(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】サブガスケット付膜電極接合体製造装置およびサブガスケット付膜電極接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0286 20160101AFI20230410BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20230410BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20230410BHJP
H01M 8/0273 20160101ALN20230410BHJP
【FI】
H01M8/0286
H01M8/10 101
H01M8/02
H01M8/0273
(21)【出願番号】P 2019131572
(22)【出願日】2019-07-17
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 暢生
(72)【発明者】
【氏名】高木 善則
(72)【発明者】
【氏名】岡田 広司
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-142407(JP,A)
【文献】特開2014-229370(JP,A)
【文献】特開2013-69652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0286
H01M 8/10
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の表面に触媒層が設けられた膜電極接合体を含む電極層基材に、サブガスケットフィルムを含むサブガスケット基材を付加するサブガスケット付膜電極接合体製造装置であって、
外周面に前記電極層基材を保持する第1貼付ローラと、
前記サブガスケット基材を保持する第2貼付ローラと、
前記第1貼付ローラまたは前記第2貼付ローラのうち一方の貼付ローラの外周面に保持対象物を吸着させる吸着機構と、
前記一方の貼付ローラを、軸方向へ移動させる軸方向駆動部と、
を備える、サブガスケット付膜電極接合体製造装置。
【請求項2】
請求項1のサブガスケット付膜電極接合体製造装置であって、
前記一方の貼付ローラを、他方の貼付ローラに対して接近および離間する接離方向へ移動させる接離方向駆動部、
をさらに備える、サブガスケット付膜電極接合体製造装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2のサブガスケット付膜電極接合体製造装置であって、
前記一方の貼付ローラが、前記第2貼付ローラである、サブガスケット付膜電極接合体製造装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項のサブガスケット付膜電極接合体製造装置であって、
前記第1貼付ローラ上の前記電極層基材の軸方向位置を測定する第1位置測定部、
をさらに備え、
前記軸方向駆動部は、前記第1位置測定部によって測定された前記電極層基材の軸方向位置に応じて、前記一方の貼付ローラを移動させる、
サブガスケット付膜電極接合体製造装置。
【請求項5】
請求項4のサブガスケット付膜電極接合体製造装置であって、
前記第1位置測定部は、前記電極層基材における前記触媒層の位置を測定する、サブガスケット付膜電極接合体製造装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項のサブガスケット付膜電極接合体製造装置であって、
前記第2貼付ローラ上の前記サブガスケット基材の軸方向位置を測定する第2位置測定部、
をさらに備え、
前記軸方向駆動部は、前記第2位置測定部によって測定された前記サブガスケット基材の軸方向位置に応じて、前記一方の貼付ローラを移動させる、サブガスケット付膜電極接合体製造装置。
【請求項7】
請求項6のサブガスケット付膜電極接合体製造装置であって、
前記サブガスケット基材は、前記触媒層に対応する形状の切断部を有しており、
前記第2位置測定部は、軸方向における前記切断部の位置を検出する、サブガスケット付膜電極接合体製造装置。
【請求項8】
電解質膜の表面に触媒層が設けられた膜電極接合体を含む電極層基材に、サブガスケットフィルムを含むサブガスケット基材を付加するサブガスケット付膜電極接合体の製造方法であって、
(a)第1貼付ローラの外周面に前記電極層基材を保持する工程と、
(b)第2貼付ローラの外周面に前記サブガスケット基材を保持する工程と、
(c)前記第1貼付ローラおよび前記第2貼付ローラのうち一方の貼付ローラの外周面に保持対象物を吸着させる工程と、
(d)前記一方の貼付ローラを、軸方向へ移動させる工程と、
を含む、サブガスケット付膜電極接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サブガスケット付膜電極接合体製造装置およびサブガスケット付膜電極接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や携帯電話などの駆動電源として、燃料電池が注目されている。燃料電池は、燃料に含まれる水素(H2)と空気中の酸素(O2)との電気化学反応によって電力を作り出す発電システムである。燃料電池は、他の電池と比べて、発電効率が高く環境への負荷が小さいという特長を有する。
【0003】
燃料電池には、使用する電解質によって幾つかの種類が存在する。そのうちの1つが、電解質としてイオン交換膜(電解質膜)を用いた固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)である。固体高分子形燃料電池は、常温での動作および小型軽量化が可能であるため、自動車や携帯機器への適用が期待されている。
【0004】
固体高分子形燃料電池は、一般的には複数のセルが積層された構造を有する。1つのセルは、膜電極接合体(MEA:Membrane-Electrode-Assembly)の両側を一対のセパレータで挟み込むことにより構成される。膜電極接合体は、電解質膜と、電解質膜の両面に形成された一対の電極層とを有する。一対の電極層の一方はアノード電極であり、他方がカソード電極となる。アノード電極に水素を含む燃料ガスが接触するとともに、カソード電極に空気が接触すると、電気化学反応によって電力が発生する。
【0005】
上記の膜電極接合体は、外圧によって、損傷しやすい。このため、固体高分子形燃料電池の製造工程では、膜電極接合体に、樹脂製の枠体(サブガスケットフィルム)が適宜取り付けられる。そして、膜電極接合体をハンドリングする際には、膜電極接合体自体ではなく、サブガスケットフィルムで把持等が行われる場合がある
【0006】
例えば、特許文献1には、膜・電極接合体にサブガスケットフィルムを付加するガスケット付加装置が記載されている。このガスケット付加装置では、サブガスケットフィルムの非使用領域に切断部を設けて切り抜き、その切り抜かれた非使用領域内に膜・電極接合体が位置合わせされることによって、膜・電極接合体の触媒層の周囲に枠体であるサブガスケットフィルムが貼り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術では、吸着ローラに保持されたサブガスケットフィルムに対して、膜・電極接合体を含む電極層基材を保持した貼付ローラを軸方向へ移動させることによって、貼付位置の調整が行われていた。このため、貼付ローラの移動によって、貼付ローラ上で電極層基材が位置ずれしてしまう可能性があり、貼付位置の調整を精度良く行うことが困難となるおそれがあった。
【0009】
本発明の目的は、電極層基材およびサブガスケット基材の貼り合わせの位置精度を高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、第1態様は、電解質膜の表面に触媒層が設けられた膜電極接合体を含む電極層基材に、サブガスケットフィルムを含むサブガスケット基材を付加するサブガスケット付膜電極接合体製造装置であって、外周面に前記電極層基材を保持する第1貼付ローラと、前記サブガスケット基材を保持する第2貼付ローラと、前記第1貼付ローラまたは前記第2貼付ローラのうち一方の貼付ローラの外周面に保持対象物を吸着させる吸着機構と、前記一方の貼付ローラを、軸方向へ移動させる軸方向駆動部とを備える。
【0011】
第2態様は、第1態様のサブガスケット付膜電極接合体製造装置であって、前記一方の貼付ローラを、他方の貼付ローラに対して接近および離間する接離方向へ移動させる接離方向駆動部をさらに備える。
【0012】
第3態様は、第1態様または第2態様のサブガスケット付膜電極接合体製造装置であって、前記一方の貼付ローラが、前記第2貼付ローラである。
【0013】
第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか1つのサブガスケット付膜電極接合体製造装置であって、前記第1貼付ローラ上の前記電極層基材の軸方向位置を測定する第1位置測定部、をさらに備え、前記軸方向駆動部は、前記第1位置測定部によって測定された前記電極層基材の軸方向位置に応じて、前記一方の貼付ローラを移動させる。
【0014】
第5態様は、第4態様のサブガスケット付膜電極接合体製造装置であって、前記第1位置測定部は、前記電極層基材における前記触媒層の位置を測定する。
【0015】
第6態様は、第1態様から第5態様のいずれか1つのサブガスケット付膜電極接合体製造装置であって、前記第2貼付ローラ上の前記サブガスケット基材の軸方向位置を測定する第2位置測定部、をさらに備え、前記軸方向駆動部は、前記第2位置測定部によって測定された前記サブガスケット基材の軸方向位置に応じて、前記一方の貼付ローラを移動させる。
【0016】
第7態様は、第6態様のサブガスケット付膜電極接合体製造装置であって、前記サブガスケット基材は、前記触媒層に対応する形状の切断部を有しており、前記第2位置測定部は、軸方向における前記切断部の位置を検出する。
【0017】
第8態様は、電解質膜の表面に触媒層が設けられた膜電極接合体を含む電極層基材に、サブガスケットフィルムを含むサブガスケット基材を付加するサブガスケット付膜電極接合体の製造方法であって、(a)第1貼付ローラの外周面に前記電極層基材を保持する工程と、(b)第2貼付ローラの外周面に前記サブガスケット基材を保持する工程と、(c)前記第1貼付ローラおよび前記第2貼付ローラのうち一方の貼付ローラの外周面に保持対象物を吸着させる工程と、(d)前記一方の貼付ローラを、軸方向へ移動させる工程とを含む。
【発明の効果】
【0018】
第1態様のサブガスケット付膜電極接合体製造装置によると、第1および第2貼付ローラのうち、軸方向へ移動する一方の貼付ローラで、保持対象物を吸着して強固に保持することができる。このため、当該一方の貼付ローラを軸方向へ移動させたときに、その一方の貼付ローラにおいて、保持対象物が位置ずれすることを抑制できる。したがって、電極層基材およびサブガスケット基材を、軸方向に関して高精度に位置合わせすることができる。
【0019】
第2態様のサブガスケット付膜電極接合体製造装置によると、保持対象物を吸着する一方の貼付ローラを、他方の貼付ローラに対して接離方向へ移動させるため、一方の貼付ローラを接離方向へ移動させたときに、その保持対象物が位置ずれすることを抑制できる。
【0020】
第3態様のサブガスケット付膜電極接合体製造装置によると、サブガスケット基材を第2貼付ローラに吸着しつつ、そのサブガスケット基材の位置を、第1貼付ローラ上の電極層基材の位置に合わせることができる。
【0021】
第4態様のサブガスケット付膜電極接合体製造装置によると、電極層基材の軸方向位置に基づいて、一方の貼付ローラを移動させることができるため、電極層基材とサブガスケット基材とを軸方向に関して高精度に位置合わせすることができる。
【0022】
第5態様のサブガスケット付膜電極接合体製造装置によると、触媒層の位置を測定することによって、触媒層の軸方向位置を有効に特定することができる。このため、触媒層に合わせてサブガスケット基材を良好に付加することができる。
【0023】
第6態様のサブガスケット付膜電極接合体製造装置によると、サブガスケット基材の軸方向位置に基づいて、一方の貼付ローラを軸方向へ移動させることができる。このため、電極層基材とサブガスケット基材とを軸方向に関して高精度に位置合わせすることができる。
【0024】
第7態様のサブガスケット付膜電極接合体製造装置によると、切断部の両側端部の位置が測定されるため、切れ目の軸方向の位置に合わせて、サブガスケット基材を電極層基材に付加することができる。
【0025】
第8態様のサブガスケット付膜電極接合体の製造方法によると、第1および第2貼付ローラのうち、軸方向へ移動する一方の貼付ローラで、保持対象物を吸着して強固に保持することができる。このため、当該一方の貼付ローラを軸方向へ移動させたときに、その一方の貼付ローラにおいて、保持対象物が位置ずれすることを抑制できる。したがって、電極層基材およびサブガスケット基材を、軸方向に関して高精度に位置合わせすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態に係るガスケット付加装置の構成を示す図である。
【
図2】第1供給ローラから送り出される電極層基材8を模式的に示す縦断面図および平面図である。
【
図3】切断部が設けられた電極層基材を模式的に示す縦断面図および平面図である。
【
図4】膜電極接合体層の非採用領域の部分が分離された電極層基材8を模式的に示す縦断面図および平面図である。
【
図5】サブガスケット基材を模式的に示す縦断面図および平面図である。
【
図6】カバーフィルムの非対応領域の部分が分離されたサブガスケット基材を模式的に示す縦断面図および平面図である。
【
図7】貼付機構によって貼り合わせられる電極層基材およびサブガスケット基材を模式的に示す縦断面図である。
【
図8】サブガスケット付接合体シートおよびサブガスケット付膜電極接合体を示す縦断面図および平面図である。
【
図9】制御部と、ガスケット付加装置内の各部との電気的接続を示すブロック図である。
【
図10】第1ハーフカット部の+X側面を模式的に示す図である。
【
図11】第1ハーフカット部の+X側面を模式的に示す図である。
【
図12】第1ハーフカット部の-Y側面を模式的に示す図である。
【
図13】第1ハーフカット部のX方向駆動部を模式的に示す図である。
【
図15】吸着ステージの吸着面に吸着されている電極層基材を示す平面図である。
【
図18】電極層基材上の膜電極接合体を模式的に示す平面図である。
【
図19】貼付機構における貼り合わせ処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張又は簡略化して図示されている場合がある。
【0028】
図1は、実施形態に係るガスケット付加装置100の構成を示す図である。ガスケット付加装置100は、膜電極接合体層80を有する電極層基材8に、サブガスケットフィルム92を有するサブガスケット基材9を付加することによって、サブガスケット付きの膜電極接合体を製造する装置である。
【0029】
ガスケット付加装置100は、第1搬送機構1、第2搬送機構2、第1ハーフカット部3、第2ハーフカット部4、貼付機構5、シート回収ローラ6および制御部7を備える。
【0030】
<第1搬送機構1>
第1搬送機構1は、長尺帯状の電極層基材8(
図2参照)を複数のローラで支持しつつ、貼付機構5へ向けて既定の搬送経路8TRに沿って搬送する。第1搬送機構1は、第1供給ローラ11、第1フィードローラ12および第1ダンサーローラ13を備える。また、第1搬送機構1は、搬送経路8TR上の電極層基材8から剥離される部分(後述する電解質膜82の非採用領域8A2)を巻き取って回収する電解質膜回収ローラ14を備える。
【0031】
本実施形態では、電極層基材8が第1搬送機構1によって貼付機構5へ向けて移動する移動方向を搬送方向DR1とし、当該搬送方向DR1に直交する方向であって、電極層基材8の主面(最も面積が大きい面)と平行な方向を幅方向DR2とする。また、搬送経路8TRにおいて、第1供給ローラ11に近い方を搬送方向DR1の上流側とし、貼付機構5に近い方を搬送方向DR1の下流側とする。搬送方向DR1は、電極層基材8の長手方向に一致する。
【0032】
図2は、第1供給ローラ11から送り出される電極層基材8を模式的に示す縦断面図および平面図である。
図2に示すように、電極層基材8は、長尺帯状の第1バックシート81と、第1バックシート81の上面(一方側面)に設けられた長尺帯状の電解質膜82とを含む。電解質膜82の上面には、等間隔で矩形状の第1触媒層83が設けられており、電解質膜82の下面(他方側面)には、第1触媒層83と厚さ方向に重なるように第2触媒層84が設けられる。電極層基材8において、第2触媒層84は、電解質膜82と、第1バックシート81との間に挟まれている。電極層基材8は、図示を省略する外部装置において、あらかじめ製造され、第1供給ローラ11にロール状に巻かれた状態で準備される。電解質膜82、複数の第1触媒層83および複数の第2触媒層84は、膜電極接合体層80を構成する。第1バックシート81と電解質膜82とは、互いに付着している。
【0033】
電解質膜82には、例えば、フッ素系または炭化水素系の高分子電解質膜が用いられる。電解質膜82の具体例としては、パーフルオロカーボンスルホン酸を含む高分子電解質膜(例えば、米国DuPont社製のNafion(登録商標)、旭硝子(株)製のFlemion(登録商標)、旭化成(株)製のAciplex(登録商標)、ゴア(Gore)社製のGoreselect(登録商標))を挙げることができる。電解質膜82の膜厚は、例えば、5μm~30μmとされる。電解質膜82は、大気中の湿気によって膨潤する一方、湿度が低くなると収縮する。すなわち、電解質膜82は、大気中の湿度に応じて変形しやすい性質を有する。
【0034】
第1バックシート81は、電解質膜82の変形を抑制するためのフィルムである。第1バックシート81の材料には、電解質膜82よりも機械的強度が高く、形状保持機能に優れた樹脂が用いられる。第1バックシート81の材料としては、例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)やPET(ポリエチレンテレフタレート)が好適である。第1バックシート81の膜厚は、例えば、25μm~100μmである。
【0035】
図2に示すように、第1バックシート81の幅は、電解質膜82の幅よりも若干大きい。電解質膜82は、第1バックシート81における幅方向の中央に設けられる。第1触媒層83の幅は、電解質膜82の幅よりも小さい。第1および第2触媒層83,84は、それぞれ、電解質膜82の上面および下面の幅方向中央に設けられる。
【0036】
第1および第2触媒層83,84の材料には、高分子形燃料電池のアノードまたはカソードにおいて燃料電池反応を起こす材料が用いられる。例えば、白金(Pt)、白金合金、白金化合物等の触媒粒子が、第1および第2触媒層83,84の材料として用いられる。白金合金の例としては、例えば、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、イリジウム(Ir)、鉄(Fe)等からなる群から選択される少なくとも1種の金属と白金との合金を挙げることができる。一般的には、カソード用の触媒層の材料には白金が用いられ、アノード用の触媒層の材料には白金合金が用いられる。
【0037】
第1フィードローラ12は、
図1に示すように、互いに接するように配置された2つのローラ体を備える。第1フィードローラ12は、当該2つのローラ体の間に電極層基材8を挟持し、当該2つのローラ体が回転することによって、第1供給ローラ11から電極層基材8を引き出す。第1フィードローラ12は、制御部7からの制御信号に応じて、能動回転することが可能に構成される。第1フィードローラ12の回転が停止されると、第1供給ローラ11からの電極層基材8の送り出しが停止され、電極層基材8の第1ハーフカット部3への搬入および第1ハーフカット部3からの搬出が停止される。
【0038】
図3は、切断部8Cが設けられた電極層基材8を模式的に示す縦断面図および平面図である。第1ハーフカット部3は、第1フィードローラ12の下流側に配置される。第1ハーフカット部3は、第1供給ローラ11から送り出された電極層基材8の膜電極接合体層80を、
図3に示すように、採用領域8A1と非採用領域8A2とに切り分ける処理(第1ハーフカット処理)を行う処理部である。第1ハーフカット部3の構成については、後述する。
【0039】
図3に示すように、切断部8Cは、単一の第1触媒層83およびその裏側にある単一の第2触媒層84を取り囲む矩形状に電解質膜82が切断されることによって設けられる。切断部8Cは、電解質膜82をその上面から下面へ貫通する切断面によって構成される。また、切断部8Cは、第1バックシート81を貫通せず、第1バックシート81の上面から厚さ方向の中間部まで到達する切断面によって構成される。すなわち、切断部8Cは、第1バックシート81の下面まで到達しない。
【0040】
第1ダンサーローラ13は、電極層基材8にかかる張力を一定にするため、電極層基材8の張力に応じて上下(電極層基材8の主面に直交する方向)に移動する。第1ダンサーローラ13が上下に移動することによって、電極層基材8にかかる急激な張力の変動が吸収される。
【0041】
電解質膜回収ローラ14は、電極層基材8のうち膜電極接合体層80の非採用領域8A2の部分を巻き取って回収する。非採用領域8A2は、長尺帯状の電解質膜82のうち、採用領域8A1を除いた部分である。電解質膜82の非採用領域8A2は、第1ハーフカット部3よりも下流側の位置にて電極層基材8から剥離され、その後、電解質膜回収ローラ14に巻き取られる。
【0042】
図4は、膜電極接合体層80の非採用領域8A2の部分が分離された電極層基材8を模式的に示す縦断面図および平面図である。
図4に示すように、電解質膜回収ローラ14が、電極層基材8から電解質膜82の非採用領域8A2を回収することによって、第1バックシート81の上面に、電解質膜82の採用領域8A1の部分、および、当該電解質膜82の部分の上面および下面に設けられた単一の第1触媒層83および単一の第2触媒層84で構成される単一の膜電極接合体85が残される。膜電極接合体85は、第1バックシート81とともに、貼付機構5へ向けて搬送される。
【0043】
<第2搬送機構2>
第2搬送機構2は、長尺帯状のサブガスケット基材9(
図5参照)を、複数のローラで支持しつつ、貼付機構5へ向けて既定の搬送経路9TRに沿って搬送する。第2搬送機構2は、第2供給ローラ21および第2ダンサーローラ22を備える。また、第2搬送機構2は、搬送経路9TR上のサブガスケット基材9から剥離される不要部分を巻き取って回収するカバーフィルム回収ローラ23を備える。
【0044】
本実施形態では、第2搬送機構2によって貼付機構5へ向けて移動するサブガスケット基材9の移動方向を搬送方向DR3とする。また、搬送経路9TRにおいて、第1供給ローラ11に近い方を搬送方向DR3の上流側とし、貼付機構5に近い方を搬送方向DR3の下流側とする。搬送方向DR3は、サブガスケット基材9の長手方向に一致する。搬送方向DR3に直交する方向であって、サブガスケット基材9の主面(最も面積が大きい面)と平行な方向は、幅方向DR2と一致する。
【0045】
図5は、サブガスケット基材9を模式的に示す縦断面図および平面図である。なお、
図5に示すサブガスケット基材9には、切断部9Cが設けられている。この切断部9Cは、後述する第2ハーフカット部4によって設けられる部分であり、第2供給ローラ21から送り出された直後は設けられていない。
【0046】
図5に示すように、サブガスケット基材9は、長尺帯状の第2バックシート91と、第2バックシート91の上面(一方側面)に設けられる長尺帯状のサブガスケットフィルム92と、サブガスケットフィルム92の上面(一方側面)に設けられる長尺帯状のカバーフィルム93とを有する。サブガスケット基材9は、図示を省略する外部装置において、あらかじめ製造され、第2供給ローラ21にロール状に巻かれた状態で準備される。
【0047】
サブガスケットフィルム92の材料としては、電解質膜82よりも機械的強度が高く、形状保持機能に優れた樹脂が好適である。サブガスケットフィルム92の材料としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)またはPS(ポリスチレン)が好適である。サブガスケットフィルム92の膜厚は、例えば、25~100μmである。
【0048】
サブガスケット基材9において、第2バックシート91の上面(一方側面)は、接着剤の層が形成された接着面となっている。接着剤には、例えば、感圧性接着剤が用いられる。ただし、感圧性接着剤に代えて、熱硬化性接着剤、熱可塑性接着剤またはUV硬化型接着剤が用いられていてもよい。第2バックシート91の当該接着面は、サブガスケットフィルム92に覆われている。第2バックシート91の材料としては、例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)やPET(ポリエチレンテレフタレート)が好適である。第2バックシート91の膜厚は、例えば、25μm~100μmである。
【0049】
サブガスケット基材9において、サブガスケットフィルム92の上面(一方側面)は、接着剤の層が形成された接着面となっている。サブガスケットフィルム92の当該接着面は、カバーフィルム93で覆われている。カバーフィルム93は、サブガスケットフィルム92から容易に剥がすことが可能な程度の力で接着される。カバーフィルム93の材料としては、特に限定されないが、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)が好適である。
【0050】
第2ダンサーローラ22は、サブガスケット基材9にかかる張力を一定にするため、電極層基材8の張力に応じて左右(サブガスケット基材9の主面に直交する方向)に移動する。また、第2ダンサーローラ22が左右に移動することによって、サブガスケット基材9にかかる急激な張力の変動が吸収される。
【0051】
第2ハーフカット部4は、第2供給ローラ21と第2ダンサーローラ22との間に設けられる。第2ハーフカット部4は、第2供給ローラ21から繰り出されるサブガスケット基材9のうち、カバーフィルム93およびサブガスケットフィルム92を、対応領域9A1と非対応領域9A2とに切り分ける処理(第2ハーフカット処理)を行う処理部である。
【0052】
第2ハーフカット処理とは、
図5に示すように、サブガスケット基材9に切断部9Cを設ける処理をいう。当該切断部9Cは、矩形状である対応領域9A1とそれ以外の非対応領域9A2との境界線(切断対象線9T)に沿って設けられる。対応領域9A1は、例えば、第1触媒層83と相似であり、かつほぼ同一の大きさとされる。なお、対応領域9A1は、第1触媒層83と非相似であってもよい。また、対応領域9A1は、第1触媒層83より大きくてもよい。
【0053】
本例では、第2ハーフカット部4は、上下に対向する2つのローラ41,42を有しており、当該2つのローラ41,42間にサブガスケット基材9が通される。また、サブガスケット基材9のカバーフィルム93側に対向するローラ41の外周面に、ピナクル刃が設けられる。当該ピナクル刃は、対応領域9A1の形状(矩形状)に対応する形状を有する。
【0054】
第2ハーフカット部4は、2つのローラ41,42間でサブガスケット基材9を挟持する。そして、各ローラ41,42がサブガスケット基材9の搬送方向DR3へ向けた移動速度に同期して回転する。ローラ41の外周面に設けられたピナクル刃がサブガスケット基材9に当たると、サブガスケット基材9に切断部9Cが設けられる。これによって、サブガスケット基材9が、対応領域9A1と非対応領域9A2とに切り分けられる。ローラ41の外周は、サブガスケット基材9に設ける切断部9C(換言すると、対応領域9A1)の間隔と一致する。このため、ローラ41,42がサブガスケット基材9の移動に同期して回転することによって、サブガスケット基材9に対して一定ピッチで切断部9Cが設けられる。なお、ローラ41,42が、常に、サブガスケット基材9の移動速度と同期した速度で回転することは必須ではない。例えば、ピナクル刃がサブガスケット基材9に当接するときは、サブガスケット基材9の移動速度と同期した速度でローラ41を回転させ、ピナクル刃がサブガスケット基材9に接触しないときは、サブガスケット基材9の移動速度よりも速い速度でローラ41を回転させてもよい。これにより、サブガスケット基材9に対して切断部9Cを設ける間隔を短くすることができるため、サブガスケット基材9のロスを小さくすることができる。
【0055】
ローラ41,42は、サブガスケット基材9との間に発生する摩擦抵抗によって従動的に回転してもよい。この場合、サブガスケット基材9の移動速度に同期して、ローラ41,42が回転するため、制御部7による、同期制御は不要である。なお、ローラ41,42のうち少なくとも一方が、モータの駆動によって能動的に回転する構成を備えてもよい。この場合、制御部7が、第2搬送機構2によるサブガスケット基材9の移動速度に合わせて、ローラ41,42の回転を制御するとよい。
【0056】
図5に示すように、切断部9Cは、カバーフィルム93及びサブガスケットフィルム92を貫通する切断面によって構成される。また、切断部9Cは、第2バックシート91を貫通せず、第2バックシート91の上面(一方側面)から厚さ方向の中間部まで到達する切断面によって構成される。すなわち、切断部9Cは、第2バックシート91の下面(他方側面)までは到達しない。
【0057】
カバーフィルム回収ローラ23は、切断部9Cが設けられたサブガスケット基材9のうち、カバーフィルム93の非対応領域9A2の部分を巻き取って回収する。カバーフィルム93の非対応領域9A2は、搬送経路9TRにおける、第2ダンサーローラ22と貼付機構5との間の位置にて、サブガスケット基材9から剥離されて、カバーフィルム回収ローラ23に回収される。カバーフィルム回収ローラ23は、剥離部の一例である。
【0058】
図6は、カバーフィルム93の非対応領域9A2の部分が分離されたサブガスケット基材9を模式的に示す縦断面図および平面図である。
図6に示すように、カバーフィルム93の非対応領域9A2の部分が分離されることにより、サブガスケットフィルム92の上面に、カバーフィルム93の対応領域9A1である矩形状部分が残される。この矩形状部分は、第2バックシート91およびサブガスケットフィルム92とともに、貼付機構5へ搬送される。
【0059】
図7は、貼付機構5によって貼り合わせられる電極層基材8およびサブガスケット基材9を模式的に示す縦断面図である。
図7に示すように、貼付機構5は、電解質膜82の非採用領域8A2の部分が分離された電極層基材8(
図4参照)と、カバーフィルム93の非対応領域9A2の部分が分離されたサブガスケット基材9とを互いに貼り合わせる。ここでは、電極層基材8における膜電極接合体85の第1触媒層83の上面が、サブガスケット基材9におけるカバーフィルム93の上面と合わさるように、電極層基材8およびサブガスケット基材9が貼り合わせられる。また、電極層基材8における膜電極接合体85のうち、第1触媒層83の周囲にある電解質膜82の部分が、サブガスケット基材9におけるカバーフィルム93の周囲にあるサブガスケットフィルム92の表面(接着面)に接着する。
【0060】
本実施形態では、サブガスケット基材9に対して、第1触媒層83に対応する対応領域9A1に、第2バックシート91の厚さ方向中間部まで切断部9Cが設けられ、そして、当該サブガスケット基材9が、電極層基材8に貼り合わされる。すなわち、サブガスケット基材9は、対応領域9A1が切り抜かれずに、電極層基材8と貼り合わせられる。このため、貼付け前のサブガスケットフィルム92の剛性を高く維持することができるため、サブガスケットフィルム92に皺が発生することを抑制できる。
【0061】
第1バックシート回収ローラ65は、貼付機構5において、サブガスケット基材9と張り合わされた電極層基材8から剥離される第1バックシート81を巻き取って回収する。第1バックシート81は、貼付機構5とシート回収ローラ6との間の位置で、電極層基材8から剥離される。これにより、サブガスケット付接合体シート87(
図8参照)が形成される。
【0062】
図8は、サブガスケット付接合体シート87およびサブガスケット付膜電極接合体89を示す縦断面図および平面図である。サブガスケット付接合体シート87は、膜電極接合体85の片面にサブガスケット基材9が取り付けられた構造を有する。サブガスケット付接合体シート87では、膜電極接合体85における第1触媒層83の周囲だけでなく、第1触媒層83にも、サブガスケットフィルム92の対応領域9A1の部分、さらには、カバーフィルム93の対応領域9A1の部分が付加される。このため、電解質膜82および第1触媒層83(さらには、第2触媒層84)の剛性を高めることができるため、この部分の皺の発生などの変形を抑制することができる。
【0063】
サブガスケット付接合体シート87は、シート回収ローラ6によってロール状に巻き取られて回収される。サブガスケット付接合体シート87は、その第2バックシート91側の面が、シート回収ローラ6の外周面に対向する状態で、シート回収ローラ6に巻き取られる。これにより、サブガスケット付接合体シート87における第2触媒層84が、シート回収ローラ6の外周面と直に接触することを抑制できる。
【0064】
図1に示すように、シート回収ローラ6は、サブガスケット付接合体シート87を巻き取って回収する。シート回収ローラ6の回転軸には、不図示のモータが接続されており、制御部7の制御下で回転する。
【0065】
なお、
図8に示すように、サブガスケット付接合体シート87から、第2バックシート91を剥離すると、第2バックシート91とともに、サブガスケットフィルム92における切断部9Cの内側の不要部分(対応領域9A1の部分)、およびカバーフィルム93を剥離することができる。これによって、膜電極接合体85のエッジ部分に、枠体であるサブガスケットフィルム92の非対応領域9A2の部分が付加されたサブガスケット付膜電極接合体89を得ることができる。なお、サブガスケット付膜電極接合体89において、例えば
図8に示すように、サブガスケットフィルム92を、膜電極接合体85よりも一回り大きい矩形状の破断線85Cの位置で切断することによって、1つの膜電極接合体85に額縁状のサブガスケットフィルムが付加されたサブガスケット付膜電極接合体を得ることができる。
【0066】
図9は、制御部7と、ガスケット付加装置100内の各部との電気的接続を示すブロック図である。制御部7は、ガスケット付加装置100内の各部の動作を制御する。
図9中、概念的に示すように、制御部7は、CPU等のプロセッサ71、RAM等のメモリ72およびハードディスクドライブなどの記憶部73を有するコンピュータにより構成される。記憶部73には、ガスケット付加装置100の動作を制御するためのコンピュータプログラムPが、インストールされている。
【0067】
<第1ハーフカット部3>
図10~
図13を参照しつつ、第1ハーフカット部3の構成について説明する。なお、
図10~
図13には、説明の便宜上、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示す矢印を付している。以下の説明では、各矢印の先端が向く方を+(プラス)方向とし、その逆方向を-(マイナス)方向とする。X方向は、搬送方向DR1と平行であり、Y方向は、幅方向DR2と平行であり、Z方向は、電極層基材8の上面に垂直な方向である。本例では、X方向およびY方向は、水平面と平行であり、Z方向は、鉛直方向と平行である。
【0068】
図10は、第1ハーフカット部3の+X側面を模式的に示す図である。
図11は、第1ハーフカット部3の+X側面を模式的に示す図である。
図12は、第1ハーフカット部3の-Y側面を模式的に示す図である。
図13は、第1ハーフカット部3のX方向駆動部34を模式的に示す図である。
【0069】
第1ハーフカット部3は、搬送方向DR1へ移動する電極層基材8に、矩形状の切断部8C(
図3参照)を設ける第1ハーフカット処理を施す装置である。第1ハーフカット部3は、吸着ステージ30、ロータリーダイカッター31、回転駆動部32、移動駆動部33を備える。
【0070】
吸着ステージ30は、電極層基材8を第1バックシート81側から吸着して保持する。吸着ステージ30の吸着面(+Z側面)は、X方向を長手方向とし、Y方向を短手方向とする長方形状を有する。
【0071】
ロータリーダイカッター31は、Y方向に延びる回転軸31Aを中心に回転する円筒状の部材である。ロータリーダイカッター31の外周面には、ピナクル刃311が設けられている。ピナクル刃311は、電極層基材8における第1触媒層83の周囲の切断対象線8T(
図14参照)に沿って電極層基材8に切断部8Cを設ける。本例では、切断部8Cは、正方形状であるため、ピナクル刃311は、Y方向(幅方向DR2)に沿って互いに平行に延びる2つの幅方向部分312と、ロータリーダイカッター31の周方向に沿って互いに平行に延びる2つの周方向部分313とで構成される。
【0072】
移動駆動部33は、ロータリーダイカッター31を保持する架橋体331、架橋体331をX方向へ移動させるX方向駆動部34、架橋体331をY方向へ移動させるY方向駆動部35、ロータリーダイカッター31をZ方向へ移動させるZ方向駆動部36を備える。
【0073】
架橋体331は、吸着ステージ30の+Y側および-Y側に配置されたZ方向に延びる2つの柱部332、および、当該2つの柱部332の+Z側端部どうしを連結する梁部333を有する。2つの柱部332の間に、ロータリーダイカッター31が配置される。
【0074】
移動駆動部33は、ロータリーダイカッター31を、少なくとも、離間位置L11(
図10参照)とハーフカット位置L12(
図11参照)とに移動させる。
図10に示すように、離間位置L11に配置されたロータリーダイカッター31は、吸着ステージ30よりも上側の搬送経路8TRを通過する電極層基材8に対して、上方(+Z側)へ離れる。また、
図11に示すように、ロータリーダイカッター31がハーフカット位置L12に配置されると、ロータリーダイカッター31が回転することによって、ピナクル刃311が吸着ステージ30に吸着された電極層基材8の上面に当接するとともに、切断部8Cを設けることが可能となる。
【0075】
<Z方向駆動部36>
Z方向駆動部36は、ロータリーダイカッター31の+Y側および-Y側それぞれに、Z方向ガイド361、昇降プレート362、スプリング363および偏心カム364を1つずつ備える。また、Z方向駆動部36は、Y方向へ延びる回転軸365、および、回転軸365を回転させるZ方向モータ366を備える。2つの偏心カム364は、回転軸365に取り付けられている。
【0076】
スプリング363は、昇降プレート362と、昇降プレート362よりも-Z側に配置されたY方向ガイド353との間に配置される。スプリング363は、昇降プレート362の-Z側端部に連結されており、昇降プレート362を+Z側へ付勢する。昇降プレート362の+Z側端部は、偏心カム364の外周面(カム面)の-Z側端部に当接する。回転軸365とともに偏心カム364が回転すると、偏心カム364の-Z側端部がZ方向に変位する。これによって、偏心カム364に押圧される昇降プレート362の位置もZ方向に変位する。昇降プレート362は、Z方向に延びるZ方向ガイド361に連結されており、Z方向ガイド361によって鉛直方向と平行に変位する。
【0077】
ロータリーダイカッター31の回転軸31Aの両端部は、ベアリング32Bを介して、昇降プレート362に支持されている。このため、昇降プレート362とともに、ロータリーダイカッター31がZ方向へ移動する。
【0078】
<Y方向駆動部35>
Y方向駆動部35は、サーボモータであるY方向モータ351、Y方向へ延びるボールネジ352、および、Y方向に沿って延びる4つのY方向ガイド353を有する(
図13参照)。架橋体331の-Z側部分は、各Y方向ガイド353に連結されている。また、ボールネジ352は、架橋体331の-Y側面に設けられたナット部材に連結されている(
図10,
図12参照)。Y方向モータ351がボールネジ352を回転させることによって、架橋体331がY方向ガイド353に沿ってY方向へ移動する。これにより、ロータリーダイカッター31がY方向へ移動する。
【0079】
<X方向駆動部34>
X方向駆動部34は、サーボモータであるX方向モータ341、X方向へ延びるボールネジ342、および、X方向と平行に延びる2つのX方向ガイド343を備える。ボールネジ342は、架橋体331の+X側面に連結されており、X方向モータ341がボールネジ342を回転させることによって、架橋体331がX方向ガイドに沿って343に沿ってX方向へ移動する。これにより、ロータリーダイカッター31がX方向へ移動する。
【0080】
<回転駆動部32>
回転駆動部32は、回転軸31Aを回転させることによって、ロータリーダイカッター31を回転させる。回転駆動部32は、回転モータ321およびクラッチ322を備える。
【0081】
回転モータ321は、回転軸31Aの-Y側端部に連結されている。回転モータ321が回転軸31Aを回転させることによって、ロータリーダイカッター31が回転軸31Aを中心にして回転する。回転軸31Aの両側部分は、+Y側および-Y側の昇降プレート362に、ベアリング32Bを介して支持される。
【0082】
クラッチ322は、回転軸31Aにおける、回転モータ321とロータリーダイカッター31との間に設けられている。回転軸31Aは、クラッチ322によって、原動軸(クラッチ322よりも回転モータ321側の軸部分)と、従動軸(クラッチ322よりもロータリーダイカッター31側の軸部分)とに分割されている。クラッチ322が原動軸と従動軸を断続することによって、回転モータ321からロータリーダイカッター31への回転駆動力の伝達を断続することができる。なお、クラッチ322は、必須ではなく、省略してもよい。
【0083】
架橋体331の-Y側の柱部332には、回転軸31Aが挿通される、Y方向に貫通する貫通孔(不図示)が設けられる当該貫通孔は、Z方向に長い長円状など、回転軸31Aの昇降移動を許容する形状である。
る。
【0084】
図14は、吸着ステージ30の吸着面30Sを示す平面図ある。
図15は、吸着ステージ30の吸着面30Sに吸着されている電極層基材8を示す平面図である。吸着ステージ30における、電極層基材8を吸着する吸着面30S(+Z側面)には、吸着溝301が設けられている。また、吸着溝301の内側に、雰囲気を吸引する複数の吸引孔302が設けられている。
【0085】
吸着溝301は、+X方向に向かって+Y方向へ延びる複数の第1凹部303、および、+X方向に向かって-Y方向へ延びる複数の第2凹部304を含む。複数の第1凹部303および複数の第2凹部304は、複数の交差点305で交差しており、その交差点305において互いに連結されている。また、本実施形態では、この複数の交差点305のうちの一部に、吸引孔302が設けられている。なお、吸引孔302は、複数あることは必須ではなく、1つであってもよい。
【0086】
吸引孔302は、不図示の吸引配管を介して、真空ポンプなどを含む吸引部30P(
図10参照)に接続されている。吸引孔302は、吸引部30Pの作用によって、周囲の雰囲気を吸引する。制御部7は、吸引配管に設けられたバルブ(不図示)を制御することによって、吸引孔302による雰囲気の吸引の開始および停止を制御する。制御部7が、吸引孔302による雰囲気の吸引を開始させると、電極層基材8が吸着ステージ30の吸着面30Sに吸着される。制御部7が吸引孔302による雰囲気の吸引を停止させると、電極層基材8の吸着が解除され、電極層基材8が吸着ステージ30から上方(+Z側)へ離れる。
【0087】
第1ハーフカット部3において電極層基材8に設けられる切断部8Cに対応する切断対象線8Tは、X方向に平行な部分と、Y方向に平行な部分とを含む矩形状である。吸着溝301は、切断対象線8Tにおける、X方向に平行な部分およびY方向に平行な部分と交差する第1凹部303および第2凹部304を含む。
【0088】
吸着溝301に沿って、電極層基材8を吸着ステージ30に吸着できるため、第1ハーフカット処理中に電極層基材8がずれることを軽減できる。また、吸着溝301が切断対象線8Tとは交差する方向に延びる、複数の第1凹部303および複数の第2凹部304を含む。このため、電極層基材8における切断対象線8Tの各部分を横断する吸着溝301で、電極層基材8保持することができる。したがって、電極層基材8にピナクル刃311が当てられた状態でも、吸着ステージ30が電極層基材8のその当接部分を強固に保持することができるため、電極層基材8の切断対象線8Tに精度良く切断部8Cを設けることができる。
【0089】
図12に示すように、第1ハーフカット部3は、撮像部37を備えている。撮像部37は、吸着ステージ30の吸着面30Sよりも+Z側に配置される。撮像部37は、イメージセンサを有する1つまたは複数のカメラを備える。撮像部37は、吸着ステージ30に吸着される電極層基材8における第1触媒層83を撮像する。撮像部37は、制御部7と電気的に接続されており、撮像によって得られる画像信号を制御部7へ送信する。
【0090】
図12に示すように、制御部7は、位置特定部710として機能する。位置特定部710は、プロセッサ71が、コンピュータプログラムPを実行することによってソフトウェア的に実現される機能である。なお、位置特定部710は、特定用途向け集積回路などのハードウェア的構成であってもよい。位置特定部710は、撮像部37によって取得された画像において、第1触媒層83の位置(例えば、重心位置)を特定する。さらに、制御部7は、特定された第1触媒層83の位置に基づいて、切断対象線8Tを設定するとともに、その設定された切断対象線8Tに応じて移動駆動部33を動作させることにより、ロータリーダイカッター31を移動させる。
【0091】
位置特定部710は、例えば、
図15に示すように、第1触媒層83の4つの角部831,832、833,834を特定し、それらの位置に基づいて、第1触媒層83の重心位置を特定してもよい。この場合、撮像部37は、複数のカメラで角部831~834をそれぞれ撮影してもよい。また、撮像部37は、1つのカメラで角部831~834を1度に撮影してもよいし、あるいは、その1つのカメラを移動させることによって、複数回に分けて撮像してもよい。
【0092】
また、位置特定部710が、角部831~834の位置から第1触媒層83の位置を特定することは必須ではない。例えば、位置特定部710は、第1触媒層83の四辺の位置を特定し、それらの位置に基づいて、第1触媒層83の位置を特定してもよい。
【0093】
また、位置特定部710は、第2触媒層84の位置を特定してもよい。例えば、第1バックシート81が透明性を有する場合、撮像部37を電極層基材8の第1バックシート81側に配置して、撮像部37が第2触媒層84を撮像してもよい。この場合、第2触媒層84の位置に基づいて、制御部7が切断対象線8Tを適切に設定することができる。
【0094】
また、位置特定部710は、第1および第2触媒層83,84それぞれの位置を特定し、制御部7が、それらの位置に基づいて、切断対象線8Tを設定してもよい。この場合、制御部7が、例えば、第1触媒層83の重心位置と第2触媒層84の重心位置との間の中間点を基準にして、切断対象線8Tを設定してもよい。
【0095】
電極層基材8において、形状不良等の不良を有する第1または第2触媒層83,84が含まれる場合、制御部7は、その不良品については第1ハーフカット部3において第1ハーフカット処理を行わずに、スキップするようにしてもよい。この場合、必然的に、電極層基材8について第1ハーフカット処理が行われる間隔は、等ピッチとは限らなくなる。
【0096】
第1または第2触媒層83,84の良品検査は、例えば、電解質膜82上に第1または第2触媒層83,84が設けられたときに行われてもよい。この場合、その良品検査の結果に基づき、各第1または第2触媒層83,84の良・不良を示す管理データを準備しておくとよい。そして、ガスケット付加装置100においては、制御部7が当該管理データを参照することによって、「良品」とされた第1または第2触媒層83,84を含む領域についてのみ、第1ハーフカット部3にて第1ハーフカット処理が実行されてもよい。この場合、電極層基材8に対して不要な切断部8Cが設けられることを抑制できるため、ガスケット付加装置100において、サブガスケット付接合体シート87を効率的に製造することができる。また、採用されない第1触媒層83がサブガスケット基材9に貼り付けられることが抑制されるため、サブガスケット基材9が無駄に消費されることを抑制できる。
【0097】
なお、第1または第2触媒層83,84の良品検査は、ガスケット付加装置100において行われてもよい。この場合、第1供給ローラ11と第1ハーフカット部3との間の位置に、第1または第2触媒層83,84を撮像するカメラを設けてもよい。そして、制御部7が、カメラで得られた画像に対してパターンマッチング等の検査手法を適用することによって、第1または第2触媒層83,84についての良品検査が行われてもよい。
【0098】
<第1ハーフカット処理の流れ>
ガスケット付加装置100において行われる第1ハーフカット処理を説明する。まず、第1搬送機構1によって、電極層基材8において、良品とされる第1触媒層83を含む採用領域8A1が吸着ステージ30上の既定位置に搬送されると、制御部7は、第1搬送機構1を制御して、電極層基材8の搬送方向DR1(+X方向)へ向けた移動を停止させる。採用領域8A1が、既定位置に到達したか否かの判定は、例えば、搬送経路8TR上の所定位置に配されたフォトセンサで、目的の第1触媒層83の通過を検出することによって行われてもよい。
【0099】
電極層基材8の移動を停止させた後、制御部7は、吸着ステージ30の吸引孔302から雰囲気の吸引を開始する。これによって、電極層基材8が、吸着溝301を介して、吸着面30Sに吸着される。
【0100】
続いて、撮像部37が第1触媒層83を撮像するとともに、位置特定部710が、その撮像によって得られた画像において、第1触媒層83の位置を特定する。そして、制御部7が、特定された第1触媒層83の位置に基づいて、切断対象線8Tを設定する。
【0101】
続いて、制御部7は、ロータリーダイカッター31を、離間位置L11(
図10参照)からハーフカット位置L12(
図11参照)へ移動させる。ハーフカット位置L12は、ロータリーダイカッター31のピナクル刃311が、電極層基材8に切断部8Cを設けるときの、ロータリーダイカッター31の位置である。上述したように、切断対象線8Tは、位置特定部710によって特定された第1触媒層83(または第2触媒層84)の位置に応じて異なる。このため、ロータリーダイカッター31のハーフカット位置L12は、第1触媒層83の位置に応じて変動し得る。
【0102】
また、ロータリーダイカッター31がハーフカット位置L12へ移動する前に、制御部7は、回転駆動部32を制御することによって、ロータリーダイカッター31のピナクル刃311が初期位置に配されるまで、ロータリーダイカッター31を回転させる。
【0103】
ピナクル刃311の初期位置は、例えば
図11に示すように、ピナクル刃311のうち、切断対象線8Tの最上流部分8T1(
図15参照)に当接する刃部分(ここでは、幅方向部分312)が、ロータリーダイカッター31の最下端に配される状態とすることができる。この場合、ロータリーダイカッター31が-Z側へ下降して、ハーフカット位置L12に配されることによって、ピナクル刃311が電極層基材8の最上流部分8T1に切断部8Cを設けることができる。
【0104】
ロータリーダイカッター31がハーフカット位置L12に配されると、ロータリーダイカッター31の外周面が、吸着ステージ30に吸着された電極層基材8の上面(第1触媒層83または電解質膜82)に接触し、さらに好ましくは、ロータリーダイカッター31の外周面と吸着ステージ30の吸着面30Sとが、電極層基材8を挟んで押圧する状態となる。この状態で、制御部7は、回転駆動部32および移動駆動部33によって、ロータリーダイカッター31の上流側(-Y側)への移動に同期してロータリーダイカッター31を回転させる。そして、ピナクル刃311が、初期位置から終了位置まで既定の角度分だけ回転することによって、切断対象線8Tに沿った切断部8Cが電極層基材8に設けられる。
【0105】
なお、電極層基材8とロータリーダイカッター31との間に発生する摩擦抵抗を利用して、ロータリーダイカッター31を従動回転させてもよい。この場合、例えば、制御部7は、ピナクル刃311を初期位置へ移動させた後、クラッチ322を制御することによって、回転軸31Aにおける原動軸と従動軸の接続を切断してもよい。なお、上述のように、ハーフカット位置L12において、ロータリーダイカッター31を能動的に回転させる場合には、クラッチ322を省略してもよい。
【0106】
ピナクル刃311が終了位置まで回転すると、制御部7は、移動駆動部33によって、ロータリーダイカッター31を+Z側へ上昇させて、離間位置L11へ移動させる。そして、制御部7は、吸着ステージ30による電極層基材8の吸着を解除する。そして、制御部7は、第1搬送機構1によって、電極層基材8を再び搬送方向DR1へ向けて移動させる。
【0107】
第1ハーフカット部3の場合、吸着ステージ30に対して、ロータリーダイカッター31の位置を移動させることができる。このため、吸着ステージ30に吸着された電極層基材8に対して、ロータリーダイカッター31に設けられた刃を移動させることができる。したがって、電極層基材8の適切な位置に切断部8Cを設けることができる。
【0108】
特に、本実施形態では、ロータリーダイカッター31を、X方向(搬送方向DR1)、Y方向(幅方向DR2)へ移動させることができる。このため、電極層基材8の表面に平行な方向について、切断部8Cを設ける位置を調整することができる。また、本実施形態では、ロータリーダイカッター31をZ方向(電極層基材8の厚さ方向)へ移動させることができる。このため、電極層基材8に設けられる切断部8Cの深さを調整することができる。
【0109】
第1ハーフカット部3は、電極層基材8に第1バックシート81を残しつつ、電解質膜82を切断する。したがって、第1ハーフカット部3の第1ハーフカット処理によって設けられる膜電極接合体85を、第1バックシート81上に残しつつ、貼付機構5においてサブガスケット基材9と貼り合わせることができる。このため、第1および第2触媒層83,84を含む膜電極接合体85に、皺が発生することを抑制できる。
【0110】
また、第1ハーフカット部3においては、ロータリーダイカッター31の回転軸31Aが、電極層基材8の長手方向に直交する幅方向DR2に沿って配置されている。このため、ロータリーダイカッター31が回転軸31Aを中心に回転しつつ、電極層基材8の長手方向へ移動することによって、電極層基材8に切断部8Cを効率的に設けることができる。
【0111】
また、第1ハーフカット部3においては、位置特定部710によって特定された第1触媒層83の位置に基づいて切断対象線8Tが決定され、その切断対象線8Tに合わせて、ロータリーダイカッター31のハーフカット位置L12が設定される。これにより、第1触媒層83の位置に合わせて、切断部8Cを精度良く設けることができる。
【0112】
ガスケット付加装置100においては、第1搬送機構1は、吸着ステージ30上における電極層基材8の移動および停止を交互に行いつつ、電極層基材8を搬送方向DR1へ搬送する。そして、ガスケット付加装置100が、電極層基材8を停止させている状態で、移動駆動部33がロータリーダイカッター31をハーフカット位置L12へ移動させる。このため、電極層基材8に設けられる切断部8Cの位置精度を向上することができる。
【0113】
<貼付機構5の構成>
図16および
図17を参照しつつ、貼付機構5の構成について説明する。なお、
図16および
図17には、説明の便宜上、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示す矢印を付している。+X方向は、搬送方向DR1と一致し、-X方向は搬送方向DR3と一致する。また、Y方向は、幅方向DR2と平行である。
【0114】
図16および
図17は、貼付機構5を模式的に示す側面図である。
図7において説明したように、貼付機構5は、電解質膜82のうち非採用領域8A2の部分が分離された電極層基材8と、カバーフィルム93における非対応領域9A2の部分が分離されたサブガスケット基材9とを貼り合わせる装置である。貼付機構5は、後述する位置合わせ処理を行うことによって、第1触媒層83と切断部9C(対応領域9A1)とを互いに位置合わせした状態で、電極層基材8およびサブガスケット基材9を貼り合わせる。貼付機構5は、第1貼付ローラ51、第2貼付ローラ52、吸着機構53、貼付ローラ移動駆動部54、第1撮像部55、および第2撮像部56を備える。
【0115】
第1貼付ローラ51は、外周面に電極層基材8を保持する円筒状の部材であって、幅方向DR2へ延びる回転軸51Aを中心に回転する。第1貼付ローラ51は、電極層基材8を第1バックシート81側から保持する。第1貼付ローラ51の外周面は、例えば、ゴムで構成されていてもよい。
【0116】
第2貼付ローラ52は、外周面にサブガスケット基材9を保持する円筒状の部材である。幅方向DR2に延びる回転軸52Aを中心に回転する。第2貼付ローラ52は、サブガスケット基材9を第2バックシート91側から保持する。第1および第2貼付ローラ51,52は、電極層基材8およびサブガスケット基材9から受ける摩擦抵抗によって受動的に回転する従動ローラであってもよい。また、第1および第2貼付ローラ51,52は、能動的に回転してもよい。すなわち、回転軸51A,52Aに、不図示のサーボモータを接続し、制御部7が当該サーボモータを制御することによって、第1および第2貼付ローラ51,52を回転させてもよい。
【0117】
第2貼付ローラ52は、第1貼付ローラ51と平行に配置される。吸着機構53は、第2貼付ローラ52の外周面に、第2貼付ローラ52の保持対象物であるサブガスケット基材9を吸着させる機構である。
【0118】
吸着機構53は、第2貼付ローラ52の外周面に設けられた多孔質部材531と、多孔質部材531に接続される吸引部532を備える。多孔質部材531は、多数の微小な孔を有しており、例えば、多孔質カーボンや多孔質セラミックス等の多孔質材料で構成される。多孔質セラミックスは、例えば、アルミナ(Al2O3)または炭化ケイ素(SiC)の焼結体である。多孔質部材531における気孔径は、例えば5μm以下とされ、気孔率は、例えば15%~50%とされる。
【0119】
なお、多孔質部材531に代えて、SUS等のステンレスまたは鉄などの金属製部材を用いてもよい。この場合、金属製部材の外表面に、微小な吸着孔が加工によって設けられるとよい。吸着孔の直径は、吸着痕の発生を抑制するために、例えば、2mm以下とされる。
【0120】
吸引部532は、真空ポンプなどで構成され、吸引配管を介して多孔質部材531に連結される。吸引部532の駆動によって、多孔質部材531の外表面付近の雰囲気が、多数の孔に吸引される。これによって、第2貼付ローラ52の外周面(多孔質部材531の外表面)に、サブガスケット基材9が吸着される。ここでは、第2貼付ローラ52は、サブガスケット基材9を第2バックシート91側から吸着して保持する。このように、本実施形態では、第2貼付ローラ52は、吸着ローラとして構成される。
【0121】
貼付ローラ移動駆動部54は、第2貼付ローラ52を移動させる。貼付ローラ移動駆動部54は、接離方向駆動部54Xおよび軸方向駆動部54Yを備える。接離方向駆動部54Xは、
図16および
図17に示すように、第2貼付ローラ52を、第1貼付ローラ51に接近する方向(-X方向)、および、第1貼付ローラ51から離間する方向(+X方向)へ移動させる。
【0122】
接離方向駆動部54Xは、X軸テーブル541と、X軸テーブル541をX方向へ移動させるための直動駆動機構(例えば、リニアモータ機構またはボールネジ機構など)、並びに、X軸テーブルをX方向へ案内するガイド部などを備える。接離方向駆動部54Xの直動駆動機構は、制御部7と電気的に接続されており、制御部7からの制御信号に応じて動作する。
【0123】
軸方向駆動部54Yは、第2貼付ローラ52を、第2貼付ローラ52の回転軸52Aの延びる幅方向DR2(軸方向)と平行なY方向へ移動させる。軸方向駆動部54Yは、Y軸テーブル542、Y軸テーブル542をY方向へ移動させるための直動駆動機構(例えば、リニアモータ機構またはボールネジ機構など)、Y軸テーブルをY方向へ案内するガイド部などを備える。軸方向駆動部54Yの直動駆動機構は、制御部7と電気的に接続されており、制御部7からの制御信号に応じて動作する。軸方向駆動部54Yは、X軸テーブル541に設置されており、X軸テーブルとともに、X方向へ移動する。
【0124】
第2貼付ローラ52の回転軸52Aは、連結部材543を介して、軸方向駆動部54YのY軸テーブル542に連結されている。このため、Y軸テーブル542がY方向へ移動することに伴って、第2貼付ローラ52がY方向へ移動する。また、X軸テーブル541がX方向へ移動することに伴って、第2貼付ローラ52が幅方向DR2へ移動する。
【0125】
第1撮像部55は、第1貼付ローラ51に保持される電極層基材8の+Z側面(第1触媒層83側の表面)に対向して配置される。第2撮像部56は、第2貼付ローラ52に保持されるサブガスケット基材9の+Z側面(カバーフィルム93側の表面)対向して配置される。第1および第2撮像部55,56は、それぞれ、イメージセンサを有する1つまたは複数のカメラで構成される。第1および第2撮像部55,56は、制御部7と電気的に接続されており、イメージセンサで検出される画像信号を制御部7へ送信する。
【0126】
第1撮像部55は、第1貼付ローラ51に保持されている電極層基材8の+Z側面(すなわち、第1触媒層83側の表面)を撮像する。また、第2撮像部56は、第2貼付ローラ52に保持されているサブガスケット基材9の+Z側面(すなわち、カバーフィルム93側の表面)を撮像する。
【0127】
貼付機構5は、第1撮像部55よりも搬送方向DR1の上流側に配置される光センサ551を備える。光センサ551は、例えば、反射型であり、電極層基材8における第1触媒層83にて反射する光を検出する。なお、光センサ551は、透過型であってもよい。光センサ551は、制御部7に電気的に接続され、検出信号を出力する。制御部7は、光センサ551からの検出信号に基づいて、光センサ551の測定地点への第1触媒層83の到達を検出する。また、制御部7は、光センサ551が第1触媒層83の検出を開始してから検出を終了するまでに電極層基材8が進む距離に基づいて、第1触媒層83のX方向(搬送方向DR1)における長さ寸法を測定することができる。
【0128】
図16に示すように、制御部7は、第1および第2位置測定部711,712として機能する。第1および第2位置測定部711,712は、プロセッサ71が、コンピュータプログラムPを実行することによってソフトウェア的に実現される機能である。なお、第1および第2位置測定部711,712は、特定用途向け集積回路などのハードウェア的構成であってもよい。
【0129】
図18は、電極層基材8上の膜電極接合体85を模式的に示す平面図である。第1位置測定部711は、第1撮像部55が取得する画像に基づいて、電極層基材8の位置を特定する。より詳細には、第1位置測定部711は、第1撮像部55が取得する画像において、第1触媒層83の位置(搬送方向DR1および幅方向DR2の位置)を特定する。例えば、
図18に示すように、第1位置測定部711は、第1触媒層83における搬送方向DR1の中心線LX1と、第1触媒層83のX方向に平行な側辺LS1,LS2との交点CL1,CL2の位置を測定する。中心線LX1の位置は、例えば、第1触媒層83のX方向の長さ寸法に基づいて、特定されてもよい。また、側辺LS1,LS2は、第1撮像部55が取得する画像に対して、例えば、2値化処理またはエッジ抽出処理などの公知の画像処理を適用することによって検出されるとよい。また、第1位置測定部711は、交点CL1,CL2の位置の中心を、第1触媒層83の位置として求めてもよい。
【0130】
なお、第1位置測定部711は、第1触媒層83の4つの角部831~834(
図15参照)、または、4辺を検出し、それらの位置に基づいて、第1触媒層83の位置を特定してもよい。
【0131】
第2位置測定部712は、第2撮像部56が取得する画像に基づいて、サブガスケット基材9の位置を特定する。より詳細には、第2位置測定部712は、第2撮像部56が取得する画像において、サブガスケット基材9に設けられた切断部9Cを検出し、その位置に基づいて、切断部9Cの位置(搬送方向DR1の位置および幅方向DR2の位置)を特定する。
【0132】
第1および第2貼付ローラ51,52間で貼り合わせを行わない間は、
図17に示すように、第1および第2貼付ローラ51,52がX方向へ互いに離れる。この状態で、電極層基材8とサブガスケット基材9とを位置合わせする。第1および第2貼付ローラ51,52間で貼り合わせを行う間は、
図18に示すように、第1および第2貼付ローラ51,52が互いに接近する。第1および第2貼付ローラ51,52が最も接近している貼付位置LA1において、電極層基材8とサブガスケット基材9が貼り合わせられることによって、貼合体が形成される。なお、ガスケット付加装置100においては、貼付位置LA1にて貼合体が形成された直後、電極層基材8の第1バックシート81が剥離される。これによって、等間隔に膜電極接合体85を有するサブガスケット付接合体シート87(
図8に示す)が得られる。サブガスケット付接合体シート87は、搬送方向DR4へ送られて、シート回収ローラ6に回収される。
【0133】
図19は、貼付機構5における貼り合わせ処理の流れを示す図である。まず、第1搬送機構1が電極層基材8を+X方向へ搬送することによって、貼り合わせ対象(すなわち、採用領域8A1)である第1触媒層83が、光センサ551に検出される。制御部7は、その検出開始時間をメモリ72に記憶する。制御部7は、その検出開始時間から当該第1触媒層83が検出されなくなる検出終了時間までの、電極層基材8の移動量を、第1触媒層83のX方向の長さ寸法としてメモリ72に記憶してもよい。
【0134】
制御部7は、第1触媒層83が第1撮像部55の撮像位置に到達すると、第1搬送機構1による電極層基材8の搬送を停止する(ステップS21)。そして、制御部7の第1位置測定部711は、第1撮像部55によって得られる画像に基づいて、第1触媒層83の位置を特定する(ステップS22)。
【0135】
一方、制御部7は、切断部9Cが第2撮像部56の撮像位置に到達すると、第2搬送機構2によるサブガスケット基材9の搬送を停止する(ステップS23)。そして、制御部7の第2位置測定部712は、第2撮像部56によって得られる画像に基づいて、切断部9C(対応領域9A1)の位置を特定する(ステップS24)。
制御部7は、ステップS23,S24の処理を、ステップS21,S22の処理と並行して行う。
【0136】
続いて、制御部7は、位置合わせ処理を行う(ステップS25)。すなわち、制御部7は、第1触媒層83と切断部9Cの幅方向DR2(軸方向)の位置のずれを修正するため、軸方向駆動部54Yを制御することによって、第2貼付ローラ52を幅方向DR2(軸方向)へ移動させる。
【0137】
また、制御部7は、第1触媒層83および切断部9Cの各搬送方向DR1,DR3の位置のずれを修正するため、第1または第2搬送機構1,2を制御することによって、電極層基材8またはサブガスケット基材9どちらか一方を搬送する。これにより、貼付機構5における貼付位置LA1(接触位置)において、第1触媒層83と切断部9Cの位置を合わせることができる。
【0138】
ステップS25の位置合わせ処理が完了すると、制御部7は、第2貼付ローラ52を第1貼付ローラ51へ接近させる(ステップS26)。これにより、電極層基材8及びサブガスケット基材9が、第1および第2貼付ローラ51,52の間の貼付位置LA1において、接触される。
【0139】
続いて、制御部7は、第1および第2搬送機構1,2によって、電極層基材8およびサブガスケット基材9の搬送を再開する。これによって、貼付機構5において、電極層基材8およびサブガスケット基材9の貼り合わせが開始される。また、ステップS25における位置合わせ処理によって、第1触媒層83(採用領域8A1)と切断部9C(対応領域9A1)とが位置合わせされた状態で貼り合わされる。
【0140】
本実施形態のガスケット付加装置100では、幅方向DR2(軸方向)へ移動する第2貼付ローラ52によって、サブガスケット基材9を吸着して強固に保持することができる。このため、第2貼付ローラ52を幅方向DR2へ移動させた場合に、第2貼付ローラ52においてサブガスケット基材9が位置ずれすることを抑制できる。これにより、電極層基材8およびサブガスケット基材9を、幅方向DR2に関して高精度に位置合わせすることができるため、電極層基材8にサブガスケット基材9を良好に付加することができる
【0141】
また、サブガスケット基材9を吸着保持する第2貼付ローラ52を、第1貼付ローラ51に対して接離方向へ移動させる。このため、第2貼付ローラ52を接離方向へ移動させたときに、第2貼付ローラ52においてサブガスケット基材9が位置ずれすることを抑制できる。
【0142】
なお、本実施形態では、サブガスケット基材9を保持する第2貼付ローラ52に、吸着機構53が設けられているが、これは必須ではない。すなわち、電極層基材8を保持する第1貼付ローラ51の外周面に多孔質部材531を設けて、第1貼付ローラ51に電極層基材8を吸着保持させてもよい。また、第1貼付ローラ51に、貼付ローラ移動駆動部54を連結することによって、第1貼付ローラ51を軸方向(幅方向DR2)、および、接離方向(X方向)に移動させてもよい。
【0143】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0144】
100 ガスケット付加装置(サブガスケット付膜電極接合体製造装置)
1 第1搬送機構
2 第2搬送機構
4 第2ハーフカット部
5 貼付機構
51 第1貼付ローラ
51A,52A 回転軸
52 第2貼付ローラ
53 吸着機構
531 多孔質部材
532 吸引部
54 貼付ローラ移動駆動部
54X 接離方向駆動部
54Y 軸方向駆動部
55 第1撮像部
56 第2撮像部
6 シート回収ローラ
65 第1バックシート回収ローラ
7 制御部
711 第1位置測定部
712 第2位置測定部
8 電極層基材
80 膜電極接合体層
82 電解質膜
83 第1触媒層
84 第2触媒層
85 膜電極接合体
87 サブガスケット付接合体シート
89 サブガスケット付膜電極接合体
9 サブガスケット基材
91 第2バックシート
92 サブガスケットフィルム
9C 切断部
DR1,DR3,DR4 搬送方向
DR2 幅方向(軸方向)