(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-07
(45)【発行日】2023-04-17
(54)【発明の名称】エアロゾル送達装置
(51)【国際特許分類】
A61M 11/00 20060101AFI20230410BHJP
【FI】
A61M11/00 300A
(21)【出願番号】P 2019552612
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(86)【国際出願番号】 EP2018057559
(87)【国際公開番号】W WO2018172561
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-02-03
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513164163
【氏名又は名称】スタムフォード・ディバイセズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】マクローリン、ローナン
(72)【発明者】
【氏名】スウィーニー、ルイーズ
(72)【発明者】
【氏名】ダフィ、エイダン
(72)【発明者】
【氏名】ポーター、ショーン
(72)【発明者】
【氏名】フィンク、ジム
(72)【発明者】
【氏名】リリス、クレア
(72)【発明者】
【氏名】ダフィ、コナー
(72)【発明者】
【氏名】キーティング、フラン
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06769626(US,B1)
【文献】特開平05-329411(JP,A)
【文献】特表2013-511382(JP,A)
【文献】特表2003-520079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル送達システムであって、
エアロゾル発生器を備え、前記エアロゾル発生器は、
ハウジング入口およびハウジング出口を有するチャンバを画定するハウジングと、
前記ハウジングに動作可能に連結され、開口部を画定する支持板と、
前記開口部を横断して配置されるように、前記支持板に動作可能に連結された振動可能な部材と、
前記支持板に連結された圧電アクチュエータであって、前記圧電アクチュエータは、伸縮して、流体をエアロゾル化する前記振動可能な部材を振動させる、前記圧電アクチュエータと、
前記ハウジングと前記支持板との間をシールする第1のシールと、
前記ハウジングと前記支持板との間をシールする第2のシールと、
ここで、前記第1および第2のシールは、前記支持板の両側に対してシールし、
前記第1および第2のシールは、前記チャンバと前記圧電アクチュエータとの間の流体密接シールを形成しており、
前記振動可能な部材に流体を送達するように構成されるように前記振動可能な部材から離間した遠位端を有する流体導管であって、前記流体導管の遠位端は、前記振動可能な部材の振動によって流体がエアロゾル化されるまで、前記ハウジングの向きに関係なく、表面張力を使用して、送達された流体の実質的にすべてが前記振動可能な部材に付着することを可能にするように前記振動可能な部材から1.0mmから0.001mmの距離に配置されている、前記流体導管とを含み、
前記流体導管が、前記ハウジング入口を通過し、前記チャンバ内にあるコネクタ導管を含み、
前記流体導管が、流体を前記振動可能な部材に供給するのに使用可能な前記ハウジング内の複数の流体導管のうちの1つを含み、
前記複数の流体導管は、前
記コネクタ導管の一部を収容し、かつユーザが前記コネクタ導管により前記距離を変更できるようにする異なる深さの座ぐり穴を有する、エアロゾル送達システム。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記チャンバに流体的に連結された通気孔を画定し、前記通気孔は、前記ハウジングからガス、液体、および泡沫のうちの少なくとも1つを通気するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記流体導管が流体源と連結する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ハウジングは、互いに連結する第1の部分と第2の部分とを備え、前記第1の部分は前記ハウジング入口を形成し、前記第2の部分は前記ハウジング出口を形成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記振動可能な部材および前記支持板が一体である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記流体導管を介した前記振動可能な部材への流体の送達を制御するように構成されたコントローラを備える、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
この欄は、本発明の様々な態様に関連する可能性のある技術の様々な態様を読者に紹介することを意図しており、それらは以下に説明および/または特許請求される。この説明は、本発明の様々な態様のより良い理解を促進するための背景情報を読者に提供するのに役立つと考えられる。従って、これらの記載はこの観点で読まれるべきであり、先行技術の承認として読まれるべきではないことを理解すべきである。
【0002】
患者の正常な呼吸能力に影響を及ぼす可能性のある呼吸器疾患には、多くの種類がある。これらの疾患は、風邪から嚢胞性線維症までさまざまである。現代医学は、経口薬、吸入器、ネブライザーなどを含むさまざまな方法でこれらの疾患を治療する。ネブライザーは、流体(即ち、薬剤)を、呼吸を介して患者に送達するためのエアロゾルに変える装置である。患者は、口、鼻、および/または気管切開(即ち、喉に外科的に作られた切開)を介してエアロゾルを受け取り得る。しかしながら、ネブライザーは、エアロゾルの液滴が大きい、および/またはエアロゾルの形成が患者の呼吸サイクルと適切にタイミングが合わない場合、呼吸器疾患を効果的に治療できない場合がある。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの実施形態では、エアロゾル送達システムは、患者に送達するための流体をエアロゾル化するエアロゾル発生器を含む。エアロゾル発生器は、ハウジング入口およびハウジング出口と流体連通する流体チャンバを有するハウジングを含む。エアロゾル発生器は、開口部を有する支持板を含む。振動可能な部材は、開口部を横断して配置されるように支持板と連結する。圧電アクチュエータも支持板と連結し、動作中に伸縮して、振動可能な部材を振動させ、これにより流体がエアロゾル化される。このようにして、流体が振動可能な部材の表面に供給されると、流体はエアロゾルに変わり、ハウジング出口を介した送達用に利用可能となる。エアロゾル発生器は、ハウジングと連結する流体導管を介して流体を受け取る。
【0004】
流体が流体送達導管から流出するときに、流体を振動可能な部材に(例えば、表面張力により)引き付ける(attract)距離で、流体導管は、振動可能な部材から離れている。従って、流体送達導管は、エアロゾル発生器の任意の方向または実質的にすべての方向において流体を振動可能な部材に移送することができる。距離は、振動可能な部材が流体送達導管から未分配流体を引き込む/除去する能力をブロックまたは低減するように調整することもできる(例えば、振動可能な部材が振動する際の、流体送達導管の端部と振動可能な部材との間の距離を変化させる)。距離は、振動可能な部材上の流体の拡散を制御するために調整され得る。例えば、流体送達導管が振動可能な部材により近いほど、振動可能な部材、流体、および流体送達導管の間の相互作用により、流体が拡散する能力が低下し得る。以下でさらに詳細に説明するように、流体がより大きな表面積に拡散すると、振動可能な部材のより多くの開口部が流体に晒されて、エアロゾルの特性を変化させ得る。
【0005】
別の実施形態では、エアロゾル送達システムは、患者に送達するための流体をエアロゾル化するエアロゾル発生器を含む。エアロゾル発生器は、ハウジング入口およびハウジング出口と流体連通する流体チャンバを有するハウジングを含む。エアロゾル発生器は、開口部を有する支持板を含む。振動可能な部材は、開口部を横断して配置されるように支持板と連結する。圧電アクチュエータも支持板と連結し、動作中に伸縮して、振動可能な部材を振動させ、これにより流体がエアロゾル化される。このようにして、流体が振動可能な部材の表面に供給されると、流体は、エアロゾルに変わり、ハウジングの出口を介した送達用に利用可能となる。エアロゾル発生器は、振動可能な部材に流体を送達する複数の導管を通して流体を受け取る。
【0006】
複数の導管は、振動可能な部材の表面上への流体の迅速な分配を可能にするとともに、振動可能な部材の表面上への液体の制御された分配を可能にし得る(例えば、振動可能な部材のいくつかの部分は、他の部分よりも多くの流体を受け取り得る)。複数の導管は、ハウジング内に延在し、かつ振動可能な部材が複数の導管から流出する流体を(例えば、表面張力によって)確実に引き付ける、振動可能な部材からの距離にある。このようにして、流体は、任意の方向または実質的にすべての方向において振動可能な部材に移送することができる。距離は、振動可能な部材が複数の導管から未分配流体を引き込む/除去する能力をブロックまたは低減するように調整することもできる(例えば、振動可能な部材が振動する際の、複数の導管の端部/出口と振動可能な部材との間の距離を変化させる)。換言すれば、距離は、エアロゾル化のための正確な流体放出を可能にし得る。距離はまた、振動可能な部材上の流体の拡散を制御するために調整され得る。例えば、複数の導管が振動可能な部材により近いほど、振動可能な部材、流体、および複数の導管間の摩擦(friction)により、流体が拡散する能力が低下し得る。いくつかの実施形態では、複数の導管のうちの1つまたは複数は、振動可能な部材から異なる距離に配置されてもよく、かつ/または異なるサイズを有してもよい。従って、複数の導管のいくつかは、振動可能な部材の一部上への流体のより迅速な拡散を可能にし、他の導管は、振動可能な部材の他の部分上への流体の拡散を低減し得る。
【0007】
本開示の一態様は、流体をエアロゾル化する方法を含む。方法は、流体が表面張力によって表面に付着するように、エアロゾル発生器内の振動可能な部材の表面にある量の流体を供給するステップを含む。方法は、圧電アクチュエータにより振動可能な部材を振動させることにより、流体をエアロゾルに変換する。振動可能な部材の表面に付着するある量の液体を供給することにより、表面に保管されるべき液体のリザーバは必要とされない。このようにして、エアロゾル発生器は任意の位置に移動することができ、それでも液体をエアロゾル化することができる。さらに、液体はオンデマンドで供給およびエアロゾル化されるため、高価な薬剤の損失を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の様々な特徴、態様、および利点は、図中、同様の文字は同様の構成部材を表す添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことで、よりよく理解されるであろう。
【
図1】呼吸システム(respiratory system)に接続されたエアロゾル送達システムの実施形態の概略図である。
【
図2】エアロゾル発生器の実施形態の斜視図である。
【
図3】エアロゾル発生器の実施形態の断面図である。
【
図4】振動可能な部材の実施形態の部分上面図である。
【
図5】
図3の5-5線内の振動可能な部材の実施形態の部分断面図である。
【
図6】振動可能な部材によって流体をエアロゾル化するエアロゾル発生器の実施形態の断面図である。
【
図7】振動可能な部材によって流体をエアロゾル化するエアロゾル発生器の実施形態の断面図である。
【
図8】エアロゾル発生器の実施形態の斜視図である。
【
図9】エアロゾル発生器の実施形態の断面図である。
【
図10】
図9の10-10線に沿ったエアロゾル発生器の実施形態の断面図である。
【
図11】
図9の10-10線に沿ったエアロゾル発生器の実施形態の断面図である。
【
図12】
図9の10-10線に沿ったエアロゾル発生器の一実施形態の断面図である。
【
図13】
図9の13-13線内の二次導管の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の1つまたは複数の特定の実施形態を以下に説明する。これらの実施形態は、本発明の例示にすぎない。さらに、これらの例示的な実施形態の簡潔な説明を提供するために、実際の実施のすべての特徴が本明細書に記載されていないことがあり得る。そのような実際の実施の開発では、エンジニアリングまたは設計プロジェクトのように、実施ごとに異なることがあり得るシステム関連およびビジネス関連の制約への準拠など、開発者の特定の目標を達成するために、多くの実施固有の決定を行う必要があることを理解する必要がある。さらに、そのような開発努力は、複雑で時間がかかるかもしれないが、それにもかかわらず、本開示の利益を有する当業者のための設計、製作、および製造の日常的な作業であることを理解されたい。
【0010】
以下に説明する実施形態は、吸入可能な薬剤の生成および送達のタイミングをとるために、患者による吸入を予測することができるエアロゾル送達システムを含む。例えば、エアロゾル送達システムは、吸入前に薬剤をエアロゾル化できるように吸入を予測し得る。吸入前に薬剤をエアロゾル化することにより、エアロゾル送達システムは、呼吸ごとに患者に送達される薬剤の量を増加させ、薬剤の有効性を高め、かつ/または患者の肺内のより広い領域(例えば、肺の奥深く)に薬剤を送達し得る。エアロゾル送達システムは、1つまたは複数の呼吸センサを使用して、患者による吸入を検出する。これらの呼吸センサは、強制、補助、自発を含むすべての換気モードで吸入を検出し得る。例えば、エアロゾル送達システムは、流量センサを呼吸センサとして使用して、患者による吸入を検出し得る。以下に説明するように、吸入の開始および停止を検出するには、流量センサの方が圧力センサよりも効果的である。
【0011】
エアロゾル送達システムは、1ミクロン以下の体積メジアン径(VMD:volume median diameter)を有する液滴/粒子で80%を超える微粒子画分(FPF:fine particle fractions)を生成することができるエアロゾル発生器により送達効率を高めることもできる。換言すれば、エアロゾル発生器は、搬送流体(例えば、空気、酸素、酸素/空気混合物など)に容易に浮遊して搬送される非常に細かいエアロゾルを生成することができる。最後に、以下に説明するエアロゾル送達システムは、既存の呼吸システムを再設計または再構成することなく、それらのシステムと連結することができる。これにより、エアロゾル送達システムを既存の人工呼吸器(ventilators)、加湿器、持続的気道陽圧(CPAPcontinuous positive airway pressure)マシンなどで使用できる。
【0012】
以下で詳細に説明するように、エアロゾル送達システムは、振動可能な部材の背面に付着する流体の供給を受けるエアロゾル発生器を含むため、背面に保管されるべき液体のリザーバは必要とされない。このようにして、エアロゾル発生器は任意の位置に移動でき、それでも流体をエアロゾル化することができる。さらに、流体はオンデマンドで供給およびエアロゾル化されるため、高価な薬剤の損失を最小限に抑えることができる。
【0013】
流体は、1つまたは複数の流体導管から供給される。1つまたは複数の導管は、エアロゾル発生器のハウジング内に延在し、振動可能な部材が複数の導管から流出する流体を(例えば、表面張力によって)確実に引き付ける、振動可能な部材からの距離を置いて配置される。このようにして、流体は、任意の方向または実質的にすべての方向において振動可能な部材に移送することができる。また、距離は、振動可能な部材が導管(単数または複数)から未分配流体を引き込む/除去する能力をブロックまたは低減するように調整され得る。距離はまた、振動可能な部材上の流体の拡散を制御するために調整され得る。例えば、導管(単数または複数)が振動可能な部材により近いほど、振動可能な部材、流体、および導管(単数または複数)間の摩擦により、流体が拡散する能力が低下し得る。
【0014】
振動可能な部材は、異なる特性(例えば、VMD、プルーム(plume)速度、プルーム密度、平均流量、方向など)を有するエアロゾルを生成するようにカスタマイズし得る。例えば、異なる振動可能な部材は、開口部のサイズ、数、位置などが異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、カスタマイズにより、振動可能な部材上の異なる位置で異なるエアロゾルを生成することが可能となり得る。即ち、同じ振動可能な部材の複数の部分は、開口部の数およびサイズが異なり、振動可能な部材の異なる部分が異なるサイズ、密度などのエアロゾルを生成し得る。振動可能な部材をカスタマイズすることができることにより、異なる流体、異なる治療、異なる用途などに対するエアロゾル生成が可能となる。
【0015】
図1は、呼吸システム12に接続されたエアロゾル送達システム10の実施形態の概略図である。
図1において、呼吸システム12は、空気(例えば、空気、酸素、空気/酸素混合物など)を患者に送り込み、かつ患者から空気を引き戻すことができる人工呼吸器14を含む。以下に詳細に説明するように、エアロゾル送達システム10は、様々な既存の呼吸システム12に接続して、患者治療用のエアロゾル化流体(例えば、薬剤)を提供することができる。即ち、エアロゾル送達システム10は、エアロゾル送達システム10とともに機能するように既存の呼吸システム12を再設計または再構成することなく、呼吸システム12(例えば、人工呼吸器、加湿器、持続的気道陽圧(CPAP)マシン、またはそれらの組み合わせ)に後付けすることができる。
【0016】
エアロゾル送達システム10は、気管内チューブ18、鼻カニューレ/マスク、気管切開チューブなどの様々な気流装置に連結することができるエアロゾル発生器16を含む。エアロゾル発生器16は、流体送達導管22を介して流体源20から流体を受け取る。流体源20(例えば、容器、バイアル)は、薬剤、界面活性剤、それらの組み合わせなどを含むさまざまな物質を含み得る。動作中、流体源20からの流体は、流体送達導管22を介してエアロゾル発生器16にポンプ24で圧送され、エアロゾル発生器16で、患者が吸入する前および/またはその間に流体がエアロゾル化される。いくつかの実施形態では、流体送達導管22は、迅速な送達(例えば、エアロゾル発生器16内の流体の事前充填)を確実にするために、治療前に流体で準備され(primed)得る。ポンプ24は、流体の送達時間および投与量を測定するコントローラ26によって制御される。
【0017】
コントローラ26は、1つまたは複数のメモリ30に格納された命令を実行して、ポンプ24およびエアロゾル発生器16の動作を駆動する1つまたは複数のプロセッサ28を含む。例えば、メモリ30は、特定の期間または特定の複数の期間に圧送される流体の量など、エアロゾル発生器16の各作動に対する各用量でエアロゾル発生器16にポンプで圧送される流体の量を示す命令を含み得る。格納された命令は、患者のサイズ、患者の年齢、患者の性別、薬剤の種類、液体添加物、エアロゾルの所望量などに基づき得る。メモリ30は、エアロゾル発生器16を作動させるための命令も含む。図示されるように、コントローラ26は、ケーブル32(即ち、電気ケーブル)により、かつ/または無線接続を使用してエアロゾル発生器16と接続している。ケーブル32は、エアロゾル発生器16内の圧電(または他の)アクチュエータを作動させる信号を搬送する。圧電アクチュエータが動作すると、圧電アクチュエータは振動可能な部材を振動させて、患者に送達するための(即ち、吸入を介する)流体をエアロゾル化する。従って、メモリは、圧電アクチュエータの起動、停止、振動周波数または複数の振動周波数などを制御するための命令を含み得る。
【0018】
エアロゾル送達システム10は、エアロゾルの生成のタイミングをとることにより治療の有効性を高める。例えば、エアロゾル送達システム10は、患者が吸入する前に薬剤のエアロゾル化を開始し得る。このようにして、エアロゾル送達システム10は、吸入の開始時に増加した気流を活用する。これにより、吸入された空気が患者の肺に薬剤をさらに搬送するため、患者への薬剤の送達が増加する。エアロゾル送達システム10はまた、(例えば、自発呼吸のために)吸入が検出されるとすぐに薬剤をエアロゾル化し得る。
【0019】
エアロゾル送達システム10は、患者が吸入する時期および吸入する期間を決定するための1つまたは複数の呼吸センサ34を使用して薬剤の送達を調整する。呼吸センサ34は、流量センサ36(例えば、電気流量センサ)、レーダーセンサ38(例えば、胸部変位を測定するためのUWBレーダーセンサ)、二酸化炭素センサ、高速温度センサ40、音響センサ40、インピーダンスプレチスモグラフィー(plethysmography)センサ40、呼吸インダクタンスプレチスモグラフィーセンサ、圧力センサなどを含み得る。これらの呼吸センサ34は、有線接続および/または無線接続を介してコントローラ26と通信し得る。いくつかの実施形態では、エアロゾル送達システム10は、呼吸センサ34(例えば、1、2、3、4、5)の組み合わせを使用して、冗長性および/または患者の呼吸サイクルのより正確な監視を提供し得る。例えば、エアロゾル送達システム10は、流量センサ36をレーダーセンサ38と組み合わせて使用して、気流および胸部の動きの両方を監視し得る。別の実施形態では、エアロゾル送達システム10は、流量センサ36、レーダーセンサ38、およびプレチスモグラフィーセンサ40を使用して呼吸サイクルを監視し得る。
【0020】
図示されるように、流量センサ36は、ガス送達導管42と連結して、吸入中の気流の変化(例えば、強制呼吸、補助呼吸、または自発呼吸)を検知する。いくつかの実施形態では、流量センサ36はまた、ガス戻り導管44と連結して吐き出しの開始および終了を検出し得る。そして、さらに他の実施形態では、エアロゾル送達システム10は、ガス送達導管42およびガス戻り導管44と連結する流量センサ36を含み得る。コントローラ26が流量センサ(単数または複数)36からデータを受信すると、コントローラ26は呼吸パターンを監視して、患者が呼吸する時期を予測し得る。吸入が開始する時期を予測することができることにより、エアロゾル送達システム10は、即時吸入用のエアロゾル化薬剤を調製することが可能となる。より具体的には、エアロゾル送達システム10は、吸入前に流体をエアロゾル化できるように、エアロゾル発生器16内の振動可能な部材に流体を事前充填することができる。流量検出は遅行指標(lagging indicator)ではないため、流量センサ36は、エアロゾル送達のための異常なまたは自発的な吸入を迅速に(例えば、吸入の開始から10ミリ秒未満に)検出することができる。
【0021】
患者の吸入の予測は、1つまたは複数の呼吸センサおよび/または流量センサ36を使用して、患者の呼吸パターンおよび/または換気サイクル(患者が強制換気されている場合)を追跡することから開始し得る。次に、コントローラ26は、追跡されたデータを使用して、後続の吸入が開始する時期を予測する。これにより、コントローラ26は、吸入の前に流体源20からエアロゾル発生器16に流体を送達するようにポンプ24に指示することができる。また、コントローラ26は、エアロゾル発生器16に信号を送信して、予測された吸入の前および/またはその間の所定の期間内(例えば、+/-0.5秒)などの適切な時間に流体のエアロゾル化を開始し得る。このようにして、エアロゾルが吸入の開始時に患者用に準備される。エアロゾル送達システム10は、呼吸サイクルを予測して患者用のエアロゾルを生成することができるが、エアロゾル送達システム10は、呼吸センサ34を使用して、正常なパターンの一部ではない自発呼吸/不規則な呼吸を認識することもできる。自発呼吸が認識されると、エアロゾル送達システム10は、患者への送達のために流体をエアロゾル発生器16に直ちに圧送し得る。
【0022】
(例えば、人工呼吸器14を使用して)患者が強制的に換気されている場合、または補助換気を受けている場合、流量センサ36は、人工呼吸器14が空気を患者に送り込むことと患者から空気を引き出すこととを交互に行う際の流れの変化を検出することができる。コントローラ26は、これらの流れの変化を監視し、その後、上述したように薬剤のエアロゾル化を開始する時期を算出する。このようにして、エアロゾル送達システム10は、システムを一緒にプログラムまたは接続することなく、既存の呼吸システム12に統合することができる。換言すれば、エアロゾル送達システム10および呼吸システム12は、エアロゾル化の生成および患者への送達を調整/測定するために互いに通信する必要がない。
【0023】
流量センサ36は、患者が吸入を開始した時期を検出する圧力センサよりも能力があることに留意されたい。圧力センサは、空気回路を構築するのに時間がかかるため、遅行指標または遅延指標(delayed indicator)を提供する。従って、圧力センサは、呼吸が終了した後、またはほぼ終了した後に吸入を検出する。また、圧力センサは持続的な吸気休止(即ち、患者が吸入と吐き出しとの間に休止するときのプラトー圧)を必要とするため、圧力センサは吸入が完了する時期を判断するのに効果的ではない。さらに、空気回路の漏れおよび/またはチューブのねじれが発生すると、圧力センサの精度が大幅に低下する。最後に、人工呼吸が正圧を生成し、自発呼吸が空気回路において負圧を生成するため、圧力センサを使用するシステムは、強制呼吸、補助呼吸、および自発呼吸の状況で動作するために堅牢な適応制御アルゴリズムを必要とする。しかしながら、状況によっては、エアロゾルの生成と送達のタイミングがそれほど厳しくない場合、圧力センサがエアロゾル送達システム10で使用され得る。
【0024】
図2は、エアロゾル発生器16の実施形態の斜視図である。上記で説明したように、流体源20(
図1で確認される)は、流体送達導管22によりエアロゾル発生器16と流体的に連結している。流体送達導管22は、エアロゾル発生器16のハウジング62内の流体入口60と連結する。動作中、流体源20からの流体は、流体入口60を介してエアロゾル発生器16に圧送され、エアロゾル発生器16において流体がエアロゾル化される。次いで、エアロゾルは、患者への送達のために流体出口64を介してエアロゾル発生器16から流出する。出口64は、気管内チューブ、鼻カニューレ/マスク、気管切開チューブ、マウスピースなどの任意の数の気流装置と連結し得る。例えば、出口64は、スナップ嵌め接続、圧入接続、ねじ込み接続、ねじ式ファスナ、接着剤、溶接、またはそれらの組み合わせによって気流装置と連結し得る。いくつかの実施形態では、ハウジング62は、1つまたは複数の通気孔66(例えば、1、2、3、4、またはそれ以上)を含み得る。通気孔66は、流体が流体送達導管22に流入するときにエアロゾル発生器16から空気を漏出することを可能にすることにより、流体送達導管22の準備(priming)を促進し得る。いくつかの実施形態では、通気孔66は、エアロゾル発生器16への流体の過剰準備/過剰圧送の検出を可能にし得る。例えば、通気孔66のサイズは、ハウジング62からの過剰な流体の急速な流れを可能としないようにしてもよい。過剰準備/過剰圧送によりハウジング62内に圧力が生じると、コントローラ26は圧力スパイクを検出することができる。圧力の増加は、圧力センサによって、かつ/またはポンプ24(
図1で確認される)による電力需要の増加によって検出され得る。いくつかの実施形態では、通気孔66は、振動可能な部材の両側の圧力を等しくすることによりエアロゾル生成を促進し得る。
【0025】
流体をエアロゾル化するために、エアロゾル発生器はケーブル32によってコントローラ26(
図1で確認される)と電気的に接続している。ケーブル32は、ハウジング62のケーブル入口68を介してエアロゾル発生器16と連結する。ハウジング62の内部で、ケーブル32は、振動可能な部材を振動させて、流体をエアロゾル化する圧電(または他の)アクチュエータと連結する。
【0026】
図3は、エアロゾル発生器の実施形態の断面図である。図示のように、ハウジング62は、互いに結合する第1の部分80(例えば、第1の半分)と第2の部分82(例えば、第2の半分)とを含み得る。第1および第2の部分80、82は、スナップ嵌め接続、圧入接続、ねじ込み接続、ねじ式ファスナ、接着剤、溶接、またはそれらの組み合わせによって互いに結合し得る。第1および第2の部分80、82は、振動可能な部材86(例えば、開口板(aperture plate)、メッシュ)および圧電アクチュエータ88を受承する空洞84を形成する。動作中、圧電アクチュエータ88は、支持板90を介してエネルギーを伝達することにより振動可能な部材86を振動させる。振動可能な部材86が振動すると、振動可能な部材86はエアロゾルを生成する。エアロゾルがエアロゾル発生器16から噴出するようにするために、振動可能な部材86は、開口部92の周りで支持板90と連結する。開口部92は、振動可能な部材86によって生成されたエアロゾルがエアロゾル発生器16から噴出することができるように、入口60から出口64へのハウジング62を介した流体連通を可能にする。
【0027】
支持板90は、金属、合金、ポリマーなどの材料のうちの1つまたは複数から作成され得る。振動可能な部材86は、同様に、金属、合金、またはポリマーから作成され得る。支持板90の厚さを変化させることにより、エアロゾル発生器16は振動可能な部材86の振動特性を変化させ得る。例えば、より厚いおよび/またはより硬い支持板90は、振動の伝達に抵抗し得るが、より薄い支持板90は振動の伝達を促進し得る。いくつかの実施形態では、支持板90は、ケーブル32内の接地線と接続する導体(例えば、金属板)であり得る。従って、支持板90は、圧電アクチュエータ88に電力を供給する回路を完成させ得る。いくつかの実施形態では、支持板90および振動可能な部材86は、互いに連結する2つの別個の構成要素の代わりに、単体/一体であり得る。別の実施形態では、振動可能な部材86は、支持板90の上に成形され得る(例えば、巻き付けられる(wrap around))。
【0028】
圧電アクチュエータ88を振動可能な部材86に支持板90によって間接的に結合することにより、エアロゾル発生器16は、圧電アクチュエータ88およびケーブル32をハウジング62に出入りする流体から隔離することができる。例えば、エアロゾル発生器16は、第1のシール94および第2のシール96を含むことができる。第1のシール94は、支持板90の第1の表面98とハウジング62の第1の部分80との間のシールを形成し、第2のシール96は、支持板90の第2の表面100とハウジング62の第2の部分82との間のシールを形成する。支持板90が振動するとき、シール94、96は、ハウジング62の個々の溝102、104(例えば、円周方向溝)内の所定の位置に保持される。いくつかの実施形態では、シール94、96は、プラスチック、ゴム、エラストマーなどから作成されたOリングシールであり得る。一旦組み立てられると、第1および第2のハウジング部分80、82は、シール94、96を圧縮して支持板90と接触させて、流体チャンバ106を形成するとともに、流体チャンバ106と圧電アクチュエータ88との間の流体密接シール(fluid tight seal)を形成する。これらのシール94、96はまた、汚染物質がケーブル入口68を通って流体チャンバ106に侵入するのを阻止することにより、無菌環境を維持し得る。
【0029】
上記で説明したように、ハウジング62は通気孔66を含む。いくつかの実施形態では、通気孔66は、1つまたは複数のフィルタ107を含み得る。フィルタ107は、汚染物質が流体チャンバ106に侵入するのを阻止することにより、無菌環境を可能にし得る。フィルタ107はまた、流体送達導管22を準備するときに、ガスが流体チャンバ106から漏出し、かつ流体チャンバ106からの流体の漏出を遮断/低減することを可能にし得る。
【0030】
流体チャンバ106は、ハウジング62の入口60と連結する流体送達導管22から流体を受け取る。流体送達導管22は、流体送達導管22の出口/端部108が振動可能な部材86から距離110(例えば、1mmから0.001mm)で存在するように、流体チャンバ106内に延在する。距離110は、振動可能な部材86が、流体送達導管22から流出する流体を(例えば、表面張力により)引き付けることを確実にする。このようにして、流体送達導管22は、エアロゾル発生器16の任意の方向または実質的にすべての方向において流体を振動可能な部材86に移送することができる。距離110は、振動可能な部材86が流体送達導管22から未分配流体を引き込む/除去する能力をブロックまたは低減するように調整することもできる(例えば、振動可能な部材86が振動する際の、流体の送達導管22の端部108と振動可能な部材86との間の距離110を変化させる)。距離110はまた、振動可能な部材86上の流体の拡散を制御するために調整され得る。例えば、流体送達導管22が振動可能な部材86により近いほど、振動可能な部材86、流体、および流体送達導管22の間の摩擦により、流体が拡散する能力が低下するという影響がより大きくなる。以下でさらに詳細に説明するように、流体がより大きな表面領域に拡散すると、振動可能な部材86のより多くの開口部が流体に晒されて、エアロゾルの特性を変化させ得る。
【0031】
距離110は、流体送達導管22がどれほどの距離までハウジング62内に挿入されるか、または挿入可能であるかによって制御され得る。いくつかの実施形態では、流体送達導管22は、コネクタまたは分配チップ112(例えば、導管、チューブ)を含み、コネクタまたは分配チップ112は、流体送達導管22内にあり、流体入口60を介してハウジング62と連結する。コネクタ112は、流体送達導管22と一体であるか、または分離可能な部品であり得る。いくつかの実施形態では、コネクタ112は、表面エネルギーを減少させてコネクタを介して振動可能な部材86への流体の流れを促進するコーティングまたは処理(例えば、湿潤性コーティングまたは処理)を含み得る。
【0032】
分離可能なコネクタ112を備えた実施形態では、座ぐり穴114の深さ116ならびにコネクタ112の全長は、コネクタ端部/出口108と振動可能な部材86との間の距離110を制御し得る。いくつかの実施形態において、流体送達導管22は、異なる長さを有する複数のコネクタ112(例えば、キット)で製造され得る。これらの交換可能なコネクタ112により、ユーザは、用途(例えば、流体の種類、エアロゾルの種類、異なる投与速度、薬物混合、ゼロG使用)に応じて距離110を調整することができる。例えば、距離110は、流体と振動可能な部材86との間の引き付けをなおも維持しながら、流体が振動可能な部材86上に拡散することを可能にするように流体の粘度とともに増加し得る。いくつかの実施形態では、距離110を短縮するコネクタ112を使用して、振動可能な部材86上での流体の拡散を制限してもよく、これによりエアロゾルの特性が(例えば、より小さいプルームに)変化し得る。コネクタ112はまた、エアロゾル発生器16に送達される流体の量を制御するために(例えば、患者の投与に適合させるために)幅118が異なるようにしてもよい。幅118を変更すると、各呼吸サイクル中にエアロゾル発生器16に送達される流体の量を減少または増加させることにより、流体の投与量を変更することができる。コネクタ112(単数または複数)の幅118は、振動可能な部材86上の流体の拡散を変更することにより、エアロゾルの特性を変更し得る。しかしながら、コネクタの幅118を最小限に抑えることにより、未放出の流体がガス、汚染物質などに晒されるのを最小限にする。より狭い幅118はまた、コネクタ112内の気泡の閉じ込めを減少させ得、これは、投与量の正確さに影響を与え得る。最後に、幅118を最小化すると、流体チャンバ106のサイズが増大し得る。
【0033】
いくつかの実施形態において、距離110は、流体送達導管22の端部120とハウジング62の外面122との間に1つまたは複数のワッシャー(例えば、プラスチック、金属)を挿入することにより変更され得る。他の実施形態では、システム10は、ユーザが標準サイズのコネクタ112により距離110を変更できるようにする異なる深さ116の座ぐり穴114を有する複数の流体送達導管22を含み得る。上述の距離変更の任意選択は、距離110を変更するために別々にまたは互いに組み合わせて使用し得ることを理解されたい。
【0034】
図示されるように、コネクタ112、入口60、出口64、および振動可能な部材86は、軸124(例えば、ハウジング62の中心軸、導管22の中心軸、振動可能な部材86の中心軸)と整列されるか、または実質的に整列される。これにより、エアロゾル発生器16への流体の流れ、およびエアロゾル発生器16からのエアロゾルの流れが促進され得る。いくつかの実施形態では、コネクタ112、入口60、出口64、および/または振動可能な部材86は、互いに対してずれていてもよい。例えば、コネクタ112は、振動可能な部材86に対して位置がずれて、振動可能な部材86の特定の領域または一部に流体を向けるようにし得る。以下に詳細に説明するように、振動可能な部材86は、均一な開口部を有していなくてもよく、および/または均一に振動していなくてもよい。従って、振動可能な部材86の一部の上に流体の流れを向けることにより、エアロゾル発生器16はエアロゾルの特性を変更し得る。エアロゾル発生器16からのエアロゾルの流れを促進するために、出口64は、支持板90の開口部92の幅/直径128以上の幅/直径126を有し得る。これにより、エアロゾル発生器16からのエアロゾルの流れに対する障害が最小限に抑えられ、患者に送達されるエアロゾルの量が増加し得る。いくつかの実施形態では、出口64は、先細の内面130を有し得る。先細の内面130は、エアロゾル発生器16の様々な気流装置または特定の気流装置の様々なサイズへの取り付けを可能にし得る。いくつかの実施形態において、出口64の外面132は、エアロゾル発生器16の異なる気流装置または気流装置の異なるサイズへの取り付けを同様に可能にするために先細にされ得る。
【0035】
図4は、振動可能な部材86の実施形態の上面図である。上記で説明したように、振動可能な部材86は、圧電アクチュエータ88に応答して流体を振動させ、エアロゾル化する。振動可能な部材168は、2016年5月12日に公開され、かつあらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2016/0130715号明細書に記載されているような、光画成(photo-defined)振動可能な部材であり得る。動作時において、振動可能な部材86は、体積中位径(VMD:volume median diameter)が4ミクロン以下の液滴/粒子を有する99.6%以上の微粒子画分(FPF)を生成することができる。いくつかの実施形態では、振動可能な部材86を使用するエアロゾル発生器16は、VMDが1ミクロン以下の液滴を有する80%以上のFPFを生成することができる。これらの特性を備えたエアロゾルは、患者への効果的な送達(例えば、患者の肺内のより深い深度への薬剤の送達)のために、搬送流体(例えば、空気、酸素、酸素/空気混合物など)に容易に浮遊して搬送される。
【0036】
図示されるように、振動可能な部材86は、1つまたは複数の座ぐり穴142内に配置された1つまたは複数のエアロゾル化開口部140を含む。例えば、各座ぐり穴142は、約20個の開口部140を含み得る。いくつかの実施形態では、開口部140の数および/またはサイズは、各座ぐり穴142内で異なっていてもよい。例えば、いくつかの座ぐり穴142は、5個の開口部140を有してもよく、他の座ぐり穴142は10個の開口部140などを有してもよい。さらに、座ぐり穴142は、振動可能な部材86上に均一にまたは不均一に分布してもよく、開口部140も座ぐり穴142内に均一にまたは不均一に分布してもよい。開口部140および座ぐり穴142の両方のサイズ、数、位置などを変更することができることにより、支持板90、圧電アクチュエータ88、および/または振動可能な部材86の振動特性への適合が可能となる。例えば、支持板90および/または圧電アクチュエータ88は、振動可能な部材86の一部を他の部分よりも大きく振動させてもよい。従って、一部は、他の部分よりも多くのエアロゾルを生成し得る。従って、開口部140および座ぐり穴142のカスタマイズにより、異なる特性(例えば、VMD、プルーム速度、プルーム密度、平均流量、方向など)を有するエアロゾル生成が可能となり得る。いくつかの実施形態では、カスタマイズにより、振動可能な部材86上の異なる位置で異なるエアロゾルの生成が可能となり得る。例えば、振動可能な部材86のいくつかの部分は4ミクロン以下のVMDを有するエアロゾルを生成し、他の部分は1ミクロン以下のVMDを有するエアロゾルを生成し得る。振動可能な部材86をカスタマイズすることができることにより、異なる流体、異なる治療、異なる用途などに対するエアロゾル生成を可能にする。
【0037】
図5は、
図3の5-5線内の振動可能な部材86におけるエアロゾル化開口部140を含む座ぐり穴142の実施形態の部分断面図である。上記で説明したように、開口部140および座ぐり穴142(深さ146を含む)のサイズは、用途に応じて変更され得る。
【0038】
図6は、振動可能な部材86により流体をエアロゾル化するエアロゾル発生器16の実施形態の断面図である。上記で説明したように、コネクタ112の端部108は、振動可能な部材86が流体送達導管22から流出する流体を(例えば、表面張力によって)確実に引き付けるために、振動可能な部材86から距離110だけ離れ得る。距離110はまた、エアロゾル化中に流体が振動可能な部材86と接触した状態に維持されるように、障害物を移動させるプール170の形成を可能にし得る。例えば、エアロゾル化中に気泡または泡沫172が形成され、移動されない場合、泡沫は流体のエアロゾル化を妨げ得る。従って、エアロゾル発生器16は、移動した泡沫のための空間を提供する流体チャンバ106を含む。流体チャンバ106はまた、形成される泡沫172の破壊を同時に促進しながら、泡沫172の生成を低減し得る。
【0039】
距離110はまた、振動可能な部材86上の流体の拡散を制御するために調整され得る。例えば、流体送達導管22が振動可能な部材86により近いほど、振動可能な部材86、流体、および流体送達導管22の間の摩擦により、流体が拡散する能力が低下して、エアロゾルの特性(例えば、プルーム速度、プルーム密度、平均流量、方向など)を変化させるという影響が大きくなる。
【0040】
図7は、振動可能な部材86により流体をエアロゾル化するエアロゾル発生器16の実施形態の断面図である。上記で説明したように、振動可能な部材86の開口部140および座ぐり穴142は、異なる特性(例えば、VMD、プルーム速度、プルーム密度、平均流量、方向など)を有するエアロゾルを生成するようにカスタマイズされ得る。いくつかの実施形態では、カスタマイズにより、振動可能な部材86上の異なる位置で異なるエアロゾルの生成が可能となり得る。図示のように、振動可能な部材86は、2つのVMDを有するエアロゾルを生成した。例えば、振動可能な部材86の外側部分は、4ミクロン以下のVMDを有するエアロゾルを生成し、一方、内側部分は、1ミクロン以下のVMDを有するエアロゾルを生成し得る。振動可能な部材86をカスタマイズすることができることにより、異なる流体、異なる治療、異なる用途などに対するエアロゾル生成を可能にする。
【0041】
図8は、ハウジング62内の流体入口60に連結された流体送達導管22を備えたエアロゾル発生器16の実施形態の斜視図である。動作中、流体源20からの流体は、流体入口60からエアロゾル発生器16に圧送され、エアロゾル発生器16において流体がエアロゾル化され、流体出口64から流出する。しかしながら、振動可能な部材86に流体を送達する単一の導管の代わりに、流体送達導管22は、複数の二次導管を含むマニホールドコネクタ190を含むか、またはマニホールドコネクタ190と連結し得る。二次導管は、振動可能な部材86の表面上への流体の迅速な分配を可能にするとともに、振動可能な部材86の表面上への液体の制御された分配を可能にし得る(例えば、振動可能な部材86のいくつかの部分は他の部分よりも多くの流体を受け取り得る)。
【0042】
図9は、エアロゾル発生器16の実施形態の断面図である。エアロゾル発生器16は、互いに結合する第1の部分80(例えば、第1の半分)と第2の部分82(例えば、第2の半分)とを含み得る。第1および第2の部分80、82は、スナップ嵌め接続、圧入接続、ねじ込み接続、ねじ式ファスナ、接着剤、溶接、またはそれらの組み合わせによって互いに結合し得る。第1および第2の部分80、82は、振動可能な部材86および圧電アクチュエータ88を受承する空洞84を形成する。
【0043】
振動可能な部材86および圧電アクチュエータ88は、空洞84内の支持板90と連結する。動作中、支持板90は、圧電アクチュエータ88から振動可能な部材86へのエネルギー伝達(例えば、振動)を可能にする。支持板90は、金属、合金、ポリマーなどの以下の材料のうちの1つまたは複数から作成され得る。支持板90の厚さを変化させることにより、エアロゾル発生器16は振動可能な部材86の振動特性を変化させ得る。例えば、より厚いおよび/またはより硬い支持板90は、振動の伝達に抵抗し得るが、より薄い支持板90は振動の伝達を促進し得る。いくつかの実施形態では、支持板90は、ケーブル32内の接地線と接続する導体(例えば、金属板)であり得る。従って、支持板90は、圧電アクチュエータ88に電力を供給する回路を完成させ得る。
【0044】
エアロゾル発生器16は、ハウジング62の第1の部分80と支持板90の第1の表面98との間のシールと、ハウジング62の第2の部分82と支持板90の第2の表面100との間のシールとを形成する第1のシール94および第2のシール96を含み得る。支持板90が振動するとき、シール94、96は、個々の溝102、104(例えば、円周方向の溝)内の所定の位置に保持される。いくつかの実施形態では、シール94、96は、プラスチック、ゴム、エラストマーなどから作成されたOリングシールであり得る。一旦組み立てられると、第1および第2のハウジング部分80、82は、シール94、96を圧縮して支持板90と接触させ、流体チャンバ106と圧電アクチュエータ88との間に流体密接シールを形成する。これらのシール94、96はまた、汚染物質がケーブル入口68を通って流体チャンバ106に侵入するのを阻止することにより、無菌環境を維持し得る。
【0045】
上記で説明したように、ハウジング62は1つ以上の通気孔66を含む。いくつかの実施形態では、通気孔66は、1つまたは複数のフィルタ107を含み得る。フィルタ107は、汚染物質が流体チャンバ106に侵入するのを阻止することにより、無菌環境を可能にし得る。フィルタ107はまた、流体送達導管22を準備するときに、ガスが流体チャンバ106から漏出することを可能にするとともに、流体チャンバ106からの流体の漏出を遮断および/または低減することを可能にする。
【0046】
流体送達導管22は、流体が流体源20からエアロゾル発生器16に流れることを可能にする流体チャンバ106と流体的に連結する。しかしながら、振動可能な部材86に流体を送達する単一の導管の代わりに、流体送達導管22は、複数の二次導管200に供給するマニホールドコネクタ190を含むか、またはマニホールドコネクタ190と連結し得る。二次導管200は、振動可能な部材86の表面202上への流体の迅速な分配を可能にするとともに、振動可能な部材86の表面上への液体の制御された分配を可能にし得る(例えば、振動可能な部材86のいくつかの部分は他の部分よりも多くの流体を受け取り得る)。二次導管200は、二次導管200の端部/出口204が振動可能な部材86から距離110で位置するように、流体チャンバ106内に延在する。距離110は、振動可能な部材86が二次導管200を流出する流体を(例えば、表面張力により)引き付けることを確実にする。このようにして、流体は、任意の方向または実質的にすべての方向において振動可能な部材86に移送することができる。距離110はまた、振動可能な部材86が二次導管200から未分配流体を引き込む/除去する能力をブロックまたは低減するように調整することもできる(例えば、振動可能な部材86が振動するときに、二次導管200の端部/出口204と振動可能な部材86との間の距離110を変化させる)。換言すれば、距離110は、エアロゾル化のための正確な流体放出を可能にし得る。距離110はまた、振動可能な部材86上の流体の拡散を制御するために調整され得る。例えば、二次導管200が振動可能な部材86により近いほど、振動可能な部材86、流体、および二次導管200間の摩擦により、流体が拡散する能力が低下し得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の二次導管200は、振動可能な部材86から異なる距離110に配置され得る。従って、二次導管200のいくつかは、振動可能な部材86の一部上への流体のより迅速な拡散を可能にし得る一方、他の二次導管200は、振動可能な部材86の他の部分上への流体の拡散を低減し得る。
【0047】
マニホールドコネクタ190は、流体送達導管22と一体であるか、または別個の部品であり得る。いくつかの実施形態では、エアロゾル発生器16および/または流体送達導管22は、異なる長さおよび/または異なる幅の二次導管200(例えば、キット)を有する複数のマニホールドコネクタ190を備え得る。これらの交換可能なマニホールドコネクタ190により、ユーザは、プルーム密度、平均流量、方向などを含む、振動可能な部材86によって生成されるエアロゾルの特性を変更することができる。
【0048】
図10は、振動可能な部材86に流体を供給する複数の二次導管200を示す、
図9の10-10線に沿ったエアロゾル発生器16の実施形態の断面図である。
図10では、二次導管200は等間隔であり、かつ等しいサイズの開口幅210を有する。7個の二次導管200が示されているが、いくつかの実施形態は、異なる数の二次導管200(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上)を有し得ることを理解されたい。動作中、等しいサイズおよび等しい間隔の二次導管200は、振動可能な部材86の表面202全体に等しい量の流体を供給し得る。表面202のより大きな部分をカバーすることにより、振動可能な部材86上の開口部140は、より多くの流体をエアロゾル化し、プルームサイズを増大させ、液滴サイズを変化させることができる。
【0049】
図11は、異なるサイズの二次導管200を示す、
図9の10-10線に沿ったエアロゾル発生器16の実施形態の断面図である。例えば、マニホールドコネクタ190は、振動可能な部材86の中心に位置する二次導管200と、中心に位置する二次導管200を囲むより小さな二次導管200とを含み得る。しかしながら、他の実施形態では、二次導管200のサイズおよび位置は異なり得る(例えば、より小さな二次導管200が振動可能な部材86の中心付近に集中し、より大きな二次導管200が周囲に配置される)。サイズの異なる二次導管200を含むことにより、マニホールドコネクタ190は、振動可能な部材86の一部への流体の流れを増加させることができる。上記で説明したように、振動可能な部材86は、表面202全体にわたって均等に振動し得ず、かつ/または開口部140の集中は均等に分散され得ない。従って、振動可能な部材86上に異なるサイズの二次導管200を配置することにより、所望の特性(例えば、液滴サイズ、出力速度、流出する液滴の適切な速度)を有するエアロゾルの生成が可能となり得る。
【0050】
図12は、
図9の線10-10に沿ったエアロゾル発生器16の実施形態の断面図である。振動可能な部材86は、表面202全体にわたって均等に振動し得ず、かつ/または開口部140の集中が均等に分散され得ないため、二次導管200は特定の場所に集中され得る。
図12では、エアロゾル発生器16は、振動可能な部材86の一部にわたって集中している二次導管200を含む。3個の二次導管200が示されているが、他の実施形態は、異なる数の二次導管200(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上)を有し得る。二次導管200はまた、互いに関して異なるサイズを有し得る。
【0051】
図13は、
図9の13-13線内の二次導管200の実施形態の断面図である。上記で説明したように、出口204と振動可能な部材86の表面202との間の距離110は、振動可能な部材86への流体の付着を可能にするとともに、流体の拡散を制御する。いくつかの実施形態では、振動可能な部材86は凹状であってもよい。振動可能な部材86の中心から離れて配置された二次導管200間の距離110を維持するために、二次導管200は、二次導管200と振動可能な部材86との間の適切な距離110を維持する角度付きまたは先細の端部/出口204を有し得る。先細の端部/出口204の角度は、直線および/または曲線であってもよい。例えば、1つまたは複数の先細の端部/出口204は、特定の先細の端部/出口204の下方の位置で振動可能な部材の表面202の輪郭を模造する輪郭を有し得る。
【0052】
本発明は様々な修正形態および代替形態の影響を受け得るが、特定の実施形態を例として図面に示し、本明細書で詳細に説明した。しかしながら、本発明は開示された特定の形態に限定されることを意図するものではないことを理解すべきである。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の技術思想および範囲内にあるすべての修正、等価物、および代替物を網羅するものである。
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
エアロゾル送達システムであって、
エアロゾル発生器を備え、前記エアロゾル発生器は、
ハウジング入口およびハウジング出口と流体連通する流体チャンバを画定するハウジングと、
前記ハウジングに連結され、前記ハウジング出口と流体連通する開口部を画定する支持板と、
前記開口部の周りで前記支持板に連結された振動可能な部材と、
前記支持板に連結された圧電アクチュエータであって、前記圧電アクチュエータは、伸縮して、流体をエアロゾル化する前記振動可能な部材を振動させる、前記圧電アクチュエータと、
流体を前記振動可能な部材に送達する複数の導管とを含む、エアロゾル送達システム。
[付記2]
前記複数の導管がマニホールド内に含まれる、付記1に記載のシステム。
[付記3]
前記複数の導管の少なくとも1つの導管が、残りの導管とサイズが異なる、付記1に記載のシステム。
[付記4]
前記複数の導管のうちの少なくとも1つが角度付き出口を含む、付記1に記載のシステム。
[付記5]
前記角度付き出口は、前記角度付き出口の下方に配置された前記振動可能な部材の表面の一部を模造するように形成されている、付記4に記載のシステム。
[付記6]
エアロゾル送達システムであって、
エアロゾル発生器を備え、前記エアロゾル発生器は、
ハウジング入口およびハウジング出口を有するチャンバを画定するハウジングと、
前記ハウジングに動作可能に連結され、開口部を画定する支持板と、
前記開口部を横断して配置されるように、前記支持板に動作可能に連結された振動可能な部材と、
前記支持板に連結された圧電アクチュエータであって、前記圧電アクチュエータは、伸縮して、流体をエアロゾル化する前記振動可能な部材を振動させる、前記圧電アクチュエータと、
前記振動可能な部材に流体を送達するように構成されるように前記振動可能な部材から離間した遠位端を有する流体導管であって、前記流体導管の遠位端は、前記振動可能な部材の振動によって流体がエアロゾル化されるまで、前記ハウジングの向きに関係なく、表面張力を使用して、送達された流体の実質的にすべてが前記振動可能な部材に付着することを可能にするように前記振動可能な部材から約1.0mmから約0.001mmに配置されている、前記流体導管とを含み、
複数の導管の各々の遠位先端は、流体が表面張力によって表面に付着するように、前記振動可能な部材の表面から約0.001mmおよび1mmの間だけ離間している、システム。
[付記7]
流体をエアロゾル化する方法であって、
流体導管の遠位端からエアロゾル発生器のハウジングのチャンバ内の振動可能な部材の表面に、ある量または用量の流体を供給するステップであって、前記流体導管の遠位端は、表面張力により液体が表面に付着するように、約0.001mmおよび1mmの間だけ前記振動可能な部材の表面から離間して配置される、前記供給するステップと、
圧電アクチュエータを作動させて前記振動可能な部材を振動させて流体をエアロゾルに変換するステップと、
前記圧電アクチュエータによって前記振動可能な部材を振動させて、前記振動可能な部材上の実質的にすべての流体を用量間でエアロゾル化する間、前記振動可能な部材への流体の流れを停止するステップとを含む方法。
[付記8]
ある量の流体を供給するステップは、前記圧電アクチュエータが振動するときに、流体を前記振動可能な部材の表面に圧送することを含む、付記7に記載の方法。
[付記9]
ある量の流体を供給するステップは、前記圧電アクチュエータが振動する前に、前記振動可能な部材の表面に流体を事前充填することを含む、付記7に記載の方法。
[付記10]
ある量の流体を供給するステップは、前記圧電アクチュエータが振動する前にある量の流体の一部を前記振動可能な部材の表面に事前充填し、ある量の流体の残りを前記圧電アクチュエータが振動するときに前記振動可能な部材の表面に圧送することを含む、付記7に記載の方法。