(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】信号生成装置および信号読取システム
(51)【国際特許分類】
H04L 25/03 20060101AFI20230410BHJP
H03K 5/08 20060101ALI20230410BHJP
H03K 19/0175 20060101ALI20230410BHJP
H04L 25/02 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
H04L25/03 Z
H03K5/08 R
H03K19/0175 280
H04L25/02 303Z
H04L25/02 V
(21)【出願番号】P 2019100283
(22)【出願日】2019-05-29
【審査請求日】2022-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】坂井 智春
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0091403(US,A1)
【文献】特開2013-120098(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109387685(CN,A)
【文献】特開昭62-023224(JP,A)
【文献】特開2003-309611(JP,A)
【文献】特開平10-261940(JP,A)
【文献】特開2010-141527(JP,A)
【文献】特開2020-025254(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0199229(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/03
H04L 25/02
H03K 5/08
H03K 19/0175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆導線で構成される通信路を介して伝送されるロジック信号に基づき、当該ロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を生成する信号生成装置であって、
前記被覆導線における被覆部に接触させられる電極に接続されて、当該電極と容量結合する当該被覆導線に伝送されている電圧に応じて電圧が変化する電圧信号を発生させる電圧検出部と、
前記電圧信号を、低電圧期間の電圧が予め規定された基準定電圧に固定されたパルス信号に整形してシングルエンド信号として出力する波形整形部と、
前記シングルエンド信号を二値化して前記符号特定用信号として出力する信号生成部とを備え、
前記信号生成部は、
前記シングルエンド信号を閾値電圧で二値化して前記符号特定用信号として出力するコンパレータと、
前記閾値電圧、当該閾値電圧よりも高い第1比較電圧、および当該第1比較電圧よりも高い第2比較電圧をそれぞれ前記基準定電圧を基準として生成する生成処理と、前記シングルエンド信号の高電圧期間の電圧を被比較電圧として当該第1比較電圧および当該第2比較電圧と比較する比較処理とを実行しつつ、当該被比較電圧が当該第2比較電圧を上回るときには、当該閾値電圧、当該第1比較電圧および当該第2比較電圧をそれぞれ一段階上昇させる上昇処理を、当該被比較電圧が当該第2比較電圧以下で、かつ当該第1比較電圧以上となるまで実行し、当該被比較電圧が当該第1比較電圧を下回るときには、当該閾値電圧、当該第1比較電圧および当該第2比較電圧をそれぞれ一段階低下させる低下処理を、当該被比較電圧が当該第2比較電圧以下で、かつ当該第1比較電圧以上となるまで実行する電圧生成回路とを備えている信号生成装置。
【請求項2】
被覆導線で構成される通信路を介して伝送されるロジック信号に基づき、当該ロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を生成する信号生成装置であって、
前記被覆導線における被覆部に接触させられる電極に接続されて、当該電極と容量結合する当該被覆導線に伝送されている電圧に応じて電圧が変化する電圧信号を発生させる電圧検出部と、
前記電圧信号を、高電圧期間の電圧が予め規定された基準定電圧に固定されたパルス信号に整形してシングルエンド信号として出力する波形整形部と、
前記シングルエンド信号を二値化して前記符号特定用信号として出力する信号生成部とを備え、
前記信号生成部は、
前記シングルエンド信号を閾値電圧で二値化して前記符号特定用信号として出力するコンパレータと、
前記閾値電圧、当該閾値電圧よりも低い第1比較電圧、および当該第1比較電圧よりも低い第2比較電圧をそれぞれ前記基準定電圧を基準として生成する生成処理と、前記シングルエンド信号の低電圧期間の電圧を被比較電圧として当該第1比較電圧および当該第2比較電圧と比較する比較処理とを実行しつつ、当該被比較電圧が当該第2比較電圧を下回るときには、当該閾値電圧、当該第1比較電圧および当該第2比較電圧をそれぞれ一段階低下させる低下処理を、当該被比較電圧が当該第2比較電圧以上で、かつ当該第1比較電圧以下となるまで実行し、当該被比較電圧が当該第1比較電圧を上回るときには、当該閾値電圧、当該第1比較電圧および当該第2比較電圧をそれぞれ一段階上昇させる上昇処理を、当該被比較電圧が当該第2比較電圧以上で、かつ当該第1比較電圧以下となるまで実行する電圧生成回路とを備えている信号生成装置。
【請求項3】
前記電圧検出部は、
前記被覆導線としての一対の被覆導線のうちの一方の被覆導線における被覆部に接触させられる前記電極としての一方の電極に接続されて、当該一方の被覆導線に伝送されている電圧に応じて電圧が変化する第1信号を発生させる第1インピーダンス素子と、
前記一対の被覆導線のうちの他方の被覆導線における被覆部に接触させられる前記電極としての他方の電極に接続されて、当該他方の被覆導線に伝送されている電圧に応じて電圧が変化する第2信号を発生させる第2インピーダンス素子と、
前記第1信号および前記第2信号を入力すると共に当該第1信号および当該第2信号の差分電圧に応じて電圧が変化する差分信号を前記電圧信号として出力する差動増幅部とを備えている請求項1または2記載の信号生成装置。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれかに記載の信号生成装置と、
前記信号生成装置によって生成された前記符号特定用信号に基づいて前記ロジック信号に対応する前記符号を特定する符号化装置とを備えている信号読取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信路を介して伝送されるロジック信号に基づいてロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を生成する信号生成装置、およびこの信号生成装置を備えた信号読取システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の信号生成装置として、下記の特許文献1において開示された通信システム(CANなどの通信路(バス通信路)を利用する通信システム)を構成する通信装置(ノード)に含まれるトランシーバ(具体的には、トランシーバの構成要素である受信バッファ)が知られている。このトランシーバでは、受信バッファが、通信路上のデータ(通信路に伝送されているロジック信号)を取り込む。具体的には、受信バッファは、コンパレータで構成されて、通信路の信号レベルを検出して予め規定された閾値(一定の閾値)と比較しつつ、検出した信号レベルがこの閾値よりも大きければハイレベルとなり、閾値よりも小さければロウレベルとなる受信データ(二値化信号である符号特定用信号)を出力することで、通信路上のデータを取り込む。また、トランシーバでは、符号化復号化部が、受信バッファから出力された受信データを入力すると共に復号化して、通信装置内の信号処理部に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-30932号公報 (第4-6頁、第1-3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本願出願人は、既設の通信路を介して既設の通信装置間で送受信されているデータ(ロジック信号)を、この通信路に結合容量を介して簡易に接続されて収集する(取り込む)収集装置を開発している。この収集装置においても、上記した通信装置に設けられている受信バッファのように通信路の信号レベルを検出して受信データ(二値化信号)として出力する装置が必要なため、上記した通信装置と同様にして、検出した通信路の信号レベルを1つの閾値(一定の閾値)に基づいて受信データ(二値化信号)に変換する構成を採用することも考えられる。
【0005】
しかしながら、通信路に結合容量を介して接続される構成においては、通信路を構成する線材の種類(線材は一般的に被覆電線であるため、線材の種類によって異なる被覆材料の種類や厚み)によって結合容量が大きく変わり、また結合容量が大きく変わることに起因して、通信路の信号レベルを検出して得られる電圧信号のレベルも大きく変わることがある。したがって、この電圧信号を1つの閾値に基づいて受信データ(二値化信号)に変換する構成を採用したときには、この電圧信号のレベルに対して閾値が低すぎたり、高すぎたりする場合が起こり得るため、この電圧信号を正確に二値化することができずに、符号特定用信号を正確に生成することが困難になるという課題が生じる。
【0006】
例えば、
図15に示すように、ロジック信号を検出して得られる電圧信号(区別のため、ロジック検出信号ともいう)のレベルが結合容量の大きさに応じて、同図中の(a)に示す最小の状態(結合容量が小さいときの状態)と、同図中の(b)に示す最大の状態(結合容量が大きいときの状態)との間で変化する場合に、ロジック信号と共に通信路に伝導しているノイズ成分を検出して得られる電圧信号(区別のため、ノイズ検出信号ともいう)のレベルもロジック検出信号のレベルと同様に変化する。
【0007】
したがって、ロジック検出信号を1つの閾値Vthで二値化する場合において、ロジック検出信号のレベルが最小の状態(
図15中の(a)の状態)において、ノイズ検出信号のレベルよりも高く、かつロジック検出信号のレベルよりも低くなるように閾値Vthを規定したとき(このときの閾値Vthのレベルを実線で示している)には、ロジック検出信号のレベルが最大の状態(同図中の(b)の状態)において、ノイズ検出信号のレベルが閾値Vthよりも高くなって、ノイズ検出信号も二値化されるため、ロジック検出信号だけを二値化できない状態(閾値Vthが低すぎる状態)となる。
【0008】
一方、ロジック検出信号のレベルが最大の状態(同図中の(b)の状態)において、ノイズ検出信号のレベルよりも高くなり、かつロジック検出信号のレベルよりも低くなるように閾値Vthを規定したとき(このときの閾値Vthのレベルを破線で示している)には、ロジック検出信号のレベルが最小の状態(同図中の(a)の状態)において、ロジック検出信号のレベルが閾値Vthがよりも低くなって、ロジック検出信号を二値化できない状態(閾値Vthが高すぎる状態)となる。
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、通信路を介して伝送されるロジック信号に基づいてロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号(二値化信号)を正確に生成し得る信号生成装置を提供することを主目的とする。また、この信号生成装置を備えた信号読取システムを提供することを他の主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく請求項1記載の信号生成装置は、被覆導線で構成される通信路を介して伝送されるロジック信号に基づき、当該ロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を生成する信号生成装置であって、前記被覆導線における被覆部に接触させられる電極に接続されて、当該電極と容量結合する当該被覆導線に伝送されている電圧に応じて電圧が変化する電圧信号を発生させる電圧検出部と、前記電圧信号を、低電圧期間の電圧が予め規定された基準定電圧に固定されたパルス信号に整形してシングルエンド信号として出力する波形整形部と、前記シングルエンド信号を二値化して前記符号特定用信号として出力する信号生成部とを備え、前記信号生成部は、前記シングルエンド信号を閾値電圧で二値化して前記符号特定用信号として出力するコンパレータと、前記閾値電圧、当該閾値電圧よりも高い第1比較電圧、および当該第1比較電圧よりも高い第2比較電圧をそれぞれ前記基準定電圧を基準として生成する生成処理と、前記シングルエンド信号の高電圧期間の電圧を被比較電圧として当該第1比較電圧および当該第2比較電圧と比較する比較処理とを実行しつつ、当該被比較電圧が当該第2比較電圧を上回るときには、当該閾値電圧、当該第1比較電圧および当該第2比較電圧をそれぞれ一段階上昇させる上昇処理を、当該被比較電圧が当該第2比較電圧以下で、かつ当該第1比較電圧以上となるまで実行し、当該被比較電圧が当該第1比較電圧を下回るときには、当該閾値電圧、当該第1比較電圧および当該第2比較電圧をそれぞれ一段階低下させる低下処理を、当該被比較電圧が当該第2比較電圧以下で、かつ当該第1比較電圧以上となるまで実行する電圧生成回路とを備えている。
【0011】
また、請求項2記載の信号生成装置は、被覆導線で構成される通信路を介して伝送されるロジック信号に基づき、当該ロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を生成する信号生成装置であって、前記被覆導線における被覆部に接触させられる電極に接続されて、当該電極と容量結合する当該被覆導線に伝送されている電圧に応じて電圧が変化する電圧信号を発生させる電圧検出部と、前記電圧信号を、高電圧期間の電圧が予め規定された基準定電圧に固定されたパルス信号に整形してシングルエンド信号として出力する波形整形部と、前記シングルエンド信号を二値化して前記符号特定用信号として出力する信号生成部とを備え、前記信号生成部は、前記シングルエンド信号を閾値電圧で二値化して前記符号特定用信号として出力するコンパレータと、前記閾値電圧、当該閾値電圧よりも低い第1比較電圧、および当該第1比較電圧よりも低い第2比較電圧をそれぞれ前記基準定電圧を基準として生成する生成処理と、前記シングルエンド信号の低電圧期間の電圧を被比較電圧として当該第1比較電圧および当該第2比較電圧と比較する比較処理とを実行しつつ、当該被比較電圧が当該第2比較電圧を下回るときには、当該閾値電圧、当該第1比較電圧および当該第2比較電圧をそれぞれ一段階低下させる低下処理を、当該被比較電圧が当該第2比較電圧以上で、かつ当該第1比較電圧以下となるまで実行し、当該被比較電圧が当該第1比較電圧を上回るときには、当該閾値電圧、当該第1比較電圧および当該第2比較電圧をそれぞれ一段階上昇させる上昇処理を、当該被比較電圧が当該第2比較電圧以上で、かつ当該第1比較電圧以下となるまで実行する電圧生成回路とを備えている。
【0012】
また、請求項3記載の信号生成装置は、請求項1または2記載の信号生成装置において、前記電圧検出部は、前記被覆導線としての一対の被覆導線のうちの一方の被覆導線における被覆部に接触させられる前記電極としての一方の電極に接続されて、当該一方の被覆導線に伝送されている電圧に応じて電圧が変化する第1信号を発生させる第1インピーダンス素子と、前記一対の被覆導線のうちの他方の被覆導線における被覆部に接触させられる前記電極としての他方の電極に接続されて、当該他方の被覆導線に伝送されている電圧に応じて電圧が変化する第2信号を発生させる第2インピーダンス素子と、前記第1信号および前記第2信号を入力すると共に当該第1信号および当該第2信号の差分電圧に応じて電圧が変化する差分信号を前記電圧信号として出力する差動増幅部とを備えている。
【0014】
また、請求項4記載の信号読取システムは、請求項1から3のいずれかに記載の信号生成装置と、前記信号生成装置によって生成された前記符号特定用信号に基づいて前記ロジック信号に対応する前記符号を特定する符号化装置とを備えている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の信号生成装置および請求項4記載の信号読取システムによれば、シングルエンド信号の高電圧期間の電圧(被比較電圧)の変化(シングルエンド信号の振幅の変化)に応じて、シングルエンド信号に重畳するノイズ成分の電圧が変化したとしても、電圧生成回路がこの被比較電圧の変化に応じて閾値電圧を変化させるため、コンパレータが、ノイズ成分の影響を回避しつつ(ノイズ成分の電圧が閾値電圧を超えない状態で)、シングルエンド信号を正確に二値化して符号特定用信号を出力(生成)することができる。
【0016】
請求項2記載の信号生成装置および請求項4記載の信号読取システムによれば、シングルエンド信号の低電圧期間の電圧(被比較電圧)の変化(シングルエンド信号の振幅の変化)に応じて、シングルエンド信号に重畳するノイズ成分の電圧が変化したとしても、電圧生成回路がこの被比較電圧の変化に応じて閾値電圧を変化させるため、コンパレータが、ノイズ成分の影響を回避しつつ(ノイズ成分の電圧が閾値電圧を超えない状態で)、シングルエンド信号を正確に二値化して符号特定用信号を出力(生成)することができる。
【0017】
請求項3記載の信号生成装置および請求項4記載の信号読取システムによれば、一対の被覆導線で構成される通信路を介して伝送される2線差動電圧方式のロジック信号に基づき、このロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を正確に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】信号読取システム1の構成を示す構成図である。
【
図3】
図2の波形整形回路42および信号生成部14の各構成を示す回路図である。
【
図4】
図3の波形整形回路42および信号生成部14を備えた信号生成装置2の動作を説明するための波形図である。
【
図6】
図3,5の波形整形回路42に対応させた信号生成部14の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図7】信号生成部14の
図6での動作を説明するための波形図である。
【
図8】信号生成部14の
図6での動作を説明するための他の波形図である。
【
図11】
図9,10の波形整形回路42を備えた信号生成装置2の動作を説明するための波形図である。
【
図12】
図9,10の波形整形回路42に対応させた信号生成部14の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図13】信号生成部14の
図12での動作を説明するための波形図である。
【
図14】信号生成部14の
図12での動作を説明するための他の波形図である。
【
図15】本願出願人が開発した信号生成装置の動作を説明するための波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、信号生成装置および信号読取システムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0021】
この信号生成装置は、一対の被覆導線で構成される通信路を介して伝送される2線差動電圧方式のロジック信号、または1本の被覆導線で構成される通信路を介して伝送される単線電圧駆動方式(単線方式)のロジック信号に基づき、このロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を生成する。
【0022】
また、この信号読取システムは、2線差動電圧方式のロジック信号に基づき符号特定用信号を生成する信号生成装置を備えた構成では、この信号生成装置によって生成された符号特定用信号に基づいて上記のロジック信号に対応する符号を特定すると共に、特定した符号で構成される符号列を特定するシステムであって、「CANプロトコル」、「CAN FD」、「FlexRay(登録商標)」などの各種通信プロトコルに準拠した各種の「2線差動電圧方式のロジック信号」や、「LVDS」による小振幅低消費電力通信が可能な各種通信プロトコルに準拠した各種の「2線差動電圧方式のロジック信号」を対象とすることができる。
【0023】
また、この信号読取システムは、単線電圧駆動方式のロジック信号に基づき符号特定用信号を生成する信号生成装置を備えた構成では、この信号生成装置によって生成された符号特定用信号に基づいて上記のロジック信号に対応する符号を特定すると共に、特定した符号で構成される符号列を特定するシステムであって、上記の各種通信プロトコルに準拠した「単線電圧駆動方式のロジック信号」を対象とすることができる。
【0024】
また、これらの信号読取システムは、上記のロジック信号に対応する符号および符号列を特定する機能を備えていることから、結果として、通信路に伝送されているロジック信号を検出するアナライザとしても機能し、さらに検出した符号列をメモリに記憶するように構成されているときには記録装置(レコーダ)としても機能する。
【0025】
以下では、一例として、一対の被覆導線で構成される「CAN通信用のシリアルバス」を対象として、CAN通信用のシリアルバス(通信路)から各種CANフレーム(2線差動電圧方式のロジック信号によって示されている符号の列(以下、符号列ともいう))を取得して動作する各種電子機器とシリアルバスとの間に配設して使用される信号生成装置および信号読取システムを例に挙げて説明する。具体的には、一例として、自動車に配設されている通信路からロジック信号を読み取り、対応する符号列(CANフレーム)を利用した各種の処理を外部機器(CAN通信対応機器)において実行させる例について説明する。
【0026】
図1に示す信号読取システム1は、「信号読取システム」の一例であって、信号生成装置2(「信号生成装置」の一例)、および符号化装置3(「符号化装置」の一例)を備えて構成されている。この信号読取システム1は、本願出願人の先行出願(特願2018-140191号)において提案した信号読取システム(以下では、先行出願の信号読取システムともいう)を改良したものであり、信号生成装置2を構成する後述の信号生成部14の構成が先行出願の信号読取システムを構成する信号生成装置(以下では、先行出願の信号生成装置ともいう)に含まれる信号生成部の構成と相違する以外は、先行出願の信号読取システムと同じ構成を有している。
【0027】
この信号読取システム1は、自動車に配設されているCAN通信用のシリアルバスSB(「通信路」の一例)からCANフレーム(「通信路を介して伝送されるロジック信号」の一例)を読み取り、読み取ったCANフレームと同じCANフレームCs(「ロジック信号に対応する符号列」の一例)を各種のCAN通信対応機器に出力することができるように(いわゆる、CANバスアナライザとして)構成されている。
【0028】
この場合、シリアルバスSBを介してのCANプロトコルに準拠した通信時には、
図2に示すように、CANフレーム(符号列)を構成する各符号を表すロジック信号Saが、シリアルバスSBにおける2本の信号線のうちのCANHigh(CANH)の信号線としての被覆導線Laに伝送される電圧信号の電圧Va(以下、理解の容易のため、この電圧信号自体を電圧信号Vaともいう)と、2本の信号線のうちのCANLow(CANL)の信号線としての被覆導線Lbに伝送される電圧信号の電圧Vb(以下、理解の容易のため、この電圧信号自体を電圧信号Vbともいう)との間の電位差(Va-Vb)である差動信号として伝送される。
【0029】
なお、電圧信号Va、電圧信号Vb、およびCANフレームを構成する符号Csの関係について簡単に説明すると、
図4に示すように、伝送されるCANフレームを構成する符号Cs(論理値)が「1」を示す期間では、電圧信号Va,Vbが共にベースの電圧(+2.5V)となる(電位差(Va-Vb)はゼロ(最小)となる)。一方、伝送されるCANフレームを構成する符号Cs(論理値)が「0」を示す期間では、電圧信号Vaは高電圧の規定電圧(+3.5V)となり、電圧信号Vbは低電圧の規定電圧(+1.5V)となる(電位差(Va-Vb)は最大となる)。なお、符号Csは、「1」が複数ビット連続したり、「0」が複数ビット連続したりする場合があるが、
図4では、理解の容易のため、1ビット毎に反転する例を示している。また、シリアルバスSBにおいて差動信号を伝送するための基準電位となる信号線である「SG」や、差動信号の伝送の用途以外に配設されている信号線および電力線等の図示および説明を省略する。
【0030】
信号生成装置2は、
図2に示すように、電極部11a,11b、インピーダンス素子12a,12b、差動増幅部13および信号生成部14を備えて、信号生成部14以外の構成要素については、先行出願の信号生成装置と同一に構成されている。なお、信号生成部14は、先行出願の信号生成装置に含まれる信号生成部と構成は相違するが、基本的な機能は同じである。このため、信号生成装置2は、先行出願の信号生成装置と同等の機能を備えて、一対の被覆導線La,Lb(以下、特に区別しないときには「被覆導線L」ともいう)で構成されるシリアルバスSBを介して伝送される2線差動電圧方式のロジック信号Sa(具体的には、被覆導線La側の電圧信号Vaおよび被覆導線Lb側の電圧信号Vb)に基づき、
図4に示すように、電圧信号Va,Vbに対応する符号Cs(電位差(Va-Vb)である差動信号に対応する符号Cs(「1」または「0」))を特定可能な符号特定用信号Sfを生成する。
【0031】
電極部11a,11bは、電極21およびシールド22を備えて同一に構成されている。また、電極部11a,11bは、「電圧検出部」を構成する構成要素の1つである。また、各電極部11a,11bは、被覆導線La,Lbのいずれに対しても着脱可能に構成されているが、
図1,2に示すように、電極部11aが被覆導線La,Lbのうちの対応する被覆導線Laに装着され、電極部11bが被覆導線La,Lbのうちの対応する被覆導線Lbに装着された状態において、信号生成装置2は、符号Csを正しく特定可能な符号特定用信号Sfを生成する。また、電極部11a,11bは、対応する被覆導線Lへの装着状態において、その被覆導線Lの絶縁被覆部(以下、単に「被覆部」ともいう)に電極21が接触(当接)するように構成されている。この構成により、電極部11a,11bの各電極21は、対応する被覆導線La,Lbの金属部(芯線)と接触することなく非接触の状態(つまり、金属非接触の状態)で容量結合する。また、シールド22は、各電極部11a,11bが対応する被覆導線La,Lbに装着されている状態において、被覆導線La,Lbの被覆部における電極21の接触部位を、この電極21を含めて覆うことで、電極21が対応する被覆導線Laの金属部以外の金属部と容量結合することを防止する。
【0032】
第1インピーダンス素子としてのインピーダンス素子12aは、抵抗31aとコンデンサ32aの並列回路で構成され、また第2インピーダンス素子としてのインピーダンス素子12bは、抵抗31b(抵抗31aと同じ抵抗値)とコンデンサ32b(コンデンサ32aと同じ容量値)の並列回路で構成されている。また、インピーダンス素子12aでは、その一端(抵抗31aの一端)がシールドケーブル(同軸ケーブル)CBaの芯線を介して電極部11aの電極21に接続され、その他端(抵抗31aの他端)が信号生成装置2における基準電位の部位(グランドG)に接続されている。また、インピーダンス素子12bでは、その一端(抵抗31bの一端)がシールドケーブル(同軸ケーブル)CBbの芯線を介して電極部11bの電極21に接続され、その他端(抵抗31bの他端)がグランドGに接続されている。また、シールドケーブルCBaのシールドは、電極部11a側の端部が電極部11aのシールド22に接続されると共に、インピーダンス素子12a側の端部がグランドGに接続されている。また、シールドケーブルCBbのシールドは、電極部11b側の端部が電極部11bのシールド22に接続されると共に、インピーダンス素子12b側の端部がグランドGに接続されている。また、インピーダンス素子12a,12bは、「電圧検出部」を構成する構成要素の1つである。
【0033】
この構成により、先行出願の信号生成装置と同様にして、インピーダンス素子12aは、電極部11aの電極21と容量結合する一方の被覆導線Laに伝送されている電圧信号Vaの電圧Vaに応じて電圧が変化する(電圧Vaが上記のベースの電圧のときに低電圧となり、電圧Vaが上記の高電圧の規定電圧のときに高電圧となるように変化する)第1電圧信号(「第1信号」)Vc1を、両端間に発生させる。また、インピーダンス素子12bは、電極部11bの電極21と容量結合する他方の被覆導線Lbに伝送されている電圧信号Vbの電圧Vbに応じて電圧が変化する(電圧Vbが上記のベースの電圧のときに高電圧となり、電圧Vbが上記の低電圧の規定電圧のときに低電圧となるように変化する)第2電圧信号(「第2信号」)Vc2を、両端間に発生させる。また、第1電圧信号Vc1および第2電圧信号Vc2は共に容量結合によって検出される信号であることから、第1電圧信号Vc1は、被覆導線Laと電極部11aの電極21との容量結合の度合い(結合容量の大きさ)に応じて、また第2電圧信号Vc2は、被覆導線Lbと電極部11bの電極21との容量結合の度合い(結合容量の大きさ)に応じて、それぞれの振幅が変化する信号となっている。
【0034】
なお、インピーダンス素子12a,12bは、上記の構成に限定されず、先行出願において開示された他の構成(抵抗だけの構成、コンデンサだけの構成、コンデンサとして上記したシールドケーブルCBa,CBbの配線容量を使用する構成)を採用することもできる。
【0035】
差動増幅部13は、第1電圧信号Vc1および第2電圧信号Vc2を入力すると共に各電圧信号Vc1,Vc2の差分電圧(Vc1-Vc2)に応じて電圧が変化するシングルエンド信号Vdを出力する。
【0036】
具体的には、差動増幅部13は、
図2に示すように、差動増幅回路41および波形整形回路42(「波形整形部」)を備え、一例として、トランスレス差動増幅部として構成されている。差動増幅回路41は、
図2に示す構成では、正電源電圧Vccおよび負電源電圧Vee(例えば、±10V)で動作する3つの演算増幅器41a,41b,41c、および7つの抵抗41d,41e,41f,41g,41h,41i,41jを備えて、全体として計装アンプに構成されている。また、差動増幅回路41は、「電圧検出部」を構成する構成要素の1つである。
【0037】
この構成により、差動増幅回路41は、電圧信号Vc1,Vc2の差分電圧(Vc1-Vc2)を各抵抗41d,41e,41f,41g,41iの抵抗値で規定される公知の増幅率で反転増幅して、「電圧信号」としての差分信号Vd0を出力する。この差分信号Vd0は、
図4に示すように、シリアルバスSBにCANフレーム(符号列)を構成する符号Cs(「1」)が伝送されている期間において(電圧Va,Vbが共にベースの電圧(2.5V)のときに)高電位側電圧となり、CANフレームを構成する符号Cs(「0」)が伝送されている期間において(電圧Vaが高電圧の規定電圧(3.5V)で、電圧Vbが低電圧の規定電圧(1.5V)のときに)低電位側電圧となる電圧信号である。また、上記したように、各電圧信号Vc1,Vc2は共に電圧信号Va,Vbの変化に応じて直流レベルが変化し、また容量結合の度合いに応じて振幅が変化する信号であることから、電圧信号Vc1,Vc2に基づいて生成される差分信号Vd0もまた、差動増幅回路41においてこの直流レベルの変化について軽減されてはいるものの、直流レベル(直流成分A)が変化したり、振幅(その交流成分Vd0
acの振幅)が変化したりする信号である。なお、
図4では、直流成分Aの変化の周期を誇張して短く表記しているが、実際の直流成分Aは、被覆導線Laと電極部11aの電極21との間の結合容量、および被覆導線Lbと電極部11bの電極21との間の結合容量が変化するとき(主として電極部11a,11bを被覆導線La,Lbに装着するとき)に変化するが、電極部11a,11bの被覆導線La,Lbへの装着が完了した以降は概ね一定である。
【0038】
また、差動増幅回路41は、
図2に示す構成に代えて、先行出願において開示された他の構成(抵抗41fを省いて、演算増幅器41a,41bの各反転入力端子を、抵抗や、抵抗とコンデンサの直列回路を介してグランドGに別個に接続する構成)を採用することもできる。また、差動増幅回路41は、本願出願人の他の先行出願(特願2018-140188号)において提案した信号読取システムでの信号生成装置と同等の構成(トランスを備えた構成)を採用することもできる。
【0039】
波形整形回路42は、差分信号Vd0を入力すると共に、この差分信号Vd0を、差分信号Vd0の交流成分Vd0acのピークtoピーク電圧(ピークピーク電圧)と同等のピークtoピーク電圧(ピークピーク電圧)で、かつその高電位側電圧(高電圧期間の電圧)および低電位側電圧(低電圧期間の電圧)のうちのいずれか一方が予め規定されたターゲット定電圧(基準定電圧)Vtgに規定されたシングルエンド信号Vdに整形(波形整形)して出力する。上記したように、交流成分Vd0acの振幅(ピークtoピーク電圧)が変化するものであることから、シングルエンド信号Vdもまた、その振幅(ピークtoピーク電圧)が変化する信号である。
【0040】
一例として、波形整形回路42は、
図3に示すように、入力パルス信号としての差分信号Vd0が入力される入力部42a、出力パルス信号としてのシングルエンド信号Vdが出力される出力部42b、コンデンサ42c、第3インピーダンス素子42d、直列接続された第4インピーダンス素子42eおよびスイッチ42fで構成された直列回路SC、並びにダイオードを含まずにコンパレータなどで構成されると共にスイッチ42fをオン状態からオフ状態へ、またオフ状態からオン状態へ移行させる制御パルス信号Vctを出力するスイッチ制御回路SWCを備えている。
【0041】
具体的には、コンデンサ42cは、一端部が入力部42aに接続されると共に他端部が出力部42bに接続されている。第3インピーダンス素子42dは、一例として抵抗で構成されて、一端部がコンデンサ42cの他端部に接続されると共に他端部にターゲット定電圧Vtgが印加されて、ターゲット定電圧Vtgをコンデンサ42cの他端部(および出力部42b)に供給する。なお、ターゲット定電圧Vtgは、正電源電圧Vccを下回り、かつ負電源電圧Veeを上回る任意の1つの定電圧に予め規定されている。本例ではターゲット定電圧Vtgは、一例としてゼロボルトに規定されているが、これに限定されるものではない。
【0042】
また、第3インピーダンス素子42dについては、最も簡易な構成として、
図3に示すように1本の抵抗で構成することもできるが、この構成に限定されるものではなく、先行出願において開示された他の構成(抵抗と共に、または抵抗に代えてインダクタを使用する構成)を採用することもできる。
【0043】
直列回路SCは、
図3に示すように、直列接続された第4インピーダンス素子42eおよびスイッチ42fで構成されると共に、一端部がコンデンサ42cの他端部(および出力部42b)に接続されると共に他端部にターゲット定電圧Vtgが印加されている。この構成により、直列回路SCは、スイッチ制御回路SWCから出力される制御パルス信号Vctによってスイッチ42fがオン状態に移行させられたときには、ターゲット定電圧Vtgのコンデンサ42cの他端部(および出力部42b)への印加を実行し、オフ状態に移行させられたときには、ターゲット定電圧Vtgのコンデンサ42cの他端部(および出力部42b)への印加を停止する。
【0044】
また、スイッチ42fは、本例では一例として、制御パルス信号Vctが高電位のときにオン状態に移行し、制御パルス信号Vctが低電位のときにオフ状態に移行するように(いわゆる、正論理(ハイアクティブ)で動作するように)構成されている。
【0045】
第4インピーダンス素子42eは、本例では一例として、スイッチ42fがオン状態のときに、他端部に印加されているターゲット定電圧Vtgをコンデンサ42cの他端部(および出力部42b)に低インピーダンスで供給し得る十分に低い抵抗値に規定された抵抗で構成されている。
【0046】
スイッチ制御回路SWCは、
図3に示す構成では、
図4に示すように、入力部42aに入力される差分信号Vd0の交流成分Vd0
ac(
図4参照)における低電圧期間T
Lにスイッチ42fをオン状態に移行させるために高電位(高レベル。例えば、後述するコンパレータ42gについての正電源電圧Vccの近傍の電圧レベル)となり、交流成分Vd0
acにおける高電圧期間T
Hにスイッチ42fをオフ状態に移行させるために低電位(低レベル。例えば、後述するコンパレータ42gについての負電源電圧Veeの近傍の電圧レベル)となる制御パルス信号Vctを出力する。
【0047】
具体的には、スイッチ制御回路SWCは、
図3に示すように、正電源電圧Vccおよび負電源電圧Veeで動作する1つのコンパレータ42g、および直流定電圧(バイアス電圧)Vbi1(≠0ボルト)を出力する1つの基準電源42hを有して構成されている。また、基準電源42hは、負極側がターゲット定電圧Vtgに接続されることにより、ターゲット定電圧Vtgに直流定電圧Vbi1が加算された電圧(Vtg+Vbi1)を基準電圧(第1基準電圧)Vr1として正極側から出力する。直流定電圧Vbi1は、差分信号Vd0の交流成分Vd0
acについてのピークtoピーク電圧Vp(
図4参照)の想定される変化範囲における下限値の例えば数%から十数%の電圧値に規定されている。
【0048】
例えば、ピークtoピーク電圧Vp(低電圧期間TLでの電圧を基準としたときの高電圧期間THでの電圧Vp。以下、単に電圧Vpともいう)が、各被覆導線La,Lbと対応する各電極部11a,11bの電極21との容量結合の度合い(結合容量の大きさ)に応じて、3V以上10V以下の範囲で変化する(下限値Vpminが3Vで、上限値Vpmaxが10Vの変化範囲)ときには、直流定電圧Vbi1は、この下限値Vpminである3Vの数%から十数%の電圧値(例えば、約0.3Vの電圧値)に規定されている。つまり、基準電圧Vr1は、ターゲット定電圧Vtgよりも若干高い電圧(例えば0.3V程度高い電圧)に規定されている。また、コンパレータ42gは、反転入力端子がコンデンサ42cの他端部に接続され、かつ非反転入力端子に基準電圧Vr1が入力されることで、出力端子から上記の制御パルス信号Vctを出力するように構成されている。
【0049】
このスイッチ制御回路SWCを備えた波形整形回路42は、先行出願において開示されたように各構成要素が動作することにより、
図4に示すように、差分信号Vd0(ピークtoピーク電圧Vpの交流成分Vd0
acに直流成分Aが重畳した信号)を、差分信号Vd0の交流成分Vd0
acのピークtoピーク電圧Vpと同等のピークtoピーク電圧Vpで、かつその低電位側電圧(低電圧期間T
Lの電圧)がターゲット定電圧Vtgに規定されたシングルエンド信号Vdに整形(波形整形)して出力部42bから出力する。なお、
図4では、理解の容易のため、シングルエンド信号Vdの振幅を、交流成分Vd0
acの振幅に対して拡大して表している。これにより、この波形整形回路42は、CANフレームを構成する符号Csの変化に対応して電圧が変化する信号、つまり、この符号Csが「0」の期間には信号の電圧が低電位(ターゲット定電圧Vtg)になり、この符号Csが「1」の期間には信号の電圧が高電位(電圧:Vtg+Vp。本例では上記したように電圧Vtgがゼロボルトのため、正極性の電圧Vp)になる正極性のシングルエンド信号Vdを出力する。
【0050】
なお、このように、差分信号Vd0を、差分信号Vd0の交流成分Vd0
acのピークtoピーク電圧Vpと同等のピークtoピーク電圧Vpで、かつその低電位側電圧がターゲット定電圧Vtgに規定されたシングルエンド信号Vd(高電位側電圧が電圧(Vp+Vtg)となる信号)に整形して出力する波形整形回路42については、
図3に示す回路構成に限定されるものではなく、先行出願において開示された種々の回路構成を採用することもできる。また、
図5に示すように、直列回路SCおよびスイッチ制御回路SWCに代えて、ダイオード42xを使用する公知の回路構成を採用することもできる。
【0051】
信号生成部14は、一例として、
図3に示すように、正電源電圧Vccおよび負電源電圧Veeで動作する1つのコンパレータ14a、およびコンパレータ14aにおいて使用される閾値電圧Vthを出力する電圧生成回路14bを有して構成されている。
【0052】
コンパレータ14aは、シングルエンド信号Vdを閾値電圧Vthで二値化して符号特定用信号Sfとして出力する。この構成により、信号生成部14は、
図4に示すように、シリアルバスSBを介して伝送されるCANフレームを構成する符号Csが「1」の期間において「高電位期間」となり、この符号Csが「0」の期間において「低電位期間」となる符号特定用信号Sfを生成して出力する。
【0053】
電圧生成回路14bは、一例として、A/D変換器、D/A変換器およびCPU(いずれも図示せず)を有して構成されて、
図6に示す電圧生成処理50を実行する。この電圧生成処理50では、電圧生成回路14b(具体的にはCPU)は、閾値電圧Vth、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2を生成する生成処理(ステップ51)、新たなシングルエンド信号Vdの入力の有無を検出する信号検出処理(ステップ52)、シングルエンド信号Vdの高電圧期間の電圧(CANフレームの符号Csが「1」の期間のときのシングルエンド信号Vdの電圧であって、低電圧期間T
Lでの電圧(本例では一例としてゼロボルト)を基準としたときの高電圧期間T
Hでの電圧Vp)を被比較電圧として第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2と比較する比較処理(ステップ53)、この比較処理での比較結果に基づいて閾値電圧Vth、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2をそれぞれ一段階上昇させる上昇処理(ステップ54)、およびこの比較処理での比較結果に基づいて閾値電圧Vth、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2をそれぞれ一段階低下させる低下処理(ステップ55)を含む各種処理を実行する。
【0054】
この信号生成部14は、電圧生成回路14bがこの電圧生成処理50を実行して、コンパレータ14aで使用される閾値電圧Vthを上昇させたり、低下させたりする構成(閾値電圧Vthが固定されておらず、変化させられる構成)において、先行出願において開示された信号生成部の構成(コンパレータ14aで使用される閾値電圧Vthが固定されている構成)と相違している。
【0055】
符号化装置3は、信号生成装置2から出力された符号特定用信号Sfに基づき、ロジック信号Saに対応する符号Cs(
図4参照)を特定する符号化処理を実行し、特定した符号Csの列(すなわち、シリアルバスSBを伝送されているCANフレームと同じCANフレーム)を、信号読取システム1に接続されている各種CAN通信対応機器に出力する。具体的には、符号化装置3は、符号化処理において、符号特定用信号Sfの高電位期間においては、シリアルバスSBを介して伝送されているCANフレームを構成する符号Csが「1」であると特定し、かつ符号特定用信号Sfの低電位期間においては、このCANフレームを構成する符号Csが「0」であると特定すると共に、特定した符号Csで構成される符号列を、シリアルバスSBを介して伝送されているCANフレームと特定して、各種CAN通信対応機器に出力する。この場合、符号化装置3は、CAN通信対応機器と有線伝送路を介して接続されているときには、特定したCANフレームを有線通信でCAN通信対応機器に出力(送信)し、CAN通信対応機器と無線伝送路を介して接続されているときには、特定したCANフレームを無線通信でCAN通信対応機器に出力(送信)する。
【0056】
次に、信号読取システム1の使用例、およびその際の信号読取システム1の動作について、図面を参照して説明する。なお、
図2に示すように、電極部11aの電極21はシールドケーブルCBaの芯線を介してインピーダンス素子12aの一端に接続され、電極部11aのシールド22はシールドケーブルCBaのシールドを介して信号生成装置2のグランドGに接続され、電極部11bの電極21はシールドケーブルCBbの芯線を介してインピーダンス素子12bの一端に接続され、かつ電極部11bのシールド22はシールドケーブルCBbのシールドを介して信号生成装置2のグランドGに接続されているものとする。
【0057】
まず、
図2に示すように、自動車に敷設されているシリアルバスSBにおける被覆導線La,Lbの被覆部に電極21が接触(当接)するように電極部11a,11bを被覆導線La,Lbにそれぞれ装着すると共に、シリアルバスSBから読み取ったCANフレーム(符号Csの列)を出力すべきCAN通信対応機器を符号化装置3に接続する。
【0058】
この場合、本例の信号読取システム1では、被覆導線La,Lb自体を加工する(絶縁被覆を剥がす)ことなく、電極部11a,11bを装着するだけでシリアルバスSBからロジック信号Saを読み取ることができるため、シリアルバスSBにコネクタが配設されていない場合においても使用することができる。また、コネクタが配設されていたとしても、シリアルバスSBに対する接続場所(電極部11a,11bの装着場所)がコネクタの配設場所に限定されずに、被覆導線La,Lbの長手方向における任意の場所に接続する(電極部11a,11bをそれぞれ任意の場所に装着する)ことが可能となっている。
【0059】
この状態において、自動車に搭載された図外のCAN通信対応機器(制御情報を示すCANフレームを出力するコントローラや、任意の計測結果を示すCANフレームを出力する検出器等)からシリアルバスSBにロジック信号Saが出力されたときに、信号生成装置2では、被覆導線Laに装着された電極部11aとシールドケーブルCBaを介して接続されたインピーダンス素子12aには、被覆導線Laに伝送されている電圧信号Vaの電圧Vaに応じて電圧が変化する第1電圧信号Vc1が発生し、また被覆導線Lbに装着された電極部11bとシールドケーブルCBbを介して接続されたインピーダンス素子12bには、被覆導線Lbに伝送されている電圧信号Vbの電圧Vbに応じて電圧が変化する第2電圧信号Vc2が発生する。
【0060】
信号生成装置2では、差動増幅部13が、この第1電圧信号Vc1およびこの第2電圧信号Vc2を入力すると共に、これらの電圧信号Vc1,Vc2の差分電圧(Vc1-Vc2)に応じて電圧が変化するシングルエンド信号Vdを出力する。この場合、差動増幅部13では、波形整形回路42が
図3や
図5の回路構成のときには、
図4に示すように、シリアルバスSBに伝送されているCANフレームを構成する符号Csが「0」の期間には信号の電圧が低電位(ターゲット定電圧Vtg)になり、この符号Csが「1」の期間には信号の電圧が高電位になるシングルエンド信号Vd(つまり、低電位期間の信号の電圧(信号のボトム電圧)がターゲット定電圧Vtgに規定されるように波形整形された信号)を出力する。
【0061】
また、信号生成装置2では、信号生成部14が、
図4に示すように、シングルエンド信号Vdを閾値電圧Vthで二値化することにより、シリアルバスSBを介して伝送されるCANフレームを構成する符号Csが「1」の期間において「高電位期間」となり、この符号Csが「0」の期間において「低電位期間」となる符号特定用信号Sfを生成して出力する。
【0062】
この信号生成部14では、電圧生成回路14bが、電圧生成処理50(
図5参照)を実行することにより、閾値電圧Vthを生成してコンパレータ14aに出力し、コンパレータ14aが、シングルエンド信号Vdを閾値電圧Vthで二値化して符号特定用信号Sfを出力する。
【0063】
具体的には、電圧生成回路14bでは、A/D変換器が、符号Csの1ビット長よりも十分に短い一定のサンプリング周期でシングルエンド信号Vdをサンプリングすることにより、シングルエンド信号Vdの電圧Vdを示すデジタルデータ(電圧データ)に変換する。CPUは、この電圧データに基づいて電圧生成処理50を実行して(電圧Vdをデジタル処理して)、閾値電圧Vthを示す電圧データ、第1比較電圧Vcp1を示す電圧データおよび第2比較電圧Vcp2を示す電圧データを生成する処理を、電圧Vdにおける高電位側電圧(Vp+Vtg。本例では一例として、Vtg=0のため、電圧Vp。高電位側電圧Vpともいう)の高低に応じて、生成する閾値電圧Vthおよび各比較電圧Vcp1,Vcp2を示す各電圧データを大きくしたり(閾値電圧Vthおよび各比較電圧Vcp1,Vcp2を高くしたり)、小さくしたり(閾値電圧Vthおよび各比較電圧Vcp1,Vcp2を低くしたり)しつつ実行する。この場合、シングルエンド信号Vdは正極性のパルス信号であることから、CPUは、それぞれが正電圧である閾値電圧Vthおよび比較電圧Vcp1,Vcp2を示す各電圧データを生成する。また、CPUは、この閾値電圧Vthの電圧データについてはD/A変換器に出力して、アナログ信号としての閾値電圧Vthに変換させる。D/A変換器は、このアナログ信号としての閾値電圧Vthをコンパレータ14aに出力する。以下において、電圧生成処理50について詳細に説明する。
【0064】
電圧生成処理50では、電圧生成回路14bは、まず、生成処理を実行して、閾値電圧Vth、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2についての各電圧データを、各電圧Vth,Vcp1,Vcp2について予め規定された初期電圧値Vthi,Vcp1i,Vcp2i(基準定電圧であるターゲット定電圧Vtgを基準とする電圧値)を示す値で生成する(ステップ51)。また、電圧生成回路14bは、この生成処理において、閾値電圧Vthについての電圧データをD/A変換器でアナログ信号としての閾値電圧Vth(初期電圧値Vthi)に変換して出力する。これにより、コンパレータ14aは、シングルエンド信号Vdを閾値電圧Vthで二値化して符号特定用信号Sfを出力する動作を開始する。
【0065】
この場合、電圧生成回路14bは、閾値電圧Vth、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2を示す各電圧データについては、Vcp2>Vcp1>Vthとの関係が維持されるように常に生成する。このため、初期電圧値Vcp1iは、初期電圧値Vthiよりも高い電圧(Vcp1i>Vthi)として規定され、初期電圧値Vcp2iは、初期電圧値Vcp1iよりも高い電圧(Vcp2i>Vcp1i>Vthi)として規定されている。
【0066】
また、電圧生成回路14bは、後述するように、第1比較電圧Vcp1を下限とし第2比較電圧Vcp2を上限とする電圧範囲内にシングルエンド信号Vdの高電位側電圧Vpが含まれるように、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2を変更することで、この電圧範囲から高電位側電圧Vpの概略値を特定する。したがって、この電圧範囲、つまり各比較電圧Vcp1,Vcp2の差(Vcp2-Vcp1)は、電圧Vdの概略値を特定し得る程度の小さい電圧値に予め規定されている。この高電位側電圧Vpは、上記したように各被覆導線La,Lbと対応する各電極部11a,11bの電極21との容量結合の度合い(結合容量の大きさ)に応じて、下限値Vpminから上限値Vpmaxまでの変化範囲内で変化する。このため、各比較電圧Vcp1,Vcp2の電圧差Vdf(=Vcp2-Vcp1)は、高電位側電圧Vpが下限値Vpminのときでも、ある程度の精度で上記の概略値を特定し得るように、下限値Vpminの十数%から数十%程度に規定されている。例えば、上記したように高電位側電圧Vpについての変化範囲の下限値Vpminが3Vのときには、電圧差Vdfは、この下限値Vpmin(3V)の十数%から数十%程度(約0.4V以上約0.8V以下の電圧)に規定されている。
【0067】
また、電圧生成回路14bが、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2を、それぞれの初期電圧値Vcp1i,Vcp2iから上昇させる変更を最初に実行する構成のときには、初期電圧値Vcp1iは上記の下限値Vpminよりも若干低い電圧値に規定され、初期電圧値Vcp2iはこの初期電圧値Vcp1iよりも電圧差Vdfだけ高い電圧値であって下限値Vpminよりも高くなる電圧値に規定される(つまり、Vcp2i>Vpmin>Vcp1iとなるように規定される)。一方、電圧生成回路14bが、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2を、それぞれの初期電圧値Vcp1i,Vcp2iから低下させる変更を最初に実行する構成のときには、初期電圧値Vcp2iは上記の上限値Vpmaxよりも若干高い電圧値として規定され、初期電圧値Vcp1iはこの初期電圧値Vcp2iよりも電圧差Vdfだけ低い電圧値であって上記の上限値Vpmaxよりも低くなる電圧値に規定される(つまり、Vcp2i>Vpmax>Vcp1iとなるように規定される)。本例の電圧生成回路14bでは、一例として前者の構成が採用されて、初期電圧値Vcp1i,Vcp2iは、Vcp2i>Vpmin>Vcp1iとなるように規定されている。
【0068】
また、本例の電圧生成回路14bは、閾値電圧Vthについては、第1比較電圧Vcp1に対して1/2(概ね1/2)となる関係が維持されるように、閾値電圧Vthを生成する。したがって、電圧生成回路14bは、閾値電圧Vthの初期電圧値Vthiについては、初期電圧値Vcp1iの概ね1/2となる電圧値で生成する。また、閾値電圧Vthについては、この構成に限定されるものではない。例えば、電圧生成回路14bが、第2比較電圧Vcp2に対して1/2(概ね1/2)となる関係が維持されるように閾値電圧Vthを生成する構成や、第1比較電圧Vcp1と第2比較電圧Vcp2の中間電圧に対して1/2(概ね1/2)となる関係が維持されるように閾値電圧Vthを生成する構成を採用することもできる。
【0069】
なお、第1比較電圧Vcp1、第2比較電圧Vcp2、および第1比較電圧Vcp1と第2比較電圧Vcp2との中間電圧のうちのいずれかの電圧の1/2(概ね1/2)となる関係が維持されるように閾値電圧Vthを生成する上記の構成は、ノイズ成分の影響を回避しつつ、シングルエンド信号Vdをその振幅の概ね中間位置で常に二値化し得る構成(つまり、符号特定用信号Sfの高電位の期間長が、交流成分Vd0acにおける高電圧期間THの長さ、ひいては符号Csが「1」を示す期間の長さに近くなり、かつ符号特定用信号Sfの低電位の期間長が、交流成分Vd0acにおける低電圧期間TLの長さ、ひいては符号Csが「0」を示す期間の長さに近くなる構成)のため、最も好ましい構成であるが、この構成に限定されるものではない。例えば、第1比較電圧Vcp1、第2比較電圧Vcp2、および第1比較電圧Vcp1と第2比較電圧Vcp2との中間電圧のうちのいずれかの電圧の1/2となる電圧を上回り、かつ第1比較電圧Vcp1を下回る電圧範囲に含まれるように閾値電圧Vthを生成する構成を採用することもできる。この構成によれば、シングルエンド信号Vdをより高い電圧において二値化し得るため、シングルエンド信号Vdにおけるターゲット定電圧Vtgに規定されている波形部位(低電位側電圧となっている波形部位)に重畳するノイズ成分の影響をより確実に回避することが可能となる。
【0070】
次いで、電圧生成回路14bは、信号検出処理を実行する(ステップ52)。この信号検出処理では、電圧生成回路14bは、新たなシングルエンド信号Vdの入力の有無を検出する。具体的には、電圧生成回路14bは、波形整形回路42から出力される電圧Vdについての電圧データと予め規定された検出用閾値電圧Vdthを示す電圧データとを比較して、電圧Vdが検出用閾値電圧Vdthを下回る状態(ターゲット定電圧Vtgに規定された低電位側電圧)から検出用閾値電圧Vdth以上の状態(電圧Vpとなる高電位側電圧)になったときに、新たなシングルエンド信号Vdの入力が有ったと判別する。
【0071】
本例の電圧生成回路14bでは、この検出用閾値電圧Vdthは、
図4に示すように、ターゲット定電圧Vtgに直流定電圧Vbi2が加算された電圧(Vtg+Vbi2)に規定されている。この場合、直流定電圧Vbi2は、上記した直流定電圧Vbi1と同等の電圧値に規定されている。したがって、検出用閾値電圧Vdthもまた、基準電圧Vr1と同じように、ターゲット定電圧Vtgよりも若干高い電圧に規定されている。なお、検出用閾値電圧Vdthと上記した基準電圧Vr1との大小関係には、同じであってもよいし、いずれが高い状態であってもよい。
【0072】
ただし、符号Cs(「0」)が伝送されている期間において、差動増幅回路41から出力される差分信号Vd0やシングルエンド信号Vdに、高周波ノイズ成分やインパルス状のノイズ成分が重畳する場合があり、差分信号Vd0に重畳したこれらのノイズ成分の電圧値が基準電圧Vr1を上回ったときや、シングルエンド信号Vdに重畳したこれらのノイズ成分の電圧値が検出用閾値電圧Vdthを上回ったときには、電圧生成回路14bは、信号検出処理において、新たなシングルエンド信号Vdの入力が有ったと誤って検出することがある。
【0073】
そこで、本例の電圧生成回路14bでは、符号Cs(「1」)の期間に対応するシングルエンド信号Vdの高電位側電圧となる期間(電圧Vpとなる期間)は、この符号Cs(「1」)の1ビット長だけは少なくとも継続することを考慮して、例えば、電圧Vdが検出用閾値電圧Vdthを下回る状態から検出用閾値電圧Vdth以上の状態になり、かつ検出用閾値電圧Vdth以上となる状態が予め規定された第1規定時間T1(例えば、符号Cs(「1」)の1ビット長の十数%から数十%までの時間)以上継続したことを検出したときに、新たなシングルエンド信号Vdの入力が有ったと判別する構成を採用している。
【0074】
なお、上記の各ノイズ成分の重畳が無いか、有ってもノイズ成分の電圧が極めて低いときには、電圧生成回路14bは、電圧Vdが検出用閾値電圧Vdthを下回る状態から検出用閾値電圧Vdth以上となったときに、検出用閾値電圧Vdth以上の状態が第1規定時間T1以上継続するか否かの検出を行うことなく、新たなシングルエンド信号Vdの入力が有ったと判別する構成を採用しても良いのは勿論である。
【0075】
電圧生成回路14bは、信号検出処理(ステップ52)において新たなシングルエンド信号Vdの入力を検出しなかったときには、ステップ56に移行して、新たなシングルエンド信号Vdの入力無しの状態の継続時間を計測しつつ、この継続時間が予め規定された規定時間T2(例えば、CANなどの通信プロトコルにおける標準フォーマットのデータフレームの数フレームから数十フレーム分に相当する時間)以上になったか否かを判別する。電圧生成回路14bは、この判別の結果、入力無しの状態の継続時間が規定時間T2に達していないときには、ステップ52に移行して信号検出処理を継続する。
【0076】
電圧生成回路14bは、新たなシングルエンド信号Vdの入力無しの状態の継続時間が規定時間T2に達する前に、信号検出処理において新たなシングルエンド信号Vdの入力を検出したときには、続いて、比較処理を実行する(ステップ53)。この比較処理では、電圧生成回路14bは、検出用閾値電圧Vdth以上となっているシングルエンド信号Vdの電圧Vdが高電位側電圧Vpであるとみなして、この高電位側電圧Vp(例えば、
図4,7,8に示すように、第1規定時間T1を経過した時点での電圧Vd)を被比較電圧として、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2と比較する。
【0077】
この比較の結果が、
図7に示す期間(a)におけるシングルエンド信号Vdのように、その高電位側電圧Vpが第2比較電圧Vcp2を上回る(Vp>Vcp2)のときには、電圧生成回路14bは、上昇処理を実行する(ステップ54)。この上昇処理では、電圧生成回路14bは、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2の各電圧データをそれぞれ一段階上昇させる。また、電圧生成回路14bは、一段階上昇させた第1比較電圧Vcp1の電圧データの1/2の電圧データを、一段階上昇させた閾値電圧Vthの電圧データとして生成する。また、電圧生成回路14bは、この上昇処理を実行した後に、ステップ52に移行して信号検出処理を実行することで、次の新たなシングルエンド信号Vdの入力の有無を検出する。
【0078】
電圧生成回路14bは、上昇処理や後述する低下処理において、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2をそれぞれ一段階上昇させたり、一段階低下させたりするときには、この一段階として電圧差Vdfずつ上昇・低下させる。これにより、電圧生成回路14bは、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2を上昇させるときには、一段階上昇させた新たな第1比較電圧Vcp1が一段階上昇させる直前の第2比較電圧Vcp2に一致させ、また第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2を低下させるときには、一段階低下させた新たな第2比較電圧Vcp2が一段階低下させる直前の第1比較電圧Vcp1に一致させることで、第1比較電圧Vcp1を下限とし第2比較電圧Vcp2を上限とする電圧範囲を隙間の生じない状態で変化させる。したがって、高電位側電圧Vpは、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2がそれぞれ初期電圧値Vcp1i,Vcp2iのとき、または第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2がそれぞれの初期電圧値Vcp1i,Vcp2iから互いに一段階(電圧差Vdf)ずつ変化させられたいずれかの電圧値ときに、第1比較電圧Vcp1を下限とし第2比較電圧Vcp2を上限とする電圧範囲内に高電位側電圧Vpが必ず含まれることになる。なお、この一段階を電圧差Vdf(=Vcp2-Vcp1)とする構成を採用しているが、この構成に限定されるものではなく、電圧差Vdfよりも若干少ない電圧値(例えば、数%から十数%小さい電圧値)とする構成を採用することもできる。
【0079】
例えば、
図7に示すように、電圧生成回路14bが、期間(a)の後においても、信号検出処理(ステップ52)、比較処理(ステップ53)および上昇処理(ステップ54)を、信号検出処理において新たなシングルエンド信号Vdの入力を検出する都度実行して、第1比較電圧Vcp1、第2比較電圧Vcp2および閾値電圧Vthの各電圧データを一段階上昇させる動作を繰り返すことにより、第1比較電圧Vcp1、第2比較電圧Vcp2および閾値電圧Vthの各電圧データを期間(b)に示す状態まで徐々に上昇させる。
【0080】
電圧生成回路14bは、この期間(b)に実行した信号検出処理において新たなシングルエンド信号Vdの入力を検出したときの比較処理では、第1比較電圧Vcp1を下限とし第2比較電圧Vcp2を上限とする電圧範囲内に高電位側電圧Vpが含まれる状態(Vcp2≧Vp≧Vcp1)であると検出する。この状態では、第1比較電圧Vcp1は高電位側電圧Vpの近傍の電圧となっていることから、この第1比較電圧Vcp1の1/2である閾値電圧Vthは、高電位側電圧Vpの概ね1/2の電圧値に規定される。電圧生成回路14bは、この電圧値の閾値電圧Vthをアナログ信号に変換してコンパレータ14aに出力する。これにより、コンパレータ14aは、シングルエンド信号Vdを、その振幅の概ね1/2の閾値電圧Vthで二値化して符号特定用信号Sfを出力する。
【0081】
この期間(b)以降は、電極部11a,11bの対応する被覆導線La,Lbへの装着をし直さない限り、交流成分Vd0acの振幅(ピークtoピーク電圧Vp)はほぼ変化せず、よってシングルエンド信号Vdの振幅(電圧(Vp-Vtg)。本例ではVtg=0のため、高電位側電圧Vp)もほぼ変化しない。これにより、この期間(b)以降は、第1比較電圧Vcp1を下限とし第2比較電圧Vcp2を上限とする電圧範囲内に高電位側電圧Vpが含まれる状態が維持される。このため、電圧生成回路14bは、上昇処理を実行することなく(つまり、第1比較電圧Vcp1、第2比較電圧Vcp2および閾値電圧Vthの各電圧データを期間(b)に示す状態に維持したまま)、信号検出処理および比較処理を繰り返し実行する。したがって、コンパレータ14aは、シングルエンド信号Vdを、その振幅(電圧Vp)の概ね1/2の閾値電圧Vthで二値化して符号特定用信号Sfを出力する動作を継続する。
【0082】
一方、シングルエンド信号Vdが
図8に示す期間(a)の状態のときには、電圧生成回路14bは、比較処理(ステップ53)において、高電位側電圧Vpを被比較電圧として第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2と比較することで、高電位側電圧Vpが第1比較電圧Vcp1を下回る状態(Vcp1>Vp)であることを検出して、低下処理を実行する(ステップ55)。この低下処理では、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2の各電圧データをそれぞれ一段階(電圧差Vdf)低下させる。また、電圧生成回路14bは、一段階低下させた第1比較電圧Vcp1の電圧データの1/2の電圧データを、一段階低下させた閾値電圧Vthの電圧データとして生成する。また、電圧生成回路14bは、この低下処理を実行した後に、ステップ52に移行して信号検出処理を実行することで、次の新たなシングルエンド信号Vdの入力の有無を検出する。
【0083】
電圧生成回路14bは、
図8に示すように、期間(a)の後においても、信号検出処理(ステップ52)、比較処理(ステップ53)および低下処理(ステップ55)を、信号検出処理において新たなシングルエンド信号Vdの入力を検出する都度実行して、第1比較電圧Vcp1、第2比較電圧Vcp2および閾値電圧Vthの各電圧データを一段階低下させる動作を繰り返すことにより、第1比較電圧Vcp1、第2比較電圧Vcp2および閾値電圧Vthの各電圧データを期間(b)に示す状態まで徐々に低下させる。
【0084】
電圧生成回路14bは、この期間(b)に実行した信号検出処理において新たなシングルエンド信号Vdの入力を検出したときの比較処理では、第1比較電圧Vcp1を下限とし第2比較電圧Vcp2を上限とする電圧範囲内に高電位側電圧Vpが含まれる状態(Vcp2≧Vp≧Vcp1)であると検出する。この状態では、第1比較電圧Vcp1は高電位側電圧Vpの近傍の電圧となっていることから、この第1比較電圧Vcp1の1/2である閾値電圧Vthは、高電位側電圧Vpの概ね1/2の電圧値に規定される。電圧生成回路14bは、この電圧値の閾値電圧Vthをアナログ信号に変換してコンパレータ14aに出力する。これにより、コンパレータ14aは、シングルエンド信号Vdを、その振幅の概ね1/2の閾値電圧Vthで二値化して符号特定用信号Sfを出力する。
【0085】
この期間(b)以降は、電極部11a,11bの対応する被覆導線La,Lbへの装着をし直さない限り、交流成分Vd0acの振幅(ピークtoピーク電圧Vp)は変化せず、よってシングルエンド信号Vdの振幅(高電位側電圧Vp)も変化しない。これにより、この期間(b)以降は、第1比較電圧Vcp1を下限とし第2比較電圧Vcp2を上限とする電圧範囲内に高電位側電圧Vpが含まれる状態が維持される。このため、電圧生成回路14bは、低下処理を実行することなく(つまり、第1比較電圧Vcp1、第2比較電圧Vcp2および閾値電圧Vthの各電圧データを期間(b)に示す状態に維持したまま)、信号検出処理および比較処理を繰り返し実行する。したがって、コンパレータ14aは、シングルエンド信号Vdを、その振幅(電圧Vp)の概ね1/2の閾値電圧Vthで二値化して符号特定用信号Sfを出力する動作を継続する。
【0086】
このように、この信号生成部14では、シングルエンド信号Vdの振幅(高電位側電圧Vp)が変わったとしても、電圧生成回路14bが電圧生成処理50を実行して、シングルエンド信号Vdの振幅(高電位側電圧Vp)の概ね1/2の閾値電圧Vthを生成し、コンパレータ14aがこの閾値電圧Vthでシングルエンド信号Vdを二値化して符号特定用信号Sfを出力する。
【0087】
また、電圧生成回路14bは、信号検出処理(ステップ52)において新たなシングルエンド信号Vdの入力の有無を検出している状態において、新たなシングルエンド信号Vdの入力無しの状態の継続時間が規定時間T2に達したとステップ56において判別したときには、ステップ51に移行して生成処理を実行することにより、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2を、それぞれの初期電圧値Vcp1i,Vcp2iに戻すと共に、閾値電圧Vthについても、その初期電圧値Vthiに戻す。
【0088】
本例では上記したように、初期電圧値Vcp1i,Vcp2iは、理解の容易のため一例として、Vcp2i>Vpmin>Vcp1iとなるように規定されているが、交流成分Vd0acについてのピークtoピーク電圧Vp(シングルエンド信号Vdの高電位側電圧Vpでもある)の想定される変化範囲(下限値Vpminから上限値Vpmaxまでの範囲)の中間電圧((Vpmin+Vpmax)/2)の近傍に初期電圧値Vcp1i,Vcp2iを予め規定する構成を採用することもできる。この構成を採用したときには、新たなシングルエンド信号Vdの入力無しの状態の継続時間が規定時間T2に達したときに、上記のようにして変更された第1比較電圧Vcp1、第2比較電圧Vcp2および閾値電圧Vthをそれぞれの初期電圧値Vcp1i,Vcp2i,Vthiに戻すことで、その後に入力される新たなシングルエンド信号Vdを二値化するための閾値電圧Vthをこのシングルエンド信号Vdの高電位側電圧Vpの概ね1/2に変更するまでに要する時間を短縮することが可能となる。
【0089】
また、符号化装置3では、信号生成装置2によって生成されて出力された符号特定用信号Sfに基づき、シリアルバスSBを介して伝送されているCANフレームを構成する符号Csを特定すると共に、特定した符号Csで構成される符号列を、シリアルバスSBを介して伝送されているCANフレームと特定して、各種CAN通信対応機器に出力する。これにより、このCAN通信対応機器では、信号読取システム1から出力された(信号読取システム1によってシリアルバスSBから読み取られた)CANフレーム(符号Csの列)に対応して予め規定されている各種の処理が実行される。
【0090】
このように、この信号生成装置2を構成する信号生成部14は、低電圧期間の電圧がターゲット定電圧Vtg(基準定電圧)に規定されたシングルエンド信号Vdを閾値電圧Vthで二値化して符号特定用信号Sfとして出力するコンパレータ14aと、電圧生成回路14bとを備えて構成されて、この電圧生成回路14bが、シングルエンド信号Vdの高電位側電圧Vpを被比較電圧として第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2と比較する比較処理とを実行しつつ、高電位側電圧Vpが第2比較電圧Vcp2を上回るときには、閾値電圧Vth、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2をそれぞれ一段階上昇させる上昇処理を、高電位側電圧Vpが第2比較電圧Vcp2以下で、かつ第1比較電圧Vcp1以上となるまで(第1比較電圧Vcp1を下限とし第2比較電圧Vcp2を上限とする電圧範囲内に高電位側電圧Vpが含まれるまで)実行する。また、高電位側電圧Vpが第1比較電圧Vcp1を下回るときには、閾値電圧Vth、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2をそれぞれ一段階低下させる低下処理を、高電位側電圧Vpが第2比較電圧Vcp2以下で、かつ第1比較電圧Vcp1以上となるまで(この電圧範囲内に高電位側電圧Vpが含まれるまで)実行する。
【0091】
このため、この信号生成部14を含む信号生成装置2、および信号生成装置2を備えた信号読取システム1によれば、シングルエンド信号Vdの高電位側電圧Vpの変化(シングルエンド信号Vdの振幅の変化)に応じて、シングルエンド信号Vdに重畳するノイズ成分の電圧が変化したとしても、電圧生成回路14bが高電位側電圧Vpの変化に応じて閾値電圧Vthを変化させるため、コンパレータ14aが、ノイズ成分の影響を回避しつつ(ノイズ成分の電圧が閾値電圧Vthを超えない状態で)、シングルエンド信号Vdを正確に二値化して符号特定用信号Sfを生成することができる。
【0092】
また、この信号生成部14では、電圧生成回路14bが、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2の中間電圧の概ね1/2(二分の一)の電圧、または第1比較電圧Vcp1の概ね1/2の電圧、または第2比較電圧Vcp2の概ね1/2の電圧を閾値電圧Vthとして生成する。
【0093】
したがって、この信号生成部14を含む信号生成装置2、および信号生成装置2を備えた信号読取システム1によれば、上記したようにノイズ成分の影響を回避しつつ、シングルエンド信号Vdをその振幅の概ね中間位置で常に二値化することができることから、高電位の期間長が符号Csにおける「1」を示す期間の長さに近くなり、かつ低電位の期間長が符号Csにおける「0」を示す期間の長さに近くなる状態で、符号特定用信号Sfを生成することができる。
【0094】
なお、波形整形回路42は、低電圧期間の電圧がターゲット定電圧Vtg(基準定電圧)に規定されたシングルエンド信号Vdに整形(波形整形)して出力する
図3や
図5に示す構成に限定されるものではなく、上記したように、高電圧期間の電圧がターゲット定電圧Vtgに規定されたシングルエンド信号Vdに整形して出力する構成を採用することもできる。この構成の波形整形回路42は、例えば
図9に示す回路構成を含む先行出願において提案した種々の回路構成で実現することができる。また、
図10に示すように、直列回路SCおよびスイッチ制御回路SWCに代えて、ダイオード42xを使用する公知の回路構成を採用して実現することもできる。
【0095】
例えば、
図9に示す構成の波形整形回路42は、この先行出願において開示されたように各構成要素が動作することにより、
図11に示すように、差分信号Vd0(ピークtoピーク電圧Vpの交流成分Vd0
acに直流成分Aが重畳した信号)を、差分信号Vd0の交流成分Vd0
acのピークtoピーク電圧Vpと同等のピークtoピーク電圧Vpで、かつその高電位側電圧(高電圧期間T
Hの電圧)がターゲット定電圧Vtgに規定されたシングルエンド信号Vdに整形(波形整形)して出力部42bから出力する。なお、
図11では、理解の容易のため、シングルエンド信号Vdの振幅を、交流成分Vd0
acの振幅に対して拡大して表している。これにより、この波形整形回路42は、CANフレームを構成する符号Csの変化に対応して電圧が変化する信号、つまり、この符号Csが「1」の期間には信号の電圧が高電位(ターゲット定電圧Vtg)になり、この符号Csが「0」の期間には信号の電圧が低電位(電圧:Vtg+Vp。本例では上記したように電圧Vtgがゼロボルトのため、負極性の電圧Vp)になる負極性のシングルエンド信号Vdを出力する。
【0096】
信号生成部14が、この負極性のシングルエンド信号Vdを入力して、符号特定用信号Sfを生成する動作について説明する。なお、
図3を参照して説明した信号生成部14と同一の構成(コンパレータ14aおよび電圧生成回路14bを備えた構成)を備えているため、構成についての説明は省略する。また、コンパレータ14aは、
図3を参照して説明した信号生成部14と動作が同じであるため説明を省略し、電圧生成回路14bの動作について説明する。
【0097】
電圧生成回路14bは、
図12に示す電圧生成処理60を実行する。この電圧生成処理60では、電圧生成回路14bは、閾値電圧Vth、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2を生成する生成処理(ステップ61)、新たなシングルエンド信号Vdの入力の有無を検出する信号検出処理(ステップ62)、シングルエンド信号Vdの低電圧期間の電圧(CANフレームの符号Csが「0」の期間(低電圧期間T
L)のときのシングルエンド信号Vdの電圧であることから低電位側電圧ともいい、上記したように電圧はVp(負電圧)であることから、低電位側電圧Vpともいう)を被比較電圧として第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2と比較する比較処理(ステップ63)、この比較処理での比較結果に基づいて閾値電圧Vth、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2をそれぞれ一段階上昇させる上昇処理(ステップ64)、およびこの比較処理での比較結果に基づいて閾値電圧Vth、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2をそれぞれ一段階低下させる低下処理(ステップ65)を含む各種処理を実行する。
【0098】
本例ではシングルエンド信号Vdは負極性のパルス信号であることから、この生成処理では、電圧生成回路14bは、ターゲット定電圧Vtg(本例ではゼロボルト)を基準としてそれぞれが負極性となる閾値電圧Vthおよび比較電圧Vcp1,Vcp2を示す各電圧データを生成する。また、電圧生成回路14bは、シングルエンド信号Vdが負極性であることに対応させて、
図13,14に示すように、第1比較電圧Vcp1については、閾値電圧Vthよりも低い電圧(Vth>Vcp1)として生成し、第2比較電圧Vcp2については、第1比較電圧Vcp1よりも低い電圧(Vth>Vcp1>Vcp2)として生成する。また、電圧生成回路14bは、この閾値電圧Vthおよび各比較電圧Vcp1,Vcp2の各電圧値については、それぞれの絶対値が上記したシングルエンド信号Vdが正極性であるときの閾値電圧Vthおよび各比較電圧Vcp1,Vcp2の各電圧値についての絶対値と同等の関係となるように生成する。
【0099】
また、信号検出処理では、電圧生成回路14bは、波形整形回路42から出力される電圧Vdについての電圧データと予め規定された検出用閾値電圧Vdth(例えば、シングルエンド信号Vdが正極性であるときの検出用閾値電圧Vdthと絶対値が同等で、負極性の電圧)を示す電圧データとを比較して、電圧Vdが検出用閾値電圧Vdthを上回る状態(ターゲット定電圧Vtgに規定された高電位側電圧)から検出用閾値電圧Vdth以下の状態(低電位側電圧Vp)になったときに、新たなシングルエンド信号Vdの入力が有ったと判別する。なお、新たなシングルエンド信号Vdの入力の有無を検出する際の他の動作(ステップ66の動作を含む)については、シングルエンド信号Vdが正極性であるときの動作と同等であるため、説明を省略する。
【0100】
また、比較処理では、電圧生成回路14bは、検出用閾値電圧Vdth以下となっているシングルエンド信号Vdの電圧Vdが低電位側電圧Vpであるとみなして、この低電位側電圧Vp(例えば、
図13,14に示すように、第1規定時間T1を経過した時点での電圧Vd)を被比較電圧として、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2と比較する。
【0101】
この比較の結果が、
図13に示す期間(a)におけるシングルエンド信号Vdのように、その低電位側電圧Vpが第1比較電圧Vcp1を上回る状態(Vp>Vcp1)のときには、電圧生成回路14bは、上昇処理を実行する(ステップ64)。この上昇処理では、電圧生成回路14bは、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2の各電圧データをそれぞれ一段階(電圧差Vdf)上昇させる。また、電圧生成回路14bは、一段階上昇させた第1比較電圧Vcp1の電圧データの1/2の電圧データを、一段階上昇させた閾値電圧Vthの電圧データとして生成する。また、電圧生成回路14bは、この上昇処理を実行した後に、ステップ52に移行して信号検出処理を実行することで、次の新たなシングルエンド信号Vdの入力の有無を検出する。
【0102】
図13に示すように、電圧生成回路14bは、期間(a)の後においても、信号検出処理(ステップ62)、比較処理(ステップ63)および上昇処理(ステップ64)を、信号検出処理において新たなシングルエンド信号Vdの入力を検出する都度実行して、第1比較電圧Vcp1、第2比較電圧Vcp2および閾値電圧Vthの各電圧データを一段階上昇させる動作を繰り返すことにより、第1比較電圧Vcp1、第2比較電圧Vcp2および閾値電圧Vthの各電圧データを期間(b)に示す状態まで徐々に上昇させる。
【0103】
電圧生成回路14bは、この期間(b)に実行した信号検出処理において新たなシングルエンド信号Vdの入力を検出したときの比較処理では、第1比較電圧Vcp1を上限とし第2比較電圧Vcp2を下限とする電圧範囲内に低電位側電圧Vpが含まれる状態(Vcp1≧Vp≧Vcp2)であると検出する。この状態では、第1比較電圧Vcp1は低電位側電圧Vpの近傍の電圧となっていることから、この第1比較電圧Vcp1の1/2である閾値電圧Vthは、低電位側電圧Vpの概ね1/2の電圧値に規定される。電圧生成回路14bは、この電圧値の閾値電圧Vthをアナログ信号に変換してコンパレータ14aに出力する。これにより、コンパレータ14aは、シングルエンド信号Vdを、その振幅の概ね1/2の閾値電圧Vthで二値化して符号特定用信号Sfを出力する。
【0104】
この期間(b)以降は、電極部11a,11bの対応する被覆導線La,Lbへの装着をし直さない限り、交流成分Vd0acの振幅(ピークtoピーク電圧Vp)は変化せず、よってシングルエンド信号Vdの振幅(低電位側電圧Vp)も変化しない。これにより、この期間(b)以降は、第1比較電圧Vcp1を上限とし第2比較電圧Vcp2を下限とする電圧範囲内に低電位側電圧Vpが含まれる状態が維持される。このため、電圧生成回路14bは、上昇処理を実行することなく(つまり、第1比較電圧Vcp1、第2比較電圧Vcp2および閾値電圧Vthの各電圧データを期間(b)に示す状態に維持したまま)、信号検出処理および比較処理を繰り返し実行する。したがって、コンパレータ14aは、シングルエンド信号Vdを、その振幅(電圧Vp)の概ね1/2の閾値電圧Vthで二値化して符号特定用信号Sfを出力する動作を継続する。
【0105】
一方、シングルエンド信号Vdが
図14に示す期間(a)の状態のときには、電圧生成回路14bは、比較処理(ステップ63)において、低電位側電圧Vpを被比較電圧として第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2と比較することで、低電位側電圧Vpが第2比較電圧Vcp2を下回る状態(Vcp2>Vp)であることを検出して、低下処理を実行する(ステップ65)。この低下処理では、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2の各電圧データをそれぞれ一段階(電圧差Vdf)低下させる。また、電圧生成回路14bは、一段階低下させた第1比較電圧Vcp1の電圧データの1/2の電圧データを、一段階低下させた閾値電圧Vthの電圧データとして生成する。また、電圧生成回路14bは、この低下処理を実行した後に、ステップ62に移行して信号検出処理を実行することで、次の新たなシングルエンド信号Vdの入力の有無を検出する。
【0106】
電圧生成回路14bは、
図14に示すように、期間(a)の後においても、信号検出処理(ステップ62)、比較処理(ステップ63)および低下処理(ステップ65)を、信号検出処理において新たなシングルエンド信号Vdの入力を検出する都度実行して、第1比較電圧Vcp1、第2比較電圧Vcp2および閾値電圧Vthの各電圧データを一段階低下させる動作を繰り返すことにより、第1比較電圧Vcp1、第2比較電圧Vcp2および閾値電圧Vthの各電圧データを期間(b)に示す状態まで徐々に低下させる。
【0107】
電圧生成回路14bは、この期間(b)に実行した信号検出処理において新たなシングルエンド信号Vdの入力を検出したときの比較処理では、第1比較電圧Vcp1を上限とし第2比較電圧Vcp2を下限とする電圧範囲内に低電位側電圧Vpが含まれる状態(Vcp1≧Vp≧Vcp2)であると検出する。この状態では、第1比較電圧Vcp1は低電位側電圧Vpの近傍の電圧となっていることから、この第1比較電圧Vcp1の1/2である閾値電圧Vthは、低電位側電圧Vpの概ね1/2の電圧値に規定される。電圧生成回路14bは、この電圧値の閾値電圧Vthをアナログ信号に変換してコンパレータ14aに出力する。これにより、コンパレータ14aは、シングルエンド信号Vdを、その振幅の概ね1/2の閾値電圧Vthで二値化して符号特定用信号Sfを出力する。
【0108】
この期間(b)以降は、電極部11a,11bの対応する被覆導線La,Lbへの装着をし直さない限り、交流成分Vd0acの振幅(ピークtoピーク電圧Vp)は変化せず、よってシングルエンド信号Vdの振幅(低電位側電圧Vp)も変化しない。これにより、この期間(b)以降は、第1比較電圧Vcp1を上限とし第2比較電圧Vcp2を下限とする電圧範囲内に低電位側電圧Vpが含まれる状態が維持される。このため、電圧生成回路14bは、低下処理を実行することなく(つまり、第1比較電圧Vcp1、第2比較電圧Vcp2および閾値電圧Vthの各電圧データを期間(b)に示す状態に維持したまま)、信号検出処理および比較処理を繰り返し実行する。したがって、コンパレータ14aは、シングルエンド信号Vdを、その振幅(電圧Vp)の概ね1/2の閾値電圧Vthで二値化して符号特定用信号Sfを出力する動作を継続する。
【0109】
このように、この信号生成部14では、シングルエンド信号Vdの振幅(低電位側電圧Vp)が変わったとしても、電圧生成回路14bが電圧生成処理60を実行して、シングルエンド信号Vdの振幅(低電位側電圧Vp)の概ね1/2の閾値電圧Vthを生成し、コンパレータ14aがこの閾値電圧Vthでシングルエンド信号Vdを二値化して符号特定用信号Sfを出力する。
【0110】
このため、この信号生成部14を含む信号生成装置2によれば、波形整形回路42が上記のような負極性のシングルエンド信号Vdを出力する構成において、このシングルエンド信号Vdの低電位側電圧Vpの変化(シングルエンド信号Vdの振幅の変化)に応じて、シングルエンド信号Vdに重畳するノイズ成分の電圧が変化したとしても、電圧生成回路14bが、低電位側電圧Vpの変化に応じて、低電位側電圧Vpが第2比較電圧Vcp2以上で、かつ第1比較電圧Vcp1以下となるまで(第1比較電圧Vcp1を上限とし第2比較電圧Vcp2を下限とする電圧範囲内に低電位側電圧Vpが含まれるまで)、第1比較電圧Vcp1および第2比較電圧Vcp2を一段階ずつ上昇させたり、低下させたりすることで閾値電圧Vthを変化させるため、コンパレータ14aが、ノイズ成分の影響を回避しつつ(ノイズ成分の電圧が閾値電圧Vthを超えない状態で)、シングルエンド信号Vdを正確に二値化して符号特定用信号Sfを生成することができる。
【0111】
また、上記した信号生成部14は、一対の被覆導線La,Lbで構成される通信路(シリアルバスSB)を介して伝送される2線差動電圧方式のロジック信号(CANフレームなど)に基づき、このロジック信号に対応する符号Csを特定可能な符号特定用信号Sfを生成する信号生成装置2だけでなく、本願出願人の他の先行出願(特願2018-140189号)において提案した信号読取システムを構成する信号生成装置、つまり1本の被覆導線で構成される通信路を介して伝送される単線電圧駆動方式(単線方式)のロジック信号に基づき、このロジック信号に対応する符号を特定可能な符号特定用信号を生成する信号生成装置に対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0112】
1 信号読取システム
2 信号生成装置
14 信号生成部
14a コンパレータ
14b 電圧生成回路
21 電極
42 波形整形回路
La,Lb 被覆導線
Sa ロジック信号
SB 通信路
Sf 符号特定用信号
Vcp1 第1比較電圧
Vcp2 第2比較電圧
Vd シングルエンド信号
Vd0 電圧信号
Vth 閾値電圧