(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】什器
(51)【国際特許分類】
A47B 91/06 20060101AFI20230410BHJP
A47B 13/02 20060101ALI20230410BHJP
A47B 91/00 20060101ALI20230410BHJP
B60B 33/06 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
A47B91/06
A47B13/02
A47B91/00 A
B60B33/06 C
(21)【出願番号】P 2018206856
(22)【出願日】2018-11-01
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】小田 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】北川 匠里
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-145908(JP,U)
【文献】特開2009-073317(JP,A)
【文献】特開2016-158902(JP,A)
【文献】米国特許第05433464(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 13/02-13/06、31/00、
A47B 91/00-91/10
B60B 33/00,33/06
B62Q 1/00-5/08、9/08
B23Q 1/00-1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上に移動可能に載置される什器本体と、
前記什器本体に設けられ、前記什器本体の下方の第1領域を、前記床面に対して可動状態と制動状態とに切り換え可能な第1制動切換機構と、
前記什器本体に設けられ、前記什器本体の下方の前記第1領域と離間した第2領域を、前記床面に対して可動状態と制動状態とに切り換え可能な第2制動切換機構と、
前記第1制動切換機構に対して制動切換操作を行う制動操作部と、
前記第1制動切換機構の制動切換動作を前記第2制動切換機構に伝達して、前記第2制動切換機構を制動状態に切り換える動作伝達機構と、を備えた什器であって、
前記第1制動切換機構は、前記床面に接地して前記第1領域の前記床面に対する移動を許容する移動用第1接地部と、前記第1領域に上下方向に
直線的に進退可能に設けられ、突出した下端が前記床面に接地して、前記第1領域を前記床面に対して制動する第1制動ブロックと、を有し、
前記第2制動切換機構は、前記床面に接地して前記第2領域の前記床面に対する移動を許容する移動用第2接地部と、前記第2領域に上下方向に
直線的に進退可能に設けられ、突出した下端が前記床面に接地して、前記第2領域を前記床面に対して制動する第2制動ブロックと、を有し、
前記動作伝達機構は、略水平方向に変位可能な中間可動体と、前記制動操作部による前記第1制動ブロックの
直線的な押し下げ方向の動作を前記中間可動体の略水平方向の動作に変換する第1動作変換機構と、前記中間可動体の略水平方向の動作を前記第2制動ブロックの
直線的な押し下げ方向の動作に変換する第2動作変換機構と、を有し、
前記什器本体には、前記制動操作部の押し下げ操作によって下方に突出した前記第1制動ブロックを設定突出位置で変位規制するロック部が設けられていることを特徴とする什器。
【請求項2】
前記第2動作変換機構は、前記中間可動体の略水平方向の動作を前記第2制動切換機構の側に伝達するワイヤと、前記ワイヤによる引き操作を、前記第2制動ブロックを押し下げる方向の動作に変換する動作変換部と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の什器。
【請求項3】
前記什器本体には、前記中間可動体の略水平方向の動作を案内する水平ガイド機能部と、前記制動操作部の上下方向の動作を案内する鉛直ガイド機能部を有する支持ブラケットが取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の什器。
【請求項4】
前記ワイヤの中間領域に動滑車が係合され、
前記動滑車で折り返した前記ワイヤの一端部側が前記動作変換部に連結されるとともに、前記ワイヤの他端部側が前記什器本体に連結され、
前記動滑車が前記中間可動体に結合されていることを特徴とする請求項2または3に記載の什器。
【請求項5】
前記ロック部は、オルタネイトロック装置によって構成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の什器。
【請求項6】
前記制動操作部は、作業者の足裏で押し下げ可能な足踏み式の操作部であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の什器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面に対して移動可能な可動状態と移動不能な制動状態とに切換可能な什器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デスク装置等の什器として、什器本体の下方にキャスタを設置し、必要に応じて床面上を自由に移動できるようにしたものがある。この種の什器は、床面に対して移動可能な可動状態と、床面に対して移動不能な制動状態とに切り換える機構を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の什器は、什器本体の下方側の前後位置にそれぞれ制動切換機構が設けられている。各制動切換機構は、床面に対して転動可能なキャスタと、床面と当接して移動を規制する接地部材と、を備えている。キャスタと接地部材は、天秤部材の前後の各端部に支持されており、天秤部材が回動操作されることにより、キャスタの接地した可動状態と、接地部材の接地した制動状態とに切り換えられる。前後の各天秤部材は、リンク機構を介して制動操作部に連係されている。什器の使用時には、制動操作部の操作によって前後の天板部材が回動操作され、接地部材が床面に接地することにより、制動状態に切り換えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の什器は、制動切換機構のキャスタと接地部材が回動可能な天秤部材の前後の各端部に支持され、天秤部材の回動操作によって可動状態から制動状態へと切り換えられる。このため、可動状態から制動状態への切り換え時には、接地部材の下面が床面上を滑りながら天秤部材の回動が進み、その間に什器本体が持ち上げられることになる。したがって、特許文献1に記載の什器の場合、可動状態から制動状態への切り換え時には、制動切換機構の構成部材に大きな負荷が作用するとともに、床面上に擦れ痕が残ることが懸念される。
また、特許文献1に記載の什器の場合、制動状態を維持する間は長尺な天秤部材に大きなモーメントが作用するため、什器本体を制動状態に安定して維持するためには、構成部品の大幅な補強を強いられる。
【0006】
そこで本発明は、可動状態から制動状態への切り換え時に、床面との間に擦れが生じるのを抑制でき、かつ、構成部材の負荷の増大を招くことなく制動状態を安定して維持することができる什器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る什器は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
即ち、本発明に係る什器は、床面上に移動可能に載置される什器本体と、前記什器本体に設けられ、前記什器本体の下方の第1領域を、前記床面に対して可動状態と制動状態とに切り換え可能な第1制動切換機構と、前記什器本体に設けられ、前記什器本体の下方の前記第1領域と離間した第2領域を、前記床面に対して可動状態と制動状態とに切り換え可能な第2制動切換機構と、前記第1制動切換機構に対して制動切換操作を行う制動操作部と、前記第1制動切換機構の制動切換動作を前記第2制動切換機構に伝達して、前記第2制動切換機構を制動状態に切り換える動作伝達機構と、を備えた什器であって、前記第1制動切換機構は、前記床面に接地して前記第1領域の前記床面に対する移動を許容する移動用第1接地部と、前記第1領域に上下方向に直線的に進退可能に設けられ、突出した下端が前記床面に接地して、前記第1領域を前記床面に対して制動する第1制動ブロックと、を有し、前記第2制動切換機構は、前記床面に接地して前記第2領域の前記床面に対する移動を許容する移動用第2接地部と、前記第2領域に上下方向に直線的に進退可能に設けられ、突出した下端が前記床面に接地して、前記第2領域を前記床面に対して制動する第2制動ブロックと、を有し、前記動作伝達機構は、略水平方向に変位可能な中間可動体と、前記制動操作部による前記第1制動ブロックの直線的な押し下げ方向の動作を前記中間可動体の略水平方向の動作に変換する第1動作変換機構と、前記中間可動体の略水平方向の動作を前記第2制動ブロックの直線的な押し下げ方向の動作に変換する第2動作変換機構と、を有し、前記什器本体には、前記制動操作部の押し下げ操作によって下方に突出した前記第1制動ブロックを設定突出位置で変位規制するロック部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成により、第1領域と第2領域が可動状態のときに、制動操作部が押し下げ操作されると、第1制動ブロックが制動操作部に押圧されて下方に突出し、第1制動ブロックの下端が床面上に接地する。一方、第1制動ブロックが下方に押し下げられると、その動作が第1動作変換機構によって中間可動体の略水平方向の動作に変換される。中間可動体の略水平方向の動作は、第2動作変換機構によって第2制動ブロックの押し下げ方向の動作に変換される。これにより、第2制動ブロックの下端が床面上に接地する。第1制動ブロックは、設定突出位置に突出した状態でロック部によって変位規制される。この結果、第1制動ブロックが床面に接地した状態で安定状態に保持される。
【0009】
前記第2動作変換機構は、前記中間可動体の略水平方向の動作を前記第2制動切換機構の側に伝達するワイヤと、前記ワイヤによる引き操作を、前記第2制動ブロックを押し下げる方向の動作に変換する動作変換部と、を有する構成であっても良い。
この場合、第1制動ブロックの押し下げ方向の動作が、第1動作変換機構によって中間可動体の略水平方向の動作に変換されると、その動作がワイヤを介して動作変換部に伝達され、動作変換部において第2制動ブロックが下方に押し下げられる。このため、第1領域と第2領域が什器本体内の狭いスペースを挟んで離間している場合であっても、狭いスペースにワイヤを通すことにより、第1制動ブロックの押し下げ方向の動作を第2領域の第2制動切換機構に確実に伝達することができる。
【0010】
前記什器本体には、前記中間可動体の略水平方向の動作を案内する水平ガイド機能部と、前記制動操作部の上下方向の動作を案内する鉛直ガイド機能部を有する支持ブラケットが取り付けられるようにしても良い。
この場合、制動操作時に下方に押し込み操作される制動操作部と、制動操作部の操作荷重を受けて略水平方向に変位する中間可動体とが同じ支持ブラケットによって作動を案内されるため、制動操作部と中間可動体とを精度良く連動させることができる。操作力を受けて略水平方向に変位する中間可動体は、ワイヤを通して多様な方向の反力を受けることがあるが、中間可動体は、制動操作部と同じ支持ブラケットによって作動を案内されるため、制動操作部との位置関係が変化することがない。したがって、制動操作部と中間可動体の連動作動を常に安定させることができる。
【0011】
前記ワイヤの中間領域に動滑車が係合され、前記動滑車で折り返した前記ワイヤの一端部側が前記動作変換部に連結されるとともに、前記ワイヤの他端部側が前記什器本体に連結され、前記動滑車が前記中間可動体に結合されるようにしても良い。
この場合、制動操作部が操作されることで中間可動体が略水平方向に変位すると、それに伴って動滑車が中間可動体とともに略水平方向に変位する。動滑車が略水平方向に変位すると、ワイヤの中間領域が動滑車によって引かれ、ワイヤの一端部側に連結されている第2制動切換機構が動滑車の変位の2倍の変位量で操作されることになる。この結果、第2領域の第2制動切換機構は迅速に制動状態に切換操作される。
【0012】
前記ロック部は、オルタネイトロック装置によって構成されるようにしても良い。
この場合、制動操作部の繰り返しの押し下げ操作により、第1制動ブロックの突出位置でのロックとロック解除とを容易に実行することができる。
【0013】
前記制動操作部は、作業者の足裏で押し下げ可能な足踏み式の操作部であっても良い。
この場合、制動操作部を、足裏による踏み込みによって容易に操作することができ、しかも、大きな操作力を第1制動切換機構と第2制動切換機構とに作用させることができる。したがって、制動切換時に、第1制動ブロックと第2制動ブロックとを、大きな荷重で下方に押し下げ、什器本体の確実な制動を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、什器本体を可動状態から制動状態に切り換えるときには、制動操作部の押し下げ操作により、第1制動ブロックを下方に突出させて第1領域を制動状態にするとともに、第1制動ブロックの下降動作を第1動作変換機構と第2動作変換機構を介して第2制動ブロックの下方への突出動作に変換して、第2の領域を制動状態にすることができる。したがって、本発明によれば、可動状態から制動状態への切り換え時に、床面との間に擦れが生じるのを抑制することができる。
また、本発明によれば、床面に接地する第1制動ブロックと第2制動ブロックが上下に進退動作する構成のため、制動切換操作時や制動状態のときに構成部材に大きなモーメントが作用し難い。したがって、本発明によれば、構成部材の負荷の増大を招くことなく制動状態を安定して維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】実施形態の一方の下部脚杆の
図2のIV-IV線に沿う断面図である。
【
図5】実施形態の他方の下部脚杆の
図2のV-V線に沿う断面図である。
【
図6】実施形態の一方の下部脚杆の
図4のVI-VI線に沿う断面図である。
【
図7】実施形態の一方の下部脚杆の一部部材を取り去った平面図である。
【
図8】実施形態のロックリングを示す斜視図である。
【
図9】実施形態の操作突起のボス部を下方側から見た斜視図である。
【
図10】実施形態の支持ブラケットの下面図である。
【
図11】実施形態のロックリングの作動イメージを示す操作突起の下面図である。
【
図12】実施形態のオルタネイトロック装置の要部の作動イメージを(A),(B),(C)で順次示した図である。
【
図13】実施形態の操作突起と第1制動ブロックの動作を示す
図6と同様の断面図である。
【
図14】実施形態のロックリングの作動イメージを示す操作突起の下面図である。
【
図15】実施形態の操作突起と第1制動ブロックの動作を示す
図6,
図13と同様の断面図である。
【
図16】実施形態のロックリングの作動イメージを示す操作突起の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本実施形態の什器1を示す斜視図である。本実施形態の什器1は、支持構造体である脚部材2の上部に機能部材である天板3が支持されたテーブル装置である。
脚部材2は、鉛直方向に起立する支柱4と、支柱4の下部から放射方向に延びる上部脚杆5A,5B、及び、下部脚杆6A,6Bを備え、上部脚杆5A,5Bと下部脚杆6A,6Bの延出方向の各端部が床面Fに対して接地されている。支柱4の上端部には、回動機構7を介して天板3が取り付けられている。回動機構7は、支柱4に対する天板3の姿勢(水平姿勢と垂立姿勢)を適宜切り換え可能に構成されている。
なお、本実施形態においては、天板3と回動機構7と脚部材2の主要な部分が什器本体を構成している。
【0018】
図2は、脚部材2の下部側部分を示す斜視図である。
同図に示すように、脚部材2の支柱4は、鉛直方向に延びる支柱本体4Aと、支柱本体4Aの下端に連結されたハブ部材4Bと、を有している。
図1に示す回動機構7は、支柱本体4Aの上端部に組み付けられている。ハブ部材4Bには、上部脚杆5A,5Bと下部脚杆6A,6Bの各基部が組付けられている。一対の下部脚杆6A,6Bは、ハブ部材4Bの下端からハブ部材4Bの軸心を中心とした相反方向に延びている。各下部脚杆6A,6Bの延び方向の端部近傍には、床面F上を転動可能なキャスタ8a,8bが取り付けられている。また、一対の上部脚杆5A,5Bは、ハブ部材4Bの下部脚杆6A,6Bの延出位置よりも上方位置からハブ部材4Bの軸心を中心とした相反方向に延びている。上部脚杆5A,5Bと下部脚杆6A,6Bは、ハブ部材4Bの軸心回りに90°離間するように配置されている。各上部脚杆5A,5Bの延び方向の端部近傍には、下方に突出する台座部9を介してキャスタ8Aが取り付けられている。キャスタ8Aは、床面Fに対して転動可能とされている。
【0019】
図3は、ハブ部材4Bの斜視図である。
同図に示すように、ハブ部材4Bは、有底円筒状のハブ本体部10と、ハブ本体部10から放射方向に延びる断面略矩形状の上部脚杆取付ブロック11、及び、下部脚杆取付ブロック12と、を有している。上部脚杆取付ブロック11と下部脚杆取付ブロック12は、各一対設けられている。ハブ本体部10と上部脚杆取付ブロック11、及び、下部脚杆取付ブロック12は、硬質樹脂、若しくは、アルミニウム合金や鉄等の高剛性の金属によって一体に形成されている。一対の上部脚杆取付ブロック11は、ハブ本体部10の外周上の相反位置に突設されている。一対の下部脚杆取付ブロック12は、上部脚杆取付ブロック11の突設部よりも下方側で、上部脚杆取付ブロック11と円周方向で90°離間するように、ハブ本体部10の外周上の相反位置に突設されている。上部脚杆取付ブロック11には、上部脚杆5A,5Bの基部が嵌合され、その状態で上部脚杆5A,5Bの基部がボルト13によって締結固定されている。同様に、下部脚杆取付ブロック12には、下部脚杆6A,6Bの基部が嵌合され、その状態で下部脚杆6A,6Bの基部がボルト13によって締結固定されている。
【0020】
図4は、
図2のIV-IV線に沿う下部脚杆6Aの断面図であり、
図5は、
図2のV-V線に沿う下部脚杆6Bの断面図である。
図4に示すように、一方の下部脚杆6Aの延び方向の端部の近傍には、当該領域(以下、「第1領域a1」と呼ぶ。)を、床面Fに対して可動状態と制動状態とに切り換え可能な第1制動切換機構14と、第1制動切換機構14に対して制動切換操作を行う操作突起15(制動操作部)が設けられている。また、
図5に示すように、他方の下部脚杆6Bの延び方向の端部の近傍には、当該領域(以下、「第2領域a2」と呼ぶ。)を、床面Fに対して可動状態と制動状態とに切り換え可能な第2制動切換機構16が設けられている。
【0021】
第1制動切換機構14は、一方の下部脚杆6Aの端部下面に固定設置されたキャスタ8a(移動用第1接地部)と、キャスタ8aの設置位置よりも下部脚杆6Aの基部寄り位置に設けられた第1制動ブロック17と、を備えている。第1制動ブロック17は、下部脚杆6Aに上下方向に進退可能に設けられ、突出した下端部が床面Fに押し付けられることにより、第1領域a1を床面Fに対して制動状態にする。第1制動ブロック17が床面Fに接地しない間は、キャスタ8aが床面Fに接地し、第1領域a1を床面Fに対して可動状態にする。
【0022】
操作突起15は、第1制動ブロック17の上方に、第1制動ブロック17に対して押し下げ操作可能に設置されている。操作突起15の上部は、下部脚杆6Aの上壁に設けられた開口18を通して下部脚杆6Aの上方に突出している。操作突起15は、下部脚杆6Aから上方に突出した上端部を、使用者が足裏によって踏み込み操作することにより、第1制動ブロック17を突出、若しくは、後退させる。操作突起15と第1制動ブロック17の間には、後述するオルタネイトロック装置50(ロック部)が構成されている。
【0023】
第2制動切換機構16は、他方の下部脚杆6Bの延出端の下面に固定設置されたキャスタ8b(移動用第2接地部)と、キャスタ8bの設置位置よりも下部脚杆6Bの基部寄り位置に設けられた第2制動ブロック19と、を備えている。第2制動ブロック19は、下部脚杆6Bに上下方向に進退可能に設けられ、突出した下端部が床面Fに押し付けられることにより、第2領域a2を床面Fに対して制動状態にする。第2制動ブロック19が床面Fに接地しない間は、キャスタ8bが床面Fに接地し、第2領域a2を床面Fに対して可動状態にする。
【0024】
図4に示すように、下部脚杆6Aは、長尺な脚杆本体部6Aaが硬質樹脂、若しくは、高剛性の金属によって形成され、その内部に断面コ字状の金属製のベースプレート20が固定されている。ベースプレート20には、後述する複数のガイド機能部を有する樹脂製の支持ブラケット21が一体に固定されている。
【0025】
図6は、
図4のVI-VI線に沿う断面図である。
図7は、脚杆本体部6Aaと操作突起15を取り去って下部脚杆6Aの一部を上方から見た図である。
図4,
図7に示すように、支持ブラケット21は、略水平なベース壁21aの幅方向(下部脚杆6Aの延び方向と交差する方向)の両側にガイド壁21bが立設された水平ガイド機能部22と、ベース壁21aから上方に向かって突設された筒状壁21cから成る鉛直ガイド機能部23と、を有している。支持ブラケット21に関し、下部脚杆6Aの長手方向のハブ部材4Bの位置される側を「基部側」と呼び、その逆側を「延出端側」と呼ぶものとすると、鉛直ガイド機能部23は、支持ブラケット21のうちの水平ガイド機能部22よりも延出端側に配置されている。鉛直ガイド機能部23を構成する筒状壁21cは、
図6に示すように上下方向に貫通している。
【0026】
支持ブラケット21の水平ガイド機能部22には、中間可動体24がスライド可能に保持されている。中間可動体24は、支持ブラケット21のベース壁21aとガイド壁21bとに案内されて、下部脚杆6Aの延び方向に沿って水平移動可能とされている。中間可動体24には、支軸24aが上方に向いて突設されている。支軸24aには、動滑車25が回動可能に支持されている。なお、図中の符号26は、支持ブラケット21に保持されて、中間可動体24の浮き上がりを規制する変位規制ロッドである。また、中間可動体24のうちの、下部脚杆6Aの延出端側寄り位置には、幅方向に離間して一対のカム壁32が突設されている。各カム壁32の上面には、下部脚杆6Aの基部側から延出端側に向かって上方に傾斜するカム面32aが形成されている。
【0027】
操作突起15は、
図6に示すように、下方側が開口したボックス形状に形成されている。操作突起15の上壁15aの下面中央には、略円筒状のボス部27が突設されている。また、操作突起15の上壁15aの下面のボス部27を間に挟む幅方向両側部分には一対のカム壁28が突設されている。カム壁28の下面には、下部脚杆6Aの延出端側から基部側に向かって下方に傾斜するカム面28aが形成されている。操作突起15の各カム面28aは、中間可動体24のカム壁32の対応するカム面32aと摺動可能に当接している。この構成により、操作突起15が下方に押し下げ操作されると、カム面28a,32a同士が摺動することにより、中間可動体24が下部脚杆6Aの
延出端側に向かって略水平にスライド変位する。
本実施形態においては、操作突起15のカム壁28と中間可動体24のカム壁32とが、操作突起15の押し下げ動作を中間可動体24の略水平方向の動作に変換する第1動作変換機構(動作変換機構)を構成している。
【0028】
操作突起15のボス部27には、第1制動ブロック17の上部側部材を構成する荷重伝達軸29が同軸に固定されている。荷重伝達軸29は、ボス部27に回転不能に嵌合固定され、下端がボス部27よりも下方に突出している。荷重伝達軸29の下端には、上方側の他の部位よりも大径の頭部29aが一体に形成されている。ボス部27は、支持ブラケット21の筒状壁21c(鉛直ガイド機能部23)内に上下方向にスライド可能に挿入されている。ボス部27の外周面には、周方向等間隔に8つのガイド突条30が形成されており、これらのガイド突条30が、筒状壁21c(鉛直ガイド機能部23)の内周面に形成された対応するガイド溝31に上下スライド可能に嵌合されている。したがって、操作突起15は、上下方向の進退位置に拘らず筒状壁21c(支持ブラケット21)に対して筒部の周域周りに回り止めされている。
【0029】
第1制動ブロック17は、上方側に開口するボックス状のブロック本体35と、操作突起15のボス部27に支持された荷重伝達軸29と、ブロック本体35の底壁上面と荷重伝達軸29の頭部29aとの間に介装された圧縮ばね36(弾性部材)と、を備えている。本実施形態においては、荷重伝達軸29が第1制動ブロック17の上部側部材を構成し、ブロック本体35が第1制動ブロック17の下部側部材を構成している。操作突起15から荷重伝達軸29に入力された押し込み方向の操作荷重は、圧縮ばね36を介してブロック本体35に伝達される。したがって、操作突起15が下方に押し下げ操作されて、ブロック本体35の下面が床面F上に接地すると、その後は操作突起15の押し下げ量に応じて圧縮ばね36が押し縮められる(蓄力される)。
【0030】
ブロック本体35は、相互に対向する一対の側壁(下部脚杆6Aの延び方向で対向する側壁)にガイド片35aが上方に向かって突出している。これらのガイド片35aは、支持ブラケット21のベース壁21aに形成されたガイド孔21d(
図7参照)に挿通され、ガイド孔21dによって上下方向に昇降可能に案内されている。また、各ガイド片35aの上端部には、側方に向かって突出する係止爪35bが一体に形成されている。各係止爪35bは、操作突起15の側壁下端に形成された開口15bに挿入されている。各係止爪35bは、開口15b内の範囲では自由に移動でき、開口15bの下縁部15cに当接することによって相対的な下方変位を規制される。したがって、ブロック本体35が下方に突出した状態から、操作突起15が上方に押し上げられた場合には、下縁部15cが係止爪35bと当接することにより、ブロック本体35が操作突起15とともに上方に押し上げられる。
【0031】
また、
図4,
図7に示すように、中間可動体24に支持された動滑車25には、動作伝達機構の一部を成すワイヤ33(インナワイヤ33i)の中間領域が掛け回されている。なお、ワイヤ33は、インナワイヤ33iと、インナワイヤ33iの外側を相対変位可能に覆うアウタチューブ33oと、を有している。以下では、単に「ワイヤ33」と呼ぶ場合には、インナワイヤ33iを意味するものとする。
【0032】
ワイヤ33の一端部側は、一方の下部脚杆6Aと他方の下部脚杆6Bの下面に沿って配索され、他方の下部脚杆6Bの延出端側に配置された第2制動切換機構16の昇降リンク機構37(
図5参照)に連結されている。また、ワイヤ33の他端側の端部は、弾性復元機構を構成する引っ張りばね34を介してベースプレート20に結合されている。引っ張りばね34は、一端部においてワイヤ33に結合され、他端部においてベースプレート20に結合されている。ベースプレート20は、一方の下部脚杆6Aに一体に固定されているため、ワイヤ33の他端部側は、引っ張りばね34を介して什器本体に連結されている。引っ張りばね34は、ワイヤ33に過大な張力が作用したときに、伸び方向の弾性変形を開始して、ワイヤ33の張力を緩和しつつその張力のエネルギーを蓄積する。
【0033】
また、他方の下部脚杆6Bの第2領域a2には、
図5に示すように、機構収容ケース38が固定設置されている。機構収容ケース38には、第2制動ブロック19が昇降自在に収容されるとともに、ワイヤ33の引き込み動作を第2制動ブロック19の突出動作に変換する昇降リンク機構37が組み込まれている。
【0034】
昇降リンク機構37は、機構収容ケース38の側壁に形成されたガイド孔39に支持ピン40がスライド可能に支持され、その支持ピン40に、ワイヤ連結ブロック41が一体に結合されるとともに、リンク42の一端部側が回動可能に連結されている。ガイド孔39は、機構収容ケース38の幅方向両側の側壁に、下部脚杆6Bの延び方向に沿うように長孔状に形成されている。ワイヤ連結ブロック41には、ワイヤ33の一端部が連結され、ワイヤ33の引き込み力がワイヤ連結ブロック41を介して支持ピン40に作用するようになっている。支持ピン40は、ワイヤ33の引き込み力を受けてガイド孔39内を下部脚杆6Bの基部側に向かってスライド変位する。このとき、第2制動ブロック19は、機構収容ケース38に昇降自在に周囲をガイドされているため、支持ピン40の変位とともにリンク42から下向きの押し下げ力を受ける。この結果、第2制動ブロック19は下部脚杆6Bの下方に突出する。
【0035】
また、ワイヤ連結ブロック41と機構収容ケース38の間には、支持ピン40を初期位置方向(下部脚杆6Bの延出端方向)に向けて付勢するリターンスプリング43が介装されている。このため、ワイヤ33による引き込み力が解除されると、支持ピン40がリターンスプリング43の付勢力を受けて初期位置に戻り、その結果、第2制動ブロック19が初期位置まで後退(上昇)する。
なお、リターンスプリング43は、ワイヤ33を通して中間可動体24から引き込み力が入力されているときに、中間可動体24に対して初期位置方向に戻す反力を作用させる。
【0036】
つづいて、第1制動ブロック17の突出状態でのロックとロック解除を制御するオルタネイトロック装置50について説明する。オルタネイトロック装置50は、操作突起15の押し下げ操作によって下方に突出した第1制動ブロック17を設定突出位置で戻り規制する(後退変位を規制する)ロック部を構成している。
【0037】
オルタネイトロック装置50は、
図6に示すように、操作突起15のボス部27の下端に形成された回転誘起カム51と、第1制動ブロック17の荷重伝達軸29の軸部に摺動可能(回転可能、かつ、軸方向移動可能)に嵌装されたロックリング52と、荷重伝達軸29の頭部29aとロックリング52の間に介装されて、ロックリング52を回転誘起カム51の方向に付勢する圧縮ばね53と、支持ブラケット21の筒状壁21cの内周部に形成されて、ロックリング52の変位を制御する変位制御部54と、を備えている。ロックリング52と荷重伝達軸29の頭部29aとの間には圧縮ばね53が介装されているため、本実施形態のオルタネイトロック装置50では、ロックリング52が所定量下降した状態でロックされると、それに伴って荷重伝達軸29の頭部29aも同様に下降状態に維持される。また、荷重伝達軸29の頭部29aとブロック本体35の間には、別の圧縮ばね36が介装されているため、このときブロック本体35も下降状態に維持される。
【0038】
図8は、荷重伝達軸29の軸部に嵌装されたロックリング52を示す斜視図である。
同図に示すように、ロックリング52は、荷重伝達軸29の軸部に嵌装されるリング本体部55と、リング本体部55の外周面から径方向外側に突出する4つの板状片56と、を有している。4つの板状片56は、リング本体部55の外周面から90°間隔で突設されている。各板状片56は、上端部を除き、リング本体部55の径方向に沿って延びる矩形断面がリング本体部55の軸方向に沿って連続している。各板状片56の上端部には、カム面56aが形成されている。カム面56aは、板状片56をリング本体部55の径方向外側から見た側面視で、例えば、右方向に斜め下方に傾斜している。すべての板状片56のカム面56aは、同方向に同角度傾斜している。
【0039】
図9は、操作突起15のボス部27を下方側から見た斜視図である。
同図に示すように、操作突起15のボス部27の下端に設けられた回転誘起カム51は、ボス部27の外周の一方向に向かって上方傾斜したカム面51aと下方傾斜したカム面51bとがボス部27の周域に亘って連続して形成されたカムである。本実施形態の場合、上方傾斜したカム面51aと下方傾斜したカム面51bの間の谷部が8つ設けられている。回転誘起カム51のいずれかのカム面51aは、ロックリング52の板状片56に設けられたカム面56aと摺動自在に面接触する。このとき、ロックリング52が圧縮ばね53の付勢力によってボス部27の方向に押し付けられると、ロックリング52には、カム面51a,56aの摺動に起因した一方向の回転が誘起される。
【0040】
図10は、筒状壁21cの内周部を支持ブラケット21の下方から見た図である。
筒状壁21cの内周部の下方領域には、上方領域よりも内径の大きい円形状の窪み部57が形成されている。筒状壁21cの内周部の窪み部57よりも上方側の内径の小さい領域には、筒状壁21cの軸方向に沿って上下に貫通する略矩形状の8つのガイド溝31が形成されている。ガイド溝31は、筒状壁21cの内周面に周方向に等間隔に離間して形成されている。筒状壁21cの内周面に形成されるガイド溝31は、周方向に沿って一つおきに溝深さが深くなっている。以下では、両者を区別する場合には、溝深さが深いものを大ガイド溝31aと呼び、溝深さの浅いものを小ガイド溝31bと呼ぶ。大ガイド溝31aは、筒状壁21cの内周面に90°間隔に離間して配置され、小ガイド溝31bは、筒状壁21cの内周面に大ガイド溝31aと45°離間して配置されている。
大ガイド溝31aの溝深さは、ロックリング52の板状片56が通過可能な深さに形成されている。これに対し、小ガイド溝31bの溝深さは、ロックリング52の板状片56が通過不能な深さに形成されている。
【0041】
また、筒状壁21c内の窪み部57の上壁下面には、筒状壁21cの円周方向に沿って第1傾斜カム面58と第2傾斜カム面59が交互に形成されている。具体的には、第1傾斜カム面58と第2傾斜カム面59は、円周方向で隣接する大ガイド溝31aの間に各一つずつ隣接して形成されている。第1傾斜カム面58は、一の大ガイド溝31aの一方の側端部(筒状壁21cの周方向に関しての一方の側端部)から隣接する小ガイド溝31bの外縁部に亘る範囲に形成されている。第2傾斜カム面59は、小ガイド溝31bの外縁部の終端位置(周方向の終端位置)から隣接する大ガイド溝31aの他方の側端部(筒状壁21cの周方向に関しての他方の側端部)に亘る範囲に形成されている。第1傾斜カム面58と第2傾斜カム面59は、筒状壁21cの円周方向に沿って同様に上方傾斜している。
図10では、筒状壁21cの内周部を下方から見ているため、周方向に沿って紙面奥側に次第に窪むように傾斜している。第1傾斜カム面58と第2傾斜カム面59は、例えば、
図10の反時計回り方向に向かって上方に傾斜している。
また、第2傾斜カム面59の第1傾斜カム面58と隣接する側の端部には、下方に向かって垂下する規制壁60が形成されている。第1傾斜カム面58と第2傾斜カム面59の間は、規制壁60を挟んで段差状に形成されている。
なお、ロックリング52の変位を制御する筒状壁21c内の変位制御部54は、大ガイド溝31a、第1傾斜カム面58、規制壁60、第2傾斜カム面59等によって構成されている。
【0042】
図6は、操作突起15が下方に押し込まれていない初期状態の様子が示されている。
図11は、操作突起15の下面図であり、操作突起15が下方に押し込まれていないときにおける筒状壁21cとロックリング52の様子が仮想線で示されている。また、
図12は、操作突起15が初期状態から押し込み操作されたときにおけるオルタネイトロック装置50の各部の挙動を(A),(B),(C)の順に模式的に示した図である。
図6,
図11に示すように、操作突起15が初期状態のときには、ロックリング52の4つの板状片56が、筒状壁21cの内周の大ガイド溝31aに係合され、かつ、操作突起15のボス部27の8つのガイド突条30が、筒状壁21cの内周の対応するガイド溝31(大ガイド溝31aまたは小ガイド溝31b)に係合されている。
【0043】
このとき、第1制動ブロック17のブロック本体35は、支持ブラケット21によって上方変位を規制され、操作突起15は、係止爪35bによる係止によってブロック本体35によって上方変位を規制されている。また、筒状壁21cの内部では、ロックリング52が圧縮ばね53によって上方に付勢されて、
図12(A)に示すように4つの板状片56の各カム面56aがボス部27の回転誘起カム51に押し付けられている。このとき、ロックリング52には、一方向に回転させようとする力が誘起されるが、ロックリング52の実際の回転は、板状片56と大ガイド溝31aとの係合によって阻止されている。
【0044】
図13は、操作突起15が最大に押し下げられたときにおける
図6と同様の断面図であり、
図14は、操作突起15が最大に押し下げられたときにおける
図11と同様の操作突起15の下面図である。
作業者による足踏み操作等によって操作突起15が下方に押し下げられると、操作突起15のボス部27の下降に伴って荷重伝達軸29とロックリング52とが下方に押し下げられる。このとき、第1制動ブロック17のブロック本体35は、圧縮ばね36を介して荷重伝達軸29とともに下降する。ただし、ブロック本体35の下端が、
図13に示すように床面F上に接地すると、ブロック本体35の下降が停止して、圧縮ばね36が次第に押し縮められる。
【0045】
図13に示すように、操作突起15が最下端位置の近傍まで押し下げられると、ロックリング52がボス部27の下端とともに筒状壁21c内の窪み部57に抜け出る。ロックリング52は、ボス部27の下端とともに窪み部57に抜け出ると、大ガイド溝31aによる板状片56の拘束が無くなり、ボス部27の下端の回転誘起カム51による回転誘起作用によって、
図12(B)に示すように微小量一方向に回転する。このとき、板状片56のカム面56aが回転誘起カム51のカム面51aにガイドされ、回転誘起カム51の隣接するカム面51a,51b間の谷位置まで板状片56が変位する。
なお、このとき第1制動ブロック17のブロック本体35は床面F上に接地し、圧縮ばね36は所定量押し縮められている。
【0046】
図15は、第1制動ブロック17がロックされたときにおける
図6と同様の断面図であり、
図16は、第1制動ブロック17がロックされたときにおける
図11と同様の操作突起15の下面図である。
上記の状態から操作突起15に加えられていた押し下げ力が解除されると、荷重伝達軸29が、圧縮ばね53の反力を受け、操作突起15とともに所定量に上昇する。このとき、操作突起15のボス部27の下端(回転誘起カム51)は、
図12(c)に示すように筒状壁21c内の窪み部57よりも上方側領域に没する(上昇する)。この結果、ロックリング52の板状片56とボス部27の下端との接触が無くなり、板状片56のカム面56aが窪み部57の上壁の第1傾斜カム面58に当接するようになる。これにより、板状片56のカム面56aが第1傾斜カム面58に対して摺動し、板状片56が規制壁60に当接した時点でロックリング52の回転が規制される。このときロックリング52は、
図16に示すように初期位置から約45°回転する。
【0047】
ロックリング52は、初期位置から45°回転すると、各板状片56が窪み部57の上壁のうちの小ガイド溝31bの外縁部の下方に位置されるため、各板状片56が第1傾斜カム面58に当接したまま上方変位を規制される。これにより、圧縮ばね53を介して荷重伝達軸29の頭部29aの後退変位が規制され、さらに別の圧縮ばね36を介してブロック本体35の後退変位も規制される。このとき、作業者の足踏みによる操作突起15に対する荷重入力が完全に除去されると、圧縮ばね36,53が伸び方向に形状復帰し、下部脚杆6Aの延出端領域の全体が上方に持ち上がる。この結果、第1制動ブロック17の下端(ブロック本体35)は、一定量下方に突出した状態でロックされる。
【0048】
また、この状態から操作突起15が再度踏み込まれると、操作突起15のボス部27の下端の回転誘起カム51が窪み部57内に再進入し、回転誘起カム51のカム面51aが、
図12(B)と同様にロックリング52を微小量一定方向に回転させる。このとき、ロックリング52の板状片56は、窪み部57の上壁の第2傾斜カム面59と下方で一部ラップする位置に位置される。
【0049】
この後、操作突起15に加えられていた押し下げ力が解除されると、荷重伝達軸29が圧縮ばね36の反力を受けて上昇し、回転誘起カム51が板状片56と非接触となる。これにより、板状片56のカム面56aが第2傾斜カム面59に当接し、カム面56aが第2傾斜カム面59と摺動することで、ロックリング52をさらに45°回転させる。この結果、ロックリング52の板状片56の位置が、筒状壁21cの大ガイド溝31a位置と一致し、ロックリング52が操作突起15とともに初期位置まで上昇する(
図6参照)。
【0050】
以上の構成において、什器1(脚部材2)をキャスタ8a,8b,8Aの接地による可動状態から、第1,第2制動ブロック17,19の接地による制動状態に切り換えるときには、作業者が操作突起15を押し下げ操作する。操作突起15が押し下げられると、第1制動ブロック17が下方に突出して床面Fに接地し、一方の下部脚杆6Aの第1領域a1が制動状態とされる。また、このとき操作突起15の押し下げ動作(第1制動ブロック17の押し下げ方向の動作)が、第1変換機構であるカム壁28,32の摺動によって中間可動体24の水平方向の変位に変換され、中間可動体24の水平方向の変位が、第2変換機構であるワイヤ33と昇降リンク機構37を介して第2制動ブロック19の下方への突出動作に変換される。これにより、第2制動ブロック19が下方に突出して床面Fに接地し、他方の下部脚杆6Bの第2領域a2が制動状態とされる。
【0051】
したがって、本実施形態の什器1では、可動状態から制動状態への切り換え時には、第1制動ブロック17と第2制動ブロック19が下方にほぼ直線的に変位することから、第1,第2制動ブロック17,19と床面Fとの間に擦れが生じるのを抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態の什器1は、床面Fに接地する第1,第2制動ブロック17,19が上下に進退動作する構成のため、操作突起15による制動切換操作時や、制動状態のときに構成部材に大きなモーメントが作用し難い。このため、本実施形態の什器1を採用した場合には、構成部材の負荷の増大を招くことなく制動状態を安定して維持することができる。
【0053】
また、本実施形態の什器1は、中間可動体24の略水平方向の動作を第2制動切換機構16の側に伝達するワイヤ33と、ワイヤ33による引き操作を、第2制動ブロック19を押し下げる方向の動作に変換する昇降リンク機構37(動作変換部)と、を備えている。このため、下部脚杆6A,6Bの限られた狭いスペースにワイヤ33を配索することにより、一方の下部脚杆6Aに配置された第1制動ブロック17の押し下げ方向の動作を、他方の下部脚杆6Bに配置された第2制動切換機構16に確実に伝達することができる。
【0054】
さらに、本実施形態の什器1は、下部脚杆6Aに支持ブラケット21が取り付けられ、支持ブラケット21に、中間可動体24の略水平方向の動作を案内する水平ガイド機能部22と、操作突起15の上下方向の動作を案内する鉛直ガイド機能部23と、が一体に設けられている。このため、制動操作時には、下方に押し込み操作される操作突起15(制動操作部)と、操作突起15の操作荷重を受けて略水平方向に変位する中間可動体24とが同じ支持ブラケット21によって案内されることになる。したがって、本構成を採用した場合には、操作突起15と中間可動体24とを精度良く連動させることができる。
特に、本実施形態では、一方の下部脚杆6Aの側から他方の下部脚杆6Bの側に動作を伝達する手段としてワイヤ33を採用しているため、中間可動体24にワイヤ33を通して多様な方向の反力を受けることがある。しかし、本実施形態の什器1では、中間可動体24が操作突起15と同じ支持ブラケット21によって作動を案内されることから、中間可動体24と操作突起15との位置関係が変化することがなく、操作突起15と中間可動体24の連動作動を常に安定させることができる。
【0055】
また、本実施形態の什器1では、第1制動ブロック17を突出状態でロックするロック部として、オルタネイトロック装置50が採用されているため、操作突起15の繰り返しの押し下げ操作により、第1制動ブロック17の突出位置でのロックとロック解除とを容易に実行することができる。
【0056】
また、本実施形態の什器1では、制動操作部である操作突起15が足踏み式とされている。このため、操作突起15を足裏による踏み込みによって容易に操作することができる。さらに、本実施形態の什器1では、足踏み式によって大きな操作力を第1制動切換機構14と第2制動切換機構16とに作用させることができるため、制動切換時に、第1制動ブロック17と第2制動ブロック19とを大きな荷重で下方に押し下げ、脚部材2の確実な制動を得ることができる。
【0057】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、制動操作部である操作突起15が第1制動ブロック17を直接下方に押し下げる構成とされているが、制動操作部は、回転操作可能に構成し、カム機構等の作動変換機構を介して第1制動ブロック17を下方に押し下げる構成としても良い。
上記の実施形態においては、弾性復元機構の一例として引っ張りばねが用いられているが、弾性復元機構は、引っ張りばねに限るものでなく、圧縮ばねや、捩りばね、ゴム弾性体、ガス圧を用いた機構等であっても良い。また、上記の実施形態では、弾性復元機構の一例である引っ張りばねがワイヤの端部に結合されているが、引っ張りばね等の弾性復元機構は、第1制動切換機構と第2制動切換機構の間の操作力伝達経路中であれば、ワイヤの端部以外の部位に介装するようにしても良い。
【0058】
また、上記の実施形態の場合、第1制動切換機構と第2制動切換機構は、制動ブロックが昇降操作される構成とされているが、逆にキャスタのような移動用接地部が昇降操作される構成であっても良い。移動用接地部もキャスタに限るものでなく、床面上を移動できるものであれば、他の手段を用いたものであっても良い。
【0059】
さらに、第1制動ブロックの突出状態でのロックとロック解除を制御するオルタネイトロック装置は、上記の構成に限定されるものではなく、例えば、ハートカム等の他の形態のものであっても良い。また、第1制動ブロックの突出状態でのロックは、必ずしもオルタネイトロック装置である必要はなく、例えば、ロック解除部が別に設けられていても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 什器
2 脚部材(什器本体)
8a キャスタ(移動用第1接地部)
8b キャスタ(移動用第2接地部)
14 第1制動切換機構
15 操作突起(制動操作部)
16 第2制動切換機構
17 第1制動ブロック
19 第2制動ブロック
21 支持ブラケット
22 水平ガイド機能部
23 鉛直ガイド機能部
24 中間可動体
25 動滑車
28 カム壁(第1動作変換機構)
32 カム壁(第1動作変換機構)
33 ワイヤ(第2動作変換機構)
37 昇降リンク機構(動作変換部,第2動作変換機構)
50 オルタネイトロック装置(ロック部)
a1 第1領域
a2 第2領域