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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】機械式駐車装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/06 20060101AFI20230410BHJP
   E04H 6/42 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
E04H6/06 V
E04H6/42 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019096105
(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公開番号】P2020190125
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】成冨 将史
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-053486(JP,A)
【文献】特開2009-270405(JP,A)
【文献】特開2015-193990(JP,A)
【文献】特開2008-190281(JP,A)
【文献】特開2008-291578(JP,A)
【文献】特開2011-021360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00 - 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を載置する複数のパレットを有し、当該パレットが少なくとも上下2段に設置され、前記パレットを移動させる移動手段を有し、必要に応じて前記パレットを特定の階に移動して車両の出し入れを行う機械式駐車装置において、
前記パレットには基準パレットと異形パレットが含まれ、
前記基準パレット及び異形パレットは、いずれも中央に車両を載せる載置部が設けられ、少なくとも幅方向の一方の側方に、縦壁部と略水平に延びる水平部を有していて前記載置部から立ち上がった立ち上がり部があり、
前記異形パレットは、基準パレットに比べて前記立ち上がり部の立ち上がり位置が幅方向の中央寄りとなっており、
前記基準パレットの真上の位置に前記異形パレットが配置される場合があり、
特定の階に前記パレットが横方向に並んで配置されたパレットの組み合わせが存在し、 さらにその真上の階にもパレットが横方向に並んで配置されたパレットの組み合わせが存在し、
前記特定の階における前記組み合わせを構成するパレットはいずれも基準パレットであり、当該組み合わせを構成する基準パレットには、少なくとも隣接側に前記立ち上がり部があり、
その真上の階における前記組み合わせを構成するパレットはいずれも異形パレットであり、当該組み合わせを構成する異形パレットにも、少なくとも隣接側に前記立ち上がり部があることを特徴とする機械式駐車装置。
【請求項2】
前記パレットが上下に複数段、且つ横方向に複数列設置され、
前記移動手段は、前記パレットを昇降移動させる昇降手段と、前記パレットを水平移動させる横行手段を備え、
入出庫階があり、当該入出庫階にあるパレットは水平移動可能であり、それよりも上の階にあるパレットは、水平移動及び/又は昇降移動可能であり、
入出庫階にあるパレットから車両を出し入れする場合には、当該入出庫階にパレットを置いた状態で車両を出し入れし、
それよりも上の階にあるパレットから車両を出し入れする場合には、当該パレットを入出庫階に移動させた状態で車両を出し入れするものであり、
前記入出庫階にあるパレットは基準パレットであり、その真上の階に配されたパレットは異形パレットであることを特徴とする請求項1に記載の機械式駐車装置。
【請求項3】
前記パレットが上下2段、且つ横方向に複数列設置され、さらにその下にパレット収容空間が設けられたピット二段式の機械式駐車装置であり、下段のパレットが基準パレットであり、上段のパレットが異形パレットであることを特徴とする請求項1に記載の機械式駐車装置。
【請求項4】
入出庫階があり、常時は前記入出庫階にあるパレットと、常時は前記入出庫階の真上の階にあるパレットがあり、前記入出庫階にあるパレットは基準パレットであり、前記真上の階にあるパレットが異形パレットであることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の機械式駐車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体式の機械式駐車装置に関するものである。即ち本発明は、車両を載置する複数のパレットを有し、当該パレットが複数段に設置された機械式駐車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
限られた面積の土地を有効利用し、より多数の車両を駐車させる装置として、機械式駐車装置が知られている。
機械式駐車装置は、自動車等の車両を立体的に駐車させる装置である。代表的な機械式駐車装置は、車両を載置するパレットと、このパレットを昇降移動させる昇降装置を有している。
また機械式駐車装置では、特定の階が入出庫階となっている。
仮にパレットが入出庫階にある場合には、パレットをその位置においたままの状態で車両の出し入れを行う。仮にパレットが他の階にある場合には、パレットを昇降移動して入出庫階に移動させ、当該パレットに対して車両の出し入れを行う。
【0003】
またパズル式立体駐車装置と称されるものは、パレットを昇降移動させるだけでなく、パレットを横行移動させる機能も有している。
立体駐車装置は、例えば特許文献1、2、3に開示されている。
【0004】
一般にパレット100は、図9(a)の様に、平面視が長方形であり、断面形状は、図9(b)の様に凹状となっている。即ちパレット100は、幅方向の中央に車両を載せる載置部2があり、その両脇に立ち上がり部8a、8bがある。
立ち上がり部8a、8bは、一般に載置部2から垂直に近い角度で曲げられた縦壁部5a、5bと、縦壁部5a、5bの端部から略水平に延びる水平部6a、6bによって構成されている。
機械式駐車装置では、上記したパレット100が上下方向に複数段に設置されている。また多くの機械式駐車装置では、パレット100が横方向にも並べられており、例えば図10の様にパレット100が縦横行列状に配置されている。
【0005】
従来技術の機械式駐車装置では、上記した様に複数のパレット100を内蔵しているが、内蔵するパレット100の形状はいずれも同じである。
即ちパレット100の全幅L、載置部2の幅A、水平部6a、6bの幅B及び立ち上がり部8a、8bの高さHは全てのパレット100で共通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3189078号公報
【文献】特開平7-42388号公報
【文献】特開平9-137619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
機械式駐車装置に車両を入れる場合には、使用者が車両に乗り、車両を運転してパレット100上に車両を載せる。その後、使用者は車両から降り、パレット100の上を歩いて機械式駐車装置の外に移動する。多くの場合、使用者は図10の様にパレット100の水平部6a、6bの上を歩く。
また機械式駐車装置から車両を出す場合には、使用者はパレット100の水平部6a、6bの上を歩いて車両に乗り、車両を発進させる。
ここでパレット100の水平部6a、6bが、水で濡れている場合がある。一般に、パレット100は、鋼板で作られているので、水で濡れていると滑り易く危険である。
【0008】
パレット100の水平部6a、6bが水で濡れる原因は、一つではない。
本発明者らは、パレット100の水平部6a、6bが濡れる原因の一つを発見した。
即ち、図10の様に天井側(上部のパレット100Bの裏面101)に水滴102が発生し、天井側から水滴102が落下してパレット100Aの水平部6a、6bを濡らすことがあった。
なお上部のパレット100Bの裏面101に水滴が発生する原因についても一つではない。考えられる原因の一つとして、自動車のボンネット上に雨水がたまり、当該雨水がボンネットの熱によって蒸発し、それが上部のパレット100Bの裏面101で冷やされて液化し、水滴102となることが考えられる。
また雨水が回りこむことも考えられる。
【0009】
本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、パレットの水平部が濡れる原因の一つを除くことができる機械式駐車装置を開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するための態様は、車両を載置する複数のパレットを有し、当該パレットが少なくとも上下2段に設置され、前記パレットを移動させる移動手段を有し、必要に応じて前記パレットを特定の階に移動して車両の出し入れを行う機械式駐車装置において、前記パレットには基準パレットと異形パレットが含まれ、前記基準パレット及び異形パレットは、いずれも中央に車両を載せる載置部が設けられ、少なくとも幅方向の一方の側方に前記載置部から立ち上がった立ち上がり部があり、前記異形パレットは、基準パレットに比べて前記立ち上がり部の立ち上がり位置が幅方向の中央寄りとなっており、前記基準パレットの真上の位置に前記異形パレットが配置される場合があることを特徴とする機械式駐車装置である。
【0011】
「基準」「異形」は、二種類のパレットを区別するための用語に過ぎず、「基準」のパレットが多数であることを意味するものではない。
本態様の機械式駐車装置では、パレットの形状が上下で相違する。本態様の機械式駐車装置では、下部側のパレット(以下 下部側パレット)は基準パレットである。その真上のパレット(以下 上部側パレット)は、異形パレットであり、下の基準パレットに比べて立ち上がり部の立ち上がり位置が幅方向の中央寄りとなっている。そのため、上部側パレットに付着し、上部側パレットを伝って移動し、下に落下する水滴は、下部パレットの載置部に落ち、立ち上がり部を濡らし難い。
以下、説明する。
パレットを上面側から見ると、中央の載置部が凹んだ形状である。これに対してパレットを下から見ると、逆に中央の載置部が下方に突出し、立ち上がり部が凹んだ形状であると言える。
下部側パレットが設置された空間に対しては、上部側パレットの裏面が天井面となる。ここで下部側パレット側から上部側パレットを見ると、中央の載置部が天井面の大部分の面積を占め、その両脇の立ち上がり部は、載置部の縁から上方に向かって立ち上がっている。
水滴は、天井たる上部側パレットの載置部の裏面に付着する。上部側パレットは、幅方向に水平姿勢となる様に設計されているが、実際には僅かにいずれかの方向に傾いている。
そのため載置部の裏面に付着した水滴は、載置部の裏面を伝って一方の辺側に移動する。
しかしながら、立ち上がり部は、前記した様に上方に向かって立ち上がっているので、水滴は載置部の裏面の辺部で止まる。そして水滴は次第に成長し、遂には載置部の縁から落下する。
ここで上部側パレットは、下部側パレットに比べて立ち上がり部の立ち上がり位置が幅方向の中央寄りとなっている。そのため、上部側パレットの載置部の縁の真下の位置は下部側パレットの載置部であり、水滴は下部側パレットの載置部に落ちる。
【0012】
上記した態様において、特定の階に前記パレットが横方向に並んで配置されたパレットの組み合わせが存在し、さらにその真上の階にもパレットが横方向に並んで配置されたパレットの組み合わせが存在し、前記特定の階における前記組み合わせを構成するパレットはいずれも基準パレットであり、当該組み合わせを構成する基準パレットには、少なくとも隣接側に前記立ち上がり部があり、その真上の階における前記組み合わせを構成するパレットはいずれも異形パレットであり、当該組み合わせを構成する異形パレットにも、少なくとも隣接側に前記立ち上がり部があることが望ましい。
【0013】
上記した態様において、前記パレットが上下に複数段、且つ横方向に複数列設置され、前記移動手段は、前記パレットを昇降移動させる昇降手段と、前記パレットを水平移動させる横行手段を備え、入出庫階があり、当該入出庫階にあるパレットは水平移動可能であり、それよりも上の階にあるパレットは、水平移動及び/又は昇降移動可能であり、入出庫階にあるパレットから車両を出し入れする場合には、当該入出庫階にパレットを置いた状態で車両を出し入れし、それよりも上の階にあるパレットから車両を出し入れする場合には、当該パレットを入出庫階に移動させた状態で車両を出し入れするものであり、前記入出庫階にあるパレットは基準パレットであり、その真上の階に配されたパレットは異形パレットであることが望ましい。
【0014】
本態様は、パズル式の機械式駐車装置に本発明を採用したものである。
【0015】
上記した態様において、前記パレットが上下2段、且つ横方向に複数列設置され、さらにその下にパレット収容空間が設けられたピット二段式の機械式駐車装置であり、下段のパレットが基準パレットであり、上段のパレットが異形パレットであることが望ましい。
【0016】
本態様は、ピット二段式の機械式駐車装置に本発明を採用したものである。
【0017】
入出庫階があり、常時は前記入出庫階にあるパレットと、常時は前記入出庫階の真上の階にあるパレットがあり、前記入出庫階にあるパレットは基準パレットであり、前記真上の階にあるパレットが異形パレットであることが望ましい。
【0018】
ここで「常時は前記入出庫階にある」とは、常に入出庫階にあって他の階に移動することがない場合と、原則的に入出庫階にあるが、必要に応じて他の階に移動することもある場合の双方を含む概念である。
使用者は、入出庫階で車両の出し入れを行うので、「常時は前記入出庫階にある」は、人が歩く機会が多い。逆に言えば、他の階のパレット上を人が歩くことは少ない。
本態様の機械式駐車装置は、人が歩くことが多い「常時は前記入出庫階にある」パレットが水に濡れにくい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の機械式駐車装置は、パレットの水平部が濡れにくく、安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態の機械式駐車装置の斜視図である。
図2図1の機械式駐車装置の概念図である。
図3図2の円内の拡大図である。
図4図1の機械式駐車装置から車両を出庫する際の手順を説明する説明図である。
図5】(a)(b)は基準パレットと異形パレットの正面図であり、基準パレットと異形パレットを比較して説明する説明図である。
図6】本発明の他の実施形態の駐車装置の正面図である。
図7図6の機械式駐車装置の概念図であり、(a)は各パレットに車両を収容した状態を示し、(b)は上段のパレットから車両を出庫させる際の状態を示す。
図8図2の円内の拡大図であり、使用者が縦壁部と載置部との境界部分を歩く様子を示す。
図9】(a)はパレットの斜視図であり、(b)はその正面図である。
図10】従来技術の機械式駐車装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本発明の特徴的構成の説明に先立ち、本発明が適用される機械式駐車装置1の概要及び基本的動作について簡単に説明する。
本実施形態の機械式駐車装置1は、4階構造の機械式駐車装置1である。機械式駐車装置1には、図2の様に各階にそれぞれ4室の車両設置エリアA、B、C、Dがある。
機械式駐車装置1は、パズル式立体駐車装置とも称されるものであり、各階に車両を載置するパレット10、11がある。なお後記する様に機械式駐車装置1には二種類のパレット10、11がある。
ここでパレット10、11の数は不揃いであり、最上階たる4階には、全ての車両設置エリアA、B、C、Dにパレット10がある。
これに対して4階よりも下の下層階(3階、2階、1階)に設置されたパレット10、11の数は、車両設置エリアの数よりも少ない。即ち図2に示す機械式駐車装置1では、下層階(3階、2階、1階)にパレット10、11がそれぞれ3台設置されている。
【0022】
最上階たる4階の車両設置エリアA、B、C、Dは、パレット10を昇降移動させる昇降手段(図示せず)を備えている。
これに対して下層階(3階、2階、1階)の車両設置エリアA、B、C、Dは、パレット10、11を昇降移動させる昇降手段(図示せず)と、パレット10、11を横行移動させる横行手段(図示せず)を備えている。
【0023】
次に機械式駐車装置1の動作について説明する。なお説明の便宜上、各階の車両設置エリアA、B、C、Dを4-A、3-Bの様に表記する。車両設置エリア4-Aは、4階の車両設置エリアAを示し、3-Bは、3階の車両設置エリアBを示す表示である。
例えば、図4(a)の様に各階の全てのパレット10、11に車両が設置されている状態であって、車両設置エリア4-Bの車両を出庫したい状況であり、且つ車両設置エリア4-Bの真下の車両設置エリアたる3-B、2-B、1-Bに車両が存在すると仮定する。図4(a)では、車両設置エリア3-C、2-C、1-Cにはパレット10、11は無い。
【0024】
上記した様な場合は、下層階(3階、2階、1階)の横行手段を駆動させて、図4(b)の様に下層階(3階、2階、1階)のパレット10、11を横にずらす。より具体的には、車両設置エリア3-B、2-B、1-Bのパレット10、11をそれぞれ図面右方向に移動させ、車両設置エリア3-B、2-B、1-Bのパレット10、11を車両設置エリア3-C、2-C、1-Cに移動させて、車両設置エリア3-B、2-B、1-Bを空き状態とする。こうして出庫したい階(4階)の車両エリア(B)の下を全て空き状態にする。
この状態で、車両設置エリア4-Bの昇降手段を駆動し、車両設置エリア4-Bにあったパレット10を1階に下ろす。そして車両を発進させて車両を機械式駐車装置1から出庫させる。
【0025】
本実施形態の機械式駐車装置1では、1階に配置されたパレット10は、常に1階(入出庫階)にある。
また2階に配置されたパレット11は、常時は2階にあり、2階に配置されたパレット11から車両を入出庫する場合に限り1階に移動する。
3階、4階に配置されたパレット10は、常時はその階にあり、当該パレット10から車両を入出庫する場合に限り1階に移動する。
従って、本実施形態の機械式駐車装置1では、常時は、入出庫階には1階のパレット10があり、その真上には2階のパレット11がある。
【0026】
次に本実施形態の機械式駐車装置1の特徴的構成について説明する。
本実施形態の機械式駐車装置1で採用されているパレット10、11には、図5の様な基準パレット10と、異形パレット11の二種類がある。
図5(b)に示す様に基準パレット10の形状は、従来と同様であり、全幅L、載置部2の幅A、水平部6a、6bの幅B及び立ち上がり部8a、8bの高さHである。
【0027】
これに対して異形パレット11は、基準パレット10に比べて立ち上がり部8a、8bの立ち上がり位置7a、7bが幅方向の中央寄りとなっている。
即ち図5(a)に示す様に異形パレット11は、立ち上がり部8a、8bと載置部2との境界が、基準パレット10に比べて幅方向の中央寄りとなっている。
より具体的に説明すると、前記した様に立ち上がり部8a、8bは、縦壁部5a、5bと水平部6a、6bを有するので、縦壁部5a、5bと載置部2との境界の位置が、基準パレット10に比べて幅方向の中央寄りとなっている。
【0028】
即ち、異形パレット11の全幅LAは、基準パレット10の全幅Lと等しい。異形パレット11の載置部2の幅aは、基準パレット10の載置部2の幅Aよりも狭い。異形パレット11の水平部6a、6bの幅bは、基準パレット10の水平部6a、6bのBよりも広い。異形パレット11の立ち上がり部8a、8bの高さhは、基準パレット10の立ち上がり部8a、8bの高さHと等しい。
【0029】
従って両者のサイズには次の関係がある。
LA=L
a<A
b>B
h=H
【0030】
本実施形態の機械式駐車装置1では、入出庫階たる1階に配置されたパレットが全て基準パレット10であり、その真上の階たる2階に配置されたパレットが全て異形パレット11である。
他の階のパレットは、いずれも基準パレット10である。
機械式駐車装置1では、1階にパレット10が3台設置されている。そのため1階にはパレット10が横方向に並んで配置されたパレットの組み合わせが存在する。
即ち図2の状態を基準とするならば、車両設置エリア1-A、1-Bのパレット10によって横方向に並んで配置されたパレットの組み合わせが1組存在する。
なお1階の設置されたパレット10は横方向に移動するので、移動後の位置によって、車両設置エリア1-B、1-Cのパレット10によって横方向に並んで配置されたパレットの組み合わせが構成される場合がある。同様に車両設置エリア1-C、1-Dのパレット10によって横方向に並んで配置されたパレットの組み合わせが構成される場合がある。
【0031】
一方、真上の2階にもパレット11が横方向に並んで配置されたパレット11の組み合わせが存在する。2階のパレット11は、横方向にも移動するが、図2の状態を基準とするならば、車両設置エリア2-A、2-Bのパレット11によって横方向に並んで配置されたパレットの組み合わせが1組存在する。
なお2階の設置されたパレット11は横方向に移動するので、移動後の位置によって、車両設置エリア2-B、2-Cのパレット11によって横方向に並んで配置されたパレットの組み合わせが構成される場合がある。同様に車両設置エリア2-C、2-Dのパレット11によって横方向に並んで配置されたパレットの組み合わせが構成される場合がある。
【0032】
本実施形態の機械式駐車装置1においても、図3の様に1階部分の天井側(上部のパレット11の裏面12)に水滴15が付着する。
しかしながら、本実施形態の機械式駐車装置1では、パレットの形状が入出庫階(1階)に設置されたパレット10と、1階の天井を構成する2階とパレット11で相違する。本実施形態の機械式駐車装置1では、1階のパレット10は基準パレット10である。その真上の2階のパレット11は、異形パレット11であり、下のパレット10に比べて立ち上がり部8a、8bの立ち上がり位置7a、7bが幅方向の中央寄りとなっている。そのため、2階のパレット11に付着し、2階のパレット11を伝って移動し、下に落下する水滴15は、下(1階)のパレット10の載置部2に落ち、立ち上がり部8a、8bを濡らし難い。
【0033】
例えば1階の車両設置エリア1-Aの空間に対しては、2階の車両設置エリア2-Aのパレット11の裏面12が天井面となる。ここで下部側(1階)のパレット10側から上部側(2階)パレット11を見ると、中央の載置部2が天井面の大部分の面積を占め、その両脇の立ち上がり部8a、8bは、載置部2の縁から上方に向かって立ち上がっている。
【0034】
水滴15は、天井たる2階のパレット11の載置部2の裏面12に付着する。2階の上部側パレット11は、幅方向に水平姿勢となる様に設計されているが、実際には僅かにいずれかの方向に傾いている。
そのため載置部2の裏面12に付着した水滴15は、載置部2の裏面12を伝って一方の辺側に移動する。
【0035】
しかしながら、2階のパレット11の立ち上がり部8a、8bは、前記した様に上方に向かって立ち上がっているので、水滴15は載置部2の辺部に止まる。そして水滴15は次第に成長し、遂には2階のパレット11の載置部2の縁から落下する。
ここで2階のパレット11は、異形パレット11であり、1階のパレット10に比べて立ち上がり部8a、8bの立ち上がり位置7a、7bが幅方向の中央寄りとなっている。そのため、2階のパレット11の載置部2の縁の真下の位置は1階のパレット10の載置部2であり、水滴は図3の様に1階のパレット10の載置部2に落ちる。
そのため1階のパレット10の水平部6a、6bに水滴は落ちず、水平部6a、6bは濡れない。そのため滑りにくく、安全性が高い。
【0036】
以上説明した実施形態の機械式駐車装置1は、パズル式立体駐車装置であるが、他の形式の機械式駐車装置に本発明を適用することもできる。
例えば、ピット二段式の立体駐車装置に本発明を適用することもできる。
図6は、本発明の他の実施形態の機械式駐車装置50であり、ピット二段式の立体駐車装置である。
本実施形態の機械式駐車装置50は、地上2階、地下1階の構造である。機械式駐車装置50では、図7の様に1階部分と2階部分に車両設置エリアA、B、Cがある。
そして1階部分と2階部分に、車両を載置するパレット10、11がある。地下は車両を収容可能な容積を有するパレット収容空間51である。
【0037】
機械式駐車装置50では、パレット10、11を昇降移動させる昇降手段が設けられている。
機械式駐車装置50では、常時は1階部分と2階部分にパレット10、11がある。1階部分に設置されたパレット10は、基準パレット10である。2階部分に設置されたパレット11は、異形パレット11である。
1階部分に設置されたパレット10から車両を出し入れする際には、図7(a)の様にパレット10、11を移動させることなく実施する。
2階部分に設置されたパレット11から車両を出し入れする際には、図7(b)の様に、その縦列のパレット10、11を降下させ、1階部分にあったパレット10を地下のパレット収容空間51に下ろし、2階部分に設置されていたパレット11を1階の入出庫階に下ろす。そして1階部分に下ろされたパレット11から車両を出し入れする。
【0038】
本実施形態の機械式駐車装置50においても、1階のパレット10の水平部6a、6bに水滴は落ちず、水平部6a、6bは濡れない。
【0039】
以上説明した実施形態では、いずれもパレット10、11が横方向に二列以上に配置されていて特定の段において隣接する2個のパレット10、11の組み合わせが存在する。 組み合わせを構成する基準パレット10には、両側に立ち上がり部8a、8bがある。同様に組み合わせを構成する異形パレット11にも、両側に立ち上がり部8a、8bがある。
そのため同じ階の2個のパレット10、11の合致部分では、パレット10の水平部6a、6bが繋がり、全体として広い幅の歩道ができる。
しかしながら本発明は、この構成に限定されるものではなく、パレットが横方向に並んでおらず、単に縦(高さ方向)に一列にパレット10、11が配置されたものであってもよい。即ち機械式駐車装置1、50は、正面から見てパレット10、11が横方向と縦方向の行列状に配置されているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、縦方向にのみ配列されたものであってもよい。
【0040】
上記したパレット10、11の形状は、標準的なパレット10、11の形状を模式的に表現したものに過ぎず、実際のパレットは、各部に凹凸や切り欠き等がある。
また立ち上がり部8a、8bの縦壁部5a、5bが傾斜形状であるものもある。
【0041】
以上説明した機械式駐車装置1、50によると、入出庫階のパレット10の水平部6a、6bに水滴が落ち難く、水平部6a、6bは濡れ難い。前記した様に、使用者は入出庫階のパレット10の水平部6a、6b上を歩く場合が多いが、機械式駐車装置1、50によると、入出庫階のパレット10の水平部6a、6bが濡れ難いので、使用者が滑る懸念が低い。
また実施形態の副次的作用として、歩行領域の天井高さを高くすることができる。
前記した様に、使用者は入出庫階のパレット10の水平部6a、6bを歩く場合が多いが、入庫した車両が小型である場合には、載置部2を歩くこともある。
この場合、載置部2の大部分を入庫した車両が占めることとなるので、図8の様に使用者は縦壁部5a、5bと載置部2との境界部分を歩くこととなる。
【0042】
ここで上記した実施形態の機械式駐車装置1、50では、入出庫階のパレット10に対し、その上のパレット11は、水平部6a、6bの幅が広い。そのため、入出庫階側から見て、二階部分の凹部(立ち上がり部8a、8bで形成される凹部)の幅が広く、使用者の頭上空間の天井高さが高くなる。
そのため、長身の人が、図8の様に使用者は縦壁部5a、5bと載置部2との境界部分を歩いても、天井に頭をぶつける危険性が低い。
【符号の説明】
【0043】
1、50 機械式駐車装置
2 載置部
8a、8b 立ち上がり部
6a、6b 水平部
7a、7b 立ち上がり位置
10 基準パレット
11 異形パレット
12 裏面
15 水滴
51 パレット収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10