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  • 特許-対象施設の電力需要予測装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】対象施設の電力需要予測装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20230410BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20230410BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20230410BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06N20/00
H02J3/00 130
H02J3/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019094062
(22)【出願日】2019-05-17
(65)【公開番号】P2020190767
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000205661
【氏名又は名称】大崎電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104204
【弁理士】
【氏名又は名称】峯岸 武司
(72)【発明者】
【氏名】相京 靖明
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐也
(72)【発明者】
【氏名】関口 寛敏
【審査官】麻川 倫広
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-114968(JP,A)
【文献】特開平10-161705(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0259621(US,A1)
【文献】特開2014-183632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/10-99/00
G06N 20/00
H02J 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象施設の外気温度および空調電力を取得するデータ取得部と、前記データ取得部によって取得された対象施設の過去の外気温度と過去の空調電力との関係を機械学習アルゴリズムを用いて学習させて対象施設の空調電力の需要予測モデルを生成するモデル生成部と、対象施設の存在する地域の外気温度に関する気象予報データを前記モデル生成部によって生成された前記需要予測モデルに入力して対象施設の空調電力のある時間帯における需要を予測する空調電力需要予測部と、前記気象予報データの各時限における外気温度および対象施設への各時限における来客人数に基づいて無次元のパラメ-タとして各時限毎に表わされる、対象施設に必要とされる空調電力の必要度を前記ある時間帯における空調利用時間の各時限について算出する必要度算出部、前記必要度算出部によって算出された前記空調電力の必要度に応じて、前記空調電力需要予測部によって予測された空調電力の需要を前記空調利用時間の各時限に割り振る需要予測分配部とを備える対象施設の電力需要予測装置。
【請求項2】
前記データ取得部は対象施設の室内温度および湿度をさらに取得し、
前記必要度算出部は、前記データ取得部によって取得された室内温度および湿度から各時限毎に算出される対象施設の実測不快指数に基づいて、対象施設の各時限における不快指数を各時限に対して平準化する補正値を計算し、計算した補正値により前記空調電力の必要度を補正す
ことを特徴とする請求項1に記載の対象施設の電力需要予測装置。
【請求項3】
前記需要予測分配部は、前記空調電力需要予測部によって前記ある時間帯について予測された前記空調電力の需要予測を、前記空調利用時間の各時限における前記空調電力の必要度の、各時限における前記空調電力の必要度の総和に対する比率に応じて、各時限毎に割り振
空調電力以外の固定電力を各時限毎に算出する固定電力算出部と、
前記需要予測分配部によって各時限毎に割り振られる空調電力と前記固定電力算出部によって各時限毎に算出された固定電力とを各時限毎に加算した電力を、各時限における対象施設の目標電力としてデマンドコントローラに設定する目標電力設定部とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の対象施設の電力需要予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象施設における電力の需要を予測する対象施設の電力需要予測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電力需要予測装置としては、例えば、特許文献1に開示された消費電力の予測装置がある。この予測装置は、データ入力部と、データ蓄積部と、データ解析部と、データ予測部と、表示部とを備える。データ入力部は、消費電力の実測値と、消費電力の予測に影響を与える気温、湿度などの気象データや人数などの外部情報を取り込む。データ解析部は、消費電力の実測値と外部情報とを表わす時系列データ間の関連性、例えば、気象の変化に伴う消費電力量の増減や、人数の変化に伴う消費電力量の増減などを解析する。データ予測部は、データ解析部によって得られた消費電力量の非線形予測モデルの式に、対象時間、気象データや人数などの外部情報を代入して、消費電力量を予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-81471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の消費電力の予測装置における、非線形予測モデルの式を使ったデータ予測部による予測は、ペナルティ係数Cおよびガウス関数Kにおけるσについて、あらゆる組み合わせで総当たりを試みることで最適化しなければならず、このため、所定の範囲内でその組み合わせを探索する必要がある。また、データ予測部では、他の未知数について、学習するデータ、予測因子および予測因子数ごとに、異なるように最適化および推定を行う必要がある。このため、上記従来の消費電力の予測装置では、気象データや人数などの外部情報を用いた消費電力の予測に煩雑な計算が必要とされ、簡易に消費電力の予測をすることが難しかった。また、上記従来の消費電力の予測装置では、消費電力を予測する対象施設内における室内環境が適切に考慮されていないため、消費電力の予測も適切に行えない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、対象施設の外気温度および空調電力を取得するデータ取得部と、データ取得部によって取得された対象施設の過去の外気温度と過去の空調電力との関係を機械学習アルゴリズムを用いて学習させて対象施設の空調電力の需要予測モデルを生成するモデル生成部と、対象施設の存在する地域の外気温度に関する気象予報データをモデル生成部によって生成された需要予測モデルに入力して対象施設の空調電力のある時間帯における需要を予測する空調電力需要予測部と、気象予報データの各時限における外気温度および対象施設への各時限における来客人数に基づいて無次元のパラメ-タとして各時限毎に表わされる、対象施設に必要とされる空調電力の必要度をある時間帯における空調利用時間の各時限について算出する必要度算出部、必要度算出部によって算出された空調電力の必要度に応じて、空調電力需要予測部によって予測された空調電力の需要を空調利用時間の各時限に割り振る需要予測分配部とを備える対象施設の電力需要予測装置を構成した。
【0006】
本構成によれば、空調電力需要予測部によって予測されたある時間帯における空調電力の需要予測は、ある時間帯における空調利用時間の各時限について必要度算出部によって算出される空調電力の必要度に応じて、需要予測分配部によって空調利用時間の各時限に割り振られる。ここで、対象施設に必要とされる空調電力の必要度は、気象予報データの各時限における外気温度および対象施設への各時限における来客人数に基づいて、無次元のパラメ-タとして各時限毎に表わされる。このため、気象予報データや対象施設への来客人数の情報を用いた空調電力需要についての予測、すなわち、消費電力の予測は、各時限における空調電力の必要度に基づいて対象施設の室内環境が各時限毎に考慮されて、各時限毎に適切に行われる。しかも、この空調電力需要の予測は、従来のように煩雑な計算をすることなく、無次元のパラメ-タとして表わされる空調電力の必要度を使って簡単に行える。
【0007】
また、本発明は、データ取得部が対象施設の室内温度および湿度をさらに取得し、
必要度算出部が、データ取得部によって取得された室内温度および湿度から各時限毎に算出される対象施設の実測不快指数に基づいて、対象施設の各時限における不快指数を各時限に対して平準化する補正値を計算し、計算した補正値により空調電力の必要度を補正す
ことを特徴とする。
【0008】
本構成によれば、対象施設に必要とされる空調電力の必要度は、対象施設の実測不快指数に基づいて計算される補正値により、対象施設の各時限における不快指数を各時限に対して平準化するように補正される。空調電力需要予測部によって予測された空調電力の需要予測は、このように補正された空調電力の必要度に基づいて、需要予測分配部によって空調利用時間の各時限に割り振られる。したがって、対象施設における空調電力の需要予測は、対象施設の室内環境が各時限において不快になることを最低限に抑える好ましいものとなる。
【0009】
また、本発明は、
需要予測分配部が、空調電力需要予測部によってある時間帯について予測された空調電力の需要予測を、空調利用時間の各時限における空調電力の必要度の、各時限における空調電力の必要度の総和に対する比率に応じて、各時限毎に割り振
空調電力以外の固定電力を各時限毎に算出する固定電力算出部と、
需要予測分配部によって各時限毎に割り振られる空調電力と固定電力算出部によって各時限毎に算出された固定電力とを各時限毎に加算した電力を、各時限における対象施設の目標電力としてデマンドコントローラに設定する目標電力設定部とを備えることを特徴とする。
【0010】
本構成によれば、対象施設の実測不快指数に基づいて計算される補正値により補正された空調電力の必要度が用いられて、空調電力の需要予測が空調利用時間の各時限に割り振られ、デマンドコントローラには、割り振られたこの空調電力の需要予測にしたがった目標電力が各時限毎に設定される。したがって、デマンドコントローラには、対象施設の室内環境が各時限において不快になることを最低限に抑えるために必要な目標電力が空調電力について設定される。このため、電力需要予測装置により、限られた電力が、補正された空調電力の必要度に応じて各時限の空調電力に割り振られ、デマンドコントローラの制御により、限られた電力が最適にかつ効率的に使われるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、気象予報データや対象施設への来客人数の情報を用いた空調電力需要についての予測が、空調電力の必要度に基づいて対象施設の室内環境が適切に考慮されて、簡単に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態による対象施設の電力需要予測装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図1に示す電力需要予測装置の必要度算出部、需要予測分配部、固定電力算出部および目標電力設定部の各機能を説明する図である。
図3図1に示す電力需要予測装置の必要度算出部によって行われるNAC補正値の学習を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明による対象施設の電力需要予測装置を実施するための形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態による対象施設の電力需要予測装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0015】
電力需要予測装置1は、MPU(Micro Processing Unit)等からなるプロセッサ2と、ROM(Read Only Memory)3aやRAM(Random Access Memory)3b等からなる記憶部3とを備えるコンピュータから構成されている。ROM3aにはプロセッサ2の動作手順を規定するプログラム等が記憶されている。プロセッサ2は、ROMに記憶されたプログラムにしたがい、RAM3bを一時記憶作業領域として各部の制御を行う。
【0016】
電力需要予測装置1はデマンドコントローラ4とサーバ5に接続されている。デマンドコントローラ4は、対象施設の消費電力をデマンド値として常に監視し、あらかじめ設定した目標電力値を超えそうになると、警報を発して空調機器や照明機器などの負荷を制御する。デマンド値は30分ごとの消費電力の平均値であり、デマンドコントローラ4は測定したデマンド値を測定日時と共にサーバ5へ送信する。サーバ5は受信したデマンド値を測定日時と共に記憶する。
【0017】
電力需要予測装置1のプロセッサ2は、データ取得部2a、モデル生成部2b、空調電力需要予測部2c、必要度算出部2d、需要予測分配部2e、固定電力算出部2fおよび目標電力設定部2gを機能ブロックとして有する。
【0018】
データ取得部2aは、サーバ5から前年同時期における対象施設の空調電力を取得すると共に、その時期における対象施設の外気温度、室内温度および湿度を取得する。モデル生成部2bは、データ取得部2aによって取得された対象施設の過去の前年同時期における空調電力と外気温度との関係を、機械学習アルゴリズムを用いて学習させる。本実施形態では、ランダムフォレストという機械学習アルゴリズムを用いてこの学習が行われ、ランダムフォレストに過去の空調電力と外気温度のデータが入力され、空調電力と外気温度との関係が学習されて、対象施設の空調電力の需要予測モデルが生成される。
【0019】
空調電力需要予測部2cは、対象施設の存在する地域の外気温度に関する気象予報データを、モデル生成部2bによって生成された需要予測モデルに入力して、対象施設の空調電力の需要を予測する。必要度算出部2dは、対象施設に必要とされる空調電力の必要度(NAC(Necessity of Air Conditioner)値)を、各時限毎に算出する。ここで言う時限とは、デマンドコントローラ4によって監視されるデマンド値が算出される30分単位の時限を意味する。また、NAC値は、気象予報データの各時限における外気温度および対象施設への各時限における来客人数に基づいて、無次元のパラメ-タとして、各時限毎に次の(1)式によって表わされる。なお、来客人数をデータとして取得しない場合には、来客人数にデフォルト値が使用される。
【数1】
【0020】
図2は、必要度算出部2d、需要予測分配部2e、固定電力算出部2fおよび目標電力設定部2gの各機能を説明する図である。必要度算出部2dは(a)NAC値の算出を行い、需要予測分配部2eは(b)空調電力の各時限への割振りを行う。目標電力設定部2gは、固定電力算出部2fの算出結果を使って、(c)目標電力の算出を行う。
【0021】
本実施形態では、必要度算出部2dは、(a)NAC値の算出に示すように、各時限における外気温度についての気象予報データ、対象施設への各時限における来客人数、および、NAC補正値に基づいて、上記の(1)式によってNAC値を算出する。NAC補正値は、(1)式でNACcorrectionと表わされ、データ取得部2aによって取得された室内温度および湿度から各時限毎に算出される対象施設の実測不快指数DIに基づいて、後述するように、対象施設の各時限における不快指数を各時限に対して平準化するように、必要度算出部2dによって計算される。NAC値は、計算したNAC補正値により各時限毎に補正される。空調電力需要予測部2cは、NAC補正値によって補正したNAC値を用いて、空調電力の需要予測を各時限に割り振る。本実施形態では、空調電力需要予測部2cは、空調電力の需要を1日単位で1週間先まで予測する。
【0022】
需要予測分配部2eは、図2における(b)空調電力の各時限への割振りに示すように、空調電力需要予測部2cによって予測された1日単位の空調電力の需要予測結果を、1日24時間を30分単位に分けた48時限のうちの空調利用時間における各時限に割り振る。
【0023】
(1)式におけるNACはNAC値を表わす。また、(1)式における添え字iは48時限のうちのいずれかの時限を表わし、1~48のいずれかの値をとる。左辺のNACは、時限iにおけるNAC値を表わす。NACは、空調利用時間中は次の(2)式に示される。
【数2】
【0024】
上記の(2)式で、添え字kは、空調利用時間中における時限を表わす。(2)式の分母は、この時限のうちで、最大値をとるNAC値を表わす。また、(2)式の分子におけるNACは、NAC補正値によって補正される前の時限iにおけるNAC値を表わす。また、(1)式のNACは、空調利用時間外では0とされる(NAC=0)。
【0025】
また、(1)式におけるNACtempは気象予報データの気温情報によるNAC値を表わし、次の(3)式によって表わされる。
【数3】
【0026】
ここで、T outdiffは、時限iにおけるToutdiffであり、暖房時および冷房時にそれぞれ次の(4)式によって表わされる。また、(3)式における添え字nは、1~48の添え字iによって表わされる時限のうちの特定の時限を表わす。
【数4】
上記の(4)式におけるTforecastは対象施設の地域の予報気温、Ttargetは基準気温を表わす。本実施形態では、Ttargetは暖房時に22℃、冷房時に27℃に設定される。
【0027】
また、(1)式におけるNACvisitorは対象施設への来客人数データによるNAC値を表わし、次の(5)式によって表わされる。
【数5】
上記の(5)式におけるkは上述したように空調利用時間中の時限、Vは来客人数を表わす。
【0028】
(3)式に示されるNACtempは、暖房時は予報気温の低い時間帯を、冷房時は予報気温の高い時間帯を高く算出することで空調の必要性を見積もり、(5)式に示されるNACvisitorは、来客人数の多い時間帯を空調の必要性が高いと見積る。
【0029】
また、NACcorrectionと表わされる上記のNAC補正値は、暖房時および冷房時にそれぞれ次の(6)式によって学習させられる。
【数6】
上記の(6)式における左辺のNAC correctingは時限iにおけるNAC学習値を表わし、右辺のDIは実測不快指数、DItargetは基準不快指数を表わす。また、Rmodeは、電力需要予測装置1の、通常モード、快適モード、省エネモード、およびAIモードの4つの動作モードの種類によって定まるモード倍率を表わす。NAC補正値のこの学習により、対象施設の温湿度等の施設環境および各負荷の入り切りによる消費電力の制御情報に基づき、空調の必要性の高い時限が毎日学習されて、NAC値は補正されていく。
【0030】
図3はNAC補正値のこの学習を説明するための図である。図3の(a)NAC学習値の算出におけるグラフAに示すように、暖房の場合、対象施設の不快指数は、空調利用時間において時限が進み、寒かった室内が暖かくなるに連れて大きな値になる。不快指数の値は、温湿度データから算出され、小さい値では寒い体感が得られ、大きな値では暑い体感が得られる。NAC値は、前日に実測された不快指数推移および対象施設への来客人数データの施設環境、並びに、各負荷の入り切りによる電力/制御データを基に学習させられる。したがって、学習させられたNAC値、すなわち、NAC学習値は図3のグラフBに示すように表わされ、空調利用時間の始まりの不快な(寒い)時間帯で高い値をとるので、NAC値が増やされる。また、空調利用時間の終わりの快適な(暖かい)時間帯で小さい値をとるので、NAC値が減らされる。
【0031】
この結果、図3の(b)NAC補正値の更新(学習)におけるグラフCのように示される現在のNAC補正値は、グラフBのようにNAC学習値が学習されることで、グラフDに示される新しいNAC補正値に補正される。すなわち、現在のNAC補正値は、空調利用時間の寒い始まりの時間帯でより大きな値に補正され、空調利用時間の暖かい終わりの時間帯でより小さな値に補正される。このため、空調利用時間の始まりの時間帯で大きな空調電力の需要が予測され、空調利用時間の終わりの時間帯で小さな空調電力の需要が予測されるようになる。
【0032】
すなわち、(6)式でNAC補正値が学習させられることで、NAC値は、目標不快指数から遠い時限では大きく補正され、より空調が使われるように補正される。需要予測分配部2eは、上記のように学習されて得られる新たなNAC値から、次の(7)式を使って、空調電力需要予測部2cによって1日単位で予測される空調電力の需要を、空調利用時間における各時限に割り振る。
【数7】
【0033】
上記の(7)式におけるPairは、空調電力需要予測部2cによって1日単位で予測される空調電力の需要であり、単位は[KWh]である。すなわち、需要予測分配部2eは、空調電力需要予測部2cによって予測された空調電力の需要予測を、各時限におけるNAC値の、空調が必要とされる各時限におけるNAC値の総和に対する比率に応じて、空調利用時間における各時限毎に割り振る。この結果、空調電力需要予測部2cによって予測される空調電力の需要は、図2の(b)空調電力の各時限への割振りにおけるグラフのように、需要予測分配部2eによって各時限に割り振られる。
【0034】
固定電力算出部2fは、対象施設における空調電力以外の固定電力を各時限毎に算出する。目標電力設定部2gは、各時限における対象施設の目標電力を次の(8)式によって計算する。
【数8】
【0035】
上記の(8)式におけるDは目標電力値である。Dは、各時限iの目標電力値であり、目標電力値の上限値よりも大きい場合には目標電力値の上限値とされる。また、右辺第2項のB maxは、固定電力算出部2fによって算出される固定電力の、過去1週間における各時限毎の最大値である。すなわち、目標電力設定部2gは、需要予測分配部2eによって空調利用時間の各時限に割り振られる(7)式で表わされる空調電力と、固定電力算出部2fによって各時限毎に算出された上記の固定電力とを、図2の(c)目標電力の算出におけるグラフに示されるように、各時限毎に加算する。そして、加算した電力を、各時限における対象施設の目標電力とし、デマンドコントローラ4に設定する。このように目標電力をデマンドコントローラ4に設定して空調の制御を行うことで、その制御結果からNAC値がさらに学習されていく。
【0036】
このような本実施形態による対象施設の電力需要予測装置1によれば、空調電力需要予測部2cによって予測された空調電力の需要予測は、対象施設に必要とされるNAC値(空調電力の必要度)に応じて、空調電力需要予測部2cによって各時限に割り振られる。ここで、対象施設に必要とされるNAC値は、気象予報データの各時限における外気温度および対象施設への各時限における来客人数に基づいて、無次元のパラメ-タとして各時限毎に(1)式のように表わされる。このため、気象予報データや対象施設への来客人数の情報を用いた空調電力需要についての予測、すなわち、消費電力の予測は、各時限におけるNAC値に基づいて対象施設の室内環境が各時限毎に考慮されて、各時限毎に適切に行われる。しかも、この空調電力需要の予測は、従来のように煩雑な計算をすることなく、無次元のパラメ-タとして表わされる空調電力の必要度を使って簡単に行える。
【0037】
すなわち、電力需要予測装置1によれば、時限毎の目標電力を予め決めることができ、1日単位の限られた電力量を適切に使用することができる。また、1週間や1ヶ月単位でNAC値を用いることで、予算から決定した電力量の範囲内で最適な電力の使用が可能となる。また、使用電力量を削減したいときに、NAC値にしたがうことで限られた電力を最適に使うことで、室内環境が不快になることを最低限に抑えることができる。
【0038】
また、本実施形態による対象施設の電力需要予測装置1によれば、対象施設に必要とされるNAC値は、対象施設の実測不快指数に基づいて(6)式によって補正されるNAC補正値により、対象施設の各時限における不快指数を各時限に対して平準化するように補正される。空調電力需要予測部2cによって予測された空調電力の需要予測は、このように補正されたNAC値に基づいて、空調電力需要予測部2cによって各時限に割り振られる。したがって、対象施設における空調電力の需要予測は、対象施設の室内環境が各時限において不快になることを最低限に抑える好ましいものとなる。
【0039】
また、本実施形態による対象施設の電力需要予測装置1によれば、対象施設の実測不快指数に基づいて計算されるNAC補正値により補正されたNAC値が用いられて、空調電力の需要予測が空調電力需要予測部2cによって各時限に割り振られ、デマンドコントローラ4には、補正されたこの空調電力の需要予測にしたがった目標電力が各時限毎に設定される。したがって、デマンドコントローラ4には、対象施設の室内環境が各時限において不快になることを最低限に抑えるために必要な目標電力が空調電力について設定される。このため、電力需要予測装置1により、限られた電力が、補正されたNAC値に応じて各時限の空調電力に割り振られ、デマンドコントローラ4の制御により、限られた電力が最適にかつ効率的に使われるようになる。
【0040】
なお、上記実施形態では、NAC値の算出に外気温度に関する気象予報データを使ったが、天気・風速などの数値化できるものをNAC値に取り込んで、空調電力の需要予測を補正することもできる。また、蓄電池を保持するシステムにおいは、NAC値の高い時間に蓄電池を放電することで、使用電力のピークカットが可能になる。また、照明制御が可能なシステムにおいては、NAC値の高い時間に照明電力を削減することで、使用電力のピークカットが可能になる。また、上記実施形態では、30分単位の48時限に空調電力の需要を割り振ったが、時限数iは増減でき、タイムスケールは変更可能である。また、予測した空調需要を90%や110%などとすることで、NAC値にしたがう最適な電力の使い方に即して、省エネやより快適な室内環境を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明による対象施設の電力需要予測装置は、施設内のさまざまな機器・設備のデータを収集・計測し、監視、制御を一括で管理するエネルギーマネジメントシステムなどに利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1…電力需要予測装置、2…プロセッサ、2a…データ取得部、2b…モデル生成部、2c…空調電力需要予測部、2d…必要度算出部、2e…需要予測分配部、2f…固定電力算出部、2g…目標電力設定部、3…記憶部、3a…ROM、3b…RAM、4…デマンドコントローラ、5…サーバ
図1
図2
図3