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特許7258672魚釣用電動リールのモータ駆動制御装置及びそれを備えた魚釣用電動リール、モータ駆動制御方法、及びモータ駆動制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】魚釣用電動リールのモータ駆動制御装置及びそれを備えた魚釣用電動リール、モータ駆動制御方法、及びモータ駆動制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/017 20060101AFI20230410BHJP
【FI】
A01K89/017
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019114902
(22)【出願日】2019-06-20
(65)【公開番号】P2021000019
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】森 成秀
(72)【発明者】
【氏名】林 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】原口 仁志
(72)【発明者】
【氏名】村山 聡
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-116837(JP,A)
【文献】特開2004-261192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/017
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプールを回転駆動するモータの回転を停止させる際に、前記モータの回路を短絡させる駆動制御部と、
前記モータの回転速度を検出する回転速度検出部とを備え
前記駆動制御部は、前記回転速度検出部により検出された回転速度に基づいて、前記モータの回転を停止させる際に前記モータの回路を短絡させるか否かを決定する
魚釣用電動リールのモータ駆動制御装置。
【請求項2】
前記駆動制御部は、前記スプールについての所定の回転駆動パターンを示す駆動制御情報に基づいてスプールを回転駆動させる場合において前記モータの回転を停止させる際に、前記モータの回路を短絡させる
請求項1に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項3】
スプールと、
前記スプールを回転駆動するモータと、
前記モータの回転を停止させるにあたり、前記モータの回路を短絡させる駆動制御部と
前記モータの回転速度を検出する回転速度検出部とを備え
前記駆動制御部は、前記回転速度検出部により検出された回転速度に基づいて、前記モータの回転を停止させる際に前記モータの回路を短絡させるか否かを決定する
魚釣用電動リール。
【請求項4】
スプールを回転駆動するモータの回転を停止させる際に、前記モータの回路を短絡させる駆動制御ステップと、
前記モータの回転速度を検出する回転速度検出ステップとを備え
前記駆動制御ステップは、前記回転速度検出ステップにより検出された回転速度に基づいて、前記モータの回転を停止させる際に前記モータの回路を短絡させるか否かを決定する
魚釣用電動リールのモータ駆動制御方法。
【請求項5】
魚釣用電動リールのモータ駆動制御装置としてのコンピュータを、
スプールを回転駆動するモータの回転を停止させる際に、前記モータの回路を短絡させる駆動制御部
前記モータの回転速度を検出する回転速度検出部
として機能させるためのプログラムであって、
前記駆動制御部は、前記回転速度検出部により検出された回転速度に基づいて、前記モータの回転を停止させる際に前記モータの回路を短絡させるか否かを決定する
モータ駆動制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用電動リールのモータ駆動制御装置及びそれを備えた魚釣用電動リール、モータ駆動制御方法、及びモータ駆動制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
釣糸の巻取り時に、演算された繰出糸長から巻取糸長を差し引いた残量糸長と設定糸長とを順次比較しながら、スプールを回転駆動する直流モータの速度を巻取終端に向けて徐々に段階的に減速させることで、竿先部の跳ね上がりを防止するようにされた魚釣用電動リールが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、釣糸の巻き上げと停止とを繰り返すことで魚を誘うシャクリ釣りにおいて、釣糸の巻き上げと停止とに応じたモータの駆動と停止のパターンを記憶し、記憶したパターンに従ってモータを駆動する釣用リールの自動シャクリ制御装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公平8-8826号公報
【文献】特開平3-119941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ジグなどの疑似餌を用いた釣りでは、例えば短い時間間隔で釣糸の急速な巻き上げと急停止を繰り返すようにしたさそいが有効な場合がある。
しかしながら、スプールを回転駆動するモータは、回転子等の慣性により、停止時にオーバーランが発生する。このため、上記のように釣糸の巻き上げの急峻な停止を含むさそいのパターンをモータの駆動により行おうとしても、オーバーランの発生により釣糸の巻き上げが急停止することにはならず、要求されるさそいのパターンが得られにくい。
【0005】
特許文献1に記載される魚釣用電動リールではモータを徐々に減速させることから、オーバーランの防止は可能であるが、スプールの回転を急峻に停止させることは不可能であるため、釣糸の巻き上げの急峻な停止を含むさそいのパターンを実現することはできない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、釣糸の巻き上げを急峻に停止させる必要のある場合に、スプールを回転駆動するモータを急峻に停止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するための本発明の一態様は、スプールを回転駆動するモータの回転を停止させる際に、前記モータの回路を短絡させる駆動制御部を備える魚釣用電動リールのモータ駆動制御装置である。
上記構成によれば、スプールを回転駆動するモータの回転を停止させるにあたり、モータの回路を短絡させることで、モータを負荷、あるいは発電機として機能させることになる。この結果、モータの回転を急峻に停止させて、釣糸の巻き上げも急停止させることが可能になる。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記のモータ駆動制御装置であり、前記駆動制御部は、前記スプールについての所定の回転駆動パターンを示す駆動制御情報に基づいてスプールを回転駆動させる場合において前記モータの回転を停止させる際に、前記モータの回路を短絡させる。
上記構成によれば、スプールについての所定の回転駆動パターンを示す駆動制御情報に基づいてスプールを回転駆動させることで、仕掛けにさそいとしての動きを自動で与える自動さそい動作が得られる。そのうえで、自動さそい動作のもとで要求される仕掛けの動きを得るために釣糸の巻き上げを急停止させることが求められる場合に対応して、モータの回転を急峻に停止させることが可能となる。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記のモータ駆動制御装置であり、前記モータの回転速度を検出する回転速度検出部をさらに備え、前記駆動制御部は、前記回転速度検出部により検出された回転速度に基づいて、前記モータの回転を停止させる際に前記モータの回路を短絡させるか否かを決定する。
上記構成によれば、釣糸の巻き上げを急停止させることが求められる場合であっても、モータの実際の回転速度が低いことで、回路を短絡させなくともモータの回転を急峻に停止させることが可能な場合には、回路の短絡を伴うことなくモータの回転を停止させるようにできる。これにより、回路の短絡により急停止されることによりモータに負担を与える機会を減らし、モータの劣化を有効に抑制できる。
【0010】
また、本発明の一態様は、スプールと、前記スプールを回転駆動するモータと、前記モータの回転を停止させるにあたり、前記モータの回路を短絡させる駆動制御部とを備える魚釣用電動リールである。
【0011】
また、本発明の一態様は、スプールを回転駆動するモータの回転を停止させる際に、前記モータの回路を短絡させる駆動制御ステップを備える魚釣用電動リールのモータ駆動制御方法である。
【0012】
また、本発明の一態様は、魚釣用電動リールのモータ駆動制御装置としてのコンピュータを、スプールを回転駆動するモータの回転を停止させる際に、前記モータの回路を短絡させる駆動制御部として機能させるためのモータ駆動制御プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、釣糸の巻き上げを急峻に停止させる必要のある場合に、スプールを回転駆動するモータを急峻に停止できるようになるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の魚釣用電動リールの外観例を示す図である。
図2】本実施形態の魚釣用電動リールの外観例を示す図である。
図3】本実施形態の魚釣用電動リールにおける表示操作パネル部の一例を示す図である。
図4】本実施形態の第1自動さそい動作における駆動制御パラメータ設定に応じて得られるスプールの挙動を示す図である。
図5】本実施形態の第1自動さそい動作における駆動制御パラメータの設定操作に応じたパラメータ変更画面の遷移例を示す図である。
図6】本実施形態の魚釣用電動リールの機能構成例を示す図である。
図7】本実施形態における第1駆動制御情報と第2制御駆動情報との一例を示す図である。
図8】本実施形態におけるモータの回路を短絡させる構成の一例を示す図である。
図9】本実施形態における魚釣用電動リールが、第1自動さそい動作に対応して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
以下、図面を参照して、本実施形態のモータ駆動制御装置としての魚釣用電動リール1について説明する。
本実施形態において、スプールの駆動とは、モータを駆動して得られる動力によりスプールを回転させることをいう。
また、本実施形態において、スプールの駆動制御とは、スプールの駆動に関する制御をいう。このようなスプールの駆動制御には、スプールを回転させる制御、スプールの回転を停止させる制御、スプールの回転速度を変更する制御等が含まれる。
また、以降の説明において、スプールの「駆動」について、回転の動作を与えることを明確にすることなどを目的として「回転駆動」と記載する場合がある。
なお、以下の説明では、魚釣用電動リール1が両軸受リールである場合を例に挙げる。なお、図1図2において、各構成部材を視認可能な大きさとするために必要に応じて各構成部材の縮尺を適宜変更している場合がある。
【0016】
[魚釣用電動リールの構造例]
図1及び図2は、魚釣用電動リール1の外観例を示している。図1及び図2に示される魚釣用電動リール1は、外部電源から供給された電力により駆動されるとともに、手巻きの両軸受リールとして使用するときの電源を内部に有している。
【0017】
魚釣用電動リール1は、釣り竿に装着可能なリール本体2と、リール本体2に対してハンドル軸C1回りに回転可能に取り付けられたハンドル20と、リール本体2に対してハンドル軸C1と平行なスプール軸C2回りに回転可能で図示しない釣糸が巻かれるスプール3と、リール本体2に設けられ、スプール3に回転駆動力を伝達するモータ4とを備える。
また、魚釣用電動リール1は、クラッチ機構5を備える。クラッチ機構5は、スプール3とハンドル20とを連結する連結クラッチオン状態と、スプール3とハンドル20とを遮断する遮断(クラッチオフ)状態とで切り替え可能なようにされた機構部位である。クラッチオン状態とクラッチオフ状態との切り替えは、ユーザがクラッチ操作部材50を操作することによって可能とされている。
【0018】
ここで、本実施形態では、ハンドル軸C1及びスプール軸C2は、それぞれ平行に設けられ、これらの方向を必要に応じて左右方向L1として定義するとともに、左右方向L1に直交するとともにスプール3に巻かれた釣糸が繰り出される方向に沿う方向を前後方向L2として定義する。また、前後方向L2においてスプール3から釣糸が繰り出される方向を前方、その反対方向を後方と定義するとともに、魚釣用電動リール1を後方側から見た視点で左右を定義する。
図1は魚釣用電動リール1を上斜め後方から見た斜視図であり、図2は魚釣用電動リール1を下斜め前方から見た斜視図である。
【0019】
リール本体2は、本体フレーム21と、本体フレーム21の一部を覆うカバー22と、本体フレーム21の上側に位置する表示操作パネル部23と、を備えている。
本体フレーム21は、例えば合成樹脂または金属製の一体形成された部材である。本体フレーム21は、左右方向L1でスプール3を挟んでハンドル20側となる右側板21Aと、右側板21Aと反対側に位置する左側板21Bと、右側板21Aと左側板21Bとを連結する複数の連結部材21Cと、を有している。
右側板21Aと左側板21Bは、互いに左右方向L1に間隔を隔てて配置されている。また、それぞれの側板21A、21Bには、スプール3やモータ4を支持する支持部、及びクラッチ機構5等の回転駆動機構が配置されている。
【0020】
右側板21A及び左側板21Bには、スプール3のスプール回転軸(図示省略)の端部が回転自在に支持された状態で装着されている。図2に示す連結部材21Cは、板状をなし、右側板21A及び左側板21Bの下部を連結する。連結部材21Cのうちの1つには、左右方向L1の略中央部分に釣り竿に取り付けるための釣り竿装着部24が装着されている。
【0021】
カバー22は、右側カバー22A、左側カバー22B、及び前カバー22Cを備えている。右側カバー22Aは、右側板21Aを所定の収容空間を設けて覆い、右側板21Aの外縁部に例えばネジ止めされている。左側カバー22Bは、左側カバー22Bを所定の収容空間を設けて覆い、左側板21Bの外縁部に例えばネジ止めされている。前カバー22Cは、本体フレーム21の前部を覆っている。
また、図示は省略するが、右側板21Aの前方下部には、外部からの給電ケーブルを接続するためのコネクタが設けられている。
【0022】
表示操作パネル部23は、魚釣用電動リール1を使用するユーザに向けての表示と、ユーザによる操作(ここでは、ボタン操作となる)が行われる部位である。
表示操作パネル部23は、右側板21Aと左側板21Bとの間に配置されている。表示操作パネル部23は、操作部101と表示部102とを備える。
操作部101は、ユーザによるボタン操作が行われる部位である。同図の例では、操作部101において、ボタン操作が行われるボタン(操作子)として、第1ボタンBT-1、第2ボタンBT-2、第3ボタンBT-3の3つのボタンが配置されている。
なお、以降の説明にあたり、第1ボタンBT-1、第2ボタンBT-2、第3ボタンBT-3について特に区別しない場合には、ボタンBTと記載する。
【0023】
表示部102は、魚釣用電動リール1の動作に応じて所定の内容の表示が行われる部位である。表示部102として備えられる表示デバイスについては特に限定されないが、例えば液晶表示デバイス、有機EL表示デバイス等を挙げることができる。
【0024】
図3は、魚釣用電動リール1における表示操作パネル部23の態様例を示している。表示操作パネル部23においては、表示部102の下側に横方向に並ぶようにして、左から右にかけて、第1ボタンBT1、第2ボタンBT2、第3ボタンBT3の3つのボタンが配置されている。また、表示操作パネル部23における第1ボタンBT1、第2ボタンBT2、第3ボタンBT3のそれぞれに対応させた位置にて、各ボタンBTの機能を端的に示す文字が配置される。
【0025】
説明を図1図2に戻す。ハンドル20は、図1及び図2に示すように、ハンドル軸の先端部20aに回転不能に装着されたハンドルアーム25と、ハンドルアーム25の一端にハンドル軸C1と平行な軸回りに回転自在に装着されたハンドルノブ26と、リール本体2側に配置されたドラグ27と、を有している。
ハンドル20からのトルクは、クラッチ機構5がクラッチオンされた状態においてスプール3に直接伝達される。
【0026】
スプール3は、右側板21Aと左側板21Bとの間でそれぞれ軸受(図示省略)をかいして回転自在に設けられている。スプール3は、不図示のスプール回転軸と、スプール回転軸と同軸に配置されて連動して回転可能な筒状の糸巻胴部32と、糸巻胴部32の両端に径方向の外側に向けて拡径されたフランジ部33と、を備えている。
スプール3は、モータ4から図示しないスプール駆動機構を介して回転駆動され、クラッチ操作部材50によって駆動されるクラッチ機構5が連動している。スプール回転軸は、右側カバー22A及び左側カバー22Bに軸受を介して回転自在に各別に支持されている。
【0027】
クラッチ機構5は、クラッチ操作部材50の操作によってハンドル20の回転をスプール3に伝達可能なクラッチオン状態と、ハンドル20の回転をスプール3に伝達不能なクラッチオフ状態とに切換可能である。クラッチオン位置では、ピニオンギアの回転がスプール回転軸に伝達され、クラッチオン状態になり、ピニオンギアとスプール回転軸とが一体回転可能になる。また、クラッチオフ位置では、ピニオンギアの回転がスプール回転軸に伝達されないため、クラッチオフ状態になり、スプール3は自由回転可能になる。
【0028】
クラッチ操作部材50は、図1に示すように、クラッチ機構5をクラッチオン状態とクラッチオフ状態とで切り換えるための操作が行われる部位である。
クラッチ操作部材50は、リール本体2の後部において、右側板21Aと左側板21Bとの間でリール本体2の後部に釣り竿装着部24に対して接近及び離反する方向に移動可能に設けられている。クラッチ操作部材50は、本実施形態において、スプール回転軸回りに揺動可能に設けられる。
【0029】
スプール駆動機構は、スプール3が糸巻取方向に回転するよう駆動する。また、巻き取り時にスプール3に対してドラグ27によりドラグ力を発生させて釣糸の切断を防止する。
ドラグ27は、ハンドル20のハンドルアーム25と右側カバー22Aとの間においてハンドル軸に同軸に設けられている。スプール駆動機構は、図示しないローラクラッチの形態の逆転防止部によって糸巻取方向の回転が禁止された上記のモータ4と、モータ4の回転を減速してスプール3に伝達したり、ハンドル20の回転を増速してスプール3に伝達する回転伝達機構と、を備えている。
【0030】
モータ4は、図2に示すように、魚釣用電動リール1の前部においてスプール3(図1参照)よりも前側の位置に配置され、半割れ形状のモータ収容体40に覆われた状態で設けられている。
【0031】
スプール駆動レバー28は、ユーザの操作に応じて、一定の回転範囲において回転軸C3回りに回転可能とされている。スプール駆動レバー28は、釣糸を巻き上げる方向に対応する回転方向によりスプール3を駆動するための操作が行われる操作子である。スプール駆動レバー28は、回転位置に応じてスプール3の回転速度が変化するようにされている。例えばスプール駆動レバー28の回転位置が、例えば最も後方側に回転された位置(操作を行うユーザからみた場合には最も手前側)ではスプール3の駆動は停止された状態であり、ここから前方に回転させていくことに応じて、スプールの回転速度が段階的に高くなっていくようにされる。
【0032】
[自動さそい動作概要]
本実施形態の魚釣用電動リール1は、ユーザの操作により予め設定されたスプール3の駆動パターンを示す駆動制御情報に基づいてスプール3の駆動制御を行って釣糸を巻き上げることで、自動さそい動作を行うことができる。
そのうえで、本実施形態の魚釣用電動リール1は、第1自動さそい動作と第2自動さそい動作との2つの自動さそい動作が可能とされている。第1自動さそい動作と第2自動さそい動作とでは、駆動制御情報における駆動制御パラメータの構成が異なる。
【0033】
第1自動さそい動作に対応しては、駆動制御情報として、回転速度(回転状態再現パラメータの一例)、駆動時間(継続時間パラメータの一例)、停止時間(停止時間パラメータの一例)の3つの駆動制御パラメータを含む情報(第1駆動制御情報)が用いられる。
回転速度は、スプール3が回転する速度である。スプール3が回転する速度は、スプールの回転状態の1つである。駆動時間は、回転速度によるスプール3の回転駆動を継続させる時間である。停止時間は、駆動時間が終了してからスプール3の回転を停止させた状態で次の駆動時間が開始されるまでの時間である。
第1自動さそい動作においては、第1駆動制御情報が示すスプール回転速度、駆動時間、停止時間に従ったスプール駆動制御が周期的に繰り返される。
【0034】
一方、第2自動さそい動作に対応しては、駆動制御情報として、連続する複数の単位時間ごとにスプール回転数を対応付けた情報(第2駆動制御情報)が用いられる。このような第2駆動制御情報は、学習モードにおいて検出された単位時間ごとのスプール回転数に基づいて設定される。
【0035】
以下、本実施形態の自動さそい動作として、第1自動さそい動作と第2自動さそい動作との説明を行うが、説明を分かりやすくするため、まず、第2自動さそい動作について説明し、次に第1自動さそい動作について説明する。第1自動さそい動作と第2自動さそい動作のうち、第1自動さそい動作が、スプール3の回転停止に際してモータ4の回路を短絡させる制御が行われる自動さそい動作となる。
【0036】
[第2自動さそい動作]
ユーザは、第2自動さそい動作に対応するスプール3の駆動パターンを魚釣用電動リール1に設定する場合、まず操作部101に対して所定の操作(第2自動さそい動作対応の学習指示操作)を行って、第2自動さそい動作対応の学習モードを設定する。
学習モードが設定中の状態において、ユーザは、自分が意図する自動さそい動作でのスプール3の挙動を再現するように、ハンドル20やスプール駆動レバー28を用いたさそい操作(さそい操作)を行う。ユーザは、さそい操作として、自分が意図しているさそいのパターンにより、スプール3を回転させたり、スプール3の回転を停止させたり、スプール3の回転速度を変化させたりする。
【0037】
魚釣用電動リール1は、第2自動さそい動作の学習モードの設定中において、所定の単位時間ごとにスプール3の回転数(スプール回転数)を検出する。魚釣用電動リール1は、学習モードにおいて、時間経過に沿った複数の単位時間ごとに、検出されたスプール回転数を対応付けた情報を、第1駆動制御情報として記憶する。これにより、魚釣用電動リール1により、ユーザによるさそい操作が反映された第2自動さそい動作の学習が行われたことになる。
第2自動さそい動作対応の学習モードは、例えば学習モードの開始から所定時間が経過するか、所定時間が経過する前に操作部101に対して学習モードの終了を指示する操作(学習モード終了操作)が行われたことに応じて終了される。
【0038】
ユーザは、魚釣用電動リール1に第2自動さそい動作を行わせたい場合には、操作部101に対して、第2自動さそい動作の実行を指示する所定の操作(第2自動さそい実行指示操作)を行う。第2自動さそい実行指示操作に応じて、魚釣用電動リール1は、第1駆動制御情報に従って、単位時間ごとに対応したスプール回転数によりスプール3が回転するように、スプール3の駆動制御を実行する。
【0039】
第2自動さそい動作では、上記のように学習モードに際して検出された単位時間ごとのスプール回転数を再現するようにしてスプール3を駆動することから、例えばスプール3の回転を継続させながら回転速度を変更させることも可能となる。
その一方で、第2自動さそい動作では、以下のような事象が生じる可能性がある。例えば学習モードにおいて、ユーザは、或るタイミングでスプールの回転速度に急峻な変化を与えるようにしてさそい操作を行った。しかしながら、第2自動さそい動作における学習では、あくまでも単位時間おけるスプール回転数として検出される。この場合、単位時間における急峻な回転速度の変化は、スプール回転数として平滑化されてしまう。
このため、第2自動さそい動作のもとでは、学習モードにおいてユーザがスプール3の回転速度について急峻な変化を与えることを意図して操作を行ったとしても、さそい動作を実行させた際には、さほど急峻な変化を生じないという結果が生じ得る。この場合、実際に生じるスプール3の挙動(即ち、さそいの動き)がユーザの意図と異なっていることになる。そこで、次に説明する第1自動さそい動作では、ユーザの意図に適うようにしてスプール3の回転について急峻な変化を与えることが可能なようにされる。
【0040】
[第1自動さそい動作]
第1自動さそい動作のもとでは、ユーザは、操作部101に対する操作によって、第2駆動制御情報における駆動制御パラメータの設定操作を行うことができる。前述のように、第2駆動制御情報に含まれる駆動制御パラメータは、回転速度、駆動時間、及び停止時間の3つである。
【0041】
図4は、第1自動さそい動作における駆動制御パラメータ設定に応じて得られるスプール3の挙動として、スプール3の時間経過に応じた回転速度の変化パターンを示している。パターンpt11は、第1自動さそい動作における駆動制御パラメータに従ってスプール3を回転駆動させた場合の理想的な回転速度の変化パターンを示している。パターンpt12は従来の制御(回路の短絡を伴わないモータ4の回転停止)によりスプール3を回転駆動させた場合の実際の回転速度の変化パターンを示している。パターンpt13は本実施形態による制御(回路の短絡によるモータ4の回転停止)でスプール3を回転駆動させた場合の変化パターンである。
【0042】
また、パターンpt21、pt22、pt23は、それぞれ、パターンpt11、pt12、pt13としてのスプール3の回転速度の変化に対応して得られる釣糸の巻き上げ量の変化を示す。
【0043】
同図のパターンpt11として示すように、この場合のスプール3の挙動としては、第1自動さそい動作が実行される間において、単位駆動時間Tpが周期的に繰り返される。1つの単位駆動時間Tpにおいては、まず、駆動時間Tdにより回転速度v1でスプール3が駆動される。また、同じ単位駆動時間Tpにおいて駆動時間Tdが終了すると、次に停止時間Tsにわたってスプール3の回転が停止される。停止時間Tsが終了すると、次の単位駆動時間Tpが開始され、同様のパターンでスプール3が回転、停止する。
【0044】
次に、図5を参照して、第1自動さそい動作における駆動制御パラメータ(回転速度、駆動時間、及び停止時間)の設定操作の手順例について説明する。同図においては、第1自動さそい動作における駆動制御パラメータの設定操作に応じたパラメータ変更画面の遷移例が示される。
ユーザは、第1自動さそい動作の実行が可能なモード(第1自動さそい動作実行モード)のもとでスプール3の回転を停止させている状態において、操作部101に対してパラメータ変更モードへの遷移を指示する所定操作(パラメータ変更モード遷移操作)を行うことができる。
【0045】
パラメータ変更モード遷移操作が行われたことに応じて、魚釣用電動リール1は、第1自動さそい動作モードから、パラメータ変更モードに移行する。パラメータ変更モードは、第1自動さそい動作に対応する駆動制御パラメータを変更するための操作部101に対する操作が可能となるモードである。
パラメータ変更モードに移行したことに応じて、魚釣用電動リール1は、表示部102にパラメータ変更画面を表示する。
【0046】
図5(A)は、パラメータ変更モードに移行して最初に表示されるパラメータ変更画面を示している。同図のパラメータ変更画面においては、レバー速度表示エリアAR1、水深表示エリアAR2、パラメータ表示エリアAR22が配置される。
【0047】
レバー速度表示エリアAR1は、スプール駆動レバー28の現在の回転位置に応じて設定されているスプール3の回転速度(レバー速度)が表示されるエリアである。
水深表示エリアAR2は、現在において仕掛けが位置している水深を表示するエリアである。
【0048】
パラメータ表示エリアAR22は、現在において設定されている、第2スプール駆動制御に対応の駆動制御パラメータの値(パラメータ値)が表示されるエリアである。
パラメータ表示エリアAR22においては、回転速度表示エリアAR22-1、駆動時間表示エリアAR22-2、停止時間表示エリアAR22-3が含まれる。
回転速度表示エリアAR22-1は、回転速度のパラメータ値が表示されるエリアである。駆動時間表示エリアAR22-2は、駆動時間のパラメータ値が表示されるエリアである。停止時間表示エリアAR22-3は、停止時間のパラメータ値が表示されるエリアである。
【0049】
また、パラメータ変更画面においては、ボタン機能指示アイコンicn-1、icn-2、icn-3が配置されている。ボタン機能指示アイコンicn-1、icn-2、icn-3は、それぞれ、対応のボタンBT-1、BT-2、BT-3に割り当てられた機能を示す。
具体的に同図の場合、ボタン機能指示アイコンicn-1は、第1ボタンBT-1について、パラメータ値増加の機能が割り当てられていることを示す。ボタン機能指示アイコンicn-2は、第2ボタンBT-2に対してパラメータ値減少の機能が割り当てられていることを示す。ボタン機能指示アイコンicn-3は、第3ボタンBT-3に対して確定(エンター)の機能が割り当てられていることを示す。
【0050】
また、同図においては、パラメータ表示エリアAR22において回転速度表示エリアAR22-1が強調表示された状態となっている。このように回転速度表示エリアAR22-1が強調表示された状態は、現在において、駆動制御パラメータ(回転速度、駆動時間、停止時間)のうち、回転速度が変更可能であることを示す。
つまり、同図の例では、第1自動さそい動作に対応するパラメータ変更モードに移行した際には、まず、駆動制御パラメータ(回転速度、駆動時間、停止時間)のうち、回転速度のパラメータ値が変更可能な状態となる態様例が示されている。
【0051】
同図の態様のパラメータ変更画面が表示されている状態のもとでは、ユーザが第1ボタンBT-1を1回押圧操作するごとに、回転速度のパラメータ値がインクリメントされるように増加する。また、ユーザが第1ボタンBT-2を1回押圧操作するごとに、回転速度のパラメータ値がデクリメントされるように減少する。
なお、ユーザが第1ボタンBT-1を長押ししたことに応じて、第1ボタンBT-1の押圧が解除されるまで、回転速度のパラメータ値が連続的にインクリメントされてよい。また、ユーザが第2ボタンBT-2を長押ししたことに応じて、第2ボタンBT-2の押圧が解除されるまで、回転速度のパラメータ値が連続的にデクリメントされてよい。
また、上記のように第1ボタンBT-1または第2ボタンBT-2に対する操作が行われて回転速度のパラメータ値が変更されることに応じて、回転速度表示エリアAR22-1においては、変更(指定)されたパラメータ値が反映されるように表示が変更される。
【0052】
そして、ユーザは、上記のように操作を行って、回転速度のパラメータ値について自分が意図しているとおりの数値を設定し終えると、第3ボタンBT-3を操作する。第3ボタンBT-3が操作されたことに応じて、回転速度のパラメータ値は現在において入力されている値で確定される。この際、魚釣用電動リール1は、第1自動さそい動作に対応する駆動制御パラメータにおける回転速度のパラメータ値を更新する。また、パラメータ変更画面は、図5(B)に示される態様に遷移する。
【0053】
図5(B)のパラメータ変更画面は、駆動時間表示エリアAR22-2が強調表示された状態に変化している。つまり、パラメータ変更モードとしては、回転速度のパラメータ値を変更可能な状態から駆動時間のパラメータ値を変更可能な状態に遷移した。
ユーザは、図5(B)に示されるパラメータ変更画面が表示された状態のもとで、図5(A)の場合と同様に、第1ボタンBT-1または第2ボタンBT-2に対する操作を行って、駆動時間のパラメータ値を自分が意図するとおりに変更することができる。ユーザは、駆動時間のパラメータ値が意図したとおりの値であることを確認すると、第3ボタンBT-3を操作して、駆動時間のパラメータ値を確定させる。魚釣用電動リール1は、この場合の第3ボタンBT-3の操作に応じて、第1自動さそい動作に対応する駆動制御パラメータにおける駆動時間のパラメータ値を更新する。
また、第3ボタンBT-3が操作されたことに応じて、パラメータ変更画面は、図5(C)に示される状態に遷移する。
【0054】
図5(C)のパラメータ変更画面は、停止時間表示エリアAR22-3が強調表示された状態に変化している。つまり、パラメータ変更モードとしては、駆動時間のパラメータ値を変更可能な状態から停止時間のパラメータ値を変更可能な状態に遷移した。
ユーザは、図5(C)に示されるパラメータ変更画面が表示された状態のもとで、第1ボタンBT-1または第2ボタンBT-2に対する操作を行って、停止時間のパラメータ値を変更して、自分が意図する停止時間を入力することができる。そして、ユーザは、第3ボタンBT-3を操作して、停止時間のパラメータ値を確定させるようにする。魚釣用電動リール1は、この場合の第3ボタンBT-3の操作に応じて、第1自動さそい動作に対応する駆動制御パラメータにおける停止時間のパラメータ値を更新する。
そして、この場合には、第3ボタンBT-3が操作されたことに応じて、パラメータ変更モードが終了され、第1自動さそい動作実行モードに戻される。第1自動さそい動作実行モードに移行したことに応じて、表示部102の表示は、これまでのパラメータ変更画面の表示から、第1自動さそい動作実行モードに対応する表示に遷移する。
【0055】
上記のようにしてパラメータ変更モードから移行された第1自動さそい動作実行モードにて第1自動さそい動作を実行させた場合、魚釣用電動リール1は、パラメータ変更モードにて確定された駆動制御パラメータ(回転速度、駆動時間、停止時間)に従って、単位駆動時間(駆動時間+停止時間)ごとにスプール3の駆動制御を実行する。つまり、この場合には、パラメータ変更モードにてユーザが設定した駆動制御パラメータに従ってスプール3の駆動制御が実行される。
【0056】
このようにして駆動制御パラメータが設定される第1自動さそい動作では、例えば駆動制御パラメータにおける回転速度のパラメータ値が反映された回転速度で、スプール3の回転を開始させることができる。
本実施形態において、ユーザは、第1自動さそい動作における駆動制御パラメータが、回転速度、駆動時間、停止時間であることを把握している。つまり、ユーザは、駆動制御パラメータとして設定された回転速度によりスプール3が回転と停止とを繰り返すことを理解しているものであり、この理解に基づいて、自分の意図するさそい動作が得られるように駆動制御パラメータを設定する。
このため、第1自動さそい動作が実行されているときには、駆動時間の開始タイミングにて、スプール3が、ユーザの意図に適った回転速度で回転を開始する。このような第1自動さそい動作では、ユーザの意図に適うようにしてスプール3の回転速度が変化する。つまり、第1自動さそい動作では、ユーザの意図に適ったスプール3の挙動とすることができる。
また、第1自動さそい動作に対応する駆動制御パラメータ(回転速度、駆動時間、停止時間)については、それぞれ、図5により説明したように、操作部101に対する操作によって簡易に変更することが可能である。
【0057】
[学習による第1自動さそい動作の設定]
そのうえで、本実施形態の魚釣用電動リール1は、第1自動さそい動作にも対応して学習モードを設定可能とされている。
例えば工場出荷時に対応して設定されている駆動制御パラメータのデフォルトのパラメータ値が、ユーザが意図する第1自動さそい動作でのスプール3の駆動パターンと大きく相違しているような場合がある。このような場合、図5にて例示したように具体的な数値を確認しながら行う操作では、かえってユーザが意図するスプール3の駆動パターンとなるようにパラメータ値を設定するのに時間がかかることがある。
このような場合には、例えばユーザは、まず、第1自動さそい動作に対応する学習モードを設定してさそい動作を行うことで、魚釣用電動リール1に駆動制御パラメータ(回転速度、駆動時間、停止時間)を設定する。これにより、ユーザは、第1自動さそい動作に対応する駆動制御パラメータについて、まずは自分の意図にある程度近いパラメータ値を設定することができる。その後、ユーザは、図5に例示した操作部101に対する操作によって、具体的な数値を確認しながら、各駆動制御パラメータのパラメータ値を、自分の意図に合わせるように変更することができる。このような手順を踏むことで、ユーザは、自分の意図に沿ったスプール3の挙動となる駆動制御パラメータを手軽に素早く設定できる。
【0058】
魚釣用電動リール1は、第1自動さそい動作対応の学習モードが設定されると、ユーザにより行われたさそい操作に応じたスプール3の挙動に基づき、以下のように駆動制御パラメータ(回転速度、駆動時間、停止時間)の各パラメータ値を算出する。
魚釣用電動リール1は、学習モードの設定中におけるさそい操作に応じたスプールの回転速度を一定時間ごとに検出し、検出された回転速度を記録する。
魚釣用電動リール1は、学習モードにおいて検出された一定時間ごとの回転速度に基づいて、駆動制御パラメータとしての回転速度、駆動時間、停止時間をそれぞれ算出する。
【0059】
一例として、回転速度、駆動時間、停止時間の算出にあたり、魚釣用電動リール1は、学習モードが設定された期間を、記録された回転速度の変動パターンに基づいて、1回のしゃくりに応じた区間ごとに区分する。魚釣用電動リール1は、区分された区間ごとにおける駆動時間、停止時間に該当する期間と、駆動時間における回転速度とを特定する。魚釣用電動リール1は、区間ごとに特定された回転速度、駆動時間、停止時間に基づいて、各1つの回転速度、駆動時間、停止時間を算出する。この場合、魚釣用電動リール1は、変動周期ごとに特定された回転速度、駆動時間、停止時間の最頻値、もしくは平均値等を算出することにより、1つの回転速度、駆動時間、停止時間を算出するようにされてよい。
魚釣用電動リール1は、上記のように算出された1つの回転速度、駆動時間、停止時間により、第1自動さそい動作に対応する駆動制御パラメータのパラメータ値を更新する。
【0060】
このように、学習によっても第1駆動制御情報を設定可能とされることで、例えばユーザは、まずは、学習モードでさそい操作を行うことにより、駆動制御パラメータのパラメータ値のそれぞれについて、自分の意図にある程度近い値を設定することができる。その後、ユーザは、操作部101に対する操作によって、各駆動制御パラメータのパラメータ値を自分の意図に合わせていくように変更していくことができる。このような手順を踏むことで、ユーザは、自分の意図に沿ったスプール3の挙動となる駆動制御パラメータを手軽に素早く設定できる。
【0061】
[魚釣用電動リールの機能構成例]
図6を参照して、魚釣用電動リール1の機能構成例について説明する。同図において、図1図2と同一部分には、同一符号を付して適宜説明を省略する。
同図の魚釣用電動リール1は、操作部101、表示部102、制御部103、記憶部104、モータ駆動回路105、モータ4、スプール3、及びモータ回転センサ107を備える。
【0062】
制御部103は、魚釣用電動リール1における各種の制御を実行する。制御部103としての機能は、魚釣用電動リール1が備えるCPU(Central Processing Unit)がプログラムを実行することにより実現される。
制御部103は、パラメータ設定部131、及び駆動制御部132を備える。
パラメータ設定部131は、操作部101に対して行われた操作に応じて、駆動制御パラメータ(回転速度、駆動時間、停止時間)を、第1駆動制御情報として設定する。
駆動制御部132は、駆動制御情報に基づいて、スプール3の駆動制御を実行する。ここで、スプール3はモータによって駆動されるので、駆動制御部132がスプール3を駆動制御することは、スプール3を駆動するモータ4を駆動制御することに相当する。
【0063】
記憶部104は、魚釣用電動リール1に対応する各種の情報を記憶する。記憶部104は、第1駆動制御情報記憶部141と第2駆動制御情報記憶部142とを備える。
第1駆動制御情報記憶部141は、第1駆動制御情報を記憶する。第1駆動制御情報は、第1自動さそい動作においてスプール3を駆動制御するのに利用される情報である。第1駆動制御情報には、パラメータ変更モードまたは第1自動さそい動作対応の学習モードによって設定された駆動制御パラメータ(回転速度、駆動時間、停止時間)が含まれる。
第2駆動制御情報記憶部142は、第2駆動制御情報を記憶する。第2駆動制御情報は、第2自動さそい動作においてスプール3を駆動制御するのに利用される情報である。
【0064】
図7(A)は、第1駆動制御情報記憶部141が記憶する第1駆動制御情報の内容例を示している。同図に示されるように、第1駆動制御情報は、各1つの回転速度、駆動時間、停止時間の3つの駆動制御パラメータを格納する。
【0065】
図7(B)は、第2駆動制御情報記憶部142が記憶する第2駆動制御情報の内容例を示している。同図に示されるように、第2駆動制御情報は、単位時間1~Nごとにスプール回転数を対応付けて格納する。
【0066】
説明を図6に戻す。モータ駆動回路105は、駆動制御部132の制御に応じてモータ4を駆動する回路である。スプール3は、モータ4が回転して得られる動力によって回転するように駆動される。
【0067】
モータ回転センサ107は、モータ4の回転について検出する。制御部103は、モータ回転センサ107の検出出力に基づいて、モータ4の回転速度を検出する。モータ回転センサ107は、例えばポテンショメータ等を備えてモータ4の回転位置を検出するようなものであってもよいし、角速度センサ等により回転速度を検出するようなものであってもよい。
【0068】
[モータの回転停止制御に関する概要]
前述のように、第2自動さそい動作では、単位時間における急峻な回転速度の変化がスプール回転数として平滑化されることから、ユーザが行ったさそい操作が再現されない場合がある。これに対して、第1自動さそい動作では、回転速度、駆動時間、停止時間の3つの駆動制御パラメータの設定に従ってモータ4が駆動されることから、ユーザの意図に適ったスプール3の挙動を得ることが可能である。
しかしながら、第1自動さそい動作のもとでのスプール3(モータ4)の回転の急停止に関して、例えば単に電流の印加を瞬間的に停止してモータ4の回転を停止させたとしても、スプール3やモータ4の慣性によりオーバーランが発生する。この場合、実際のスプール3の回転速度の変化は、パターンpt11のようにはならず、例えばパターンpt12のようになる。この場合、スプール3を駆動するモータ4の回転速度も、パターンpt12と同様の変化を示す。パターンpt12から理解されるように、スプール3(モータ4)の回転は、停止時間Tsの開始タイミングからある程度の時間幅において速度が低下し、或るタイミングで停止する状態となる。
第1自動さそい動作は、スプール3の回転速度の急峻な変化について第2自動さそい動作の場合のように平滑化されることなく、ユーザの意図に適ったスプール3の挙動が得られることが利点の1つである。このため、スプール3(モータ4)の回転の停止に関すれば、実際にスプール3(モータ4)の回転が停止されるタイミングは、停止時間Tsの開始タイミングからできるだけ遅延しないようにすることが求められる。
【0069】
そこで、本実施形態の魚釣用電動リール1では、第1自動さそい動作が行われている状態のもとでスプール3の回転を停止させるにあたり、モータ4の回路を短絡させることで、モータ4の回転を停止させるように制御することが行われる。
これまでに回転状態にあったモータ4の回路が短絡されることで、モータ4は、負荷あるいは発電機として機能する状態に変化する。この場合、モータ4は、単に電流の印加が停止された場合と異なり、慣性に抗して停止しようとする。この結果、スプール3(モータ4)は、例えば図4のパターンpt13として示すように、停止時間Tsの開始から回転が停止するのに要するオーバーランの時間が、パターンpt12よりも短縮される。これにより、本実施形態によっては、ユーザの意図により適ったスプール3の挙動を得ることができる。
なお、図4に示される釣糸の巻き上げ量に関すると、従来の制御に対応するパターンpt22と、本実施形態の制御に対応するパターンpt23とでは、パターンpt22のほうが理想のパターンpt21に近いものとなっている。
従来においては、モータ4の回転子の慣性や、モータ4がブラシレスモータである場合における位相検出シーケンスによって生じる起動時の「遅れ」等に起因して生じるオーバーランによって、釣糸の巻き上げ量が補われていた。これに対して、本実施形態においては、モータ4の回転が従来よりも急峻に停止可能となることで、釣糸の巻き上げ量を補うことが行われなくなったことにより巻き上げ量が減少する。このために、釣糸の巻き上げ量については、パターンpt23よりもパターンpt22のほうがパターンpt21に近い結果となる。
ただし、本実施形態における制御は、ユーザが自動さそい動作としてメリハリのある仕掛けの動きを求めることに応えようとするものであることから、巻き上げ量が理想に近づかないことについては問題にならない。本実施形態のもとで、釣糸の巻上量を理想に近づけたい場合には、モータ4の回転の急停止が可能となったことにより、モータ4の実効的な停止時間が延びた分に応じて駆動時間も延長させるように制御すればよい。
【0070】
なお、本実施形態の魚釣用電動リール1は、モータ4の停止に際して回路を短絡させる制御を、第1自動さそい動作においては実行するが、第2自動さそい動作においては実行しないようにされる。
第2自動さそい動作では、前述のように、学習に際して検出した単位時間ごとのスプール3の回転数を再現するようにモータ4の駆動制御を行うことから、急峻なスプール3の回転速度の変化は平滑化される。このため、第2自動さそい動作のもとで、スプール3の回転を急峻に停止させたとしても、急停止されるタイミングがユーザの意図に適っているとは限らない。この点で、第2自動さそい動作のもとでスプール3の回転を急峻に停止させることの必要性は低いということがいえる。そこで、本実施形態のもとでは、モータ4の停止に際して回路を短絡させる制御は、第2自動さそい動作のもとでは実行しないようにされる。
【0071】
[モータ駆動に関連する回路構成]
図8は、上記のようにしてモータ4の回路を短絡させる構成の一例を示している。同図においては、モータ4がブラシ付きモータである場合の例を示している。以下の説明にあたっては、モータ4がブラシ付きモータである場合を例に挙げて説明する。
【0072】
同図に示される回路は、モータ4、モータ駆動回路105、及びスイッチSW1、SW2を含む。
スイッチSW1は、端子tm11に対して端子tm12、tm13のいずれかが接続されるように切り替えが行われる。スイッチSW2は、端子tm21に対して端子tm22、tm23のいずれかが接続されるように切り替えが行われる。
スイッチSW1において、端子tm11はモータ4の正極と接続され、端子tm12はモータ駆動回路105の電流出力端子の正極と接続され、端子tm13はスイッチSW2の端子tm23と接続される。
スイッチSW2において、端子tm21はモータ4の負極と接続され、端子tm22はモータ駆動回路105の電流出力端子の負極と接続され、端子tm23はスイッチSW1の端子tm13と接続される。
【0073】
スイッチSW1、SW2の切り替えは、モータ駆動回路105から出力される切替信号Scにより連動(同期)して切り替えが行われる。
つまり、スイッチSW1において端子tm11が端子tm12に接続されるとき、スイッチSW2においては端子tm21が端子tm22に接続されるように連動する。この状態では、モータ4の回路がモータ駆動回路105と接続された状態である。
一方、スイッチSW1において端子tm11が端子tm13に接続されるとき、スイッチSW2においては端子tm21が端子tm23に接続されるように連動する。この状態では、モータ4の回路において正極と負極とが短絡した状態となる。
つまり、本実施形態のモータ4の回路は、モータ駆動回路105が駆動可能なようにモータ駆動回路105と接続される状態と、短絡される状態とで切り替えが可能なようにされている。
【0074】
[処理手順例]
図9のフローチャートを参照して、本実施形態の魚釣用電動リール1が、第1自動さそい動作に対応して実行する処理手順例について説明する。同図は、魚釣用電動リール1の駆動制御部132が、第1自動さそい動作に対応する第1駆動制御情報の駆動制御パラメータ(回転速度、駆動時間Td、停止時間Ts)に基づいて、単位駆動時間Tp(図4)を繰り替えし実行する場合の処理手順例を示している。
【0075】
ステップS101:第1自動さそい動作の開始にあたり、まず、駆動制御部132は、回転速度の駆動制御パラメータが示す回転速度でスプール3を回転させるためのモータ4の駆動を開始させる。
この際、駆動制御部132は、例えば回転速度を指定してモータ駆動回路105にモータ4への電流印加の開始を指示する。電流印加の開始の指示を受けたモータ駆動回路105は、モータ4とモータ駆動回路105とが接続される状態となるようにスイッチSW1、SW2を制御する。つまり、モータ駆動回路105は、スイッチSW1においては端子tm11に端子tm12が接続され、スイッチSW2においては端子tm21に端子tm22が接続されるように、切替信号Scを出力する。そのうえで、モータ駆動回路105は、指定された回転速度となるようにモータ4に電流を印加する。
【0076】
ステップS102:駆動制御部132は、ステップS101によりモータ4の駆動を開始させたタイミングを起点として駆動制御パラメータが示す駆動時間Tdが終了するのを待機する。
ステップS103:駆動時間Tdが終了すると、駆動制御部132(回転速度検出部の一例)は、モータ回転センサ107の出力に基づいてモータ4の回転速度を検出する。駆動制御部132は、検出された回転速度が一定以上であるか否かについて判定する。
なお、スプール3とモータ4の回転速度には相関がある。そこで、スプール3の回転について検出するスプール回転センサを設け、駆動制御部132は、スプール回転センサの出力に基づいてモータ4の回転速度を検出するようにされてもよい。
【0077】
ステップS104:ステップS103にてモータ4の回転速度が一定以上であると判定された場合、駆動制御部132は、モータ4の回路の短絡によりモータ4の駆動を停止させる制御を実行する。
この場合、例えば駆動制御部132は、モータ駆動回路105に対してモータ4の回路の短絡を指示する。モータ4の回路の短絡の指示を受けたモータ駆動回路105は、スイッチSW1においては端子tm11に端子tm13が接続されるように切り替え、スイッチSW2においては端子tm21に端子tm23が接続されるように切り替えるための切替信号Scを出力する。これにより、モータ4の回路が短絡され、モータ4のオーバーランを短くして、急峻に停止させることができる。
【0078】
ステップS105:一方、モータ4の回転速度が一定未満の状態であれば、回路を短絡させずに電流印加の停止によりモータ4の駆動を停止させても、許容される時間内でモータ4の回転を停止させることが可能である。
そこで、ステップS103にてモータ4の回転速度が一定未満であると判定された場合、駆動制御部132は、モータ4を回路の短絡によらずに駆動を停止させる制御を実行する。この場合、駆動制御部132は、回路の短絡によらないモータ4の回転の停止をモータ駆動回路105に指示する。指示を受けたモータ駆動回路105は、スイッチSW1、SW2については、モータ駆動回路105とモータ4とが接続され状態のままとしたうえで、モータ4への電流の印加を停止する。
【0079】
モータ4の回転速度が一定以上の状態のもとで、例えばモータ4の回路を短絡させずにモータ4への電流印加の停止によりモータ4の回転を停止させた場合には、モータ4の回転子(ロータ)の慣性が大きくなることから、オーバーランの時間が無視できない程度に長くなる可能性がある。そこで、モータ4の回転速度が一定以上である場合には、ステップS104にて、回路を短絡させることによりモータ4の慣性に抗して急停止されるようにしている。
しかしながら、回路の短絡によっては慣性に対抗して強制的にモータ4を停止させる力が加わることから、モータ4の構造や回路に負担がかかりやすい。このため、例えば回路の短絡による停止が常に行われるようにされると、モータ4の劣化を促進させる可能性がある。
そこで、本実施形態においては、モータ4の回転速度が一定未満であって、回路の短絡によらなくとも許容される時間内でモータ4の回転を停止できる場合には、ステップS105により、回路の短絡によらず、例えば単に電流印加を停止することによるモータ4の駆動の停止を行うようにされている。このようにして、ステップS103~S105の処理によっては、駆動時間Tdの終了に伴うスプール3の回転停止に際して、モータ4の回転速度の状態に応じて、モータ4の回路を短絡させるか否かを決定するようにしている。これにより、本実施形態では、モータ4が急停止される状態が得られるようにしたうえで、モータ4にかかる負担の軽減も図られるようにしている。
【0080】
ステップS106:駆動制御部132は、モータ4の駆動を停止させるためのステップS105またはステップS106の処理に応じたタイミングを起点として、駆動制御パラメータが示す停止時間Tsが終了するのを待機する。停止時間Tsが終了すると、ステップS101に処理が戻されることで、次の単位駆動時間Tpに応じたモータ4の駆動制御が開始される。
【0081】
なお、同図の処理は、第1自動さそい動作の実行の終了を指示する終了トリガが発生したことに応じて終了される。同図の処理の終了に際しては、終了トリガが発生したタイミングでモータ4を停止させることが行われる。なお、終了トリガに応じてモータ4を停止させる場合には、モータ4を急停止させるための回路の短絡を行わなくともよい。
終了トリガは、例えば第1自動さそい動作を停止させる操作に応じて発生させる。
第1自動さそい動作としてのスプール3の回転駆動させるにあたり、ユーザは、例えば表示操作パネル部23(図3)の第2ボタンBT-2([CHANGE]ボタン)に対する所定操作により第1自動さそい動作モードを設定する。そのうえで、ユーは、第1ボタンBT-1([PICK UP]ボタン)を1回押圧する操作を行う。第1ボタンBT-1が操作されたことに応じて、第1自動さそい動作に応じたスプール3の駆動(モータ4の駆動)が開始される。そして、ユーザは、第1自動さそい動作を停止させたい場合には、再度、第1ボタンBT-1を1回押圧する操作を行う。このように第1自動さそい動作の停止を指示する第1ボタンBT-1に対する操作が行われたことに応じて終了トリガが発生し、モータ4の回転の停止とともに同図の処理が終了される。
また、終了トリガは、例えば第1自動さそい動作の実行中において、クラッチ機構5をオフとする操作が行われた場合にも発生するようにされてよい。この場合、ユーザは、例えば第1自動さそい動作を停止させて仕掛けを落下させたい場合に、一旦第1自動さそい動作を停止させる第1ボタンBT-1に対する操作を行わなくとも、クラッチ機構5をオフとすることにより、ただちに仕掛けを落下させることができる。
また、終了トリガは、竿から仕掛けまでの長さ(水深)が一定以内になったと検出されたことに応じて発生されるようにしてよい。
【0082】
<変形例>
以下、本実施形態の変形例について説明する。
上記実施形態として図8に例示した回路は、モータ4がブラシ付きモータである場合に対応し、図9のフローチャートの説明にあっては、モータ4がブラシ付きモータである場合を例に挙げた。
本実施形態におけるモータ4は、ブラシレスモータであってもよい。ブラシレスモータは、ブラシ付きモータとの比較では慣性が小さいのであるが、例えば大径のものでは慣性が大きくなり、オーバーランの時間も長くなる。従って、モータ4がブラシレスモータであっても、回路の短絡により回転を停止させることが有効な場合がある。ブラシレスモータの回路を短絡させる態様としては、例えば、ブラシレスモータが備える複数のコイルごとに、コイルの両端の端子を短絡させるようにしてよい。あるいは、ブラシレスモータが備える複数のコイルごとの端子同士を短絡させるようにしてもよい。
【0083】
なお、例えば第1自動さそい動作におけるモータ4の回転の開始にあたり、目標の回転速度にまで到達させる時間の短縮を図る場合には、モータ4にセンサ付きのブラシレスモータを採用してよい。モータ4がセンサ付きのブラシレスモータとされることで、回転子の慣性が低減されるとともに、センサレスのブラシレスモータで必要な起動時の誘起電圧検出に要する時間も不要となるので、急峻に目標の回転速度に到達するようにモータ4の回転を開始させることができる。
【0084】
なお、回路の短絡によりモータ4を停止させる場合としては、第1自動さそい動作においてモータ4を停止させる場合に限定されない。本実施形態の魚釣用電動リール1は、例えば第1ボタンBT-1([PICK UP]ボタン)が押圧操作されている間において、設定された巻き上げ速度に対応する回転速度でスプール3を回転駆動する動作(ボタン巻き上げ動作)が可能とされてよい。この場合において、第1ボタンBT-1の押圧が解除されてスプール3の回転駆動を停止させる際に、回路の短絡によりモータ4を停止させるようにしてよい。さらに、この場合において、設定された巻き上げ速度に対応する回転速度が一定以上の場合に回路の短絡によりモータ4を停止させ、回転速度が一定未満の場合には回路の短絡によらずにモータ4を停止させるようにしよい。
【0085】
なお、ユーザが任意にスプール3(即ち、モータ4)の回転速度を変更する操作は、スプール駆動レバー28に対する操作のほか、スイッチや感圧センサに対する操作により可能なようにされてよい。この場合には、モータ4の回転の停止は、例えばスイッチや感圧センサの押圧解除、停止用スイッチの操作、回転速度を減速させる減速ボタンに対する一定以上の押圧力による操作等により可能なようにされてよい。
そのうえで、上記のようなモータ4の回転を停止させる操作が行われたタイミングでのモータ4の回転速度が一定以上の場合には、回路の短絡によりモータ4を停止させるように制御してよい。
また、この場合の魚釣用電動リール1は、スプール駆動レバー28とともにスプール3の回転速度を変更するスイッチや感圧センサが設けられる構成であってもよいし、スイッチや感圧センサを備えたうえでスプール駆動レバー28が省略された構成であってもよい。
【0086】
また、上記実施形態では第2自動さそい動作のもとではモータ4の回路の短絡によりモータ4を停止させる制御は行わないものとして説明したが、第2自動さそい動作のもとでも、スプール3の回転を停止させる際に、モータ4の回路を短絡させる制御を行ってもよい。
この場合、駆動制御部132は、スプール3の回転を停止させるごとにモータ4の回路を短絡させる制御を行ってもよい。あるいは、駆動制御部132は、モータ4の回転速度が一定以上の場合にモータ4の回路を短絡させ、モータ4の回転速度が一定未満の場合には回路の短絡によらずにモータ4を停止させるように制御してよい。
【0087】
なお、本実施形態における第1駆動制御情報のパラメータ(回転状態再現パラメータ、継続時間パラメータ、停止時間パラメータ)は、上記の回転速度、駆動時間、停止時間の組み合わせに限定されない。
例えば、第1駆動制御情報のパラメータにおける回転状態再現パラメータは、スプール3の回転速度に代えて、スプール3の回転加速度であってもよい。
この場合の継続時間パラメータは、継続時間として、回転状態再現パラメータが示す回転加速度でスプールを継続して回転駆動させる継続時間を示すものであってよい。また、この場合の停止時間パラメータは、停止時間として、1つの継続時間が終了して次の継続時間が開始されるまでの間においてスプールの回転が停止されるべき時間を示すものであってよい。
このような第1駆動制御情報のパラメータによっては、駆動時間において回転状態再現パラメータが示すのと同じ一定の回転加速度で回転速度が変化していくようにスプール3が駆動され、続く停止時間においてスプール3の回転が停止される、というスプール3の挙動が再現される。なお、加速度に対応する上記の継続時間(加速度継続時間)とともに、加速終了後に定速を維持させる速度維持時間をさらに設定できるようにしてもよい。
【0088】
また、本実施形態における第1駆動制御情報のパラメータにおける回転状態再現パラメータは、スプール3を回転駆動するモータ4に印加する電流量であってよい。モータ4に印加する電流量に応じては、モータ4の回転トルクが変化することから、スプール3の回転トルク(回転状態の一例)もモータ4の回転トルクに伴って変化する。
この場合の継続時間パラメータは、継続時間として、回転状態再現パラメータが示す電流量でモータ4に電流を継続して印加させる継続時間を示すものであってよい。また、この場合の停止時間パラメータは、停止時間として、1つの継続時間が終了して次の継続時間が開始されるまでの間においてモータ4への電流の印加が停止されるべき時間を示すものであってよい。
このような第1駆動制御情報のパラメータによっては、継続時間において回転状態再現パラメータが示す電流量による電流の印加によりモータ4が駆動される。この際、スプール3は、回転状態再現パラメータが示す電流量に従ったモータ4の回転トルクに応じて定まる回転トルクで駆動される。そして、継続時間に続く停止時間において電流の印加が停止することによりスプール3の回転が停止される、というスプール3の挙動が再現される。
【0089】
なお、魚釣用電動リール1は、外部の端末装置と通信可能に接続されてよい。魚釣用電動リール1と外部の端末装置との通信は、無線であっても有線であってもよい。また、外部の端末装置は、例えば魚群探知の情報をユーザに向けて表示するようなものであってもよいし、魚釣用電動リール1を用いた釣りに関して所定のサポートを行うアプリケーションが動作するスマートフォン等であってもよい。
そのうえで、本実施形態の自動さそい動作に対応する駆動制御情報は、外部の端末装置に記憶されるようにしてもよい。この場合、第1自動さそい動作に対応するパラメータ変更モードに関連する操作や、第1自動さそい動作及び第2自動さそい動作に対応の学習モードの設定、終了に関する操作が、外部の端末装置に対して可能なようにされてよい。
このように自動さそい動作に対応する駆動制御情報を外部の端末装置が記憶する場合、自動さそい動作を実行させるためには、外部の端末装置の制御によって魚釣用電動リール1に駆動制御情報が設定される。魚釣用電動リール1は、設定された駆動制御情報に基づいてスプール3を駆動制御することで、自動さそい動作を行う。
【0090】
なお、上記実施形態における魚釣用電動リール1としての機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の魚釣用電動リール1としての処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 魚釣用電動リール、3 スプール、4 モータ、5 クラッチ機構、20 ハンドル、23 表示操作パネル部、28 スプール駆動レバー、50 クラッチ操作部材、101 操作部、102 表示部、103 制御部、104 記憶部、105 モータ駆動回路、107 モータ回転センサ、131 パラメータ設定部、132 駆動制御部、141 第1駆動制御情報記憶部、142 第2駆動制御情報記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9