IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セルム・インスティテュート・オブ・インディア・ピーブイティー.・リミテッドの特許一覧

特許7258463多糖-タンパク質結合体の吸着およびそれから得られた多価のワクチン製剤を改善するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】多糖-タンパク質結合体の吸着およびそれから得られた多価のワクチン製剤を改善するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/09 20060101AFI20230410BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230410BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20230410BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230410BHJP
   A61K 39/116 20060101ALI20230410BHJP
   A61K 39/385 20060101ALI20230410BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20230410BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230410BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230410BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230410BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230410BHJP
   C07K 1/22 20060101ALN20230410BHJP
   C07K 14/315 20060101ALN20230410BHJP
【FI】
A61K39/09
A61K9/10
A61K9/19
A61K39/00 E
A61K39/116
A61K39/385
A61K39/39
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/22
A61P37/04
C07K1/22
C07K14/315
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2017564108
(86)(22)【出願日】2016-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-06-28
(86)【国際出願番号】 IB2016053265
(87)【国際公開番号】W WO2016199003
(87)【国際公開日】2016-12-15
【審査請求日】2019-06-03
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】2185/MUM/2015
(32)【優先日】2015-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】513240205
【氏名又は名称】セルム・インスティテュート・オブ・インディア・プライベート・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Serum Institute of IndiaPrivate Ltd.
【住所又は居所原語表記】212/2, Off Soli Poonawalla Road, Hadapsar, Maharashtra Pune 411 028, INDIA
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】デレ、ラジーブ・ムハラサカント
(72)【発明者】
【氏名】マルビヤ、ヒテシュ・クマー
(72)【発明者】
【氏名】ジャナ、スワパン・クマー
(72)【発明者】
【氏名】ピサル、サンバージー・シャンカル
(72)【発明者】
【氏名】マリヤ、アサ・ディネシュ
(72)【発明者】
【氏名】マホー、スニル
(72)【発明者】
【氏名】ゴータム、マニッシュ・マヘシュクマー
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ、チェタン・ビラス
(72)【発明者】
【氏名】マレパティ、ベンカタ・バムシ・クリシュナ
(72)【発明者】
【氏名】ジャダフ、プラシャント・シバジ
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】齋藤 恵
【審判官】岡崎 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-502595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各結合体について最適な吸着を示し、かつ、結合体の最小限の凝集を示す、安定した多価の肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物の調製のための方法であって、前記方法
i.肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)に由来する肺炎球菌多糖分子と担体タンパク質を0.5~1.4の比、および、pH5.2~5.9で結合させて多糖-タンパク質結合体を得る工程、
ii.1mM~200mMの濃度を有するpH5.6~5.8のヒスチジン-コハク酸緩衝液中の第1のアルミニウム塩アジュバント上に、工程(i)において得られた血清型6A、9Vおよび23Fを含む多糖-タンパク質結合体を個別に吸着させる工程、ここで、前記アルミニウム塩アジュバントの量が、前記ワクチン組成物の0.5ml用量当たりAl+++20~375μgの範囲であり、前記吸着が、75~99%の範囲内である、
iii.1mM~200mMの濃度を有するpH5.6~5.8のヒスチジン-コハク酸緩衝液中の第2のアルミニウム塩アジュバント上に、工程(ii)において得られた6A、9Vおよび23F以外の血清型を含む多糖-タンパク質結合体を混合して吸着させる工程、ここで、前記アルミニウム塩アジュバントの量が、前記ワクチン組成物の0.5ml用量当たりAl+++20~375μgの範囲である
iv.界面活性剤の存在下で、ラシュトン型タービン羽根車使用して、工程(ii)において得られた前記第1の吸着されたセットと、工程(iii)において得られた前記第2の吸着されたセットとブレンドし、安定した多価の肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物を得る工程
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に従って調製される、多価の肺炎球菌結合型ワクチン組成物であって、前記組成物が、血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9F、9N、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、33Fおよび45から選択される多糖を有する、少なくとも3種の多糖タンパク質結合体を含む、組成物。
【請求項3】
請求項1に従って調製される、多価の肺炎球菌結合型ワクチン組成物であって、前記組成物が、血清型1、5、6A、6B、7F、9V、14、19A、19Fおよび23Fからの多糖を有する、少なくとも10種の多糖タンパク質結合体を含む、組成物。
【請求項4】
請求項1に従って調製される、多価の肺炎球菌結合型ワクチン組成物であって、前記組成物が、血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、9V、12F、14、15B、18C、19A、19F、22Fおよび23Fからの多糖を有する、少なくとも16種の多糖タンパク質結合体を含む、組成物。
【請求項5】
請求項1に従って調製される、多価の肺炎球菌結合型ワクチン組成物であって、前記組成物が、血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、9V、12F、14、15B、18C、19A、19F、22Fおよび23Fからの多糖を有する、17種の多糖タンパク質結合体を含む、組成物。
【請求項6】
請求項1に従って調製される、多価の肺炎球菌結合型ワクチン組成物であって、前記組成物が、血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、9V、12F、14、15B、18C、19A、19Fおよび23Fからの多糖を有する、16種の多糖タンパク質結合体を含む、組成物。
【請求項7】
前記タンパク質は担体タンパク質であり、前記担体タンパク質が、CRM197、肺炎球菌表面アドへシンA(PsaA)、ジフテリアトキソイド(DT)、破傷風トキソイド(TT)、破傷風トキソイドのフラグメントC、百日咳トキソイド、インフルエンザ菌(H. influenzae)のタンパク質D、大腸菌(E. coli)LT、大腸菌(E. coli)ST、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)からの外毒素A、外膜複合体c(OMPC)、ポーリン、トランスフェリン結合タンパク質、ニューモリシン、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)、肺炎球菌表面アドへシンA(PsaA)、肺炎球菌PhtD、肺炎球菌表面タンパク質BVH-3およびBVH-11、炭疽菌(Bacillus anthracis)の防御抗原(PA)および炭疽菌(Bacillus anthracis)の無毒化された浮腫因子(EF)および致死因子(LF)、卵白アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン(BSA)ならびにツベルクリンの精製タンパク質誘導体(PPD)、特にCRM197、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイドまたはPsaAからなる群から選択される、1種以上である、請求項2~6の何れか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記タンパク質は担体タンパク質であり、前記多価の組成物が、
i.担体タンパク質としてCRM197を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質結合体、担体タンパク質としてTTを有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、または
ii.担体タンパク質としてCRM197を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質結合体、担体タンパク質としてDTを有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、または
iii.担体タンパク質としてCRM197を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質結合体、担体タンパク質として肺炎球菌表面アドへシンA(PsaA)を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、または
iv.担体タンパク質としてCRM197を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質結合体、担体タンパク質としてTTを有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、担体タンパク質としてDTを有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、または
v.担体タンパク質としてCRM197を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質結合体、担体タンパク質としてTTを有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、担体タンパク質として肺炎球菌表面アドへシンA(PsaA)を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、または
vi.担体タンパク質としてCRM197を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質結合体、担体タンパク質としてDTを有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、担体タンパク質として肺炎球菌表面アドへシンA(PsaA)を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質
を含む、請求項2~6の何れか一項に記載の組成物。
【請求項9】
血清型3が、CRM197に結合されており、血清型18Cが、CRM197に結合されており、血清型15Bが、TT、DTまたはCRM197に結合されており、血清型4が、TTまたはDTに結合されており、血清型22Fが、DTまたはTTに結合されている、請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
前記方法が、以下の工程
i.所定の比、好ましくは0.8対1.4、より好ましくは1:1、および所定のpH、好ましくは5.2~5.9で、多糖分子をタンパク質担体に加えて、複数の別個の多糖-タンパク質結合体を得ること、
ii.所定の濃度を有する、ヒスチジン-コハク酸緩衝液中の第1のアルミニウム塩アジュバント上に、工程(i)において得られた、前記複数の多糖-タンパク質結合体から選択される、多糖-タンパク質結合体の第1の所定のセットを、個別に吸着させ、前記アルミニウム塩アジュバントの量が、最終ワクチン組成物の0.5ml用量当たりAl+++20~375μgの範囲であり、多糖-タンパク質結合体の前記セットが、6A、9Vおよび23Fを含むこと、
iii.所定の濃度を有する、ヒスチジン-コハク酸緩衝液中の第2のアルミニウム塩アジュバント上に、工程(i)において得られた、前記複数の多糖-タンパク質結合体から選択される、多糖-タンパク質結合体の第2の所定のセットを、組み合わせた様式で吸着させ、前記アルミニウム塩アジュバントの量が、最終ワクチン組成物の0.5ml用量当たりAl+++20~375μgの範囲であり、多糖-タンパク質結合体の前記セットが、1、5、6B、7F、14、19Aおよび19Fを含むこと、
iv.ラシュトンタービン平羽根車を用いて、工程(ii)において得られた、前記第1の吸着されたセットを、工程(iii)において得られた、前記第2の吸着されたセットとブレンドし、任意で、界面活性剤、好ましくはポリソルベート-20、ならびに/または水銀系保存剤、たとえばチオメルサール、2-フェノキシエタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種の保存剤を加えて、安定した多価の肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物を得ること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、
i)約4分間から約10分間、約22℃から約25℃、1:0.8~1:1の比で、130KDa~190KDaの平均サイズを有する多糖をシアニル化剤と反応させて、シアネートで活性化された多糖をもたらすこと、および
ii)3時間から5時間、約9から約9.5のpH、1:1の比で、シアネートで活性化された多糖をタンパク質と接触させ、続いて、グリシンでクエンチし、
前記方法が、サイジングされた多糖のシアニル化剤副生成物が媒介する解重合を最小化し、その後の多糖-多糖凝集を防止して、最小の遊離多糖含有量を有する結合体をもたらすこと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記結合体が、1.6%未満の遊離多糖含有量を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
吸着パーセントが、水酸化ナトリウムおよびクエン酸を使用して、ミョウバン吸着された結合体試料を溶解する工程を、特に含む、サンドイッチELISAによって測定される、請求項1の方法。
【請求項14】
PsaAが、アジュバントとして使用される、請求項2~9の何れか一項に記載の組成物。
【請求項15】
リン酸アルミニウムゲルおよびNaClを含有する賦形剤を有する、1、5または10用量の製剤として投薬されるまで、冷凍乾燥状態で得られる、前記結合型ワクチン組成物を貯蔵する工程を、さらに含む、請求項2~9の何れか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記ヒスチジン-コハク酸緩衝液が、10mM~40mMの濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
血清型15Bが、TTに結合されている、請求項9に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)は、子供の細菌性肺炎、髄膜炎、および敗血症の主因である。肺炎連鎖球菌(S pneumoniae)によって引き起こされる、子供の死亡の最近の推定値は、世界中で毎年70万から100万件の範囲である。2000年に、重篤な肺炎球菌性疾患の約1450万件の発症(不確定範囲1110万~1800万)があったと推定された。肺炎球菌性疾患は、月齢1~59ヶ月の子供の約82万6千件の死亡(58万~92万6千)を引き起こし、そのうちの9万1千件(6万3千~10万)が、HIV陽性、73万5千件(51万~82万)が、HIV陰性の子供であった。
【0002】
何年にもわたって認可されてきた、多価の肺炎球菌多糖ワクチンは、成人、特に高齢者およびハイリスクの高齢者における、肺炎球菌性疾患の予防に有益であると判明した。しかし、乳幼児および低年齢小児は、非結合型肺炎球菌多糖に反応しにくい。当時、低年齢小児および乳幼児の浸襲性肺炎球菌性疾患を引き起こしていた、7種の最も頻繁に単離された血清型(4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23F)を含有する、肺炎球菌結合型ワクチン、Prevnar(登録商標)が、2000年2月にアメリカ合衆国において最初に認可された。
【0003】
さらに、Prevnar(商標)13(Wyeth)は、血清型1、3、4、5、7F、9V、14、18Cおよび23Fに加えて、6A、6B、19A、19Fからの多糖の結合体を含有する、承認ワクチンである。Synflorix(商標)(GSK)は、1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19F、および23Fに対する防御能ならびに19Aおよび6Aに対する交差防御能を提供する、別の承認ワクチンである。
【0004】
ワクチン製剤は、一般的に、長い貯蔵有効期間および複数回投与用容器の使用の必要性に応えるために、安定していて、均一な不変性がなければならない。多糖-タンパク質結合体を含む、タンパク質をベースとするワクチンは、利用不可能な沈降したタンパク質生成物に起因してワクチンの有効な全濃度の低下をもたらし得る、タンパク質凝集および沈降を起こしやすい。特に、多糖-タンパク質結合型ワクチンは、担体タンパク質単独より、強い凝集傾向を有するようである(Bertiら、2004、Biophys J 86、3~9参照)。多糖-タンパク質結合型ワクチンのための製剤化の選択は、タンパク質凝集に大きな影響を与えることができる。Hoら、2001、Vaccine19、716~725を参照。
【0005】
いくつかの現存の多価の肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン組成物が、世界中で開発されているにもかかわらず、個別の結合体の高吸着、および多糖-タンパク質結合体を有する免疫原性組成物の凝集/沈降がないことを実現するワクチン製剤に対する必要性が、当技術分野において今も継続してある。
【0006】
かかる多価の肺炎球菌ワクチン中に伝統的に使用されるアジュバントは、アルミニウム塩、たとえば、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムであった。多くのその他の実験的なアジュバントが、知られているが、しかし、アルミニウム塩への吸着は、最も通常のワクチンアジュバント製剤のままである。それらの使用は広範に広がっているが、アルミニウム塩は、特定の抗原に常に適合性があるとは限らない可能性があり、したがって、多糖-タンパク質結合体のミョウバンへの吸着パーセントまたは抗原性に関して有意な差をもたらす。
【0007】
アルミニウムアジュバントに吸着される結合型ワクチン候補の免疫学的特性および安定性は、多様なパラメーター、たとえば、i)各抗原の抗原性、ii)結合のために使用される担体タンパク質の種類、およびiii)使用されるアジュバントの種類に依存する。最も重要なことに、アジュバントへの抗原の吸着の程度は、製剤化方法のロット間の不変性およびワクチン製品の有効性へのあり得る影響を明示する、主要パラメーターの1つであることが、以前、報告された。さらに、多糖-タンパク質結合体の吸着パーセントは、製剤の貯蔵で、または困難な状況下、たとえば、温度逸脱で、さらに下落し得る。生物学的製剤の標準化に関するWHO専門家会議の第54回会合、Recommendations for the production & control of Pneumococcal conjugate vaccines、17~21、2003年11月、Carl E.Frasch、Session IV、Conjugate Vaccines、Vaccine Technology II、ポルトガル、2008を参照。
【0008】
肺炎球菌多糖-タンパク質結合体のための欧州の規制機関(EMEA)のガイドラインの通り、吸着の完全性(結合されていない結合体%)は、ミョウバン含有量、無菌性、同一性および遊離多糖含有量とともに、決定的な品質管理パラメーターとして考えられるべきである。Assessment Report for Synflorix2009、Procedure No.EMEA/H/C/000973を参照。WHOは、ミョウバン沈降抗原(たとえば、ジフテリアおよび破傷風トキソイド)に対する吸着を最大にし、これらのワクチン中の抗原の少なくとも80%が吸着されることを勧告している。
【0009】
多糖-タンパク質結合体を製造する間に、製剤は、多糖-多糖型、タンパク質-タンパク質型または多糖-タンパク質型の凝集体を含み得る。かかる凝集体は、最終製品においてもまた観察され、多糖-タンパク質結合型(複数可)のワクチンを詰めたバイアルの4%から10%の不良品につながり、したがって、結合型ワクチンの安定性および有効性に影響を与える。
【0010】
多糖およびその結合体の凝集および安定性に関する、上で検討してきた制限を考慮すると、肺炎球菌結合型ワクチン製造の最終製剤段階への下流処理全体を通じて、凝集を減少させ、前記多糖を安定化させる、明確な必要性がまだある。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、アルミニウム塩を含むワクチンの安定性における改善、ならびに特に、凝集を最小化するための方法および多価の肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン中の個別の結合体の吸着パーセントにおける改善を提供する。本発明の発明者らは、多糖-タンパク質結合体の組み合わせた吸着および1:1を超える多糖対タンパク質の比を使用した結果、i)血清型6A、9Vおよび23Fについての肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)結合体に対しては55%未満の吸着パーセント、ii)残りの血清型結合体に対しては約80%から90%の吸着パーセントとなり、したがって、所与の多価の肺炎球菌結合型製剤について個々の血清型結合体に対する完全な吸着を達成できないことを観察した。また、6.8~7.0のpHを使用することによって調製されたワクチン製剤が、約4から10%の凝集およびより低い吸着をもたらすことも観察した。
【0012】
本発明は、各結合体について75~99%の最適な吸着を示す、安定した多価の肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン製剤の調製のための方法に関するものであり、前記方法において、凝集を、
a.組み合わせた吸着では、相対的により低い吸着を示す結合体については、個別または別々での吸着、
b.中性pHから酸性pHへの移行を伴うヒスチジン-コハク酸緩衝系、
c.0.6から約1.4の多糖対タンパク質の比、および/または
d.製剤容器中での6枚羽ラシュトン型タービン羽根車の使用
の少なくとも1つを使用することによって防止する。
【0013】
本発明は、ホスホジエステル結合を含有する肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)多糖、特に19A、19F、6Aおよび6Bについて、改善された免疫原性およびより少ない遊離多糖含有量を有する、多糖-タンパク質結合体を調製するための方法もまた開示している。前記結合方法は、サイジングされた多糖のシアニル化剤副生成物が媒介する解重合を最小化し、その後の多糖-多糖凝集を防止し、したがって、不安定な多糖を安定化させる。凝集を減少させるカギは、100~200KDaの範囲のサイジングされた多糖の使用、および(1):(0.8~1)の範囲の多糖対CDAP(シアニル化剤)の比に帰することができる。
【0014】
本発明の通り調製された免疫原性組成物は、多糖-多糖間の凝集の減少、および改善された安定性および免疫原性を有する、多糖-タンパク質結合体を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】DMAP処理前のサイジングされた19A PnPs(178KDa)のSEC-HP-RIプロファイル
図2】24時間DMAP処理後の70KDa(A)および72時間DMAP処理後の14.5KDa(B)のサイジングされた19A PnPsのSEC-HP-RIプロファイル-解重合プロファイル
図3-1】サイジングされた19A PnPs(178KDa、A)、およびCDAPが媒介する、活性化された多糖(5B、5Cおよび5D)、5E(10KDa DFなしの結合体)、5F(10KDa DFありの結合体)、5G-サイジングされた19A/5H-活性化された19A(19Aのための改変された、Ps:CDAPの比1:1)(10KDaダイアフィルトレーション工程を使用しない結合方法)の経時的凝集のSEC-HP-RIプロファイル
図3-2】図3-1と同じ
図3-3】図3-1と同じ
図3-4】図3-1と同じ
図4-1】サイジングされた19F PnPs(157KDa、A)のSEC-HP-RIプロファイル、およびCDAPが媒介する、活性化された多糖(B)、6C/6D(19Fのための改変された、Ps:CDAPの比1:1)(10KDaダイアフィルトレーション工程を使用しない結合方法)の経時的凝集
図4-2】図4-1と同じ
図5】6枚羽ラシュトン型タービン平羽根車
図6】吸着の手順
【詳細な説明】
【0016】
アルミニウム塩を含むワクチンの安定性における改善、ならびに特に、凝集を最小化するための方法および多価の肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン中の個別の結合体の吸着パーセントにおいける改善を提供することが、本発明の目的である。本発明の発明者らは、多糖-タンパク質結合体の組み合わせた吸着および1:1を超える多糖対タンパク質の比の使用が、i)血清型6A、9Vおよび23Fに対する肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)結合体についての55%未満の吸着パーセント、ならびにii)残りの血清型結合体についての約80%から90%の吸着パーセントをもたらし、したがって、所与の多価の肺炎球菌結合型製剤について個々の血清型結合体に対する完全な吸着を達成できないことを観察した。また、6.8から7.0のpHを使用することによって調製されたワクチン製剤が、約4から10%の凝集およびより低い吸着をもたらすことも観察した。
【0017】
多糖を、特許WO2013088448A1に記載されている方法を使用して製造した。この特許において、前記方法は、(a)CPを発現する細菌の株の種菌を提供すること、(b)pH7.2での発酵によって株を培養することであって、供給培地添加の速度が、予め定めたpHを維持するためのアルカリ混合物添加の速度と等価であること、c)0.1~0.5vvmの空気流量で、50~150RPMでの撹拌下、35~38℃で培地を発酵させることを含む。
【0018】
多糖を、特許WO2012127485に記載されている方法によって精製した。本方法によって調製されたPn-Psは、約60から70%の回収率を示し、C型多糖混入が、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)後またはイオン交換クロマトグラフィー(IEC)前のC-Ps含有量と比較して、1から5分の1に減少し、タンパク質混入が、1%未満であり、核酸混入が、1%未満である。前記方法を、研究、試験および商業規模で実行した。
【0019】
この方法は、CTAB/アルコールに基づく方法と比較した場合、80~90%少ない時間消費および90%少ないコストで、多糖を精製できる。
【0020】
本発明の重要な一態様によれば、i)約0.8から1.4の多糖対タンパク質の比を使用すること、ii)吸着しにくい肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)結合体のために、個別または別々での吸着を使用すること、iii)製剤化する間、より低いpHを保つことによって、75~95%の改善された吸着パーセントを、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)結合体について得ることができる。
【0021】
第1の態様の一側面によれば、好ましい、多糖対タンパク質の比は、1:1である。
【0022】
第1の態様の第2の側面によれば、前記組成物は、血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9F、9N、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、33Fおよび45から選択される多糖を有する、少なくとも2種の多糖タンパク質結合体を含む。
【0023】
第1の態様の第3の側面によれば、2、3、4、6A、8、9V、9F、9N、12F、15B、17F、18C、20、22F、23F、33Fおよび45から選択される、何れかの肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型のために、好ましくは、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型6A、9V、および23Fために、吸着の個別様式を使用できる。
【0024】
第1の態様の好ましい側面によれば、多価の肺炎球菌結合型ワクチンは、10価であり、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型6A、9V、および23Fを、別々のブレンドとして個別に吸着し、次に、組み合わせた様式で吸着させた、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型1、5、6B、7F、14、19Aおよび19Fの混合物を含む、別のブレンドに加える。
【0025】
第1の態様の別の好ましい側面によれば、多価の肺炎球菌結合型ワクチンは、11、13、15、16またはそれ以上の価数であり、2、3、4、6A、8、9V、9F、9N、12F、15B、17F、18C、20、22F、23F、33Fおよび45の群から選択される、少なくとも1種の肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型を、個別に吸着する、または別々のブレンドとしてより小さい群で吸着し、次に、組み合わせた様式で吸着した、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型1、5、6B、7F、14、19Aおよび19Fの混合物を含む、別のブレンドに加える。
【0026】
第1の態様のさらに別の好ましい側面によれば、多価の肺炎球菌結合型ワクチンは、16価であり、2、3、4、6A、9V、12F、15B、18C、および23Fの群から選択される、少なくとも1種の肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型を、個別に吸着する、または別々のブレンドとしてより小さい群で吸着し、次に、組み合わせた様式で吸着した、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型1、5、6B、7F、14、19Aおよび19Fの混合物を含む、別のブレンドに加える。
【0027】
本発明の第2の態様は、i)中性pHから酸性pHへのpH移行を使用することおよびii)ヒスチジン-コハク酸緩衝液の組合せの使用によって、多価の肺炎球菌多糖-タンパク質結合型製剤中の凝集を、完全に防止できる。
【0028】
第2の態様の一側面によれば、前記pH移行は、6.8から、これらに限定されるわけではないが、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8および5.9から選択されるpH、より好ましくは6.8から、5.4、5.5、5.6、5.7および5.8から選択されるpHになることが可能である。
【0029】
第2の態様の別の側面によれば、前記ヒスチジン-コハク酸緩衝系は、1mM~200Mの濃度を有することが可能である。濃度は、好ましくは、少なくとも1mM(たとえば、最大で、200mM、150mM、100mM、90mM、80mM、70mM、60mM、50mM、40mM、30mM、20mM、10mM等)である。より好ましくは、組成物中のヒスチジン-コハク酸緩衝液の濃度は、10mM~40mMである。
【0030】
本発明の第3の態様は、肺炎球菌バルク結合体中のフロキュールまたは凝集形成を、製剤容器中で、機械撹拌式、軸方向および半径方向型羽根車の代わりに、ラシュトンタービン平羽根車を使用することによって、防止できる。
【0031】
本発明の免疫原性組成物の安定性は、よく知られた標準技法および当業者にとってのルーティンを使用して、容易に測定される。たとえば、免疫原性組成物は、これらに限定されるわけではないが、ELISA、光散乱、吸光度、沈降速度遠心分離、沈降平衡遠心分離、円二色性(CD)、ローリーアッセイ、ビシンコニン酸(BCA)アッセイ等を含む方法によって、結合体の吸着パーセント、安定性、凝集、免疫原性、微粒子形成、タンパク質(濃度)減少等についてアッセイされる。
【0032】
好ましい態様において、本発明は、多価の肺炎球菌結合型ワクチン中の結合体の抗原性に影響を与えることなく、結合型/結合された多糖を直接定量できる、新規のELISAを提供する。この同じ方法を、吸着パーセントのための指示パラメーターとしての製剤マトリックス中の吸着されなかった結合体含有量の定量のために使用でき、結合体は、70%超の吸着を示す。好ましいことに、前記ELISAは、担体タンパク質の抗原性ならびに結合された多糖に影響を与えず、ミョウバンアジュバントからの結合体の脱着を含む、プレアッセイ工程を使用できる。より具体的には、ミョウバン吸着された結合体試料の溶解は、水酸化ナトリウムおよびクエン酸を使用して、達成される。
【0033】
担体タンパク質は、これらに限定されるわけではないが、CRM197、P4、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、破傷風トキソイドのフラグメントC、百日咳トキソイド、インフルエンザ菌(H.influenzae)のタンパク質D、大腸菌(E.coli)LT、大腸菌(E.coli)ST、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)からの外毒素A、外膜複合体c(OMPC)、ポーリン、トランスフェリン結合タンパク質、ニューモリシン、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)、肺炎球菌表面アドへシンA(PsaA)、肺炎球菌PhtD、肺炎球菌表面タンパク質BVH-3およびBVH-11、炭疽菌(Bacillus anthracis)の防御抗原(PA)ならびに炭疽菌(Bacillus anthraci)の無毒化された、浮腫因子(EF)および致死因子(LF)、卵白アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン(BSA)およびツベルクリンの精製タンパク質誘導体(PPD)、特にCRM197またはP4の群から選択できる。
【0034】
好ましい態様によれば、前記多価の組成物は、
i)担体タンパク質としてCRM197を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質結合体、担体タンパク質としてTTを有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、または
ii)担体タンパク質としてCRM197を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質結合体、担体タンパク質としてDTを有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、または
iii)担体タンパク質としてCRM197を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質結合体、担体タンパク質として肺炎球菌表面アドへシンA(PsaA)を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、または
iv)担体タンパク質としてCRM197を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質結合体、担体タンパク質としてTTを有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、担体タンパク質としてDTを有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、または
v)担体タンパク質としてCRM197を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質結合体、担体タンパク質としてTTを有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、担体タンパク質として肺炎球菌表面アドへシンA(PsaA)を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、または
vi)担体タンパク質としてCRM197を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質結合体、担体タンパク質としてDTを有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、担体タンパク質として肺炎球菌表面アドへシンA(PsaA)を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質
を含むことができる。
【0035】
別の態様において、血清型3に結合した好ましい担体タンパク質は、CRM197であり、血清型4には、TTまたはDTであり、血清型18Cには、CRM197である。
【0036】
本発明の別の態様は、最終製剤中の担体タンパク質としてPsaAを使用することを含む。PsaAは、アジュバントとして、最終製剤中に、また使用できる。
【0037】
或る種の態様において、本発明の多価の製剤は、界面活性剤、好ましくはポリソルベート20を含むことができる。或る種の態様において、製剤中のポリソルベート20の最終濃度は、ポリソルベート20重量/製剤体積、0.01%から10%である。さらなるその他の態様において、製剤中のポリソルベート20の最終濃度は、ポリソルベート20重量/製剤体積、0.01%である。その他の態様において、製剤中のポリソルベート20の最終濃度は、ポリソルベート20重量/製剤体積、0.05%である。さらなるその他の態様において、製剤中のポリソルベート20の最終濃度は、ポリソルベート20重量/製剤体積、0.1%である。別の態様において、製剤中のポリソルベート20の最終濃度は、ポリソルベート20重量/製剤体積、1.0%である。さらに別の態様において、製剤中のポリソルベート20の最終濃度は、ポリソルベート20重量/製剤体積、10.0%である。
【0038】
本発明の多価のワクチン製剤は、これらに限定されるわけではないが、水銀系保存剤(たとえば、チオメルサール)、2-フェノキシエタノール、メチルパラベン、プロピルパラベンおよびベンジルアルコール(またはそれらの混合物)の群から選択される保存剤を含むことができる。
【0039】
本発明の好ましい態様によれば、前記多価の肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン製剤、好ましくは、10または16価は、リン酸アルミニウムに吸着された結合体、ヒスチジン、コハク酸、塩化ナトリウム、ポリソルベート20およびチオメルサールを含むことができる。
【0040】
本発明のワクチン組成物は、0.5ml用量毎に、Al+++20~375μg、20~300μg、20~200μg、25~150μgの量で、アルミニウム塩アジュバントを加える工程を含むことができる。
【0041】
典型的には、免疫原性組成物は、注射剤として、溶液または懸濁液の何れかとして、調製される。注射の前の液体媒体中の溶液または懸濁液に適切な、固体形態もまた、調製されてよい。調製物は、アジュバント効果を増強するため、乳化またはリポソーム中に被包してもまたよい。組成物の直接的な送達は、一般的に、非経口(たとえば、皮下に、腹腔内に、静脈内もしくは筋肉内に注射、または組織の間質空間に送達される)となる。組成物は、病変中にもまた投与できる。その他の投与方法としては、経口および肺内投与、座薬、および経皮的にまたは経皮適用針、および皮下噴射器が挙げられる。投薬治療は、単回投与計画または複数回投与計画(たとえば、追加抗原投与を含む)であってよい。
【0042】
好ましくは、本発明のワクチンは、溶液中でまたは冷凍乾燥されて貯蔵されてよく、本発明の冷凍乾燥ワクチン組成物は、リン酸アルミニウムゲルおよびNaClを含有する賦形剤を有する、1、5または10用量の製剤として得ることができる。
【0043】
本発明の別の態様は、製剤容器中でのラシュトンタービン平羽根車の使用を含む(図5参照)。
【0044】
[実施例]
例1
発酵
方法は、(a)CPを発現する細菌の株の種菌を提供すること、(b)pH7.2での発酵によって株を培養することであって、供給培地添加の速度が、予め定めたpHを維持するために、アルカリ混合物添加の速度と等価であること、(c)0~0.5vvmの空気流量で、50~150RPMでの撹拌下、35~38℃で培地を発酵させることを含む。
【0045】
例2
莢膜多糖の精製
肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)莢膜多糖血清型19Fの精製(HIC、続いてIEC)
肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型19Fの発酵培養からの澄んだブロス5Lを、100KDaのMWCO膜を使用して、500mlまで濃縮し、ダイアフィルトレーションした。ダイアフィルトレーションを、中性pHで25mMのリン酸ナトリウム緩衝液を使用して達成し、続いて、注射用水(WFI)でダイアフィルトレーションした。
【0046】
ヌクレアーゼを、多糖溶液に加えて、最終濃度8U/mlの溶液を達成した。酵素処理を、撹拌しながら、10±2時間、370℃で実行した。
【0047】
硫酸アンモニウムを、50%飽和まで、ヌクレアーゼ処理した多糖溶液に加え、12±2時間、2~8℃でインキュベートした(血清型5および4を除く)。混合物を、遠心分離にかけた。ペレット(沈降物)を、廃棄した。溶液(約500ml)を、NaClを使用し、続いて、冷却したWFIによって、100kDダイアフィルトレーションを受けさせる。緩衝液および高塩濃度を有する多糖を含有する、このダイアフィルトレーションした溶液を、HICカラムに充填した。
【0048】
疎水性相互作用クロマトグラフィーカラム(300ml)を、50%飽和硫酸アンモニウム緩衝液で平衡化し、次に、多糖溶液(500ml)を、pH範囲6から8内で、好ましくは、pH6からpH7で、カラムに充填した。カラムを、50%飽和硫酸アンモニウムを含有する緩衝液で、さらに洗浄した。これらの条件下で、多糖を、カラムからのフロースルーおよび平衡化洗浄で回収した。
【0049】
次に、多糖溶液を、100KDaのMWCOフィルターを使用して濃縮し、次に、NaClおよび注射用水(WFI)で、ダイアフィルトレーションした。
【0050】
イオン交換クロマトグラフィーカラム(300ml)(強い陰イオン交換体)を、20mMのリン酸ナトリウム緩衝液で平衡化し、次に、多糖溶液(500ml)を、pH範囲6から8内で、好ましくは、pH6.5からpH7.5で、カラムに充填した。カラムを、緩衝液で、さらに洗浄した。吸着された多糖を、1.0MのNaClを使用する段階勾配溶離で溶離した(多様な多糖を、NaClの異なるイオン強度で溶離した)。
【0051】
次に、多糖溶液を、100KDaのMWCOフィルターを使用して濃縮し、次に、注射用水(WFI)で、ダイアフィルトレーションした。
【0052】
ダイアフィルトレーションした多糖溶液を、0.22μ膜フィルターを通じて、ポリプロピレン瓶中に濾過した。精製した多糖を、-20±50℃で凍結して貯蔵した。
【0053】
上の方法を、血清型4、6A、6B、7F、9V、10A、14、18C、19A、19F、および23Fについても、また使用した。
【0054】
結果
HIC後およびイオン交換クロマトグラフィー後のC型多糖を、H1/P31 NMRスペクトルによって推計した。方法は、混入物含有量の2~3分の1への減少をもたらした。
【0055】
例3
多糖のサイジング
ホモジナイザー(マイクロ流体学)装置を使用して、活性化工程の前に多糖の分子量を減少させた。19Aについて、サイズ減少を、24~28KPSIで行った一方で、19Fについて、サイズ減少を、26~30KPSIで行い、パス回数は、約1から3であった。サイジングされた多糖を、ダイアフィルトレーションし、濃縮し、続いて、0.22μで濾過した。次に、サイジングされた多糖を、平均分子量の推計のためにHPSEC-RIを受けさせた。
【0056】
例4
一般的結合方法
担体タンパク質への多糖の結合を、LeesらのCDAP結合方法(Vaccine26、190~198、1996)を使用して、実行した。機械的にサイズ減少させた多糖(天然型で使用された、または6Aのサイズに依ってサイジングされた、6Aを除く)を、NaCl、2Mに溶解させた。100mg/mlストック溶液からの(アセトニトリル中の)CDAPを、多糖:CDAPの比の通りに、多糖溶液に加えた。およそ1分後、2MのNaOHを加えて、特有の活性化pHを得た。多糖の活性化を、22℃、4~10分間、このpHで実施した。CRM197(量は、初期のPs/タンパク質の比に依る)を、活性化された多糖に加え、カップリング反応を、血清型に依って、3~8時間、特有のpHで実施した。次に、反応を、220℃、1時間で、および120℃、一晩で、グリシンによりクエンチした。次に、結合体を、300kDaから500kDaのダイアフィルトレーション、続いて100kDaのダイアフィルトレーションによって、精製した。さらに、精製された0.22um濾過結合体の、多糖およびタンパク質の含有量を、測定した。
【0057】
表1-10種の血清型についての血清型特有の結合反応パラメーターのバリエーション
【0058】
【表1】
【0059】
表2:製剤化方法の1-および2-ブレンドアプローチにおける、PCV-10製剤の個々の血清型の吸着パーセントの比較
【0060】
【表2】
【0061】
1ブレンドアプローチにおいて、血清型6A、9V、および23Fは、製剤中で吸着しにくかった一方で、2ブレンドアプローチについては、吸着パーセントは、全ての血清型について、>70%であった。
【0062】
表3:PCV-10製剤の凝集挙動に対する、pH移行の効果
【0063】
【表3】
【0064】
pH6.8と比較した場合、PCV10製剤について、pH5.6~5.8について、凝集体は、見つからなかった。
【0065】
多糖対タンパク質の比(1:1)が、製剤中の肺炎球菌結合体の吸着の程度に対する有利な効果を有することが分かった。
【0066】
表4:製剤中の肺炎球菌結合体(血清型6A)の吸着に対する、Ps対CRM197の比の効果
【0067】
【表4】
【0068】
多糖対タンパク質の比の効果が、結合体の吸着に対して観察された。Ps対タンパク質の比、>1.5を有した6A結合体は、貧弱な吸着を示した。PCV-10製剤中に使用される血清型のほとんどは、血清型6Aを含む、多様な血清型の最適の吸着をもたらす、0.6~1.3の範囲内のPs:Prの比を含有した。6A血清型について達成された吸着データおよびPCV-10製剤の経験に基づいて、16価を製剤化する間に、同様の範囲内の残りの6つの結合体のPs:Prの比は、全ての16の血清型結合体の着実な吸着を、確実になし得ることが、推定できる。
【0069】
表5:様々な容器のためのラシュトンタービン平羽根車の仕様
【0070】
【表5】
【0071】
例6
ELISA手順
抗原含有量および吸着パーセントを、改変サンドイッチELISAを使用して、測定した。
【0072】
従来のサンドイッチELISAが、以下の試験条件/アッセイ条件に関して改変され、それによって、以下の有利な特質を有する。
i.10価ワクチンにおいて、9つのその他の結合された抗原の存在下、結合された多糖を定量する特質、
ii.吸着が80%超である、リン酸アルミニウムゲルから、全ての10の結合体を溶離する特質、
iii.結合体の抗原性を損傷することなく、pH9の場合でさえも、結合体の捕捉が起こる特質。
【0073】
抗原含有量および吸着パーセントを、下に示した手順の通り、ELISAを使用して、測定した。
【0074】
1日目
1.プレートを、捕捉抗体(抗-担体タンパク質抗体)でコーティングし、続いて、35±5℃で0.5~2時間、インキュベートした。
2.プレートを、ELISAプレートウォッシャーを使用して、3~6回洗浄した。
3.プレートを、ブロッキング緩衝液(1X PBS中の3%BSAおよび血清型14および9Vのためのトリス緩衝液)でブロッキングし、続いて、30±5℃で1.5~2.5時間、インキュベートした。
4.プレートを、ELISAプレートウォッシャーを使用して、3回洗浄した。
5.試料を、プレートに加えた。
6.プレートを、5±3℃で一晩、インキュベートした。
【0075】
2日目
1.プレートを、室温に到達させた。
2.一次抗体を、プレートを3回洗浄した後で加え、続いて、30分間、25±2のRTで、インキュベートし、続いて、洗浄した。
3.2次抗体を加え、続いて、30分間、25±2℃で、インキュベートした。
4.基質TMBを加え、続いて、暗闇で15~20分間、RTで、インキュベートした。
5.停止液を、加えた。
6.プレートを、450nmで測定した。
【0076】
担体タンパク質のエピトープを害することのない、試料の溶解のための手続き
好適な量の0.5M~2MのNaOHを、ワクチン試料2mlに加えた。溶液が透明になるまで、前記試料を、穏やかにボルテックスさせた。溶液が透明になるまで、溶液のpHを、9~12に調整した。溶液のpHを、0.5Mから2Mのクエン酸を使用して、6~7.4に戻した。前記溶液を、5分間、3000から6000xgで遠心分離にかけ(溶解された試料)、上澄みを、試験のために収集した。
【0077】
表6
【0078】
【表6】
【0079】
例7
肺炎球菌結合型ワクチン-10価(PCV10)
表7-PCV10組成物
【0080】
【表7】
【0081】
例8
製剤1(PCV16)
肺炎球菌結合型ワクチン-16価(PCV16)
表8-PCV16組成物「I」
【0082】
【表8】
【0083】
例9
製剤1(PCV16)
表9-PCV16組成物「II」
【0084】
【表9】
【0085】
例10
I)DMAP存在下でのサイジングされたPnPs(19A、19F、6Aおよび6B)の解重合
反応溶液中のサイジングされたPnPsを、1:1.5の比で、DMAPによって処理し、SEC-HP-RIによって、その解重合プロファイルについて調査した。
【0086】
結果
19A PnPsのみが、DMAPの存在下で解重合を受ける一方で、PnPs(19F、6Aおよび6B)を含有する、その他のホスホジエステルは、未変化のままであることが、観察された。図1(DMAPなし)およびPnPsのDMAPが媒介する解重合を示す図2を参照。
【0087】
19Aのかかる解重合を最小化するために、活性化されたPnPsを、2MのNaClを使用し、10KDaダイアフィルトレーションを受けさせて、CRM197との結合の前に、反応溶液から形成されたDMAPを除去した。
【0088】
II)CDAPの存在下でのサイジングされたPnPs(19A、19F、6Aおよび6B)の解重合および凝集
反応溶液中のサイジングされたPnPsを、活性化の間、1:1.5の比で、CDAPによって処理した。50%DMAPが、PnPsの解重合ならびに或る一定の時間の活性化の後の活性化されたPnPsの間の凝集につながる、副生成物として発生させられる(RP-HPLCによって測定)ことが、観察された。(表2参照)。解重合および凝集を、SEC-HP-RIプロファイルによって調査した。PnPsのCDAPが媒介する、凝集および解重合を示す、図3A(CDAPなし)、3B、3Cおよび3D(19Aについて)ならびに4A(CDAPなし)4B(19Aについて)を参照。
【0089】
表10-多糖-多糖架橋結合および凝集の原因となる因子
「多糖-多糖凝集体」の形成に対する「CDAP活性化の持続時間」の効果
【0090】
【表10】
【0091】
III)ダイアフィルトレーション工程を使用することによる、1:1.5のPnPs:CDAPを有する、サイジングされたPnPs(19Aおよび19F)の解重合および凝集の防止
19Aのかかる解重合および凝集を最小化するために、活性化されたPnPsを、2MのNaClを使用し、10KDaダイアフィルトレーションを受けさせて、CRM197との結合の前に、反応溶液から、形成されたDMAPを除去した。図3E(10KDa DFなしの結合体)、および10KDaダイアフィルトレーションされた、活性化されたPnPsおよびCRM197を使用し、結合体のSEC-HP-RIプロファイルを示す図3F(10KDa DFありの結合体)を参照。しかし、ダイアフィルトレーション工程は、結合体収量に悪影響を与え、全体の収量において30~40%の低下をもたらした。
【0092】
IV)ダイアフィルトレーション工程を使用しない、PnPs:CDAPの比を1:1(19A)および1:0.8(19F)まで減少させることによる、サイジングされたPnPs(19Aおよび19F)の解重合および凝集の防止
反応溶液中のサイジングされたPnPsを、19Aおよび19Fのそれぞれについて1:1および1:0.8の比で、CDAPで処理し、SEC-HP-RIによって、その解重合および凝集プロファイルについて調査した。
【0093】
結果
改変されたPs:CDAPの比(19Aについて1:1および19Fについて1:0.8)が、19Aと19Fの両方のPnPsについて、解重合および凝集を防止することが分かったことが、観察された。図3-4(19AについてのGおよびH)および図4-2(19FについてのCおよびD)を参照。改変された比を使用する、さらなる利点は、10KDaダイアフィルトレーション工程を行わず、したがって、確実に、全体の収量における減少を最小にすることであった。
【0094】
血清型19Aの場合、「CDAP活性化の持続時間」が10分を超えたとき、活性化された多糖の活性化された多糖への架橋結合をもたらして、「多糖-多糖凝集体」の形成に最終的につながったことが、観察された。
【0095】
さらに、血清型19Fの場合、「CDAP活性化の持続時間」が20分を超えたとき、活性化された多糖の活性化された多糖への架橋結合をもたらして、「多糖-多糖凝集体」の形成に最終的につながった。さらに、結合反応の持続時間は、活性化された多糖の活性化された多糖への架橋結合のために必要な持続時間を超えて、それによって、凝集体の形成をもたらすと分かった。図3および図4を参照。
【0096】
しかし、その他の血清型、たとえば、6A PnPsおよび6B PnPsについて、かかる架橋結合は、観察されなかった。
【0097】
例11
結合体の調製:PnPs19AおよびPnPs19F
担体タンパク質への多糖の結合を、以下の改変を行って、LeesらのCDAP結合方法(Vaccine26、190~198、1996)を使用して、実行した。
i)19A結合体の調製のために、4分間の活性化時間、22℃で、多糖対CDAPの比1:1を使用すること、および多糖対タンパク質の比1:1を使用すること。
ii)19F結合体の調製のために、9から10分間の活性化時間、22℃で、多糖対CDAPの比1:0.8、および19Fのために多糖対タンパク質の比1:1を使用すること。
【0098】
表10-「伝統的CDAP結合方法」(ロット1)および「改善された結合方法」(ロット2)での19Aおよび19Fについての結合結果の比較
【0099】
【表11】
【0100】
【表12】
【0101】
結果
改変された多糖:CDAPの比、CDAP活性化時間および初期の多糖:タンパク質の比が、活性化の間、サイジングされた多糖の4-ジメチルアミノ-ピリジンが媒介する解重合を最小化することが分かり、その後の多糖-多糖凝集もまた防止して、したがって、遊離多糖含有量について、最終結合体の特徴を改善したことが、観察された。
【0102】
19Aおよび19F結合体を調製するために使用される、改善された結合方法は、各結合体プロファイルにおいて、いかなるホスホモノエステルシグナル(31PプロトンNMR)も示さない結合体をもたらし、それは、改変された結合方法が、結合反応全体を通して、多糖の加水分解を防止するのに有効であると分かったことを示唆した。
【0103】
開示された発明の原理が適用されてよい、多くの可能な態様に鑑みて、例証された態様は、本発明の好ましい例のみであることが認識されるべきであり、本発明の範囲を限定するものとしてとらえるべきではない。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。それ故に、本発明者らは、これらの特許請求の範囲および精神の中にある全てを、我々の発明として請求する。
以下に、本願の出願当初の請求項を実施の態様として付記する。
[1] 各結合体について最適な吸着を示す、安定した多価の肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン製剤の調製のための方法であって、前記方法において、凝集を、
i.組み合わせた吸着では、相対的により低い吸着を示す結合体については、個別または別々での吸着
ii.中性pHから酸性pHへの移行を伴うヒスチジン-コハク酸緩衝系、
iii.0.5から約1.4の多糖対タンパク質の比、および/または
iv.製剤容器中でのラシュトン型タービン羽根車の使用
の少なくとも1つを使用することによって防止する、方法。
[2] 前記吸着が、75~99%の範囲内である、[1]に記載の方法。
[3] [1]に従って調製される、多価の肺炎球菌結合型ワクチン組成物であって、前記組成物が、血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、9F、9N、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、33Fおよび45から選択される多糖を有する、少なくとも2種の多糖タンパク質結合体を含む、組成物。
[4] [3]に従って調製される、多価の肺炎球菌結合型ワクチン組成物であって、前記組成物が、血清型1、5、6A、6B、7F、9V、14、19A、19Fおよび23Fからの多糖を有する、少なくとも10種の多糖タンパク質結合体を含む、組成物。
[5] [3]に従って調製される、多価の肺炎球菌結合型ワクチン組成物であって、前記組成物が、血清型1、2、3、4、5、6A、6B、7F、9V、12F、14、15B、18C、19A、19Fおよび23Fからの多糖を有する、少なくとも16種の多糖タンパク質結合体を含む、組成物。
[6] 担体タンパク質が、CRM197、肺炎球菌表面アドへシンA(PsaA)、ジフテリアトキソイド(DT)、破傷風トキソイド(TT)、破傷風トキソイドのフラグメントC、百日咳トキソイド、インフルエンザ菌(H.influenzae)のタンパク質D、大腸菌(E.coli)LT、大腸菌(E.coli)ST、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)からの外毒素A、外膜複合体c(OMPC)、ポーリン、トランスフェリン結合タンパク質、ニューモリシン、肺炎球菌表面タンパク質A(PspA)、肺炎球菌表面アドへシンA(PsaA)、肺炎球菌PhtD、肺炎球菌表面タンパク質BVH-3およびBVH-11、炭疽菌(Bacillus anthracis)の防御抗原(PA)および炭疽菌(Bacillus anthracis)の無毒化された、浮腫因子(EF)および致死因子(LF)、卵白アルブミン、キ-ホ-ルリンペットヘモシアニン(KLH)、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン(BSA)ならびにツベルクリンの精製タンパク質誘導体(PPD)、特にCRM197、破傷風トキソイド、ジフテリアトキソイドまたはPsaAからなる群から選択される、1種以上である、[1]に記載の組成物。
[7] 前記多価の組成物が、
i.担体タンパク質としてCRM197を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質結合体、担体タンパク質としてTTを有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、または
ii.担体タンパク質としてCRM197を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質結合体、担体タンパク質としてDTを有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、または
iii.担体タンパク質としてCRM197を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質結合体、担体タンパク質として肺炎球菌表面アドへシンA(PsaA)を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、または
iv.担体タンパク質としてCRM197を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質結合体、担体タンパク質としてTTを有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、担体タンパク質としてDTを有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、または
v.担体タンパク質としてCRM197を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質結合体、担体タンパク質としてTTを有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、担体タンパク質として肺炎球菌表面アドへシンA(PsaA)を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、または
vi.担体タンパク質としてCRM197を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質結合体、担体タンパク質としてDTを有する、少なくとも1種の多糖タンパク質、担体タンパク質として肺炎球菌表面アドへシンA(PsaA)を有する、少なくとも1種の多糖タンパク質
を含む、[1]に記載の組成物。
[8] 血清型3が、CRM197に好ましくは結合されており、血清型18Cが、CRM197に好ましくは結合されており、血清型4が、TTまたはDTに結合させることができる、[3]に記載の組成物。
[9] 前記ヒスチジン-コハク酸緩衝液が、1mM~200mM、好ましくは10mM~40mM、より好ましくは20mMの濃度を有する、[1]に記載の方法。
[10] 前記ヒスチジン-コハク酸緩衝液についてのpHの移行が、好ましくは6.8からpH5.6~5.8までになる、[1]に記載の方法。
[11] 前記方法が、以下の工程
i.所定の比、好ましくは0.8対1.4、より好ましくは1:1、および所定のpH、好ましくは5.2~5.9で、多糖分子をタンパク質担体に加えて、複数の別個の多糖-タンパク質結合体を得ること、
ii.所定の濃度を有する、ヒスチジン-コハク酸緩衝液中の第1のアルミニウム塩アジュバント上に、工程(i)において得られた、前記複数の多糖-タンパク質結合体から選択される、多糖-タンパク質結合体の第1の所定のセットを、個別に吸着させ、前記アルミニウム塩アジュバントの量が、最終ワクチン製剤の0.5ml用量当たりAl +++ 20~375μgの範囲であり、多糖-タンパク質結合体の前記セットが、6A、9Vおよび23Fを含むこと、
iii.所定の濃度を有する、ヒスチジン-コハク酸緩衝液中の第2のアルミニウム塩アジュバント上に、工程(i)において得られた、前記複数の多糖-タンパク質結合体から選択される、多糖-タンパク質結合体の第2の所定のセットを、組み合わせた様式で吸着させ、前記アルミニウム塩アジュバントの量が、最終ワクチン製剤の0.5ml用量当たりAl +++ 20~375μgの範囲であり、多糖-タンパク質結合体の前記セットが、1、5、6B、7F、14、19Aおよび19Fを含むこと、
iv.ラシュトンタービン平羽根車を用いて、工程(ii)において得られた、前記第1の吸着されたセットを、工程(iii)において得られた、前記第2の吸着されたセットとブレンドし、任意で、界面活性剤、好ましくはポリソルベート-20、ならびに/または水銀系保存剤、たとえばチオメルサール、2-フェノキシエタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種の保存剤を加えて、安定した多価の肺炎球菌多糖-タンパク質結合型ワクチン製剤を得ること
を含む、[1]に記載の方法。
[12] 特に、シアニル化化学を使用して担体タンパク質に共有結合された反復単位間のホスホジエステル結合を含有する肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)多糖について、サイジングおよび結合反応全体を通じて、多糖-多糖凝集を減少させて、それによって、それぞれの結合体に改善された免疫原性および安定性を提供するための方法であって、前記方法が、
i)約4分間から約10分間、約22℃から約25℃、1:0.8~1:1の比で、130KDa~190KDaの平均サイズを有する多糖をシアニル化剤と反応させて、シアネートで活性化された多糖をもたらすこと、および
ii)3時間から5時間、約9から約9.5のpH、1:1の比で、シアネートで活性化された多糖をタンパク質と接触させ、続いて、グリシンでクエンチし、前記結合方法が、サイジングされた多糖のシアニル化剤副生成物が媒介する解重合を最小化し、その後の多糖-多糖凝集を防止して、最小の遊離多糖含有量を有する結合体をもたらすこと
を含む、方法。
[13] 反復単位間にホスホジエステル結合を含む前記多糖が、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A、19F、6Aまたは6Bの1種に由来する、[12]の方法。
[14] 前記多糖が、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19A多糖であり、シアニル化剤が、1-シアノ-4-ジメチル-アミノ-ピリジニウム-テトラフルオロボレートであり、4分間、22℃、1:1の比で混合され、シアネートで活性化された多糖をもたらす、[13]に記載の方法。
[15] 前記多糖が、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)血清型19F多糖であり、シアニル化剤が、1-シアノ-4-ジメチル-アミノ-ピリジニウム-テトラフルオロボレートであり、8~10分間、22℃、1:0.8の比で混合され、シアネートで活性化された多糖をもたらす、[13]に記載の方法。
[16] 前記結合体が、1.6%未満の遊離多糖含有量を有する、[14]または[15]に記載の方法。
[17] 吸着パーセントが、水酸化ナトリウムおよびクエン酸を使用して、ミョウバン吸着された結合体試料を溶解する工程を、特に含む、サンドイッチELISAによって測定される、[2]の方法。
[18] PsaAが、アジュバントとして使用される、先行する請求項の何れか一項に記載の組成物。
[19] リン酸アルミニウムゲルおよびNaClを含有する賦形剤を有する、1、5または10用量の製剤として投薬されるまで、冷凍乾燥状態で得られる、前記結合型ワクチン製剤を貯蔵する工程を、さらに含む、先行する請求項の何れか一項に記載の組成物。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図4-1】
図4-2】
図5
図6