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特許7258538超音波診断装置、医用情報処理装置、医用情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】超音波診断装置、医用情報処理装置、医用情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20230410BHJP
【FI】
A61B8/14
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018234204
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020092941
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 康彦
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-171317(JP,A)
【文献】特開2002-140690(JP,A)
【文献】国際公開第2006/068271(WO,A1)
【文献】特開2015-114172(JP,A)
【文献】特開2017-074320(JP,A)
【文献】国際公開第2017/069699(WO,A1)
【文献】特開2013-226411(JP,A)
【文献】特開2016-093302(JP,A)
【文献】特開2013-236973(JP,A)
【文献】特開2011-078626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
G06T 1/00,7/00-7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1心周期にわたって被検体の心室を含む領域が撮像された複数のボリュームデータを取得する取得部と、
前記複数のボリュームデータにおいて、前記心室の輪郭に対応する複数の追跡点の位置を追跡することで、前記心室の組織の動きを推定する推定部と、
前記推定部による推定結果に基づいて、前記心室に関する壁運動情報及び容積情報のうち少なくとも一方を含む第1算出情報を算出する第1算出部と、
前記複数の追跡点のうち鞍形の弁輪位置に対応する複数の弁輪追跡点を、前記心室における血流の流入又は流出に関する弁の弁輪位置に対応する関心領域として設定する設定部と、
前記推定部による推定結果および前記複数の弁輪追跡点の位置に基づいて、前記関心領域の大きさ又は形状を表す第2算出情報を算出する第2算出部と、
前記第1算出情報及び前記第2算出情報を出力する出力制御部と
を備える、超音波診断装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記複数の追跡点のうち弁輪位置に対応する任意数の指定点をユーザから受け付け、受け付けた任意数の指定点の間を鞍形に沿った補間処理により補間することで、前期複数の弁輪追跡点を設定する、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記心室として、右心室を含む領域が撮像された前記複数のボリュームデータを取得する、
請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記弁輪位置として、三尖弁輪又は肺動脈弁輪のうち少なくとも一方に対応する位置に、前記関心領域を設定する、
請求項1~3のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記出力制御部は、前記関心領域を表示させ、
前記設定部は、表示された前記関心領域を変更する入力操作を操作者から受け付けて、受け付けた前記入力操作に応じて前記関心領域を変更する、
請求項1~4のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記出力制御部は、前記ボリュームデータから生成されたレンダリング画像上に、前記関心領域を表示させる、
請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記第2算出部は、前記第2算出情報として、弁輪周囲長、所定位置での弁輪径、弁輪部の断面積、平均的な弁輪径、及び弁輪部の局所的な高低差のうち少なくとも一つ以上のパラメータを、心時相ごとに算出する、
請求項1~6のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記第2算出部は、操作者により指定されたMPR(Multi Planer Reconstruction)断面画像上における前記関心領域の位置での弁輪径を算出する、
請求項7に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記第2算出部は、前記関心領域に含まれる複数の弁輪追跡点の重心位置と、各弁輪追跡点の位置とを用いて、前記弁輪部の曲面としての断面積を算出する、
請求項7に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記第2算出部は、前記弁輪部の断面積が円の面積に等しいと仮定して、前記平均的な弁輪径を算出する、
請求項9に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記出力制御部は、前記第2算出情報を、時間変化曲線、所定の心時相での値、前記1心周期内での最大値、及び前記1心周期内での最小値のうち少なくとも一つ以上の情報として出力する、
請求項1~10のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記第1算出部は、前記壁運動情報として、右心室の全体的又は局所的に定義される、所定方向の変位、所定方向のストレイン、及び面積変化率のうち少なくとも一つを算出する、
請求項1~11のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項13】
少なくとも1心周期にわたって被検体の心室を含む領域が撮像された複数のボリュームデータを取得する取得部と、
前記複数のボリュームデータにおいて、前記心室の輪郭に対応する複数の追跡点の位置を追跡することで、前記心室の組織の動きを推定する推定部と、
前記推定部による推定結果に基づいて、前記心室に関する壁運動情報及び容積情報のうち少なくとも一方を含む第1算出情報を算出する第1算出部と、
前記複数の追跡点のうち鞍形の弁輪位置に対応する複数の弁輪追跡点を、前記心室における血流の流入又は流出に関する弁の弁輪位置に対応する関心領域として設定する設定部と、
前記推定部による推定結果および前記複数の弁輪追跡点の位置に基づいて、前記関心領域の大きさ又は形状を表す第2算出情報を算出する第2算出部と、
前記第1算出情報及び前記第2算出情報を出力する出力制御部と
を備える、医用情報処理装置。
【請求項14】
少なくとも1心周期にわたって被検体の心室を含む領域が撮像された複数のボリュームデータを取得し、
前記複数のボリュームデータにおいて、前記心室の輪郭に対応する複数の追跡点の位置を追跡することで、前記心室の組織の動きを推定し、
前記推定する処理による推定結果に基づいて、前記心室に関する壁運動情報及び容積情報のうち少なくとも一方を含む第1算出情報を算出し、
前記複数の追跡点のうち鞍形の弁輪位置に対応する複数の弁輪追跡点を、前記心室における血流の流入又は流出に関する弁の弁輪位置に対応する関心領域として設定し、
前記推定する処理による推定結果および前記複数の弁輪追跡点の位置に基づいて、前記関心領域の大きさ又は形状を表す第2算出情報を算出し、
前記第1算出情報及び前記第2算出情報を出力する
各処理をコンピュータに実行させる、医用情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置、医用情報処理装置、医用情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体の部位(例えば心臓等の臓器)の機能を客観的かつ定量的に評価するために、部位が撮像された3次元動画データを解析する技術が種々提案されている。例えば、超音波診断装置においては、心機能を評価するために、心臓壁の動きを解析する壁運動解析(Wall Motion Tracking:WMT)がある。WMTでは、例えば、超音波プローブを用いて収集された心臓の3次元動画データに対し、局所領域のパターンマッチングを用いた追跡処理(トラッキング)が行われる。この結果、心臓の左心室や右心室に関する心筋ストレイン(strain)や心臓容積等の解析結果が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-093302号公報
【文献】特表2002-140690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、弁輪部の大きさや形状を適切に解析することができる超音波診断装置、医用情報処理装置、医用情報処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る超音波診断装置は、取得部と、推定部と、第1算出部と、設定部と、第2算出部と、出力制御部とを備える。取得部は、少なくとも1心周期にわたって被検体の心室を含む領域が撮像された複数のボリュームデータを取得する。推定部は、前記複数のボリュームデータを用いて、前記心室の組織の動きを推定する。第1算出部は、前記推定部による推定結果に基づいて、前記心室に関する壁運動情報及び容積情報のうち少なくとも一方を含む第1算出情報を算出する。設定部は、前記心室における血流の流入又は流出に関する弁の弁輪位置に対応する関心領域を設定する。第2算出部は、前記推定部による推定結果に基づいて、前記関心領域の大きさ又は形状に関する第2算出情報を算出する。出力制御部は、前記第1算出情報及び前記第2算出情報を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る推定機能により設定される初期輪郭について説明するための図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る設定機能の処理を説明するための図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る設定機能の処理を説明するための図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る出力制御機能の処理を説明するための図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る出力制御機能の処理を説明するための図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理手順を示すフローチャートである。
図8図8は、第2の実施形態に係る第2算出機能の処理を説明するための図である。
図9図9は、その他の実施形態に係る医用情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態に係る超音波診断装置、医用情報処理装置、医用情報処理プログラムを説明する。なお、以下に説明する実施形態は、以下の説明に限定されるものではない。以下に説明する実施形態は、処理内容に矛盾が生じない範囲で他の実施形態や従来技術との組み合わせが可能である。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置100の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置100は、超音波プローブ101、入力インタフェース102、ディスプレイ103、心電計104、及び装置本体105を有する。超音波プローブ101、入力インタフェース102、ディスプレイ103、及び心電計104は、装置本体105と通信可能に接続される。
【0009】
超音波プローブ101は、複数の振動子を有し、これら複数の振動子は、装置本体105が有する送受信回路110から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ101は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ101は、振動子に設けられる整合層と、振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ101は、装置本体105と着脱自在に接続される。
【0010】
超音波プローブ101から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ101が有する複数の振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0011】
入力インタフェース102は、操作者から各種の指示及び情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インタフェース102は、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換して装置本体105の処理回路170に出力する。例えば、入力インタフェース102は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。なお、入力インタフェース102は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース102の例に含まれる。
【0012】
ディスプレイ103は、各種の情報及び画像を表示する。具体的には、ディスプレイ103は、処理回路170から送られる情報及び画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ103は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。なお、超音波診断装置100が備える出力装置としては、ディスプレイ103に限らず、例えば、スピーカーを備えていても良い。例えば、スピーカーは、装置本体105の処理状況を操作者に通知するために、ビープ音などの所定の音声を出力する。
【0013】
心電計104は、被検体Pの生体信号として、被検体Pの心電波形(Electrocardiogram:ECG)を取得する。心電計104は、取得した心電波形を装置本体105に送信する。なお、本実施形態では、被検体Pの心臓の心時相に関する情報を取得する手段の一つとして、心電計104を用いる場合を説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、超音波診断装置1は、心音図の第II音(第二音)の時間若しくはスペクトラムドプラによる心臓の駆出血流の計測により求まる大動脈弁閉鎖(Aortic Valve Close:AVC)時間を取得することで、被検体Pの心臓の心時相に関する情報を取得してもよい。
【0014】
装置本体105は、超音波プローブ101が受信した反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する装置である。図1に示す装置本体105は、超音波プローブ101が受信した2次元の反射波データに基づいて2次元の超音波画像データを生成可能な装置である。また、装置本体105は、超音波プローブ101が受信した3次元の反射波データに基づいて3次元の超音波画像データを生成可能な装置である。
【0015】
装置本体105は、図1に示すように、送受信回路110、信号処理回路120、画像生成回路130、画像メモリ140、記憶回路150、ネットワーク(network:NW)インタフェース160、及び処理回路170を有する。送受信回路110、信号処理回路120、画像生成回路130、画像メモリ140、記憶回路150、NWインタフェース160、及び処理回路170は、互いに通信可能に接続される。
【0016】
送受信回路110は、パルス発生器、送信遅延部、パルサ等を有し、超音波プローブ101に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延部は、超音波プローブ101から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延部は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
【0017】
なお、送受信回路110は、処理回路170の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0018】
また、送受信回路110は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延部、加算器等を有し、超音波プローブ101が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延部は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延部によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0019】
ここで、送受信回路110からの出力信号の形態は、RF(Radio Frequency)信号と呼ばれる位相情報が含まれる信号である場合や、包絡線検波処理後の振幅情報である場合等、種々の形態が選択可能である。
【0020】
信号処理回路120は、送受信回路110から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。また、信号処理回路120は、送受信回路110から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0021】
なお、図1に例示する信号処理回路120は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、信号処理回路120は、2次元の反射波データから2次元のBモードデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。また、信号処理回路120は、2次元の反射波データから2次元のドプラデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成する。
【0022】
画像生成回路130は、信号処理回路120が生成したデータから超音波画像データを生成する。すなわち、画像生成回路130は、信号処理回路120が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度で表した2次元のBモード画像データを生成する。また、画像生成回路130は、信号処理回路120が生成した2次元のドプラデータから移動体情報を表す2次元のドプラ画像データを生成する。2次元のドプラ画像データは、速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらを組み合わせた画像である。また、画像生成回路130は、信号処理回路120が生成した1走査線上のBモードデータの時系列データから、Mモード画像データを生成することも可能である。また、画像生成回路130は、信号処理回路120が生成したドプラデータから、血流や組織の速度情報を時系列に沿ってプロットしたドプラ波形を生成することも可能である。
【0023】
ここで、画像生成回路130は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成回路130は、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成回路130は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像生成回路130は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
【0024】
更に、画像生成回路130は、ボリュームデータをディスプレイ103にて表示するための各種の2次元画像データを生成するために、ボリュームデータに対してレンダリング処理を行う。画像生成回路130が行うレンダリング処理としては、断面再構成法(MPR:Multi Planer Reconstruction)を行ってボリュームデータからMPR断面画像データを生成する処理がある。また、画像生成回路130が行うレンダリング処理としては、ボリュームデータに対して「Curved MPR」を行う処理や、ボリュームデータに対して「Maximum Intensity Projection」を行う処理がある。また、画像生成回路130が行うレンダリング処理としては、ボリュームレンダリング(VR:Volume Rendering)処理やサーフェスレンダリング(SR:Surface Rendering)処理がある。
【0025】
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成回路130が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。画像生成回路130は、スキャンコンバート処理前の2次元超音波画像データである「2次元のBモードデータや2次元のドプラデータ」から、表示用の2次元超音波画像データである「2次元のBモード画像データや2次元ドプラ画像データ」を生成する。
【0026】
画像メモリ140は、画像生成回路130が生成した表示用の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ140は、信号処理回路120が生成したデータを記憶することも可能である。画像メモリ140が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像生成回路130を経由して表示用の超音波画像データとなる。
【0027】
なお、画像生成回路130は、超音波画像データと、当該超音波画像データを生成するために行なわれた超音波走査の時間とを、心電計104から送信された心電波形に対応付けて画像メモリ140に格納する。後述する処理回路170は、画像メモリ140に格納されたデータを参照することで、超音波画像データを生成するために行なわれた超音波走査時の心時相を取得することができる。
【0028】
記憶回路150は、各種のデータを記憶する。例えば、記憶回路150は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、記憶回路150は、必要に応じて、画像メモリ140が記憶する画像データの保管等にも使用される。例えば、記憶回路204は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク(Hard Disk Drive:HDD)、光ディスク等によって実現される。また、記憶回路150が記憶するデータは、NWインタフェース160を経由して、外部装置へ転送することができる。なお、外部装置は、例えば、画像診断を行う医師が使用するPC(Personal Computer)やタブレット端末、画像を保管する記憶装置、プリンター等である。
【0029】
NWインタフェース160は、装置本体105と外部装置との間で行われる通信を制御する。具体的には、NWインタフェース160は、外部装置から各種の情報を受信し、受信した情報を処理回路170に出力する。例えば、NWインタフェース160は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0030】
なお、第1の実施形態では、超音波診断装置100がネットワークNWを介して外部装置(情報処理装置や記憶装置等)と通信可能に接続される場合を説明するが、これに限定されるものではない。例えば、超音波診断装置100は、ネットワークNWを介さずとも、記憶媒体、又は、取り外し可能な記憶装置(外付けHDD装置等)等を介して外部装置と情報の受け渡しを行うことが可能である。
【0031】
処理回路170は、超音波診断装置1の処理全体を制御する。具体的には、処理回路170は、入力インタフェース102を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路150から読み込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路110、信号処理回路120、及び画像生成回路130の処理を制御する。また、処理回路170は、画像メモリ140や記憶回路150が記憶する表示用の超音波画像データをディスプレイ103にて表示するように制御する。
【0032】
また、処理回路170は、取得機能171、推定機能172、第1算出機能173、設定機能174、第2算出機能175、及び出力制御機能176を実行する。ここで、取得機能171は、取得部の一例である。推定機能172は、推定部の一例である。第1算出機能173は、第1算出部の一例である。設定機能174は、設定部の一例である。第2算出機能175は、第2算出部の一例である。出力制御機能176は、出力制御部の一例である。なお、処理回路170が実行する取得機能171、推定機能172、第1算出機能173、設定機能174、第2算出機能175、及び出力制御機能176の処理内容については、後述する。
【0033】
ここで、例えば、図1に示す処理回路170の構成要素である取得機能171、推定機能172、第1算出機能173、設定機能174、第2算出機能175、及び出力制御機能176が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路150に記録されている。処理回路170は、各プログラムを記憶回路150から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路170は、図1の処理回路170内に示された各機能を有することとなる。
【0034】
なお、本実施形態においては、単一の処理回路170にて、以下に説明する各処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0035】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置100の構成について説明した。かかる構成のもと、超音波診断装置100は、弁輪部の大きさや形状を適切に解析するために、以下の処理を実行する。
【0036】
なお、以下の説明では、超音波診断装置100が3次元画像を用いた壁運動解析(Wall Motion Tracking:WMT)により右心室の壁運動を解析する場合について説明するが、左心室の壁運動を解析することも可能である。
【0037】
取得機能171は、少なくとも1心周期にわたって被検体Pの心室を含む領域が撮像された複数のボリュームデータを取得する。例えば、取得機能171は、被検体Pの心室として、右心室を含む領域が撮像された複数のボリュームデータを取得する。
【0038】
例えば、操作者は、超音波プローブ101により、被検体Pの右心室を含む領域の3次元走査を行って、心筋が描出された3次元の超音波画像データの動画像データの撮像を行う。この動画像データは、例えば、Bモード用の輝度信号として収集された時相ごとの超音波画像データを含む超音波画像データ群である。ここで、「時相」とは、心臓の周期的な運動における任意の1時点(タイミング)を指し、「心時相」とも称される。
【0039】
そして、画像生成回路140は、心臓の右心室の動画像データを生成し、生成した動画像データを画像メモリ150に格納する。そして、操作者は、処理対象の区間として、例えば、心電図におけるR波から次のR波までの1心拍分の区間を設定する。なお、本実施形態は、処理対象の区間が2心拍分の区間や3心拍分の区間として設定される場合であっても適用可能である。
【0040】
そして、取得機能171は、例えば、超音波画像データ群を画像メモリ150から読み出す。この超音波画像データ群は、操作者が設定した1心拍分の区間に含まれる複数のフレームの3次元の超音波画像データ(ボリュームデータ)を含む。
【0041】
推定機能172は、複数のボリュームデータを用いて、心室の組織の動きを推定する。例えば、推定機能172は、3次元のWMT(3DWMT)により、右心室の組織の動き情報を推定する。
【0042】
まず、推定機能172は、以下のような処理手順により、ボリュームデータに含まれる対象部位(右心室)に初期輪郭を設定する。ここで、右心室の領域は、右心室以外の領域との境界部位により規定される。本実施形態において、境界部位は、右心室へ血液を流入させるための「三尖弁輪を含む管状の流入部:Inlet」、及び、右心室から血液を流出させるための「肺動脈弁輪を含む管状の流出部:RVOT」である。
【0043】
例えば、操作者は、取得機能171によって取得された時系列のボリュームデータについて、任意の心時相を指定する。ここで指定される任意の心時相は、1心拍分の区間に含まれるフレームのうちの任意のフレームであり、例えば、拡張末期時相(最初のR波時相)が好適である。そして、操作者によって任意の心時相が指定されると、推定機能172は、指定された心時相における超音波画像データに対して、3次元的な初期輪郭を設定する。
【0044】
ここで、3次元的な初期輪郭は、例えば、複数の基準MPR断面それぞれに対して入力された2次元的な輪郭線の補間処理により生成される。例えば、操作者は、複数の基準MPR断面それぞれに対して、右心室の内膜の輪郭を表す輪郭線を入力する。そして、推定機能172は、それぞれの基準MPR断面に入力された輪郭線の位置を3次元の超音波画像データの座標に変換する。そして、推定機能172は、3次元の超音波画像データにおける各輪郭線の間の3次元的な輪郭形状(初期輪郭)を、各輪郭線間の空間的な補間処理により生成する。このように、推定機能172は、右心室の内膜の初期輪郭を設定する。また、右心室の外膜の初期輪郭は、内膜面から所定の壁厚(4~6mm程度)位置として設定するのが好適である。
【0045】
図2は、第1の実施形態に係る推定機能172により設定される初期輪郭について説明するための図である。図2には、右心室に設定される初期輪郭(VE)を例示する。図2において、実線で示すメッシュ状構造は、右心室の内膜に設定される初期輪郭(VI)に対応し、破線で示すメッシュ状構造は、右心室の外膜に設定される初期輪郭(VO)に対応する。
【0046】
図2に示すように、推定機能172は、初期時相における超音波画像データのうち、右心室の内膜に対応する位置に3次元的な初期輪郭(VE)を設定する。ここで、初期時相としては、任意の心時相を適用可能であるが、拡張末期(End-Diastole:ED)時相が好適である。また、初期輪郭(VE)におけるメッシュの交点は、右心室の内輪郭若しくは外輪郭を構成する「構成点」である。この構成点は、組織の動き情報を算出するために経時的に追跡される追跡点に対応する。
【0047】
そして、推定機能172は、初期輪郭上の複数の位置にアドレス番号を設定する。例えば、推定機能172は、設定された初期輪郭(VE)を構成する複数の追跡点に対して、アドレス番号を設定する。アドレス番号は、各追跡点を識別するために付与される番号であり、例えば、心臓の内膜における各追跡点の位置に基づいて定義される。なお、アドレス番号は、番号(数字)に限らず、例えば、文字、記号等、各追跡点の位置を識別可能な識別情報であればよい。
【0048】
例えば、推定機能172は、心臓の内膜の各追跡点の位置をP_endo(t、h、d)と定義する。ここで、tは、1心拍分の区間に含まれるフレーム(心時相)を表す。また、hは、長軸方向(高さ)のアドレス番号を表す。また、dは、円周方向(方位)のアドレス番号を表す。具体的には、推定機能172は、初期時相であるED時相をt=0として設定する。また、推定機能172は、円周方向の基準位置として、例えば、右心室の三尖弁側の端部を設定し、その位置の追跡点のdを0とする。つまり、この基準位置にある追跡点の位置は、P_endo(0、h、0)と表される。そして、推定機能172は、基準位置の追跡点から円周方向にある追跡点を順に、d=0,1,2,3・・・とアドレス番号を設定する。また、推定機能172は、3次元の初期輪郭のうち、心尖部から最も遠い環状輪郭の位置を長軸方向の基準位置として、その位置の追跡点のhを0とする。つまり、この基準位置にある追跡点の位置は、P_endo(0、0、d)と表される。そして、推定機能172は、基準位置の追跡点から心尖方向にある追跡点を順に、h=0,1,2,3・・・とアドレス番号を設定する。
【0049】
このように、推定機能172は、ボリュームデータにおける右心室の内膜に対応する位置に、アドレス番号が付与された追跡点(構成点)を複数設定する。なお、初期輪郭の設定は、上記の用手的な操作に限定されるものではなく、内膜輪郭形状のデータベース(例えば、過去に設定された輪郭の統計データベース)を用いて、推定機能172が自動的もしくは半自動的に画像中の境界を検出することとしても良い。
【0050】
例えば、推定機能172は、複数の追跡点が設定された初期時相におけるボリュームデータと、次の時相におけるボリュームデータとを用いてパターンマッチングを含む追跡処理を行うことで、ボリュームデータ群に含まれる複数の超音波画像データにおける複数の追跡点の位置を追跡する。
【0051】
例えば、推定機能172は、ボリュームデータ群に含まれるフレームt=0のボリュームデータに対して、初期輪郭に対応する位置に複数の追跡点が設定されると、パターンマッチングを含む処理によって、他のフレームtにおける各追跡点の位置を追跡する。具体的には、推定機能172は、複数の追跡点が設定済みのフレームのボリュームデータと、そのフレームと隣り合うフレームのボリュームデータとの間で、繰り返しパターンマッチングを行う。すなわち、推定機能172は、t=0のボリュームデータにおける心臓の内膜の各追跡点P_endo(0、h、d)を起点として、t=0,1,2,3・・・の各フレームのボリュームデータにおける各追跡点P_endo(t、h、d)の位置を追跡する。この結果、推定機能172は、1心拍分の区間に含まれる各フレームについて、心臓の内膜を構成する各追跡点の座標情報を求める。
【0052】
そして、推定機能172は、ボリュームデータ群に含まれる複数の超音波画像データにおける複数の追跡点の位置を用いて、超音波画像データごとに組織の動きを表す動き情報を算出する。推定機能172によって算出される動き情報は、算出に用いた各追跡点(追跡点)に与えられる。具体的には、例えば、心臓の内膜の各追跡点から算出される動き情報は、V_endo(t、h、d)と定義される。そして、推定機能172は、算出した動き情報を画像メモリ150に格納する。
【0053】
このように、推定機能172は、心室の輪郭に沿って配置された複数の追跡点を経時的に追跡することで、動き情報を推定する。なお、ここでは、一例として、右心室の内膜に対する処理を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、内膜に限らず、外膜若しくは内膜と外膜の中間層に対して上述した処理が実行されてもよい。また、推定機能172は、例えば、右心室に限らず、左心室や左心房、右心房、若しくは心臓全体等、任意の所定領域に対して処理を実行してもよい。
【0054】
第1算出機能173は、推定機能172による推定結果に基づいて、心室に関する壁運動情報及び容積情報のうち少なくとも一方を含む第1算出情報を算出する。例えば、第1算出機能173は、壁運動情報として、右心室の全体的又は局所的に定義される、所定方向の変位、所定方向のストレイン、及び面積変化率のうち少なくとも一つを算出する。
【0055】
具体的には、第1算出機能173は、壁運動情報として、例えば、各追跡点の1フレームごとの局所心筋変位[mm]、2点間の距離の変化率である局所心筋ストレイン[%]、或いはこれらの時間変化である局所心筋速度[cm/s]及び局所心筋ストレインレート[1/s]等を算出する。しかしながら、壁運動情報は、これらのパラメータに限定されるものではなく、各フレームにおける複数の追跡点の座標情報を用いて算出可能なパラメータであればよい。例えば、これらの壁運動情報は、成分分離されてもよい。右心室の場合には、例えば、長軸(Longitudinal)方向に成分分離されたLongitudinal Strain(LS)や、円周(Circumferential)方向に成分分離されたCircumferential Strain(CS)等の指標が用いられる。これらの指標は、右心室の2次元画像(長軸像や短軸像)を用いた2次元のスペックルトラッキング法により算出される。また、3次元のスペックルトラッキング法においては、局所的な面積変化率(AC:Area Change ratio)が定義されてもよい。ACは成分分離が不要であるため、右心室のように複雑な形状であっても安定的な解析を可能にする。
【0056】
また、右心室の機能評価のために臨床で良く用いられている壁運動情報としては、Mモードで計測するTAPSE(三尖弁輪収縮期移動量)がある。Mモードは1次元の解析であるため、TAPSEでは三尖弁輪付近の一部について、超音波プローブ101の方向へ向かう変位成分が観察される。一方、3次元スペックルトラッキング法であれば、右心室の全領域をカバーする変位の情報が得られる。この際の変位の方向としては、超音波プローブ101を基準とするのではなく、右心室を基準とした長軸方向や、壁厚(Radial)方向の変位成分が検出可能である。また、右心室の複雑な形状に左右され難い指標として、方向への成分分離を行わない移動距離D(D=sqrt((Px(n)-Px(n0))^2+(Py(n)-Py(n0))^2+(Pz(n)-Pz(n0))^2))を用いてもよい。ただし、(Px(n),Py(n),Pz(n))は追跡点Pの位置を示し、nは時相を示し、n0は基準時相を示す。
【0057】
また、第1算出機能173は、心臓のポンプ機能の指標として、容積情報を算出する。例えば、第1算出機能173は、容積情報として、心腔内と弁の部位(境界位置)とで囲まれた3次元領域の容積を算出する。これにより、第1算出機能173は、拡張末期容積(End-Diastolic Volume:EDV)、収縮末期容積(End-Systolic Volume:ESV)、及び駆出率(Ejection Fraction:EF)等を算出する。なお、第1算出機能173が容積情報を算出する場合の心時相及び領域は、適宜変更可能である。
【0058】
このように、第1算出機能173は、推定機能172による推定結果に基づいて、第1算出情報として、右心室に関する壁運動情報及び/又は容積情報を算出する。なお、第1算出機能173により算出される壁運動情報及び容積情報としては、上記の例に限定されるものではなく、公知の如何なるパラメータも算出可能である。また、第1算出機能173により算出されるパラメータの種類は、プリセットされていても良いし、操作者により適宜選択されても良い。
【0059】
設定機能174は、心室における血流の流入又は流出に関する弁の弁輪位置に対応する関心領域(Region Of Interest:ROI)を設定する。例えば、設定機能174は、弁輪位置として、三尖弁輪又は肺動脈弁輪のうち少なくとも一方に対応する位置に、関心領域を設定する。
【0060】
図3及び図4は、第1の実施形態に係る設定機能174の処理を説明するための図である。図3には、右心室の内輪郭(内膜面)に対してサーフェスレンダリング処理を行ったレンダリング画像を例示する。図4には、心房側(頭側)から心室側(足側)を見た弁輪位置(弁輪レベル)における断面図を例示する。なお、図3に示すレンダリング画像は、例えば、特許文献1に開示の技術により生成される。ここで、レンダリング画像上のメッシュの交点は、右心室の内輪郭に配置された追跡点に対応する。また、レンダリング画像には、上述した任意の壁運動情報に応じたカラーがマッピングされる。
【0061】
例えば、設定機能174は、断面画像上で弁輪部の位置(点)の指定を操作者から受け付けることで、関心領域を設定する。三尖弁輪(Inlet)の位置を指定する場合、図3及び図4に示すように、操作者は、基準断面であるA面(A4C像)に対応する断面画像上で中隔側の弁輪位置(S)及び側壁側の弁輪位置(L)の2点を指定する。また、操作者は、B面(Colonal像)に対応する断面画像上で下壁側の弁輪位置(I)及び室上稜側の弁輪位置(C)の2点を指定する。そして、設定機能174は、操作者により指定された4点の弁輪位置(S),(L),(I),(C)の間を線形的又は非線形的に補間することで、曲線形のROI1を設定する。なお、弁輪部は鞍(saddle)形であることが知られているため、この形状に沿って補間処理を行うのが好適である。
【0062】
このように、設定機能174は、三尖弁輪に対応する輪状の境界位置にROI1を設定する。なお、同様の処理により、設定機能174は、肺動脈弁輪(RVOT)に対応する輪状の境界位置にROI2を設定する。
【0063】
なお、図3及び図4では、2つの断面画像(A面及びB面)を用いて三尖弁輪に対応する関心領域を設定する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、設定機能174は、任意の3つ以上の断面画像を用いて関心領域を設定しても良いし、任意の1つの断面画像を用いて関心領域を設定しても良い。
【0064】
また、輪状の境界位置を設定及び変更する処理としては、例えば、特許文献1に開示の技術を適用可能である。すなわち、設定機能174は、推定機能172において設定された初期輪郭の端部(心房側の端部)をそのままROI1及びROI2として設定することができる。或いは、設定機能174は、初期輪郭の端部に設定されたROI1及びROI2のそれぞれについて、輪状レベルを変更する入力操作を操作者から受け付けて、受け付けた入力操作に応じて輪状レベルを変更することもできる。
【0065】
第2算出機能175は、推定機能172による推定結果に基づいて、関心領域の大きさに関する第2算出情報を算出する。例えば、第2算出機能175は、複数の追跡点のうち関心領域に含まれる複数の追跡点の位置(座標情報)に基づいて、第2算出情報を算出する。第2算出機能175は、第2算出情報として、所定位置での弁輪径、弁輪周囲長、弁輪部の断面積、及び平均的な弁輪径のうち少なくとも一つ以上のパラメータを、心時相ごとに算出する。
【0066】
以下では一例として、三尖弁輪に対応するROI1について、所定位置での弁輪径、弁輪周囲長、弁輪部の断面積、及び平均的な弁輪径がそれぞれ算出される場合を順に説明する。なお、所定位置での弁輪径、弁輪周囲長、弁輪部の断面積、及び平均的な弁輪径は、「弁輪サイズ情報」の一例である。
【0067】
まず、「所定位置での弁輪径」の算出について説明する。例えば、第2算出機能175は、操作者により指定されたMPR断面画像上における関心領域の位置での弁輪径を算出する。例えば、第2算出機能175は、A面に対応する断面画像上に設定された中隔側の弁輪位置(S)及び側壁側の弁輪位置(L)の2点間の距離を、弁輪径「iDia_A」として算出する。また、第2算出機能175は、B面に対応する断面画像上に設定された下壁側の弁輪位置(I)及び室上稜側の弁輪位置(C)の2点間の距離を、弁輪径「iDia_B」として算出する。なお、2点間の距離は、例えば、3DWMTにおける追跡点間の位置の差分として算出可能である。
【0068】
ここで、弁輪径「iDia_A」及び弁輪径「iDia_B」は、各心時相「t」において定義可能であるので、時間変化を表す関数として算出可能である。つまり、第2算出機能175は、3DWMTにおける初期時相「t=0」において、中隔側の弁輪位置(S)及び側壁側の弁輪位置(L)にそれぞれ対応する2つの追跡点を設定する。そして、第2算出機能175は、設定した2つの追跡点の位置を各心時相「t」において追跡しながら2点間の距離を算出することで、弁輪径「iDia_A(t)」を取得する。また、同様の処理により、第2算出機能175は、弁輪径「iDia_B(t)」を取得する。
【0069】
なお、操作者は、A面及びB面に対応する断面位置をそれぞれ個別に調整することができる。ここで、各断面位置は、中心軸(A面とB面との交点)に対して回転させることで変更されるのが好適である。第2算出機能175は、操作者により断面位置が変更される度に、変更後の断面位置における弁輪径を算出する。これにより、操作者は、MPR断面画像を確認しながら、弁輪径を算出するための2点の位置を変更することができる。
【0070】
次に、「弁輪周囲長」の算出について説明する。例えば、第2算出機能175は、輪状の弁輪位置の周囲の長さ「CL」を算出する。周囲の長さ「CL」は、例えば、関心領域に含まれる複数の追跡点それぞれの間の距離の総和として算出可能である。
【0071】
具体的には、第2算出機能175は、3DWMTにおいて設定された複数の追跡点のうち、ROI1を構成する複数の追跡点を特定する。そして、第2算出機能175は、特定した複数の追跡点のうち隣り合う追跡点間の距離をそれぞれ算出し、算出したそれぞれの距離の総和を周囲の長さ「CL」として算出する。なお、周囲の長さ「CL」についても各心時相「t」において定義可能であるので、第2算出機能175は、各心時相「t」について周囲の長さ「CL」を算出することで、周囲の長さ「CL(t)」を取得する。
【0072】
続いて、「弁輪部の断面積」の算出について説明する。例えば、第2算出機能175は、関心領域に含まれる複数の追跡点の重心位置と、各追跡点の位置とを用いて、弁輪部の曲面としての断面積を算出する。
【0073】
弁輪部の形状は心時相「t」に応じて動的に変化し得る3次元的な曲面形状となるため、弁輪断面積「iArea(t)」は、例えば以下のように定義される。まず、第2算出機能175は、心時相「t」において、弁輪部に対応するROI1を構成する複数の追跡点(追跡点群)「CP(t,i)」を特定する。ここで、「i」は、ROI1を構成する追跡点の数(1~N)に対応する。そして、第2算出機能175は、追跡点群「CP(t,i)」の重心「G(t)」を算出する。そして、第2算出機能175は、隣り合う追跡点のペアである追跡点「CP(t,i)」と追跡点「CP(t,i+1)」、及び重心「G(t)」により構成される三角形の面積「s(t,i)」を算出する。この三角形の面積「s(t,i)」は、例えば、ヘロンの公式により算出されるのが好適である。そして、第2算出機能175は、算出される全て(N個)の三角形の面積「s(t,i)」を加算することで、弁輪断面積「iArea(t)=Σs(t,i)」を算出する。
【0074】
続いて、「平均的な弁輪径」の算出について説明する。例えば、第2算出機能175は、弁輪部の断面積が円の面積に等しいと仮定して、平均的な弁輪径を算出する。
【0075】
例えば、第2算出機能175は、弁輪断面積「iArea(t)=πR(t)^2」を満たす半径「R(t)」を用いて、平均的な弁輪径「iDia_mean(t)」を算出する。つまり、平均的な弁輪径は、「iDia_mean(t)=2*R(t)=2*sqrt(iArea(t)/π)」により定義される。なお、第2算出機能175は、弁輪径「iDia_A(t)」及び弁輪径「iDia_B(t)」の平均値を、平均的な弁輪径「iDia_mean(t)」として算出しても良い。
【0076】
このように、第2算出機能175は、推定機能172による推定結果に基づいて、所定位置での弁輪径、弁輪周囲長、弁輪部の断面積、及び平均的な弁輪径のうち少なくとも一つ以上のパラメータを、心時相ごとに算出する。
【0077】
なお、上記の説明では、三尖弁輪に対応するROI1について第2算出情報を算出する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、第2算出機能175は、肺動脈弁輪に対応するROI2について第2算出情報を算出することも可能である。
【0078】
また、上記の説明では、第2算出機能175により算出される各パラメータは、複数の心時相「t」における動的な情報として算出される場合を説明したが、これに限らず、任意の一時相についての静的な情報として算出されても良い。また、第2算出機能175により算出されるパラメータは、上記の定義に限らず、追跡点を用いて任意に定義可能である。
【0079】
出力制御機能176は、第1算出情報及び第2算出情報を出力する。例えば、出力制御機能176は、第2算出情報を、時間変化曲線、所定の心時相での値、1心周期内での最大値、及び1心周期内での最小値のうち少なくとも一つの情報として出力する。
【0080】
図5及び図6は、第1の実施形態に係る出力制御機能176の処理を説明するための図である。図5には、第2算出情報の表示例を示す。また、図6には、第1算出情報の表示例を示す。一例としては、出力制御機能176は、図5に示す第2算出情報と、図6に示す第1算出情報とを同時にディスプレイ103に表示させる。
【0081】
図5に示すように、出力制御機能176は、弁輪断面積「iArea」、平均的な弁輪径「iDia_mean」、A面に対応する(S)-(L)間の弁輪径「iDia_A」、及びB面に対応する(I)-(C)間の弁輪径「iDia_B」の各パラメータを、1心周期にわたる時間変化曲線としてディスプレイ103に表示させる。図5に示す例では、弁輪径「iDia_B」は、1心周期にわたって弁輪径「iDia_A」よりも大きい。また、弁輪径「iDia_mean」は、1心周期にわたって弁輪径「iDia_A」及び弁輪径「iDia_B」の中庸の大きさ(サイズ)である。また、図5に示す弁輪断面積「iArea」は、右室内腔容積の時間変化曲線(図6の領域R2のグラフ参照)と類似の変化を示している。
【0082】
なお、図5にて説明した内容はあくまで一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、図5では、第2算出情報を時間変化曲線として表示する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、出力制御機能176は、第2算出情報を、所定の心時相(例えばED、ES等)での値、1心周期内での最大値、及び1心周期内での最小値等の数値情報を表示してもよい。なお、これらの数値情報は、数値を示すテキスト情報として表示されても良いし、任意のグラフ(例えば図5の時間変化曲線)上にプロットして表示しても良い。
【0083】
また、例えば、図5では、弁輪断面積、平均的な弁輪径、及び所定位置での弁輪径を表示する場合を説明したが、弁輪周囲長を表示しても良い。つまり、出力制御機能176は、175によって算出された第2算出情報を任意に選択して表示することができる。
【0084】
また、図6に示すように、出力制御機能176は、右心室の3DWMTで用いられる基準断面のMPR断面画像として、A面、B面、及び4つのC面の各断面画像をディスプレイ103に表示させる。各断面画像には、互いの断面取得位置を示すラインマーカーとともに、右心室心筋の輪郭(内輪郭及び外輪郭)に相当する位置が破線で描出される。なお、各断面画像は、動画像として表示されるのが好適であるが、静止画(例えば、操作者によって指定された心時相の静止画)としても表示可能である。
【0085】
また、図6の領域R1に示すように、出力制御機能176は、第1算出機能173によって算出された壁運動情報(若しくは容積情報)をカラーコードに変換し、レンダリング画像上にマッピングする。このレンダリング画像としては、右心室の内輪郭に対するサーフェスレンダリング処理により生成された画像が好適であるが、これに限らず、他の部位(右心室の外輪郭等)に対する任意のレンダリング処理が適用可能である。また、領域R1の表示画像としては、特許文献1に開示の技術を適用可能である。具体的には、特許文献1に開示の技術により、出力制御機能176は、右心室の内輪郭に加えて、三尖弁輪を含む管状の流入部(Inlet)、及び、肺動脈弁輪を含む管状の流出部(RVOT)を表示することも可能である。ここで、右心室の内輪郭と管状の流入部との間の輪状の境界位置(つまり図3のROI1)、及び、右心室の内輪郭と管状の流出部との間の輪状の境界位置(つまり図3のROI2)は、操作者がレンダリング画像を確認しながら変更(調整)することも可能である。なお、壁運動情報がマッピングされたレンダリング画像は、動画像として表示されるのが好適であるが、静止画(例えば、操作者によって指定された心時相の静止画)としても表示可能である。
【0086】
また、図6の領域R2に示すように、出力制御機能176は、第1算出機能173によって算出された壁運動情報(若しくは容積情報)を時間変化曲線として表示する。図6に示す例では、出力制御機能176は、右心室の領域を予め規定された7つのセグメント(小領域)における局所的な壁運動情報の値を平均した7つの時間変化曲線と、AC(Area Change ratio)の時間変化曲線と、右心室の容積の時間変化曲線とを表示させる。これにより、操作者は、各壁運動情報のピーク値の程度を評価したり、ピーク値が検出されるタイミングを評価したりすることができる。なお、出力制御機能176は、全てのセグメントの局所的な時間変化曲線を平均化することで、全体的(Global)な心筋機能の指標として表示することもできる。全体的な心筋機能の指標の代表例としては、GLS(Global Longitudinal Strain)、GCS(Global Circumferential Strain)、GAC(Global Area Change ratio)等が挙げられる。
【0087】
なお、図6にて説明した内容はあくまで一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、図6には図示しないが、出力制御機能176は、第1算出情報(壁運動情報、容積情報)を数値の一覧(Table)として表示することもできる。例えば、出力制御機能176は、右心室の容積情報として、EDV、ESV、及びEF等を一覧として表示する。また、出力制御機能176は、図示の形態に限らず、特許文献1に開示の技術や他の公知の技術を利用して第1算出情報を表示することもできる。
【0088】
このように、出力制御機能176は、第1算出情報及び第2算出情報を同時にディスプレイ103に表示させる。なお、ここでは第1算出情報及び第2算出情報を同時に出力する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、出力制御機能176は、第1算出情報及び第2算出情報を個別に出力することも可能である。この場合、出力制御機能176は、操作者からの切り替え操作に応じて、第1算出情報の表示と第2算出情報の表示とを切り替えて表示するのが好適である。
【0089】
なお、出力制御機能174が情報を出力する出力先は、ディスプレイ103に限定されるものではない。例えば、出力制御機能174は、ネットワークを経由して接続された任意の装置に送信してもよい。具体的には、出力制御機能174は、病院内のデータを集中的に管理しているサーバ装置や、診断レポートを作成するための装置(レポート作成装置など)に情報を送信しても良い。また、例えば、出力制御機能174は、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録メディアに情報を格納しても良い。
【0090】
図7は、第1の実施形態に係る超音波診断装置100の処理手順を示すフローチャートである。図7に示す処理手順は、例えば、弁輪部の解析を開始する旨の指示を操作者から受け付けた場合に開始される。
【0091】
ステップS101において、処理タイミングか否かを判定する。例えば、入力インタフェース102は、弁輪部の解析を開始する旨の指示を操作者から受け付け、受け付けた指示を処理回路170へ送る。処理回路170は、入力インタフェース102により転送された指示を受け付けると、処理タイミングであると判定し(ステップS101肯定)、ステップS102以降の処理を開始する。なお、処理タイミングでない場合には(ステップS101否定)、ステップS102以降の処理は開始されず、処理回路170の各処理機能は待機状態である。
【0092】
ステップS101が肯定されると、ステップS102において、取得機能171は、複数のボリュームデータを読み出す。例えば、取得機能171は、被検体Pの右心室を含む領域が撮像された少なくとも1心周期以上にわたる複数のボリュームデータを、画像メモリ150から読み出す。
【0093】
ステップS103において、推定機能172は、対象部位に初期輪郭を設定する。例えば、推定機能172は、操作者によって指定された心時相におけるボリュームデータに含まれる右心室に対して、3次元的な初期輪郭を設定する。この初期輪郭には、複数の追跡点が設定される。
【0094】
ステップS104において、推定機能172は、3DWMTにより組織の動き情報を推定する。例えば、推定機能172は、複数の追跡点が設定された初期時相におけるボリュームデータと、次の時相におけるボリュームデータとを用いてパターンマッチングを含む追跡処理を行うことで、複数のボリュームデータにおける複数の追跡点の位置を追跡する。
【0095】
ステップS105において、第1算出機能173は、第1算出情報を算出する。例えば、第1算出機能173は、推定機能172による推定結果に基づいて、第1算出情報として、右心室に関する全体的又は局所的なストレイン、面積変化率、及び容積等の情報を算出する。
【0096】
ステップS106において、設定機能174は、弁輪位置に関心領域を設定する。例えば、設定機能174は、弁輪位置として、三尖弁輪又は肺動脈弁輪のうち少なくとも一方に対応する位置に、関心領域を設定する。
【0097】
ステップS107において、第2算出機能175は、関心領域について第2算出情報を算出する。例えば、第2算出機能175は、複数の追跡点のうち関心領域に含まれる複数の追跡点に関する動き情報に基づいて、所定位置での弁輪径、弁輪周囲長、弁輪部の断面積、及び平均的な弁輪径のうち少なくとも一つ以上のパラメータを、心時相ごとに算出する。
【0098】
ステップS108において、出力制御機能176は、第1算出情報及び第2算出情報を出力する。例えば、出力制御機能176は、第2算出情報を、時間変化曲線、所定の心時相での値、1心周期内での最大値、及び1心周期内での最小値のうち少なくとも一つの情報として出力する。
【0099】
なお、図7にて説明した処理手順はあくまで一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上記の処理手順は、処理内容に矛盾が生じない範囲で任意の順序に変更可能である。一例としては、ステップS106の処理は、ステップS103の処理の直後(ステップS104の処理の前)に実行されても良い。
【0100】
上述してきたように、超音波診断装置100は、全体的又は局所的な壁運動情報や容積情報とともに、弁輪部の大きさの動的変化やその程度を操作者に提示することができる。これにより、操作者は、心室のリモデリングの程度や心機能を定量的に把握しつつ、弁輪部の大きさの動的変化やその程度を同時に把握することが可能となる。この結果として、操作者は、弁輪部の疾患の治療法や治療デバイスの選定を効果的に行うことができる。
【0101】
例えば、心機能の低下に伴う代償作用として心臓が拡張し、この拡張によって弁輪部も大きくなる(例えば、弁輪径が拡大する)ことにより、弁の閉塞不全(逆流)が生じる場合がある。このような症例に対しては、例えば、弁の周囲に紐状の医療器具(弁輪結紮デバイス)を埋め込み、それを絞ることで拡大した弁輪径を戻す治療法が適用される。本実施形態に係る超音波診断装置100は、弁輪径や弁輪周囲長等の情報を提供することで、最適なサイズや種類の弁輪結紮デバイスの選定を支援することができる。また、超音波診断装置100は、壁運動情報等の定量的な心機能情報を提供することで、適切な治療時期の判断を支援することができる。
【0102】
なお、第1の実施形態では、本実施形態に係る超音波診断装置100が右心室の解析に適用される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、超音波診断装置100は、右心室と同様に、左心室の解析にも適用可能である。
【0103】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、関心領域の大きさに関する第2算出情報を算出する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、超音波診断装置100は、関心領域の形状に関する第2算出情報を算出することも可能である。
【0104】
例えば、三尖弁輪の立体構造は、前尖-後尖方向で高く、中隔-側壁方向で低い逆馬蹄形(鞍(saddle)形とも呼ばれる)であることが知られている。ところが、三尖弁閉鎖不全の症例、特に予後の悪い重症例では、健常例と比較して鞍形が平坦化することが知られている。そこで、第2の実施形態では、超音波診断装置100は、この形状に起因する高低差を、関心領域の形状に関する第2算出情報として算出する。
【0105】
第2の実施形態に係る超音波診断装置100は、図1に例示した超音波診断装置100と同様の構成を備え、第2算出機能175の処理の一部が相違する。そこで、第2の実施形態では、第1の実施形態と相違する点を中心に説明することとし、第1の実施形態において説明した構成と同様の機能を有する点については説明を省略する。
【0106】
第2の実施形態に係る第2算出機能175は、推定機能172による推定結果に基づいて、関心領域の形状に関する第2算出情報を算出する。ここで、第2算出機能175は、関心領域の形状に関する第2算出情報として、弁輪部の局所的な高低差を算出する。つまり、第2算出機能175は、複数の追跡点のうち関心領域に含まれる複数の追跡点の位置(座標情報)に基づいて、弁輪部の局所的な高低差を算出する。なお、弁輪部の局所的な高低差は、「弁輪形状情報」の一例である。
【0107】
図8は、第2の実施形態に係る第2算出機能175の処理を説明するための図である。図8には、三尖弁輪に対応するROI1の3次元形状を例示する。なお、ROI1の3次元形状は、ROI1に含まれる複数の追跡点の位置(座標情報)を結ぶことにより描出される。なお、第2の実施形態では、設定機能174は、A面及びB面の2つの断面画像と補間処理を用いて鞍形の関心領域を設定するのが好適である。
【0108】
図8に示すように、第2算出機能175は、ROI1に含まれる複数の追跡点の重心位置を算出する。そして、第2算出機能175は、算出した重心位置を通る回帰平面を算出し、この回帰平面の法線ベクトルの方向(軸)を用いて弁輪部の局所的な高低差を算出する。具体的には、第2算出機能175は、弁輪部(ROI1)上の各点について、法線ベクトルの方向に沿って回帰平面からの距離(高さ)を算出する。そして、第2算出機能175は、回帰平面と比べて最も高い(心房側に近い)点を最高点「highP」として特定する。また、第2算出機能175は、回帰平面と比べて最も低い(心尖に近い)点を最低点「lowP」として特定する。最高点「highP」が正の値である場合、最低点「lowP」は負の値である。そして、第2算出機能175は、法線ベクトルの方向における最高点highPと最低点lowPとの差分を、弁輪部の局所的な高低差「ΔH」として算出する。つまり、弁輪部の局所的な高低差「ΔH」は、回帰平面から最高点highPまでの距離(絶対値)と、回帰平面から最低点lowPまでの距離(絶対値)との和に対応する。
【0109】
ここで、弁輪部の局所的な高低差「ΔH」は、各心時相「t」において定義可能であるので、時間変化を表す関数として算出可能である。つまり、第2算出機能175は、3DWMTにおける初期時相「t=0」において、上記のように最高点「highP(t)」と最低点「lowP(t)」とを定義する。そして、第2算出機能175は、最高点「highP(t)」と最低点「lowP(t)」との差分により、各心時相(t)における弁輪部の局所的な高低差「ΔH(t)」を算出する。
【0110】
このように、第2算出機能175は、三尖弁輪に対応するROI1について、弁輪部の局所的な高低差「ΔH(t)」を算出する。なお、ここでは、三尖弁輪の弁輪形状情報を算出する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、第2算出機能175は、肺動脈弁輪や左心室の弁輪部についても同様の弁輪形状情報を算出可能である。
【0111】
そして、出力制御機能176は、算出された弁輪部の局所的な高低差「ΔH(t)」を出力する。弁輪部の局所的な高低差「ΔH(t)」の出力形態や出力先としては、第1の実施形態にて説明したものと同様である。つまり、出力制御機能176は、弁輪部の局所的な高低差「ΔH(t)」を時間変化曲線として表示するのが好適であるが、所定の心時相(例えばED、ES等)での値、1心周期内での最大値、及び1心周期内での最小値等の数値情報を表示することもできる。また、これらの数値情報は、数値を示すテキスト情報として表示されても良いし、任意のグラフ(例えば図5の時間変化曲線)上にプロットして表示しても良い。
【0112】
また、出力制御機能176は、図8に示したように弁輪部(三尖弁輪)の3次元形状をディスプレイ103に表示することもできる。
【0113】
このように、第2の実施形態に係る超音波診断装置100は、時系列の弁輪形状情報を算出し、算出した時系列の弁輪形状情報を操作者に提示することができる。これにより、操作者は、鞍形が平坦化しているか否かを容易に判断できるだけでなく、その時間変化も把握することができるので、弁輪部の病態評価を簡便かつ詳細に行うことができる。
【0114】
(その他の実施形態)
上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。
【0115】
(医用情報処理装置)
また、例えば、上述した実施形態では、開示の技術が超音波診断装置100に適用される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、開示の技術は、医用情報処理装置200に適用されても良い。医用情報処理装置200は、例えば、ワークステーションやPACS(Picture Archiving Communication System)ビューワ、他の医用画像診断装置のコンソール装置等に対応する。なお、他の医用画像診断装置とは、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置やX線CT(Computed Tomography)装置等に対応する。また、医用情報処理装置としてMRI装置又はX線CT装置が適用される場合、医用情報処理装置は、各医用画像診断装置により撮像されたボリュームデータ(MR画像データ、CT画像データ)を用いて、開示の技術を実行可能である。
【0116】
図9は、その他の実施形態に係る医用情報処理装置200の構成例を示すブロック図である。図9に示すように、医用情報処理装置200は、入力インタフェース201、ディスプレイ202、NWインタフェース203、記憶回路204、及び処理回路210を備える。入力インタフェース201、ディスプレイ202、NWインタフェース203、及び処理回路210は、相互に通信可能に接続される。
【0117】
入力インタフェース201は、マウス、キーボード、タッチパネル等、操作者からの各種の指示や設定要求を受け付けるための入力装置である。ディスプレイ202は、医用画像を表示したり、操作者が入力インタフェース201を用いて各種設定要求を入力するためのGUIを表示したりする表示装置である。
【0118】
NWインタフェース203は、医用情報処理装置200と外部装置との間で行われる通信を制御する。具体的には、NWインタフェース203は、外部装置から各種の情報を受信し、受信した情報を処理回路210に出力する。例えば、NWインタフェース203は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0119】
記憶回路204は、例えば、NAND(Not AND)型フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)であり、医用画像データやGUIを表示するための各種のプログラムや、当該プログラムによって用いられる情報を記憶する。
【0120】
処理回路210は、医用情報処理装置200における処理全体を制御する電子機器(プロセッサ)である。処理回路210は、取得機能211、推定機能212、第1算出機能213、設定機能214、第2算出機能215、及び出力制御機能216を実行する。取得機能211、推定機能212、第1算出機能213、設定機能214、第2算出機能215、及び出力制御機能216は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路204内に記録されている。処理回路210は、各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能(取得機能211、推定機能212、第1算出機能213、設定機能214、第2算出機能215、及び出力制御機能216)を実現する。
【0121】
例えば、取得機能211は、少なくとも1心周期以上にわたって被検体Pの心室を含む領域が撮像された複数のボリュームデータ(超音波画像データ、MR画像データ、CT画像データ等)を取得する。推定機能212は、複数のボリュームデータを用いて、心室の組織の動きを推定する。第1算出機能213は、推定機能172による推定結果に基づいて、心室に関する壁運動情報及び容積情報のうち少なくとも一方を含む第1算出情報を算出する。設定機能214は、心室における血流の流入又は流出に関する弁の弁輪位置に対応する関心領域を設定する。第2算出機能215は、推定機能172による推定結果に基づいて、関心領域の大きさ又は形状に関する第2算出情報を算出する。出力制御機能216は、第1算出情報及び第2算出情報を出力する。これにより、医用情報処理装置200は、弁輪部の大きさや形状を適切に解析することができる。
【0122】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路150に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路150にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。更に、各図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0123】
また、上述した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0124】
また、上述した実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行うこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0125】
また、上述した実施形態において説明した医用情報処理方法は、予め用意された医用情報処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この医用情報処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この医用情報処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0126】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、弁輪部の大きさや形状を適切に解析することができる。
【0127】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0128】
100 超音波診断装置
170 処理回路
171 取得機能
172 推定機能
173 第1算出機能
174 設定機能
175 第2算出機能
176 出力制御機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9