(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】通信種別と対象種別との対応関係に基づき端末を同定する装置、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
H04W 24/02 20090101AFI20230410BHJP
H04W 24/08 20090101ALI20230410BHJP
【FI】
H04W24/02
H04W24/08
(21)【出願番号】P 2019217809
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2021-11-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、総務省、「研究開発課題 II.第5世代移動通信システムの更なる高度化に向けた研究開発、技術課題ア.多様なサービス要求に応じた高信頼な高度5Gネットワーク制御技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【氏名又は名称】早原 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100141313
【氏名又は名称】辰巳 富彦
(72)【発明者】
【氏名】三原 翔一郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 隆秀
【審査官】石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-006844(JP,A)
【文献】特開2015-029218(JP,A)
【文献】特開2017-005473(JP,A)
【文献】特開2018-148297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの端末と通信を行う通信手段から取得した通信に係る情報に基づいて、当該端末との間の通信の種類に係る情報である通信種別情報を決定する通信種別決定手段と、
当該端末の存在し得る環境をセンシングするセンサから当該環境に係る情報である環境情報を取得し、当該環境情報から検出した少なくとも1つの対象の種類に係る情報である対象種別情報を決定する対象種別決定手段と、
当該通信の種類に係る情報と当該対象の種類に係る情報とを対応付けた情報である種別対応関係情報に基づいて、
決定された対象種別情報に係る対象であって、決定された通信種別情報に係る端末
の同定先となる対象を特定し、該端末と特定した対象とを対応
付けた端末対象対応情報を決定する対応関係決定手段と
を有することを特徴とする端末同定装置。
【請求項2】
前記通信種別決定手段は、eMBB(enhanced Mobile BroadBand)対応の通信方式、URLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications)対応の通信方式、及びmMTC(massive Machine Type Communication)対応の通信方式の少なくとも1つを含む通信方式種別群の中からの選択によって、または、音声通話データ、動画配信データ、ウェブページデータ、電子メールデータ、投稿データ、アプリケーションデータ、機器制御データ、及びセンサデータのうちの少なくとも1つを含む通信データ種別群の中からの選択によって、当該通信種別情報を決定することを特徴とする請求項1に記載の端末同定装置。
【請求項3】
当該種別対応関係情報は、少なくともその一部が一対多、多対一又は多対多の対応付けに係る情報であり、
前記対応関係決定手段は、対応が一意に決定される端末及び対象の組から順次対応関係を決定していく貪欲アルゴリズム、又はグラフ理論の最大流問題を解決可能な組合せ最適化アルゴリズムによって、当該端末
対象対
応情報を決定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の端末同定装置。
【請求項4】
前記通信手段は、自らに係る対象種別情報を保持した端末から、該対象種別情報を取得し、
前記端末同定装置は、取得された対象種別情報と、該対象種別情報を保持した端末について決定された通信種別情報とを用いて、当該種別対応関係情報の少なくとも一部を生成する種別対応関係管理部を更に有する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の端末同定装置。
【請求項5】
前記対象種別決定手段は、ある時点で検出された対象が、前の時点で検出されていない又は検出され得ない新規の対象であるか否かを判定し、
前記対応関係決定手段は、当該新規の対象の対象種別情報については、当該種別対応関係情報に基づき、当該ある時点又は当該ある時点を含む所定時間範囲内で新たに通信接続された端末の通信種別情報との対応のみを判断して、当該新規の対象についての
当該端末
対象対
応情報を決定する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の端末同定装置。
【請求項6】
前記対象種別決定手段は、当該ある時点で検出された対象の検出位置及び/又は当該検出位置の変化から決定される、該対象の位置及び/又は速度に係る情報に基づいて、該対象が新規の対象であるか否かを判定することを特徴とする請求項5に記載の端末同定装置。
【請求項7】
前記対象種別決定手段は、ある時点で検出された対象が、前の時点で検出された対象と同一であるか否かを判定し、
前記対応関係決定手段は、当該ある時点で検出された対象が当該前の時点で検出された対象と同一であると判定されており、且つ当該前の時点で検出された対象とある端末とが対応関係にあると判定している場合に、当該ある時点で検出された対象は、当該ある端末
の同定先であると判定する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の端末同定装置。
【請求項8】
前記通信種別決定手段は、当該通信に係る情報としての当該通信の電波に係る情報に基づいて、当該端末の位置及び/又は速度に係る情報である端末状態情報も決定し、
前記対象種別決定手段は、当該対象の検出位置及び/又は当該検出位置の変化から、該対象の位置及び/又は速度に係る情報である対象状態情報も決定し、
前記対応関係決定手段は、決定された端末状態情報と、決定された対象状態情報とが対応する度合いである状態対応度を算出し、当該状態対応度にも基づいて、当該端末
対象対
応情報を決定する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の端末同定装置。
【請求項9】
前記通信種別決定手段は、当該通信に係る情報に基づいて、当該端末との間の通信状態に係る情報である端末通信状態情報も決定し、
前記対象種別決定手段は、当該環境情報から、当該対象が端末を含むならば当該対象との間で具現することになる通信状態に係る情報である対象通信状態情報も決定し、
前記対応関係決定手段は、決定された端末通信状態情報と、決定された対象通信状態情報とが対応する度合いである通信状態対応度を算出し、当該通信状態対応度にも基づいて、当該端末
対象対
応情報を決定する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の端末同定装置。
【請求項10】
前記センサは、互いに異なる位置に設けられた複数のセンサであり、
前記対象種別決定手段は、前記複数のセンサのそれぞれから複数の環境情報を取得して、当該複数の環境情報のそれぞれから当該対象種別情報を決定し、決定した対象種別情報のうちで、当該対象種別情報に係る対象の検出位置が所定以上に近いもの同士について、及び/又は、当該対象種別情報に係る対象の検出領域の特徴量が所定以上に類似しているもの同士について、それらの対象種別情報は、同一の対象に係るものとする
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の端末同定装置。
【請求項11】
前記対象種別決定手段は、周囲に存在する他の端末同定装置から、当該他の端末同定装置において前記センサとは別のセンサから取得された環境情報から決定された対象種別情報を取得し、
前記対応関係決定手段は、当該種別対応関係情報に基づいて、取得された対象種別情報に係る対象と、決定された通信種別情報に係る端末と
についての当該端末対象対
応情報も決定する
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の端末同定装置。
【請求項12】
当該端末は、移動体に設置された又は携帯された複数の端末を含み、
前記端末同定装置は、
検出された複数の対象の検出位置に基づいて、お互いが後に所定以上に接近すると推定される複数の対象を特定する接近対象特定手段と、
前記対応関係決定手段によって、特定された複数の対象のいずれかと対応関係にあると判定された少なくとも1つの端末のうちの少なくとも1つに宛てて、当該所定以上に接近すると推定されることに係る情報を送信させる通信制御手段と
を更に有することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の端末同定装置。
【請求項13】
当該環境情報と、該環境情報から検出された対象に係る情報とを含む学習データであって、請求項1から12のいずれか1項に記載の端末同定装置によって、該対象
が同定先になると判定された端末との間の通信状態に係る情報を正解データとした学習データ
を用いてニューラルネットワークアルゴリズムを訓練することによって構築され
ており、説明変数に係る情報としての環境情報及び該環境情報から検出された対象に係る情報を入力すると、目的変数に係る情報としての、該対象とされる端末の通信状態に係る情報を出力する端末
通信状態情報推定
部としてコンピュータを機能させることを特徴とする学習モデル。
【請求項14】
請求項13に記載の学習モデルに対し、当該環境情報と、該環境情報から検出された対象に係る情報とを含むデータを入力し、該学習モデルによって出力された端末の通信状態に係る情報に基づいて、端末としての該対象の通信状態に係る情報を推定する端末通信状態推定手段と、
推定された通信状態に係る情報に基づいて、端末としての前記対象の通信経路を切り替えるか否かの判断を行う通信制御手段と
を有することを特徴とする通信中継装置。
【請求項15】
少なくとも1つの端末と少なくとも1つの対象との対応関係を決定可能なコンピュータを機能させるプログラムであって、
当該端末と通信を行う通信手段から取得した通信に係る情報に基づいて、当該端末との間の通信の種類に係る情報である通信種別情報を決定する通信種別決定手段と、
当該端末の存在し得る環境をセンシングするセンサから当該環境に係る情報である環境情報を取得し、当該環境情報から検出した当該対象の種類に係る情報である対象種別情報を決定する対象種別決定手段と、
当該通信の種類に係る情報と当該対象の種類に係る情報とを対応付けた情報である種別対応関係情報に基づいて、
決定された対象種別情報に係る対象であって、決定された通信種別情報に係る端末
の同定先となる対象を特定し、該端末と特定した対象とを対応
付けた端末対象対応情報を決定する対応関係決定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする端末同定プログラム。
【請求項16】
少なくとも1つの端末と少なくとも1つの対象との対応関係を決定可能なコンピュータにおける端末同定方法であって、
当該端末と通信を行う通信手段から取得した通信に係る情報に基づいて、当該端末との間の通信の種類に係る情報である通信種別情報を決定し、一方、当該端末の存在し得る環境をセンシングするセンサから当該環境に係る情報である環境情報を取得し、当該環境情報から検出した当該対象の種類に係る情報である対象種別情報を決定するステップと、
当該通信の種類に係る情報と当該対象の種類に係る情報とを対応付けた情報である種別対応関係情報に基づいて、
決定された対象種別情報に係る対象であって、決定された通信種別情報に係る端末
の同定先となる対象を特定し、該端末と特定した対象とを対応
付けた端末対象対応情報を決定するステップと
を有することを特徴とする端末同定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
通信対象としての端末についての情報を取得する技術、特に当該端末を同定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
来る第5世代移動通信システム(5G)は、ミリ波帯の電波を利用し、高速、大容量、低遅延、多端末接続といった高性能の通信を実現可能とする。ここで、ミリ波は、高い直進性を有していて回折が起きにくく、端末と基地局との間に存在する物体によってその伝播が遮られたり減衰したりする可能性が高くなる。そのため、5Gでは、このような物体の介在により受信電力が急激に低下して、通信品質が大幅に劣化してしまうことが大きな問題となっている。
【0003】
これに対し、このような物体による受信電力の低下を予測できれば、端末の通信経路を切り替える等の制御によって通信品質を維持することも可能となる。この受信電力の予測技術として、例えば非特許文献1には、RGB画像に加えデプス画像も生成可能なRGB-Dカメラによって取得される時系列の3次元環境情報を用い、機械学習によって通信装置における受信電力を予測する手法が開示されている。
【0004】
具体的にこの手法では、通信環境を撮像した結果である時系列の環境情報に対し、送信局から電波を受信した端末において(撮像と同時に)計測された受信電力の時系列情報を正解データとして紐づけた教師データをもって、機械学習モデルを構築し、この構築した機械学習モデルを用いて、RGB-Dカメラにより取得された時系列の環境情報から、受信端末における受信電力の予測値を決定している。
【0005】
また、例えば特許文献1は、非特許公報1に開示されたような機械学習による通信品質の予測処理において、システムの初期動作段階や発生頻度の低い通信環境における通信品質の推定精度を向上させる技術を開示している。具体的には、通信環境の計測結果から形成した仮想空間において、仮想的にRGB-Dカメラによる情報を生成するとともに、伝搬シミュレーションによって仮想空間における受信端末の通信品質を推定することにより、仮想空間上で大量の学習データを生成し、これにより推定精度の向上した機械学習モデルを構築することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-148297号公報
【文献】特開2016-212675号公報
【文献】特開2019-144941号公報
【文献】特開2019-082363号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】西尾理志,「機械学習による無線通信品質予測と通信制御」,信学技報,Vol. 118,No. 57,SR2018-1,1~8頁,2018年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、以上に述べた非特許文献1に開示されたような従来技術では、例えば時系列の環境情報に複数の物体が含まれる通常の状況において、これらの物体のうちで、正解データとなる時系列の受信電力情報に係る端末に相当するものを特定することができない。その結果、実運用に使用可能な高い推定精度を有する機械学習モデルを構築することが非常に困難となる。すなわち、RGB-Dカメラで撮像された(端末を含む可能性のある)物体と、計測された受信電力に係る端末とが同じ対象であるか否か(対応関係にあるか否か)を判断できないので、そもそも信頼性の高い学習データが生成できないのである。
【0009】
また、仮に非特許文献1に開示されたような機械学習モデルを適用した場合でも、例えばRGB-Dカメラで生成された時系列の環境情報から検出された物体(端末)が、この機械学習モデルによって予測された受信電力に係るものであるか否かは全く不明であり、したがって送信局側としても、予測された受信電力は、接続しているいずれの端末に係るものであるのか、さらにはそもそも、予測された受信電力が、いずれかの端末に係るものであるのか否かですらも判断することができなくなってしまう。
【0010】
この点、特許文献1に開示された技術では、仮想空間においてRGB-Dカメラで撮像した端末と計測した受信電力との対応関係を決定することができるので、例えば複数の端末が移動し得る状況に対応した機械学習モデルを構築することは可能である。しかしながら、このようなモデルを適用したとしても、実運用における受信電力の予測の場面においては結局、端末の同定ができず、上述したような非特許公報1と同様の問題が生じてしまう。
【0011】
ここで、特許文献2には、携帯端末の挙動を把握し、当該携帯端末とコンピュータが検出している移動体とを対応付ける物体認識システムが開示されている。このシステムでは、各携帯端末は、自端末に作用する加速度等の種々の状態量を逐次検出し、時系列の検出結果を端末挙動データとしてサーバに送信し、サーバは、カメラから入力される映像信号に基づいて撮影範囲に存在する移動体の挙動を監視して、各移動体の挙動に関する状態量の時間変化を示すデータを推定結果履歴データとしてサーバ側記憶部に格納する。次いで、携帯端末から送信された端末挙動データと、移動体毎の推定結果履歴データとを比較することで、撮影範囲に存在する移動体と携帯端末との対応関係を特定している。
【0012】
しかしながら、この特許文献2に係るシステムでは、対応関係を特定する基準が、移動体の挙動に起因する物理的状態量のみとなっており、まさに懸案であるところの、各携帯端末が基地局と行う通信に係る情報は何ら活用されていない。また、携帯端末側でも自身の挙動に起因して変化する所定の状態の情報を取得する必要があるので、各携帯端末に所定の状態を検出可能なセンサ等の設備が必須となってしまい、さらにその検出結果を逐次送信する必要が生じるので、技術的に面倒な状況となってしまう。
【0013】
また、特許文献3には、無線受信機を所持する一人又は複数の人物が滞在したり移動したりしている環境において、カメラ等を用いて取得した当該人物の動線情報と、当該無線受信機(を所持する人物)との対応付けを行う技術が開示されている。この技術は具体的に、人物の動線情報から当該人物が所定エリアに滞在している時間帯を特定し、所定エリアに対応する位置に設置された無線発信機と当該人物の所持する受信機とが通信を行うことで生成される受信履歴情報から、その時間帯において所定エリアに滞在している可能性が高い人物を判別し、当該人物を、その時間帯を特定した動線情報に対応付けるものとなっている。
【0014】
しかしながら、この特許文献3の技術において、無線受信機を所持する人物とカメラをもって取得された人物の動線情報とを対応付けるためには、当該人物が所定エリアに滞在していることが大前提となっている。勿論、多数の所定エリアを設定することで当該人物が所定エリアに滞在することになる確率は高まるが、そうなると今度は、多数の所定エリア毎に無線発信機を設置しなければならなくなってしまう。
【0015】
さらに、特許文献4には、電波源から電波を受信した端末の位置を推定するため、カメラ画像等から推定した環境の物体分布に基づいて環境の電波減衰を決定し、当該電波減衰を反映した存在確率密度関数に基づき、端末の受信電波に係る量を変数として当該端末の位置を決定する技術が開示されている。
【0016】
しかしながら、この特許文献4の技術では、受信電波情報に係る端末と、物体分布を構成する物体(端末)との対応付けは基本的に、環境内の各位置における電波減衰の程度を反映した当該各位置における存在確率に基づいて行われるため、例えば決定した端末位置の近傍に多数の物体が存在している場合、特に各物体位置での電波減衰の程度が似通った状況となる場合には、誤った対応付けの行われる可能性が高まってしまう。また実運用上は、複数のビーコンをエリア内に配置する必要があり、一般の通信エリア全体に適用することは現実的ではない。
【0017】
そこで、本発明は、端末と、当該端末の存在し得る環境に存在する対象との対応関係を、互いの位置関係に又は当該位置関係のみに頼ることなく、当該端末との通信に係る情報を利用して決定することができる装置、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、
少なくとも1つの端末と通信を行う通信手段から取得した通信に係る情報に基づいて、当該端末との間の通信の種類に係る情報である通信種別情報を決定する通信種別決定手段と、
当該端末の存在し得る環境をセンシングするセンサから当該環境に係る情報である環境情報を取得し、当該環境情報から検出した少なくとも1つの対象の種類に係る情報である対象種別情報を決定する対象種別決定手段と、
当該通信の種類に係る情報と当該対象の種類に係る情報とを対応付けた情報である種別対応関係情報に基づいて、決定された対象種別情報に係る対象であって、決定された通信種別情報に係る端末の同定先となる対象を特定し、該端末と特定した対象とを対応付けた端末対象対応情報を決定する対応関係決定手段と
を有する端末同定装置が提供される。
【0019】
この本発明による端末同定装置において、通信種別決定手段は、
(a)eMBB(enhanced Mobile BroadBand)対応の通信方式、URLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications)対応の通信方式、及びmMTC(massive Machine Type Communication)対応の通信方式の少なくとも1つを含む通信方式種別群の中からの選択によって、または、
(b)音声通話データ、動画配信データ、ウェブページデータ、電子メールデータ、投稿データ、アプリケーションデータ、機器制御データ、及びセンサデータのうちの少なくとも1つを含む通信データ種別群の中からの選択によって、
当該通信種別情報を決定することも好ましい。
【0020】
また、本発明による端末同定装置の一実施形態として、当該種別対応関係情報は、少なくともその一部が一対多、多対一又は多対多の対応付けに係る情報であり、
対応関係決定手段は、対応が一意に決定される端末及び対象の組から順次対応関係を決定していく貪欲アルゴリズム、又はグラフ理論の最大流問題を解決可能な組合せ最適化アルゴリズムによって、当該端末対象対応情報を決定することも好ましい。
【0021】
さらに、本発明による端末同定装置の他の実施形態として、上記の通信手段は、自らに係る対象種別情報を保持した端末から、この対象種別情報を取得し、
本端末同定装置は、取得された対象種別情報と、この対象種別情報を保持した端末について決定された通信種別情報とを用いて、当該種別対応関係情報の少なくとも一部を生成する種別対応関係管理部を更に有することも好ましい。
【0022】
また、本発明による端末同定装置の更なる他の実施形態として、対象種別決定手段は、ある時点で検出された対象が、前の時点で検出されていない又は検出され得ない新規の対象であるか否かを判定し、
対応関係決定手段は、当該新規の対象の対象種別情報については、当該種別対応関係情報に基づき、当該ある時点又は当該ある時点を含む所定時間範囲内で新たに通信接続された端末の通信種別情報との対応のみを判断して、当該新規の対象についての当該端末対象対応情報を決定することも好ましい。
【0023】
さらに、上記の新規対象判定に係る実施形態において、対象種別決定手段は、当該ある時点で検出された対象の検出位置及び/又は当該検出位置の変化から決定される、この対象の位置及び/又は速度に係る情報に基づいて、この対象が新規の対象であるか否かを判定することも好ましい。
【0024】
また、本発明による端末同定装置の更なる他の実施形態として、対象種別決定手段は、ある時点で検出された対象が、前の時点で検出された対象と同一であるか否かを判定し、
対応関係決定手段は、当該ある時点で検出された対象が当該前の時点で検出された対象と同一であると判定されており、且つ当該前の時点で検出された対象とある端末とが対応関係にあると判定している場合に、当該ある時点で検出された対象は、当該ある端末の同定先であると判定することも好ましい。
【0025】
さらに、本発明による端末同定装置の更なる他の実施形態として、通信種別決定手段は、当該通信に係る情報としての当該通信の電波に係る情報に基づいて、当該端末の位置及び/又は速度に係る情報である端末状態情報も決定し、
対象種別決定手段は、当該対象の検出位置及び/又は当該検出位置の変化から、この対象の位置及び/又は速度に係る情報である対象状態情報も決定し、
対応関係決定手段は、決定された端末状態情報と、決定された対象状態情報とが対応する度合いである状態対応度を算出し、当該状態対応度にも基づいて、当該端末対象対応情報を決定することも好ましい。
【0026】
また、本発明による端末同定装置の更なる他の実施形態として、通信種別決定手段は、当該通信に係る情報に基づいて、当該端末との間の通信状態に係る情報である端末通信状態情報も決定し、
対象種別決定手段は、当該環境情報から、当該対象が端末を含むならば当該対象との間で具現することになる通信状態に係る情報である対象通信状態情報も決定し、
対応関係決定手段は、決定された端末通信状態情報と、決定された対象通信状態情報とが対応する度合いである通信状態対応度を算出し、当該通信状態対応度にも基づいて、当該端末対象対応情報を決定することも好ましい。
【0027】
さらに、本発明による端末同定装置の更なる他の実施形態として、上記のセンサは、互いに異なる位置に設けられた複数のセンサであり、
対象種別決定手段は、これら複数のセンサのそれぞれから複数の環境情報を取得して、当該複数の環境情報のそれぞれから当該対象種別情報を決定し、決定した対象種別情報のうちで、当該対象種別情報に係る対象の検出位置が所定以上に近いもの同士について、及び/又は、当該対象種別情報に係る対象の検出領域の特徴量が所定以上に類似しているもの同士について、それらの対象種別情報は、同一の対象に係るものとすることも好ましい。
【0028】
また、本発明による端末同定装置の更なる他の実施形態として、対象種別決定手段は、周囲に存在する他の端末同定装置から、当該他の端末同定装置において上記のセンサとは別のセンサから取得された環境情報から決定された対象種別情報を取得し、
対応関係決定手段は、当該種別対応関係情報に基づいて、取得された対象種別情報に係る対象と、決定された通信種別情報に係る端末とについての当該端末対象対応情報も決定することも好ましい。
【0029】
さらに、本発明による端末同定装置の更なる他の実施形態として、当該端末は、移動体に設置された又は携帯された複数の端末を含み、本端末同定装置は、
検出された複数の対象の検出位置に基づいて、お互いが後に所定以上に接近すると推定される複数の対象を特定する接近対象特定手段と、
対応関係決定手段によって、特定された複数の対象のいずれかと対応関係にあると判定された少なくとも1つの端末のうちの少なくとも1つに宛てて、当該所定以上に接近すると推定されることに係る情報を送信させる通信制御手段と
を更に有することも好ましい。
【0030】
本発明によれば、また、当該環境情報と、該環境情報から検出された対象に係る情報とを含む学習データであって、以上に述べた端末同定装置によって、この対象が同定先になると判定された端末との間の通信状態に係る情報を正解データとした学習データを用いてニューラルネットワークアルゴリズムを訓練することによって構築されており、説明変数に係る情報としての環境情報及び該環境情報から検出された対象に係る情報を入力すると、目的変数に係る情報としての、該対象とされる端末の通信状態に係る情報を出力する端末通信状態情報推定部としてコンピュータを機能させることを特徴とする学習モデルが提供される。
【0031】
本発明によれば、さらに、上述した学習モデルに対し、当該環境情報と、この環境情報から検出された対象に係る情報とを含むデータを入力し、この学習モデルによって出力された端末の通信状態に係る情報に基づいて、端末としてのこの対象の通信状態に係る情報を推定する端末通信状態推定手段と、
推定された通信状態に係る情報に基づいて、端末としてのこの対象の通信経路を切り替えるか否かの判断を行う通信制御手段と
を有する通信中継装置が提供される。
【0032】
本発明によれば、さらにまた、少なくとも1つの端末と少なくとも1つの対象との対応関係を決定可能なコンピュータを機能させるプログラムであって、
当該端末と通信を行う通信手段から取得した通信に係る情報に基づいて、当該端末との間の通信の種類に係る情報である通信種別情報を決定する通信種別決定手段と、
当該端末の存在し得る環境をセンシングするセンサから当該環境に係る情報である環境情報を取得し、当該環境情報から検出した当該対象の種類に係る情報である対象種別情報を決定する対象種別決定手段と、
当該通信の種類に係る情報と当該対象の種類に係る情報とを対応付けた情報である種別対応関係情報に基づいて、決定された対象種別情報に係る対象であって、決定された通信種別情報に係る端末の同定先となる対象を特定し、該端末と特定した対象とを対応付けた端末対象対応情報を決定する対応関係決定手段と
してコンピュータを機能させる端末同定プログラムが提供される。
【0033】
本発明によれば、またさらに、少なくとも1つの端末と少なくとも1つの対象との対応関係を決定可能なコンピュータにおける端末同定方法であって、
当該端末と通信を行う通信手段から取得した通信に係る情報に基づいて、当該端末との間の通信の種類に係る情報である通信種別情報を決定し、一方、当該端末の存在し得る環境をセンシングするセンサから当該環境に係る情報である環境情報を取得し、当該環境情報から検出した当該対象の種類に係る情報である対象種別情報を決定するステップと、
当該通信の種類に係る情報と当該対象の種類に係る情報とを対応付けた情報である種別対応関係情報に基づいて、決定された対象種別情報に係る対象であって、決定された通信種別情報に係る端末の同定先となる対象を特定し、該端末と特定した対象とを対応付けた端末対象対応情報を決定するステップと
を有する端末同定方法が提供される。
【発明の効果】
【0034】
本発明の端末同定装置、プログラム及び方法によれば、端末と、当該端末の存在し得る環境に存在する対象との対応関係を、互いの位置関係に又は当該位置関係のみに頼ることなく、当該端末との通信に係る情報を利用して決定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明による端末同定装置の一実施形態を示す模式図である。
【
図2】本発明に係る種別対応関係情報の具体例を示す模式図である。
【
図3】本発明に係る通信種別決定部、対象種別決定部、及び対応関係決定部における処理の一実施形態を説明するための模式図である。
【
図4】本発明に係る通信種別決定部、対象種別決定部、及び対応関係決定部での処理における他の実施形態を説明するための模式図である。
【
図5】本発明に係る通信種別決定部、対象種別決定部、及び対応関係決定部での処理における更なる他の実施形態を説明するための模式図である。
【
図6】本発明に係る通信種別決定部、対象種別決定部、及び対応関係決定部での処理における更なる他の実施形態を説明するための模式図である。
【
図7】本発明による端末同定方法の一応用例を説明するための模式図である。
【
図8】本発明に係るモデル構築部及び端末電波情報推定部における処理の一実施形態を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0037】
[端末同定装置]
図1は、本発明による端末同定装置の一実施形態を示す模式図である。
【0038】
図1に示した、本発明による端末同定装置としての基地局1は、本実施形態において5G(第5世代移動通信方式)に対応した通信中継装置であり、同じく5Gに対応した通信端末である複数の端末2との間で通信を実施可能な装置となっている。また、基地局1は本実施形態において、通信エリアの状況を所定の画角をもって撮影可能なRGB-Dカメラであるカメラ103を備えている。
【0039】
このカメラ103によって生成された(RGB及びデプス)画像データ(映像データ)には、
(a)端末2を所持・携帯した人物や、
(b)端末2を搭載した、含む又は搭乗させた自動車、二輪車、鉄道車両、ロボット、ドローン等の移動体、さらには
(c)端末2の付与・設置された物品、設備、施設、建造物、固定物
といったような「対象」が含まれている(撮像されている)可能性があり、さらに、端末2に関わらない人物、移動体や、物品、設備、施設、建造物、(樹木等の植物も含む)固定物等の「対象」も含まれ得るのである。
【0040】
ちなみに、このような「対象」は、同定対象である端末2との対応関係を決定すべきものとなり得る一方、端末2と基地局1との間に存在することによって、通信電波の障害物ともなり得る。特に、本実施形態の通信方式である5Gは、ミリ波帯の電波を通信に利用しているが、ミリ波は、高い直進性を有していて回折が起きにくく、端末2と基地局1との間に存在する「対象」によってその伝播が遮られたり減衰したりする可能性が高い。
【0041】
そのため、5Gでは、このような「対象」の介在により基地局1での受信信号電力が急激に低下して、通信品質が大幅に劣化してしまうことが大きな問題となるのである。ここで、このような「対象」による基地局1での受信信号電力の低下を予測できれば、端末2の通信経路を切り替える等の制御によって通信品質を維持することも可能となる。
【0042】
そこで、本実施形態の基地局1は、端末2と「対象」との対応関係を決定するだけでなく、後に説明するように、このような受信信号電力の予測や、通信経路の制御をも可能にする装置となっているのである。
【0043】
同じく
図1において、基地局1は、まず端末2と「対象」との対応関係を決定するべく、具体的にその特徴として、
(A)少なくとも1つの端末2と通信を行う通信手段(本実施形態では自ら具備する通信インタフェース101、通信制御部114及び通信履歴情報蓄積部102)から取得した通信に係る情報(例えば通信履歴情報)に基づいて、端末2との間の通信の種類に係る情報である「通信種別情報」を決定する通信種別決定部111と、
(B)端末2の存在し得る環境をセンシングするセンサ(本実施形態ではカメラ103)から当該環境に係る情報である「環境情報」を取得し、この「環境情報」から検出した少なくとも1つの「対象」の種類に係る情報である「対象種別情報」を決定する対象種別決定部112と、
(C)通信の種類に係る情報と対象の種類に係る情報とを対応付けた情報である「種別対応関係情報」に基づいて、決定された「通信種別情報」に係る端末2と、決定された「対象種別情報」に係る「対象」との対応関係に係る情報である「端末対象対応情報」を決定する対応関係決定部113と
を有している。
【0044】
ここで、上記(A)の「通信種別情報」は例えば、5Gで規定された(規定される可能性のある、若しくは5G用に設定された)通信方式である、
(a)eMBB(enhanced Mobile BroadBand,高速大容量)対応の通信方式、
(b)URLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications,超高信頼低遅延)対応の通信方式、及び
(c)mMTC(massive Machine Type Communication,超大量端末)対応の通信方式
のうちの少なくとも1つを含む通信方式種別群の中から選択された、通信方式種別の情報とすることができる。
【0045】
または、「通信種別情報」は、音声通話データ、動画配信データ、ウェブページデータ、電子メールデータ、投稿データ、アプリケーションデータ、機器制御データ、及びセンサデータのうちの少なくとも1つを含む通信データ種別群の中から選択された、通信データ種別(又はデータ用途種別)の情報であってもよい。さらにこの「通信種別情報」として、他の様々な通信に係る種別の情報、例えば5G以外の無線通信規格の種別情報、を採用することが可能である。
【0046】
一方、上記(B)の「対象種別情報」は、例えば"人物"、"自動車"や、"段ボール(梱包荷物)"といったような「対象」のモノとしての種類を特定する情報である。本実施形態では、「環境情報」としてのカメラ画像データから公知の画像認識技術によって「対象」を検出する際に、検出対象として設定される"クラス"を、「対象種別情報」とすることができる。
【0047】
さらに、上記(C)の「種別対応関係情報」は、一般の通信エリアに共通した汎用のものとして準備されてもよいが、例えば、街中エリアや工場敷地内エリアといったような、端末を同定すべき所定のエリアにおける通信や対象の状況に合わせ、設定者が通信種別とその対象種別とを予め対応付けて設定したものであることも好ましい。または後に説明するように、種別対応関係管理部121(
図1)が、「種別対応関係情報」の少なくとも一部を自動的に生成する態様をとることも可能である。
【0048】
以上説明したように、本発明による端末同定装置としての基地局1によれば、端末2と、端末2の存在し得る環境に存在する(「環境情報」から検出される)「対象」との対応関係を、それぞれに係る種別情報(通信種別情報及び対象種別情報)の対応関係に基づいて、決定することができる。すなわち、端末2及び「対象」における互いの位置関係に頼ることなく、それぞれに係る種別情報の対応関係を勘案することで「端末対象対応情報」を決定することが可能となるのである。
【0049】
ここで後述するように、基地局1においては、端末2及び「対象」に係る種別情報だけでなく互いの位置関係にも基づいて、「端末対象対応情報」を決定する実施形態をとることも可能である。しかしながら、いずれにしても基地局1は、互いの位置関係のみに頼ることなく、端末2と「対象」との対応関係を判定することができるのである。
【0050】
またその故、例えば同定対象である端末2の近傍に多数の「対象」が存在している場合(検出された場合)に、互いの位置の差が微小であるが故に誤った対応関係が決定されてしまうリスクを、位置とは連関しない種別情報を勘案することによって低減することも可能となるのである。
【0051】
なお、本実施形態における基地局1と端末2との間の通信方式には5Gが採用されているが、当然にLTE等、他の通信方式を用いてもよく、また、本発明による端末同定装置と端末との間の通信が、他の様々な無線通信規格に基づくものであってもよい。
【0052】
例えば物体による遮蔽問題が5Gほど顕著ではない通信方式であっても、「環境情報」から検出された「対象」を用いて、配下の端末を正確に同定したい状況は少なからず発生する。例えば、ある端末と対応関係にあると判定されたユーザの閲覧ページと、当該ユーザの動線との関係を決定してマーケティングや管理に生かす等、端末同定ニーズは多様に存在している。これに対し、本発明による端末同定装置によれば、そのような端末同定処理を高い精度で実施することも可能になるのである。
【0053】
また、本発明による端末同定装置は、基地局等の通信中継装置に限定されるものでもない。例えば、端末同定処理の専用装置として、基地局等の通信中継装置・設備に接続される形で設けられてもよい。また、本発明による端末同定装置として、本発明による端末同定プログラムを搭載した、クラウドサーバ、非クラウドのサーバ装置、パーソナル・コンピュータ(PC)、又はノート型若しくはタブレット型コンピュータ等を用いることも可能である。
【0054】
さらに言えば、本発明による端末同定装置(基地局1)の構成要素である上記(A)~(C)のうちの少なくとも1つが、他の構成要素とは別の装置に含まれるような形態をとることも不可能ではない。例えば、複数のサーバの全体によって上記(A)~(C)の機能を実現することも可能となっている。ここでこのような場合でも、これらの全体をもって、本発明による端末同定方法を実施する端末同定装置又はシステムであると捉えることができるのである。
【0055】
[端末同定装置の機能構成,端末同定プログラム]
同じく
図1の機能ブロック図において、基地局1は、本発明による端末同定装置及び通信中継装置の一実施形態として、通信インタフェース101と、通信履歴情報蓄積部102と、カメラ103と、カメラ画像蓄積部104と、プロセッサ・メモリとを有する。ここで、プロセッサ・メモリは、本発明による端末同定プログラムを包含する通信中継プログラムの一実施形態を保存しており、また、コンピュータ機能を有していて、この通信中継プログラムを実行することによって、端末同定処理及び通信中継処理を実施する。
【0056】
また、プロセッサ・メモリは、機能構成部として、端末状態決定部111a及び端末通信状態決定部111bを含む通信種別決定部111と、対象状態決定部112a及び対象通信状態決定部112bを含む対象種別決定部112と、対応関係決定部113と、通信制御部114と、種別対応関係管理部121と、接近対象特定部131と、モデル構築部141と、端末電波情報推定部142とを有する。なお、これらの機能構成部は、プロセッサ・メモリに保存された端末同定プログラム及び通信中継プログラムの機能と捉えることができ、また、
図1の機能ブロック図における基地局1の機能構成部間を矢印で接続して示した処理の流れは、本発明による端末同定方法及び通信中継方法の一実施形態としても理解される。
【0057】
同じく
図1の機能ブロック図において、通信制御部114は、通信インタフェース101と各端末2との間の無線通信動作を制御することにより基地局としての機能を果たし、さらに、各端末2との間で実施している通信に係る各種情報を取得・記録して当該情報を時系列で整理した通信履歴情報を生成し、通信履歴情報蓄積部102に保存・管理させる。
【0058】
ここで通信制御部114は当然に、各端末2との間の通信の通信方式を認識しており、本実施形態では、通信履歴情報は、端末2毎に、当該端末2の端末ID(識別子)と、当該端末2との間で実施している5G通信における通信方式(の対応する規格)、具体的にはeMBB、URLLC及びmMTCのうちのいずれか1つとを対応付けたレコードを含んでいる。
【0059】
<通信種別情報の決定>
通信種別決定部111は、通信履歴情報蓄積部102から通信履歴情報を取得し、同定対象である端末2の端末IDと、この端末2との間の通信方式(の対応する規格)、具体的にはeMBB、URLLC及びmMTCのうちのいずれか1つとを対応付けた情報である通信種別情報を決定する。
【0060】
<端末状態情報(端末位置情報,端末速度情報)の決定>
また、後に説明する、端末2の位置及び/又は速度も勘案して端末同定処理を行う好適な実施形態においてではあるが、通信種別決定部111の端末状態決定部111aは、通信履歴情報蓄積部102から取得した通信履歴情報に含まれる(又は通信履歴情報から生成される)通信の電波に係る情報、例えば端末2から受信された電波信号の受信信号電力(RSSI)に基づいて、端末2の位置に係る情報である端末位置情報も決定することも好ましい。
【0061】
ここで、本基地局1での受信信号電力のみならず、
(a)基地局1の周囲に存在する複数の基地局における受信信号電力計測値や、
(b)複数の基地局からの電波を受信した端末2における受信信号電力計測値
を、例えば通信によって取得し、周知の基地局測位技術によって、端末2の所在位置の時系列情報である端末位置情報を決定することができる。
【0062】
また、端末状態決定部111aは、この端末位置情報から、端末位置の時間変化分を算出して、端末2の速度の時系列情報である端末速度情報を決定することもできる。ここで以下、これらの決定された端末位置情報や端末速度情報をまとめて端末状態情報とも称することとする。
【0063】
ちなみに変更態様として、上記の端末速度情報については、
(a)端末2から受信した電波の周波数の偏移、
(b)端末2から受信した電波の受信信号電力(RSSI)の時間当たりの変動、
(c)端末2との通信におけるRTTの時間当たりの変動
のうちの少なくとも1つから導出される端末2の速度に基づいて決定されることも好ましい。
【0064】
このうち上記(a)については、受信電波の周波数f_tの時系列情報から、通信用として本来設定された周波数f0_tからの偏移分Δf_tの時系列情報を生成し、この偏移分Δf_tに対し、例えば電波工学の分野で周知であるドップラー効果を用いた物体速度計測法を適用することによって、端末2の速度ベクトルv_eの時系列情報を生成し、これを端末速度情報としてもよい。
【0065】
また上記(b)については、受信信号電力(変数)E_tの時系列情報と、予め設定された端末2からの発信信号強度とから、例えば電波工学の分野で周知であるフリスの伝達公式を用いて、端末2までの距離D_tの時系列情報を生成し、この距離D_tの時間変化から、端末2の速度ベクトルv_eの時系列情報を生成して、これを端末速度情報としてもよい。
【0066】
さらに、上記(c)については、RTTR_tの時系列情報から、当該RTTR_tに対し電波伝搬速度VとRTTを片道分にする係数0.5とを乗算することによって通信距離(R_t*V/2)の時系列情報を生成し、この通信距離の時間変化から、端末2の速度ベクトルv_eの時系列情報を生成して、これを端末速度情報としてもよい。
【0067】
なお、以上に述べた速度ベクトルv_eは、場合によっては又は正確には、端末2の速度ベクトルの所定方向(例えば基地局1と端末2とを結ぶ方向)への射影ベクトルとなる。
【0068】
<端末通信状態情報の決定>
さらに、同じく後に説明する、端末2との間の通信状態も勘案して端末同定処理を行う好適な実施形態においてではあるが、通信種別決定部111の端末通信状態決定部111bは、通信履歴情報蓄積部102から通信履歴情報を取得し、この通信履歴情報に基づいて、端末2との間の通信状態に係る情報である端末通信状態情報を決定する。
【0069】
ここで本実施形態において、この端末通信状態情報は、
(α)端末2との通信接続の有無に係る情報、及び
(β)端末2から受信された電波信号の受信信号電力(RSSI)
のいずれか一方又は両方となっている。
【0070】
このうち上記(α)について、端末通信状態決定部111bは、端末2との通信接続が各時点において確立されているか否かの時系列情報、すなわち、時点tにおいて通信が確立されている場合に1、確立されていない場合に-1の値をとる2値の通信接続有無変数:
(1) B_t∈{-1, 1}
の時系列情報を生成してもよい。
【0071】
また上記(β)について、端末通信状態決定部111bは、端末2から受信された電波信号の時点tにおける信号電力値を示す受信信号電力変数E_tの時系列情報を生成してもよい。また上述したように、端末通信状態決定部111bは、好適な一実施形態として、通信接続有無変数B_tの時系列情報、及び受信信号電力変数E_tの時系列情報の両方を含む端末通信状態情報を決定することも好ましい。
【0072】
同じく
図1の機能ブロック図において、カメラ103は、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の固体撮像素子を備えた可視光、近赤外線又は赤外線対応の撮影デバイスであってもよく、ウェブ(Web)カメラ、ステレオカメラ、全天球(全方位)カメラ等とすることもできる。勿論、カメラ103の代わりに、例えばLiDAR、レーザ・赤外線測位器、TOFカメラ、サーモグラフィデバイスといったような、端末2の存在し得る環境をセンシングし環境情報を生成可能なセンサを採用することも可能である。
【0073】
ここで本実施形態では、カメラ103は、環境情報としてRGB画像及びデプス画像を生成可能なRGB-Dカメラとなっており、生成された環境情報(RGB画像データ及びデプス画像データ)は、カメラ画像蓄積部104で保存・管理される。
【0074】
なお、カメラ103は、本実施形態では基地局1内に設置されているが、例えば基地局1とは離隔した位置に設置されたカメラ、例えば街中の監視カメラであって、基地局1と通信接続されたものであってもよい。また、後に説明するが、基地局1の内外を問わず、カメラ103が、互いに異なる位置に複数設けられている実施形態をとることも可能である。
【0075】
<対象種別情報の決定>
対象種別決定部112は、
(ア)カメラ画像蓄積部104から(RGB及びデプス)画像データ(環境情報)を取得し、
(イ)取得した画像データから、端末2を含む可能性のある「対象」を検出し、
(ウ)例えば"人物"、"自動車"や"段ボール"といったような、検出された「対象」に係る"クラス"を、当該対象の種類に係る情報である対象種別情報に決定する。
【0076】
ここで具体的に、上記(ウ)の対象種別情報は、検出された「対象」に付与された対象IDと、当該「対象」に係る"クラス"とを対応付けた情報とすることができる。
【0077】
また、上記(イ)の「対象」は、例えば、
(a)携帯端末を所持した人物(ユーザ)、
(b)ドライブレコーダ機能、CAN情報転送機能、サーバによる自動運転制御のインタフェース機能等を有する端末2の搭載された自動車や、
(c)サーバによる自律移動制御のインタフェース機能を有する端末2を搭載した自律移動型ロボットや自律飛行型ドローン、さらには、
(d)センサ情報転送機能を有する端末2の付与・設置された物品
といったような、通信履歴情報に係る通信先である端末2を含む可能性のある人物、移動体や物品等とすることができる。また場合によっては、端末2を含む可能性のある設備、施設、建造物、固定物等も「対象」とすることがあり得るのである。
【0078】
さらに、上記(イ)における画像データからの対象検出処理としては、例えば、各種画像認識用として周知の機械学習アルゴリズム(例えばニューラルネットワークを用いたアルゴリズム)に基づき対象検出用のモデルを構築し、当該モデルを用いて、画像データ内における、設定された"クラス"に相当する「対象」が存在すると推定される検出領域(例えばbounding box)を特定し、さらに、当該検出領域が対象である確からしさを示すスコアも算出して、所定条件を満たすだけの高いスコアを有する検出領域を対象領域に決定する、といったような周知の画像認識処理が採用可能である。またこの場合、「対象」の検出位置は、この決定された対象領域の代表点(例えば重心や下端中点等)とすることができるのである。
【0079】
ちなみに、カメラ103としてRGBカメラやステレオカメラを採用する場合、生成された環境情報であるカメラ画像データに対し、例えば、非特許文献:Wei Liu, Dragomir Anguelov, Dumitru Erhan, Christian Szegedy, Scott Reed, Cheng-Yang Fu, Alexander C. Berg, “SSD: single shot multibox detector”, European Conference on Computer Vision, Computer Vision-ECCV 2016, 21~37頁, 2016年に記載された物体検出器を適用することによって、対象領域及び検出位置を決定することが可能となっている。
【0080】
また、カメラ103に代わりにLiDARを本発明に係るセンサとして用いる場合、生成された環境情報であるポイントクラウド(点群)に対しては、例えば、Charles R. Qi, Hao Su, Kaichun Mo, Leonidas J. Guibas, “PointNet: Deep Learning on Point Sets for 3D Classification and Segmentation”, Journal of 2017 IEEE Conference on Computer Vision and Pattern Recognition (CVPR), 77~85頁, 2016年に記載された物体検出器を用いることによって、対象領域及び検出位置を決定することができる。
【0081】
さらに、例えば特開2019-174164号公報に開示された、RGBカメラ画像から機械学習アルゴリズムを用いて(通信端末を含み得る)対象の位置を推定する技術を応用することも可能である。
【0082】
また、対象種別決定部112は、環境情報から「対象」が検出されない場合、すなわち1つの「対象」も計測(センシング)されない場合や、計測されてはいるがノイズ等の影響により検出されない場合は、当該環境情報について対象種別決定処理を終了することも好ましい。
【0083】
さらに、対象種別決定部112における対象検出処理では、上述したように、検出した対象の位置(検出位置)も決定することができるが、本実施形態ではさらに、検出した対象毎に、当該対象を各時点における検出領域(検出位置)に対応付けた上で、当該対象の位置の時系列情報(移動履歴情報)を生成する。これにより、検出した各対象を個別に追跡することも可能となる。
【0084】
ここでこのような対象追跡処理については、決定した対象領域(bounding box)に対し、例えば周知の状態推定手法であるカルマンフィルタを適用して、過去の時点での状態から現時点における対象の検出領域(bounding box)を予測し、この予測した検出領域(bounding box)と、現時点で検出された検出領域(bounding box)との重畳面積を評価値として、当該評価値に基づき対象領域を決定していくことも好ましい。
【0085】
ちなみにこのような対象追跡処理は、例えば非特許文献:Alex Bewley, Zongyuan Ge, Lionel Ott, Fabio Ramos, Ben Upcroft, “Simple Online and Realtime Tracking”, Journal of 2016 IEEE International Conference on Image Processing (ICIP), 3464~3468頁, 2016年に記載されている。
【0086】
さらに、後に説明する端末同定処理の好適な一実施形態においてではあるが、対象種別決定部112は、ある時点tで検出された対象が、前の時点、例えば1つ前の時点(t-1)で検出されていない又は検出され得ない新規の対象であるか否かを判定し、この判定結果を対応関係決定部113に通知することも好ましい。
【0087】
ここで、対象種別決定部112は、各時点において検出された又は追跡されている対象(対象ID)のリストを作成しておき、このリストを参照することによって、ある時点tで検出された対象が新規の対象であるか否かを判定することもできる。また変更態様として、ある時点tで検出された対象の検出位置及び/又は当該検出位置の変化から決定される、この対象の位置及び/又は速度に係る情報に基づいて、この対象が新規の対象であるか否か、すなわちこの対象が端末同定対象の環境内に新たに入ってきたものか否かを判定することも可能である。
【0088】
例えば具体的に、カメラ103による画像データ範囲(カメラ103の撮影範囲)の境界から、この対象の位置までの距離が、所定閾値未満である場合に、この対象は新規の対象であると判定してもよい。または、さらにこの条件に加えて、この対象の速度が、最も近接した境界に直交する方向につき、画像データ範囲内に向いた成分を有する場合に、この対象は新規の対象であると判定することも好ましい。
【0089】
またさらに、他の実施形態として、カメラ103又は上述したようなカメラ以外のセンサが、基地局1の内外を問わず、互いに異なる位置に複数設けられている場合において、対象種別決定部112は、
(a)これら複数のカメラ103(又はセンサ)のそれぞれから複数の環境情報を取得し、
(b)これら複数の環境情報のそれぞれから対象種別情報を決定し、
(c)決定した対象種別情報のうちで、
(c1)当該対象種別情報に係る対象の検出位置が所定以上に近いもの(例えば互いの距離が所定閾値未満であるもの)同士について、及び/又は、
(c2)当該対象種別情報に係る対象の検出領域(bounding box)の画像特徴量が所定以上に類似しているもの(例えば画像特徴量空間における互いの距離が所定閾値未満であるもの)同士について、
それらの対象種別情報は、同一の対象に係るものとすることも好ましい。またこの場合、それらの対象種別情報に係る対象についての検出位置群の代表値(例えば平均値)を、当該同一の対象の位置として取り扱ってもよい。
【0090】
これにより、ある端末2が、取得された環境情報の中に含まれず、結果的に当該端末2の同定処理に失敗してしまうといった事態を回避することも可能となるのである。例えば、1つのカメラ103(又はセンサ)による環境情報については、ある対象が他の対象の裏に位置し、この他の対象に遮蔽されてしまって、当該環境情報に含まれない(撮像されない)状況も少なからず発生してしまう。例えば、1つのカメラ103からすると、端末2を所持した人物が停車中のバスに遮られて見えなくなる、といったことも十分に起こり得るのである。
【0091】
これに対し、互いに設置位置の異なる複数のカメラ103(又はセンサ)による環境情報を用いれば、ある環境情報には含まれていない対象も、センシング(計測)の視点が異なる他の環境情報に含まれることになり、その結果、上記の懸念される事態を回避することも十分に可能となるである。
【0092】
ちなみに、以上に述べたような複数のカメラ103(又はセンサ)に係る対象種別情報を利用する典型例として、基地局1が、自らの周囲に存在する他の1つ以上の基地局1の各々から、当該基地局1に設置されたカメラ103(又はセンサ)によって生成された対象種別情報を受信・取得して、上記の同一対象判定処理を実施することが挙げられる。この場合、複数の基地局1が連携して、本発明に係る端末同定処理をより好適に実施することも可能となるのである。
【0093】
<対象状態情報(対象位置情報,対象速度情報)の決定>
またさらに、後に説明する、端末2の位置及び/又は速度も勘案して端末同定処理を行う好適な実施形態においてではあるが、対象種別決定部112の対象状態決定部112aは、検出された対象の検出位置及び/又は当該検出位置の変化から、この対象の位置及び/又は速度に係る情報、例えば位置の時系列情報(対象位置情報)及び/又は速度ベクトルの時系列情報(対象速度情報)である対象状態情報を決定することも好ましい。
【0094】
ちなみに、この対象の速度ベクトルは、端末状態決定部111aで決定された速度ベクトルと合せて、当該対象の速度ベクトルの所定方向(例えば基地局1と端末2とを結ぶ方向)への射影ベクトルとして決定されてもよい。
【0095】
<対象通信状態情報の決定>
さらに、同じく後に説明する、端末2との間の通信状態も勘案して端末同定処理を行う好適な実施形態においてではあるが、対象種別決定部112の対象通信状態決定部112bは、
(ア)カメラ画像蓄積部104から(RGB及びデプス)画像データ(環境情報)であって、端末の同定先となる対象のみならず通信の障害となり得る対象(以下、障害対象とも称する)をも含み得る画像データ(環境情報)を取得し、
(イ)取得した画像データから、検出された対象が端末を含むならば当該対象との間で具現することになる通信状態に係る情報である対象通信状態情報を決定することも好ましい。
【0096】
なお本実施形態において、1つの画像データから、ある「対象」を検出した場合、当該画像データから検出された他の対象は、当該ある「対象」については「障害対象」として取り扱われることになる。
【0097】
ここで上記(イ)で決定される対象通信状態情報は、
(α’)通信接続可否情報(後述する通信接続可否変数B'_tの時系列情報)、及び
(β’)受信電波強度情報(後述する受信電力相当変数E'_tの時系列情報)
のいずれか一方又は両方とすることができる。
【0098】
最初に上記(α’)の場合、対象通信状態決定部112bは、取得した画像データから検出された「対象」の検出位置と、「障害対象」が検出された場合には当該「障害対象」の検出位置とに基づき、
(a)「対象」と基地局1(のアンテナ)とを結ぶ直線分を決定し、
(b)「障害対象」が、この直線分上若しくはこの直線分を含む所定領域内に位置しているか否か、又はこの直線分を遮っているか否かの通信接続可否情報(遮蔽有無情報)を算出し、
(c)算出した通信接続可否情報を対象通信状態情報に決定する
ことができる。
【0099】
より具体的には、上記(b)の通信接続可否情報として、いずれかの「障害対象」の検出位置が、ある時点t(=k, k+1, …, k+M)において上記の直線分上に又はこの直線分を回転軸として含む所定の大きさの回転体領域内に位置する場合には-1、そうでない場合には1の値をとるような2値の通信接続可否変数:
(2) B'_t∈{-1, 1}
の時系列情報を生成し、これを対象通信状態情報としてもよい。ここで、上記の回転体領域は、円柱領域であってもよく、または、楕円体のように所定の曲線を回転軸の周りで回転させることにより形成可能なものであってもよい。
【0100】
また変更態様として、対象通信状態決定部112bは、「障害対象」に対しその種別(クラス)に応じて所定の大きさ(検出位置での断面積)を予め設定しておき、いずれかの「障害対象」が、その検出位置においてその大きさ(断面積)をもって上記の直線分を遮っている(上記の直線分が「障害対象」の当該断面を貫通している)場合には-1、そうではない場合には1の値をとるような通信接続可否変数として、上記(2)のB'_tを定義してもよい。
【0101】
一方、上記(β’)の場合、対象通信状態決定部112bは、取得した画像データから検出された「対象」の検出位置と、「障害対象」が検出された場合には当該「障害対象」の検出位置とに基づき、
(a)「対象」と基地局1(のアンテナ)とを結ぶ直線分を決定し、
(b)「障害対象」が、この直線分を含む所定領域を遮る度合いに係る遮蔽度合情報を算出し、
(c)算出した遮蔽度合情報から、対象通信状態情報として、「対象」が端末2を含むならば当該「対象」から受信されることになる電波の強度に係る情報を決定する
ことも好ましい。ここで具体的に、上記(b)の遮蔽度合情報は以下のように算出される。
【0102】
最初に、「障害対象」に対しその種別(クラス)に応じて所定の大きさ(所定の面積を有する検出位置での断面領域)を予め設定しておき、さらに、上記の直線分を回転軸として含む所定の大きさの回転体領域を設定した上で、ある時点t(=k, k+1, …, k+M)において、
(b1)いずれの「障害対象」も、その検出位置においてその断面領域の一部が上記の回転体領域内に含まれていない(障害対象の断面領域と回転体領域とが重畳部分を有さない)場合には1の値をとり、一方、
(b2)いずれかの「障害対象」で、その検出位置においてその断面領域の一部が上記の回転体領域内に含まれている(障害対象の断面領域と回転体領域とが重畳部分を有する)場合には、次式
(3) R=(Sa∩Sb
-)/Sa
をもって算出されるR値をとる
ような変数E'_tの時系列情報を遮蔽度合情報とすることができる。ちなみに上記(b1)の場合についても、(R値の算出処理は実行不要ではあるものの)R値が1の場合として結局、上式(3)に含めることができる。
【0103】
ここで、上式(3)において、Saは、上記の回転体領域における「障害対象」の検出位置での(回転軸に垂直な)断面領域を表す集合(例えば当該領域を形成する単位点領域の集合)であり、Sbは、「障害対象」の検出位置での断面領域を表す集合(例えば当該領域を形成する単位点領域の集合)である。また、Sb
-は、Sbの補集合であり、「/」は、分子の集合に係る断面領域の面積値(例えば単位点領域数)を、分母に係る断面領域の面積値(例えば単位点領域数)で割り算することを示す演算子である。
【0104】
次いで、対象通信状態決定部112bは、この変数E'_t(又は当該変数E'_tに所定の定数を乗算したもの)の時系列情報を、「対象」が端末2を含むならば当該「対象」から受信されることになる電波の強度に係る情報とし、これを対象通信状態情報とするのである。ちなみに以下、変数E'_tは、上記の受信信号電力変数E_tと区別するため、受信電力相当変数と称することとする。
【0105】
なお、上記のR値をとるような「障害対象」が2つ以上存在する場合、Sbは、これらの「障害対象」の断面領域全体が形成する領域、すなわちこれらの断面領域の和集合として表される領域としてもよい。さらに、上記の回転体領域は、円柱領域であってもよく、または、楕円体のように所定の曲線を回転軸の周りで回転させることにより形成可能なものであってもよい。
【0106】
さらに変更態様として、対象通信状態決定部112bは、入力された画像データに応じ、受信される電波の強度に係る情報を出力する学習済みの「対象電波情報推定モデル」を用いて、取得した画像データから、「対象」が端末2を含むならば当該「対象」から受信されることになる電波の強度に係る情報を導出し、当該電波の強度に係る情報を、対象通信状態情報に決定してもよい。
【0107】
ここで、上記の「対象電波情報推定モデル」としては、非特許文献1に開示されたような公知の機械学習モデルを採用することができる。具体的には、ある時点t(=k, k+1, …, k+M)における画像データをこのモデルへ入力して、受信信号電力の推定値を出力させ、この推定値を受信電力相当変数E'_t値として、この受信電力相当変数E'_tの時系列情報を、対象通信状態情報とするのである。
【0108】
同じく
図1の機能ブロック図において、種別対応関係管理部121は、この後説明する対応関係決定部113での端末同定処理において使用される、通信の種類に係る情報と対象の種類に係る情報とを対応付けた情報である種別対応関係情報を保存・管理する。
【0109】
図2は、本発明に係る種別対応関係情報の具体例を示す模式図である。ここで本具体例では、種別対応関係情報は種別対応関係テーブルとなっている。
【0110】
最初に、
図2(A)に示された種別対応関係テーブルでは、対象種別「自動車」について通信種別「URLLC」が対応付けられており、対象種別「人物」には通信種別「eMBB」が対応付けられ、さらに、対象種別「段ボール」については通信種別「mMTC」が対応付けられている。すなわちこの場合、対象種別と対応付けられる通信種別は、(5Gにおける)通信方式種別となっている。
【0111】
一方、
図2(B)に示された種別対応関係テーブルでは、対象種別「ロボット」について通信種別「制御情報通信」が対応付けられており、対象種別「人物」には通信種別「動画配信」が対応付けられ、さらに、対象種別「段ボール」については通信種別「センサ情報転送」が対応付けられている。すなわちこの場合、対象種別と対応付けられる通信種別は、通信データ種別(又はデータ用途種別)となっている。
【0112】
以上説明した種別対応関係テーブルでは、対象種別と通信種別とについて一対一の対応付けがなされているが、それとは異なり、少なくともその一部が一対多、多対一又は多対多の対応付けに係る情報種別対応関係テーブルを設定・使用することも可能である。
【0113】
例えば
図2(C)に示された種別対応関係テーブルは、対象種別「自動車」、「ドローン」及び「ロボット」のいずれについても通信種別「URLLC」が対応付けられており、多対一の対応関係を含んでいる。
【0114】
さらに、
図2(D)に示された種別対応関係テーブルは、対象種別「自動車」について2つの通信種別「URLLC」及び「eMBB」が対応付けられ、また、対象種別「人物」についても2つの通信種別「eMBB」及び「mMTC」が対応付けられており、一方で、通信種別「eMBB」について2つの対象種別「自動車」及び「人物」が対応付けられ、また、通信種別「mMTC」について2つの対象種別「人物」及び「段ボール」が対応付けられていると捉えることもでき、結局、
図2(D)に示された種別対応関係テーブルは、多対多の対応関係を含むことになっている。
【0115】
以上、
図2(A)~(D)に示したような特定の種別対応関係については、例えば設定者が、街中エリアや工場敷地内エリアといったような、端末を同定すべき所定のエリアにおける通信や対象の状況に合わせて設定することができるのである。またここで、その状況によっては、対象種別と通信種別とについて一対一の対応付けがなされることもあり、または、少なくともその一部において一対多、多対一又は多対多の対応付けがなされることもあり得るのである。
【0116】
例えば、端末同定対象となるあるエリアでは、ロボットとの通信は、センサ情報の転送を行うためのmMTCと、制御情報通信のためのURLLCとの両方で実施されることもあり得る。また、人物もロボットもともに、動画像の送受信を行うためのeMBBによる通信を実施する状況もあり得るのである。
【0117】
また好適な一変更態様として、種別対応関係管理部121は、これらの種別対応関係テーブルの少なくとも一部を、自動的に生成することも好ましい。例えば、
(a)端末2は、自らに係る対象種別情報(例えば、段ボールに貼付された端末2ならば「段ボール」)を保持していて、この自ら保持した対象種別情報を通信接続時に又は適宜、基地局1へ送信し、
(b)通信制御部114は、通信インタフェース101を介し、このような端末2から、当該端末2に係る対象種別情報を取得し、
(c)種別対応関係管理部121は、取得された対象種別情報と、この対象種別情報を保持した(この対象種別情報の送信元の)端末2について(通信種別決定部111で)決定された通信種別情報とを用いて、種別対応関係テーブルの少なくとも一部を生成する
ことも好ましいのである。
【0118】
<対応関係の決定:通信種別情報及び対象種別情報を使用>
図1の機能ブロック図に戻って、対応関係決定部113は、種別対応関係保存部121で保存・管理されている「種別対応関係情報」に基づいて、決定された通信種別情報に係る端末2と、決定された対象種別情報に係る対象との端末対象対応情報(例えば、端末IDと対象IDとの対応関係を記録した端末対象対応テーブル)を決定する。
【0119】
図3は、通信種別決定部111、対象種別決定部112、及び対応関係決定部113における処理の一実施形態を説明するための模式図である。
【0120】
図3に示した実施形態では、基地局1は、
(a)段ボールに貼付された、端末IDが001である端末2_001、
(b)自動車に搭載された、端末IDが002である端末2_002、及び
(c)人物に所持された、端末IDが003である端末2_003
と通信を行っている。ちなみに上記各端末の端末IDは、基地局1が各端末と通信接続を確立した際、当該端末に付与されたものとなっている。
【0121】
ここで、通信種別決定部111は、各端末との間で行っている通信の種類に係る情報を取得し、端末2_001(端末ID=001)に通信種別「mMTC」を対応付け、端末2_002(端末ID=002)に通信種別「URLLC」を対応付け、さらに端末2_003(端末ID=003)に通信種別「eMBB」を対応付けた通信種別テーブル(通信種別情報)を生成する。
【0122】
一方、対象種別決定部112は、カメラ103による画像データから、上記(b)の自動車、及び上記(c)の人物、及び上記(a)の段ボールを、それぞれ"自動車"、"人物"及び"段ボール"として検出し、それぞれに対象IDとして001、002及び003を付与する。
【0123】
次いで、対象種別決定部112は、これらの処理結果をまとめることにより、自動車(対象ID=001)に対象種別「自動車」を対応付け、人物(対象ID=002)に対象種別「人物」を対応付け、さらに段ボール(対象ID=003)に対象種別「段ボール」を対応付けた対象種別テーブル(対象種別情報)を生成する。
【0124】
最後に、対応関係決定部113は、(
図3に示したような)対象種別と通信種別とが一対一に対応付けられた種別対応関係情報である種別対応関係テーブルを用いて、生成された通信種別テーブル及び対象種別テーブルから端末対象対応テーブルを生成するのである。
【0125】
ここで具体的に、対応関係決定部113は、
(a1)通信種別テーブルにおいて、同定対象である1つの端末(例えば端末2_001)の端末ID(例えば端末ID=001)に対応付けられた1つの通信種別(例えば「mMTC」)を読み出し、
(a2)
図3の種別対応関係テーブルにおいて、上記(a1)で読み出した1つの通信種別(例えば「mMTC」)と対応関係にある1つの対象種別(例えば「段ボール」)を読み出し、
(a3)対象種別テーブルにおいて、上記(a2)で読み出した1つの対象種別(例えば「段ボール」)が対応付けられた1つの対象ID(例えば対象ID=003)を読み出し、
(a4)上記(a1)における同定対象である1つの端末(例えば端末2_001)の端末ID(例えば端末ID=001)と、上記(a3)で読み出した1つの対象ID(例えば対象ID=003)とを対応付けて記録した1つのレコードを生成し、
(a5)同定対象である端末(端末2_001、端末2_002及び端末2_003)毎に、上記(a1)~(a4)のステップを繰り返して、(例えば
図3に示したような)端末対象対応テーブルを生成することも好ましい。
【0126】
ちなみに、対応関係決定部113は、上記(a1)~(a4)のステップとは真逆の手順で端末対象対応テーブルを生成することもできる。すなわち、
(a1’)対象種別テーブルにおいて、端末同定先の候補である1つの対象(例えば自動車)の対象ID(例えば対象ID=001)に対応付けられた1つの対象種別(例えば「自動車」)を読み出し、
(a2’)
図3の種別対応関係テーブルにおいて、上記(a1’)で読み出した1つの対象種別(例えば「自動車」)と対応関係にある1つの通信種別(例えば「URLLC」)を読み出し、
(a3’)通信種別テーブルにおいて、上記(a2’)で読み出した1つの通信種別(例えば「URLLC」)が対応付けられた1つの通信ID(例えば通信ID=002)を読み出し、
(a4’)上記(a1’)における端末同定先の候補である1つの対象(例えば自動車)の対象ID(例えば対象ID=001)と、上記(a3’)で読み出した1つの通信ID(例えば通信ID=002)とを対応付けて記録した1つのレコードを生成し、
(a5’)端末同定先の候補である対象(自動車、人物及び段ボール)毎に、上記(a1’)~(a4’)のステップを繰り返して、(
図3に示したような)端末対象対応テーブルを生成することも好ましい。
【0127】
以上、種別対応関係テーブル(種別対応関係情報)が通信種別と対象種別とについて一対一の対応付けがなされた情報である場合の処理を説明した。以下これに対し、種別対応関係テーブル(種別対応関係情報)の少なくとも一部が一対多、多対一又は多対多の対応付けに係る情報である場合の処理について説明を行う。
【0128】
この場合においても基本的に、種別対応関係テーブルに基づき、通信種別テーブル(通信種別情報)と対象種別テーブル(対象種別情報)との対応関係を調査する処理を行うことになるが、対応関係決定部113(
図1)は、1つの好適な手法として、対応が一意に決定される端末2及び対象の組から順次対応関係を決定していく貪欲アルゴリズムによって、端末対象対応テーブルを生成することも好ましい。
【0129】
具体的に対応関係決定部113は、
(a)対象種別テーブル(又は通信種別テーブル)において、端末同定先の候補である1つの対象の対象ID(又は同定対象である1つの端末2の端末ID)に対応付けられた対象種別(又は通信種別)を読み出し、
(b)種別対応関係テーブルにおいて、この読み出した対象種別(又は通信種別)と対応関係を有する通信種別(又は対象種別)を読み出し、
(c)通信種別テーブルにおいて、この読み出した通信種別(又は対象種別)が対応付けられた端末IDを特定する
との処理(a)~(c)を、特に処理(b)及び(c)のステップにおいて読み出し(特定)を一意に行うことが可能な対象ID(又は端末ID)について順次、実施していくことも好ましい。
【0130】
また他の好適な手法として、対応関係決定部113は、グラフ理論の最大流問題を解決可能な組合せ最適化アルゴリズムによって、端末対象対応テーブルを生成してもよい。具体的には、
(a)通信種別テーブルの各要素(レコード)と、対象種別テーブルの各要素(レコード)とをノードとした2部グラフを構成し、
(b)上記(a)の2部グラフを間に挟むソースソード(始点ノード)及びシンクノード(終点ノード)を設けて、各リンクの最大流量が規定された最大流問題(ソースからシンクまでの最大合計流量を求める問題)のグラフを設定し、
(c)グラフ理論の分野で周知であるフォード・ファルカーソンのアルゴリズム(Ford-Fulkerson algorithm)を用いて、通信種別テーブルの各要素(レコード)と、対象種別テーブルの各要素(レコード)との対応関係を決定する(端末対象対応テーブルを生成する)
ことも好ましい。また勿論、他の組み合わせ最適化アルゴリズムを用いて端末対象対応テーブルを生成することも可能である。
【0131】
図4は、通信種別決定部111、対象種別決定部112、及び対応関係決定部113での処理における他の実施形態を説明するための模式図である。
【0132】
図4に示した実施形態においても
図3の実施形態と同様、基地局1は、(a)段ボールに貼付された、端末IDが001である端末2_001、(b)自動車に搭載された、端末IDが002である端末2_002、及び(c)人物に所持された、端末IDが003である端末2_003と通信を行っている。
【0133】
ここで、通信種別決定部111は、各端末との間で行っている通信の種類に係る情報を取得し、端末2_001(端末ID=001)に「mMTC」を対応付け、端末2_002(端末ID=002)に「URLLC」を対応付け、さらに端末2_003(端末ID=003)に「eMBB」を対応付けた通信種別テーブルを生成する。
【0134】
一方、対象種別決定部112は、カメラ103による画像データから、上記(b)の自動車、及び上記(c)の人物、及び上記(a)の段ボールを、それぞれ"自動車"、"人物"及び"段ボール"として検出し、それぞれに対象IDとして001、002及び003を付与する。
【0135】
次いで、対象種別決定部112は、これらの処理結果をまとめることにより、自動車(対象ID=001)に「自動車」を対応付け、人物(対象ID=002)に「人物」を対応付け、さらに段ボール(対象ID=003)に「段ボール」を対応付けた対象種別テーブルを生成する。
【0136】
最後に、対応関係決定部113は、(
図4に示したような)対象種別と通信種別との対応関係が一対一とは限らない種別対応関係テーブルを用いて、生成された通信種別テーブル及び対象種別テーブルから端末対象対応テーブルを生成するのである。
【0137】
ここで具体的に、対応関係決定部113は、最初に、
(a1)
図4の種別対応関係テーブルにおいて、対応関係にある通信種別が一意に決定される対象種別「段ボール」を認識し、さらに、これと対応関係にある通信種別「mMTC」を特定し、
(a2)対象種別テーブルにおいて、この認識された対象種別「段ボール」が対応付けられた対象ID(対象ID=003)を特定し、
(a3)通信種別テーブルにおいて、上記(a1)で特定された通信種別「mMTC」が対応付けられた端末ID(端末ID=001)を特定し、
(a4)特定された対象ID(対象ID=003)と、特定された端末ID(端末ID=001)とを対応付けて記録したレコードを生成して、端末対象対応テーブルの一部とする。
【0138】
次いで、対応関係決定部113は、
(b1)通信種別テーブルにおいて、すでに対応先の決定された「mMTC」以外の通信種別が、「URLLC」及び「eMBB」であることを認識し、
(b2)
図4の種別対応関係テーブルにおいて、対象種別「人物」は、上記(b1)で認識された「URLLC」及び「eMBB」のうち、「eMBB」とのみ対応関係を持ち得る(すなわち「mMTC」を除けば一意の対応関係を有する)ことを認識し、
(b3)対象種別テーブルにおいて、上記(b2)で認識された対象種別「人物」が対応付けられた対象ID(対象ID=002)を特定し、
(b4)通信種別テーブルにおいて、上記(b2)で認識された通信種別「eMBB」が対応付けられた端末ID(端末ID=003)を特定し、
(b5)特定された対象ID(対象ID=002)と、特定された端末ID(端末ID=003)とを対応付けて記録したレコードを生成して、端末対象対応テーブルの一部とする。
【0139】
最後に、対応関係決定部113は、
(c1)対象種別テーブルにおいてなお対応先の決定していない対象ID(対象ID=001)に対応付けられた対象種別「自動車」と、通信種別テーブルにおいてなお対応先の決定していない通信ID(通信ID=002)に対応付けられた通信種別「URLLC」とが、
図4の種別対応関係テーブルにおいて対応関係にあることを認識し、
(c2)上記(c1)で認識された対象ID(対象ID=001)と端末ID(端末ID=002)とを対応付けて記録したレコードを生成して、端末対象対応テーブルを完成させるのである。
【0140】
ちなみに、以上の処理では、当初、対応関係にある通信種別が一意に決定される対象種別「段ボール」を認識するステップから処理が開始しているが、変更態様として、対応関係決定部113は、
(a1’)
図4の種別対応関係テーブルにおいて、対応関係にある対象種別が一意に決定される通信種別「URLLC」を認識する
ステップから処理を開始することもできる。すなわち、上記のステップとは、対象種別と通信種別とに関し真逆の手順で端末対象対応テーブルを生成することもできるのである。
【0141】
このように、端末や対象の状況によっては十分に構成され得る、一体多、多対一又は多対多の対応付けを含む種別対応関係テーブル(種別対応関係情報)を用いる場合においても、端末対象対応テーブル(端末対象対応情報)を生成し、端末同定処理を完了させ易くすることが可能となるのである。
【0142】
以上、種別対応関係テーブル(種別対応関係情報)の少なくとも一部が、一対多、多対一又は多対多の対応付けに係る情報である場合の端末同定処理の一実施形態を説明した。以下、このような種別対応関係テーブル(種別対応関係情報)を用いた端末同定処理における他の実施形態を説明する。
【0143】
上述したように、少なくともその一部が、一対多、多対一又は多対多の対応付けに係る種別対応関係テーブルを用いる場合、検出された対象の「対象種別」に対して複数の「通信種別」が対応関係にあったり、同定対象である端末2の「通信種別」に対して複数の「対象種別」が対応関係にあったりして結局、端末同定処理に失敗する可能性が生じてしまう。
【0144】
一方で、端末を同定すべき環境において、互いに種類の異なる複数の対象が、同じ種類の通信を行う端末2を備えていたり、同じ種類である複数の対象がそれぞれ、互いに異なる種類の通信を行う複数の端末2を備えていたりする状況は、頻繁に発生し得るので、上述したような端末同定処理の失敗は極力回避されなければならない。
【0145】
そこで、対象種別決定部112(
図1)は、ある時点tで検出された対象が、前の時点、例えば1つ前の時点(t-1)で検出された対象と同一であるか否かを判定して(1つの対象IDをもって追跡している対象であるか否かを判定して)、その判定結果を対応関係決定部113(
図1)に通知し、当該通知を受けた対応関係決定部113は、
(a)時点tで検出された対象が、当該前の時点(例えば時点(t-1))で検出された対象と同一であると判定されており(1つの対象IDをもって追跡している対象であり)、且つ
(b)当該前の時点(例えば時点(t-1))で、検出された対象と、ある端末2とが対応関係にあると判定している場合に、
当該ある時点tで検出された対象は、当該ある端末2と対応関係にあると判定することも好ましい。
【0146】
これにより、例えばある時刻において同じ種類の対象が複数検出された場合でも、このうちで過去に端末2との対応付けに成功している対象については、追跡継続中として、過去と同じ当該端末2(の端末ID)を対応付けることが可能となる。なおここで、対象種別テーブルや通信種別テーブルにおいて、対応付けに成功した対象と端末2との組(のレコード)については参照対象外として参照対象を絞り込み、残りの対応付けを成功させ易くすることもできるのである。
【0147】
ただし、以上に説明した手法によっても状況によっては端末同定処理を完了させられない場合が生じ得る。例えば上述したように、ある時刻において同じ種類の対象が複数検出された場合において、その後、これらの対象がいずれも端末2の同定先とならず、この環境に留まり続けている場合に、上記の手法だけでは端末同定処理を先に進めることが困難となってくる。
【0148】
そこで、(a)対象種別決定部112(
図1)は、ある時点tで検出された対象が、前の時点、例えば1つ前の時点(t-1)で検出されていない又は検出され得ない「新規の対象」であるか否かを判定し、
(b)対応関係決定部113(
図1)は、この「新規の対象」の対象種別情報については、種別対応関係テーブル(種別対応関係情報)に基づき、時点tで又は時点tを含む所定時間範囲内で新たに通信接続された端末2の通信種別情報との対応のみを判断して、「新規の対象」についての端末2との対応関係に係る情報を決定する
といった実施形態をとることも好ましい。
【0149】
これにより、例えばある時刻において同じ種類の対象が複数検出されている状況において、これらの端末2との対応付けが成功していない場合であっても、そのうち新たに検出された(端末を同定すべき環境に入ってきた)対象については、同じく新たに通信接続された端末2との間で対応付けに成功し得るのである。
【0150】
図5は、通信種別決定部111、対象種別決定部112、及び対応関係決定部113での処理における更なる他の実施形態を説明するための模式図である。
【0151】
図5に示した実施形態では、基地局1は時刻Tにおいて、
図3の実施形態と同様、
(a)段ボールに貼付された、端末IDが001である端末2_001、
(b)自動車に搭載された、端末IDが002である端末2_002、及び
(c)人物に所持された、端末IDが003である端末2_003
と通信を行っているが、次の時刻(T+1)では、これらの端末に加えて新たに、
(d)自動車に搭載された、端末IDが004である端末2_004
とも通信を行っている。ちなみに上記各端末の端末IDは、基地局1が各端末と通信接続を確立した際、当該端末に付与されたものとなっている。
【0152】
ここで本実施形態では、種別対応関係テーブルについて、
図3の実施形態と同様のものを使用する。したがって、通信種別決定部111及び対象種別決定部112は、時刻Tにおいてはそれぞれ、
図3に示したものと同様の通信種別テーブル及び対象種別テーブルを生成し、その結果この時刻Tにおいては、
図3に示したものと同様の端末対象対応テーブルが生成されるのである。
【0153】
次に、その後の時刻(T+1)において、通信種別決定部111は、新たに通信接続された端末2_004の端末ID(端末ID=004)と、その通信種別「URLLC」とを対応付けたレコードを、すでに生成した通信種別テーブルに追加し、このレコードに新規フラグを付与する。一方、対象種別決定部112は、新たに検出された対象の対象ID(対象ID=004)と、その対象種別「自動車」とを対応付けたレコードを、すでに生成した対象種別テーブルに追加し、同じくこのレコードに新規フラグを付与するのである。
【0154】
次いで、対応関係決定部113は、
(a1)通信種別テーブルにおいて、新規フラグの付与された同定対象である端末2_004の端末ID(端末ID=004)に対応付けられた通信種別「URLLC」を読み出し、
(a2)
図5の種別対応関係テーブルにおいて、上記(a1)で読み出した通信種別「URLLC」と対応関係にある対象種別「自動車」を読み出し、
(a3)対象種別テーブルにおいて、上記(a2)で読み出した対象種別「自動車」が対応付けられており、且つ新規フラグが付与されている対象(レコード)の対象ID(対象ID=004)を読み出し、
(a4)上記(a1)における同定対象である端末2_004の端末ID(端末ID=004)と、上記(a3)で読み出した対象ID(対象ID=004)とを対応付けて記録したレコードを生成して、すでに生成した端末対象対応テーブルに追加する(端末対象対応テーブルを更新する)のである。
【0155】
ちなみに、対応関係決定部113は、上記のステップとは真逆の手順で端末対象対応テーブルを生成することもできる。すなわち、
(a1’)対象種別テーブルにおいて、新規フラグの付与された端末同定先の候補である対象の対象ID(対象ID=004)に対応付けられた対象種別「自動車」を読み出す
ステップから開始することも可能となっている。
【0156】
<対応関係の決定:端末状態情報及び対象状態情報も使用>
以上、
図3~5も用いて、通信種別情報及び対象種別情報による端末同定処理の種々の実施形態を説明したが、以下、「端末状態情報」及び「対象状態情報」を利用して、端末同定処理を好適に実施する実施形態の説明を行う。
【0157】
すでに詳細に説明したように、通信種別決定部111の端末状態決定部111a(
図1)は、端末2の位置及び/又は速度に係る情報である「端末状態情報」、例えば端末2の位置の時系列情報(端末位置情報)や端末2の速度ベクトルの時系列情報(端末速度情報)、を決定することができる。一方、対象種別決定部112の対象状態決定部112a(
図1)は、対象の位置及び/又は速度に係る情報である「対象状態情報」、例えば対象の位置の時系列情報(対象位置情報)や対象の速度ベクトルの時系列情報(対象速度情報)、を決定することができる。
【0158】
次いで、対応関係決定部113(
図1)は、これらの決定された「端末状態情報」と「対象状態情報」とが対応する度合いである「状態対応度」を算出し、この「状態対応度」にも基づいて、端末対象対応情報(端末対象対応テーブル)を生成することも好ましいのである。
【0159】
ここで、端末位置情報(端末2の位置の時系列情報)と対象位置情報(対象の位置の時系列情報)との「状態対応度」としての位置対応度LCは、例えば、所定時間区間の各時点における端末2の位置と、対象の位置との差の絶対値(距離)の逆数についての、当該所定時間区間での代表値(例えば平均値)とすることができる。
【0160】
また、端末速度情報(端末2の速度ベクトルの時系列情報)と対象速度情報(対象の速度ベクトルの時系列情報)との「状態対応度」としての速度対応度VCは、例えば、所定時間区間の各時点における端末2の速度ベクトルと、対象の速度ベクトルとの差の大きさの逆数についての、当該所定時間区間での代表値(例えば平均値)とすることができる。
【0161】
対応関係決定部113は、ここで、
(ア)(端末対象対応テーブルだけでは一意に対応付けすることはできないが)端末対象対応テーブルによれば対応関係にある可能性がある(当該テーブルにおいて該当する通信種別と該当する対象種別とが対応している)端末2及び対象の組のうち、
(イ)「状態対応度」(位置対応度LC及び/又は速度対応度VC)が所定閾値(位置対応度閾値LC_th及び/又は速度対応度閾値VC_th)を超えている((LC>LC_th)及び/又は(VC>VC_th))組は、互いに対応関係にあるとして、
(ウ)当該組のレコードを端末対象対応テーブルに追加することも好ましい。
【0162】
図6は、通信種別決定部111、対象種別決定部112、及び対応関係決定部113での処理における更なる他の実施形態を説明するための模式図である。
【0163】
図6に示した実施形態では、基地局1は、
図5の実施形態における時刻(T+1)での状況と同様、
(a)段ボールに貼付された、端末IDが001である端末2_001、
(b)自動車に搭載された、端末IDが002である端末2_002、
(c)人物に所持された、端末IDが003である端末2_003、及び
(d)自動車に搭載された、端末IDが004である端末2_004
と通信を行っている。
【0164】
ここで、通信種別決定部111は、各端末について、当該端末と行っている通信の通信種別と、当該端末の端末位置(端末状態情報)とを取得・決定し、端末2_001(端末ID=001)に通信種別「mMTC」と端末位置(100,200,50)(それぞれxyz空間座標系におけるx、y及びz座標値)とを対応付け、端末2_002(端末ID=002)に通信種別「URLLC」と端末位置(50,150,100)とを対応付け、端末2_003(端末ID=003)に通信種別「eMBB」と端末位置(100,230,130)とを対応付け、さらに端末2_004(端末ID=004)に通信種別「eMBB」と端末位置(200,150,100)とを対応付けた通信種別テーブルを生成する。
【0165】
一方、対象種別決定部112は、カメラ103による画像データから、上記(b)の自動車、及び上記(c)の人物、上記(a)の段ボール、及び上記(d)の自動車を、それぞれ"自動車"、"人物"、"段ボール"及び"自動車"として検出し、それぞれに対象IDとして001、002、003及び004を付与し、さらに、それぞれの検出位置をそれぞれの対象位置(対象状態情報)に決定する。
【0166】
さらに、対象種別決定部112は、これらの処理結果をまとめることにより、自動車(対象ID=001)に対象種別「自動車」と対象位置(50,150,100)とを対応付け、人物(対象ID=002)に対象種別「人物」と対象位置(100,230,130)とを対応付け、段ボール(対象ID=003)に対象種別「段ボール」と対象位置(100,200,50)とを対応付け、さらに自動車(対象ID=004)に対象種別「自動車」と対象位置(200,150,100)とを対応付けた対象種別テーブルを生成する。
【0167】
ここで、対応関係決定部113は、最初に、
(a1)
図6の種別対応関係テーブルにおいて、対応関係にある通信種別が一意に決定される対象種別「段ボール」を認識し、さらに、これと対応関係にある通信種別「mMTC」を特定し、
(a2)対象種別テーブルにおいて、この認識された対象種別「段ボール」が対応付けられた対象ID(対象ID=003)を特定し、
(a3)通信種別テーブルにおいて、上記(a1)で特定された通信種別「mMTC」が対応付けられた端末ID(端末ID=001)を特定し、
(a4)特定された対象ID(対象ID=003)と、特定された端末ID(端末ID=001)とを対応付けて記録したレコードを生成して、端末対象対応テーブルの一部とする。
【0168】
次いで、対応関係決定部113は、
図6の種別対応関係テーブルによっては残りの対応付けが実施できないことを認識した上で、
(b1)対象種別テーブルにおける自動車(対象ID=001)の対象位置(50,150,100)と、通信種別テーブルにおける端末2_002(端末ID=002)の端末位置(50,150,100)との間の距離の逆数(位置対応度:この場合、計算値的には無限大となりプログラム上は位置対応度変数のとり得る最大値となる)が所定閾値を超えていることを認識し、
(b2)上記(b1)で認識された対象ID(対象ID=001)と、端末ID(端末ID=002)とを対応付けて記録したレコードを生成して、端末対象対応テーブルの一部とする。
【0169】
次いでさらに、対応関係決定部113は、
図6の種別対応関係テーブルによっては依然、残りの対応付けが実施できないことを認識した上で、
(c1)対象種別テーブルにおける自動車(対象ID=004)の対象位置(200,150,100)と、通信種別テーブルにおける端末2_004(端末ID=004)の端末位置(200,150,100)との間の距離の逆数(位置対応度:この場合も、計算値的には無限大となりプログラム上は位置対応度変数のとり得る最大値となる)が所定閾値を超えていることを認識し、
(c2)上記(c1)で認識された対象ID(対象ID=004)と、端末ID(端末ID=004)とを対応付けて記録したレコードを生成して、端末対象対応テーブルの一部とする。
【0170】
最後に、対応関係決定部113は、
(d1)対象種別テーブルにおいてなお対応先の決定していない対象ID(対象ID=002)に対応付けられた対象種別「人物」と、通信種別テーブルにおいてなお対応先の決定していない通信ID(通信ID=003)に対応付けられた通信種別「eMBB」とが、
図6の種別対応関係テーブルにおいて対応関係にあることを認識し、
(d2)上記(d1)で認識された対象ID(対象ID=002)と端末ID(端末ID=003)とを対応付けて記録したレコードを生成して、端末対象対応テーブルを完成させるのである。
【0171】
ちなみに、対応関係決定部113は、上記(d1)の代わりに、
(d1’)対象種別テーブルにおける人物(対象ID=002)の対象位置(100,230,130)と、通信種別テーブルにおける端末2_003(端末ID=003)の端末位置(100,230,130)との間の距離の逆数(位置対応度:この場合も、計算値的には無限大となりプログラム上は位置対応度変数のとり得る最大値となる)が所定閾値を超えていることを認識する
といったステップを採用することも可能である。
【0172】
また、以上の処理では、当初、対応関係にある通信種別が一意に決定される対象種別「段ボール」を認識するステップから処理が開始しているが、変更態様として、対応関係決定部113は、
(a1’)
図6の種別対応関係テーブルにおいて、対応関係にある対象種別が一意に決定される通信種別「mMTC」を認識する
ステップから処理を開始することもできる。すなわち、上記のステップとは、対象種別と通信種別とに関し真逆の手順で端末対象対応テーブルを生成することもできるのである。
【0173】
このように、端末や対象の状況によっては十分に構成され得る、一体多、多対一又は多対多の対応付けを含む種別対応関係テーブル(種別対応関係情報)を用いる場合において、通信種別及び対象種別の対応関係の調査だけでは端末同定処理が完了し得ない状況であっても、対象状態情報及び端末状態情報を用いることによって、できるだけ多くの端末2の同定処理を実施し、端末同定処理を完了させ易くすることが可能となるのである。
【0174】
<対応関係の決定:端末通信状態情報及び対象通信状態情報も使用>
以上、
図6も用いて、端末状態情報及び対象状態情報を利用した端末同定処理の種々の実施形態を説明したが、以下、「端末通信状態情報」及び「対象通信状態情報」を利用して、端末同定処理を好適に実施する実施形態の説明を行う。
【0175】
すでに詳細に説明したように、通信種別決定部111の端末通信状態決定部111b(
図1)は「端末通信状態情報」、例えば通信接続有無変数B_tの時系列情報及び/又は受信信号電力変数E_tの時系列情報、を決定することができる。一方、対象種別決定部112の対象通信状態決定部112b(
図1)は「対象通信状態情報」、例えば通信接続可否変数B'_tの時系列情報、及び/又は受信電力相当変数E'_tの時系列情報、を決定することができる。
【0176】
次いで、対応関係決定部113(
図1)は、これらの決定された「端末通信状態情報」と「対象通信状態情報」とが対応する度合いである「通信状態対応度」を算出し、この「通信状態対応度」にも基づいて、端末対象対応情報(端末対象対応テーブル)を生成することも好ましいのである。
【0177】
ここで、通信接続有無変数B_tの時系列情報(端末通信状態情報)と通信接続可否変数B'_tの時系列情報(対象通信状態情報)との「通信状態対応度」としての通信接続対応度CCは、例えば所定時間区間(t=k~k+Mの時間区間)の各時点tにおける通信接続有無変数B_tと、通信接続可否変数B'_tとの相互相関として、次式
(4) CC=Σt=k
k+MB_t*B'_t
を用いて算出してもよい。
【0178】
また、受信信号電力変数E_tの時系列情報(端末通信状態情報)と受信電力相当変数E'_tの時系列情報(対象通信状態情報)との「通信状態対応度」としての受信電力対応度PCは、例えば所定時間区間(t=k~k+Mの時間区間)の各時点tにおける受信信号電力変数E_tと、受信電力相当変数E'_tの時系列情報との相互相関として、次式
(5) PC=Σt=k
k+ME_t*E'_t
を用いて算出してもよい。ここで上式(4)及び(5)において、Σt=k
k+Mは、時点t(=k, k+1, …, k+M)についての総和(summation)を示す演算子である。
【0179】
対応関係決定部113は、次いで、
(ア)(端末対象対応テーブルだけでは一意に対応付けすることはできないが)端末対象対応テーブルによれば対応関係にある可能性がある(当該テーブルにおいて該当する通信種別と該当する対象種別とが対応している)端末2及び対象の組のうち、
(イ)「通信状態対応度」(通信接続対応度CC及び/又は受信電力対応度PC)が所定閾値(通信接続対応度閾値CC_th及び/又は受信電力対応度閾値PC_th)を超えている((CC>CC_th)及び/又は(PC>PC_th))組は、互いに対応関係にあるとして、
(ウ)当該組のレコードを端末対象対応テーブルに追加することも好ましい。
【0180】
このように、端末や対象の状況によっては十分に構成され得る、一体多、多対一又は多対多の対応付けを含む種別対応関係テーブル(種別対応関係情報)を用いる場合において、通信種別及び対象種別の対応関係の調査だけでは端末同定処理が完了し得ない状況であっても、対象通信状態情報及び端末通信状態情報を用いることによって、できるだけ多くの端末2の同定処理を実施し、端末同定処理を完了させ易くすることが可能となるのである。
【0181】
以上、端末同定処理についての種々の実施形態を説明したが、ここで、複数の基地局1が連携して端末同定処理を行う実施形態を説明する。この実施形態では、基地局1の周囲には少なくとも1つの基地局1が存在しており、各基地局1は、自らのカメラ103による環境情報から対象種別情報を決定し、さらに、この自ら決定した対象種別情報を互いにやり取り可能となっている。
【0182】
ここで、対象種別決定部112(
図1)は、周囲の基地局1で決定された対象種別情報を取得し、さらに、対応関係決定部113(
図1)は、このように取得された対象種別情報と、(自らの基地局1で)決定された通信種別情報との対応関係をも判定して、端末対象対応テーブルを生成・更新し、端末同定処理を実施することも好ましい。
【0183】
なおこの場合、既に説明したような、基地局1が複数のカメラ103と接続されている実施形態において実施される端末同定処理と同様の端末同定処理を実施することができる。またこれにより、ある端末2が、自らのカメラ103による環境情報の中に含まれないので、それ故検出されず、結果的に基地局1が当該端末2の同定処理に失敗してしまう、といった事態を回避することも可能となるのである。
【0184】
さらに、以上に説明した種々の実施形態では、「種別対応関係情報」は、種別対応関係テーブルとして設定され利用されたが、この「種別対応関係情報」が個別のテーブルの形をとらずに設定されるような実施形態も可能である。
【0185】
例えば、すでに説明したように、端末2が自らに係る対象種別情報を保持していて、基地局1は、この端末2から当該対象種別情報を取得する実施形態において、
(a)通信種別決定部111は、この同定対象である端末2について決定した通信種別情報に、取得された対象種別情報を加え(具体的には、この端末2の端末IDに、通信種別とともに、取得された対象種別情報の対象種別を対応付け)、
(b)対応関係決定部113は、対象種別決定部112で決定された対象種別情報において、この取得された対象種別情報の対象種別と同一の対象種別が対応している対象IDを特定し、この特定した対象IDと、上記(a)の端末IDとを対応付けた端末対象対応情報を生成してもよい。
【0186】
ちなみにこの場合、取得された対象種別情報の加えられた通信種別情報の中に、「種別対応関係情報」(として機能する部分)が自動的に生成されるものと捉えることができるのである。
【0187】
[端末同定処理の応用例]
以下、以上に説明した端末同定処理の一応用例を説明する。
【0188】
図1の機能ブロック図において、接近対象特定部131は、通信エリア環境内に、移動し得る複数の端末2が存在する状況において、対象種別決定部112で検出された複数の対象の検出位置に基づいて、お互いが後に所定以上に接近すると推定される複数の対象を特定する。
【0189】
例えば、接近対象特定部131は、検出された各対象における現時点での検出位置と、当該検出位置の過去の時間変化から算出された速度ベクトルとに基づいて、所定時間経過後の将来時点における各対象の位置を推定し、当該将来時点における互いの距離が所定閾値以下となる対象を、接近対象群として特定することも好ましい。
【0190】
この場合、通信制御部114は、接近対象特定部131において特定された複数の対象の情報を受け、対応関係決定部113によってこれらの複数の対象のうちのいずれかと対応関係にあると判定された(少なくとも1つの)端末2を特定し、特定した端末2のうちの少なくとも1つに宛てて、所定以上に接近すると推定されることに係る情報、例えば接近・衝突アラームや出会い・遭遇予報等を(通信インタフェース101から)送信させるのである。
【0191】
図7は、本発明による端末同定方法の一応用例を説明するための模式図である。
【0192】
図7の応用例によれば、基地局1は、5Gをもって通信接続された自動車(や、ドローン、ロボット等)を遠隔監視している。具体的に基地局1は、端末IDが001である端末2_001、及び端末IDが002である端末2_002と通信接続しており、さらに、この基地局1の対応関係決定部113は、
(a)端末2_001と、対象IDが002である検出された自動車3_002とが、対応関係にあり(すなわち端末2_001は、自動車3_002に搭載されており)、
(b)端末2_002と、対象IDが003である検出された自動車3_003とが、対応関係にある(すなわち端末2_002は、自動車3_003に搭載されている)、
ことを決定し、その旨を記録した端末対象対応テーブルを生成している。
【0193】
一方、接近対象特定部131は、自動車3_003と、対象IDが001である走行者4_001とを、1つの接近対象群の要素として特定しており、自動車3_003及び走行者4_001を1つの接近対象群に含める旨の情報である接近対象群情報を通信制御部114へ出力している。なお本応用例では、走行者4_001は、道路沿いに立ったビルが障害となって、自動車3_003に搭載されたセンサによっては認識できない状況にある。
【0194】
このような状況において、通信制御部114は、
(a)この接近対象群情報に基づき、取得した上記の端末対象対応テーブルから、接近アラーム通知先として、接近対象群に含まれている自動車3_003と対応関係を有する端末2_002を決定し、
(b)「(同じく接近対象群に含まれている)走行者4_001が接近している」旨のアラーム情報を、通知先として決定した端末2_002宛てに送信させるのである。
【0195】
また、接近対象特定部131は、このアラーム情報に合わせ、走行者4_001の検出位置情報も端末2_002へ送信し、走行者4_001の現在位置(及びその動線)を、端末2の画面上の道路マップに強調表示させることも好ましい。
【0196】
以上説明したような処理を実施することによって、例えば、運転者による安全運転や人物の安全な歩行・走行を促し、自動車等の移動体による衝突事故の防止を図ることもできる。特に、ある自動車にとっての危険な状況であって、しかしながらその車載センサ(カメラ)によっては検知・予測できない危険な状況を、同定済みの端末2を介し、まさに当事者であるこの自動車へ通知することも可能となるのである。
【0197】
[通信中継処理,通信中継プログラム]
以上、端末2の同定処理に係る様々な実施形態を説明したが、以下、
図1の機能ブロック図と
図8とを用い、このような同定処理を用いて実現する、基地局1における通信中継処理の一実施形態を説明する。なお、
図8は、この後に述べるモデル構築部141及び端末電波情報推定部142における処理の一実施形態を説明するための模式図となっている。
【0198】
図1の機能ブロック図において、モデル構築部141は、端末電波情報推定用の学習モデルを構築する。具体的に本実施形態では、モデル構築部141は、
図8(A)に示したように、
(a)カメラ103によって生成された(端末2に係る対象や電波障害物となり得る対象を含み得る)時系列画像データ(環境情報)と、
(b)この時系列画像データから検出された所定の対象に係る情報、例えば当該対象の検出位置に係る情報(対象位置情報)と
を含む学習データであって、
(c)対応関係決定部113においてこの所定の対象と対応関係にあると判定された端末2に係る(上記(a)の環境情報の各時点における又は代表時点における)受信電波情報、例えば受信信号電力
を正解データとした学習データを生成し、当該学習データによって、画像認識分野で周知の機械学習アルゴリズム(例えば、ニューラルネットワーク・アルゴリズムであって複数の畳み込み層部(Convolutional Layers)と、それらの出力を取りまとめる全結合層部(Fully-Connected Layers)との組合せ)を用いて、端末電波情報推定モデルを構築するのである。
【0199】
ここで、既に詳細に説明したように、非特許文献1に開示されたような従来の機械学習モデルでは、例えばカメラで生成された時系列の環境情報から検出された物体が、この機械学習モデルによって予測された受信信号電力に係る端末に対応するものであるか否かは確定できない状況となっている。
【0200】
これに対し、モデル構築部141で構築された端末電波情報推定モデルは、正解データとしての受信電波情報にまさに対応付けられた(対応関係にあると判定された)対象に係る情報、例えば対象位置情報を、学習データに含めて構築されている。したがって、この端末電波情報推定モデルによって予測された受信電波情報、例えば受信信号電力は、当該受信電波情報に係る端末2の同定先として決定された所定の対象についての予測値と解釈することができる。すなわち、本端末電波情報推定モデルによる受信電波情報の推定処理は、従来の機械学習モデルによる推定処理における対応対象の確実な特定という未解決課題を、確実に解決するのである。
【0201】
次いで、端末電波情報推定部142は、モデル構築部141で構築された端末電波情報推定モデルを用いて、端末2の受信電波情報、例えば受信信号電力を推定する。具体的に本実施形態では、端末電波情報推定部142は、
図8(B)に示したように、
(a)カメラ103によって生成された、推定対象である端末2を含み電波障害物となり得る対象も含み得る時系列画像データ(環境情報)と、
(b)この時系列画像データから検出された所定の対象であって、推定対象である端末2と対応関係にあると判定された所定の対象の対象位置情報と
を端末電波情報推定モデルへの入力とし、この入力によって端末電波情報推定モデルから出力された(推定情報としての)受信信号電力に基づいて、推定対象である端末2の(推定時点若しくは時間区間における)受信信号電力の予測値を決定する。
【0202】
最後に、(上述したように高い推定精度を有する)端末2の受信信号電力の予測値を取得した通信制御部114(
図1)は、この予測値に基づいて、端末2(又は当該端末2と対応する所定の対象)の通信経路を切り替えるか否かの判断を行う。例えば、所定の将来時点若しくは時間区間における当該予測値が所定の電力閾値以下である場合、この端末2との通信を、他の隣接する基地局1に渡してもよい。
【0203】
ここで、他の隣接する基地局1においても、同じ端末2における受信信号電力の予測値を決定しておき、当該基地局1の間で当該予測値を共有して最も大きな予測値を特定し、この特定した最大予測値を決定した基地局1へ通信経路を切り替えることも好ましい。
【0204】
以上のように、本実施形態の基地局1によれば、端末同定処理結果を利用して構築した端末電波情報推定モデルを使用することによって、5Gで大きな問題となる通信路遮蔽物による通信障害の問題、特に、移動している遮蔽物による一時的な通信障害の問題を、確実に解決可能な通信中継処理を実施することが可能となるのである。
【0205】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、端末と、端末の存在し得る環境に存在する対象との対応関係を、それぞれに係る種別情報(通信種別及び対象種別)の対応関係に基づいて、決定することが可能となる。すなわち、端末及び対象における互いの位置関係に又は当該位置関係のみに頼ることなく、それぞれに係る種別情報の対応関係を勘案することで端末対象対応情報を決定することができるのである。
【0206】
また、このような本発明による端末同定処理は、来る5Gにおける通信路遮蔽物による通信障害の問題を解決したり、端末を搭載した自動車に対して人物や他車等の接近を通知・警告したり、さらには、ある端末と対応関係にあると判定されたユーザの閲覧ページと、当該ユーザの動線との関係を決定してマーケティングや管理に生かしたり等、様々な状況・分野において応用することが可能となっている。
【0207】
以上に述べた本発明の種々の実施形態において、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0208】
1 基地局(端末同定装置、通信中継装置)
101 通信インタフェース
102 通信履歴情報蓄積部
103 カメラ
104 カメラ画像蓄積部
111 通信種別決定部
111a 端末状態決定部
111b 端末通信状態決定部
112 対象種別決定部
112a 対象状態決定部
112b 対象通信状態決定部
113 対応関係決定部
114 通信制御部
121 種別対応関係管理部
131 接近対象特定部
141 モデル構築部
142 端末電波情報推定部
2、2_001、2_002、2_003、2_004 端末
3_002、3_003 自動車
4_001 走行者