(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】空気調和機及び空気調和機の運転方法
(51)【国際特許分類】
F25B 49/02 20060101AFI20230410BHJP
F24F 11/36 20180101ALI20230410BHJP
【FI】
F25B49/02 520M
F24F11/36
(21)【出願番号】P 2019011248
(22)【出願日】2019-01-25
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宇野 順道
(72)【発明者】
【氏名】布目 好教
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-173250(JP,A)
【文献】特開2015-094515(JP,A)
【文献】特開2016-070568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00 ~ 49/04
F24F 1/00 ~ 13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が流通する冷媒回路と、
外殻を為す筐体を有し、前記冷媒回路の一部を前記筐体内に収容する室内機と、
前記筐体内に収容され、前記筐体の外部の空気を吸入するとともに、吸入した空気を前記筐体の外部へ排出するファンと、
前記室内機に設けられ、前記冷媒を検知する冷媒検知手段と、
前記室内機に設けられ、酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と、
前記冷媒検知手段の検知結果に基づいて、前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩しているか否かを判断する第1判断部と、
前記第1判断部が前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩していると判断した場合に、前記ファンを駆動状態とするファン制御部と、
前記ファン制御部が前記ファンを駆動した後に、前記酸素濃度検出手段が検出する酸素濃度に基づいて、前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩しているか否かを判断する第2判断部と、を備えた空気調和機。
【請求項2】
前記第2判断部が前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩していると判断した場合に、通常の操作で運転を開始できないロック状態とし、前記第2判断部が前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩していないと判断した場合に通常の操作で運転を開始することができるスタンバイ状態とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記第1判断部は、前記冷媒検知手段の検知結果に基づいて、前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩しているか否かを判断するとともに、前記酸素濃度検出手段の検出した酸素濃度に基づいて、前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩しているか否かを判断する請求項1または請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記第1判断部が前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩していると判断した場合に、前記冷媒の漏洩を報知する報知手段を備え、
前記第2判断部は、前記報知手段が前記冷媒の漏洩を報知した後に、前記酸素濃度検出手段が検出する酸素濃度に基づいて、前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩しているか否かを判断する請求項1から請求項3のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項5】
前記報知手段は、前記第2判断部が、前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩していないと判断した場合に、所定時間の間、前記冷媒の漏洩を報知し、
前記ファン制御部は、前記第2判断部が、前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩していないと判断した場合に、所定時間の間、前記ファンを駆動する請求項4に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記酸素濃度検出手段は、前記筐体の内部であって、かつ、下部に設けられている請求項1から請求項5のいずれかに記載の空気調和機。
【請求項7】
室内機に設けられた冷媒検知手段によって、冷媒回路を流通する冷媒を検知する冷媒検知ステップと、
前記室内機に設けられた酸素濃度検出手段で、酸素濃度を検出する酸素濃度検出ステップと、
前記冷媒検知ステップの検知結果に基づいて、前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩しているか否かを判断する第1判断ステップと、
前記第1判断ステップで前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩していると判断した場合に、前記室内機の筐体の内部に収容されていて、前記筐体の外部の空気を吸入するとともに、吸入した空気を前記筐体の外部へ排出するファンを駆動状態とするファン駆動ステップと、
前記ファン駆動ステップの後に、前記酸素濃度検出ステップで検出した酸素濃度に基づいて、前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩しているか否かを判断する第2判断ステップと、を備えた空気調和機の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機及び空気調和機の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球温暖化を防止するための規制強化を背景に、空気調和機に用いられる冷媒として、GWP(Global-warming potential)が低い微燃性の冷媒(例えば、R32)が用いられることがある。また、将来的には、可燃性の冷媒を用いることも検討されている。微燃性や可燃性の冷媒を用いた空気調和機では、冷媒の漏洩を検知する機能が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1では、冷媒ガスセンサによる冷媒濃度の検出と、吸入圧力センサまたは吐出圧力センサによる検出圧力の低下の検出と、を重畳的に判断するようにして、冷媒の漏洩を把握している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷媒の漏洩を検知する手段として、冷媒と接触すると抵抗値が変わる冷媒センサを空気調和機に設けることが考えられる。しかしながら、冷媒センサは、冷媒回路に用いられている冷媒以外のガス(以下、「雑ガス」という。)に反応し、誤検知を起こす可能性がある。雑ガスとしては、例えば、ヘアスプレや、有機溶剤等が挙げられる。冷媒が漏洩していると判断された場合に、空気調和機を停止するように設定している場合には、誤検知によって空気調和機の停止が頻発し、ユーザの利便性を悪化させる可能性がある。
【0006】
そこで、特許文献1の装置のように、冷媒センサとともに、吸入圧力センサまたは吐出圧力センサによる検出圧力の低下の検出によって、冷媒の漏洩を判断することが考えられる。
しかしながら、特許文献1の装置では、冷媒ガスセンサによる冷媒濃度の検出と、圧力センサによる検出圧力の低下の検出とを、略同一のタイミングで行っている。これにより、空気調和機の状態が同じ状態において、冷媒ガスセンサによる冷媒濃度の検出と、圧力センサによる検出圧力の低下の検出とを行うこととなる。したがって、冷媒の漏洩以外の何らかの要因によって、一時的に、冷媒濃度の増大及び冷媒の圧力低下が生じた場合には、冷媒が漏洩していないにもかかわらず、冷媒が漏洩したと誤検知してしまう可能性がある。よって、特許文献1の装置では、冷媒回路から冷媒が漏洩しているか否かを正確に判断することができない可能性があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、冷媒回路から冷媒が漏洩しているか否かを正確に判断することができる空気調和機及び空気調和機の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の空気調和機及び空気調和機の運転方法は以下の手段を採用する。
本発明の一態様に係る空気調和機は、冷媒が流通する冷媒回路と、外殻を為す筐体を有し、前記冷媒回路の一部を前記筐体内に収容する室内機と、前記筐体内に収容され、前記筐体の外部の空気を吸入するとともに、吸入した空気を前記筐体の外部へ排出するファンと、前記室内機に設けられ、前記冷媒を検知する冷媒検知手段と、前記室内機に設けられ、酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と、前記冷媒検知手段の検知結果に基づいて、前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩しているか否かを判断する第1判断部と、前記第1判断部が前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩していると判断した場合に、前記ファンを駆動状態とするファン制御部と、前記ファン制御部が前記ファンを駆動した後に、前記酸素濃度検出手段が検出する酸素濃度に基づいて、前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩しているか否かを判断する第2判断部と、を備えている。
【0009】
冷媒が漏洩すると、漏洩した空間内において酸素濃度が低下する。このため、酸素濃度を検出することで、冷媒が漏洩したか否かを判断することができる。
【0010】
上記構成では、冷媒検知手段の検知結果に基づいて第1判断部が、冷媒回路から冷媒が漏洩していると判断した場合には、ファンを駆動状態とする。また、ファンが駆動状態となった後に、第2判断部が、冷媒回路から冷媒が漏洩しているか否かを判断する。ファンが駆動すると、室内機の筐体の内部の空気及び/又は室内機の周辺領域の空気が撹拌される。このため、ファンが駆動することで、筐体の内部及び/又は室内機の周辺領域の環境は変化する。上記構成では、第1判断部が冷媒の漏洩の有無を判断した後に、ファンを駆動状態とし、その後に第2判断部が冷媒の漏洩の有無を判断している。これにより、第1判断部が冷媒の漏洩の有無を判断する空気調和機の環境と、第2判断部が冷媒の漏洩を判断する空気調和機の環境とは異なる。したがって、冷媒の漏洩の判断に際し、一時的な要因による影響を受け難くすることができるので、冷媒回路から冷媒が漏洩しているか否かを正確に判断することができる。
【0011】
上記構成では、第1判断部が冷媒回路から冷媒が漏洩していると判断した場合に、ファンを駆動状態とするファン制御部を備えている。これにより、冷媒回路から冷媒が漏洩した場合に、ファンが室内の空気を攪拌する。したがって、室内における冷媒濃度が均一化されるので、冷媒濃度の局所的な上昇を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る空気調和機は、前記第2判断部が前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩していると判断した場合に、通常の操作で運転を開始できないロック状態とし、前記第2判断部が前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩していないと判断した場合に通常の操作で運転を開始することができるスタンバイ状態としてもよい。
【0013】
冷媒回路から冷媒が漏洩した状態で、空気調和機の運転を行うと、冷媒の漏洩量や漏洩速度が増大する可能性がある。上記構成では、第2判断部が冷媒回路から冷媒が漏洩していると判断した場合に、通常の操作で運転を開始できないロック状態とする。これにより、冷媒が漏洩した状態で空気調和機の運転が開始される事態を防止することができる。
【0014】
また、空気調和機が通常の操作で運転を開始できないロック状態となると、再度空気調和機を運転状態とするために特別な作業等が必要となり、運転開始操作が煩雑となる。このため、冷媒が漏洩していないにもかかわらず冷媒が漏洩していると判断する誤検知により、空気調和機がロック状態となる事態が生じた場合、ユーザの利便性が低下する。上記構成では、冷媒が漏洩していないと第2判断部が判断した場合に通常の操作で運転を開始することができるスタンバイ状態とする。すなわち、冷媒が漏洩していると第1判断部が判断した場合であっても、冷媒が漏洩していないと第2判断部が判断した場合には、ロック状態とならずに、通常の操作で運転を開始することができるスタンバイ状態となる。したがって、誤検知により、空気調和機がロック状態となり難くすることができる。したがって、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の一態様に係る空気調和機は、前記第1判断部は、前記冷媒検知手段の検知結果に基づいて、前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩しているか否かを判断するとともに、前記酸素濃度検出手段の検出した酸素濃度に基づいて、前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩しているか否かを判断してもよい。
【0016】
上記構成では、第1判断部が、冷媒検知手段の検知結果と、酸素濃度検出手段の検出した酸素濃度との両方を用いて冷媒回路から冷媒が漏洩しているか否かを判断している。これにより、第1判断部において、異なる複数のデータに基づいて、冷媒回路から冷媒が漏洩しているか否かを判断することができる。よって、より正確に冷媒が漏洩しているか否かを判断することができる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る空気調和機は、前記第1判断部が前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩していると判断した場合に、前記冷媒の漏洩を報知する報知手段を備え、前記第2判断部は、前記報知手段が前記冷媒の漏洩を報知した後に、前記酸素濃度検出手段が検出する酸素濃度に基づいて、前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩しているか否かを判断してもよい。
【0018】
上記構成では、第1判断部が冷媒回路から冷媒が漏洩していると判断した場合に、冷媒の漏洩を報知する報知手段を備えている。これにより、ユーザが冷媒の漏洩を認識することができる。また、上記構成では、冷媒が漏洩しているか否かを第2判断部が判断する前に、報知手段が冷媒の漏洩を報知している。これにより、冷媒が漏洩している場合に、より迅速にユーザに冷媒の漏洩を認識させることができるので、安全性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の一態様に係る空気調和機は、前記報知手段は、前記第2判断部が、前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩していないと判断した場合に、所定時間の間、前記冷媒の漏洩を報知し、前記ファン制御部は、前記第2判断部が、前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩していないと判断した場合に、所定時間の間、前記ファンを駆動してもよい。
【0020】
上記構成では、第2判断部が、冷媒回路から冷媒が漏洩していないと判断した場合であっても、所定の時間の間、報知手段が冷媒の漏洩を報知するとともに、ファン制御部がファンを駆動する。これにより、実際には冷媒が漏洩しているにも関わらず、冷媒が漏洩していないと第2判断部が判断してしまった場合であっても、ファンが室内の空気を攪拌し、冷媒濃度の局所的な上昇を抑制することができる。したがって、安全性を向上することができる。
【0021】
また、本発明の一態様に係る空気調和機は、前記酸素濃度検出手段は、前記筐体の内部であって、かつ、下部に設けられていてもよい。
【0022】
冷媒の比重は、通常、空気よりも大きい。このため、空気中に漏洩した冷媒は、漏洩した空間の下部に滞留し易い。上記構成では、酸素濃度検出手段が、冷媒が滞留し易い筐体の内部の下部に設けられている。これにより、酸素濃度検出手段の検出した酸素濃度に基づいて、冷媒が漏洩したか否かをより正確に判断することができる。
【0023】
本発明の一態様に係る空気調和機の運転方法は、室内機に設けられた冷媒検知手段によって、冷媒回路を流通する冷媒を検知する冷媒検知ステップと、前記室内機に設けられた酸素濃度検出手段で、酸素濃度を検出する酸素濃度検出ステップと、前記冷媒検知ステップの検知結果に基づいて、前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩しているか否かを判断する第1判断ステップと、前記第1判断ステップで前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩していると判断した場合に、前記室内機の筐体の内部に収容されていて、前記筐体の外部の空気を吸入するとともに、吸入した空気を前記筐体の外部へ排出するファンを駆動状態とするファン駆動ステップと、前記ファン駆動ステップの後に、前記酸素濃度検出ステップで検出した酸素濃度に基づいて、前記冷媒回路から前記冷媒が漏洩しているか否かを判断する第2判断ステップと、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、冷媒回路から冷媒が漏洩しているか否かをより正確に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る空気調和機の概略構成を示した図である。
【
図3】
図1の空気調和機に用いられる制御装置が行う処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る空気調和機及び空気調和機の運転方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る空気調和機1の概略構成を示した図である。
図1に示すように、空気調和機1は、室外機1aと、室内の壁に設けられる壁掛け型の室内機1bとを備えている。室外機1aと室内機1bとは、内部に冷媒が流通する冷媒配管11によって接続されている。
図1では、便宜上、1台の室外機1aに、1台の室内機1bが接続されている構成を例示しているが、室外機1aの設置台数及び室内機1bの接続台数については限定されない。冷媒配管11内を流通する冷媒は、例えば、GWP(Global-warming potential)が低い微燃性の冷媒(例えば、R32)である。なお、冷媒の種類は特に限定されず、他の冷媒を用いてもよい。
【0027】
また、空気調和機1は、冷媒を圧縮する圧縮機2と、冷媒の循環方向を切換える四方切換弁3と、冷媒と外気とを熱交換させる室外熱交換器4と、冷媒の気液分離等を目的として圧縮機2の吸入側配管に設けられたアキュムレータ6と、冷媒を膨張させる電子膨張弁9と、冷媒と室内空気とを熱交換させる室内熱交換器7と、を具備し、それらの機器間を冷媒配管11によって接続した閉サイクルの冷媒回路10を備えている。冷媒配管11は、複数の配管を有しており、配管同士を接続することで構成されている。配管同士は、フレア加工によって接続されていてもよく、また、ロウ付け加工によって接続されていてもよい。
【0028】
室外機1aは、外殻を為す筐体(図示省略)を備えている。室外機1aの筐体には、圧縮機2と、四方切換弁3と、室外熱交換器4と、室外熱交換器4へ外気を供給する室外ファン5と、アキュムレータ6と、電子膨張弁9とが収容されている。
【0029】
室内機1bは、外殻を為す筐体(図示省略)を備えている。筐体は、室内の壁部に設けられている。室内機1bの筐体には、室内熱交換器7と、室内熱交換器7へ室内空気を供給する室内ファン(ファン)8と、室内ファン8を回転駆動するファンモータ16と、冷媒を検知する冷媒検知センサ(冷媒検知手段)12と、酸素濃度を検出する酸素濃度計(酸素濃度検出手段)13と、が収容されている。また、室内機1bの筐体には、冷媒配管11の一部が収容されている。詳細には、室内機1bの筐体には、電子膨張弁9と室内熱交換器7とを接続する配管のうちの室内熱交換器7側の一部と、室内熱交換器7と四方切換弁3とを接続する配管のうちの室内熱交換器7側の一部と、が収容されている。また、室内機1bには、室内機1bが設けられる室内に存在するユーザに対して報知可能なブザー14と、筐体の外部から視認可能な位置に警告ランプ(報知手段)15が設けられている。
【0030】
室内ファン8は、ファンモータ16によって回転駆動され、筐体の外部の空気を吸入するとともに、吸入した空気を筐体の外部へ排出する。室内ファン8に適用されるファンの種類は、特に限定されない。室内ファン8は、例えば、軸流ファンであってもよく、クロスフローファンであってもよい。
【0031】
冷媒検知センサ12は、室内機1bの筐体内の下部に配置されている。冷媒検知センサ12は、冷媒が付着することで電気抵抗が変化する素子(図示省略)を有している。冷媒検知センサ12は、素子の電気抵抗の変化によって、冷媒を検知する。冷媒検知センサ12は、検知結果を後述する制御装置20へ送信する。
【0032】
酸素濃度計13は、筐体の内部であって、かつ、下部に設けられている。詳細には、筐体の内部に形成される内部空間の下方を規定する底面部に設けられている。すなわち、酸素濃度計13は、室内機1bの筐体の内部空間の底面部近傍の領域の酸素濃度を計測する。酸素濃度計13は、酸素を検知する酸素センサを有し、酸素センサの検知結果に基づいて酸素濃度を検出する。酸素濃度計13は、計測した酸素濃度を後述する制御装置20へ送信する。
【0033】
また、空気調和機1は、
図2に示すように、各種機器を制御する制御装置20を備えている。
制御装置20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0034】
また、制御装置20は、冷媒検知センサ12の検知結果に基づいて、冷媒回路10(冷媒配管11)から冷媒が漏洩しているか否かを判断する第1判断部21と、酸素濃度計13が検出する酸素濃度に基づいて、冷媒回路10から冷媒が漏洩しているか否かを判断する第2判断部22と、を有している。また、制御装置20は、圧縮機2の駆動及び停止を制御する圧縮機制御部23と、室内ファン8を回転させるファンモータ16の駆動及び停止を制御するファン制御部24と、ブザー14の発停を制御するブザー制御部25と、警告ランプ15の発停を制御するランプ制御部26と、を有している。
【0035】
圧縮機制御部23は、冷媒が漏洩していると第1判断部21が判断した場合に、圧縮機2を停止する。ファン制御部24は、冷媒回路10から冷媒が漏洩していると第1判断部21が判断した場合に、ファンモータ16を駆動させて、室内ファン8を回転させる。ブザー制御部25は、冷媒回路10から冷媒が漏洩していると第2判断部22が判断した場合に、ブザー14を鳴らす。ランプ制御部26は、冷媒が漏洩していると第1判断部21が判断した場合に、警告ランプ15を点灯する。
【0036】
次に、制御装置20が行う処理について
図3のフローチャートを用いて説明する。本処理は、冷媒回路10から冷媒が漏洩しているか否かを判断する処理である。制御装置20は、空気調和機1が通電状態である場合に、繰り返し本処理を実行する。すなわち、制御装置20は、空気調和機1が、運転(冷房運転や暖房運転等)を行っていない状態であっても、通電状態である場合には、繰り返し本処理を実行する。
【0037】
本処理が開始されると、制御装置20は、まず、S1で、冷媒検知センサ12からデータを取得し、取得したデータに基づいて、冷媒回路10から冷媒が漏洩しているか否かを、第1判断部21によって判断する(冷媒検知ステップ・第1判断ステップ)。S1で、冷媒回路10から冷媒が漏洩していないと判断した場合には、制御装置20は、所定時間後に再度S1を行う。S1で、冷媒回路10から冷媒が漏洩していると判断した場合には、制御装置20は、S2に進む。
【0038】
S2では、制御装置20は、圧縮機制御部23によって圧縮機2を停止状態とする。すなわち、圧縮機2が駆動状態であった場合には圧縮機2を停止し、圧縮機2が停止状態であった場合には圧縮機2の停止状態を維持する。また、S2では、ファン制御部24がファンモータ16を制御することで室内ファン8を駆動状態とする(ファン駆動ステップ)。このとき、室内ファン8の回転数は、冷房運転時や暖房運転時と異なる回転数(例えば、室内の空気を好適に攪拌できる回転数)としてもよい。また、S2では、ランプ制御部26によって、警告ランプ15を点灯する。
【0039】
S2を実行すると、制御装置20は、所定時間(第1所定時間)経過後に、S3に進む。この時の所定時間は、例えば、4分程度に設定されてもよい。S3では、再度冷媒検知センサ12からデータを取得し、取得したデータに基づいて、冷媒回路10から冷媒が漏洩しているか否かを、第1判断部21によって判断する。S3で、冷媒回路10から冷媒が漏洩していないと判断した場合には、制御装置20は、空気調和機1をスタンバイ状態とする(S8)。なお、すなわち、S1では冷媒の漏洩を誤検知であったと判断する。なお、スタンバイ状態とは、運転が停止した状態であって、かつ、通常の操作で運転(冷房運転や暖房運転等)を開始することができる状態である。通常の操作とは、例えば、リモコンの運転開始ボタンを押圧する操作等である。S8で、空気調和機1をスタンバイ状態とすると、制御装置20は本処理を終了する。
【0040】
S3で、冷媒回路10から冷媒が漏洩していると判断した場合には、制御装置20は、S4に進む。S4では、酸素濃度計13が計測した(酸素濃度検出ステップ)データを取得し、取得したデータに基づいて、冷媒回路10から冷媒が漏洩しているか否かを、第2判断部22によって判断する(第2判断ステップ)。冷媒が漏洩すると、漏洩した空間内において酸素濃度が低下するため、酸素濃度を検出することで、冷媒が漏洩したか否かを判断することができる。具体的には、酸素濃度計13が計測する酸素濃度の値が、所定の閾値以下となっている場合には冷媒配管11から冷媒が漏洩していると判断し、酸素濃度の値が所定の閾値よりも大きい場合には冷媒配管11から冷媒が漏洩していないと判断する。所定の閾値として、一般的な大気における酸素濃度の値を用いてもよい。なお、冷媒が漏洩しているか否かの判断方法は、一例であり、これに限定されない。例えば、所定時間ずらして計測した複数の酸素濃度の値を比較し、先に計測した酸素濃度の値から、後に計測した酸素濃度の値の減じた差分を算出し、差分が所定の値以上であった場合に、冷媒配管11から冷媒が漏洩していないと判断してもよい。
【0041】
S4で冷媒回路10から冷媒が漏洩していると判断した場合には、制御装置20はS5へ進む。S5では、制御装置20は、ブザー制御部25によって、ブザー14を鳴らす。ブザー14は、予め設定された時間が経過すると自動的に停止するようにしてもよく、また、所定の停止操作がなされるまで鳴り続けるようにしてもよい。S5を実行すると制御装置20は、S6へ進む。S6では、制御装置20は、通常の操作で運転を開始できないロック状態とする。ロック状態とは、運転が停止した状態であって、かつ、特別な作業(例えば、直接操作盤等にアクセスする作業)を行わなければ空気調和機1の運転を開始することができない状態である。S6で、空気調和機1をロック状態とすると、制御装置20は本処理を終了する。
【0042】
S4で冷媒回路10から冷媒が漏洩していないと判断した場合には、制御装置20はS7へ進む。S7では、室内ファン8の回転駆動状態及び警告ランプ15の点灯状態を、所定時間(第2所定時間)維持したのちに、ファン制御部24がファンモータ16を制御することによって室内ファン8を停止させる。また、室内ファン8を停止させると略同時に、ランプ制御部26によって警告ランプ15を消灯する。S7を実行すると制御装置20は、S8へ進む。S8では、制御装置20は、空気調和機1をスタンバイ状態とする。S8で、空気調和機1をスタンバイ状態とすると、制御装置20は本処理を終了する。
【0043】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、冷媒検知センサ12の検知結果に基づいて第1判断部21が、冷媒回路10から冷媒が漏洩していると判断した場合には、室内ファン8を駆動状態とする。また、室内ファン8が駆動状態となった後に、第2判断部22が、冷媒回路10から冷媒が漏洩しているか否かを判断する。室内ファン8が駆動すると、室内機1bの筐体の内部の空気及び/又は室内機1bの周辺領域の空気が撹拌される。このため、室内ファン8が駆動することで、筐体の内部及び/又は室内機1bの周辺領域の環境は変化する。本実施形態では、第1判断部21が冷媒の漏洩の有無を判断した後に、室内ファン8を駆動状態とし、その後に第2判断部22が冷媒の漏洩の有無を判断している。これにより、第1判断部21が冷媒の漏洩の有無を判断する空気調和機1の環境と、第2判断部22が冷媒の漏洩を判断する空気調和機1の環境とは異なる。したがって、冷媒の漏洩の判断に際し、一時的な要因による影響を受け難くすることができるので、冷媒回路10から冷媒が漏洩しているか否かを正確に判断することができる。
【0044】
本実施形態では、第1判断部21が冷媒回路10から冷媒が漏洩していると判断した場合に、室内ファン8を駆動するファン制御部24を備えている。これにより、冷媒回路10から冷媒が漏洩した場合に、室内ファン8が室内の空気を攪拌する。したがって、室内における冷媒濃度が均一化されるので、冷媒濃度の局所的な上昇を抑制することができる。
【0045】
冷媒回路10から冷媒が漏洩した状態で、空気調和機1の運転を行うと、冷媒の漏洩量や漏洩速度が増大する可能性がある。本実施形態では、第2判断部22が冷媒回路10から冷媒が漏洩していると判断した場合に、通常の操作で運転を開始できないロック状態とする。これにより、冷媒が漏洩した状態で空気調和機1の運転が開始される事態を防止することができる。
【0046】
また、空気調和機1が通常の操作で運転を開始できないロック状態となると、再度空気調和機1を運転状態とするために特別な作業等が必要となり、運転開始操作が煩雑となる。このため、冷媒が漏洩していないにもかかわらず冷媒が漏洩していると判断する誤検知により、空気調和機1がロック状態となる事態が生じた場合、ユーザの利便性が低下する。本実施形態では、冷媒が漏洩していないと第2判断部22が判断した場合に通常の操作で運転を開始することができるスタンバイ状態とする。すなわち、冷媒が漏洩していると第1判断部21が判断した場合であっても、冷媒が漏洩していないと第2判断部22が判断した場合には、ロック状態とならずに、通常の操作で運転を開始することができるスタンバイ状態となる。したがって、誤検知により、空気調和機1がロック状態となり難くすることができる。したがって、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0047】
本実施形態では、第1判断部21が冷媒回路10から冷媒が漏洩していると判断した場合に、冷媒の漏洩を報知する警告ランプ15を備えている。これにより、ユーザが冷媒の漏洩を認識することができる。また、本実施形態では、冷媒が漏洩しているか否かを第2判断部22が判断する前に、警告ランプ15が冷媒の漏洩を報知している。これにより、冷媒が漏洩している場合に、より迅速にユーザに冷媒の漏洩を認識させることができるので、安全性を向上させることができる。
【0048】
本実施形態では、第2判断部22が、冷媒回路10から冷媒が漏洩していないと判断した場合であっても、所定の時間、警告ランプ15が冷媒の漏洩を報知するとともに、ファン制御部24が室内ファン8を駆動する。これにより、実際には冷媒が漏洩しているにも関わらず、冷媒が漏洩していないと第2判断部22が判断してしまった場合であっても、室内ファン8が室内の空気を攪拌し、冷媒濃度の局所的な上昇を抑制することができる。したがって、安全性を向上することができる。
【0049】
冷媒の比重は、通常、空気よりも大きい。このため、空気中に漏洩した冷媒は、漏洩した空間の下部に滞留し易い。本実施形態では、酸素濃度計13が、冷媒が滞留し易い筐体の内部の下部に設けられている。これにより、酸素濃度計13が検出した酸素濃度に基づいて、冷媒が漏洩したか否かをより正確に判断することができる。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
例えば、本実施形態では、S1において、第1判断部21が、冷媒検知センサ12からのデータのみに基づいて、冷媒回路10から冷媒が漏洩しているか否かを判断する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、S1において、第1判断部21が、冷媒検知センサ12からのデータと、酸素濃度計13からのデータとの両方に基づいて、冷媒回路10から冷媒が漏洩しているか否かを判断してもよい。
このように構成することで、第1判断部21が、異なる複数のデータに基づいて、冷媒回路10から冷媒が漏洩しているか否かを判断することができる。よって、より正確に冷媒が漏洩しているか否かを判断することができる。
【0051】
また、本実施形態では、酸素濃度計13を、室内機1bの筐体の内部であって、かつ、下部に設ける例について説明したが本発明はこれに限定されない。例えば、酸素濃度計13を、室内機1bの下方に設けてもよい。詳細には、室内機1bが配置される室内の床近傍であって、室内機1bの略鉛直下方に酸素濃度計13を設けてもよい。また、室外機1aと室内機1bとを接続する冷媒配管11のうち、室内に配置される冷媒配管11の略鉛直下方に酸素濃度計13を設けてもよい。
【0052】
また、S4で、酸素濃度計13が計測したデータに基づいて、冷媒回路10から冷媒が漏洩しているか否かを、第2判断部22によって判断する際に、ファンモータ16を停止してもよい。また、ファンモータ16の回転数を通常の運転時の回転数よりも少なくしてもよい。このように構成することで、第2判断部22が冷媒の漏洩の有無を判断する際に、筐体内に筐体の外部の空気が流入し難くすることができる。外部の空気が流入し難くなることで、筐体内において正確に酸素濃度の低下を検出することができるので、正確に冷媒が漏洩しているか否かを判断することができる。
【0053】
例えば、冷媒の漏洩を報知する手段として、警告ランプ15とともに、室内機1bを操作するリモコンに、冷媒が漏洩している旨を表示してもよい。
【0054】
また、室内機1bにバッテリを設け、室内機1bの運転中に、バッテリに蓄電するようにしてもよい。このように構成することで、空気調和機1に対して外部から電気が供給されない状態(例えば、電気の供給元の電源が喪失した状態等)においても、バッテリからの電気によって冷媒が漏洩しているか否かを判断することができる。また、室内機1bの出荷時に、バッテリが蓄電状態であってもよい。このように構成することで、空気調和機1の出荷時から据え付け時までの間であっても、バッテリからの電気によって冷媒が漏洩しているか否かを判断することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 :空気調和機
1a :室外機
1b :室内機
2 :圧縮機
3 :四方切換弁
4 :室外熱交換器
5 :室外ファン
6 :アキュムレータ
7 :室内熱交換器
8 :室内ファン(ファン)
9 :電子膨張弁
10 :冷媒回路
11 :冷媒配管
12 :冷媒検知センサ(冷媒検知手段)
13 :酸素濃度計(酸素濃度検出手段)
14 :ブザー
15 :警告ランプ(報知手段)
16 :ファンモータ
20 :制御装置
21 :第1判断部
22 :第2判断部
23 :圧縮機制御部
24 :ファン制御部
25 :ブザー制御部
26 :ランプ制御部