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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】作業足場及びフランジ設置部材
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20230410BHJP
【FI】
E01D21/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019107053
(22)【出願日】2019-06-07
(65)【公開番号】P2020200617
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】592123923
【氏名又は名称】株式会社タカミヤ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丈達 康太
(72)【発明者】
【氏名】松岡 隆之
(72)【発明者】
【氏名】岡 重洋
(72)【発明者】
【氏名】南雲 隆司
(72)【発明者】
【氏名】中村 崇志
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-063346(JP,U)
【文献】特開2006-265899(JP,A)
【文献】特開2008-255689(JP,A)
【文献】特開2013-234554(JP,A)
【文献】特開2015-229840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 21/00
E04G 1/36
E04G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁を構成する鋼製の主桁に設置され、足場板と該足場板を支持する支持架構とを備える作業足場であって、
該支持架構が、橋軸方向に延在して配置される橋軸方向部材と、前記主桁の下フランジに設置されるフランジ設置部材と、を備え、
前記橋軸方向部材の端部には、被連結部材が設置され、
前記フランジ設置部材には、前記被連結部材に連結する複数の連結具が設置され、
複数の前記連結具が、橋軸方向に配置されることを特徴とする作業足場。
【請求項2】
請求項1に記載の作業足場であって、
前記支持架構が、橋軸直交方向に延在して配置される橋軸直交方向部材をさらに備え、
前記橋軸直交方向部材の端部には、前記被連結部材が設置され、
前記フランジ設置部材には、複数の前記連結具が橋軸方向及び橋軸直交方向の各々に配置されることを特徴とする作業足場。
【請求項3】
請求項1または2に記載の作業足場において、
前記支持架構が、前記主桁のウェブと平行に立設され、側面に複数の前記連結具が設置された支柱パイプをさらに備えるとともに、
前記フランジ設置部材が、前記支柱パイプの下端部に接続する接続部を備え、
前記支柱パイプに設置した複数の前記連結具が、前記足場板の設置予定高さ位置であって、橋軸方向及び橋軸直交方向の各々に配置されることを特徴とする作業足場。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の作業足場に用いるフランジ設置部材であって、
前記主桁のウェブと平行に立設され、前記連結具を複数備える取り合いパイプと、
該取り合いパイプに固着され、前記主桁の下フランジを把持するフランジ掴み部材と、を備え、
前記フランジ掴み部材が、締め付けボルトを前記下フランジの下方側に配置したクランプを有していることを特徴とするフランジ設置部材。
【請求項5】
請求項4に記載のフランジ設置部材において、
前記フランジ掴み部材に、前記クランプが複数備えられており、
複数の該クランプが、前記取り合いパイプを中心にして橋軸方向両側に配置されていることを特徴とするフランジ設置部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁を構成する鋼製の主桁に設置される作業足場、及び作業足場に用いるフランジ設置部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、主桁上にコンクリート床版を構築する橋梁工事では、主桁間に作業足場を組んで作業空間を確保している。例えば、特許文献1の従来技術には、2列の主桁の下フランジ間に下段足場を設置するとともに、主桁のウェブの中間位置に桁間内中間足場を設置する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-21022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、コンクリート床版用の型枠設置に関連して設置する作業足場であるため、上記のとおり、下段足場と桁間内中間足場のみが開示されている。しかし、経年劣化が生じた道路橋の既設床版を撤去し取り替える橋梁床版取替工事では、さらに、主桁の上フランジ近傍の高さ位置に上段足場を設置する。
【0005】
つまり、既設床版を撤去したのちに露出する主桁の上面には、コンクリートかすやアンカー鉄筋等の撤去した既設床版の残物が付着している場合が多い。このため、新設床版を設置する前に、主桁間に上段足場を組み、主桁上面の残物をディスクサンダーやグラインダーにより除去するケレン作業を行う。
【0006】
このような下段足場、桁間内中間足場、及び上段足場を、それぞれ作業内容に対応した高さ位置に設置しようとすると、3つの足場ごとに足場板を支持する架構を構築しなければならず、主桁間の狭隘なスペースで相互の干渉を避けつつ組み立てる作業は、煩雑となりやすい。また、これら足場板を支持する架構は一般に、複数の単管支柱を様々な形状のクランプを用いて連結し組立てるため、部材点数が増加しやすく重量が嵩むだけでなく、作業手間も多大となる。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、簡略な構成で迅速に組立てることの可能な作業足場、及び作業足場に用いるフランジ設置部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、本発明の作業足場は、橋梁を構成する鋼製の主桁に設置され、足場板と該足場板を支持する支持架構とを備える作業足場であって、該支持架構が、橋軸方向に延在して配置される橋軸方向部材と、前記主桁の下フランジに設置されるフランジ設置部材と、を備え、前記橋軸方向部材の端部には、被連結部材が設置され、前記フランジ設置部材には、前記被連結部材に連結する複数の連結具が設置され、複数の前記連結具が、橋軸方向に配置されることを特徴とする。
【0009】
本発明の作業足場によれば、フランジ設置部材に複数の連結具が設置され、橋軸方向部材に被連結部材が設置される。これにより、主桁の下フランジに作業足場の設置基準点をあらかじめ設定しておき、この位置に先行してフランジ設置部材を、複数の連結具が橋軸方向を向くように設置することで、橋軸方向部材を定規代わりに利用して距離を測りつつ、後行のフランジ設置部材の位置決め及び設置作業を行うことが可能となる。
【0010】
また、先行及び後行して主桁に設置したフランジ設置部材の連結具に、橋軸方向部材の被連結部材を設置するのみで、これらを容易に連結することもでき、足場組立て作業の効率化を大幅に向上することが可能となる。
【0011】
本発明の作業足場は、前記支持架構が、橋軸直交方向に延在して配置される橋軸直交方向部材をさらに備え、前記橋軸直交方向部材の端部には、前記被連結部材が設置され、前記フランジ設置部材には、複数の前記連結具が橋軸方向及び橋軸直交方向の各々に配置されることを特徴とする。
【0012】
本発明の作業足場によれば、フランジ設置部材、橋軸方向部材及び橋軸直交方向部材を用いて、少ない作業員でかつ迅速に主桁間を架け渡す作業足場を設置することができ、作業足場の組立てに係る、工期短縮、工費削減及び安全性の向上を図ることが可能となる。
【0013】
本発明の作業足場は、前記支持架構が、前記主桁のウェブと平行に立設され、側面に複数の前記連結具が設置された支柱パイプをさらに備えるとともに、前記フランジ設置部材が、前記支柱パイプの下端部に接続する接続部を備え、前記支柱パイプに設置した複数の前記連結具が、前記足場板の設置予定高さ位置であって、橋軸方向及び橋軸直交方向の各々に配置されることを特徴とする。
【0014】
本発明の作業足場によれば、支持架構がさらに支柱パイプを備えることから、支持架構を高さ方向に増設することができる。したがって、支柱パイプにおける、桁間中段足場及び上段足場各々の足場板を配置したい高さ位置に連結具を設置し、この連結具を用いて橋軸方向部材及び橋軸直交方向部材を設置することにより、桁間中段足場及び上段足場の支持架構を、別途組立てることなく兼用できる。したがって、橋梁に係る工事の進捗状況にあわせて、作業内容に対応した高さの異なる作業足場を組立てる際の作業効率を大幅に向上することが可能となる。
【0015】
本発明のフランジ設置部材は、本発明の作業足場に用いるフランジ設置部材であって、前記主桁のウェブと平行に立設され、前記連結具を複数備える取り合いパイプと、該取り合いパイプに固着され、前記主桁の下フランジを把持するフランジ掴み部材と、を備え、前記フランジ掴み部材が、締め付けボルトを前記下フランジの下方側に配置したクランプを有していることを特徴とする。
【0016】
本発明のフランジ設置部材によれば、フランジ掴み部材がクランプにより構成され、締め付けボルトを前記下フランジの下方側に配置することから、作業員の目線近傍に主桁の下フランジが位置する場合にも、締め付けボルトを操作する際の作業性が良く、主桁の下フランジを容易に把持することが可能となる。
【0017】
また、締め付けボルトを下フランジの下方側に配置することにより、締め付けボルトに作業足場の荷重が伝達されることがなく、安定して下フランジを挟持することが可能となる。
【0018】
さらに、フランジ設置部材に、橋軸方向部材、橋軸直交方向部材及び支柱パイプを直接設置できることから、別途クランプ等の金具を用いる必要もないため部材点数を大幅に削減することができ、経済的であるとともに、作業足場自体の軽量化を図ることが可能となる。
【0019】
本発明のフランジ設置部材は、前記フランジ掴み部材に、前記クランプが複数備えられており、複数の該クランプが、前記取り合いパイプを中心にして橋軸方向両側に配置されていることを特徴とする。
【0020】
本発明のフランジ設置部材によれば、クランプを複数設置することにより、作業足場を組立てた際に取り合いパイプに作用する荷重を、分散して支持することが可能になる。また、これら複数のクランプが、取り合いパイプを中心にして橋軸方向両側に配置されることで、取り合いパイプに、鉛直方向に加えて水平方向の外力が作用した際にも、安定して支持することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、足場板が支持される支持架構が、端部に被連結部材を備えた橋軸方向部材と、被連結部材に連結する複数の連結具を備えた主桁の下フランジに設置されるフランジ設置部材と、を備えるため、主桁に設置したフランジ設置部材に橋軸方向部材を容易に連結でき、簡略な構成で迅速に作業足場を組み立てることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態における橋梁の主桁間に設置する作業足場の概略を示す図である。
図2】本発明の実施の形態における主桁の下フランジ近傍高さに足場板を設置した作業足場を示す図である。
図3】本発明の実施の形態における主桁の下フランジ近傍高さに足場板を設置した作業足場の側面を示す図である。
図4】本発明の実施の形態における橋軸方向部材及び橋軸直交部材とフランジ設置部材との連結構造を示す図である。
図5】本発明の実施の形態におけるフランジ設置部材の詳細を示す図である。
図6】本発明の実施の形態における主桁の中間高さに足場板を設置した作業足場を示す図である。
図7】本発明の実施の形態における主桁の上フランジ近傍高さに足場板を設置した作業足場を示す図である。
図8】本発明の実施の形態における作業足場の組立て手順を示す図(その1)である。
図9】本発明の実施の形態における作業足場の組立て手順を示す図(その2)である。
図10】本発明の実施の形態における作業足場の組立て手順を示す図(その3)である。
図11】本発明の実施の形態における橋梁の端部に設置する作業足場の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の作業足場、及び作業足場に用いるフランジ設置部材は、主桁にI型鋼よりなる鋼桁が採用された橋梁の工事で使用する際に適したものである。以下に、本発明の作業足場及びフランジ設置部材の詳細を、図1~11を用いて説明する。
【0024】
図1で示すような、道路橋Bの隣り合う主桁50間に設置される作業足場1は、作業員が往来する足場板2と、足場板2を支持する支持架構3とにより構成され、作業内容に応じて様々な高さ位置に足場板2を設置することができるものである。
【0025】
本実施の形態では、道路橋Bの床版取替工事に使用する場合であって主桁50の桁高が大きく、作業が進むにつれて足場板2が、主桁50の下フランジ501近傍高さP1、主桁50の中間高さP2、及び主桁50の上フランジ近傍高さP3の、3つの高さ位置に必要となる場合を事例に挙げ、以下にその詳細を説明する。
【0026】
≪足場板を主桁の下フランジ近傍高さP1に設置する場合≫
図2及び図3で示す作業足場1は、足場板2を主桁50の下フランジ501近傍高さP1に設置した場合であり、支持架構3は、軸線直交方向部材である水平材8及び突当て金具9と、橋軸方向部材である水平パイプ10と、これら軸線直交方向部材及び橋軸方向部材の取り合いに配置されるフランジ設置部材4と、により構成されている。
【0027】
<橋軸直交方向部材および橋軸方向部材>
水平材8は、図3で示すように、隣り合う主桁50に架け渡されるように配置される橋軸直交方向部材であり、トラス構造のビーム材81と、ビーム材81の両端部に設置された一対の端部部材82と、により構成されている。
【0028】
ビーム材81は、上弦材811及び下弦材812が中空の管状部材に形成され、端部部材82は、ビーム材81の上弦材811から出没自在な上部パイプ821と、下弦材812から出没自在な下部パイプ822を備えている。そして、端部部材82は、ビーム材81に対して適宜摺動させて出没させることができ、水平材8の長さ調整部材として機能する。
【0029】
なお、ビーム材81の両端部に配置される一対の端部部材82は、両者ともに水平材8の長さ調整部材として機能させてもよいが、いずれか一方のみを機能させ、他方の端部部材82はビーム材81に対して摺動不能に固着してもよい。
【0030】
また、端部部材82は、上部パイプ821と下部パイプ822が、これらと直交して配置される接続材823を介して接続されており、摺動時には連動する。さらに、水平材8が所望の部材長に調整された時点でその部材長を維持するよう、端部部材82はビーム材81に固定可能となっている。
【0031】
突当て金具9は、図3で示すように、主桁50のウェブ503とフランジ設置部材4との間に配置される橋軸直交方向部材であり、円筒状の雌ネジ材91と雌ネジ材91に螺合する雄ネジ棒92と、雄ネジ棒92の先端に装着される押圧部材93とを備える。雌ネジ材91は軸線が、水平材8のビーム材81を構成する上弦材811の軸線と同一直線を形成するよう配置され、一端がフランジ設置部材4に連結される。そして、他端にはメスネジ(図示せず)が形成されることで、このメスネジに螺合する雄ネジ棒92が突当て金具9の長さ調整部材として機能する。
【0032】
これにより、突当て金具9の部材長が調整され、雄ネジ棒92の先端に装着されている押圧部材93を、ウェブ503に突当てることが可能となる。なお、押圧部材93は、主桁50のウェブと対向する面が平滑面に形成されており、突当て金具9から作用する外力を、押圧部材93を介して主桁50のウェブ503にスムーズに伝達する。
【0033】
水平パイプ10は、図2で示すように、主桁50の延在方向と平行に延在する橋軸方向部材であって中空パイプよりなる。その両端部には、図4で示すような被連結部材11が設置され、後述するフランジ設置部材4に形成した連結具14に対して連結させる構造としている。
【0034】
水平パイプ10に設置した被連結部材11は、同様の形状のものが、水平材8の端部部材82における上部パイプ821の先端部、及び突当て金具9を構成する雌ネジ材91の一端にも設置されている。
【0035】
<フランジ設置部材>
以下に、フランジ設置部材4と、フランジ設置部材4に形成される連結具14及び被連結部材11について、説明する。
【0036】
フランジ設置部材4は、図3で示すように、主桁50のウェブ503と平行に立設されるパイプ状の取り合いパイプ5と、取り合いパイプ5に固着され、主桁50の下フランジ501を把持するフランジ掴み部材6とを備え、フランジ掴み部材6は、繋ぎ材61、繋ぎ材61を介して連結される複数のクランプ62と、を備える。
【0037】
クランプ62は、図5で示すように、主桁50の下フランジ501を把持することの可能な、いわゆる締め具であればいずれを採用してもよいが、本実施の形態では、C型クランプを採用している。クランプ62は、締め付けボルト621を下フランジ501の下方側に配置した状態で、橋軸方向に2つ並列配置されており、クランプ本体622における下フランジ501の上方側に位置する上端側どうしが、繋ぎ材61て連結されている。
【0038】
このように、クランプ62の締め付けボルト621を下フランジ501の下方側に配置することで、作業員の目線近傍に主桁50の下フランジ501が位置する場合に、締め付けボルト621を操作する際の作業性が良く、容易にフランジ設置部材4を主桁50の下フランジ501に設置する作業を実施することが可能となる。また、締め付けボルト621を下フランジ501の下方側に配置することにより、締め付けボルト621に作業足場1の荷重が伝達されることがないため、安定して下フランジ501を挟持することが可能となる。
【0039】
さらに、本実施の形態ではクランプ62を2つ用いて、作業足場1を組立てた際に取り合いパイプ5に作用する荷重を分散して支持させるとともに、これら2つのクランプ62を、取り合いパイプ5を中心に橋軸方向両側に配置し、取り合いパイプ5に、鉛直方向に加えて水平方向の外力が作用した際にも、安定して支持させている。なお、クランプ62は2つに限定されるものではなく、取り合いパイプ5を中心にして橋軸方向両側に均等な数量が配置されれば、その数量は何れでもよい。
【0040】
一方、取り合いパイプ5は、図4及び図5で示すように、水平パイプ10と同様の中空パイプよりなり、側面にフランジ掴み部材6を安定して固着するための補助部材71及び補強部材72と、水平材8、突当て金具9、及び水平パイプ10の端部に設置した被連結部材11と連結可能に形成された、連結具14とを備える。
【0041】
補助部材71は、取り合いパイプ5の側面にフランジ掴み部材6の設置面を形成するために用いる平板材であり、裏面が取り合いパイプ5に固着され、表面にフランジ掴み部材6が固着されている。また、補強部材72は、補助部材71の側面とフランジ掴み部材6を構成する繋ぎ材61の上端部との間に配置されるリブであり、繋ぎ材61の変形を抑制する機能を有している。
【0042】
連結具14は、断面がコの字状に形成された金具であり、コの字の開口側を取り合いパイプ5の側面に固定することにより、取り合いパイプ5の軸心と平行な方向に貫通する被連結部材11が挿通可能な縦孔141を形成している。本実施の形態において、連結具14は4つを1組とし、図6(b)で示すように、フランジ設置部材4を主桁50の下フランジ501に設置した際、足場板2の設置を予定している主桁50の下フランジ501近傍高さP1であって、橋軸方向及び橋軸直交方向に向く位置にそれぞれ配置されるよう、取り合いパイプ5の側面に設置されている。
【0043】
一方、被連結部材11は、図4をみると、連結具14の縦孔141に挿入される挿入部12と、縦孔141に挿入された挿入部12の抜出しを防止する抜出し防止具13とを備える。
【0044】
挿入部12は、縦孔141の内周面に接する外形形状を有し、縦孔141に挿入された際に、縦孔141の深さより十分長い部材長を有する棒状部材により形成されている。そして、例えば水平パイプ10をみると、挿入部12は、長手方向が水平パイプ10の長手方向と直交するように配置され、基端部が水平パイプ10の端部に設置されている。
【0045】
これにより、被連結部材11を水平パイプ10から垂下させる姿勢で挿入部12の先端から被連結部材11を、連結具14の縦孔141に挿入すると、挿入部12が縦孔141を貫通し、水平パイプ10がフランジ設置部材4に連結される。
【0046】
また、挿入部12の側面には挿入部12を縦孔141に挿入した状態で、挿入部12の先端部と縦孔141の下端部との間に開口121が形成されており、開口121から出没自在となるように、抜出し防止具13が挿入部12に収納されている。
【0047】
抜出し防止具13は、挿入部12に設けた開口121から出没するクサビ部材131と、クサビ部材131の一端と挿入部12とを連結する回動軸ピン132と、クサビ部材131の他端と挿入部12との間に介装されるバネ等の付勢部材(図示せず)と、を備えている。なお、クサビ部材131の一端は挿入部12の先端側に配置され、他端は挿入部12の基端側に配置される。
【0048】
このような構成の被連結部材11は通常時、挿入部12の側面から抜出し防止具13のクサビ部材131の他端が突出し、連結具14の縦孔141より断面が大きくなっており、挿入部12を縦孔141に挿入する動作で、クサビ部材131が挿入部12内に収納される。しかし、クサビ部材131は縦孔141を通過したのち再び突出し、挿入部12を縦孔141から引き抜く動作では、クサビ部材131が挿入部12から突出した状態を維持し、挿入部12の抜けを防止する。
【0049】
上記の被連結部材11は、水平材8では、端部部材82を構成する上部パイプ821の両端部各々に設置されており、挿入部12の長手方向が上部パイプ821の軸線と直交し、かつ抜出し防止具13どうしが互いに対向するように配置されている。
【0050】
また、突当て金具9には、雌ネジ材91の一端に被連結部材11が設置されており、挿入部12の長手方向が雌ネジ材91の軸線と直交し、かつ、抜出し防止具13が雄ネジ棒92の先端に装着された押圧部材93と対向するように配置されている。
【0051】
したがって、水平パイプ10と同様に水平材8及び突当て金具9は、被連結部材11を垂下させる姿勢で、挿入部12の先端から被連結部材11を連結具14の縦孔141に挿入することによりフランジ設置部材4に連結される。これにより、水平材8、突当て金具9及び水平パイプ10は、フランジ設置部材4を介して主桁50の下フランジ501近傍高さP1で互いに連結され、図2で示すような、足場板2を支持する支持架構3となる。
【0052】
≪足場板を主桁の中間高さP2及び上フランジ近傍高さP3に設置する場合≫
次に、足場板2を図1で示すような、主桁50の中間高さP2、及び主桁50の上フランジ近傍高さP3に設置する場合の支持架構3について説明する。
【0053】
図6(a)(b)で示す作業足場1は、足場板2を、主桁50の桁間中間高さP2に設置した場合であり、図7で示す作業足場1は、足場板2を、主桁50の上フランジ近傍高さP3に設置した場合である。これらの支持架構3は、上述した水平材8、突当て金具9、水平パイプ10、及びフランジ設置部材4と、支柱パイプ15とにより構成されている。
【0054】
<支柱パイプ>
支柱パイプ15は、図6(b)で示すように、フランジ設置部材4を介して主桁50のウェブ503と平行に立設するように配置される支柱であり、部材長は主桁50の桁成と同程度に形成され、その材料はフランジ設置部材4の取り合いパイプ5と同様の中空パイプを採用している。また、図5で示すように、支柱パイプ15の一方の端部には、縮径部151が形成されている。
【0055】
このため、取り合いパイプ5の接続部となる上端部と支柱パイプ15とは、取り合いパイプ5の上端部開口に、支柱パイプ15の縮径部151を差し込むことにより、連結することができる。したがって、支柱パイプ15は、足場板2を主桁50の下フランジ501近傍高さP1に設置するために主桁50で組立てた支持架構3に対して、フランジ設置部材4を利用して継ぎ足す態様で用いることができる。
【0056】
また、支柱パイプ15には、前述した連結具14を4つで一組として、高さ方向に間隔を有して複数組設置している。これら4つの連結具14は、主桁50の下フランジ501に設置されたフランジ設置部材4に対して支柱パイプ15を接続した状態で、橋軸方向及び橋軸直交方向に向く位置にそれぞれ設置されている。
【0057】
これら4つの連結具14の組合わせは、例えば、50cm間隔等の一定の間隔で設置してもよいし、足場板2の設置予定高さである主桁50の中間高さP2、及び主桁50の上フランジ近傍高さP3に設置してもよい。
【0058】
こうすると、足場板2を主桁50の下フランジ501近傍高さP1に設置するために組立てた支持架構3に対して、支柱パイプ15を継ぎ足し、支柱パイプ15に設置した連結具14を利用して、新たな水平材8、突当て金具9、及び水平パイプ10を連結し、支持架構3を高さ方向に増設することができる。
【0059】
このように、足場板2を主桁50の下フランジ501近傍高さP1に設置するために組立てた支持架構3を、主桁50の中間高さP2、及び主桁50の上フランジ近傍高さP3に足場板2を設置するための支持架構3として兼用させることができ、橋梁に係る施工段階ごとに、作業内容に対応した高さの異なる作業足場1を組立てる際の作業効率を大幅に向上することが可能となる。
【0060】
≪作業足場の組立て≫
次に、道路橋Bの床版取替工事の進捗状況に対応させて、主桁50の下フランジ501近傍高さP1、主桁50の中間高さP2、及び主桁50の上フランジ近傍高さP3に足場板2を設置した作業足場1の組立て手順を、以下に説明する。
【0061】
図8(a)で示すように、隣り合う主桁50間に作業足場1を組立てる作業を実施するに先立ち、施工計画段階であらかじめ、主桁50各々の下フランジ501上に、作業足場1の設置基準点A、A’を設定しておき、この設置基準点A、A’各々にフランジ設置部材4を設置する。
【0062】
フランジ設置部材4は、図5で示すように、取り合いパイプ5が主桁50のウェブと平行に立設されるよう、かつ連結具14の縦孔141がそれぞれ橋軸方向及び橋軸直交方向を向くようにして、フランジ掴み部材6を用いて下フランジ501を把持する。
【0063】
次に、図8(b)で示すように、一方の主桁50の下フランジ501に対して、先行して設置したフランジ設置部材4を基準にして、水平パイプ10を定規代わりに用いて、後行して設置するフランジ設置部材4を位置決めする。これにより、計測作業を行わなくても、フランジ設置部材4を橋軸方向に等間隔で配置することができ、作業効率を大幅に向上することが可能となる。
【0064】
こうして位置決めしたフランジ設置部材4を下フランジ501に設置し、水平パイプ10を連結する。水平パイプ10は、両端部に設置されている被連結部材11を垂下させる姿勢にして、隣り合うフランジ設置部材の各々に設置されている橋軸方向に設置された連結具14の縦孔141に、被連結部材11の挿入部12を上方から差し込む。同様に、他方の主桁50の下フランジ501にも、同様の作業を行う。
【0065】
上記の橋軸方向部材である水平パイプ10を連結する作業と同時、もしくは前後して、橋軸直交方向部材の連結作業を行う。つまり、隣り合う主桁50各々に設置されているフランジ設置部材4に架け渡すようにして、水平材8を連結する。
【0066】
水平材8は、前述したように、両端部に設置されている被連結部材11を垂下させる姿勢にして、フランジ設置部材4の各々に設置されている橋軸直交方向に設置された連結具14の縦孔141に、被連結部材11の挿入部12を上方から差し込む。このとき、水平材8の部材長が不足している場合には、端部部材82をビーム材81に対して適宜摺動させ、長さ調整を行う。
【0067】
また、フランジ設置部材4各々に、突当て金具9を連結する。突当て金具9も端部に設置されている被連結部材11を垂下させる姿勢にして、フランジ設置部材4各々に設置されている橋軸直交方向に設置された連結具14の縦孔141に、被連結部材11の挿入部12を上方から差し込む。
【0068】
この後、突当て金具9の雄ネジ棒92を適宜回転させて雌ネジ材91からの突出量を適宜調整し、押圧部材93を主桁50のウェブ503に所定の押圧力が作用するまで突当てる。
【0069】
上記の手順でフランジ設置部材4を介して、水平材8、突当て金具9、及び水平パイプ10を連結する作業を順次行い、図9(a)で示すように、支持架構3を組立てる。こうして組立てられた支持架構3は、フランジ設置部材4及び突当て金具9により、安定した状態で主桁50間に強固に固定されている。
【0070】
この後、支持架構3に足場板2を設置することにより、図2で示すように、作業員が往来する足場板2が主桁50の下フランジ501近傍高さP1に形成された作業足場1が設置される。
【0071】
道路橋Bの床版取替工事に係る施工のうち、主桁50の下フランジ501近傍高さP1に形成された作業足場1を使用して実施する施工工程が終了したのち、次の施工工程で使用する、主桁50の中間高さP2に足場板2が形成された作業足場1を組立てる。
【0072】
図9(b)で示すように、すでに主桁50間に設置されている支持架構3のフランジ設置部材4各々に、支柱パイプ15を接続する。支柱パイプ15は、前述したように、縮径部151を取り合いパイプ5の接続部である上端部開口に挿入することにより接続して立設し、また、立設した支柱パイプ15の側面に設置された連結具14は、主桁50の中間高さP2であって橋軸方向及び橋軸直交方向に配置する。
【0073】
こののち、この連結具14を利用してこれまでと同様の手順で、新たな水平材8、突当て金具9、及び水平パイプ10を支柱パイプ15に連結していき、図10(a)で示すように、支持架構3を組立てる。この後、支持架構3に足場板2を設置することにより、図6(a)で示すような、主桁50の中間高さP2に作業員が往来する足場板2が形成された、一般に桁間中段足場と称される作業足場1が設置される。
【0074】
図6(a)で示すような、桁間中段足場を使用して実施する施工工程が終了したのち、次の施工工程で使用する、主桁50の上フランジ近傍高さP3に足場板2が形成された作業足場1を組立てる。
【0075】
図10(a)で示すように、すでに主桁50間に設置されている支持架構3には、主桁50の上フランジ近傍高さP3に至る支柱パイプ15が立設された状態にある。そして、支柱パイプ15の側面には、主桁50の上フランジ近傍高さP3であって橋軸方向及び橋軸直交方向に連結具14が配置されている。
【0076】
したがって、この連結具14を利用して、これまでと同様の手順で、新たな水平材8、突当て金具9、及び水平パイプ10を支柱パイプ15に連結するのみで、図10(b)で示すように、支持架構3を組立てることができる。この後、支持架構3の最上段に足場板2を設置することにより、図7で示すような、主桁50の上フランジ近傍高さP3に作業員が往来する足場板2が形成された、一般に上段足場と称される作業足場1が設置される。
【0077】
上記のとおり、本発明の作業足場1及び作業足場1に用いるフランジ設置部材4によれば、隣り合う主桁50の各々に、作業足場1の設置基準点A,A’をあらかじめ設定しておき、この位置に先行してフランジ設置部材4を設置することで、測量等を行うことなく、水平パイプ10を定規代わりに利用して距離を測りつつ、後行して設置するフランジ設置部材4の位置決め及び設置作業を行うことができる。
【0078】
また、被連結部材11を連結具14に差し込むのみで、別途クランプ等の金具を用いることなく容易に、水平材8、突当て金具9、及び水平パイプ10をフランジ設置部材4に連結できる。これにより、少ない作業員でかつ迅速に支持架構3を組立てることができ、足場組立て作業の効率化を大幅に向上することが可能となる。
【0079】
また、部材点数も減少するため、経済的かつ作業足場自体の軽量化を図ることができる。このため、作業足場の組立てに係る、工期短縮、工費削減及び安全性の向上を図ることが可能となる。
【0080】
さらに、主桁50の中間高さP2に足場板2を配置する場合や、主桁50の上フランジ近傍高さP3に足場板2を配置する場合の支持架構3を、別途組立てることなく兼用できる、したがって、橋梁に係る工事の進捗状況に対応させて、作業内容に応じた高さの異なる作業足場1を組立てる際の作業効率を大幅に向上できる。
【0081】
本発明の作業足場及びフランジ設置部材は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0082】
例えば、本実施の形態では、橋軸方向に水平パイプ10が2本分の長さの作業足場1を設置したが、その長さはこれに限定されるものではなく、1本分もしくは3本以上の長さに組立ててもよい。
【0083】
また、本実施の形態では、主桁50間に3段階の高さに対応する作業足場1を設置したが、例えば、下フランジ501近傍高さP1と中間高さP2のみ、もしくは、下フランジ501近傍高さP1と上フランジ近傍高さP3のみに、足場板2を設けるものであってもよい。なお、上フランジ近傍高さP3に対応する作業足場が不要な場合には、支柱パイプ15に、主桁50の桁成より短尺な部材長のものを採用すればよい。
【0084】
また、本実施の形態では、フランジ設置部材4を主桁50間に設置する作業足場1に適用する場合を事例に挙げたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、図11で示すような、橋梁Bの端部に設置する跳ね出し足場に適用してもよい。
【0085】
具体的には、主桁50の下フランジ501にフランジ設置部材4を設置し、隣り合うフランジ設置部材4に水平パイプ10を連結している。また、フランジ設置部材4各々に支柱パイプ15を接続して、これを跳ね出し足場の支柱とする。この場合にも、水平パイプ10を定規代わりに使用してフランジ設置部材4の位置決め作業を実施できるため、組立て作業を手間を大幅に削減できる。
【符号の説明】
【0086】
1 作業足場
2 足場板
3 支持架構
4 フランジ設置部材
5 取り合いパイプ
6 フランジ掴み部材
61 繋ぎ材
62 クランプ
71 補助部材
72 補強部材
8 水平材
81 ビーム材
811 上弦材
812 下弦材
82 端部部材
821 上部パイプ
822 下部パイプ
823 接続材
9 突当て金具
91 雌ネジ材
92 雄ネジ棒
93 押圧部材
10 水平パイプ
11 被連結部材
12 挿入部
13 抜出し防止具
14 連結具
141 縦孔
15 支柱パイプ

50 主桁
501 下フランジ
502 上フランジ
503 ウェブ

B 橋梁
S 主体足場
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11