(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】側波帯抑圧方法、装置、コンピュータ機器及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 27/20 20060101AFI20230410BHJP
H04B 1/04 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
H04L27/20 A
H04B1/04 G
(21)【出願番号】P 2021554983
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(86)【国際出願番号】 CN2020124655
(87)【国際公開番号】W WO2021155681
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】202010078701.2
(32)【優先日】2020-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517392436
【氏名又は名称】▲騰▼▲訊▼科技(深▲セン▼)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100150197
【氏名又は名称】松尾 直樹
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲貞▼▲興▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲勝▼誉
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-295376(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0263215(US,A1)
【文献】国際公開第2009/041671(WO,A1)
【文献】米国特許第05162763(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0082305(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0095607(US,A1)
【文献】Benjamin J. Chapman et al.,Single-sideband modulator for frequency domain multiplexing of superconducting qubit readout,Applied Physics Letters,2017年04月19日,Vol.110, 162601
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/20
H04B 1/04
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ機器が実行する側波帯抑圧方法であって、前記側波帯抑圧方法は、
ターゲットベースバンド信号を取得するステップ、
前記ターゲットベースバンド信号に対応するターゲット信号関連パラメータを取得するステップであって、前記ターゲット信号関連パラメータは前記ターゲットベースバンド信号に対応する信号特性パラメータ又は前記ターゲットベースバンド信号に対応する搬送波信号の信号特性パラメータの少なくとも一種を含む、ステップ、
前記ターゲット信号関連パラメータに基づき対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを取得するステップ、
前記ターゲット側波帯抑圧パラメータに基づいて前記ターゲットベースバンド信号に対して信号補正処理を行い、ターゲット補正ベースバンド信号を獲得するステップであって、前記ターゲット側波帯抑圧パラメータは前記ターゲットベースバンド信号に対応する第1抑圧側波帯の電力を抑圧することに用いられる、ステップ、及び
前記ターゲット補正ベースバンド信号を変調器に入力して信号変調を行い、前記ターゲットベースバンド信号に対応するターゲット変調信号を獲得するステップを含
み、
前記ターゲット側波帯抑圧パラメータに基づいて前記ターゲットベースバンド信号に対して信号補正処理を行い、ターゲット補正ベースバンド信号を獲得する前記ステップは、
前記ターゲットベースバンド信号に対応する初期補償信号を取得するステップ、
前記ターゲット側波帯抑圧パラメータ及び前記初期補償信号に基づきターゲット補償信号を獲得するステップ、及び
前記ターゲット補償信号に基づいて前記ターゲットベースバンド信号を補正し、ターゲット補正ベースバンド信号を獲得するステップを含み、
前記ターゲット補償信号に基づいて前記ターゲットベースバンド信号を補正し、ターゲット補正ベースバンド信号を獲得する前記ステップは、
時間領域の前記ターゲットベースバンド信号に対して周波数領域変換を行い、周波数領域のターゲットベースバンド信号を獲得するステップ、
前記初期補償信号に基づいて前記周波数領域のターゲットベースバンド信号を補正し、周波数領域の補正ベースバンド信号を獲得するステップ、及び
前記周波数領域の補正ベースバンド信号に対して時間領域変換を行い、時間領域のターゲット補正ベースバンド信号を獲得するステップを含む、側波帯抑圧方法。
【請求項2】
前記ターゲット側波帯抑圧パラメータ及び前記初期補償信号に基づきターゲット補償信号を獲得する前記ステップは、
前記ターゲット側波帯抑圧パラメータと前記初期補償信号を乗算し、ターゲット補償信号を獲得するステップであって、前記初期補償信号は前記ターゲットベースバンド信号に対応する複素共役信号であり、前記初期補償信号の周波数は前記ターゲットベースバンド信号の周波数と反対である、ステップを含むことを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記ターゲット信号関連パラメータに基づき対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを取得する前記ステップは、
パラメータ対応関係集合を取得するステップであって、前記パラメータ対応関係集合は1つ又は複数のパラメータ対応関係を含み、前記パラメータ対応関係は信号関連パラメータと側波帯抑圧パラメータとの対応関係を含む、ステップ、
前記パラメータ対応関係集合における、前記ターゲット信号関連パラメータに対応する信号関連パラメータを、基準信号関連パラメータとして取得するステップ、及び
前記パラメータ対応関係集合における、前記基準信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータに基づき、前記ターゲット信号関連パラメータに対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを獲得するステップを含むことを特徴とする請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
前記パラメータ対応関係集合における、前記基準信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータに基づき、前記ターゲット信号関連パラメータに対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを獲得する前記ステップは、
前記パラメータ対応関係集合における、前記基準信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータに基づき補間計算を行い、前記ターゲット信号関連パラメータに対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを獲得するステップを含むことを特徴とする請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記パラメータ対応関係集合における、前記基準信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータを獲得するステップは、
前記基準信号関連パラメータに対応する参照ベースバンド信号を取得するステップ、
現在の側波帯抑圧パラメータを取得し、現在の側波帯抑圧パラメータに基づいて前記参照ベースバンド信号に対して信号補正処理を行い、補正後の参照ベースバンド信号を獲得するステップ、
前記補正後の参照ベースバンド信号を変調器に入力して変調を行い、参照変調信号を獲得するステップ、及び
前記参照変調信号の対応する第2抑圧側波帯での電力に基づき現在の側波帯抑圧パラメータを調整し、前記基準信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータを獲得するステップを含むことを特徴とする請求項
3に記載の方法。
【請求項6】
前記参照変調信号の対応する第2抑圧側波帯での電力に基づき現在の側波帯抑圧パラメータを調整し、前記基準信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータを獲得する前記ステップは、
前記参照変調信号の対応する第2抑圧側波帯での電力を低減する方向に向かって現在の側波帯抑圧パラメータを調整し、更新後の現在の側波帯抑圧パラメータを獲得するステップ、及び
現在の側波帯抑圧パラメータを取得し、現在の側波帯抑圧パラメータに基づいて前記参照ベースバンド信号に対して信号補正処理を行い、補正後の参照ベースバンド信号を獲得するステップに入り、更新停止条件を満たすと、更新後の現在の側波帯抑圧パラメータを前記基準信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータとするステップを含み、
前記更新停止条件は、更新前の現在の側波帯抑圧パラメータと更新後の現在の側波帯抑圧パラメータとの変化が所定の変化閾値未満であること、前記第2抑圧側波帯での電力が所定の電力閾値未満であること、又は現在の側波帯抑圧パラメータの更新回数が所定の回数より大きいことのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記ターゲット信号関連パラメータは前記ターゲットベースバンド信号に対応するベースバンド周波数、前記ターゲットベースバンド信号に対応するベースバンド振幅、及び前記ターゲットベースバンド信号に対応する搬送波信号の搬送波周波数を含み、前記ターゲット信号関連パラメータに基づき対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを取得する前記ステップは、
搬送波周波数を取得するステップ、
前記搬送波周波数に対応するパラメータ対応関係集合を取得するステップであって、パラメータ対応関係はベースバンド信号に対応するベースバンド周波数及びベースバンド信号に対応するベースバンド振幅と側波帯抑圧パラメータとの対応関係を含む、ステップ、及び
前記ターゲットベースバンド信号に対応するベースバンド周波数、前記ターゲットベースバンド信号に対応するベースバンド振幅に基づき、前記パラメータ対応関係集合から対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを取得するステップを含むことを特徴とする請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ターゲット補正ベースバンド信号を変調器に入力して信号変調を行い、前記ターゲットベースバンド信号に対応するターゲット変調信号を獲得する前記ステップは、
前記ターゲット補正ベースバンド信号に対応する実数部を変調器における同相ポートに入力し、前記ターゲット補正ベースバンド信号に対応する虚数部を変調器における直交ポートに入力し、前記搬送波周波数の搬送波信号を利用して信号変調を行い、前記ターゲットベースバンド信号に対応するターゲット変調信号を獲得し、前記ターゲット変調信号に基づき超伝導量子ビットをコントロールするステップを含むことを特徴とする請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成される、ことを特徴とする側波帯抑圧装置。
【請求項10】
コンピュータ機器であって、メモリ及びプロセッサを含み、前記メモリにコンピュータプログラムが記憶され、前記プロセッサが前記コンピュータプログラムを実行する時、前記プロセッサに請求項1~
8のいずれか一項に記載の側波帯抑圧方法を実施させることを特徴とするコンピュータ機器。
【請求項11】
コンピュータプログラムであって、1つ又は複数のプロセッサが前記コンピュータプログラムを実行する時、前記プロセッサに請求項1~
8のいずれか一項に記載の側波帯抑圧方法を実施させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は信号処理の技術分野に関し、特に側波帯抑圧方法、装置、コンピュータ機器及び記憶媒体に関する。
【0002】
本願は、2020年2月3日に中国特許局に提出した出願番号が202010078701.2、出願名称が「側波帯抑圧方法、装置、コンピュータ機器及び記憶媒体」の中国特許出願の優先権を主張し、その全内容が引用により本願に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
信号をよりよく伝送するために、通常、搬送波を使用して信号を伝送することがある。搬送波は信号を伝送する物理的基盤及びキャリアツールである。たとえば、一般的な状況では、送信される必要がある信号の周波数は低周波であり、信号自体の周波数に応じて伝送すると、信号の受信に不利である。従って、送信されようとする信号を搬送波の信号上にロードし、搬送波にロードされた後の信号を送信することができる。
【0004】
一方、超伝導量子ビットの量子状態の進化は通常、マイクロ波信号によって実現される。より高い量子ゲートの操作のより高い忠実度を取得するために、通常、マイクロ波信号の形状に対して所定の変調を行うことがある。現在、変調器によって信号を変調し、ベースバンド信号と搬送波信号を利用して、最終的な量子ビットのコントロール信号を生成することができる。
【0005】
しかしながら、デバイス自体の非理想性のため、ベースバンド信号が変調された後、通常、搬送波に対して対称な無用の側波帯を形成することがある。この無用の側波帯が通信伝送リソースを占有し、且つ信号の波形歪み、忠実度の低下を引き起こしてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願が提供する各種の実施例によれば、側波帯抑圧方法、装置、コンピュータ機器及び記憶媒体を提供する。
【0007】
側波帯抑圧方法は、コンピュータ機器により実行され、前記方法は、ターゲットベースバンド信号を取得するステップ、前記ターゲットベースバンド信号に対応するターゲット信号関連パラメータを取得するステップであって、前記ターゲット信号関連パラメータは前記ターゲットベースバンド信号に対応する信号特性パラメータ又は前記ターゲットベースバンド信号に対応する搬送波信号の信号特性パラメータの少なくとも一種を含む、ステップ、前記ターゲット信号関連パラメータに基づき対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを取得するステップ、前記ターゲット側波帯抑圧パラメータに基づいて前記ターゲットベースバンド信号に対して信号補正処理を行い、ターゲット補正ベースバンド信号を獲得するステップであって、前記ターゲット側波帯抑圧パラメータは前記ターゲットベースバンド信号に対応する第1抑圧側波帯の電力を抑圧することに用いられる、ステップ、及び前記ターゲット補正ベースバンド信号を変調器に入力して信号変調を行い、前記ターゲットベースバンド信号に対応するターゲット変調信号を獲得するステップを含む。
【0008】
側波帯抑圧装置は、前記装置は、ターゲットベースバンド信号を取得することに用いられるターゲットベースバンド信号取得モジュール、前記ターゲットベースバンド信号に対応するターゲット信号関連パラメータを取得することに用いられ、前記ターゲット信号関連パラメータは前記ターゲットベースバンド信号に対応する信号特性パラメータ又は前記ターゲットベースバンド信号に対応する搬送波信号の信号特性パラメータの少なくとも一種を含むターゲット信号関連パラメータ取得モジュール、前記ターゲット信号関連パラメータに基づき対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを取得することに用いられるターゲット側波帯抑圧パラメータ取得モジュール、前記ターゲット側波帯抑圧パラメータに基づいて前記ターゲットベースバンド信号に対して信号補正処理を行い、ターゲット補正ベースバンド信号を獲得することに用いられ、前記ターゲット側波帯抑圧パラメータは前記ターゲットベースバンド信号に対応する第1抑圧側波帯の電力を抑圧することに用いられる補正処理モジュール、及び前記ターゲット補正ベースバンド信号を変調器に入力して信号変調を行い、前記ターゲットベースバンド信号に対応するターゲット変調信号を獲得することに用いられる変調モジュールを含む。
【0009】
コンピュータ機器は、メモリ及びプロセッサを含み、前記メモリ内にコンピュータ可読命令が記憶され、前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサにより実行されると、前記プロセッサに上記側波帯抑圧方法のステップを実行させる。
【0010】
コンピュータ可読命令を記憶した1つ又は複数の不揮発性記憶媒体は、前記コンピュータ可読命令が1つ又は複数のプロセッサにより実行されると、前記プロセッサに上記側波帯抑圧方法のステップを実行させる。
【0011】
本願の1つ又は複数の実施例の詳細は以下の図面及び説明により提案される。本願のほかの特徴、目的及び利点は明細書、図面及び特許請求の範囲により明らかになる。
【0012】
本願の実施例における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に使用される必要がある図面を簡単に紹介する。明らかなように、以下の説明における図面は単に本願のいくつかの実施例であり、当業者にとっては、創造的な努力をせずに、これらの図面をもとにほかの図面を獲得することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】いくつかの実施例で提供される側波帯抑圧方法の応用環境図である。
【
図2】いくつかの実施例における側波帯抑圧方法のフローチャートである。
【
図3】いくつかの実施例においてターゲット信号関連パラメータに基づき対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを取得するフローチャートである。
【
図4】いくつかの実施例においてパラメータ対応関係集合では、基準信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータを獲得するステップのフローチャートである。
【
図5】いくつかの実施例における側波帯校正のフローチャートである。
【
図6】いくつかの実施例における側波帯校正時の機器接続関係図である。
【
図7】いくつかの実施例における信号側波帯抑圧の実現模式図である。
【
図8】いくつかの実施例における誤差を含む直交変調器の作動原理図である。
【
図9A】いくつかの実施例におけるほかのスキームと本願の実施例のスキームの比較効果図である。
【
図9B】いくつかの実施例におけるほかのスキームと本願の実施例のスキームの比較効果図である。
【
図10】1つの実施例における側波帯抑圧装置の構造ブロック図である。
【
図11】いくつかの実施例におけるコンピュータ機器の内部構造ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願の目的、技術的解決手段及び利点をより明瞭にするために、以下、図面及び実施例を関連付けて本願を更に詳細に説明する。理解すべき点は、ここで説明される具体的な実施例は単に本願を解釈することに用いられ、本願を限定するものではない。
【0015】
理解できるように、本願に使用される用語「第1」、「第2」等は本明細書では各種の素子を説明することに使用できるが、特に説明しない限り、これらの素子はこれらの用語に制限されない。これらの用語は単に第1個の素子ともう1つの素子を区別することに用いられる。たとえば、本願の範囲を逸脱せずに、第1抑圧側波帯を第2抑圧側波帯と称してもよく、且つ、同様に、第2抑圧側波帯を第1抑圧側波帯と称してもよい。
【0016】
図1はいくつかの実施例で提供される側波帯抑圧方法の応用環境図であり、
図1に示すように、該応用環境では、量子コンピュータはFPGA(Field Programmable Gate Array、フィールドプログラマブルゲートアレイ)110、第1DAC(Digital to analog converter、デジタルアナログ変換器)121、第2DAC122、第1LPF(Low Pass Filter、ローパスフィルタ)131、第2LPF132及びIQ(In-phase and quadrature phase、同相及び直交)変調器140に対応できる。IQ変調器は4つのポート(Iポート、Qポート、LOポート及びRFポートを含む)を有するマイクロ波デバイスであり、マイクロ波信号に対して直交変調を行うことができる。IポートとQポートはそれぞれ中低周波のベースバンド信号を入力する。LO(Local Oscillator、局部発振器)ポートから入力されるのは搬送波信号である。RF(Radio Frequency、RF)ポートは変調後の信号を出力する。コンピュータは出力を所望されるターゲットベースバンド信号をFPGAに入力し、FPGA中のIQ補正モジュールによってターゲットベースバンド信号を補正し、補正した信号の実数部I(t)と虚数部Q(t)がDAC及びLPFを通過した後、2つのターゲット補正ベースバンド信号を獲得する。そのうち、実数部に対応するターゲット補正ベースバンド信号はIQ変調器のIポートに入力され、虚数部に対応するターゲット補正ベースバンド信号はIQ変調器のQポートに入力され、変調器のLOポートに搬送波がアクセスして信号変調を行い、変調後の信号s(t)を獲得し、s(t)は超伝導量子ビットをコントロールすることに用いられる信号であってもよい。そのうち、s(t)、I(t)及びQ(t)中のtは時間変数tを表し、たとえば、s(t)はt時点における変調信号を表す。FPGA中にIQ補正モジュールを含んでもよく、ベースバンド信号を補正することに用いられる。IQ補正モジュールはハードウェア上にIQ補償アルゴリズムを実現するモジュールであってもよく、本願の実施例が提供する信号補正アルゴリズムはIQ補償アルゴリズムと称されてもよい。
【0017】
本願の実施例が提供する方法は、IQ変調器を利用して信号を変調する前に、ターゲットベースバンド信号を補正することができる。信号関連パラメータは、たとえば、搬送波の周波数、ベースバンド信号の周波数及び振幅等を含んでもよい。たとえば、一般的な任意の信号z0(t)について、実際のIQ変調器デバイス自体の原因、すなわち、非理想性のため、IQベースバンドの振幅不均衡ρ1、IQベースバンドの位相不均衡κ、直交搬送波の振幅不均衡ρ2又は直交搬送波の位相不均衡λのうちの一種又は複数種による誤差がしばしば存在することがあり、無用の側波帯が存在することを引き起こす。しかし、これらの誤差は一般的に直接測定して獲得することが困難である。一方、本願の発明者は実際に測定を行ったところ、IQベースバンドの振幅不均衡性ρ、ベースバンドの位相不均衡性κが固定して変化しないものではなく、通常、ベースバンド信号に対応する信号関連パラメータに伴って変化し得ることを見出した。たとえば、IQベースバンドの振幅不均衡性ρ及びベースバンドの位相不均衡性κは通常、ベースバンド信号の周波数f及びベースバンド信号の周波数下でのベースバンド信号の振幅Aに関連するが、搬送波の位相不均衡性λは通常、搬送波周波数fcに関連する。従って、本願の発明者は計算(原理は後述する)を行ったところ、ターゲットベースバンド信号の信号関連パラメータ、たとえば、統合ベースバンド信号の周波数f、振幅A又は搬送波周波数fcに基づき対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを獲得し、該ターゲット側波帯抑圧パラメータに基づいてターゲットベースバンド信号を予め処理し、ターゲット補正ベースバンド信号を獲得することができることを見出した。そのうち、ターゲット側波帯抑圧パラメータの信号補正を経て、ターゲット補正ベースバンド信号とターゲットベースバンド信号との間の差異△SはできるだけIQ変調器デバイスの非理想性による誤差を相殺でき、それにより変調して得た変調信号における無用側波帯に対応する信号をできるだけ抑圧する。
【0018】
図2に示すように、いくつかの実施例では、側波帯抑圧方法を提案し、本実施例は主に該方法が上記量子コンピュータに適用されることを例に説明する。具体的には以下のステップを含む。
【0019】
ステップS202:ターゲットベースバンド信号を取得する。
【0020】
具体的には、ターゲットベースバンド信号は変調される必要があるベースバンド信号であり、ベースバンド信号は信号源が送信する未変調のオリジナル電気信号であってもよい。コンピュータはベースバンド信号に対応するデジタル信号をデジタルアナログ変換器に送信し、デジタルアナログ変換器(
図1中の121及び122)はデジタル信号から連続するアナログ信号を生成する。この部分の信号はベースバンド信号とすることができる。
【0021】
ステップS204:ターゲットベースバンド信号に対応するターゲット信号関連パラメータを取得し、ターゲット信号関連パラメータはターゲットベースバンド信号に対応する信号特性パラメータ又はターゲットベースバンド信号に対応する搬送波信号の信号特性パラメータの少なくとも一種を含む。
【0022】
具体的には、信号関連パラメータはターゲットベースバンド信号に関連するパラメータである。信号特性パラメータはベースバンド信号自体の特性に関連するパラメータであり、信号特性パラメータは信号の周波数、信号の振幅又は信号の時間長さの少なくとも一種を含んでもよい。たとえば、ターゲットベースバンド信号に対応する周波数、信号振幅、及び搬送波に対応する周波数をターゲット信号関連パラメータとして取得してもよい。
【0023】
搬送波信号とは、信号を変調して伝送することに用いられる波形であり、正弦波信号であってもよい。変調とは、伝送すべきベースバンド信号を搬送波信号にロードする過程であり、すなわち、ベースバンド信号を搬送波に移動させてスペクトル移動を行う過程である。変調の目的は、伝送すべき信号を、チャネル伝送に適する信号、たとえば高周波信号に変換してもよい。変調の目的は、中低周波のベースバンド信号を利用して生成される高周波の制御信号であってもよいが、この高周波信号は伝送目的とするのではなく、たとえば、超伝導量子ビットを制御する信号とする。一般的には、ベースバンド信号は低周波信号であり、搬送波は高周波信号である。
【0024】
いくつかの実施例では、コンピュータにより取得されるターゲットベースバンド信号は時間領域のターゲットベースバンド信号であってもよく、従って、時間領域のターゲットベースバンド信号に対して周波数領域変換を行い、周波数領域のターゲットベースバンド信号を獲得し、周波数領域のターゲットベースバンド信号の周波数と振幅を取得するようにしてもよい。
【0025】
ステップS206:ターゲット信号関連パラメータに基づき対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを取得する。
【0026】
具体的には、側波帯抑圧パラメータは側波帯抑圧を行うことに用いられるパラメータであり、側波帯抑圧パラメータは抑圧される必要がある側波帯に対応する信号の電力を低減する方向に向かってパラメータ調整を行うことで得られてもよく、たとえば、側波帯抑圧パラメータに対応する抑圧される必要がある側波帯の電力は所定の電力閾値未満である。従って、側波帯抑圧パラメータを採用して信号を処理し、抑圧される必要がある側波帯に対応する信号の電力を低減できる。信号関連パラメータと側波帯抑圧パラメータとの対応関係集合、たとえば信号関連パラメータと側波帯抑圧パラメータの対応テーブルを予め設定できる。従って、ターゲット信号関連パラメータを得た後、コンピュータは予め記憶された信号関連パラメータと側波帯抑圧パラメータの対応テーブルに基づき、ターゲット信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータを取得できる。
【0027】
ターゲット信号関連パラメータに対応するターゲット側波帯抑圧パラメータは直接対応関係又は間接対応関係であってもよい。直接対応関係とは、対応関係集合中には、ターゲット信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータが存在することであり、たとえば、ターゲット信号関連パラメータをaと仮定すると、対応関係集合中には、ターゲット信号関連パラメータa及びそれに対応する側波帯抑圧パラメータが存在する。間接対応関係とは、対応関係集合中には、ターゲット信号関連パラメータに直接対応する側波帯抑圧パラメータが存在しないことである。異なるシーンでは、ベースバンド信号に対応する信号関連パラメータが異なるため、各信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータを予め決定すると、作業量が大きい。従って、対応関係集合における対応関係に基づき補間してターゲット信号関連パラメータに対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを獲得することができる。また、たとえば、ターゲット信号関連パラメータを変換する必要があり、変換後の変換信号関連パラメータを獲得し、さらに変換信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータを取得し、変換信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータに基づきターゲット信号関連パラメータに対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを獲得する。たとえば、ターゲット側波帯抑圧パラメータがターゲットベースバンド信号の周波数fを含むが、ターゲット補償信号の周波数を-fに変換する必要があることを仮定する。この場合、先ず、変換後の周波数、すなわち、周波数が-fのターゲット抑圧パラメータを取得する必要があり、次に、初期補償信号を処理する。ターゲット補償信号を得た後、さらにベースバンド信号を補償する。
【0028】
いくつかの実施例では、ターゲット側波帯抑圧パラメータは実数であってもよく、複素数であってもよい。信号は一般的には複素数で表されてもよいため、ターゲット側波帯抑圧パラメータは複素数であってもよい。
【0029】
ステップS208:ターゲット側波帯抑圧パラメータに基づいてターゲットベースバンド信号に対して信号補正処理を行い、ターゲット補正ベースバンド信号を獲得し、ターゲット側波帯抑圧パラメータはターゲットベースバンド信号に対応する第1抑圧側波帯の電力を抑圧することに用いられる。
【0030】
具体的には、変調後の信号について、処理されていない場合、中心搬送波周波数の上下両側にそれぞれ1つの帯域が発生し、上下両側の帯域は側波帯と称される。第1抑圧側波帯とは、ターゲットベースバンド信号に対応する変調信号における、抑圧される必要がある側波帯、すなわち無用の側波帯である。たとえば、周波数がfcの搬送波を利用して周波数がfのベースバンド信号を変調する時、出力する変調信号はfc-fの周波数成分及びfc+fの周波数成分を含む。すなわち、デバイスの非理想性によって発生する搬送波に対して対称的な側波帯が存在する。理想的な状況では、人々は周波数がfc-fの周波数のみを獲得することを除くため、周波数がfc+fの周波数は実際のデバイスの非理想性に起因する無用の側波帯である。たとえば、超伝導量子ビットの応用では、変調後の信号は通常、超伝導量子ビットの|0>及び|1>という2つのエネルギーレベルのエネルギーレベル差に対応する周波数付近にある必要があるが、対応するその周波数の典型値が6GHz付近にあり、従って、通常、搬送波の周波数を通常、量子ビットの周波数を中心とする数百メガヘルツの範囲内にすることを望むため、無用の側波帯fc+fは伝送リソースを占有するとともに、信号の歪みをもたらし、超伝導量子ビットに対する追加の励起をもたらし、量子ゲートの操作精度に悪影響を与える。
【0031】
ターゲットベースバンド信号に対して信号補正処理を行って得た信号はターゲット補正ベースバンド信号である。補正処理はターゲットベースバンド信号に補償信号を加算すること又はターゲット側波帯抑圧パラメータを利用してターゲットベースバンド信号と乗算することの少なくとも1つを含んでもよい。補償信号は、ターゲット側波帯抑圧パラメータを利用して処理して得られるものであってもよい。
【0032】
いくつかの実施例では、ターゲットベースバンド信号に対応する初期補償信号を取得し、ターゲット側波帯抑圧パラメータ及び初期補償信号に基づきターゲット補償信号を獲得し、ターゲット補償信号に基づいてターゲットベースバンド信号を補正し、ターゲット補正ベースバンド信号を獲得するようにしてもよい。
【0033】
具体的には、初期補償信号はターゲットベースバンド信号に基づき決定されてもよい。たとえば、初期補償信号はターゲットベースバンド信号に対応する複素共役信号であってもよい。1つの信号の複素共役信号とは、実数部が同じで、虚数部が反対である信号である。ターゲット側波帯抑圧パラメータを得た後、ターゲット側波帯抑圧パラメータを利用して初期補償信号を処理し、ターゲット補償信号を獲得するようにしてもよい。次に、ターゲット補償信号に基づいてターゲットベースバンド信号を補正し、ターゲット補正ベースバンド信号を獲得する。
【0034】
いくつかの実施例では、ターゲット側波帯抑圧パラメータ及び初期補償信号に基づきターゲット補償信号を獲得するステップは、ターゲット側波帯抑圧パラメータと初期補償信号を乗算し、ターゲット補償信号を獲得するステップであって、初期補償信号はターゲットベースバンド信号に対応する複素共役信号であり、初期補償信号の周波数はターゲットベースバンド信号の周波数と反対である、ステップを含み、ターゲット補償信号に基づいてターゲットベースバンド信号を補正し、ターゲット補正ベースバンド信号を獲得するステップは、ターゲット補償信号とターゲットベースバンド信号を加算し、ターゲット補正ベースバンド信号を獲得するステップを含む。
【0035】
具体的には、初期補償信号の周波数はターゲットベースバンド信号の周波数と反対であり、初期補償信号はターゲットベースバンド信号に対応する複素共役信号である。従って、コンピュータは、ターゲットベースバンド信号に対して1つの逆方向の処理を行うことができ、補正して獲得するターゲット補正ベースバンド信号で、変調デバイスの非理想性に起因する無用の側波帯を相殺させ、すなわち、無用側波帯を抑圧した。側波帯抑圧の原理は大体以下の通りである。本願の発明者は、1つの変調器を利用して信号を変調する時、変調による誤差が固定するものではなく、ベースバンド信号に対応するターゲット信号関連パラメータに関連することを見出した。従って、柔軟にターゲットベースバンド信号の信号関連パラメータに基づき信号補償係数(すなわち、側波帯抑圧パラメータ)を決定し、及び柔軟にターゲットベースバンド信号に基づき初期補償信号を決定する必要があり、柔軟にターゲットベースバンド信号に基づきターゲット補償信号を獲得し、ターゲット補償信号とターゲットベースバンド信号を加算し、ターゲット補正ベースバンド信号を獲得する。このように、無用側波帯を抑圧する目的を達成できるだけでなく、ベースバンド信号が絶えず変化する場合であっても、タイムリーに現在のベースバンド信号の信号関連パラメータに基づきベースバンド信号を補正できる。
【0036】
いくつかの実施例では、理解できるように、ターゲット補償信号とターゲットベースバンド信号を加算し、ターゲット補正ベースバンド信号を獲得する時、ターゲットベースバンド信号が時間領域信号であり、ターゲット補償信号が周波数領域信号であれば、時間領域のターゲットベースバンド信号を周波数領域のターゲットベースバンド信号に変換し、さらに加算を行うことができる。
【0037】
いくつかの実施例では、コンピュータにより取得されるターゲットベースバンド信号が時間領域のベースバンド信号、すなわちアナログ信号である時、ターゲット補償信号に基づいてターゲットベースバンド信号を補正し、ターゲット補正ベースバンド信号を獲得するステップは、時間領域のターゲットベースバンド信号に対して周波数領域変換を行い、周波数領域のターゲットベースバンド信号を獲得するステップ、初期補償信号に基づいて周波数領域のターゲットベースバンド信号を補正し、周波数領域の補正ベースバンド信号を獲得するステップ、及び周波数領域の補正ベースバンド信号に対して時間領域変換を行い、時間領域のターゲット補正ベースバンド信号を獲得するステップを含む。
【0038】
具体的には、周波数領域変換とは、時間領域信号を周波数領域信号に変換することである。時間領域変換とは、周波数領域信号を時間領域信号に変換することである。時間領域のターゲットベースバンド信号に対してフーリエ変換を行い、周波数領域のターゲットベースバンド信号を獲得し、周波数領域のターゲットベースバンド信号に対応する周波数を獲得するようにしてもよい。初期補償信号は周波数領域の信号であり、従って、周波数領域の初期補償信号を利用して周波数領域のターゲットベースバンド信号を補正し、周波数領域の補正ベースバンド信号を獲得するようにしてもよい。さらに周波数領域の補正ベースバンド信号に対して逆フーリエ変換を行い、時間領域のターゲット補正ベースバンド信号を獲得する。
【0039】
たとえば、任意のターゲットベースバンド信号z0(t)について、コンピュータはフーリエ変換Fを利用して周波数領域のターゲットベースバンド信号を獲得してもよく、式(1)で表される。初期補償信号はターゲットベースバンド信号に対応する複素共役信号であってもよく、従って、ターゲット側波帯抑圧パラメータと初期補償信号を乗算し、ターゲット補償信号を獲得し、式(2)で表してもよい。ターゲット補償信号とターゲットベースバンド信号を加算し、周波数領域の補正ベースバンド信号を獲得し、式(3)で表してもよい。周波数領域の補正ベースバンド信号に対して時間領域変換を行い、時間領域のターゲット補正ベースバンド信号を獲得し、式(4)で表してもよい。[数1]は周波数がfの周波数領域のターゲットベースバンド信号、すなわち、スペクトル関数を表す。
【0040】
【0041】
iは虚数を表し、expは底数が自然定数eであることを表し、ZBはターゲット補償信号を表し、-fはターゲットベースバンド信号の周波数fの反対周波数を表す。fcは搬送波の周波数を表す。cは側波帯抑圧パラメータを表す。
[数2]はF[z0(t)]*(-f)を表し、「*」記号は複素共役を表す。
【0042】
【0043】
[数3]は[数4]の振幅を表す。
【0044】
【0045】
【0046】
[数5]は周波数領域の補正ベースバンド信号を表し、z(t)は時間領域のターゲット補正ベースバンド信号を表す。理解できるように、ターゲット信号関連パラメータはさらにほかのパラメータを含んでもよく、たとえば、信号長さを含んでもよい。
【0047】
【0048】
【0049】
ステップS210:ターゲット補正ベースバンド信号を変調器に入力して信号変調を行い、ターゲットベースバンド信号に対応するターゲット変調信号を獲得する。
【0050】
具体的には、コンピュータはターゲット補正ベースバンド信号を得た後、ターゲット補正ベースバンド信号の実数部を変調器のIポートの入力とし、ターゲット補正ベースバンド信号の虚数部を変調器のQポートの入力とし、搬送波信号を変調器のLOポートの入力としてもよく、搬送波を利用して変調を行い、変調後の信号を獲得し、ターゲット変調信号とし、変調器のRFポートから出力する。
【0051】
たとえば、ターゲット補正ベースバンド信号をz(t)で表すことを仮定すると、その実数部[数7]をIチャンネルの入力とし、虚数部[数8]をQチャンネルの入力としてもよい。
【0052】
【0053】
【0054】
すなわち、[数9]である。
【0055】
【0056】
予めベースバンド信号に対して補正処理を行うことができ、従って、変調後の信号、抑圧側波帯での信号は抑圧され、従って、出力される変調信号は出力を所望される周波数成分のみを含み、又は無用の周波数成分の信号が少ない。従って、任意のベースバンド信号について、その信号関連パラメータに基づいて信号補正処理を行い、任意の信号の側波帯に対して抑圧を行う効果を達成できる。
【0057】
上記側波帯抑圧方法は、ターゲットベースバンド信号を伝送する必要がある時、ターゲットベースバンド信号に対応するターゲット信号関連パラメータに基づいてターゲット側波帯抑圧パラメータを取得し、ターゲット側波帯抑圧パラメータに基づいてターゲットベースバンド信号に対して信号補正処理を行った後、さら変調器に入力して信号変調を行い、ターゲットベースバンド信号に対応するターゲット変調信号を獲得するようにしてもよい。ベースバンド信号変調を行う前に、ターゲット側波帯抑圧パラメータに基づいてベースバンド信号に対して補正処理を行い、ターゲットベースバンド信号に対応する抑圧側波帯の電力を抑圧したため、補正ベースバンド信号を変調器に入力して信号変調を行う時、抑圧側波帯の信号が抑圧され、ゆえに、信号伝送効率及び信号忠実度を向上させる。
【0058】
いくつかの実施例では、
図3に示すように、ターゲット信号関連パラメータに基づき対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを取得するステップは、ステップS302~S306を含む。
【0059】
ステップS302:パラメータ対応関係集合を取得し、パラメータ対応関係集合は1つ又は複数のパラメータ対応関係を含み、パラメータ対応関係は信号関連パラメータと側波帯抑圧パラメータとの対応関係を含む。
【0060】
具体的には、パラメータ対応関係集合は1つ又は複数のパラメータ対応関係を含んでもよく、具体的な数は必要に基づき設定でき、たとえば、常用の信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータを含んでもよく、具体的には、実際の必要に基づき決定する。異なるベースバンド信号に対応する側波帯抑圧パラメータは異なる可能性があるが、異なるシーンで使用されるベースバンド信号及び搬送波信号は異なる可能性があり、従って、信号関連パラメータと側波帯抑圧パラメータとの対応関係を予め決定できる。たとえば、搬送波周波数、ベースバンド周波数周波数及びベースバンド振幅に対応する側波帯抑圧パラメータを予め記憶でき、信号補正を行う必要がある時、パラメータ対応関係に基づき対応する側波帯抑圧パラメータを獲得することができる。
【0061】
ステップS304:パラメータ対応関係集合における、ターゲット信号関連パラメータに対応する信号関連パラメータを、基準信号関連パラメータとして取得する。
【0062】
具体的には、ターゲット信号関連パラメータに対応する信号関連パラメータは、直接対応する信号関連パラメータであってもよく、間接的に対応する信号関連パラメータであってもよい。たとえば、間接的に対応する信号関連パラメータはターゲット信号関連パラメータを変換し、変換後の変換信号関連パラメータを獲得するものであってもよく、さらに変換信号関連パラメータに対応する信号関連パラメータを取得し、基準信号関連パラメータとする。たとえば、ターゲット側波帯抑圧パラメータがターゲットベースバンド信号の周波数fを含むことを仮定すると、fを-f周波数に変換し、さらに-f周波数に直接又は間接的に対応する信号関連パラメータを、基準信号関連パラメータとして取得する。
【0063】
いくつかの実施例では、初期補償信号がターゲットベースバンド信号に対応する複素共役信号である時、初期補償信号の周波数はターゲットベースバンド信号の周波数fと反対であり、-fである。ターゲット側波帯抑圧パラメータ、すなわち、補償係数は初期補償信号を処理することに用いられ、ターゲット側波帯抑圧パラメータは初期補償信号を処理することに用いられ、従って、取得されるのは初期補償信号に対応する信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータであるべきであり、ゆえに、ターゲット信号関連パラメータに基づき対応する初期補償信号の信号関連パラメータを取得し、初期補償信号の信号関連パラメータに基づき基準信号関連パラメータを獲得することができる。たとえば、ターゲットベースバンド信号に対応する周波数と反対の周波数を取得し、反対の周波数-fでの初期補償信号に対応する振幅を取得するようにしてもよい。ターゲットベースバンド信号の周波数と反対の周波数-f、初期補償信号に対応する振幅及び搬送波信号の周波数を基準信号関連パラメータとする。
【0064】
実際の例を挙げて、ターゲットベースバンド信号の周波数をfと仮定する場合、パラメータ対応関係集合の信号関連パラメータが-f周波数を含むと、-f周波数を基準信号関連パラメータとして取得できる。パラメータ対応関係集合の信号関連パラメータが-f周波数を含まないと、-f周波数に近い周波数を、基準信号関連パラメータとして取得できる。
【0065】
ステップS306:パラメータ対応関係集合における、基準信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータに基づき、ターゲット信号関連パラメータに対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを獲得する。
【0066】
具体的には、コンピュータは基準信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータをターゲット信号関連パラメータに対応するターゲット側波帯抑圧パラメータとしてもよい。パラメータ対応関係集合における、基準信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータに基づき補間計算を行い、ターゲット信号関連パラメータに対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを獲得してもよい。
【0067】
実際の例を挙げて、パラメータ対応関係集合の信号関連パラメータが-f周波数を含むことを仮定すると、-f周波数に対応する側波帯抑圧パラメータをターゲット信号関連パラメータに対応するターゲット側波帯抑圧パラメータとして取得してもよい。パラメータ対応関係集合の信号関連パラメータが-f周波数を含まないと、-fに近い周波数を、参照周波数として取得してもよく、参照周波数の側波帯抑圧パラメータを取得して補間計算を行い、ターゲット信号関連パラメータに対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを獲得する。
【0068】
本願の実施例では、異なる信号関連パラメータ、たとえば、異なる搬送波周波数、異なる側波帯周波数、異なる信号振幅の状況にそれぞれ対応する側波帯補償パラメータを予め計算し、側波帯補償パラメータcの1つの多次元テーブルを獲得するようにしてもよい。使用時、テーブルを検索することで実際の係数を獲得することができる。実際の係数を得た後、式(3)によって信号補正を行い、式(4)を利用して時間領域変換を行い、高精度のターゲット補正ベースバンド信号を獲得する。
【0069】
いくつかの実施例では、パラメータ対応関係集合において、各信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータは試験によって得られてもよい。以下、
図4を併せて参照し、パラメータ対応関係集合におけるターゲット信号関連パラメータに対応する信号関連パラメータ、すなわち、基準信号関連パラメータを例に、基準信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータをどのように獲得するかのステップを説明する。理解できるように、パラメータ対応関係集合における各信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータは、同じアルゴリズムに基づき得られてもよい。
図4に示すように、パラメータ対応関係集合における基準信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータを獲得するステップは以下を含む。
【0070】
ステップS402:基準信号関連パラメータに対応する参照ベースバンド信号を取得する。
【0071】
具体的には、基準信号関連パラメータに対応する参照ベースバンド信号とは、参照ベースバンド信号の信号関連パラメータは基準信号関連パラメータ又は参照ベースバンド信号に対応する複素共役信号の信号関連パラメータであってもよいことである。たとえば、与えられる搬送波周波数fc、ベースバンド信号の振幅A及びベースバンド周波数fを仮定すると、信号振幅A及び周波数fに対応する参照ベースバンド信号を取得でき、該参照ベースバンド信号に対応する搬送波信号の周波数はfcである。
【0072】
ステップS404:現在の側波帯抑圧パラメータを取得し、現在の側波帯抑圧パラメータに基づいて参照ベースバンド信号に対して信号補正処理を行い、補正後の参照ベースバンド信号を獲得する。
【0073】
具体的には、現在の側波帯抑圧パラメータとは、現在の補正用の側波帯抑圧パラメータである。側波帯抑圧パラメータを決定する過程では、試験を複数回行うことで、側波帯抑圧パラメータの最適値を決定でき、従って、現在の側波帯抑圧パラメータは試験の実行に伴って変化可能である。初期の現在の側波帯抑圧パラメータは任意の値であってもよく、たとえば、0であってもよい。現在の側波帯抑圧パラメータに基づいて参照ベースバンド信号に対して信号補正処理を行い、補正後の参照ベースバンド信号を獲得するステップは、ターゲット側波帯抑圧パラメータに基づいてターゲットベースバンド信号に対して信号補正処理を行い、ターゲット補正ベースバンド信号を獲得することを参照できる。たとえば、現在の側波帯抑圧パラメータを取得し、現在の側波帯抑圧パラメータに基づいて参照ベースバンド信号に対して信号補正処理を行い、補正後の参照ベースバンド信号を獲得し、式で表すと、式(5)の通りであり、そのうち、ZC(t)は補正後の参照ベースバンド信号を表し、A exp(2πift)は補正前の参照ベースバンド信号であり、expは底数が自然定数eであることを表す。cdは現在の側波帯抑圧パラメータであり、A exp(-2πift)は参照ベースバンド信号に対応する初期補償信号である。
【0074】
ZC(t)=I(t)+iQ(t)=A exp(2πift)+cd・A exp(-2πift) 式(5)
【0075】
ステップS406:補正後の参照ベースバンド信号を変調器に入力して変調を行い、参照変調信号を獲得する。
【0076】
具体的には、補正後の参照ベースバンド信号を得た後、補正後の参照ベースバンド信号を変調器に入力して変調を行い、変調後の信号を参照変調信号とするようにしてもよい。
【0077】
ステップS408:参照変調信号の対応する第2抑圧側波帯上での電力に基づき現在の側波帯抑圧パラメータを調整し、基準信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータを獲得する。
【0078】
具体的には、第2抑圧側波帯は、参照変調信号における、抑圧される必要がある側波帯である。たとえば、参照ベースバンド信号をf、搬送波周波数をfcと仮定する。この場合、抑圧される必要がある第2側波帯はfc+fであってもよい。参照変調信号の対応する第2抑圧側波帯での電力を計算して獲得し、参照変調信号の対応する第2抑圧側波帯での電力を低減する方向に向かって現在の側波帯抑圧パラメータを調整し、更新後の現在の側波帯抑圧パラメータを獲得するようにしてもよい。勾配関数がない最小化アルゴリズム、たとえばNelder-Mead(滑降シンプレックス)アルゴリズム又はPowell(パウエル最適化、方向加速ともいう)アルゴリズムを利用して、参照変調信号の対応する第2抑圧側波帯での電力を低減する方向に向かって現在の側波帯抑圧パラメータを調整し、更新後の現在の側波帯抑圧パラメータを獲得するようにしてもよい。
【0079】
いくつかの実施例では、ステップS404~ステップS408は複数回実行されてもよい。更新停止条件を満たさない時、更新後の現在の側波帯抑圧パラメータに基づいて、ステップS404に入り、続いて、ステップS404~ステップS408に基づいて現在の側波帯抑圧パラメータを更新するようにしてもよい。更新停止条件を満たした後、最終的に更新した現在の側波帯抑圧パラメータを基準信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータとする。そのうち、更新停止条件は、更新前の現在の側波帯抑圧パラメータと更新後の現在の側波帯抑圧パラメータとの変化が所定の変化閾値未満であること、第2抑圧側波帯での電力が所定の電力閾値未満であること、又は現在の側波帯抑圧パラメータの更新回数が所定の回数より大きいことのうちの少なくとも1つを含む。所定の変化閾値、所定の回数及び所定の電力閾値は必要に応じて設定でき、たとえば、所定の変化閾値は0.01であってもよく、所定の回数は100回であってもよい。
【0080】
いくつかの実施例では、ターゲット信号関連パラメータは、ターゲットベースバンド信号に対応するベースバンド周波数、ターゲットベースバンド信号に対応するベースバンド振幅、及びターゲットベースバンド信号に対応する搬送波信号の搬送波周波数を含む。ターゲット信号関連パラメータに基づき対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを取得するステップは、搬送波周波数を取得するステップ、搬送波周波数に対応するパラメータ対応関係集合を取得するステップであって、パラメータ対応関係はベースバンド信号に対応するベースバンド周波数及びベースバンド信号に対応するベースバンド振幅と側波帯抑圧パラメータとの対応関係を含む、ステップ、及びターゲットベースバンド信号に対応するベースバンド周波数、ターゲットベースバンド信号に対応するベースバンド振幅に基づきパラメータ対応関係集合から対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを取得するステップを含む。
【0081】
具体的には、ベースバンド信号に対応するベースバンド周波数とは、ベースバンド信号の周波数である。量子コンピュータでは、超伝導量子ビットをコントロールすることに用いられるコントロール信号は連続するものであってもよく、搬送波周波数は固定するものであってもよい。コントロール信号における各々のターゲットベースバンド信号に対して、コントロール信号の搬送波周波数を利用して変調を行ってもよく、そのうち、1つのターゲットベースバンド信号はコントロール信号における、所定の時間長さのベースバンド信号であってもよい。従って、超伝導量子ビットをコントロールするコントロール信号に対応する搬送波周波数に対応するパラメータ対応関係集合を取得できる。このように、該パラメータ対応関係集合からベースバンド信号に対応するベースバンド周波数及びベースバンド信号に対応するベースバンド振幅と側波帯抑圧パラメータとの対応関係を検索でき、ターゲット側波帯抑圧パラメータを取得する速度を向上させる。
【0082】
いくつかの実施例では、補正して獲得するターゲット補正ベースバンド信号について、実数部及び虚数部を含んでもよい。従って、ターゲット補正ベースバンド信号に対応する実数部を変調器における同相ポート(Iポート)に入力し、ターゲット補正ベースバンド信号に対応する虚数部を変調器における直交ポート(Qポート)に入力してもよく、搬送波周波数の搬送波信号を利用して信号変調を行い、ターゲットベースバンド信号に対応するターゲット変調信号を獲得することができ、このように、ターゲット変調信号を利用して超伝導量子ビットをコントロールでき、量子コンピュータを制御する目的を達成する。
【0083】
以下、超伝導量子ビットをコントロールすることを例に、
図5~7を併せて参照し本願の実施例のスキームを説明する。そのうち、
図5は側波帯校正のフローチャートである。
図6は、側波帯校正を行う時の機器接続関係図であり、
図7は信号の側波帯を抑圧する1つの具体的な実施例の実現模式図であり、側波帯校正とは、実際のIQ変調器デバイスに対して、側波帯抑圧の実現に必要な側波帯抑圧パラメータを取得する過程であり、予め側波帯校正を行ってもよい。側波帯抑圧とは、ミラー側波帯電力の抑圧である。ミラー側波帯とは、単側波帯変調ではデバイスの非理想性によって生じた搬送波に対して対称なもう1つの側波帯である。
【0084】
図5に示すように、側波帯校正は以下のステップS502~S514を含む。
【0085】
ステップS502:与えられる信号関連パラメータを取得し、与えられる信号関連パラメータに基づき参照ベースバンド信号を獲得する。
【0086】
具体的には、与えられる搬送波周波数fc、ベースバンド信号の振幅A及びベースバンド周波数fを仮定すると、参照ベースバンド信号としてA exp(2πift)を獲得することができる。
【0087】
ステップS504:現在の側波帯抑圧パラメータを取得し、現在の側波帯抑圧パラメータに基づいて参照ベースバンド信号に対して信号補正処理を行い、補正後の参照ベースバンド信号を獲得する。
【0088】
具体的には、初期の現在の側波帯抑圧パラメータ、すなわち補償係数cは0であってもよい。後続のcは更新可能である。補正後の参照ベースバンド信号ZC(t)の計算式はZC(t)=I(t)+iQ(t)=A exp(2πift)+cd・A exp(-2πift)であってもよい。
【0089】
ステップS506:補正後の参照ベースバンド信号を変調器に入力して変調を行い、変調後の訓練ベースバンド信号を獲得する。
【0090】
具体的には、補正後の参照ベースバンド信号ZC(t)を得た後、変調器に入力し、そのうち、実数部[数10]はIポートに入力され、虚数部[数11]はQポートに入力される。
【0091】
【0092】
【0093】
ステップS508:第2抑圧側波帯での信号電力を取得する。
【0094】
ステップS510:第2抑圧側波帯での信号電力が所定の電力閾値未満であるか否かを判断する。
【0095】
YESであれば、ステップ514に入り、NOであれば、ステップ512に入る。
【0096】
ステップS512:参照変調信号の対応する第2抑圧側波帯での電力を低減する方向に向かって現在の側波帯抑圧パラメータを調整し、更新後の現在の側波帯抑圧パラメータを獲得する。
【0097】
ステップS514:信号関連パラメータと側波帯抑圧パラメータの関係を記録する。
【0098】
具体的には、fc+fは無用の側波帯であり、スペクトラムアナライザを利用してRFポートが出力する信号を測定でき、周波数がfc+fの信号電力P(c、fc、f、A)を測定する。勾配関数がない最小化アルゴリズム、たとえばNelder-Meadアルゴリズム又はPowellアルゴリズム等を利用して、電力P(c、fc、f、A)の実行中のcを最適化する。すなわち、電力が小さくなる方向に従って側波帯抑圧パラメータcを変更する。最終的には、与えられる信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータcを獲得する。理解できるように、ベースバンド信号の異なるシーンでの周波数及び振幅は異なる可能性があるので、ベースバンド信号の信号関連パラメータに基づき対応する側波帯抑圧パラメータを柔軟に選択できるために、与えられる信号関連パラメータを変更することで実現できる。たとえば、ベースバンド信号の振幅A、周波数f、及び搬送波周波数fcを変更し、ステップS502~S512の過程を繰り返し、補償係数cの異なる搬送波周波数fc、異なるベースバンド周波数f及び異なるベースバンド信号の振幅Aの状況での数値c(fc、f、A)を獲得し、且つ信号関連パラメータと側波帯抑圧パラメータとの対応関係、たとえばfc、f、A、cを記録する。
【0099】
それにより、側波帯抑圧パラメータcの1つの多次元テーブルを獲得することができる。使用時、テーブルを検索することで、実際の側波帯抑圧係数を獲得することができる。
【0100】
図6に示すように、補正後の参照ベースバンド信号の実数部がDAC Aを通過し、虚数部がDACBを通過した後、さらにローパスフィルタを通過した後、IQ変調器のIポート及びQポートにアクセスされ、IQ変調器のLOポートに周波数がf
cの正弦波をアクセスし、その電力がIQ変調器の通常動作要件を満たし、それと同時に、RFポートをスペクトル分析器にアクセスし、出力するRF信号を測定し、f
c+fでの電力を獲得する。
【0101】
各信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータを得た後、側波帯抑圧パラメータcを検索することに用いられる1つの多次元テーブルを獲得することができ、テーブルには信号関連パラメータと側波帯抑圧パラメータとの対応関係が含まれる。信号の伝送中、テーブルを検索することで実際の側波帯抑圧係数を獲得することができる。以下、
図7を併せて参照し、側波帯抑圧をどのように行うかを紹介する。これは、以下のステップを含む。
【0102】
1.搬送波周波数に対応するパラメータ対応関係集合を取得する。
【0103】
たとえば、
図7に示すように、現在の搬送波周波数をf
cと仮定すると、f
cに対応する補償係数c及び対応するベースバンド周波数f、ベースバンド振幅Aを取り出し、且つFPGAに送信して一時記憶を行う。そのうち、対応するベースバンド周波数fは集合G
fであり、対応するベースバンド振幅Aは集合G
Aであり、補償係数c[f
m、A
n]は1つの二次元配列であり、f
mはm番目の校正されるベースバンド信号の周波数を表し、nはn番目の校正されるベースバンド信号のベースバンド振幅を表す。
【0104】
2.時間領域のターゲットベースバンド信号に対して周波数領域変換を行い、周波数領域のターゲットベースバンド信号を獲得する。
【0105】
たとえば、
図7に示すように、FPGAは入力されたベースバンド信号の時間領域データz[n]=I[n]+iQ[n]を受信した後、高速フーリエ変換(FFT)を行い、ベースバンド信号のスペクトル[数12]及び対応する周波数f[n]を獲得する。
【0106】
【0107】
3.ターゲットベースバンド信号に対応するターゲット信号関連パラメータを取得する。
【0108】
たとえば、
図7に示すように、スペクトルデータ[数13]に基づき、振幅[数14]を計算できる。
【0109】
【0110】
【0111】
周波数点-f[n]、振幅[数15]では、パラメータ対応関係集合に基づき側波帯抑圧パラメータ、すなわち補償係数cを取得し、そのうち、[数16]に対応する周波数はf[n]であり、[数17]に対応する周波数は-f[n]である。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
ここで、具体的には、3種類の状況に分けられる。そのうち、
図7の「Y」は「はい」を表す。「N」は「いいえ」を表す。
図7では、補償係数cを取り出すことは状況1に対応し、既存の補償係数データに基づき補間を行うことは状況2、及び3に対応する。
【0116】
状況1:周波数点-f[n]及び振幅[数18]の2つのパラメータはいずれも既に記憶したパラメータ対応関係集合(校正データ集合)中にあり、この場合、既に記憶したパラメータ対応関係集合から-f[n]及び[数19]に対応する補償係数cを直接取り出す。
【0117】
【0118】
【0119】
状況2:周波数点-f[n]及び振幅[数20]のうちの一方のみは既に記憶したパラメータ対応関係集合中にあり、この場合、パラメータ対応関係集合に存在しないパラメータを独立変数とし、補償係数cを従属変数として、パラメータ対応関係集合に基づき補間計算を行い、周波数点-f[n]及び振幅[数21]に対応する補償係数cを算出する。
【0120】
【0121】
【0122】
状況3:周波数の-f[n]及び振幅[数22]はいずれもパラメータ対応関係集合中になく、この場合、2つのパラメータを第1独立変数及び第2独立変数とし、補償係数cを従属変数として、パラメータ対応関係集合に基づき補間計算を行う。
【0123】
【0124】
周波数点-f[n]及び振幅[数23]に対応する補償係数cを算出する。
【0125】
【0126】
4.ターゲット側波帯抑圧パラメータに基づいてターゲットベースバンド信号に対して信号補正処理を行い、ターゲット補正ベースバンド信号を獲得する。
【0127】
具体的には、
図7に示すように、式[数24]に基づき周波数領域の補正ベースバンド信号[数25]を計算し獲得し、[数26]に対して逆フーリエ変換(IFFT)を行い、時間領域のデータz´[n]を獲得するようにしてもよい。
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
5.ターゲット補正ベースバンド信号を変調器に入力して信号変調を行い、ターゲットベースバンド信号に対応するターゲット変調信号を獲得する。
【0132】
図7に示すように、ターゲット補正ベースバンド信号の実数部[数27](すなわち、Re[z´])をIQ変調器のIチャンネルに接続されるDACに送信し、信号の虚数部[数28](すなわち、Im[z´])をIQ変調器のQチャンネルに接続されるDACに送信し、変調器によってターゲット変調信号を獲得するようにしてもよい。
【0133】
【0134】
【0135】
6.ターゲット変調信号に基づいて超伝導量子ビットを制御する。
【0136】
本願の実施例が提供するスキームは、周波数領域範囲内で補正を行うスキームを採用でき、複数の周波数及び複数の振幅下で補正を行うことができ、信号を補正することで、高品質の制御信号を獲得することができ、従って、本願の実施例のスキームは超伝導量子コンピュータ、及び、任意波形発生器及びデジタルアナログ変換モジュールを含める超伝導量子コンピュータの測定制御部材に適用でき、大帯域幅の任意の信号を補正し、波形歪みを低減させ、超伝導量子計算の測定制御精度のニーズを満たすこともできる。以下、本願の実施例が提供する方法の原理及び効果を説明する。
【0137】
IQ変調器は、周波数が比較的低い信号をRF帯域に変調でき、超伝導量子計算分野では超伝導量子ビットのコントロール及び読み取りに幅広く応用される。超伝導量子ビットへの応用では、マイクロ波信号は通常、超伝導量子ビットの|0>及び|1>という2つのエネルギーレベルのエネルギーレベル差付近にある必要があるが、対応するその周波数の典型値が6GHz付近にあり、使用される搬送波周波数は通常、量子ビットの周波数を中心とする数百メガヘルツ範囲内にある。理想的なIQ変調器の作動原理は式(6)を用いて説明できる。
【0138】
s(t)=β[I(t)cos2πfct+Q(t)sin2πfct] 式(6)
【0139】
そのうち、s(t)はIQ変調器のRFポートが出力する変調信号を表し、I(t)、Q(t)はIQ変調器のI及びQポートが入力する中間周波数信号であり、LO部分の搬送波信号の周波数はfcであり、βはIQ変調器の可変周波数損失を記述する。I(t)+iQ(t)=A(t)ei2πftである時、出力信号はs(t)=βA(t)cos2π(fc-f)tであり、すなわち、信号振幅の変調及び搬送波周波数の変更の効果を達成する。
【0140】
しかしながら、実際のIQ変調器は非理想性が存在し、それには主に、IQベースバンドの振幅不均衡ρ
1、IQベースバンドの位相不均衡k、直交搬送波の振幅不均衡ρ
2、及び直交搬送波の位相不均衡λという4種類の誤差が存在し、誤差を考慮した後、変調信号の数学的形式は式(7)を用いて[6]を記述することができ、誤差を含む直交変調器の作動原理は
図8に示される。そのうち、式における1+ρ=(1+ρ
1)(1+ρ
2)は最終的なIQの2つのチャンネルの振幅不均衡性を表す。
【0141】
s(t)=β{(1+ρ)cos2πftcos2πfct+sin(2πft-κ)sin(2πfct-λ)}
=β/2{(1+ρ)cos(2πft-2πfct)+(1+ρ)cos(2πft+2πfct)+sin(2πft-2πfct-κ+λ)-sin(2πft+2πfct-κ-λ)} 式(7)
【0142】
式(7)からわかるように、最終的に出力されるRF信号s(t)には、所望のfc-fの周波数成分が含まれることに加えて、fc+fの周波数成分が含まれ、その結果、信号の品質を低下させ、且つ超伝導量子ビットゲートの操作の忠実度に悪影響を与える。したがって、所定の方式を用いて信号を補正する必要がある。たとえば、超伝導量子計算への応用では、IQ変調器を利用して生成される信号は通常、1つの正弦波ではなく、1つのガウシアンビームである。ガウシアンビームの中心周波数は約6GHzであり、周波数の広がりは100MHzに近い。このような状況では、超伝導量子コンピュータの制御信号及び読み取り信号がいずれもIQ変調器によって生成されるため、高品質の制御信号を獲得することは量子ゲートの操作精度の向上に非常に重要である。補正しないと、比較的大きな波形歪みを引き起こし、量子操作の忠実度に悪影響を与える。
【0143】
従って、誤差が存在する状況では、任意の信号z(t)=A(t)eiΦ(t)について、その実数部[数29]、虚数部[数30]が理想的な状況で変調を所望されるIQ信号である。z(t)はフーリエ級数を用いて以下[数31]のように展開できる。
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
そのうち、An、Φn、fnは実数であり、[数32]を満たし、Tは信号z(t)の総時間である。
【0148】
【0149】
これにより、式(7)に基づき、IQ変調器のRFポートが出力する信号s(t)は、[数33]の式(8)で表されてもよい。
【0150】
【0151】
式(8)からわかるように、誤差源ρ、κ及びλの数値の大きさが周波数fn又は振幅Anに関連すると、簡単に同一の校正パラメータを使用してベースバンド信号波形全体を補正することができないため、正弦波信号z0(t)=I0(t)+iQ0(t)=A exp[2πift]に対して、ミラー側波帯信号、すなわち周波数がfc+fの信号を抑圧するために、人々はIQの入力端子で[数34]を与える。
【0152】
【0153】
そのうち、cは未定の複素数であり、実際の過程では測定によって獲得する必要がある。この場合、出力信号s(t)は[数35]である。
【0154】
【0155】
s(t)のfc+f成分を計算し、且つ補償係数cの実数部及び虚数部を調整することで、fc+fの成分を0にすることができ、従って、式(9)に基づき式(10)を求めることができる。
【0156】
【0157】
式(10)からわかるように、補償係数cはIQ変調器の3種類の誤差源を含む。従って、以上の分析からわかるように、IQポートの入力信号z0(t)をz(t)に変更することで、ミラー側波帯周波数成分を含まない信号を獲得することができる。
【0158】
次に、一般的な任意の信号z0(t)に対して、実際のIQ変調器デバイスは、デバイス自体の原因のため、そのIQベースバンドの振幅不均衡性ρ及びベースバンドの位相不均衡性kが通常、ベースバンド周波数f及び現在のベースバンド周波数でのベースバンド信号の振幅Aに関連するが、搬送波の位相不均衡性λが通常、搬送波周波数fcに関連する。すると、補償係数cが搬送波周波数fc、ベースバンド周波数f及びベースバンド振幅Aという3つの要素に関連し、ゆえに、補充係数cをこれらの変数の関数c=c(fc、f、A)と表すことができる。正弦波信号と類似し、任意の信号z0(t)に対して、人々は先ず、フーリエ変換[数37]を利用して、信号z0(t)を周波数空間に変換し、そのスペクトル[数38]を獲得し、且つそれを以下の[数39]のように補正する。
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
そのうち、[数40]は[数41]を表す。スペクトル[数42]を得た後、さらに[数43]に対して逆フーリエ変換を利用して時間領域z(t)に変換する([数44]
)。
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
そのうち、実数部[数45]はIチャンネルの出力とし、虚数部[数46]はQチャンネルの出力とし、すなわち、[数47]である。
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
上述の与えられる原理に基づき、ベースバンド信号の無用側波帯で側波帯抑圧を実現する過程を獲得することができる。従って、最終的に出力する信号上で所望しない側波帯の信号の抑圧を実現し、このように、任意の信号の側波帯を抑圧する効果を達成する。
【0173】
ベースバンド信号を周波数領域で補正し、その後、さらに時間領域に変換して出力することで、異なる搬送波周波数、異なる側波帯周波数及び異なる信号振幅の状況でそれぞれ校正を行い、補償係数cの1枚の多次元テーブルを獲得することができる。使用時、テーブルを検索することで、実際の係数を獲得することができる。実際の係数の和を獲得し、さらに式(11)によって補正を行うことで、高精度の時間領域信号を獲得することができる。
【0174】
本願の実施例が提供するスキームは、大帯域幅、ベースバンド電力が変化する状況では、IQ変調器の波形を補正することでミラー側波帯を低減させる効果を達成し、信号の忠実度を向上させる。超伝導量子計算では、超伝導量子ビット操作の忠実度を向上させることができる。以下、Marki社の変調器IQ-0307を根拠として採用してシミュレーション試験を行い、以下の3種類の状況では、本願の実施例のスキームはベースバンド信号を補正していないスキーム及びほかの補正スキームの効果と比較した。そのうち、ほかの補正スキームとは、IQ変調器の振幅不均衡及び位相不均衡を直接測定して、相応な誤差パラメータρ及びκ+λを獲得し、それにより信号を補正するスキームである。IQ-0307では、IQ振幅誤差の典型値は0.3dBであり、ρ∈[-0.04,0.04]に対応し、IQ位相誤差の典型値は3°であり、対応するラジアンが0.05であり、すなわちκ,λ∈[-0.05,0.05]である。以下のシミュレーションでは、搬送波周波数は5GHzに固定されるが、IQミキサーの誤差モデルは式(3)であり、且つβ=1を選択し、ρ、κ、λの選択は周波数-0.5GHz-0.5GHz内でランダムに生成され、且つその範囲をρ∈[-0.04,0.04]、κ,λ∈[-0.05,0.05]と規定する。
【0175】
試験1:ベースバンド信号が正弦波形であり、正弦波の長さが1024nsであり、周波数が125MHz.である状況で、補正をしない時、側波帯ミラー抑圧が約25dB程度であり、これは実際のデバイスにより与えられる23dBに比較的近い。一方、本願が提案するスキームで補正した後、側波帯ミラー抑圧は約60dBに達し、約35dB向上した。
【0176】
試験2:IQ変調器の誤差がベースバンド電力に無関係であることを考慮する状況では、ベースバンド信号はガウス波形として選択され、ガウス波形の半値全幅は超伝導量子計算における典型値10nsとして選択される。それと同時に、より良好な周波数解像度を取得するために、選択される総時間は1024nsであり、それと同時に、ベースバンドの周波数は125MHzとして選択される状況。
図9Aはベースバンド信号がガウス波形である状況ではほかの補正スキームと本補正スキームの特殊の状況(誤差ρ、κ、λが周波数のみに関連するが、電力に無関係であることを考慮する)での比較を与えている。そのうち、ライン1は理想的なIQミキサーにより混合された後の信号スペクトルを表し、ライン2は、補正がない状況では、非理想的なIQ変調器により混合された後の信号のスペクトルデータを表し、ライン3はほかの補正スキームでは、非理想的なIQミキサーを通過した後の信号スペクトルを表し、ライン4は本願の実施例のスキームによる補正下で非理想的なIQミキサーにより混合された後の信号スペクトルを表す。
図9Aからわかるように、広帯域のガウス信号に対して、ほかの補正スキームの補正効果は固定周波数付近の非常に小さい周波数範囲内で補正を行うしかなく、ここでは125MHzであり、全体的に補正は理想的ではなく、側波帯ミラー抑圧の明らかな向上がなかった一方、本願の実施例のスキームを使用した補正結果は、側波帯ミラー抑圧を約30dB向上させ、正弦波の状況に近い60dB程度を達成する。
【0177】
試験3:
図9BはIQ変調器の誤差(ベースバンドの振幅不均衡、ベースバンドの位相不均衡、搬送波の位相不均衡)がベースバンド電力に伴って変化する状況における、ほかの補正スキームと本願の実施例のスキームの比較である。そのうち、ライン1は理想的なIQミキサーにより混合された後の信号スペクトルを表す。ライン2は補正がない状況では、非理想的なIQ変調器により混合された後の信号スペクトルを表す。ライン3はほかの補正スキームでの結果を表す。ライン4は本願の実施スキームではIQ変調器の誤差がベースバンド電力及びベースバンド周波数の両方に関連することを考慮する時、信号が非理想的なIQ変調器により混合された後のスペクトルを表す。ライン5は本願の実施スキームでは単にIQ変調器の誤差がベースバンド周波数に関連することを考慮する状況における補正の結果を表す。ここで選択されるベースバンド波形は依然としてガウス波形であり、ガウス波形のパラメータは試験2のパラメータと同じである。
図9Bからわかるように、IQ変調器の誤差がベースバンド電力、周波数の両方に伴って変化する時、ほかの補正スキームは単に中心周波数付近の非常に小さい範囲内でミラー信号に対して所定の抑圧効果を有する。一方、単に誤差がベースバンド周波数に伴って変化すること(ライン5)を考慮すると、比較的広い範囲内でミラー信号を抑圧できるが、中心周波数付近の信号に対する抑圧能力が低い。これは、中心周波数付近で、信号電力が比較的強く、従って、誤差(ρ、λ、κ)は信号電力が比較的低い状況との差が比較的大きい一方、中心周波数から比較的遠い部分について、信号電力自体も比較的弱いため、この時、誤差ρ、λ、κの差は小さいからである。ベースバンド周波数、ベースバンド電力の両方を同時に考慮するスキーム(ライン4)について、
図9Bからわかるように、そのミラー抑圧の効果は比較的明らかであり、従来のスキームに比べて約30dB向上したが、ベースバンド周波数のみを考慮するスキームに比べて、ミラー抑圧の効果は約15dB向上した。
【0178】
従って、上記試験からわかるように、本願の実施スキームは大帯域幅及び異なる電力のベースバンド信号を補正した後、ミラー側波帯すなわち無用側波帯の信号を抑圧でき、そのうち、frequencyは周波数を表し、amplitudeは振幅を表す。
【0179】
図10に示すように、いくつかの実施例では、側波帯抑圧装置を提供し、該側波帯抑圧装置は上記FPGA中に集積されてもよく、具体的には、ターゲットベースバンド信号取得モジュール1002、ターゲット信号関連パラメータ取得モジュール1004、ターゲット側波帯抑圧パラメータ取得モジュール1006、補正処理モジュール1008及び変調モジュール1010を含んでもよい。
【0180】
ターゲットベースバンド信号取得モジュール1002は、ターゲットベースバンド信号を取得することに用いられる。
【0181】
ターゲット信号関連パラメータ取得モジュール1004は、ターゲットベースバンド信号に対応するターゲット信号関連パラメータを取得することに用いられ、ターゲット信号関連パラメータはターゲットベースバンド信号に対応する信号特性パラメータ又はターゲットベースバンド信号に対応する搬送波信号の信号特性パラメータの少なくとも一種を含む。
【0182】
ターゲット側波帯抑圧パラメータ取得モジュール1006は、ターゲット信号関連パラメータに基づき対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを取得することに用いられる。
【0183】
補正処理モジュール1008は、ターゲット側波帯抑圧パラメータに基づいてターゲットベースバンド信号に対して信号補正処理を行い、ターゲット補正ベースバンド信号を獲得することに用いられ、ターゲット側波帯抑圧パラメータはターゲットベースバンド信号に対応する第1抑圧側波帯の電力を抑圧することに用いられる。
【0184】
変調モジュール1010は、ターゲット補正ベースバンド信号を変調器に入力して信号変調を行い、ターゲットベースバンド信号に対応するターゲット変調信号を獲得することに用いられる。
【0185】
いくつかの実施例では、補正処理モジュール1008は、初期補償信号取得ユニット、ターゲット補償信号獲得ユニット、及び補正ユニットを含み、初期補償信号取得ユニットは、ターゲットベースバンド信号に対応する初期補償信号を取得することに用いられ、ターゲット補償信号獲得ユニットは、ターゲット側波帯抑圧パラメータ及び初期補償信号に基づきターゲット補償信号を獲得することに用いられ、補正ユニットは、ターゲット補償信号に基づいてターゲットベースバンド信号を補正し、ターゲット補正ベースバンド信号を獲得することに用いられる。
【0186】
いくつかの実施例では、ターゲット補償信号獲得ユニットは、ターゲット側波帯抑圧パラメータと初期補償信号を乗算し、ターゲット補償信号を獲得することに用いられ、初期補償信号はターゲットベースバンド信号に対応する複素共役信号であり、初期補償信号の周波数はターゲットベースバンド信号の周波数と反対であり、補正ユニットは、ターゲット補償信号とターゲットベースバンド信号を加算し、ターゲット補正ベースバンド信号を獲得することに用いられる。
【0187】
いくつかの実施例では、補正ユニットは、時間領域のターゲットベースバンド信号に対して周波数領域変換を行い、周波数領域のターゲットベースバンド信号を獲得し、初期補償信号に基づいて周波数領域のターゲットベースバンド信号を補正し、周波数領域の補正ベースバンド信号を獲得し、周波数領域の補正ベースバンド信号に対して時間領域変換を行い、時間領域のターゲット補正ベースバンド信号を獲得することに用いられる。
【0188】
いくつかの実施例では、ターゲット側波帯抑圧パラメータ取得モジュール1006は、パラメータ対応関係集合取得ユニット、基準信号関連パラメータ獲得ユニット、及びターゲット側波帯抑圧パラメータ取得ユニットを含む。パラメータ対応関係集合取得ユニットは、パラメータ対応関係集合を取得することに用いられ、パラメータ対応関係集合は1つ又は複数のパラメータ対応関係を含み、パラメータ対応関係は信号関連パラメータと側波帯抑圧パラメータとの対応関係を含む。基準信号関連パラメータ獲得ユニットは、パラメータ対応関係集合における、ターゲット信号関連パラメータに対応する信号関連パラメータを、基準信号関連パラメータとして取得することに用いられる。ターゲット側波帯抑圧パラメータ取得ユニットは、パラメータ対応関係集合における、基準信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータに基づき、ターゲット信号関連パラメータに対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを獲得することに用いられる。
【0189】
いくつかの実施例では、ターゲット側波帯抑圧パラメータ取得ユニットは、パラメータ対応関係集合における、基準信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータに基づき補間計算を行い、ターゲット信号関連パラメータに対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを得ることに用いられる。
【0190】
いくつかの実施例では、パラメータ対応関係集合における、基準信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータの側波帯抑圧パラメータ獲得モジュールは、基準信号関連パラメータに対応する参照ベースバンド信号を取得し、現在の側波帯抑圧パラメータを取得し、現在の側波帯抑圧パラメータに基づいて参照ベースバンド信号に対して信号補正処理を行い、補正後の参照ベースバンド信号を獲得し、補正後の参照ベースバンド信号を変調器に入力して変調を行い、参照変調信号を獲得し、参照変調信号の対応する第2抑圧側波帯上での電力に基づき現在の側波帯抑圧パラメータを調整し、基準信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータを獲得することに用いられる。
【0191】
いくつかの実施例では、側波帯抑圧パラメータ獲得モジュールは、参照変調信号の対応する第2抑圧側波帯での電力を低減する方向に向かって現在の側波帯抑圧パラメータを調整し、更新後の現在の側波帯抑圧パラメータを獲得し、現在の側波帯抑圧パラメータを取得し、現在の側波帯抑圧パラメータに基づいて参照ベースバンド信号に対して信号補正処理を行い、補正後の参照ベースバンド信号を獲得するステップに入り、更新停止条件を満たすと、更新後の現在の側波帯抑圧パラメータを基準信号関連パラメータに対応する側波帯抑圧パラメータとすることに用いられる。更新停止条件は更新前の現在の側波帯抑圧パラメータと更新後の現在の側波帯抑圧パラメータとの変化が所定の変化閾値未満であること、第2抑圧側波帯での電力が所定の電力閾値未満であること、又は現在の側波帯抑圧パラメータの更新回数が所定の回数より大きいことのうちの少なくとも1つを含む。
【0192】
いくつかの実施例では、ターゲット信号関連パラメータはターゲットベースバンド信号に対応するベースバンド周波数、ターゲットベースバンド信号に対応するベースバンド振幅、及びターゲットベースバンド信号に対応する搬送波信号の搬送波周波数を含み、ターゲット側波帯抑圧パラメータ取得モジュール1006は、搬送波周波数を取得し、搬送波周波数に対応するパラメータ対応関係集合を取得し、パラメータ対応関係はベースバンド信号に対応するベースバンド周波数及びベースバンド信号に対応するベースバンド振幅と側波帯抑圧パラメータとの対応関係を含み、ターゲットベースバンド信号に対応するベースバンド周波数、ターゲットベースバンド信号に対応するベースバンド振幅に基づきパラメータ対応関係集合から対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを取得することに用いられる。
【0193】
いくつかの実施例では、変調モジュール1010は、ターゲット補正ベースバンド信号に対応する実数部を変調器における同相ポートに入力し、ターゲット補正ベースバンド信号に対応する虚数部を変調器における直交ポートに入力し、搬送波周波数の搬送波信号を利用して信号変調を行い、ターゲットベースバンド信号に対応するターゲット変調信号を獲得し、ターゲット変調信号に基づき超伝導量子ビットをコントロールすることに用いられる。
【0194】
図11はいくつかの実施例におけるコンピュータ機器の内部構造図を示す。該コンピュータ機器は具体的には、
図1中のFPGAであってもよい。
図11に示すように、該コンピュータ機器はシステムバスによって接続されるプロセッサ、メモリ及びネットワークインタフェースを含む。そのうち、メモリは不揮発性記憶媒体及び内部メモリを含む。該コンピュータ機器の不揮発性記憶媒体にオペレーティングシステムが記憶され、さらにコンピュータ可読命令が記憶されてもよく、該コンピュータ可読命令がプロセッサにより実行される時、プロセッサに側波帯抑圧方法を実現させることができる。該内部メモリにもコンピュータ可読命令が記憶され、該コンピュータ可読命令がプロセッサにより実行される時、プロセッサに側波帯抑圧方法を実行させることができる。
【0195】
当業者が理解できるように、
図11に示される構造は、単に本願のスキームに関連する部分構造のブロック図であり、本願のスキームをそれに適用するコンピュータ機器に対する限定を構成せず、具体的なコンピュータ機器は図示よりも多い又は少ない部材を含み、又はいくつかの部材を組み合わせ、又は異なる部材配置を有するようにしてもよい。
【0196】
いくつかの実施例では、本願が提供する側波帯抑圧装置は一種のコンピュータ可読命令の形式として実現でき、コンピュータ可読命令は
図11に示されるコンピュータ機器で運転できる。コンピュータ機器のメモリに該側波帯抑圧装置を構成する各プログラムモジュール、例えば、
図10に示すターゲットベースバンド信号取得モジュール1002、ターゲット信号関連パラメータ取得モジュール1004、ターゲット側波帯抑圧パラメータ取得モジュール1006、補正処理モジュール1008及び変調モジュール1010が記憶されてもよい。各プログラムモジュールから構成されるコンピュータ可読命令によって、プロセッサに本明細書に記述される本願の各実施例の側波帯抑圧方法のステップを実行させる。
【0197】
たとえば、
図11に示すコンピュータ機器は、
図10に示す側波帯抑圧装置におけるターゲットベースバンド信号取得モジュール1002によって、ターゲットベースバンド信号を取得できる。ターゲット信号関連パラメータ取得モジュール1004によって、ターゲットベースバンド信号に対応するターゲット信号関連パラメータを取得し、ターゲット信号関連パラメータはターゲットベースバンド信号に対応する信号特性パラメータ又はターゲットベースバンド信号に対応する搬送波信号の信号特性パラメータの少なくとも一種を含む。ターゲット側波帯抑圧パラメータ取得モジュール1006によって、ターゲット信号関連パラメータに基づき対応するターゲット側波帯抑圧パラメータを取得する。補正処理モジュール1008によって、ターゲット側波帯抑圧パラメータに基づいてターゲットベースバンド信号に対して信号補正処理を行い、ターゲット補正ベースバンド信号を獲得し、ターゲット側波帯抑圧パラメータはターゲットベースバンド信号に対応する第1抑圧側波帯の電力を抑圧することに用いられる。変調モジュール1010は、ターゲット補正ベースバンド信号を変調器に入力して信号変調を行い、ターゲットベースバンド信号に対応するターゲット変調信号を獲得することに用いられる。
【0198】
いくつかの実施例では、コンピュータ機器を提供し、メモリ及びプロセッサを含み、メモリにコンピュータ可読命令が記憶され、コンピュータ可読命令がプロセッサにより実行される時、プロセッサに上記側波帯抑圧方法のステップを実行させる。ここで、側波帯抑圧方法のステップは上記各実施例の側波帯抑圧方法のステップであってもよい。
【0199】
いくつかの実施例では、コンピュータ可読記憶媒体を提供し、コンピュータ可読命令が記憶され、コンピュータ可読命令がプロセッサにより実行される時、プロセッサに上記側波帯抑圧方法のステップを実行させる。ここで、側波帯抑圧方法のステップは上記各実施例の側波帯抑圧方法のステップであってもよい。
【0200】
いくつかの実施例では、コンピュータプログラム製品又はコンピュータプログラムを提供し、該コンピュータプログラム製品又はコンピュータプログラムはコンピュータ命令を含み、該コンピュータ命令はコンピュータ可読記憶媒体に記憶される。コンピュータ機器のプロセッサはコンピュータ可読記憶媒体から該コンピュータ命令を読み取り、プロセッサは該コンピュータ命令を実行して、該コンピュータ機器に上記各方法の実施例のステップを実行させる。
【0201】
理解すべき点は、本願の各実施例のフローチャートにおける各ステップは矢印の指示に従って順に表示されているが、これらのステップは必然的に矢印で指示される順に実行されるものではない。本明細書に明確に説明されていない限り、これらのステップの実行は厳密的な順序制限がなく、これらのステップはほかの順序で実行されてもよい。且つ、各実施例における少なくとも一部のステップは複数のサブステップ又は複数の段階を含んでもよく、これらのサブステップ又は段階は必然的に同一時刻で実行されて完了するものではなく、異なる時点で実行されてもよく、これらのサブステップ又は段階の実行順序は必然的に順に行うものではなく、ほかのステップ又はほかのステップのサブステップ又は段階の少なくとも一部と交替して又は交互に実行されてもよい。
【0202】
当業者が理解できるように、上記実施例の方法におけるすべて又は一部のプロセスを実現することは、コンピュータ可読命令によって関連ハードウェアに命令を出して完了することができ、コンピュータ可読命令は不揮発性コンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよく、該コンピュータ可読命令が実行される時、上記各方法の実施例のプロセスを含んでもよい。そのうち、本願が提供する各実施例に使用されるメモリ、記憶、データベース又はほかの媒体についてのいずれの引用も、不揮発性及び/又は揮発性メモリを含む。不揮発性メモリは読み出し専用メモリ(ROM)、プログラマブルROM(PROM)、電気的プログラマブルROM(EPROM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)又はフラッシュメモリを含んでもよい。揮発性メモリはランダムアクセスメモリ(RAM)又は外部キャッシュメモリを含んでもよい。非限定的な説明として、RAMは複数種の形式で入手でき、たとえば、スタティックRAM(SRAM)、ダイナミックRAM(DRAM)、同期DRAM(SDRAM)、ダブルデータレートSDRAM(DDRSDRAM)、拡張SDRAM(ESDRAM)、シンクリンク(Synchlink) DRAM(SLDRAM)、ラムバス(Rambus)ダイレクトRAM(RDRAM)、ダイレクトラムバスダイナミックRAM(DRDRAM)、及びラムバスダイナミックRAM(RDRAM)等である。
【0203】
以上の前記実施例の各技術的特徴を任意に組み合わせることができ、説明を簡潔にするために、上記実施例における各技術的特徴のすべての可能な組み合わせを記述しておらず、しかしながら、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾が存在する限り、本明細書に記載の範囲であるとみなすべきである。
【0204】
以上の前記実施例について、本願のいくつかの実施形態のみを表現し、その記述は比較的具体的かつ詳細であるが、それにより、本願の特許範囲に対する制限として理解することはできない。ただし、当業者にとっては、本願の発想を逸脱せずに複数の変形や改良を行うことができ、これらはいずれも本願の保護範囲に属する。従って、本願の特許の保護範囲は添付特許請求の範囲に準じるべきである。
【符号の説明】
【0205】
121 第1DAC
122 第2DAC
131 第1LPF
132 第2LPF
140 変調器
1002 ターゲットベースバンド信号取得モジュール
1004 ターゲット信号関連パラメータ取得モジュール
1006 ターゲット側波帯抑圧パラメータ取得モジュール
1008 補正処理モジュール
1010 変調モジュール