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特許7258698粒状物質をイムノクロマトグラフィー法によって検出する方法及びそのためのキット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】粒状物質をイムノクロマトグラフィー法によって検出する方法及びそのためのキット
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20230410BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20230410BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
G01N33/543 521
G01N27/62 X
G01N21/78 C
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019163068
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021042983
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100196405
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 邦光
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 雄太
(72)【発明者】
【氏名】溝口 大剛
(72)【発明者】
【氏名】藤本 宏隆
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 真
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝明
【審査官】白形 優依
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-305252(JP,A)
【文献】特開2009-002822(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0109595(KR,A)
【文献】特開2019-007984(JP,A)
【文献】特開2017-106915(JP,A)
【文献】特開2012-112042(JP,A)
【文献】特開2002-267671(JP,A)
【文献】特表2008-533472(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108693347(CN,A)
【文献】特開昭63-096559(JP,A)
【文献】特開2019-113425(JP,A)
【文献】国際公開第2019/124532(WO,A1)
【文献】特開2001-337091(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0130640(KR,A)
【文献】OLIVEIRA-RODRIGUEZ, M. et al.,Point-of-care detection of extracellular vesicles: Sensitivity optimization and multiple-target detection,Biosensors and Bioelectronics,2016年08月02日,Vol.87,pp.38-45
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同じであっても異なってもよい第一の結合対象物質及び第二の結合対象物質を含む結合対象物質を表面上に複数備える粒状物質をイムノクロマトグラフィー法によって検出する方法であって、
(1)前記粒状物質を含む試料と、前記第一の結合対象物質に対する第一の特異的結合物質とを、メンブレン上で接触させ、前記粒状物質を前記第一の特異的結合物質により捕捉する工程、
(2)捕捉された前記粒状物質と、前記第二の結合対象物質に対する第二の特異的結合物質とを接触させ、前記粒状物質を標識する工程、及び、
(3)標識された前記粒状物質を検出する工程
を含み、前記第一の特異的結合物質が、前記メンブレン上に固定されており、前記第二の特異的結合物質が、標識物質に結合しており、
前記粒状物質が、細胞外小胞である、方法。
【請求項2】
互いに同じであっても異なってもよい第一の結合対象物質及び第二の結合対象物質を含む結合対象物質を表面上に複数備える粒状物質をイムノクロマトグラフィー法によって検出する方法であって、
(1)前記粒状物質を含む試料と、前記第一の結合対象物質に対する第一の特異的結合物質とを、メンブレン上で接触させ、前記粒状物質を前記第一の特異的結合物質により捕捉する工程、
(2)捕捉された前記粒状物質と、前記第二の結合対象物質に対する第二の特異的結合物質とを接触させ、前記粒状物質を標識する工程、及び、
(3)標識された前記粒状物質を検出する工程
を含み、前記第一の特異的結合物質が、前記メンブレン上に固定されており、前記第二の特異的結合物質が、標識物質に結合しており、
前記粒状物質が、細胞外小胞である、方法(ただし、前記試料を前記固定されている第一の特異的結合物質に向けて前記メンブレンに直接的に適用しクロマトグラフィー展開させて前記固定されている第一の特異的結合物質を通過せしめた後、前記試料に対して前記第二の特異的結合物質を含有する展開溶媒を前記試料のクロマトグラフィー展開方向とは逆方向に前記固定されている第一の特異的結合物質に向けて前記メンブレンにてクロマトグラフィー展開させる工程を含むものを除く)
【請求項3】
前記標識物質が、金属ナノ粒子、化学発光物質、又は、蛍光物質である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属ナノ粒子が、異方性金属ナノ粒子である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記異方性金属ナノ粒子が、青色又は黒色であり、かつ前記試料が、血液を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記試料に界面活性剤を添加する工程をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第一の結合対象物質が、前記第二の結合対象物質と同じである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第一の結合対象物質における前記第一の特異的結合物質の結合部位が、前記第二の結合対象物質における前記第二の特異的結合物質の結合部位と同じである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記検出工程が、前記粒状物質を定量する工程を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記定量工程が、質量分析装置、イムノクロマトリーダー、又は、画像解析装置で標識シグナルを測定する工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記質量分析装置のイオン化方法が、誘導結合プラズマ(ICP)又はマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法に使用するための、イムノクロマトグラフィー用テストストリップ。
【請求項13】
互いに同じであっても異なってもよい第一の結合対象物質及び第二の結合対象物質を含む結合対象物質を表面上に複数備える粒状物質を、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法により検出するためのキットであって、
メンブレンを含むテストストリップと、
前記第一の結合対象物質に対する第一の特異的結合物質と、
前記第二の結合対象物質に対する第二の特異的結合物質と
を含み、前記第一の特異的結合物質が、前記メンブレン上に固定されており、前記第二の特異的結合物質が、標識物質に結合していることを特徴とする、キット。
【請求項14】
前記方法が、
互いに同じであっても異なってもよい第一の結合対象物質及び第二の結合対象物質を含む結合対象物質を表面上に複数備える粒状物質を検出するためのイムノクロマトグラフィー用テストストリップであって、
前記第一の結合対象物質に対する第一の特異的結合物質が固定された検出部位を備えるメンブレンと、
試料流動方向について前記検出部位の上流側の位置で前記メンブレンと接する第一のサンプルパッドと
を含み、
前記第一のサンプルパッドから前記検出部位に至る途中にコンジュゲートパッドが含まれていないことを特徴とする、テストストリップ
を用いて実施される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、
互いに同じであっても異なってもよい第一の結合対象物質及び第二の結合対象物質を含む結合対象物質を表面上に複数備える粒状物質を検出するためのイムノクロマトグラフィー用テストストリップであって、
前記第一の結合対象物質に対する第一の特異的結合物質が固定された検出部位を備えるメンブレンと、試料流動方向について前記検出部位の上流側の位置で前記メンブレンと接する第一のサンプルパッドとを含む第一の基板と、
第二のサンプルパッドを含む第二の基板と
を含み、
前記第一の基板及び前記第二の基板は、前記第二のサンプルパッドが前記試料流動方向について前記第一のサンプルパッドのさらに上流側の位置で前記メンブレンと接するように、接近可能であることを特徴とする、テストストリップ
を用いて実施される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、
互いに同じであっても異なってもよい第一の結合対象物質及び第二の結合対象物質を含む結合対象物質を表面上に複数備える粒状物質を検出するためのイムノクロマトグラフィー用テストストリップであって、
前記第一の結合対象物質に対する第一の特異的結合物質が固定された検出部位を備えるメンブレンと、
第一の経路における試料流動方向について前記検出部位の上流側の位置で前記メンブレンと接する第一のサンプルパッドと、
前記第一の経路とは異なる第二の経路における試料流動方向について前記検出部位の上流側の位置で前記メンブレンと接する第二のサンプルパッドと
を含み、
前記第二のサンプルパッドが、前記第一のサンプルパッドから離間していることを特徴とする、テストストリップ
を用いて実施される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第二のサンプルパッドが、前記第二の結合対象物質に対する第二の特異的結合物質を含むコンジュゲートパッドを含み、前記第二の特異的結合物質が、標識物質に結合している、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記粒状物質が、前記第一の結合対象物質又は前記第二の結合対象物質と同じであっても異なってもよい第三の結合対象物質をさらに備え、
前記メンブレンが、前記第三の結合対象物質に対する第三の特異的結合物質が固定された追加の検出部位と、前記第一の経路における試料流動方向について前記第一のサンプルパッドの下流側の位置で前記第一の経路を分割するように配置されたスペーサーと、をさらに備え、
前記検出部位及び前記追加の検出部位が、前記スペーサーで分割された異なる経路に配置されている、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記第一の経路及び前記第二の経路とは異なる第三の経路における試料流動方向について前記追加の検出部位の上流側の位置で前記メンブレンと接する第三のサンプルパッドをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第二のサンプルパッド及び/又は前記第三のサンプルパッドが、前記第二の特異的結合物質を含むコンジュゲートパッドを含んでいる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、
互いに同じであっても異なってもよい第一の結合対象物質及び第二の結合対象物質を含む結合対象物質を表面上に複数備える粒状物質を検出するためのイムノクロマトグラフィー用テストストリップであって、
前記第一の結合対象物質に対する第一の特異的結合物質が固定された検出部位を備える第一のメンブレンと、
第一の経路における試料流動方向について前記検出部位の上流側の位置で前記第一のメンブレンと接する第一のサンプルパッドと、
前記検出部位と前記第一のサンプルパッドの間で前記第一のメンブレンと接している第二のメンブレンと、
前記第一の経路とは異なる第二の経路における試料流動方向について前記検出部位の上流側の位置で前記第二のメンブレンと接する第二のサンプルパッドと
を含み、
前記第二のサンプルパッドが、前記第一のサンプルパッドから離間していることを特徴とする、テストストリップ
を用いて実施される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記メンブレンが、イムノクロマトグラフィー試験の成否を判定するコントロール部位をさらに備えている、請求項14~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状物質をイムノクロマトグラフィー法によって検出する方法、及び、そのためのイムノクロマトグラフィー用テストストリップ及びキットに関している。
【背景技術】
【0002】
細胞外小胞やウイルスなどの粒状物質は、イムノクロマトグラフィー法によって検出され得る(特許文献1並びに非特許文献1及び2)。イムノクロマトグラフィー法は、ウェスタンブロッティングやELISAと比較して迅速な検出を可能とする試験方法であり、対象の粒状物質を単離しなくても検出が可能である点や、特定の非検出物質を表面上に備える粒状物質を他の粒状物質と区別して検出することが可能である点などでNanoSightなどによる計測よりも優れている。また、細胞外小胞のエクソソームは、血液や尿の他、母乳、唾液、涙などのあらゆる体液中に含まれている粒状物質であるが、これは細胞に固有のマイクロRNAを含んでいることが知られているため、体液を利用したがん診断におけるターゲット物質としても注目されている。特許文献1並びに非特許文献1及び2には、そのようなエクソソームを検出する方法として、当該エクソソームを標識抗体と反応させて複合体を形成させた後に、当該複合体をラテラルフロー用のメンブレン上で展開し、当該メンブレン上に固定されている捕捉抗体に結合させる方法が記載されている。
【0003】
他方、特許文献2~5には、各種金属ナノ粒子などの標識物質が、被験物質を検出するために使用されることが記載されている。しかしながら、これらの文献には、細胞外小胞などの粒状物質を実際に検出することは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-230280号公報
【文献】国際公開第2015/182770号
【文献】特開2017-95744号公報
【文献】国際公開第2017/154989号
【文献】特願2018-111014号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Journal of Extracellular Vesicles (2016), 5:1, 31803, DOI: 10.3402/jev.v5.31803
【文献】Biosensors and Bioelectronics (2017), 87, 38-45
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のイムノクロマトグラフィー法では、メンブレン上で展開する前に、粒状物質の表面が標識抗体で覆われることになるため、捕捉抗体との反応性が低下し、検出感度が十分ではなかった。本発明は、高い感度で粒状物質を検出する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の順序でイムノクロマトグラフィー法を行うことにより、高い感度で粒状物質を検出することができることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下に示す粒状物質をイムノクロマトグラフィー法によって検出する方法、及び、そのためのイムノクロマトグラフィー用テストストリップ及びキットを提供するものである。
〔1〕互いに同じであっても異なってもよい第一の結合対象物質及び第二の結合対象物質を含む結合対象物質を表面上に複数備える粒状物質をイムノクロマトグラフィー法によって検出する方法であって、
(1)前記粒状物質を含む試料と、前記第一の結合対象物質に対する第一の特異的結合物質とを、メンブレン上で接触させ、前記粒状物質を前記第一の特異的結合物質により捕捉する工程、
(2)捕捉された前記粒状物質と、前記第二の結合対象物質に対する第二の特異的結合物質とを接触させ、前記粒状物質を標識する工程、及び、
(3)標識された前記粒状物質を検出する工程
を含み、前記第一の特異的結合物質が、前記メンブレン上に固定されており、前記第二の特異的結合物質が、標識物質に結合していることを特徴とする、方法。
〔2〕前記粒状物質が、細胞外小胞である、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記標識物質が、金属ナノ粒子、化学発光物質、又は、蛍光物質である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕前記金属ナノ粒子が、異方性金属ナノ粒子である、前記〔3〕に記載の方法。
〔5〕前記異方性金属ナノ粒子が、青色又は黒色であり、かつ前記試料が、血液を含む、前記〔4〕に記載の方法。
〔6〕前記試料に界面活性剤を添加する工程をさらに含む、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の方法。
〔7〕前記第一の結合対象物質が、前記第二の結合対象物質と同じである、前記〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の方法。
〔8〕前記第一の結合対象物質における前記第一の特異的結合物質の結合部位が、前記第二の結合対象物質における前記第二の特異的結合物質の結合部位と同じである、前記〔7〕に記載の方法。
〔9〕前記検出工程が、前記粒状物質を定量する工程を含む、前記〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の方法。
〔10〕前記定量工程が、質量分析装置、イムノクロマトリーダー、又は、画像解析装置で標識シグナルを測定する工程を含む、前記〔9〕に記載の方法。
〔11〕前記質量分析装置のイオン化方法が、誘導結合プラズマ(ICP)又はマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)である、前記〔10〕に記載の方法。
〔12〕前記〔1〕~〔11〕のいずれか一項に記載の方法に使用するための、イムノクロマトグラフィー用テストストリップ。
〔13〕互いに同じであっても異なってもよい第一の結合対象物質及び第二の結合対象物質を含む結合対象物質を表面上に複数備える粒状物質を、前記〔1〕~〔11〕のいずれか一項に記載の方法により検出するためのキットであって、
メンブレンを含むテストストリップと、
前記第一の結合対象物質に対する第一の特異的結合物質と、
前記第二の結合対象物質に対する第二の特異的結合物質と
を含み、前記第一の特異的結合物質が、前記メンブレン上に固定されており、前記第二の特異的結合物質が、標識物質に結合していることを特徴とする、キット。
〔14〕互いに同じであっても異なってもよい第一の結合対象物質及び第二の結合対象物質を含む結合対象物質を表面上に複数備える粒状物質を検出するためのイムノクロマトグラフィー用テストストリップであって、
前記第一の結合対象物質に対する第一の特異的結合物質が固定された検出部位を備えるメンブレンと、
試料流動方向について前記検出部位の上流側の位置で前記メンブレンと接する第一のサンプルパッドと
を含み、
前記第一のサンプルパッドから前記検出部位に至る途中にコンジュゲートパッドが含まれていないことを特徴とする、テストストリップ。
〔15〕前記試料流動方向について前記第一のサンプルパッドのさらに上流側の位置で前記メンブレンと接する第二のサンプルパッドをさらに含み、前記第二のサンプルパッドが、前記第一のサンプルパッドから離間している、前記〔14〕に記載のテストストリップ。
〔16〕前記第二のサンプルパッドが、前記第二の結合対象物質に対する第二の特異的結合物質を含むコンジュゲートパッドを含み、前記第二の特異的結合物質が、標識物質に結合している、前記〔15〕に記載のテストストリップ。
〔17〕前記第一のサンプルパッド及び前記第二のサンプルパッドが、第一のスペーサーを介して互いから離間している、前記〔15〕又は〔16〕に記載のテストストリップ。
〔18〕前記メンブレンが、前記第一のサンプルパッド側から前記第二のサンプルパッド側への前記粒状物質を含む試料の浸透を阻害するように構成されている、前記〔15〕~〔17〕のいずれか一項に記載のテストストリップ。
〔19〕前記粒状物質が、前記第一の結合対象物質又は前記第二の結合対象物質と同じであっても異なってもよい第三の結合対象物質をさらに備え、
前記メンブレンが、前記第三の結合対象物質に対する第三の特異的結合物質が固定された追加の検出部位と、前記試料流動方向について前記第一のサンプルパッドの下流側の位置で前記試料が流動する経路を分割するように配置された第二のスペーサーと、をさらに備え、
前記検出部位及び前記追加の検出部位が、前記第二のスペーサーによって分割された異なる経路に配置されている、前記〔15〕~〔18〕のいずれか一項に記載のテストストリップ。
〔20〕互いに同じであっても異なってもよい第一の結合対象物質及び第二の結合対象物質を含む結合対象物質を表面上に複数備える粒状物質を検出するためのイムノクロマトグラフィー用テストストリップであって、
前記第一の結合対象物質に対する第一の特異的結合物質が固定された検出部位を備えるメンブレンと、試料流動方向について前記検出部位の上流側の位置で前記メンブレンと接する第一のサンプルパッドとを含む第一の基板と、
第二のサンプルパッドを含む第二の基板と
を含み、
前記第一の基板及び前記第二の基板は、前記第二のサンプルパッドが前記試料流動方向について前記第一のサンプルパッドのさらに上流側の位置で前記メンブレンと接するように、接近可能であることを特徴とする、テストストリップ。
〔21〕前記第二のサンプルパッドが、前記第二の結合対象物質に対する第二の特異的結合物質を含むコンジュゲートパッドを含み、前記第二の特異的結合物質が、標識物質に結合している、前記〔20〕に記載のテストストリップ。
〔22〕前記第一の基板及び前記第二の基板が、伸縮構造を介して結合されている、前記〔20〕又は〔21〕に記載のテストストリップ。
〔23〕互いに同じであっても異なってもよい第一の結合対象物質及び第二の結合対象物質を含む結合対象物質を表面上に複数備える粒状物質を検出するためのイムノクロマトグラフィー用テストストリップであって、
前記第一の結合対象物質に対する第一の特異的結合物質が固定された検出部位を備えるメンブレンと、
第一の経路における試料流動方向について前記検出部位の上流側の位置で前記メンブレンと接する第一のサンプルパッドと、
前記第一の経路とは異なる第二の経路における試料流動方向について前記検出部位の上流側の位置で前記メンブレンと接する第二のサンプルパッドと
を含み、
前記第二のサンプルパッドが、前記第一のサンプルパッドから離間していることを特徴とする、テストストリップ。
〔24〕前記第二のサンプルパッドが、前記第二の結合対象物質に対する第二の特異的結合物質を含むコンジュゲートパッドを含み、前記第二の特異的結合物質が、標識物質に結合している、前記〔23〕に記載のテストストリップ。
〔25〕前記メンブレンが、短冊形、U字型、又は、V字型である、前記〔23〕又は〔24〕に記載のテストストリップ。
〔26〕前記粒状物質が、前記第一の結合対象物質又は前記第二の結合対象物質と同じであっても異なってもよい第三の結合対象物質をさらに備え、
前記メンブレンが、前記第三の結合対象物質に対する第三の特異的結合物質が固定された追加の検出部位と、前記第一の経路における試料流動方向について前記第一のサンプルパッドの下流側の位置で前記第一の経路を分割するように配置されたスペーサーと、をさらに備え、
前記検出部位及び前記追加の検出部位が、前記スペーサーで分割された異なる経路に配置されている、前記〔23〕又は〔24〕に記載のテストストリップ。
〔27〕前記第一の経路及び前記第二の経路とは異なる第三の経路における試料流動方向について前記追加の検出部位の上流側の位置で前記メンブレンと接する第三のサンプルパッドをさらに含む、前記〔26〕に記載のテストストリップ。
〔28〕前記第二のサンプルパッド及び/又は前記第三のサンプルパッドが、前記第二の特異的結合物質を含むコンジュゲートパッドを含んでいる、前記〔27〕に記載のテストストリップ。
〔29〕互いに同じであっても異なってもよい第一の結合対象物質及び第二の結合対象物質を含む結合対象物質を表面上に複数備える粒状物質を検出するためのイムノクロマトグラフィー用テストストリップであって、
前記第一の結合対象物質に対する第一の特異的結合物質が固定された検出部位を備える第一のメンブレンと、
第一の経路における試料流動方向について前記検出部位の上流側の位置で前記第一のメンブレンと接する第一のサンプルパッドと、
前記検出部位と前記第一のサンプルパッドの間で前記第一のメンブレンと接している第二のメンブレンと、
前記第一の経路とは異なる第二の経路における試料流動方向について前記検出部位の上流側の位置で前記第二のメンブレンと接する第二のサンプルパッドと
を含み、
前記第二のサンプルパッドが、前記第一のサンプルパッドから離間していることを特徴とする、テストストリップ。
〔30〕前記第一のサンプルパッド又は前記第二のサンプルパッドのいずれか一方が、前記第二の結合対象物質に対する第二の特異的結合物質を含むコンジュゲートパッドを含み、前記第二の特異的結合物質が、標識物質に結合している、前記〔29〕に記載のテストストリップ。
〔31〕前記メンブレンが、イムノクロマトグラフィー試験の成否を判定するコントロール部位をさらに備えている、前記〔14〕~〔30〕のいずれか一項に記載のテストストリップ。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従えば、イムノクロマトグラフィー法において、粒状物質の検出感度を向上することができる。したがって、イムノクロマトグラフィー法によって、粒状物質を迅速かつ高い感度で検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの一態様を示す。
図2】本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの一態様を示す。
図3】本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの一態様を示す。
図4】本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの一態様を示す。
図5】本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの一態様を示す。
図6】本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの一態様を示す。
図7】本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの一態様を示す。
図8】本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの一態様を示す。
図9】本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの一態様を示す。
図10】本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの一態様を示す。
図11】本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの一態様[(A)伸長時及び(B)収縮時]を示す。
図12】本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの一態様を示す。
図13】本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの一態様を示す。
図14】本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの一態様を示す。
図15】本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの一態様を示す。
図16】本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの一態様を示す。
図17】本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの一態様を示す。
図18】本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの一態様を示す。
図19】本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの一態様を示す。
図20】本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの一態様を示す。
図21】本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの一態様を示す。
図22】エクソソーム溶液のウェスタンブロッティングの結果を示す。
図23】本発明又は比較法によるイムノクロマト試験の結果を示す。
図24】本発明によるイムノクロマト試験の結果を示す。
図25】本発明によるイムノクロマト試験の結果を示す。
図26】培養上清中のエクソソームの量の経時変化を示す。
図27】界面活性剤の添加の有無による検出感度の違いを示す。
図28】界面活性剤の添加の有無による検出感度の違いを示す。
図29】測定した輝度差に基づいて作成した検量線を示す。
図30】測定した吸光度に基づいて作成した検量線を示す。
図31】エクソソーム溶液のウェスタンブロッティングの結果を示す。
図32】測定した輝度差に基づいて作成した検量線を示す。
図33】露光時間を変更したときのイムノクロマト試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、粒状物質をイムノクロマトグラフィー法によって検出する方法に関している。本明細書に記載の「イムノクロマトグラフィー法」とは、試料中の対象物質をそれに特異的に結合する物質を使用して検出する方法であって、当該試料をメンブレン上で移動させて対象物質を分離するラテラルフロー型の検出方法だけでなく、当該試料をメンブレンに垂直に移動させて対象物質を分離するフロースルー型(バーティカルフロー型)の検出方法のこともいう。本明細書に記載の「粒状物質」とは、前記イムノクロマトグラフィー法によって検出可能な大きさの粒状の物質のことをいい、前記粒状物質は、表面上に少なくとも1種の結合対象物質を複数備えている。前記結合対象物質は、互いに同じであっても異なってもよい第一の結合対象物質及び第二の結合対象物質を含む。前記粒状物質の粒径は、特に限定されないが、例えば、約10μm以下であってもよく、ある態様では、約5μm以下、約1μm以下、約500nm以下、又は約200nm以下であってもよい。具体的には、前記粒状物質は、例えば、エクソソーム、微小胞、アポトーシス小体、及びラージオンコソームなどの細胞外小胞であってもよく、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、ロタウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、B型肝炎ウイルス、ジカウイルス、及びデングウイルスなどのウイルスであってもよく、クラミジア、梅毒トレポネーマ、溶連菌、炭疽菌、黄色ブドウ球菌、赤痢菌、大腸菌、サルモネラ菌、ネズミチフス菌、パラチフス菌、緑膿菌、及び腸炎ビブリオ菌などの細菌であってもよい。
【0011】
前記粒状物質を含む試料は、イムノクロマトグラフィー法に供することができるものであれば、特に制限なく採用することができ、例えば、本発明の方法に適用する試料として、生体又は培養液などから採取した試料をそのまま採用してもいいし、ろ過や遠心分離などの前処理により精製、部分精製、又は濃縮された試料を採用してもよい。具体的には、前記試料は、例えば、血液(全血、血清、又は血漿)、脳髄液、涙、母乳、肺胞洗浄液、悪性胸膜滲出液、滑液、尿、羊水、腹水、精液、唾液、及びリンパ液などの体液、組織切片の保存液、又は、細胞培養上清などであってもよい。
【0012】
本発明の方法は、
(1)前記粒状物質を含む試料と、前記第一の結合対象物質に対する第一の特異的結合物質とを、メンブレン上で接触させ、前記粒状物質を前記第一の特異的結合物質により捕捉する工程、
(2)捕捉された前記粒状物質と、前記第二の結合対象物質に対する第二の特異的結合物質とを接触させ、前記粒状物質を標識する工程、及び、
(3)標識された前記粒状物質を検出する工程
を含む。前記第一の結合対象物質と前記第二の結合対象物質が同じである場合、前記第一の結合対象物質における前記第一の特異的結合物質の結合部位は、前記第二の結合対象物質における前記第二の特異的結合物質の結合部位と同じであってもいいし、異なっていてもよい。両結合部位が同じであっても、前記粒状物質は、前記結合対象物質を表面上に複数備えているので、前記第一の特異的結合物質により捕捉した後にも、前記第二の特異的結合物質により標識することが可能となっている。
【0013】
前記第一の特異的結合物質は、前記メンブレン上に固定されているものであり、前記第一の結合対象物質を有している粒状物質をメンブレン上に捕捉することができる。前記メンブレンとしては、イムノクロマトグラフィー用テストストリップ(イムノクロマト試験紙)に用いられるもの(前記第一の特異的結合物質を固定化する性能を有し、かつ液体が所期の方向に通行することを妨げない性能を有するもの)を特に制限されることなく使用することができるが、例えば、毛細管作用を有し、液体及びそれに分散した成分を吸収により輸送可能な多孔性メンブレンであってもよい。前記メンブレンの材質は、特に限定されないが、例えば、セルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ガラス繊維、ナイロン、又はポリケトンなどであってもよい。
【0014】
前記第一の特異的結合物質としては、前記メンブレン上に固定できるものであって、かつ、検出の対象である前記粒状物質を、前記第一の結合対象物質との複合体形成を介して前記メンブレン上に捕捉できるものであれば、特に制限なく採用することができる。前記第一の結合対象物質と前記第一の特異的結合物質との組合せの具体例としては、抗原とそれに結合する抗体、抗体とそれに結合する抗原、糖鎖又は複合糖質とそれに結合するレクチン、レクチンとそれに結合する糖鎖又は複合糖質、ホルモン又はサイトカインとそれに結合する受容体、受容体とそれに結合するホルモン又はサイトカイン、タンパク質とそれに結合する核酸アプタマー若しくはペプチドアプタマー、酵素とそれに結合する基質、基質とそれに結合する酵素、ビオチンとアビジン又はストレプトアビジン、アビジン又はストレプトアビジンとビオチン、IgGとプロテインA又はプロテインG、プロテインA又はプロテインGとIgG、T細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン含有分子4(Tim4)とホスファチジルセリン(PS)、PSとTim4、あるいは、第1の核酸とそれに結合する(ハイブリダイズする)第2の核酸等が挙げられる。前記第2の核酸は、前記第1の核酸と相補的な配列を含む核酸であってもよい。
【0015】
前記第一の結合対象物質が抗原である場合には、前記第一の特異的結合物質は抗体であってもよい。具体的には、前記粒状物質がエクソソームである場合には、前記第一の結合対象物質は、CD9、CD63、又はCD81であってもよく、前記第一の特異的結合物質は、それぞれ抗CD9抗体、抗CD63抗体、又は抗CD81抗体であってもよい。前記抗体は、前記抗原に対して特異的に結合するポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体又はそれらの断片であってもよく、該断片は、F(ab)フラグメント、F(ab’)フラグメント、F(ab’)2フラグメント又はF(v)フラグメントであってもよい。
【0016】
前記第二の特異的結合物質は、標識物質に結合しているものであり、前記第二の結合対象物質を有している粒状物質を標識することができる。前記第二の特異的結合物質と前記標識物質とは、共有結合若しくは非共有結合又は直接的若しくは間接的な結合などの様式にかかわらず、結合して複合体を形成していればよい。前記第二の特異的結合物質としては、検出の対象である前記粒状物質を、前記第二の結合対象物質との複合体形成により検出できるものであれば、特に制限なく採用することができる。前記第二の結合対象物質と前記第二の特異的結合物質との組合せの具体例としては、前述した前記第一の結合対象物質と前記第一の特異的結合物質との組合せの具体例と同じものが挙げられる。
【0017】
本明細書に記載の「標識物質」とは、前記第二の特異的結合物質と前記第二の結合対象物質との結合を検出する際の目印を提供する物質のことをいう。前記標識物質は、特に制限されないが、例えば、金属ナノ粒子、化学発光物質、及び、蛍光物質などであってもよい。本明細書に記載の「金属ナノ粒子」とは、金属から製造された粒子であって、ナノメートル(nm)オーダーの大きさを持つ粒子のことをいう。前記金属は、特に限定されないが、金又は銀であってもよい。前記金属ナノ粒子は、特に限定されないが、異方性金属ナノ粒子であってもいいし、球状金属ナノ粒子であってもよい。本明細書に記載の「異方性金属ナノ粒子」とは、形状が異方性である金属ナノ粒子のこと、すなわち球状ではない金属ナノ粒子のことをいう。前記異方性金属ナノ粒子の形状は、特に限定されないが、例えば、多面体状、立方体状、双錘状、棒状(ロッド状)、又は板状(プレート状)であってもよく、当該形状が板状である場合には、その上面と下面の形状は、三角形、四角形、五角形、六角形などの多角形(角が丸みを帯びた形状を含む)又は円形などの板状構造を有している。
【0018】
前記金属ナノ粒子の表面は、別の金属によって被覆されていてもよい。前記金属と前記別の金属との組合せは、形成される被覆付き金属ナノ粒子が、前記第二の特異的結合物質を担持し、かつ標識としての使用が可能である限り特に限定されないが、例えば、前記金属が金である場合、前記別の金属はパラジウムであってもよく、前記金属が銀である場合、前記別の金属は金であってもよい。
【0019】
粒子の最大長径対最大長径に直交する幅の比(最大長径/最大長径に直交する幅;例えば、棒状粒子の場合は長軸/短軸、板状粒子の場合は平面最大長/厚さ)で定義される指数をアスペクト比といい、これは粒子の形状を表すために用いることができる。前記金属ナノ粒子の形状が変わると、その最大吸収波長の位置も変化するので、アスペクト比は、最大吸収波長の指標ともいえる。前記異方性金属ナノ粒子のアスペクト比は、1.00より大きい。アスペクト比が1より大きいことによって、前記異方性金属ナノ粒子は、球状の金属ナノ粒子では達成することのできない色調を示すことができる。例えば、前記異方性金属ナノ粒子は、赤色、マゼンタ、紫色、紺色、青色、シアン、又は、薄水色の色調を示すことができる。試料やメンブレンの色調と区別しやすい色調を示す金属ナノ粒子を使用すれば、前記粒状物質の検出に有利である。例えば、前記粒状物質を含む試料が血液を含む場合には、青色又は黒色の金属ナノ粒子を使用するのが好ましい。
【0020】
前記金属ナノ粒子としては、市販の金属ナノ粒子、又は、金属ナノ粒子の分野で通常採用されている公知の方法で製造した金属ナノ粒子を使用することができる(要すれば特許文献1~5並びに非特許文献1及び2などを参照)。
【0021】
本明細書に記載の「化学発光物質」とは、光子を生成する化学反応に関わる物質のことをいい、例えば、当該化学反応を触媒する化学発光酵素などが含まれる。前記化学発光酵素は、特に限定されないが、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)などのペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、又は、ルシフェラーゼなどであってもよい。前記ペルオキシダーゼは、ルミノール系の化合物の反応を触媒し、前記アルカリフォスファターゼは、ジオキセタン系の化合物の反応を触媒し、前記ルシフェラーゼは、ルシフェリン系の化合物の反応を触媒する。
【0022】
本明細書に記載の「蛍光物質」とは、励起光を吸収して蛍光を発する物質のことをいう。前記蛍光物質は、特に限定されないが、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリスリン(PE)、アロフィコシアニン(APC)、又は、それらの誘導体などであってもよい。
【0023】
前記第二の特異的結合物質と前記標識物質とを結合する方法としては、通常の結合方法を特に制限なく用いることができ、例えば、物理吸着、化学吸着(表面への共有結合)、化学結合(共有結合、配位結合、イオン結合又は金属結合)等を利用して、前記標識物質と前記第二の特異的結合物質とを直接的に結合させる方法や、前記標識物質の表面に水溶性高分子を結合させて、その水溶性高分子の末端又は主鎖若しくは側鎖に、直接的又は間接的に前記第二の特異的結合物質を結合させる方法などを採用することができる。例えば、前記第二の特異的結合物質が抗体であり、前記標識物質が金属ナノ粒子である場合には、当該金属ナノ粒子と抗体の溶液とを混合し、振盪し、遠心分離することで、抗体と結合した金属ナノ粒子(標識された検出抗体)を沈殿物として得ることができる。前記金属ナノ粒子と抗体とを静電吸着により結合させる場合、マイナス電荷を有するポリスチレンスルホン酸で前記金属ナノ粒子表面を被覆すると、当該抗体の結合効率が向上し得る。また、前記標識物質が化学発光酵素である場合には、当該酵素に活性化エステルを導入し、それを前記第二の特異的結合物質と反応させて、両者を結合することができる。
【0024】
特定の理論に拘束されるものではないが、粒状物質を抗体で標識した後にそれをメンブレン上の抗体に捕捉させる従来の方法では、先に結合した標識用抗体が捕捉用抗体の結合を妨げ得るのに対して、本発明の方法では、上記(1)の捕捉工程の後に上記(2)の標識工程及び上記(3)の検出工程を備えていることにより、前記粒状物質を効率的にメンブレン上に捕捉することができ、それによって検出感度も上昇することができると考えられる。前記粒状物質は、前記結合対象物質を表面上に複数備えているので、そのメンブレン側で前記第一の特異的結合物質に結合部位を提供し、かつ他の側面で前記第二の特異的結合物質に結合部位を提供することが可能となっていると考えられる。
【0025】
ある態様では、本発明の方法は、前記試料に界面活性剤を添加する工程をさらに含み得る。前記界面活性剤は、特に限定されないが、例えば、(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール、4-ノニルフェニル-ポリエチレングリコール、ポリソルベート20(Tween(R)20)、ポリソルベート60(Tween(R)60)、ポリソルベート80(Tween(R)80)、ドデシル硫酸ナトリウム、又は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどであってもよい。特定の理論に拘束されるものではないが、前記試料に界面活性剤を添加すると、前記粒状物質が互いに分離して、前記第一の特異的結合物質又は前記第二の特異的結合物質が結合しやすくなり、結果として、前記粒状物質の検出感度を高めることができると考えられる。
【0026】
本発明の検出工程では、検出部位に集合している前記標識物質を、直接的に又は化学反応を起こしたり励起光を照射したりすることによって、目視で又は検出装置を用いて検出することができる。前記検出装置としては、特に限定されないが、例えば、質量分析装置、イムノクロマトリーダー、又は、CCDイメージャーやスキャナー及び画像処理ソフトウェアなどを含む画像解析装置などを使用してもよい。具体的には、前記標識物質がHRPである場合には、イムノクロマト試験後のイムノクロマト試験紙に、ルミノール、過酸化水素、及びエンハンサーなどを含む基質溶液を滴下し、生じた発光をX線フィルムやCCDイメージャーで検出することができる。
【0027】
ある態様では、前記検出工程は、前記粒状物質を定量する工程を含んでもよい。例えば、NanoSightナノ粒子解析システムなどで計測して粒状物質の含有量が判明している標準試料について、スキャナー及び画像処理ソフトウェアなどで求めた輝度差、又は、イムノクロマトリーダーで測定した吸光度に基づいて検量線を作成し、未知の試料中の粒状物質の含有量を求めてもよい。あるいは、イムノクロマト試験後のイムノクロマト試験紙の判定部を裁断し、そこに標識として結合している金属を王水などで溶解して、溶液中の金属濃度を質量分析装置によって測定してもよい。前記質量分析装置のイオン化方法は、特に限定されないが、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)又はマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)であってもよい。
【0028】
本発明の方法は、その目的を損なわない限り、当技術分野で通常使用される任意の工程をさらに含んでもよい。例えば、本発明の方法は、前記粒状物質を単離又は精製する工程を含んでもよい。
【0029】
また別の態様では、本発明は、互いに同じであっても異なってもよい第一の結合対象物質及び第二の結合対象物質を含む結合対象物質を表面上に複数備える粒状物質を、上述した方法により検出するためのキットにも関しており、メンブレンを含むテストストリップと、第一の結合対象物質に対する第一の特異的結合物質と、第二の結合対象物質に対する第二の特異的結合物質とを含み、前記第一の特異的結合物質が、前記メンブレン上に固定されており、前記第二の特異的結合物質が、標識物質に結合していることを特徴としている。
【0030】
また別の態様では、本発明は、前記粒状物質をイムノクロマトグラフィー法によって検出する方法に使用するためのイムノクロマトグラフィー用テストストリップ(イムノクロマト試験紙)にも関している。前記テストストリップは、前記方法を実施することができる限り特に制限されず、ラテラルフロー型のイムノクロマトグラフィー法に使用されるテストストリップであってもいいし、フロースルー型(バーティカルフロー型)のイムノクロマトグラフィー法に使用されるテストストリップであってもよい。簡易なものとしては、例えば、バッキングシートに、メンブレン及び吸水パッドを固定することによって作製することができる。具体的には、バッキングシート(縦40mm、横300mm;ローマン社製、GL-57888)に、その下端に合わせてニトロセルロースメンブレン(縦25mm、横300mm;東洋濾紙株式会社製、IAB120)を貼り付け、さらに吸水パッド(縦20mm、横300mm;Ahlstrom社製、Grade0270)を、ニトロセルロースメンブレンの上端に5mm重なるように貼り付けて、最後に横方向に4mmの間隔で裁断することによって、短冊状のイムノクロマトグラフィー用テストストリップ(イムノクロマト試験紙)を作製することができる。前記メンブレンの中央付近には、常法により前記第一の特異的結合物質を固定する。このようにして作製したテストストリップは、吸水パッドが取り付けられていない側のメンブレンを展開液に浸すことによって使用することができる。
【0031】
また別の態様では、本発明は、前記粒状物質をイムノクロマトグラフィー法によって検出する方法に使用するのに適した形状を有するイムノクロマトグラフィー用テストストリップ(イムノクロマト試験紙)、すなわち、互いに同じであっても異なってもよい第一の結合対象物質及び第二の結合対象物質を含む結合対象物質を表面上に複数備える粒状物質を検出するためのイムノクロマトグラフィー用テストストリップにも関している。具体的には、本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップは、
前記第一の結合対象物質に対する第一の特異的結合物質が固定された検出部位(b)を備えるメンブレン(a)と、
試料流動方向(x)について前記検出部位(b)の上流側の位置で前記メンブレン(a)と接する第一のサンプルパッド(e1)と
を含み、
前記第一のサンプルパッド(e1)から前記検出部位(b)に至る途中にコンジュゲートパッドが含まれていないことを特徴としており、各構成要素は、基板(バッキングシート)(d)の上に配置され得る(図1)。前記テストストリップは、前記試料流動方向(x)について前記検出部位(b)の下流側の位置で吸水パッド(c)をさらに含んでいてもよい。また、前記テストストリップは、前記試料流動方向(x)について前記第一のサンプルパッド(e1)のさらに上流側の位置で前記メンブレン(a)と接する第二のサンプルパッド(e2)をさらに含んでいてもよく、ここで、前記第二のサンプルパッド(e2)は、前記第一のサンプルパッド(e1)から離間している(図2)。
【0032】
本明細書に記載の「サンプルパッド」とは、イムノクロマトグラフィー用の試料、検出試薬、又は、水及び緩衝液などの溶媒を受け入れてメンブレン(a)上での展開(流動)を開始させる部位のことをいう。前記サンプルパッドは、当技術分野で通常使用される任意の方法によって作製することができる。本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップが、サンプルパッドを1つだけ含む場合、すなわち第一のサンプルパッド(e1)のみを含む場合には、この第一のサンプルパッド(e1)に前記粒状物質を含む試料を載せて、前記粒状物質が前記検出部位(b)において前記第一の特異的結合物質と反応した後に、同じ第一のサンプルパッド(e1)に前記第二の結合対象物質に対する第二の特異的結合物質(標識物質に結合)を含む検出試薬を載せて、前記検出部位(b)に捕捉されている前記粒状物質を標識する。本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップが、第一のサンプルパッド(e1)及び第二のサンプルパッド(e2)を含む場合には、前記第一のサンプルパッド(e1)を前記粒状物質を含む試料を載せる部位として使用し、前記第二のサンプルパッド(e2)を前記第二の特異的結合物質を含む検出試薬を載せる部位として使用してもよい。
【0033】
ある態様では、前記第二のサンプルパッド(e2)は、前記第二の特異的結合物質を含むコンジュゲートパッド(f)を含んでいる(図3)。本明細書に記載の「コンジュゲートパッド」とは、前記第二の特異的結合物質が含侵している部位であり、ここへ水や緩衝液などの溶媒を添加すると、前記第二の特異的結合物質が溶出し、前記メンブレン(a)上での展開(流動)を開始するように構成されている。前記コンジュゲートパッド(f)は、当技術分野で通常使用される任意の方法によって作製することができる。前記コンジュゲートパッド(f)は、前記第二のサンプルパッド(e2)に少なくとも一部を覆われた態様又は前記第二のサンプルパッド(e2)と一体になった態様であってもいいし、併設された別部材のサンプルパッドと一緒になって第二のサンプルパッド(e2)として機能する領域を形成してもよい。
【0034】
ある態様では、前記第一のサンプルパッド(e1)及び前記第二のサンプルパッド(e2)は、第一のスペーサー(g1)を介して互いから離間している(図4及び図5)。また、ある態様では、前記メンブレンは、前記第一のサンプルパッド側から前記第二のサンプルパッド側への前記粒状物質を含む試料の浸透を阻害するように構成されている。そのような浸透阻害手段としては、当技術分野で通常使用される任意の手段を特に制限されることなく採用することができるが、例えば、前記メンブレン(a)中に水溶性高分子を含侵させた阻害領域(h)を設け、前記試料流動方向(x)とは逆向きへの流動速度を低下させるように構成してもよい(図6及び7)。
【0035】
ある態様では、前記粒状物質は、前記第一の結合対象物質又は前記第二の結合対象物質と同じであっても異なってもよい第三の結合対象物質をさらに備え、
前記メンブレン(a)は、前記第三の結合対象物質に対する第三の特異的結合物質が固定された追加の検出部位(b’)と、前記試料流動方向について前記第一のサンプルパッドの下流側の位置で前記試料が流動する経路を分割するように配置された第二のスペーサー(g2)と、をさらに備え、
前記検出部位(b)及び前記追加の検出部位(b’)は、前記第二のスペーサー(g2)によって分割された異なる経路に配置されている(図8)。前記第一の結合対象物質と前記第三の結合対象物質が異なる場合、前記検出部位(b)に捕捉された粒状物質の量と前記追加の検出部位(b’)に捕捉された粒状物質の量を比較することにより、前記試料中の粒状物質上の前記第一の結合対象物質と前記第三の結合対象物質の相対的な量を測定することができる。なお、前記検出部位(b)に捕捉された粒状物質と前記追加の検出部位(b’)に捕捉された粒状物質を異なる検出試薬で検出することも可能であり、その場合には、前記検出部位(b)の真上又は前記検出部位(b)と前記第一のサンプルパッド(e1)の間の第一の滴下領域(i1)、及び、前記追加の検出部位(b’)の真上又は前記追加の検出部位(b’)と前記第一のサンプルパッド(e1)の間の第二の滴下領域(i2)に、それぞれ異なる検出試薬を滴下することができる。
【0036】
別の具体例では、本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップは、
前記第一の結合対象物質に対する第一の特異的結合物質が固定された検出部位(b)を備えるメンブレン(a)と、試料流動方向(x)について前記検出部位(b)の上流側の位置で前記メンブレン(a)と接する第一のサンプルパッド(e1)とを含む第一の基板(d1)と、
第二のサンプルパッド(e2)を含む第二の基板(d2)と
を含み、
前記第一の基板(d1)及び前記第二の基板(d2)は、前記第二のサンプルパッド(e2)が前記試料流動方向(x)について前記第一のサンプルパッド(e1)のさらに上流側の位置で前記メンブレン(a)と接するように、接近可能であることを特徴としている(図9)。前記第一のサンプルパッド(e1)から前記粒状物質を含む試料を流動させた後に、前記第二のサンプルパッド(e2)を前記メンブレン(a)と接触させて、当該第二のサンプルパッド(e2)から前記第二の結合対象物質に対する第二の特異的結合物質(標識物質に結合)を含む検出試薬を流動させることで、前記検出部位(b)に捕捉されている前記粒状物質を標識することができる。
【0037】
ある態様では、前記第二のサンプルパッド(e2)は、前記第二の特異的結合物質を含むコンジュゲートパッド(f)を含んでいる(図10)。また、ある態様では、前記第一の基板(d1)及び前記第二の基板(d2)は、伸縮構造(j)を介して結合されている(図11)。この場合には、前記伸縮構造(j)が伸長した状態(図11A)で前記第一のサンプルパッド(e1)から前記粒状物質を含む試料を流動させた後に、前記伸縮構造(j)を収縮させて前記コンジュゲートパッド(f)を含む前記第二のサンプルパッド(e2)を前記メンブレン(a)と接触させ(図11B)、そこで前記第二のサンプルパッド(e2)に水や緩衝液などの溶媒を添加すると、前記第二の特異的結合物質が溶出し、前記メンブレン(a)上での流動を開始する。
【0038】
別の具体例では、本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップは、
前記第一の結合対象物質に対する第一の特異的結合物質が固定された検出部位(b)を備えるメンブレン(a)と、
第一の経路における試料流動方向(x1)について前記検出部位(b)の上流側の位置で前記メンブレン(a)と接する第一のサンプルパッド(e1)と、
前記第一の経路とは異なる第二の経路における試料流動方向(x2)について前記検出部位(b)の上流側の位置で前記メンブレンと接する第二のサンプルパッド(e2)と
を含み、
前記第二のサンプルパッド(e2)が、前記第一のサンプルパッド(e1)から離間していることを特徴としており(図12及び図13)、前記第一の経路及び前記第二の経路は、前記検出部位(b)の周辺を除き、必要な場合にはスペーサー(g)を介して互いから離間している。この具体例のテストストリップにおいては、前記粒状物質を含む試料と、前記第二の結合対象物質に対する第二の特異的結合物質(標識物質に結合)を含む検出試薬とを、別のサンプルパッドから別の経路で流動させることができるため、前記試料の流動が完全に終わる前に前記検出試薬の流動を開始しても、前記検出部位(b)の周辺以外では前記粒状物質と前記第二の特異的物質とが結合することはない。そうすると、前記検出試薬の流動を早くに開始できる分、イムノクロマトグラフィー法の試験に要する時間を短縮することが可能となる。
【0039】
ある態様では、前記第二のサンプルパッド(e2)は、前記第二の特異的結合物質を含むコンジュゲートパッド(f)を含んでいる(図14及び図15)。また、ある態様では、前記メンブレン(a)は、短冊形、U字型、又は、V字型である。
【0040】
ある態様では、前記粒状物質は、前記第一の結合対象物質又は前記第二の結合対象物質と同じであっても異なってもよい第三の結合対象物質をさらに備え、
前記メンブレン(a)は、前記第三の結合対象物質に対する第三の特異的結合物質が固定された追加の検出部位(b’)と、前記第一の経路における試料流動方向について前記第一のサンプルパッド(e1)の下流側の位置で前記第一の経路を分割するように配置されたスペーサー(g)と、をさらに備え、
前記検出部位(b)及び前記追加の検出部位(b’)は、前記スペーサー(g)で分割された異なる経路に配置されている(図16)。前記第一のサンプルパッド(e1)から流動されて前記検出部位(b)で捕捉された前記粒状物質は、前記第二のサンプルパッド(e2)から流動される前記第二の特異的結合物質を含む検出試薬により標識され得る。そして、前記追加の検出部位(b’)に捕捉された前記粒状物質は、その真上、又は、前記追加の検出部位(b’)と前記第一のサンプルパッド(e1)の間の滴下領域(i)に、前記検出試薬を滴下することで標識され得る。前記第一の結合対象物質と前記第三の結合対象物質が異なる場合、前記検出部位(b)に捕捉された粒状物質の量と前記追加の検出部位(b’)に捕捉された粒状物質の量を比較することにより、前記試料中の粒状物質上の前記第一の結合対象物質と前記第三の結合対象物質の相対的な量を測定することができる。
【0041】
ある態様では、前記テストストリップは、前記第一の経路及び前記第二の経路とは異なる第三の経路における試料流動方向(x3)について前記追加の検出部位(b’)の上流側の位置で前記メンブレン(a)と接する第三のサンプルパッド(e3)をさらに含んでいる(図17)。また、ある態様では、前記第二のサンプルパッド(e2)及び/又は前記第三のサンプルパッド(e3)は、前記第二の特異的結合物質を含むコンジュゲートパッド(f1及びf2)を含んでいる(図18)。
【0042】
別の具体例では、本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップは、
前記第一の結合対象物質に対する第一の特異的結合物質が固定された検出部位(b)を備える第一のメンブレン(a1)と、
第一の経路における試料流動方向(x1)について前記検出部位の上流側の位置で前記第一のメンブレン(a1)と接する第一のサンプルパッド(e1)と、
前記検出部位(b)と前記第一のサンプルパッド(e1)の間で前記第一のメンブレン(a1)と接している第二のメンブレン(a2)と、
前記第一の経路とは異なる第二の経路における試料流動方向(x2)について前記検出部位(b)の上流側の位置で前記第二のメンブレン(a2)と接する第二のサンプルパッド(e2)と
を含み、前記第二のサンプルパッド(e2)が、前記第一のサンプルパッド(e1)から離間していることを特徴としている(図19)。この具体例のテストストリップにおいては、前記第一のサンプルパッド(e1)又は前記第二のサンプルパッド(e2)のいずれか一方に前記粒状物質を含む試料を載せて、他方に前記第二の結合対象物質に対する第二の特異的結合物質(標識物質に結合)を含む検出試薬を載せて使用することができる。前記第二のサンプルパッド(e2)から流動を開始した試料又は検出試薬は、流動しながら前記第二のメンブレン(a2)と接している前記第一のメンブレン(a1)へと移行し、前記検出部位(b)に到達する。前記第二のメンブレン(a2)は、その末端領域で前記第一のメンブレン(a1)と接していてもよい。ある態様では、前記第一のサンプルパッド(e1)又は前記第二のサンプルパッド(e2)のいずれか一方が、前記第二の特異的結合物質を含むコンジュゲートパッド(f)を含んでいる(図20)。
【0043】
本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップは、当技術分野で通常使用される任意の構成を採用することができる。例えば、前記テストストリップにおいて、前記メンブレンは、イムノクロマトグラフィー試験の成否を判定するコントロール部位をさらに備えていてもよい。前記コントロール部位は、特に限定されないが、例えば、前記検出試薬に含まれている前記第二の特異的結合物質(標識物質に結合)を捕捉することのできる抗体などの物質を固定したコントロールライン(k)であってもよく(図21)、当該コントロールラインは、使用する検出試薬の種類に応じて複数設けてもよい。
【0044】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0045】
1.エクソソーム溶液の調製方法
(1)細胞培養上清からの調製
10% FBS(名称:Fetal Bovine Serum、製造元:Life Technologies)、1% PSA(名称:ペニシリン-ストレプトマイシン-アムホテリシンB懸濁液(×100)(抗生物質-抗真菌剤溶液)、製造元:和光純薬工業株式会社)、及び2mM Glutamax(製造元:Life Technologies)含有RPMI1640培地を20mL使用し、150mmディッシュで乳がん細胞株MCF7をディッシュの底面積の80%まで培養した。培地を除去後、りん酸緩衝生理食塩水(PBS)20mLで2回洗浄し、2mM Glutamax含有Advanced RPMI 1640 Medium(製造元:Life Technologies)を20mL添加して、48時間培養した。150mmディッシュ10枚分の細胞培養上清(200mL)を2,000×g、4℃下で10分間遠心分離し、その上清を10,000×g、4℃下で30分間遠心分離して、最終的に得られた上清を孔径0.22μmのフィルターでろ過した。ろ液を175,000×g、4℃下で95分間遠心分離し、上清を除去して沈殿画分を得た。沈殿画分を13mLの1×PBSで分散し、210,000×g、4℃下で95分間遠心分離した。その上清を除去した後、沈殿物を0.2mLのPBSで再分散し、エクソソーム溶液(E溶液1)を調製した。
また、MCF7細胞に代えて、他の乳がん細胞株であるMDA-MB-231(略称:MM231)を使用し、上と同様の方法でエクソソーム溶液(E溶液2)を調製した。
【0046】
(2)血清からの調製
4mLの血清(品番:12181201、販売元:コスモ・バイオ株式会社)を16,500×g、4℃下で20分間遠心分離し、その上清を孔径0.22μmのフィルターでろ過した。ろ液を210,000×g、4℃下で45分間遠心分離し、上清を除去して沈殿画分を得た。沈殿画分を4mLのPBSで分散し、再び210,000×g、4℃下で45分間遠心分離した。その上清を除去した後、沈殿物を0.1mLのPBSで再分散し、エクソソーム溶液(E溶液3)を調製した。
【0047】
2.細胞由来小胞溶液の評価
(1)粒径および粒子数濃度測定
各種エクソソーム溶液を希釈し、NanoSightナノ粒子解析システム(Malvern Panalytical製)によりエクソソームの粒径および粒子数濃度を測定した。結果を以下に示す。
[E溶液1]粒径:147nm、粒子数濃度:1.5×1012個/mL
[E溶液2]粒径:143nm、粒子数濃度:1.9×1012個/mL
[E溶液3]粒径:139nm、粒子数濃度:4.9×1010個/mL
【0048】
(2)ウェスタンブロッティング
エクソソームを2.5×109個含むように調製したE溶液1及び2、並びに、エクソソームを1.3×109個含むように調製したE溶液3を、試料緩衝液(SDS-PAGE用、6倍濃縮、還元剤不含)(品番:09500-64、製造元:ナカライテスク製)を使用して、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。泳動後のSDSポリアクリルアミドゲルをPVDF膜(メルク製)に転写した。転写後のPVDF膜を2%のスキムミルクを含有したTBS-T(20mM Tris-HCl(pH 8.0)、150mM NaCl、0.05% Tween(R)20)中に浸してブロッキングした。ブロッキング終了後、PVDF膜を、0.2%スキムミルク含有TBS-Tで希釈したマウス抗CD9抗体(Hansa Bio Med製)、マウス抗CD63抗体(Hansa Bio Med製)、又はマウス抗CD81抗体(Hansa Bio Med製)と反応させた。そして、PVDF膜をTBS-Tで3回洗浄後、0.2%スキムミルク含有TBS-Tで希釈したHRP標識ヤギ抗マウスIgG抗体(Bio-Rad Laboratories製)と反応させた。最後に、このPVDF膜をTBS-Tで3回洗浄後、イムノスターLD(和光純薬工業製製)に浸し、直後にImageQuant LAS4000(GEヘルスケア製)で化学発光を検出して、得られた画像を目視又は輝度解析により評価した。結果を図22及び表1に示す。
(目視の評価基準)
++:明確にバンドの判別が可能
+ :バンドの判別が可能
- :バンドの判別が不可能
【0049】
【表1】
【0050】
CD9、CD63、及びCD81は、いずれもエクソソームの表面に存在していることが知られているが、その量は由来の細胞によって異なる。今回のウェスタンブロッティングでは、E溶液1中のエクソソームではCD63の存在量が少ないことが示唆されたため、イムノクロマト試験において抗CD63抗体を使用すると、検出感度が低くなることが予想される。
【0051】
3.金属ナノ粒子の調製
(1)金ナノプレート懸濁液
常法により、金ナノプレート(最大長さ45nm、厚さ23nmの青色板状ナノ粒子、略称:AuPL)を含む懸濁液A(最大吸収波長616nm;青色)を調製した(要すれば特許文献4などを参照)。
【0052】
(2)球状金コロイド懸濁液
市販の球状金コロイド粒子(BBI Solutions社製、粒子径40nm、略称:AuSP)を含む懸濁液B(最大吸収波長524nm;赤色)を、以降の実験で使用した。
【0053】
4.抗体担持金属ナノ粒子及び展開液の調製
最大吸収波長における吸光度が2.0になるように濃度を調整した1mLの懸濁液A又はBに、0.05mg/mLのマウス抗CD9抗体(品番:HBM-CD9-100、製造元:Hansa Bio Med)溶液を0.1mL添加して、1時間静置した。そして、0.5%のポリエチレングリコール(分子量20,000)水溶液を0.05mL、2%のBSA水溶液を0.1mL添加して、金属ナノ粒子表面をブロッキングした。その後、遠心分離機で金属ナノ粒子を沈殿させ、上清を除去し、150mMの塩化ナトリウム及び1%のBSAを含有する10mMのHEPES緩衝液1mLで再分散した。遠心分離操作を再度実施し、上清を除去後、金属ナノ粒子を同じ緩衝液で再度分散して、最大吸収波長における吸光度が1になるように濃度を調整した。これをイムノクロマト試験に使用する展開液A9及びB9とした。
【0054】
また、懸濁液Aについては、マウス抗CD9抗体に代えてマウス抗CD63抗体(品番:HBM-CD63-100、製造元:Hansa Bio Med)又はマウス抗CD81抗体(品番:HBM-CD81-100、製造元:Hansa Bio Med)を使用した以外は上述の方法と同様にして、抗体担持金属ナノ粒子を含む展開液A63及びA81を調製した。調製した展開液に含まれる金属ナノ粒子及び検出抗体の種類を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
5.イムノクロマト試験
(1)イムノクロマト試験紙への捕捉抗体の固定
マウス抗CD9抗体(品番:HBM-CD9-100、製造元:Hansa Bio Med)を、濃度が0.25g/mLになるように10%スクロース含有PBSで希釈し、その希釈液の0.75μLを、吸水パッドが一方の端に取付けられている短冊形のニトロセルロースメンブレンを備えたイムノクロマト試験紙(株式会社フォーディクス製)の中央部へ滴下して、当該抗体を捕捉抗体としてメンブレン上に固定した。そして、3%のBSA含有PBSを10mL展開し、メンブレン全体をブロッキングした。
【0057】
(2)本発明の方法
捕捉抗体を固定したイムノクロマト試験紙の吸水パッドが取り付けられていない方の端を、エクソソームを含む試験液に浸して、当該試験液を展開した。次に、上記表2に記載の展開液のいずれかを展開した。最後に、捕捉抗体を固定していた部分の発色を、後述する方法のいずれかにより評価した。
【0058】
(3)従来の方法(比較法)
エクソソームを含む試験液を、上記表2に記載の展開液のいずれかと混合した。次に、その混合液を、捕捉抗体を固定したイムノクロマト試験紙に展開した。最後に、捕捉抗体を固定していた部分の発色を、後述する方法のいずれかにより評価した。
【0059】
(4)界面活性剤の添加
エクソソーム溶液に界面活性剤を添加する場合には、エクソソーム溶液1μLに界面活性剤溶液を5μL添加し、全量が50μLになるように1%のウシ血清アルブミン(BSA)含有PBSを添加して、試験液を調製した。上記界面活性剤溶液としては、0.01%の(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(名称:NonidetTM P-40,略称:NP40)水溶液又は0.1%のTween(R)20溶液を使用した。
【0060】
6.評価方法
(1)目視
イムノクロマト試験紙のメンブレン上の判定部分(マウス抗CD9抗体が固定化された部位)を目視で確認し、発色の程度を以下の基準で評価した。
++:明確に判別可能
+ :判別可能
+-:僅かに判別可能
- :判別不可能
【0061】
(2)輝度解析
検出抗体を含む展開液を展開した後のイムノクロマト試験紙をスキャナー(装置名:CanoScan LiDE500F、製造元:キヤノン株式会社)によりスキャニングし、判定部分の輝度と、判定部分以外の部分の最低輝度を、画像解析ソフト(Image-J)で測定することにより検出シグナルを数値化した。より具体的には、各部分をそれぞれ5回ずつ測定し、得られた数値の中央値の差を求めた。そして、エクソソームを含む試験液を展開したときの値から、エクソソームを含まない対照の溶液を展開したときの値を引いて、検出シグナルとしての輝度差を求めた。なお、Image-Jは、アメリカ国立衛生研究所でWayne Rasbandが開発したオープン・ソースで公有の画像処理ソフトウェアである(http://imagej.nih.gov/ij/)。
【0062】
(3)イムノクロマトリーダーによる測定
検出抗体を含む展開液を展開した後のイムノクロマト試験紙をイムノクロマトリーダー(型番:C10066-10、製造元:浜松ホトニクス株式会社)で測定した。金ナノプレート(青色)を使用した際は青色系発色ライン測定モードで測定し、球状金コロイド(赤色)を使用した際は赤色系発色ライン測定モードで測定した。エクソソームを含む試験液を展開したときの値から、エクソソームを含まない対照の溶液を展開したときの値を引いて、検出シグナルとしての吸光度を求めた。
【0063】
7.イムノクロマト試験の展開方法の比較
エクソソームを含む試験液として血清(品番:12181201、販売元:コスモ・バイオ株式会社)を25μL使用し、検出抗体を含む展開液として展開液A9、A63、又はA81を60μL使用した。本発明の方法又は比較法によってイムノクロマト試験を行い、目視判定した結果を表3、輝度解析した結果を図23に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
どの展開液(検出抗体)を使用した場合でも、本発明の方法に従ってイムノクロマト試験を行った場合には、比較法に対して検出感度が向上した。特に、展開液A63を使用した場合には、比較法では目視による検出が不可能であったにもかかわらず、本発明の方法では目視により発色を確認することができた。
【0066】
8.各種試料におけるエクソソームの検出
(1)がん細胞株由来のエクソソーム
エクソソームを5.0×109個含むE溶液1に、全量が50μLになるように1%のBSA含有PBSを添加した。これをイムノクロマト試験の試験液として使用し、検出抗体を含む展開液として展開液A9又はB9を60μL使用して、本発明の方法によりイムノクロマト試験を行った。輝度解析の結果を図24に示す。
【0067】
抗体を標識する金属ナノ粒子の種類にかかわらず、本発明の方法によって、良好なイムノクロマト試験結果を得ることができた。
【0068】
(2)全血中のエクソソーム
全血(販売元:株式会社ビジコムジャパン)をPBSで5倍に希釈した溶液をイムノクロマト試験の試験液として50μL使用し、検出抗体を含む展開液として展開液A9又はB9を60μL使用して、本発明の方法によりイムノクロマト試験を行った。輝度解析の結果を図25に示す。
【0069】
エクソソームを単離又は精製していない試料を使用しても、本発明の方法によって、良好なイムノクロマト試験結果を得ることができた。また、抗体の標識として球状金ナノコロイドを使用するとわずかな輝度差しか測定できないような場合であっても、抗体の標識として異方性金ナノ粒子である金ナノプレートを使用すれば、検出感度をさらに高めることができた。
【0070】
(3)培養上清中のエクソソーム
乳がん細胞株MCF7をディッシュ底面積の80%になるように培養し、その培地を無血清のRPMI1640培地に交換して、培養上清を経時的に採取した。採取した培養上清を試験液として50μL使用し、検出抗体を含む展開液として展開液A9を60μL使用して、本発明の方法によりイムノクロマト試験を行った。輝度解析した結果を図26に示す。
【0071】
本発明の方法に従ったイムノクロマト試験によれば、培養上清を直接使用した試験により、当該培養上清中のエクソソームが経時的に増加する様子を簡便に観察することができた。なお、このイムノクロマト試験の結果は、NanoSightナノ粒子解析システムによる計測結果とよく相関していた。
【0072】
(4)NP40(界面活性剤)を使用して調製した試料中のエクソソーム
E溶液1(MCF7細胞由来エクソソーム溶液)及びE溶液2(MM231細胞由来エクソソーム溶液)にNP40溶液を添加して又は添加せずに50μLの試験液を調製した。検出抗体を含む展開液として展開液A9又はB9を60μL使用して、本発明の方法によりイムノクロマト試験を行った。輝度解析した結果を図27に示す。
【0073】
NP40を試料中に添加することにより、いずれの細胞由来のエクソソームについても、検出感度を向上することができた。
【0074】
(5)Tween(R)20(界面活性剤)を使用して調製した試料中のエクソソーム
E溶液1及びE溶液2にTween(R)20溶液を添加して又は添加せずに50μLの試験液を調製した。検出抗体を含む展開液として展開液A9を60μL使用して、本発明の方法によりイムノクロマト試験を行った。輝度解析した結果を図28に示す。
【0075】
Tween(R)20を試料中に添加した場合でも、NP40を添加したときと同様に、エクソソームの検出感度を向上することができた。
【0076】
9.イムノクロマト試験の定量性
NanoSightナノ粒子解析システムで計測した結果に基づき、E溶液1をエクソソームの数が9.0×108個、1.8×108個、又は0.9×108個になるように1%のBSA含有PBSで希釈し、50μLの希釈液を調製した。この希釈液又はエクソソームを含まないBSA含有PBSを試験液として使用し、検出抗体を含む展開液として展開液A9を60μL使用して、本発明の方法によりイムノクロマト試験を行った。輝度解析した結果を図29、イムノクロマトリーダーで測定した結果を図30に示す。
【0077】
輝度解析及びイムノクロマトリーダーによる測定のいずれにおいても、良好な検量線を引くことができるデータを取得することができた。したがって、本発明に従ったイムノクロマト試験を行えば、定量性のある試験を行うことができる。
【0078】
10.ウェスタンブロッティングとの比較
NanoSightナノ粒子解析システムで計測した結果に基づき、E溶液1をエクソソームの数が50.0×108個、5.0×108個、又は0.5×108個になるように1%のBSA含有PBSで希釈し、50μLの希釈液を調製した。この希釈液又はエクソソームを含まないBSA含有PBSを試験液として使用し、検出抗体を含む展開液として展開液A9を60μL使用して、本発明の方法によりイムノクロマト試験を行った。
【0079】
また、イムノクロマト試験で使用したエクソソーム溶液と同じものをウェスタンブロッティングで解析した。一次抗体としてはマウス抗CD9抗体(Hansa Bio Med製)を使用し、二次抗体としてはHRP標識ヤギ抗マウスIgG抗体(Bio-Rad Laboratories製)を使用した。ウェスタンブロッティングの結果(写真)を図31に示し、イムノクロマト試験(IC)及びウェスタンブロッティング(WB)の目視判定の結果を表4に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
ウェスタンブロッティングでは結果が出るまで約8時間かかり、操作も煩雑であったが、イムノクロマト試験では結果が出るまで約30分であり、操作も簡便であった。しかも、本発明の方法に従ったイムノクロマト試験の検出バンドは、ウェスタンブロッティングにより得られた検出バンドよりも目視で判別しやすいものだった。特に、0.5×108個のエクソソームを使用した場合には、ウェスタンブロッティングでは目視による検出が不可能であったにもかかわらず、本発明の方法に従ったイムノクロマト試験では目視により発色を確認することができた。
【0082】
11.化学発光による検出
Ab-10 Rapid Peroxidase Labeling Kit(株式会社同仁化学研究所製)を使用して、マウス抗CD9抗体(Hansa Bio Med製)をHRPで標識した。HRP標識マウス抗CD9抗体を150mMの塩化ナトリウム及び1%のBSAを含有する10mMのHEPES緩衝液で希釈し、抗体濃度0.2μg/mLの展開液を調製した。また、NanoSightナノ粒子解析システムで計測した結果に基づき、E溶液1をエクソソームの数が100×108個、20×108個、4×108個、又は0.8×108個になるように1%のBSA含有PBSで希釈し、50μLの希釈液を調製した。この希釈液又はエクソソームを含まないBSA含有PBSを試験液として使用し、HRP標識マウス抗CD9抗体を含む展開液を60μL使用して、本発明の方法(項目5(2))に従って展開操作を行った。展開液を展開した後、150mMの塩化ナトリウム及び1%のBSAを含有する10mMのHEPES緩衝液を50μL展開してイムノクロマト試験紙上の検出部位以外に残存するHRP標識マウス抗CD9抗体を洗浄してから、発色基質として50μLのイムノスターLD(富士フイルム和光純薬工業株式会社製)をイムノクロマト試験紙に滴下した。その滴下直後からCCDイメージャーImageQuant LAS 4000(GEヘルスケア製)で、化学発光を測定した。露光時間0.5秒で得られた像を輝度解析した結果を図32に示す。また、エクソソーム数が4×108個の場合について、露光時間を変えて化学発光を測定した結果を図33に示す。
【0083】
化学発光による検出においても、良好な検量線を引くことができるデータを取得することができた。したがって、本発明に従ったイムノクロマト試験を行えば、定量性のある試験を行うことができる。また、露光時間を0.5秒から10秒に変更すると、輝度差は24倍に増大した。このように、化学発光による検出では、露光時間を長くすることで検出強度をさらに高めることができるので、微量の粒状物質をさらに高感度に検出することが可能である。
【0084】
以上より、特定の順序でイムノクロマトグラフィー法を行うことにより、高い感度で粒状物質を検出することができることがわかった。したがって、粒状物質を迅速かつ高い感度で検出することが可能となる。
【符号の説明】
【0085】
a メンブレン
a1 第一のメンブレン
a2 第二のメンブレン
b 検出部位
b’ 追加の検出部位
c 吸水パッド
d 基板
d1 第一の基板
d2 第二の基板
e1 第一のサンプルパッド
e2 第二のサンプルパッド
f コンジュゲートパッド
f1 第一のコンジュゲートパッド
f2 第二のコンジュゲートパッド
g スペーサー
g1 第一のスペーサー
g2 第二のスペーサー
h 阻害領域
i 滴下領域
i1 第一の滴下領域
i2 第二の滴下領域
j 伸縮構造
k コントロールライン
x 試料流動方向
x1 第一の経路における試料流動方向
x2 第二の経路における試料流動方向
x3 第三の経路における試料流動方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33