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特許7258753MRIイメージング剤として好適なテトラアザビシクロ大員環系マンガンキレート化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】MRIイメージング剤として好適なテトラアザビシクロ大員環系マンガンキレート化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/08 20060101AFI20230410BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20230410BHJP
   C07H 15/26 20060101ALI20230410BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20230410BHJP
   A61K 49/10 20060101ALI20230410BHJP
   A61K 49/14 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
C07D471/08 CSP
A61B5/055 390
C07H15/26
C07D519/00 311
A61K49/10
A61K49/14
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2019533460
(86)(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2017084148
(87)【国際公開番号】W WO2018115314
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-11-25
(31)【優先権主張番号】62/437,082
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】396019387
【氏名又は名称】ジーイー・ヘルスケア・アクスイェ・セルスカプ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー,アンドレアス,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】タニング,ミッケル,ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】バルス,ブライアン,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】リシェル,マイケル,ジェームス
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/042506(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/073371(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/220610(WO,A1)
【文献】PAN, D et al.,Manganese-based MRI contrast agents: past, present and future,Tetrahedron,2011年,Vol. 67,pp. 8431-8444
【文献】GALE, EM et al.,A Manganese Alternative to Gadolinium for MRI Contrast,Journal of the American Chemical Society,2015年,Vol. 137,pp. 15548-15557
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/08
A61B 5/055
C07H 15/26
C07D 519/00
A61K 49/10
A61K 49/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】


(式中:
XはOまたはSであり;
YはO、SまたはQ-Rであり、QはNまたはCHであり、RはC1~20ヒドロキシアルキル、C1~6アルキルまたは水素からなる群から選択され;
ZはO-L-R、S-L-RまたはQ(R)(L-R)であり、QおよびRは、Yに関して定義されるとおりであり、Lは任意のリンカーであって、Lが存在する場合、Lは、1~6アルキレン、C1~6ヒドロキシアルキレンおよびPEGリンカーからなる群から選択され、RはC1~6アルキル-R、C3~6アリール-R、ヒドロキシ、-O-C1~3アルキル-R、メチルスルホニル、5~6員複素環、炭水化物部分、キレート部分、アミノ酸部分からなる群から選択され、Rはヒドロキシ、アミノ、オキソ、ハロ、C1~3アルキル、スルホンアミドまたは-C(=O)-NH-C1~6ヒドロキシアルキルから選択される1つまたは複数の任意選択の置換基を表し;またはZ自体が、炭水化物部分または5~6員複素環の一部を形成し、前記炭水化物部分は、モノサッカライド、ジサッカライドおよびオリゴサッカライド残基からなる群より選択され、前記キレート部分は、金属キレート残基であり、前記アミノ酸部分は、1から3個の間のアミノ酸残基であり;
はC1~3アルキルまたは-(CH-Y-C(=X)-Zであり、X、YおよびZは、X、YおよびZに関して定義されるとおりであり、mは2~5の整数であり;
はヒドロキシ、ハロ、アミノ、アミド、C1~6アルキルおよびC1~6ヒドロキシアルキルからなる群から独立して選択される0~3個の置換基を表し;
各nは0~15の整数であり;
式Iの化合物は、少なくとも2つのヒドロキシ基を含み;
ただし、YがQ-R(ここでQはCHである)である場合、ZはQ(R)(L-R)(ここでQはNである)ではない)の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項2】
XがOであり、YがQ-R(ここでQはNである)であり、ZがQ(R)(L-R)(ここでQはNである)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
XがSであり、YがQ-R(ここでQはNである)であり、ZがQ(R)(L-R)(ここでQはNである)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
XがOであり、YがOであるか、ZがO-L-Rであるかのいずれかであり、YがOではない場合、YはQ-R(ここでQはNである)であり、ZがO-L-Rではない場合、ZはQ(R)(L-R)(ここでQはNである)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
XがSであり、YがOであるか、ZがO-L-Rであるかのいずれかであり、YがOではない場合、YはQ-R(ここでQはNである)であり、ZがO-L-Rではない場合、ZはQ(R)(L-R)(ここでQはNである)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
XがOであり、YがQ-Rであり、QはNであり、ZがQ(R)(L-R)であり、QはCHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
XがOであり、YがOであるか、ZがO-L-Rであるかのいずれかであり、YがOではない場合、YはQ-R(ここでQはCHである)であり、ZがO-L-Rではない場合、ZはQ (L-R)(ここでQはCHである)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
各-L-Rが、C1~12ヒドロキシアルキルである、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
各-L-Rが、
【化2】


(式中、いずれの場合も、アスタリスクは、前記式Iの化合物の残りの部分への結合点を示す)からなる群から独立して選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
各Rが、同じである、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
各Rが、C1~3アルキルまたは水素からなる群から独立して選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
各Rが、C1~3アルキルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
各Rが、水素である、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
各Rが、同じである、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
各nが、1~6の整数である、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
mが、3である、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
が、C1~3アルキルである、請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
が、-(CH-Y -C(=X )-Z であり、X 、Y 、Z およびmは、請求項1から16のいずれか一項に記載のとおりである、請求項1から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
が、0個の置換基を表す、請求項1から18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
が、2個のヒドロキシ基を表す、請求項1から18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
前記ヒドロキシ基がピリジル環のメタ位にある、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
少なくとも4個のヒドロキシ基を含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
前記金属キレート残基が、下記の構造を有する、請求項1から22のいずれか一項に記載の化合物。
【化6】
【請求項24】
以下の化合物から選択される、化合物。
【化5-1】



【化5-2-1】



【化5-3】



【化5-4】



【化5-5】



【化5-6】




【化5-7】


【請求項25】
ラセミ混合物か、ジアステレオ純粋かのいずれかである、請求項1から24のいずれか一項に記載の式Iの化合物。
【請求項26】
請求項1から25のいずれか一項に記載の式Iの化合物を、生体適合性担体とともに、哺乳動物への投与に好適な形態で含む医薬組成物。
【請求項27】
1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を更に含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記薬学的に許容される賦形剤が、緩衝剤、安定化剤、抗酸化剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、過剰ケランド、および生理学的に耐容可能なイオンの弱い錯体から選択される、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
請求項26から28のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物が、
(i)請求項26から28のいずれか一項に記載の医薬組成物を対象に投与すること;
(ii)前記化合物が分布した前記対象または前記対象の一部から磁気共鳴(MR)シグナルを検出すること;
(iii)前記検出されたシグナルからMR画像および/またはMRスペクトルを作成することを含む方法に使用するためのものである、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キレート化合物、および磁気共鳴手順における造影剤としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴映像法(MRI)は、身体領域を、選択された原子核、特に水素原子核を介して可視化する医療用イメージング技術である。MRIシグナルは、可視化された原子核周囲の環境およびそれらの縦緩和時間および横緩和時間であるT1およびT2に依存する。したがって、可視化された原子核がプロトンである場合には、MRIシグナル強度は、プロトン密度およびプロトン化学環境などの因子に依存することになる。造影剤は、イメージング造影を改善するためにMRIにおいて使用することができる。これらは、T1、T2および/またはT2*緩和時間に作用することによって機能し、その結果、イメージングにおける造影に影響を与える。
【0003】
T1、T2および/またはT2*緩和時間は、構造修飾することによってキレート常磁性造影剤用に最適化できることは知られている。特に重要な点は、常磁性イオンへ結合した水分子の存在および滞留時間、ならびに造影剤の回転相関時間である。常磁性イオンへ結合した水分子の存在および滞留時間は、常磁性イオンおよびキレート部分を選択することで調節することができる。回転相関時間は、造影剤のサイズを変更することで調節することができる。
【0004】
常磁性イオンは、生物学的経路に干渉し、毒性を誘導する場合があることも知られており、したがって常磁性イオンは、可能な限りキレート内で保持されることが必要とされる。常磁性イオンを保持するためのキレートの能力は、以降、安定性として示すが、ケランド(cheland)部分の構造設計によって調節することができる特性でもある。特に興味深いものは、解離半減期として測定される動態安定性であり、これは変化した化学的環境(すなわち内因性イオン)に対する慣性の程度を示す。
【0005】
いくつかのタイプの造影剤がMRIにおける使用で知られている。血液プールMR造影剤、例えば超常磁性酸化鉄粒子は血管内に長時間保持される。これらは例えば肝臓における造影を強化するだけではなく、腫瘍血管新生の結果である、腫瘍における「漏出」毛細血管壁などの毛細血管透過性異常を検出するのに極めて有用であることが立証されている。
【0006】
これらは比較的高用量で患者に投与されるため、これらをMRI用造影剤として使用する場合に、常磁性キレートの水中での溶解度も重要な因子である。高水溶性の常磁性キレートは、少ない注射容量を必要とし、したがって、患者へ投与することが容易であり、不快感を低下させる。水溶性常磁性キレート、すなわちキレート剤および常磁性金属イオンの錯体、例えば市販のガドリニウムキレートOmniscan(商標)(GE Healthcare)、Dotarem(商標)(Guerbet)、Gadavist(商標)(Bayer)およびMagnevist(商標)(Bayer)は周知である。それらは低分子量であるため、血管へ投与すると、細胞外空間(すなわち血液および間隙)中へ急速に分布する。これらはまた、身体から比較的急速に消失する。
【0007】
米国特許第8540966号明細書では、以下の一般構造:
【0008】
【化1】
が教示されており、式中、Lはリンカーであり、Rは、HまたはC2~70アミノポリオール部分である。米国特許第8540966号明細書の実験例では、本発明のガドリニウムキレートと特定の市販のガドリニウムキレートを比較し、薬物動態プロファイルは市販のガドリニウムキレートと類似しているが、緩和能が高いことを実証している。米国特許第8540966号明細書では、金属交換反応の不活性に対するアミノポリオール部分の影響を一切記載していない。
【0009】
欧州特許第1931673号明細書では、以下の一般構造:
【0010】
【化2】
が教示されており、上記構造における各Rは、欧州特許第1931673号明細書において配位配位子として定義され、各Xは、少なくとも1つのC1~6ヒドロキシアルキル基を含む。欧州特許第1931673号明細書では、明細書において教示する化合物の緩和能特性を重要視している。欧州特許第1931673号明細書の教示では、上記化合物は、Gd3+、Mn2+およびFe3+から選択される常磁性金属イオンとの錯体を形成していてもよいことを示しているが、実際には、Gd3+の安定な錯体形成に好適であるキレート構造、例えば以下のガドリニウム含有錯体に焦点を当てている。
【0011】
【化3】
【0012】
例示した錯体は全て、4個の窒素および3個のカルボン酸基が錯体形成金属イオンへ配位しているために七座配位である。七座配位マンガンキレートの負の影響は、国際公開第2011073371号パンフレットに記載されている。欧州特許第1931673号明細書では、金属交換反応の不活性に対するヒドロキシアルキル部分の影響を一切記載していない。
【0013】
市販の薬剤および先行技術の焦点からわかるように、ガドリニウムは、MRIキレート用に最も広範に使用される常磁性金属イオンである。
【0014】
マンガン(II)イオンは、高いスピン数および長い電子緩和時間を有する常磁性種であり、マンガン(II)系高緩和能造影剤の可能性が文献で報告されている(Toth, E; Advances in Inorganic Chemistry, 2009, 61(09), 63-129)。しかし、マンガン(II)キレートは、相当するガドリニウムキレートと比較してかなり安定性が低いことが証明されている。例えば、DOTAのマンガンキレート(MnDOTA)は、対応するガドリニウム錯体(GdDOTA)と比較して安定性が数百倍低い(Drahos, B; Inorganic Chemistry, 2012(12), 1975-1986)。
【0015】
したがって、解決するための重要な課題は、高い安定性を示し、同時に有効な緩和特性を維持する新規なマンガンキレートを得ることである。
【0016】
特定の安定なマンガンキレートは、国際公開第2011073371号パンフレットに記載されている。その明細書に記載された分子設計は、高キレート安定性および高緩和能が有利である点が実証されている。この点より、これらの化合物がMRI造影剤として使用するのに非常に好適となる。国際公開第2011073371号パンフレットの例示的化合物は以下の構造を有する。
【0017】
【化4】
【0018】
しかし、安定性および緩和能の観点から依然として更に改善する余地がある。
【発明の概要】
【0019】
1つの態様において、本発明は、式I:
【0020】
【化5】

(式中、
XはOまたはSであり;
YはO、SまたはQ-Rであり、QはNまたはCHであり、RはC1~20ヒドロキシアルキル、C1~6アルキルまたは水素を含む群から選択され;
ZはO-L-R、S-L-RまたはQ (L-R)であり、QおよびRは、Yに関して定義されるとおりであり、LはC1~6アルキレン、C1~6ヒドロキシアルキレンおよびPEGリンカーを含む群から選択される任意選択のリンカーであり、RはC1~6アルキル-R、C3~6アリール-R、ヒドロキシ、-O-C1~3アルキル-R、スルホニル、5~6員複素環、炭水化物部分、キレート部分、アミノ酸部分を含む群から選択され、Rはヒドロキシ、アミノ、オキソ、ハロ、C1~3アルキル、スルホンアミドまたは-C(=O)-NH-C1~6ヒドロキシアルキルから選択される1つまたは複数の任意選択の置換基を表し;またはZ自体が、炭水化物部分または5~6員複素環の一部を形成し;
はC1~3アルキルまたは-(CH-Y-C(=X)-Zであり、X、YおよびZは、X、YおよびZに関して定義されるとおりであり、mは2~5の整数であり;
はヒドロキシ、ハロ、アミノ、アミド、C1~6アルキルおよびC1~6ヒドロキシアルキルを含む群から独立して選択される0~3個の置換基を表し;
各nは0~15の整数であり;
式Iの化合物は、少なくとも2つのヒドロキシ基を含み;
ただし、YはQ-R (ここでQはCHである)である場合、ZはQ (L-R(ここでQはNである)ではない
の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物に関する。

【0021】
他の態様において、本発明は、本発明の式Iの化合物を、生体適合性担体とともに、哺乳動物への投与に好適な形態で含む医薬組成物に関する。
【0022】
他の態様において、本発明は、
(i)本発明の式Iの化合物または本発明の医薬組成物を対象に投与すること;
(ii)前記化合物が分布した前記対象または前記対象の一部から磁気共鳴(MR)シグナルを検出すること;
(iii)前記検出されたシグナルからMR画像および/またはMRスペクトルを作成すること
を含む方法に関する。
【0023】
他の態様において、本発明は、本発明の方法において使用するための本発明の式Iの化合物を提供する。
【0024】
本発明のマンガン(II)系キレートは、動態的に安定であり、有利な水交換反応速度を示し、MRI造影剤として使用することができる。
【0025】
国際公開第2011073371号パンフレットに記載の化合物は、非常に安定である(すなわち金属交換反応に対する不活性レベルが高い)と特徴付けられているが、本発明者らは驚くことに、更に優れた安定性が付与されたマンガンキレートを得ることに成功した。金属交換反応に対するこの驚くべき不活性は、マンガンキレートを親水性遮蔽体内に埋め込むことによって得られる。親水性遮蔽体は、親水性アームをキレートカルボキシル官能基へグラフトすることによって構築される。緩和特性に関するポリヒドロキシル化キレートの有利な効果は、先行技術より既知であるが、本発明によって実証される解離速度に対する驚くべき効果はまだ記載されていない。
【発明を実施するための形態】
【0026】
特許請求する発明の主題をより明らかにかつ簡潔に記載および指示するために、定義および例示的な実施形態を、本明細書および特許請求の範囲にわたって使用される特定の用語に関して以下で提供する。本明細書における特定の用語のいずれの例示も、非限定的な例として考えられたい。
【0027】
「含む(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、本出願を通してそれらの従来の意味を有し、薬剤または組成物が列挙された必須の特徴または構成成分を有していなければならないが、他のものも更に存在していてもよいことを示唆する。「含む(comprising)」という用語は、「から実質的になる」を好ましいサブセットとして含み、これは、組成物が、存在する他の特徴または構成成分以外の列挙された構成成分を有することを意味する。
【0028】
本発明による「塩」は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸由来のもの、ならびに有機酸、例えば、酒石酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、およびパラトルエンスルホン酸由来のものなどの生理学的に許容される酸付加塩を含む。
【0029】
本発明による好適な「溶媒和物」は、エタノール、水、生理食塩水、生理学的緩衝液およびグリコールから選択される。
【0030】
「アルキル」という用語は、単独でまたは組合せて、一般式C2n+1を有する直鎖または分岐状鎖アルキルラジカルを意味する。そのようなラジカルの例としては、メチル、エチル、およびイソプロピルがある。
【0031】
「ヒドロキシル」という用語は、-OH基を指す。
【0032】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、上記で定義されたヒドロキシル置換基を含む、上記で定義されたアルキル基を指す。
【0033】
「アリール」という用語は、芳香環、通常は芳香族炭水化物由来の官能基または置換基を指し、その例としては、フェニルおよびピリジルがある。1つの実施形態において、本発明のアリール基は、O、NおよびSから選択される0から3個の間のヘテロ原子を有する芳香族6員環である。
【0034】
「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素から選択される置換基を意味する。
【0035】
「炭水化物部分」という用語は、多価アルコールのアルデヒドまたはケトン誘導体を指し、これらとしては、モノサッカライド、ジサッカライドおよびオリゴサッカライド残基がある。非限定的な例としては、フルクトース、グルコースおよびスクロース残基がある。
【0036】
「アルキレン」という用語は、二価の基-(CH-(式中、xは1~6の整数である)を指す。「ヒドロキシアルキレン」という用語は、1つまたは複数のヒドロキシ置換基を含むアルキレンを指す。
【0037】
PEGリンカー
「ヒドロキシ」という用語は、-OH基を指す。
【0038】
「スルホニル」という用語は、-SO基を指す。
【0039】
「アミノ酸部分」という用語は、1から3個の間のアミノ酸を指す。
【0040】
「キレート部分」という用語は、金属キレートである置換基を指し、「金属キレート」という用語は、配位錯体を指し、金属イオンは、ケランドに含まれる分子または陰イオンの周囲配列へ結合している。「ケランド」は、2つ以上のドナー原子を介して常磁性金属イオンと配位結合を形成することができる有機化合物として本明細書で定義される。本発明の2~6、好ましくは2~4に好適な典型的なケランドにおいて、金属ドナー原子は、(炭素原子か非配位ヘテロ原子かのいずれかの非配位骨格を有し、金属ドナー原子へ結合することによって)5または6員環が生じるように配列する。金属イオンが常磁性金属イオンである好適なドナー原子タイプの例としては、アミン、チオール、アミド、オキシム、およびホスフィンがある。1つの実施形態において、金属イオンはマンガンである。
【0041】
「アミノ」という用語は、-NR’R”基を指し、R’およびR”は、独立して、水素またはアルキルである。
【0042】
「アミド」という用語は、-C(=O)NR’R’’基(式中、R’およびR’’は、アミノの用語で定義されるとおりである)を指す。
【0043】
「オキソ」という用語は、=O基を指す。
【0044】
「スルホンアミド」という用語は、-SO-NH基を指す。
【0045】
本発明の化合物の1つの実施形態において、XはOであり、YはQ-R (ここでQはNである)であり、ZはQ (L-R(ここでQはNである)である。

【0046】
本発明の化合物の1つの実施形態において、XはSであり、YはQ-R (ここでQはNである)であり、ZはQ (L-R(ここでQはNである)である。
【0047】
本発明の化合物の1つの実施形態において、XはOであり、YはOであるか、ZはO-L-Rであるかのいずれかであり、YがOではない場合、YはQ-R (ここでQはNである)であり、ZがO-L-Rではない場合、ZはQ (L-R(ここでQはNである)である。

【0048】
本発明の化合物の1つの実施形態において、XはSであり、YはOであるか、ZはO-L-Rであるかのいずれかであり、YがOではない場合、YはQ-R (ここでQはNである)であり、ZがO-L-R ではない場合、ZはQ (L-R(ここでQはNである)である。

【0049】
本発明の化合物の1つの実施形態において、XはOであり、YはQ-R (ここでQはNである)であり、ZはQ (L-R(ここでQはCHである)である。

【0050】
本発明の化合物の1つの実施形態において、XはOであり、YはOであるか、ZはO-L-Rであるかのいずれかであり、YがOではない場合、YはQ-R (ここでQはCHである)であり、ZがO-L-R ではない場合、ZはQ (L-R(ここでQはCHである)である。

【0051】
本発明の化合物の1つの実施形態において、各-L-RはC1~12ヒドロキシアルキルである。
【0052】
本発明の化合物の1つの実施形態において、各-L-RはC3~6ヒドロキシアルキルである。
【0053】
本発明の化合物の1つの実施形態において、各-L-RはCヒドロキシアルキルである。
【0054】
本発明の化合物の1つの実施形態において、各-L-Rは、
【0055】
【化6】
(式中、いずれの場合も、アスタリスクは、式Iの化合物の残りの部分への結合点を示す)
を含む群から独立して選択される。
【0056】
本発明の化合物の1つの実施形態において、各Rは、
【0057】
【化7】
(式中、いずれの場合も、アスタリスクは、式Iの化合物の残りの部分への結合点を示す)
を含む群から独立して選択される。
【0058】
本発明の化合物の1つの実施形態において、各RはC3~6アリール-Rであり、Rはハロおよび-C(=O)-NH-C1~6ヒドロキシアルキルから選択される。
【0059】
本発明の化合物の1つの実施形態において、前記ハロはヨードである。
【0060】
本発明の化合物の1つの実施形態において、前記C3~6アリールはフェニルである。
【0061】
本発明の化合物の1つの実施形態において、各Rは三ヨウ素化フェニルである。
【0062】
本発明の化合物の1つの実施形態において、各Rは、
【0063】
【化8】
(式中、アスタリスクは、式Iの化合物の残りの部分への結合点を示す)
である。
【0064】
本発明の化合物の1つの実施形態において、各Rは同じである。
【0065】
本発明の化合物の1つの実施形態において、各Rは、C1~3アルキルまたは水素を含む群から独立して選択される。
【0066】
本発明の化合物の1つの実施形態において、各RはC1~3アルキルである。
【0067】
本発明の化合物の1つの実施形態において、各Rはメチルである。
【0068】
本発明の化合物の1つの実施形態において、各Rは水素である。
【0069】
本発明の化合物の1つの実施形態において、各Rは同じである。
【0070】
本発明の化合物の1つの実施形態において、各nは1~6の整数である。
【0071】
本発明の化合物の1つの実施形態において、各nは2である。
【0072】
本発明の化合物の1つの実施形態において、mは3である。
【0073】
本発明の化合物の1つの実施形態において、RはC1~3アルキルである。
【0074】
本発明の化合物の1つの実施形態において、Rはメチル基である。
【0075】
本発明の化合物の1つの実施形態において、Rは-(CH-Y-C(=X)-Zであり、X、Y、Zおよびmは、本明細書で定義されるとおりである。
【0076】
本発明の化合物の1つの実施形態において、Rは0個の置換基を表す。
【0077】
本発明の化合物の1つの実施形態において、Rは2個のヒドロキシ基を表す。本発明の化合物の1つの実施形態において、前記ヒドロキシル基は、ピリジル環のメタ位にある。
【0078】
1つの実施形態において、本発明の化合物は、少なくとも4個のヒドロキシ基を含む。
【0079】
1つの実施形態において、本発明の化合物は、4~15個のヒドロキシ基を含む。
【0080】
1つの実施形態において、本発明の化合物は、5~10個のヒドロキシ基を含む。
【0081】
本発明の化合物の1つの実施形態において、前記Mnは、52Mnおよび54Mnを含む群から選択されるMnの濃縮同位体である。
【0082】
本発明の式Iの特定の化合物の非限定的な例としては、以下の化合物がある。
【0083】
【化9-1】
【0084】
【化9-2】
【0085】
【化9-3】
【0086】
【化9-4】
【0087】
【化9-5】
【0088】
【化9-6】
【0089】
【化9-7】
【0090】
式Iの化合物において、カルボキシレートアームへ結合した炭素は、立体中心である。本発明の式Iの化合物は、ラセミ混合物としてまたは鏡像異性体的に富化された混合物として提供されていてもよく、またはラセミ混合物は、周知の技術を使用して分離してもよく、個々の鏡像異性体は単独で使用してもよい。1つの実施形態において、式Iの化合物は、ラセミ混合物か、ジアステレオ純粋かのいずれかである。
【0091】
本発明の化合物の親水性誘導体化は、アミド、尿素、チオ尿素、カルバメート、チオカルバメートまたはジチオカルバメートから選択される非配位結合基を介して達成される。非配位結合基は、マンガン配位に大きく関与するには、マンガンイオンからあまりにも距離があり、したがってマンガンが水と直接配位し、その後、造影を観察することを可能にする。式Iの非配位リンカーの長さは非常に重要であり、あまりにも短い場合(例えば式Iにおいてm=1の場合)、それがマンガンイオンに配位することになり、したがって水分子の接近をブロックし、錯体の全体的な緩和能を著しく減少させるリスクがある。カルボキシメチルアーム(配位基)へ結合した非配位リンカーの長さは、同じ「アーム」が、2つの基が配位することを促進できないため(配位角度があまりにも歪むことになる)、短くてもよい(すなわち式Iにおいてn=0)。
【0092】
式Iの化合物は、当業者に既知のいくつかの合成経路によって市販の出発材料から合成することができる。本発明の化合物を作製するときに、キレート取込み用マンガンの好適な原料としては、炭酸塩(MnCO)、酸化物塩(MnO)、酢酸塩(Mn(OAc))、塩化物塩(MnCl)、水酸化物塩(Mn(OH))、シュウ酸塩(MnC2O)、ギ酸塩(Mn(HCO)および硝酸塩(Mn(NOがある。
【0093】
以下の一般的な手順を使用し、および/または直ちに適用し、式I
【0094】
【化10】
の化合物を得てもよく、R、X、YおよびZは、本明細書において他の箇所で定義されるとおりである。XはCHまたはCHCHCHCOOHを表す。Yは、以下のステップHでさまざまに定義されるとおりである。
【0095】
要約すると:
A:アミノエタノールをトシル化すると、アジリジンが得られる(Carrillo, Arkivoc, 2007)。
B:アミノブタン酸(Sigma Aldrichカタログ56-12-2)をアジリジン化する。1つの実施形態において、メチルアミンのアジリジン化は純粋アセトニトリル中で進行させる。このアミノ酸に関する1つの実施形態において、いくつかの塩基を使用し、アミンを活性化させる。任意選択で、酸官能性をエステルとして保護してもよい。
C:2,6-ビス(クロロメチル)-ピリジン(Sigma Aldrichカタログ3099-28-3)を用いて環化する。1つの実施形態において、このステップは、塩基として炭酸カリウムと共に、アセトニトリル中で行われる。
D:1つの実施形態において、脱トシル化は濃硫酸を使用して行う。1つの実施形態において、このステップは定量的に進行させる。
E:文献(Henig, J., Toth, E., Engelmann, J., Gottschalk, S., & Mayer, H. a. (2010). Inorganic Chemistry, 49(13), 6124-38)に記載の方法に基づいて臭素化する。
F:ポリアミンをアルキル化し/金属を導入し、エステルを加水分解する。1つの実施形態において、このステップは水溶液中で行う。実施形態において、第二級ハロゲン化物が緩慢に反応する場合、ビス-エステル(E)を合成し、有機溶媒に切り替え、アルキル化率を改善することが可能である。アルキル化の後に、エステルを、塩基を用いて加水分解することができ、次いでpHを中和した後に、Mn(II)イオンに、MnClを加えることができ、過剰なMnを、塩基を使用して沈殿させることができる。
G:カルボキシレートを活性化させ、Y(式中、nは、本明細書において式Iに関して定義されるさまざまなY基Y1~5を表す)とする。
H:さまざまな活性種を、求核剤および求電子剤とカップリングさせる:
・カルボキシレートは、ジフェニルホスホリルアジドを使用してイソシアネートへ活性化し(Gilman, J. W. and Otonari, Y. A (1993) Synthetic Communications 23(3) 335-341)、活性中間体Yを得ることができ、これはアミン([a] Ranjan, A.; et.al. (2014) Organic Letters, 16(21), 5788-5791、[b]. Petersen, T. P. et. al. (2013) 19(28), 9343-9350)、アルコール([a] Amamoto, Y. et. al. (2007) Journal of the American Chemical Society, 129(43), 13298、[b] Kim, I. et. al. (2004) Journal of Medicinal Chemistry 47(8), 2110-2122.)またはチオール([a] Peters, K. (2001) Journal of Enzyme Inhibition, 16(4), 339-350、[b] Safavi-Sohi, R. (2016) ACS Applied Materials & Interfaces 8(35) 22808-22818)とHにおいて更に反応させ、尿素、カルバメート、およびS-チオカルバメートをそれぞれ得ることができる。
・更に、イソシアネートYを分解し、塩基と処理することによってアミンYを生成することができる(Chavboun, I. et. al. (2015) Journal of Natural Products、78(5)、1026-1036)。
・アミン誘導体Yは、さまざまなカルボン酸、イソシアネート、イソチオシアネート、およびクロロホルメートと反応させ、アミド、尿素、チオ尿素、およびカルバメートをそれぞれ生成することができる。
・あるいは、アミンYは、DMF中でチオニルジイミダゾールを用いて処理することを含むがこれらに限定されないさまざまな条件下で処理することによって活性チオイソシアネートYへ変換することができる。その後、活性チオイソシアネート求電子剤は、アミン、アルコール、またはチオールとカップリングさせ、チオ尿素、O-チオカルバメート、およびジチオカルバメートをそれぞれ得ることができる。
・更に、Yをアルコールとして活性化させ(ジオール36の合成を参照のこと)、アルコール(Y)を得ることができる場合、そのアルコールを、イソシアネート、イソチオシアネートと反応させ、カルバメートおよびO-チオカルバメートをそれぞれ生成することができるいくつかの場合がある。
【0096】
更にYを、ジチオール40の合成において図示するように、求核チオール(Y)として活性化することができる場合がある。その後のチオールのイソシアネートまたはイソチオシアネートとの反応によって、S-チオカルバメートおよびジチオカルバメートがそれぞれ形成されることになる。
【0097】
ステップHにおいて、以下の式の化合物を使用して、複素環を付加することができる。
【0098】
【化11】
【0099】
【表1】
【0100】
得られた式Iの化合物は、式Iaの構造:
【0101】
【化12】
を有し、式Iの化合物が、三ヨウ化フェニルなどの置換アリールをRに含む場合、化合物は、以下の反応スキームを使用してまたは適応して得てもよい(式中、X、Y、Z、Rおよびnは本明細書で定義されるとおりであり、YおよびZは、共役反応を発生させるのに好適な官能基を表す。
【0102】
【化13】
【0103】
以下の実験例において、特定の化合物の合成を、上述のものなどの反応スキームによるか、代替の反応スキームによるかのいずれかで提供する。これらの代替の反応スキームも、当業者であれば容易に適応し、式Iの他の化合物を得るであろう。
【0104】
本発明のMnキレート化合物の逆アミド化学構造によって、その化合物は、類似する従来のMnキレート化合物と区別される。本発明の化合物は、Mn保持に関してならびにin vivo代謝に対して高い安定性を有すると考えられる。
【0105】
キレート安定性のin vitro特性評価に好適な方法は、文献(Idee, J.-M. Journal of Magnetic Resonance Imaging: JMRI, 2009, 30(6), 1249-58およびBaranyai, Z. Chemistry - A European Journal, 2015, 21(12), 4789-4799)において見出すことができる。他の好適な方法としては、金属交換反応不活性をモニタリングするための生理学的媒体(すなわちヒト血清または血漿)のin vitro研究がある。金属交換反応不活性を評価する他の好適な方法は、キレート金属を注射した後に、in vivoでの金属イオンの保持を測定することであろう。完全なままのキレートは、非常に急速なクリアランス動態に通常従うことは既知である。
【0106】
本発明の1つの態様において、式Iの化合物は、医薬組成物として提供される。「医薬組成物」は、本発明の化合物を、生体適合性担体とともに、哺乳動物への投与に好適な形態で含む組成物である。「生体適合性担体」は、式Iの化合物を懸濁しまたは溶解し、得られた組成物を生理学的に耐容可能に、すなわち哺乳動物身体への毒性または過度の不快感を伴わずに投与できるようにする(これは、「哺乳動物への投与に好適な」という用語の定義であると理解することができる)流体、特に液体である。
【0107】
本発明の医薬組成物は、ヒトおよび非ヒト動物身体の磁気共鳴映像法(MRI)における磁気共鳴(MR)造影媒体としての使用に好適である。
【0108】
1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含んでいてもよい。これらは当然のことながら、最終組成物の製造、貯蔵または使用を妨げることはない。
【0109】
好適な薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例としては、緩衝剤、安定化剤、抗酸化剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、過剰ケランドおよび生理学的に耐容可能なイオンの弱い錯体がある。これらのおよび他の好適な賦形剤は、当業者であれば周知であり、例えば国際公開第1990003804号パンフレット、欧州特許出願公開第0463644号明細書、欧州特許出願公開第0258616号明細書および米国特許第5876695号明細書において更に記載されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれるものとする。1つの実施形態における本発明の医薬組成物は、非経口投与、例えば注射に好適な形態である。したがって、本発明による医薬組成物は、生理学的に許容される賦形剤を使用した、当技術分野の完全な範囲内である方法での投与用に配合されていてもよい。例えば、式Iの化合物は、任意選択で、薬学的に許容される賦形剤を追加し、水性媒体中に懸濁または溶解し、次いで得られた溶液または懸濁液を滅菌してもよい。
【0110】
好適な緩衝剤の非限定的な例はトロメタミン塩酸塩である。
【0111】
「過剰ケランド」という用語は、欧州特許出願公開第2988756号明細書において記載されているように、遊離常磁性イオン(マンガン)を捕捉することができるが、本発明の錯体内に保持された常磁性体イオン(マンガン)は捕捉することができない任意の化合物として定義される。少量であればヒトの健康にとって必須であるが、遊離マンガンイオンに過剰に曝露されると、パーキンソン疾患と類似する症状を伴う、「マンガン中毒」として知られる神経変性障害が生じることがある。しかし、造影剤としてのMnならびに他の金属に関する基本的な問題は、それらのキレート化安定性である。キレート化安定性は、重要な特性であり、遊離金属イオンのin vivoでの潜在的な放出を反映する。常磁性体キレート配合剤における過剰ケランドの量と動物モデルに堆積した常磁性金属の量との間に相関があることは知られている(Sieber 2008 J Mag Res Imaging; 27(5): 955-62)。したがって、別の実施形態において、Mnスカベンジャーとして作用することができる過剰ケランドの量が選択され、その結果、注射後に配合剤からMnが放出されることが減少するまたは阻止される。最適な量の遊離ケランドによって、好適な物理化学的特性(すなわち粘度、溶解度および浸透圧)を有する医薬組成物が得られることになり、遊離ケランドが過剰である場合に亜鉛枯渇などの毒性学的影響が回避される。米国特許第5876695号明細書では、特に過剰直鎖状キレート、特に遊離DTPAが記載されており、これは本発明の医薬組成物における使用に好適な過剰ケランドの非限定的な例である。この配合戦略は、Magnevist(商標)、Vasovist(商標)またはPrimovist(商標)などの製品に使用される。国際公開第2009103744号パンフレットでは、正確な量の遊離キレートを添加し、極めて少量の過剰前記キレートおよびゼロ濃度の遊離ランタニドを有するようにすることに基づいた類似の配合戦略が記載されている。
【0112】
1つの実施形態において、生理学的に耐容可能なイオンは、塩化カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、グルコン酸カルシウムまたは乳酸カルシウムなどのカルシウムまたはナトリウム塩を含む生理学的に耐容可能なイオンから選択してもよい。
【0113】
非経口で投与可能な形態は、滅菌され、生理学的に許容されない薬剤を含まないべきであり、投与時の刺激または他の有害効果が最小限となるよう低浸透圧を有するべきであり、したがって、医薬組成物は等張またはわずかに高張でなくてはならない。好適なビヒクルの非限定的な例としては、塩化ナトリウム注射、リンゲル注射、デキストロース注射、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射、乳酸加リンゲル注射などの非経口溶液、ならびにRemington's Pharmaceutical Sciences, 22nd Edition (2006 Lippincott Williams & Wilkins)およびThe National Formulary (https://books.google.com/books?id=O3qixPEMwssC&q=THE+NATIONAL+FORMULARY&dq=THE+NATIONAL+FORMULARY&hl=en&sa=X&ved=0CC8Q6AEwAGoVChMImfPHrdTqyAIVJfNyCh1RJw_E)において記載されているような他の溶液を投与するために習慣的に使用される水性ビヒクルがある。
【0114】
非経口で、すなわち注射で投与するための本発明の医薬組成物に関しては、その製剤は更に有機溶媒を除去し、生体適合性緩衝液および賦形剤または緩衝液などのいずれかの任意選択の追加の成分を添加することを含むステップを含む。非経口投与するために、医薬組成物が滅菌性および非発熱性であることを確実にするようなステップも取り入れることが必要である。
【0115】
別の実施形態において、本発明は、MR画像および/またはMRスペクトルの作成において、本明細書で定義される式Iの化合物を投与することを含む方法を提供する。
【0116】
本発明の文脈において好適であると想定される投与方法および対象は、医薬組成物に関連して上記で述べている。式Iの化合物の投与は、好ましくは非経口で、最も好ましくは静脈内で行う。静脈内経路は、対象の身体の至る所へ化合物を送達する最も効率的な方法の典型である。更に、静脈内投与は、実質的な物理的介入または実質的な健康リスクを示すものではない。本発明の式Iの化合物は、上記で定義された本発明の医薬組成物として好ましくは投与される。本発明の方法は、本発明の化合物が予め投与された対象に行われるステップ(ii)~(iii)を含むと理解することもできる。1つの実施形態において、医薬組成物は、MR撮像法(MRI)方法において造影を強化するのに好適な量で投与される。MRI方法に関して更に詳述するために、例えばChapter 27 “Contrast Agents and Magnetic Resonance Imaging” in “Magnetic Resonance Imaging: Physical and Biological Principles”(4th Edition 2015 Elsevier, Stewart Carlyle Bushong & Geoffrey Clarke, Eds.)においてまたは“Contrast Agents I: Magnetic Resonance Imaging” (2002 Springer-Verlang, Werner Krause, Ed.)において教示されるような当技術分野において周知の一般的な知識を参照されたい。
【0117】
本発明の方法を使用し、生物学的マーカー、あるいは健常対象あるいは生物学的マーカーの異常発現と関連する病理学的状態を有することが既知のまたは疑われる対象における方法を研究してもよい。本方法が、病理学的状態を有することが既知のまたは疑われる対象をイメージングするために使用される場合、それは前記状態を診断するための方法において有用である。
【0118】
本発明の方法の「検出」ステップは、前記シグナルに対して感受性がある検出器を用い、式Iの化合物によって放出されたシグナルを検出することを含む。この検出ステップはシグナルデータの取得と理解することもできる。
【0119】
本発明の方法の「作成」ステップはコンピューターで行われ、このコンピューターが、取得されたシグナルデータへ再構成アルゴリズムを適用し、データセットが得られる。次いでこのデータセットを操作し、1つもしくは複数の画像、ならびに/またはシグナル位置および/もしくは量を示す1つもしくは複数のスペクトルを生成する。
【0120】
本発明の「対象」は、任意のヒトまたは動物対象とすることができる。1つの実施形態において、本発明の対象は哺乳動物である。1つの実施形態において、前記対象は、in vivoで完全なままの哺乳動物身体である。別の実施形態において、本発明の対象はヒトである。
【0121】
この書面による説明は実施例を使用して、最良の形態を含む本発明を開示し、また当業者が、任意のデバイスまたはシステムを作製および使用し、任意の組み込まれた方法を行うことを含めて本発明を実施することを可能にする。本発明の特許を受けることができる範囲は、特許請求の範囲によって定められ、当業者であれば通常思いつく他の実施例を含んでいてもよい。このような他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言と異なることのない構造要素を有する場合、またはそれらが特許請求の範囲の文言と実質的ではない差があるが等価の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にあることを意図する。本文で述べた全ての特許および特許出願は、それらが個々に組み込まれたかのように、その全体が参照によってここに組み込まれるものとする。
【0122】
実施例の簡単な説明
以下の実施例は、本発明の化合物の非限定的な選択が得られ得る方法を記載する。化合物3~5、8~10、14~17、19~22、24~26、28、30、32、34、37、38、41、42および51は、本発明の化合物の実施例を表す。予測的である任意の実施例に関しては、調整には、試薬溶解度および反応性における変動を考慮する必要があり得、代替の溶媒、さまざまな反応時間、温度、もしくは濃度、または代替ではあるが等価な試薬系の使用が含まれる。いずれのそのような調整も、当業者にとって通常作業とみなされる。
【0123】
ビスイソシアネート2の合成
【0124】
【化14】
出発材料1を、脱気したジメチルホルムアミド中に懸濁する。トリエチルアミン(2等量)、続いてジフェニルホスホリルアジド(2等量)を添加する。分析用クロマトグラフィーが、出発材料が消費されたことを示すまで、反応混合物を50℃で加熱しながら撹拌する。追加の等量のトリエチルアミンおよびジフェニルホスホリルアジドを使用することが、反応を完了させるために必要な場合がある。一度完了したら、イソシアネート2を、その後の反応においてDMF中の溶液として直接使用する。
【0125】
共役体3の合成
【0126】
【化15】
水(2等量)中のN-メチル-D-グルカミンの溶液を、DMF中のイソシアネート2へ添加する。反応混合物を室温で数時間撹拌し、その進行を、分析用クロマトグラフィー技術を使用してモニタリングする。過剰なN-メチル-D-グルカミンを添加することが、反応を完了させるために必要な場合がある。生成物3を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出する。
【0127】
共役体4の合成
【0128】
【化16】
DMF(2等量)中の2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルアセテートの溶液を、DMF中のイソシアネート2の溶液へ添加する。触媒量のジラウリン酸ジブチルスズを反応混合物へ添加し、混合物を70℃に加熱し、反応を完了させ、分析用クロマトグラフィー手順を使用し、反応の進行を確認する。完了すると同時に、溶媒を減圧下で除去し、残留物を、触媒量のナトリウムメトキシドを含むメタノール溶液中に懸濁する。反応を、アセテート保護基の加水分解が完了したことが観察されるまで進行させる。一度完了したら、反応混合物を減圧下で濃縮し、残留物を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出する。
【0129】
共役体5の合成
【0130】
【化17】
脱気したDMF中の、2-(ジエチルアミノ)エタンチオール塩酸塩(2等量)およびトリエチルアミン(2等量)の溶液を、DMF中のイソシアネート2の溶液へ添加する。反応混合物を室温で撹拌し、反応の進行を、分析用クロマトグラフィーを使用してモニタリングする。完了すると同時に、溶媒を減圧下で除去し、残留物を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出する。
【0131】
トリスイソシアネート7の合成
【0132】
【化18】
出発材料6を、脱気したジメチルホルムアミド中に懸濁する。トリエチルアミン(3等量)、続いてジフェニルホスホリルアジド(3等量)を添加する。分析用クロマトグラフィーが、出発材料が消費されたことを示すまで、反応混合物を50℃で加熱しながら撹拌する。追加の等量のトリエチルアミンおよびジフェニルホスホリルアジドを使用することが、反応を完了させるために必要な場合がある。一度完了したら、イソシアネート7を、その後の反応においてDMF中の溶液として直接使用する。
【0133】
共役体8の合成
【0134】
【化19】
DMF(2等量)中の、5-アミノ-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)イソフタルアミドの溶液を、DMF中のイソシアネート7へ添加する。反応混合物を室温で数時間撹拌し、その進行を、分析用クロマトグラフィー技術を使用してモニタリングする。過剰な5-アミノ-N,N’-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)イソフタルアミドを添加することが、反応を完了させるために必要な場合がある。生成物8を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出する。
【0135】
共役体9の合成
【0136】
【化20】
共役体9の合成-DMF(3等量)中の、β-D-グルコピラノース、1,2,3,4テトラアセテートの溶液を、DMF中のイソシアネート7の溶液へ添加する。触媒量のジラウリン酸ジブチルスズを反応混合物へ添加し、混合物を70℃に加熱し、反応を完了させ、分析用クロマトグラフィー手順を使用し、反応の進行を確認する。追加のβ-D-グルコピラノース、1,2,3,4テトラアセテートが、反応を完了させるために必要な場合がある。完了すると同時に、溶媒を減圧下で除去し、残留物を、触媒量のナトリウムメトキシドを含むメタノール溶液中に懸濁する。反応を、アセテート保護基の加水分解が完了したことが観察されるまで進行させる。一度完了したら、反応混合物を減圧下で濃縮し、残留物を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出する。
【0137】
共役体10の合成
【0138】
【化21】
脱気したDMF中のN-トリフルオロアセチル-L-システインメチルエステル(3等量)の溶液を、DMF中のイソシアネート7の溶液へ添加する。反応混合物を室温で撹拌し、反応の進行を、分析用クロマトグラフィーを使用してモニタリングする。完了すると同時に、溶媒を減圧下で除去し、残留物を、水中の水酸化ナトリウムで処理し、メチルエステルおよびトリフルオロアセトアミド保護基を除去する。反応混合物のpHを、水性HClを添加することによって7まで調整し、反応物を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して直接精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出する。
【0139】
アミン官能化キレート11の合成
【0140】
【化22】
ビスイソシアネート2を、室温で無水メタノール中に溶解する。その後、メタノール中のNaOH溶液を添加し、得られたビスメチルカルバメートを加水分解し、所望のアミン11とする。反応の進行を分析用クロマトグラフィーでモニタリングする。完了すると同時に、反応物のpHを7へ調整し、溶媒を減圧下で除去する。必要であれば、単離した残留物を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出し、純粋な11を得ることができる。
【0141】
アミン官能化キレート11の代替合成
【0142】
【化23】
ピラミン12およびメチル2-ブロモ-4-(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)ブタノエート(2等量)をアセトニトリル中に溶解し、トリエチルアミン(2.2等量)を添加する。反応を、室温で継続して撹拌し、13への反応の進行を、分析用クロマトグラフィーを使用してモニタリングする。完了すると同時に、反応物を減圧下で濃縮し、得られた残留物を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出し、13を得る。化合物13を6M HCl水溶液中に懸濁し、100℃へ撹拌しながら24時間加熱する。この後、反応混合物をろ過し、不溶性固形物を除去し、ろ液を収集し、そのpHを、50%w/w水酸化ナトリウム溶液を使用して7.4へ調整する。反応混合物のpHが7.4で安定したら、MnClxHO(約2.4等量)を反応混合物へと添加し、混合物を室温で撹拌する。追加のNaOH溶液を反応混合物へ添加し、反応混合物のpHを7.0から7.4の間で維持する。マンガン取込みの進行を分析用クロマトグラフィーでモニタリングし、完了すると同時に、反応物のpHを、NaOH水溶液を添加することによって12へ調整する。反応混合物を室温で1時間継続して撹拌し、次いで反応混合物をろ過し、固形物を除去し、ろ液を収集し、そのpHを、HCl水溶液を添加することによって7.4へ調整する。所望の化合物11を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して更に精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出する。
【0143】
共役体14の合成
【0144】
【化24】
アミノピラミン13を水中に溶解し、N-アセチルノイラミン酸(2.1eq)およびEDCI-HCl(2.1eq)を添加する。pHを、HClを用いて6.5へ調整し、次いでHOBt(0.4eq)を添加する。得られた溶液のpHを、16時間撹拌しながらおよそ6で維持する。次いで追加のEDCI-HCl(1.1eq)を添加し、反応物のpHをおよそpH6で維持し、更に16時間撹拌する。溶媒を真空中で除去し、所望の化合物14を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して更に精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出する。
【0145】
共役体15の合成
【0146】
【化25】

DMF(2等量)中の(S)-4-(イソチオシアナトメチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソランの溶液を、DMF中のジアミン11へ添加する。反応混合物を室温で数時間撹拌し、その進行を、分析用クロマトグラフィー技術を使用してモニタリングする。過剰な(S)-4-(イソチオシアナトメチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソランを添加することが、反応を完了させるために必要な場合がある。完了すると同時に、反応混合物を減圧下で濃縮し、残留物を9:1MeOH-HO中に入れ、Dowex 50W-8X樹脂を添加する。不均一な混合物を室温で撹拌し、反応の進行を分析用クロマトグラフィーで評価する。完了すると同時に、樹脂をろ過除去し、ろ液を減圧下で濃縮する。残留物を水中に入れ、混合物のpHを7.4へ調整する。追加のMnClxHO(1当量)を添加し、混合物を室温で撹拌する。追加のNaOH溶液を反応混合物へ添加し、反応混合物のpHを7.0から7.4の間で維持する。マンガン取込みの進行を分析用クロマトグラフィーでモニタリングし、完了すると同時に、反応物のpHを、NaOH水溶液を添加することによって12へ調整する。反応混合物を室温で1時間継続して撹拌し、次いで反応混合物をろ過し、固形物を除去し、ろ液を収集し、そのpHを、HCl水溶液を添加することによって7.4へ調整する。所望の化合物15を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して更に精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出する。
【0147】
共役体16の合成
【0148】
【化26】
脱気したDMF中の11の溶液を、DMF中の3-(イソシアナトメチル)ジヒドロピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(2等量)へ添加する。反応混合物を室温で数時間撹拌し、その進行を、分析用クロマトグラフィー技術を使用してモニタリングする。過剰な3-(イソシアナトメチル)ジヒドロピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオンを添加することが、反応を完了させるために必要な場合がある。生成物16を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出する。
【0149】
共役体17の合成
【0150】
【化27】
DMF(2等量)中の2-(メチルスルホニル)エチルカルボノクロリデートの溶液を、DMF中の11およびトリエチルアミン(2.5等量)の溶液へ0℃で添加する。溶液を室温で一晩加温する。分析用クロマトグラフィー手順を使用し、反応の進行を確認する。2-(メチルスルホニル)エチルカルボノクロリデートの追加分が、反応を完了させるために必要な場合がある。完了すると同時に、溶媒を減圧下で除去し、残留物を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出し、表題化合物17を得る。
【0151】
アミン官能化キレート18の合成
【0152】
【化28】
トリスイソシアネート7を、室温で無水メタノール中に溶解する。その後、メタノール中のNaOH溶液を添加し、得られたトリスメチルカルバメートを加水分解する。反応の進行を分析用クロマトグラフィーでモニタリングする。完了すると同時に、反応物のpHを7へ調整し、溶媒を減圧下で除去する。必要であれば、単離した残留物を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出し、純粋な18を得ることができる。
【0153】
共役体19の合成
【0154】
【化29】
アミノピラミン18を水中に溶解し、D-ガラクツロン酸ナトリウム塩(3.1eq)およびEDCI-HCl(3.1eq)を添加する。pHを、HClを用いて6.5へ調整し、次いでHOBt(0.6eq)を添加する。得られた溶液のpHを、16時間撹拌しながらおよそ6で維持する。次いで追加のEDCI-HCl(1.6eq)を添加し、反応物のpHをおよそ6で維持し、更に16時間撹拌する。溶媒を真空中で除去し、所望の化合物19を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して更に精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出する。
【0155】
共役体20の合成
【0156】
【化30】
脱気したDMF(3.1等量)中の2,3,4-トリ-O-アセチル-α-D-アラビノピラノシルイソチオシアネートの溶液を、DMF中のトリアミン18へ添加する。反応混合物を室温で数時間撹拌し、その進行を、分析用クロマトグラフィー技術を使用してモニタリングする。過剰なイソチオシアネートを添加することが、反応を完了させるために必要な場合がある。完了すると同時に、反応混合物を減圧下で濃縮し、残留物を触媒量のナトリウムメトキシドを含むメタノール溶液中に入れる。反応を、アセテート保護基の加水分解が完了したことが観察されるまで進行させる。一度完了したら、反応混合物を減圧下で濃縮し、残留物を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出する。
【0157】
共役体21の合成
【0158】
【化31】
脱気したDMF中の18の溶液を、DMF中の3-(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン1,1-二酸化物(3等量)へ添加する。反応混合物を室温で数時間撹拌し、その進行を、分析用クロマトグラフィー技術を使用してモニタリングする。過剰な3-(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン1,1-二酸化物を添加することが、反応を完了させるために必要な場合がある。生成物21を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出する。
【0159】
共役体22の合成
【0160】
【化32】
DMF(3等量)中の(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルカルボノクロリデートの溶液を、DMF中の18およびトリエチルアミン(3.5等量)の溶液へ0℃で添加する。溶液を16時間にわたって室温へ加温する。分析用クロマトグラフィー手順を使用し、反応の進行を確認する。(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルカルボノクロリデートの追加分が、反応を完了させるために必要な場合がある。完了すると同時に、溶媒を減圧下で除去し、残留物を9:1MeOH-HO中に入れ、Dowex 50W-8X樹脂を添加する。不均一な混合物を室温で撹拌し、反応の進行を分析用クロマトグラフィーで評価する。完了すると同時に、樹脂をろ過除去し、ろ液を減圧下で濃縮する。残留物を水中に入れ、混合物のpHを7.4へ調整する。追加のMnClxHO(1当量)を添加し、混合物を室温で撹拌する。追加のNaOH溶液を反応混合物へ添加し、反応混合物のpHを7.0から7.4の間で維持する。マンガン取込みの進行を分析用クロマトグラフィーでモニタリングし、完了すると同時に、反応物のpHを、NaOH水溶液を添加することによって12へ調整する。反応混合物を室温で1時間継続して撹拌し、次いで反応混合物をろ過し、固形物を除去し、ろ液を収集し、そのpHを、HCl水溶液を添加することによって7.4へ調整する。所望の化合物22を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して更に精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出する。
【0161】
ビスイソチオシアネート23の合成
【0162】
【化33】
出発材料11を脱気したジメチルホルムアミド中に懸濁する。トリエチルアミン(2等量)、続いてチオニルジイミダゾール(2等量)を添加する。分析用クロマトグラフィーが、出発材料が消費されたことを示すまで、反応混合物を80℃で加熱しながら撹拌する。追加の等量のトリエチルアミンおよびチオニルジイミダゾールを使用することが、反応を完了させるために必要な場合がある。一度完了したら、ビスチオイソシアネート23を、その後の反応においてDMF中の溶液として直接使用する。
【0163】
ビスチオ尿素24の合成
【0164】
【化34】
DMF中の23の室温の溶液へ、2,2’-アザネジイルジエタノール(2.1等量)を添加する。反応混合物を室温で継続して撹拌し、反応の進行を分析用クロマトグラフィーでモニタリングする。過剰な2,2’-アザネジイルジエタノールを添加することが、反応を完了させるために必要な場合がある。完了すると同時に、溶媒を減圧下で除去し、残留物を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出し、表題化合物24を得る。
【0165】
共役体25の合成
【0166】
【化35】
オリゴポリエチレングリコールモノメチルエーテル(式中、nは0から150の間であり、個別の化学物質か、さまざまな「n」値からなる化学物質の混合物かのいずれかとすることができる)をDMF中に0℃で溶解し、化学量論量を下回るNaHで処理する。混合物を、0℃で1時間撹拌し、次いでDMF中の23の溶液を混合物へ添加する。混合物を継続して撹拌し、数時間にわたって室温へ徐々に加温する。反応の進行を分析用クロマトグラフィーで追跡する。完了時に、溶媒を減圧下で除去し、残留物を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出し、表題化合物25を得る。
【0167】
共役体26の合成
【0168】
【化36】
DMF中の23の溶液を、水中のホモシステインHClの溶液へ添加する。溶液のpHを、6.5へ調整し、混合物を反応させ、その進行を分析用クロマトグラフィーでモニタリングする。完了すると同時に、反応混合物を濃縮し、粗製残留物を得、それをC-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して更に精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出し、表題化合物26を得る。
【0169】
トリスイソチオシアネート27の合成
【0170】
【化37】
出発材料18を脱気したジメチルホルムアミド中に懸濁する。トリエチルアミン(3等量)、続いてチオニルジイミダゾール(3等量)を添加する。分析用クロマトグラフィーが、出発材料が消費されたことを示すまで、反応混合物を80℃で加熱しながら撹拌する。追加の等量のトリエチルアミンおよびチオニルジイミダゾールを使用することが、反応を完了させるために必要な場合がある。一度完了したら、トリスチオイソシアネート23を、その後の反応においてDMF中の溶液として直接使用する。
【0171】
共役体28の合成
【0172】
【化38】
DMF中の室温の27の溶液へ1-アミノイミダゾリジン-2,4-ジオン(3.1等量)を添加する。反応混合物を室温で継続して撹拌し、反応の進行を分析用クロマトグラフィーでモニタリングする。過剰な1-アミノイミダゾリジン-2,4-ジオンを添加することが、反応を完了させるために必要な場合がある。完了すると同時に、溶媒を減圧下で除去し、残留物を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出し、表題化合物28を得る。
【0173】
カップリング対32の合成
【0174】
【化39】
出発材料29をDMF中に溶解し、トリエチルアミン(3等量)、続いてtert-ブチルクロロアセテートを添加する。
【0175】
共役体30の合成
【0176】
【化40】
DMF中の室温の27の溶液へ、29(3.1等量)を添加する。反応混合物を室温で継続して撹拌し、反応の進行を分析用クロマトグラフィーでモニタリングする。過剰な29を添加することが、反応を完了させるために必要な場合がある。完了すると同時に、溶媒を減圧下で除去し、残留物を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出し、表題化合物30を得る。
【0177】
共役体32の合成
【0178】
【化41】
DMF(3等量)中の31の溶液を、4-ジメチルアミノピリジン(0.3eq)およびジラウリン酸ジブチルスズ(0.03eq)を含むDMF中のイソチオシアネート27の溶液へ添加する。混合物を、70℃に加熱し、反応を完了させ、分析用クロマトグラフィー手順を使用し、反応の進行を確認する。31の追加分が、反応を完了させるために必要な場合がある。完了すると同時に、溶媒を減圧下で除去し、残留物を、触媒量のナトリウムメトキシドを含むメタノール溶液中に懸濁する。反応を、アセテート保護基の加水分解が完了したことが観察されるまで進行させる。一度完了したら、反応混合物を減圧下で濃縮し、残留物を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出する。
【0179】
共役体34の合成
【0180】
【化42】
DMF中の27の溶液を、水中の33の溶液へ添加する。溶液のpHを、6.5へ調整し、混合物を反応させ、その進行を分析用クロマトグラフィーでモニタリングする。完了すると同時に、反応混合物を濃縮し、粗製残留物を得、それを、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して更に精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出し、表題化合物34を得る。
【0181】
ジオール36の合成
【0182】
【化43】
ピラミン12およびメチル2-ブロモ-3-ヒドロキシプロパノエート(2等量)を、アセトニトリル中に溶解し、トリエチルアミン(2.2等量)を添加する。反応物を室温で継続して撹拌し、35への反応の進行を、分析用クロマトグラフィーを使用してモニタリングする。完了すると同時に、反応物を減圧下で濃縮し、得られた残留物を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出し、35を得る。化合物35を水中に溶解し、固体NaOH(4等量)を添加する。反応物を室温で撹拌し、その進行を分析用クロマトグラフィーでモニタリングする。完了すると同時に、pHプローブを反応混合物へ添加し、反応物のpHを、HCl水溶液を用いて7.4へ調整する。所望のpHに達成すると同時に、MnClxHO(約1.1等量)を反応混合物へ添加し、混合物を室温で撹拌する。追加のNaOH溶液を反応混合物へ添加し、反応混合物のpHを7.0から7.4の間で維持する。マンガン取込みの進行を分析用クロマトグラフィーでモニタリングし、完了すると同時に、反応物のpHを、NaOH水溶液を添加することによって12へ調整する。反応混合物を室温で1時間継続して撹拌し、次いで反応混合物をろ過し、固形物を除去し、ろ液を収集し、そのpHを、HCl水溶液を添加することによって7.4へ調整する。所望の化合物36を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して更に精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出する。
【0183】
共役体37の合成
【0184】
【化44】
DMF中の36の溶液を、DMF中の4-(イソシアナトメチル)モルホリン(2.1等量)の溶液へ添加する。触媒量のジラウリン酸ジブチルスズを反応混合物へ添加し、混合物を、70℃に加熱し、反応を完了させ、分析用クロマトグラフィー手順を使用し、反応の進行を確認する。必要であれば、追加の4-(イソシアナトメチル)モルホリンを反応混合物へ添加する。一度完了したら、反応混合物を減圧下で濃縮し、残留物を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出し、37を得る。
【0185】
共役体38の合成
【0186】
【化45】
DMF(2.1等量)中の4-イソチオシアナトベンゼンスルホンアミドの溶液を、4-ジメチルアミノピリジン(0.3eq)およびジラウリン酸ジブチルスズ(0.03eq)を含むDMF中の36の溶液へ添加する。混合物を、70℃に加熱し、反応を完了させ、分析用クロマトグラフィー手順を使用し、反応の進行を確認する。4-イソチオシアナトベンゼンスルホンアミドの追加分が、反応を完了させるために必要な場合がある。一度完了したら、反応混合物を減圧下で濃縮し、残留物を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出する。
【0187】
ジチオール40の合成
【0188】
【化46】
ピラミン12およびメチル2-(トシルオキシ)-4-(トリチルチオ)ブタノエート(2等量)を、アセトニトリル中に溶解し、トリエチルアミン(2.2等量)を添加する。反応物を室温で継続して撹拌し、39への反応の進行を、分析用クロマトグラフィーを使用してモニタリングする。完了すると同時に、反応物を減圧下で濃縮し、得られた残留物を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出し、39を得る。保護された化合物39を2M HCl水溶液中に溶解し、それを窒素下で慎重に脱気してから使用する。反応物を、不活性雰囲気下で加熱し、メチルエステルの加水分解およびトリチルチオエーテルの開裂を促進する。この反応の進行を分析用クロマトグラフィーでモニタリングし、完了すると同時に、反応混合物のpHを、脱気した2M NaOH溶液を添加することによって7.4へ調整する。所望のpHに達成すると同時に、MnClxHO(約1.0等量)を反応混合物へ添加し、混合物を室温で撹拌する。追加のNaOH溶液を反応混合物へ添加し、反応混合物のpHを7.0から7.4の間で維持する。マンガン取込みの進行を分析用クロマトグラフィーでモニタリングし、完了時に、反応物のpHを、NaOH水溶液を添加することによって12へ調整する。反応混合物を室温で1時間継続して撹拌し、次いで反応混合物をろ過し、固形物を除去し、ろ液を収集し、そのpHを、脱気したHClの水溶液を添加することによって7.4へ調整する。所望の化合物40を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して更に精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出する。
【0189】
共役体41の合成
【0190】
【化47】
脱気したDMF中の、2-(イソシアナトメトキシ)酢酸(2等量)およびトリエチルアミン(2等量)の溶液を、脱気したDMF中の40の溶液へ添加する。反応混合物を室温で撹拌し、反応の進行を、分析用クロマトグラフィーを使用してモニタリングする。完了すると同時に、溶媒を減圧下で除去し、残留物を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出する。
【0191】
共役体42の合成
【0192】
【化48】
4-(2-イソチオシアナトエチル)モルホリン(2.1等量)を、水中の40の溶液へ添加する。溶液のpHを7.2へ調整し、混合物を反応させ、その進行を分析用クロマトグラフィーでモニタリングする。完了すると同時に、反応混合物を濃縮し、粗製残留物を得、それを、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して更に精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出し、表題化合物42を得る。
【0193】
41の代替合成
【0194】
【化49】
中間体39をジクロロメタン中に溶解し、トリフルオロ酢酸、トリイソプロピルシラン、および水(95:2.5:2.5v/v/v)の溶液へ添加する。反応混合物を室温で反応させ、反応の進行を分析用クロマトグラフィーでモニタリングする。完了時に、反応混合物を濃縮し、粗製残留物を得、それを、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して更に精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出し、表題化合物43を得る。脱気したDMF中の2-(イソシアナトメトキシ)酢酸(2等量)およびトリエチルアミン(2等量)の溶液を、脱気したDMF中の43の溶液へ添加する。反応混合物を室温で撹拌し、反応の進行を、分析用クロマトグラフィーを使用してモニタリングする。一度完了したら、溶媒を減圧下で除去し、残留物を水中の1M NaOHで処理する。分析用クロマトグラフィーを使用し、メチルエステルの加水分解をモニタリングする。完了時に、反応混合物のpHを、2M HCl水溶液を添加することによって7.4へ調整し、MnClxHO(約1.0等量)を反応混合物へ添加し、混合物を室温で撹拌する。追加のNaOH溶液を反応混合物へ添加し、反応混合物のpHを7.0から7.4の間で維持する。マンガン取込みの進行を分析用クロマトグラフィーでモニタリングし、完了すると同時に、反応物のpHを、NaOH水溶液を添加することによって12へ調整する。反応混合物を室温で1時間継続して撹拌し、次いで反応混合物をろ過し、固形物を除去し、ろ液を収集し、そのpHを、脱気したHClの水溶液を添加することによって7.4へ調整する。所望の化合物41を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して更に精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出する。
【0195】
42の代替合成
【0196】
【化50】
4-(2-イソチオシアナトエチル)モルホリン(2.1等量)を、水中の43の溶液へ添加する。溶液のpHを7.2へ調整し、混合物を反応させ、その進行を分析用クロマトグラフィーでモニタリングする。完了時に、反応混合物のpHを、2.0M NaOH水溶液を添加することによって13.5へ上昇させる。メチルエステルのけん化を分析用クロマトグラフィーでモニタリングする。一度完了したら、反応混合物のpHを2M HCl溶液を添加することによって7.4へ低下させ、MnClxHO(約1.0等量)を反応混合物へ添加し、混合物を室温で撹拌する。追加のNaOH溶液を反応混合物へ添加し、反応混合物のpHを7.0から7.4の間で維持する。マンガン取込みの進行を分析用クロマトグラフィーでモニタリングし、完了すると同時に、反応物のpHを、NaOH水溶液を添加することによって12へ調整する。反応混合物を室温で1時間継続して撹拌し、次いで反応混合物をろ過し、固形物を除去し、ろ液を収集し、そのpHを、脱気したHClの水溶液を添加することによって7.4へ調整する。所望の化合物41を、C-18官能化シリカゲル逆相クロマトグラフィーを使用して更に精製し、水-アセトニトリルまたは水-メタノール混合物で溶出する。
【0197】
51の合成
【0198】
【化51】
2-ブロモ-6-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)ヘキサン酸(44):N-ε-トリフルオロアセトアミド-L-リジン(25g、103.2mmol)および臭化ナトリウム(37.2g、361.2mmol)を、内部熱電対、機械撹拌機、および粉末漏斗を取り付けた500mLの三つ首ジャケット付反応容器へ添加した。その後固形物を、水69mLおよびHBr水溶液(20.9mL、8.9M)中へ溶解した。粉末漏斗を除去し、水16.5mL中へ予め溶解した亜硝酸ナトリウム(12.8g、185.8mmol)が充填され、窒素入口が取り付けられた添加漏斗を反応容器へ付加した。反応排気ガスを亜硫酸ナトリウム溶液に通してからドラフト中に排出した。反応混合物の内部温度を0℃未満に冷却し、次いで亜硝酸ナトリウム溶液を、内部反応温度が3℃を超えないような速度で反応混合物へ徐々に添加した。亜硝酸ナトリウムの添加が完了すると、反応混合物はほぼ無色であった。亜硝酸ナトリウム溶液を含んでいた添加漏斗を除去し、濃硫酸(5.5mL)を予め充填した第2の添加漏斗を反応容器へ付加した。硫酸を、内部反応温度が5℃を超えないような速度で反応混合物へ添加した。反応混合物が茶色へ変化し、この添加の間に臭素が発生した。硫酸を添加した後に、硫酸を含んでいた添加漏斗を、活性Nパージで置き換え、発生した臭素を反応混合物およびヘッドスペースから除去した。室温で20分間曝気した後、反応混合物はかなり軽くなった。活性Nパージを中止し、反応混合物をメチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)80mLに対して分割した。混合物を5分間急速に撹拌し、次いで相を分離した。黄色-茶色の有機層を収集し、水性層を追加分のMTBE70mLで2回抽出した。合わせた有機層を、ほぼ無色になるまでNaSO溶液の数回に分けた部分で洗浄し、次いでその後、ブライン(100mL)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、ろ過し、減圧下で濃縮し、淡黄色油状物を得た。単離した材料を高真空下で一晩乾燥し、その後サンプルに分析特性評価を行った(UPLC-MSによって80%超が44(m/z306)へ変換されたことが実証された)。単離した材料28.1gを秤量し、その後残留物を、追加の精製を行わずに次のステップで使用した。
【0199】
メチル2-ブロモ-6-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)ヘキサノエート(45):化合物44(28.1g)をメタノール(350mL)中へ溶解し、p-トルエンスルホン酸(0.35g、1.8mmol)を添加した。混合物を窒素下、65℃で一晩加熱した。この後、加熱を中止し、反応混合物を室温へ冷却した。反応混合物を減圧下で濃縮し、黄色油状物を得、その後それをシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(330gカラム、200mL/分、ヘキサン中の酢酸エチルの混合物を用いて溶出)で精製した。勾配プログラムは以下のとおりであった:初期条件はヘキサン中の5%酢酸エチルであり、1カラム容積の間、ヘキサン中の5%酢酸エチルを保持し、次いで12カラム容積にわたって、ヘキサン中の50%酢酸エチルまで直線勾配を達成し、最後に更に2カラム体積の間、ヘキサン中の50%酢酸エチルを保持する。カラム溶出液を、230nmおよび254nmのUVでならびに気化光散乱でモニタリングした。所望の生成物をカラムより6.4から9カラム体積の間で溶出した。単離した生成物は無色油状物20.3g、63mmol)であった。
【0200】
【数1】
【0201】
、ESI-MS322、320m/z;H NMR(CDCN、599.79MHz)δ7.58(br.s.,1H)、δ4.35(t.,1H)、δ3.73(s.,3H)、δ3.25(dd.,2H)、δ2.08-2.02(m.,1H)、δ1.99-1.93(m.,1H)、δ1.61-1.53(m.,2H)、δ1.51-1.44(m.,1H)、δ1.40-1.33(m.,1H);13C NMR(CDCN、150.83MHz)δ171.18、157.83(q.,J=37.0Hz)、117.17(q.,J=286.7Hz)、53.57、46.94、40.03、35.09、28.59、および25.01;19F NMR(CDCN、564.32MHz)δ-76.67。
【0202】
【化52】
【0203】
化合物(47) メチルピラミン46(5g、21.7mmol)を含む100mLのフラスコへ、無水MeCN45mL、続いてジイソプロピルエチルアミン9.3mL(52.1mmol)を添加した。5分間撹拌した後、45(15.3g、74.8mmol)を反応混合物へ添加した。反応容器を油浴に入れ、65℃を18時間維持した。この後、追加のジイソプロピルエチルアミン1.9mL(10.8mmol)および45 3g(9.4mmol)を、反応混合物へ添加した。反応物を65℃の油浴で更に24時間継続して撹拌した。割り当てられた時間の後に、反応混合物を室温へ冷却し、その後反応混合物を減圧下で濃縮し、赤色油状残留物を得た。単離した残留物を酢酸エチルと水との間で分割し、相を分離した。有機層を追加分の水で2回洗浄し、次いで合わせた水性洗浄物を、追加分の酢酸エチルで2回逆抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥し(NaSO)、ろ過し、減圧下で濃縮し、赤色油状物を得、それを真空下で発砲させた。単離した油状物を、40mLのジエチルエーテルで10分間、室温で2回摩砕し、次いでエーテル層をデカントし、廃棄した。残留物を(60℃の水浴中で10分間加熱した)水50mLで洗浄した。水懸濁液を35℃未満へ冷却し、次いで混合物をジエチルエーテルの15mLの部分で2回抽出した。エーテル抽出物を廃棄した。水性層を等量のブラインで希釈し、酢酸エチルで完全に抽出した(抽出は、HPLCによって水性層中の残留生成物がわずかになるまで、または全く無くなるまで継続した)(5×30mL)。合わせた酢酸エチル抽出物を乾燥し(NaSO)、ろ過し、減圧下で濃縮し、ほぼ無色の泡状物14.3g(20.5mmol、94%)を得た。ESI-MS699.70(m/z)。
【0204】
化合物(48) 磁気撹拌子を取り付けた50mLの丸底フラスコへ、47(2.018g、2.89mmol)およびHO(9mL)を添加した。KOH(1.302g、23.2mmol)を添加し、得られた溶液を室温で1.5時間撹拌した。HPLC-MS分析によって、反応が完了したことが示される(ESI-MS:479(M+H)(m/z))。反応溶液のpHを、濃HClを用いて10.1へ調整し、更に精製せずに使用した。
【0205】
化合物(49) MnCl・4HO(0.638g、3.22mmol)を、化合物5の合成で記載したpH10.1の溶液へ添加し、pHを5.8へ低下させ、3.4M KOH水溶液を用いて7.0へ調整した。次いで得られた溶液を90℃で3時間加熱してから、室温へ冷却した。次いでpHを、KOHを用いて10.0へ高め、得られた混濁茶色溶液を室温で14.5時間撹拌した。0.45μmPTFEフィルターに通してろ過し、わずかに混濁したろ液を得、それを真空中で濃縮乾固した。得られた茶色残留物をMeOH(10mL)で摩砕し、透明茶色溶液中の白色固形物を得た。固形物を0.45μmPTFEフィルターに通してろ過することによって除去し、透明茶色ろ液を真空中で濃縮乾固した。得られた茶色残留物をHO(5mL)中へ溶解し、C18シリカ(水中の5%AcN~水中の10%AcN)で精製し、所望の生成物1.41g(92%)を淡黄色固形物として得た。ESI-MS:532(M+H)(m/z)。
【0206】
化合物(51) 50の20wt%水溶液(1.651mL、3.11mmol)を、磁気撹拌子およびpHプローブを取り付けた25mLの二つ首フラスコへ添加した。グリセリン酸溶液のpHを3.4M KOHを用いて2.2~7.2へ調整した。49(0.701g、1.38mmol)、続いてEDCI-HCl(0.634g、3.31mmol)およびヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(0.028g、0.183mmol)を添加した。得られた溶液のpHを、必要に応じて6M HClおよび/または3.4M KOHを追加し、同時に室温で4.5時間攪拌しながら6から7の間で維持した。EDCI-HCl(0.530g、2.76mmol)を添加し、得られた溶液を室温で更に15.5時間撹拌した。全ての溶媒を真空中で除去し、ゴールデンイエロー色油状物を得、それをC18シリカ(水中の2%AcN~水中の20%AcN)で精製し、所望の生成物0.31g(32%)をオフホワイト色固形物として得た。ESI-MS:708(M+H)(m/z)。

本発明は下記の態様も含む。
[1]
式I:
【化101】

(式中:
XはOまたはSであり;
YはO、SまたはQ-Rであり、QはNまたはCHであり、RはC1~20ヒドロキシアルキル、C1~6アルキルまたは水素を含む群から選択され;
ZはO-L-R、S-L-RまたはQ (L-R)であり、QおよびRは、Yに関して定義されるとおりであり、LはC1~6アルキレン、C1~6ヒドロキシアルキレンおよびPEGリンカーを含む群から選択される任意選択のリンカーであり、RはC1~6アルキル-R、C3~6アリール-R、ヒドロキシ、-O-C1~3アルキル-R、スルホニル、5~6員複素環、炭水化物部分、キレート部分、アミノ酸部分を含む群から選択され、Rはヒドロキシ、アミノ、オキソ、ハロ、C1~3アルキル、スルホンアミドまたは-C(=O)-NH-C1~6ヒドロキシアルキルから選択される1つまたは複数の任意選択の置換基を表し;またはZ自体が、炭水化物部分または5~6員複素環の一部を形成し;
はC1~3アルキルまたは-(CH-Y-C(=X)-Zであり、X、YおよびZは、X、YおよびZに関して定義されるとおりであり、mは2~5の整数であり;
はヒドロキシ、ハロ、アミノ、アミド、C1~6アルキルおよびC1~6ヒドロキシアルキルを含む群から独立して選択される0~3個の置換基を表し;
各nは0~15の整数であり;
式Iの化合物は、少なくとも2つのヒドロキシ基を含み;
ただし、YはQ-R (ここでQはCHである)である場合、ZはQ (L-R(ここでQはNである)ではない
の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物。
[2]
XがOであり、YがQ-R (ここでQはNである)であり、ZがQ (L-R(ここでQはNである)である、[1]に記載の化合物。
[3]
XがSであり、YがQ-R (ここでQはNである)であり、ZがQ (L-R(ここでQはNである)である、[1]に記載の化合物。
[4]
XがOであり、YがOであるか、ZがO-L-Rであるかのいずれかであり、YがOではない場合、YはQ-R (ここでQはNである)であり、ZがO-L-Rではない場合、ZはQ (L-R(ここでQはNである)である、[1]に記載の化合物。
[5]
XがSであり、YがOであるか、ZがO-L-Rであるかのいずれかであり、YがOではない場合、YはQ-R (ここでQはNである)であり、ZがO-L-R ではない場合、ZはQ (L-R(ここでQはNである)である、[1]に記載の化合物。
[6]
XがOであり、YがQ-R (ここでQはNである)であり、ZがQ (L-R(ここでQはCHである)である、[1]に記載の化合物。
[7]
XがOであり、YがOであるか、ZがO-L-Rであるかのいずれかであり、YがOではない場合、YはQ-R (ここでQはCHである)であり、ZがO-L-R ではない場合、ZはQ-R-(L-R(ここでQはCHである)である、[1]に記載の化合物。
[8]
各-L-Rが、C1~12ヒドロキシアルキルである、[1]から[7]のいずれかに記載の化合物。
[9]
各-L-Rが、C3~6ヒドロキシアルキルである、[1]から[8]のいずれかに記載の化合物。
[10]
各-L-Rが、Cヒドロキシアルキルである、[1]から[9]のいずれかに記載の化合物。
[11]
各-L-Rが、
【化102】

(式中、いずれの場合も、アスタリスクは、前記式Iの化合物の残りの部分への結合点を示す)
を含む群から独立して選択される、[1]から[]のいずれかに記載の化合物。
[12]
各Rが、
【化103】

(式中、いずれの場合も、アスタリスクは、前記式Iの化合物の残りの部分への結合点を示す)
を含む群から独立して選択される、[1]から[7]のいずれかに記載の化合物。
[13]
各Rが、C3~6アリール-Rであり、Rはハロおよび-C(=O)-NH-C1~6ヒドロキシアルキルから選択される、[1]から[7]のいずれかに記載の化合物。
[14]
前記ハロが、ヨードである、[13]に記載の化合物。
[15]
前記C3~6アリールが、フェニルである、[13]または[14]に記載の化合物。
[16]
各Rが、三ヨウ素化フェニルである、[13]から[15]のいずれかに記載の化合物。
[17]
各Rが、
【化104】

(式中、アスタリスクは、前記式Iの化合物の残りの部分への結合点を示す)
である、[13]から[16]のいずれかに記載の化合物。
[18]
各Rが、同じである、[1]から[17]のいずれかに記載の化合物。
[19]
各Rが、C1~3アルキルまたは水素を含む群から独立して選択される、[1]から[18]のいずれかに記載の化合物。
[20]
各Rが、C1~3アルキルである、[19]に記載の化合物。
[21]
各Rが、メチルである、[20]に記載の化合物。
[22]
各Rが、水素である、[19]に記載の化合物。
[23]
各Rが、同じである、[1]から[22]のいずれかに記載の化合物。
[24]
各nが、1~6の整数である、[1]から[23]のいずれかに記載の化合物。
[25]
各nが、2である、[22]に記載の化合物。
[26]
mが、3である、[1]から[25]のいずれかに記載の化合物。
[27]
が、C1~3アルキルである、[1]から[26]のいずれかに記載の化合物。
[28]
が、メチル基である、[1]から[27]のいずれかに記載の化合物。
[29]
が、-(CH-Y-C(=X)-Zであり、X、Y、Zおよびmは、[1から26のいずれかに記載のとおりである、[1]から[26]のいずれかに記載の化合物。
[30]
が、0個の置換基を表す、[1]から[29]のいずれかに記載の化合物。
[31]
が、2個のヒドロキシ基を表す、[1]から[29]のいずれかに記載の化合物。
[32]
前記ヒドロキシ基がピリジル環のメタ位にある、[31]に記載の化合物。
[33]
少なくとも4個のヒドロキシ基を含む、[1]から[32]のいずれかに記載の化合物。
[34]
4~15個のヒドロキシ基を含む、[33]に記載の化合物。
[35]
5~10個のヒドロキシ基を含む、[34]に記載の化合物。
[36]
前記Mnが、52Mnおよび54Mnを含む群から選択されるMnの濃縮同位体である、[1]から[34]のいずれかに記載の化合物。
[37]
以下の化合物から選択される、[1]に記載の化合物。
【化105-1】

【化105-2-1】

【化105-3】

【化105-4】

【化105-5】

【化105-6】

【化105-7】

[38]
ラセミ混合物か、ジアステレオ純粋かのいずれかである、[1]から[37]のいずれかに記載の式Iの化合物。
[39]
[1]から[38]のいずれかに記載の式Iの化合物を、生体適合性担体とともに、哺乳動物への投与に好適な形態で含む医薬組成物。
[40]
1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を更に含む、[39]に記載の医薬組成物。
[41]
前記薬学的に許容される賦形剤が、緩衝剤、安定化剤、抗酸化剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、過剰ケランド、および生理学的に耐容可能なイオンの弱い錯体から選択される、[40]に記載の医薬組成物。
[42]
(i)[1]から[38]のいずれかに記載の式Iの化合物または[39]から[41]のいずれかに記載の医薬組成物を対象に投与すること;
(ii)前記化合物が分布した前記対象または前記対象の一部から磁気共鳴(MR)シグナルを検出すること;
(iii)前記検出されたシグナルからMR画像および/またはMRスペクトルを作成すること
を含む方法。
[43]
[42]に記載の方法において使用するための、[1]から[38]のいずれかに記載の式Iの化合物。