(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】トナー用結着樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20230410BHJP
C08L 25/14 20060101ALI20230410BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20230410BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
G03G9/087 331
C08L25/14
C08L33/04
C08L67/00
G03G9/087 325
(21)【出願番号】P 2019017107
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2018148452
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】伊知地 浩太
(72)【発明者】
【氏名】白井 英治
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203831(JP,A)
【文献】特開2016-130797(JP,A)
【文献】特開2017-227724(JP,A)
【文献】特開2018-013520(JP,A)
【文献】特開2018-013521(JP,A)
【文献】特開2011-253013(JP,A)
【文献】特開2018-010124(JP,A)
【文献】特開2016-218249(JP,A)
【文献】特開2019-109274(JP,A)
【文献】特開2020-076905(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0219895(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール成分及びカルボン酸成分を含む原料モノマーの反応物であるポリエステル樹脂部分と、(メタ)アクリル系化合物を
50質量%以上含む原料モノマーの反応物であるビニル系樹脂部分とを有する複合樹脂Aを20質量%以上含有するトナー用結着樹脂組成物であって、
前記ポリエステル樹脂部分のカルボン酸成分において、3価以上のカルボン酸系化合物の割合が、アルコール成分100モルに対して5モル以下であり、前記複合樹脂Aが、軟化点が110℃以上150℃以下であり、ガラス転移温度が50℃以上65℃以下であり、メチルエチルケトン不溶分を5質量%以上32質量%以下含み、該メチルエチルケトン不溶分のガラス転移温度が、前記複合樹脂Aのガラス転移温度よりも5℃以上40℃以下低い、トナー用結着樹脂組成物。
【請求項2】
ビニル系樹脂部分の原料モノマーが、さらに、スチレン化合物を含む、請求項
1記載のトナー用結着樹脂組成物。
【請求項3】
複合樹脂Aにおけるビニル系樹脂部分に対するポリエステル樹脂部分の質量比が85/15以上95/5以下である、請求項1
又は2記載のトナー用結着樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、軟化点が90℃以上110℃以下であり、メチルエチルケトン不溶分の含有量が3質量%以下である、非晶質ポリエステルBを含有する、請求項1~
3いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、結晶性ポリエステルCを含有する、請求項1~
4いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~
5いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物を含有する、電子写真用トナー。
【請求項7】
請求項1~
5いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物の製造方法であって、複合樹脂Aを、
工程A:全カルボン酸成分の5モル%以上50モル%以下のカルボン酸成分の存在下で、ビニル系樹脂部分の原料モノマーの付加重合反応を行う工程、
工程B:工程Aで得られた反応液を、2.5時間以上10時間以下にわたって180℃以上250℃以下の温度条件下に置き、反応させる工程、ただし、工程Bの反応は、全アルコール成分の98モル%以上のアルコール成分の存在下で行う
工程C:工程Bで得られた反応液に、残りのポリエステル樹脂部分の原料モノマーを添加し、重縮合反応を行う工程
を含む方法により製造する、トナー用結着樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
工程Aの付加重合反応を、全カルボン酸成分の5モル%以上50モル%以下のカルボン酸成分と全アルコール成分の98モル%以上のアルコール成分の存在下で行う、請求項
7記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナー用結着樹脂組成物及び該結着樹脂組成物を含有した電子写真用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスのコピー機の用途は、従来のオフィス文書に留まらず、チラシ・パンフレット等商業用途にも広がっている。商業用途においては、高光沢の画像とより幅広い用紙適合性(薄紙から厚紙まで)が求められ、コピー機側の設定をかえずに幅広い用紙で印刷するためには、広い定着可能領域(非オフセット域)が必要である。
【0003】
特許文献1には、低温定着性、耐ホットオフセット性、及び長期保存性のいずれにも優れる電子写真用トナー用結着樹脂組成物として、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物であるポリエステル樹脂Pとビニル樹脂との非晶質複合樹脂であり、軟化点が107℃以上140℃以下である非晶質複合樹脂ACと、炭素数2以上16以下の脂肪族ジオールを95モル%以上含有するアルコール成分と炭素数4以上14以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物を95モル%以上含有するカルボン酸成分との重縮合物である結晶性ポリエステル樹脂CPとを含有するトナー用結着樹脂組成物であって、前記ポリエステル樹脂Pのカルボン酸成分がアルコール成分100モルに対して、3価以上の芳香族カルボン酸系化合物を3モル以上18モル以下含有し、前記ビニル樹脂が、アルキル基の炭素数が2以上6以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを25質量%以上50質量%以下含有する原料モノマーの付加重合物である、トナー用結着樹脂組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、低温定着性、グロス、及びローラー剥離性に優れる電子写真用トナー用結着樹脂組成物として、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を10モル%以上100モル%以下含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合して得られる重縮合系樹脂成分と、アルキル基の炭素数が2以上8以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、10質量%以上60質量%以下含有する原料モノマーを付加重合して得られる付加重合系樹脂成分とを含み、軟化点が100℃以上130℃以下、メチルエチルケトン不溶分が5質量%以上50質量%以下である非晶質複合樹脂を含有する、トナー用結着樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-203831号公報
【文献】特開2016-130797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、非オフセット域が広く、光沢度の高い画像が得られるトナー用結着樹脂組成物及び該結着樹脂組成物を含有する電子写真用トナーに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
トナー用結着樹脂組成物として、非オフセット域を広げるためには、高分子量成分(溶剤不溶分)を含有した樹脂が必要になるが、高分子量成分は定着時に溶融し難いため、印字画像表面が荒れて光沢が下がるという課題を抱える。これは、通常、ポリエステルは分子量が大きくなるほどガラス転移温度が高くなることに起因していると考えられる。すなわち、樹脂全体としてはガラス転移温度が60℃のポリエステルであっても、溶剤不溶分のガラス転移温度は70℃と高いという場合が往々にあり、非常に軟化し難い高分子量成分を含んでいることが原因であると推察される。
そこで、本発明者らが検討した結果、溶剤不溶分は高分子量成分であるため、運動性が低いことを加味し、溶剤不溶分のガラス転移温度を樹脂のガラス転移温度よりある程度低くすることで、高光沢画像が得られることを見出した。
【0008】
本発明は、
〔1〕 アルコール成分及びカルボン酸成分を含む原料モノマーの反応物であるポリエステル樹脂部分と、(メタ)アクリル系化合物を含む原料モノマーの反応物であるビニル系樹脂部分とを有する複合樹脂Aを20質量%以上含有するトナー用結着樹脂組成物であって、前記複合樹脂Aが、軟化点が110℃以上150℃以下であり、ガラス転移温度が50℃以上65℃以下であり、メチルエチルケトン不溶分を5質量%以上32質量%以下含み、該メチルエチルケトン不溶分のガラス転移温度が、前記複合樹脂Aのガラス転移温度よりも5℃以上40℃以下低い、トナー用結着樹脂組成物、
〔2〕 前記〔1〕記載のトナー用結着樹脂組成物を含有する、電子写真用トナー、並びに
〔3〕 前記〔1〕記載のトナー用結着樹脂組成物の製造方法であって、複合樹脂Aを、
工程A:全カルボン酸成分の5モル%以上50モル%以下のカルボン酸成分の存在下で、ビニル系樹脂部分の原料モノマーの付加重合反応を行う工程、
工程B:工程Aで得られた反応液を、2.5時間以上10時間以下にわたって180℃以上250℃以下の温度条件下に置き、反応させる工程、ただし、工程Bの反応は、全アルコール成分の98モル%以上のアルコール成分の存在下で行う
工程C:工程Bで得られた反応液に、残りのポリエステル樹脂部分の原料モノマーを添加し、重縮合反応を行う工程
を含む方法により製造する、トナー用結着樹脂組成物の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の結着樹脂組成物を含有した電子写真用トナーは、非オフセット域が広く、光沢度の高い画像が得られるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のトナー用結着樹脂組成物は、ポリエステル樹脂部分とビニル系樹脂部分とを有する複合樹脂Aを含有し、この複合樹脂Aが、ガラス転移温度が樹脂のガラス転移温度よりも低いメチルエチルケトン不溶分を含んでいる点に1つの特徴を有している。高分子量成分である溶剤不溶分(メチルエチルケトン不溶分)により非オフセット域を広げることができ、また、樹脂全体が軟化した際、ガラス転移温度が低い溶剤不溶分も同時に軟化し、高光沢画像が得られるものと推察される。
【0011】
複合樹脂Aにおけるメチルエチルケトン不溶分の含有量は、非オフセット域の拡大の観点から、5質量%以上であり、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、そして、低温定着性及び光沢度の観点から、32質量%以下であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは28質量%以下、さらに好ましくは26質量%以下である。
【0012】
前記メチルエチルケトン不溶分のガラス転移温度は、複合樹脂Aのガラス転移温度よりも低く、その差は、画像の光沢度の観点から、5℃以上であり、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上であり、そして、非オフセット域の確保の観点から、40℃以下であり、好ましくは35℃以下、より好ましくは30℃以下である。
【0013】
ポリエステル樹脂部分は、アルコール成分及びカルボン酸成分を含む原料モノマーの反応物である。
【0014】
ポリエステル樹脂部分のアルコール成分は、保存性を確保するための、トナーのガラス転移温度調整の観点から、式(I):
【0015】
【0016】
(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン基及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含むことが好ましい。式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0017】
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
【0018】
他のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブテンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール、グリセリン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
【0019】
ポリエステル樹脂部分のカルボン酸成分は、保存性を確保するための、トナーのガラス転移温度調整の観点から、芳香族ジカルボン酸系化合物を含むことが好ましい。芳香族ジカルボン酸系化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、これらの酸の無水物及びそれらの酸の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられるが、これらの中では、テレフタル酸が好ましい。なお、本発明において、カルボン酸系化合物には、遊離酸だけでなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び炭素数が1以上3以下のアルキルエステルも含まれる。
【0020】
芳香族ジカルボン酸系化合物の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
【0021】
他のカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、3価以上のカルボン酸、これらの酸の無水物及びそれらの酸の炭素数が1以上3以下のアルキルエステル等が挙げられる。
【0022】
本発明では、光沢度の観点から、カルボン酸成分には、3価以上のカルボン酸系化合物は、含まれていないか、含まれていても少量であることが好ましい。従って、カルボン酸成分中の3価以上のカルボン酸系化合物の割合は、アルコール成分100モルに対して、好ましくは5モル以下、より好ましくは3モル以下、さらに好ましくは1モル以下、さらに好ましくは0.5モル以下、さらに好ましくは0モルである。
【0023】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、ポリエステル樹脂の分子量及び軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
【0024】
カルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステル樹脂の軟化点を調整する観点から、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.1以下、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0.9以下である。
【0025】
ポリエステル樹脂部分は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下で、重縮合させて製造することができる。重縮合反応に適した温度条件は、好ましくは180℃以上、より好ましくは210℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下の温度範囲である。
【0026】
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、チタン化合物が好ましい。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。重合禁止剤としては、t-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
【0027】
なお、本発明において、ポリエステル樹脂は、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル樹脂であってもよい。変性されたポリエステル樹脂としては、例えば、特開平11-133668号公報、特開平10-239903号公報、特開平8-20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル樹脂が挙げられるが、変性されたポリエステル樹脂のなかでは、ポリエステル樹脂をポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0028】
ビニル系樹脂部分は、(メタ)アクリル系化合物を含む原料モノマーの反応物である。(メタ)アクリル系化合物を複合樹脂Aの製造において、ポリエステル樹脂部分の架橋剤として作用させることにより、ガラス転移温度の低いメチルエチルケトン不溶分を生成させることができると考えられる。従って、本発明における複合樹脂Aは、(メタ)アクリル系化合物を介してポリエステル樹脂部分とビニル系樹脂部分が化学結合した樹脂であることがより好ましい。
【0029】
(メタ)アクリル系化合物としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸(イソ)ブチル、等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることが好ましい。なお、本明細書において、「(イソ)」は、この基が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸、メタクリル酸、又はその両者を示す。
【0030】
アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、光沢度の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、そして、非オフセット域の拡大の観点から、好ましくは6以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下であり、特に好ましくは4である。
【0031】
(メタ)アクリル系化合物の含有量は、ビニル系樹脂部分の原料モノマー中、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、そして、保存性を確保するための、トナーのガラス転移温度調整の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0032】
ビニル系樹脂部分の原料モノマーは、保存性を確保するための、トナーのガラス転移温度調整の観点から、さらに、スチレン化合物を含有することが好ましい。
【0033】
スチレン化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体等が挙げられる。
【0034】
スチレン化合物の含有量は、ビニル系樹脂部分の原料モノマー中、好ましくは0質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、そして、光沢度の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0035】
(メタ)アクリル系化合物とスチレン化合物の合計含有量は、ビニル系樹脂部分の原料モノマー中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0036】
(メタ)アクリル系化合物及びスチレン化合物以外のビニル系樹脂部分の原料モノマーとしては、エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸エステル;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N-ビニルピロリドン等のN-ビニル化合物類等が挙げられる。
【0037】
ビニル系樹脂部分の原料モノマーの付加重合反応は、例えば、ジクミルパーオキサイド等の重合開始剤、重合禁止剤、架橋剤等の存在下、有機溶媒存在下又は無溶媒下で行うことができるが、付加重合反応に適した温度条件としては、好ましくは110℃以上、より好ましくは140℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは170℃以下である。
【0038】
付加重合反応の際に有機溶媒を使用する場合、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等を用いることができる。有機溶媒の使用量は、ビニル系樹脂部分の原料モノマー100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下が好ましい。
【0039】
複合樹脂Aは、例えば、ポリエステル樹脂部分の原料モノマーによる重縮合反応の工程(重縮合工程)と、ビニル系樹脂部分の原料モノマーによる付加重合反応の工程(付加重合工程)とを含む方法により製造することができる。
重縮合工程の後に付加重合工程を行ってもよいし、付加重合工程の後に重縮合工程を行ってもよく、重縮合工程と付加重合工程を同時に行ってもよい。また、重縮合工程と付加重合工程は、同一容器内で行うことが好ましい。
【0040】
また、重縮合反応の代わりに、予め重合した重縮合系樹脂を用いてもよい。重縮合工程と付加重合工程を並行して進行する際には、ポリエステル樹脂部分の原料モノマーを含有した混合物中に、ビニル系樹脂部分の原料モノマーを含有した混合物を滴下して反応させることもできる。
【0041】
本発明において、複合樹脂Aは、
工程A:全カルボン酸成分の5モル%以上50モル%以下のカルボン酸成分の存在下で、ビニル系樹脂部分の原料モノマーの付加重合反応を行う工程、
工程B:工程Aで得られた反応液を、2.5時間以上10時間以下にわたって180℃以上250℃以下の温度条件下に置き、反応させる工程、ただし、工程Bの反応は、全アルコール成分の98モル%以上のアルコール成分の存在下で行う
工程C:工程Bで得られた反応液に、残りのポリエステル樹脂部分の原料モノマーを添加し、重縮合反応を行う工程
を含む方法により、製造することが好ましい。
工程A及び工程Cでは、付加重合反応又は重縮合反応に適した温度条件で、それぞれの反応を促進することが好ましい。また、工程Bは、エステル化触媒の存在下で、又はエステル化触媒とエステル化助触媒の存在下で行うことが好ましく、生成した樹脂の重量平均分子量が6,000以上に達するまで行うことがより好ましい。
工程Bでは、ポリエステル樹脂部分の原料モノマーの重縮合反応も生じ得るが、工程Aで生成したビニル系樹脂における(メタ)アクリル系化合物とアルコール成分とのエステル交換反応により、メチルエチルケトン不溶分のガラス転移温度が、前記複合樹脂Aのガラス転移温度よりも5℃以上40℃以下低い、トナー用結着樹脂組成物が得られると考えられる。
【0042】
工程Aをカルボン酸成分の存在下で行うことにより、付加重合反応を促進することができる。工程Aに用いるカルボン酸成分の量は、全カルボン酸成分中、好ましくは5モル%以上、より好ましくは5.5モル%以上であり、そして、光沢度の観点から、好ましくは50モル%以下、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。
【0043】
工程Bの温度範囲は、エステル交換反応を促進する観点から、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上であり、そして、好ましくは245℃以下、より好ましくは240℃以下である。
【0044】
工程Bの時間は、エステル交換反応を促進する観点から、好ましくは3.5時間以上、より好ましくは4.5時間以上であり、そして、好ましくは8時間以下、より好ましくは7時間以下である。
【0045】
工程Bに用いるアルコール成分の量は、全アルコール成分中、98モル%以上であり、好ましくは100モル%である。
【0046】
なお、工程Bに用いるアルコール成分は、工程Aの後に反応系に添加してもよいが、作業効率の観点から、工程Aでカルボン酸成分とともに、反応系に存在していることが好ましい。即ち、工程Aの付加重合反応を、全カルボン酸成分の5モル%以上50モル%以下のカルボン酸成分と全アルコール成分の98モル%以上のアルコール成分の存在下で行うことが好ましい。
【0047】
複合樹脂Aにおけるビニル系樹脂部分に対するポリエステル樹脂部分の質量比(ポリエステル樹脂部分/ビニル系樹脂部分)は、光沢度の観点から、好ましくは85/15以上、より好ましくは88/12以上であり、そして、非オフセット域の拡大の観点から、好ましくは95/5以下、より好ましくは92/8以下である。なお、上記の計算において、ポリエステル樹脂部分の質量は、用いられるポリエステル樹脂部分の原料モノマーの質量から、重縮合反応により脱水される反応水の量を除いた質量である。また、ビニル系樹脂部分の量は、ビニル系樹脂部分の原料モノマーの合計量である。
【0048】
複合樹脂Aの軟化点は、非オフセット域の拡大の観点から、110℃以上であり、好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、150℃以下であり、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下である。
【0049】
複合樹脂Aのガラス転移温度は、保存性を確保するための、トナーのガラス転移温度調整の観点から、50℃以上であり、好ましくは52℃以上、より好ましくは54℃以上であり、そして、光沢度の観点から、65℃以下であり、好ましくは60℃以下、より好ましくは57℃以下である。
【0050】
複合樹脂Aの酸価は、低温定着性の観点から、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、さらに好ましくは14mgKOH/g以上であり、そして、トナーの帯電安定性確保の観点から、好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは23mgKOH/g以下、さらに好ましくは18mgKOH/g以下である。
【0051】
複合樹脂Aの数平均分子量は、好ましくは1,500以上、より好ましくは2,000以上、さらに好ましくは2,500以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは5,000以下、より好ましくは4,000以下、さらに好ましくは3,500以下である。
【0052】
また、複合樹脂Aの重量平均分子量は、好ましくは100,000以上、より好ましくは125,000以上、さらに好ましくは150,000以上であり、そして、好ましくは350,000以下、より好ましくは300,000以下、さらに好ましくは250,000以下である。
【0053】
複合樹脂Aの含有量は、結着樹脂組成物中、20質量%以上であり、好ましくは35質量%以上、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上であり、非オフセット域の拡大の観点から、好ましくは85質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下である。
【0054】
本発明のトナー用結着樹脂組成物は、さらに、メチルエチルケトン不溶分が複合樹脂Aよりも少ない非晶質ポリエステルBを含有することが好ましい。非晶質ポリエステルBにより、低温定着性が向上する。
【0055】
非晶質ポリエステルBにおけるメチルエチルケトン不溶分の含有量は、低温定着性の観点から、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0質量%である。
【0056】
非晶質ポリエステルBは、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を含有するアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物であることが好ましい。
【0057】
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物において、プロピレン基の平均付加モル数は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である。
【0058】
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物の含有量は、非晶質ポリエステルBのアルコール成分中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下、好ましくは99.8モル%以下、より好ましくは99.5モル%以下である。
【0059】
非晶質ポリエステルBのアルコール成分は、保存性を確保するための、トナーのガラスン転移温度調整の観点から、さらに、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を含有することが好ましい。ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物において、エチレン基の平均付加モル数は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下、さらに好ましくは4以下である。
【0060】
非晶質ポリエステルAHのアルコール成分中のビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物の含有量は、好ましくは0.2モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上であり、そして、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。非晶質ポリエステルALのアルコール成分中のビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物の含有量についても同様である。
【0061】
他のアルコール成分としては、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物及びビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物以外の芳香族ジオール、脂肪族ジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、グリセリン等の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。
【0062】
非晶質ポリエステルBのカルボン酸成分及び非晶質ポリエステルBの製造方法については、複合樹脂Aのポリエステル樹脂部分と同様である。
【0063】
非晶質ポリエステルBの軟化点は、保存性を確保するための、トナーのガラス転移温度調整の観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは110℃以下、より好ましくは105℃以下である。
【0064】
非晶質ポリエステルBのガラス転移温度は、保存性を確保するための、トナーのガラス転移温度調整の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは55℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは65℃以下である。
【0065】
非晶質ポリエステルBの酸価は、低温定着性の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは2mgKOH/g以上、さらに好ましくは4mgKOH/g以上であり、そして、トナーの帯電安定性確保の観点から、好ましくは15mgKOH/g以下、より好ましくは10mgKOH/g以下、さらに好ましくは7mgKOH/g以下である。
【0066】
非晶質ポリエステルBの数平均分子量は、保存性を確保するための、トナーのガラス転移温度調整の観点から、好ましくは1,500以上、より好ましくは2,000以上、さらに好ましくは2,300以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは3,500以下、より好ましくは3,000以下、さらに好ましくは2,700以下である。
【0067】
また、同様の観点から、非晶質ポリエステルBの重量平均分子量は、好ましくは3,000以上、より好ましくは4,000以上、さらに好ましくは5,000以上であり、そして、好ましくは9,000以下、より好ましくは7,000以下、さらに好ましくは6,000以下である。
【0068】
なお、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最高ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、1.4以下、好ましくは1.2以下の樹脂である一方、非晶質樹脂は、結晶性指数が1.4を超える、好ましくは1.5を超える、より好ましくは1.6以上の樹脂であるか、または、0.6未満、好ましくは0.5以下の樹脂である。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。結晶性樹脂においては、吸熱の最高ピーク温度を融点とする。前記複合樹脂Aは、非晶質樹脂であることが好ましい。
【0069】
非晶質ポリエステルBの含有量は、結着樹脂組成物中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、非オフセット域の拡大の観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0070】
本発明のトナー用結着樹脂組成物は、さらに、結晶性ポリエステルCを含有することが好ましい。結晶性ポリエステルCにより、低温定着性が向上する。
【0071】
結晶性ポリエステルCのアルコール成分は、低温定着性の観点から、炭素数が6以上12以下の脂肪族ジオールを含有していることが好ましい。
【0072】
炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールとしては、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等が挙げられる。
【0073】
脂肪族ジオールの炭素数は、非晶質ポリエステル系樹脂との相溶性を下げる観点から、好ましくは6以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。
【0074】
また、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールは、トナーの低温定着性を向上させる観点から、水酸基を炭素鎖の末端に有していることが好ましく、α,ω-直鎖アルカンジオールであることがより好ましい。
【0075】
アルコール成分には、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオール以外のアルコールが含まれていてもよいが、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールの含有量は、低温定着性及び保存性の観点から、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
【0076】
炭素数6以上12以下の脂肪族ジオール以外のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール等の炭素数2~5のα,ω-脂肪族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール、グリセリン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
【0077】
結晶性ポリエステル樹脂Cのカルボン酸成分は、低温定着性の観点から、炭素数4以上14以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物を含有していることが好ましい。
【0078】
炭素数4以上14以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物としては、コハク酸(炭素数:4)、スベリン酸(炭素数:8)、アゼライン酸(炭素数:9)、セバシン酸(炭素数:10)、ドデカン2酸(炭素数:12)、テトラデカン2酸(炭素数:14)、側鎖にアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸、これらの酸の無水物、それらの炭素数1~3のアルキルエステル等が挙げられる。なお、本発明において、カルボン酸系化合物には、遊離酸だけでなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び炭素数が1以上3以下のアルキルエステルも含まれる。ただし、アルキルエステル部のアルキル基の炭素数は、脂肪族ジカルボン酸系化合物の炭素数には含めない。
【0079】
脂肪族ジカルボン酸系化合物における鎖状炭化水素基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、脂肪族ジカルボン酸系化合物の炭素数は、耐久性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、さらに好ましくは10以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
【0080】
炭素数4以上14以下の脂肪族ジカルボン酸系化合物の含有量は、耐熱保存性の観点から、アルコール成分100モルに対して、好ましくは70モル以上、より好ましくは80モル以上、さらに好ましくは90モル以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは130モル以下、より好ましくは120モル以下、さらに好ましくは110モル以下である。
【0081】
カルボン酸成分には、他のカルボン酸系化合物が含まれていてもよい。他のカルボン酸系化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸系化合物、炭素数2~3の脂肪族ジカルボン酸系化合物、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸系化合物等が挙げられる。
【0082】
カルボン酸成分及びアルコール成分との重縮合反応は、例えば、不活性ガス雰囲気中にて、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒等の存在下、135℃以上250℃以下の温度で行うことができる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。エステル化触媒とともに用い得るエステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分及びカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下である。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分及びカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
【0083】
結晶性ポリエステルCの融点は、保存性を確保するための、トナーのガラス転移温度調整の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上、さらに好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは85℃以下である。
【0084】
結晶性ポリエステルCの酸価は、低温定着性の観点から、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは2mgKOH/g以上、さらに好ましくは3mgKOH/g以上であり、そして、保存性を確保するための、トナーのガラス転移温度調整の観点から、好ましくは7mgKOH/g以下、より好ましくは6mgKOH/g以下、さらに好ましくは5mgKOH/g以下である。
【0085】
結晶性ポリエステルCの水酸基価は、低温定着性の観点から、好ましくは2mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上、さらに好ましくは4mgKOH/g以上であり、そして、保存性を確保するための、トナーのガラス転移温度調整の観点から、好ましくは7mgKOH/g以下、より好ましくは6mgKOH/g以下、さらに好ましくは5mgKOH/g以下である。
【0086】
結晶性ポリエステルCの数平均分子量は、低温定着性の観点から、好ましくは5,500以上、より好ましくは6,000以上、さらに好ましくは6,300以上であり、そして、保存性を確保するための、トナーのガラス転移温度調整の観点から、好ましくは8,000以下、より好ましくは7,500以下、さらに好ましくは7,000以下である。
【0087】
また、同様の観点から、結晶性ポリエステルCの重量平均分子量は、好ましくは20,000以上、より好ましくは22,500以上、さらに好ましくは25,000以上であり、そして、好ましくは50,000以下、より好ましくは45,000以下、さらに好ましくは40,000以下である。
【0088】
結晶性ポリエステルCの含有量は、樹脂組成物中、低温定着性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、そして、保存性を確保するための、トナーのガラス転移温度調整の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。
【0089】
本発明の樹脂組成物には、前記の複合樹脂A、非晶質ポリエステルB、及び結晶性ポリエステルC以外の樹脂が含有されていてもよいが、複合樹脂A、非晶質ポリエステルB、及び結晶性ポリエステルCの合計含有量は、結着樹脂組成物中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0090】
本発明の結着樹脂組成物を結着樹脂として用いて、本発明の電子写真用トナーが得られる。なお、本発明の結着樹脂組成物は、複合樹脂A、非晶質ポリエステルB、及び結晶性ポリエステルCの混合物を結着樹脂として用いてもよく、トナーを製造する際に、これらの樹脂を直接原料の混合に供してもよい。
【0091】
本発明のトナーには、結着樹脂(本発明の結着樹脂組成物)以外に、着色剤、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が含有されていてもよい。
【0092】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等を使用することができる。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントレッド122、ピグメントグリーンB、ローダミン-Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等が挙げられる。なお、本発明において、トナー粒子は、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
【0093】
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0094】
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を用いることができる。
【0095】
離型剤の融点は、トナーの転写性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下である。
【0096】
離型剤の含有量は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下である。
【0097】
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
【0098】
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリエント化学工業(株)製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業(株)製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリエント化学工業(株)製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業(株)製)等;スチレン-アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成(株)製)等が挙げられる。
【0099】
また、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリエント化学工業(株)製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業(株)製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット(株)製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリエント化学工業(株)製)、「TN-105」(保土谷化学工業(株)製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
【0100】
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
【0101】
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。
【0102】
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、外添剤を用いることが好ましい。外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられ、2種以上が併用されていてもよい。これらの中では、シリカが好ましく、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
【0103】
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0104】
外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上であり、そして、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは90nm以下である。
【0105】
外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、外添剤で処理する前のトナー100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
【0106】
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーを外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
【0107】
本発明のトナーは、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーとして、それぞれ一成分現像方式又は二成分現像方式の画像形成装置に用いることができる。
【実施例】
【0108】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
【0109】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」((株)島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0110】
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(25℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、0℃にて1分間維持する。その後、昇温速度10℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
【0111】
〔樹脂及びMEK不溶分のガラス転移温度(Tg)〕
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0112】
〔樹脂の酸価〕
JIS K 0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、非晶質樹脂はアセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に、結晶性樹脂はクロロホルム:ジメチルホルムアミドの混合溶媒(クロロホルム:ジメチルホルムアミド=7:3(容量比))に、それぞれ変更する。
【0113】
〔樹脂の水酸基価〕
JIS K 0070:1992の方法に基づき測定する。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒からテトラヒドロフランに変更する。
【0114】
〔樹脂の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)〕
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をテトラヒドロフラン(非晶質樹脂)又はクロロホルム(結晶性樹脂)に、40℃で溶解させる。次いで、この溶液を孔径0.20μmのPTFEタイプメンブレンフィルター「DISMIC-25JP」(東洋濾紙(株)製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフラン(非晶質樹脂)又はクロロホルム(結晶性樹脂)を、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製のA-500(5.0×102)、A-1000(1.01×103)、A-2500(2.63×103)、A-5000(5.97×103)、F-1(1.02×104)、F-2(1.81×104)、F-4(3.97×104)、F-10(9.64×104)、F-20(1.90×105)、F-40(4.27×105)、F-80(7.06×105)、F-128(1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。括弧内は分子量を示す。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
分析カラム:TSKgel GMHXL+TSKgel G3000HXL(東ソー(株)製)
【0115】
〔樹脂中のメチルエチルケトン(MEK)不溶分〕
(1)試料の調製
JIS Z8801の篩を用いて、22メッシュの篩を通過し、30メッシュの篩は通過しない粉末状の試料を採取する。試料が塊等の場合は、市販のハンマー、コーヒーミルを用いて、粉砕し、粉末状として篩いにかける。
【0116】
(2)試料の溶解
2-1. 試料2.000gを、ガラス瓶(柏洋硝子(株)製、M-140)に秤量した後、MEK 95gを加え、内蓋及び外蓋を取り付ける。
2-2. ボールミルにて5時間攪拌する(周速:200mm/sec)。
2-3. 10時間静置する。
【0117】
(3)濾過
3-1. 予め計量済み(1000分の1g単位)のナスフラスコ(質量A(g))に取り付けたガラスフィルタ(目開き規格11G-3)を準備する。ガラスフィルタのシールには、減圧が可能なゴム栓を用いる。
3-2. 2-3において10時間静置した溶解液の上澄みから20mLをメスピペッドで吸い取り、3-1で準備したガラスフィルタを用いて、減圧濾過する。なお、液面から下2cmまでを上澄みとする。溶解液を濾過する前のナスフラスコ内の減圧度を40kPaに調整する。
3-3. 未使用のMEK 20mLをメスピペッドで吸い取り、ガラスフィルタに付着している可溶分を減圧濾過する。
【0118】
(4)乾燥
4-1. エバポレータにてナスフラスコ内のMEKを除去する。
ウォーターバス温度:70℃
ナスフラスコ回転数:200r/min
MEK除去中のナスフラスコ内の減圧度:40~20kPaに調整
時間:10分
4-2. 50℃・1torrにて12時間乾燥した後、ナスフラスコの質量B(g)を計量する。
【0119】
(5)MEK不溶分の算出
5-1. MEK 20mLに溶解したMEK可溶分X(g)を算出する。
X=B-A
5-2. MEK 95gに溶解したMEK可溶分Y(g)を、MEKの比重を0.805として算出する。
Y=X×95/(20×0.805)
5-3. 試料1gあたりの可溶分Z(質量%)を算出する。
Z=Y/2×100
5-4. MEK不溶分(質量%)=100-Z
なお、MEK不溶分(質量%)は、3回の測定値の平均値とする。
【0120】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/minで-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を離型剤の融点とする。
【0121】
〔外添剤の平均粒子径〕
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値とする。
【0122】
〔トナーの体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター(株)製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター(株)製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター(株)製)
分散液:電解液にエマルゲン109P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を溶解して5質量%に調整したもの
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機(機械名:(株)エスエヌディー製US-1、出力:80W)にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0123】
樹脂製造例1
表1に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表1に示すテレフタル酸のうち、カルボン酸成分の5.9モル%分に該当する量(樹脂A1では、116g)を添加し、160℃まで昇温した。
表1に示すビニル系樹脂の原料モノマーと重合開始剤を別容器で計量、撹拌した後、滴下ロートにより1時間かけて滴下した。
滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を行い、さらに1時間熟成させた後、200℃まで上昇させ、エステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃で5時間反応させた後、160℃まで冷却し、残りのテレフタル酸(樹脂A1では1975g-116g=1859g、カルボン酸成分の94モル%)を添加し、再度、235℃で5時間重縮合反応させ、さらに235℃、8.0kPaにて表1に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質複合樹脂(樹脂A1~A6)を得た。
【0124】
樹脂製造例2
表2に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表2に示すテレフタル酸を加え、160℃まで昇温した。
表2に示すビニル系樹脂の原料モノマーと重合開始剤を別容器で計量、撹拌した後、滴下ロートにより1時間かけて滴下した。
滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を行い、さらに1時間熟成させた後、200℃まで上昇させ、エステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃で10時間重縮合反応させ、さらに235℃、8.0kPaにて表2に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質複合樹脂(樹脂A7)を得た。
【0125】
樹脂製造例3
表2に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表2に示すテレフタル酸のうち、116g(樹脂A8では、カルボン酸成分の5.9モル%)を添加し、160℃まで昇温した。
表2に示すビニル系樹脂の原料モノマーと重合開始剤を別容器で計量、撹拌した後、滴下ロートにより1時間かけて滴下した。
滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を行い、さらに1時間熟成させた後、200℃まで上昇させ、エステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃で5時間反応させた後、160℃まで冷却し、残りのテレフタル酸を添加し、再度、235℃で5時間重縮合反応させ、さらに235℃、8.0kPaにて2時間反応を行った。
180℃まで冷却した後、表2に示す無水トリメリット酸を投入し、180℃から210℃まで10℃/hで昇温し、210℃、10kPaにて表2に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質複合樹脂(樹脂A8~A10)を得た。
【0126】
樹脂製造例4
表2に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表2に示すテレフタル酸を添加し、160℃まで昇温した。
表2に示すビニル系樹脂の原料モノマー及び樹脂A13の製造では両反応性モノマーと、重合開始剤を別容器で計量、撹拌した後、滴下ロートにより1時間かけて滴下した。
滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を行い、さらに1時間熟成させた後、200℃まで上昇させ、エステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃で10時間重縮合反応させ、さらに235℃、8.0kPaにて2時間反応を行った。
180℃まで冷却した後、表2に示す無水トリメリット酸を投入し、180℃から210℃まで10℃/時間で昇温し、210℃、10kPaにて表2に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質複合樹脂(樹脂A11、A12)を得た。
【0127】
樹脂製造例5
表3に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表3に示すテレフタル酸のうち、116g(カルボン酸成分の5.9モル%)を添加し、160℃まで昇温した。
表3に示すビニル系樹脂の原料モノマーと重合開始剤を別容器で計量、撹拌した後、滴下ロートにより1時間かけて滴下した。
滴下後、160℃に保持したまま、1時間付加重合反応を行い、さらに1時間熟成させた後、200℃まで上昇させ、エステル化触媒とエステル化助触媒を添加し、235℃で2時間反応させ(生成した樹脂の重量平均分子量:6,670)、160℃まで冷却し、残りのテレフタル酸(1975g-116g=1859g、カルボン酸成分の94モル%)を添加し、再度、235℃で5時間重縮合反応させ、さらに235℃、8.0kPaにて表3に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質複合樹脂(樹脂A13)を得た。
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
樹脂製造例6
表4に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表4に示すテレフタル酸、エステル化触媒としてチタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート(オルガチックスTC-400、マツモトファインケミカル(株)製)39.3g、及びエステル化助触媒として没食子酸1.6gを添加し、235℃で10時間重縮合反応させ、さらに235℃、8.0kPaにて表4に示す軟化点に到達するまで反応させて、非晶質ポリエステル(樹脂B1)を得た。
【0132】
樹脂製造例7
表4に示すアルコール成分を、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、100℃に昇温した後、表4に示すカルボン酸成分を添加し、140℃に加熱して6時間反応させた後(反応率65%)、200℃まで10℃/h間で昇温しつつ反応させた。200℃にて反応率80%まで反応させた後、エステル化触媒としてチタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート(オルガチックスTC-400、マツモトファインケミカル(株)製)12.0gとエステル化助触媒として没食子酸1.2gを添加して、さらに200℃にて2時間反応を行った。さらに8kPaにて2時間反応を行い、結晶性ポリエステル(樹脂C1、C2)を得た。なお、反応率とは、生成反応水量(mol)/理論生成水量(mol)×100の値をいう。
【0133】
【0134】
実施例1~11及び比較例1~3
表5に示す結着樹脂100質量部、着色剤「ファストゲンスーパーマゼンタR」(C.I.ピグメント レッド122、大日本インキ化学工業(株)製)6質量部、荷電制御剤「LR-147」(日本カーリット社製)1質量部、及び離型剤「カルナウバワックス C1」(加藤洋行社製、融点:80℃)4質量部を、ヘンシェルミキサーでよく攪拌した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融混練した。ロールの回転速度は200r/min、ロール内の加熱設定温度は100℃であり、混練物の温度は160℃、混練物の供給速度は10kg/h、平均滞留時間は約18秒であった。冷却後、ジェットミルで体積中位粒径(D50)6.5μmのトナー粒子を得た。
【0135】
得られたトナー粒子100質量部に対し、外添剤として「アエロジル R-972」(疎水性シリカ、日本アエロジル社製、疎水化処理剤:DMDS、平均粒子径:16nm)2質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで3600r/min、5分間混合することにより、外添剤処理を行い、トナーを得た。
【0136】
試験例1〔画像の光沢度〕
複写機「AR-505」(商品名、シャープ(株)製)にトナーを実装し、未定着で画像出しを行った(印字面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm2)。印字媒体にJ紙(商品名、富士ゼロックス社製)を用いた。前記複写機の定着機をオフラインで、160℃、400mm/secで用紙に定着させた。該画像の下に厚紙を敷き、光沢度計(HORIBA製、商品名:「IG-330」)を用いて60°の光射条件にて光沢度を測定した。得られた値が高いほど光沢度が高い。光沢度を、下記評価基準に基づいて評価した。結果を表5に示す。
【0137】
〔評価基準〕
A:光沢度が20以上である。
B:光沢度が15以上20未満である。
C:光沢度が10以上15未満である。
D:光沢度が10未満である。
【0138】
試験例2〔非オフセット域〕
複写機「AR-505」(商品名、シャープ(株)製)にトナーを実装し、未定着で画像出しを行った(印字面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm2)。印字媒体にNcolor104(富士ゼロックス製、104g/m2・125μm)を用いた。前記複写機の定着機をオフラインで、400mm/secで用紙に定着させた。160℃から5℃ずつ上げて、オフセットが発生する温度を確認し、非オフセット域を判断した。結果を表5に示す。
【0139】
【0140】
以上の結果より、ガラス転移温度が樹脂よりも高いMEK不溶分を含む複合樹脂を用いた比較例1~3のトナーと対比して、実施例1~11のトナーは、非オフセット域を損なうことなく、高光沢の画像が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明のトナー用結着樹脂組成物は、例えば、静電荷像現像法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に用いられる電子写真用トナーの結着樹脂として好適に用いられるものである。