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  • 特許-半導体装置の製造方法及び製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230410BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20230410BHJP
   B24B 1/04 20060101ALI20230410BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
H01L21/304 621E
H01L21/304 631
B24B9/00 601H
B24B1/04 B
B24B7/04 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018154786
(22)【出願日】2018-08-21
(65)【公開番号】P2020031106
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】391011102
【氏名又は名称】株式会社岡本工作機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】山本 栄一
(72)【発明者】
【氏名】三井 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】坂東 翼
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-177251(JP,A)
【文献】特開2013-102026(JP,A)
【文献】特表2011-524083(JP,A)
【文献】特開2018-058129(JP,A)
【文献】特開2018-126967(JP,A)
【文献】特開昭58-082660(JP,A)
【文献】特開2012-156246(JP,A)
【文献】特開2014-053350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 9/00
B24B 1/04
B24B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスウェーハをそのデバイス面を下にして貼り合わせ樹脂層と前記貼り合わせ樹脂層を介して前記半導体デバイスウェーハに張り合わされる支持基板とを介してチャック機構の上面に取り付けるチャッキング工程と、
前記チャッキング工程の後に、前記チャック機構によって前記半導体デバイスウェーハを水平回転させると共に超音波を印加した縦型スピンドルにより回転ブレードを水平回転させて前記半導体デバイスウェーハの周側面及び前記貼り合わせ樹脂層の上部を前記回転ブレードでトリミングするエッジトリミング工程と、を具備し、
前記縦型スピンドルは、その上部及び下部に設けられた軸受によって軸支されており、
前記回転ブレードは、前記上部に設けられた前記軸受と前記下部に設けられた前記軸受との間において前記縦型スピンドルに支持されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記エッジトリミング工程の後に、カップといしを用いた研削法により前記半導体デバイスウェーハの裏面を加工して薄層化する薄層化工程と、を具備することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記エッジトリミング工程において、前記回転ブレードの外周といし面近傍は、前記半導体デバイスウェーハよりも薄いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
半導体デバイスウェーハをそのデバイス面を下にして貼り合わせ樹脂層と前記貼り合わせ樹脂層を介して前記半導体デバイスウェーハに張り合わされる支持基板とを介して吸着し水平回転させるチャック機構と、
前記チャック機構に吸着されて水平回転している前記半導体デバイスウェーハの周側面及び前記貼り合わせ樹脂層の上部を縦型スピンドルによって水平回転してトリミングする回転ブレードと、
前記縦型スピンドルに超音波を印加する超音波振動装置と、を具備し、
前記縦型スピンドルは、その上部及び下部に設けられた軸受によって軸支されており、
前記回転ブレードは、前記上部に設けられた前記軸受と前記下部に設けられた前記軸受との間において前記縦型スピンドルに支持されていることを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項5】
前記チャック機構の上方には、前記回転ブレードでトリミングされた前記半導体デバイスウェーハの裏面を加工して薄層化するカップといしが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び製造装置に関し、特に、半導体デバイスウェーハの欠け(チッピング)を抑制しつつウェーハエッジのトリミングを行う半導体装置の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造では、半導体デバイスウェーハを、より薄くパッケージングすることが要求されている。具体的には、半導体デバイスウェーハの厚さは50μm以下が要求され、最先端では、厚さ10μmの半導体デバイスウェーハも実現されている。
【0003】
半導体デバイスウェーハの薄層化は、固定砥粒といしを用いた研削技術によって行われる。半導体デバイスウェーハを薄層化する際、そのウェーハエッジにチッピングが生ずると、半導体デバイスチップの歩留まりが低下して問題となる。
【0004】
ウェーハエッジにチッピングが発生する主要因は、薄層化工程において、研削といしが半導体デバイスウェーハのナイフエッジへ衝突することに起因する。そこで従来、半導体デバイスウェーハのチッピングを抑制するために、薄層化のための研削前にウェーハエッジのトリミング(面取り)を行うことが知られていた。
【0005】
例えば、特許文献1には、カップホイール型のダイヤモンド研削といしを用いて半導体基板のエッジ研削加工(面取り加工)を行うことが開示されている。同文献のエッジ研削加工では、水平回転している半導体基板に対して、水平回転するダイヤモンド研削といしを利用している。具体的には、半導体基板の外周縁部の垂直面に対して、ダイヤモンド研削といしの外周縁部の垂直面が重なり合うように、水平回転するダイヤモンド研削といしを上方から下降させて、半導体基板のエッジ面への研削切り込みを行う。
【0006】
また、特許文献2には、水平軸によって垂直回転するダイヤモンド製のエッジ研削といし車を用いた半導体基板のエッジ研削工程が開示されている。同文献のエッジ研削工程では、垂直回転するエッジ研削といし車を下降させて、水平回転する半導体基板の外周縁を所望の厚さに減少させる。
【0007】
また、特許文献3には、Y軸方向(水平方向)に沿って配置されたスピンドルによってダイヤモンドホイールを垂直回転させて、ダイヤモンドホイールの外周面を水平回転する半導体ウェーハの外周部分に当接させて研削する端部研削装置が開示されている。
【0008】
また従来、半導体デバイスウェーハのデバイス面に研削保護層としてBGテープ(Back Grind Tape)を貼り付けることや、半導体デバイスウェーハのデバイス面に樹脂を介してサポートウェーハを形成する方式であるWSS(Wafer Support System)が知られている。
【0009】
従来のトリミング工程は、半導体デバイスウェーハのデバイス面のエッジ部分の一部をダイヤモンドブレードで削除する方法で行われるのが一般的である。そして、半導体デバイスウェーハのデバイス面にBGテープが貼り付けられ、若しくはWSSによるサポートウェーハが形成された後に、半導体デバイスウェーハの裏面を研削により除去し、半導体デバイスウェーハの薄層化が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2009-39808号公報
【文献】特開2011-142201号公報
【文献】特開平9-216152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の如く、半導体装置の分野では、半導体デバイスウェーハの更なる薄層化が求められており、それを実現するために半導体デバイスウェーハのチッピングを防ぐ高精度なトリミング技術が求められている。
しかしながら、上記した従来技術には、半導体デバイスウェーハの欠けを抑制する高精度且つ高効率なエッジトリミング工程を実現するために改善すべき問題点があった。
【0012】
具体的には、上記した従来技術のようにカップホイール型のダイヤモンド研削といしによりエッジをトリミングする方法では、加工速度が遅く生産性に欠けるという問題点があった。また、カップホイール型のダイヤモンド研削といしが摩耗することにより、トリミング底面の垂直性が崩れテーパ形状になるという欠点があった。
【0013】
また、垂直回転するダイヤモンドブレードを水平回転する半導体デバイスウェーハのエッジ部に押し当ててトリミングを行う方法では、ダイヤモンドブレードと半導体デバイスウェーハが線接触であることから、半導体デバイスウェーハへのせん断応力が大きいという欠点がある。
【0014】
そのため、WSSによって半導体デバイスウェーハのデバイス面に樹脂を介してサポートウェーハを形成する方式では、WSSの貼り合わせが完全でないと、ダイヤモンドブレードによるせん断応力によって半導体デバイスウェーハやWSSに新たな欠陥が生ずることがあった。
【0015】
また、半導体デバイスウェーハのデバイス面のエッジ部をダイヤモンドブレードで除去する方法では、デバイス面の外周に段差が形成された状態でBGテープの貼り付けやWSSによるサポートウェーハの形成が行われるので、薄層化工程時に半導体デバイスウェーハの厚さにばらつきが生じ易い。
【0016】
また、上記の半導体デバイスウェーハのデバイス面をトリミングする方法では、加工し難い金属や絶縁膜を介して、その下方にあるシリコン(Si)等の半導体ウェーハを除去しなくてはならないことから、ダイヤモンドブレードの摩耗が大きくなる。
【0017】
また、上記の半導体デバイスウェーハのデバイス面をトリミングする方法では、デバイス面に飛散したゴミや汚染が付着し易いため、精密洗浄が必要になる等、プロセスコストが増大するという問題点がある。
【0018】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、半導体デバイスウェーハのチッピングを抑制することができる高精度且つ効率的なトリミング加工が可能な生産性の高い半導体装置の製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の半導体装置の製造方法は、半導体デバイスウェーハをそのデバイス面を下にして貼り合わせ樹脂層と前記貼り合わせ樹脂層を介して前記半導体デバイスウェーハに張り合わされる支持基板とを介してチャック機構の上面に取り付けるチャッキング工程と、前記チャッキング工程の後に、前記チャック機構によって前記半導体デバイスウェーハを水平回転させると共に超音波を印加した縦型スピンドルにより回転ブレードを水平回転させて前記半導体デバイスウェーハの周側面及び前記貼り合わせ樹脂層の上部を前記回転ブレードでトリミングするエッジトリミング工程と、を具備し、前記縦型スピンドルは、その上部及び下部に設けられた軸受によって軸支されており、前記回転ブレードは、前記上部に設けられた前記軸受と前記下部に設けられた前記軸受との間において前記縦型スピンドルに支持されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の半導体装置の製造装置は、半導体デバイスウェーハをそのデバイス面を下にして貼り合わせ樹脂層と前記貼り合わせ樹脂層を介して前記半導体デバイスウェーハに張り合わされる支持基板とを介して吸着し水平回転させるチャック機構と、前記チャック機構に吸着されて水平回転している前記半導体デバイスウェーハの周側面及び前記貼り合わせ樹脂層の上部を縦型スピンドルによって水平回転してトリミングする回転ブレードと、前記縦型スピンドルに超音波を印加する超音波振動装置と、を具備し、前記縦型スピンドルは、その上部及び下部に設けられた軸受によって軸支されており、前記回転ブレードは、前記上部に設けられた前記軸受と前記下部に設けられた前記軸受との間において前記縦型スピンドルに支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、半導体デバイスウェーハのデバイス面を下にしてチャック機構の上面に取り付けるチャッキング工程を行った後に、チャック機構によって半導体デバイスウェーハを水平回転させると共に縦型スピンドルにより回転ブレードを水平回転させて半導体デバイスウェーハの周側面を回転ブレードでトリミングするエッジトリミング工程を行う。これにより、デバイス面の表面に形成された金属膜や絶縁膜等の各種被膜に影響されることなく半導体デバイスウェーハの周側面をトリミングすることができる。
【0022】
特に、本発明のエッジトリミング工程では、超音波を印加した縦型スピンドルにより回転ブレードを水平回転させることを特徴とする。これにより、本発明のエッジトリミング工程によれば、従来技術のカップホイール型のダイヤモンド研削といし等によるトリミングに比べて、高速度且つ高精度なトリミングが可能であり、回転ブレードの摩耗が少なく、トリミングされた周側面近傍の崩れを抑えることができる。
【0023】
また、半導体デバイスウェーハは、デバイス面を下にしてチャック機構に取り付けられた状態で、水平回転する超音波が印加された回転ブレードでトリミングされるので、デバイス面が汚染されない。これにより、精密洗浄が不要となり半導体装置の低コスト化が実現する。
【0024】
また、本発明の半導体装置の製造方法によれば、エッジトリミング工程の後に、カップといしを用いた研削法により半導体デバイスウェーハの裏面を加工して薄層化する薄層化工程を実行しても良い。これにより、厚さばらつきのない薄層化が可能となり、高平坦に薄層化された半導体デバイスウェーハが得られる。
【0025】
また、チャック機構として、BGテープの貼り付け、またはWSSによる樹脂を介したサポートウェーハの貼り付けによって、デバイス面を保持する構成を利用することができる。そのため、薄層化工程において、半導体デバイスウェーハの厚さばらつきが生じない。また、BGテープやWSSサポートウェーハによってデバイス面が保護されているため、デバイス面の汚染やごみ付着の問題がない。
【0026】
また、本発明の半導体装置の製造方法によれば、エッジトリミング工程において、回転ブレードの外周といし面近傍は、半導体デバイスウェーハよりも薄くても良い。これにより、半導体デバイスウェーハの周側面には回転方向に延在する凹みを形成することができ、半導体デバイスウェーハの裏面の汚染も少なくすることができる。よって、精密な薄層化が可能となる。
【0027】
また、本発明の半導体装置の製造装置によれば、半導体デバイスウェーハをそのデバイス面を下にして吸着し水平回転させるチャック機構と、チャック機構に吸着されて水平回転している前記半導体デバイスウェーハの周側面を縦型スピンドルによって水平回転してトリミングする回転ブレードと、縦型スピンドルに超音波を印加する超音波振動装置と、を具備することを特徴とする。これにより、半導体デバイスウェーハの高精度且つ効率的なトリミング加工が可能となり、チッピングを抑制して生産性を高めることができる。
【0028】
また、本発明の半導体装置の製造装置によれば、チャック機構の上方には、回転ブレードでトリミングされた半導体デバイスウェーハの裏面を加工して薄層化するカップといしが設けられていても良い。これにより、半導体デバイスウェーハの裏面を高精度に平坦化して、更なる薄層化を図ることができる。
【0029】
また、本発明の半導体装置の製造装置によれば、縦型スピンドルは、回転ブレードの上方及び下方において軸支されていても良い。これにより、回転ブレードの振れが抑えられて、回転制度が向上し、半導体デバイスウェーハの周側面に対して極めて正確な位置にトリミングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造装置のエッジトリミング装置を示す正面図である。
図2】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造装置を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す図であり、図3(a)は、チャッキング工程で半導体デバイスウェーハが準備される状態、図3(b)は、エッジトリミング工程でトリミングが行われている状態、図3(c)は、エッジトリミング工程が完了した状態、図3(d)は、薄層化工程で薄層化が行われた状態を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係るトリミング面の近傍を示す図であり、図4(a)は、エッジトリミング工程が完了した状態、図4(b)は、薄層化工程で薄層化が行われた状態を示す図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す図であり、図5(a)は、チャッキング工程で半導体デバイスウェーハが準備される状態、図5(b)は、エッジトリミング工程でトリミングが行われている状態、図5(c)は、エッジトリミング工程が完了した状態、図5(d)は、薄層化工程で薄層化が行われた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法及び製造装置を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造装置を示す略図であり、エッジトリミング装置10の概略構成を示す正面図である。図1を参照して、エッジトリミング装置10は、半導体デバイスウェーハ30の周側面33をトリミングする装置である。
【0032】
エッジトリミング装置10は、半導体デバイスウェーハ30を支持して水平回転させる真空チャック11と、半導体デバイスウェーハ30の周側面33を研削する回転ブレード17と、回転ブレード17を支持する縦型スピンドル15と、縦型スピンドル15に超音波を印加する超音波発振装置16と、を有する。
【0033】
真空チャック11は、半導体デバイスウェーハ30をチャッキングするチャック機構を構成する。真空チャック11は、その回転軸が略垂直になるように水平回転自在に設けられている。真空チャック11の上面には、支持基板13等によって形成される保持層を介して半導体デバイスウェーハ30が取り付けられ、半導体デバイスウェーハ30は、真空チャック11等のチャック機構と共に水平回転する。
【0034】
回転ブレード17は、例えば、ダイヤモンドといしをビトリファイドボンドで固定したダイヤモンドといしブレードである。回転ブレード17は、中心部が縦型スピンドル15によって支持されて水平回転し、外周部が半導体デバイスウェーハ30の周側面33に当接可能な位置に設けられている。
【0035】
縦型スピンドル15は、回転ブレード17を支える回転軸である。縦型スピンドル15は、回転軸が垂直方向に延在し、水平回転可能に設けられている。縦型スピンドル15は、図示しない駆動装置によって回転駆動され、それにより、回転ブレード17が水平回転する。
【0036】
縦型スピンドル15及び回転ブレード17は、半導体デバイスウェーハ30に向かって水平方向に移動自在に設けられている。これにより、真空チャック11に保持され水平回転する半導体デバイスウェーハ30に対して、水平回転する回転ブレード17を接近させ、回転ブレード17の外周といし面を半導体デバイスウェーハ30の周側面33に押し付けることができる。そして、回転ブレード17の外周といし面で半導体デバイスウェーハ30の周側面33を高精度に研削して所望の深さでトリミング面35を形成することができる。
【0037】
なお、上記のように水平回転する半導体デバイスウェーハ30の周側面33に水平回転する回転ブレード17の外周といし面を押し付けてトリミングを行うために、半導体デバイスウェーハ30を保持する真空チャック11が水平方向に移動可能であっても良い。
【0038】
また、回転ブレード17または真空チャック11は、上下方向に移動自在であっても良い。これにより、半導体デバイスウェーハ30に対する回転ブレード17の上下方向の位置を変えてトリミングを繰り返し実行することにより、半導体デバイスウェーハ30の周側面33に対して上下方向の所望の範囲についてトリミング面35を形成することができる。
【0039】
また、縦型スピンドル15は、回転ブレード17の上方及び下方において軸受18によって軸支されている。このように縦型スピンドル15が上下の2箇所で軸支されていることにより、回転ブレード17の回転振れが抑えられ、回転制度が向上し、精度の良い精密なトリミング加工が可能となる。
【0040】
超音波発振装置16は、縦型スピンドル15に超音波を印加する装置である。超音波発振装置16によって縦型スピンドル15に超音波が印加されることにより、回転ブレード17に超音波が印加され、回転ブレード17が回転半径方向に超音波振動する。これにより、半導体デバイスウェーハ30の周側面33を高速度且つ高精度にトリミングすることが可能となる。また、回転ブレード17に超音波が印加されることにより、回転ブレード17の摩耗が少なくなり、半導体デバイスウェーハ30のトリミングされた周側面33近傍の崩れを抑えることができる。
【0041】
図2は、半導体装置の製造装置を示す平面図であり、エッジトリミング装置10が組み込まれた全自動研削装置1の概略構成を示している。図2を参照して、全自動研削装置1は、半導体デバイスウェーハ30(図1参照)のチャッキング工程からエッジトリミング工程、薄層化工程、洗浄工程までの一連の工程を自動で行う装置である。
【0042】
全自動研削装置1は、半導体デバイスウェーハ30を搬送する搬送ロボット21と、各工程を実行するスタンバイテーブル22、超音波トリミングテーブル23、粗研削テーブル25、仕上げ研削テーブル27及び洗浄ユニット29と、を有する。
【0043】
そして、全自動研削装置1は、半導体デバイスウェーハ30をスタンバイテーブル22、超音波トリミングテーブル23、粗研削テーブル25及び仕上げ研削テーブル27に90度インデックスする90度割り出しテーブル20を有する。
【0044】
スタンバイテーブル22は、半導体デバイスウェーハ30のチャッキング工程を実行するテーブルである。加工対象である半導体デバイスウェーハ30は、先ず、搬送ロボット21によってスタンバイテーブル22に搬送される。そして、スタンバイテーブル22にて、半導体デバイスウェーハ30のチャッキング工程が実行される。
【0045】
超音波トリミングテーブル23は、半導体デバイスウェーハ30のエッジトリミング工程を実行するテーブルである。スタンバイテーブル22におけるチャッキング工程の後、90度割り出しテーブル20にて90度時計方向にインデックスし、超音波トリミングテーブル23にて半導体デバイスウェーハ30のエッジトリミング工程が実行される。具体的には、超音波が印加された状態で水平回転するエッジトリミング装置10の回転ブレード17によって、半導体デバイスウェーハ30の周側面33の一部が研削される。
【0046】
また、全自動研削装置1は、半導体デバイスウェーハ30のトリミング形状を正確に検出して評価するトリミング形状評価ユニット24を備えている。これにより、高精度なトリミングが実現する。
【0047】
粗研削テーブル25及び仕上げ研削テーブル27は、半導体デバイスウェーハ30の薄層化工程を実行するテーブルである。粗研削テーブル25の上方には、半導体デバイスウェーハ30の上面を粗研削する粗研削ヘッド26が、仕上げ研削テーブル27の上面には、半導体デバイスウェーハ30の上面を仕上げ研削する仕上げ研削ヘッド28が設けられている。
【0048】
超音波トリミングテーブル23にてエッジトリミング工程が完了した半導体デバイスウェーハ30は、90度割り出しテーブル20によって更に90度時計方向にインデックスされる。そして、粗研削テーブル25にて、粗研削ヘッド26による薄層化の粗研削が行われる。
【0049】
そして、粗研削テーブル25にて粗研削された半導体デバイスウェーハ30は、90度割り出しテーブル20で仕上げ研削テーブル27にインデックスされ、仕上げ研削ヘッド28によって最終厚さに仕上げ研削される。
【0050】
仕上げ研削テーブル27で薄層化工程が終了した半導体デバイスウェーハ30は、90度割り出しテーブル20にてスタンバイテーブル22に戻された後、搬送ロボット21によって洗浄ユニット29に送られる。そして、洗浄ユニット29では、半導体デバイスウェーハ30を洗浄する洗浄工程が行われる。
【0051】
なお、図2に示した全自動研削装置1は、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造装置の一例に過ぎない。例えば、エッジトリミング装置10のみを全自動研削装置1から分離し、単独の全自動トリミング装置としても良い。
【0052】
また、図2において洗浄ユニット29が配置されている部分にエッジトリミング装置10を設けて、粗研削テーブル25や仕上げ研削テーブル27の研削ステージと分離されたエッジトリミング装置10付き自動研削装置であっても良い。
【0053】
次に、図3から図5を参照して、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法について詳細に説明する。
図3は、半導体装置の製造方法を示す図であり、図3(a)は、チャッキング工程で半導体デバイスウェーハ30が準備される状態、図3(b)は、エッジトリミング工程でトリミングが行われている状態、図3(c)は、エッジトリミング工程が完了した状態、図3(d)は、薄層化工程で薄層化が行われた状態を示す図である。
【0054】
図3(a)を参照して、半導体デバイスウェーハ30は、半導体デバイス層31が形成されたシリコンウェーハであり、その大きさは、例えば、直径300mm、厚さ775μmである。
【0055】
チャッキング工程では、半導体デバイスウェーハ30のデバイス面32には、WSSの方式により、シリコーン系樹脂から形成される貼り合わせ樹脂層12を介してシリコーン系のサポートウェーハである支持基板13が張り合わされる。貼り合わせ樹脂層12の厚みは、例えば、40μmであり、支持基板13の厚みは、例えば、750μmである。
【0056】
次いで、図3(b)に示すように、半導体デバイスウェーハ30は、デバイス面32を下にして、貼り合わせ樹脂層12及び支持基板13を介して真空チャック11に保持される。
【0057】
そして、超音波トリミングテーブル23(図2参照)において、エッジトリミング工程が実行される。エッジトリミング工程では、半導体デバイスウェーハ30は真空チャック11によって水平回転し、同じく水平回転する超音波が印加された回転ブレード17の外周といし面が半導体デバイスウェーハ30の周側面33に押し当てられる。これにより、半導体デバイスウェーハ30の周側面33がトリミングされる。
【0058】
なお、回転ブレード17によって、周側面33と共に貼り合わせ樹脂層12の上部が研削されても良い。これにより、半導体デバイスウェーハ30のチッピングを抑制する効果を高めることができる。
【0059】
ここで、回転ブレード17は、例えば、直径100mm、外周といし面厚さ0.15mmである。回転ブレード17のダイヤモンドといしの粒度は、♯240から♯8000が好ましく、更に好ましくは、♯1000から♯3000、最も好ましくは、♯2000である。
【0060】
また、エッジトリミング工程における回転ブレード17の回転数は、8000から12000min-1が好ましく、半導体デバイスウェーハ30の回転数は、250から350min-1が好ましく、縦型スピンドル15の水平移動速度は、0.3から0.7mm/minが好ましい。
【0061】
例えば、回転ブレード17の回転数を10000min-1、半導体デバイスウェーハ30の回転数を300min-1、縦型スピンドル15の水平移動速度を0.5mm/minとして3分間トリミングを行い、周側面33から1.5mmの深さまでトリミング面35の加工を行う。前記条件のトリミングにより表面粗さ15から20nm(Ra)の半導体デバイスウェーハ30が得られる。
【0062】
前述のとおり、エッジトリミング工程では、超音波を印加した縦型スピンドル15により回転ブレード17を水平回転させるので、従来技術のカップホイール型のダイヤモンド研削といし等によるトリミングに比べて、高速度且つ高精度なトリミングが行われる。また、水平回転する回転ブレード17に超音波が印加されることにより、回転ブレード17の摩耗が少なくなり、トリミングされた周側面33近傍の崩れを抑えることができる。
【0063】
ここで、超音波発振装置16から縦型スピンドル15に印加される超音波の周波数は、16から1000kHzが好ましく、更に好ましくは、20から100kHz、最も好ましくは、40kHzである。これにより、半導体デバイスウェーハ30に好適なトリミング性能が得られる。
【0064】
また、半導体デバイスウェーハ30は、デバイス面32を下にして真空チャック11に保持された状態で、水平回転する超音波が印加された回転ブレード17でトリミングされるので、デバイス面32が汚染されない。これにより、精密洗浄が不要となり半導体装置の低コスト化が実現する。また、デバイス面32の表面に形成された金属膜や絶縁膜等の各種被膜に影響されることなく半導体デバイスウェーハ30の周側面33をトリミングすることができる。
【0065】
エッジトリミング工程により、半導体デバイスウェーハ30の周側面33には、トリミング面35が形成される。具体的には、回転ブレード17の外周といし面近傍は、半導体デバイスウェーハ30よりも薄いので、図3(c)に示すように、トリミング面35は、周側面33から凹み、半導体デバイスウェーハ30の回転方向に延在する円周状の凹部を形成する。
【0066】
エッジトリミング工程により半導体デバイスウェーハ30の周側面33にトリミング面35が凹状に形成されることにより、半導体デバイスウェーハ30の裏面34の汚染も少なくすることができる。よって、次の薄層化工程において、精密な薄層化加工が可能となる。
【0067】
エッジトリミング工程が実行された後、粗研削テーブル25(図2参照)及び仕上げ研削テーブル27(図2参照)において、順次、薄層化工程が実行される。薄層化工程では、図示しないカップといしによって、半導体デバイスウェーハ30は、裏面34が研削されて、図3(d)に示すように、薄層化される。
【0068】
薄層化工程で用いられるカップといしは、例えば、粒度♯240から♯8000のダイヤモンド砥粒を使用したカップホイール型といしである。粗研削では、カップといしの砥粒を大きく、回転数を低くし、仕上げ研削では、カップといしの砥粒を小さく、回転数を高くしても良い。
【0069】
エッジトリミング工程の後に薄層化工程を実行することにより、厚さばらつきのない薄層化が可能となり、高平坦に薄層化された半導体デバイスウェーハ30が得られる。また、チャック機構として、貼り合わせ樹脂層12を介した支持基板13の貼り付けによって、デバイス面32を保持する構成を利用することができるので、薄層化工程において、半導体デバイスウェーハ30の厚さばらつきが生じない。また、支持基板13によってデバイス面32が保護されているため、デバイス面32の汚染やごみ付着の問題がない。
【0070】
図4は、半導体デバイスウェーハ30のトリミング面35の近傍を示す図であり、図4(a)は、エッジトリミング工程が完了した状態、図4(b)は、薄層化工程で薄層化が行われた状態を示す図である。
【0071】
図4(a)及び図4(b)に示すように、周側面33に形成される凹状のトリミング面35は、上部の径が下部の径よりも小さい略円錐台状に形成されても良い。具体的には、デバイス面32と傾斜したトリミング面35とのなす角は、70から90度、好ましくは約80度である。このように上部の径が小さくなるよう傾斜したトリミング面35が形成されることにより、半導体デバイスウェーハ30のチッピングを更に減らすことができる。
【0072】
図5は、半導体装置の製造方法の他の例を示す図であり、図5(a)は、チャッキング工程で半導体デバイスウェーハ30が準備される状態、図5(b)は、エッジトリミング工程でトリミングが行われている状態、図5(c)は、エッジトリミング工程が完了した状態、図5(d)は、薄層化工程で薄層化が行われた状態を示す図である。なお、既に説明した実施形態と同一若しくは同様の作用、効果を奏する構成要素については、同一の符号を付している。
【0073】
図5(a)を参照して、チャッキング工程では、半導体デバイスウェーハ30のデバイス面32は、BGテープである保護テープ14が貼り付けられる。保護テープ14としては、例えば、リンテック株式会社製のUVテープE8180、厚さ180μmが使用される。
【0074】
そして、図5(b)に示すように、半導体デバイスウェーハ30は、デバイス面32を下にして、保護テープ14を介して真空チャック11に保持される。
次いで、トリミング工程では、半導体デバイスウェーハ30は、超音波が印加され水平回転する回転ブレード17によってトリミングされ、周側面33には、図5(c)に示すように、トリミング面35による凹部が形成される。
【0075】
エッジトリミング工程が実行された後には、裏面34を研削する薄層化工程が実行され、図5(d)に示すように、高平坦に薄層化された厚さばらつきの少ない半導体デバイスウェーハ30が得られる。
【0076】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 全自動研削装置
10 エッジトリミング装置
11 真空チャック
12 貼り合わせ樹脂層
13 支持基板
14 保護テープ
15 縦型スピンドル
16 超音波発振装置
17 回転ブレード
18 軸受
30 半導体デバイスウェーハ
31 半導体デバイス層
32 デバイス面
33 周側面
34 裏面
35 トリミング面

図1
図2
図3
図4
図5