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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】通信システム及び通信機
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/59 20060101AFI20230410BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20230410BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20230410BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20230410BHJP
   G01S 13/76 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
H04B1/59
E05B49/00 K
B60R25/24
H04Q9/00 301B
G01S13/76
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019076298
(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公開番号】P2020174318
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】古田 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】大橋 洋介
(72)【発明者】
【氏名】小林 徹也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄哉
(72)【発明者】
【氏名】小沢 智志
【審査官】佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-234079(JP,A)
【文献】特開2016-155526(JP,A)
【文献】特開2017-179873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/59
E05B 49/00
B60R 25/24
H04Q 9/00
G01S 13/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末が通信相手との間で無線により第1通信、及び前記第1通信とは異なる第2通信を実行する通信システムであって、
前記通信相手に設けられた複数の通信機を備え、
前記複数の通信機のうち少なくとも一つは、前記第2通信を実行し、
前記複数の通信機は、第1通信機と、前記第1通信機とは異なる第2通信機とを含み、
前記第1通信機は、前記複数の通信機を制御する制御装置に接続され、
前記第2通信機は、前記第1通信機とのみ接続され、且つ、前記制御装置とは前記第1通信機を介して接続されている
通信システム。
【請求項2】
端末が通信相手との間で無線により第1通信、及び前記第1通信とは異なる第2通信を実行する通信システムであって、
前記通信相手に設けられた複数の通信機を備え、
前記複数の通信機のうち少なくとも一つは、前記第2通信を実行し、
前記複数の通信機は、第1通信機と、前記第1通信機とは異なる第2通信機とを含み、
前記第1通信機は、前記複数の通信機を制御する制御装置に接続され、
前記第2通信機は、前記第1通信機に接続され、
前記第2通信機は前記第1通信機を介して前記制御装置と通信するものであって、
前記第1通信機は、前記第2通信機の作動を制御する通信制御部を有する
信システム。
【請求項3】
端末が通信相手との間で無線により第1通信、及び前記第1通信とは異なる第2通信を実行する通信システムであって、
前記通信相手に設けられた複数の通信機を備え、
前記複数の通信機のうち少なくとも一つは、前記第2通信を実行し、
前記複数の通信機は、第1通信機と、前記第1通信機とは異なる第2通信機とを含み、
前記第1通信機は、前記複数の通信機を制御する制御装置に接続され、
前記第2通信機は、前記第1通信機に接続され、
前記第1通信は、前記端末及び前記通信相手の間で前記端末の正否を確認する通信であり、
前記第2通信は、前記端末及び前記通信機の間で送受信される電波を用いて前記端末及び前記通信相手の間の距離を測定する通信であり、
前記制御装置は、前記第1通信の結果及び前記第2通信の結果を基に前記通信相手の作動を制御する
信システム。
【請求項4】
前記第2通信機は、前記第1通信機とのみ接続されている
請求項2又は請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記第1通信機は、前記第2通信機の作動を制御する通信制御部を有する
請求項1又は請求項3に記載の通信システム。
【請求項6】
前記第2通信機は、前記第1通信機とのみ接続され、
前記第1通信機は、前記第2通信機の作動を制御する通信制御部を有する
請求項3に記載の通信システム。
【請求項7】
前記第1通信機は、前記制御装置と通信可能なインターフェース部を備え、前記インターフェース部が設けられていない前記第2通信機は、前記第1通信機を介して前記制御装置と通信する
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項8】
前記通信機は、前記通信相手の室内外に設けられ、
前記第1通信機は、前記通信相手の室内に設けられる
請求項1から請求項のうちいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項9】
自身を制御する前記制御装置に接続されるとともに、請求項1から請求項8のうちいずれか一項に記載の通信システムに備えられた通信機であって、
他の通信機にさらに接続され、
前記通信機は、前記第1通信機であり、
前記他の通信機は、前記第2通信機である通信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム及び通信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両において、ユーザに所持される端末と車両との間の無線通信を通じて端末の正否を認証し、認証結果に基づいて車両の制御を行う通信システムが知られている。特許文献1に記載の通信システムは、車両からの送信電波に携帯端末が自動で応答して無線通信によりID照合を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-036582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ID照合の通信に加えて、例えば距離測定の通信を認証に課すことが考えられている。距離測定の通信は、端末及びその通信相手の間で電波の通信を行って、これらの間の距離を測定し、測定した距離を測定する。例えば距離測定の通信機能を既存の通信システムに搭載する際、大きな改変を必要とすることなく搭載することができる技術開発のニーズがあった。
【0005】
本発明の目的は、大掛かりな設計変更を必要とすることなく既存の通信とは別の通信を可能にした通信システム及び通信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための通信システムは、端末が通信相手との間で無線により第1通信、及び前記第1通信とは異なる第2通信を実行する通信システムであって、前記通信相手に設けられた複数の通信機を備え、前記複数の通信機のうち少なくとも一つは、前記第2通信を実行し、前記複数の通信機は、第1通信機と、前記第1通信機とは異なる第2通信機とを含み、前記第1通信機は、前記複数の通信機を制御する制御装置に接続され、前記第2通信機は、前記第1通信機に接続される。
【0007】
上記課題を解決するための通信機は、自身を制御する制御装置に接続された通信機であって、他の通信機にさらに接続され、前記制御装置との接続、及び前記他の通信機との接続では、互いに異なる通信が行われる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の通信システム及び通信機は、大掛かりな設計変更を必要とすることなく既存の通信とは別の通信を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】通信システムの構成を示すブロック図。
図2】車両における通信機の配置を示す図。
図3】距離測定の手順を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、通信システム及び通信機の一実施形態について図1~3を用いて説明する。
図1に示すように、通信相手としての車両1は、無線を通じて端末2の正否を認証することにより車載装置3の作動可否を制御する電子キーシステム4を備える。本例の電子キーシステム4は、車両1からの通信を契機に無線を通じたID照合(スマート照合)を実行するスマート照合システムである。電子キーシステム4によるID照合の通信が第1通信に該当する。端末2は、例えば主にキー機能を備える電子キー5であることが好ましい。車載装置3は、例えば車両ドアの施解錠を制御するドアロック装置6や、車両1のエンジン7などがある。
【0011】
車両1は、ID照合を実行する照合ECU8と、車載電装品の電源を管理するボディECU9と、エンジン7を制御するエンジンECU10とを備える。照合ECU8が車両1において通信を制御する制御装置に該当する。これらECUは、車内の通信線11を介して接続されている。通信線11は、例えばCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)、である。照合ECU8のメモリ12には、車両1に登録された端末2のキーIDと、ID照合の認証時に使用するキー固有鍵とが登録されている。ボディECU9は、車両ドアの施解錠を切り替えるドアロック装置6を制御する。
【0012】
車両1は、車両1において端末2とのID照合の通信を実行する際に、LF(Low Frequency)帯の電波を送信するLF送信機13と、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信するUHF受信機14とを備える。LF送信機13は、例えば車両1の室外に位置する端末2に電波を送信する室外用と、車両1の室内に位置する端末2に電波を送信する室内用とを備えることが好ましい。
【0013】
端末2は、端末2を制御する端末制御部20を備えている。また、端末2は、端末2において車両1とのID照合の通信を実行する際に、LF電波を受信するLF受信部21と、UHF電波を送信するUHF送信部22とを備える。端末制御部20のメモリ23には、ID照合の際に使用する固有のキーID及びキー固有鍵が書き込み保存されている。
【0014】
車両1のLF送信機13は、定期又は不定期にウェイク信号をLF送信する。端末2は、ウェイク信号を受信すると、待機状態から起動し、アック信号をUHF送信する。照合ECU8は、ウェイク信号に対するアック信号の応答を端末2から受信すると、スマート照合を開始する。照合ECU8は、端末2が室外用のLF送信機13のウェイク信号を受信した場合には、室外の端末2と室外スマート照合を実行する。また、照合ECU8は、端末2が室内用のLF送信機13のウェイク信号を受信した場合には、室内の端末2と室内スマート照合を実行する。スマート照合には、例えば端末2に登録されたキーIDを確認するキーID照合や、キー固有鍵を用いたチャレンジレスポンス認証等がある。チャレンジレスポンス認証は、乱数であるチャレンジコードに対するレスポンスコードを車両1及び端末2の双方に演算させ、これらレスポンスコードの一致を確認する認証である。照合ECU8は、キーID照合及びチャレンジレスポンス認証の両方が成立する場合、スマート照合を成立とする。
【0015】
車両1は、車両1及び端末2の間で送受信される電波を用いて両者の距離を測定する距離測定システム30を備える。距離測定システム30による距離測定の通信が第2通信に該当する。本例の距離測定システム30は、車両1及び端末2の間の距離に準じた測定値Dxを測定して測定値Dxの妥当性から認証(本例はスマート照合)の成立可否を切り替える不正通信検出機能を備える。車両1に距離測定システム30を設けるのは、例えば車両1から遠く離れた端末2を中継器等により不正に車両1に通信接続してスマート照合を不正成立させてしまう行為に対する対策である。
【0016】
距離測定システム30は、車両1に複数設けられた通信機31を備えている。本例の通信機31は、UWB(Ultra Wide Band)帯の電波を送受信する。距離測定システム30は、端末2において距離測定の通信を行う測定部32と、UWB送受信部33とを備えている。本例の測定部32は、通信機31から送信されたUWB電波Saを受信すると、これに対する応答のUWB電波Saを、UWB送受信部33を介して送信する。
【0017】
通信機31は、例えばUWB電波Saを通信機31から端末2へ送信し、それに対する応答を受信するまでの伝搬時間を計算し、この伝搬時間から2者間の距離に準じた測定値Dxを算出する。測定値Dxは、2者間の距離に相当する測距値である。また、通信機31は、測定値Dxが妥当であるか否かを判定する。測定値Dxが妥当であるか否かは、例えば測定値Dxが規定値Dk未満であるか否かによって判定される。
【0018】
複数の通信機31は、第1通信機としてのマスタ通信機34と、第2通信機としてのスレーブ通信機36とを有している。マスタ通信機34は、照合ECU8に接続されている。スレーブ通信機36は、マスタ通信機34に接続されている。本例のマスタ通信機34は、1つだけ設けられている。マスタ通信機34は、通信線35を介して照合ECU8と接続されている。また、マスタ通信機34は、スレーブ通信機36と、通信線37でそれぞれ接続されている。スレーブ通信機36は、マスタ通信機34にのみ接続されている。通信線35及び通信線37は、例えばLINやCANである。なお、通信線35には、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)などの通信インターフェースが用いられていてもよい。
【0019】
マスタ通信機34は、スレーブ通信機36の作動を制御する通信制御部38を備えている。通信制御部38は、例えば照合ECU8から距離測定のトリガが入力された場合に、距離測定の通信を開始する。通信制御部38は、通信機31のUWB電波Sa送信の作動を制御する際、例えば作動順を設定したり、複数の通信機31のうち一部を選択的に作動させたりする。
【0020】
マスタ通信機34は、照合ECU8と通信可能なインターフェース部39を備える。インターフェース部39は、例えばマスタ通信機34が照合ECU8からの距離測定のトリガを入力した場合、スレーブ通信機36でも測距測定を実行するために、これをスレーブ通信機36へ出力する。また、インターフェース部39は、スレーブ通信機36の測定値Dxの判定結果を入力すると、これを照合ECU8へ出力する。
【0021】
距離測定システム30は、測定値Dxが妥当か否かの判定結果に基づき認証の通信(本例はスマート通信)を制御する処理実行部40を備える。本例の処理実行部40は、照合ECU8に設けられる。処理実行部40は、通信機31の判定結果に基づいて通信が妥当であると判定した場合、スマート照合の照合結果を有効にする。一方、処理実行部40は、通信が妥当でないと判定した場合、スマート通信の照合結果を無効にする。照合ECU8は、スマート照合が成立し、かつ処理実行部40が照合結果を有効した場合に、車載装置3の作動を許可又は実行する。
【0022】
図2に示すように、本例の場合、車両1の5箇所に通信機31が設置される。通信機31のうち、マスタ通信機34は、車両1の室内に配置されることにより、車室内にUWB電波Saを送信する。第1スレーブ通信機36aは、車両1の運転席前側の隅に配置されることにより、車両1前方及び運転席側にUWB電波Saを送信する。第2スレーブ通信機36bは、車両1の助手席前側の隅に配置されることにより、車両1前方及び助手席側にUWB電波Saを送信する。第3スレーブ通信機36cは、車両1の運転席後側の隅に配置されることにより、車両1後方及び運転席側にUWB電波を送信する。第4スレーブ通信機36dは、車両1の助手席後側の隅に配置されることにより、車両1後方及び助手席側にUWB電波を送信する。
【0023】
次に、図3を用いて、本実施形態の通信システムの作用及び効果について説明する。
図3に示すように、ステップS101において、照合ECU8は、マスタ通信機34へ距離測定要求を送信する。距離測定要求は、例えば室外スマート照合や、室内スマート照合が成立した場合に送信される。
【0024】
ステップS102において、マスタ通信機34のインターフェース部39は、距離測定要求を受信すると、これをスレーブ通信機36a~dに通知する。距離測定要求の通知は、例えば通信機31のUWB電波Saの送信のコマンドを兼ねている。このとき、マスタ通信機34の通信制御部38は、スレーブ通信機36の作動順を設定し、作動順に従ってスレーブ通信機36からUWB電波Saを送信させる。通信制御部38は、例えば距離測定要求の通知のタイミングをスレーブ通信機36a~dの間で変えることで、スレーブ通信機36a~dの作動タイミングを制御する。なお、マスタ通信機34は、自身の作動タイミングになると、距離測定要求の通知を行わず、自身からUWB電波Saを送信する。
【0025】
ステップS103において、通信機31は、自身の作動タイミングになると、UWB電波Saを端末2へ送信する。端末2の測定部32は、通信機31からのUWB電波Saを受信すると、これに対する応答のUWB電波Saを送信する。通信機31は、UWB電波Saを送信してから応答のUWB電波Saを受信するまでの時間を計測する。そして、通信機31は、計測した時間から、通信機31及び端末2の間の距離に準じた測定値Dxを算出する。
【0026】
ステップS104において、通信機31は、測定値Dxの妥当性を判定する。通信機31は、測定値Dxが規定値Dk未満の場合、車両1及び端末2の間の距離が妥当であると判定する。一方、通信機31は、測定値Dxが規定値Dk以上の場合、車両1及び端末2の間の距離が妥当でないと判定する。スレーブ通信機36は、判定結果を、マスタ通信機34へ出力する。
【0027】
ステップS105において、マスタ通信機34のインターフェース部39は、スレーブ通信機36から判定結果を入力すると、これを照合ECU8に出力する。また、マスタ通信機34は、自身の判定結果を照合ECU8へ出力する。照合ECU8の処理実行部40は、入力した判定結果を基に、スマート照合の可否を判定する。処理実行部40は、例えばいずれかの通信機31により、測定値Dxが妥当であるとの判定結果を入力すれば、スマート照合の照合結果を有効とする。一方、処理実行部40は、全ての通信機31により測定値Dxが妥当でないと判定されていれば、スマート照合の照合結果を無効とする。
【0028】
照合ECU8は、室外の端末2とスマート照合(室外スマート照合)が成立し、かつ処理実行部40が照合結果を有効とした場合、ボディECU9によるドアロック装置6の施解錠作動を許可又は実行する。よって、例えばドア施錠時に車外ドアハンドルがタッチ操作されると、車両ドアが解錠され、ドア解錠時に車外ドアハンドルのロックボタンが押し操作されると、車両ドアが施錠される。照合ECU8は、室内の端末2とスマート照合(室内スマート照合)が成立し、かつ処理実行部40が照合結果を有効とした場合、室内のエンジンスイッチ41による車両電源の遷移操作が許可される。よって、ブレーキペダルを踏み込みながらエンジンスイッチ41が操作されると、エンジン7が始動する。
【0029】
照合ECU8は、処理実行部40がスマート照合の照合結果が無効とした場合、スマート通信の成立の有無に拘わらず、車載装置3の作動を禁止する。よって、例えば中継器等を用いた不正通信によって車載装置3を作動させてしまうことがない。
【0030】
以上により、本例では、複数の通信機31は、照合ECU8に接続されたマスタ通信機34と、マスタ通信機34に接続されたスレーブ通信機36とを有している。この構成によれば、照合ECU8は、マスタ通信機34と接続されるだけで済むため、全ての通信機31と接続される場合と比べて照合ECU8側に設計変更が生じにくい。よって、大掛かりな設計変更を必要とすることなく距離測定の通信を実施することができる。また、照合ECU8の仕様に応じてマスタ通信機34を変更すれば、スレーブ通信機36を変えずに接続できるため、通信機31の照合ECU8との接続が容易になる。さらに、スレーブ通信機36の個数を変更する場合も、マスタ通信機34の変更で済むので、照合ECU8側に設計変更が生じにくい。
【0031】
本例では、スレーブ通信機36は、マスタ通信機34とのみ接続されている。この構成によれば、スレーブ通信機36に変更があった場合、マスタ通信機34の変更だけで済む。
【0032】
本例では、マスタ通信機34は、照合ECU8と通信可能なインターフェース部39を備え、スレーブ通信機36は、マスタ通信機34を介して照合ECU8と通信する。この構成によれば、マスタ通信機34にインターフェース機能を持たせたので、スレーブ通信機36と照合ECU8との通信を、マスタ通信機34で管理することができる。
【0033】
本例では、マスタ通信機34は、通信機31の作動を制御する通信制御部38を有する。この構成によれば、照合ECU8で通信機31を制御する必要がない。これは、照合ECU8の改変を少なくするのに寄与する。
【0034】
本例では、通信機31は、車両1の室内外に設けられ、マスタ通信機34は、車両1の室内に設けられる。この構成によれば、マスタ通信機34が室内に配置されるため、マスタ通信機34のセキュリティ性を確保できる。また、例えば通信機31が距離測定の通信を室内外で行う場合、室内外をカバーできる。
【0035】
本例では、電子キーシステム4のID照合の通信と、距離測定システム30の距離測定の通信とを行う。照合ECU8は、ID照合の結果及び距離測定の結果を基に車両1の作動を制御する。この構成によれば、ID照合に加えて距離測定を、端末2の認証に課す態様として車両1の作動を制御する。そのため、通信システムのセキュリティ性の向上に寄与する。
【0036】
本例では、照合ECU8に接続されたマスタ通信機34は、スレーブ通信機36にさらに接続されている。また、マスタ通信機34及び照合ECU8の間の接続では、照合ECU8により通信が制御され、マスタ通信機34及びスレーブ通信機36の間の接続では、マスタ通信機34により通信が制御される。すなわち、マスタ通信機34において、照合ECU8との間の接続、及びスレーブ通信機36との間の接続では、互いに異なる通信が行われる。この構成によれば、照合ECU8の通信仕様に応じて、マスタ通信機34を変更するだけで済む。
【0037】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・距離測定の通信は、スマート通信の前に行われてもよいし、後に行われてもよいし、途中で行われてもよい。
【0038】
・LF送信機13は、車両1の周囲にLF電波(ウェイク信号)エリアを形成するように設けられてもよい。例えば、LF送信機13は、運転席ドアの周囲、助手席ドアの周囲、バックドアの周囲、及び室内にLF電波エリアを形成してもよい。
【0039】
・通信制御部38は、LF送信機13によって形成されたLF電波エリアに基づき、通信機31の作動を制御してもよい。例えば、運転席ドアの周囲に形成されたLF電波エリアに端末2が進入し、室外スマート照合が成立した場合、運転席に近い第1スレーブ通信機36a及び第3スレーブ通信機36cのみを作動させ、残りを作動させなくてもよい。
【0040】
・室外スマート照合では、距離測定の通信を行わず、室内スマート照合のときのみ、距離測定の通信を行うようにしてもよい。すなわち、車両1の外側に形成されるLF電波エリアでは、通信機31を作動せず、室内に形成されるLF電波エリアでは、通信機31を作動させてもよい。
【0041】
・処理実行部40は、マスタ通信機34に設けられてもよいし、照合ECU8に設けられてもよいし、スレーブ通信機36に設けられてもよいし、端末2に設けられてもよい。
・マスタ通信機34から照合ECU8へは、各通信機31の判定結果を、まとめて送信してもよい。
【0042】
・マスタ通信機34から照合ECU8へは、スマート照合の可否を通知してもよいし、各通信機31の判定結果を通知してもよいし、各通信機31の測定値Dxを送信してもよいし、UWB電波Saの送受信の有無を通知してもよい。例えば、処理実行部40がマスタ通信機34に設けられた場合、スマート照合の可否を通知すればよい。
【0043】
・距離測定の通信がスマート照合の前又は途中で実行される場合、スマート照合が不許可の場合に、スマート通信を途中で強制的に終了させてもよい。すなわち、スマート照合が不許可の場合に、処理実行部40が行う処理は、スマート照合(スマート通信)を成立に移行させない処理を行うものであればよい。
【0044】
・スレーブ通信機36は、照合ECU8との間の全ての通信を、マスタ通信機34を介して行うことに限定されず、通信の一部分を、照合ECU8と直接行ってもよい。
・測定値Dxの算出は、各通信機31で行ってもよいし、端末2で行ってもよいし、マスタ通信機34で行ってもよいし、照合ECU8で行ってもよいし、これらの組み合わせでもよい。
【0045】
・測定値Dxの妥当性の判定は、各通信機31で行ってもよいし、端末2で行ってもよいし、マスタ通信機34で行ってもよいし、照合ECU8で行ってもよいし、これらの組み合わせでもよい。
【0046】
・距離測定の通信は、伝播時間から距離を求める方式に限定されない。例えば、電波の信号受信強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)を測定し、この値から距離に準じた測定値を求める方式としてもよい。
【0047】
・距離測定の通信は、端末2からUWB電波Saを送信する態様でもよい。これは、端末2で測定値Dxを算出する構成に適用される。
・車両1の通信機31は、受信だけを行ってもよい。また、端末2は、UWB電波Saの受信だけを行ってもよい。これは、例えばRSSIで距離測定する場合に適用される。
【0048】
・端末2に、測定部32及びUWB送受信部33が設けられなくてもよい。これは、例えば片側のみにアンテナを設けて、電波の反射波により測定値Dxを求める構成に適用される。
【0049】
・距離測定の方法(測定値Dxの測定方法)は、例えば複数のチャネルで電波送信を行い、これら各チャネルの電波を演算することで測定値Dxを算出する方法を採用してもよい。
【0050】
・距離測定は、UWB電波Saを送受信する方式に限定されず、他の周波数の電波を使用した態様に変更してもよい。
・車両1及び端末2の間の各種通信は、電波の周波数や通信方式を種々の態様に変更可能である。
【0051】
・スマート照合システムは、端末2側からウェイク信号が送信される態様でもよい。
・端末2の正否を確認する認証は、キーID照合及びチャレンジレスポンス認証に限定されず、端末2及び車両1が通信を通じてペアを確認する認証であればよい。
【0052】
・電子キーシステム4は、スマート照合システムに限定されず、端末2の正否を確認できるシステムであればよい。
・距離測定システム30は、認証の成立可否を切り替える不正通信検出機能を備えるものに限定されず、2者間の距離を測定するものであればよい。
【0053】
・第1通信は、端末2の正否を確認する通信に限定されない。
・第2通信は、車両1及び端末2の間の距離測定の通信に限定されない。
・制御装置と第1通信機との間、及び第1通信機と第2通信機との間の通信形態は、有線であってもよいし、無線であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…車両、2…端末、3…車載装置、4…電子キーシステム、5…電子キー、30…距離測定システム、31…通信機、32…測定部、34…マスタ通信機、36…スレーブ通信機、38…通信制御部、39…インターフェース部、40…処理実行部。
図1
図2
図3