給系統の前記コントローラは、前記スレーブ電力供給系統の前記コントローラから収集した前記太陽光パネルの発電量、前記蓄電池の蓄電量の情報に基づいて、
前記マスタ電力供給系統の前記DC/DCコンバータが出力する直流電力、及び前記マスタ電力供給系統以外のスレーブ電力供給系統の前記DC/DCコンバータが出力する直流電力の値を決定する
ことを特徴とする請求項1記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記マスタ電力供給系統の前記コントローラは、
前記スレーブ電力供給系統の前記コントローラから収集した前記太陽光パネルの発電量が、前記DC/DCコンバータが出力する直流電力の値を満たしていない場合に、前記太陽光パネルの発電量における不足電力を補充するように、前記蓄電池の放電電力を制御する
ことを特徴とする請求項2記載の電力供給システム。
【請求項4】
複数の前記電力供給系統の前記DC/DCコンバータは、前記太陽光パネルにより発電された直流電力を前記蓄電池に充電可能に構成され、
前記太陽光パネルの発電量が、前記DC/DCコンバータが出力する直流電力の値を超えている場合に、前記太陽光パネルの発電量における余剰電力を、前記蓄電池に充電するように構成されている
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の電力供給システム。
【請求項5】
一台の前記DC/DCコンバータに対して、複数の前記DC/ACインバータが並列に接続されている
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記DC/DCコンバータは、複数の入力ストリングと、前記複数の入力ストリングに対して設けられた所定の数の第1のMPPT回路と、前記第1のMPPT回路と同数の出力ストリングを備えること
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記DC/DCコンバータは、24本の前記入力ストリングと、12台の前記第1のMPPT回路と12本の出力ストリングを有し、
複数の前記DC/ACインバータは、少なくとも12台の第2のMPPT回路を備え、前記出力ストリングのそれぞれに対して、前記第2のMPPT回路が接続されている
ことを特徴とする請求項6に記載の電力供給システム。
【請求項8】
一台の前記DC/DCコンバータに対して、二台の前記DC/ACインバータが並列に接続され、前記DC/ACインバータは、それぞれ6台の前記第2のMPPT回路を備え、6本の前記出力ストリングが接続されている
ことを特徴とする請求項7に記載の電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電力供給源から供給された電力を負荷へ供給するための電力供給技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生エネルギー(太陽電池)を利用してCO2の削減、電力会社の電気料金を抑えることを目的として、電力会社からの商用電力系統とは別に、太陽光パネル、蓄電池を備えた補助電力系統を設ける電力供給システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、負荷系統の電力需要に対して、太陽電池、蓄電池からなる補助電力系統からの電力が供給されることで、商用電力系統からの電力供給を抑えるいわゆるピークカットを行い、商用電力系統の電気料金を抑えることができる。特許文献1の電力供給システムでは、負荷系統の電力需要が低下する夜間に商用電力系統からの電力を蓄電池に充電し、蓄電池から放電される電力を用いて太陽電池の発電量が少ない場合に補助電力系から供給される電力を補うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-23381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような電力供給システムを商用施設等の負荷系統に導入する場合、導入される施設によっては多くの電力が必要となるため、その電力需要に応じた複数の補助電力系統が必要になる場合がある。この場合、負荷系統の電力需要に応じて安定した電力を供給するには、複数の補助電力系統の状態に応じて複数の補助電力系統それぞれの出力電力を制御することが求められるが、そのような電力供給システムは実現できていない。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、複数の補助電力系統からの出力電力を制御することにより、負荷系統の電力需要に応じて安定した電力を供給することができる電力供給システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明の電力供給システムは、太陽光パネルおよび蓄電池が出力する直流電力を変換するDC/DCコンバータと、前記DC/DCコンバータが出力する直流電力を交流電力に変換するDC/ACインバータとを備えた電力供給系統を複数備え、複数の前記電力供給系統が出力する交流電力を集電して出力する電力供給システムであって、複数の前記電力供給系統の前記DC/DCコンバータは、前記DC/DCコンバータに内蔵され、前記DC/ACインバータに出力する直流電力を制御するコントローラを備え、複数の前記電力供給系統のうちマスタ電力供給系統の前記コントローラは、前記電力供給システムが出力する交流電力をモニタする機能を備え、前記電力供給システムが出力する交流電力が、電力需要を満たすように、前記マスタ電力供給系統の前記DC/DCコンバータが出力する直流電力、及び前記マスタ電力供給系統以外のスレーブ電力供給系統の前記DC/DCコンバータが出力する直流電力を制御するように構成され、前記コントローラは、前記DC/DCコンバータが出力する前記直流電力、前記DC/DCコンバータに接続されている前記太陽光パネルの発電量、前記蓄電池の蓄電量に基づいて、前記太陽光パネルから前記蓄電池への充電電力および前記蓄電池からの放電電力を制御するように構成されている。
【0008】
また、前記DC/DCコンバータの前記コントローラは、前記DC/DCコンバータに接続されている前記太陽光パネルの発電量、前記蓄電池の蓄電量をモニタする機能を備え、前記マスタ電力供給系統の前記コントローラは、前記スレーブ電力供給系統の前記コントローラから収集した前記太陽光パネルの発電量、前記蓄電池の蓄電量の情報に基づいて、前記マスタ電力供給系統の前記DC/DCコンバータが出力する直流電力、及び前記マスタ電力供給系統以外のスレーブ電力供給系統の前記DC/DCコンバータが出力する直流電力の値を決定してもよい。
【0009】
また、前記マスタ電力供給系統の前記コントローラは、前記スレーブ電力供給系統の前記コントローラから収集した前記太陽光パネルの発電量が、前記DC/DCコンバータが出力する直流電力の値を満たしていない場合に、前記太陽光パネルの発電量における不足電力を補充するように、前記蓄電池の放電電力を制御してもよい。
【0010】
また、複数の前記電力供給系統の前記DC/DCコンバータは、前記太陽光パネルにより発電された直流電力を前記蓄電池に充電可能に構成され、前記太陽光パネルの発電量が、前記DC/DCコンバータが出力する直流電力の値を超えている場合に、前記太陽光パネルの発電量における余剰電力を、前記蓄電池に充電するように構成されていてもよい。
【0011】
また、一台の前記DC/DCコンバータに対して、複数の前記DC/ACインバータが並列に接続されていてもよい。また、前記DC/DCコンバータは、複数の入力ストリングと、前記複数の入力ストリングに対して設けられた所定の数の第1のMPPT回路と、前記第1のMPPT回路と同数の出力ストリングを備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の補助電力系統からの出力電力を制御することにより、負荷系統の電力需要に応じて安定した電力を供給することができる電力供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施の形態にかかる電力供給システムの構成例を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施の形態にかかるDC/DCコンバータの構成例を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の実施の形態にかかるDC/ACコンバータの出力電圧の一例を示す図である。
図3A図3Aは、MPPT(Maximum Power Point Tracking)の動作を説明するための図である。
図4図4は、本発明の実施の形態にかかる管理デーブルの一例を示す図である。
図5図5は、本発明の実施の形態にかかる電力供給システムにおける電力供給制御シーケンスの一例を示す図である。
図6図6は、本発明の実施の形態にかかる電力供給システムにおける電力供給制御の一例を示す図である。
図7図7は、本発明をPPA(Power Purchase Agreement)に適用した場合の電力供給システムの構成例を示すブロック図である。
図8図8は、本発明をPPS(Power Producer and Supplier)に適用した場合の電力供給システムの構成例を示すブロック図である。
図9図9は、一台のDC/DCコンバータに対して、複数のDC/ACインバータが接続された電力供給システムの構成例を示すブロック図である。
図10図10は、一台のDC/DCコンバータに対して、二台のDC/ACインバータが接続された場合の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する本発明の実施の形態は本発明を実施するための一例であって、本発明が以下に説明する実施形態に限定されることを意図したものではない。
【0015】
図1、2を参照して、本発明の本発明の実施の形態にかかる電力供給システム1の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる電力供給システム1の構成例を示すブロック図である。図2は、本発明の実施の形態にかかるDC/DCコンバータ30の構成例を示すブロック図である。
【0016】
電力供給システム1は、並列に接続された複数の電力供給系統10を備え、これらの電力供給系統10から出力される電力を集電して出力することにより、商用電力系統や負荷系統に対して電力を安定供給するシステムである。
【0017】
<電力供給システム1の構成>
電力供給システム1は、図1に示すように、複数の電力供給系統10が並列的に接続されている。それぞれの電力供給系統10は、DC/DCコンバータ30、DC/ACコンバータを備えており、DC/DCコンバータ30には、太陽光パネル20および蓄電池50が接続されている。太陽光パネル20および蓄電池50の数は、供給する電力の規模に応じて適宜定めることができる。
【0018】
DC/DCコンバータ30は、太陽光パネル20と蓄電池50から出力される直流電力を制御する機能、太陽光パネル20と蓄電池50から出力される直流電力をDC/ACコンバータに出力する機能、太陽光パネル20から出力される直流電力を、蓄電池50に充電する機能を有している。
【0019】
DC/ACインバータ40は、DC/DCコンバータ30から出力される直流電力を交流電力にDC/AC変換して出力する機能を有している。DC/ACインバータ40は、所定の出力容量を有しており、その出力容量を上回る電力が入力された場合、DC/ACインバータ40の出力は、所定の出力容量に制限される。
【0020】
太陽光パネル20の発電量の合計値がDC/ACインバータ40の出力容量を超える場合、太陽光パネル20の発電量における余剰電力は、DC/DCコンバータ30を介して蓄電池50に充電することができる。
【0021】
逆に、太陽光パネル20の発電量が、前記DC/DCコンバータ30が出力する直流電力の値を満たしていない場合に、太陽光パネル20の発電量における不足電力は、充電された蓄電池50の放電電力によって補充することができる。
【0022】
図3は、本発明の実施の形態にかかるDC/ACコンバータの出力電圧の一例を示す図である。図3に示すように、太陽光パネルの発電量がDC/ACコンバータの出力容量を上回る場合には、DC/ACインバータ40の出力は、所定の出力容量に制限される。この余剰電力(図3のA)を、蓄電池50に充電することで、太陽光パネル20の発電量が少ない時間帯の電力(図3のC、D)を補うことができる。
【0023】
また、電力供給システム1に対する電力需要に対して、各電力供給系統10に割当てられる出力電力に余裕がある場合には、各DC/ACコンバータの出力に対する要求電力を所定の値(プリセット値)に下げて、余剰電力(図3のA、B)を蓄電池50に充電して、太陽光パネル20の発電量が少ない時間帯の電力(図3のE、F)を補うことで、電力需要を満たす時間帯をさらに長くすることもできる。
【0024】
本実施形態では、電力供給システム1における複数の電力供給系統10のうち1つの電力供給系統10がマスタ電力供給系統10となり、その他の電力供給系統10はスレーブ電力供給系統10となり、マスタ電力供給系統10の指示に従って、スレーブ電力供給系統10の出力電力が制御されるように構成されている。
【0025】
各電力供給系統10の出力電力の制御は、電力供給システム1のDC/DCコンバータ30によって実行される。マスタ電力供給系統10のDC/DCコンバータ30は、自己のDC/DCコンバータ30の出力およびスレーブ電力供給系統10のDC/DCコンバータ30の出力を集中制御することで、電力供給システム1全体の電力需要(デマンド)に応じた電力を商用電力系統や負荷系統に対して出力するように構成されている。
【0026】
<DC/DCコンバータ30の構成>
図2は、本発明の実施の形態にかかるDC/DCコンバータ30の構成例を示すブロック図である。DC/DCコンバータ30は、太陽光パネル20及び蓄電池50の出力をDC/DC変換するDC/DCコンバータ回路(31、32)、DC/DCコンバータ回路(31、32)が出力する直流電力を制御するコントローラ33、スレーブ電力供給系統10やクラウド100等との間で信号を送受信するためのI/F35、各電力供給系統10の発電状況や電力需要(デマンド)等の情報を保存するためのメモリ34を備える。
【0027】
図4は、マスタ電力供給系統10のメモリ34に保存される管理デーブルの構成例である。マスタ管理デーブルには、クラウド100から与えられる電力供給システム1全体の電力需要(Demand)と、集電された集電電力(CTMain(V/I))のモニタ結果が保存されている。マスタ電力供給系統10では、電力供給システム1全体の出力電力(CTMain)をモニタし、CTMainの値が、電力需要(デマンド)を満たすように、DC/DCコンバータ30の出力を制御する。モニタしている集電電力CTMainの値が時系列で低下した場合には、必要に応じてこの時系列で変動する電力需要(demand)を満たすように、DC/DCコンバータ30の出力がダイナミックに制御される。
【0028】
発電状況管理デーブルには、各電力供給系統10の発電状況を示す情報として、太陽光パネルの発電量、蓄電池の蓄電量、DC/DCコンバータの出力が保存されている。マスタ電力供給系統10は、自己の電力供給系統におけるこれらの情報を保存し、スレーブ電力供給系統からこれらの情報を収集して発電状況管理デーブルに保存する。マスタ電力供給系統10は、これらの情報に基づいて、各電力供給系統10に対する出力電力の割り当てと、各電力供給系統10における太陽光パネル20や蓄電池50からの出力を決定する。
【0029】
DC/DCコンバータ回路(31、32)は、太陽光パネル20及び蓄電池50の出力を、DC/ACインバータ40の入力に適した電力に変換する機能を有する。DC/DCコンバータ回路31は、太陽光パネル20の出力電力を最大化(MPPTによる)することができる。DC/DCコンバータ回路(31、32)は、最適なDC出力をDC/ACインバータに送ることができ、図3AのようなI-Vカーブで送るので、天候の急激な変化が生じても出力に変化を与えることなく、DC/ACインバータ40にDC出力を供給することができる。
【0030】
コントローラ33は、各電力供給系統10のDC/ACインバータ40が集電された集電電力(CTMain(V/I))をモニタしながら、電力供給システム1全体に対する電力需要(デマンド)及びCTMain(V/I)の変動に伴い時系列で変動する電力需要(demand)に基づいて、各電力供給系統10のDC/DCコンバータ30の出力電力を制御する機能を有する。
【0031】
図2の構成は、マスタ電力供給系統10のDC/DCコンバータ30の構成例であるが、スレーブ電力供給系統10のDC/DCコンバータ30も同様の構成を有している。スレーブ電力供給系統10のDC/DCコンバータ30は、自己の太陽光パネル20の出力電力(DC1、DC2)、蓄電池50の蓄電量、DC/DCコンバータ30の出力(DC4)等の情報をマスタ電力供給系統10に通知するとともに、マスタ電力供給系統10のDC/DCコンバータ30からの指示に従って、DC/DCコンバータ30の出力、DC/DCコンバータ回路(31、32)からの出力を制御するように構成されている。
【0032】
蓄電池50のDC/DCコンバータ回路32の出力側に設けられたスイッチ36は、蓄電池50のDC/DCコンバータ回路32の出力を太陽光パネル20側に接続するか否かを切り替える機能を有している。このスイッチ36は、蓄電池50の放電電力をDC/ACインバータ40に入力するか、あるいは、太陽光パネルの出力を蓄電池50に充電するかに応じて、コントローラ33が制御することができる。
【0033】
<電力供給システムの電力供給動作>
図5、6を用いて、本実施の形態にかかる電力供給システム1の電力供給動作について説明する。図5は、本発明の実施の形態にかかる電力供給システム1における電力供給制御シーケンスの一例を示す図である。
【0034】
マスタ電力供給系統10には、電力供給システム1全体に対する電力需要(デマンド)がクラウド100から予め与えられている(S100)、マスタ電力供給系統10は、電力供給システム1全体の出力電力(CTMain)をモニタし(S101)、CTMainの値が、電力需要(デマンド)を満たすように、マスタ電力供給系統10及びスレーブ電力供給系統10の出力を制御する。この電力需要(デマンド)はクラウド100経由で適宜設定、変更が可能である。
【0035】
マスタ電力供給系統10、スレーブ電力供給系統10では、電力供給系統10の太陽光パネルの発電量、蓄電池50の蓄電量、DC/DCコンバータ30の出力の情報をモニタし(S102、S103)、スレーブ電力供給系統10は、これらの情報をマスタ電力供給系統10に通知する(S104)。
【0036】
マスタ電力供給系統10では、マスタ電力供給系統10及びスレーブ電力供給系統10から得られた情報を用いて、太陽光パネル20や蓄電池50からの出力電力を決定するとともに、これらの情報をシステムの故障を判断するための情報として用いることができる。
【0037】
マスタ電力供給系統10は、電力供給系統10の集電された出力電力CTMainの値が電力需要(デマンド)を満たすように、マスタ電力供給系統10及びスレーブ電力供給系統10の出力電力を計算し、各電力供給系統10の太陽光パネル20の発電量や蓄電池50の蓄電量に応じて、各電力供給系統10に対する出力電力の割り当てと、各電力供給系統10における太陽光パネル20や蓄電池50からの出力を決定する(S105)。
【0038】
マスタ電力供給系統10は、決定した各電力供給系統10に対する出力電力の割り当てと、各電力供給系統10の太陽光パネル20や蓄電池50からの出力情報を、スレーブ電力供給系統10に通知する(S106)。マスタ電力供給系統10及び通知を受けたスレーブ電力供給系統10は、マスタ電力供給系統10からの指示に従って、太陽光パネル20に接続されたDC/DCコンバータ回路31の出力電力および蓄電池50に接続されたDC/DCコンバータ回路32の出力電力を制御する(S107、108)。
【0039】
ここで、モニタしている電力供給系統10の集電された出力電力CTMainの値が時系列で低下した場合には、必要に応じて、この時系列で変動する電力需要(demand)を満たすように各電力供給系統10に対する出力電力の割り当てがダイナミックに制御される。
【0040】
マスタ電力供給系統10は、各電力供給系統10から収集した発電情報を含む発電状況をクラウド100経由で外部の管理システム(図示しない)に通知してもよい(S109)。外部の管理システムでは、マスタ電力供給系統10から得られた発電状況を解析することにより電力供給システム1の故障判断や故障対応を行うことができる。
【0041】
各電力供給系統10におけるDC/DCコンバータ30は、太陽光パネル20で発電された直流電力および蓄電池50から放電された直流電力のいずれかの電力、あるいは両方の合計電力を、DC/ACインバータ40へ出力する。太陽光パネル20の発電量の多い日中は、太陽光パネル20で発電された直流電力のみを出力し、余剰電力がある場合は、蓄電池50に充電される。太陽光パネル20の発電量の少ない時間帯は、蓄電池50から放電された直流電力で不足電力を補うことができる。
【0042】
このように、各電力供給系統10の太陽光パネル20の発電量や蓄電池50の蓄電量の状況に応じて、複数の電力供給系統10の出力電力をダイナミックに制御することによって、負荷系統等に対して電力需要(デマンド)に応じた電力を安定的に出力することが可能となる。
【0043】
図6は、本発明の実施の形態にかかる電力供給システム1における電力供給制御の一例を示す図である。図6の例は、各電力供給系統10に対して、等しい電力供給量を割り当てた場合である。各電力供給系統10の発電量や蓄電量が十分な場合には、各電力供給系統10に対して、等しい電力供給量を割り当ててもよいし、特定の電力供給系統10の発電量や蓄電量が少ない場合には、他の電力供給系統10の電力供給量の割り当てを大きくして、全体として電力需要を満たすような電力供給を行うようにしてもよい。
【0044】
また、各電力供給系統10において、割当てられた電力供給量に対して、太陽光パネルの発電量が十分な場合には、余剰電力を蓄電池50に充電するように制御してもよいし、電力供給系統10に割当てられた電力供給量に対して、太陽光パネルの発電量が足りない場合には、蓄電池50からの放電により足りない電力を補うように制御することができる。
【0045】
<本発明の実施の形態の効果>
このように、本実施の形態では、このような各電力供給系統10の状況に応じて、複数の電力供給系統10の出力電力をダイナミックに制御を行うように構成したので、負荷系統等に対して電力需要(デマンド)に応じた電力を安定的に出力することが可能となる。
【0046】
特許文献1等の従来のシステムでは、DC/ACインバータにおいて出力調整を行うので、システム容量を増大する場合には、DC/ACインバータの仕様変更を行うかDC/ACインバータを何台か並列に接続をするしかなく、更に並列に接続したDC/ACインバータの制御調整を行なうためのシステム(EMS:Energy MAnagement System)が別途必要となり費用が増大するという問題があった。一方、本実施形態の電力供給システムでは、太陽光発電は気候変動により発電量が変化するので、この不安定性を解消するために、DC/DCコンバータにおけるマスタ/スレーブ制御により出力調整を行うので、システム容量を増大する際にDC/ACインバータの仕様を変更する必要がなく、システム拡張のための費用を大幅に削減することができ、システム拡張を容易に行うことが可能となる。
【0047】
例えば、従来のシステムでは、出力容量を満たすように複数台のDC/ACインバータを接続し、それぞれのDC/ACインバータに蓄電池を接続してシステムを構成した場合には、複数のDC/ACインバータ間において出力調整を制御するシステムを開発する必要がある。一方、本実施形態の電力供給システムでは、DC/DCコンバータにおけるマスタ/スレーブ制御により出力調整を行うので、DC/DCコンバータに複数台の既存のDC/ACインバータを接続して、DC/DCコンバータと一般的な低価格のDC/ACインバータによりシステム拡張のための制御システムを構築することができる。
【0048】
<PPAへの適用例>
次に、図7を参照して、本発明の電力供給システム1のPPAへの適用例について説明する。PPAとは、電力会社と発電事業者との間で締結される電力販売契約のことである。PPAでは、電力の需要家が発電事業者に敷地や屋根などのスペースを提供し、発電事業者が太陽光発電システムなどの発電設備の設置と運用を行う。需要家は発電事業者が発電した電力を自家消費し、その電気料金を発電事業者に支払う。
【0049】
図7は、本発明をPPAに適用した場合の電力供給システム1の構成例を示すブロック図である。変換トランス60は、電力供給システム1が発電した電力を需要家の負荷系統が使用できる電力に変換する装置である。Cubicle70は、商用電力を需要家の負荷系統が使用できる電力に変換する装置である。
【0050】
本発明をPPAに適用した場合、電力供給システム1は、需要家の負荷系統の電力需要(Demand)に応じた電力を発電して供給する。需要家の負荷系統の電力需要(Demand)は、CTMainから直接またはクラウド100を経由して電力供給システム1のマスタ電力供給系統10に送信される。
【0051】
需要家の負荷系統は、商用電力系統に接続することなく、電力供給システム1から直接電力を受け取ることができる(Off-Grid)。一方、電力供給システム1が発電できない場合には、スイッチ80を商用電力系統に切り替えて、商用電力系統から供給された電力を使用することができる。スイッチ80を入れた状態にして電力供給システムからの供給が不足する場合商用電力系統から供給されるようにすることもできる。
【0052】
<PPSへの適用例>
次に、図8を参照して、本発明の電力供給システム1のPPSへの1について説明する。PPSは、一般電気事業者(○○電力などの電力会社)以外で、大口需要家に対し電気の供給を行う事業または事業者である。PPSは、特定の供給地点、例えば、大型ビルや大規模工場等における電力需要に応じ電力を供給する。
【0053】
図8は、本発明をPPSに適用した場合の電力供給システム1の構成例を示すブロック図である。Cubicle70は、電力供給システム1が発電した電力を需要家の負荷系統電力に配電するための電力に変換する装置である
【0054】
本発明をPPSに適用した場合、電力供給システム1は、需要家の負荷系統の電力需要(Demand)に応じた電力を発電し、需要家の負荷系統は、商用電力系統の配電網等を経由して、電力供給システム1が発電した電力を受け取ることができる。需要家の負荷系統の電力需要(Demand)は、CTMainから直接またはクラウド100を経由して電力供給システム1のマスタ電力供給系統10に送信される。
【0055】
図7、8の構成例では、一台のDC/DCコンバータ30に対して、一台のDC/ACインバータ40が接続されているが、一台のDC/DCコンバータ30に対して、複数のDC/ACインバータ40を並列に接続するように構成してもよい。図9は、一台のDC/DCコンバータに対して、複数のDC/ACインバータが接続された電力供給システムの構成例を示すブロック図である。
【0056】
1台のDC/DCコンバータ30に対して、1台のDC/ACインバータ40を接続する場合、例えば、100kwのDC/DCコンバータ30に100kwのDC/ACインバータ40が接続され、DC/DCコンバータ30は、24の入力Stringに対して、12のMPPT回路と12の出力Stringを備える場合、6のMPPT回路と12の入力Stringを備えるDC/ACインバータ40の入力ストリングのそれぞれに対して、DC/DCコンバータ30の出力Stringが接続される。
【0057】
図9の構成例では、100kwのDC/DCコンバータ30に50kwのDC/ACインバータ40が2台接続されている。DC/DCコンバータ30は、24の入力Stringに対して、12のMPPT回路を備え、出力Stringが12である。DC/ACインバータ40は、12の入力Stringに対して、6のMPPT回路を備え、DC/DCコンバータ30の出力ストリングのそれぞれに対して、DC/ACインバータ40のMPPT回路が接続される。
【0058】
各DC/ACインバータ40には、変換トランス60が接続されている。このような構成により、並列接続された各DC/ACインバータ40からの出力電流は、接地される変換トランス60に流れるので、出力電流が他のDC/ACインバータ40に流れ込むことを防止し、DC/ACインバータ40が破壊されることを防ぐことができる。
【0059】
DC/ACインバータ40では、MPPT回路の数と同じ数の6Stringが接続されているので、12Stringを入力する場合に比べて、各MPPT回路において2倍の電流を入力することができるので、各入力Stringに対して、よりダイナミックな電力制御を行うことができる。
【0060】
図9の構成は、一台のDC/DCコンバータ30に対して、二台のDC/ACインバータ40が並列に接続されている場合の1構成例である。より一般的には、DC/DCコンバータ30は、複数の入力ストリングと、複数の入力ストリングに対して設けられた所定の数のMPPT回路(第1のMPPT回路)と、MPPT回路と同数の出力ストリングを備える。さらには、出力ストリングのそれぞれに対して、DC/ACインバータのMPPT回路(第2のMPPT回路)が接続されることで、上述した作用効果を奏する電力供給システムを構成することができる。
【0061】
図10は、一台のDC/DCコンバータ30に対して、二台のDC/ACインバータ40が並列に接続されている場合の構成例である。図10では、DC/DCコンバータ30は、24本の入力ストリングに対して、12台のMPPT回路と、MPPT回路と同数の12本の出力ストリングを備える。DC/ACコンバータは、それぞれ6台のMPPT回路を備え、DC/ACインバータ40に対して、それぞれ6本のDC/DCコンバータ30の出力ストリングが接続され、それぞれの出力ストリングに対して、MPPT回路が接続されている。一台のDC/DCコンバータ30に対して、一台のDC/ACインバータ40が接続される場合には、DC/ACインバータ40の入力ストリングのそれぞれに対して、DC/DCコンバータ30の出力Stringが接続されることになる。
【0062】
<実施の形態の拡張>
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0063】
1…電力供給システム、10…電力供給系統、20…太陽光パネル、30…DC/DCコンバータ、31、32…DC/DCコンバータ回路、33…コントローラ、34…メモリ、35…I/F、36…スイッチ、40…DC/ACインバータ、50…蓄電池、60…変換トランス、70…Cubicle、80…スイッチ、100…クラウド。
図1
図2
図3
図3A
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10