(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】排ガス処理方法及び排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/50 20060101AFI20230410BHJP
B01D 53/68 20060101ALI20230410BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20230410BHJP
B01D 46/04 20060101ALI20230410BHJP
B01D 46/42 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
B01D53/50 100
B01D53/68 100
F27D17/00 105A
F27D17/00 104A
B01D46/04 104
B01D46/42
(21)【出願番号】P 2018170347
(22)【出願日】2018-09-12
【審査請求日】2021-06-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 充彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 和基
(72)【発明者】
【氏名】和田 從義
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-043315(JP,A)
【文献】特開2000-107562(JP,A)
【文献】特開2011-206658(JP,A)
【文献】特開2008-086844(JP,A)
【文献】実開平02-008518(JP,U)
【文献】特開平03-229607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34-83
B01D 46/02-08、42
F27D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ布に付着した飛灰を払い落とす飛灰払落し機構を備えたバグフィルタに
、少なくとも前記バグフィルタの出口側の酸性ガス濃度に基づいて算出した必要量の中和剤を供給し、前記ろ布で集塵された飛灰の一部を前記バグフィルタに供給する排ガス処理方法であって、
前記バグフィルタの排ガス入口側と排ガス出口側の圧力差が所定の閾値に達すると前記飛灰払落し機構が作動するように構成され、前記飛灰払落し機構の作動周期を指標にして、前記飛灰の供給量を所定量増加または減少させる前の前記飛灰払落し機構の作動周期と増加または減少させた後の作動周期とを比較することで、前記作動周期が長くなるように前記飛灰の供給量を調整する排ガス処理方法。
【請求項2】
前記飛灰の供給量を順次増加させた際の、前記飛灰払落し機構の作動周期が長くなる上昇局面から短くなる下降局面に転じる境界の作動周期を基準に目標飛灰供給量が決定される請求項1記載の排ガス処理方法。
【請求項3】
前記バグフィルタの排ガス出口側の排ガス中の酸性ガス濃度に基づいて中和剤の供給量を調整する請求項1または2記載の排ガス処理方法。
【請求項4】
ろ布に付着した飛灰を払い落とす飛灰払落し機構を備えたバグフィルタに
、少なくとも前記バグフィルタの出口側の酸性ガス濃度に基づいて算出した必要量の中和剤を供給し、前記ろ布で集塵された飛灰の一部を前記バグフィルタに供給する排ガス処理方法であって、
前記バグフィルタの排ガス入口側と排ガス出口側の圧力差が所定の閾値に達すると前記飛灰払落し機構が作動するように構成され、排ガス入口側と排ガス出口側の圧力差の変化率を指標にして、前記飛灰の供給量を所定量増加または減少させる前の前記排ガス入口側と排ガス出口側の圧力差の変化率と増加または減少させた後の圧力差の変化率とを比較することで、前記圧力差の変化率が小さくなるように前記飛灰の供給量を調整する排ガス処理方法。
【請求項5】
ろ布に付着した飛灰を払い落とす飛灰払落し機構を備えたバグフィルタと、
前記バグフィルタに
、少なくとも前記バグフィルタの出口側の酸性ガス濃度に基づいて算出した必要量の中和剤を供給する中和剤供給機構と、
前記ろ布から払い落とされた飛灰を捕集する飛灰捕集部と、
前記飛灰捕集部で捕集された飛灰の一部を前記バグフィルタに供給する供給機構と、
を備えている排ガス処理装置であって、
前記バグフィルタの排ガス入口側と排ガス出口側の圧力差が所定の閾値に達すると前記飛灰払落し機構を作動制御する払落し制御部と、
前記飛灰払落し機構の作動周期を指標にして、前記供給機構からの飛灰の供給量を所定量増加または減少させる前の前記飛灰払落し機構の作動周期と増加または減少させた後の作動周期とを比較することで、前記作動周期が長くなるように前記供給機構による飛灰の供給量を調整する供給量制御部と、
をさらに備えている排ガス処理装置。
【請求項6】
前記供給量制御部は、前記供給機構からの飛灰の供給量を順次増加させた際の、前記飛灰払落し機構の作動臭気が長くなる上昇局面から短くなる下降局面に転じる境界の作動周期を基準に目標飛灰供給量を決定するように構成されている請求項5記載の排ガス処理装置。
【請求項7】
前記バグフィルタの排ガス出口側の排ガス中の酸性ガス濃度に基づいて前記中和剤供給機構を制御して中和剤の供給量を調整する中和剤供給制御部を備えている請求項5または6記載の排ガス処理装置。
【請求項8】
ろ布に付着した飛灰を払い落とす飛灰払落し機構を備えたバグフィルタと、
前記バグフィルタに
、少なくとも前記バグフィルタの出口側の酸性ガス濃度に基づいて算出した必要量の中和剤を供給する中和剤供給機構と、
前記ろ布から払い落とされた飛灰を捕集する飛灰捕集部と、
前記飛灰捕集部で捕集された飛灰の一部を前記バグフィルタに供給する供給機構と、
を備えている排ガス処理装置であって、
前記バグフィルタの排ガス入口側と排ガス出口側の圧力差が所定の閾値に達すると前記飛灰払落し機構を作動制御する払落し制御部と、
前記排ガス入口側と排ガス出口側の圧力差の変化率を指標にして、前記供給機構からの飛灰の供給量を所定量増加または減少させる前の前記排ガス入口側と排ガス出口側の圧力差の変化率と増加または減少させた後の圧力差の変化率とを比較することで、前記圧力差の変化率が小さくなるように前記供給機構による飛灰の供給量を調整する供給量制御部と、
をさらに備えている排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ布に付着した飛灰を払い落とす飛灰払落し機構を備えたバグフィルタの排ガス導入部で排ガスに中和剤を供給し、前記ろ布で集塵された飛灰の一部を前記バグフィルタの上流部に供給する排ガス処理方法及び排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、廃棄物処理施設から排出される排ガス中に含まれる塩化水素、硫黄酸化物等の酸性ガスを除去して、大気中に放出される排ガスを無害化する排ガス処理方法として、バグフィルタで捕集された飛灰をバグフィルタの底部より取り出し、このバグフィルタ飛灰の一部を、バグフィルタから排出される脱塩・脱硫処理済み排ガスの一部をキャリアガスとして用いて、バグフィルタ入口側の排ガス煙道に戻す飛灰循環型排ガス処理方法が提案されている。
【0003】
具体的に、乾式排ガス処理方法は、排ガスに含まれる酸性ガスの除去用薬剤としてナトリウム系薬剤を用い、バグフィルタ入口側の排ガス煙道にナトリウム系薬剤を投入し、排ガス中の酸性ガスとナトリウム系薬剤との反応により塩を形成させ、該塩を含む飛灰をバグフィルタにより捕集して除去し、バグフィルタで捕集された飛灰(排ガス中の煤塵+ナトリウム系薬剤と酸性ガスの反応生成物+未反応ナトリウム系薬剤)をバグフィルタの底部より取り出し、このバグフィルタ飛灰の一部を、バグフィルタから排出される脱塩・脱硫処理済み排ガスの一部をキャリアガスとして用いて、バグフィルタ入口側の排ガス煙道に戻すように構成されている。
【0004】
そして、バグフィルタ入口側の排ガス煙道に戻すバグフィルタ飛灰の循環量が、飛灰循環倍率(=(循環飛灰切り出し量+飛灰系外排出量)/飛灰系外排出量)で表わして、3倍~14倍であると、煙道内に導入した薬剤の酸性ガスとの未反応分をより効率的に利用することができて、バグフィルタ出口の塩化水素および硫黄酸化物等の酸性ガスの濃度を、安定的に8ppm以下の低レベルにまで下げることができ、酸性ガスの除去効率を向上することができると記載されている。
【0005】
また、非特許文献1には、以下のように記載されている。都市ごみ焼却施設で採用されている排ガス中のHClやSOx濃度低減策として、重曹や消石灰等のアルカリ薬剤をバグフィルタの上流に供給する乾式処理法がある。乾式処理法は装置が簡便で建設費が安くなるという利点を有する。一方で、供給されたアルカリ薬剤は、その全量が反応することなく多量の未反応分を有した状態で飛灰として系外へ排出される。そのため、排ガス中のHClやSOx量に対し、過剰量の薬剤を供給する必要があり、薬剤費や飛灰処分費の低減への支障となっている。
【0006】
本研究では、アルカリ薬剤に消石灰を用いた集じん灰再循環システムでの薬剤使用量の低減効果を検討するため、桐生市清掃センター(定格ごみ焼却量150t/day×3炉)のバグフィルタに集じん灰再循環装置を設置し、煙突入口でのHClとSOx濃度10ppm、20ppm、50ppm保証を想定した運転を行った。さらに、10ppm保証に対する連続運転を長期にわたって行い、性能安定性も併せて評価した。
【0007】
集じん灰循環率で結果を比較すると、いずれの保証条件においても集じん灰循環率を増加させることで消石灰削減率が向上した。これは循環率が増加するにしたがって、集じん灰に含まれる未反応消石灰が系内により長く滞留し、反応に寄与する割合が増加したためと考えられる。例えば、10ppm保証条件において、4倍循環では削減率が21%であったが、6倍循環では27%に向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【文献】C4-2 第27回廃棄物資源循環学会研究発表会 講演原稿2016「集じん灰再循環システムによる消石灰使用量の削減」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した何れの文献にも、飛灰の循環倍率を上げることにより、一律に薬剤削減効果が高くなる旨の記載が認められる。しかし、本願発明者らが確認したところ、飛灰の循環倍率を上げることにより、逆に薬剤削減効果が低下する場合があることが判明した。
【0011】
飛灰の循環倍率を上げることによりろ布の圧損が大きくなるような場合に、循環飛灰による中和反応の反応効率が低下するためと考えられる。
【0012】
本発明の目的は、上述した従来の問題点に鑑み、薬剤削減効果を効果的に高めるように飛灰の供給量を調整可能な排ガス処理方法及び排ガス処理装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、本発明による排ガス処理方法の第一の特徴構成は、ろ布に付着した飛灰を払い落とす飛灰払落し機構を備えたバグフィルタに、少なくとも前記バグフィルタの出口側の酸性ガス濃度に基づいて算出した必要量の中和剤を供給し、前記ろ布で集塵された飛灰の一部を前記バグフィルタに供給する排ガス処理方法であって、前記バグフィルタの排ガス入口側と排ガス出口側の圧力差が所定の閾値に達すると前記飛灰払落し機構が作動するように構成され、前記飛灰払落し機構の作動周期を指標にして、前記飛灰の供給量を所定量増加または減少させる前の前記飛灰払落し機構の作動周期と増加または減少させた後の作動周期とを比較することで、前記作動周期が長くなるように前記飛灰の供給量を調整する点にある。
【0014】
バグフィルタの排ガス入口側と排ガス出口側の圧力差が所定の閾値に達すると飛灰払落し機構が作動して、ろ布に付着した飛灰がろ布から払い落とされてバグフィルタの集塵機能が回復する。飛灰の供給量が少な過ぎる場合には相対的に中和反応に寄与する未反応の中和剤が少なくなり反応効率の上昇が見込めない。逆に飛灰の供給量が多過ぎる場合には短時間でろ布の表面に飛灰が大量に付着して排ガス入口側と排ガス出口側の圧力差が大きくなり、短い周期で払落し機構が作動してろ布から飛灰が払い落とされるため、新たに供給された中和剤及び/または飛灰に含まれる未反応の中和剤の反応時間が短くなり、やはり反応効率の上昇が見込めない。しかし、払落し機構の作動周期を指標にして飛灰の供給量を調整すれば、新たに供給された中和剤及び/または飛灰に含まれる未反応の中和剤の反応時間を確保することができるようになり、結果として反応効率を上昇させることができるようになる。
【0015】
排ガスに供給される中和剤の粒径分布と比較して、循環供給される飛灰は排ガスに含まれる灰分や中和反応により生成された塩などの影響により粒径分布が大径側にシフトする。飛灰の供給量が少ない場合には、主に粒径の小さな中和剤がろ布表面に付着するため、比較的早期にろ布の圧力損失が大きくなり飛灰払落し機構の作動周期が短くなる傾向となる。飛灰の供給量が次第に増えると、ろ布に付着した大径の飛灰同士の間隙で排ガスの流路が確保されるため、ろ布の圧力損失が大きくなるまでの時間が確保でき、飛灰払落し機構の作動周期が長くなる上昇局面となる。その後さらに飛灰の供給量が増えると、ろ布に付着した飛灰層が短時間で厚くなりろ布の圧力損失が大きくなるため、逆に飛灰払落し機構の作動周期が短くなる下降局面に到る。そこで、飛灰払落し機構の作動周期が長くなるように飛灰の供給量を調整すれば、新たに投入された中和剤及び/または供給された飛灰に含まれる未反応の中和剤に対して十分な反応時間が確保されるようになり、結果として反応効率を上昇させることができ、中和剤の消費量を抑制することができるようになる。
【0016】
飛灰の供給量を増加させた場合に、作動周期が長くなると供給される飛灰により圧力損失が下がり、効果的に中和反応が進んでいる状況と判断して飛灰の供給量を増加させ、作動周期が短くなると供給される飛灰がろ布に厚密に堆積し圧力損失が上っている状況と判断して飛灰の供給量を減少させることで、効率的な中和反応を促進することができる。
【0017】
飛灰の供給量を減少させた場合に、作動周期が長くなると供給される飛灰による厚密が緩和され圧力損失が下がっている状況と判断して飛灰の供給量を減少させ、作動周期が短くなると供給される飛灰が不足しているため、ろ布の圧力損失が大きくなっている状態と判断して飛灰の供給量を増加させることで、効率的な中和反応を促進することができる。
【0018】
同第二の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記飛灰の供給量を順次増加させた際の、前記飛灰払落し機構の作動周期が長くなる上昇局面から短くなる下降局面に転じる境界の作動周期を基準に目標飛灰供給量が決定される点にある。
【0019】
境界の作動周期を基準に目標飛灰供給量を決定すれば、圧力損失が下がり、新たに投入された中和剤及び/または供給された飛灰に含まれる中和剤に対して十分な反応時間が確保されるようになり、反応効率のよい領域で飛灰の供給量に調整することができるようになる。
【0020】
同第三の特徴構成は、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記バグフィルタの排ガス出口側の排ガス中の酸性ガス濃度に基づいて中和剤の供給量を調整する点にある。
【0021】
バグフィルタの排ガス出口側の排ガス中の酸性ガス濃度は、新たに投入された中和剤及び供給された飛灰に含まれる未反応の中和剤の双方で中和反応された結果が反映されている。そのような酸性ガス濃度に基づいて中和剤の供給量が調整されるので、飛灰に含まれる未反応の中和剤で中和反応される酸性ガス量が増えると、それだけ新たな中和剤の投入量を抑制することができる。
【0022】
同第四の特徴構成は、ろ布に付着した飛灰を払い落とす飛灰払落し機構を備えたバグフィルタに、少なくとも前記バグフィルタの出口側の酸性ガス濃度に基づいて算出した必要量の中和剤を供給し、前記ろ布で集塵された飛灰の一部を前記バグフィルタに供給する排ガス処理方法であって、前記バグフィルタの排ガス入口側と排ガス出口側の圧力差が所定の閾値に達すると前記飛灰払落し機構が作動するように構成され、排ガス入口側と排ガス出口側の圧力差の変化率を指標にして、前記飛灰の供給量を所定量増加または減少させる前の前記排ガス入口側と排ガス出口側の圧力差の変化率と増加または減少させた後の圧力差の変化率とを比較することで、前記圧力差の変化率が小さくなるように前記飛灰の供給量を調整する点にある。
【0023】
差圧の変化率が大きいほど飛灰払落し機構の作動周期が短く、小さいほど作動周期が長くなるため、差圧の変化率が小さくなるように飛灰の循環供給量を調整すればよい。
【0024】
圧力差の変化率が小さくなるように飛灰の供給量を調整することにより、飛灰払落し機構の作動周期が長くなり、結果として反応効率を上昇させることができ、中和剤の消費量を抑制することができるようになる。
【0025】
本発明による排ガス処理装置の第一の特徴構成は、ろ布に付着した飛灰を払い落とす飛灰払落し機構を備えたバグフィルタと、前記バグフィルタに、少なくとも前記バグフィルタの出口側の酸性ガス濃度に基づいて算出した必要量の中和剤を供給する中和剤供給機構と、前記ろ布から払い落とされた飛灰を捕集する飛灰捕集部と、前記飛灰捕集部で捕集された飛灰の一部を前記バグフィルタに供給する供給機構と、を備えている排ガス処理装置であって、前記バグフィルタの排ガス入口側と排ガス出口側の圧力差が所定の閾値に達すると前記飛灰払落し機構を作動制御する払落し制御部と、前記飛灰払落し機構の作動周期を指標にして、前記供給機構からの飛灰の供給量を所定量増加または減少させる前の前記飛灰払落し機構の作動周期と増加または減少させた後の作動周期とを比較することで、前記作動周期が長くなるように前記供給機構による飛灰の供給量を調整する供給量制御部と、をさらに備えている点にある。
【0026】
同第二の特徴構成は、上述の第一の特徴構成に加えて、前記供給量制御部は、前記供給機構からの飛灰の供給量を順次増加させた際の、前記飛灰払落し機構の作動周期が長くなる上昇局面から短くなる下降局面に転じる境界の作動周期を基準に目標飛灰供給量を決定するように構成されている点にある。
【0027】
同第三の特徴構成は、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記バグフィルタの排ガス出口側の排ガス中の酸性ガス濃度に基づいて前記中和剤供給機構を制御して中和剤の供給量を調整する中和剤供給制御部を備えている点にある。
【0028】
同第四の特徴構成は、ろ布に付着した飛灰を払い落とす飛灰払落し機構を備えたバグフィルタと、前記バグフィルタに、少なくとも前記バグフィルタの出口側の酸性ガス濃度に基づいて算出した必要量の中和剤を供給する中和剤供給機構と、前記ろ布から払い落とされた飛灰を捕集する飛灰捕集部と、前記飛灰捕集部で捕集された飛灰の一部を前記バグフィルタに供給する供給機構と、を備えている排ガス処理装置であって、前記バグフィルタの排ガス入口側と排ガス出口側の圧力差が所定の閾値に達すると前記飛灰払落し機構を作動制御する払落し制御部と、前記排ガス入口側と排ガス出口側の圧力差の変化率を指標にして、前記供給機構からの飛灰の供給量を所定量増加または減少させる前の前記排ガス入口側と排ガス出口側の圧力差の変化率と増加または減少させた後の圧力差の変化率とを比較することで、前記圧力差の変化率が小さくなるように前記供給機構による飛灰の供給量を調整する供給量制御部と、をさらに備えている点にある。
【発明の効果】
【0029】
以上説明した通り、本発明によれば、薬剤削減効果を効果的に高めるように飛灰の供給量を調整可能な排ガス処理方法及び排ガス処理装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】中和剤の供給制御及び飛灰の循環供給制御を行なう制御部の説明図である。
【
図3】(a)は中和剤(消石灰)の粒度分布及び積算相対粒子量を示す説明図、(b)は(a)で示す中和剤を用いて得られる循環飛灰の粒度分布及び積算相対粒子量を示す説明図である。
【
図4】パルスジェットガスの噴射周期と飛灰循環量の特性図である。
【
図5】飛灰循環供給量制御手順を示すフローチャートである。
【
図6】飛灰循環制御手順を示すフローチャートである。
【
図7】中和剤供給量制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明による排ガス処理装置を、図面に基づいて説明する。
図1には、本発明による排ガス処理装置が組み込まれた廃棄物焼却設備100が示されている。廃棄物焼却設備100は、都市ごみなどの廃棄物を焼却するストーカ式の焼却炉1と、焼却炉1の煙道に順にエコノマイザ2、減温塔3、バグフィルタ4、洗煙塔5などの設備が配されている。焼却炉1で生じた燃焼排ガスは誘引送風機6で煙道に向けて誘引され、これらの設備で処理された後に煙突7から排気される。
【0032】
焼却炉1は、ゴミホッパ11に投入された都市ごみが押込み投入機構12によって炉室13に投入され、炉室13に備えたストーカ機構14によって撹拌搬送されながら、その下部に備えた風箱15から供給され、押込み送風機により供給される一次燃焼空気により焼却処理され、焼却残渣が終端部から灰ピット16に落下し、焼却主灰として回収されるように構成されている。
【0033】
炉室13で生じる未燃焼ガスは、その上方空間に形成される二次燃焼領域17で当該領域に供給される二次燃焼空気により完全燃焼され、高温の排ガスとして煙道に排出される。二次燃焼領域17には廃熱ボイラ18が設けられ、燃焼熱により蒸気が生成され、さらに過熱器19で過熱された蒸気が発電機などに供給される。
【0034】
煙道に排出された高温の排ガスは、エコノマイザ2によってボイラへの給水と熱交換された後に減温塔3で減温され、バグフィルタ4で飛灰が捕集された後にさらに洗煙塔5で洗煙される。
【0035】
本発明による排ガス処理装置は、バグフィルタ4及びその周辺設備である中和剤供給機構20、飛灰の循環供給機構30、排ガス浄化制御部60を備えている。
【0036】
バグフィルタ4は、ケーシング40の内部に複数の筒状のろ布42が上下姿勢に配列され、排ガス導入ダクト4Aから流入した排ガスがろ布42を通過してケーシング40の上方に接続された排ガス排出ダクト4Bから流出するように構成されている。
【0037】
ろ布42の上方空間には、ろ布42の上部開口に向けて飛灰払落し用のパルスジェットガスを噴射するガスノズルを備えた飛灰払落し機構44が設けられ、ろ布42が目詰まりしたときにガスノズルからパルスジェットガスを噴射することによりろ布42に付着した飛灰を下方に落下させるように構成されている。
【0038】
ケーシング40の下方に下窄まり形状の飛灰ホッパ46が設けられ、飛灰払落し機構44によって下方に落下した飛灰がスクリューコンベア機構や掻き寄せ機構などの搬送機構によって一側方に搬送され、二重ダンパ機構を備えた飛灰排出部48から外部に排出されるように構成されている。飛灰ホッパ46、搬送機構、飛灰排出部48が、ろ布42で集塵された飛灰を捕集する飛灰捕集部50となる。なお、ケーシング40内への外気の流入を防止する機構であれば、二重ダンパ機構に替えてロータリーバルブ機構を用いてもよい。
【0039】
排ガス導入ダクト4Aは、減温塔3からバグフィルタ4のケーシング40の下部に向けて下流側が傾斜する傾斜姿勢で取り付けられ、排ガス導入ダクト4Aの上流側の排ガス導入部に中和剤供給機構20が設けられている。
【0040】
中和剤供給機構20は、排ガスに含まれる塩化水素やSOxなどの酸性ガスを乾式処理法により中和するための薬剤(中和剤)を供給する機構であり、薬剤貯留槽21、薬剤貯留槽21に貯留された薬剤を切出すスクリューフィーダ22、スクリューフィーダ22で切り出された薬剤を、薬剤投入ダクトを介して排ガス導入部に投入する送風機23などを備えている。本実施形態では中和剤として消石灰が用いられているが、炭酸ナトリウムや重曹などの他のアルカリ薬剤を用いることも可能である。
【0041】
循環供給機構30は、飛灰循環搬送機構34、循環飛灰貯留槽31、循環飛灰貯留槽31に貯留された飛灰を切出すスクリューフィーダ32、スクリューフィーダ32で切り出された飛灰を排ガス導入ダクト4Aのうち排ガス導入部より下流側で落下供給する飛灰投入ダクト33を備えている。
【0042】
傾斜姿勢に配された排ガス導入ダクト4Aに飛灰を落下供給することにより、飛灰が排ガス導入ダクト4A内で滞留することなく、排ガス導入ダクト4Aの傾斜に沿って流れる排ガスとともにバグフィルタ4に流入するようになる。従って、例えば、メンテナンスのためバグフィルタ4を停止するような場合でも、飛灰が排ガス導入ダクト4A内で滞留して固化するようなことが無く、バグフィルタ4に流入した循環飛灰は、上述した搬送機構、飛灰排出部48から外部に排出されるようになる。また、循環飛灰貯留槽31のメンテナンスなどのため、上述と同様の経路で循環飛灰貯留槽31に残存する飛灰の全量を飛灰貯留槽37に排出することができる。
【0043】
また、スクリューフィーダ32の終端に流路切替ダンパ35Bを設け、循環飛灰貯留槽31に貯留された飛灰を、飛灰投入ダクト33と後述する飛灰貯留槽37に向けて搬送する循環飛灰排出搬送機構36Bとの何れかに切替可能に構成してもよい。例えば、メンテナンスのためバグフィルタ4を停止するような場合には、循環飛灰貯留槽31に貯留された飛灰を循環飛灰排出搬送機構36Bを介して飛灰貯留槽37に搬出できるようにしておけば、循環飛灰貯留槽31やスクリューフィーダ32の内部で循環飛灰が固化する虞がある場合に事前に排出することができる。
【0044】
なお、循環飛灰貯留槽31に貯留された飛灰を、飛灰投入ダクト33及び排ガス導入ダクト4Aを介して飛灰ホッパ46に供給する態様以外に、飛灰ホッパ46に向けて直接接続するように傾斜配置された飛灰投入ダクト33を介して循環供給してもよい。この場合には、排ガス導入ダクト4Aからバグフィルタ4に供給される排ガスにより飛灰が混合撹拌されるように、排ガス導入ダクト4Aの飛灰ホッパ46との接続部の直上に飛灰投入ダクト33の接続部が配されていることが好ましい。
【0045】
飛灰循環搬送機構34は、飛灰捕集部50で捕集され、飛灰排出部48を介して排出された飛灰を循環飛灰貯留槽31に搬送するスクリューコンベア機構やバケットコンベア機構などで構成されている。
【0046】
飛灰排出部48と飛灰循環搬送機構34との間に流路切替ダンパ35Aが設けられ、循環飛灰貯留槽31のレベルを検知して、循環飛灰貯留槽31に飛灰がフルに充填される前に流路切替ダンパ35Aが切り替えられて、飛灰排出部48から排出される飛灰が飛灰排出搬送機構36Aを介して廃棄処理用の飛灰貯留槽37に搬送される。
【0047】
排ガス導入部4A及び排ガス排出ダクト4Bには、それぞれ排ガスの圧力を検知する圧力センサPi,Po及び酸性ガスセンサの一例である塩化水素ガスセンサSi,Soが設けられ、各センサの検出信号が排ガス浄化制御部60に入力されている。なお、ろ布の上流及び下流側の圧力を検出する圧力センサPi,Poはバグフィルタ4の内部に備えることも可能である。
【0048】
図2に示すように、排ガス浄化制御部60は、中和剤供給制御部62、循環供給量制御部64、飛灰払落し制御部66の三つの機能ブロックを備えている。それぞれスイッチとリレー回路で構成されるシーケンサで構成することができ、マイクロコンピュータなどの電子回路及び制御プログラムで構成することも可能である。
【0049】
中和剤供給制御部62は、少なくともバグフィルタ4の排ガス中の酸性ガス濃度、本実施形態では排ガス排出ダクト4Bに設けられた塩化水素ガスセンサSoにより検出された塩化水素ガス濃度に基づいて算出した必要量の中和剤が供給されるように中和剤供給機構20を制御する。詳述すると、塩化水素ガスセンサSoで検出された塩化水素ガス濃度が所定の目標値(本実施形態では10ppm)に収束するように、スクリューフィーダ22を駆動する中和剤供給モータの回転数をPID演算で算出された目標回転数に制御する。
【0050】
なお、
図2及び
図7に例示するように、中和剤供給制御部62は、排ガス導入部4Aに備えた塩化水素ガスセンサSiで検出された塩化水素ガス濃度をさらに加味して中和剤の供給量を調整してもよい。
【0051】
即ち、中和剤供給制御部62は、塩化水素ガスセンサSi及び塩化水素ガスセンサSoによりバグフィルタ4の入口側及び出口側の塩化水素ガス濃度を計測し(SC1)、塩化水素ガスセンサSiで検出されたガス濃度を目標値とするために必要な中和剤の供給量QをPID演算に基づいて算出し(SC2)、次に入口側及び出口側の塩化水素ガス濃度の差分を算出し(SC3)、先に求めた供給量Qを差分値で補正した値を目標中和剤供給量として(SC4)、スクリューフィーダ22を駆動する中和剤供給モータの回転数を制御してもよい(SC5)。
【0052】
飛灰払落し制御部66は、排ガス導入部4Aに備えた圧力センサPiにより検出された排ガスの入口側圧力と、排ガス排出ダクト4Bに備えた圧力センサPoにより検出された排ガスの出口側圧力との差圧をろ布42の目詰まりの程度を評価する指標として算出し、当該差圧が予め定めた閾値を超えるとろ布42に付着した飛灰を除去すべく、払落しガスノズル駆動信号を出力して、飛灰払落し機構44を構成するガスノズルからパルス状の圧縮ガスを噴射供給する。圧縮ガスとして空気やバグフィルタ4を通過した排ガスなどが用いられる。
【0053】
ここで、ガスノズルを複数のグループに分けて、差圧が閾値を超えたときに払落しガスノズル駆動信号に同期して各グループの何れかから圧縮ガスを噴射し、次に差圧が閾値を超えた時には、別のグループのガスノズルから圧縮ガスを噴射するように分割して各グループの飛灰を払い落とすことが好ましい。差圧が閾値を超えたときに全てのガスノズルから圧縮ガスを一斉に噴射するように制御すると、酸性ガス濃度が急に上昇する虞があるためである。
【0054】
循環供給量制御部64は、飛灰排出搬送機構36Aを介して飛灰排出部48から排出される飛灰を、飛灰循環搬送機構34を介して循環飛灰貯留槽31に循環搬送する飛灰循環制御と、循環飛灰貯留槽31に貯留された飛灰を排ガス導入部4Aに適量投入する飛灰循環供給量制御を行なう。
【0055】
図6に示すように、飛灰循環制御では、循環飛灰貯留槽31に備えたセンサにより循環飛灰貯留槽31に投入された飛灰の充填量を検出し、循環飛灰貯留槽31が満杯でなければ(SB1,N)、飛灰が飛灰循環搬送機構34に供給されるように流路切替ダンパ35Aを切り替え(SB2)、循環飛灰貯留槽31が満杯になれば(SB1,Y)、飛灰が飛灰排出搬送機構36Aを介して飛灰貯留槽37に搬送されるように流路切替ダンパ35Aを切り替える(SB3)。
【0056】
飛灰循環供給量制御では、飛灰払落し機構44による作動周期、つまりパルスジェットガスの噴射周期を指標にして循環供給機構30を介した飛灰の循環供給量を調整する。詳述すると、パルスジェットガスの噴射周期を監視し、噴射周期が長くなる上昇局面から短くなる下降局面に転じる境界領域で維持されるように飛灰の循環供給量を調整する。中和剤供給制御部62によって供給された中和剤のうち、反応機会を逸した未反応分を再度中和剤として機能させ、反応効率の向上による中和剤の消費量を低減するための制御である。
【0057】
未反応の中和剤を含む飛灰の循環供給量が少な過ぎる場合には相対的に中和反応に寄与する薬剤量が少なくなり反応効率の上昇が見込めない。逆に飛灰の循環供給量が多過ぎる場合には短時間でろ布の表面に飛灰が大量に付着して排ガス入口側と排ガス出口側の圧力差が大きくなり、短時間でパルスジェットガスが噴射されてろ布から飛灰が離脱されるため、循環供給された飛灰に含まれる未反応の中和剤の平均反応時間が短くなり、やはり反応効率の上昇が見込めない。
【0058】
このような場合に、パルスジェットガスの噴射周期を指標にして飛灰の循環供給量を調整すれば、循環供給された飛灰に含まれる未反応の中和剤の平均反応時間を十分に確保することができるようになり、表面が反応生成物で覆われた未反応の中和剤であっても事前の破砕処理など、前処理することなく反応効率を上昇させることができるようになる。
【0059】
図3(a)には排ガスに供給される中和剤の1つである特号消石灰の粒径分布が示され、
図3(b)には循環供給される飛灰の粒径分布が示されている。排ガスに供給される中和剤の粒径分布と比較して、循環供給される飛灰は排ガスに含まれる灰分や中和反応により生成された塩などの影響により平均粒径が大径側にシフトする。
【0060】
図4には、本願発明者らによる研究の結果得られた新知見である飛灰の循環供給量とパルスジェットガスの噴射周期との相関関係が示されている。飛灰の循環供給量が少ない場合には、主に粒径の小さな中和剤がろ布表面に付着する傾向が高まるため、比較的早期にろ布の圧力損失が大きくなりパルスジェットガスの噴射周期が短くなる。
【0061】
飛灰の循環供給量が次第に増える領域R1では、ろ布に付着した大径の飛灰同士の間隙で排ガスの流路が確保されるようになり、ろ布の圧力損失が大きくなるまでの時間が確保でき、次第にパルスジェットガスの噴射周期が長くなる上昇局面となる。
【0062】
その後さらに飛灰の循環供給量が増える領域R3では、ろ布に付着した飛灰層が短時間で厚くなりろ布の圧力損失が大きくなるため、逆にパルスジェットガスの噴射周期が短くなる下降局面に到る。
【0063】
そこで、パルスジェットガスの噴射周期が長くなる上昇局面(領域R1)から短くなる下降局面(領域R3)に到る境界(最大周期Tmax)で噴射周期が安定するように飛灰の循環供給量を調整すれば、新たに投入された中和剤及び循環供給された飛灰に含まれる未反応の中和剤に対して十分な反応時間が確保されるようになり、結果として反応効率を上昇させることができるようになる。最大周期Tmaxとなると洗浄周期が長くなり、洗浄回数が減少するため、ろ布への負荷が減って寿命が長くなる。
【0064】
具体的に循環供給量制御部64は、飛灰の循環供給量を次第に増加させたときにパルスジェットガスの噴射周期が長くなる場合に噴射周期が長くなる上昇局面にあると判断し、飛灰の循環供給量を次第に増加させたときにパルスジェットガスの噴射周期が短くなる場合に噴射周期が短くなる下降局面にあると判断し、パルスジェットガスの噴射周期が上昇局面から下降局面に転じる境界における噴射周期Tmaxを基準に閾値周期Tthを決定し、周期TthからTmaxの範囲を目標飛灰循環供給量R2として設定する。
【0065】
以上、飛灰の循環供給量を増加させる場合を説明したが、予め実験や稼働実績から適切な飛灰循環量を把握している場合は、その飛灰循環量に設定した後に循環供給量を所定量増加または減少させ、上昇局面から下降局面に到る境界にあるかを確認してもよい。この場合、飛灰の循環供給量を増加させたときに噴射周期が短くなる場合は、下降局面であると判断して飛灰の循環供給量を減少させればよい。
【0066】
なお、
図4に示される相関関係は常に一意に決まるものではなく、入口と出口酸性ガス濃度、中和剤の吹き込み量、ごみの焼却量などの要因により異なる曲線となるが、噴射周期の上昇局面から下降局面に至る変曲点を少なくとも1つは持つところはいずれの曲線でも同じである。
【0067】
図5に飛灰供給量を所定量ずつ増加させながら最適な循環供給量へと導く際の制御のフローチャートを示す。飛灰循環供給量制御では、上述した払落しガスノズル駆動信号を監視して(SA1)、払落しガスノズル駆動信号のオンエッジを検出すると前回の払落しガスノズル駆動信号のオンエッジとの時間間隔に基づいて払落しガスノズル駆動信号の出力周期、つまりパルスジェットガスの噴射周期を算出し(SA2)、当該噴射周期と前回算出した噴射周期とを比較する(SA3)。
【0068】
比較の結果、当該噴射周期が前回算出した噴射周期より長い場合には、噴射周期が上昇局面にあると判断して飛灰循環供給量を予め設定したΔMだけ増量する(SA4)。比較の結果、当該噴射周期が前回算出した噴射周期と等しい場合には、噴射周期が最大値Tmaxであると判断して飛灰循環供給量を維持する(SA5)。比較の結果、当該噴射周期が前回算出した噴射周期より短い場合には、噴射周期が下降局面にあると判断して飛灰循環供給量を予め設定したΔMだけ減量する(SA6)。
【0069】
なお、ステップSA3の比較では、当該噴射周期と前回算出した噴射周期との差分が正、零、負の何れであるかを基準に比較しているが、差分に閾値を設定してもよい。例えば、当該噴射周期と前回算出した噴射周期との差分が所定の閾値(+Tdth1)より大きければ噴射周期が上昇局面にあると判断してステップSA4を実行し、当該噴射周期と前回算出した噴射周期との変化率が所定の閾値(‐Tdth1)より小さければ噴射周期が下降局面にあると判断してステップSA6を実行し、当該噴射周期と前回算出した噴射周期との変化率が閾値(+Tdth1)と閾値(‐Tdth1)の間にあれば噴射周期が最大値Tmax近傍であると判断してステップSA5を実行してもよい。
【0070】
また、ステップSA3の比較では、当該噴射周期と前回算出した噴射周期との変化率を基準に比較してもよい。当該噴射周期と前回算出した噴射周期との変化率が所定の閾値(+Tdth2)より大きければ噴射周期が上昇局面にあると判断してステップSA4を実行し、当該噴射周期と前回算出した噴射周期との変化率が所定の閾値(‐Tdth2)より小さければ噴射周期が下降局面にあると判断してステップSA6を実行し、当該噴射周期と前回算出した噴射周期との変化率が閾値(+Tdth2)と閾値(‐Tdth2)の間にあれば噴射周期が最大値Tmax近傍であると判断してステップSA5を実行してもよい。
【0071】
上述したように、本発明による排ガス処理方法は、ろ布に付着した飛灰を払い落とす飛灰払落し機構を備えたバグフィルタの排ガス導入部で排ガスに中和剤を供給し、ろ布で集塵された飛灰の一部を排ガス導入部に循環供給する排ガス処理方法であって、バグフィルタの排ガス入口側と排ガス出口側の圧力差が所定の閾値に達すると飛灰払落し機構が作動するように構成され、飛灰払落し機構の作動周期を指標にして飛灰の循環供給量を調整するように構成されている。
【0072】
また、飛灰の循環供給量を意図的に増減させた際の飛灰払落し機構の作動周期を監視し、作動周期が長くなるように飛灰の循環供給量を調整することが好ましい。
【0073】
具体的に、飛灰の循環供給量を増加させた場合に、作動周期が長くなると飛灰の循環供給量を増加させ、作動周期が短くなると飛灰の循環供給量を減少させ、飛灰の循環供給量を減少させた場合に、作動周期が長くなると飛灰の循環供給量を減少させ、作動周期が短くなると飛灰の循環供給量を増加させる。
【0074】
さらに、飛灰払落し機構の作動周期が長くなる上昇局面から短くなる下降局面に転じる境界の作動周期を基準に目標飛灰循環供給量が決定されるように構成されていることが好ましい。
【0075】
飛灰払落し機構の作動周期を指標にして飛灰の循環供給量を調整する以外に作動周期に関連する情報を指標にして飛灰の循環供給量を調整することも可能である。例えば、バグフィルタ4の作動時(飛灰払落し機構の停止時)のバグフィルタ4の入口側と出口側との差圧の時間当たりの変化率(上昇または下降速度)を指標にしてもよい。差圧の変化率が大きいほど飛灰払落し機構の作動周期が短く、小さいほど作動周期が長くなるため、差圧の変化率が小さくなるように飛灰の循環供給量を調整すればよい。具体的には、飛灰の循環供給量を所定量増加または減少させ、その前後での差圧の変化率の変化を見て、
図4の特性図で示す関係に基づいて飛灰の供給量を調整する方法などが考えられる。即ち、飛灰払落し機構の作動周期に替えて作動周期と相関関係がある差圧の変化率などの情報を用いることも可能である。
【0076】
そして、バグフィルタの排ガス出口側の排ガス中の酸性ガス濃度に基づいて中和剤の供給量を調整するように構成されている。なお、中和剤供給制御部62は、予め設定された一定量の中和剤を吹き込むように制御し、噴射周期が最大となっても出口側の酸性ガス濃度が低下しない場合に増量するように制御してもよい。
【0077】
以上説明した排ガス処理方法は、反応時間の長いJISで規定された消石灰で特に有効であるが、苛性ソーダ、重曹、高反応性消石灰など、他の酸性ガス中和剤を用いる場合にも適用できる。
【0078】
このような排ガス処理方法を採用することにより、中和剤の供給量を抑制しながら排ガスに含まれる酸性ガス濃度を同等に維持することができるようになり、さらにはより酸性ガス濃度を低下させることができるようになる。
【0079】
上述した実施形態では、バグフィルタ4に備えた飛灰払落し機構44として、ろ布42の上部開口に向けて飛灰払落し用のパルスジェットガスを噴射するガスノズルを備えた例を説明したが、飛灰払落し機構44はこの様な構成に限るものではなく、バグフィルタ4の入口側と出口側の差圧に基づいて周期的に駆動される機構であれば、他の構成を採用することができることは言うまでもない。例えば、ろ布の上流側からろ布の内部に逆洗浄用のガスを吹き込む逆洗機構であってもよいし、ろ布に振動を付与して付着飛灰を払い落とすような加振機構であってもよい。これらの飛灰払落し機構44の作動周期を指標にして飛灰の循環供給量を調整すればよい。また、バグフィルタに用いられるろ布の材料、形状、配置つまり排ガスの流れ方向などにかかわらず本発明を適用でき、セラミックフィルタなどの固体フィルタを用いたバグフィルタにも本発明を適用できる。
【0080】
上述した実施形態では、飛灰を捕集したバグフィルタと同一のバグフィルタの上流側へ飛灰を循環供給する態様で説明したが飛灰を捕集するバグフィルタと飛灰を供給するバグフィルタは異なっていても良い。例えば、同様の焼却設備が2系列あった場合に一方のバグフィルタで捕集した飛灰を他方のバグフィルタの上流側に供給したり、直列に2つのバグフィルタが設けられていた場合に一方のバグフィルタで捕集した飛灰を他方のバグフィルタの上流側に供給したり、焼却炉と溶融炉が併設されている施設において焼却炉の飛灰を溶融炉のバグフィルタの上流側に供給して制御することもできる。この場合、循環供給ではなく飛灰は循環することなく供給後に全量を排出したり、循環しながら他のバグフィルタの飛灰を追加供給することもできる。
【0081】
上述した実施形態で用いた「飛灰の循環供給」との表現は、本発明の「飛灰の供給」との概念に含まれるもので、本発明は、必ずしも循環供給する構成に限るものではない。
【0082】
上述した実施形態では、排ガス導入ダクト4Aに対する中和剤の供給位置が飛灰の供給位置よりも上流側に設定された例を説明したが、中和剤の供給位置が飛灰の供給位置よりも下流側に設定されてもよく、また、両者が同一個所から供給されるように構成されていてもよい。
【0083】
上述した実施形態では、ストーカ式の焼却炉を備えた廃棄物焼却設備に組み込まれた排ガス処理装置を説明したが、本発明による排ガス処理装置は流動床式焼却炉などストーカ式の焼却炉以外の焼却炉を備えた廃棄物焼却設備に組み込まれていてもよい。
【0084】
上述した実施形態では、廃棄物焼却設備に組み込まれた排ガス処理装置を説明したが、本発明による排ガス処理装置は回転式表面溶融炉などの溶融炉を備えた廃棄物溶融設備に組み込まれていてもよい。
【0085】
以上説明した排ガス処理装置は、本発明の一実施形態であり、該記載により本発明の排ガス処理装置の技術的範囲が限定されるものではなく、本発明の作用効果が奏される範囲で適宜偏向設計が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0086】
1:焼却炉
4:バグフィルタ
40:ケーシング
42:ろ布
44:飛灰払落し機構
46:飛灰ホッパ
48:飛灰排出部
4A:排ガス導入ダクト
4B:排ガス排出ダクト
20:中和剤供給機構
21:薬剤貯留槽
22:スクリューフィーダ
23:送風機
30:飛灰の循環供給機構
31:循環飛灰貯留槽
32:スクリューフィーダ
33:飛灰投入ダクト
34:飛灰循環搬送機構
60:排ガス浄化制御部
62:中和剤供給制御部
64:循環供給量制御部
66:飛灰払落し制御部
100:廃棄物焼却設備