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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】版押え装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 27/12 20060101AFI20230410BHJP
   B41F 7/02 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
B41F27/12 B
B41F7/02 414
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019083778
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020179582
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】714000460
【氏名又は名称】リョービMHIグラフィックテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】甲賀 達也
(72)【発明者】
【氏名】藤本 泰之
(72)【発明者】
【氏名】細川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】松岡 洋矢
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-216843(JP,A)
【文献】特開2011-121365(JP,A)
【文献】特開2010-064461(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0018424(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 27/12
B41F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴の軸と平行に設けられた回動操作可能な支軸と、該支軸に回動可能に支持される複数のアームと、該複数のアームにそれぞれ支持され、前記支軸の回動により前記胴から離間した待機位置と該待機位置から前記胴に接近する側に移動して該胴に巻き付けられる版を胴側に押圧する押圧位置とに位置変更可能な複数の押えローラと、前記複数の押えローラを前記胴に接近する方向に付勢すべく、該押えローラ毎に設けられ、前記支軸の軸方向で該押えローラと少なくとも一部が重なり合うように該支軸に配置される付勢手段と、を備え、
前記押えローラは、3個以上設けられ、3個以上の押えローラのうちの軸方向両端に位置する2個の押えローラは、残りの各押えローラよりも軸方向における寸法が短く構成されていることを特徴とする版押え装置。
【請求項2】
前記版を胴側に押圧している前記押えローラが前記胴から離間する側に変位したことを検知する検知部と、該検知部が前記変位を検知したときの出力信号に基づいて前記胴の回転を停止させる停止手段と、前記変位により移動することで前記変位したことを前記検知部へ伝達すべく各押えローラに対応して設けられる複数の伝達部と、を備えていることを特徴とする請求項に記載の版押え装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機の版胴やニス胴に版を巻き付ける際に版を胴側に押し付けるための押えローラを備えている版押え装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かかる版押え装置は、胴の軸と平行に設けられた回動操作可能な支軸と、該支軸に連結される一対のアームと、該一対のアームに支持され、前記支軸の回動により前記胴から離間した待機位置と該待機位置から前記胴に接近する側に移動して該胴に巻き付けられる版を胴側に押圧する押えローラと、を備えている。そして、前記押えローラが、版の咥え側端部を咥える咥え側万力の軸方向の長さとほぼ同じ長尺な寸法に構成されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3411811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、部品精度、組付け精度、長期使用等の影響により、版押えローラと胴との平行度が低下する場合がある。この場合には、前記特許文献1のように、押えローラが咥え側万力の軸方向の長さとほぼ同じ長尺な寸法に構成されていると、版への押えローラの押圧力が軸方向で不均一になる度合いが大きくなり、版を全幅に亘って胴表面に密着して巻き付けることができない恐れがあった。また、一般的に、ニス胴に巻き付けられる版は、画像範囲(コーティング範囲)に凸部が形成されて厚くなっている画像部分と、画像(凸部)が無い範囲の画像無し部分(例えば軸方向両端に位置する薄い部分)と、を備えている。そのため、画像部分を押えローラで胴側へ押えることができるが、画像無し部分を押えローラで胴側へ押えることができず、上記問題点が顕著に現れるものであった。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、版を全幅に亘って胴表面に密着して巻き付けることが可能な版押え装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る版押え装置は、胴の軸と平行に設けられた回動操作可能な支軸と、該支軸に回動可能に支持される複数のアームと、該複数のアームにそれぞれ支持され、前記支軸の回動により前記胴から離間した待機位置と該待機位置から前記胴に接近する側に移動して該胴に巻き付けられる版を胴側に押圧する押圧位置とに位置変更可能な複数の押えローラと、前記複数の押えローラを前記胴に接近する方向に付勢すべく、該押えローラ毎に設けられ、前記支軸の軸方向で該押えローラと少なくとも一部が重なり合うように該支軸に配置される付勢手段と、を備えていることを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、咥え側万力の軸方向の長さよりも短い複数の押えローラが、支軸に回動可能に支持される複数のアームによりそれぞれ単独で回動することができるので、各押えローラの軸方向における版への押圧力が軸方向で不均一になる度合いを小さく(低減)することができる。これにより、版を全幅に亘って胴表面に密着して巻き付けることが可能となる。
【0008】
また、本発明に係る版押え装置は、前記押えローラが、3個以上設けられ、3個以上の押えローラのうちの軸方向両端に位置する2個の押えローラは、残りの各押えローラよりも軸方向における寸法が短く構成されていてもよい。
【0009】
上記のように、3個以上の押えローラのうちの軸方向両端に位置する2個の押えローラが、残りの押えローラよりも軸方向における寸法を短く構成しておけば、軸方向両端部に画像(凸部)が無い画像無し部分を有する版を胴に巻き付ける場合でも、画像無し部分を軸方向両端に位置する短い寸法の押えローラで確実に押圧することができ、より一層版を全幅に亘って胴表面に密着して巻き付けることが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る版押え装置は、前記版を胴側に押圧している前記押えローラが前記胴から離間する側に変位したことを検知する検知部と、該検知部が前記変位を検知したときの出力信号に基づいて前記胴の回転を停止させる停止手段と、前記変位により移動することで前記変位したことを前記検知部へ伝達すべく各押えローラに対応して設けられる複数の伝達部と、を備えていてもよい。
【0011】
上記のように、各押えローラに対応して伝達部を備えているので、1個の特定の押えローラが胴から離間する側に変位した場合であっても、その変位したことを1個の押えローラに対応する伝達部を介して検知部に確実に伝達することができ、検出部の検出感度を高めることができる。よって、停止手段で胴の回転を確実に停止させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、咥え側万力の軸方向の長さよりも短い複数の押えローラが、支軸に回動可能に支持される複数のアームによりそれぞれ単独で回動することができるので、版を全幅に亘って胴表面に密着して巻き付けることが可能な版押え装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】印刷機の全体側面図である。
図2】押えローラ及びそれの周辺の機構の縦断正面図である。
図3図2におけるIII部分の拡大図である。
図4】押えローラ及びその周辺の機構の斜視図である。
図5図4とは反対方向から見た押えローラ及びその周辺の機構の斜視図である。
図6】胴に対して待機位置に位置している押えローラ及びその周辺の機構を示す側面図である。
図7図6の押えローラの待機位置において検知作動片と伝達部との関係を示す要部の側面図である。
図8】胴に巻き付けられている版を押えるべく押圧位置に位置させた押えローラ及びその周辺の機構を示す側面図である。
図9図6の押えローラの押圧位置において検知作動片と伝達部との関係を示す要部の側面図である。
図10】押えローラ及びブレードで版の咥え尻側端部を押圧及び押付している状態を示す側面図である。
図11】押えローラが胴から離間する側に変位したことを検知する検知部の取付部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る印刷機及び本発明の実施形態に係る印刷機が備える版押え装置について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1に、本発明の実施形態に係る印刷機として、印刷された印刷用紙(印刷物)の印刷面に光沢を出すためのニス(樹脂ワニスとも言う)をコーティング(塗布)して表面処理を行うためのコーティング装置1が組み込まれた印刷機の一例を示している。
【0016】
この印刷機は、紙積み台2と、紙積み台2からフィーダ装置3により一枚ずつ印刷用紙Pを送り出すための給紙部4と、この給紙部4から送り出された印刷用紙Pに5色の印刷を行うための印刷部5と、該印刷部5により印刷された印刷用紙にニス(紫外線硬化型樹脂ワニス)をコーティングするコーティング装置1と、該コーティング装置1によりニスがコーティングされた印刷用紙を搬送して排紙するための排紙部6と、排紙部6内に設けられ、排紙部6により搬送されてくる印刷用紙のニスを硬化させるための紫外線乾燥装置7とを備えている。図1において、紙積み台2側を前側とし、排紙部6側を後側とし、紙面を貫通する方向を左右方向(又は幅方向)として、以下説明する。
【0017】
前記印刷ユニット5A~5Eは、印刷用圧胴5a~5eを備え、これら印刷用圧胴5a~5eの搬送方向上流側のそれぞれには、各印刷用圧胴へ印刷用紙Pを渡すための渡し胴9a~9eを備えている。尚、前記渡し胴9a~9eのうちの搬送方向始端側(前側)に位置する径の小さな渡し胴9aを給紙胴とも言い、この渡し胴9aと前記フィーダ装置3とから前記給紙部4を構成している。そして、図示していないが、前記胴5a~5e及び渡し胴9a~9eのそれぞれには、送り出されてきた印刷用紙Pを爪台と爪とで把持するグリッパを円周方向の複数箇所(1箇所でもよい)に備えている。尚、前記径の小さな渡し胴9aにも、図示していないが、印刷用紙を爪台と爪とで把持するグリッパを円周方向の1箇所に備えている。
【0018】
前記コーティング装置1は、図1に示すように、ニスが供給される版(ニス版ともいう)11(図8参照)を備える胴(ニス胴ともいう)1Aと、胴1Aに巻き付けられた版11にニスを供給するための供給ローラ10と、前記胴1Aの下方に対向配置され、印刷された印刷用紙を搬送し該搬送する印刷用紙に版11のニスを転写するための圧胴1Bと、を備えている。また、前記コーティング装置1は、胴1Aを、圧胴1B及び供給ローラ10に接近させてニスを転写する接近位置と圧胴1B及び供給ローラ10から離間させた退避位置とに切り替えることができる移動手段(図示せず)を備えている。尚、前記圧胴1Bの搬送方向上流側(前側)に、印刷用紙を圧胴1Bに渡すための渡し胴1Gを備えている。この渡し胴1Gは、送り出されてきた印刷用紙を爪台と爪とで把持するグリッパを円周方向の複数箇所(1箇所でもよい)に備えている。
【0019】
前記胴1Aについて詳述すれば、胴1Aは、版11を周面に巻き付けるために該版11の一端部を保持(挟持)する汎用の第1版用保持部(図示せず)と、巻き付けられた版11の他端部を保持(挟持)する汎用の第2版用保持部12(図10)と、を備えている。また、胴1Aの近傍には、版押え装置が設置されている。版押え装置は、版11を胴1Aの周面に確実に巻き付けるために版11を胴1Aの周面に押し付ける押えローラ13と、この押えローラ13の押し付け力により版11が胴1Aに巻き付けられた後に版11の咥え尻側端部を後述する万力台12Aに押し付けるためのブレード14(図10参照)と、を備えている。
【0020】
第1版用保持部、第2版用保持部12は、胴1Aに形成されている凹部1K(図10参照)内に備えている。
【0021】
第1版用保持部は、版11の一端部を咥える咥え側万力から構成されている。この咥え側万力は、凹部1K内のうちの胴1Aの回転方向上流側に固定される万力台(図示せず)と、万力台に対向して配置され万力台とで版11の一端部を挟み込んだ状態で挟持する閉じ位置と該版11の一端部を挟み込んだ状態を解除する開放位置とに位置変更可能な先端側の咥え板(図示せず)と、を備えている。第1版用保持部で版11の一端部を挟持した状態で胴1Aを所定角度回転させることにより、版11が胴1Aに巻き付けられる。
【0022】
第2版用保持部12は、前述したように、胴1Aに巻き付けられた版11の他端部を咥える咥え尻側万力から構成されている。この咥え尻側万力は、凹部1K内のうちの胴1Aの回転方向下流側に固定される万力台12Aと、万力台12Aに対向して配置され万力台12Aとで版11の他端部を挟み込んだ状態で挟持する閉じ位置と該版11の他端部を挟み込んだ状態を解除する開放位置とに位置変更可能な尻側の咥え板12Bと、を備えている。また、第2版用保持部12は、図示していない移動機構により移動可能に構成されている。この移動により一端部が第1版用保持部に、他端部が第2版用保持部12にそれぞれ挟み込まれて胴1Aに巻き付けられた版11に張力を与えることができる。
【0023】
図2図5に示すように、押えローラ13は、軸方向に沿って配置された複数(図では5個)の押えローラ13A,13B,13C,13D,13Eからなっている。どの押えローラ13A,13B,13C,13D,13Eも、基本的構成が同一であり、例えば軸方向一端側に位置する押えローラ13Aは、図3に示すように、円柱状(円筒状でもよい)の回転体13aと、回転体13aの軸方向両端から軸方向外側に突出する一対の軸部13F,13Fと、回転体13aに一体回転可能に装着されるゴム等の弾性材でなる円筒状の押圧部13bと、を備えている。なお、軸部13F,13Fは、回転体13aの外径寸法よりも小さな外径寸法を有している。
【0024】
また、コーティング装置1のケーシングを構成する一対の側壁15,15に支軸16が回動自在に支持され、支軸16には軸方向に沿って複数(図では10個)のアーム17の基端部が回動可能に外嵌支持され、該複数(図では10個)のアーム17のうちの軸方向で隣り合うアーム17,17間にそれぞれ押えローラ13A又は13B又は13C又は13D又は13Eが回動自在に支持されている。各アーム17には、貫通孔が形成され、その貫通孔に軸方向に複数(ここでは2個)の軸受けとしてのベアリングR,Rが配置されている。それらベアリングR,Rに押えローラ13の両端部の軸部13F,13Fをそれぞれ差し込むだけで押えローラ13の組付けが完了する。押えローラ13の軸部13F,13Fは、アーム17,17から軸方向外側へ突出することなく、アーム17,17内に収容されている。このため、軸方向で対向位置するアーム17,17同士を近付けて配置することができる。
【0025】
5個の押えローラ13A,13B,13C,13D,13Eのうちの軸方向中央部に位置する3個の第1押えローラ13B,13C,13Dは、軸方向の長さが同一寸法に形成されており、軸方向両端に位置する2個の第2押えローラ13A,13Eは、第1押えローラ13B,13C,13Dよりも軸方向の長さが短く形成されている。また、第2押えローラ13A,13Eは、軸方向の長さが同一寸法に形成されているが、異なる長さであってもよい。このように、軸方向両端に位置する第2押えローラ13A,13Eを、残りの第1押えローラ13B,13C,13Dよりも軸方向における寸法を短く形成することによって、軸方向両端部に画像(凸部)が無い画像無し部分を有する版11を胴1Aに巻き付ける場合でも、画像無し部分を軸方向両端に位置する短い寸法の第2押えローラ13A,13Eで確実に押圧することができ、より一層版11を全幅に亘って胴1A表面に密着して巻き付けることが可能となる。なお、本実施形態では、軸方向中央に位置する3個の第1押えローラ13B,13C,13Dは、軸方向長さが同一寸法に形成されているが、第2押えローラ13A,13Eよりも軸方向の長さが長ければ、軸方向の長さが同一寸法に形成されていなくてもよい。
【0026】
支軸16には、複数(図では5個)の押えローラ13A,13B,13C,13D,13Eを胴1Aに接近する方向に付勢する付勢手段18が配置されている。その付勢手段18は、押えローラ13A,13B,13C,13D,13E毎に設けられ、軸方向中央部に位置する3個の押えローラ13B,13C,13Dをそれぞれ付勢する第1付勢手段18Aと、軸方向両端に位置する2個の押えローラ13A,13Eをそれぞれ付勢する第2付勢手段18Bと、を備えている。
【0027】
また、各付勢手段18A,18Bは、支軸16の軸方向で押えローラ13A,13B,13C,13D,13Eと重なり合うように支軸16に配置されている。具体的には、1個の押えローラ13A又は13B又は13C又は13D又は13Eに対して軸方向に2個の付勢手段18A,18A又は18B,18Bが軸方向で重なり合うように支軸16に配置されている。軸方向に長い寸法を有する第1押えローラ13B,13C,13Dの第1付勢手段18Aの軸方向の長さは、軸方向に短い寸法を有する第2押えローラ13A,13Eの第2付勢手段18Bの軸方向の長さよりも長くなっている。そして、各押えローラ13A又は13B又は13C又は13D又は13Eの軸方向の長さに対応した付勢力が各押えローラ13A又は13B又は13C又は13D又は13Eに付与されるように設定されている。なお、付勢手段18Aよりも付勢手段18Bの付勢力を大きくすれば、第2押えローラ13A,13Eが押圧する版11の軸方向両端部をより確実に胴1Aに密着させて巻き付けることができる。また、付勢手段18A,18Bは、各押えローラ13A又は13B又は13C又は13D又は13Eの軸方向両端から外側にはみ出ることがないように配置されている。具体的には、各押えローラ13A又は13B又は13C又は13D又は13Eを支持するアーム17,17間に付勢手段18A又は18Bを配置することで、付勢手段18A又は18Bが各押えローラ13A又は13B又は13C又は13D又は13Eの軸方向両端から外側にはみ出ることがない。各付勢手段18A又は18Bは、捩じりコイルバネから構成されており、そのコイル部が支軸16に外嵌されて配置されている。前記のように、各付勢手段18A,18Bが、支軸16の軸方向で押えローラ13A,13B,13C,13D,13Eと重なり合うことで、例えば隣り合う押えローラ13A,13B間に付勢手段を配置する場合に比べて隣り合う押えローラ13A,13B間の隙間を小さくできる。この実施形態では、各付勢手段18A,18Bの軸方向略全域が、支軸16の軸方向で押えローラ13A,13B,13C,13D,13Eと重なり合うようにしているが、各付勢手段18A,18Bの軸方向の一部のみが支軸16の軸方向で押えローラ13A,13B,13C,13D,13Eと重なり合うようにしてもよい。また、各付勢手段18A,18Bは、板バネやトーションバーから構成することもできる。
【0028】
支軸16は、胴1Aと平行に設けられた回動可能な軸であり、この支軸16の両端部に、揺動アーム19,19が固定されている。揺動アーム19,19には、支軸16を回動操作するための一対の第1エアシリンダ20,20のピストンロッド20A,20Aの先端が連結されている。一対の第1エアシリンダ20,20は、その基端部が一対の側壁15,15に連結されている。ピストンロッド20A,20Aの先端部と揺動アーム19,19とは、軸方向に延びる連結部材21,21を介して連結されている。したがって、一対の第1エアシリンダ20,20を伸縮させると、支軸16が回動する。支軸16の回動により、押えローラ13A,13B,13C,13D,13Eを、胴1Aから離間した待機位置(図6図7参照)と待機位置から胴1Aに接近する側に移動して胴1Aに巻き付けられる版11を胴1A側に押圧する押圧位置(図8図9参照)とに位置変更できる。
【0029】
また、揺動アーム19,19の軸方向内側には、第2エアシリンダ22,22の基端部が取り付けられている。これら第2エアシリンダ22,22のピストンロッド22A,22Aの先端が軸方向に延びるブレード14を備えるブレード組立体の両端部に連結されている。したがって、押えローラ13が押圧位置に位置している状態で第2エアシリンダ22,22を伸縮作動させることによって、胴1Aに巻き付けられた版11の咥え尻側端部11Bを万力台12Aに押さえ付ける押付位置(図10参照)と版11の咥え尻側端部11Bから離間する側に移動した押付解除位置(図8参照)とにブレード14を位置変更できる。
【0030】
また、図4に示すように、支軸16には、付勢手段18である捩じりコイルバネの付勢力による押えローラ13A,13B,13C,13D,13Eの胴1A側への移動を規制するための規制部23が配置されている。規制部23は、支軸16に相対回転不能に取り付けられたブロック24と、ブロック24にビス止めされ、アーム17が当接してアーム17の回動を規制する当接部材(23A,23B)とから構成されている。この規制部23は、押えローラ13の両端部の軸部13F,13Fに軸方向で重なって配置されている。
【0031】
図3に示すように、アーム17は、押えローラ13の軸部13F,13Fが装着されるアーム本体部17Aと、支軸16に回動可能に外嵌される嵌合部17Bと、を備えている。押えローラ13の軸部13F,13Fが装着された一対のアーム17,17において、互いの嵌合部17B,17Bが、アーム本体部17A,17Aに対して押圧部13b側に位置している。そのため、軸方向で隣り合う押えローラ13,13の互いに対向位置するアーム17,17の嵌合部17B,17B間に隙間Sが形成される。その隙間Sに後述する第1ブロック24Aを配置している。尚、軸方向両端に位置するアーム17,17の軸方向外側には、後述する第2ブロック24Bを配置している。前記ブロック24は、一対のアーム17,17の嵌合部17B,17Bの反押圧部13b側に配置され、詳細には、隙間Sにおいて支軸16に固定された4つの第1ブロック24A,24A,24A,24Aと、軸方向の両端に位置するアーム17,17の軸方向外側において、支軸16に固定された第2ブロック24B,24Bと、を備えている。このように第1ブロック24A及び第2ブロック24Bを設けることによって、全てのアーム17、すなわち全ての押えローラ13が軸方向に位置ずれすることを規制している。当接部材は、図4に示すように、正面視においてT字状で板状の第1当接部材23Aと、正面視においてL字状で板状の第2当接部材23Bと、を備えている。第1当接部材23Aは、各第1ブロック24Aの前端にビス止めされ、第2当接部材23Bは、各第2ブロック24Bの前端にビス止めされている。
【0032】
各アーム17には、押えローラ13の軸方向に直交する方向に貫通する螺子孔17N(図2及び図7参照)が形成されており、この螺子孔17NにネジD(図6参照)が螺合され、ネジDのアーム17の反胴1A側の端から突出する部分にナットNが螺合されている。一方、ネジDのアーム17の胴1A側の端から突出する部分である先端は、規制部23(23A,23B)に当接している。したがって、ネジDを回動させることによって、押えローラ13を支持する一対のアーム17,17にそれぞれ備えるネジDのアーム17の胴1A側の端から突出するネジDの先端の突出量を調整する。これにより、胴1A及び支軸16に対する各押えローラ13の平行度の調整や胴1Aに対する各押えローラ13の離間量の調整を行うことができる。
【0033】
また、本実施形態の版押え装置は、版11を胴1A側に押圧している押えローラ13A,13B,13C,13D,13Eが胴1Aから離間する側に変位したことを検知する検知部25と、検知部25が前記変位を検知したときの出力信号に基づいて胴1Aの回転を停止させる停止手段26(図11参照)と、前記変位したことを検知部25へ伝達するための伝達部27(図5図6参照)と、を備えている。
【0034】
検知部25は、図11に示すように、一方の揺動アーム19の軸方向外側の面に取り付けられたリミットスイッチから構成されている。リミットスイッチは、押し込み可能なスイッチ部25Aと、スイッチ部25Aが押されたことを検知する本体部25Bと、を備えている。
【0035】
停止手段26は、図示していない制御部内に設けられ、検知部25が前記変位を検知したときの出力信号に基づいて胴1Aの回転を強制的に停止させる手段である。
【0036】
伝達部27は、各アーム17の反胴1A側の端から反胴1A側の方向に延びるように取り付けられた複数の棒状体27Aと、アーム17の支軸16に対する回動により変位した棒状体27Aの当接によって反時計回りに回転する検知作動片27Bと、検知作動片27Bの回転軸27bの軸方向一端部に一体回転するように取り付けられ、設定角度以上回転した時にリミットスイッチのスイッチ部25Aを押し込み操作するカム27Cと、を備えている。カム27Cは、円弧状の凹部27aが形成された円盤状に構成されている。このカム27Cは、押えローラ13A,13B,13C,13D,13Eが版11を押えている状態では、リミットスイッチのスイッチ部25Aが凹部27aに入り込んでスイッチ部25Aを押さない状態である。押えローラ13A,13B,13C,13D,13Eのうちの少なくとも1個の押えローラが版11から離間すると、その押えローラを支持するアーム17が支軸16に対して回動して棒状体27Aが変位し、そして棒状体27Aが検知作動片27Bに当接して回転軸27bが反時計回りに回転することにより、スイッチ部25Aがカム27Cの凹部27aから外れてカム27Cの外面27dで押されてONすることで押えローラ13A,13B,13C,13D,13Eの少なくとも1つが胴1Aから離間する側に変位したことを検知する。
【0037】
棒状体27Aと検知作動片27Bとの関係について説明すれば、図6及び図7に示す押えローラ13の待機位置では、棒状体27Aに対して検知作動片27Bが所定距離を置いて離間している状態であり、押えローラ13が僅かに胴1Aから離れる側に移動しても、これを検出することができない鈍感な検出状態となり、これに対して、図8及び図9に示すように、押えローラ13が胴1Aに巻き付けられる版11を胴1A側に押圧する押圧位置では、棒状体27Aと検知作動片27B(図8図9参照)との間に距離がほとんど無い状態であり、押えローラ13が僅かに胴1Aから離れる側に移動すると、検知作動片27Bを反時計回りに回転させて検知する敏感な検出状態となる。すなわち、押えローラ13と胴1Aとの間への他物の侵入を敏感に検出することができる。
【0038】
次に、版11が胴1Aに巻き付けられる工程について説明する。まず、オペレータは、図示していない下側カバーを開放状態にした後、版11の先端部を、開放状態の咥え側万力の万力台と咥え板との間に挿入する。挿入後、オペレータは、咥え板閉じボタン(図示せず)を押して版11の先端部を咥え側万力で挟持してから、下側カバーを手で閉じた後、版巻き付けボタン(図示せず)を押すと、制御部からの信号により、版が胴1Aに巻き付けられるとともに版11を押えローラ13で押える(図8参照)。所定角度巻き付けた後、制御部からの信号により、ブレード14が版11の先端部とは反対側の咥え尻側端部11Bを咥え尻側万力の万力台12Aに押し付けてから、尻側の咥え板12Bを閉じる(図10参照)。引き続き、制御部からの信号により、ブレード14及び押えローラ13が胴1Aから離間する側へ移動した後、第2版用保持部12により版に所定の張力を加えて、版の巻き付けを終了する。
【0039】
前記のように、版11を押えローラ13で押えながら、版を胴1Aに巻き付けている最中に、版11と胴1Gとの間に他物が挟まってしまい、特定の押えローラ13Aが胴1Aから離れる側に移動する。この移動により前述のように検知部25が検知して停止手段26により胴1Aの回転が停止される。この停止に伴い、図示していない警報装置を作動させてもよい。
【0040】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0041】
前記実施形態では、5台の印刷ユニット5A~5Eを備えた印刷部5を示しているが、印刷ユニットの数は5台に限定されない。又、印刷ユニットが無くてもよい。又、前記排紙部6は、グリッパを備えるチェーン搬送装置にて構成しているが、この排紙部6のない印刷機であってもよいし、又、印刷機を構成する各部の具体的な構成は図に示されるものに限定されるものではない。又、印刷用紙として枚葉紙を用いているが、連続する長尺な用紙であってもよい。更にまた、前記コーティング装置1が、紫外線硬化型樹脂ワニス(以下においてニスという)をコーティングする他、水性ワニス(水性ニス)をコーティングする場合であってもよい。この水性ニスの場合には、前記紫外線乾燥装置7の印刷用紙搬送方向前後に備えている赤外線乾燥装置8A,8Bによりコーティングされた水性ニスを乾燥させることになる。また、本発明はコーティング装置1のニス胴に適用できる他、印刷ユニットの版胴にも適用することができる。
【0042】
また、前記実施形態では、押えローラを5個設けたが、3個又は4個あるいは6個以上の任意の数を設けてもよい。また、軸方向両端に位置する2個の押えローラを他の押えローラよりも軸方向で短い寸法に構成したが、全ての押えローラを同一長さにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…コーティング装置、1A…胴(ニス胴)、1B…圧胴、1G…渡し胴、1K…凹部、2…紙積み台、3…フィーダ装置、4…給紙部、5…印刷部、5A~5E…印刷ユニット、5a~5e…印刷用圧胴、6…排紙部、7…紫外線乾燥装置、8A,8B…赤外線乾燥装置、9a~9e…渡し胴、10…供給ローラ、11…版、11B…咥え尻側端部、12A…万力台、12B…咥え板、13…押えローラ、13A,13E…第2押えローラ、13B,13C,13D…第1押えローラ、13F…軸部、13a…回転体、13b…押圧部、14…ブレード、15…側壁、16…支軸、17…アーム、17A…アーム本体部、17B…嵌合部、17N…螺子孔、18…付勢手段、18A…第1付勢手段、18B…第2付勢手段、19…揺動アーム、20A…ピストンロッド、21…連結部材、22A…ピストンロッド、23…規制部(当接部材)、23A…第1当接部材、24B…第2当接部材、24…ブロック、24A…第1ブロック、24B…第2ブロック、25…検知部、25A…スイッチ部、25B…本体部、26…停止手段、27…伝達部、27A…棒状体、27B…検知作動片、27C…カム、27a…凹部、27b…回転軸、27d…外面、D…ネジ、N…ナット、P…印刷用紙、R…ベアリング、S…隙間
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