(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】合成樹脂製電気融着サドル分水栓に対する耐圧試験具の着合方法
(51)【国際特許分類】
F16L 41/12 20060101AFI20230410BHJP
F16L 47/30 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
F16L41/12
F16L47/30
(21)【出願番号】P 2019054779
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000201593
【氏名又は名称】前澤給装工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073623
【氏名又は名称】石川 幸吉
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】黒田 悠太
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-108281(JP,A)
【文献】特開2009-115296(JP,A)
【文献】特開2007-138998(JP,A)
【文献】特開平11-051281(JP,A)
【文献】特開平01-279196(JP,A)
【文献】特開平09-072481(JP,A)
【文献】実開平07-033598(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 41/12
F16L 47/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に一端が給水管接合部への挿入端、他端が加圧ポンプに接合する加圧接合端となっている加圧栓を設定し、その両翼に、分水栓本体の給水管接合部の背部に掛架されるU字型掛架ボルトの両端を挿脱可能に挿通支持する挿通孔を設けた支持枠とその推進機構とから成る治具により、U字型掛架ボルトのU字部を分水栓本体の給水管接合部背部に掛架し、その両端を支持枠両側の挿通孔にそれぞれ挿通支持すると共に、両挿通端部に設定した支持枠推進機構により加圧栓支持枠を給水管接合部に向けて推進することにより、分水栓本体と給水管接合部をU字型掛架ボルトと挟み込むことで、加圧栓の挿入端を分水栓の給水管接合部に圧接し、加圧接合端に耐圧試験具を着合することを特徴とする合成樹脂製電気融着サドル分水栓に対する耐圧試験具の着合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配水用ポリエチレン管等に電気融着された合成樹脂製サドル分水栓について耐圧試験を行う際の同サドルに対する耐圧試験具の着合方法とこれに用いる着合用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配水本管から分水する分岐管を配管施工する際には、サドル付分水栓を本管の上面に覆着し、サドル付分水栓を通して本管に分水孔を穿孔するが、その穿孔前に栓等に異常がないか確認するため、分水栓の給水管側から水圧を加えて検査している。
【0003】
サドル付分水栓には、従来金属製のものが用いられてきたが、近時、合成樹脂製のものも用いられるようになってきたが、金属製サドルと同様に分水栓を樹脂製の本管に電気融着後、融着サドルの傷、劣化、特に電気融着部に融着不良等による漏れ等の異常がないか、給水管側の配管や分水孔の穿孔前に検査確認が必要である。
【0004】
電気融着後の検査は、電気融着サドルの給水管接合部に、主としてメカニカル継手を接合し、メカニカル継手に水圧計・手動ポンプ等を接続して水圧を加えて耐圧検査を行い、検査後、メカニカル継手を接合した給水管接合部の部分を切断してメカニカル継手を除去し、給水管側の配管や分水孔の穿孔を行っているのが現状である。
【0005】
このような切断が行われるのは、メカニカル継手接合を行った部分にはストッパー等の食い込みにより傷、圧痕、変形等の食い込み跡が残り、これによりメカニカル継手での止水不能部の発生や融着継手での融着異常が発生する恐れを除去するもので、検査後、検査具を接合した給水管接合部の部分をメカニカル継手ごと切断除去し、その後、分水配管に使用されるメカニカル継手や融着継手を改めて接合して接続配管するものである。
このような電気融着サドル分水栓についての耐圧試験、特に合成樹脂製の分水栓については、金属製のものと異なり、検査具の螺合による締付着合により樹脂表面や素材が傷付き易く異常も発生し易いため、給水管側の配管や分水孔の穿孔を安全確実に行うためには事前の耐圧試験は極めて重要である。
従来、このような検査具着合についても特許文献1記載のようなメカニカル継手が用いられ、締付環内壁に形成した凹凸を着合力としてきた。
また、特許文献2記載のように給水管接合部に螺入する閉栓プラグの尾端に加圧ポンプを着合し、フランジに設定したシートパッキンにより接合部を止水して加圧する方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-248075号公報
【文献】特開2004-332811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気融着サドル分水栓についての耐圧試験は、分水栓の給水管接合部から高圧流体を送り込んで分水栓耐圧性能を確認するためのものであるから、当然のことながら、試験具は送り込まれる高圧流体に対抗して対象分水栓との着合を維持するだけの圧力による着合が必要であるが、金属製の場合のように安易に螺合構造を取り難く、メカニカル継手を用いた場合でも前記のように検査後継手ごと切除しなければならないといった問題がある。
【0008】
更に、メカニカル継手による螺合着合等の場合、ねじ込み過ぎにより対象分水栓に変形を生じさせてしまったり、給水管に大きな負荷を与えてしまうといった問題もある。
【0009】
本発明は、合成樹脂製分水栓への耐圧試験具着合についての以上のような問題に対応して、対象分水栓を傷つけることなく簡易な手段により安全確実に耐圧試験具の着合を行うことのできる着合方法とこれに用いる着合用治具の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記した課題に対応しようとするもので、中央部に一端が給水管接合部への挿入端、他端が加圧ポンプに接合する加圧接合端となっている加圧栓を設定し、その両翼に、分水栓本体の給水管接合部の背部に掛架されるU字型掛架ボルトの両端を挿脱可能に挿通支持する挿通孔を設けた支持枠とその推進機構とから成る治具により、U字型掛架ボルトのU字部を分水栓本体の給水管接合部背部に掛架し、その両端を支持枠両側の挿通孔にそれぞれ挿通支持すると共に、両挿通端部に設定した支持枠推進機構により加圧栓支持枠を給水管接合部に向けて推進することにより、分水栓本体と給水管接合部をU字型掛架ボルトと挟み込むことで、加圧栓の挿入端を分水栓の給水管接合部に圧接し、加圧接合端に耐圧試験具を着合するようにしたものである。
【0011】
すなわち、耐圧試験具の着合は、U字型掛架ボルトの両挿通端部による支持枠推進による給水管接合部の背部への掛架負荷によって行われるので、検査具が着合される分水栓の給水管接合部に対する外形的負荷が少なく、しかも、分水栓本体と給水管接合部をU字型掛架ボルトと挟み込むことにより、加圧栓の挿入端を分水栓の給水管接合部に充分な圧力により圧接することができる。
【0012】
従って、メカニカル継手によって検査具を着合した場合のように、着接を行った部分にストッパー等の食い込みによる傷、圧痕、変形等の食い込み跡が残ることはない。
【0013】
更に、U字型掛架ボルトの両挿通端部に設定する支持枠推進機構として、U字型掛架ボルトの両挿通端に雄螺子を刻設し、これと螺合する雌螺子を刻設した螺合孔を設定したナット杆を加圧栓支持枠を介してU字型掛架ボルトの両挿通端に螺合し、ナット杆の回動によりU字型掛架ボルトの両挿通端がナット杆螺合孔に螺進して加圧栓支持枠に掛架したナット杆頂頭部が支持枠を推進させる構成とすることにより、U字型掛架ボルトとの締め込みを適切に調整することができ、過度な締め込みによる分水栓本体や給水管接合部に対する過剰負荷を回避することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上のように構成したことにより、メカニカル継手を用いた場合発生する検査具が着合される分水栓の給水管接合部に対する外形的負荷を回避することができ、しかも、分水栓本体と給水管接合部をU字型掛架ボルトと挟み込むことにより、加圧栓の挿入端を分水栓の給水管接合部に充分な圧力により圧接することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例を示すもので、要部を切欠断面として合成樹脂製分水栓と耐圧試験具着合用治具との着合構造を示す全体平面図。
【
図2】同じく、分水栓と試験具着合用治具の着合構造を示す
図1の分水栓に着合用治具を着合した状態の正面図。
【
図3】同じく、U字型掛架ボルトの挿通端部と加圧栓支持枠を挿通支持するナット杆螺合孔との螺合状況を示す要部を切欠断面としたナット杆の左側面図。
【
図4】同じく、合成樹脂製分水栓をサドルにより配水本管の上面に覆着合した状況を示す合成樹脂製分水栓と配水本管の右側面図。
【
図5】同じく、耐圧試験具着合用治具についての他の実施例を示す合成樹脂製分水栓と耐圧試験具着合用治具との着合構造を示す全体平面図。
【
図6】同じく、耐圧試験具着合用治具についての他の実施例を示す合成樹脂製分水栓と耐圧試験具着合用治具との着合構造を示す全体平面図。
【
図7】同じく、耐圧試験具着合用治具についての他の実施例を示す合成樹脂製分水栓と耐圧試験具着合用治具との着合構造を示す全体平面図。
【
図8】同じく、耐圧試験具着合用治具についての他の実施例を示す合成樹脂製分水栓と耐圧試験具着合用治具との着合構造を示す全体平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本件発明による合成樹脂製電気融着サドル分水栓に対する耐圧試験具の着合方法とこれに用いる着合用治具について各実施例における実施の形態を説明する。
【0017】
1は合成樹脂製分水栓の本体で、下端に配水本管の上面に覆着合するサドル11、右側面に分水配管を接合する給水管接合部12が設定され、頂部は配水本管Pに分水孔を穿設する穿孔機を挿入する挿入口として開口し、常時はキャップ14によって覆蓋されている。
【0018】
配水本管からの分水は、このように構成された合成樹脂製分水栓1をサドル11によって配水本管Pの上面に覆着合すると共に、下面からサドルバンド15を挟着して通電することにより、分水栓1と配水本管Pを融着し、キャップ14を外して中の挿入口を通じて穿孔機等を使用して、分水孔を穿設するものであるが、分水孔を穿設する前に前記のように融着の完全性を確認するために耐圧試験具着合して試験を行うものである。
【0019】
耐圧試験具の着合は、従来、メカニカル継手により突刺するストッパーや袋ナット等で分水栓の給水管接合部12に着合して行われてきたため、前記のように食い込みによる傷、圧痕、変形等の食い込み跡が残り、給水管接合部12の継手着合部を継手ごと切除するといった素材と労力の無駄を省くことができなかった。
【0020】
本発明は、先ず、U字型掛架ボルト2のU字部21を分水栓本体1の給水管接合部背部に掛架し、その両端22、22を加圧栓支持枠3の両側の挿通孔23、23にそれぞれ挿通してU字型掛架ボルト2を支持する。
【0021】
支持枠3の中央部には、給水管接合部12の先端が挿入される嵌入凹部41を備えた加圧栓4が加圧栓支持枠3上に支持枠との一体形成により設定され、分水栓本体と給水管接合部をU字型掛架ボルト2の両端22、22と挟み込むことによる加圧栓支持枠3の推進によって給水管接合部12の先端が嵌入圧接されるようになっている。また、嵌入凹部41の内周壁には2条の0リング43、43が周設され、水密性が高められている。
【0022】
U字型掛架ボルト2の両端22、22には雄螺子24、24が刻設され、これと螺合する雌螺子51を刻設した螺合孔52を設定したナット杆5を加圧栓支持枠3を介してU字型掛架ボルト2の両挿通端22、22に螺合し、ナット杆5の回動によりU字型掛架ボルト2の両挿通端22、22がナット杆螺合孔52に螺進して加圧栓支持枠3に掛架したナット杆頂頭部53が支持枠を推進させる。ナット杆頂頭部回動つまみ53の形状は手指で回動できる円筒状のものでも、円筒状の両側を平面とした手や工具を掛け易い形状としても良い。
【0023】
また、螺合孔52の挿入口52a部分はU字型掛架ボルト2の両端22、22の雄螺子24、24の外径を挿通する通径孔とし、奥の有効螺合部のみに雌螺子51を刻設するようにすることにより、通径孔部分はねじ込みを行わなくて良いので、U字型掛架ボルト2の両挿通端22、22とナット杆5との螺合を効率的に行うことができる。
なお、分水栓本体1に掛架するU字型掛架ボルト2は、上下2段に同じように掛架することにより、着合をより堅固なものとすることができる。
【0024】
このようにして、加圧栓4の嵌入凹部41に給水管接合部12の先端が嵌入圧接されたところで、加圧接合端42に耐圧試験具を着合して給水管接合部12の管路13に加圧流体を送り、耐圧試験を行うものである。
【0025】
図5は加圧栓4についての他の実施例を示すもので、支持枠3の中央部に給水管接合部12の先端に挿入される挿入栓44が設けられ、その外周にOリング45、45が周設されている。
前記実施例1の場合、加圧栓4の嵌入凹部41に給水管接合部12の先端が挿入される外径止水構成となっているため、嵌入凹部41の挿入口をR形状として挿入される給水管接合部12の先端を傷付けないようにする。
【0026】
図6、7は、
図5の実施例と同じく、分水栓の給水管接合部12の管路内径に加圧栓4の耐圧試験に用いる加圧水の漏えいを防止する止水機構を挿入するものであるが、止水機構として一般に用いられている置コマ方式のコマを用いることにより、Oリング45を用いずに止水部の水密性を保持できるようにしたものである。
【0027】
図6の実施例は、加圧栓支持枠3の中央部に形成した円筒状接合体7の先端に置コマ6を設定し、円筒状接合体7の背部から六角棒工具を用いて置コマの中軸部材8を回動させて置コマを膨張させることにより止水部の水密性を保つようにした。支持枠上に耐圧試験具の接合部と螺合する雄螺子71を刻設した円筒状接合体7を設定し、同円筒状接合体の支持枠下面側端部を膨縮する置コマ6を嵌合するフランジ突端72を形成する。
更に、上記置コマの下面を支持し前記円筒状接合体のフランジ突端72と共に上記置コマを挟持する置コマ挟持部82、上端側に回動工具嵌合機構を形成した中軸部材8を、前記円筒状接合体の内径壁面に刻設された雌螺子73に上記中軸部材外周の雄螺子81を螺進退可能に螺合して、支持枠の背部から工具を用いて置コマの中軸部を回動させて置コマ6を膨張させることにより止水部の水密性を保つものである。
【0028】
図7の実施例は、
図6の実施例と同じく加圧栓支持枠3の中央部の加圧栓に置コマパッキン9を設定するものであるが、置コマの構造が異なるもので、加圧栓支持枠3の外側に装備枠91を介して置コマを設定し、更に、その操作のための置コマ貫通中軸92の回動つまみ94を設定し、置コマパッキン9の膨縮を支持枠3の外側から操作できるようにしたもので、支持枠の中央下面部に、着合される給水管接合部の管路に支持枠を貫通して置コマ中軸92を設定して、支持枠3の外側に、外周に耐圧試験具の接合部と螺合する雄螺子93を刻設した置コマ中軸の回動つまみ94を設定し、置コマパッキンの膨縮を支持枠の外側から操作できるように構成したものである。
置コマ6や置コマパッキン9は設定場所に対応して膨縮調整が可能であるから、Oリングのように精密性が要求されず寸法許容差や給水管接合部の口径の違いにも対応して幅広く適用できる。
【0029】
図8の実施例は、加圧栓支持枠3の中央部に耐圧試験具を着合する円筒状の着合部を形成し、その下面を給水管接合部12の先端着合部にゴムパッキンを圧接して止水着合するもので、加圧規模が大きくなると適用が難しくなるが、小規模加圧の場合には充分活用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る耐圧試験具の着合方法とこれに用いる着合用治具は、上記のように、材質が柔らかく傷付き易い合成樹脂製分水栓への耐圧試験具着合について、分水栓の給水管接合部に対して外形的負荷を掛けることなく、分水栓本体と給水管接合部をU字型掛架ボルトにより、加圧栓の挿入端を分水栓の給水管接合部に充分な圧力により圧接することができるので水道機器産業において利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 合成樹脂製分水栓本体
11 分水栓サドル
12 分水栓の給水管接合部
13 給水管接合部の管路
14 分水栓のキャップ
15 分水栓サドルのサドルバンド
2 U字型掛架ボルト
21 U字型掛架ボルトのU字部
22 U字型掛架ボルトの端部
23 U字型掛架ボルトの端部を挿通する加圧栓支持枠の挿通孔
24 U字型掛架ボルトの端部の雄螺子
3 加圧栓支持枠
4 加圧栓
41 加圧栓の嵌入凹部
42 加圧栓の加圧接合端
43 加圧栓の嵌入凹部内周壁のOリング
44 給水管接合部の先端に挿入される加圧栓の挿入栓
45 挿入栓外周面のOリング
5 U字型掛架ボルトの端部に螺合するナット杆
51 ナット杆の雌螺子
52 ナット杆の螺合孔
52a ナット杆挿入口の掛架ボルト端部雄螺子外径を挿通する通径孔
53 ナット杆頂頭部の回動つまみ
6 置コマ
7 円筒状接合体
71 耐圧試験具の接合部と螺合する雄螺子
72 円筒状接合体のフランジ突端
73 円筒状接合体の内径壁面に刻設された雌螺子
8 中軸部材
81 中軸部材外周の雄螺子
82 中軸部材の置コマ挟持部
9 置コマパッキン
91 置コマパッキンの装備枠
92 置コマ中軸
93 耐圧試験具の接合部と螺合する雄螺子
94 置コマ中軸の回動つまみ
P 配水本管