(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】釣竿
(51)【国際特許分類】
A01K 87/04 20060101AFI20230410BHJP
【FI】
A01K87/04 Z
(21)【出願番号】P 2019087720
(22)【出願日】2019-05-07
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】松本 聖比古
(72)【発明者】
【氏名】谷口 一真
(72)【発明者】
【氏名】神納 芳行
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-187556(JP,A)
【文献】特開2000-236783(JP,A)
【文献】特開2015-188318(JP,A)
【文献】特開2019-050795(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061345(WO,A1)
【文献】特開昭61-195632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00 - 87/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドフレームを有する釣糸ガイドが釣竿本体に設けられている釣竿であって、
前記ガイドフレームは、前記釣竿本体の所定部位に当接配置される脚を有し、
前記脚は、
長さが0.5mm~1.0mmである強化繊維を含有する紫外線硬化樹脂からなる第1固定部により前記釣竿本体と共に覆われ前記釣竿本体に固定されている釣竿。
【請求項2】
前記強化繊維は、線径が5μm~18μmの炭素繊維である請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記強化繊維は、PAN系炭素繊維であり、線径が5μm~7μmである
請求項1又は2に記載の釣竿。
【請求項4】
前記強化繊維は、ピッチ系炭素繊維であり、線径が7μm~10μmである
請求項1又は2に記載の釣竿。
【請求項5】
前記脚は、前記第1固定部上に、さらに樹脂材が前記釣竿本体の径方向に重ねて配置される第2固定部により前記釣竿本体に固定されている
請求項1から4のいずれかに記載の釣竿。
【請求項6】
前記第2固定部は、紫外線硬化樹脂を含む
請求項5に記載の釣竿。
【請求項7】
ガイドフレームを有する釣糸ガイドが釣竿本体に設けられている釣竿であって、
前記ガイドフレームは、前記釣竿本体の所定部位に当接配置される脚を有し、
前記脚は、線径が5μm~18μmであり且つ長さが0.5mm~1.0mmである炭素繊維維を含有する紫外線硬化樹脂からなる第1固定部により前記釣竿本体と共に覆われ前記釣竿本体に固定されている釣竿。
【請求項8】
前記強化繊維は、PAN系炭素繊維であり、線径が5μm~7μmである請求項7に記載の釣竿。
【請求項9】
前記強化繊維は、ピッチ系炭素繊維であり、線径が7μm~10μmである請求項7に記載の釣竿。
【請求項10】
前記脚は、前記第1固定部上に、さらに樹脂材が前記釣竿本体の径方向に重ねて配置される第2固定部により前記釣竿本体に固定されている請求項7から9のいずれかに記載の釣竿。
【請求項11】
前記第2固定部は、紫外線硬化樹脂を含む請求項10に記載の釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、釣糸ガイドを備えた釣竿の構造、詳しくは、釣糸ガイドの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
釣糸リールを装着することができる釣竿は、複数の釣糸ガイドを備える。釣糸ガイドは、一般に、釣糸が挿通されるガイドリングと、これを保持するガイドフレームとを有する。ガイドフレームは、釣竿本体に固定される脚を有し、この脚は、たとえば木綿糸が巻回されることにより釣竿本体に固定される。なお、この木綿糸の上から樹脂が塗布され、脚の固定部分が仕上げられる(たとえば特許文献1参照)。この木綿糸の上から塗布される樹脂には、たとえば必要に応じてエポキシ樹脂、ウレタン樹脂やプレポリマー、モノマー、光重合開始剤、添加剤等からなる紫外線硬化樹脂が採用されることがある(たとえば特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1に開示された脚の固定方法では、木綿糸がガイドフレームの脚に密に巻き付けられるが、この作業は一般に熟練を要し、その結果、釣竿の製造コストが高くなる。そのうえ、木綿糸の上から樹脂が塗布された場合、さらに製造コストが上昇する。そのため、かかる木綿糸による前記脚の固定に代えて、樹脂シートにより前記脚を固定する方法も提案されている(たとえば特許文献3参照)。すなわち、たとえば炭素繊維に樹脂が含浸されたプリプレグシートによって、ガイドフレームの脚が釣竿本体の所定位置に位置決めされ、加熱処理により前記脚が釣竿本体に固定される。この方法では、ガイドフレームが簡単に釣竿本体に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-157769号公報
【文献】特開2006-34228号公報
【文献】特開2018-113926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述のようにプリプレグシートが採用された場合、ガイドフレームを釣竿本体に固定する作業が、木綿糸の巻回に比べれば若干簡略化されるとしても、やはり、プリプレグシートを巻き付ける作業は容易ではない。しかも、プリプレグシートは一般に高価であり、これを硬化させるための熱処理行程が必要となり、結局のところ製品としての釣竿のコストダウンを実現することは困難である。
【0006】
本発明はかかる背景のもとになされたものであり、その目的は、簡単な取付構造によって確実に釣糸ガイドが釣竿本体に固定された安価な釣竿を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る釣竿は、ガイドフレームを有する釣糸ガイドが釣竿本体に設けられている釣竿である。前記ガイドフレームは、前記釣竿本体の所定部位に当接配置される脚を有する。この脚は、強化繊維を含有する紫外線硬化樹脂からなる第1固定部により前記釣竿本体に固定されている。
【0008】
この構成によれば、紫外線硬化樹脂からなる第1固定部によってガイドフレームの脚が釣竿本体に取り付けられる。この紫外線硬化樹脂は、紫外線の照射により固まり、前記脚を釣竿本体に固定する。しかも、前記紫外線硬化樹脂は強化繊維を含有するから、前記脚に外力が作用しても釣糸ガイドとして十分な強度を発揮する。
【0009】
(2) 前記強化繊維は、線径が5μm~18μmの炭素繊維であるのが好ましい。さらに、前記強化繊維の長さは、0.5mm~1.0mmであるのが好ましい。特に、前記強化繊維は、PAN系炭素繊維であり且つ線径が5μm~7μm、あるいは、ピッチ系炭素繊維であり且つ線径が7μm~10μmであるのが好ましい。
【0010】
(3) 前記脚は、前記第1固定部上に、さらに樹脂材からなる第2固定部により前記釣竿本体に固定されているのが好ましい。この第2固定部は、紫外線硬化樹脂から構成されていてもよい。
【0011】
この構成では、前記脚は、簡単な構造により、一層強固に釣竿本体に固定される。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、釣糸ガイドは、紫外線硬化樹脂によって釣竿本体に簡単な構造で強固に取り付けられる。この紫外線硬化樹脂は、紫外線の照射により固まり、前記釣糸ガイドの脚を釣竿本体に固定するから、釣糸ガイドを釣竿本体に取り付ける作業が簡単であり、釣竿の製造コストが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣竿10の正面図である。
【
図2】
図2は、釣竿10の釣糸ガイド15の取付構造を示す要部拡大断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態の第1の変形例に係る釣糸ガイド15の取付構造を示す要部拡大断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態の第2の変形例に係る釣糸ガイド15の取付構造を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施の形態は、本発明に係る釣竿の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣竿の正面図である。
【0016】
この釣竿10は、釣竿本体11と、その後端部を支持すると共に、図示されていない釣糸リールを着脱自在に保持するグリップ12とを備えている。グリップ12は、リールシート21を備えており、図示されていない釣糸リールは、このリールシート21に固定されるようになっている。
【0017】
釣竿本体11は、本実施形態では単一の棒状部材からなり、グリップ12の内部に前方から後方に向かって(同図において左から右に向かって)挿通されている。釣竿本体11は、既知の要領で成形される。すなわち、炭素繊維により強化された樹脂(プリプレグ)が所定形状に裁断され、これが筒状に巻回された後に熱処理が施されることによって、円筒状の竿管が焼成される。本実施形態では、釣竿本体11は、いわゆるワンピースタイプとして構成されているが、本発明は、かかる仕様の釣竿本体11に限定して適用されるものではなく、複数の竿管が接続されることによって釣竿本体11が構成されるタイプのものであってもよい。
【0018】
同図が示すように、釣竿本体11は、複数の釣糸ガイド13~20を備えており、これらは、所定間隔で配置されている。釣糸ガイド20はいわゆるトップガイドと称され、釣竿本体11の先端に設けられる。釣糸リールかがリールシート21に固定され、この釣糸リールから繰り出された釣糸は、釣糸ガイド13~20に順に挿通される。本実施形態に係る釣竿10の特徴とするところは、各釣糸ガイド13~20の取付構造である。
【0019】
図2は、釣糸ガイド15の取付構造を示す要部拡大断面図である。
【0020】
釣糸ガイド15は、既知の構成であり、ガイドフレーム22及びガイドリング23を備えている。ガイドリング23は、本実施形態において円環状に形成され、釣糸が挿通される糸挿通孔を有している。もっとも、ガイドリング23の外形形状は特に限定されるものではなく、前記糸挿通孔が設けられていれば、外形形状は楕円形や長円形等であってもよい。ガイドリング23は耐摩耗性に優れた、種々の硬質材料からなり、典型的にはSiC(シリコンカーバイト)に代表されるセラミックや、各種の金属材料が使用される。金属材料としては、たとえばチタン合金が好適である。
【0021】
ガイドフレーム22は既知の構成であり、樹脂あるいは金属により構成されている。この樹脂は、典型的にはカーボン繊維やガラス繊維等の強化繊維含浸樹脂が採用され、金属としては、チタン合金やステンレス合金、アルミニウム合金等が採用され得る。ガイドフレーム22は、本実施形態ではL字状に形成されており、リング装着部24及び脚25を備えている。脚25は、釣竿本体11の外周面上の所定位置に配置され、後述の要領で固定される。なお、一点鎖線30は、釣竿本体11の中心を示している。リング装着部24は、脚25に対して屈曲され、釣竿本体11から遠ざかる向き(同図において上向き)に連続している。ガイドリング23は、リング装着部24に支持されている。具体的には、リング装着部24は円環状に形成されており(不図示)、ガイドリング23は、リング装着部24の内側に嵌め込まれている。ガイドリング23は、接着剤によりリング装着部24に接着されていてもよい。
【0022】
前記脚25は、樹脂固定部26(特許請求の範囲に記載された「第1固定部」に相当)により釣竿本体11に固定されている。この樹脂は、紫外線硬化樹脂であり、典型的には、UVペガロック塗料が採用され得る。この樹脂固定部26は円環状を呈し、釣竿本体11の周方向に沿って釣竿本体11を囲繞している。前記脚25は、この樹脂固定部26に埋設された状態となる。樹脂固定部26の肉厚寸法27は、本実施形態では2.5mmに設定されるが、0.5mm~5mmの範囲で適宜設計変更され得る。樹脂固定部26の前後方向29の寸法28は、本実施形態では3mmに設定されるが、脚25の全体を覆う寸法であれば、特に限定されるものではない。
【0023】
本実施形態では、樹脂固定部26は炭素繊維31を含有している。この炭素繊維31は、樹脂固定部26を構成する樹脂の機械的強度を向上させるものであり、たとえばPAN系炭素繊維が採用される。炭素繊維31の線径は5μm~7μmが好適であり、長さは0.5mm~1.0mmが好適である。炭素繊維としてピッチ系炭素繊維が採用されてもよく、その場合、炭素繊維の線径は7μm~10μmが好適である。もっとも、炭素繊維の線径は、5μm~18μmの範囲で適宜設定され得る。炭素繊維31の方向(炭素繊維31の長さ方向)は、特に限定されるものではなく、前記前後方向29に沿っていてもよいし、釣竿本体11の周方向あるいは径方向に沿っていてもよい。また、炭素繊維31の方向は、これらと交差する方向に沿っていてもよい。
【0024】
前記ガイドフレーム22の脚25が釣竿本体11の所定部位に配置された状態で、前記紫外線硬化樹脂が、脚25を覆うように釣竿本体11の周囲に塗布される。紫外線硬化樹脂の塗布は、たとえば刷毛にて行われる。その状態で、この紫外線硬化樹脂の上に炭素繊維31が配置される。具体的には、たとえば炭素繊維31を紫外線硬化樹脂の上にふりかける操作が行われる。さらに、紫外線が前記紫外線硬化樹脂に照射され、前記樹脂固定部26が固化する。これにより、前記脚25が強固に釣竿本体11に取り付けられる。
【0025】
本実施形態に係る釣竿10では、ガイドフレーム22の脚25は、樹脂固定部26によって釣竿本体11に固定されるが、この脚25を釣竿本体11に固定する作業は、前記紫外線硬化樹脂が塗布され、その後に紫外線が照射されるという簡単な操作によって行われる。しかも、樹脂固定部26は炭素繊維31により強化されているから、脚25が強固に固定される。つまり、釣糸ガイド15は、簡単且つ安価に釣竿本体11に強固に固定される。このことは、すべての釣糸ガイド13~20にも当てはまるから、製造コストの上昇を抑えつつ、実釣において釣糸ガイド13~20に外力が作用しても十分な強度を発揮する釣竿10が提供される。
【0026】
図3は、本実施形態の第1の変形例に係る釣糸ガイド15の取付構造を示す要部拡大断面図である。
【0027】
この変形例に係る取付構造が前記実施形態に係る取付構造と異なるところは、樹脂固定部26の上に樹脂材35(特許請求の範囲に記載された「第2固定部」に相当)が重ねて配置されている点である。樹脂材35として、前記紫外線硬化樹脂が好ましいが、これに限定されるものではなく、要するに、前記樹脂固定部26を被服し、補強するものであればよい。これにより、ガイドフレーム22の脚25は、簡単な構造で一層強固に釣竿本体11に固定されるという利点がある。
【0028】
樹脂材35として前記紫外線硬化樹脂が採用された場合、前記実施形態と同様に刷毛等を用いて樹脂材35が樹脂固定部26の上に塗布され、その後に紫外線が照射され固化される。もっとも、この樹脂材35に前記実施形態と同様に炭素繊維31が含まれていてもよい。また、樹脂材35として前記紫外線硬化樹脂に代えてプリプレグが採用されてもよい。
【0029】
図4は、本実施形態の第2の変形例に係る釣糸ガイド15の取付構造を示す要部拡大断面図である。
【0030】
この変形例に係る取付構造が前記実施形態に係る取付構造と異なるところは、樹脂固定部26に不織布36が埋設されている点である。この不織布36としては、繊維弾性率が1000kgf/mm2の不織布が採用され得る。不織布36は、前記紫外線硬化樹脂が前記脚25及び釣竿本体11に塗布される前に、脚25を覆うように配置される。この不織布36が配置されることにより、実釣において釣糸ガイド13~20に外力が作用した場合に、異音の発生を防止することができる。
【符号の説明】
【0031】
10・・・釣竿
11・・・釣竿本体
13・・・釣糸ガイド
14・・・釣糸ガイド
15・・・釣糸ガイド
16・・・釣糸ガイド
17・・・釣糸ガイド
18・・・釣糸ガイド
19・・・釣糸ガイド
20・・・釣糸ガイド
22・・・ガイドフレーム
23・・・ガイドリング
25・・・脚
26・・・樹脂固定部
35・・・樹脂材