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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】エアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20230410BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230410BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20230410BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230410BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230410BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20230410BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20230410BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/02
A61K8/73
A61K8/34
A61Q19/00
A61K8/31
A61Q5/02
A61Q5/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019173261
(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公開番号】P2021050148
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】津村 亜紗子
(72)【発明者】
【氏名】中川 淳史
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-061544(JP,A)
【文献】特開平06-107519(JP,A)
【文献】特開2001-064126(JP,A)
【文献】特開2002-114659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分A、成分B、成分C、成分Dおよび成分Eを含有し、
成分Aの含有量が0.8~13.0質量%であり、成分Bの含有量が0.1~6.0質量%であり、成分Cの含有量が0.01~2.0質量%であり、成分Eの含有量が40.0~95.0質量%である、エアゾール組成物。
成分A:デンプン
成分B:アルギン酸カルシウム
成分C:不定形シリカ
成分D:エタノール
成分E:噴射剤
【請求項2】
前記成分Bの平均粒子径が1~50μmである、請求項1に記載のエアゾール組成物。
【請求項3】
前記成分Cの平均粒子径が1~50μmである、請求項1または2に記載のエアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール組成物に関し、より具体的に、頭皮および頭髪用エアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水および湯を用いることなく、頭皮および頭髪に付着した皮脂汚れを除去できるドライシャンプーが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、多孔質シリカとデンプンとを含む、ドライシャンプー用組成物が開示されている。また、特許文献2には、吸油性粉体(例えば、デンプン、セルロースおよびシリカ)を含み、界面活性剤を含まない、頭髪用エアゾール組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-150271号公報
【文献】WO2018/216242
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のドライシャンプー用組成物および特許文献2の頭髪用エアゾール組成物は、整髪力(例えば、髪をボリュームアップさせる効果)について考慮されていない。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、皮脂汚れ除去力、吸水力だけでなく、整髪力および使用感にも優れたエアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、デンプン、アルギン酸カルシウム、不定形シリカを、それぞれ所定量で含有するエアゾール組成物が、皮脂汚れ除去力、吸水力、整髪力および使用感に優れるという新規知見を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の構成を含む。
【0008】
〔1〕下記成分A、成分B、成分C、成分Dおよび成分Eを含有し、
成分Aの含有量が0.8~13.0質量%であり、成分Bの含有量が0.1~6.0質量%であり、成分Cの含有量が0.01~2.0質量%であり、成分Eの含有量が40.0~95.0質量%である、エアゾール組成物;
成分A:デンプン
成分B:アルギン酸カルシウム
成分C:不定形シリカ
成分D:エタノール
成分E:噴射剤。
【0009】
〔2〕上記成分Bの平均粒子径が1~50μmである、〔1〕に記載のエアゾール組成物。
【0010】
〔3〕上記成分Cの平均粒子径が1~50μmである、〔1〕または〔2〕に記載のエアゾール組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、皮脂汚れ除去力、吸水力、整髪力および使用感に優れたエアゾール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0013】
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「X~Y」は、「X以上Y以下」を意図する。また、本明細書において特記しない限り、成分の含有量を表す質量%は、エアゾール組成物全体の質量を100質量%とした値である。
【0014】
〔1.エアゾール組成物〕
本発明に係るエアゾール組成物は、下記成分A、成分B、成分C、成分Dおよび成分Eを含有し、成分Aの含有量が0.8~13.0質量%であり、成分Bの含有量が0.1~6.0質量%であり、成分Cの含有量が0.01~2.0質量%であり、成分Eの含有量が40.0~95.0質量%である、エアゾール組成物である;
成分A:デンプン
成分B:アルギン酸カルシウム
成分C:不定形シリカ
成分D:エタノール
成分E:噴射剤。
【0015】
本発明に係るエアゾール組成物は、皮脂汚れ除去力、吸水力、整髪力および使用感に優れる。本明細書において「皮脂汚れ除去力に優れる」とは、頭皮および頭髪から適度に皮脂を除去すること、を意味する。本明細書において「吸水力に優れる」とは、頭皮および頭髪から適度に水分(例えば、汗)を除去すること、を意味する。本明細書において「整髪力に優れる」とは、頭髪にボリューム感を持たせること、を意味する。本明細書において「使用感に優れる」とは、使用時に頭髪のゴワつき、および、頭髪のヌルつきがないこと、を意味する。
【0016】
本発明に係るエアゾール組成物は、さらに、成分F(両親媒性エステル(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール))および他の成分からなる群から選択される少なくとも1つを含有してもよい。
【0017】
本発明に係るエアゾール組成物の成分は、原液と噴射剤とに大別することができる。上述した成分のうち、成分A、成分B、成分C、成分D、成分Fおよび他の成分は原液を構成する成分である。以下では、原液を構成する成分および噴射剤を構成する成分について説明する。
【0018】
〔1-1.原液〕
[成分A]
本発明に係るエアゾール組成物は、成分Aとしてデンプンを含む。当該成分Aは、皮脂汚れを除去することによって、皮脂によるベタツキを除去する効果を奏する。
【0019】
本発明のエアゾール組成物中の成分Aの含有量は、0.8~13.0質量%、好ましくは1.0~10.0質量%である。当該構成であれば、皮脂汚れの除去効果およびベタツキ除去効果に優れる。
【0020】
デンプンとしては、例えば、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム、トウモロコシデンプン、タピオカデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、コムギデンプン、シリコネート変性デンプン等が挙げられる。これらのデンプンのうち、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。皮脂汚れの除去効果に優れるという観点から、本発明のエアゾール組成物は、これらのデンプンのうち、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウムを含むことが好ましい。
【0021】
[成分B]
本発明に係るエアゾール組成物は、成分Bとしてアルギン酸カルシウムを含む。当該成分Bは吸水性があり、汗を除去することによって、汗によるベタツキを除去する効果を奏する。更に、当該成分Bは、デンプン及びシリカの白浮きを防止する効果を奏する。
【0022】
従来のドライシャンプー組成物および頭髪用エアゾール組成物は、脂質を主成分とする皮脂汚れを対象としたものであって、水を主成分とする汗を対象としたものではない。そこで、本発明者は、従来とは異なる着眼点に基づき、吸水性に優れている物質(具体的に、アルギン酸カルシウム)を含有するエアゾール組成物を開発した。
【0023】
本発明に係るエアゾール組成物中の成分Bの含有量は、0.1~6.0質量%、好ましくは0.2~5.0質量%である。当該構成であれば、汗の除去効果およびベタツキ除去効果に優れる。
【0024】
アルギン酸カルシウムの平均粒子径は、限定されず、好ましくは1~50μm、より好ましくは2~20μmである。なお、アルギン酸カルシウムの平均粒子径は、例えば、レーザ回折散乱法によって測定することができる。より具体的に、アルギン酸カルシウムの平均粒子径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(例えば、LA950V2、HORIBA社製)を用いて測定することができる。当該構成であれば、本発明に係るエアゾール組成物をボタンから噴射する場合に、当該ボタンの目詰まりを抑制することができる。
【0025】
アルギン酸カルシウムとしては、市販品を用いることができる。市販のアルギン酸カルシウムとしては、例えば、日清紡ケミカル社製、商品名「フラビカファイン(登録商標)N」、「フラビカファイン(登録商標)S」などが挙げられる。
【0026】
[成分C]
本発明に係るエアゾール組成物は、成分Cとして不定形シリカを含む。当該成分Cは、エアゾール組成物を頭皮および頭髪の上に残すことにより、エアゾール組成物の整髪効果を上げることができる。
【0027】
不定形シリカは、無孔質のもの、または、多孔質のもののうち、いずれであってもよい。不定形シリカの形状は、球状以外であって、エアゾール組成物が頭皮および/または頭髪の上に残りやすい形状であればよく、特に限定されない。不定形シリカの形状としては、例えば、原料であるシリカを破砕および/または粉砕することによって生じる、不定形な形状が挙げられる。不定形シリカの形状としては、より具体的に、鱗片状、楕円体状、直方体状、多面体形状、薄片状等が挙げられる。これらの形状の中では、エアゾール組成物が頭皮および頭髪の上により残り易いため、鱗片状が好ましい。
【0028】
不定形シリカは、アスペクト比が2.0よりも大きなものであってもよい。なお、当該アスペクト比とは、不定形シリカの長径と短径との比(長径/短径)を意図する。
【0029】
本発明のエアゾール組成物中の成分Cの含有量は、0.01~2.0質量%、好ましくは0.05~1.0質量%である。当該構成であれば、エアゾール組成物の整髪効果をより上げることができる。
【0030】
不定形シリカの平均粒子径は、限定されず、好ましくは1~50μm、より好ましくは2~20μmである。なお、不定形シリカの平均粒子径は、例えば、レーザ回折散乱法によって測定することができる。より具体的に、不定形シリカの平均粒子径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(例えば、LA950V2、HORIBA社製)を用いて測定することができる。当該構成であれば、本発明のエアゾール組成物をボタンから噴射する場合に、当該ボタンの目詰まりを抑制することができる。
【0031】
不定形シリカとしては、公知の方法で製造された不定形シリカを用いることができる。例えば、原料であるシリカを破砕および/または粉砕することによって得られる不定形シリカを用いることができる。また、不定形シリカとしては、市販品を用いることができる。市販の不定形シリカとしては、例えば、富士リシリア社製、商品名「サイリシア(登録商標)530」、「サイリシア(登録商標)550」、「サイリシア(登録商標)710」、「サイリシア(登録商標)730」;旭硝子社製、商品名「サンラブリー(登録商標)C」などが挙げられる。
【0032】
[成分D]
本発明に係るエアゾール組成物は、成分Dとしてエタノールを含む。当該成分Dは、エアゾール組成物における溶媒として機能する。エタノールは、エアゾール組成物に含まれる他の成分との相溶性が高く、安定なエアゾール組成物を形成する点で好適である。また、エタノールは、低温にて容易に蒸発するため、エアゾール組成物を噴霧した対象に溶媒が与える影響を小さくすることができる。
【0033】
本発明のエアゾール組成物中、例えば、成分A、成分B、成分C、成分E、成分Fおよび他の成分以外の残部を、エタノールとすることができる。
【0034】
本発明のエアゾール組成物中の成分Dの含有量は、好ましくは0.01~59.09質量%、より好ましくは0.01~55.0質量%、最も好ましくは0.50~50.0質量%である。当該構成であれば、より安定なエアゾール組成物を形成することができ、かつ、エアゾール組成物を噴霧した対象に溶媒が与える影響をより小さくすることができる。
【0035】
[成分F]
本発明に係るエアゾール組成物は、成分Fとして両親媒性エステルを含んでいてもよい。成分Fは、(i)デンプン及びシリカの白浮きを防止する効果、(ii)エアゾール組成物が乾燥したときの頭髪のヌルつきを防止する効果、並びに、(iii)成分A、成分Bおよび成分Cを頭皮および頭髪の上に固着させる効果、を奏する。
【0036】
本発明のエアゾール組成物中の成分Fの含有量は、好ましくは0.01~2.0質量%、より好ましくは0.05~1.0質量%である。当該構成であれば、上述した(i)~(iii)の効果をより高めることができる。
【0037】
両親媒性エステルとしては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール(例えば、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール等)、ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール、ジネオペンタン酸ジエチルペンタンジオール、セバシン酸ジエチルへキシル等が挙げられる。上述した(i)~(iii)の効果をより高める観点から、本発明のエアゾール組成物は、これらの両親媒性エステルのうち、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコールを含むことが好ましい。
【0038】
[他の成分]
本発明のエアゾール組成物は、任意成分として、通常の化粧品に用いられる成分を含んでいてもよい。当該任意成分としては、例えば、清涼剤、制汗剤、殺菌剤、酸化防止剤、酸化防止助剤、紫外線防止剤、植物エキス、抗炎症剤、キレート剤、防腐剤、保湿剤、油脂類、香料等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。これら任意成分の含有量は、任意成分の用途などに基づいて適宜決定され得る。
【0039】
清涼剤としては、例えば、メントール、メンチルグリセリルエーテル、カンファ等が挙げられる。
【0040】
制汗剤としては、例えば、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛等が挙げられる。
【0041】
殺菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、フェノール、トリクロロカルバニリド、グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、サリチル酸、ソルビン酸、塩化リゾチーム等が挙げられる。
【0042】
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール類、BHT、没食子酸エステル類等が挙げられる。酸化防止助剤としては、例えば、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマール酸、ケファリン、ヘキサメタフォスフェイト、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等が挙げられる。
【0043】
油脂類としては、例えば、炭化水素油として、流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワレンおよびスクワラン等が挙げられる。また、植物油として、ホホバ油、オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油およびアボカド油等が挙げられる。
【0044】
本発明のエアゾール組成物は、任意成分として、水、多価アルコール、および/または、界面活性剤を含んでいてもよいが、頭髪のヌルつきをより無くすという観点から、本発明のエアゾール組成物は、これらの任意成分を含まないことが好ましい。
【0045】
本発明のエアゾール組成物は、実質的に水を含有しない、非水系エアゾール組成物であることが好ましい。なお、「実質的に水を含まない」とは、上述した各成分、および、後述する噴射剤とは別に、エアゾール組成物に水を添加しないことを意味する。上述した各成分、および/または、後述する噴射剤に少量の水が含有されており、エアゾール組成物が、水として当該水のみを含む場合、当該エアゾール組成物は、非水系エアゾール組成物に分類される。
【0046】
〔1-2.噴射剤〕
本発明のエアゾール組成物は、上述した原液以外に、噴射剤(成分E)を含む。当該噴射剤は、エアゾール組成物を噴霧することを可能にするとともに、エアゾール組成物にドライ感を付与する効果を奏する。
【0047】
本発明のエアゾール組成物中の成分Eの含有量は、40.0~95.0質量%、好ましくは45.0~90.0質量%である。当該構成であれば、エアゾール組成物に、より高いドライ感を付与することができる。
【0048】
本発明のエアゾール組成物に含まれる噴射剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。噴射剤としては、ガス(例えば、空気、窒素ガス、フッ素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素等)が挙げられる。当該ガスは、圧縮ガスであることが好ましい。また、噴射剤としては、液化ガス(例えば、液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)、ジメチルエーテル(DME:Dimethyl ether)、イソペンタン、フルオロカーボン)が挙げられる。噴射剤としては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。例えば、液化ガスのみ、または、圧縮ガスのみを用いてもよいし、液化ガスと圧縮ガスとを併用してもよい。
【0049】
液化ガスとしては、噴射力、環境保全、および生産性の観点から、LPGおよびDMEが好ましく、噴射力および冷却能の制御の容易さの観点から、LPGがより好ましい。
【0050】
より具体的に、噴射剤は、温度20℃における蒸気圧が0.05~0.35MPaである、炭素数が3~5個の炭化水素であることが好ましい。当該構成であれば、噴射力、環境保全、生産性、冷却能、およびドライ感に優れたエアゾール組成物を実現することができる。
【0051】
このような噴射剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、または、これらの少なくとも2つを含む噴射剤を挙げることができる。このような噴射剤としては、より具体的に、噴射剤100質量%あたり、プロパンを0.1~50質量%(より好ましくは1.0~20質量%)、および、ブタンを50~99.9質量%(より好ましくは80~99.0質量%)含む噴射剤が挙げられる。
【0052】
〔2.エアゾール組成物の製造方法および用途〕
本発明のエアゾール組成物は、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、原液をエアゾール容器内に充填し、エアゾール用バルブによってエアゾール容器をクリンチした後、ステムを介してエアゾール容器内へ噴射剤を規定量充填し、ステムに適したボタンを当該ステムに装着する方法が挙げられる。
【0053】
本発明のエアゾール組成物は、頭皮および頭髪用エアゾール組成物として、例えば、整髪用または洗浄用(例えば、ドライシャンプー)として利用することができる。
【実施例
【0054】
本発明の一実施例について、以下に説明する。
【0055】
〔1.実施例1~18および比較例1~7〕
表1~表3に示すように各成分を配合することにより、実施例1~18および比較例1~7のエアゾール組成物を調整した。なお、これらの実施例では、(i)エアゾール組成物の合計量が100質量%、原液の合計量が30質量%、噴射剤の合計量が70質量%、(ii)エアゾール組成物の合計量が100質量%、原液の合計量が35質量%、噴射剤の合計量が65質量%、(iii)エアゾール組成物の合計量が100質量%、原液の合計量が20質量%、噴射剤の合計量が80質量%、または、(iv)エアゾール組成物の合計量が100質量%、原液の合計量が10質量%、噴射剤の合計量が90質量%となるように、各成分を配合している。
【0056】
〔2.各成分の詳細〕
<成分A>
オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム:Nouryon社製、製品名「DRY-FLO PURE」、
トウモロコシデンプン:Nouryon社製、製品名「DRY-FLO AF PURE」、
タピオカデンプン:Nouryon社製、製品名「DRY-FLO TS PURE」、
コメデンプン:日本コーンスターチ社製、製品名「米澱粉」。
【0057】
<成分B>
アルギン酸カルシウム-1:平均粒子径7μm、
アルギン酸カルシウム-2:平均粒子径10μm。
【0058】
<成分C>
無水ケイ酸-1(平均粒子径5μm、不定形):富士シリシア社製、製品名「サイリシア250」、
無水ケイ酸-2(平均粒子径9μm、不定形):富士シリシア社製、製品名「サイリシア380」、
無水ケイ酸-3(平均粒子径14μm、不定形):富士シリシア社製、製品名「サイリシア470」。
【0059】
<成分E>
LPG:小池化学社製、製品名「LPG0.15」。
【0060】
<成分F>
シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール:日本精化社製、製品名「Neosolue-Aqulio」。
【0061】
〔3.皮脂汚れ除去力の評価〕
皮脂汚れ除去力は、ミドルレングスのウィッグ(レッスンマネキン:ユーカリジャパン社製)に擬似頭皮脂スプレー(LPGガス 99.95%、スクワラン 0.05%)を0.5g噴霧した後、手櫛で馴染ませることで、ウィッグに擬似頭皮脂を付着させた。そして、擬似頭皮脂を付着させたウィッグに、調整したエアゾール組成物を3.0g噴霧し、手櫛で馴染ませた際のべたつきを以下の評価基準に基づき評価した。
【0062】
<評価基準>
◎:試験結果がべたつきを全く感じなかった場合、皮脂汚れ除去力を「◎」と評価した。
○:試験結果がべたつきをほとんど感じなかった場合、皮脂汚れ除去力を「○」と評価した。
×:試験結果がべたつきを感じた場合、皮脂汚れ除去力を「×」と評価した。
【0063】
〔4.吸水力の評価〕
吸水力は、ミドルレングスのウィッグ(レッスンマネキン:ユーカリジャパン社製)に精製水を0.3g噴霧し、手櫛で馴染ませることでウィッグに水を付着させた。そして、水を付着させたウィッグに、調整したエアゾール組成物を3.0g噴霧し、手櫛で馴染ませた。その後、毛髪を指先で触れたときの濡れ感を以下の評価基準に基づき評価した。
【0064】
<評価基準>
◎:試験結果が濡れ感を全く感じなかった場合、吸水力を「◎」と評価した。
○:試験結果が濡れ感をほとんど感じなかった場合、吸水力を「○」と評価した。
×:試験結果が濡れ感を感じた場合、吸水力を「×」と評価した。
【0065】
〔5.整髪力の評価〕
整髪力は、ミドルレングスのウィッグ(レッスンマネキン:ユーカリジャパン社製)の右半頭に調整したエアゾール組成物を3.0g噴霧し、毛髪の根元から毛先にかけて上方向に毛髪をかき上げた。一方、エアゾール組成物未塗布の左半頭も同様の操作を行った。上記操作後、目視にて左右の毛髪の整髪状態を観察し、以下の評価基準に基づき評価した。
【0066】
<評価基準>
◎:試験結果が左半頭と比較し、毛髪が根元から立ちあがっており、明らかにボリュームアップしていた場合、整髪力を「◎」と評価した。
○:試験結果が左半頭と比較し、毛髪が根元から立ちあがっており、ややボリュームアップしていた場合、整髪力を「○」と評価した。
×:試験結果が左半頭と比較し、毛髪が根元から立ちあがっておらず、全くボリュームアップされていなかった場合、整髪力を「×」と評価した。
【0067】
〔6.使用感の評価〕
使用感は、ミドルレングスのウィッグ(レッスンマネキン:ユーカリジャパン社製)の半頭に調整したエアゾール組成物を3.0g噴霧し、手櫛で馴染ませた際のゴワつきの無さ、ヌルつきの無さについて以下の評価基準に基づき評価した。
【0068】
<評価基準>
◎:試験結果がゴワつき、ヌルつきがまったく感じられなかった場合、使用感を「◎」と評価した。
○:試験結果がゴワつき、ヌルつきがほとんど感じられなかった場合、使用感を「○」と評価した。
×:試験結果がゴワつき、ヌルつきを感じた場合、使用感を「×」と評価した。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
〔7.試験結果〕
表1~表3より、本実施例に係るエアゾール組成物は、皮脂汚れ除去力、吸水力、整髪力、および使用感の評価に優れていることが明らかになった。なお、比較例3、5および7は、ゴワつきが大きく使用感が悪かった。
【0073】
〔処方例〕
オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンエステルアルミニウム 3.5質量%
不定形シリカ 0.15質量%
アルギン酸カルシウム 0.30質量%
シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 0.10質量%
香料 0.03質量%
エタノール 25.92質量%
LPG 70.0質量%
合計 100.0質量%
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、頭皮および頭髪用エアゾール組成物として、例えば、整髪用または洗浄用(例えば、ドライシャンプー)として好適に利用することができる。