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特許7258379複数の金利に対して複数の期間のいずれかを割り当てるためのプログラム、方法及び情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】複数の金利に対して複数の期間のいずれかを割り当てるためのプログラム、方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/02 20230101AFI20230410BHJP
   G06F 17/12 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
G06Q40/02
G06F17/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022002618
(22)【出願日】2022-01-11
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】507378226
【氏名又は名称】山▲崎▼システム・コンサルティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105360
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 光治
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 淳一
【審査官】山本 俊介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/234814(WO,A1)
【文献】特開2016-194765(JP,A)
【文献】特開平11-306238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06F 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金利に対して複数の期間のいずれかを割り当てるためのプログラムであって、
前記複数の金利の各々から前記複数の期間の各期間後に前記複数の金利へ遷移するそれぞれの遷移確率を記憶部に格納し、
各組合せが前記複数の金利とそれぞれの対応する前記期間とからなる複数の組合せの各々について、前記複数の金利の各々のそれぞれの対応する前記期間後のそれぞれの遷移確率を係数とする前記複数の金利の複数の定常確率を変数とする連立一次方程式の解を求め、
前記複数の組合せの各々について、求めた前記複数の定常確率の値に応じたそれぞれの前記期間での前記複数の金利に関する金利負担の総和を求め、
前記複数の組合せの中でより小さい前記総和を有する1つの組合せを決定すること
を含む処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム。
【請求項2】
前記複数の組合せの各々において、前記複数の金利の中の隣接する2つの金利のうちの小さい一方の金利に対応付けられる期間は、その他方の金利に対応付けられる期間の長さ以上の長さを有するものである、請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記複数の金利の各々から前記複数の期間の各期間後での前記複数の金利へのそれぞれの遷移確率を表すマトリックスが、前記複数の期間の中の最も短い期間後でのそれぞれの遷移確率を表す前記マトリックスの累乗で表されるものである、請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記複数の定常確率の値は、前記複数の定常確率の中の1つの値を定数1と仮定して前記複数の定常確率より1つ少ない数の定常確率の仮の値を求め、次いで前記複数の定常確率の仮の値の総和で前記複数の定常確率の仮の値を正規化することによって得られるものである、請求項1乃至3のいずれかに記載のプログラム。
【請求項5】
前記複数の組合せの中の任意の1つの組合せについて、前記複数の金利に関する前記金利負担は、前記複数の金利の中の1つの金利の前記定常確率の値を、前記1つの金利に対応付けられた前記期間で重み付けして、前記重み付けされた定常確率の値を前記重み付けされた複数の定常確率の値の総和で正規化し、前記重み付けされ正規化された定常確率の値に前記1つの金利を乗じて得られるものである、
請求項1乃至4のいずれかに記載のプログラム。
【請求項6】
前記複数の組合せは、前記複数の金利と前記複数の期間中の1つ以上の期間とからなる全ての組合せの一部である、請求項1乃至5のいずれかに記載のプログラム。
【請求項7】
複数の金利に対して複数の期間のいずれかを割り当てるための方法であって、
前記複数の金利の各々から前記複数の期間の各期間後に前記複数の金利へ遷移するそれぞれの遷移確率を記憶部に格納し、
各組合せが前記複数の金利とそれぞれの対応する前記期間とからなる複数の組合せの各々について、前記複数の金利の各々のそれぞれの対応する前記期間後のそれぞれの遷移確率を係数とする前記複数の金利の複数の定常確率を変数とする連立一次方程式の解を求め、
前記複数の組合せの各々について、求めた前記複数の定常確率の値に応じたそれぞれの前記期間での前記複数の金利に関する金利負担の総和を求め、
前記複数の組合せの中でより小さい前記総和を有する1つの組合せを決定すること
を含む処理を情報処理装置が実行する方法。
【請求項8】
複数の金利に対して複数の期間のいずれかを割り当てるための情報処理装置であって、
前記複数の金利の各々から前記複数の期間の各期間後に前記複数の金利へ遷移するそれぞれの遷移確率を記憶部に格納し、各組合せが前記複数の金利とそれぞれの対応する前記期間とからなる複数の組合せを格納する第1の処理部と、
前記複数の金利の各々について、前記複数の金利の各々のそれぞれの対応する前記期間後のそれぞれの遷移確率を係数とする前記複数の金利の複数の定常確率を変数とする連立一次方程式の解を求め、前記複数の組合せの各々について、求めた前記複数の定常確率の値に応じたそれぞれの前記期間での前記複数の金利に関する金利負担の総和を求め、前記複数の組合せの中でより小さい前記総和を有する1つの組合せを決定する第2の処理部と、
を含む情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変動し得る金利に応じた借入期間を決定するための指針(ポリシー)を生成するための処理に関し、特に、金融機関からの借入時の金利に対してより適切な借入期間の指標を作成するための処理に関する。
【背景技術】
【0002】
企業財務を担う実務家の常識として、会社の半永久的に安定的な資金調達を行うために銀行借入を管理する際、低金利時に長期の借入を行い高金利時に短期の借入を行うことが望ましい、と考えられている。しかし、現状では、具体的にどの金利水準でどの長さの期間の借入をするべきかという判断は、財務管理担当の専門家の経験に基づく直観に依存している。これら専門家は、過去の金利変動パターン、及び会社の信用度に応じて基準金利に加算されるスプレッド(金利差)と称される金利率の差、を考慮して、借入期間の長さを判断する。一方、彼らの判断は、個人の記憶及び銀行担当者のコメントにも依存しつつ自身の主観に影響される傾向にある。さらに、個々の専門家の意見は、主に主観的指標に基づくもので食い違いがあり、専門家同士で論議しても収束しないであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-194765号公報
【文献】国際公開第2021/234814号
【発明の開示】
【0004】
特願2016-194765号公報及び国際公開第2021/234814号によれば、金利遷移確率に従って現時点の短期金利から所定期間後の期待される平均金利を求める方法を提示することができる。しかし、借入時点での短期金利に応じて借入期間をどう選択すべきかを提示することはできない。
【0005】
発明者は、半永久的に扱われる借入の各金利負担のレベルを推測しようとすると、借入期間の長さが無限になるので、予測金利での負担額も無限となって容易には比較できない、と認識した。それに対して、発明者は、1つの方針に従って各長さの期間に応じて借入を行うとき、市場金利の変動によって形成される期間毎の金利の遷移(推移)に基づいて金利遷移確率を求めることができる、と認識した。また、発明者は、長期的観点から、金利遷移確率に従って各金利に対する借入期間の割合を定常確率として求めることができる、と認識した。
【0006】
本発明の目的は、変動し得る金利及び金利遷移確率に従って借入時の金利に応じた借入期間を決定するための信頼性ある指標を導出することである。
【0007】
発明の概要
実施形態の一観点によれば、複数の金利に対して複数の期間のいずれかを割り当てるためのプログラムは、
複数の金利の各々から複数の期間の各期間後に複数の金利へ遷移するそれぞれの遷移確率を記憶部に格納し、各組合せが複数の金利とそれぞれの対応する期間とからなる複数の組合せの各々について、複数の金利の各々のそれぞれの対応する期間後のそれぞれの遷移確率を係数とする複数の金利の複数の定常確率を変数とする連立一次方程式の解を求め、複数の組合せの各々について、求めた複数の定常確率の値に応じたそれぞれの期間での複数の金利に関する金利負担の総和を求め、複数の組合せの中でより小さい総和を有する1つの組合せを決定することを含む処理を情報処理装置に実行させる。プログラムは、非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体に記憶されてもよい。
【0008】
実施形態において、複数の組合せの各々において、複数の金利の中の隣接する2つの金利のうちの小さい一方の金利に対応付けられる期間は、その他方の金利に対応付けられる期間の長さ以上の長さを有するものであってもよい。
【0009】
実施形態において、複数の金利の各々から複数の期間の各期間後での複数の金利への遷移確率を表すマトリックスは、複数の期間の中の最も短い期間が対応付けられたマトリックスの累乗で表されるものであってもよい。
【0010】
実施形態において、複数の定常確率の値は、複数の定常確率の中の1つの値を定数1と仮定して複数の定常確率より1つ少ない数の定常確率の仮の値を求め、次いで複数の定常確率の仮の値の総和で複数の定常確率の仮の値を正規化することによって得られるものであってもよい。
【0011】
実施形態において、複数の組合せの中の任意の1つの組合せについて、複数の金利に関する金利負担は、複数の金利の中の1つの金利の定常確率の値を、1つの金利に対応付けられた期間で重み付けして、重み付けされた定常確率の値を重み付けされた複数の定常確率の値の総和で正規化し、重み付けされ正規化された定常確率の値に1つの金利を乗じて得られるものであってもよい。
【0012】
実施形態において、複数の組合せは、複数の金利と複数の期間中の1つ以上の期間とからなる全ての組合せの一部であってもよい。
【0013】
実施形態は、そのようなプログラムに関連する方法及び情報処理装置にも関連する。
【0014】
実施形態によれば、情報処理装置を用いて、変動し得る金利及び金利遷移確率に従って金利に応じた借入期間を決定するための信頼性ある指標を短時間で効率的に導出することができる。
【0015】
発明の目的及び利点は、請求の範囲に具体的に記載された構成要素及び組み合わせによって実現され達成される。本発明の非限定的な実施形態を、図面を参照して説明する。図面において、同様の構成要素には同じ参照番号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態による情報処理装置の概略的構成の例を示している。
図2図2は、実施形態による情報処理装置及びサーバ装置を含むシステムの概略的構成の例を示している。
図3図3は、情報処理装置のプロセッサの概略的な構成の例を示している。
図4図4は、情報処理装置によって実行される、複数のポリシーを生成するための処理のフローチャートの例を示している。
図5図5A~5Cは、複数の金利に関する各借入期間後の金利遷移確率のマトリックスの例を表している。
図6図6A~6Eは、複数のポリシーの金利遷移確率マトリックスの例を示している。
図7図7は、情報処理装置によって実行される、複数のポリシーの中から、年間の金利負担の総和がより小さく又は最小となる適用ポリシーを求めるための処理のフローチャートの例を示している。
図8図8は、図7のステップの具体例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明者は、長期的観点から、金利遷移確率に従って各金利に対する各長さの借入期間の割合を定常確率として求め、所定期間内での平均金利負担の額を最小化して、そのときの期間決定の方針を借入期間を選択するための基準として使用できる、と認識した。それによって、発明者は、借入時の金利に対してどの長さの期間で借入を行うかという方針を決め、無数に存在し得る方針の中から、長期的に金利負担を最小化し得る方針を効率良く選択することができる、と認識した。
【0018】
実施形態の目的は、変動し得る金利の範囲及びそれぞれの金利遷移確率に従って、現時点での金利に適した借入期間を決定するための信頼性ある指標を導出することである。
【0019】
実施形態において、金利遷移確率は、例えば、短期金利の実績推移データに基づいて月ごとの金利遷移確率マトリクスを決定してもよい。
【0020】
実施形態において、借入の方針の決定において考慮する借入期間は、実務的に用いられる複数の期間、例えば、1カ月、3カ月、6カ月及び12カ月のいずれかであってもよい。1つの借入期間において借入金利は借入時点での金利で固定される。借入の方針は、考え得る全ての金利Rに対していずれの期間での借入を適用すべきかが示される。例えば、借入時の金利R=1%に対して期間12カ月又は6カ月が選択され、借入時の金利R=2%に対してより短い期間6カ月又は3カ月が選択される、という形態で、借入時の各金利(固定金利)Rに対して適用される期間が決定される。
【0021】
このような方針は、例えば25個の金利Rがあり、3つの借入期間、例えば1カ月、3カ月及び6カ月がある場合、3の25乗、即ち約847G(ギガ)の方針が可能である。その計算に必要な処理量は、通常のパーソナル・コンピュータの処理能力を実用上遙かに超える。これに対して、実施形態によれば、最適又は近似的に最適の借入期間を決定するための方針を効率的に求めることができる。
【0022】
図1は、実施形態による、情報処理装置10の概略的構成(configuration)の例を示している。
【0023】
図1において、情報処理装置10は、例えば、デスクトップ型、ラップトップ又はノートブック型又はタブレット型のパーソナル・コンピュータであっても、又は高機能電子卓上計算機若しくはスマートフォンであってもよい。情報処理装置10は、例えば、プロセッサ102、記憶部104、内部バス、ネットワーク・インタフェース(NW/IF)108、入力部122、表示部124及び音響部126を含んでいる。ネットワーク・インタフェース108は、ネットワーク5に接続可能である。
【0024】
情報処理装置10は、外付けドライブ(図示せず)に接続可能である。外付けドライブは、ソフトウェアが記録された例えば光ディスク又は磁気ディスクのような記録媒体を読み取るためのものであってもよい。そのソフトウェアは、例えば、OS、データベース管理システム(DBMS)、アプリケーション・プログラム、等を含んでいてもよい。アプリケーション・プログラムは、平均金利を計算するためのアプリケーションを含んでいてもよい。記憶部104は、データベースを含んでいてもよい。
【0025】
プロセッサ102は、コンピュータ用のCPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部104には、例えば、ROM、RAM、SD(セキュア・ディジタル)メモリ又はUSBメモリ等のフラッシュ・メモリのような半導体メモリ、SSD(Solid State Drive)、及び/又はハードディスク・ドライブ(HDD)が含まれていてもよい。
【0026】
プロセッサ102は、例えば集積回路として実装された専用のプロセッサであってもよい。また、プロセッサ102は、記憶部104に格納されたアプリケーション・プログラムに従って動作するものであってもよい。アプリケーション・プログラムは、記録媒体に格納されていて、外付けドライブによって記録媒体から読み出されて情報処理装置10にインストールされてもよい。
【0027】
入力部122は、例えば、複数のキー、タッチパッド、テンキー、キーボード、タッチパネル、及び/又はポインティング・デバイスを含んでいてもよい。表示部124は、例えば液晶表示装置又は有機EL表示装置であってもよい。音響部126は、例えば、マイクロホン、スピーカ及びレシーバを含んでいてもよい。
【0028】
図2は、実施形態による、情報処理装置10及びサーバ装置20を含むシステム2の概略的構成の例を示している。
【0029】
システム2は、ネットワーク5に接続された、情報処理装置10及びサーバ装置20を含んでいる。ネットワーク5は、例えば、イントラネット又はLAN又はインターネットのようなIP(Internet Protocol)ネットワークであってもよい。サーバ装置20及び情報処理装置10は、それぞれ、サーバ-クライアント・システムのサーバ及びクライアントであってもよい。
【0030】
サーバ装置20は、情報処理装置であり、例えば、プロセッサ202、メモリ204、内部バス、記憶装置206、及びネットワーク・インタフェース(NW I/F)208を含むコンピュータであってもよい。また、サーバ装置20は、例えば、1つ以上のサーバ・ユニット又はサーバ・ブレードを含むものであってもよい。
【0031】
サーバ装置20は、外付けドライブ(図示せず)に接続可能である。外付けドライブは、ソフトウェアが記録された、例えば光ディスク又は磁気ディスクのような記録媒体を読み取るためのものであってもよい。そのソフトウェアは、例えば、OS、データベース管理システム(DBMS)、アプリケーション・プログラム、等を含んでいてもよい。アプリケーション・プログラムは、平均金利を計算するためのアプリケーションを含んでいてもよい。記憶装置206は、データベースを含んでいてもよい。サーバ装置20の記憶装置206におけるデータベースは、図1の情報処理装置10の記憶部104におけるデータベースの少なくとも一部を含むものであってもよい。なお、図1の情報処理装置10の記憶部104は、図2のサーバ装置20のメモリ204及び記憶装置206にそれぞれ対応するメモリ及び記憶装置を含んでいてもよい。
【0032】
プロセッサ202は、コンピュータ用のCPUであってもよい。メモリ204には、例えば、主記憶装置及び半導体メモリ等が含まれる。記憶装置206には、例えば、SSD、SDメモリ又はUSBメモリ等のフラッシュ・メモリのような半導体メモリ、及び/又はハードディスク・ドライブが含まれていてもよい。
【0033】
プロセッサ202は、例えば集積回路として実装された専用のプロセッサであってもよい。また、プロセッサ202は、記憶部としてのメモリ204及び/又は記憶装置206に格納されたアプリケーション・プログラムに従って動作するものであってもよい。アプリケーション・プログラムは、記録媒体に格納されていて、外付けドライブによって記録媒体から読み出されてサーバ装置20にインストールされてもよい。
【0034】
図3は、情報処理装置10のプロセッサ102の概略的な構成の例を示している。
【0035】
図3において、プロセッサ102は、制御部1020、アプリケーション部1024、条件設定部1026、金利遷移確率生成部1028、ポリシー生成部1030、適用ポリシー決定部1032、定常確率計算部1034、平均金利計算部1036、表示処理部1038、及びその他の処理部1040を含んでいる。ポリシー生成部1030は、金利遷移確率生成部1028を含んでいて、金利遷移確率生成部1028を制御してもよい。適用ポリシー決定部1032は、定常確率計算部1034及び平均金利計算部1036を含んでいて、定常確率計算部1034及び平均金利計算部1036を制御してもよい。制御部1020は、要素1024乃至処理部1040に制御信号を供給してこれらの要素の動作を制御してもよい。
【0036】
情報処理装置10は、サーバ-クライアント・システムにおけるクライアントとして動作してもよい。この場合、サーバ装置20は、サーバ-クライアント・システムにおけるサーバとして動作し、図1の情報処理装置10用のソフトウェアの少なくとも一部又は全ての機能を実行してもよい。
【0037】
次に、現在の可能性ある複数の金利に対して各長さの隣接期間又は隣接月での金利遷移確率の組合せを含む金利遷移マトリックスでそれぞれ表される複数のポリシーを生成する手順を説明する。
【0038】
図4は、情報処理装置10によって実行される、金利遷移マトリックスP(pji)でそれぞれ表される複数のポリシーPを生成するための処理のフローチャートの例を示している。金利遷移マトリックスP(pji)は、可能性ある複数の金利Rに対して各長さの借入期間T又は月数期間後の金利Rへの金利遷移確率pijの組合せを含んでいる。ここで、iは金利番号i=1,2…,nであり、i,jは正の整数i,j=1,2…,nであり、cはポリシーの番号c=1,2…,cmax、cmaxはポリシーの最大番号である。
【0039】
図5A~5Cは、複数の金利Rに関する各期間T後の金利遷移確率pijのマトリックスMの例を表している。各期間Tにおける各金利は借入時の金利Rに固定される。図5Aは、現在取り得る複数の金利R~Rの各々から期間T=T=1ヵ月後における複数の金利R~Rの各々への遷移確率pijを表す金利遷移確率マトリックスM502の例を示している。金利の数は、例えば過去に記録された24個の金利であってもよい。金利遷移確率マトリックスM(pi,j)において、各要素pi,jは、マトリックスMの左側の金利R~Rの列の各々から、マトリックスMの上側の金利R~Rの行の各々への遷移確率を表す。マトリックスMにおいて、各1行の要素の合計は基本的に1である。
【0040】
例えば、金利R%の時に固定金利R%で期間3カ月の借入を行うと、期間3カ月後に返済期日が到来し、再びその時点での金利R%でいずれかの期間で借入を行うかを決めることとなる。各借入時点での金利から所定期間後の次の金利への遷移確率は、金利遷移確率マトリックスを、確率論で定義される手順で3回乗算して求められる金利遷移確率マトリックスの金利Riから各金利Riへの遷移確率に従って求められる。他の借入期間(月数)についても同様に金利遷移確率マトリックスを累乗又はべき乗することによって求めることができる。
【0041】
図4を参照すると、金利遷移確率生成部1028は、ステップ(工程)602において、借入期間T後の金利遷移確率pijのマトリックスM502を記憶部104から取得する。金利遷移確率マトリックスM502は、ここでは、単位期間又は1ヵ月(T)後の金利遷移確率を表す。代替的に、金利遷移確率生成部1028は、過去の短期金利遷移データに基づいて金利遷移確率マトリックスM502を生成して記憶部104に格納してもよい。さらに、金利遷移確率生成部1028は、金利遷移確率マトリックスM502を3乗して、借入期間T後の金利遷移確率pijを表す金利遷移確率マトリックスM504を生成して記憶部104に格納する。金利遷移確率マトリックスM504は、3倍単位期間又は3ヵ月(3T)後の金利遷移確率を表す。さらに、金利遷移確率生成部1028は、金利遷移確率マトリックスM502を6乗して、借入期間T後の金利遷移確率pijを表す金利遷移確率マトリックスM506を生成して記憶部104に格納する。金利遷移確率マトリックスM506は、6倍単位期間又は6ヵ月(6T)後の金利遷移確率を表す。
【0042】
ステップ604において、金利遷移確率生成部1028は、複数の金利Rに対する各期間T=T,T,T後での金利遷移確率マトリックスM,M,Mのいずれかの金利Rの部分行をそれぞれの組み合わせた異なる複数のポリシーP(整数c=1,…,cmax)を生成する。ここで、金利Rが増大するに従って金利Rの借入期間TRi=Tの長さが単調減少するように 各金利Rに各期間TRi=Tが割り当てられる(R<Ri+1に対してTRi≧TRi(i+1))。
【0043】
図6A~6Eは、複数のポリシーPの金利遷移確率マトリックス522~530の例を示している。図6AのポリシーPにおいて、金利Rの全ての行は図5Cの金利遷移確率マトリックスM=Mから取得した対応の行要素pijである。図6BのポリシーP11において、金利Rの行は図5Cの金利遷移確率マトリックスMからの対応の金利Rの行要素p1jであり、金利R~Rの行は図5Bの金利遷移確率マトリックスMからの対応の金利R~Rの行要素p2j~p5jである。図6CのポリシーP13において、金利Rの行は図6Bと同様であり、金利RとRの行は図5Bの金利遷移確率マトリックスMからの対応の金利RとRの行要素p2jとp3jであり、金利RとRの行は図5Aの金利遷移確率マトリックスMからの対応の金利RとRの行要素p4jとp5jである。図6DのポリシーP14において、金利Rの行は図6Bと同様であり、金利Rの行は図5Bの金利遷移確率マトリックスMからの対応の金利Rの行要素p2jであり、金利R~Rの行は図5Aの金利遷移確率マトリックスMからの対応の金利R~Rの行要素p3j~p6jである。図6EのポリシーP15において、金利Rの行は図6Bと同様であり、金利R~Rの行は図5Aの金利遷移確率マトリックスMからの対応の金利R~Rの行要素p2j~p6jである。
【0044】
次に、複数の金利R全体の年間の金利負担の総和Ics(%)が最小となるポリシーPを求める手順を説明する。
【0045】
図7は、情報処理装置10によって実行される、複数のポリシーPの中から、年間の金利負担の総和Ics(%)がより小さく又は最小となる適用ポリシーPを求めるための処理のフローチャートの例を示している。
【0046】
図7を参照すると、ステップ612において、適用ポリシー決定部1032は、新しい又は次のポリシーP=Pc+1の金利遷移確率マトリックスP(pi,j)(添字c=0,1,2,…,cmax、初期値c=0、cmax:ポリシーPの数)を記憶部104から読み込む。ここで、pi,jはマトリックスPの第i行第j列の要素を表す。
【0047】
ステップ620において、適用ポリシー決定部1032は、複数の金利R(i=1,2,…,n)のそれぞれの定常確率(変数)π(=π,π,…,π)の解を求める。ここで、複数の金利Rの定常確率の要素変数πの総和(Σπ)は1である。そのために、適用ポリシー決定部1032は、次の定常推移確率πの連立方程式(1)又は(2)を使用する。
【数1】
ここで、マトリックスP はマトリックスP(pij)の転置行列P (pji)であり、定常推移確率の縦ベクトルπは、定常推移確率の横ベクトルπ=(π,π,…,π)を転置した縦ベクトルである。
【数2】
【0048】
例えば、P=P14図6D)の場合、式(2)は次のように表される。
【数3】
【0049】
適用ポリシー決定部1032は、定常確率計算部1034に方程式(1)の定常推移確率ベクトルπ=(π,π,…,π)の解を求めさせる。
【0050】
図8は、図7のステップ620及び640の具体例を示している。図8を参照すると、定常確率計算部1034は、ステップ622において、ポリシーPの金利遷移マトリックスP(pi,j)を記憶部104から読み込む。
【0051】
ステップ624において、定常確率計算部1034は、式(1)を式(3)のように変形する。即ち、式(1)において1つの定常確率変数要素πに関する左辺の係数をマトリックスPから右辺に移項し、残り変数要素π~πに関する右辺の係数を左辺のマトリックスPに移項し、得られた左辺のマトリックスをQと置く。次いで、定常確率計算部1034は、右辺においてπの項を含むベクトルをBと置く。
【数4】
【0052】
例えば、P=P14図6D)の場合、式(3)は次のように表される。
【数5】
【0053】
さらに、定常確率計算部1034は、次の式(4)のように変数要素πの値を仮にπ=1と置きベクトルBを定数ベクトル(b,b,…,b)とする。
【数6】
【0054】
ステップ626において、定常確率計算部1034は、式(4)において、マトリックスQの第n行と第1列を除く部分行列Q=Qc(n)(1)、第1行を除く部分ベクトルπ=π(1)=(π,π,…,π)、及び第n行を除く部分ベクトルB=B(n)(式(4)の破線枠内の要素)をそれぞれ取り出す。それによって、式(5)が形成される。
【数7】
【0055】
の逆行列Q -1を両辺に乗じると、Q -1π =Eπ =π であるから、式(6)が得られる。
【数8】
【0056】
次いで、定常確率計算部1034は、部分行列Qの逆行列Q -1を計算して、定常確率(変数)ベクトルの解π =Q -1を求める。
【0057】
例えば、P=P14図6D)の場合、式(6)は次のように表される。
【数9】
【0058】
部分ベクトルの仮の解をπ=(π2c,…,πnc)とすると、π=1なので、次のような定常確率のベクトルの仮の解πが得られる。
【数10】
【0059】
例えば、P=P14図6D)の場合、式(7)は次のように表される。
【数11】
【0060】
代替形態として、部分行列を用いない場合、式(3)の両辺に逆行列Q -1を乗じると、式(6”)が得られる。
【数12】
この場合、定常確率計算部1034は、マトリックスQの逆行列Q -1を計算して、定常確率ベクトルの解(定常確率)π=Q -1Bを求めてもよい。但し、この場合、式(6)と比べてマトリックスの要素が多いのでその計算量が増える。
【0061】
ステップ628において、定常確率計算部1034は、仮の解π=(1,π2c,π3c,…,πnc)を総和s=1+π2c+π3c+…+πncで正規化して、次のような正規化された定常確率の解π/s=πを求める。
【数13】
ベクトルπは式(1)、(2)を満たす。
【0062】
例えば、P=P14図6D)の場合、式(8)は次のように表される。
【数14】
【0063】
このように、部分行列Qを用いて、求める定常確率ベクトルπの1つの要素変数(例えばπ)を減らすことによって、特に金利Rの数が多くなるほど情報処理装置10による処理量を大幅に減らすことができる。金利Rの数は、例えば25であり得る。
【0064】
図7を再び参照すると、ステップ640において、適用ポリシー決定部1032は、平均金利計算部1036に、ポリシーPに関し、金利Rの年間の金利負担(%)I=(Rπ1wN,…,RπnwN)及び年間の金利負担の総和Ics=ΣπiwN=(Rπ1wN+…+RπnwN)を求めさせる。
【0065】
そのために、図8のステップ642において、平均金利計算部1036は、求めた定常確率π=(π1N,π2N,…,πnN)をそれぞれの金利Rの期間Tで重み付けして、次のような重み付けした定常確率πを求める。
【数15】
【0066】
例えば、P=P14図6D)の場合、式(9)は次のように表される。
【数16】
【0067】
次いで、平均金利計算部1036は、得られた定常確率π=(π1w,π2w,…,πnw)をその総和s=(π1w+π2w+…+πnw)で正規化して、次式(10)のような金利Rの金利負担割合πwNを求める。
【数17】
【0068】
例えば、P=P14図6D)の場合、式(10)は次式(10’)のように表される。
【数18】
【0069】
ステップ644において、平均金利計算部1036は、金利負担割合πwNの各要素πiwNに各金利Rを乗じて、次のような金利Rの年間の金利負担(%)Iを求める。
【数19】
【0070】
次いで、平均金利計算部1036は、次のようなその年間の金利負担(%)の総和Icsを求める。
【数20】
【0071】
例えば、P=P14図6D)の場合、式(11)、(12)は次のように表される。
【数21】
【0072】
例えば、P=P図6A)の場合、金利負担I=(0.060,0.360,1.257,1.026,0.427)(%)、金利負担の総和I=3.13(%)となる。また、例えば、P=P11図6B)の場合、金利負担I=(0.086,0.331,1.228,1.014,0.427)(%)、金利負担の総和I=3.09(%)となる。また、例えば、P=P15図6E)の場合、金利負担I=(0.041,0.329,1.295,1.083,0.460)(%)、金利負担の総和I=3.21(%)となる。P=P14図6D)における金利負担の総和I≒3.03(%)はそのいずれより小さい。
【0073】
次に、このようにして求められた現在のポリシーPの金利負担(%)の総和Icsが前のポリシーPc-1までの保存された最小の金利負担の総和SIより小さいかどうかが判定される。
【0074】
図7を再び参照すると、ステップ662において、適用ポリシー決定部1032は、求めた金利負担の総和Icsが先に格納された金利負担の総和SIより小さい(Ics<SI)かどうかを判定する。総和SIの初期値SIは、例えば最大の金利R=Rmax(SI=Rmax)であってもよい。金利負担の総和Icsが格納された金利負担の総和SIより小さいと判定された場合は、手順はステップ664に進む。そうでない場合は、手順はステップ666に進む。
【0075】
ステップ664において、適用ポリシー決定部1032は、格納された値SIを金利負担の総和Icsで上書きして金利負担の総和SI=Icsと設定する。それによって、最終的に、比較されるポリシーPの中で最も小さい金利負担の総和Icsの値が格納値SIに保存される。その後、手順は、ステップ666に進む。
【0076】
ステップ666において、適用ポリシー決定部1032は、現在のポリシー番号cが最後の最大値cmaxより大きいかどうか(c>cmax)を判定する。現在のポリシー番号cが最大値cmaxより大きいと判断された場合は、手順はステップ668へ進む。そうでない場合は、手順はステップ612に戻って次の番号c+1の次のポリシーPc+1について同様に処理する。
【0077】
ステップ668において、適用ポリシー決定部1032は、結果として、選択されたポリシーPにおける一連の金利Rと、各金利Rに適したそれぞれの借入期間T(T、T、T)との組合せを表示部124に表示する。さらに、適用ポリシー決定部1032は、金利Rの年間の金利負担(%)I=(Rπ1wN,Rπ2wN,…,RπnwN)、及び年間の金利負担(%)の総和Ics=(Rπ1wN+Rπ2wN+…+RπnwN)を表示部124に表示する。
【0078】
例えば、選択されたポリシーP14図6D)における一連の金利R=1%~R=5%と、各金利R~Rに適したそれぞれの借入期間T=6カ月、T=3カ月、T=3カ月との組合せ(図6D)が表示部124に表示される。さらに、金利Rの年間の金利負担(%)I=(0.009,0.010,0.132,3.728,0.0050)%、及び年間の金利負担の総和Ics=3.93%が表示部124に表示される。
【0079】
このようにして、借入資金調達の担当者は、決定された適用ポリシーPに基づいて、現在の短期金利又は銀行金利に応じて、借入時に容易に借入資金の適切な借入期間を選択することができる。
【0080】
実施形態によれば、パーソナル・コンピュータで、変動し得る金利の範囲及びそれぞれの金利遷移確率に従って、現時点での金利に適した借入期間を決定するための信頼性ある指標を短時間で効率的に導出することができる。
【0081】
以上説明した実施形態は典型例として挙げたに過ぎず、その各実施形態の構成要素の組合せ、変形及びバリエーションは当業者にとって明らかであり、当業者であれば本発明の原理及び請求の範囲に記載した発明の範囲を逸脱することなく上述の実施形態の種々の変形を行えることは明らかである。
【要約】      (修正有)
【課題】変動し得る金利と金利遷移確率に従って金利に応じた借入期間を決定するための信頼性ある指標を導出する。
【解決手段】複数の金利に対し複数期間のいずれかを割当てるためのプログラムは、複数の金利の各々から複数期間の各期間後に複数の金利の各々へ遷移するそれぞれの金利遷移確率を記憶部に格納し、各組合せが前記複数の金利とそれぞれの対応する期間とからなる複数の組合せの各々について、複数の金利のそれぞれの金利遷移確率を係数とする複数の金利のそれぞれの定常確率を変数とする連立一次方程式の解を求め、複数の組合せの各々について、求めたそれぞれの定常確率の値に応じたそれぞれの期間の複数の金利に関する金利負担の総和を求め、複数の組合せの中でより小さい総和を有する1つの組合せを決定することを含む処理を実行させる。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8